説明

PVC重合の連鎖停止の方法

【課題】PVC重合の連鎖停止の方法の提供
【解決手段】本発明は、安定性の遊離ニトロキシルラジカルとフェノール系抗酸化剤の存在下の塩化ビニル重合又は共重合の連鎖停止のための方法及び組成物に関する。本発明の他の対象は、塩化ビニル重合又は共重合のための連鎖停止混合物としての安定性の遊離ニトロキシルラジカルとフェノール系抗酸化剤の使用である。本発明の他の局面は、塩化ビニル重合のための連鎖停止剤としてのより高い立体障害性のニトロキシルラジカルの使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性の遊離ニトロキシルラジカル及び場合によりフェノール系抗酸化剤の存在下における塩化ビニル重合又は共重合の連鎖停止のための方法及び組成物に関する。本発明のさらなる局面は、塩化ビニル重合又は共重合に対する連鎖停止混合物としての、場合によりフェノール系抗酸化剤と一緒の安定性の遊離ニトロキシルラジカルの使用である。さらにもう一つの局面は、塩化ビニル重合に対する連鎖停止剤としての高立体障害性ニトロキシルラジカルの使用である。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、製造されるすべてのポリマーの中で独特の位置付けを有する。それはかなり廉価で、そして広範囲に使用されるためにその利用性にはほとんど制限がない。その分子量、添加剤及び安定剤によって、用途は、硬質管及び形材から非常に柔軟で透明な及び可撓性のフィルムまでの範囲にわたる。
【0003】
PVCは、3つの異なったプロセスによって、塩化ビニルモノマー(VCM)から製造され得る。最も広く使用されるのは、およそ75%を数える懸濁型の重合である。液体の塩化ビニルの液滴は、撹拌反応器中で保護コロイドを用いて分散される。重合は、油溶性の開始剤の使用の結果として液滴内で起きる。生成物は直径100ないし150μmの多孔性の粒子の形態にある。もう1つのプロセスは、撹拌及び強力な界面活性剤を使用してモノマーが水中に分散され、そして水溶性の開始剤を使用して重合が水相で行われるエマルション法である。重合生成物は、直径0.1ないし2.0μmのPVC粒子の水性のラテックス分散の形態にある。これらは噴霧乾燥されてより大きな凝集塊を形成し、該凝集塊は種々の塗布及び浸漬用途に使用されるプラスチゾルを与えるために溶媒と可塑剤中に分散される前に粉砕される。第3の方法はバルク又は塊状重合である。名称が暗示するように、重合が水の不在下にて塩化ビニル(VCM)中で行われる。PVCの製造の検討は例えば、Encylopedia of Polymer Science and Engineering,第2版,17巻,295ないし376頁中に記載されている。
【0004】
塩化ビニル重合に関して、ポリ塩化ビニルの圧倒的な量が懸濁重合により調製される。このプロセスにおいて、塩化ビニルモノマーと開始剤は、適当な温度及び圧力にて撹拌により水相へと分散される。メチル又はエチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール或いは他の水溶性ポリマーのような懸濁剤は、重合反応の間に懸濁液を安定化するために利用される。スラリーの形態にあるポリマーの微細顆粒は、反応器から吐出され、そして水を除去するために遠心分離されるか又は濾過される。微量の懸濁安定剤及び反応中間体を除去するためにポリマーを洗浄及び乾燥することで手順が終わる。
【0005】
重合サイクルの終結に向って、系の圧力は低下し始め、それにすぐに従って、重合速度がピークに達する。ピークを越えると、遊離モノマーがポリマーへと吸収されるので速度は鋭く低下し始め、そしてポリマーのビーズは多孔性を減ずる。多孔度と粒度分布の両方の点での粒子特性のそのような変化は、低下した製造のパフォーマンス及び経済性の点で製造業者にとって不利である。このように、顆粒化された多孔性の表面は、種々の押出し又は圧延のためのドライブレンドを形成するための、高められた可塑剤の取り込みのために望ましい。そのような悪影響を避けるために、製造業者は、完全なモノマー転換に先立って重合反応を終了する。製造業者の経験が、高品質のポリマーを与えるために重合が停止される点を最良に決定するであろうが、70ないし90%の転換が通常の停止点である。
【0006】
重合を停止するために種々の技術が採択された。純粋に機械的な方法は、重合を効果的に停止するために、ポリマーのスラリーを排気除去タンクへと排出し、そして温度及び圧力を急速に低下させることを含んでいる。
【0007】
種々の化学的な方法がまた採択された。ビニル重合反応を停止するための多くの慣用の化学的な手段が化学テキスト及び刊行物中に詳細に記載されている。より最近の方法は、遊離ラジカルの伝搬を停止させるために停止剤又は連鎖停止剤を添加すること、未反応のモノマーを除去すること及び乾燥したポリ塩化ビニルを得るために転換されたスラリーを加工することを含んでいる。こうして、α−メチルスチレン、ビスフェノールA及び種々の障害性フェノール抗酸化剤のような化合物が、連鎖停止の目的のために予め決定された時点で反応混合物に添加されている。これら化合物の中で、2,6−ジ−第3ブチル−4−メチルフェノール、すなわちBHTが、望ましい停止点において重合系への添加により、連鎖停止剤として最も頻繁に利用されている。ベンゼン環上の2−及び6−位に第3ブチル置換基を有する種々の他の障害性フェノールがまた、この目的のために使用される。しかしながら、性能試験の結果は、これら障害性フェノールに望まれるものより低く、これらの材料はおよそ250ppmまでの濃度で添加された場合に僅かな効果しか有していない。BHTもまた、より低い、より望ましい濃度範囲での効果的な連鎖停止を与えることが出来ないというこの限界を示す。
【0008】
障害性フェノールに基づいた他のPVC連鎖停止剤は、米国特許第4,229,598号明細書に記載されている。この組成物は、フェノールの気相メチル化の生成物からの分画のアルキル化により調製される。アルキル化された分画は、単純なメチル−t−ブチルフェノールの対応する混合物を生じるクレジル酸の特異的な混合物である。この混合物はしかしながら、必然的に、むしろ複雑で及び要求の厳しい手順により調製される。
【0009】
米国特許第5880230号明細書は、ビニル重合、特にスチレンブタジエン重合のための連鎖停止剤として、安定性の遊離ニトロキシルラジカル、特にテトラメチルピペリジン化合物単独の使用を開示している。
【非特許文献1】Encylopedia of Polymer Science and Engineering,第2版,17巻,295ないし376頁
【特許文献1】米国特許第4,229,598号明細書
【特許文献2】米国特許第5880230号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ本発明の第1の目的は、連鎖停止段階の効率を増加させるために塩化ビニル重合反応を改変することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
安定性の遊離ニトロキシルラジカルの適用、場合によりフェノール系抗酸化剤との併用が、塩化ビニル重合の連鎖停止の有効性を意外にも増加させることが驚くべきことに分った。
【0012】
本発明は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)又は(IX)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

[式中、
1、G2、G3、G4は、独立して炭素原子数1ないし4のアルキル基を表すか、或いはG1とG2又はG3とG4、又はG1とG2とG3とG4はペンタメチレン基を表し、但し、G1
いしG4が炭素原子数1ないし4のアルキル基を表す場合には少なくとも1つはエチル基
、プロピル基又はブチル基を表し;
5、G6は、独立して水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;
mが1である場合、Rは水素原子、中断されていない炭素原子数1ないし18のアルキル基或いは1個又はそれ以上の酸素原子により中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基、シアノエチル基、ベンゾイル基、グリシジル基、炭素原子数2ないし18の脂肪族カルボン酸の1価基、炭素原子数7ないし15の脂環式カルボン酸の、又は炭素原子数3ないし5のα,β−不飽和カルボン酸の1価基又は炭素原子数7ないし15の芳香族カル
ボン酸の1価基を表すか;又はRはカルバミン酸又はリン原子含有酸の1価基又は1価シリル基を表し;
mが2である場合、Rは炭素原子数2ないし12のアルキレン基、炭素原子数4ないし12のアルケニレン基、キシリレン基、炭素原子数2ないし36の脂肪族ジカルボン酸の、又は炭素原子数8ないし14の脂環式又は芳香族ジカルボン酸の2価基、或いは炭素原子数8ないし14の脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルバミン酸の2価基を表し;又は
Rはリン原子含有酸の2価基又は2価シリル基を表し;
mが3である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族トリカルボン酸の3価基を表し;
mが4である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族テトラカルボン酸の4価基を表し;
pは1であり;
1は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル
基又はベンゾイル基を表し;
2は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル
基又は式−CO−Z(式中、Zは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)で表される基を表し;
5、R6及びR7は独立して水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基又は炭素原
子数6ないし10のアリール基を表し;
8は水素原子、OH、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数3ないし18
のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、1個又はそれ以上のOH、ハロゲン原子又は基−O−C(O)−R5により置換された炭素原子数1ないし18のアル
キル基、炭素原子数3ないし18のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、少なくとも1個のO原子及び/又はNR5基により中断された炭素原子数2ないし1
8のアルキル基、炭素原子数3ないし12のシクロアルキル基又は炭素原子数6ないし10のアリール基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、炭素原子数5ないし10のヘテロアリール基、−C(O)−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基、−O−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基又は−COO(炭素原子数1ないし18のアルキル)基を表し;及び
9、R10、R11及びR12は独立して水素原子、フェニル基又は炭素原子数1ないし18
のアルキル基を表す。]で表される安定性の遊離ニトロキシルラジカルを反応系に添加することを含む、塩化ビニル重合を連鎖停止する方法に関する。
本発明のもう1つの局面は、
a)安定性の遊離ニトロキシルラジカル及び
b)フェノール系抗酸化剤
を反応系に添加することを含む、塩化ビニル重合を連鎖停止する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
安定性の遊離ニトロキシルラジカル、成分a)及びフェノール系抗酸化剤、成分b)は、50%ないし97%、より好ましくは60%ないし95%、そして最も好ましくは70%ないし90%のモノマー転換の後に好ましく添加される。好ましいのは、重合が懸濁重合として行われる方法である。
【0014】
懸濁重合のプロセスは、何百万の小さな“反応器”(液滴)中で行われる本質的にバルク重合プロセスである。その自己蒸気圧下の液体の塩化ビニルは、反応器(オートクレーブ)中で強く撹拌することにより水中に分散される。このことは、1つ又はそれ以上の保護コロイド(顆粒化剤)によって融合に対して安定化される、例えば平均粒径30ないし40μmの液滴の形成を生じる。他の不可欠な成分は、モノマー可溶性の遊離ラジカル開始剤である。典型的には、処方とも呼ばれるそのような基礎的な配合は、100部の塩化ビニル、90ないし130部の水、0.05ないし0.15部の保護コロイド及び0.03ないし0.08部のラジカル開始剤を含み得る。最適の形態を達成するために、酸素、緩衝液、第2又は第3の顆粒化剤、連鎖移動剤又は連鎖延長剤、コモノマー及び抗酸化剤
のような他の添加剤が使用されなければならない。
【0015】
典型的な保護コロイドはセルロースエーテル誘導体、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル又はポリビニルアルコールである。セルロースエーテルの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はメチルセルロースである。
【0016】
典型的なラジカル開始剤は、ジラウリルパーオキシドのようなジアシルパーオキシド、ジシクロヘキシルパーオキソジカルボネート又はジセチルパーオキソジカルボネートのようなパーオキソジカルボネート、t−ブチルパーオキシピバレート又はα−クミルパーネオデカノエートのようなアルキルパーオキシエステル及びアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ開始剤である。重合温度において1ないし10時間、好ましくは2ないし5時間の半減期を有する開始剤を選択することが有利である。
【0017】
安定性の遊離ニトロキシルは、当初の塩化ビニルの重量に基づき、0.001ないし1%、より好ましくは0.005%ないし0.5%、そして最も好ましくは0.01%ないし0.1重量%の量で好ましく添加される。
【0018】
フェノール系抗酸化剤は、当初の塩化ビニルの重量に基づき、0.001ないし1%、より好ましくは0.005%ないし0.5%、そして最も好ましくは0.01%ないし0.1重量%の量で好ましく添加される。
【0019】
フェノール系抗酸化剤と安定性の遊離ニトロキシルラジカルの比は、好ましくは20:1ないし1:20であり、より好ましくは10:1ないし1:10であり、そして最も好ましくは5:1ないし1:5である。
【0020】
反応温度は好ましくは40℃ないし95℃であり、そして圧力は5ないし30バール(bar)である。
【0021】
適切な安定性の遊離ニトロキシルラジカルは公知であり、そして安定性の遊離ラジカル介在の重合プロセスのために有益であるとして多くの刊行物に記載されている。
【0022】
構造要素
【化5】

を有する安定性の遊離ラジカルは例えば、欧州特許出願公開第A−621878号明細書に記載されている。
【0023】
国際公開第98/30601号パンフレットは例えば、イミダゾリジノンに基づいた特定のニトロキシルを開示している。さらに国際公開第98/44008号パンフレットは、モルホリノン、ピペラジノン及びピペラジンジオンに基づいた特定のニトロキシルを開示している。
【化6】

のような他の例は、国際公開第96/24620号パンフレット及び国際公開第00/53640号パンフレットに与えられる。
【0024】
他の適切な化合物及びその製造は例えば、米国特許第4581429号明細書、米国特許第5721320号明細書、米国特許第5627248号明細書又は国際公開第98/13392号パンフレットに記載されている。
【0025】
好ましい化合物は、式A、B又はO
【化7】

【化8】

【化9】

[式中、
1、G2、G3、G4は独立して炭素原子数1ないし4のアルキル基を表すか、或いはG1
とG2又はG3とG4、又はG1とG2とG3とG4が一緒にペンタメチレン基を表し;
5、G6は、独立して水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;
mが1である場合、Rは水素原子、中断されていない炭素原子数1ないし18のアルキル基或いは1個又はそれ以上の酸素原子により中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基、シアノエチル基、ベンゾイル基、グリシジル基、炭素原子数2ないし18の脂肪族カルボン酸の1価基、炭素原子数7ないし15の脂環式カルボン酸の、又は炭素原子数3ないし5のα,β−不飽和カルボン酸の1価基又は炭素原子数7ないし15の芳香族カルボン酸の1価基を表すか;又はRはカルバミン酸又はリン原子含有酸の1価基又は1価シリル基を表し;
mが2である場合、Rは炭素原子数2ないし12のアルキレン基、炭素原子数4ないし12のアルケニレン基、キシリレン基、炭素原子数2ないし36の脂肪族ジカルボン酸の、又は炭素原子数8ないし14の脂環式又は芳香族ジカルボン酸の2価基、或いは炭素原子数8ないし14の脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルバミン酸の2価基を表し;又は
Rはリン原子含有酸の2価基又は2価シリル基を表し;
mが3である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族トリカルボン酸の3価基を表し;
mが4である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族テトラカルボン酸の4価基を表し;
pは1であり;
1は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル基
又はベンゾイル基を表し;
2は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル基
又は式−CO−Z(式中、Zは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)で表される基を表す。]で表されるものである。
【0026】
特に好ましいのは、式A、B又はO
[式中、
1、G2、G3、G4はメチル基を表し及びG5とG6は水素原子を表すか、或いは、G1
3はメチル基を表し及びG2とG4はエチル基を表し、G5はメチル基を表し及びG6は水
素原子を表し;
mが1である場合、Rは水素原子、中断されていない炭素原子数1ないし18のアルキル基或いは1個又はそれ以上の酸素原子により中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基、シアノエチル基、ベンゾイル基、グリシジル基、炭素原子数2ないし18の脂肪族カルボン酸の1価基、炭素原子数7ないし15の脂環式カルボン酸の、又は炭素原子数3ないし5のα,β−不飽和カルボン酸の1価基又は炭素原子数7ないし15の芳香族カルボン酸の1価基を表し;
mが2である場合、Rは炭素原子数2ないし12のアルキレン基、炭素原子数4ないし12のアルケニレン基、キシリレン基、炭素原子数2ないし36の脂肪族ジカルボン酸の、
又は炭素原子数8ないし14の脂環式又は芳香族ジカルボン酸の2価基、或いは炭素原子数8ないし14の脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルバミン酸の2価基を表し;
pは1であり;
1は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル基
又はベンゾイル基を表し;
2は炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル基
又は式−CO−Z(式中、Zは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)で表される基を表す。]で表される化合物である。
【0027】
最も好ましいのは、式Aに従った化合物である。
【0028】
特異的な例は:
【化10】

である。
【0029】
上述したような特に適切な化合物は、一部が入手可能であるか又はそれらは既知の方法により対応するテトラメチルピペリジンから調製される。高アルキル置換されたピペリジン及びその調製は例えば、英国特許第2335190号明細書及び英国特許第2361235号明細書に記載されている。
【0030】
ニトロキシルラジカルのもう1つの好ましい群は、式(Ic’)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)又は(Ih’)
【化11】

【化12】

[式中、
1、R2、R3及びR4は、各々独立して炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数3ないし18のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、OH、ハロゲン原子又は基−O−C(O)−R5により置換された炭素原子数1ないし18のアルキル
基、炭素原子数3ないし18のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、少なくとも1個のO原子及び/又はNR5基により中断された炭素原子数2ないし18の
アルキル基、炭素原子数3ないし12のシクロアルキル基又は炭素原子数6ないし10のアリール基を表すか、或いはR1とR2及び/又はR3とR4は、結合する炭素原子と一緒に炭素原子数3ないし12のシクロアルキル基を形成し;
5、R6及びR7は独立して水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基又は炭素原
子数6ないし10のアリール基を表し;
8は水素原子、OH、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数3ないし18
のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、OH、ハロゲン原子又は基−O−C(O)−R5により置換された炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数
3ないし18のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、少なくとも1個のO原子及び/又はNR5基により中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基、炭
素原子数3ないし12のシクロアルキル基又は炭素原子数6ないし10のアリール基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、炭素原子数5ないし10のヘテロアリール基、−C(O)−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基、−O−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基又は−COO(炭素原子数1ないし18のアルキル)基を表し;及びR9、R10、R11及びR12は独立して水素原子、フェニル基又は炭素原子数1ないし18
のアルキル基を表す。]
で表されるものである。
【0031】
好ましくは、式(Ic’)、(Id’)、(Ie’)、(If’)、(Ig’)又は(Ih’)において、R1、R2、R3及びR4の少なくとも2つがエチル基、プロピル基又はブチル基を表し、そして残りはメチル基を表し;又は
1、R2、R3及びR4は、結合する炭素原子と一緒に炭素原子数5又は6のシクロアルキル基を形成し、及び残りの置換基の1つがエチル基、プロピル基又はブチル基を表す。
【0032】
上記化合物及びその調製は英国特許第2342649号明細書に記載されている。
【0033】
さらにもう1つの好ましい化合物の群は、安定性の遊離ニトロキシルラジカルが、窒素原子に対するα−位において炭素原子に結合された水素原子を有するものである。例及びその調製は国際公開第00/53640号パンフレットに与えられる。
【0034】
本発明において有用なフェノール系抗酸化剤は、使用及び加工の間のポリマーのための熱安定剤として当業者に既知である。例は以下に与えられる。
【0035】
1.抗酸化剤
1.1.アルキル化モノフェノール、
例えば、2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール、2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシメチルフェノール、線状又は側鎖において枝分れしたノニルフェノール、例えば、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデシ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデシ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシ−1’−イル)フェノール及びそれらの混合物。
【0036】
1.2.アルキルチオメチルフェノール、
例えば、2,4−ジオクチルチオメチル−6−第三ブチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,6−ジ−ドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール。
【0037】
1.3.ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、
例えば、2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−第三ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−第三アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−第三ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペート。
【0038】
1.4.トコフェロール、
例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール及びそれらの混合物(ビタミンE)。
【0039】
1.5.ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、
例えば、2,2’−チオビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−第二アミルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド。
【0040】
1.6.アルキリデンビスフェノール、
例えば、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)−フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノ
ニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−第三ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−第三ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−第三ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−第三ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−第三ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン。
【0041】
1.7.O−、N−及びS−ベンジル化合物、
例えば、3,5,3’,5’−テトラ−第三ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三ブチルベンジルメルカプトアセテート、トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−第三ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート。
【0042】
1.8.ヒドロキシベンジル化マロネート、
例えば、ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−2−ヒドロキシベンジル)−マロネート、ジ−オクタデシル−2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス−[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート。
【0043】
1.9.芳香族ヒドロキシベンジル化合物、
例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール。
【0044】
1.10.トリアジン化合物、
例えば、2,4−ビス(オクチルメルカプト)−6−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−
第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−第三ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート。
【0045】
1.11.ベンジルホスホネート、
例えば、ジメチル−2,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルベンジルホスホネート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩。
【0046】
1.12.アシルアミノフェノール、
例えば、4−ヒドロキシラウラニリド、4−ヒドロキシステアラニリド、オクチルN−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバメート。
【0047】
1.13.β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステルであって、一価又は多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、n−オクタノール、i−オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル。
【0048】
1.14.β−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステルであって、一価又は多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、n−オクタノール、i−オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル。
【0049】
1.15.β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステルであって、一価又は多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオー
ル、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)−オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル。
【0050】
1.16.3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステルであって、一価又は多価アルコール、例えば、
メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンとのエステル。
【0051】
1.17.β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えば、
N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミド、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミド、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジド、N,N’−ビス[2−(3−[3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニルオキシ)エチル]オキサミド(ユニロイヤルによって供給されるナウガードXL−1;登録商標:Naugard)。
【0052】
好ましいのは、式I
【化13】

[式中、R1は炭素原子数1ないし20のアルキル基又は基−(CH2−CH2−O)n−R2(式中、nは1ないし4の数であり、及びR2は基
【化14】

を表す。)を表す。]で表されるフェノール系抗酸化剤である。
【0053】
最も好ましいのは、β−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸とトリエチレングリコールとの反応生成物、イルガノックス(登録商標:Irganox)245、及びイルガノックス1141、80%の2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシ− 1’−イル)フェノールと20%のβ−(3,5−ジ−第三ブ
チル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステルのブレンド(チバ スペシャルティ ケミカルズ社)である。
【0054】
また好ましいのは、米国特許第5098945号明細書に記載されたフェノールである。
【0055】
ニトロキシルラジカル、成分a)及びフェノール系抗酸化剤、成分b)は、純粋な形態にある重合反応混合物に、一緒に又は続いて添加されてもよい。或いはそれらは、適切な有機溶媒中に溶解され得るか、或いは水中に乳化されるか又は分散され得、そしてその後に反応混合物に添加され得る。
【0056】
本発明の他の局面は、
a)安定性の遊離ニトロキシルラジカル、
b)フェノール系抗酸化剤及び
c)塩化ビニルモノマー
を含む組成物である。
【0057】
本発明のさらに他の局面は、塩化ビニル重合プロセスにおける連鎖停止混合物としてのa)安定性の遊離ニトロキシルラジカル及び
b)フェノール系抗酸化剤
の使用である。
【0058】
定義及び好例はすでに上述され、そして本発明の他の局面に適用する。
【0059】
本発明のもう1つの局面は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)又は(IX)
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

[式中、
式中、G1、G2、G3、G4は、独立して炭素原子数1ないし4のアルキル基を表すか、或いはG1とG2又はG3とG4、又はG1とG2とG3とG4は一緒になってペンタメチレン基を表し、但し、G1ないしG4が炭素原子数1ないし4のアルキル基を表す場合には少なくとも1つはエチル基、プロピル基又はブチル基を表し;
5、G6は、独立して水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;
mが1である場合、Rは水素原子、中断されていない炭素原子数1ないし18のアルキル基或いは1個又はそれ以上の酸素原子により中断された炭素原子数2ないし18のアル
キル基、シアノエチル基、ベンゾイル基、グリシジル基、炭素原子数2ないし18の脂肪族カルボン酸の1価基、炭素原子数7ないし15の脂環式カルボン酸の、又は炭素原子数3ないし5のα,β−不飽和カルボン酸の1価基又は炭素原子数7ないし15の芳香族カルボン酸の1価基を表すか;又はRはカルバミン酸又はリン原子含有酸の1価基又は1価シリル基を表し;
mが2である場合、Rは炭素原子数2ないし12のアルキレン基、炭素原子数4ないし12のアルケニレン基、キシリレン基、炭素原子数2ないし36の脂肪族ジカルボン酸の、又は炭素原子数8ないし14の脂環式又は芳香族ジカルボン酸の2価基、或いは炭素原子数8ないし14の脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルバミン酸の2価基を表し;又は
Rはリン原子含有酸の2価基又は2価シリル基を表し;
mが3である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族トリカルボン酸の3価基を表し;
mが4である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族テトラカルボン酸の4価基を表し;
pは1であり;
1は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル
基又はベンゾイル基を表し;
2は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル
基又は式−CO−Z(式中、Zは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)で表される基を表し;
5、R6及びR7は独立して水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基又は炭素
原子数6ないし10のアリール基を表し;
8は水素原子、OH、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数3ないし1
8のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、1個又はそれ以上のOH、ハロゲン原子又は基−O−C(O)−R5により置換された炭素原子数1ないし18のア
ルキル基、炭素原子数3ないし18のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニ
ル基、少なくとも1個のO原子及び/又はNR5基により中断された炭素原子数2ないし
18のアルキル基、炭素原子数3ないし12のシクロアルキル基又は炭素原子数6ないし10のアリール基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、炭素原子数5ないし10のヘテロアリール基、−C(O)−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基、−O−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基又は−COO(炭素原子数1ないし18のアルキル)基を表し;及び
9、R10、R11及びR12は独立して水素原子、フェニル基又は炭素原子数1ないし1
8のアルキル基を表す。]で表される安定性の遊離ニトロキシルラジカルを反応系に添加することを含む、塩化ビニル重合を連鎖停止する方法である。
【0060】
式(I)ないし(IX)で表される化合物は、窒素原子周囲の立体障害性が、エチル基、プロピル基又はブチル基のような少なくとも1個の高アルキル置換基により増加されていることを特徴とする。連鎖停止単独として高い立体障害性を有するニトロキシルラジカルを使用する原理は、先行技術には開示されていない。連鎖停止活性は、実施例5に示されるとおり素晴らしい。
【0061】
本発明の特定の態様において、前記方法は、式中のG1とG3はメチル基を表し及びG2
とG4はエチル基を表し、G5はメチル基を表し及びG6は水素原子を表すか;又はG1とG2はエチル基を表し及びG3とG4はメチル基を表し;及びG5とG6は水素原子を表すとこ
ろの式(I)ないし(IX)で表される化合物を用いて行われる。
【0062】
好ましくは、安定性の遊離ニトロキシルラジカルは、式(I)、(II)又は(III)で表されるものである。
【0063】
また本発明の対象は、塩化ビニル重合プロセスにおける連鎖停止剤としての式(I)、(II)又は(III)で表される安定性の遊離ニトロキシルラジカルの使用である。
【0064】
本発明にしたがって調製されたポリ塩化ビニルは、既知の手法により望ましい形態へと転換され得る。この型の方法は例えば、グラインディング、カレンダリング、押出し、射出成形、シンタリング又はスピニング、さらには押出しブロー成形或いはプラスチゾル方法による転換である。それはまたフォームへと転換され得る。
【0065】
本発明にしたがって調製されたポリ塩化ビニルは、特に、特に好ましいものであるワイヤーシース及びケーブル絶縁材のための可撓性の配合物の形態にある、半硬質で可撓性の配合物のために特に適している。半硬質の配合物の形態において、それは装飾用フィルム、フォーム、農業用シート、チューブ、密封形材及びオフィスフィルムのために特に適している。
【0066】
硬質の配合物の形態において、それは中空品(ボトル)、包装フィルム(熱成形フィルム)、吹込みフィルム、安全パッドフィルム(自動車)、チューブ、フォーム、重形材(窓枠)、軽壁形材、建築形材、羽目板、取付具、オフィスフィルム及び装置ハウジング(コンピューター及び家庭内器具)のために特に適している。
【0067】
プラスチゾルとしてのポリ塩化ビニルの使用例は、人工皮革、フロアカバー、織物被覆、壁カバー、コイル被覆及び自動車アンダーコーティングである。
【0068】
以下の実施例が本発明を説明する。
【実施例】
【0069】
実施例1ないし4、比較例1ないし4
共通実験事項
バッチ操作における懸濁方法にしたがって重合を行った。1000mL容量の二重圧力反応器を、1000rpmの撹拌速度で58℃及び70℃の温度にて操作した。圧力を、重合のために用いた温度に依って9ないし12バール(bar)とした。圧力をデジタル的に記録し(ブエチ(Buechi)bdc.sc)、反応器内の温度をまた記録した。以下の配合を反応器に添加した:

200mLの脱塩、脱ガスされたH2O75gの99,97%安定化された塩化ビニル
3.7(供給元;メッサー グリーシェイム(Messer Griesheim))300mgのポリビニルアルコール(モウィオール8−88(登録商標:mowiol8−88),供給元:クラリアント(Clariant))塩化ビニルに基いて0.1モル%の、イソデカン中のエチル−3,3−ジ(第三ブチルパーオキシ)ブチレート75%(ルペロックス233M(登録商標:Luperox 233M),供給元:アトフィナ(Atofina))

さらに、添加剤(ニトロキシル及び抗酸化剤)を、反応の開始時(表1、実施例1ないし2及び比較例1ないし4)、又は、表2、実施例3ないし4に示したとおりの特定の重合時間の後のどちらかに記載された量で添加した。
7時間の反応時間後、得られたポリマーを濾過により単離した。
得られた粗ポリマーを水で洗浄し、濾過し、エタノールで洗浄し、重量が一定を維持するまで40℃にて真空下に乾燥した。
狭い分布のポリスチレン標準品を用いて校正したGPC(3カラム、PLポリマーラボラトリー)により分子量を決定した。

使用した化合物:
イルガノックス1141:80%2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシ−1’−イル)フェノール及び20%β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステルのブレンド
【化19】

ニトロキシル1(英国特許第2335190号明細書及び第2361236号明細書にそれぞれしたがって調製された):
【化20】

チバ スペシャルティ ケミカルズ社からのプロスタブ5415(登録商標:Prostab)

結果を表1及び2に与える。
【表1】

【表2】

【0070】
実施例5
共通実験記載から変更し、この反応は5リッターのラボ反応器中で行った。300ppmのニトロキシル1を、圧力低下(3時間の反応時間後)の開始時に添加し、さらに1時間の反応時間後、得られたポリマーを濾過により単離した。
得られた粗ポリマーを水で洗浄し、濾過し、エタノールで洗浄し、重量が一定を維持するまで40℃にて真空下に乾燥した。
【表3】

表に対する説明
オートクレーブのような密閉された系中のガス状塩化ビニルの重合は、経時的にモノマーの消費を引き起こした。モノマーの消費は同時に、モノマーの使用量にしたがって系内の最初の圧力を低下させる。モノマーの消費及び重合過程はそれゆえ、反応容器中の圧力を測定することによって観測され得る。重合が減速されるか又は停止されるとすぐに、圧力変化が相当に遅くなるか又は圧力が一定値に達する。それゆえ、添加剤の連鎖停止活性を評価するためには、与えられた重合時間後に定義された条件下で圧力を測定することで十分である。弱い連鎖停止剤の存在中においては、重合反応は影響されることなしに生じ、モノマー消費は高く、そして実験の開始点と終末点の間の差圧は大きい。効果的な連鎖停止剤の存在中においては、重合は、並びにモノマーの更なる消費も、遅くなるか又は停止する。それゆえ、生じた差圧は低くなる。
本実施例において、連鎖停止剤の有効性は低い差圧により証明された。本発明の組み合せが明らかに相乗的効果を示していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)又は(IX)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

[式中、
1、G2、G3、G4は、独立して炭素原子数1ないし4のアルキル基を表すか、或いはG1とG2又はG3とG4、又はG1とG2とG3とG4はペンタメチレン基を表し、但し、G1
いしG4が炭素原子数1ないし4のアルキル基を表す場合には少なくとも1つはエチル基
、プロピル基又はブチル基を表し;
5、G6は、独立して水素原子又は炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;
mが1である場合、Rは水素原子、中断されていない炭素原子数1ないし18のアルキル基或いは1個又はそれ以上の酸素原子により中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基、シアノエチル基、ベンゾイル基、グリシジル基、炭素原子数2ないし18の脂肪族カルボン酸の1価基、炭素原子数7ないし15の脂環式カルボン酸の、又は炭素原子数3ないし5のα,β−不飽和カルボン酸の1価基又は炭素原子数7ないし15の芳香族カルボン酸の1価基を表すか;又はRはカルバミン酸又はリン原子含有酸の1価基又は1価シリル基を表し;
mが2である場合、Rは炭素原子数2ないし12のアルキレン基、炭素原子数4ないし12のアルケニレン基、キシリレン基、炭素原子数2ないし36の脂肪族ジカルボン酸の、又は炭素原子数8ないし14の脂環式又は芳香族ジカルボン酸の2価基、或いは炭素原子数8ないし14の脂肪族、脂環式又は芳香族ジカルバミン酸の2価基を表し;又は
Rはリン原子含有酸の2価基又は2価シリル基を表し;
mが3である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族トリカルボン酸の3価基を表し;
mが4である場合、Rは脂肪族、脂環式又は芳香族テトラカルボン酸の4価基を表し;
pは1であり;
1は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル
基又はベンゾイル基を表し;
2は炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし7のシクロアルキル
基又は式−CO−Z(式中、Zは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)で表される基を表し;
5、R6及びR7は独立して水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基又は炭素原
子数6ないし10のアリール基を表し;
8は水素原子、OH、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数3ないし18
のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、1個又はそれ以上のOH、ハロゲン原子又は基−O−C(O)−R5により置換された炭素原子数1ないし18のアル
キル基、炭素原子数3ないし18のアルケニル基、炭素原子数3ないし18のアルキニル基、少なくとも1個のO原子及び/又はNR5基により中断された炭素原子数2ないし1
8のアルキル基、炭素原子数3ないし12のシクロアルキル基又は炭素原子数6ないし10のアリール基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、炭素原子数5ないし10のヘテロアリール基、−C(O)−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基、−O−(炭素原子数1ないし18のアルキル)基又は−COO(炭素原子数1ないし18のアルキル)基を表し;及び
9、R10、R11及びR12は独立して水素原子、フェニル基又は炭素原子数1ないし18
のアルキル基を表す。]で表される安定性の遊離ニトロキシルラジカルを反応系に添加することを含む、塩化ビニル重合を連鎖停止する方法。


【公開番号】特開2008−291280(P2008−291280A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233436(P2008−233436)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【分割の表示】特願2004−501469(P2004−501469)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】