説明

PVDアルミニウム効果顔料と摩砕法からの薄いアルミニウム効果顔料との顔料混合物、それを調製するためのプロセスおよびその使用

本発明は、アルミニウム効果顔料の混合物に関し、前記混合物は、
a)走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、10nm〜70nmの範囲のH50,PVD値を有する、PVDアルミニウム効果顔料(PVD Al)と、
b)走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、15nm〜100nmの範囲のh50,conv.値を有する、摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料(conv.Al)と、
c)溶媒または溶媒混合物と、
を含むが、
ただし、PVD Alのconv.Alに対する重量比が、99:1〜1:99であり、溶媒含量が、混合物の全重量を基準にして少なくとも30重量%である。
本発明はさらに、この混合物を調製するためのプロセス、およびこの混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム効果顔料の混合物、それを調製するためのプロセス、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PVDプロセス(PVD:物理蒸着)によって製造されたアルミニウム効果顔料は、ほぼ20年前から市販されてきた。光学的な面では、それは、最高グレードのアルミニウム効果顔料を代表するものである。この顔料は、60nm未満の平均厚みと、比較的に狭い厚み分布とを有している。その製造方法が理由となって、その表面は極めて滑らかで、均質である。
【0003】
市販されている製品の例としては以下のものが挙げられる:Metalure(登録商標)(Avery、Eckart販売)、Metasheen(登録商標)(Ciba Specialities)、Decomet(登録商標)(Schlenk)、またはStarbrite(登録商標)(Silberline)。
【0004】
PVDアルミニウム顔料を含む配合済みの印刷インキは、EckartからUltra star(登録商標)の商品名で入手することができる。
【0005】
PVD顔料は、集塊する傾向が強いために、顔料含量がわずか5%から最高でも20重量%までの、有機溶媒中の希薄な分散体として市販されている。したがって、これらの商品の形態では、有機溶媒の割合が極めて高い。全世界的にVOCの低減に努力が重ねられていることを考えれば、このことは、そのような顔料にとっては明白な欠点である。
【0006】
さらに、PVD顔料は、塗布媒体中におけるその光学的性質の変動が比較的に広い。この理由の一つは、その製造技術が複雑なためである。さらに、光学的に極めて高グレードな顔料は、それに応じて、変動の影響も受けやすい。
【0007】
US 2003/0178734 A1には、PVDアルミニウム顔料を製造するための改良された製造プロセスが記載されている。
【0008】
PVD法によって製造されたアルミニウム顔料は、光学的な面から言えば、最も洗練された性能を有しているものである。しかしながら、近年になって、アトマイズ化されたアルミニウム粉体を湿式摩砕することによって、PVD顔料の薄い厚みに近いアルミニウム効果顔料を製造することに成功している。
【0009】
EP 1 621 586 A1には、湿式摩砕により製造した、サイズd50が8μm〜30μmで、平均厚みが25〜80nmのアルミニウム効果顔料が開示されている。
【0010】
WO 2004/087816 A2においても同様に、摩砕により製造した極めて薄いアルミニウム効果顔料が開示されている。このアルミニウム効果顔料は、厚み分布のスパンが70%〜140%である。その光学的性質の面では、この顔料は、PVD顔料といわゆる「シルバードル」顔料との中間に位置している。この「シルバードル」顔料は、摩砕によって得られる従来からのアルミニウム効果顔料であって、通常、約150nm〜約500nmの範囲に入る、実質的により厚い厚みを有している。
【0011】
さらに、WO 2005/118722 A1から公知なものとしては、摩砕により製造された薄いアルミニウム顔料で、無機の耐食性コーティングを施されているものが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一つの目的は、PVD顔料に類似の高グレードな性質を有し、なおかつ溶媒含量がより低く、より安定した加工品質を有するアルミニウム効果顔料を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、本発明のアルミニウム効果顔料を製造するためのプロセスを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その目的は、以下のアルミニウム効果顔料の混合物を提供することにより達成された:
a)走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、10nm〜70nmの範囲のH50,PVD値を有する、PVDアルミニウム効果顔料(PVD Al)と、
b)走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、15nm〜100nmの範囲のh50,conv.値を有する、摩砕により製造されたアルミニウム効果顔料(conv.Al)と、
c)溶媒または溶媒混合物と、を含むが、
ただし、PVD Alのconv.Alに対する重量比が、99:1〜1:99であり、溶媒含量が、混合物の全重量を基準にして少なくとも30重量%である。
【0015】
本発明がその上に基礎をおく目的はさらに、本発明のアルミニウム効果顔料の混合物を調製するためのプロセスを提供することにより達成されるが、前記プロセスには次の工程を含む:溶媒または溶媒混合物の存在下で、PVDアルミニウム効果顔料(PVD Al)と摩砕により製造されたアルミニウム効果顔料(conv.Al)とを混合する工程。
【0016】
本発明の目的はさらに、コーティング、ペイント、印刷インキ、プラスチック、または化粧料配合物における本発明のアルミニウム効果顔料の混合物の使用によっても達成され、さらには、請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を含むコーティング組成物を提供することにより、そして、請求項14に記載のコーティング組成物または請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を有するかまたは含むコーティングされた物品により達成される。
【0017】
本発明の好適な展開法は、それぞれの従属請求項に示されている。
【0018】
「PVD Al」という略称は、本発明の文脈においては、PVD(物理蒸着)によって製造されたアルミニウム効果顔料を指している。
【0019】
「conv.Al」という略称は、本発明の文脈においては、摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料を指している。
【0020】
PVDアルミニウム効果顔料は、ほぼ完全に平面的な表面を有している。その製造法からの結果として、PVDアルミニウム効果顔料は、顔料の外側周辺部に沿って比較的に直線的な破断状端面を有している。PVDアルミニウム顔料を製造する際、一般的には、支持体ベルトに蒸着によりアルミニウムを付着させ、次いでそれを剥離させる。剥離の過程において、アルミニウムの膜が破壊されて小さな破片となるが、その後でそれをさらに微粉砕することも可能である。その剥離、さらには任意工程のさらなる微粉砕の過程において、比較的に直線的な破断状端面がもたらされる。
【0021】
変形性摩砕により製造されたアルミニウム顔料(conv.Al)は、不規則な形状の縁辺領域を有している点で、PVD顔料とは異なっている。摩砕によってアルミニウム効果顔料を製造するための出発物質である、アトマイズ化されたアルミニウム粉体に対して、研磨媒体、典型的にはボールを機械的に作用させることによる製造の過程で、その不規則な形状の縁辺領域がもたらされる。さらに、変形性摩砕によって製造されたアルミニウム効果顔料は、ほぼ完全に平面的な表面は有していない。PVDアルミニウム顔料と対比して、摩砕によって得られたconv.Al顔料は、わずかな凹凸を示す。
【0022】
PVDアルミニウム効果顔料と、摩砕により製造されたアルミニウム効果顔料(conv.Al)との間の違いは、SEM(走査型電子顕微鏡法)によって、極めて容易に明らかとなる。
【0023】
好ましい実施態様においては、PVD Alのconv.Alに対する重量比が、95:5〜5:95、より好ましくは90:10〜10:90、極めて好ましくは80:20〜20:80である。しかしながら、言うまでもないことであるが、その重量比が60:40〜40:60の範囲である混合物を使用することもまた可能である。
【0024】
従来からの製造法によるアルミニウム効果顔料としては、たとえば、EP 1 621 586 A1およびWO 2004/087816 A2に記載されているアルミニウム効果顔料を使用することが可能である。それらの明細書を、参照することにより本明細書に取り入れたものとする。
【0025】
本発明の文脈においては、メタリック効果顔料の厚み分布は、走査型電子顕微鏡法(SEM)により求めた。この方法では、代表的な統計的評価を可能とするためには、十分な数の粒子を測定する必要がある。典型的には、ほぼ約100個の粒子を測定にかける。
【0026】
厚み分布は、通常、累積度数分布(累積度数プロットまたは累積篩下曲線とも呼ばれる)の形式で表される。適切な平均値は、累積度数分布のh50値である。粗い画分の一つの目安は、h90値である。それは、その顔料粒子全体の内の90%のものが、この値に等しいかおよび/またはこの値未満の厚みである位置を表している。同様に、たとえばh98値は、その顔料粒子全体の内の98%のものが、この値に等しいかおよび/またはこの値未満の厚みである位置を表している。同様にして、h10値は、厚み分布の微細な画分の目安であって、顔料粒子全体の内の10%のものが、この値に等しいかおよび/またはこの値未満の厚みである位置を表している。
【0027】
これらの値は、個々の測定値のリストから、たとえばExcel表現における分位数関数の助けを借りて、算術的に求めることができる。SEMによる個々の顔料の厚みの測定は、WO 2004/087816 A2に記載の方法に従って実施する。
【0028】
好ましい実施態様においては、摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料(conv.Al)は、20nm〜75nm、より好ましくは22nm〜65nm、極めて好ましくは23nm〜55nm、特に好ましくは25nm〜50nmの範囲のh50,conv.値を有している。
【0029】
これらの好ましい範囲に入るh50,conv.値を有するアルミニウム効果顔料(conv.Al)は、いわゆるフィルムリバース塗布物(film reverse applications)が作製される印刷用途において使用するのに特に適している。このことは、アルミニウム効果顔料を用いて顔料処理された印刷インキ、たとえばグラビア印刷インキまたはスクリーン印刷インキを、ほとんど透明なフィルムに塗布するということを意味している。その後で、そのフィルムを透過させて印刷物を見ると、他の方法として従来からの効果顔料を用いたのでは達成不可能なタイプの、メタリックな鏡面が形成されている。今日まで、フィルムリバース塗布物には、PVDアルミニウム効果顔料が常に使用されてきた。
【0030】
このフィルムリバース塗布物のためには特に、全体として極めて薄い範囲に入る厚み分布を有するアルミニウム効果顔料が好ましい。顔料の厚みが厚いと、その配向に乱れが生じ、そのために、極端に高い光沢に関連する鏡面効果が低下する。
【0031】
したがって、好ましい実施態様においては、摩砕法により製造されたアルミニウム顔料(conv.Al)が、30nm〜110nm、より好ましくは32nm〜100nm、極めて好ましくは33nm〜90nm、特に好ましくは35nm〜75nmの範囲の、走査型電子顕微鏡法による厚み計数から求めたh90,conv.値を有している。
【0032】
PVD法により製造したアルミニウム効果顔料も、同一の厚み分布を有しているのが好ましい。
【0033】
好ましい実施態様においては、さらに、摩砕法により製造されたアルミニウム顔料(conv.Al)における、走査型電子顕微鏡法による厚み計数から求め、対応する相対度数の累積度数分布に基づいて次式に従って計算した厚み分布の相対幅であるΔhが、20%〜140%である。
【数1】

【0034】
特に好ましい実施態様においては、摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料が、30%から70%未満までの範囲の厚み分布の相対幅であるΔhを有している。さらに好ましいのは、厚み分布の相対幅であるΔhが、35%〜67%、より好ましくは40%〜65%、極めて好ましくは40%〜60%の範囲にある。
【0035】
特に好ましい実施態様においては、その混合物全体、すなわち、PVD Alとconv.Alとからのアルミニウム効果顔料が、20%から70%未満まで、より好ましくは25%〜67%、極めて好ましくは27%〜65%、特に好ましくは30%〜60%の範囲の厚み分布の相対幅であるΔhを有している。
【0036】
湿式摩砕により製造され、h50,conv.が15〜80nm、厚みスパンが70%未満であるアルミニウム効果顔料は、これまで得ることができなかった。
【0037】
このアルミニウム効果顔料の製造においては、使用される出発物質は、狭い粒子サイズ分布を有する微細にアトマイズ化されたアルミニウム粉体である。
【0038】
本発明において使用するためのアルミニウム効果顔料を製造するためのプロセスは、アトマイズ化されたアルミニウム粉体を極端に穏やかに変形性摩砕することを特徴とする。具体的には、そのプロセスには以下の工程を含む:
a)好ましくは、dpowder,Al,10<3.0μm、dpowder,Al,50<5.0μm、およびdpowder,Al,90<8.0μmの粒子サイズ分布を有する、アトマイズ化されたアルミニウム粉体を備える工程、
b)溶媒および潤滑剤および、好ましくは2〜13mgの個別重量を有する研磨媒体の存在下の摩砕機構を使用して、工程a)からのアトマイズ化されたアルミニウム粉体を摩砕する工程。
【0039】
アトマイズ化されたアルミニウム粉体は、液状アルミニウム、好ましくはアルミニウム融解物を、アトマイザー中でアトマイゼーションするかまたはノズル噴霧することによって製造するのが好ましい。アトマイズ化された粉体は、好ましくはほとんど丸い形状を有するアルミニウム粒子を含むか、またはそれらからなる。球状からやや楕円状の形態にあるアルミニウム粒子を含むアトマイズ化されたアルミニウム粉体を使用するのが特に好ましい。一つの好ましい変法においては、アルミニウム融解物をアトマイゼーションして得られたアルミニウム粉体を分級して、所望の粒子サイズ分布(粒子バンドとも呼ばれる)が得られるようにする。
【0040】
アトマイズ化されたアルミニウム粉体が、極めて狭いサイズ分布を有する極めて微細な金属粉体であるのが好ましい。サイズ分布の粒子バンドは、通常、レーザー回折分光法によって求められるが、粒子サイズは、レーザー光の散乱から確認することができる。レーザー回折分光法は、たとえば、Sympatec GmbH、Clausthal−Zellerfeld、GermanyのHelos機器を使用し、メーカーの取扱説明書に従って実施することができる。
【0041】
好ましくは、サイズ分布は、dpowder,Al,10<3.0μm、dpowder,Al,50<5.0μm、dpowder,Al,90<8.0μmである。より好ましくは、サイズ分布が、dpowder,Al,10<0.6μm、dpowder,Al,50<2.0μm、dpowder,Al,90<4.0μmからなる。
【0042】
アトマイゼーション工程の後、その粉体を、相応の分級工程により、所望の狭いサイズ分布とすることもできる。分級は、空気分級機、サイクロン、およびその他の公知の装置を用いて実施してよい。
【0043】
こうした微細で比較的狭い範囲のアトマイズ化されたアルミニウム粉体が、本発明において使用するためのアルミニウム効果顔料を製造するために特に適している。サイズ分布が、下限として、以下の特性を有しているのが好ましい:dpowder,Al,10>0.15μm、dpowder,Al,50>0.8μm、dpowder,Al,90>2.0μm。したがって、使用されるアトマイズ化されたアルミニウム粉体は、主として、ナノメートルサイズのアルミニウム粉体ではない。
【0044】
アトマイズ化されたアルミニウム粉体のdpowder,Al,50値は、より好ましくは0.9〜3.0μm、さらにより好ましくは0.95〜2.5μmの範囲である。
【0045】
好適に使用されるこれらのアトマイズ化されたアルミニウム粉体は、Δdpowder,Al=(dpowder,Al,90−dpowder,Al,10)/dpowder,Al,50で通常定義されるそのサイズ分布のスパンが、好ましくは30%〜200%、より好ましくは40%〜180%、極めて好ましくは50%〜170%である。
【0046】
そのようなサイズ分布が狭い微細なアトマイズ化されたアルミニウム粉体を使用することが、摩砕により得られるアルミニウム効果顔料(conv.Al)を製造し、本発明において使用するためには、極めて有利である。
【0047】
変形性摩砕をしている際の、アルミニウム粉体粒子の変形は完全に均質であるという訳ではない。このことは、ある粒子が大きな変形を受けるのに対して、粉末粒子の幾分かは、摩砕手順の極めて最後の方のステージまで変形を受けないということを意味している。このことが起きる原因の一つは、粒子が変形される確率がそのサイズに依存する点にある。予備的な変形を既に受けてフレークとなった粒子は、変形をまだ受けていない粉体よりも比面積が大きく、そのために、さらなる変形を受ける確率がより高くなるからである。したがって、粉体のサイズ分布の広がりが、それから形成されるアルミニウムフレークのサイズ分布のみならず、厚み分布の分布にも反映される。したがって、狭い厚み分布を得るためには、相応にサイズ変動が小さい、アトマイズ化されたアルミニウム粉体を使用する必要がある。
【0048】
アトマイゼーションのために使用されるアルミニウムの純度は、99.0%から99.9重量%を超えるまでであるのが好ましい。その粉体には、相応の少ない量で、典型的な合金構成成分、たとえばMg、Si、Feなどを含んでいてもよい。
【0049】
アトマイズ化されたアルミニウム粉体は、摩砕機構、好ましくはボールミルを使用し、撹拌機機構の存在下または非存在下、溶媒および研磨助剤としての潤滑剤ならびに1.2〜13mgの個別重量を有する研磨媒体の存在下で、摩砕される。極端に穏やかなモードでの摩砕をするために、この摩砕手順は比較的に長時間かかる。その摩砕時間は、15〜100時間、好ましくは16〜80時間、より好ましくは17〜70時間とするのが好ましい。
【0050】
本発明の一つの好ましい展開法においては、研磨媒体が、2.0〜12.5mg、より好ましくは5.0〜12.0mgの個別重量を有する。使用する研磨媒体は、好ましくは球状の媒体、より好ましくはボールである。
【0051】
好適なボールは、極めて滑らかな表面と、可能な限り丸い形状と、ほとんど均質なサイズとを有するものである。ボールの材料は、鋼鉄、ガラス、またはセラミック、たとえば酸化ジルコニウムもしくはコランダムであってよい。摩砕操作の間の温度は、10℃〜70℃の範囲とするのが好ましい。25℃〜45℃の範囲の温度であるのが好ましい。
【0052】
ガラス製で、2.0〜12.5mgの平均重量を有するボールが特に好ましい。
【0053】
さらには、好ましくは平均個別重量が1.2〜4.5mg、より好ましくは平均個別重量が1.4〜4.0mg、さらに特に好ましくは平均個別重量が2.0〜3.5mgの鋼鉄製のボールも好ましい。
【0054】
摩砕時間を長くすれば、顔料とボールの衝突回数を増やすことになる。これらの衝突の結果として、顔料が極めて均質に成形され、極めて滑らかな表面と極めて狭い厚み分布とが得られる。
【0055】
ボールミルの回転速度は、臨界速度ncritの、好ましくは25%〜68%、より好ましくは28%〜60%、特に好ましくは30%〜50%未満、さらに特に好ましくは35%〜45%である。
【0056】
ボールミル中における摩砕に関しては、その臨界速度ncritが重要なパラメーターであって、遠心力がミルの壁面にボールを押しつけて、実質的に摩砕がもはや起きない時点をそれが示す。
【数2】

[式中、Dはドラムの直径であり、gは重力定数である]
【0057】
回転速度を低くすることによって、アトマイズ化されたアルミニウム粉体の変形が遅くなる。本発明のプロセスにおいて、遅い変形を起こさせるためには、さらに、軽量の研磨ボールを使用するのが好ましい。13mgを超える個別重量を有する研磨ボールは、アトマイズ化されたアルミニウム粉体を過度に変形させるかもしれず、このことによって破断が早まってしまう可能性がある。
【0058】
慣用される摩砕プロセスとは対照的に、このプロセスにおけるアトマイズ化されたアルミニウム粉体は、摩砕や微粉砕をされることはほとんどなく、その代わりに、比較的長い時間をかけて極めて穏やかに変形される。
【0059】
速度が低く、摩砕時間が長いと同時に、極めて軽量のボールを使用して摩砕することによって、極端に穏やかな摩砕となり、極めて薄いアルミニウム顔料が得られる。使用するアトマイズ化されたアルミニウム粉体が極めて狭い粒子サイズ分布を有しているために、本発明のアルミニウム効果顔料もまた極めて均質な厚み分布を有している。
【0060】
摩砕は、溶媒の中で、溶媒のアトマイズ化されたアルミニウム粉体に対する重量比が2.5〜10、研磨ボールのアトマイズ化されたアルミニウム粉体に対する重量比が20〜110で、研磨助剤としての潤滑剤を使用して実施してもよい。
【0061】
摩砕の過程で潤滑剤として使用することが可能な化合物は多数存在する。
【0062】
この文脈に含まれるのは、以前から使用されてきた、10〜24個のC原子のアルキル基を有する脂肪酸である。ステアリン酸、オレイン酸またはそれらの混合物を使用するのが好ましい。
【0063】
潤滑剤としてステアリン酸を使用するとリーフィング顔料が得られ、それに対してオレイン酸からは非リーフィング顔料が得られる。
【0064】
リーフィング顔料は、塗布媒体、たとえばコーティングまたは印刷インキの中で、それらが浮き上がる、すなわち、それらが塗布媒体の表面に配置されることを特徴としている。その一方で、非リーフィング顔料は、塗布媒体の内部に配置される。脂肪酸は、さらに、たとえば長鎖アミノ化合物と混合してもよい。
【0065】
脂肪酸は、動物由来とすることも、そうでなければ植物由来とすることも可能である。同様にして、有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルを潤滑剤として使用することも可能である。
【0066】
本発明における混合物(すなわち、PVD Alおよびconv.Alの混合物)におけるアルミニウム効果顔料の直径のd50,Mは、5〜50μmである。このサイズ分布は、典型的には、レーザー粒度分析によって求める。その混合物中のアルミニウム効果顔料のd50,M値は、好ましくは13〜40μm、より好ましくは15〜30μmである。
【0067】
一つの特に好ましい実施態様においては、本発明におけるPVDアルミニウム効果顔料(PVD Al)と従来からのアルミニウム効果顔料(conv.Al)との混合物は、それ自体は、コーティング、ペイント、化粧料または印刷インキではない。別の言い方をすれば、本発明における混合物は、そのままで、コーティング、ペイント、印刷インキまたは化粧料として、すぐに使用できる訳ではない。
【0068】
しかしながら、アルミニウム効果顔料の本発明における混合物は、コーティング組成物、たとえば、コーティング、ペイント、印刷インキまたは化粧料を製造するために使用することができる。この場合の本発明における混合物は、既存のコーティング、ペイント、および印刷インキの系または化粧料の中に組み入れることができる。
【0069】
上述の好ましい実施態様の文脈においては、本発明におけるアルミニウム効果顔料の混合物は、むしろ前駆体製品であって、それは、それぞれの場合において混合物の全重量を基準にして、好ましくは53%〜88重量%の溶媒含量と、好ましくは45%〜12重量%のメタリック効果顔料の割合とを有している。本発明のこの前駆体製品の溶媒含量は、それぞれの場合において混合物の全重量を基準にして、好ましくは60%〜87重量%、より好ましくは65%〜85重量%である。その前駆体製品が、ペーストまたは分散体であるのが好ましいが、この前駆体製品はペースト状の粘稠性を有しているのが好ましい。
【0070】
いずれの場合においても、その溶媒含量は、使用した出発物質の溶媒含量および混合比に依存する可能性がある。市販されている通常のPVDアルミニウム効果顔料の溶媒含量は、典型的には、95%〜80重量%である。
【0071】
薄い、従来法で摩砕されたアルミニウム効果顔料の場合においては、顔料が薄くなるほど、溶媒含量がより高くなる。言うまでもないことであるが、この理由は、フレークの厚みの低下に伴う比表面積の増大であって、その結果、ペースト様の粘稠性を得るための有機溶媒の所要量が増えるためである。そのため、従来からのアルミニウム効果顔料の場合の溶媒含量は、典型的には40%〜70重量%の間、好ましくは50%〜65重量%の間である。
【0072】
本発明の一つの好ましい変法においては、使用される摩砕によって得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)は、WO 2004/087816 A2に開示されているものである(この特許を参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0073】
本発明においては、走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布として表した厚み分布が、15〜150nmの範囲のhAl,50値を有するアルミニウム効果顔料が好ましい。
【0074】
Al,50値が、15〜100nm、より好ましくは15〜80nm、極めて好ましくは16〜60nm、さらに好ましくは17〜55nmの範囲であるアルミニウム効果顔料が、さらに好ましい。
【0075】
極めて好適であることが判明したアルミニウム効果顔料は、走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布として表した厚み分布が、30から100nm未満までの範囲のhAl,50値を有するものである。
【0076】
本発明の一つの変法においては、使用される摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)がリーフィング挙動を示す、すなわち、それが、塗布媒体(たとえば、ペイント、印刷インキまたはコーティング)の表面またはその近傍に配向される。
【0077】
本発明の一つの変法においては、使用される摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)が非リーフィング挙動を示す、すなわち、それが、塗布媒体(たとえば、ペイント、印刷インキまたはコーティング)の中の基材表面の近傍に配向される。
【0078】
リバース塗布物の場合においては、特に、本発明において使用するための摩砕によって得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)、およびPVDアルミニウム効果顔料が、非リーフィング挙動を示すのが好ましい。
【0079】
一つの好ましい実施態様の場合においては、アルミニウム効果顔料混合物中のPVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv−Al)との両方が極めて薄い顔料厚みを有している。
【0080】
一つの好ましい実施態様の場合においては、本発明のアルミニウム効果顔料混合物中のすべてのアルミニウム効果顔料が、総括して、15〜100nm、好ましくは20〜80nm、より好ましくは20〜60nmのhM,50値を有している。これらの数値は、混合物中のアルミニウム効果顔料全体に関するものであり、その二つの成分の混合比とは独立したものである。
【0081】
本発明のアルミニウム効果顔料混合物においては、PVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)とが、相互に対して、異なったリーフィング挙動または非リーフィング挙動を有していてもよい。たとえば、PVDアルミニウム効果顔料が非リーフィング挙動を有し、摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)がリーフィング挙動を有していてもよいし、その逆であってもよい。
【0082】
一つの好ましい実施態様においては、PVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)との両方がリーフィング挙動を有するか、その両方が非リーフィング挙動を有している。PVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)との両方が非リーフィング挙動を有しているのが極めて好ましい。
【0083】
本発明のアルミニウム効果顔料の混合物の調製においては、PVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)とを、溶媒の中で互いに混合する。溶媒に代えて、溶媒混合物を使用することも可能である。混合するより前は、PVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)との両方が、ペーストまたは分散体の形態で存在しているのが好ましい。
【0084】
本発明における混合物は、低ダストまたはダストフリーの形態であるのが好ましい。この場合、その溶媒含量は、混合物の全重量を基準にして、30%〜90重量%の範囲とするのがよい。溶媒含量は、好ましくは40%〜80重量%、より好ましくは50%〜70重量%の範囲である。
【0085】
驚くべきことには、本発明のアルミニウム効果顔料の混合物を用いれば、PVDアルミニウム効果顔料を用いて分散させる場合に従来可能であったよりも、溶媒の使用割合を少なくすることができるということが見出された。
【0086】
驚くべきことには、本発明のアルミニウム効果顔料混合物は、塗布した後、純粋なPVDアルミニウム効果顔料調製物を塗布したものに極めて近い、特に明度、光沢、およびフロップ性に関しての光学的性質を有している。
【0087】
したがって、本発明のアルミニウム効果顔料混合物によって、アルミニウム効果顔料調製物中のVOC含量(VOC:揮発性有機化合物)を顕著に低減させることができる。
【0088】
本発明における混合物中に存在している摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)が、PVDアルミニウム顔料において通常起きる集塊を妨げていると考えられる。一つの理論に束縛されることを望むものではないが、PVDアルミニウム顔料に比較して、摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)の表面がやや不規則になっていることおよび/または縁辺領域の形成が不規則になっていることが、本発明における混合物においては、PVDアルミニウム効果顔料がその全領域にわたって相互に並ぶようにはならず、その結果、集塊することが不可能になるという効果をもたらしていると考えられる。したがって、摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)が「スペーサー」としての機能を果たしていて、PVDアルミニウム効果顔料が全領域で接触することを妨げている。摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)が本発明のアルミニウム効果顔料混合物の中に存在しているということの結果として、恐らくは、主として点接触が存在しており、そのために、PVDアルミニウム顔料同士が全領域で接触することが明らかに低減されている。
【0089】
本発明における混合物の中に、PVDアルミニウム効果顔料および摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)に加えて、さらなる効果顔料、たとえばその他のメタリック効果顔料、真珠光沢効果顔料、有彩顔料、着色顔料などが存在していてもよいことは理解されるであろう。
【0090】
本発明における混合物の一つの変法においては、顔料の混合物に、もっぱらPVDアルミニウム効果顔料と摩砕により得られたアルミニウム効果顔料(conv.Al)とのみが含まれる。
【0091】
本発明の配合物は、好ましくは、コーティング、粉体コーティング、ペイント、印刷インキ、および化粧料、好ましくはマニキュア液である。
【0092】
コーティングされる物品は、好ましくは、自動車の車体、面材、窓枠、または手足の爪である。
【0093】
本発明のさらなる実施態様においては、アルミニウム効果顔料の混合物がバインダーをさらに含む。
【0094】
バインダーとして役に立つのは、たとえば、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、メラミンバインダー、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エポキシバインダー、ポリエーテルおよび/またはポリエステルをベースとするものである。これらの官能性を組み合わせて使用することも可能であって、そのようなものとしてはたとえば、ポリエステル−ポリウレタンもしくはポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリアクリレートまたはポリアクリレート−ポリウレタンなどが挙げられる。
【0095】
アルミニウム効果顔料のバインダーに対する重量分率は、8:1〜1:15、好ましくは6:1〜1:10、より好ましくは1:2〜1:5である。
【0096】
この文脈においては、アルミニウム効果顔料/バインダーの比率が高いのは、好ましくは、半製品を指している。たとえば、ペースト様の粘稠性を有する本発明の半製品では、アルミニウム効果顔料/バインダーの比率(重量分率)が、8:1〜1:2、好ましくは6:1〜1:1であってよい。
【0097】
ペイントおよび印刷インキにおいては、PVDアルミニウム顔料は、常に、極めて低い割合のバインダー(たとえば、樹脂)と共に配合しなければならない。そのバインダーの割合は、従来からのアルミニウム効果顔料を用いた対応する配合物におけるよりも、実質的に低い。バインダーの割合が高いと、PVD顔料の配向挙動が乱されるようであって、その結果、この顔料の有利な光学的性質、たとえば傑出した光沢や極めて良好な明度フロップ性が低下する。
【0098】
しかしながら、このタイプの配合物は、バインダー含量が低いために、その機械的抵抗性、たとえば耐摩耗性が低下するという欠点を有している。
【0099】
本発明における混合物のさらなる利点は、PVDアルミニウム効果顔料のために開発された通常の系よりも高いバインダー含量を有する配合物でありながらも、PVD顔料を用いて顔料処理された系のものと実質的に同等の光学的性質が得られるという点にある。したがって、本発明における混合物によって、機械的な抵抗性がより高い配合物を、相応により好ましい価格で提供することが可能であり、その配合物は、光学的な面では、PVDアルミニウム効果顔料の配合物に比肩しうる。
【0100】
さらに、コーティング用途においては、本発明における混合物は、PVDアルミニウム効果顔料のみを含むコーティング配合物に比較して、コーティングフィルムの厚みが異なっていても、実質的により再現性よく塗布することが可能であるということが判明した。結局のところ、その結果、光学的な面ではPVDアルミニウム効果顔料に比較してわずかに劣るものの、性能的にはかなり優位に立つコーティング配合物が得られる。
【0101】
さらに好ましい実施態様の場合においては、本発明におけるアルミニウム効果顔料の混合物は、添加剤をさらに含んでいる。この場合、添加剤は、分散性添加剤、沈降防止性添加剤、耐食性添加剤、およびそれらの混合物からなる群より選択するのが好ましい。そのような添加剤は、当業者には公知である。
【0102】
さらに好ましい実施態様においては、本発明のアルミニウム効果顔料混合物を、水性用途の系において使用する。したがって、これらの場合においては、本発明における混合物中のアルミニウム効果顔料に、防食性コーティングを付与する。防食性コーティングは、以下のものからなる群から選択される:ケイ素酸化物、ケイ素水酸化物、酸化セリウム、酸化ホウ素、クロメート層(EP 0 259 592 B1)、アルミニウムの酸化物、水酸化物または酸化物水和物(たとえば、DE 105 20 312 A1)、架橋ポリマー(たとえば、DE 4030727 A1、EP 1 837 380 A1、およびEP 1 655 349 A1)、無機/有機ハイブリッド層(たとえば、EP 1 812 519 A2)、およびそれらの混合物および/またはそれらの組合せ。しかしながら、その他の公知の安定化コーティング、たとえばモリブデン酸塩またはバナジウム化合物を、単独で、または上述の方法と組み合わせて使用することもまた可能である。EP 0 826 745 A1に特定されているすべてのコーティングもまた可能である。
【0103】
防食性コーティングとして好ましいのは、ケイ素酸化物、ケイ素水酸化物、ケイ素酸化物水和物、またはクロメート層であり、特に好ましいのは、その極めて良好な効果と環境適合性の面から、ケイ素酸化物、ケイ素水酸化物および/またはケイ素酸化物水和物を含む防食性コーティングである。
【0104】
さらに好ましい実施態様においては、PVD Alアルミニウム効果顔料が、さらなる1層または複数の着色層、およびさらなる1層または複数の干渉色を生じる層を有していない。
【0105】
よりさらに好ましい実施態様においては、conv.Alアルミニウム効果顔料とPVD Alアルミニウム効果顔料とが、さらなる1層または複数の着色層、および/またはさらなる1層または複数の干渉色を生じる層を有していない。したがって、アルミニウム効果顔料の固有の色に相当する、光沢の高いシルバーの印象を与えるアルミニウム効果顔料の混合物が好ましい。
【0106】
本発明におけるアルミニウム効果顔料の混合物を得るためのプロセスには以下の工程が含まれる:溶媒または溶媒混合物の存在下でPVDアルミニウム効果顔料と摩砕により製造されたconv.Alアルミニウム効果顔料とを混合する工程。
【0107】
このプロセスは、好ましくは、前駆体製品または半製品を製造するのに適している。
【0108】
しかしながら、本発明のアルミニウム効果顔料の混合物を完成した配合物の中に組み入れることを望むのならば、二つのアルミニウム効果顔料成分を配合物の中に連続的に組み入れることもまた可能である。この手段によれば、ある種の環境においては、色あしが改良される。しかしながら、本発明における混合物を配合物の中に前駆体製品の形態で組み入れるならば、コストと煩雑さが軽減される。
【0109】
本発明におけるアルミニウム効果顔料の混合物は、コーティング、ペイント、印刷インキ、プラスチック、または化粧料配合物における用途を見出している。
【0110】
化粧料配合物の文脈においては、マニキュア液が特に好ましい。
【0111】
本発明はさらに、請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を含むコーティング組成物も提供する。
【0112】
そのコーティング組成物は、コーティング、ペイント、印刷インキ、プラスチック、または化粧料配合物であるのが好ましい。
【0113】
本発明の物品は、請求項14に記載のコーティング組成物、または請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を有するか、または含む。
【0114】
以下の実施例で本発明を説明するが、本発明の保護範囲がそれによって限定されるものではない。
【0115】
比較例1:
ここでは、極めて薄い厚み分布を有する新規な薄いアルミニウム効果顔料を製造した。このために採用した手順は以下のとおりであった。
【0116】
a)アトマイゼーション
誘導るつぼ炉(Induga、炉容量:約2.5トン)の中に、アルミニウムバーを連続的に導入して溶融させた。前炉においては、そのアルミニウム融解物は、約720℃の温度で、液状の形態であった。複数のノズルをその融解物の中に浸漬させ、アルミニウム融解物を垂直上方にアトマイズさせた。アトマイズ用ガスは、圧縮機(Kaeser)中で20バールまで圧縮し、ガスヒーターで約700℃まで加熱した。そうして得られたアトマイズ化されたアルミニウム粉体を、飛行中に凝固、冷却させた。誘導炉は密閉されたプラントの中に統合されていた。アトマイゼーションは、不活性ガス(窒素)下で実施した。アトマイズ化されたアルミニウム粉体をまずサイクロンの中で堆積させたが、その中で堆積させたアトマイズ化されたアルミニウム粉体は、14〜17μmのd50を有していた。さらに下流で、マルチサイクロンによって堆積させたが、マルチサイクロンの中で堆積させたアトマイズ化されたアルミニウム粉体は、2.3〜2.8μmのd50を有していた。気体/固体の分離は、フィルター(Alpine)の中で、金属要素を用いて実施した。この場合においては、超微細画分として、dpowder,Al,10が0.7μm、dpowder,Al,50が1.9μm、dpowder,Al,90が3.8μmのアトマイズ化されたアルミニウム粉体が得られた。
【0117】
b)摩砕:
ポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に、4kgのガラスボール(直径:2mm)、75gの上述の工程a)からの超微細なアトマイズ化されたアルミニウム粉体、200gのホワイトスピリット、および3.75gのオレイン酸を仕込んだ。次いで、58rpmで15時間かけて摩砕を実施した。ホワイトスピリットを用いて洗い流すことによりその生成物を研磨ボールから分離させ、次いで湿式篩別操作により、25μmの篩を通して篩別した。吸引フィルターの上で、その微細な画分からホワイトスピリットのほとんどを分離し、次いでラボラトリーミキサー中でホワイトスピリットを用いて、ペースト化(約30重量%の固形分割合)を行った。
【0118】
比較例2:
市販のPVD顔料分散体のMetalure L55700(Eckart GmbH)、金属顔料の割合が10重量%のPVDアルミニウム効果顔料分散体。
【0119】
比較例の顔料のサイズ分布は、通常の方法で、レーザー粒度分析(Cilas 1064、Cilas、France)により求めた。
【0120】
比較例の厚み分布は、WO 2004/087816 A2に記載の方法に従って、SEMにより測定した。それぞれの場合において、97個の顔料粒子を測定にかけた。
【0121】
その結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
本発明実施例1〜5:
比較例1(conv.Al)と比較例2(PVD Al)との混合物
この目的のために、最初に、比較例1および2からのメタリック効果顔料ペーストを相互に混合させる。次いで、ニトロセルロースワニスをベースとするコーティング系にこれらの混合ペーストを組み込んだ。使用した溶媒は、酢酸イソプロピル、イソプロパノール、およびメトキシプロパノールの混合物であり、そのコーティング配合物を、蒸気圧を低下させる目的で少量の固定剤(0.4重量%)と混合した。正確な混合比、ペーストの重量、および得られたペースト中の溶媒レベルを、表2に示す。
【0124】
顔料処理したワニスを、コントラストカードの上に36μmのドクターを使用してドローダウンし、140℃で30秒間かけて焼き付けた。
【0125】
DIN 67530に準拠した方法で、60度での光沢測定をすることにより、そのドクタードローダウン物の特性解析を行った(機器:Byk−Gardner、D−82538 Geretsried、Germanyのmicro−TRI−gloss)。キャリブレーションは、ここでは、ダークキャリブレーションにより、そしてさらに、60度で92の値を有する黒色ミラーガラス板によって、実施した。
【0126】
これらの測定結果を同様に表2に示す。
【0127】
【表2】

【0128】
表2から、PVDアルミニウムに比較して、本発明のアルミニウム効果顔料混合物の溶媒含量は低いと推測することができる。混合物の光沢値は、予想されるとおり、PVDアルミニウムよりも低いが、それにも関わらず、従来からのアルミニウム顔料に比較すれば顕著な増大を示している。最後の列に計算してあるのは、次式に従って計算した相対的な光沢の増加である。
Δ光沢=100×(光沢値−148)/(212−148)
【0129】
驚くべきことには、その数値は事実上、常に、アルミニウム効果顔料混合物中のPVD顔料のパーセントの割合よりも高い。したがって、PVD顔料の割合がわずか20重量%であっても、その相対的な光沢の増加はすでにほぼ40%にも達している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム効果顔料の混合物であって、
混合物が、
a)走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、10nm〜70nmの範囲のH50,PVD値を有する、PVDアルミニウム効果顔料(PVD Al)と、
b)走査型電子顕微鏡法(SEM)による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、15nm〜100nmの範囲のh50,conv.値を有する、摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料(conv.Al)と、
c)溶媒または溶媒混合物と、
を含むが、
ただし、PVD Alのconv.Alに対する重量比が、99:1〜1:99であり、溶媒含量が、混合物の全重量を基準にして少なくとも30重量%であることを特徴とする、
アルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項2】
PVD Alのconv.Alに対する重量比が、95:5〜5:95であることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項3】
摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料が、20nm〜75nmのh50,conv.値を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項4】
摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料が、走査型電子顕微鏡法による厚み計数から求め、累積度数分布で表した厚み分布が、30nm〜110nmの範囲のh90,conv.値を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項5】
摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料が、走査型電子顕微鏡法による厚み計数から求め、対応する相対度数の累積度数分布に基づいて次式に従って計算した厚み分布の相対幅であるΔhが、20%〜140%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【数1】

【請求項6】
摩砕法により製造されたアルミニウム効果顔料が、30%から70%未満までの厚み分布の相対幅であるΔhを有することを特徴とする、請求項5に記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項7】
混合物のアルミニウム効果顔料全体として、20%から70%未満までの厚み分布の相対幅であるΔhを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項8】
混合物のアルミニウム効果顔料全体として、13〜40μmの平均粒子サイズd50,Mを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項9】
アルミニウム効果顔料の混合物が、それぞれの場合において混合物の全重量を基準にして、53%〜88%の溶媒含量、および45%〜12重量%のアルミニウム効果顔料割合を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項10】
アルミニウム効果顔料の混合物が、バインダーをさらに含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項11】
アルミニウム効果顔料のバインダーに対する重量比が、8:1〜1:15の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載のアルミニウム効果顔料の混合物。
【請求項12】
先行する請求項のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を調製するためのプロセスであって、
プロセスが、
溶媒または溶媒混合物の存在下で、PVDアルミニウム効果顔料と摩砕により製造されたアルミニウム効果顔料Al,conv.とを混合する工程、
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物の、コーティング、ペイント、印刷インキ、プラスチック、または化粧料配合物における使用。
【請求項14】
コーティング組成物であって、
コーティング組成物が、請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を含むことを特徴とする、コーティング組成物。
【請求項15】
コーティングされた物品であって、
物品が、請求項14に記載のコーティング組成物、または請求項1〜11のいずれかに記載のアルミニウム効果顔料の混合物を、有するかまたは含むことを特徴とする、コーティングされた物品。

【公表番号】特表2011−525555(P2011−525555A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515205(P2011−515205)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004582
【国際公開番号】WO2009/156149
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】