説明

PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを製作する方法およびシステム

【課題】チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサを製作する方法を提供する。
【解決手段】チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク106を製剤するステップを含む。さらに、噴霧堆積プロセス126および噴霧堆積装置146を有するインク堆積プロセス122によって、PZTナノ粒子インク156を基板101上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、センサを製作する方法およびシステムに関し、より詳細には、構造体上に堆積されたナノ粒子圧電センサを製作するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロセンサなど、小型センサは、複合構造体または金属構造体など、構造体を継続的に監視し、材料の特質ならびに応力および歪みのレベルを測定して、構造体の性能、損傷の可能性、および現在の状態を査定する構造ヘルスモニタリング(SHM)システムおよび方法に含めて様々な用途に使用可能である。既知のSHMシステムおよび方法は、ポリイミド基板上に統合され、電力/通信配線に接続された小型の頑強なセラミックディスクセンサの使用を含んでいる場合がある。一般に、このような既知のセンサは、手作業で接着剤を用いて構造体に接合される。このような手作業の取付けは、労力や取付けコストを増大させる場合があり、このような接着剤は、時とともに劣化し、結果的にセンサが構造体から剥離する結果をもたらし得る。さらに、このような既知のセンサは、硬質材料、平面材料、および/または脆性材料でできている場合があり、そのことにより、これらのセンサの使用が制約される可能性、例えば、湾曲している、すなわち非平面の基板表面においての使用が困難である可能性がある。その上、このような既知のセンサの大きい配列において、必要とされる電力/通信配線の量は、構造体の複雑さおよび重量を増大させることもあり得る。
【0003】
さらに、微小電気機械システム(MEMS)および方法など、既知のセンサシステムおよび方法は、ナノ粒子を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)など、基板圧電センサ上に堆積する使用を含み得る。このようなMEMSを作製するための既知の方法は、直接描画インク用のPZT粉末の溶融塩合成を含み得る。しかしながら、このような既知の方法により製作されるPZTセンサの用途は、PZTセンサの物理的幾何学的形状によって制約される可能性がある。結果的にこのような物理的幾何学的形状の制約が、検知容量不足または作動応答不足をもたらし得る。さらに、このような既知の方法で製作されたPZTセンサは、PZTセンサの製作方法により、それらのセンサの機能が重要であり得る範囲内に与えられること、またはその範囲内に配置されることができない場合もある。例えば、既知の溶融塩合成法には、特定の用途の基板が許容できるよりも高い温度での処理が必要である場合がある。
【0004】
さらに、このような既知のMEMSシステムおよび方法はまた、結晶化されていないナノ粒子を有するセンサの使用を含み得、そのことにより、結晶化されているナノ粒子ほど効率的ではない場合がある。結晶化された構造体は一般に、より大きい内部組成を有し、それにより歪みに対する応答感度の向上、および動作するエネルギーの必要性の低下がもたらされるが、一方、結晶化されていない構造体は一般に、より大きい非組成を有し、それにより歪みおよび電圧に対する応答感度の低下がもたらされる。さらには、センサのナノ粒子は、噴霧堆積(JAD)プロセスなど、一部の既知の堆積プロセスおよびシステムにはあまりにも大きい場合があり、このようなナノ粒子には、温度感性の基板または構造体に損傷を及ぼす可能性がある高温焼結/結晶化プロセスが必要であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許非仮出願第13/211,554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野において、構造体のための構造ヘルスモニタリングシステムおよび方法に使用可能なナノ粒子を有するPZT圧電センサを製作する改良された方法およびシステムの必要性があり、このような改良された方法およびシステムは、既知の方法およびシステムに対して利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
構造体のための構造ヘルスモニタリングシステムおよび方法に使用可能なナノ粒子を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)圧電センサを製作する方法およびシステムに対するこの必要性を満たす。下記の詳細な説明において論じるように、本方法およびシステムの実施形態は、既存の方法およびシステムに対して著しい利点をもたらすことが可能である。
【0008】
本開示の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサを製作する方法が提供される。本方法は、PZTナノ粒子インクを製剤するステップを含む。本方法は、インク堆積プロセスによって、基板上にPZTナノ粒子インクを堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを形成するステップをさらに含む。
【0009】
本開示の別の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサを製作する方法が提供される。本方法は、あらかじめ結晶化されたPZTナノ粒子を有するPZTナノ粒子インクを製剤するステップを含む。本方法は、ゾルゲルベースの接着促進剤中にPZTナノ粒子インクを懸濁するステップをさらに含む。本方法は、直接描画印刷プロセスによって、基板上にPZTナノ粒子インクを堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを形成するステップをさらに含む。
【0010】
本開示の別の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサを製作するためのシステムが提供される。本システムは、製剤されたPZTナノ粒子インクを備える。本システムは、基板上にPZTナノ粒子インクを堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを形成するインク堆積装置をさらに備える。構造体は、湾曲していない、すなわち平面的な表面を有しても、湾曲している、すなわち平面的でない表面を有しても、または湾曲していない、すなわち平面的な表面と、湾曲している、すなわち平面的でない表面との組合せを有してもよい。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサは、構造体の本体と、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサとの間の1枚または複数枚の絶縁層、コーティング層、またはペイント層とともに構造体の表面上に堆積可能である。
【0011】
論じている特徴、機能、および利点を本開示の様々な実施形態において独立して達成することも、またはさらに別の実施形態において組み合わせることもでき、さらにその詳細が以下の説明および図面を参照して分かる。
【0012】
好ましい、かつ例示的な実施形態を示し、しかし必ずしも縮尺通りとは限らない添付の図面とともに解釈される以下の詳細な説明を参照して、本開示は、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示のシステムおよび方法の実施形態のうちの1つが使用可能な例示的航空機を示す斜視図である。
【図2】堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリの実施形態のうちの1つを示す断面図である。
【図3】堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリの実施形態の別の実施形態を示す断面図である。
【図4】複合構造体上に堆積された、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリの実施形態のうちの1つを示す上面斜視図である。
【図5】本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサを製作するためのシステムの実施形態のうちの1つを示すブロック図である。
【図6A】本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサを製作するためのインク堆積プロセスおよび装置の実施形態のうちの1つを示す概略図である。
【図6B】基板上に堆積されているPZTナノ粒子インクベースのセンサを示す拡大図である。
【図7】本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサを使用する構造ヘルスモニタリングシステムの実施形態のうちの1つを示す概略図である。
【図8】本開示の方法の実施形態を示す流れ図である。
【図9】本開示の方法の別の実施形態を示す流れ図である。
【図10】本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサを製作するために使用可能なインク堆積プロセスおよびインク堆積装置の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、開示される実施形態を添付の図面を参照してより完全に以下に説明することとし、一部であるが、すべてというわけではない本開示の実施形態をこれらの図面に示す。実際、いくつかの異なる実施形態が、提供可能であり、本明細書に説明する実施形態に限定されるものと受け取るべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、完璧かつ完全になるように、また当業者に対して本開示の範囲を完全に伝えることになるように提供される。以下の詳細な説明は、現在のところ本開示を実施する最良の企図される様態である。この説明は、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によって最良に定められるために、限定の意味で解釈すべきものでなく、単に本開示の一般原則を示す目的のためになされるものである。
【0015】
次に、図を参照すると、図1は、例示的な従来技術の航空機10の斜視図を示すものであり、その航空機に対して、複合構造体102(図1を参照のこと)または金属構造体132(図3を参照のこと)など、構造体30のためのチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ110(図2を参照のこと)を製作するためのシステム100(図5を参照のこと)、方法200(図8を参照のこと)、または方法250(図9を参照のこと)の実施形態のうちの1つが使用可能である。本明細書に使用されるとき、用語「PZT」は、チタン酸ジルコン酸鉛(化学元素、鉛およびジルコニウムと、高温下で混合可能な化合物、チタン酸塩とから成る圧電性強誘電体セラミック材料)を意味する。PZTは、好ましい圧電特性を呈する。本明細書に使用されるとき、PZTに関する用語「圧電性」は、PZTは、変形すると、その両方の表面間に電圧または電位の差を発現させ(センサ用途に有利である)、または外部電界が印加されると、物理的に形を変える(アクチュエータ用途に有利である)ことを意味する。この印加の目的で、PZTに関する用語「強誘電体」は、PZTが電界の存在において反転可能な自発的電気分極または電気双極子を有することを意味する。
【0016】
航空機10は、胴体12、機首14、コックピット16、胴体12に動作可能に連結された翼18、1つまたは複数の推進ユニット20、垂直尾翼安定板22、および1つまたは複数の水平尾翼安定板24を備える。図1に示す航空機10は、民間旅客航空機を概略的に示しているが、本明細書に開示するシステム100、および方法200、方法250はまた、他のタイプの航空機にも用いることが可能である。より具体的には、開示される実施形態の教示は、他の旅客航空機、貨物航空機、軍事用航空機、回転翼機、および他のタイプの航空機もしくは航空宇宙車両、ならびに衛星、宇宙打ち上げ車両、ロケットなどの航空宇宙車両、および他のタイプの航空宇宙車両に適用可能である。また、本開示によるシステム、方法、および装置の実施形態が、舟艇および他の船舶、電車、自動車、トラック、バスなど、他の車両、および他のタイプの車両に利用可能であることも理解され得る。また、本開示によるシステム、方法、および装置の実施形態が、建築構造体、タービン翼、医療デバイス、電子作動機器、家庭用電子デバイス、振動機器、パッシブダンパおよびアクティブダンパ、または他の適切な構造体に利用可能であることも理解され得る。
【0017】
本開示の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するための方法100が提供される。図5は、本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110(図2をまた参照のこと)を製作するためのシステム100の実施形態のうちの1つのブロック図を示したものである。図5に示すように、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するためのシステム100は、製剤されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク104を備える。PZTナノ粒子インク104は、ナノ粒子PZTインクの粒子またはナノ粒子106を含む。ナノスケールのPZTインクナノ粒子は、あらかじめ結晶化されていることが好ましい。PZTナノ粒子インク104は、ナノスケールのPZT粒子サイズが約20ナノメートルから約1ミクロンの範囲であることが好ましい。このナノスケールのPZTインク粒子サイズにより、PZTナノ粒子インク104は、広範なインク堆積プロセス、装置、およびシステムを使用して堆積されることが可能になり、具体的には、PZTナノ粒子インク104は、噴霧堆積プロセス126(図6Aおよび図10を参照のこと)システム、および噴霧堆積装置146(図6Aおよび図10を参照のこと)を使用して堆積されることが可能になる。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを110は、厚さが約1ミクロンから約500ミクロンの範囲であってもよい。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110の厚さは、PZTナノ粒子のナノ粒子サイズの係数と、導電性電極114、118(図2を参照のこと)の厚さとの観点から測定可能である。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを110の厚さはまた、適正なアスペクト比がPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110の感受性を高める可能性があるので、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110のサイズによって左右される場合もある。
【0018】
PZTナノ粒子インク104は、基板101へのPZTナノ粒子インク104の接着を促進するゾルゲルベースの接着促進剤108(図5を参照のこと)をさらに含むことが可能である。あるいは、PZTナノ粒子インク104は、エポキシまたは他の適切なポリマベースの接着促進剤などのポリマベースの接着促進剤をさらに含むことが可能である。ナノスケールのPZTインクナノ粒子106をシリカゾルゲル中に懸濁し、次いで、直接描画印刷プロセス124などのインク堆積プロセス122を使用して堆積することが可能である。PZTナノ粒子インク製剤におけるシリカゾルゲルにより、PZTナノ粒子インク104は、ある種の既知の接着促進剤よりも多種多様な基板に接着することが可能になる。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、超音波伝播および電気機械インピーダンスに基づく様相を有することが好ましい。
【0019】
製剤されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク104は、2011年8月17日に出願された、代理人整理番号UWOTL−1−37259を有する「METHODS FOR FORMING LEAD ZIRCONATE TITANATE NANOPARTICLES」と題された同時出願の米国特許非仮出願第13/211,554号に開示される方法によって製剤され得る。
【0020】
具体的には、このような開示において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子を形成するための方法が提供される。PZTナノ粒子は、鉛源、チタン源、ジルコニウム源、および鉱化剤を含む前駆体溶液から形成され、以下の反応(「熱水プロセス」)により熱水プロセスを経る。
Pb2++xTiO +(1−x)ZrO+2OH⇔PbTiZr1−x+H
与えられた方法において、形成されたPZTナノ粒子の特性は、少なくとも鉱化剤濃度、処理時間、加熱速度、および冷却速度によって決定付けられる。
【0021】
一態様において、複数のPZTナノ粒子(本明細書では、「ナノ結晶」とも呼ぶ)を形成するための方法が提供される。一実施形態において、本方法は、(a)鉱化剤溶液、チタン源、ジルコニウム源、および鉛源を含む水性前駆体溶液を生成するステップ、および(b)前駆体溶液を加熱して、PZTナノ粒子を産生するステップを含み、前駆体溶液を加熱するステップは、順次ステップ、すなわち(i)前駆体溶液を第1の速度で第1の温度に加熱するステップであって、前記第1の速度が、約1℃/分(毎分セ氏温度)から約30℃/分の間であり、前記第1の温度が、約120℃から約350℃の間である、ステップと、(ii)第1の保持時間の間、第1の温度で保持するステップであって、前記第1の保持時間が約5分から約300分の間であるステップと、(iii)第2の速度で冷却して、最小寸法が約20nm(ナノメートル)から約1000nmの間である懸濁した複数のペロブスカイトPZTナノ粒子を含むナノ粒子PZT溶液を生成するステップであって、前記第2の速度が、約1℃/分から約30℃/分の間である、ステップとを少なくとも含む第1の加熱スケジュールを含む。
【0022】
前駆体溶液
前駆体溶液は、PZTナノ粒子を形成するために処理される反応物によって定められる。具体的には、前駆体溶液は、チタン源、ジルコニウム源、鉛源、および鉱化剤を少なくとも含む。前駆体溶液は、より詳細に後述するように、任意選択で追加の溶媒または安定剤を含む。
【0023】
前駆体溶液の成分はすべて、前駆体溶液の成分の性質、およびPZTナノ粒子を産生する熱水反応の前に前駆体の成分間の相互作用を最小限にする潜在的必要性に応じて、単一の反応槽の中で同時に混合されても、または段階的に混合されてもよい。例えば、チタン源と亜鉛源とを混合して、前駆体ゲルを形成することができ、次いで、前駆体ゲルを水性形態の鉛源および鉱化剤と混合して、前駆体溶液を生成する。このような手法は、反応物(すなわち、チタン源、ジルコニウム源、および鉛源)のそれぞれの相対モル量で最大制御を可能にする。
【0024】
鉛源、チタン源、およびジルコニウム源は、式PbZiTiを有するPZTナノ粒子を得るために十分なモル量の前駆体溶液中に存在し、ただし、xは、0.8から2の間であり、yは、0.4から0.6の間であり、y+zは1である。例えば、ペロブスカイトPZTナノ粒子の一般式は、Pb(Zr0.52Ti0.48)Oである。しかし、PZTナノ粒子の所望の特質を産生するために、鉛、ジルコニウム、およびチタンの相対量が与えられた範囲内で修正可能であることは当業者には理解されよう。
【0025】
前駆体溶液中のチタン源は、本明細書に提供される方法によりPZT粒子の形成を可能にする任意のチタン含有化合物であってもよい。一実施形態において、チタン源は、Ti[OCH(CHである。追加のチタン源は、TiO、TiO*nHO、Ti(OC)、Ti(NO、TiCl、TiClを含み得る。
【0026】
前駆体溶液中のジルコニウム源は、本明細書に提供される方法によりPZT粒子の形成を可能にする任意のジルコニウム含有化合物であってもよい。一実施形態において、ジルコニウム源は、Zr[O(CHCHである。追加のジルコニウム源は、Zr(NO*5HO、ZrOCl*8HO、ZrO*nHO、ZrOを含み得る。
【0027】
前駆体溶液中の鉛源は、本明細書に提供される方法によりPZT粒子の形成を可能にする任意の鉛含有化合物であってもよい。一実施形態において、鉛源は、Pb(CHCOOH)である。追加の鉛源は、Pb(NO、Pb(OH)、PbO、Pb、PbOを含み得る。
【0028】
特定の実施形態において、過剰鉛が前駆体溶液に加えられる。本明細書に使用されるとき、用語「過剰鉛」は、鉛源の比率量よりも高い比率量を指す。過剰鉛は、PZTナノ粒子の特質をさらに制御するための手段である。一般に、過剰鉛は、上述した同じ鉛源の過剰量を加えることによって、前駆体溶液中で達成される。例えば、鉛源が酢酸鉛三水和物である場合、酢酸鉛三水和物の比率が、ジルコニウム源およびチタン源に比較した比率よりも結果的に高くなる、前駆体溶液に加えられる酢酸鉛三水和物の任意の量が、ある過剰量の鉛と考えられることになる。特定の実施形態において、この過剰量の鉛は、第2の別の鉛源から得られる。
【0029】
過剰鉛は、PZTナノ粒子の化学組成を変化させるのではなく、熱水反応条件を修正して、形成されたPZTナノ粒子におけるいくつかの望ましい効果を産生する。過剰鉛は、PZTナノ粒子の基本的結晶構造を変化させずに、粒子間のモルホロジーを改良し、アモルファス副生成物を抑え、凝集度を抑える。
【0030】
過剰鉛のあまり望ましくない1つの副次的効果は、過剰鉛はまた、不純物である酸化鉛化合物の形成をもたらすということである。しかし、酸化鉛不純物は、形成されたPZTナノ粒子を適当な溶媒(例えば、希酢酸)で洗浄することによって取り除くことができる。
【0031】
前駆体溶液中の鉱化剤は、熱水プロセスの間、PZTの形成をし易くする。鉱化剤は、水酸化物イオン源として機能して、PZTの熱水合成をし易くする。代表的な鉱化剤には、KOH、NaOH、LiOH、NHOH、およびそれらの組合せが挙げられる。前駆体溶液の他の成分に加える前の鉱化剤溶液中の鉱化剤濃度は、鉱化剤がNaOHなどの液体である場合、約0.2Mから約15Mである。KOHなど、鉱化剤が固体である場合、まず、DI水がZr、Ti、Pbの混合物に加えられ、次いで、その固体鉱化剤が加えられる。最適な鉱化剤濃度は、当業者に知られているように、熱水プロセスの条件によって左右される。
【0032】
鉱化剤濃度は、産生されるPZTナノ粒子のサイズに影響を及ぼす。例えば、5Mおよび10MのKOHの鉱化剤を使用して形成された類似のPZTナノ粒子は、類似のモルホロジーを有するが、他の処理条件がすべて同じならば、5Mの鉱化剤は、10Mの鉱化剤で形成されるナノ粒子よりも小さいナノ粒子をもたらす。
【0033】
特定の実施形態において、熱水プロセスの前の前駆体の特定の成分のゲル化および/または沈殿を防ぐために、安定剤が前駆体に加えられる。すなわち、安定剤は、熱水プロセスの前の溶液中の前駆体の必要な成分すべての維持に必要であり得る。例えば、一実施形態において、反応前のゲル化および沈殿を防ぐように、アセチルアセトン(「AcAc」)がチタン源(例えば、チタンイソプロポキシド)に加えられて、PZTを形成する。別の実施形態において、プロポキシドがチタン源に加えられる。
【0034】
前駆体溶液は、一般に、水性であるが、前駆体溶液の成分を溶媒和でき、PZTナノ粒子の形成をし易くできる任意の他の溶媒もまた使用可能であることが理解されよう。水の代替物として、水溶液、水と有機溶媒との混合物、あるいは弱有機酸、例えば、エチレンジアミン、CHCl、アンモニウム塩、酢酸、または別の適切な代替物を含むことが可能である。
【0035】
例示的な実施形態において、前駆体溶液は、鉱化剤溶液としてKOH、チタン源としてチタンイソプロポキシド、ジルコニウム源としてジルコニウムn−プロポキシド、鉛源として酢酸鉛三水和物、安定剤としてアセチルアセトン、および水を含む。酢酸鉛三水和物、ジルコニウムn−プロポキシド、およびチタンイソプロポキシドは、酢酸鉛三水和物が約1パーツから約2パーツ、ジルコニウムn−プロポキシドが約0.5パーツから約1パーツ、およびチタンイソプロポキシドが約0.8パーツから約1.6パーツの重量比率で前駆体中に存在する。KOH鉱化剤溶液は、約0.2Mから約15Mである。
【0036】
加熱スケジュール
PZTナノ粒子は、前駆体溶液の熱水処理により形成される。熱水プロセスは、第1の温度への加熱ランプ、第1の温度での保持、および室温への冷却ランプを含む加熱スケジュールを含む。
【0037】
加熱スケジュールは、1atm(気圧)よりも高い圧力下で実行される。したがって、前駆体溶液は、加熱および加圧の両方をするように構成された装置内に含まれている。特定の実施形態において、加熱スケジュール中に印加される圧力は、約1atmから約20atmである。例示的な実施形態において、前駆体溶液は、オートクレーブ内に含まれており、自生圧力が加熱スケジュールの過程にわたってそのオートクレーブ内で高まる。あるいは、一定圧力が、ポンプ、または当業者に知られている他の装置によって供給可能である。
【0038】
一実施形態において、前駆体溶液を加熱して、PZTナノ粒子を産生するステップは、順次ステップ、すなわち(i)前駆体溶液を第1の速度で第1の温度に加熱するステップであって、前記第1の速度が、約1℃/分(毎分セ氏温度)から約30℃/分の間であり、前記第1の温度が、約120℃から約350℃の間である、ステップと、(ii)第1の保持時間の間、第1の温度で保持するステップであって、前記第1の保持時間が約5分から約300分の間である、ステップと、(iii)第2の速度で冷却して、最小寸法が約20nm(ナノメートル)から約1000nmの間である懸濁した複数のペロブスカイトPZTナノ粒子を含むナノ粒子PZT溶液を生成するステップであって、前記第2の速度が、約1℃/分から約30℃/分の間である、ステップとを少なくとも含む。
【0039】
加熱ランプ速度(「第1の速度」)は、前駆体溶液の温度をおよその室温(TRT)から最大熱水処理温度(Tmax)に上昇させるために使用される。第1の速度は、約1℃/分から約30℃/分の間である。
【0040】
処理温度(「第1の温度」、Tmax)は、約120℃(セ氏)から約350℃の間である。特定の実施形態において、第1の温度は、200℃以下である。加熱スケジュールは、溶液が加熱される単一の第1の温度を含んでいると本明細書に主として説明されているが、開示される方法は、第1の温度の変動を企図しており、第1の温度の変動は、熱水反応、または加熱機器における不正確さから生じ得ることが理解されよう。さらには、加熱スケジュールの加熱ステップは、第2の、第3の、またはさらなる温度を含んでいてもよく、加熱される前駆体溶液はその温度にさらされる。第2の、第3に、またはさらなる温度は、所望のPZTナノ粒子を産生するために必要に応じて、第1の温度より高くても、または低くてもよい。
【0041】
第1の速度は、産生されるPZTナノ粒子のサイズを制御するために特に重要である。この点で、前駆体溶液の温度がTRTからTmaxに熱くなるときに、PZT結晶が核形成を開始する中間温度Tnuc(「核形成ゾーン」)が存在する。最適なPZT結晶成長は、Tmaxで生じ、Tmaxより低い温度で核形成された結晶はいずれも、Tmaxで核形成されたPZT結晶よりも大きい凝集体および/または高い凝集度により、より大きく成長する可能性が高くなる。
【0042】
遅いランプ速度により、前駆体溶液は、TnucとTmaxの間に費やす時間がより長くなる。したがって、遅いランプ速度は、Tmaxに満たない温度でより多くのPZT結晶の核形成をもたらし、結果的に一貫しないPZT結晶サイズおよび結晶構造がもたらされる。本明細書に使用されるとき、用語「遅いランプ速度」は、1℃/分に満たないランプ速度を指す。
【0043】
逆に、比較的速いランプ速度は、前駆体溶液をTnucとTmaxの間の温度範囲に速やかに通すことによって、均一なPZT結晶の核形成をもたらす。本明細書に使用されるとき、用語「速いランプ速度」は、10℃/分以上のランプ速度を指す。特定の実施形態において、高ランプ速度は、20℃/分以上のランプ速度である。
【0044】
上述の核形成ダイナミクスの結果として、ランプ速度が高ければ高いほど、作り出されるPZT粒子はより小さい。加熱ランプ速度は、PZT結晶のサイズおよび数に影響を及ぼすが、結晶構造には影響を及ぼさない。同様に、冷却速度は、結晶構造に影響を及ぼさない。
【0045】
加熱スケジュールの「保持」ステップにより、PZT結晶が形成し、成長することが可能になる。保持ステップは、第1の温度において、約5分から約300分の間である。一般に、より長い保持時間は結果的に、より大きい結晶をもたらす。好ましくは、保持時間は、結晶が成長することを可能にするためである。保持時間があまりに短い場合、最終生成物は、PZT組成を含まない場合がある。
【0046】
保持ステップ後、加熱スケジュールは、「冷却」ステップへと進む。冷却速度は、温度を最大処理温度から室温へと「第2の速度」で下げる。冷却速度の範囲は、約1℃/分から約30℃/分である。冷却速度は、PZTナノ粒子のいくつかのアスペクトに影響を与える。冷却速度は、形成されたPZTナノ粒子のモルホロジーおよびサイズを部分的に決定する。比較的速い冷却速度、例えば、毎分20℃よりも大きい冷却速度は結果的に、100nmから500nmの範囲および明確な立方形のPZTナノ粒子をもたらす。
【0047】
さらに、比較的速い冷却速度は結果的に、化学的接合とは対照的に、物理的に接合されるPZTナノ粒子をもたらす。物理的に接合されたナノ粒子の分離は、(例えば、機械的撹拌によって)化学的に接合されたナノ粒子の分離よりも容易に達成されるので、物理的に接合されたPZTナノ粒子は、化学的に接合されたPZTナノ粒子よりも好ましい。最後に、より速い冷却速度は、最終的生成物におけるPbTiO相の存在を最小限に抑える。このことは、PbTiOが、純粋なPZTナノ粒子を得るために取り除かれなくてはならない不純物であるという理由だけでなく、PbTiOの形成がまた、PZT以外の形態の鉛およびチタンを消費することによるPZT形成の反応収率を抑えるという理由からも望ましい。
【0048】
特定の実施形態において、第2の速度は、PZTの非ペロブスカイト形態であるPZT粒子が形成されるには十分に大きい。この点で、特定の実施形態において、この方法は、PZTの非ペロブスカイト形態をなくすようにナノ粒子PZT溶液を処置するステップをさらに含む。このような処置は、化学的に補助された溶解、ウェットエッチング、酸洗浄、ベース洗浄、およびそれらの組合せを含んでもよい。非ペロブスカイトPZTを選択的になくす(例えば、溶解させる)任意の方法が使用可能である。例えば、希酢酸洗浄は、PZT熱水合成のPbTiO非ペロブスカイト成分をなくすために使用可能である。
【0049】
あるいは、非ペロブスカイトPZT粒子をなくす代わりに、特定の実施形態において、この方法は、ナノ粒子PZT溶液中のPZTの非ペロブスカイト形態からペロブスカイトPZTナノ粒子を分離するステップをさらに含む。最終懸濁液は、非ペロブスカイト形態を取り除くために、DI水、希酸、またはエタノールにより洗浄される。
【0050】
特定の実施形態において、第2の速度は、ナノ粒子PZT溶液が過飽和となるには十分に大きい。核形成および結晶成長は、溶液が過飽和になると可能になり、濃度が平衡に到達すると止まる。すべての温度に関して、溶液に対する平衡濃度反応が存在する。そのため、第2の速度が遅い場合、溶液は、何回も過飽和になる可能性があり、結晶は、より大きく成長する機会がより増える可能性がある。第2の速度が速い場合、最初の濃度が平衡をはるかに上回る可能性があり、高濃度は、結晶成長とともに生じる第2の核形成を促進し得る。濃度が高い場合、核形成の速度は高く、したがって、核形成および成長は両方とも急速である。そのため、二次的な核形成および成長により、安定した結晶が形成される可能性も、またはアモルファスが生成される可能性もほとんどなく、それらは除去可能である。
【0051】
最も小さく、最も高い品質のPZTナノ粒子を形成するための経路は、熱水処理に関して最短の可能な処理時間を使用して達成され、その熱水処理には、最も高い加熱ランプ速度と、最も速い冷却ランプ速度と、所要の処理時間は、鉱化剤濃度が変化した場合、異なることになるので「中間」の鉱化剤濃度とを使用することが含まれる。例えば、5Mの鉱化剤が使用される場合、処理時間は、一(1)時間ほどと短くてもよいが、2Mの鉱化剤の場合、所要の処理時間は三(3)時間である。鉱化剤濃度が0.4M以下の場合、PZTは、処理時間に関係なく形成されなくなる。
【0052】
冷却ステップ後、PZTナノ粒子溶液が得られる。PZTナノ粒子溶液は、水中に懸濁した複数のPZTナノ粒子を含有している。PZTナノ粒子溶液をフィルタにかけて、または別のやり方で操作して、PZTナノ粒子を分離することができる。熱水プロセスの効率性に応じて、溶液はまた、PbTiO、PbZrO、PbO、TiO、ZrO、KOH、または他の可能性のある不純物を含んでいてもよい。溶液を酢酸で洗浄することは、PbOを除去するための1つの方法である。過剰鉛サンプルは、酢酸で洗浄可能である。
【0053】
図5に示すように、システム100は、PZTナノ粒子インク104を基板101上に堆積させて、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成するインク堆積装置142(図6Aをまた参照のこと)をさらに備える。インク堆積装置142、およびインク堆積装置142を使用するインク堆積プロセス122には、基板101におけるPZT結晶166(図6Bを参照のこと)の成長は必要ない。PZT結晶166は、PZTナノ粒子において既に成長しているので、PZTナノ粒子インク104には、インク堆積プロセス122の間に一旦、堆積されると、高温焼結プロセスは必要ない。好ましくは、インク堆積装置142は、直接描画印刷装置144(図10を参照のこと)を備える。図10は、本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するために使用可能なインク堆積装置およびインク堆積プロセスの実施形態のブロック図を示したものである。図10に示すように、直接描画印刷装置144は、噴霧堆積装置146、インクジェット印刷装置147、エアロゾル印刷装置190、パルスレーザ蒸発装置192、フレキソ印刷装置194、マイクロスプレー印刷装置196、フラットベッド式シルクスクリーン印刷装置197、回転式シルクスクリーン印刷装置198、または別の適切なスクリーン印刷装置、グラビア印刷装置199、または別の適切なプレス印刷装置、あるいは別の適切な直接描画印刷装置を備えてもよい。
【0054】
PZTナノ粒子インク104は、インク堆積プロセス122によって、インク堆積装置142を用いて基板101上に堆積可能である(図6Aおよび図10を参照のこと)。好ましくは、インク堆積プロセス122は、直接描画印刷プロセス124を含む(図10を参照のこと)。図10に示すように、直接描画印刷プロセス124は、噴霧堆積プロセス126、インクジェット印刷プロセス128、エアロゾル印刷プロセス180、パルスレーザ蒸発プロセス182、フレキソ印刷プロセス184、マイクロスプレー印刷プロセス186、フラットベッド式シルクスクリーン印刷プロセス187、回転式シルクスクリーン印刷プロセス188、または別の適切なスクリーン印刷プロセス、グラビア印刷プロセス189、または別の適切なプレス印刷装置、あるいは別の適切な直接描画印刷プロセスを含んでもよい。
【0055】
図5に示すように、基板101は、湾曲していない、すなわち平面的な表面136を有しても、湾曲している、すなわち平面的でない表面138を有しても、または湾曲していない、すなわち平面的な表面136と、湾曲している、すなわち平面的でない表面138との組合せを有してもよい。図2に示すように、基板101は、第1の表面103aおよび第2の表面103bを有してもよい。好ましくは、基板101は、複合材料、金属材料、複合材料と金属材料との組合せ、または別の適切な材料を含む。図2に示すように、基板101は、複合構造体102を含むことが可能である。複合構造体102は、ポリマー複合材、繊維強化複合材料、繊維強化ポリマー、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス強化プラスチック(GRP)、熱可塑性複合材、熱硬化性複合材、エポキシ樹脂複合材、形状記憶ポリマー複合材、セラミックマトリックス複合材、または別の適切な複合材料などの複合材料を含むことが可能である。図3に示すように、基板101は、金属構造体132を含むことが可能である。金属構造体132は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、それらの合金、あるいは別の適切な金属、または金属合金などの金属材料を含むことが可能である。基板101はまた、別の適切な材料を含んでもよい。
【0056】
図6Aは、本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するためのインク堆積プロセス122およびインク堆積装置142の実施形態のうちの1つの概略図を示したものである。例示的な直接描画印刷プロセス124および直接描画印刷装置144を図6Aに示し、図6Aは、噴霧堆積プロセス126および噴霧堆積装置146を示している。図6Aに示すように、ナノスケールのPZTインクナノ粒子106は、インレット148を介して、溶媒152を含んでいる混合容器150内に移されることができる。好ましくは、ナノスケールのPZTインクナノ粒子106を混合容器内の溶媒152と混合して、PZTナノ粒子インク懸濁液154を形成する。PZTナノ粒子インク懸濁液154は超音波機構部158によって霧化されて、霧状PZTインクナノ粒子156を形成することできる。次いで、この霧状PZTインクナノ粒子156を、ノズル本体160の中を移動させ、ノズルチップ162から基板101に方向付けして、基板101上にPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を堆積し印刷することができる。
【0057】
図6Bは、PZT圧電ナノ粒子インクベースのセンサ110が基板101に堆積されている拡大図を示したものである。図6Bは、基板101上に堆積されて、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成しているノズル本体160およびノズルチップ162内の霧状PZTインクナノ粒子156を示している。図6Bに示すように、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサまたは複数のセンサ110は、文字、デザイン、ロゴ、もしくは記号、または円、正方形、長方形、三角形、もしくは他の幾何学的形状などの幾何学的形状、あるいは別の所望のカスタマイズされた形状など、カスタマイズされた形状164で基板101上に堆積可能である、インク堆積プロセス122およびインク堆積装置142には、基板101におけるPZT結晶166の成長は必要でない。さらに、堆積されたナノスケールのPZTインクナノ粒子106は、結晶状粒子構造体を含んでおり、その構造体には、結晶を成長させるいずれの後処理ステップは必要でない。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、構造体30の本体と、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110との間の1枚または複数枚の絶縁層、コーティング層、またはペイント層とともに構造体30の表面上に堆積可能である。
【0058】
図2および図3は、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ115の実施形態を示している。図2は、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ116の実施形態のうちの1つの断面図を示したものであり、この圧電センサアセンブリ116は、複合構造体102を備える基板101上に堆積される。堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ116は、アクチュエータ141(図4を参照のこと)として機能する電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を含む。好ましくは、電力/通信ワイヤアセンブリ140は、インク堆積装置142によって、およびインク堆積プロセス122によって基板101上に堆積可能な導電性インク168(図4を参照のこと)で形成される。アクチュエータ141(図4を参照のこと)として機能する電力/通信ワイヤアセンブリ140は、第1の導電性電極114、第2の導電性電極118、第1の導電性配線ワイヤ112a、および第2の導電性配線ワイヤ112bを備えることが可能である。第1の導電性電極114、第2の導電性電極118、第1の導電性配線ワイヤ112a、および第2の導電性配線ワイヤ112bは、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110に隣接していてもよい。
【0059】
図3は、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ130の実施形態の別の実施形態の断面図を示したものであり、この圧電センサアセンブリ130は、金属構造体132を含む基板101上に堆積される。堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ130は、アクチュエータ141(図4を参照のこと)として機能する電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を備える。好ましくは、電力/通信ワイヤアセンブリ140は、インク堆積装置142によって、およびインク堆積プロセス122によって、基板101上に堆積可能な導電性インク168(図4を参照のこと)で形成される。アクチュエータ141として機能する電力/通信ワイヤアセンブリ140は、第1の導電性電極114、第2の導電性電極118、第1の導電性配線ワイヤ112a、および第2の導電性配線ワイヤ112bを含むことが可能である。第1の導電性電極114、第2の導電性電極118、第1の導電性配線ワイヤ112a、および第2の導電性配線ワイヤ112bは、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110に隣接していてもよい。図3に示すように、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ130は、金属構造体132を備える基板101と、電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110との間に堆積された絶縁層134をさらに備える。絶縁層134は、絶縁ポリマーコーティング、誘電体材料、セラミック材料、ポリマー材料、または別の適切な絶縁材料を含んでもよい。
【0060】
図4は、複合構造体102に堆積された、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ115の上面斜視図を示したものである。図4は、複数の電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続された複数のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を示しており、そのすべてが複合構造体102に堆積されている。同様に、金属構造体132の場合、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ130は、複数の電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続された複数のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を含むことが可能であり、そのすべてが金属構造体132に堆積されている。
【0061】
基板101または構造体30(図7を参照のこと)におけるPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110の堆積は、構造ヘルスモニタリングなどの用途のためにPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110をin situで取り付けることを可能にする。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、高密度構造ヘルスモニタリングシステム170の主な実現要素であり得る。図7は、本開示のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を使用する構造ヘルスモニタリングシステム170の実施形態のうちの1つのブロック図を示したものである。2つ以上のナノ粒子インクベースの圧電センサ110が、複合構造体102(図1を参照のこと)、または金属構造体132(図3を参照のこと)などの構造体30、あるいは別の適切な構造体の構造ヘルス172を監視し、構造ヘルスデータ174を提供するための構造ヘルスモニタリングシステム170をイネーブルするために使用可能である。構造ヘルスデータ174は、剥離、弱い接合、歪みレベル、湿気侵入、材料変化、亀裂、空隙、層間剥離、有孔性、もしくは他の適切な構造ヘルスデータ174、または電気機械的特性、あるいは構造体30の性能に悪影響を及ぼす可能性がある他の不規則性を含むことが可能である。
【0062】
好ましくは、構造ヘルスモニタリングシステム170は、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ115(図2および図3をまた参照のこと)を備える。堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ115は、複合構造体102とともに使用される場合、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ116(図2を参照のこと)を備えることが可能であり、金属構造体132とともに使用される場合、堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ130(図3を参照のこと)を備えることが可能である。構造ヘルスモニタリングシステム170は、構造ヘルスモニタリングシステム170において使用する前に、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110をポーリングするために使用可能な電圧供給源176をさらに備えることが可能である。本明細書に使用されるとき、用語「ポーリング」は、強電場が、双極子またはドメインを配向あるいは位置合わせするために、通常は昇温で、材料全体にわたって印加されることによるプロセスを意味する。電圧供給源176はまた、いくつかのPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を駆動することが可能であり、それにより、圧電センサ110は、質問信号を他の圧電センサ110に送信するアクチュエータ141になる。
【0063】
図7に示すように、構造ヘルスモニタリングシステム170は、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110に電力を供給する電力源178をさらに備える。電力源178は、電池、電圧、RFID(無線自動識別)、磁気誘導送信部、または別の適切な電力源を備えることが可能である。電力源178は無線であってもよい。図7に示すように、システム170は、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110から構造ヘルスデータ174を取り込み、処理するデジタルデータ通信ネットワーク179をさらに備えることが可能である。デジタルデータ通信ネットワーク179は、無線であってもよい。デジタルデータ通信ネットワーク179は、例えば受信機(図示せず)などを用いて、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110から受け取ったデータを取り込むことが可能であり、例えばコンピュータプロセッサ(図示せず)などを用いて、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110から受け取ったデータを処理することが可能である。デジタルデータ通信ネットワーク179は、無線であってもよい。
【0064】
本開示の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作する方法200が提供される。図8は、本開示の方法200の実施形態の流れ図を示したものである。方法200は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク104を製剤するステップ202を含む。PZTナノ粒子インク104は、ナノスケールのPZTインクナノ粒子106を含む。上述したように、好ましくは、PZTナノ粒子インク104は、約20ナノメートルから約1ミクロンの範囲のナノスケールのPZT粒子サイズを有する。PZTナノ粒子インク104は、基板101にPZTナノ粒子インク104の接着を促進するゾルゲルベースの接着促進剤108(図5を参照のこと)を含むことが可能である。PZTナノ粒子インク104は、詳細に上述したプロセスによって製剤される。
【0065】
方法200は、インク堆積プロセス122によって、PZTナノ粒子インク104を基板101上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成するステップ204をさらに含む。好ましくは、インク堆積プロセス122は、直接描画印刷プロセス124(図10を参照のこと)を含む。図10に示すように、直接描画印刷プロセス124は、噴霧堆積プロセス126、インクジェット印刷プロセス128、エアロゾル印刷プロセス180、パルスレーザ蒸発プロセス182、フレキソ印刷プロセス184、マイクロスプレー印刷プロセス186、フラットベッド式シルクスクリーン印刷プロセス187、回転式シルクスクリーン印刷プロセス188、または別の適切なスクリーン印刷プロセス、グラビア印刷プロセス189、または別の適切なプレス印刷、あるいは別の適切な直接描画印刷プロセスを含んでもよい。
【0066】
好ましくは、基板101は、複合材料、金属材料、複合材料と金属材料との組合せ、または別の適切な材料を含む。好ましくは、基板101は、第1の表面103a、および第2の表面103bを含む。基板101は、湾曲していない、すなわち平面的な表面136(図5を参照のこと)を有しても、湾曲している、すなわち平面的でない表面138(図5を参照のこと)を有しても、または湾曲していない、すなわち平面的な表面136(図5を参照のこと)と、湾曲している、すなわち平面的でない表面138(図5を参照のこと)との組合せを有してもよい。インク堆積プロセス122には、基板101におけるPZT結晶166の成長は必要でない。さらに、堆積されたナノスケールのPZTインクナノ粒子106は、結晶状粒子構造体を含んでおり、その構造体には、結晶を成長させるいずれの後処理ステップも必要でない。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、カスタマイズされた形状164(図6Bを参照のこと)で基板101上に堆積可能である。
【0067】
PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、構造体30の構造ヘルス172を監視する構造ヘルスモニタリングシステム170において使用される前に、電圧供給源176(図7を参照のこと)を用いてポーリングプロセスを経ることが可能である。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、構造ヘルスモニタリングシステム170において使用される前に、インク堆積プロセス122によって、基板上101に堆積された導電性インク168から形成された電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続可能である。2つ以上のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110が、構造ヘルスモニタリングシステム170をイネーブルするために使用可能である。
【0068】
本開示の別の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作する方法250が提供される。図9は、本開示の方法250の別の実施形態の流れ図を示したものである。方法250は、あらかじめ結晶化されるナノスケールのPZTインクナノ粒子106を含むチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク104を製剤するステップ252を含む。
【0069】
方法250は、ゾルゲルベースの接着促進剤108中にPZTナノ粒子インク104を懸濁するステップ254をさらに含む。方法250は、直接描画印刷プロセス124によって、基板上101上にPZTナノ粒子インク104を堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成するステップ256をさらに含む。図10に示すように、直接描画印刷プロセス124は、噴霧堆積プロセス126、インクジェット印刷プロセス128、エアロゾル印刷プロセス180、パルスレーザ蒸発プロセス182、フレキソ印刷プロセス184、マイクロスプレー印刷プロセス186、フラットベッド式シルクスクリーン印刷プロセス187、回転式シルクスクリーン印刷プロセス188、または別の適切なスクリーン印刷プロセス、グラビア印刷プロセス189、または別の適切なプレス印刷、あるいは別の適切な直接描画印刷プロセスを含んでもよい。
【0070】
好ましくは、基板101は、複合材料、金属材料、複合材料と金属材料との組合せ、または別の適切な材料を含む。好ましくは、基板101は、第1の表面103a、および第2の表面103bを含む。基板101は、湾曲していない、すなわち平面的な表面136(図5を参照のこと)を有しても、湾曲している、すなわち平面的でない表面138(図5を参照のこと)を有しても、または湾曲していない、すなわち平面的な表面136(図5を参照のこと)と、湾曲している、すなわち平面的でない表面138(図5を参照のこと)との組合せを有してもよい。インク堆積プロセス122には、基板101におけるPZT結晶166の成長は必要でない。さらに、堆積されたナノスケールのPZTインクナノ粒子106は、結晶状粒子構造体を含んでおり、その構造体には、結晶を成長させるいずれの後処理ステップも必要でない。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、カスタマイズされた形状164(図6Bを参照のこと)で基板101上に堆積可能である。
【0071】
PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、構造体30の構造ヘルス172を監視する構造ヘルスモニタリングシステム170において使用される前に、電圧供給源176を用いてポーリングプロセスを経ることが可能である。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、構造ヘルスモニタリングシステム170において使用される前に、インク堆積プロセス122によって、基板上101に堆積された導電性インク168から形成された電力/通信ワイヤアセンブリ140に接続可能である。2つ以上のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110が、構造ヘルスモニタリングシステム170をイネーブルするために使用可能である。
【0072】
構造体30は、航空機、宇宙船、航空宇宙車両、宇宙打ち上げ車両、ロケット、衛星、回転翼機、船舶、舟艇、電車、自動車、トラック、バス、建築構造体、タービン翼、医療デバイス、電子作動機器、家庭用電子デバイス、振動機器、パッシブダンパおよびアクティブダンパ、または別の適切な構造体を含むことが可能である。システム100、および方法200、方法250は、例えば、風力発電(タービン翼のヘルスモニタリング)、航空宇宙用途、軍事用途、医療用途、電子作動機器、家庭用電子製品、あるいは構造体または材料がモニタリングシステムを必要とする任意の用途を含む多くの産業にわたって使用可能である。
【0073】
PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するための本明細書に開示されるシステム100、および方法200、方法250の実施形態は、複合構造体および金属構造体のための超音波損傷検出、亀裂伝播検出センサ、圧力センサ、または別の適切なセンサを含む様々な用途に使用可能なPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を提供する。例えば、システム100、および方法200、方法250のPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、ドア周辺の損傷検出などの航空機における様々な部品、軍事用航空機の亀裂成長検出などの軍事用プラットフォーム、および低温保存タンクヘルスモニタリングなどの宇宙システムの完全循環型のヘルスモニタリングを可能にする。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、以前は利用できなかったデータを供給することが可能であり、そのことはコストを抑え得る新規の設計および効率的な設計に影響をもたらす可能性がある。
【0074】
製剤されたPZTナノ粒子インク104とともに、直接描画印刷プロセス124、および例えば、噴霧堆積プロセス126を使用すると、多くのPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110が、基板101上に、または構造体30上に、および既知の圧電センサと比較して抑えられたコストで堆積されることが可能になる。本明細書に開示されるシステム100、および方法200、方法250の実施形態は、既知の圧電センサではともに困難であり得る構造体の多くのエリアでかつ大量に、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110の配置を可能にするPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を提供する。
【0075】
さらに、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するための本明細書に開示されるシステム100、および方法200、方法250の実施形態は、既知のセンサに有利であるPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を提供し、その理由は、圧電センサ110には、圧電センサ110を構造体に接合するための接着剤は必要でなく、これにより、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110が構造体から剥離し得る可能性が減少するからである。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するための本明細書に開示されるシステム100、および方法200、方法250の実施形態は、好ましい圧電特性を有するナノスケールのPZTインクナノ粒子106の利用可能性によってイネーブルされ、接着剤を使用せずに使用するための所望の構成で、基板または構造体上に堆積されるPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を提供する。PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110と、基板または構造体との間の接着剤なしに基板または構造体上に堆積可能であるので、質問を受ける信号の構造体への接続の向上が達成可能である。さらに、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するための本明細書に開示されるシステム100、および方法200、方法250の実施形態は、基板または構造体において手作業の配置または取付けを必要とせず、かつすべての所望の電力/通信ワイヤアセンブリとともに、基板もしくは構造体上に堆積または印刷可能なPZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を提供し、したがって、労力および取付けコストが抑えられるとともに、構造体の複雑さおよび重量が抑えられる。さらには、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、噴霧堆積プロセス126を含む多くの直接描画印刷プロセスから製作可能であり;あらかじめ結晶化されているナノ粒子サイズの粒子から製作可能であり、結晶化されていない既知のセンサよりも効率的であり得;高温焼結/結晶化プロセスが必要でなく、したがって、感温基板または構造体に対する起こり得る損傷を抑え、あるいはなくし;湾曲している、すなわち非平面の基板または構造体上に堆積可能であり;物理的幾何学的制限を全く含まない、または最小限含み、したがって、検知容量不足または作動応答不足の可能性を抑える。最後に、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するための本明細書に開示されるシステム100、および方法200、方法250の実施形態は、このような劣化または脆弱性が実際に進行する前に構造体の劣化または脆弱性を予測するために使用可能であり、したがって、構造体または構造的構成部品の信頼性を向上させることが可能であり、構造体または構造的構成部品の寿命にわたる製造および保守の全体的コストを抑えることが可能であり;任意の測定ツールを挿入するために、構造体を分解または除去する、あるいは構造体の中に穴を開ける必要なく、構造体の完全性、ヘルス、および適合性を予測し、監視し、診断する能力を有する、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を提供する。
【0076】
上述の実施形態において、チタン酸ジルコン酸(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作する方法が開示され、チタン酸ジルコン酸鉛PZTナノ粒子インク104を製剤するステップと、インク堆積プロセス122によって、PZTナノ粒子インク104を基板101上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成するステップとを含む。一例において、PZTナノ粒子インク104は、ナノスケールのPZT粒子106を含む。一変形形態において、PZTナノ粒子インク104は、基板101へのPZTナノ粒子インク104の接着を促進するゾルゲルベースの接着促進剤を含む。インク堆積プロセス122には、基板101におけるPZT結晶成長は必要でない。別の変形形態において、インク堆積プロセス122は、噴霧堆積プロセス126、インクジェット印刷プロセス128、エアロゾル印刷プロセス180、パルスレーザ蒸発プロセス182、フレキソ印刷プロセス184、マイクロスプレー印刷プロセス186、フラットベッド式シルクスクリーン印刷プロセス187、回転式シルクスクリーン印刷プロセス188、およびグラビア印刷プロセス189を含むグループから選択される直接描画印刷プロセス124を含む。一変形形態において、基板101は、複合材料、金属材料、および複合材料と金属材料との組合せを含むグループから選択される材料を含む。一代替形態において、基板101は、湾曲している表面138を有する。さらに別の実施形態において、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、カスタマイズされた形状で基板101上に堆積される。
【0077】
上述の実施形態により、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ110を製作するシステムが開示され、このシステムは、製剤されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク104と、PZTナノ粒子インク104を基板101上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110を形成するインク堆積装置142とを含む。一例において、PZTナノ粒子インク104は、ナノスケールのPZT粒子106を含む。一変形形態において、PZTナノ粒子インク104は、基板101の表面へのPZTナノ粒子インク104の接着を促進するゾルゲルベースの接着促進剤108を含む。さらに別の変形形態において、インク堆積装置142には、基板101の表面におけるPZT結晶成長は必要でない。
【0078】
一代替形態において、インク堆積装置142は、噴霧堆積装置146、インクジェット印刷装置147、エアロゾル印刷装置190、パルスレーザ蒸発装置192、フレキソ印刷装置194、マイクロスプレー印刷装置196、フラットベッド式シルクスクリーン印刷装置197、回転式シルクスクリーン印刷装置198、およびグラビア印刷装置199を備えるグループから選択される直接描画印刷装置144を含む。別の代替形態において、基板101は、複合材料、金属材料、および複合材料と金属材料との組合せを含むグループから選択された材料を含む。別の変形形態において、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ110は、カスタマイズされた形状で基板101上に堆積される。
【0079】
さらに別の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサを製作する方法が開示される。この方法において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクは、あらかじめ結晶化されたPZTナノ粒子を含んで製剤される。さらには、PZTナノ粒子インクは、ゾルゲルベースの接着促進剤中に懸濁され、PZTナノ粒子インクは、直接描画印刷プロセスによって、基板上に堆積されて、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを形成する。一変形形態において、PZTナノ粒子インクは、ナノスケールのPZT粒子を含む。別の変形形態において、直接描画印刷プロセスには、基板におけるPZT結晶成長は必要でない。
【0080】
さらに別の実施形態において、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサを製作するためのシステムが開示される。このシステムは、製剤されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクと、PZTナノ粒子インクを基板上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサを形成するインク堆積装置とを含む。一変形形態において、基板は、湾曲している。一変形形態において、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサは、カスタマイズされた形状で基板上に堆積される。
【0081】
本開示の多くの修正形態および他の実施形態が、当業者には思い付くであろう。これらに対して本開示は前述の説明および添付の図面に提示された教示の便益を有することに関係している。本明細書に説明された実施形態は、例示的であることを意味しており、限定的または包括的であると意図するものではない。特定の用語が本明細書に用いられているが、それらは、単に一般的なおよび記述的な意味で使用されており、限定することを目的とするためのものではない。
【符号の説明】
【0082】
10 航空機
12 胴体
14 機首
16 コックピット
18 翼
20 推進装置
22 垂直尾翼安定板
24 水平尾翼安定板
30 構造体
100 システム
101 基板
102 複合構造体
103a 表面
103b 表面
104 PZTナノ粒子インク
106 PZTインクナノ粒子
108 接着促進剤
110 PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ
112a 導電性配線ワイヤ
112b 導電性配線ワイヤ
114 導電性電極
115 堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ
116 堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ
118 導電性電極
122 インク堆積プロセス
124 直接描画印刷プロセス
126 噴霧堆積プロセス
128 インクジェット印刷プロセス
130 堆積されたPZTナノ粒子インクベースの圧電センサアセンブリ
132 金属構造体
134 絶縁層
136 湾曲していない、すなわち平面的な表面
138 湾曲している、すなわち平面的でない表面
141 アクチュエータ
140 電力/通信ワイヤアセンブリ
142 インク堆積装置
144 直接描画印刷装置
146 噴霧堆積装置
147 インクジェット印刷装置
148 インレット
150 混合容器
152 溶媒
154 PZTナノ粒子インク懸濁液
156 霧状PZTインクナノ粒子
158 超音波機構部
160 ノズル本体
162 ノズルチップ
164 カスタマイズされた形状
166 PZT結晶
168 導電性インク
170 構造ヘルスモニタリングシステム
172 構造ヘルス
174 構造ヘルスデータ
176 電圧供給源
178 電力源
179 デジタルデータ通信ネットワーク
180 エアロゾル印刷プロセス
182 パルスレーザ蒸発プロセス
184 フレキソ印刷プロセス
186 マイクロスプレー印刷プロセス
187 フラットベッド式シルクスクリーン印刷プロセス
188 回転式シルクスクリーン印刷プロセス
189 グラビア印刷プロセス
190 エアロゾル印刷装置
192 パルスレーザ蒸発装置
194 フレキソ印刷装置
196 マイクロスプレー印刷装置
197 フラットベッド式シルクスクリーン印刷装置
198 回転式シルクスクリーン印刷装置
199 グラビア印刷装置
200 方法
250 方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ(110)を製作する方法であって、
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク(104)を製剤するステップと、
インク堆積プロセス(122)によって、前記PZTナノ粒子インク(104)を基板(101)上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ(110)を形成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記PZTナノ粒子インク(104)がナノスケールのPZT粒子(106)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PZTナノ粒子インク(104)が、前記基板(101)への前記PZTナノ粒子インク(104)の接着を促進するゾルゲルベースの接着促進剤を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インク堆積プロセス(122)には、前記基板(101)におけるPZT結晶成長は必要でない、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インク堆積プロセス(122)が、噴霧堆積プロセス(126)、インクジェット印刷プロセス(128)、エアロゾル印刷プロセス(180)、パルスレーザ蒸発プロセス(182)、フレキソ印刷プロセス(184)、マイクロスプレー印刷プロセス(186)、フラットベッド式シルクスクリーン印刷プロセス(187)、回転式シルクスクリーン印刷プロセス(188)、およびグラビア印刷プロセス(189)を含むグループから選択される直接描画印刷プロセス(124)を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インクベースの圧電センサ(110)を製作するためのシステムであって、
製剤されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)ナノ粒子インク(104)と、
前記PZTナノ粒子インク(104)を基板(101)上に堆積して、PZTナノ粒子インクベースの圧電センサ(110)を形成するインク堆積装置(142)と
を備えるシステム。
【請求項7】
前記PZTナノ粒子インク(104)がナノスケールのPZT粒子(106)を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記PZTナノ粒子インク(104)が前記基板(101)の表面への前記PZTナノ粒子インク(104)の接着を促進するゾルゲルベースの接着促進剤(108)を含む、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記インク堆積装置(142)には、前記基板(101)の表面におけるPZT結晶成長は必要でない、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項10】
前記インク堆積装置(142)が、噴霧堆積装置(146)、インクジェット印刷装置(147)、エアロゾル印刷装置(190)、パルスレーザ蒸発装置(192)、フレキソ印刷装置(194)、マイクロスプレー印刷装置(196)、フラットベッド式シルクスクリーン印刷装置(197)、回転式シルクスクリーン印刷装置(198)、およびグラビア印刷装置(199)を含むグループから選択される直接描画印刷装置(144)を備える、請求項6ないし9のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−48233(P2013−48233A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−174413(P2012−174413)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【出願人】(512205245)ユニバーシティ オブ ワシントン スルー イッツ センター フォー コマーシャリゼーション (1)
【Fターム(参考)】