説明

RAD9と選択的に相互作用する化合物をスクリーニングするための方法

ラクトン構造を有する式Ia〜Ieの天然及び合成化合物、特にSecurolideは、hrad9遺伝子、及び/又はそれによってコードされるタンパク質、又は該タンパク質を含む複合体、及び/又はp53遺伝子、及び/又はタンパク質を標的にする有効な抗腫瘍化合物であることが決定された。Securolideは、Rad9変異体酵母株において実施された試験に基づいて、hRad9変異体に対して細胞選択的である。Securolideは、癌細胞中の変異体hRad9と相互作用して、アポトーシスをもたらすDNA損傷を生ずるようである。試験は、Securolideが、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌及びリンパの癌などの増殖障害を治療し、癌に付随する疼痛を軽減するのに有用であることを実証した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、抗癌化合物のための標的、およびそれらをスクリーニングする方法の分野にある。
【0002】
関連出願への相互参照
この出願は、2008年10月24日に出願されたDavid Terreroによる「Method for Screening for Compounds Selectively Interacting with RAD9」のU.S.S.N.第61/108,224号への優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
多数の化合物が癌処置用に公知である。大部分は、DNA複製又は細胞増殖の阻害によって作用し、一般に、形質転換細胞に特異的ではない。特異性は、標的化するリガンドの使用、及び腫瘍細胞上の特定の受容体への結合によって付与されるが、一般に、大部分の抗腫瘍化合物は、複製のより遅い正常細胞に比べて、むしろより急速に増殖する腫瘍細胞を死滅させることによって有効である。
【0004】
正常細胞ではなく腫瘍細胞に細胞傷害性であるより選択的な化合物を有することが極めて望ましいであろう。
【0005】
したがって、本発明の一目的は、選択的抗腫瘍活性を示す化合物を同定するための方法を提供することである。
【0006】
本発明の更なる一目的は、ヒトにおけるhRad9遺伝子のターゲティングによって抗腫瘍活性を示す新しいクラスの化合物を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ラクトン構造を有する式Ia〜Ieの天然及び合成化合物又はその代謝産物、特にSecurolideは、hrad9遺伝子、及び/又はそれによってコードされるタンパク質、又は該タンパク質を含む複合体、及び/又はp53遺伝子、及び/又はそれによってコードされるタンパク質を標的にする極めて有効な抗腫瘍性化合物であることが決定された。Securolideは、Rad9変異体酵母株において実施された試験に基づいて、hRad9変異体に対して細胞選択的である。Securolideは、癌細胞中の変異体hRad9と相互作用して、アポトーシスをもたらすDNA損傷を生ずるようである。試験によれば、Securolideは、黒色腫、白血病、乳癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、食道癌、肝臓癌及びリンパの癌(lymphatic cancer)などの増殖障害を治療し、癌に付随する疼痛を軽減するのに有用である。癌及び場合によってはそれに付随する疼痛の治療に有効な別の化合物も、Securolideの作用機序を実証するのに使用されたものと同じアッセイを使用して、例えば、Rad9欠損変異体酵母を使用したアッセイにおける有効性のスクリーニングによって、同定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本明細書では「アルキル」とは、直鎖アルキル基、直鎖アルケニル基又は直鎖アルキニル基、分枝鎖アルキル基、分枝鎖アルケニル基又は分枝鎖アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はシクロアルキニル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、アルキル置換シクロアルケニル又はアルキル置換シクロアルキニル基、及びシクロアルキル置換アルキル基、シクロアルキル置換アルケニル基又はシクロアルキル置換アルキニル基を含めて、飽和又は不飽和脂肪族基のラジカルを指す。別段の記載がない限り、直鎖又は分枝鎖アルキルは、その骨格に30個以下(例えば、直鎖の場合C1〜C30、分枝鎖の場合C3〜C30)、好ましくは20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは6個以下、最も好ましくは5個以下の炭素原子を有する。アルキルが不飽和である場合、アルキル鎖は、一般に、鎖中に2〜30個の炭素、好ましくは鎖中に2〜20個の炭素、好ましくは鎖中に2〜10個の炭素、より好ましくは2〜6個の炭素、最も好ましくは2〜5個の炭素を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造中に3〜20個の炭素原子、好ましくはその環構造中に3〜10個の炭素原子、最も好ましくはその環構造中に5、6又は7個の炭素を有する。飽和炭化水素ラジカルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、並びに例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体及び異性体が挙げられるが、それだけに限定されない。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−及び3−プロピニル、並びに3−ブチニルが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0009】
「アルキル」という用語は、ヘテロアルキルと同様に、炭化水素ラジカルの1個以上の炭素原子における1個以上の置換を含む。適切な置換基としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素などのハロゲン;ヒドロキシル;−NR(式中、R及びRは独立に水素、アルキル又はアリールであり、窒素原子は場合によっては四級化されている。);−SR(式中、Rは水素、アルキル又はアリールである。);−CN;−NO;−COOH;カルボキシラート;−COR、−COOR又は−CONR(式中、Rは水素、アルキル又はアリールである。);アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホナート、ホスフィナート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族(heteroaromatic)部分、−−CF3;−CN;−NCOCOCHCH;−NCOCOCHCH;−NCS;及びその組合せが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0010】
本明細書では「アリール」とは、C〜C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族(biaromatic)、又は二複素環式(bihetereocyclic)環構造を指す。広義には、本明細書では「アリール」としては、ゼロから4個のヘテロ原子を含み得る5、6、7、8、9及び10員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどが挙げられる。ヘテロ原子を環構造中に有するアリール基は、「アリール複素環」又は「複素環式芳香族」と称することもできる。芳香環は、1個以上の環位置において、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(又は四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−−CF3、−−CN、及びその組合せを含めて、ただしそれだけに限定されない、1個以上の置換基で置換することができる。
【0011】
「アリール」という用語は、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通である2個以上の環式環(すなわち「縮合環」)を有する多環式環構造であって、その環の少なくとも1個が芳香族であり、例えば、その他の環式環(単数又は複数)がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又は複素環であり得る、多環式環構造も含む。複素環の例としては、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル(isatinoyl)、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル(phenoxathinyl)、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル及びキサンテニルが挙げられるが、それだけに限定されない。環の1個以上は、上記「アリール」で規定されたように置換することができる。
【0012】
「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、長さ及び可能な置換が上記アルキルに類似しているが、少なくとも1個の二重又は三重結合をそれぞれ含む、不飽和脂肪族基を指す。
【0013】
本明細書では「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む、直鎖、分枝鎖若しくは環式炭素含有ラジカル、又はその組合せを指す。適切なヘテロ原子としては、O、N、Si、P及びSが挙げられるが、それだけに限定されない。ここで、窒素、リン及び硫黄原子は場合によっては酸化され、窒素ヘテロ原子は場合によっては四級化されている。ヘテロアルキルは、上記アルキル基で規定されたように置換することができる。
【0014】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」は、分子の残部にそれぞれ酸素原子、アミノ基又は硫黄原子を介して結合したアルキル基を指すのに使用される。
【0015】
本明細書では「アルキルアリール」は、アリール基(例えば、芳香族又は複素環式芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
【0016】
本明細書では「複素環」又は「複素環式」とは、炭素と非過酸化物の(non−peroxide)酸素、硫黄及びN(Y)(式中、Yは存在しないか、H、O、(C1〜10)アルキル、フェニル又はベンジルである。)からなる群から各々選択される1から4個のヘテロ原子とからなり、1〜3個の二重結合を場合によっては含み、1個以上の置換基で場合によっては置換された、3〜10個の環原子、好ましくは5〜6個の環原子を含む単環式又は二環式環の環炭素又は窒素を介して結合した環式ラジカルを指す。複素環の例としては、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル及びキサンテニルが挙げられるが、それだけに限定されない。複素環式基は、場合によっては、上記アルキル及びアリールで定義された1個以上の置換基で置換することができる。
【0017】
本明細書では「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0018】
作用機序
細胞周期チェックポイントは、細胞周期事象の正確な順序を調節し、したがって娘細胞へのゲノムの完全なコピーの分配を確実にする(Hartwell,L.&Weinert,T.,Science246,629−634,1989)。チェックポイントの欠陥は、癌発生の主な寄与要因であるゲノム不安定性を生じる。というのは、チェックポイントに欠陥のある細胞は、損傷を受けた又は不完全に複製されたDNAを有する有糸分裂に進むからである(Hartwell,L.H.&Kastan,M.B.,Science266,1821−1828,1995;Nojima,H.Hum.Cell10,221−230,1997)。
【0019】
酵母Saccharomyces cerevisiae及びSchizosaccharomyces pombeにおける分子及び遺伝的試験は、DNA損傷及び/又は不完全なDNA複製に応じた細胞周期停止を確実にするS−G2/Mチェックポイントに必要な複雑な遺伝子ネットワークを明らかにした(Weinert,T.,Curr.Opin.Genet.Dev.8,185−193,1998)。分裂酵母においては、6種類の非必須チェックポイントradタンパク質のグループ、Hus1、Rad1、Rad3、Rad9、Rad17及びRad26が、分裂酵母チェックポイントカスケードの知覚機構を構成する(Humphrey,T.,Mutat.Res.451,211−226,2000)。これらのタンパク質は、ヒドロキシ尿素のような化合物によるDNA合成阻害、又はUV及びガンマ線によって生じたDNA損傷に応じた細胞周期停止に必要である(Humphrey,T.,Mutat.Res.451,211−226,2000)。これらのタンパク質は進化の間に高度に保存され、関連タンパク質が、ヒトを含めて多数の他の真核生物において見いだされた(Venclovas,C.&Thelen,M.P.Nucleic Acids Res.28,2481−2493,2000)。これらのチェックポイントradタンパク質のヒト類似体は、hHus1、hRad1、hRad3、hRad9及びhRad17と称される。Rad26は、ヒトにおけるホモログを持たない。
【0020】
hRad9は、9−1−1複合体と呼ばれる安定な複合体中のhRad1及びhHus1と相互作用する(Burtelow et al.,J.Biol.Chem.,276,25903−25909,2001)。9−1−1複合体の各メンバーと複製処理能力因子(replication processivity factor)の増殖細胞核抗原(PCNA)との構造上の相同性は、9−1−1複合体が、複製に関連したPCNAに依存した機能をDNA修復中に置換するという仮説をもたらした(Caspari et al.,Mol.Cell.Biol.,20,1254−1262,2000)。DNA複製中、PCNAホモ三量体は、環状の移動するクランプをDNA上で形成し、DNAポリメラーゼの処理能力を増加させるように作用する。9−1−1/PCNAモデルは、hRad9、hRad1及びhHus1各々が、PCNAをDNA上に負荷する(load)のに必要なタンパク質である複製因子Cのサブユニットと広範な相同性を共有するhRad17と相互作用するという観察によって裏付けられる(Mossi,R,and Hubscher,U.,Eur.J.Biochem.,254,209−216,1998)。更なる試験によれば、DNA損傷は、hRad9及びhRad1の過剰リン酸化だけでなく、9−1−1複合体とクロマチンの会合も誘発する。これから、DNA上の損傷部位におけるhRad17に依存した9−1−1の負荷が多面的なチェックポイント応答を調整することができるモデルが出現した(St.Onge et al.,J.Biol.Chem.,276,41898−41905,2001)。
【0021】
in vitroの生体分子試験及び実験モデルは、4,5−ジヒドロ−3−メチレン−2[3H]フラノン「Securolide」は、細胞内構造に結合して、異常細胞の増殖を阻止する内因性免疫制御因子を誘発することを示唆する。Securolideは、Rad9変異体酵母株の細胞死をもたらす。このデータに基づいて、Securolideは、癌細胞中の変異体hRad9と相互作用して、アポトーシスをもたらすDNA損傷を生ずると考えられる。Saccharomyces cereviseaeの変異体株を含むバイオアッセイは、変異体株、より特異的にはrad9遺伝子のみに対する細胞傷害性を示した。これは、Securolideが、不安定なゲノムに対して選択的な細胞傷害性を有することを示唆している。ヒト臨床試験は、このin vitroアッセイは、従来の化学療法及び放射線療法が失敗した乳癌及び前立腺癌患者を含めて、癌及び別の疾患の治療における有効性の予測に役立つことを実証した。
【0022】
S.cereviseaeにおける損傷DNAは、細胞周期修復チェックポイントタンパク質として知られる遺伝子rad9を活性化して、損傷が生じた後の細胞周期を停止する。Rad9は、プロアポトーシス(細胞自殺)を促進し、細胞分裂を抑制することもできる。バイオアッセイは、Securolideが、rad9を介して損傷DNAに傷害を起こすことを示す。Hrad9は、ヒト腫瘍細胞におけるrad9のホモログである。Securolideは、別のタイプの酵母におけるrad9変異体に対して細胞傷害性であるので、Securolideは、ヒトにおけるhrad9を標的にして、悪性細胞のゲノムを不安定化すると予想される。
【0023】
p53遺伝子は癌抑制遺伝子であり、すなわち、その活性は腫瘍の形成を停止させる。人がp53遺伝子の唯一の機能的コピーをその親から受け継いだ場合、その人は癌を発症しやすく、通常、成人早期に種々の組織に幾つかの独立した腫瘍を発達させる。この状態はまれであり、Li−Fraumeni症候群として知られる。しかし、p53の変異は、大部分の腫瘍タイプで見られ、したがって腫瘍形成をもたらす複雑な分子現象ネットワークに寄与する。
【0024】
p53遺伝子は、17番染色体にマッピングされた。細胞においては、p53タンパク質はDNAに結合し、それは別の遺伝子を刺激して、細胞分裂刺激タンパク質(cdk2)と相互作用するp21と呼ばれるタンパク質を産生する。p21がcdk2と複合体化すると、細胞は、細胞分裂の次の段階に進むことができない。変異体p53は、DNAとはもはや有効に結合せず、結果としてp21タンパク質は細胞分裂の「停止シグナル」としての作用に利用することができない。したがって、細胞は制御不能に分裂し、腫瘍を形成する。
【0025】
p53は、(UV、IR、又は過酸化水素などの化学薬剤によって誘発される)DNA損傷、酸化的ストレス、浸透圧衝撃、リボヌクレオチドの枯渇、及び調節解除された癌遺伝子発現を含めて、ただしそれだけに限定されない無数のストレスタイプに応じて活性化される。この活性化は、2つの主要な事象によって顕著である。第一に、p53タンパク質の半減期が劇的に延び、ストレスを受けた細胞においてp53が急速に蓄積する。第二に、コンフォメーション変化によって、p53がこれらの細胞における転写制御因子としての能動的役割を取るように強いられる。p53の活性化をもたらす決定的な事象は、そのN末端ドメインのリン酸化である。N末端転写活性化ドメインは、多数のリン酸化部位を含み、ストレスシグナルを伝達するプロテインキナーゼの主要な標的とみなされ得る。
【0026】
p53のこの転写活性化ドメインを標的にすることが知られているプロテインキナーゼは、2つのグループに大別することができる。プロテインキナーゼの第1のグループは、膜損傷、酸化的ストレス、浸透圧衝撃、熱ショックなどの幾つかのタイプのストレスに応答することが知られているMAPKファミリー(JNK1〜3、ERK1〜2、p38MAPK)に属する。プロテインキナーゼの第2のグループ(ATR、ATM、CHK1及びCHK2、DNA−PK、CAK)は、ゲノム完全性チェックポイント(genome integrity checkpoint)、すなわち遺伝子毒性ストレスによって生じるDNA損傷の幾つかの形態を検出し、それに応答する分子カスケードに関係する。癌遺伝子は、タンパク質p14ARFによって媒介されるp53活性化も刺激する。
【0027】
ストレスを受けていない細胞においては、p53レベルは、p53の連続分解によって低いままである。(ヒトにおいてはHDM2とも呼ばれる)Mdm2と呼ばれるタンパク質は、p53に結合して、その作用を抑制し、それを核からサイトゾルに輸送する。また、Mdm2は、ユビキチンリガーゼとして作用し、ユビキチンをp53に共有結合させ、したがってプロテアソームによる分解に対してp53を標識する。しかし、p53のユビキチン化は可逆的である。ユビキチン特異的プロテアーゼUSP7(又はHAUSP)は、ユビキチンをp53から切断し、それによってp53をプロテアソーム依存性分解から保護することができる。これは、p53が腫瘍形成傷害に応じて安定化される一手段である。
【0028】
上記プロテインキナーゼによるp53のN末端のリン酸化は、Mdm2結合を破壊する。次いで、Pin1などの別のタンパク質がp53に補充され、p53のコンフォメーション変化を誘発し、それがMdm2結合を一層抑制する。リン酸化は、p300又はPCAFのような転写コアクチベーターの結合も可能にする。転写コアクチベーターは、次いで、p53のカルボキシ末端をアセチル化し、p53のDNA結合ドメインを露出させ、それが特定の遺伝子を活性化又は抑制できるようにする。Sirt1、Sirt7などのデアセチラーゼ酵素は、p53を脱アセチルして、アポトーシスを阻害し得る。一部の癌遺伝子は、MDM2に結合してその活性を阻害するタンパク質の転写を刺激し得る。
【0029】
アッセイ系
Rad9及び/又はp53変異体酵母細胞系において選択的細胞死を誘発することにおけるSecurolideの有効性の試験は、野生型系又は動物モデルに比べてRad9及び/又はp53変異体系における細胞死を選択的に誘発する他の化合物をスクリーニングするために該細胞系を使用する可能性を示している。適切な細胞系及び動物モデルは市販されており、又は通常の労力で調製することができる。例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA20108は、酵母の幾つかのRad9変異体株を列挙している(カタログ番号90731;90730;74154、4003576、4023576、及び4033576)。相同のクローン化RAD9を含むゼブラフィッシュは、ATCCからカタログ番号10169289として入手可能である。正常細胞と比較して細胞死を誘発する化合物をスクリーニングするのに使用することもできる、RAD9及び/又はp53だけでなく、RAD9及び/又はp53を含む複合体の他の局面も含む、種々の欠陥を有する酵母株に関する多数の科学刊行物も存在する。正常細胞、特にほ乳動物細胞は、アッセイに使用するために、hRAD9及び/又はp53遺伝子に変異を誘発するように操作することもできる。ヒトホモログは、マウス及びラットの遺伝子と一緒にNCBIデータベースに列挙されている(遺伝子座ID5883)。
【0030】
変異は、好ましくは、部位特異的変異誘発によって導入される。部位特異的変異誘発は、変異がDNA分子中の規定された部位においてもたらされる分子生物学技術である。一般に、部位特異的変異誘発は、野生型遺伝子配列が既知である必要がある。所望の変異を含む配列を有するオリゴヌクレオチドは、化学合成される。オリゴヌクレオチドは、塩基対水素結合によって相補的野生型遺伝子配列に結合する。合成オリゴヌクレオチドは、元の(鋳型)鎖に相補的である新しいDNA鎖のin vitro合成用プライマーとして使用される。DNA合成は、酵素DNAポリメラーゼをDNA鋳型に付加することによって実施される。新規合成されたDNA鎖は、プライマー及びそれに組み込まれた所望の変異を有する。1対のプライマー及びポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって、新規作製されたDNA分子を増幅し、新しいDNAの更なる操作を可能にするのに十分なコピーを作製することができる。典型的には、変異DNAは、次いで、制限酵素及びDNAリガーゼによって発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、次いで、典型的には細胞に挿入され、そこで変異したタンパク質の合成用遺伝子鋳型として使用することができる。変異したタンパク質の生物学的な活性は、次いで、野生型タンパク質のそれと比較することができる。
【0031】
アッセイ
好ましい一実施形態においては、活性についてスクリーニングされる化合物を、正常(すなわち、Rad9を含むチェックポイントタンパク質複合体における欠損、及び/又はp53遺伝子における変異を持たない)及び異常細胞(すなわち、Rad9を含むチェックポイントタンパク質複合体中の1種類以上のタンパク質若しくは該タンパク質をコードする遺伝子における、及び/又はp53における、変異又は不活性化を有する)の両方に添加する。次いで、正常細胞に比べて異常細胞において細胞死を引き起こす化合物は、腫瘍細胞、細菌細胞、ウイルス感染細胞などの特定の細胞型に対する全般的細胞傷害性及び活性を評価する更なるアッセイにおいてスクリーニングされる。
【0032】
化合物
ヒトにおけるhRad9及び/又はp53遺伝子の選択的ターゲティングによって抗腫瘍活性を示し得る適切な化合物としては、
【0033】
【化1】

が挙げられ、式中、
〜Rは独立に、又はR〜Rは一緒に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機グループ(organic grouping)であり、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含む。R〜Rは、置換されていても、いなくてもよい。
【0034】
〜Rは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ(aroxy)、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C1〜C20環式、置換C1〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド基から選択され、
Zは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子であり、
Xは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子である。
【0035】
別の一実施形態においては、化合物は以下の化学構造:
【0036】
【化2】

を有し、式中、
〜Rは独立に、又はR〜Rは一緒に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機グループとすることができ、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含み、代表的なR〜Rグループは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C1〜C20環式、置換C1〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド基であり、
Xは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子であり、
Zは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子であり、
Z’は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機組成物とすることができ、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含む。
【0037】
更に別の一実施形態においては、アルファメチレン基を有するラクトンは、下記構造:
【0038】
【化3】

を有し得、式中、
〜Rは独立に、又はRとRは一緒に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機グループとすることができ、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含み、代表的なR〜Rグループは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C1〜C20環式、置換C1〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド基であり、
、Y及びYは独立に、又はYとYは一緒に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機グループとすることができ、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含み、代表的なR〜Rグループは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C1〜C20環式、置換C1〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド基であり、
Zは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子であり、
Xは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子である。
【0039】
一実施形態においては、ラクトンは、構造:
【0040】
【化4】

を有するアルファメチレンラクトン(1)であるSecurolideである。
【0041】
別の一実施形態においては、エステルは、以下の構造:
【0042】
【化5】

で示されるメチルα−メチレン−γ−ヒドロキシブタノアート(2)である。
【0043】
更に別の一実施形態においては、ラクトンは、以下の構造:
【0044】
【化6】

を有する二環式化合物である。
【0045】
別の適切な化合物としては、
【0046】
【化7】

を挙げることができ、式中、
〜Rは独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機グループとすることができ、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含み、代表的なR〜Rグループは、H、アルキル、置換アルキル、アリル、置換アリル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、アロキシ(alloxy)、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C1〜C20環式、置換C1〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド基であり、
Xは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子であり、
Zは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子である。
【0047】
更に別の一実施形態においては、アルファメチレン基を有するラクトンは、下記構造:
【0048】
【化8】

を有し得、式中、
〜Rは独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を含む任意の他の有機グループとすることができ、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子を場合によっては含み、代表的なR〜Rグループは、アルキル、アリル、置換アルキル、アルケニル、アリル、置換アリル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、アロキシ(alloxy)、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C1〜C20環式、置換C1〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチド基であり、
Zは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子であり、
Xは、線状、分枝又は環式構造形式に分けられる酸素、硫黄又は窒素などのヘテロ原子である。
【0049】
適切な化合物としては、上記化合物の代謝産物、上記化合物の立体異性体、薬学的に受容可能なその塩、及びその組合せも挙げられる。
【0050】
代表的なラクトンを表Iに示す。
【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

式Ia〜Ieの化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩は、遊離塩基の溶液又は懸濁液を約1化学当量の薬学的に受容可能な酸で処理することによって、従来の様式で調製することができる。従来の濃縮及び再結晶技術を使用して、塩を単離することができる。
【0054】
酸基を含む化合物の薬学的に受容可能な塩基付加塩は、例えば約1化学当量の塩基と反応させることによって、酸から従来の様式で調製することができる。
【0055】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照して更に理解されるであろう。
【実施例】
【0056】
実施例1
Saccharomyces Cereviseaeに対するSecurolideを用いたバイオアッセイ
固形培地上のバイオアッセイを、腫瘍/癌細胞中のDNAに類似したDNAを有する1セットの変異体株のSaccharomyces cereviseaeに対して、10マイクログラム/ミリリットルと100マイクログラム/ミリリットルとの間の濃度のSecurolide(LMSV−6)を用いて実施した。Securolideは、変異体株、具体的には遺伝子rad9に対してのみ顕著な細胞傷害性活性を示した。これは、Securolideが、不安定なゲノムを有する細胞に対して選択的な細胞傷害性を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に活性な化合物をスクリーニングするための方法であって、該方法は:
Rad9を含む細胞周期チェックポイントタンパク質複合体又は該複合体中のタンパク質をコードする遺伝子に1個以上の変異を有する細胞を提供する工程、
スクリーニングされる化合物を該細胞に添加する工程、及び、
該化合物が該細胞の一部若しくはすべてを死滅させる、又は該細胞の一部若しくはすべてにおいてアポトーシスを誘発するか否かを決定する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞が酵母細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞がほ乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が動物中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rad9を含む細胞周期チェックポイントタンパク質複合体中に変異を持たない正常細胞に前記化合物を添加する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞がRad9遺伝子に変異を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が不活性又はより活性の低いRad9タンパク質を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1又は6に記載の方法によって同定される、薬学的に受容可能な化合物。
【請求項10】
薬学的に活性な化合物をスクリーニングするための方法であって、該方法は:
タンパク質p53又は該タンパク質をコードする遺伝子に1個以上の変異を有する細胞を提供する工程、
スクリーニングされる化合物を該細胞に添加する工程、及び、
該化合物が該細胞の一部若しくはすべてを死滅させる、又は該細胞の一部若しくはすべてにおいてアポトーシスを誘発するか否かを決定する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記細胞が酵母細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞がほ乳動物細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が動物中にある、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
p53タンパク質に変異を持たない正常細胞に前記化合物を添加する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞がp53遺伝子に変異を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が不活性又はより活性の低いp53タンパク質を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
請求項10又は15に記載の方法によって同定される、薬学的に受容可能な化合物。

【公表番号】特表2012−507010(P2012−507010A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533409(P2011−533409)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062082
【国際公開番号】WO2010/048616
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(503459497)マグナケム インターナショナル ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】