説明

RAWデータ圧縮方法

【課題】CFAを有する単板式固体撮像素子により取得されたRAWデータを高圧縮かつ低歪みで圧縮するとともに、圧縮されたRAWデータをJPEG復号器で簡便に画像として確認するプレビュー機能をも実現できるRAWデータ圧縮方法を提供する。
【解決手段】CFAを有する単板式固体撮像素子により観測されたRAWデータを、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として直接圧縮し、JPEG復号器の復号過程及びダウンサンプリングを定式化し、復号されるRAWデータと観測されたRAWデータの誤差が小さくなるような量子化DCT係数に対応するJPEGデータを、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として生成し、量子化DCT係数を求めるために繰り返し演算を行い、DCT係数のパラメータ数削減を行い、DCT係数の量子化テーブルを再設計することにより、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタアレイ(CFA)を有する単板式カラー撮像素子から取得されたRAWデータを圧縮するためのRAWデータ圧縮方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタルカメラの普及が著しい。その中で、多くの低コストなカラーディジタルカメラには、カラーフィルタアレイ(color filter array:CFA)を有する単板式カラー撮像素子が利用されている。また、ベイヤーパターンは、カラーフィルタアレイ(CFA)として、最も広く利用されている(特許文献1を参照)。
【0003】
ベイヤーパターンのカラーフィルタアレイを有する単板式カラー撮像素子では、1つの画素はR、G、またはBの一つの色しか観測することができない。
【0004】
つまり、このようなCFAを有する単板式カラー撮像素子の出力は、色チャネルは異なるものの、1つの画素に対して1つの画素値であり、1枚のグレイ画像であると考えることもできる。
【0005】
このようなCFAを有する単板式カラー撮像素子から出力(観測)された、生のデジタル画像データは、「RAWデータ(raw data)」と呼ばれており、また、「カラーフィルタアレイデータ(color filter array data)」、即ち、「CFAデータ」とも呼ばれる。
【0006】
ここでは、「RAWデータ」と「CFAデータ」の言葉を同じ意味で使用しており、つまり、「RAWデータ」又は「CFAデータ」とは、CFAを備えた単板式カラー撮像素子から出力(取得)された生のデジタル画像データを意味する。
【0007】
RAWデータからフルカラー画像を生成する、即ち、RAWデータをフルカラー画像に変換するための画像処理は、「デモザイキング処理」と呼ばれ、従来、デモザイキング処理に関して数多くの方法が既に提案されている(非特許文献1を参照)。
【0008】
ここで、CFAを備えた単板式カラー撮像素子を用いたディジタルカメラを利用して、画像を撮影し、撮影した画像を表示するまでの標準的な手順を説明する。
【0009】
一般的に、CFAを備えた単板式カラー撮像素子により観測(出力)された「RAWデータ」は、まず、デモザイキング処理により「フルカラー画像データ」に変換される(フルカラー化される)。次に、変換された「フルカラー画像データ」は、例えば、JPEG(非特許文献2を参照)、JPEG−LS(非特許文献3を参照)又はJPEG−2000(非特許文献4を参照)などの画像圧縮方法により、データ圧縮が行われ、「画像データ」として保存される。
【0010】
そして、最後に、保存された「画像データ」は、データ圧縮を行った圧縮符号器に対応する復号器によって、フルカラー画像に復元され、例えば、液晶ディスプレイのような表示器に表示される。
【0011】
上述したように、CFAを備えた単板式カラー撮像素子を用いたディジタルカメラにおいて、RAWデータからフルカラー画像を表示するまでは、RAWデータを圧縮したが、RAWデータを直接圧縮する方法とはなっていない。
【0012】
また、近年、RAWデータからフルカラー画像を生成するための画像処理では、まず、CFAを備えた単板式カラー撮像素子から取得(出力)されたRAWデータを保存しておき、必要となった場合に、保存されたRAWデータに対し、デモザイキング処理等の画像処理をパソコン等の情報処理装置にて行うことにより、フルカラー画像を生成する、「RAW現像」とも呼ばれる手法も利用されつつある。
【0013】
更に、複数の低解像度画像から1つのカラー高解像度画像を生成する画像処理である「カラー超解像処理」においても、再構成にRAWデータを利用することにより、効果的に超解像処理を行うことができる(非特許文献5を参照)。
【特許文献1】米国特許第3971065号
【非特許文献1】ビー. ケイ. ガントルコ(B.K. Gunturk)、ジェー. グロズバッチ(J. Glotzbach)、ワイ. アルトンバサク(Y. Altunbasak)、アール. ダブリュー. スチャファ(R.W. Schafer)、アール. エム. マサアル(R.M. Mersereau)共著,「デモザイキング: カラー フィルタ アレイ インターポレイション(Demosaicking: color filter array interpolation)」,IEEE シグナル プロセシング マガジン(IEEE Signal Processing Magazine),第22巻,第1号,p.44-54,2005年
【非特許文献2】ジィー. ケイ. ウォリス(G.K. Wallace)著,「ザ JPEG スチル ピクチャー コンプレッション スタンダード(The JPEG still picture compression standard)」,コミュニケーションズ オフ ザ ACM(Communications of the ACM),第34巻,第4号,p.30-40,1991年
【非特許文献3】エム. ジェー. ワインバーガー(M.J. Weinberger)、ジィー. セロウシ(G. Seroussi)、ジィー. サピロ(G. Sapiro)共著,「ザ LOCO−I ロスレス イメージ コンプレッション アルゴリズム: プリンシプル アンド スタンダーダゼッション イントゥー JPEG−LS(The LOCO-I lossless image compression algorithm: principles and standardization into JPEG-LS)」,IEEE トランス. イメージ プロセシング(IEEE Trans. Image Processing),第9巻,第8号,p.1309-1324,2000年
【非特許文献4】エイ. スコドラス(A. Skodras)、シー. クリストポロス(C. Christopoulos)、ティー.エブラヒミ(T. Ebrahimi)共著,「ザ JPEG 2000 スチール イメージ コンプレッション スタンダード(The JPEG 2000 still image compression standard)」,IEEE シグナル プロセシング マガジン(IEEE Signal Processing Magazine),第18巻,第5号,p.36-58,2001年
【非特許文献5】ティー. ゴト(T. Goto)、エム. オクトキ(M. Okutomi)共著,「ダイレクト スーパー・レゾルーション アンド レジストレイション ユシング ロー CFA イメージズ(Direct Super-Resolution and Registration Using Raw CFA Images)」,プロック. IEEE コンピュータ ソサイエティ カンファレンス オン コンピュータ ビジョン アンド パターン レコグニション(Proc. IEEE Computer Society Conference on Computer Vision and Pattern Recognition),第II巻,p.600-607,2004年
【非特許文献6】エヌ. チャン(N.Zhang)、エクス. ウー(X. Wu)共著,「ロスレス コンプレッション オフ カラー モザイク イメージ(Lossless Compression of Color Mosaice Images)」,IEEE トランス. イメージ プロセシング(IEEE Trans. Image Processing),第15巻,第6号,p.1379-1388,2006年
【非特許文献7】エス. ワイ. リー(S.-Y. Lee)、エイ. オルテガ(A. Ortega)共著,「ア ノブル アプローチ オフ イメージ コンプレッション イン デジタル カメラ ウィズ ア ベイヤー カラー フィルタ アレイ(A Novel Approach of Image Compression in Digital Cameras with a Bayer Color Filter Array)」,プロック. インターナショナル カンファレンス オフ イメージ プロセシング(Proc. International Conference of Image Processing),第3巻,p.482-485,2001年
【非特許文献8】シー. シー. コウ(C.C. Koh)、ジェー. ムクハジ(J. Mukherjee)、エス. ケイ. ミトラ(S.K. Mitra)共著,「ニュー エフィシェント メソッド オフ イメージ コンプレッション イン デジタル カメラ ウィズ カラー フィルタ アレイ(New Efficient Methods of Image Compression in Digital Cameras with Color Filter Array)」,トランス. コンシューマー エレクトロニクス(Trans. Consumer Electronics),第49巻,第4号,p.1488-1456,2003年
【非特許文献9】エクス. シェ(X. Xie)、ジィー. エル. リー(G.L. Li)、ゼッド. エイチ. ワン(Z.H. Wang)、シー. チャン(C. Zhang)、ディー. エム. リー(D.M. Li)、エクス. ダブリュー. リー(X.W. Li)共著,「ア ノブル メソッド オフ ロッシー イメージ コンプレッション フォー デジタル イメージ センサ ウィズ ベイヤー カラー フィルタ アレイ(A Novel Method of Lossy Image Compression for Digital Image Sensors with Bayer Color Filter Arrays)」,プロック. インターナショナル シンポジウム オン サーキット アンド システムズ(Proc. International Symposium on Circuits and Systems),第5巻,p.4995-4998,2005年
【非特許文献10】ジェー. イー. アダムス(J.E. Adams)、ジェー. エフ. ハミルトン(J.F. Hamilton)共著,「デザイン オフ プラクティカル カラー フィルタ アレイ インターポレイション アルゴリズム フォー デジタル カメラ(Design of practical color filter array interpolation algorithms for digital cameras)」,プロック. SPIE(Proc. SPIE),第3028巻,p.117-125,1997年
【非特許文献11】ケイ. ヒラカワ(K. Hirakawa)、ティー. ダブリュー. パークス(T.W. Parks)共著,「アダプティブ ホモジェネイティ・ダイレクティド デモザイキング アルゴリズム(Adaptive homogeneity-directed demosaicing algorithm)」,IEEE トランス. イメージ プロセシング(IEEE Trans. Image Processing),第14巻,第3号,p.360-369,2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、CFAを備えた単板式カラー撮像素子から得られたRAWデータを効率的に保存する方法や、RAWデータの適切な保存形式は確立されておらず、多くの場合、RAWデータが非圧縮のまま保存されているのが現状である。
【0015】
RAWデータを非圧縮のままで保存する場合は、その保存形式が統一されていないとの問題がある。また、非圧縮方式のため、データ容量が非常に大きいという問題もある。
【0016】
さらに、非圧縮で保存されたRAWデータを画像として確認するためにも、各非圧縮保存方式に対応した復号器とデモザイキング処理が必要である。よって、既存の復号器を利用して、非圧縮で保存されたRAWデータを簡便に画像として確認することはできないという問題が存在する。
【0017】
一方、フルカラー画像を圧縮保存するのに、例えば、JPEG、JPEG−LS及びJPEG−2000のような圧縮保存形式を利用することができる。特に、JPEGは普及が非常に進んでおり、画像圧縮形式のデファクトスタンダードの1つとも言われている。
【0018】
そこで、JPEG、JPEG−LS及びJPEG−2000のような圧縮保存形式を利用して、近年、RAWデータの圧縮方法としていくつかの方法が提案されている(非特許文献6、7、8及び9を参照)。
【0019】
これらのRAWデータ圧縮方法は、いずれも、RAWデータを色チャネルごとに分離し、その後、分離された色チャネルの画像をグレイ画像として、既存のJPEG、JPEG−LS又はJPEG−2000などの画像圧縮方法を適用するという共通点がある。これらのRAWデータ圧縮方法を利用することにより、高圧縮かつ低歪みでRAWデータを圧縮し、保存することが可能である。
【0020】
しかし、これらのRAWデータ圧縮方法では、圧縮されたRAWデータを画像として確認するためには、JPEG、JPEG−LSまたはJPEG−2000などにより各色チャネル画像を復号し、復号した各色チャネルを合成することによりカラーモザイク画像を再構成し、さらに、再構成したカラーモザイク画像をデモザイキング処理によりフルカラー画像に変換する必要がある。従って、既存の復号器を利用して簡便に圧縮されたRAWデータを画像として確認することはできない問題がある。
【0021】
ところが、RAWデータを効率よく保存するためには、高圧縮かつ低歪みでRAWデータを圧縮できることは勿論のことで、また、圧縮されたRAWデータを簡便に画像として確認できることも大変重要である。
【0022】
ここで、圧縮されたRAWデータを既存の復号器を利用して簡便に画像として確認することを「プレビュー」或いは「プレビュー機能」と呼ぶことにし、また、プレビューのために生成される画像を「プレビュー画像」と呼ぶことにする。
【0023】
上述したように、非特許文献6、7、8及び9に記載されたような既存のRAWデータ圧縮方法では、プレビュー機能は提供されておらず、圧縮されたRAWデータを画像として確認するだけの場合においても、煩雑な画像復号処理、カラーモザイク画像再構成やデモザイキング処理を行う必要がある。
【0024】
さらに、ZIP形式やRAR形式も、電子データの圧縮方式として知られているが、RAWデータをZIP形式やRAR形式で圧縮した場合にも、既存の復号器を利用して簡便に圧縮されたRAWデータを画像として確認できない問題が存在する。
【0025】
本発明は、上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、画像圧縮方法として最も広く普及しているJPEGに基づいてRAWデータを直接圧縮するRAWデータ圧縮方法を提供し、具体的に、カラーフィルタアレイ(CFA)を有する単板式固体撮像素子により取得されたRAWデータを高圧縮かつ低歪みで圧縮するとともに、圧縮されたRAWデータをJPEG復号器で簡便に画像として確認するプレビュー機能をも実現できるRAWデータ圧縮方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、カラーフィルタアレイ(CFA)を有する単板式固体撮像素子により観測されたRAWデータを、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として直接圧縮するRAWデータ圧縮方法に関し、本発明の上記目的は、JPEG復号器の復号過程及びダウンサンプリングを定式化し、復号されるRAWデータと前記観測されたRAWデータの誤差が小さくなるような量子化DCT係数に対応するJPEGデータを、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として生成することにより、或いは、DCT係数の量子化の影響を考慮して、前記量子化DCT係数を求めるために繰り返し演算を行うことにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成することにより、或いは、パラメータ数の冗長さを利用してDCT係数のパラメータ数を削減することにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成することにより、或いは、DCT係数の量子化誤差がRAWデータへ与える影響が、要素によらず等しくなるように量子化テーブルを再設計することにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成することによって効果的に達成される。
【0027】
また、本発明の上記目的は、DCT係数の量子化の影響を考慮して、前記量子化DCT係数を求めるために繰り返し演算を行い、パラメータ数の冗長さを利用してDCT係数のパラメータ数削減を行い、前記DCT係数の量子化誤差がRAWデータへ与える影響が、要素によらず等しくなるように量子化テーブルを再設計することにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成することによってより効果的に達成される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るRAWデータ圧縮方法は、CFAを有する単板式固体撮像素子により観測(取得)されたRAWデータを、JPEGに基づいて「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として直接圧縮する方法であり、つまり、観測されたRAWデータから「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する方法である。
【0029】
すなわち、本発明では、JPEG復号器の復号過程およびダウンサンプリングを定式化し、復号されるRAWデータと実際に観測されたRAWデータとの誤差が小さくなるように、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成するようにしている。
【0030】
本発明によれば、実際に観測されたRAWデータから「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成し、RAWデータ(実際に観測されたRAWデータ)を高圧縮かつ低歪みで圧縮することができ、プレビューも簡単にできるという優れた効果を奏する。
【0031】
また、本発明では、実際に観測されたRAWデータを「JPEG復号器で復号可能なデータ」、すなわち、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として、直接圧縮しているため、本発明によれば、プレビューする際に、デモザイキング処理によりフルカラー化する必要もないというメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。

<1>本発明の概説
本発明は、カラーフィルタアレイ(CFA)を有する単板式固体撮像素子により取得されたRAWデータを高圧縮かつ低歪みで圧縮するとともに、圧縮されたRAWデータをJPEG復号器で簡便に画像として確認するプレビュー機能をも実現できるRAWデータ圧縮方法に関する。
【0033】
即ち、本発明のRAWデータ圧縮方法は、CFAを有する単板式固体撮像素子により観測(取得)されたRAWデータを、JPEGに基づいて「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として直接圧縮する方法であり、つまり、観測されたRAWデータから「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する方法である。

<2>JPEG圧縮概要
ここで、JPEG圧縮について簡単に説明する。
<2−1>JPEG符号化
JPEG圧縮は、フルカラー画像に対する圧縮方法として広く知られている。図1にJPEG符号化の概要を示す。
【0034】
図1に示されるように、まず、カラーフィルタアレイ(CFA)を有する単板式カラー撮像素子により観測された「RAWデータ」は、デモザイキング処理され、フルカラー画像(RGBカラー画像)に変換される。
【0035】
次に、このフルカラー画像(RGBカラー画像)は、YCrCb色空間に変換され、離散コサイン変換(DCT)された後に、量子化処理が行われる。このように量子化された離散コサイン変換済みのデータを「量子化DCT係数」と呼ぶことにする。
【0036】
最後に、この量子化DCT係数は、ランレングスおよびハフマン符号化され、JPEGデータが生成される。色差(Cr、Cb)は空間方向に間引きされることが多い。本発明では色差間引きにも対応しているが、説明を簡単にするため、以下の説明は色差間引きを考慮しないことにする。最小符号化ユニット(MCU)ごとに符号化される。色差間引きをしない場合、MCUは8×8の大きさになる。

<2−2>JPEG復号の定式化
JPEGデータを復号する方法の概要を図2に示す。復号も最小符号化ユニット(MCU)ごとに行われるため、ここでは1つのMCUを復号することのみを考える。
【0037】
図2に示されるように、まず、JPEGデータは、ランレングス復号及びハフマン復号され、量子化DCT係数

に変換される。JPEGデータは、量子化DCT係数

と一対一に対応している。
【0038】
次に、量子化DCT係数

は、逆量子化処理、逆離散コサイン変換、および色変換が施され、フルカラー画像(RGBカラー画像)が復号される。それぞれの処理は、行列演算で表現することができ、すなわち、量子化DCT係数

の復号過程は、数1のように表される。
【0039】
【数1】

ここで、ベクトル

はフルカラー画像(RGBカラー画像)のベクトル表現を表す。また、行列

は逆量子化を、行列

は逆離散コサイン変換を、行列

は色変換を、それぞれ表す行列である。
【0040】
今、MCUを8×8と考えているので、量子化DCT係数

及びフルカラー画像

は192次元のベクトルであり、行列

は192×192次元の行列である。
【0041】
また、ダウンサンプリングなどの簡単な操作により、復号されたフルカラー画像(RGBカラー画像)からRAWデータを抽出(復号)することができる。

<3>RAWデータを復号可能なJPEGデータ
ここでは、まず、RAWデータ圧縮に求められている特徴を述べる。そして、本発明の特徴である「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」といった概念を提案し、その特徴を述べる。

<3−1>RAWデータ圧縮に求められる特徴
RAWデータを非可逆圧縮することを考える。このとき、RAWデータ圧縮に求められる特徴としては、まず、第一に、できるだけ少ない情報量で、CFAを有する単板式カラー撮像素子により観測されたRAWデータを小さな誤差で復号できることである。このような性質(特徴)を満足していれば、圧縮効率が高いと言うことにする。
【0042】
また、RAWデータを、画像として簡便に確認できることも重要である。このように圧縮されたRAWデータを画像として確認する機能のことをプレビューと呼ぶことにする。プレビュー用の画像には、高い画質は必要がないものの、既に普及している復号器で簡便に画像化できることが必要である。ディジタルカメラ上での画像の確認や画像の検索などを考えた場合、このプレビュー機能は非常に重要な必須の機能であると考えられる。
【0043】
ところで、現在、CFAを有する単板式カラー撮像素子により観測されたRAWデータは、一般的に図3に示す流れで処理される。図3から分かるように、単板式カラー撮像素子の出力であるRAWデータを高い圧縮効率で保存すると言うことは考慮されておらず、あくまで圧縮は、デモザイキング処理されたカラー画像を圧縮・保存することのみが考慮されている。
【0044】
また、現在利用されているRAWデータ用の保存形式は、非圧縮であり、既存の復号器でプレビュー用の画像を生成することはできない。さらに、既存のRAWデータの圧縮方法においても、プレビューのことは考慮されていない。既存のRAWデータ圧縮方法は、図4の処理の流れに示されるように、いずれもRAWデータを各色チャネルに空間的に分離することを基本としている(非特許文献6、7、8及び9を参照)。このため、プレビュー画像を簡便に生成することはできない。
【0045】
圧縮効率のみを考慮した場合、可逆圧縮であるZIP形式やRAR形式を利用して、RAWデータを圧縮する方法は、圧縮効率の高い圧縮方法の1つであると言える。圧縮効率を高めるように非可逆的な前処理をした後に、ZIP形式やRAR形式を利用することにより、非可逆圧縮も可能であると考えられる。しかし、このような圧縮方法は、当然、プレビュー画像を簡便に生成することはできない。
【0046】
また、圧縮形式の普及を考えた場合、現在広く普及されている復号器で復号できることは、実用的に極めて重要なことである。そこで、本発明では、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を以下のように提案する。

<3−2>「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」の特徴
あるJPEGデータを復号することにより、フルカラー画像が得られる。得られたフルカラー画像を、ダウンサンプリングすることによりRAWデータを抽出する。フルカラー画像からRAWデータを抽出する操作は、任意に設計可能であるが、ここでは簡単のためダウンサンプリングを考えることにする。
【0047】
このように抽出されたRAWデータが、観測されたRAWデータに対して誤差が小さいとき、元々のJPEGデータを「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」と呼ぶことにする。
【0048】
このような「RAWデータを復元可能なJPEGデータ」は、JPEG復号器で単純に復号することにより、プレビュー画像が生成されるという特徴を有する。また、プレビュー画像をダウンサンプリングすることにより、RAWデータが復号される。
【0049】
次に、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」の特徴を定式化する。
【0050】
まず、あるJPEGデータを復号し、復号して得られたフルカラー画像をダウンサンプリングにより、RAWデータを生成(復号)することを考える。もし、生成(復号)されたRAWデータが観測されたRAWデータと一致していれば、RAWデータを生成(復号)するために利用したJPEGデータは、RAWデータを復元可能なJPEGデータであると言える。この条件は、数1の行列

を利用して、数2のように表される。
【0051】
【数2】

ここで、ベクトル

は観測されたRAWデータを表すベクトルを、行列

はフルカラー画像からRAWデータを生成(復号)するためのダウンサンプリングを表す行列を、行列

は量子化DCT係数

からRAWデータを復号するための復号行列を、それぞれ表す。
【0052】
数2を満足していれば、JPEGデータから誤差無しで観測されたRAWデータを復号することができる。もし、このようなJPEGデータを符号化することができれば、RAWデータを可逆圧縮していると考えることもできる。
【0053】
このRAWデータの可逆圧縮の考え方は、RAWデータの非可逆圧縮に拡張することができる。RAWデータの非可逆圧縮とは、数3で表した、観測されたRAWデータと復号されるRAWデータの誤差が十分小さくなるように、JPEGデータを符号化することである。
【0054】
【数3】

ここで、‖・‖はL2ノルムを表す。
【0055】
本発明では、数3で表す誤差E(即ち、観測されたRAWデータと復号されるRAWデータの誤差)が小さくなるような量子化DCT係数

に対応するJPEGデータを、「RAWデータ復号可能なJPEGデータ」と定義する。
【0056】
このように定義された「RAWデータ復号可能なJPEGデータ」は、RAWデータを復号できるばかりではなく、通常のJPEG復号器によりフルカラー画像が得られる。
【0057】
従って、本発明のRAWデータ圧縮方法では、復号されるRAWデータと観測されたRAWデータとの誤差が小さくなるような量子化DCT係数

を生成すれば、「RAWデータ復号可能なJPEGデータ」が得られる訳である。

<4>「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」の生成方法
<3−2>では、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」の特徴を述べた。
【0058】
ここでは、観測されたRAWデータから、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する方法を具体的に述べる。即ち、復号されるRAWデータと観測されたRAWデータとの誤差が小さくなるような量子化DCT係数

を求める方法を具体的に述べる。
【0059】
まず、DCT係数が連続の場合について説明する。次に、量子化DCT係数を求めるための繰り返し計算方法を説明する。さらに、DCT係数のパラメータ数削減方法および量子化テーブルの再設計方法を説明する。
【0060】
つまり、本発明のRAWデータ圧縮方法では、観測されたRAWデータから「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成するためには、JPEG復号器の復号過程およびダウンサンプリングを定式化し、復号されるRAWデータと観測されたRAWデータの誤差を小さくなるように、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成するという考え方に基づいており、DCT係数の量子化の影響を考慮して量子化DCT係数を求めるために繰り返し演算を行い、パラメータ数の冗長さを利用したパラメータ数削減および量子化テーブルの再設計を行うことにより、高圧縮かつ低歪みでRAWデータを圧縮することを実現している。
【0061】
なお、量子化DCT係数とJPEGデータは、ランレングスおよびハフマン符号化で一対一に対応しているため、ここでは離散DCT係数を生成する方法について述べる。

<4−1>連続DCT係数の場合
大きさ8×8のMCUごとに数3で表す誤差Eを、それぞれ最小にすることを考える。ここでは、まず、DCT係数の量子化は考慮せず、連続DCT係数について考える。
【0062】
まず、主要な行列とベクトルの次元を確認する。観測されたRAWデータであるベクトル

は64次元で、求めるべきフルカラー画像のDCT係数であるベクトル

は192次元で、復号化行列(復号行列)

は192×64次元である。
【0063】
つまり、求めるべき未知数の数(192)が拘束式の数(64)よりも多いため、数3で表す誤差Eをゼロにする連続DCT係数

は無数にある。
【0064】
DCT係数の量子化を考慮しなければ、数3で表す誤差EをゼロにするDCT係数の1つは、数2の最小二乗最小ノルム解として与えられる。
【0065】
この最小二乗最小ノルム解は、Moore-Penroseの一般化逆行列を利用して、数4のように一意に求められる。
【0066】
【数4】

ここで、行列

は復号行列

のMoore-Penroseの一般化逆行列を表す。
【0067】
しかしながら、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成するためには、連続DCT係数

を量子化する必要がある。連続DCT係数

の量子化に伴い、量子化誤差も同時に発生してしまう。

<4−2>量子化DCT係数を求めるための繰り返し計算
<4−1>で述べたように、一般化逆行列を利用して、DCT係数を求めることができる。しかしながら、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成するためには、DCT係数の量子化を行わなければならず、よって量子化誤差が発生する。
【0068】
この量子化誤差を低減させるため、ここでは繰り返し計算により、量子化DCT係数を求める方法を提案する。
【0069】
図5に、量子化DCT係数を求めるための繰り返し計算の手順を示す。図5に示されたように、量子化誤差を相殺するように、量子化DCT係数を更新する方法である。このように、繰り返し計算を行うことにより、量子化誤差を低減することができる。

<4−3>DCT係数のパラメータ数の削減
求めるべきDCT係数の数(未知数)が192であり、観測されたRAWデータのデータ数(拘束式の数)が64であるので、DCT係数の量子化を考慮しなければ、数3で表す誤差Eをゼロにできることは、上記のように既に述べた。
【0070】
つまり、全てのDCT係数を利用する必要はない。そこで、数5のような復号過程を考える。
【0071】
【数5】

ここで、行列

は対角要素が

である対角行列を、ベクトル

は要素が0又は1のベクトルをそれぞれ表す。なお、ベクトル

の次元は、ベクトル

の次元と同じ192である。
【0072】
数5の最小二乗最小ノルム

は、数6に表される。
【0073】
【数6】

さて、ベクトル

のある要素が0であれば、最小二乗最小ノルム解

の対応する要素は0になる。また、行列

のランクがベクトル

と等しければ、数3で表す誤差Eをゼロにする連続DCT係数を求めることができる。
【0074】
ところで、量子化DCT係数をランレングスおよびハフマン符号化することにより、JPEGデータが得られる。そのため、高い圧縮効率を実現するためには、連続した0が多数含まれるようにベクトル

を設計すればよい。
【0075】
JPEGでは、DCT係数を保存するときにジグザグ走査が採用されていること、色差の高周波成分は人の視覚はあまり知覚しないことから、図6に対応するベクトル

を利用した。このようなベクトル

を利用することにより、図6中で1に対応する周波数のDCT係数のみが利用されることになる。このような方法により、実質的に利用するパラメータ数を196から67へ削減した。また、このとき、行列

のランクがベクトル

と等しい。

<4−4>DCT係数の量子化テーブルの再設計
国際電気通信連合(ITU)は、人の視覚に基づいたDCT係数のための量子化テーブルを勧告している。この量子化テーブルは広く利用されており、この量子化テーブルを定数倍することによって、圧縮率が変更されている。
【0076】
ところで、量子化はDCT係数に対して行われ、DCT係数の量子化誤差がRAWデータの量子化誤差へと伝搬する。また、量子化誤差は、DCT係数の要素に依存せずに、同じように発生する。
【0077】
従って、本発明では、DCT係数の量子化誤差がRAWデータへ与える影響が、要素によらず等しくなるように量子化テーブルを再設計することにする。
【0078】
まず、連続値のDCT係数からRAWデータへの復号過程から、RAWデータにおける量子化誤差を求める。連続値のDCT係数からRAWデータへの復号過程は、数7のように変形できる。
【0079】
【数7】

ここで、下記数8が成立する。
【0080】
【数8】

また、ベクトル

は行列

のi番目の列ベクトルを、fはベクトル

のi番目の要素を、行列

は逆量子化を表す行列を、qはi番目の要素の量子化間隔を、eはi番目のDCT係数の量子化誤差を、nはベクトル

の要素数を、それぞれ表す。
【0081】
なお、<4−3>で述べたDCT係数のパラメータ数の削減方法を利用した場合、行列

はパラメータ削減を考慮した形式になる。このとき、RAWデータにおける量子化誤差

は、数9のように表される。
【0082】
【数9】

各DCT係数の要素の量子化誤差eが、RAWデータに与える影響を等しくするために、各要素の量子化間隔qを数10のように設計する。
【0083】
【数10】

ここで、zは圧縮率を調節するための定数である。

なお、本発明では、<4−2>で述べた「量子化DCT係数を求めるための繰り返し計算方法」、<4−3>で述べた「DCT係数のパラメータ数の削減方法」、<4−4>で述べた「DCT係数の量子化テーブルの再設計方法」をそれぞれ組合せが可能であり、最も効果がある方法は、3種類の方法全てを組み合わせたものである。
【0084】
また、上述した本発明の実施形態では、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」の生成方法について説明したが、本発明はそれに限らず、例えば、JPEGのみならず、JPEG−LSやJPEG−2000やほかの画像圧縮フォーマットについても、本発明の技術的な思想を適用することができる。
【0085】
そして、上述した本発明の実施形態では、「RAWデータを復元可能なJPEGデータ」は、JPEG復号器で単純に復号することにより、プレビュー画像が生成され、そのプレビュー画像をダウンサンプリングすることにより、RAWデータが復号されるといった説明をしているが、本発明はダウンサンプリングに限らず、他の簡単な操作であれば、例えば、周辺画素の平均を利用する方法を利用することもできる。

<5>実験
ここで、標準画像及び実画像に対して、本発明のRAWデータ圧縮方法を適用し、従来の方法と比較し、本発明の有効性を確認する。
【0086】
すなわち、<4−2>で述べた「量子化DCT係数を求めるための繰り返し計算」、<4−3>で述べた「DCT係数のパラメータ数の削減」及び<4−4>で述べた「DCT係数の量子化テーブルの再設計」の効果を確認する。
【0087】
具体的に、繰り返し計算の繰り返し回数を3回に固定して、パラメータ数削減および量子化テーブルの再設計を、それぞれ利用する場合と利用しない場合で、本発明に係る4種類のRAWデータ圧縮方法を検討した。
【0088】
図7に示す原画像(標準画像)をダウンサンプリングし、Bayerカラーフィルターアレイに対応するRAWデータを生成した。このRAWデータ(原画像のRAWデータ)に対して、上述した本発明に係る4種類のRAWデータ圧縮方法を用いて、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成した。量子化間隔を変化させながら、圧縮率とRAWデータに対するCPSNRを求めた結果が図8である。
【0089】
図8において、横軸の圧縮率とは、本発明によって生成された「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」のサイズとRAWデータ(原画像のRAWデータ)のデータサイズの比であり、値が大きいほど、高圧縮であることを示す。また、縦軸のRAWデータのCPSNRとは、復号されたRAWデータと原画像のRAWデータとの平均二乗誤差をデシベルで表したものであり、値が大きいほど、原画像に近いことを表している。
【0090】
すなわち、図8のグラフにおいて、右上にデータが存在しているほど、高圧縮率かつ低歪みでRAWデータが圧縮されていることを示す。図8から、パラメータ数の削減及び量子化テーブルの再設計を同時に行うRAWデータ圧縮方法が、最も効率的にRAWデータを圧縮していることが確認された。
【0091】
また、図9に圧縮率がおよそ4付近における上述した本発明に係る4種類のRAWデータ圧縮方法により生成された「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」のプレビュー画像を示す。図9に示すプレビュー画像から十分、データを画像として確認することができる。さらに、図9から、4種類のRAWデータ圧縮方法に係るプレビュー画像の中では、パラメータ数の削減及び量子化テーブルの再設計を同時に利用した図9(D)の画質が最も良いことが分かる。
【0092】
次に、上述したパラメータ数の削減及び量子化テーブルの再設計を同時に利用した本発明のRAWデータ圧縮方法を、一般的に利用されているJPEG、JPEG−LSおよびJPEG−2000を利用した既存のRAWデータ圧縮方法と比較する。
【0093】
まず、図7に示す原画像をダウンサンプリングすることにより得られたRAWデータを、非特許文献10に記載されたアダムスらの手法によりデモザイキング処理をし、フルカラー画像を得る。得られたフルカラー画像に対して、JPEGデータ、JPEG−LSデータおよびJPEG−2000データを、量子化間隔を変化させながら、それぞれ生成した。それぞれの画像データを復号し、ダウンサンプリングすることにより、RAWデータが得られる。
【0094】
図10に本発明のRAWデータ圧縮方法と、JPEG、JPEG−LSおよびJPEG−2000を利用した既存のRAWデータ圧縮方法の比較を示す。図10から、どの圧縮率においても、本発明のRAWデータ圧縮方法のCPSNRが最も高い値であることが確認された。
【0095】
同様の比較を図11に示す実際に撮影された画像(実画像)に対して行った。なお、図11の実画像の撮影には、単板式カラー撮像素子を有するカメラを利用している。そのため、図11はフルカラー化された画像を示している。
【0096】
従来の方法で圧縮する際には、非特許文献10に記載されたアダムスらの手法によりデモザイキング処理により得られたフルカラー画像に対して各種圧縮手法を適用した。図11に示す実画像対する、本発明のRAWデータ圧縮方法と既存のRAWデータ圧縮方法の比較を図12に示す。
【0097】
図10及び図12から分かるように、対象画像によって、傾向は多少異なるものの、図12においても、本発明のRAWデータ圧縮方法がいずれの圧縮率においても最も高いCPSNRを示している。
【0098】
上述した実験結果から分かるように、本発明のRAWデータ圧縮方法は、RAWデータを効率的に圧縮でき、かつプレビュー画像を簡便に生成可能であることが確認された。
【0099】
ここで、本発明の適用方法として、CFAを有する単板式カラー撮像素子を用いたディジタルカメラ上で、まず、その単板式カラー撮像素子が出力するRAWデータ(つまり、観測されたRAWデータ)を本発明のRAWデータ圧縮方法により圧縮・保存する。その後、ディジタルカメラ上に保存された圧縮されたRAWデータをパソコン等の情報処理装置に転送した後に、パソコン等の情報処理装置において転送されたデータに対し、計算時間がかかるが高精度なデモザイキング処理を行うという応用が考えられる。
【0100】
また、本発明により生成された「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を、超解像処理を利用することもできる。
【0101】
図13に図11の実画像に対する各種圧縮結果を示す。図13(A)は、非特許文献10に記載されたアダムスらの手法によりデモザイキング処理した結果をJPEG−2000で圧縮した結果を、図13(B)は、RAWデータを本発明により圧縮した結果のプレビュー画像を、図13(C)は、本発明で圧縮されたRAWデータに基づき、非特許文献11に記載されたヒラカワらの方法によりデモザイキング処理した結果を、それぞれ示す。
【0102】
非特許文献11に記載されたヒラカワらのデモザイキング処理は、従来の方法より高精細にデモザイキングできる方法として知られているものの、非特許文献10に記載されたアダムスらの方法に比べて計算コストが大きい。
【0103】
つまり、図13(B)は本発明を適用して得られたディジタルカメラ上での確認のための画像を、図13(C)は本発明を応用して最終的に得られる画像であると考えられる。図13(A)と図13(C)を比較することにより、本発明を応用した図13(C)の画像が細部まで再現されていることが確認された。

上述したように、本発明では、CFAを有する単板式固体撮像素子により観測(取得)されたRAWデータを、JPEGに基づいて「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として直接圧縮する、RAWデータ圧縮方法を開発した。
【0104】
本発明に係るRAWデータ圧縮方法を、CFAを有する単板式カラー撮像素子を用いたディジタルカメラに適用した際の画像処理の流れを図14に示す。なお、本発明のRAWデータ圧縮方法を「RAWデータの符号化方法」として考えることもできるので、図14において、本発明を本発明のエンコーダと表現している。
【0105】
図14に示されるように、まず、観測されたRAWデータを本発明のエンコーダで符号化して保存し、即ち、観測されたRAWデータを本発明のRAWデータ圧縮方法で「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として圧縮保存し、圧縮保存された「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を、既存のJPEG復号器で復号し、復号したフルカラー画像をプレビュー画像として利用可能である。また、復号したフルカラー画像をダウンサンプリングし、更にデモザイキング処理を行うことにより、高精度のフルカラー画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】JPEG符号化の概要を示す模式図である。
【図2】JPEGデータを復号する方法の概要を示す模式図である。
【図3】現在、一般的に行われる、CFAを有する単板式カラー撮像素子により観測されたRAWデータの処理を示す模式図である。
【図4】既存のRAWデータ圧縮方法の処理の流れを示す模式図である。
【図14】本発明に係るRAWデータ圧縮方法を、CFAを有する単板式カラー撮像素子を用いたディジタルカメラに適用した際の画像処理の流れを示す模式図である。
【図5】本発明において、量子化DCT係数を求めるための繰り返し計算の手順を説明するための模式図である。
【図6】JPEGで利用されたDCT係数を説明するための模式図である。
【図7】本発明の有効性を確認するために行う実験で使用された原画像を示す図である。
【図8】本発明に係る4種類のRAWデータ圧縮方法を適用した際に、圧縮率とRAWデータに対するCPSNRとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る4種類のRAWデータ圧縮方法により生成された「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」のプレビュー画像を示す図である。
【図10】本発明のRAWデータ圧縮方法と、JPEG、JPEG−LSおよびJPEG−2000を利用した既存のRAWデータ圧縮方法の比較を示す図である。
【図11】本発明の有効性を確認するために行う実験で使用された実画像を示す図である。
【図12】図11の実画像に対し、本発明のRAWデータ圧縮方法と、既存のRAWデータ圧縮方法の比較を示す図である。
【図13】図11の実画像に対する各種圧縮結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタアレイ(CFA)を有する単板式固体撮像素子により観測されたRAWデータを、「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として直接圧縮するRAWデータ圧縮方法であって、
JPEG復号器の復号過程及びダウンサンプリングを定式化し、復号されるRAWデータと前記観測されたRAWデータの誤差が小さくなるような量子化DCT係数に対応するJPEGデータを、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」として生成することを特徴とするRAWデータ圧縮方法。
【請求項2】
DCT係数の量子化の影響を考慮して、前記量子化DCT係数を求めるために繰り返し演算を行うことにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する請求項1に記載のRAWデータ圧縮方法。
【請求項3】
パラメータ数の冗長さを利用してDCT係数のパラメータ数を削減することにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する請求項1に記載のRAWデータ圧縮方法。
【請求項4】
DCT係数の量子化誤差がRAWデータへ与える影響が、要素によらず等しくなるように量子化テーブルを再設計することにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する請求項1に記載のRAWデータ圧縮方法。
【請求項5】
DCT係数の量子化の影響を考慮して、前記量子化DCT係数を求めるために繰り返し演算を行い、パラメータ数の冗長さを利用してDCT係数のパラメータ数削減を行い、前記DCT係数の量子化誤差がRAWデータへ与える影響が、要素によらず等しくなるように量子化テーブルを再設計することにより、前記「RAWデータを復号可能なJPEGデータ」を生成する請求項1に記載のRAWデータ圧縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−124530(P2008−124530A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302718(P2006−302718)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】