RE系酸化物超電導線材の接合方法
【課題】 RE系酸化物超電導線材の優れた輸送特性を損なうことなく、かつ、接合後の酸素アニールなどの処理を不要とし、簡便に、しかも、再現性よく低抵抗の接合部を形成できる接合方法を提供する。
【解決手段】 金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合する接合方法において、(i)酸化性雰囲気中にて、(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する。但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素。
【解決手段】 金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合する接合方法において、(i)酸化性雰囲気中にて、(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する。但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた超電導特性を劣化させることなく、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材同士を接合する接合方法、及び、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆された部材を接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材の応用として、コイルや電流リード、送電線等があり、金属間化合物超電導線材、Bi系酸化物超電導線材などを用いて、既に実用化されているものも少なくない。
【0003】
しかし、金属間化合物超電導線材は臨界温度が低く、一方、Bi系酸化物超電導線材は、超電導臨界温度は高いものの、液体窒素温度で磁場中における臨界電流密度の急激な低下が深刻な問題であるなどの理由により、前者は、液体ヘリウム温度での実用化であり、後者は、液体ヘリウム温度から20K程度の温度域に限っての実用化である。
【0004】
また、電流リードに関しては、Bi系酸化物超電導材料を用いて、液体窒素温度での実用化がなされているが、磁場中(特に、垂直磁場中)における臨界電流密度の急激な低下は深刻な問題であり、装置中におけるレイアウトが制限されることや、また、超電導現象が容易にクエンチするなどの課題が残されている。
【0005】
しかし、RE系酸化物超電導線材を用いれば、液体窒素温度での幅広い応用が可能であり、金属間化合物超電導線材やBi系酸化物超電導線材の応用と比較して、冷却に必要なランニングコストを大幅に削減することが可能である。
【0006】
さらに、RE系酸化物超電導線材は、磁場中における臨界電流密度の低下が小さいので、電流リードへの応用におけるレイアウト制限が、Bi系酸化物超電導線材を用いる場合に比べ、大幅に緩和されるばかりか、応用全般において、金属間化合物超電導線材やBi系酸化物超電導線材に比べ優れた輸送特性を期待することができる。
【0007】
このようなRE系酸化物超電導線材を実用化するに際しては、長尺化が必要で、特に、連続して作製できるRE系酸化物超電導線材の長さがその応用に十分な長さではない場合、線材同士の接合が不可欠である。また、RE系酸化物超電導線材の応用では必然的に、RE系酸化物超電導線材と常電導部材を接続することが必要となるので、例えば、RE系酸化物超電導線材と金属部材との接合も不可欠である。
【0008】
このような理由で、RE系酸化物超電導線材同士や、また、RE系酸化物超電導線材と金属部材を接合しなければならないが、RE系酸化物超電導線材の輸送特性、臨界温度及び不可逆磁場などの優れた超電導特性を損なわないように、低抵抗の接合部を形成しなければならない。
【0009】
超電導線材を実用化するに際し用いる接合技術においては、RE系酸化物超電導線材同士の接合では、接合部での超電導特性を損なわない超電導接合が好ましいが、現状では、その技術は十分開発されておらず、はんだ等の低抵抗材料を用いて低抵抗の接合部を形成することが主流である(例えば、特許文献1、参照)。
【0010】
はんだ付けは簡便な接合方法であるが、接合面積を増大しなければ、接合部において低い抵抗を確保できないので、接合部の長さは必然的に長くなる。それ故、はんだ付けは、接合により長尺の超電導線材を製造する場合において、必ずしも最適な接合方法ではない。
【0011】
また、低抵抗の接合部を形成する技術として、はんだを使用しない接合方法も提案されている(例えば、特許文献2、参照)が、この接合は、真空・高温中で行われるため、RE系酸化物超電導線材の接合法として用いると、高温で、RE系酸化物超電導線材のRE系酸化物層から酸素が解離し、RE系酸化物超電導線材の超電導特性が損なわれるという課題を抱えている。
【0012】
結局、はんだを使用しない接合方法も、接合により長尺のRE系酸化物超電導線材を製造する場合において、必ずしも適切な接合方法ではない。
【0013】
【特許文献1】特開2000−133067号公報
【特許文献2】特開平11−16618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
液体窒素温度などの高温や、高磁場中で、超電導特性が優れているRE系酸化物超電導線材が、実用線材として、金属間化合物超電導線材やBi系酸化物超電導線材に替わることのメリットは、省資源・省エネルギーの点からも極めて大きい。
【0015】
そこで、本発明は、前記メリットを踏まえ、(i)液体窒素温度において、低損失で高い輸送特性を安定して備えるというRE系酸化物超電導線材の優れた特性を損なうことなく、かつ、(ii)接合後の酸素アニールなどの処理を不要とし、簡便に、しかも、再現性よく低抵抗の接合部を形成することができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
代表的なRE系酸化物超電導材料であるRE1+xBa2-xCu3Oy(RE系酸化物)は、高い臨界電流密度(Jc)を得るために、ピニングセンターとするための非超電導材料を含有していたり、Caなどの添加物が添加されている場合もあるが、いずれも、RE1+xBa2-xCu3Oyにおける酸素量yは、酸素分圧−温度条件により、6+(1/2)x〜7+(1/2)xの範囲で可逆的に変化する。
【0017】
しかし、RE系酸化物は、yが6.8未満であると、臨界温度(Tc)、臨界電流密度(Jc)、臨界磁場(Hc)などについて、本来、RE系酸化物超電導材料が有する優れた超電導特性を呈さず、線材化しても、実用化に十分な輸送特性は得られない。
【0018】
したがって、RE系酸化物超電導線材を接合する場合、接合時の熱処理で、RE系酸化物超電導層から酸素が解離し、yが6.8未満となれば、接合後に、接合部に対し酸素を導入する酸素アニールなどの熱処理を施す必要がある。
【0019】
本発明者は、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持したまま、低抵抗の接合部を形成することができれば、接合後の酸素アニールなどの処理が不要となり、簡便に、かつ、効率よくRE系酸化物超電導線材を接合できるとの発想に至り、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持したまま、低抵抗の接合部を形成する方法について鋭意研究した。
【0020】
RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持しつつ、低抵抗の接合部を形成するためには、低抵抗と所要の接合強度を確保する接合と、優れた超電導特性を維持するための酸素導入を同時に行うことができる酸素分圧と温度の関係を考慮しなければならない。
【0021】
本発明者は、上記関係を考慮し鋭意研究を続け、その結果、金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合するに際し、(i)酸化性雰囲気中において、接合面を直接重ね(はんだ等を必要としない)、(ii)その接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷すれば、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を損なわず、所要の接合強度を有する低抵抗の接合部を形成できることを見いだした。
【0022】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は次ぎのとおりである。
【0023】
(1)金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合する接合方法において、
(i)酸化性雰囲気中にて、
(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する
ことを特徴とするRE系酸化物超電導線材の接合方法。
但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素
【0024】
(2)前記酸化性雰囲気の酸素分圧及び接合面の温度を、接合処理中、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物中に、RE系酸化物が超電導特性を呈するのに必要な酸素量を確保できる酸素分圧−温度域に維持することを特徴とする前記(1)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0025】
(3)前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0026】
(4)前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0027】
(5)前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱するとともに、該接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0028】
(6)前記RE系酸化物超電導線材の超電導層が、主として、RE−Ba−Cu−O系酸化物で構成されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0029】
(7)前記金属材料が、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Ti、W、In、Ir、及び、Rhのいずれか1種、又は、それらの元素を含む合金のいずれか1種であることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材と、金属材料や金属で被覆された部材を、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を損なうことなく、簡便に、かつ、接合後の後処理を必要とせずに効率よく接合し、低抵抗(従来の接合部抵抗を10分の1以上低減)の接合部を、再現性よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材の接合においては、その端部(接合部)のAg層(保護層)を対向させ、任意の面積を重ね合わせて、酸化性雰囲気中、接合面に加圧下で熱処理を施すが、この熱処理により、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物から酸素が解離し、Tc及びJcなどの超電導特性が損なわれてはならない。
【0032】
本発明者は、図1(a)に示す接合形態で、2本のRE系酸化物超電導線材4(基材3の上にRE系酸化物超電導層1が形成され、その上にAg層2が被覆されている)を、所要の圧力下で固定し、室温までの冷却(炉冷)を含む熱処理を、アルゴン雰囲気中、及び、酸素雰囲気中で行い、接合部の抵抗値と、Tc及びJcを測定した。
【0033】
その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から、室温までの冷却を含む熱処理をアルゴン雰囲気中で行った場合において、接合部の抵抗値は高く、かつ、Tc及びJcの測定が不能で、超電導特性が完全に消失したことが分かる。一方、室温までの冷却を含む熱処理を純酸素雰囲気中で行った場合においては、接合部の抵抗値が低く、かつ、Tc及びJcが、接合の前後で変化していないことが分かる。
【0036】
図2に、光学顕微鏡で観察したY系酸化物超電導線材の接合部の断面(倍率×50)を示す。接合部においては、所要の強度や、導電性を確保する観点から、緻密に接合されていることが必要であるが、本発明によれば、図2に示すように、Ag層が接合面で緊密に密着している。
【0037】
以上の知見を踏まえ、本発明においては、金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と、金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を、
(i)酸化性雰囲気中にて、
(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する。
【0038】
但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素である。
【0039】
RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物は、RE1+xBa2-xCu3Oy(0≦x≦0.2)、REBa2Cu4O8、RE2Ba4Cu7O15などであり、さらに、これらを主成分とし、RE2O3、CeO2、RE2BaCuO5(RE=Nd、LaのときはRE4Ba2Cu2O10)など非超電導相を分散させたものや、Ca、Mg、Sr、Zr、Zn、Ti、Hfなどを添加したものである。
【0040】
なお、前記非超電導相や添加物は、特に限定されるものではない。
【0041】
RE系酸化物超電導線材は、通常、超電導層の保護、クエンチの際の電流のバイパスやクエンチで発生する電圧による発熱の放出などの理由で、表面が、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Ti、W、In、Ir、及び、Rhのいずれか1種、又は、それらの元素を含む合金のいずれか1種で被覆されている。
【0042】
このような被覆金属層を有するRE系酸化物超電導線材を接合する場合、接合部において、その被覆金属層の表面同士を、所要の面積で重ね合わせる。この場合、被覆金属層の表面に対する表面処理は、特に行わなくてもよいが、より緊密で低抵抗の接合を得るため、被覆金属層の表面に、洗浄や研磨などの表面清浄化処理を施してもよい。
【0043】
被覆金属層の表面同士を重ね合わせた接合部を、例えば、図1(a)に示すような接合形態のもとで固定し、接合部を均一に加圧する。また、図1(b)のような接合形態を採用すれば、RE系酸化物超電導線材の超電導層の向きを揃えることができる。
【0044】
接合部に負荷する圧力は、被覆金属の種類や、接触面積により適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。上記圧力は、より緊密で低抵抗の接合を形成する点で、通常、10MPa以上が好ましいが、より緊密で低抵抗の接合を形成できれば、10MPa未満でもよい。
【0045】
接合部を覆う雰囲気は、酸化性のガスを含む雰囲気であればよく、特定の雰囲気に限定されないが、純酸素ガス雰囲気、不活性ガスと酸素の混合ガス雰囲気、及び、大気のいずれか1種の雰囲気が好ましい。
【0046】
酸化性雰囲気の雰囲気圧(全圧)も、特に限定されるものではないが、超電導層が超電導特性を呈するのに必要な酸素量(例えば、RE1+xBa2-xCu3Oyの場合は、yが6.8以上)を得るまでに長時間を要し、また、超電導層が上記酸素量を確実に安定して得ることができない場合もあるので、上記雰囲気圧(全圧)は、接合時間(即ち、RE系酸化物への酸素導入時間)の短縮、及び、安定的なRE系酸化物中での酸素量確保という点で、1atm以上が好ましい。
【0047】
本発明では、酸化性雰囲気の酸素分圧が重要であるが、この点については後述する。
【0048】
酸化性雰囲気中で、所要の圧力で均一に加圧された状態の接合面に、熱エネルギーを付与して、接合面を加熱する。
【0049】
接合面に熱エネルギーを付与する方法は、特に制限されるものではないが、接合部の加熱、接合部への通電、超音波又は電磁波付与、及び、接合部の摩擦のいずれかで行うことが好ましい。また、これら熱エネルギーを付与する方法の2つ以上を併用してもよい。
【0050】
接合部の加熱は、酸化性雰囲気中で接合部を直接加熱してもよいし、また、接合部を、熱せられた酸化性雰囲気中で保持してもよい。
【0051】
通電は、重ね合わせて加圧した接合面をまたいで電流を流し、接合面に発生する抵抗によりジュール発熱を得る方法である。超音波や電磁波付与は、重ね合わせて加圧した接合面の金属原子に、超音波や電磁波による外部エネルギーで振動を誘起し、発熱させる方法である。摩擦は、重ね合わせて加圧した接合面を高速で擦り合わせるなどして、接合部に摩擦熱を発生させる方法である。
【0052】
前述したように、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持しつつ、低抵抗の接合部を形成するためには、低抵抗と所要の接合強度を確保する接合と、超電導特性を維持するための酸素導入を同時に行うことができる酸素分圧(例えば、RE1+xBa2-xCu3Oyの場合には、yが6.8以上となる酸素分圧)と温度の関係を考慮しなければならない。
【0053】
本発明では、酸化性雰囲気の酸素分圧及び接合面の温度を、接合後の冷却過程をも含む接合処理中、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物中に、RE系酸化物が超電導特性を呈するのに必要な酸素量を確保できる酸素分圧−温度域に維持する。この点が、本発明の特徴である。
【0054】
例えば、RE系酸化物がRE1+xBa2-xCu3Oyの場合、接合後の冷却過程をも含む接合処理中、酸素分圧及び温度を、yが6.8以上となる酸素分圧−温度域に維持しなければならない。
【0055】
この酸素分圧−温度域は、RE系酸化物によって異なるが、例えば、YBa2Cu3Oyの場合は、図3に示す酸素分圧−温度曲線より下側の領域である。
【0056】
なお、図3は、J.Shimoyamaらの論文(MRS Proceedings,689(2002)265)に記載のFig.1(Oxygen nonstoichiometry of YBa2Cu3Oy)において、y=6.8のところの酸素分圧と温度を読み取って作成したものである。
【0057】
即ち、RE1+xBa2-xCu3Oyが超電導層を構成しているRE系酸化物超電導線材を接合する場合、接合後の冷却過程をも含む接合処理中、酸素分圧及び温度を、図3に示す酸素分圧−温度曲線より下側の領域に維持しなければならない。
【0058】
上記接合処理に係る酸素分圧及び温度を上記領域に維持することにより、低抵抗と所要の接合強度を確保する接合と、超電導層において超電導特性を維持するためのRE系酸化物への酸素導入を同時に行うことができ、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持しつつ、低抵抗の接合部を形成することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例について説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性又は再現性を実証するために採用した一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。
【0060】
本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0061】
(実施例1)
ハステロイ上にGd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層した2本のY系酸化物超電導線材のそれぞれの端部のAg層を対向させて、2×5mm2の面積で重ね合わせた。
【0062】
重ね合わせ部分のAg層に、特に、清浄化又は研磨など表面処理を施さなかったが、接合部において正確なI−V特性を測定するため、重ね合わせ部分以外のAg層の所定の箇所において、図4に示すように、Ag層2を除去するエッチングを施し、超電導層1を露出させた。
【0063】
このAg層の除去は、接合したY系酸化物超電導線材の接合部におけるI−V特性を測定する際に、Ag層の電流を遮断し、接合部における電流の流れを、超電導層−Ag層−超電導層とするものである。
【0064】
Y系酸化物超電導線材のAg層を対向して重ね合わせた部分を、図5に示すように、プレート5(例えば、インコネル板)で上下から挟み、プレート5の両端をボルト・ナット6で固定した。この固定状態において、Y系酸化物超電導線材の接合面に加わる荷重は、ほぼ均一であり、室温で約50MPaであった。
【0065】
固定・加圧状態にある接合部を、純酸素雰囲気中で500℃まで昇温し、1時間保持し、その後、室温まで炉冷した。酸化性雰囲気中での熱処理が終了した後、接合部を固定していたプレートを取り去り、図6に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。
【0066】
その結果、接合部の電圧は電流に比例して上昇しており、オーミックなI−V特性を示した。その結果から抵抗を計算すると、0.1μΩで、これを単位面積の抵抗に換算すると、10nΩcm2である。この抵抗値は、従来技術で得られる抵抗値の10分の1である。
【0067】
また、接合部は、線材として使用する際に線材の長手方向に負荷される荷重に十分耐えることができる接合強度を有することを、単純な引張り試験で確認した。
【0068】
さらに、上記接合法と同様の方法で、接合面積を2×10mm2、2×20mm2として接合し、その接合部の抵抗を測定した。その結果、抵抗値は、それぞれ、0.08μΩ、0.05μΩであり、接合面積を大きくすることにより、さらに抵抗値を減少できることを確認できた。
【0069】
(実施例2)
ハステロイ上に、Gd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層したY系酸化物超電導線材を、2×70mm2の形状に切り出し、図7に示すように結線し、液体窒素中でI−V特性を測定した。次に、前記線材を中央で切断し、2本の線材の端部のAg層を対向させて、2×20mm2の面積で重ね合わせた(図1(a)、参照)。
【0070】
重ね合わせ部分のAg層には、特に、清浄化又は研磨などの表面処理を施さず、Y系酸化物超電導線材のAg層を対向して重ね合わせた部分を、インコネル製治具で固定した(図8、参照)。この固定状態において、Y系酸化物超電導線材の接合面に加わる荷重は、ほぼ均一であり、室温で約10MPaであった。
【0071】
固定・加圧状態にある接合部を、純酸素雰囲気中で500℃まで昇温し、1時間保持し、その後、室温まで炉冷した。酸化性雰囲気中での熱処理が終了した後、接合部を固定していたインコネル治具を取り去り、図6に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。その結果を、図9に示す。
【0072】
図9に示すように、本発明による方法で接合した後のY系酸化物超電導線材には、接合前のY系酸化物超電導線材と同等の電流を流すことができる。よって、本接合法では、超電導線材の超電導層を劣化させない接合を可能とすることが確認できた。
【0073】
また、低電圧を検出できる装置で測定した電流、電圧値から接合部の抵抗を計算すると、0.03μΩで、単位面積の抵抗に換算すると約10nΩcm2であった。
【0074】
(比較例)
ハステロイ上に、Gd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層したY系酸化物超電導線材を、250℃に熱したホットプレート上に置き、市販のはんだ、インジウム等の接着層を溶融させ、Ag層に塗布した。その結果、市販のはんだは、Ag層上ではぬれ性が悪く、球状に凝集し、均一に塗布することができなかった。一方、インジウムは、Ag層上でぬれ性が非常に良く、均一に塗布することができた。
【0075】
次に、インジウムを使用して、Y系酸化物超電導線材の接合実験を行った。前記Y系酸化物超電導線材を、2×70mm2の形状に切り出し、図7に示すように結線し、液体窒素中でI−V特性を測定した。次に、前記線材を中央で切断し、2本の線材の端から20mmのAg層上に、それぞれ、溶融させたインジウムを均一に塗布した。
【0076】
前記インジウムの塗布は、大気中で250℃に熱したホットプレート上で、インジウムを溶融させて行った。溶融インジウムを塗布したAg層を、図10に示すように対向させて、2×20mm2の面積で重ね合わせ、そのままホットプレート上から外し、冷却して接合した。
【0077】
前記のインジウムを用いて接合した線材を、図6に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。その結果を、図11に示す。
【0078】
図11に示すように、インジウムを用いて接合したY系酸化物超電導線材は、接合前のY系酸化物超電導線材と同等の電流を流すことができる。しかし、発生する電圧は、図9に示した本発明の方法で接合した線材に発生する電圧よりはるかに高く、Ic近傍で読みとった電流、電圧値から接合部の抵抗を計算すると、0.25μΩ程度であった。
【0079】
これは、前記(実施例2)の抵抗の約10倍で、インジウムの抵抗や、インジウムとAg層の接触抵抗が加算されるために、抵抗が高くなると言える。これと比較して、本接合法は、Ag層とYBCO層の接触抵抗と、Ag層以外の抵抗が発生せず、電圧が発生したとしても非常に低い値に抑制することが可能であることを確認した。
【0080】
(実施例3)
ハステロイ上に、Gd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層したY系酸化物超電導線材を、2×70mm2の形状に、2本、切り出し、図7に示すように結線し、液体窒素中で、それぞれのI−V特性を測定した。次に、前記線材のうち1本を、中央で切断し、他の1本は両端を切断して2×40mm2の形状とし、図1(b)に示すようにAg層を対向させて、2×40mm2の面積で重ね合わせた。
【0081】
重ね合わせ部分のAg層には、特に、清浄化又は研磨などの表面処理を施さず、Y系酸化物超電導線材のAg層を対向して重ね合わせた部分を、インコネル製治具で固定した。この固定状態において、Y系酸化物超電導線材の接合面に加わる荷重は、ほぼ均一であり、室温で約10MPaであった。
【0082】
固定・加圧状態にある接合部を、純酸素雰囲気中で500℃まで昇温し、1時間保持し、その後、室温まで炉冷した。酸化性雰囲気中での熱処理が終了した後、接合部を固定していたインコネル治具を取り去り、図12に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。
【0083】
本発明による方法で接合後のY系酸化物超電導線材は、接合前のY系酸化物超電導線材と同等の電流を流すことができることを確認した。よって、本接合法では、超電導線材の超電導層を劣化させない接合を可能とすることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
前述したように、本発明によれば、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材と、金属材料や金属で被覆された部材を、超電導線材の本来の優れた超電導特性を損なうことなく、簡便に、かつ、接合後の後処理を必要とせずに効率よく接合し、低抵抗の接合部を、再現性よく形成することができる。
【0085】
したがって、本発明は、強磁場発生コイル、電流リード、高電圧送電の他、省資源・エネルギー技術等へ幅広く利用され得るものであり、その利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】RE系酸化物超電導線材の接合形態を示す側面図である。(a)は、超電導層を対向させる接合形態を示し、(b)は、超電導層を揃える接合形態を示す。
【図2】接合したY系酸化物超電導線材の接合部の断面(倍率×50)を示す図である。
【図3】YBa2Cu3Oyのy=6.8となる酸素分圧と温度の関係を示す図である。
【図4】Y系酸化物超電導線材のAg層を除去した後の形態を示す上面図である。
【図5】RE系酸化物超電導線材の接合部を固定する一態様を示す斜視図である。
【図6】Y系酸化物超電導線材の接合部におけるI−V特性を測定するための結線を示す側面図である。
【図7】Y系酸化物超電導線材の接合前のI−V特性を測定するための結線を示す側面図である。
【図8】RE系酸化物超電導線材の接合部を固定する一態様を示す斜視図である。
【図9】Y系酸化物超電導線材の接合前、および、図1(a)の形態で接合後の、I−V特性を示す図である。接合後のI−V特性は、図6に示すように、接合部を挟んで測定したI−V特性である。
【図10】RE系酸化物超電導線材を、図1(a)の接合形態にて接着層を用いて接合する一態様を示す側面図である。
【図11】Y系酸化物超電導線材の接合前、および、接着層にインジウムを用いて図10の形態で接合した後の、I−V特性を示す図である。接合後のI−V特性は、図6に示すように、接合部を挟んで測定したI−V特性である。
【図12】図1(b)の接合形態にて接合したY系酸化物超電導線材のI−V特性を測定するための結線を示す側面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 RE系酸化物超電導層
2 Ag層
3 基材
4 RE系酸化物超電導線材
5 プレート
6 ボルト・ナット
7 接着層
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた超電導特性を劣化させることなく、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材同士を接合する接合方法、及び、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆された部材を接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材の応用として、コイルや電流リード、送電線等があり、金属間化合物超電導線材、Bi系酸化物超電導線材などを用いて、既に実用化されているものも少なくない。
【0003】
しかし、金属間化合物超電導線材は臨界温度が低く、一方、Bi系酸化物超電導線材は、超電導臨界温度は高いものの、液体窒素温度で磁場中における臨界電流密度の急激な低下が深刻な問題であるなどの理由により、前者は、液体ヘリウム温度での実用化であり、後者は、液体ヘリウム温度から20K程度の温度域に限っての実用化である。
【0004】
また、電流リードに関しては、Bi系酸化物超電導材料を用いて、液体窒素温度での実用化がなされているが、磁場中(特に、垂直磁場中)における臨界電流密度の急激な低下は深刻な問題であり、装置中におけるレイアウトが制限されることや、また、超電導現象が容易にクエンチするなどの課題が残されている。
【0005】
しかし、RE系酸化物超電導線材を用いれば、液体窒素温度での幅広い応用が可能であり、金属間化合物超電導線材やBi系酸化物超電導線材の応用と比較して、冷却に必要なランニングコストを大幅に削減することが可能である。
【0006】
さらに、RE系酸化物超電導線材は、磁場中における臨界電流密度の低下が小さいので、電流リードへの応用におけるレイアウト制限が、Bi系酸化物超電導線材を用いる場合に比べ、大幅に緩和されるばかりか、応用全般において、金属間化合物超電導線材やBi系酸化物超電導線材に比べ優れた輸送特性を期待することができる。
【0007】
このようなRE系酸化物超電導線材を実用化するに際しては、長尺化が必要で、特に、連続して作製できるRE系酸化物超電導線材の長さがその応用に十分な長さではない場合、線材同士の接合が不可欠である。また、RE系酸化物超電導線材の応用では必然的に、RE系酸化物超電導線材と常電導部材を接続することが必要となるので、例えば、RE系酸化物超電導線材と金属部材との接合も不可欠である。
【0008】
このような理由で、RE系酸化物超電導線材同士や、また、RE系酸化物超電導線材と金属部材を接合しなければならないが、RE系酸化物超電導線材の輸送特性、臨界温度及び不可逆磁場などの優れた超電導特性を損なわないように、低抵抗の接合部を形成しなければならない。
【0009】
超電導線材を実用化するに際し用いる接合技術においては、RE系酸化物超電導線材同士の接合では、接合部での超電導特性を損なわない超電導接合が好ましいが、現状では、その技術は十分開発されておらず、はんだ等の低抵抗材料を用いて低抵抗の接合部を形成することが主流である(例えば、特許文献1、参照)。
【0010】
はんだ付けは簡便な接合方法であるが、接合面積を増大しなければ、接合部において低い抵抗を確保できないので、接合部の長さは必然的に長くなる。それ故、はんだ付けは、接合により長尺の超電導線材を製造する場合において、必ずしも最適な接合方法ではない。
【0011】
また、低抵抗の接合部を形成する技術として、はんだを使用しない接合方法も提案されている(例えば、特許文献2、参照)が、この接合は、真空・高温中で行われるため、RE系酸化物超電導線材の接合法として用いると、高温で、RE系酸化物超電導線材のRE系酸化物層から酸素が解離し、RE系酸化物超電導線材の超電導特性が損なわれるという課題を抱えている。
【0012】
結局、はんだを使用しない接合方法も、接合により長尺のRE系酸化物超電導線材を製造する場合において、必ずしも適切な接合方法ではない。
【0013】
【特許文献1】特開2000−133067号公報
【特許文献2】特開平11−16618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
液体窒素温度などの高温や、高磁場中で、超電導特性が優れているRE系酸化物超電導線材が、実用線材として、金属間化合物超電導線材やBi系酸化物超電導線材に替わることのメリットは、省資源・省エネルギーの点からも極めて大きい。
【0015】
そこで、本発明は、前記メリットを踏まえ、(i)液体窒素温度において、低損失で高い輸送特性を安定して備えるというRE系酸化物超電導線材の優れた特性を損なうことなく、かつ、(ii)接合後の酸素アニールなどの処理を不要とし、簡便に、しかも、再現性よく低抵抗の接合部を形成することができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
代表的なRE系酸化物超電導材料であるRE1+xBa2-xCu3Oy(RE系酸化物)は、高い臨界電流密度(Jc)を得るために、ピニングセンターとするための非超電導材料を含有していたり、Caなどの添加物が添加されている場合もあるが、いずれも、RE1+xBa2-xCu3Oyにおける酸素量yは、酸素分圧−温度条件により、6+(1/2)x〜7+(1/2)xの範囲で可逆的に変化する。
【0017】
しかし、RE系酸化物は、yが6.8未満であると、臨界温度(Tc)、臨界電流密度(Jc)、臨界磁場(Hc)などについて、本来、RE系酸化物超電導材料が有する優れた超電導特性を呈さず、線材化しても、実用化に十分な輸送特性は得られない。
【0018】
したがって、RE系酸化物超電導線材を接合する場合、接合時の熱処理で、RE系酸化物超電導層から酸素が解離し、yが6.8未満となれば、接合後に、接合部に対し酸素を導入する酸素アニールなどの熱処理を施す必要がある。
【0019】
本発明者は、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持したまま、低抵抗の接合部を形成することができれば、接合後の酸素アニールなどの処理が不要となり、簡便に、かつ、効率よくRE系酸化物超電導線材を接合できるとの発想に至り、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持したまま、低抵抗の接合部を形成する方法について鋭意研究した。
【0020】
RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持しつつ、低抵抗の接合部を形成するためには、低抵抗と所要の接合強度を確保する接合と、優れた超電導特性を維持するための酸素導入を同時に行うことができる酸素分圧と温度の関係を考慮しなければならない。
【0021】
本発明者は、上記関係を考慮し鋭意研究を続け、その結果、金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合するに際し、(i)酸化性雰囲気中において、接合面を直接重ね(はんだ等を必要としない)、(ii)その接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷すれば、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を損なわず、所要の接合強度を有する低抵抗の接合部を形成できることを見いだした。
【0022】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は次ぎのとおりである。
【0023】
(1)金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合する接合方法において、
(i)酸化性雰囲気中にて、
(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する
ことを特徴とするRE系酸化物超電導線材の接合方法。
但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素
【0024】
(2)前記酸化性雰囲気の酸素分圧及び接合面の温度を、接合処理中、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物中に、RE系酸化物が超電導特性を呈するのに必要な酸素量を確保できる酸素分圧−温度域に維持することを特徴とする前記(1)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0025】
(3)前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0026】
(4)前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0027】
(5)前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱するとともに、該接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0028】
(6)前記RE系酸化物超電導線材の超電導層が、主として、RE−Ba−Cu−O系酸化物で構成されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【0029】
(7)前記金属材料が、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Ti、W、In、Ir、及び、Rhのいずれか1種、又は、それらの元素を含む合金のいずれか1種であることを特徴とする前記(1)〜(6)に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材と、金属材料や金属で被覆された部材を、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を損なうことなく、簡便に、かつ、接合後の後処理を必要とせずに効率よく接合し、低抵抗(従来の接合部抵抗を10分の1以上低減)の接合部を、再現性よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材の接合においては、その端部(接合部)のAg層(保護層)を対向させ、任意の面積を重ね合わせて、酸化性雰囲気中、接合面に加圧下で熱処理を施すが、この熱処理により、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物から酸素が解離し、Tc及びJcなどの超電導特性が損なわれてはならない。
【0032】
本発明者は、図1(a)に示す接合形態で、2本のRE系酸化物超電導線材4(基材3の上にRE系酸化物超電導層1が形成され、その上にAg層2が被覆されている)を、所要の圧力下で固定し、室温までの冷却(炉冷)を含む熱処理を、アルゴン雰囲気中、及び、酸素雰囲気中で行い、接合部の抵抗値と、Tc及びJcを測定した。
【0033】
その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から、室温までの冷却を含む熱処理をアルゴン雰囲気中で行った場合において、接合部の抵抗値は高く、かつ、Tc及びJcの測定が不能で、超電導特性が完全に消失したことが分かる。一方、室温までの冷却を含む熱処理を純酸素雰囲気中で行った場合においては、接合部の抵抗値が低く、かつ、Tc及びJcが、接合の前後で変化していないことが分かる。
【0036】
図2に、光学顕微鏡で観察したY系酸化物超電導線材の接合部の断面(倍率×50)を示す。接合部においては、所要の強度や、導電性を確保する観点から、緻密に接合されていることが必要であるが、本発明によれば、図2に示すように、Ag層が接合面で緊密に密着している。
【0037】
以上の知見を踏まえ、本発明においては、金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と、金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を、
(i)酸化性雰囲気中にて、
(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する。
【0038】
但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素である。
【0039】
RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物は、RE1+xBa2-xCu3Oy(0≦x≦0.2)、REBa2Cu4O8、RE2Ba4Cu7O15などであり、さらに、これらを主成分とし、RE2O3、CeO2、RE2BaCuO5(RE=Nd、LaのときはRE4Ba2Cu2O10)など非超電導相を分散させたものや、Ca、Mg、Sr、Zr、Zn、Ti、Hfなどを添加したものである。
【0040】
なお、前記非超電導相や添加物は、特に限定されるものではない。
【0041】
RE系酸化物超電導線材は、通常、超電導層の保護、クエンチの際の電流のバイパスやクエンチで発生する電圧による発熱の放出などの理由で、表面が、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Ti、W、In、Ir、及び、Rhのいずれか1種、又は、それらの元素を含む合金のいずれか1種で被覆されている。
【0042】
このような被覆金属層を有するRE系酸化物超電導線材を接合する場合、接合部において、その被覆金属層の表面同士を、所要の面積で重ね合わせる。この場合、被覆金属層の表面に対する表面処理は、特に行わなくてもよいが、より緊密で低抵抗の接合を得るため、被覆金属層の表面に、洗浄や研磨などの表面清浄化処理を施してもよい。
【0043】
被覆金属層の表面同士を重ね合わせた接合部を、例えば、図1(a)に示すような接合形態のもとで固定し、接合部を均一に加圧する。また、図1(b)のような接合形態を採用すれば、RE系酸化物超電導線材の超電導層の向きを揃えることができる。
【0044】
接合部に負荷する圧力は、被覆金属の種類や、接触面積により適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。上記圧力は、より緊密で低抵抗の接合を形成する点で、通常、10MPa以上が好ましいが、より緊密で低抵抗の接合を形成できれば、10MPa未満でもよい。
【0045】
接合部を覆う雰囲気は、酸化性のガスを含む雰囲気であればよく、特定の雰囲気に限定されないが、純酸素ガス雰囲気、不活性ガスと酸素の混合ガス雰囲気、及び、大気のいずれか1種の雰囲気が好ましい。
【0046】
酸化性雰囲気の雰囲気圧(全圧)も、特に限定されるものではないが、超電導層が超電導特性を呈するのに必要な酸素量(例えば、RE1+xBa2-xCu3Oyの場合は、yが6.8以上)を得るまでに長時間を要し、また、超電導層が上記酸素量を確実に安定して得ることができない場合もあるので、上記雰囲気圧(全圧)は、接合時間(即ち、RE系酸化物への酸素導入時間)の短縮、及び、安定的なRE系酸化物中での酸素量確保という点で、1atm以上が好ましい。
【0047】
本発明では、酸化性雰囲気の酸素分圧が重要であるが、この点については後述する。
【0048】
酸化性雰囲気中で、所要の圧力で均一に加圧された状態の接合面に、熱エネルギーを付与して、接合面を加熱する。
【0049】
接合面に熱エネルギーを付与する方法は、特に制限されるものではないが、接合部の加熱、接合部への通電、超音波又は電磁波付与、及び、接合部の摩擦のいずれかで行うことが好ましい。また、これら熱エネルギーを付与する方法の2つ以上を併用してもよい。
【0050】
接合部の加熱は、酸化性雰囲気中で接合部を直接加熱してもよいし、また、接合部を、熱せられた酸化性雰囲気中で保持してもよい。
【0051】
通電は、重ね合わせて加圧した接合面をまたいで電流を流し、接合面に発生する抵抗によりジュール発熱を得る方法である。超音波や電磁波付与は、重ね合わせて加圧した接合面の金属原子に、超音波や電磁波による外部エネルギーで振動を誘起し、発熱させる方法である。摩擦は、重ね合わせて加圧した接合面を高速で擦り合わせるなどして、接合部に摩擦熱を発生させる方法である。
【0052】
前述したように、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持しつつ、低抵抗の接合部を形成するためには、低抵抗と所要の接合強度を確保する接合と、超電導特性を維持するための酸素導入を同時に行うことができる酸素分圧(例えば、RE1+xBa2-xCu3Oyの場合には、yが6.8以上となる酸素分圧)と温度の関係を考慮しなければならない。
【0053】
本発明では、酸化性雰囲気の酸素分圧及び接合面の温度を、接合後の冷却過程をも含む接合処理中、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物中に、RE系酸化物が超電導特性を呈するのに必要な酸素量を確保できる酸素分圧−温度域に維持する。この点が、本発明の特徴である。
【0054】
例えば、RE系酸化物がRE1+xBa2-xCu3Oyの場合、接合後の冷却過程をも含む接合処理中、酸素分圧及び温度を、yが6.8以上となる酸素分圧−温度域に維持しなければならない。
【0055】
この酸素分圧−温度域は、RE系酸化物によって異なるが、例えば、YBa2Cu3Oyの場合は、図3に示す酸素分圧−温度曲線より下側の領域である。
【0056】
なお、図3は、J.Shimoyamaらの論文(MRS Proceedings,689(2002)265)に記載のFig.1(Oxygen nonstoichiometry of YBa2Cu3Oy)において、y=6.8のところの酸素分圧と温度を読み取って作成したものである。
【0057】
即ち、RE1+xBa2-xCu3Oyが超電導層を構成しているRE系酸化物超電導線材を接合する場合、接合後の冷却過程をも含む接合処理中、酸素分圧及び温度を、図3に示す酸素分圧−温度曲線より下側の領域に維持しなければならない。
【0058】
上記接合処理に係る酸素分圧及び温度を上記領域に維持することにより、低抵抗と所要の接合強度を確保する接合と、超電導層において超電導特性を維持するためのRE系酸化物への酸素導入を同時に行うことができ、RE系酸化物超電導線材の優れた超電導特性を維持しつつ、低抵抗の接合部を形成することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例について説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性又は再現性を実証するために採用した一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。
【0060】
本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0061】
(実施例1)
ハステロイ上にGd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層した2本のY系酸化物超電導線材のそれぞれの端部のAg層を対向させて、2×5mm2の面積で重ね合わせた。
【0062】
重ね合わせ部分のAg層に、特に、清浄化又は研磨など表面処理を施さなかったが、接合部において正確なI−V特性を測定するため、重ね合わせ部分以外のAg層の所定の箇所において、図4に示すように、Ag層2を除去するエッチングを施し、超電導層1を露出させた。
【0063】
このAg層の除去は、接合したY系酸化物超電導線材の接合部におけるI−V特性を測定する際に、Ag層の電流を遮断し、接合部における電流の流れを、超電導層−Ag層−超電導層とするものである。
【0064】
Y系酸化物超電導線材のAg層を対向して重ね合わせた部分を、図5に示すように、プレート5(例えば、インコネル板)で上下から挟み、プレート5の両端をボルト・ナット6で固定した。この固定状態において、Y系酸化物超電導線材の接合面に加わる荷重は、ほぼ均一であり、室温で約50MPaであった。
【0065】
固定・加圧状態にある接合部を、純酸素雰囲気中で500℃まで昇温し、1時間保持し、その後、室温まで炉冷した。酸化性雰囲気中での熱処理が終了した後、接合部を固定していたプレートを取り去り、図6に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。
【0066】
その結果、接合部の電圧は電流に比例して上昇しており、オーミックなI−V特性を示した。その結果から抵抗を計算すると、0.1μΩで、これを単位面積の抵抗に換算すると、10nΩcm2である。この抵抗値は、従来技術で得られる抵抗値の10分の1である。
【0067】
また、接合部は、線材として使用する際に線材の長手方向に負荷される荷重に十分耐えることができる接合強度を有することを、単純な引張り試験で確認した。
【0068】
さらに、上記接合法と同様の方法で、接合面積を2×10mm2、2×20mm2として接合し、その接合部の抵抗を測定した。その結果、抵抗値は、それぞれ、0.08μΩ、0.05μΩであり、接合面積を大きくすることにより、さらに抵抗値を減少できることを確認できた。
【0069】
(実施例2)
ハステロイ上に、Gd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層したY系酸化物超電導線材を、2×70mm2の形状に切り出し、図7に示すように結線し、液体窒素中でI−V特性を測定した。次に、前記線材を中央で切断し、2本の線材の端部のAg層を対向させて、2×20mm2の面積で重ね合わせた(図1(a)、参照)。
【0070】
重ね合わせ部分のAg層には、特に、清浄化又は研磨などの表面処理を施さず、Y系酸化物超電導線材のAg層を対向して重ね合わせた部分を、インコネル製治具で固定した(図8、参照)。この固定状態において、Y系酸化物超電導線材の接合面に加わる荷重は、ほぼ均一であり、室温で約10MPaであった。
【0071】
固定・加圧状態にある接合部を、純酸素雰囲気中で500℃まで昇温し、1時間保持し、その後、室温まで炉冷した。酸化性雰囲気中での熱処理が終了した後、接合部を固定していたインコネル治具を取り去り、図6に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。その結果を、図9に示す。
【0072】
図9に示すように、本発明による方法で接合した後のY系酸化物超電導線材には、接合前のY系酸化物超電導線材と同等の電流を流すことができる。よって、本接合法では、超電導線材の超電導層を劣化させない接合を可能とすることが確認できた。
【0073】
また、低電圧を検出できる装置で測定した電流、電圧値から接合部の抵抗を計算すると、0.03μΩで、単位面積の抵抗に換算すると約10nΩcm2であった。
【0074】
(比較例)
ハステロイ上に、Gd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層したY系酸化物超電導線材を、250℃に熱したホットプレート上に置き、市販のはんだ、インジウム等の接着層を溶融させ、Ag層に塗布した。その結果、市販のはんだは、Ag層上ではぬれ性が悪く、球状に凝集し、均一に塗布することができなかった。一方、インジウムは、Ag層上でぬれ性が非常に良く、均一に塗布することができた。
【0075】
次に、インジウムを使用して、Y系酸化物超電導線材の接合実験を行った。前記Y系酸化物超電導線材を、2×70mm2の形状に切り出し、図7に示すように結線し、液体窒素中でI−V特性を測定した。次に、前記線材を中央で切断し、2本の線材の端から20mmのAg層上に、それぞれ、溶融させたインジウムを均一に塗布した。
【0076】
前記インジウムの塗布は、大気中で250℃に熱したホットプレート上で、インジウムを溶融させて行った。溶融インジウムを塗布したAg層を、図10に示すように対向させて、2×20mm2の面積で重ね合わせ、そのままホットプレート上から外し、冷却して接合した。
【0077】
前記のインジウムを用いて接合した線材を、図6に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。その結果を、図11に示す。
【0078】
図11に示すように、インジウムを用いて接合したY系酸化物超電導線材は、接合前のY系酸化物超電導線材と同等の電流を流すことができる。しかし、発生する電圧は、図9に示した本発明の方法で接合した線材に発生する電圧よりはるかに高く、Ic近傍で読みとった電流、電圧値から接合部の抵抗を計算すると、0.25μΩ程度であった。
【0079】
これは、前記(実施例2)の抵抗の約10倍で、インジウムの抵抗や、インジウムとAg層の接触抵抗が加算されるために、抵抗が高くなると言える。これと比較して、本接合法は、Ag層とYBCO層の接触抵抗と、Ag層以外の抵抗が発生せず、電圧が発生したとしても非常に低い値に抑制することが可能であることを確認した。
【0080】
(実施例3)
ハステロイ上に、Gd2Zr2O7、CeO2、YBa2Cu3Oy、Agの順で積層したY系酸化物超電導線材を、2×70mm2の形状に、2本、切り出し、図7に示すように結線し、液体窒素中で、それぞれのI−V特性を測定した。次に、前記線材のうち1本を、中央で切断し、他の1本は両端を切断して2×40mm2の形状とし、図1(b)に示すようにAg層を対向させて、2×40mm2の面積で重ね合わせた。
【0081】
重ね合わせ部分のAg層には、特に、清浄化又は研磨などの表面処理を施さず、Y系酸化物超電導線材のAg層を対向して重ね合わせた部分を、インコネル製治具で固定した。この固定状態において、Y系酸化物超電導線材の接合面に加わる荷重は、ほぼ均一であり、室温で約10MPaであった。
【0082】
固定・加圧状態にある接合部を、純酸素雰囲気中で500℃まで昇温し、1時間保持し、その後、室温まで炉冷した。酸化性雰囲気中での熱処理が終了した後、接合部を固定していたインコネル治具を取り去り、図12に示すように結線し、液体窒素中で、I−V特性を測定した。
【0083】
本発明による方法で接合後のY系酸化物超電導線材は、接合前のY系酸化物超電導線材と同等の電流を流すことができることを確認した。よって、本接合法では、超電導線材の超電導層を劣化させない接合を可能とすることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
前述したように、本発明によれば、金属で被覆されたRE系酸化物超電導線材と、金属材料や金属で被覆された部材を、超電導線材の本来の優れた超電導特性を損なうことなく、簡便に、かつ、接合後の後処理を必要とせずに効率よく接合し、低抵抗の接合部を、再現性よく形成することができる。
【0085】
したがって、本発明は、強磁場発生コイル、電流リード、高電圧送電の他、省資源・エネルギー技術等へ幅広く利用され得るものであり、その利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】RE系酸化物超電導線材の接合形態を示す側面図である。(a)は、超電導層を対向させる接合形態を示し、(b)は、超電導層を揃える接合形態を示す。
【図2】接合したY系酸化物超電導線材の接合部の断面(倍率×50)を示す図である。
【図3】YBa2Cu3Oyのy=6.8となる酸素分圧と温度の関係を示す図である。
【図4】Y系酸化物超電導線材のAg層を除去した後の形態を示す上面図である。
【図5】RE系酸化物超電導線材の接合部を固定する一態様を示す斜視図である。
【図6】Y系酸化物超電導線材の接合部におけるI−V特性を測定するための結線を示す側面図である。
【図7】Y系酸化物超電導線材の接合前のI−V特性を測定するための結線を示す側面図である。
【図8】RE系酸化物超電導線材の接合部を固定する一態様を示す斜視図である。
【図9】Y系酸化物超電導線材の接合前、および、図1(a)の形態で接合後の、I−V特性を示す図である。接合後のI−V特性は、図6に示すように、接合部を挟んで測定したI−V特性である。
【図10】RE系酸化物超電導線材を、図1(a)の接合形態にて接着層を用いて接合する一態様を示す側面図である。
【図11】Y系酸化物超電導線材の接合前、および、接着層にインジウムを用いて図10の形態で接合した後の、I−V特性を示す図である。接合後のI−V特性は、図6に示すように、接合部を挟んで測定したI−V特性である。
【図12】図1(b)の接合形態にて接合したY系酸化物超電導線材のI−V特性を測定するための結線を示す側面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 RE系酸化物超電導層
2 Ag層
3 基材
4 RE系酸化物超電導線材
5 プレート
6 ボルト・ナット
7 接着層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合する接合方法において、
(i)酸化性雰囲気中にて、
(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する
ことを特徴とするRE系酸化物超電導線材の接合方法。
但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素
【請求項2】
前記酸化性雰囲気の酸素分圧及び接合面の温度を、接合処理中、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物中に、RE系酸化物が超電導特性を呈するのに必要な酸素量を確保できる酸素分圧−温度域に維持することを特徴とする請求項1に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項3】
前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項4】
前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項5】
前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱するとともに、該接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項6】
前記RE系酸化物超電導線材の超電導層が、主として、RE−Ba−Cu−O系酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項7】
前記金属材料が、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Ti、W、In、Ir、及び、Rhのいずれか1種、又は、それらの元素を含む合金のいずれか1種であることを特徴とする請求項1〜6に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項1】
金属材料で被覆されているRE系酸化物超電導線材と金属材料又は金属材料で被覆されている部材(RE系酸化物超電導線材を含む)を接合する接合方法において、
(i)酸化性雰囲気中にて、
(ii)接合部の金属表面を直接重ねた接合面に熱エネルギーを付与するとともに圧力を負荷して接合面を接合する
ことを特徴とするRE系酸化物超電導線材の接合方法。
但し、REは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び、Yのいずれか1種又は2種以上の元素
【請求項2】
前記酸化性雰囲気の酸素分圧及び接合面の温度を、接合処理中、RE系酸化物超電導線材の超電導層を構成するRE系酸化物中に、RE系酸化物が超電導特性を呈するのに必要な酸素量を確保できる酸素分圧−温度域に維持することを特徴とする請求項1に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項3】
前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項4】
前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項5】
前記接合面への熱エネルギーの付与に関して、前記接合部を加熱するとともに、該接合部に、通電、超音波又は電磁波付与、及び、摩擦のいずれか1つ又は2つ以上の処理を施し、接合面に熱エネルギーを誘起することを特徴とする請求項1又は2に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項6】
前記RE系酸化物超電導線材の超電導層が、主として、RE−Ba−Cu−O系酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【請求項7】
前記金属材料が、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Ti、W、In、Ir、及び、Rhのいずれか1種、又は、それらの元素を含む合金のいずれか1種であることを特徴とする請求項1〜6に記載のRE系酸化物超電導線材の接合方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【公開番号】特開2007−12582(P2007−12582A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259800(P2005−259800)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超電導応用基盤技術研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「超電導応用基盤技術研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】
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