説明

RFコイル装置および磁気共鳴イメージング装置

【課題】架台上に設置された局所送信用RFコイルのコネクタをMRI装置に接続し忘れた状態で、MRI装置に内蔵の全身用RFコイルからRF信号を送信しても、局所送信用RFコイル内で誘導電流が流れないようにする。
【解決手段】一実施形態では、RFコイル装置は、磁気共鳴イメージング装置に対して着脱自在に接続され、磁気共鳴イメージング装置から供給されるRF信号電流がコイルエレメントを流れることで被検体にRF信号を送信するものであり、トラップ回路を有する。このトラップ回路は、コイルエレメントにおけるRF信号電流の経路内に挿入されており、入力電圧に応じてラーモア周波数を含む周波数帯を選択的に遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、RFコイル装置(radio frequency coil device)および磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。なお、上記MRIは磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)の意味であり、RF信号は高周波信号(radio frequency signal)の意味であり、MR信号は核磁気共鳴信号(nuclear magnetic resonance signal)の意味である。
【0003】
MRIでは、被検体にRF信号を送信し、被検体からのMR信号を検出するRFコイルが用いられる(例えば、特許文献1参照)。RFコイルには、RF信号を送信する送信専用のものと、MR信号を検出する受信専用のものと、RF信号の送信およびMR信号の検出を行う送受信兼用のものとがある。
【0004】
RF信号の送信は、例えば、MRI装置本体に内蔵された全身用RFコイルから行われる場合や、移動可能な局所送信用RFコイルから行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MRI装置内の制御部において、MRI装置とは別個の局所受信用RFコイルや局所送信用RFコイルの存在は、コネクタ接続によって認識される。即ち、局所送信用RFコイルのコネクタをMRI装置に接続している場合、MRI装置の制御部によって、局所送信用RFコイルの存在が正常に認識される。
【0007】
この状態で、MRI装置に内蔵の全身用RFコイルからRF信号を送信する場合、MRI装置の制御部は、全身用RFコイル内のカップリング防止回路を機能させる。この場合、全身用RFコイル内のカップリング防止回路が機能することによって、局所送信用RFコイル内で大きな誘導電流が流れることが防止され、局所送信用RFコイルの破損のおそれもない。
【0008】
しかし、架台上に設置された局所送信用RFコイルのコネクタをMRI装置に接続し忘れた状態では、局所送信用RFコイルの存在は、MRI装置内の制御部では認識されない。この状態でMRI装置に内蔵の全身用RFコイル側からRF信号が送信する場合、MRI装置の制御部は、保護すべき他のRFコイル装置が存在しないものと判定し、全身用RFコイル内のカップリング防止回路を機能させない。この場合、高周波磁場による相互インダクタンスによって局所送信用RFコイル内に誘導電流が流れ、局所送信用RFコイルが破損するおそれがあった。
【0009】
このため、架台上に設置された局所送信用RFコイルのコネクタをMRI装置に接続し忘れた状態で、MRI装置に内蔵の全身用RFコイルからRF信号を送信しても、局所送信用RFコイル内で誘導電流が流れないようにする技術が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、RFコイル装置は、磁気共鳴イメージング装置に対して着脱自在に接続され、磁気共鳴イメージング装置から供給されるRF信号電流がコイルエレメントを流れることで被検体にRF信号を送信するものであり、トラップ回路を有する。このトラップ回路は、コイルエレメントにおけるRF信号電流の経路内に挿入されており、入力電圧に応じてラーモア周波数を含む周波数帯を選択的に遮断する。
【0011】
一実施形態では、MRI装置は、被検体が置かれる撮像空間に静磁場および傾斜磁場を印加すると共に核磁気共鳴を起こすためのRF信号を送信し、核磁気共鳴によって発せられるエコー信号を受信して、エコー信号に基づいて被検体の画像データを生成するものであり、RF信号の送信を担う上記のRFコイル装置を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係るRFコイル装置の全体構成を示す回路的に示すブロック図。
【図2】図1のRFコイル装置において、保護回路を含む部分の詳細を示す回路図。
【図3】図1のRFコイル装置において、入力用コネクタが非接続状態における保護回路を含む部分の等価回路図。
【図4】図1のRFコイル装置において、入力用コネクタをMRI装置に接続した状態における保護回路を含む部分の等価回路図。
【図5】図1のRFコイル装置の変形例として、全てのラング部に保護回路を設けた構成を示すブロック図。
【図6】図5のRFコイル装置の変形例として、各保護回路間で入力電源の配線を共通にした構成を示すブロック図。
【図7】図6のRFコイル装置の変形例として、各保護回路間にさらに並列共振回路を追加した構成を示すブロック図。
【図8】図1のRFコイル装置の変形例として、リング部に保護回路を設けた構成を示すブロック図。
【図9】一実施形態に係るMRI装置の全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
(RFコイル装置の構成例)
図1は、本実施形態における局所送信用のRFコイル装置の全体構成を回路的に示すブロック図である。なお、ここでは一例として、バードケージ型のコイルを用いる場合について説明する。
【0015】
図1に示すように、RFコイル100Aは、点線で示すコイル支持部104と、太線で示す環状の2つのリング部106、108と、4つのラング部112a、112b、112c、112dとを有する。リング部106、108と、ラング部112a〜112dとによってコイルエレメントが構成される。なお、ここでは簡単化のためラング部の数を4としたが、これは一例にすぎず、ラング部は例えば4以上であってもよい。
【0016】
コイル支持部104は、円筒状に形成された支持部材であり、リング部108やラング部112a〜112dなどをそれぞれ所定の位置で保たれるように支持している。
【0017】
各リング部106、108はそれぞれ、例えば銅箔を用いてリング状に形成された導電部材である。各リング部106、108は、リングの直径および中心軸が一致し、かつ、所定の距離だけ間が離れるように、それぞれ設けられている。
【0018】
各ラング部112a〜112dはそれぞれ、例えば銅箔を用いて矩形状に形成された導電部材である。各ラング部112a〜112dはそれぞれ、二つのリング部106、108の間を接続するように、所定の間隔で設けられている。
【0019】
リング部106には、4つのコンデンサC1、C2、C3、C4が直列に挿入(接続)されている。即ち、ラング部112a−112d間にはコンデンサC1が、ラング部112d−112c間にはコンデンサC2が、ラング部112c−112b間にはコンデンサC3が、ラング部112b−112a間にはコンデンサC4が、直列に挿入されている。
【0020】
RFコイル装置100Aは、ここでは一例としてコンデンサC1−C2間の接続ノードおよびコンデンサC2−C3間の接続ノードに接続された入力用コネクタ(図示せず)を有する。図1において一点鎖線で配線を示すように、この入力用コネクタを介して、コンデンサC1−C2間の接続ノードは後述のMRI装置のRF送信器46からRF信号電流の供給を受け、コンデンサC2−C3間の接続ノードは例えば接地電位にされる。なお、以上の入力電圧の方式は一例にすぎず、他の形態であってもよい。
【0021】
本実施形態の特徴として、RFコイル装置100Aは、ラング部112aに直列に挿入された保護回路120を有する。
【0022】
図2は、RFコイル装置100Aにおいて、保護回路120を含む部分の詳細を示す回路図である。図2に示すように、保護回路120は、並列共振回路124、126と、トラップ回路128と、第1入力端子130と、第2入力端子132とを有する。
【0023】
並列共振回路124は、コイルL1と、コンデンサC9とを有する。コイルL1のインダクタンス値と、コンデンサC9の容量値は、並列共振回路124の共振周波数がラーモア周波数となるように、即ち、ラーモア周波数において並列共振回路124のインピーダンスが最大となるように選択されている。ラーモア周波数は、RFコイル装置100Aの接続先となるMRI装置の静磁場強度等を考慮して決定される。これにより、ラーモア周波数を含む周波数帯の電流が第1入力端子130の接続先となる電源側に流入することが防止される。即ち、電源が保護される。
【0024】
並列共振回路126は、コイルL2と、コンデンサC10とを有する。コイルL2のインダクタンス値と、コンデンサC10の容量値も、前記ラーモア周波数において並列共振回路124のインピーダンスが最大となるように選択されている。これにより、ラーモア周波数を含む周波数帯の電流が第2入力端子132の接続先に流入することが防止される。
【0025】
トラップ回路128は、所定の周波数帯の電流を選択的に遮断する回路である。トラップ回路128は、コイルL3と、コンデンサC11と、PIN(P−Intrinsic−N)ダイオードD1と、PINダイオードD2とを並列接続し、さらにコンデンサC12、C13を所定箇所に挿入した構成である。
【0026】
具体的には、PINダイオードD1のアノード−PINダイオードD2のカソード間に、直流カット用のコンデンサC13が直列に挿入されている。また、PINダイオードD1のカソード−コンデンサC11間に直流カット用のコンデンサC12が直列に挿入されている。
【0027】
また、保護回路120におけるトラップ回路128の部分がラング部112a内で直列に挿入されるように配線され、PINダイオードD1、D2により、ラング部112aに対してクロスダイオードが構成される。即ち、PINダイオードD1−D2間を接続するノードN1が一方のリング部106に接続され、PINダイオードD1−コンデンサC13間を接続するノードN2が他方のリング部108に接続される。
【0028】
RFコイル装置100Aの入力用コネクタがMRI装置に接続されると、図1に示したようにリング部106の2箇所がRF送信器46や所定電圧線に接続されると共に、第1および第2入力端子130、132はそれぞれ、MRI装置を介して所定の電圧線に接続される。具体的には例えば、第2入力端子132には、第1入力端子130より低い一定電圧(例えば接地電圧GND)が供給され、第1入力端子130には、PINダイオードD1、D2をオン(導通)状態にする一定の正電圧VCCが供給される。
【0029】
図3は、RFコイル装置100Aの入力用コネクタが非接続状態における保護回路120を含む部分の等価回路図である。入力用コネクタがMRI装置に接続されていない状態では、第1入力端子130、第2入力端子132の電圧は、解放状態となる。この場合、PINダイオードD1、D2はオフ(非導通)状態であるため、それぞれ容量Cd1および抵抗成分Rd1と、容量Cd2および抵抗成分Rd2とに分けて考えることができる。
【0030】
ここで、コンデンサC11、C12、C13の各容量値と、PINダイオードD1、D2の逆方向電圧印加時の各容量値(Cd1、Cd2の容量値)および抵抗値(Rd1、Rd2の抵抗値)と、コイルL3のインダクタンス値は、以下のように選択されている。
【0031】
即ち、図2、図3のノードN1を入力端子、ノードN2を出力端子とした場合に、ラーモア周波数において並列共振回路124のインピーダンスが最大となるように(トラップ回路の共振周波数がラーモア周波数に合致するように)選択されている。これにより、PINダイオードD1、D2がオフ状態では、トラップ回路128は、ラーモア周波数を含む周波数帯の電流を選択的に遮断する。
【0032】
なお、MRI装置の動作状態における一定条件下でのラーモア周波数のみではなく、前記一定条件下でのラーモア周波数を含む所定の周波数帯の電流を選択的に遮断するように、トラップ回路128の遮断周波数帯には、ある程度の幅を持たせることが望ましい。MRI装置の動作状態では、例えば時間経過による鉄シムの温度上昇に伴ってRF信号の送信周波数を変える場合もあるので、送信周波数の若干の変化分も包含させることが望ましいからである。従って、トラップ回路128の共振周波数は、ラーモア周波数に完全一致させる必要はなく、ラーモア周波数を含む所定の周波数帯の電流を選択的に遮断可能な程度に、ラーモア周波数に近ければよい。
【0033】
ここで、架台上に置かれたRFコイル装置100Aの入力用コネクタが非接続状態において、MRI装置に内蔵の全身用RFコイルからラーモア周波数のRF信号を送信した場合を考える。この場合、相互インダクタンスによって、ラーモア周波数の誘導電流が例えば図3中の太線矢印の経路で流れようとする。しかし、入力用コネクタが非接続状態の場合、即ち、第1および第2入力端子130、132が解放状態の場合、トラップ回路128は、上記のようにラーモア周波数を含む周波数帯に対してインピーダンス最大(共振状態)となる。このため、RFコイル装置100A内で誘導電流が流れることは防止され、RFコイル装置100Aが破損するおそれはない。
【0034】
図4は、RFコイル装置100Aの入力用コネクタをMRI装置に接続した状態における、保護回路120を含む部分の等価回路図である。この場合、第1入力端子130には例えば正の一定電圧VCCが供給され、第2入力端子132には接地電圧GNDが供給される。これにより、PINダイオードD1、D2は、どちらも順バイアスを印加された状態となるので、オン(導通)状態となる。このため、第1入力端子130、コイルL1、PINダイオードD1、PINダイオードD2、コイルL2、第2入力端子132の経路で直流電流が流れる。
【0035】
そうすると、PINダイオードD1、D2の各容量Cd1、Cd2および各抵抗成分Rd1、Rd2の値は、図3に示す場合(第1入力端子130、第2入力端子132が解放の場合)とは異なる値となる。これにより、トラップ回路128のインピーダンス最大となる周波数帯および共振周波数は、ラーモア周波数を含む周波数帯から、ずれる。
【0036】
即ち、PINダイオードD1、D2がオン状態の場合、トラップ回路128は、ラーモア周波数を含む周波数帯の電流を通す。従って、この場合にRF送信器46からラーモア周波数のRF信号電流が供給されれば、図4の太線矢印で示す経路をRF信号電流が流れるため、これにより、RFコイル装置100Aが全体として高周波磁場を発生させ、送信用RFコイルとして機能する。
【0037】
なお、トラップ回路128に用いるクロスダイオードは、通常のPN接合のダイオードでもよいが、上記のようにPINダイオードの方が望ましい。通常のPN接合のダイオードよりもPINダイオードの方が、スイッチング速度が速いから(高周波信号のスイッチング特性が良好なため)である。
【0038】
このように本実施形態では、RFコイル装置100Aの入力用コネクタをMRI装置本体に接続し忘れた状態において、第1および第2入力端子130、132が解放状態となり、トラップ回路128は、ラーモア周波数を含む周波数帯を選択的に遮断する。このトラップ回路128はRF信号電流の経路に挿入されているため、周囲で全身用コイルからのRF信号の磁場が発生しても、RFコイル装置100A内では誘導電流が流れない。即ち、RFコイル装置100Aの破損のおそれはない。
【0039】
一方、RFコイル装置100Aの入力用コネクタをMRI装置に接続した状態では、PINダイオードD1、D2がオン状態となってトラップ回路128の共振周波数がずれる。この場合、トラップ回路128はラーモア周波数のRF信号電流を通し、RFコイル装置100Aは送信用のRFコイルとして正常に機能する。
【0040】
即ち、本実施形態によれば、架台上に設置された送信用RFコイル(100A)のコネクタをMRI装置に接続し忘れた状態で、MRI装置に内蔵の全身用RFコイルからRF信号を送信しても、送信用RFコイル(100A)内で誘導電流が流れないようにすることができる。なお、従来技術では、MRI装置に非内蔵の(MRI装置に着脱自在に接続される)送信RFコイル装置として、トラップ回路を有するものはなかった。
【0041】
(RFコイル装置の変形例)
図5は、上記RFコイル装置100Aの変形例として、全てのラング部112a〜112dにそれぞれ保護回路120を直列に挿入した構成のRFコイル装置100Bを示すブロック図である。この場合、図2に示したように、各保護回路120内のトラップ回路128のノードN1、N2がラング部112a〜112dの導体にそれぞれ直接接続されるように配線する。
【0042】
各保護回路120の第1および第2入力端子130、132は、RFコイル装置100Bのように個別に電源電圧線VCCおよび接地電圧線GNDに接続してもよいが、図6に示すように共通にしてもよい。図6は、RFコイル装置100Bの変形例として、各保護回路間で第1および第2入力端子130、132に対する入力電源の配線を共通にしたRFコイル装置100Cを示すブロック図である。
この場合、4つの保護回路120内の合計8つのPINダイオードD1、D2を順方向電流が流れるので、図6の最も右側の正の電圧源の供給電圧VCC2は、図5に示す個別接続の場合の例えば4倍以上にする。
【0043】
ここで、並列共振回路(124または126)と、トラップ回路128との接続箇所の間隔(配線長)は、小さくすることが望ましい。ラーモア周波数の周波数帯の誘導電流の発生を極力遮断するためである。従って、一方の保護回路120の第1入力端子130と、これに接続される他方の保護回路120の第2入力端子132との間の配線長が長い場合、図7に示すように、各保護回路120同士の間と、保護回路120―電源線の間にさらに並列共振回路141、142、143、144、145を設けてもよい。
【0044】
図7は、図6のRFコイル装置100Cの変形例として、並列共振回路を追加したRFコイル装置100Dを示すブロック図である。図7に示す並列共振回路141〜145の回路構成は、並列共振回路124、126と同じである。並列共振回路141〜145内の各コンデンサの容量値や各コイルのインダクタンス値は、ラーモア周波数の周波数帯の誘導電流の発生を極力遮断するように、各保護回路120同士の配線長や、保護回路120―電源線間の配線長などに応じて選択すればよい。
【0045】
なお、全てのラング部112a〜112dにそれぞれ保護回路120を直列に挿入しなくとも、ラング部112a〜112dの内の2つ或いは3つに対して保護回路120を直列に挿入してもよい(図示せず)。
【0046】
図8は、RFコイル装置100A〜100Dの変形例として、ラング部112a〜112dの代わりにリング部106、108内に保護回路120をそれぞれ直列に挿入したRFコイル装置100Eの構成を示す等価回路図である。この場合、図8に示すように、各保護回路120内のノードN1、N2がリング部106、108の導体にそれぞれ直接接続されるように配線する。
【0047】
なお、一方のリング部(106または108)のみに対して、保護回路120をそれぞれ直列に挿入してもよい(図示せず)。或いは、ラング部112a〜112dおよびリング部106、108の双方に保護回路120をそれぞれ挿入してもよい。RFコイル装置100B〜100Eを含めて、以上説明した各変形例のRFコイル装置においても、上記のRFコイル装置100Aと同様の効果が得られる。
【0048】
(MRI装置の構成例)
図9は、一実施形態に係るMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。図9に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御系30と、被検体Pが乗せられる架台(寝台)32とを備える。
【0049】
ここでは一例として、装置座標系の互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、静磁場用磁石22およびシムコイル24は、それらの軸方向が鉛直方向に直交するように配置されているものとし、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。また、鉛直方向をY軸方向とし、架台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとする。
【0050】
制御系30は、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、寝台駆動装置50と、シーケンスコントローラ56と、コンピュータ58とを備える。
【0051】
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ58は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
【0052】
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給される電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
【0053】
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとを有し、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
【0054】
X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
【0055】
即ち、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを合成して、論理軸としてのスライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、および、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groの各方向を任意に設定できる。スライス選択方向、位相エンコード方向、および、読み出し方向の各傾斜磁場は、静磁場に重畳される。
【0056】
RF送信器46は、シーケンスコントローラ56から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのラーモア周波数のRFパルス(RF電流パルス)を生成する。RF送信器46は、生成したRFパルスを送信用のRFコイル28や、MRI装置20に接続される他の送信用RFコイル装置に送信する。
【0057】
RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイル28a(図9では破線の枠で示す)や、架台32または被検体Pの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。本実施形態では、MRI装置20は、局所送信用としてRFコイル装置100A〜100Eをさらに有する。
【0058】
送信用のRFコイル28、RFコイル装置100A〜100Eは、RF送信器46からRFパルスを受けて、これをRF信号として被検体Pに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体Pの内部の原子核スピンがRF信号によって励起されることで発生したMR信号(高周波のエコー信号)を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
【0059】
RF受信器48は、検出したMR信号に前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成する。RF受信器48は、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行うものである。
【0060】
シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
【0061】
シーケンスコントローラ56は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy、Z軸傾斜磁場GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ56は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データ(raw data)を受けて、これを演算装置60に入力する。
【0062】
寝台駆動装置50は、シーケンスコントローラ56を介して演算装置60に接続される。シーケンスコントローラ56は、演算装置60の指令に従って寝台駆動装置50を制御することで架台32の天板を移動させ、これにより例えば、moving table法やstepping−table法による撮像を行う。
【0063】
以下、上記MRI装置20のRFコイル装置100A〜100Eのいずれかが使用されて、イメージングが行われる場合の動作の一例について説明する。
【0064】
局所送信用のRFコイル装置100A〜100Eのいずれかが不図示のコネクタを介してMRI装置に対して接続され、架台32で被検者Pにセットされる。これにより、MRI装置20の演算装置60は、RFコイル装置(100A〜100Eのいずれか)の存在を認識する。次に、静磁場電源40により励磁された静磁場用磁石22によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源42からシムコイル24に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
【0065】
そして、入力装置62から演算装置60に撮像開始指示が入力されると、演算装置60は、パルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ56に入力する。シーケンスコントローラ56は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源44を駆動させることで、撮像空間に傾斜磁場を形成させると共に、RF送信器46からRFコイル装置100A〜100EにRFパルスを供給させ、これにより、被検体PにRF信号を送信する。
【0066】
このため、被検者Pの内部の核磁気共鳴により生じたMR信号(エコー信号)が、RFコイル28により受信され、RF受信器48により検出される。RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理を施した後、これをA/D変換することで、デジタル化したMR信号である生データを生成する。RF受信器48は、生成した生データをシーケンスコントローラ56に入力する。
【0067】
シーケンスコントローラ56は、生データを演算装置60に入力し、演算装置60は、その内部のk空間データベースにおいて、生データをk空間データとして配置する。演算装置60は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、これを一旦保存後、これに所定の画像処理を施すことで表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置66に保存する。
【0068】
このように本実施形態のMRI装置20では、局所送信用としてRFコイル装置100A〜100Eのいずれかを用いる。このため、仮に、架台32上に設置されたRFコイル装置(100A〜100Eのいずれか)のコネクタをMRI装置20に接続し忘れた状態で、送受信用の全身用コイル28aからRF信号を送信しても、RFコイル装置(100A〜100Eのいずれか)が破損するおそれはない。
【0069】
(実施形態の補足事項)
[1]上記実施形態では、RFコイル装置100A〜100Eとしてバードケージ型のものを一例として説明した。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。コネクタ不接続時における誘導電流をトラップ回路によって防止する上記実施形態の技術的思想は、サドルコイル、ソレノイドコイル、表面QD(Quadrature Detection)コイルなどの他の送信用RFコイル装置にも適用可能である。
【0070】
[2]RFコイル装置100A〜100Eを局所送信用のものとして説明したが、本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。例えば被検体が乳幼児のように小さい場合などにおいて、上記RFコイル装置100A〜100Eは、全身用の送信RFコイルとしても用いることができる。即ち、本発明の実施形態は、局所送信用のRFコイル装置には限定されず、全身用の送信RFコイル装置にも適用可能である。
【0071】
また、コネクタ不接続時における誘導電流をトラップ回路によって防止する上記実施形態の技術的思想は、送信専用のRFコイル装置に限定されるものではなく、送受信兼用のRFコイル装置にも適用可能である。
【0072】
[3]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
20 MRI装置
22 静磁場用磁石
24 シムコイル
26 傾斜磁場コイル
26x X軸傾斜磁場コイル
26y Y軸傾斜磁場コイル
26z Z軸傾斜磁場コイル
28 RFコイル
30 制御系
32 架台
40 静磁場電源
42 シムコイル電源
44 傾斜磁場電源
44x X軸傾斜磁場電源
44y Y軸傾斜磁場電源
44z Z軸傾斜磁場電源
46 RF送信器
48 RF受信器
50 寝台駆動装置
56 シーケンスコントローラ
58 コンピュータ
60 演算装置
62 入力装置
64 表示装置
66 記憶装置
100A〜100E RFコイル装置
104 コイル支持部
106、108 リング部
112a〜112d ラング部
120 保護回路
124、126、141〜145 並列共振回路
128 トラップ回路
130 第1入力端子
132 第2入力端子
C1〜C13 コンデンサ
D1、D2 PINダイオード
L1〜L3 コイル
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置に対して着脱自在に接続され、前記磁気共鳴イメージング装置から供給されるRF信号電流がコイルエレメントを流れることで被検体にRF信号を送信するRFコイル装置であって、
前記コイルエレメントにおける前記RF信号電流の経路内に挿入されており、入力電圧に応じてラーモア周波数を含む周波数帯を選択的に遮断するトラップ回路を有することを特徴とするRFコイル装置。
【請求項2】
請求項1記載のRFコイル装置において、
前記トラップ回路は、前記トラップ回路に対する前記入力電圧が解放状態の場合に、前記ラーモア周波数を含む周波数帯を選択的に遮断することを特徴とするRFコイル装置。
【請求項3】
請求項1記載のRFコイル装置において、
前記トラップ回路に対する前記入力電圧に応じてオフ状態からオン状態に切り替わることで、前記トラップ回路の共振周波数を前記ラーモア周波数から離す方向にずらすクロスダイオードを、前記トラップ回路は有することを特徴とするRFコイル装置。
【請求項4】
請求項3記載のRFコイル装置において、
前記クロスダイオードは2つのPINダイオードから構成されることを特徴とするRFコイル装置。
【請求項5】
被検体が置かれる撮像空間に静磁場および傾斜磁場を印加すると共に核磁気共鳴を起こすためのRF信号を送信し、核磁気共鳴によって発せられるエコー信号を受信して、前記エコー信号に基づいて前記被検体の画像データを生成する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記RF信号の送信を担う請求項1〜請求項4のいずれかのRFコイル装置を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183211(P2012−183211A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48664(P2011−48664)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】