説明

RFタグ、物品収容装置及び物品管理システム

【課題】RFタグの形状を環状にすると共に、環状の開口部に挿入可能な形状を有する磁心を備えることにより、金属による磁束反射障害の発生を低減し、多数の金属性物品の記録情報を一括で正確に読み取ることが可能なRFタグ、物品収容装置及び物品管理システムを提供する。
【解決手段】この物品収容装置は、磁束が通過する磁路を形成するフェライトコア19と、その少なくとも一部に巻回したコイルと、フェライトコア19に磁路を形成、またはこの磁路を遮断する板状のフェライトコア(磁路断接手段)12と、フェライトコア19、コイル及び板状のフェライトコア12を収容する容器とを備える。容器は容器本体と開閉する蓋から成っており、蓋が閉じられたときにフェライトコア19の磁路を板状のフェライトコア12により形成するように構成される。フェライトコア19はRFタグの開口部に挿入可能な形状(例えば棒状)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFタグ、物品収容装置及び物品管理システムに関し、さらに詳しくは、物品収容装置に収容されている物品が金属性物品の場合であっても、その記録情報を確実に読み取ることが可能なRFタグ、物品収容装置及び物品管理システム関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる情報記録媒体が市場に広く出回り、種々の用途に使用されている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状あるいはシート状の形状を備え、カード内にIC(Integrated Circuit)が組み込まれているものを総称した名称である。最近では、ICカードと同様の原理で情報を記録するRFタグが、各種物品に付されて物品の種別や内容の判別、分類整理、在庫管理等の多様な分野において効率化に貢献している。このように一括した取扱いを受ける複数の物品に付されるICカードやRFタグにあっては、リーダライタとの間でのデータの授受を一括して電波にて行うため、電鉄会社が発行する乗降用の定期券等のように1枚単位で処理されるICカードでは特に発生しない特有の問題を有している。
例えば、従来から金属材料から成る鍵や工具等の金属性物品を複数個まとめて容器内に保管する際に、個々の物品についての記録情報を記録したRFタグを物品毎に取り付けて保管容器に収容し、その保管容器に備えられたアンテナを介して外部のリーダライタにより内部の各物品に付されたRFタグの記録情報を一括読み取りして保管状態を管理することが行われている。しかし、RFタグを備えた個々の金属性物品が近接していたり、或いはリーダライタとの間の電波の授受方向から見て少なくとも一部が重なった位置関係にある場合、リーダライタによりRFタグの記録情報を読み取ろうとすると、金属による磁束減衰によりRFタグの情報が正しく読み取れないといった問題が発生する。
この問題を解決するために、図9に示した従来のRFタグにおいては、RFタグ200の片面に磁束70、73の磁路を形成する磁性シート72を配置することにより、RFタグ200の直下に金属75が存在していても、磁束70、73が磁性シート72を磁路としてRFタグ200の図示しないループアンテナを横切るため、図示しないリーダライタとの交信を行うことができる。尚、図9の例では、磁束74が金属75により減衰されるが、磁性シート72が磁束の通路となり金属の影響を無視することができる。この磁性シートを備えた非接触型情報授受装置については、特許文献1に開示されている。
また特許文献2には、情報の伝送や、起電力を発生させるアンテナ部と、情報を記録し情報を伝送する機能を有する半導体チップとから構成される備品管理用電子タグを、器具工具備品に直接あるいは間接的に取り付け、これに使用場所の変更等の記録情報を電子データとして保管する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−331772公報
【特許文献2】特開2003−123041公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図9の磁性シート72を有するRFタグ200を貼付した金属性物品の記録情報を、1個単位でリーダライタにより読み取りを行う場合、少数の金属性物品についての記録情報を読取るのであれば問題はないが、多数の金属性物品の記録情報を1個単位で読み取るためには多大の時間を要し、非常に効率が悪い。
またRFタグに磁性シートを貼り付けなければならず、コスト的にRFタグが高くなるといった問題がある。
また特許文献2に開示されている従来技術は、金属による磁束減衰障害によりRFタグの情報が正しく読み取れないといった問題を解決する手段については開示されておらず、単にRFタグにより備品管理を電気的に行う技術である。
本発明は、かかる課題に鑑み、RFタグの形状をコイル状を含む環状にすると共に、環状の開口部に挿入可能な形状を有する磁心を備えることにより、金属による磁束減衰障害を発生すること低減し、多数の金属性物品の記録情報を一括で正確に読み取ることが可能なRFタグ、物品収容装置及び物品管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、コイル状を含む環状に形成されたアンテナと、該アンテナに近接配置され該アンテナを介してリーダとの間でのデータの授受を制御する制御ICと、を備えたことを特徴とする。
本発明のRFタグは、アンテナの形状をコイル状を含む環状に形成した点が特徴的である。そしてこのアンテナに制御ICが近接配置される。即ち、開口部を有する(中心部が中空状に貫通した)環状のアンテナと制御ICが一体化したものがRFタグとなる。
請求項2は、磁束が通過する磁路を形成する磁心と、該磁心の少なくとも一部に巻回したコイルと、前記磁心に磁路を形成し、または該磁路を遮断する磁路断接手段と、を備えたことを特徴とする。
空気中を磁束が伝播する場合、大きい磁気抵抗が生じる。磁気抵抗は透磁率に反比例するので、空気より大きな透磁率を有する磁心を磁路とすることにより磁気抵抗を小さくすることができる。本発明はこの原理から磁心にコイルを巻回し、且つ磁心に磁路を形成、または磁路を遮断する磁路断接手段を設けたものである。
請求項3は、前記磁心は、その少なくとも一部が請求項1に記載のRFタグの開口部に挿入可能な形状を有することを特徴とする。
本発明の磁心の形状は、少なくともRFタグの開口部に挿入可能な形状であることが必要である。例えば、棒状の形を備え、その棒状の磁心を開口部に挿入して磁心を通過する磁束によりアンテナと磁気結合し易くするものである。
請求項4は、前記磁心、コイル及び磁路断接手段は容器内に収容され、該容器は容器本体と該容器本体を開閉する蓋とから成り、当該蓋が閉じられたときに前記磁心の磁路を形成するように構成されていることを特徴とする。
本発明は磁心、コイル及び磁路断接手段を一体に構成するために容器内に収容し、この容器は本体と蓋から成り、この蓋が閉じられたときに磁心の磁路が形成されるように構成するものである。
【0005】
請求項5は、前記磁心はフェライトコアまたは鉄心であることを特徴とする。
フェライトコアまたは鉄心の透磁率は空気より大きく、またフェライトコアは周波数特性が鉄心より優れているため使用する周波数により使い分けられる。
請求項6は、前記磁路断接手段は前記磁心と同一材料により構成されていることを特徴とする。
磁路断接手段は磁心の一部であるので、磁心と同じ材料であることが好ましい。もし、磁路断接手段と磁心の材料が異なると、その部分で磁気抵抗が変化して磁束を乱す虞が出てくる。
請求項7は、前記蓋が閉じられたことを報知する情報を記録した報知用RFタグを前記磁心の一部に挿入したことを特徴とする。
本発明は容器の蓋が開閉した状態を報知用RFタグに記録した内容により検知するものである。即ち、蓋が開放されている状態では全てのRFタグの内容が読み取れないため、RFタグを備えた物品が一つも容器内に収容されていない状態と同じになり、蓋が開放されているのかRFタグが無いのかを判別することができない。そこで本発明では、蓋が閉じられたことを報知する情報を記録した報知用RFタグを常時磁心の一部に挿入しておくことにより、RFタグを備えた物品が一つも容器内に収容されていない場合でも、蓋が閉鎖されていれば必ず報知用RFタグの情報を読み取ることができるものである。
【0006】
請求項8は、前記蓋の開閉状態を検知する開閉検知手段を備えたことを特徴とする。
本発明は報知用RFタグの代わりに蓋の開閉状態を検知するスイッチまたはセンサのような開閉検知手段を備えるものである。これによりリーダを動作させるタイミングをこの開閉検知手段が蓋の開放を検知したときとすることができる。
請求項9は、請求項1に記載のRFタグと、請求項7に記載の物品収容装置と、該物品収容装置に収容された物品に取り付けられた前記RFタグに記録された記録情報を読み取るリーダと、システム全体を制御する制御手段と、を備えた物品管理システムにおいて、前記制御手段は、前記リーダにより前記報知用RFタグの情報を読み取った場合、前記物品収容装置の蓋が閉じられたと判断して前記RFタグに記録された記録情報を更新することを特徴とする。
本発明は報知用RFタグを取り付けた物品収容装置を使用したシステムに係り、このほかにRFタグ、リーダ及び制御手段を備える。そして制御手段はリーダにより報知用RFタグの情報を読み取った場合、物品収容装置の蓋が閉じられたと判断して、物品に取り付けられたRFタグに記録された記録情報を更新するものである。
請求項10は、請求項1に記載のRFタグと、請求項8に記載の物品収容装置と、該物品収容装置に収容された物品に取り付けられたRFタグに記録された記録情報を読み取るリーダと、システム全体を制御する制御手段と、を備えた物品管理システムにおいて、前記制御手段は、前記開閉検知手段により前記蓋が閉じたことを検知した場合、前記磁路断接手段により磁路が形成されたと判断して前記RFタグに記録された記録情報を更新することを特徴とする。
本発明は開閉検知手段を備えた物品収容装置を使用したシステムに係り、このほかにRFタグ、リーダ及び制御手段を備える。そして制御手段は開閉検知手段により蓋が閉じたことを検知した場合、磁路断接手段により磁路が形成されたと判断して、物品に取り付けられたRFタグに記録された記録情報を更新するものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、RFタグのアンテナの形状をコイル状を含む環状に形成したので、環状の開口部に磁心を挿入することが可能となり、リーダとの磁気結合を強固にすることができる。
また請求項2では、磁心にコイルを巻回し、且つ磁心に磁路を形成、または磁路を遮断する磁路断接手段を設けたので、RFタグを取り付けた物品を磁心内に自在に挿入したり取り出したりすることができる。
また請求項3では、磁心の形状を少なくともRFタグの開口部に挿入可能な形状とするので、その形状の磁心をRFタグの開口部に挿入して、磁心を通過する磁束によりアンテナと磁気結合し易くすることができる。
また請求項4では、磁心、コイル及び磁路断接手段を一体に構成するために容器内に収容し、この容器は本体と蓋から成り、この蓋が閉じられたときに磁心の磁路が形成されるように構成するので、蓋が閉じられた動作と磁路形成が一体化され、蓋が閉じられた場合に限り物品の記録情報を読み取ることができる。
また請求項5では、磁心はフェライトコアまたは鉄心であるので、透磁率を大きくして磁気抵抗を小さくすることができる。
【0008】
また請求項6では、磁路断接手段は磁心と同一材料により構成されているので、磁心の磁気抵抗を一定にすることができる。
また請求項7では、報知用RFタグを磁心の一部に挿入したので、蓋の開閉をリーダにより検知することができる。
また請求項8では、報知用RFタグの代わりに蓋の開閉状態を検知するスイッチまたはセンサのような開閉検知手段を備えるので、リーダを動作させるタイミングをこの開閉検知手段が蓋の開放を検知したときとすることができる。
また請求項9では、制御手段はリーダにより報知用RFタグの情報を読み取った場合、物品収容装置の蓋が閉じられたと判断して物品に取り付けたRFタグに記録された記録情報を更新するので、正確な記録情報を取得することができる。
また請求項10では、制御手段は開閉検知手段により蓋が閉じたことを検知した場合、磁路断接手段により磁路が形成されたと判断して物品に取り付けたRFタグに記録された記録情報を更新するので、正確な記録情報を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なRFタグ用リーダライタの構成を示すブロック図である。このRFタグ用リーダライタ(以下、単にリーダライタと呼ぶ)100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないRFタグとの電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、RFタグの構成を先に説明しておく。図2は、一般的なRFタグの構成を示すブロック図である。本実施形態のRFタグ200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするループアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、ループアンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、RFタグ200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0010】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、RFタグ200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、RFタグ200がリーダライタ100に近接すると、ループアンテナ20が搬送波から電力生成回路22により整流して直流電力に変換して、RFタグ内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してループアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してRFタグ200が規格に合致したタグであると認識する。それにより、以後リーダライタ100とRFタグ200の間でデータの授受が行われる。
【0011】
図3は本発明のRFタグの外観透視図である。(a)は物品に取り付けたRFタグの表面図であり、(b)はRFタグの断面図である。同じ構成要素には同じ参照番号を付して説明する。このRFタグ200は環状(円形、矩形、多角形、不定形等の形状や、巻き回し回数を問わず、線材をリング状、コイル状、螺旋状を含む形状)に形成したアンテナ20と、このアンテナ20に近接配置されアンテナ20を介して図示しないリーダとの間でのデータの授受を制御する制御IC210と、を備えて構成される。そして例えば鍵(金属性物品)2をRFタグ200の開口部24に紐1を通して取り付けられる。アンテナ20及び制御IC210は、その導体部分等を保護するために、樹脂等によって被覆された構成を有する。
【0012】
図4は本発明の物品収容装置の外観斜視図である。この物品収容装置300は、磁束が通過する磁路を形成するフェライトコア(磁心)19と、このフェライトコア19の少なくとも一部に巻回したコイル9と、フェライトコア19に磁路を形成、またはこの磁路を遮断する板状のフェライトコア(磁路断接手段)12と、フェライトコア19、コイル9及び板状のフェライトコア12を収容する容器23とを備えて構成される。尚、容器23は容器本体15とこの容器本体15を開閉する蓋10から成っており、蓋10が閉じられたときにフェライトコア19の磁路をT字状のフェライトコア12により形成するように構成されている。また、フェライトコア19は図3のRFタグ200の開口部24に挿入可能な形状(例えば棒状)を有する。この例では、容器本体15側にフェライトコア19が取り付けられ、蓋10側に板状のフェライトコア12が取り付けられているが、逆に構成してもよい。
【0013】
次に図4を参照して本発明の第1の実施形態の動作について説明する。本実施形態では、蓋10が閉じられたことを報知する情報を記録した報知用RFタグ16をフェライトコア19の一部に挿入した場合を示している。即ち、蓋10が開放されている状態では全てのRFタグの内容が読み取れないため、蓋10が開放されているのか、或いはRFタグ200を取り付けた物品が収容されていないのかを判別することができない。そこで本実施形態では、蓋10が閉じられたことを報知する情報を記録した報知用RFタグ16を蓋のフェライトコア12に形成された凹部13と重なる位置に少なくとも一つに挿入しておくことにより、RFタグ200が一つも容器内に収容されていない場合であっても、蓋10が閉鎖されていれば必ず報知用RFタグ16の情報を読み取ることができるようにしたものである。
【0014】
この物品収容装置300は、鍵や工具等の金属で構成された備品類を収容して管理するものであり、例えばRFタグ200を取り付けた鍵2がフェライトコア19の吊り下げ部28にRFタグ200の開口部を挿入して収容されているとする。まず蓋10が閉じられている場合について説明する。蓋10が閉じられていると、板状のフェライトコア12に設けた凹部13にフェライトコア19の吊り下げ部26、27、28の先端が嵌合し、フェライトコア19の磁路を形成する。そのときの様子を図5(c)、(d)の模式図で説明する。図5(c)はフェライトコア19と板状のフェライトコア12の位置関係を表す図であり、吊り下げ部28の先端が板状のフェライトコア12の凹部13に嵌合して磁路が形成される。そのときの回路的な模式図が図5(d)である。図5(d)では凹部13によりフェライトコア19と板状のフェライトコア12が接触すると、フェライトコア19の磁路が形成され、図示しないリーダ100から送信された搬送波がコイル9を介してフェライトコア19に供給される。それによりフェライトコア19には磁束29が生成されて、吊り下げ部28に挿入したRFタグ200のアンテナ20が磁気結合して、制御IC210に電力を供給する。そしてこれ以降図1で説明したようにリーダ100とRFタグ200間で交信が行われる。また本実施形態ではフェライトコア19には報知用RFタグ16が挿入されており、報知用RFタグ16に記録されている情報を読み取ることにより蓋10が閉じられたことを認識することができる。例えば報知用RFタグ16に「蓋が閉じられました」等の情報を記録する。この情報を読み取ることにより、PC50は容器内の全てのRFタグを取り付けた物品の情報を読み取って更新することができる。
【0015】
次に蓋10が開放された場合について説明する。図5(a)はフェライトコア19と板状のフェライトコア12の位置関係を表す図であり、吊り下げ部28の先端が板状のフェライトコア12の凹部13から離間して磁路が遮断される。そのときの回路的な模式図が図5(b)である。図5(b)ではフェライトコア19と板状のフェライトコア12が離間すると、フェライトコア19の磁路が遮断され、図示しないリーダ100から送信された搬送波がコイル9を介してフェライトコア19に供給されるが、フェライトコア19には磁束は生成されない。従って、吊り下げ部28に挿入したRFタグ200と報知用RFタグ16のアンテナ20が磁気結合しなくなり、制御IC210に電力が供給されない。本実施形態ではフェライトコア19には報知用RFタグ16が挿入されているが、報知用RFタグ16に記録されている情報も読み取ることができないので、PC50は容器の蓋10が開放されていると認識するものである。
【0016】
次に図4を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、報知用RFタグ16の代わりに蓋10の開閉状態を検知するスイッチまたはセンサのような開閉検知手段を備えるものであり、図4では蓋10の開閉状態を検知するスイッチ(開閉検知手段蓋)25を備えた場合である。この説明ではスイッチ25がONの場合蓋10が開放状態であり、スイッチ25がOFFの場合、蓋10が閉鎖状態であるとする。即ち、蓋10が開放されている状態ではスイッチ25がONとなり、その信号はコネクタ18を介して図示しないPC50に伝えられる。PC50はそれを検出すると、全てのRFタグを取り付けた物品の内容が読み取れないため、コイル9に供給している搬送波を停止する。そして蓋10が閉鎖されるとスイッチ25がOFFとなり、その信号はコネクタ18を介して図示しないPC50に伝えられる。PC50はそれを検出すると、フェライトコア19の磁路が形成されたと判断して、コイル9に搬送波を供給してRFタグを取り付けた物品の情報を読み取る。このように本実施形態では、蓋10が開閉されたことを検知するスイッチ25を容器本体15に備えることにより、蓋10が閉鎖されたことを検知してリーダ100の読み取りタイミングを決定することができる。尚、図4では報知用RFタグ16とスイッチ25の両方を備えているが何れか一方を備えればよい。尚、報知用RFタグ16とスイッチ25の両方を備えた場合は、蓋10が開放しているときはリーダ100を停止して、蓋10が閉鎖されたときだけリーダ100を駆動するタイミング用として使用することができる。
図6は本発明の物品管理システムの構成図である。この物品管理システム400は図3に記載のRFタグ200と、図4に記載の物品収容装置300と、この物品収容装置300に収容された物品に取り付けられたRFタグ200に記録された記録情報を読み取るリーダ100と、システム全体を制御するPC(制御手段)50とを備えて構成される。
【0017】
図7(a)は第1の実施形態の物品収容装置の場合の動作フローチャートであり、図7(b)は第2の実施形態の物品収容装置の場合の動作フローチャートである。図7(a)ではPC50はリーダ100に対して読み取りコマンドを送信してリーダ100により物品収容装置300に搬送波を送信する。その結果、報知用RFタグの情報が読めるか否かをチェックし(S1)、読めれば(S1でYESのルート)ステップS4に進む。ステップS1で読めなければ(S1でNOのルート)、蓋10は開放状態であると認識し(S2)、再び報知用RFタグの情報が読めるか否かをチェックし(S3)、読めなければ(S3でNOのルート)、ステップS2に戻り繰り返す。ステップS3で報知用RFタグの情報が読めると(S3でYESのルート)、容器15内の全てのRFタグの情報を読み取り(S4)、PC50のメモリに記憶していた記録情報に変更があるか否かをチェックして(S5)、変更がなければそのままにして、変更があれば記録情報を更新する(S6)。尚、ステップS5で変更の有無をチェックしているが、常に読み取った情報を上書きするようにしても良い。
図7(b)ではPC50は物品収容装置300のスイッチ25の状態をチェックして(S11)、スイッチ25がOFFであれば(S11でNOのルート)ステップS14に進む。ステップS11でONであれば(S11でYESのルート)、蓋10は開放状態であると認識し(S12)、再びスイッチ25の状態をチェックし(S13)、ONであれば(S13でYESのルート)、ステップS12に戻り繰り返す。ステップS13でスイッチ25がOFFであれば(S13でNOのルート)、容器15内の全てのRFタグの情報を読み取り(S14)、PC50のメモリに記憶していた記録情報に変更があるか否かをチェックして(S15)、変更がなければそのままにして、変更があれば記録情報を更新する(S16)。尚、ステップS15で変更の有無をチェックしているが、常に読み取った情報を上書きするようにしても良い。
【0018】
図8は本発明の第3の実施形態の物品収容装置の構成図である。この物品収容装置500は「コ」の字型のフェライトコア30の一部にコイル9を巻回し、その両端をリーダ100に接続する。またフェライトコア30の開口部34には自在に可動する可動アーム32を備え、ばね31により常時矢印方向に付勢されフェライトコア30の突起部33と接触するように構成される。次にこの物品収容装置500にRFタグ200を取り付けた物品を収容する場合について説明する。可動アーム32はばね31により矢印方向に付勢されフェライトコア30の突起部33と接触している(可動アーム32aの位置)。この状態でリーダ100から搬送波を送信するとコイル9によりフェライトコア30には磁束35が発生する。もし、RFタグを取り付けた物品が収容されていなければ、リーダ100からは何の情報も得ることができない。この状態で鍵2を取り付けたRFタグ200を取り付けた物品をフェライトコア30に収容するために、可動アーム32を矢印と反対方向に押し、RFタグ200の開口部24をフェライトコア30に挿入して可動アーム32を32aの位置に戻す。これによりフェライトコア30に磁束35が発生し、RFタグ200のアンテナ20に磁界が誘導されてRFタグ200を駆動する。その結果、リーダ100にはRFタグ200を取り付けた物品の記録情報が読み取られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一般的なRFタグ用リーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】一般的なRFタグの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明のRFタグの外観透視図であり、(a)は物品に取り付けたRFタグの表面図であり、(b)はRFタグの断面図である。
【図4】本発明の物品収容装置の外観斜視図である。
【図5】(a)、(c)はフェライトコア19と板状のフェライトコア12の位置関係を表す図であり、(b)、(d)は回路的な模式図である。
【図6】本発明の物品管理システムの構成図である。
【図7】(a)は第1の実施形態の物品収容装置の場合の動作フローチャートであり、(b)は第2の実施形態の物品収容装置の場合の動作フローチャートである
【図8】本発明の第3の実施形態の物品収容装置の構成図である。
【図9】従来のRFタグを示す図である。
【符号の説明】
【0020】
9 コイル、10 蓋、12 板状のフェライトコア(磁路断接手段)、15 容器本体、19 フェライトコア(磁心)、20 コイル、23 容器、24 開口部、50 PC、100 リーダ、200 RFタグ、300 物品収容装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状を含む環状に形成されたアンテナと、該アンテナに近接配置され該アンテナを介してリーダとの間でのデータの授受を制御する制御ICと、を備えたことを特徴とするRFタグ。
【請求項2】
磁束が通過する磁路を形成する磁心と、該磁心の少なくとも一部に巻回したコイルと、前記磁心に磁路を形成し、または該磁路を遮断する磁路断接手段と、を備えたことを特徴とする物品収容装置。
【請求項3】
前記磁心は、その少なくとも一部が請求項1に記載のRFタグの開口部に挿入可能な形状を有することを特徴とする請求項2に記載の物品収容装置。
【請求項4】
前記磁心、コイル及び磁路断接手段は容器内に収容され、該容器は容器本体と該容器本体を開閉する蓋とから成り、当該蓋が閉じられたときに前記磁心の磁路を形成するように構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の物品収容装置。
【請求項5】
前記磁心はフェライトコアまたは鉄心であることを特徴とする請求項2、3または4に記載の物品収容装置。
【請求項6】
前記磁路断接手段は前記磁心と同一材料により構成されていることを特徴とする請求項2、4または5に記載の物品収容装置。
【請求項7】
前記蓋が閉じられたことを報知する情報を記録した報知用RFタグを前記磁心の一部に挿入したことを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の物品収容装置。
【請求項8】
前記蓋の開閉状態を検知する開閉検知手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の物品収容装置。
【請求項9】
請求項1に記載のRFタグと、請求項7に記載の物品収容装置と、該物品収容装置に収容された金属性物品に取り付けられた前記RFタグに記録された記録情報を読み取るリーダと、システム全体を制御する制御手段と、を備えた物品管理システムにおいて、
前記制御手段は、前記リーダにより前記報知用RFタグの記録情報を読み取った場合、前記物品収容装置の蓋が閉じられたと判断して前記RFタグに記録された記録情報を更新することを特徴とする物品管理システム。
【請求項10】
請求項1に記載のRFタグと、請求項8に記載の物品収容装置と、該物品収容装置に収容された金属性物品に取り付けられたRFタグに記録された記録情報を読み取るリーダと、システム全体を制御する制御手段と、を備えた物品管理システムにおいて、
前記制御手段は、前記開閉検知手段により前記蓋が閉じたことを検知した場合、前記磁路断接手段により磁路が形成されたと判断して前記RFタグに記録された記録情報を更新することを特徴とする物品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−185390(P2006−185390A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381249(P2004−381249)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】