RFタグ
【課題】高温となる被着体に取り付けるのに適した新しいRFタグを提供する。
【解決手段】RFタグ1を、ICチップとアンテナとを封入したRFタグ機能部2と、該RFタグ機能部2を設置する設置部6と該設置部6から延出する放熱部7とからなる放熱板3とにより構成して、被着体XとRFタグ機能部2の間に放熱板3が位置するように被着体Xに固定する。かかる構成にあっては、被着体XからRFタグ機能部2に伝わる伝導熱は、放熱板3を介して伝わることとなり、被着体Xから放熱板3に伝わる熱量の多くが放熱板3から放出されることで、RFタグ機能部2まで伝わる熱が大幅に軽減されて、RFタグ機能部2の温度上昇を抑えられる。
【解決手段】RFタグ1を、ICチップとアンテナとを封入したRFタグ機能部2と、該RFタグ機能部2を設置する設置部6と該設置部6から延出する放熱部7とからなる放熱板3とにより構成して、被着体XとRFタグ機能部2の間に放熱板3が位置するように被着体Xに固定する。かかる構成にあっては、被着体XからRFタグ機能部2に伝わる伝導熱は、放熱板3を介して伝わることとなり、被着体Xから放熱板3に伝わる熱量の多くが放熱板3から放出されることで、RFタグ機能部2まで伝わる熱が大幅に軽減されて、RFタグ機能部2の温度上昇を抑えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温となる被着体に取り付けるのに適するRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
加工時に高温となる鋼材や、使用時に高温となるエンジンなどに取り付ける耐熱性のRFタグとしては、ICチップ及びアンテナを断熱材で封入したものが知られている(例えば、特許文献1)。こうしたRFタグは、通常、被着体の表面に直接固着されて用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−135232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記耐熱性のRFタグにあって、断熱材として断熱性樹脂を用いたものは、耐熱性が比較的低く、長時間高温になる被着体に取り付けるには不向きであった。一方、断熱材としてガラスやセラミックを用いれば耐熱性の高いものが得られるが、高コストであるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、高温となる被着体に取り付けるのに適した新しいRFタグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ICチップとアンテナとを封入したRFタグ機能部と、該RFタグ機能部を設置する設置部と該設置部から延出する放熱部とからなる放熱板とを備え、放熱板が、被着体とRFタグ機能部の間に位置するように被着体に固定されるものであることを特徴とするRFタグである。
【0007】
かかる構成にあっては、被着体からRFタグ機能部に伝わる伝導熱は、放熱板を介して伝わることとなる。ここで、放熱板は、RFタグ機能部が設置される設置部から放熱部が延出しており、被着体から放熱板に伝わる熱量の多くが放熱部から放出されることとなり、これにより、被着体からRFタグ機能部へ伝わる熱が大幅に軽減されて、RFタグ機能部の温度上昇を抑えることが可能となる。すなわち、図1に示すように、RFタグ機能部を被着体の表面に直接固着する従来品では、被着体が高温となった時に、RFタグ機能部の表面温度が被着体温度と略同じ温度にまで上昇していくのに対して、本発明では放熱板から継続的に熱が放出されるため、被着体が長時間高温となる場合でも、RFタグ機能部の温度上昇を被着体よりも低い温度(図1中の飽和温度)に留めておくことができるのである。このため、本発明によれば、比較的耐熱性の低いRFタグ機能部を高温となる被着体に取り付けることができ、また、RFタグ機能部が耐熱性に優れたものであれば、極めて高い温度となる被着体にも好適に取付可能となる。
【0008】
本発明にあって、放熱板と被着体との間に配設されて、放熱板と被着体とを非接触とするスペーサを備えることが提案される。かかる構成とした場合には、被着体から放熱板に熱が直接伝達するのを防ぐことができ、被着体からRFタグ機能部に伝達する熱をさらに軽減可能となる。
【0009】
また、前記スペーサは、熱伝導率が低い断熱材からなることが望ましい。熱伝導率が低いものであれば、被着体から放熱板への熱伝導に時間がかかり、その分だけRFタグ機能部に伝達する熱を大きく軽減できる。
【0010】
また、本発明にあって、放熱板は、細長形状の導電性板材からなることが提案される。発明者の研究によれば、かかる構成とすることで、RFタグ機能部の通信性能を向上させることができる。また、かかる構成にあって、さらに、放熱板の一端から他端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の半波長の倍数に相当する長さであるようにすることが望ましい。発明者の研究によれば、放熱板をかかる形状とすることで、RFタグ機能部の通信性能を格段に向上させることができる。これは、放熱板が、RFタグ機能部が送受信する電波の反射器として好適に機能するためと考えられる。
【0011】
また、本発明にあって、放熱板には、スペーサが当接する部分と、設置部との間に切欠状のスリットが形成されていることが提案される。かかる構成にあっては、スペーサ当接部分から設置部に到る熱の伝導経路が、スリットを迂回する分だけ長くなるとともに、スリットによって切り欠かれた分だけ狭くなるから、スリット非形成の場合に比べて、スペーサ当接部分と設置部の間の熱抵抗が高くなり、これにより、被着体からRFタグ機能部に伝達する熱を一層軽減可能となる。また、かかる構成にあっては、スリットを形成することで、放熱板の両端部間の沿面距離を稼ぐことができるため、上述のように、放熱板を導電性板材で構成してRFタグ機能部の通信性能を向上させる場合には、放熱板を過度に大型化することなく、放熱板の両端部間の沿面距離を適正な長さにすることが可能となる。
【0012】
また、本発明にあって、放熱板は、熱伝導率や導電性、強度等の点で、金属材料で構成することが望ましい。特に、放熱板は、材質の異なる金属板を貼り合わせたものである構成が提案される。かかる構成とすれば、例えば、熱伝導率の高い金属板と、強度に優れる金属板とを貼り合わせたりすることで、様々なニーズに応じた放熱板を容易に実現できる。また、材質の異なる金属板を貼り合わせる場合には、導電率の最も高い金属板を、RFタグ機能部を設置する側に配置することが望ましい。導電率が高いものほどRFタグ機能部の送受信する電波を反射し易いためである。
【0013】
また、本発明にあって、放熱板は、設置部と、該設置部の両側から延出する一対の放熱部とを備えてなり、該一対の放熱部で、夫々スペーサを介して被着体に固定されていることが提案される。かかる構成にあっては、放熱板を、設置部の両側で被着体に固定することで、RFタグを被着体に安定して固定することができ、また、被着体とRFタグ機能部の間の熱伝導路を長くすることができる。
【0014】
また、本発明の具体的構成としては、前記一対の放熱部は、被着体に固定するためのネジを挿通するネジ挿通孔が夫々切欠状に形成されて、平面視フック形状をなしている構成が提案される。かかる構成にあっては、ネジ挿通孔が切欠状となることで、当該切欠部分において、放熱部から設置部に到る熱の伝導経路が狭まって熱抵抗が高くなるため、放熱板をネジ止めするためのネジ挿通孔を利用して設置部への伝導熱を好適に低減可能となる。また、さらなる構成として、放熱板は、導電性板材からなり、一方の放熱部の先端から他方の放熱部の先端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の波長の略半分の長さに相当する構成が提案される。かかる構成によれば、放熱板をネジ止めするためのネジ挿通孔を利用して放熱板の端部間の沿面距離を稼ぐことができるから、放熱板の強度を保持しつつ、また、放熱板を大型化することなく、通信性能に優れたRFタグを実現できる。
【0015】
また、本発明にあって、放熱板の少なくとも一面に、フィンが形成されている構成が提案される。かかる構成にあっては、フィンによって放熱板の表面積が増大することで放熱板の放熱性を高めることができ、また、放熱板の強度も高めることができる。
【0016】
また、本発明にあって、放熱板は、平面視略渦巻形状をなす導電性板材を備えてなり、該導電性板材の両端には、コンデンサが接続されて、前記導電性板材を渦巻コイルとするLC共振回路が形成されていることが提案される。かかる構成にあっては、LC共振回路の共振周波数を適宜設定することで、RFタグ機能部の通信性能を向上させることができる。特に、LC共振回路の共振周波数をRFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の周波数と略等しくした時に、RFタグ機能部の通信性能を大幅に向上させることができる。これは、LC共振回路がRFタグ機能部の電波の反射器として好適に機能するためである。なお、LC共振回路の共振周波数は、コンデンサ等を変更することで、RFタグ機能部の電波の周波数に合わせた設定とすることが可能であり、短波などの比較的波長の長い電波に対しても好適に対応できる。
【0017】
また、本発明にあって、間隔をおいて放熱板に積層されて、放熱板と被着体の間に介装される放熱補助板を備える構成が提案される。かかる構成にあっては、放熱補助板を介して被着体から放熱板に熱が伝わることとなり、放熱補助板が放熱作用を発揮することで、被着体から放熱板に伝わる伝導熱をさらに軽減可能となる。また、放熱補助板は、被着体と放熱板の間に介装されているから、被着体から放熱板に向けて放射される放射熱も遮断することができる。この放熱補助板は、複数枚積層することが可能であり、積層枚数が多いほど放熱板に伝わる熱量を軽減できる。また、放熱補助板は、その面積が大きいほど、放熱効果が高くなり、また、被着体から放射される放射熱の多くを遮断可能となる。
【0018】
また、本発明にあって、放熱板を被着体に固定する固定手段は特に限定されないが、例えば、ネジや釘、溶接、接着剤による接着などが挙げられる。放熱板を固定するネジや釘、接着剤には、断熱性の高い材料を用いることが望ましい。また、エンジンのように、激しく振動する被着体に取り付けるRFタグは、振動による脱落を防止するために、ネジを用いて固定することが望ましい。また、被着体が常磁性体である場合には、RFタグを、磁石を用いて被着体に固定することも提案される。
【0019】
また、本発明にあって、RFタグ機能部を放熱板に固定する固定手段は特に限定されないが、接着や係合などが挙げられる。放熱板とRFタグ機能部との間には、断熱材などを適宜介在させることができる。
【0020】
本発明のRFタグを取り付ける被着体は特に限定されないが、好適な被着体としては、加工プロセスで高温となる鋼材や、使用時に高温となる車両のエンジンやモーターなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べたように、本発明のRFタグを用いれば、被着体の温度に対するRFタグ機能部の温度上昇を抑えることができるから、比較的温度耐久性の低いものをRFタグ機能部として採用することができ、これによりRFタグの低コスト化が可能となる。また、耐熱性の高いRFタグ機能部を放熱板と組み合わせることで、従来では実現困難であった耐熱性能を有するRFタグを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のRFタグの作用効果を示すグラフである。
【図2】実施例1のRFタグ1の斜視図である。
【図3】実施例1のRFタグ1の分解斜視図である。
【図4】実施例1のRFタグ1を被着体Xに固定した状態の側面図である。
【図5】放熱板3の平面図である。
【図6】実施例1のRFタグ1の作用説明図である。
【図7】実施例2〜4のRFタグ1a,1b,1cの側面図である。
【図8】実施例5,6のRFタグ1d,1eの斜視図である。
【図9】実施例7に係る放熱板3の平面図である。
【図10】実施例8のRFタグ1fの分解斜視図である。
【図11】実施例8のRFタグ1fの作用説明図である。
【図12】実施例9のRFタグ1gの側面図である。
【図13】実施例10のRFタグ1hの側面図である。
【図14】実施例11のRFタグ1iの分解斜視図である。
【図15】実施例11のRFタグ1iの側面図である。
【図16】実施例12のRFタグ1jの分解斜視図である。
【図17】実施例13のRFタグ1kの斜視図である。
【図18】実施例13に係る放熱板3の平面図である。
【図19】実施例14のRFタグ1mの分解斜視図である。
【図20】実施例14に係る放熱板3の回路構成を示す説明図である。
【図21】温度変化テスト1の結果を示すグラフである。
【図22】通信テストの概要を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0024】
<実施例1>
本実施例のRFタグ1は、図2〜4に示すように、RFタグ機能部2と放熱板3と、該放熱板3を被着体Xに固定するためのボルトネジ4と、放熱板3と被着体Xの間に介装されるスペーサ5とで構成される。
【0025】
RFタグ機能部2は、図2,3に示すように、ICチップ10と、該ICチップ10に接続されたアンテナ11とを、板状のケーシング12に封入してなるものである。ケーシング12は断熱性樹脂からなり、また、ケーシング12内にもICチップ10及びアンテナ11とともに断熱材が充填されている。このRFタグ機能部2は、既存のものを好適に採用できる。
【0026】
放熱板3は、矩形状の金属板によって構成されており、その中央部を、RFタグ機能部2を設置する設置部6とし、該設置部6の左右両側からそれぞれ延出する部分を放熱部7,7としている。
【0027】
設置部6は、RFタグ機能部2を載置し得る幅寸法をなしている。設置部6の縁には、4本の係止爪8が一体的に立設されており、RFタグ機能部2は、これらの係止爪8と係合することで、設置部6の上面に保持される。また、設置部6とRFタグ機能部2との間には、断熱シート9が介装される。
【0028】
各放熱部7,7には、ボルトネジ4が挿通する左右に長尺なネジ挿通孔13が形成されている。このネジ挿通孔13は、図5に示すように、外周縁に繋がる連通溝15によって切欠状に形成されており、これにより、各放熱部7は平面視フック形状をなし、放熱板3は、設置部6を中心とする平面視略S字状をなしている。そして、本実施例では、放熱板3は、一方の放熱部7のフックの先端14と、他方の放熱部7のフックの先端14とを結ぶ、放熱板面上の沿面距離LがRFタグ機能部2が送受信する電波の波長の略半分の長さとなるように設計されている。
【0029】
本実施例のRFタグ1は、図4に示すように、一対の放熱部7,7をボルトネジ4でネジ止めすることによって、被着体Xに固定される。この時、放熱板3は、設置部6に設置されたRFタグ機能部2を被着体Xの反対側に向けて、RFタグ機能部2と被着体Xの間に位置するように固定される。また、図4に示すように、放熱部7と被着体Xの間には、円環板状のスペーサ5がボルトネジ4に外嵌するように介装され、スペーサ5が放熱板3と被着体Xに接触することで、放熱板3と被着体Xは非接触となり、設置部6と被着体Xの間には空隙が形成される。なお、ボルトネジ4は、図4に示すように、被着体Xと螺合させるだけでなく、被着体Xを貫通させて、被着体Xの裏側からナットで締め付けるようにしてもよい。
【0030】
かかるRFタグ1では、図6に示すように、被着体Xが高温となった時に、被着体Xの熱は、被着体Xと接するボルトネジ4とスペーサ5を介して放熱板3に伝わり、さらに、放熱板3から断熱シート9を介してRFタグ機能部2に伝わることとなる。ここで、被着体Xから放熱板3に伝わる熱量の多くは、放熱板3の放熱作用によって放熱部7,7から放出されることとなるから、被着体XからRFタグ機能部2へ伝わる熱が大幅に軽減されて、RFタグ機能部2の温度上昇が抑えられる。
【0031】
また、かかるRFタグ1aでは、スペーサ5によって放熱板3と被着体Xが非接触となっているため、被着体Xから放熱板3に熱が直接伝達するのを防ぐことができ、スペーサ5を介して被着体Xから放熱板3に熱が伝わる分だけ、放熱板3への熱の伝達を遅らせることでき、被着体からRFタグ機能部に伝達する熱をさらに軽減可能となる。
【0032】
また、放熱板3は、金属製で導電性を有しているため、RFタグ機能部2の送受信する電波を反射することで、RFタグ機能部2の通信距離や通信精度を向上させることができる。特に、本実施例では、平面視略S字状をなす放熱板3の、先端14と先端14とを結ぶ放熱板面上の距離Lが、RFタグ機能部2の送受信する波長の半波長に相当するように設計されているため、放熱板3が前記電波を反射するのに適した反射器として機能することとなり、RFタグ機能部2の通信距離や通信精度を大幅に向上させることができる。特に、かかる放熱板3では、ネジ挿通孔13を切欠状とすることで放熱板3をS字状の細長形状としているため、必要最小限の切欠で放熱板3を細長湾曲形状とすることができ、放熱板3の強度を大きく損なうことなく、また、放熱板を大型化することなく、通信性能に優れたRFタグを実現できるという利点がある。
【0033】
また、本実施例のRFタグ1は、設置部6の両側の放熱部7,7にて、スペーサ5を介して被着体Xに固定されており、設置部6と被着体Xの間には空隙が形成されているから、被着体XからRFタグ機能部2への熱伝導路を長くできるという利点がある。また、設置部6と被着体Xの間に空隙が形成されていても、設置部6の両側で被着体Xにネジ止めしているから、RFタグ1を被着体Xに強固に固定することができる。
【0034】
本実施例にあって、放熱板3は、銅などの熱伝導率の高い材料で構成することが望ましい。熱伝導率の高い材料ほど熱を放出し易く、放熱板3の放熱性能を高めることができるためである。また、ボルトネジ4やスペーサ5は、熱伝導率が低い断熱材で構成することが望ましい。熱伝導率が低いほど被着体Xから放熱板3への熱伝導を遅らせることができ、その分、RFタグ機能部2に伝わる熱を軽減できるためである。また、ボルトネジ4やスペーサ5は、導電材料で構成すると放熱板3の電波反射機能と干渉するおそれがあるため、絶縁材料で構成することが望ましい。また、本実施例に係るスペーサ5は、硬質材料で構成することが望ましい。エンジンなどの激しく振動する被着体にRFタグを取り付ける場合、RFタグを被着体に確実に固定する必要があるが、スペーサが柔軟であるとネジのトルク管理が難しくなり、RFタグを安定して固定し難くなるためである。
【0035】
以下に、上記実施例1の構成を変更した実施例2〜12のRFタグについて説明する。
【0036】
<実施例2>
本実施例のRFタグ1aは、図7(a)に示すように、ボルトネジを介さずに放熱板3とスペーサ5と被着体Xとを耐熱性接着剤で接着したものである。また、本実施例では、RFタグ機能部2を、断熱シートを介さずに、放熱板3の設置部6の表面に直接接着している。このように、本発明のRFタグは、被着体に接着や溶接によって固定されるものであってもかまわない。
【0037】
<実施例3>
本実施例のRFタグ1bは、図7(b)に示すように、放熱板3を銅板3aとステンレス板3bの貼り合せとしたものである。かかる構成にあっては、熱伝導率の高い銅板の利点と、強度に優れたステンレス板の利点とを組み合わせることで、放熱性と強度のバランスの取れた放熱板を容易に実現できる。また、かかる構成にあっては、RFタグ機能部2を設置する側に、導電性に優れた銅板3aを配置しているため、導電性に劣るステンレス板3bを設置する場合に比べて、RFタグ機能部2が送受信する電波を強く反射でき、高い通信性能を実現可能となる。
【0038】
<実施例4>
本実施例のRFタグ1cは、図7(c)に示すように、設置部6の底面側で放熱板3を被着体Xに接着するとともに、設置部6の両側で放熱板3を屈曲して、放熱部7を設置部6の両側から上方に延出させたものである。このように、本発明では、設置部と被着体を直接接着することもできるし、また、放熱板を屈曲させることもできる。
【0039】
<実施例5>
本実施例のRFタグ1dは、図8(a)に示すように、放熱板3の設置部6の底面側に、長尺方向に沿ったフィン16を立設したものである。かかる構成では、放熱板3の表面積が拡大することで、放熱板3の放熱性能が向上し、また、放熱板3の強度も向上する。
【0040】
<実施例6>
本実施例のRFタグ1eは、図8(b)に示すように、放熱板3の設置部6から四方に放熱部7を延成して、放熱板3を十字形状にしたものである。このように、本発明にあって、放熱板の平面形状は適宜変更可能である。
【0041】
<実施例7>
本実施例は、図9に示すように、放熱板3の設置部6の両側に矩形の開口部17,17を形成し、これにより、スペーサ5が当接する部分と設置部6との間に狭部18,18を形成したものである。かかる構成では、狭部18の形成部位において熱抵抗が高くなるため、実施例1に比べて、放熱板3の断熱性能を向上させることができる。
【0042】
<実施例8>
本実施例のRFタグ1fは、図10に示すように、放熱板3の下方に放熱補助板19を積層したものである。放熱補助板19は、矩形状のステンレス板であり、板面に形成された長孔20,20にボルトネジ4,4を挿通することで、放熱板3と被着体Xの間に介装される。この時、放熱板3と放熱補助板19の間、放熱補助板19と被着体Xの間には、それぞれスペーサ5が介装されて、放熱補助板19は、放熱板3及び被着体Xと直接接触しないように間隔をおいて配設される。また、放熱補助板19は、放熱板3の下方全体を覆う本体部21aと、該本体部21aの側縁から、放熱板3の短尺方向に延出する翼部21b,21bとを備えている。かかる構成にあっては、被着体Xの熱が、放熱補助板19を介して放熱板3に伝わることとなるが、放熱補助板19が放熱作用を発揮することで、被着体Xから放熱板3に伝わる伝導熱が軽減されることとなる。また、図11に示すように、放熱補助板19は、被着体Xから放熱板3に向けて放射される放射熱を遮ることもできる。特に、放熱補助板19は、放熱板3の外側に延出する翼部21b,21bを有しているから、放熱板3直下からの放射熱だけでなく、放熱板3の周囲からRFタグ機能部2や放熱板3に向けて放射される放射熱も遮断することができる。さらには、各翼部21b,21bは、外側斜め上方に延出しているため、水平方向に延出するのに比べて、被着体XからRFタグ機能部2や放熱板3へ放射される放射熱を効率よく遮断できる。
【0043】
<実施例9>
本実施例のRFタグ1gは、図12に示すように、放熱板3と被着体Xの間に、二枚の放熱補助板19a,19bを積層したものである。ここで、放熱板3と放熱補助板19aの間、また、放熱補助板19bと被着体Xの間、さらに、二枚の放熱補助板19a,19bの間には、それぞれスペーサ5,5aが介装されて、各放熱補助板19a,19bと放熱板3と被着体Xとが相互に当接しないよう構成される。このように、放熱板3と被着体Xの間に複数枚の放熱補助板19a,19bを間隔をおいて積層すれば、各放熱補助板19a,19bが放熱作用を発揮することとなり、積層した放熱補助板の枚数分だけ、放熱板3に伝わる伝導熱を軽減可能となる。
【0044】
また、本実施例では、被着体Xに対向する放熱補助板19bと被着体Xとが、鉄などの常磁性体で構成され、また、これらの間に介装される一対のスペーサ5a,5aは磁石で構成されており、スペーサ5aの磁力で放熱補助板19bを被着体Xに吸着させることにより、RFタグ1gが被着体Xに取り付けられる。このように、被着体が常磁性体である場合には、被着体に対向する放熱板や放熱補助板を常磁性体で構成し、磁石を介してRFタグを被着体に固定することで、RFタグの脱着が容易となる。また、本実施例では、放熱補助板19bを被着体Xに吸着する二枚のスペーサ5a,5aは、夫々の極性が上下逆向きとなるように設置される。かかる構成では、図12中の矢印に示すように、左右のスペーサ5a,5aと、放熱補助板19bと、被着体Xとの間に、ループ状の安定な磁気回路が形成されることとなり、これにより、放熱補助板19bを被着体Xに強固に吸着可能となる。
【0045】
また、本実施例のように、放熱板と被着体の間に放熱補助板を積層する構成では、放熱板を比較的導電性に優れた材料で構成して放熱板の電波反射特性を高めるとともに、放熱補助板を比較的強度の高い材料で構成して放熱板の強度を補うようにすることが望ましい。具体的には、本実施例の場合、放熱板3を導電性に優れた銅板で構成し、放熱板側の放熱補助板19aを強度に優れたステンレス板で構成し、被着体側の放熱補助板19bを常磁性体である鉄板で構成することが挙げられる。もちろん、本発明の放熱板や放熱補助板の構成材料は、かかる組合せに限らず、その用途に応じて様々に変更することができる。例えば、高放射線条件下で使用するRFタグでは、放熱板や放熱補助板を、ガンマ線遮蔽材によって構成することが提案される。ガンマ線遮蔽材としては、鉛やタングステンなどが挙げられる。かかる構成とすれば、RFタグ機能部を被着体から放射されるガンマ線から保護することができ、ガンマ線によってRFタグ機能部のICチップが誤作動するのを防止できる。なお、ガンマ線遮蔽材は、放熱板や放熱補助板の全体を構成する必要はなく、放熱板や放熱補助板の、RFタグ機能部下方部位に部分的に貼り合わせるだけでもよい。
【0046】
<実施例10>
本実施例のRFタグ1hは、実施例9の構成を変更し、図13に示すように、二枚の放熱補助板19a,19bの間のスペーサ5,5を、中央方向にずらした位置に配設したものである。かかる構成では、放熱補助板19a,19bの表裏でスペーサ5,5aが厚み方向に重ならないため、図13中の矢印に示すように、被着体Xから放熱板3に伝わる伝導熱は、放熱補助板19a,19bの厚み方向に伝わるだけでなく、放熱補助板19a,19bの面方向に伝わってから放熱板3へと到達することとなる。このように、スペーサ5,5aを放熱補助板19a,19bの表裏で重ならないよう配置した場合には、被着体Xから放熱板3への熱伝導の経路を稼ぐことができ、これにより、放熱板3に伝わる熱量を低減することが可能となる。
【0047】
<実施例11>
本実施例のRFタグ1iは、図14,15に示すように、放熱板3と被着体Xの間に、一対の放熱補助板19c,19cを介装したものである。各放熱補助板19c,19cは、放熱板3の略半分の長さの金属板からなり、夫々の内側端部24,24を対向させるようにして同一面上に配置される。そして、各放熱補助板19c,19cは、その外側部表裏に接合されたスペーサ5b,5cによって、放熱板3及び被着体Xと直接接触しないように間隔をおいて配設される。ここで、放熱板3と、放熱補助板19cと、放熱板3と放熱補助板19c間のスペーサ5bは、導電性材料で構成されており、図15に示すように、RFタグ1iには、放熱補助板19cの各内側端部24,24相互を結ぶ開環状の導電経路Mが形成される。そして、本実施例では、この導電経路Mが、RFタグ機能部2が送受信する電波の波長の整数倍となるように設計されている。かかる構成によれば、放熱板3と放熱補助板19cを、RFタグ機能部2の送受信する電波を反射するのに適した反射器として一体的に機能させることが可能となり、放熱板の大きさや形状を制限することなく、RFタグの通信性能を向上可能となる。
【0048】
<実施例12>
本実施例のRFタグ1jは、実施例1の放熱板3の構成を変更したものである。具体的には、図16に示すように、放熱板3の各放熱部7には、スペーサ5の当接部分から外方に延出する外方延出部25,25が形成されている。そして、各外方延出部25,25の上面には、放熱板本体よりも熱伝導率の高い材料からなる放熱促進板片26,26が貼付される。この放熱促進板片26の材料としてはアルミが好適である。かかる構成では、外方延出部25の放熱促進板片26から多量の熱が放出され、これにより、スペーサ5から放熱板3に伝わる熱の多くが、外方延出部25側に流れることとなるから、内方の設置部6に伝わる熱量をさらに軽減することができる。
【0049】
<実施例13>
本実施例のRFタグ1kは、実施例1の放熱板3の構成を変更したものである。具体的には、本実施例に係る放熱板3は、図17に示すように、切欠状のスリット28,28によって、平面視略S字状に形成されており、両先端部29,29にスペーサ5,5を配設することにより、被着体と直接接触せずに間隔をおいて固定される。設置部6は、放熱板3の中央部に配設され、該設置部6の上に、断熱シート9を介してRFタグ機能部2が接着される。かかる構成にあっては、スペーサ5の当接部分29と、設置部6との間にスリット28が形成されて、該当接部分29から設置部6に到る熱の伝導経路が細く、長い形状となるため、スリット28を形成しない場合に比べて、スペーサ5の当接部分29と設置部6の間の熱抵抗を高め、RFタグ機能部2に伝わる熱量を軽減することができる。
【0050】
また、本実施例に係る放熱板3は、導電性の金属板材で構成されるとともに、図18に示すように、両先端部29,29を結ぶ、放熱板面上の沿面距離Lが、RFタグ機能部2が送受信する電波の半波長に相当する長さとなるように設計されており、実施例1に係る放熱板と同様に、RFタグ機能部2の電波を反射するのに適した反射器として機能する。ここで、本実施例では、放熱板3に形成されたスリット28,28によって、両端部29,29の間の沿面距離を稼ぐことができるから、放熱板を過度に大型化せずに、両端部29,29の間の沿面距離を適正な長さに設定できるという利点がある。なお、実施例1及び本実施例では、放熱板の両端部間の沿面距離を、RFタグ機能部2の電波の半波長に相当する長さとしているが、両端部間の沿面距離は、当該電波の半波長相当に限らず、半波長の倍数に相当する長さに設定しても同様の効果を得ることができる。
【0051】
<実施例14>
本実施例のRFタグ1mは、放熱板3にLC共振回路を配設したものである。具体的には、本実施例に係る放熱板3は、図19に示すように、平面視略渦巻状に形成されたステンレス板3cと、該ステンレス板3cの上に貼り合わされたプリント基板3dとによって構成され、スペーサ5,5を介して被着体に固定される。プリント基板3dには、コンデンサ30が実装されるとともに、ステンレス板3cと貼り合わせた状態で、コンデンサ30を、ステンレス板3cの内側端部32aと外側端部32bに接続するプリント配線31,31が配設されている。また、プリント基板3dの上面中央部には、RFタグ機能部2が接着される。かかる構成では、図20に示すように、ステンレス板3cが渦巻コイルを構成し、該渦巻きコイルの両端部32a,32bに接続されたコンデンサ30とによって、LC共振回路が形成されることとなる。そして、本実施例では、LC共振回路の共振周波数が、RFタグ機能部2の送受信する電波の周波数Fと等しくなるよう構成される。すなわち、RFタグ1mは、ステンレス板3cのインダクタンスLと、コンデンサ30の静電容量Cと、前記電波の周波数Fとが、
F=1/(2π√(LC))
の条件を満足するように設計される。かかる構成にあっては、LC共振回路がRFタグ機能部2の送受信する電波を反射することで、RFタグ機能部2の通信性能を大幅に向上させることができる。特に、本構成は、RFタグ機能部の送受信する電波の波長が長い場合に適する。すなわち、上記実施例13(図18参照)の構成では、RFタグ機能部2の送受信する電波が、比較的波長の長い短波(波長10〜100m)である場合には、放熱板3の両端部29,29の間の沿面距離を、当該電波の半波長に相当する長さ(0.5〜5m)にすると、放熱板3を実用的なサイズに収めることができない。これに対して、本実施例の構成では、コンデンサを適宜選択することでLC共振回路の共振周波数を変更できるため、RFタグ機能部の電波の波長が長い場合でも、放熱板を大型化することなく、RFタグ機能部の通信性能を向上させることができる。
【0052】
<温度変化テスト1>
本発明のRFタグの耐熱性を評価するために、下記の温度変化テストを行った。
【0053】
(試験品)
本試験に用いる5つの試験品を準備した。試験品1は、上記実施例1に準じたものである。具体的には、放熱板は0.5mm厚のステンレス板で構成し、スペーサは2mm厚のステンレスとし、RFタグ機能部の下に敷く断熱シートは、1mm厚の断熱性不織布を使用した。
【0054】
試験品2〜4は、試験品1からスペーサを変更したものである。具体的には、表1に示すように、試験品2では、試験品1のステンレス製スペーサを、左右両側でそれぞれ二枚重ねて使用した。試験品3では、試験品1のステンレス製スペーサを放熱板に溶接するとともに、さらに、セラミック断熱材からなるスペーサを左右のステンレス製スペーサの下にそれぞれ配置した。また、試験品4は、試験品1のステンレス製スペーサを放熱板に溶接しただけのものである。また、試験品5は、試験品4からRFタグ機能部の下に敷く断熱シートを除去したものである。
【0055】
(試験)
温度を略一定に保持した試験用ホットプレートの上に、ボルトネジを使用せずに試験品1〜5を載せて加熱し、RFタグ機能部の直下の温度変化を計測した。試験の概要を表1に示し、その結果を図21に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
図21に示されるように、本試験では、いずれの試験品においても、加熱開始から15分程度で測定温度の上昇が止まり、温度が略一定となった。かかる状態では、ホットプレートから伝わる熱と、放熱板から放出される熱が略等しくなることで、RFタグ機能部の温度が平衡状態に達したものと考えられる。かかる平衡状態の温度は、ホットプレートの温度よりも50〜100℃程度低くなっていた。この結果は、放熱板の放熱作用によってRFタグ機能部に伝わる熱を大幅に軽減できることを示している。
【0058】
平衡状態の温度を比較すると、試験品1と試験品4は殆ど同じであり、スペーサの溶接はRFタグ機能部の温度に殆ど影響しないことがわかった。また、試験品5の温度は、試験品4よりも15℃ほど高くなっていた。この結果は、RFタグ機能部の下の断熱シートによって、RFタグ機能部に伝わる熱を軽減できることを示している。また、試験品2の温度は、試験品1よりも20℃ほど低くなっており、さらに、試験品3の温度は、試験品2よりも10℃ほど低くなっていた。この結果は、スペーサを厚くしたり、熱伝導率の低い材料をスペーサに用いたりすることで、RFタグ機能部の温度上昇を軽減できることを示唆している。
【0059】
<通信テスト>
本発明のRFタグの通信性能を評価するために、下記の通信テストを行った。
【0060】
(試験品)
本試験に用いるRFタグ機能部としてUHFパッシブタグを準備し、図22に示すように、かかるRFタグ機能部を用いて7つの試験品A〜Gを準備した。試験品Aは、RFタグ機能部を放熱板に設置せず、単体で用いたものである。
【0061】
試験品Bは、上記実施例1の放熱板にRFタグ機能部を装着したものである。具体的には、放熱板は、75×25mmのステンレス板を、平面視略S字状になるように切り欠いたものであり、両先端の間の板面に沿った距離は、RFタグ機能部の送受信する電波(周波数953MHz)の波長の略半分に相当する157mmとなっている。
【0062】
また、試験品Cは、試験品Bの放熱部の下に、それぞれ2mm厚のステンレス製スペーサを配置したものであり、試験品Dは、試験品Cの放熱板とスペーサを、ステンレス製のボルトネジとナットで締結したものである。
【0063】
また、試験品E〜Gは、RFタグ機能部を銅製放熱板に設置したものである。具体的には、試験品Eの放熱板は、切欠きのない長さ75mmの銅板であり、試験品Fでは、長さ157mm(通信電波の半波長)の銅板を使用した。そして、試験品Gの放熱板は、試験品Eと同サイズの銅板を平面視略S字状に切り欠いて、先端間の沿面距離が長さ157mmとなるようにしたものである。
【0064】
(試験)
円偏波アンテナを接続した通信装置(4W相当)を用いて、上記試験品A〜Gについて最長交信距離と、交信が不安定又は不能となるヌル点までの最短距離を測定した。結果を図22に示す。なお、測定結果は、自由空間での簡易測定によるものである。
【0065】
図22に示されるように、試験品B〜Gは、RFタグ機能部単体の試験品Aよりも高い通信性能が認められた。この結果により、RFタグ機能部を金属製放熱板に設置することで、RFタグ機能部の通信性能を向上できることが示された。
【0066】
また、試験品C,Dの通信性能は、試験品Bよりも若干劣っていた。この結果は、導電性のスペーサやボルトネジが放熱板に接触することで、放熱板の導電路が短絡され、これにより、放熱板の電波反射作用が低減したためと説明でき、スペーサやボルトネジを用いる場合は、通信性能を向上させるために、これらを絶縁材料で構成したほうが好ましいことがわかった。
【0067】
また、試験品Fの通信性能は、試験品Eよりも極めて高いものであった。この結果は、放熱板の長さを通信電波の半波長の長さとすることで、RFタグ機能部の通信性能を大幅に向上できることを示している。また、試験品Gでは、試験品Fよりも若干低いものの、試験品Eに比べて大幅な通信性能の向上が確認された。この結果は、放熱板を切り欠いて湾曲細長形状とし、放熱板の端部間の板面に沿った距離を通信電波の半波長とすることで、放熱板を大きくすることなく、通信性能を大幅に向上できることを示している。
【0068】
<温度変化テスト2>
本発明のRFタグの耐熱性について、さらなる評価をするために、下記の温度変化テストを行った。
【0069】
(試験品)
本試験に用いる8つの試験品a〜hを準備した。試験品aは、上記温度変化テスト1の試験品2と同じものである。すなわち、試験品aは、放熱板を0.5mm厚のステンレス板で構成し、放熱板と被着体の間に、2mm厚のステンレス製スペーサを左右両側に夫々二枚重ねで配設し、さらに、RFタグ機能部の下に敷く断熱シートに1mm厚の断熱性不織布を使用したものである。
【0070】
【表2】
【0071】
試験品bは、表2に示すように、試験品aの構成を一部変更し、放熱板と被着体の間に配設するスペーサとして、ステンレスよりも熱伝導率の低い、セラミック製スペーサを二枚重ねで用いたものである。
【0072】
試験品cは、表2に示すように、試験品aの構成を一部変更し、放熱板と被着体の間にスペーサを介して放熱補助板一枚を配設するとともに、放熱補助板と被着体の間に配設する底部スペーサとして二枚重ねのステンレス製スペーサを用いたものである。
【0073】
試験品dは、試験品cの構成を一部変更し、放熱補助板と被着体の間に配設する底部スペーサに、三枚重ねのステンレス製スペーサを用いたものである。また、試験品eは、底部スペーサとして二枚重ねのセラミック製スペーサを用いたものである。
【0074】
また、試験品fは、試験品dから放熱補助板の構成を変更したものである。すなわち、試験品dの放熱補助板は、図10に示す放熱補助板19と同様に、本体部21aと翼部21bで構成したのに対し、試験品fの放熱補助板は、翼部21bを設けず、放熱板3の直下を覆う本体部21aのみで構成した。
【0075】
また、試験品gは、試験品dの構成を変更し、放熱板と被着体の間にスペーサを介して放熱補助板を2枚積層するとともに、放熱補助板と被着体の間に三枚重ねのステンレス製スペーサを配設したものである。
【0076】
また、試験品hは、試験品gの構成を変更し、各放熱補助板を長手方向に拡張して、放熱板側の放熱補助板の面積を約25%、被着体側の放熱補助板の面積を約50%拡大したものである。
【0077】
(試験)
温度を300℃に保持した試験用ホットプレートの上に、ボルトネジを使用せずに試験品a〜hを載せて加熱し、RFタグ機能部の直下の温度変化を45分間計測した。また、試験品e,g,hについては、ホットプレートの温度を500℃に変更する他は同様の試験を別途行った。なお、本試験では、試験品の周囲のホットプレート表面から試験品に放射熱が放射されるように、25cm四方のホットプレートの中央に各試験品を載置した。試験の結果、いずれの試験品においても、加熱してしばらくすると測定温度の上昇が止まり、温度が略一定となった。表2に、各試験品について、測定温度が平衡状態となった時の最高温度を示す。
【0078】
平衡状態の温度を比較すると、試験品cの温度は試験品aよりも30℃以上低くなっており、放熱板と被着体の間に放熱補助板を介装することで、RFタグ機能部の温度を低減できることがわかった。また、試験品gの温度は試験品dよりも30℃以上低くなっており、放熱板と被着体の間に積層する放熱補助板の枚数を増やすほど、RFタグ機能部に伝わる熱を軽減できることが示唆された。
【0079】
また、試験品hの温度は、試験品gよりも20℃以上低くなっていた。この結果は、放熱補助板は、その面積が広いほど放熱効果や放射熱遮断効果が高くなり、RFタグ機能部に伝わる熱を軽減できることを示唆している。また、試験品fの温度は、試験品dに比べて15℃ほど高くなっており、放熱補助板の翼部が、RFタグ機能部の温度上昇の抑制に寄与していることが示された。
【0080】
さらに、試験品aと試験品b、ならびに、試験品cと試験品eを比較すると、セラミック製スペーサを用いた試験品b,eの方が温度が低くなっており、熱伝導率の低い材料をスペーサに用いることで、RFタグ機能部の温度を低減できることがわかった。また、試験品dの温度は、試験品cよりも低くなっており、被着体の上に配設するスペーサを厚くするほど、断熱効果が高くなることが示唆された。
【符号の説明】
【0081】
1,1a〜1k,1m RFタグ
2 RFタグ機能部
3 放熱板
3a 銅板
3b,3c ステンレス板
3d プリント基板
4 ボルトネジ
5,5a,5b,5c スペーサ
6 設置部
7 放熱部
8 係止爪
9 断熱シート
10 ICチップ
11 アンテナ
12 ケーシング
13 ネジ挿通孔
15 連通溝
16 フィン
19,19a〜19c 放熱補助板
28 スリット
30 コンデンサ
X 被着体
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温となる被着体に取り付けるのに適するRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
加工時に高温となる鋼材や、使用時に高温となるエンジンなどに取り付ける耐熱性のRFタグとしては、ICチップ及びアンテナを断熱材で封入したものが知られている(例えば、特許文献1)。こうしたRFタグは、通常、被着体の表面に直接固着されて用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−135232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記耐熱性のRFタグにあって、断熱材として断熱性樹脂を用いたものは、耐熱性が比較的低く、長時間高温になる被着体に取り付けるには不向きであった。一方、断熱材としてガラスやセラミックを用いれば耐熱性の高いものが得られるが、高コストであるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、高温となる被着体に取り付けるのに適した新しいRFタグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ICチップとアンテナとを封入したRFタグ機能部と、該RFタグ機能部を設置する設置部と該設置部から延出する放熱部とからなる放熱板とを備え、放熱板が、被着体とRFタグ機能部の間に位置するように被着体に固定されるものであることを特徴とするRFタグである。
【0007】
かかる構成にあっては、被着体からRFタグ機能部に伝わる伝導熱は、放熱板を介して伝わることとなる。ここで、放熱板は、RFタグ機能部が設置される設置部から放熱部が延出しており、被着体から放熱板に伝わる熱量の多くが放熱部から放出されることとなり、これにより、被着体からRFタグ機能部へ伝わる熱が大幅に軽減されて、RFタグ機能部の温度上昇を抑えることが可能となる。すなわち、図1に示すように、RFタグ機能部を被着体の表面に直接固着する従来品では、被着体が高温となった時に、RFタグ機能部の表面温度が被着体温度と略同じ温度にまで上昇していくのに対して、本発明では放熱板から継続的に熱が放出されるため、被着体が長時間高温となる場合でも、RFタグ機能部の温度上昇を被着体よりも低い温度(図1中の飽和温度)に留めておくことができるのである。このため、本発明によれば、比較的耐熱性の低いRFタグ機能部を高温となる被着体に取り付けることができ、また、RFタグ機能部が耐熱性に優れたものであれば、極めて高い温度となる被着体にも好適に取付可能となる。
【0008】
本発明にあって、放熱板と被着体との間に配設されて、放熱板と被着体とを非接触とするスペーサを備えることが提案される。かかる構成とした場合には、被着体から放熱板に熱が直接伝達するのを防ぐことができ、被着体からRFタグ機能部に伝達する熱をさらに軽減可能となる。
【0009】
また、前記スペーサは、熱伝導率が低い断熱材からなることが望ましい。熱伝導率が低いものであれば、被着体から放熱板への熱伝導に時間がかかり、その分だけRFタグ機能部に伝達する熱を大きく軽減できる。
【0010】
また、本発明にあって、放熱板は、細長形状の導電性板材からなることが提案される。発明者の研究によれば、かかる構成とすることで、RFタグ機能部の通信性能を向上させることができる。また、かかる構成にあって、さらに、放熱板の一端から他端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の半波長の倍数に相当する長さであるようにすることが望ましい。発明者の研究によれば、放熱板をかかる形状とすることで、RFタグ機能部の通信性能を格段に向上させることができる。これは、放熱板が、RFタグ機能部が送受信する電波の反射器として好適に機能するためと考えられる。
【0011】
また、本発明にあって、放熱板には、スペーサが当接する部分と、設置部との間に切欠状のスリットが形成されていることが提案される。かかる構成にあっては、スペーサ当接部分から設置部に到る熱の伝導経路が、スリットを迂回する分だけ長くなるとともに、スリットによって切り欠かれた分だけ狭くなるから、スリット非形成の場合に比べて、スペーサ当接部分と設置部の間の熱抵抗が高くなり、これにより、被着体からRFタグ機能部に伝達する熱を一層軽減可能となる。また、かかる構成にあっては、スリットを形成することで、放熱板の両端部間の沿面距離を稼ぐことができるため、上述のように、放熱板を導電性板材で構成してRFタグ機能部の通信性能を向上させる場合には、放熱板を過度に大型化することなく、放熱板の両端部間の沿面距離を適正な長さにすることが可能となる。
【0012】
また、本発明にあって、放熱板は、熱伝導率や導電性、強度等の点で、金属材料で構成することが望ましい。特に、放熱板は、材質の異なる金属板を貼り合わせたものである構成が提案される。かかる構成とすれば、例えば、熱伝導率の高い金属板と、強度に優れる金属板とを貼り合わせたりすることで、様々なニーズに応じた放熱板を容易に実現できる。また、材質の異なる金属板を貼り合わせる場合には、導電率の最も高い金属板を、RFタグ機能部を設置する側に配置することが望ましい。導電率が高いものほどRFタグ機能部の送受信する電波を反射し易いためである。
【0013】
また、本発明にあって、放熱板は、設置部と、該設置部の両側から延出する一対の放熱部とを備えてなり、該一対の放熱部で、夫々スペーサを介して被着体に固定されていることが提案される。かかる構成にあっては、放熱板を、設置部の両側で被着体に固定することで、RFタグを被着体に安定して固定することができ、また、被着体とRFタグ機能部の間の熱伝導路を長くすることができる。
【0014】
また、本発明の具体的構成としては、前記一対の放熱部は、被着体に固定するためのネジを挿通するネジ挿通孔が夫々切欠状に形成されて、平面視フック形状をなしている構成が提案される。かかる構成にあっては、ネジ挿通孔が切欠状となることで、当該切欠部分において、放熱部から設置部に到る熱の伝導経路が狭まって熱抵抗が高くなるため、放熱板をネジ止めするためのネジ挿通孔を利用して設置部への伝導熱を好適に低減可能となる。また、さらなる構成として、放熱板は、導電性板材からなり、一方の放熱部の先端から他方の放熱部の先端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の波長の略半分の長さに相当する構成が提案される。かかる構成によれば、放熱板をネジ止めするためのネジ挿通孔を利用して放熱板の端部間の沿面距離を稼ぐことができるから、放熱板の強度を保持しつつ、また、放熱板を大型化することなく、通信性能に優れたRFタグを実現できる。
【0015】
また、本発明にあって、放熱板の少なくとも一面に、フィンが形成されている構成が提案される。かかる構成にあっては、フィンによって放熱板の表面積が増大することで放熱板の放熱性を高めることができ、また、放熱板の強度も高めることができる。
【0016】
また、本発明にあって、放熱板は、平面視略渦巻形状をなす導電性板材を備えてなり、該導電性板材の両端には、コンデンサが接続されて、前記導電性板材を渦巻コイルとするLC共振回路が形成されていることが提案される。かかる構成にあっては、LC共振回路の共振周波数を適宜設定することで、RFタグ機能部の通信性能を向上させることができる。特に、LC共振回路の共振周波数をRFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の周波数と略等しくした時に、RFタグ機能部の通信性能を大幅に向上させることができる。これは、LC共振回路がRFタグ機能部の電波の反射器として好適に機能するためである。なお、LC共振回路の共振周波数は、コンデンサ等を変更することで、RFタグ機能部の電波の周波数に合わせた設定とすることが可能であり、短波などの比較的波長の長い電波に対しても好適に対応できる。
【0017】
また、本発明にあって、間隔をおいて放熱板に積層されて、放熱板と被着体の間に介装される放熱補助板を備える構成が提案される。かかる構成にあっては、放熱補助板を介して被着体から放熱板に熱が伝わることとなり、放熱補助板が放熱作用を発揮することで、被着体から放熱板に伝わる伝導熱をさらに軽減可能となる。また、放熱補助板は、被着体と放熱板の間に介装されているから、被着体から放熱板に向けて放射される放射熱も遮断することができる。この放熱補助板は、複数枚積層することが可能であり、積層枚数が多いほど放熱板に伝わる熱量を軽減できる。また、放熱補助板は、その面積が大きいほど、放熱効果が高くなり、また、被着体から放射される放射熱の多くを遮断可能となる。
【0018】
また、本発明にあって、放熱板を被着体に固定する固定手段は特に限定されないが、例えば、ネジや釘、溶接、接着剤による接着などが挙げられる。放熱板を固定するネジや釘、接着剤には、断熱性の高い材料を用いることが望ましい。また、エンジンのように、激しく振動する被着体に取り付けるRFタグは、振動による脱落を防止するために、ネジを用いて固定することが望ましい。また、被着体が常磁性体である場合には、RFタグを、磁石を用いて被着体に固定することも提案される。
【0019】
また、本発明にあって、RFタグ機能部を放熱板に固定する固定手段は特に限定されないが、接着や係合などが挙げられる。放熱板とRFタグ機能部との間には、断熱材などを適宜介在させることができる。
【0020】
本発明のRFタグを取り付ける被着体は特に限定されないが、好適な被着体としては、加工プロセスで高温となる鋼材や、使用時に高温となる車両のエンジンやモーターなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べたように、本発明のRFタグを用いれば、被着体の温度に対するRFタグ機能部の温度上昇を抑えることができるから、比較的温度耐久性の低いものをRFタグ機能部として採用することができ、これによりRFタグの低コスト化が可能となる。また、耐熱性の高いRFタグ機能部を放熱板と組み合わせることで、従来では実現困難であった耐熱性能を有するRFタグを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のRFタグの作用効果を示すグラフである。
【図2】実施例1のRFタグ1の斜視図である。
【図3】実施例1のRFタグ1の分解斜視図である。
【図4】実施例1のRFタグ1を被着体Xに固定した状態の側面図である。
【図5】放熱板3の平面図である。
【図6】実施例1のRFタグ1の作用説明図である。
【図7】実施例2〜4のRFタグ1a,1b,1cの側面図である。
【図8】実施例5,6のRFタグ1d,1eの斜視図である。
【図9】実施例7に係る放熱板3の平面図である。
【図10】実施例8のRFタグ1fの分解斜視図である。
【図11】実施例8のRFタグ1fの作用説明図である。
【図12】実施例9のRFタグ1gの側面図である。
【図13】実施例10のRFタグ1hの側面図である。
【図14】実施例11のRFタグ1iの分解斜視図である。
【図15】実施例11のRFタグ1iの側面図である。
【図16】実施例12のRFタグ1jの分解斜視図である。
【図17】実施例13のRFタグ1kの斜視図である。
【図18】実施例13に係る放熱板3の平面図である。
【図19】実施例14のRFタグ1mの分解斜視図である。
【図20】実施例14に係る放熱板3の回路構成を示す説明図である。
【図21】温度変化テスト1の結果を示すグラフである。
【図22】通信テストの概要を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0024】
<実施例1>
本実施例のRFタグ1は、図2〜4に示すように、RFタグ機能部2と放熱板3と、該放熱板3を被着体Xに固定するためのボルトネジ4と、放熱板3と被着体Xの間に介装されるスペーサ5とで構成される。
【0025】
RFタグ機能部2は、図2,3に示すように、ICチップ10と、該ICチップ10に接続されたアンテナ11とを、板状のケーシング12に封入してなるものである。ケーシング12は断熱性樹脂からなり、また、ケーシング12内にもICチップ10及びアンテナ11とともに断熱材が充填されている。このRFタグ機能部2は、既存のものを好適に採用できる。
【0026】
放熱板3は、矩形状の金属板によって構成されており、その中央部を、RFタグ機能部2を設置する設置部6とし、該設置部6の左右両側からそれぞれ延出する部分を放熱部7,7としている。
【0027】
設置部6は、RFタグ機能部2を載置し得る幅寸法をなしている。設置部6の縁には、4本の係止爪8が一体的に立設されており、RFタグ機能部2は、これらの係止爪8と係合することで、設置部6の上面に保持される。また、設置部6とRFタグ機能部2との間には、断熱シート9が介装される。
【0028】
各放熱部7,7には、ボルトネジ4が挿通する左右に長尺なネジ挿通孔13が形成されている。このネジ挿通孔13は、図5に示すように、外周縁に繋がる連通溝15によって切欠状に形成されており、これにより、各放熱部7は平面視フック形状をなし、放熱板3は、設置部6を中心とする平面視略S字状をなしている。そして、本実施例では、放熱板3は、一方の放熱部7のフックの先端14と、他方の放熱部7のフックの先端14とを結ぶ、放熱板面上の沿面距離LがRFタグ機能部2が送受信する電波の波長の略半分の長さとなるように設計されている。
【0029】
本実施例のRFタグ1は、図4に示すように、一対の放熱部7,7をボルトネジ4でネジ止めすることによって、被着体Xに固定される。この時、放熱板3は、設置部6に設置されたRFタグ機能部2を被着体Xの反対側に向けて、RFタグ機能部2と被着体Xの間に位置するように固定される。また、図4に示すように、放熱部7と被着体Xの間には、円環板状のスペーサ5がボルトネジ4に外嵌するように介装され、スペーサ5が放熱板3と被着体Xに接触することで、放熱板3と被着体Xは非接触となり、設置部6と被着体Xの間には空隙が形成される。なお、ボルトネジ4は、図4に示すように、被着体Xと螺合させるだけでなく、被着体Xを貫通させて、被着体Xの裏側からナットで締め付けるようにしてもよい。
【0030】
かかるRFタグ1では、図6に示すように、被着体Xが高温となった時に、被着体Xの熱は、被着体Xと接するボルトネジ4とスペーサ5を介して放熱板3に伝わり、さらに、放熱板3から断熱シート9を介してRFタグ機能部2に伝わることとなる。ここで、被着体Xから放熱板3に伝わる熱量の多くは、放熱板3の放熱作用によって放熱部7,7から放出されることとなるから、被着体XからRFタグ機能部2へ伝わる熱が大幅に軽減されて、RFタグ機能部2の温度上昇が抑えられる。
【0031】
また、かかるRFタグ1aでは、スペーサ5によって放熱板3と被着体Xが非接触となっているため、被着体Xから放熱板3に熱が直接伝達するのを防ぐことができ、スペーサ5を介して被着体Xから放熱板3に熱が伝わる分だけ、放熱板3への熱の伝達を遅らせることでき、被着体からRFタグ機能部に伝達する熱をさらに軽減可能となる。
【0032】
また、放熱板3は、金属製で導電性を有しているため、RFタグ機能部2の送受信する電波を反射することで、RFタグ機能部2の通信距離や通信精度を向上させることができる。特に、本実施例では、平面視略S字状をなす放熱板3の、先端14と先端14とを結ぶ放熱板面上の距離Lが、RFタグ機能部2の送受信する波長の半波長に相当するように設計されているため、放熱板3が前記電波を反射するのに適した反射器として機能することとなり、RFタグ機能部2の通信距離や通信精度を大幅に向上させることができる。特に、かかる放熱板3では、ネジ挿通孔13を切欠状とすることで放熱板3をS字状の細長形状としているため、必要最小限の切欠で放熱板3を細長湾曲形状とすることができ、放熱板3の強度を大きく損なうことなく、また、放熱板を大型化することなく、通信性能に優れたRFタグを実現できるという利点がある。
【0033】
また、本実施例のRFタグ1は、設置部6の両側の放熱部7,7にて、スペーサ5を介して被着体Xに固定されており、設置部6と被着体Xの間には空隙が形成されているから、被着体XからRFタグ機能部2への熱伝導路を長くできるという利点がある。また、設置部6と被着体Xの間に空隙が形成されていても、設置部6の両側で被着体Xにネジ止めしているから、RFタグ1を被着体Xに強固に固定することができる。
【0034】
本実施例にあって、放熱板3は、銅などの熱伝導率の高い材料で構成することが望ましい。熱伝導率の高い材料ほど熱を放出し易く、放熱板3の放熱性能を高めることができるためである。また、ボルトネジ4やスペーサ5は、熱伝導率が低い断熱材で構成することが望ましい。熱伝導率が低いほど被着体Xから放熱板3への熱伝導を遅らせることができ、その分、RFタグ機能部2に伝わる熱を軽減できるためである。また、ボルトネジ4やスペーサ5は、導電材料で構成すると放熱板3の電波反射機能と干渉するおそれがあるため、絶縁材料で構成することが望ましい。また、本実施例に係るスペーサ5は、硬質材料で構成することが望ましい。エンジンなどの激しく振動する被着体にRFタグを取り付ける場合、RFタグを被着体に確実に固定する必要があるが、スペーサが柔軟であるとネジのトルク管理が難しくなり、RFタグを安定して固定し難くなるためである。
【0035】
以下に、上記実施例1の構成を変更した実施例2〜12のRFタグについて説明する。
【0036】
<実施例2>
本実施例のRFタグ1aは、図7(a)に示すように、ボルトネジを介さずに放熱板3とスペーサ5と被着体Xとを耐熱性接着剤で接着したものである。また、本実施例では、RFタグ機能部2を、断熱シートを介さずに、放熱板3の設置部6の表面に直接接着している。このように、本発明のRFタグは、被着体に接着や溶接によって固定されるものであってもかまわない。
【0037】
<実施例3>
本実施例のRFタグ1bは、図7(b)に示すように、放熱板3を銅板3aとステンレス板3bの貼り合せとしたものである。かかる構成にあっては、熱伝導率の高い銅板の利点と、強度に優れたステンレス板の利点とを組み合わせることで、放熱性と強度のバランスの取れた放熱板を容易に実現できる。また、かかる構成にあっては、RFタグ機能部2を設置する側に、導電性に優れた銅板3aを配置しているため、導電性に劣るステンレス板3bを設置する場合に比べて、RFタグ機能部2が送受信する電波を強く反射でき、高い通信性能を実現可能となる。
【0038】
<実施例4>
本実施例のRFタグ1cは、図7(c)に示すように、設置部6の底面側で放熱板3を被着体Xに接着するとともに、設置部6の両側で放熱板3を屈曲して、放熱部7を設置部6の両側から上方に延出させたものである。このように、本発明では、設置部と被着体を直接接着することもできるし、また、放熱板を屈曲させることもできる。
【0039】
<実施例5>
本実施例のRFタグ1dは、図8(a)に示すように、放熱板3の設置部6の底面側に、長尺方向に沿ったフィン16を立設したものである。かかる構成では、放熱板3の表面積が拡大することで、放熱板3の放熱性能が向上し、また、放熱板3の強度も向上する。
【0040】
<実施例6>
本実施例のRFタグ1eは、図8(b)に示すように、放熱板3の設置部6から四方に放熱部7を延成して、放熱板3を十字形状にしたものである。このように、本発明にあって、放熱板の平面形状は適宜変更可能である。
【0041】
<実施例7>
本実施例は、図9に示すように、放熱板3の設置部6の両側に矩形の開口部17,17を形成し、これにより、スペーサ5が当接する部分と設置部6との間に狭部18,18を形成したものである。かかる構成では、狭部18の形成部位において熱抵抗が高くなるため、実施例1に比べて、放熱板3の断熱性能を向上させることができる。
【0042】
<実施例8>
本実施例のRFタグ1fは、図10に示すように、放熱板3の下方に放熱補助板19を積層したものである。放熱補助板19は、矩形状のステンレス板であり、板面に形成された長孔20,20にボルトネジ4,4を挿通することで、放熱板3と被着体Xの間に介装される。この時、放熱板3と放熱補助板19の間、放熱補助板19と被着体Xの間には、それぞれスペーサ5が介装されて、放熱補助板19は、放熱板3及び被着体Xと直接接触しないように間隔をおいて配設される。また、放熱補助板19は、放熱板3の下方全体を覆う本体部21aと、該本体部21aの側縁から、放熱板3の短尺方向に延出する翼部21b,21bとを備えている。かかる構成にあっては、被着体Xの熱が、放熱補助板19を介して放熱板3に伝わることとなるが、放熱補助板19が放熱作用を発揮することで、被着体Xから放熱板3に伝わる伝導熱が軽減されることとなる。また、図11に示すように、放熱補助板19は、被着体Xから放熱板3に向けて放射される放射熱を遮ることもできる。特に、放熱補助板19は、放熱板3の外側に延出する翼部21b,21bを有しているから、放熱板3直下からの放射熱だけでなく、放熱板3の周囲からRFタグ機能部2や放熱板3に向けて放射される放射熱も遮断することができる。さらには、各翼部21b,21bは、外側斜め上方に延出しているため、水平方向に延出するのに比べて、被着体XからRFタグ機能部2や放熱板3へ放射される放射熱を効率よく遮断できる。
【0043】
<実施例9>
本実施例のRFタグ1gは、図12に示すように、放熱板3と被着体Xの間に、二枚の放熱補助板19a,19bを積層したものである。ここで、放熱板3と放熱補助板19aの間、また、放熱補助板19bと被着体Xの間、さらに、二枚の放熱補助板19a,19bの間には、それぞれスペーサ5,5aが介装されて、各放熱補助板19a,19bと放熱板3と被着体Xとが相互に当接しないよう構成される。このように、放熱板3と被着体Xの間に複数枚の放熱補助板19a,19bを間隔をおいて積層すれば、各放熱補助板19a,19bが放熱作用を発揮することとなり、積層した放熱補助板の枚数分だけ、放熱板3に伝わる伝導熱を軽減可能となる。
【0044】
また、本実施例では、被着体Xに対向する放熱補助板19bと被着体Xとが、鉄などの常磁性体で構成され、また、これらの間に介装される一対のスペーサ5a,5aは磁石で構成されており、スペーサ5aの磁力で放熱補助板19bを被着体Xに吸着させることにより、RFタグ1gが被着体Xに取り付けられる。このように、被着体が常磁性体である場合には、被着体に対向する放熱板や放熱補助板を常磁性体で構成し、磁石を介してRFタグを被着体に固定することで、RFタグの脱着が容易となる。また、本実施例では、放熱補助板19bを被着体Xに吸着する二枚のスペーサ5a,5aは、夫々の極性が上下逆向きとなるように設置される。かかる構成では、図12中の矢印に示すように、左右のスペーサ5a,5aと、放熱補助板19bと、被着体Xとの間に、ループ状の安定な磁気回路が形成されることとなり、これにより、放熱補助板19bを被着体Xに強固に吸着可能となる。
【0045】
また、本実施例のように、放熱板と被着体の間に放熱補助板を積層する構成では、放熱板を比較的導電性に優れた材料で構成して放熱板の電波反射特性を高めるとともに、放熱補助板を比較的強度の高い材料で構成して放熱板の強度を補うようにすることが望ましい。具体的には、本実施例の場合、放熱板3を導電性に優れた銅板で構成し、放熱板側の放熱補助板19aを強度に優れたステンレス板で構成し、被着体側の放熱補助板19bを常磁性体である鉄板で構成することが挙げられる。もちろん、本発明の放熱板や放熱補助板の構成材料は、かかる組合せに限らず、その用途に応じて様々に変更することができる。例えば、高放射線条件下で使用するRFタグでは、放熱板や放熱補助板を、ガンマ線遮蔽材によって構成することが提案される。ガンマ線遮蔽材としては、鉛やタングステンなどが挙げられる。かかる構成とすれば、RFタグ機能部を被着体から放射されるガンマ線から保護することができ、ガンマ線によってRFタグ機能部のICチップが誤作動するのを防止できる。なお、ガンマ線遮蔽材は、放熱板や放熱補助板の全体を構成する必要はなく、放熱板や放熱補助板の、RFタグ機能部下方部位に部分的に貼り合わせるだけでもよい。
【0046】
<実施例10>
本実施例のRFタグ1hは、実施例9の構成を変更し、図13に示すように、二枚の放熱補助板19a,19bの間のスペーサ5,5を、中央方向にずらした位置に配設したものである。かかる構成では、放熱補助板19a,19bの表裏でスペーサ5,5aが厚み方向に重ならないため、図13中の矢印に示すように、被着体Xから放熱板3に伝わる伝導熱は、放熱補助板19a,19bの厚み方向に伝わるだけでなく、放熱補助板19a,19bの面方向に伝わってから放熱板3へと到達することとなる。このように、スペーサ5,5aを放熱補助板19a,19bの表裏で重ならないよう配置した場合には、被着体Xから放熱板3への熱伝導の経路を稼ぐことができ、これにより、放熱板3に伝わる熱量を低減することが可能となる。
【0047】
<実施例11>
本実施例のRFタグ1iは、図14,15に示すように、放熱板3と被着体Xの間に、一対の放熱補助板19c,19cを介装したものである。各放熱補助板19c,19cは、放熱板3の略半分の長さの金属板からなり、夫々の内側端部24,24を対向させるようにして同一面上に配置される。そして、各放熱補助板19c,19cは、その外側部表裏に接合されたスペーサ5b,5cによって、放熱板3及び被着体Xと直接接触しないように間隔をおいて配設される。ここで、放熱板3と、放熱補助板19cと、放熱板3と放熱補助板19c間のスペーサ5bは、導電性材料で構成されており、図15に示すように、RFタグ1iには、放熱補助板19cの各内側端部24,24相互を結ぶ開環状の導電経路Mが形成される。そして、本実施例では、この導電経路Mが、RFタグ機能部2が送受信する電波の波長の整数倍となるように設計されている。かかる構成によれば、放熱板3と放熱補助板19cを、RFタグ機能部2の送受信する電波を反射するのに適した反射器として一体的に機能させることが可能となり、放熱板の大きさや形状を制限することなく、RFタグの通信性能を向上可能となる。
【0048】
<実施例12>
本実施例のRFタグ1jは、実施例1の放熱板3の構成を変更したものである。具体的には、図16に示すように、放熱板3の各放熱部7には、スペーサ5の当接部分から外方に延出する外方延出部25,25が形成されている。そして、各外方延出部25,25の上面には、放熱板本体よりも熱伝導率の高い材料からなる放熱促進板片26,26が貼付される。この放熱促進板片26の材料としてはアルミが好適である。かかる構成では、外方延出部25の放熱促進板片26から多量の熱が放出され、これにより、スペーサ5から放熱板3に伝わる熱の多くが、外方延出部25側に流れることとなるから、内方の設置部6に伝わる熱量をさらに軽減することができる。
【0049】
<実施例13>
本実施例のRFタグ1kは、実施例1の放熱板3の構成を変更したものである。具体的には、本実施例に係る放熱板3は、図17に示すように、切欠状のスリット28,28によって、平面視略S字状に形成されており、両先端部29,29にスペーサ5,5を配設することにより、被着体と直接接触せずに間隔をおいて固定される。設置部6は、放熱板3の中央部に配設され、該設置部6の上に、断熱シート9を介してRFタグ機能部2が接着される。かかる構成にあっては、スペーサ5の当接部分29と、設置部6との間にスリット28が形成されて、該当接部分29から設置部6に到る熱の伝導経路が細く、長い形状となるため、スリット28を形成しない場合に比べて、スペーサ5の当接部分29と設置部6の間の熱抵抗を高め、RFタグ機能部2に伝わる熱量を軽減することができる。
【0050】
また、本実施例に係る放熱板3は、導電性の金属板材で構成されるとともに、図18に示すように、両先端部29,29を結ぶ、放熱板面上の沿面距離Lが、RFタグ機能部2が送受信する電波の半波長に相当する長さとなるように設計されており、実施例1に係る放熱板と同様に、RFタグ機能部2の電波を反射するのに適した反射器として機能する。ここで、本実施例では、放熱板3に形成されたスリット28,28によって、両端部29,29の間の沿面距離を稼ぐことができるから、放熱板を過度に大型化せずに、両端部29,29の間の沿面距離を適正な長さに設定できるという利点がある。なお、実施例1及び本実施例では、放熱板の両端部間の沿面距離を、RFタグ機能部2の電波の半波長に相当する長さとしているが、両端部間の沿面距離は、当該電波の半波長相当に限らず、半波長の倍数に相当する長さに設定しても同様の効果を得ることができる。
【0051】
<実施例14>
本実施例のRFタグ1mは、放熱板3にLC共振回路を配設したものである。具体的には、本実施例に係る放熱板3は、図19に示すように、平面視略渦巻状に形成されたステンレス板3cと、該ステンレス板3cの上に貼り合わされたプリント基板3dとによって構成され、スペーサ5,5を介して被着体に固定される。プリント基板3dには、コンデンサ30が実装されるとともに、ステンレス板3cと貼り合わせた状態で、コンデンサ30を、ステンレス板3cの内側端部32aと外側端部32bに接続するプリント配線31,31が配設されている。また、プリント基板3dの上面中央部には、RFタグ機能部2が接着される。かかる構成では、図20に示すように、ステンレス板3cが渦巻コイルを構成し、該渦巻きコイルの両端部32a,32bに接続されたコンデンサ30とによって、LC共振回路が形成されることとなる。そして、本実施例では、LC共振回路の共振周波数が、RFタグ機能部2の送受信する電波の周波数Fと等しくなるよう構成される。すなわち、RFタグ1mは、ステンレス板3cのインダクタンスLと、コンデンサ30の静電容量Cと、前記電波の周波数Fとが、
F=1/(2π√(LC))
の条件を満足するように設計される。かかる構成にあっては、LC共振回路がRFタグ機能部2の送受信する電波を反射することで、RFタグ機能部2の通信性能を大幅に向上させることができる。特に、本構成は、RFタグ機能部の送受信する電波の波長が長い場合に適する。すなわち、上記実施例13(図18参照)の構成では、RFタグ機能部2の送受信する電波が、比較的波長の長い短波(波長10〜100m)である場合には、放熱板3の両端部29,29の間の沿面距離を、当該電波の半波長に相当する長さ(0.5〜5m)にすると、放熱板3を実用的なサイズに収めることができない。これに対して、本実施例の構成では、コンデンサを適宜選択することでLC共振回路の共振周波数を変更できるため、RFタグ機能部の電波の波長が長い場合でも、放熱板を大型化することなく、RFタグ機能部の通信性能を向上させることができる。
【0052】
<温度変化テスト1>
本発明のRFタグの耐熱性を評価するために、下記の温度変化テストを行った。
【0053】
(試験品)
本試験に用いる5つの試験品を準備した。試験品1は、上記実施例1に準じたものである。具体的には、放熱板は0.5mm厚のステンレス板で構成し、スペーサは2mm厚のステンレスとし、RFタグ機能部の下に敷く断熱シートは、1mm厚の断熱性不織布を使用した。
【0054】
試験品2〜4は、試験品1からスペーサを変更したものである。具体的には、表1に示すように、試験品2では、試験品1のステンレス製スペーサを、左右両側でそれぞれ二枚重ねて使用した。試験品3では、試験品1のステンレス製スペーサを放熱板に溶接するとともに、さらに、セラミック断熱材からなるスペーサを左右のステンレス製スペーサの下にそれぞれ配置した。また、試験品4は、試験品1のステンレス製スペーサを放熱板に溶接しただけのものである。また、試験品5は、試験品4からRFタグ機能部の下に敷く断熱シートを除去したものである。
【0055】
(試験)
温度を略一定に保持した試験用ホットプレートの上に、ボルトネジを使用せずに試験品1〜5を載せて加熱し、RFタグ機能部の直下の温度変化を計測した。試験の概要を表1に示し、その結果を図21に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
図21に示されるように、本試験では、いずれの試験品においても、加熱開始から15分程度で測定温度の上昇が止まり、温度が略一定となった。かかる状態では、ホットプレートから伝わる熱と、放熱板から放出される熱が略等しくなることで、RFタグ機能部の温度が平衡状態に達したものと考えられる。かかる平衡状態の温度は、ホットプレートの温度よりも50〜100℃程度低くなっていた。この結果は、放熱板の放熱作用によってRFタグ機能部に伝わる熱を大幅に軽減できることを示している。
【0058】
平衡状態の温度を比較すると、試験品1と試験品4は殆ど同じであり、スペーサの溶接はRFタグ機能部の温度に殆ど影響しないことがわかった。また、試験品5の温度は、試験品4よりも15℃ほど高くなっていた。この結果は、RFタグ機能部の下の断熱シートによって、RFタグ機能部に伝わる熱を軽減できることを示している。また、試験品2の温度は、試験品1よりも20℃ほど低くなっており、さらに、試験品3の温度は、試験品2よりも10℃ほど低くなっていた。この結果は、スペーサを厚くしたり、熱伝導率の低い材料をスペーサに用いたりすることで、RFタグ機能部の温度上昇を軽減できることを示唆している。
【0059】
<通信テスト>
本発明のRFタグの通信性能を評価するために、下記の通信テストを行った。
【0060】
(試験品)
本試験に用いるRFタグ機能部としてUHFパッシブタグを準備し、図22に示すように、かかるRFタグ機能部を用いて7つの試験品A〜Gを準備した。試験品Aは、RFタグ機能部を放熱板に設置せず、単体で用いたものである。
【0061】
試験品Bは、上記実施例1の放熱板にRFタグ機能部を装着したものである。具体的には、放熱板は、75×25mmのステンレス板を、平面視略S字状になるように切り欠いたものであり、両先端の間の板面に沿った距離は、RFタグ機能部の送受信する電波(周波数953MHz)の波長の略半分に相当する157mmとなっている。
【0062】
また、試験品Cは、試験品Bの放熱部の下に、それぞれ2mm厚のステンレス製スペーサを配置したものであり、試験品Dは、試験品Cの放熱板とスペーサを、ステンレス製のボルトネジとナットで締結したものである。
【0063】
また、試験品E〜Gは、RFタグ機能部を銅製放熱板に設置したものである。具体的には、試験品Eの放熱板は、切欠きのない長さ75mmの銅板であり、試験品Fでは、長さ157mm(通信電波の半波長)の銅板を使用した。そして、試験品Gの放熱板は、試験品Eと同サイズの銅板を平面視略S字状に切り欠いて、先端間の沿面距離が長さ157mmとなるようにしたものである。
【0064】
(試験)
円偏波アンテナを接続した通信装置(4W相当)を用いて、上記試験品A〜Gについて最長交信距離と、交信が不安定又は不能となるヌル点までの最短距離を測定した。結果を図22に示す。なお、測定結果は、自由空間での簡易測定によるものである。
【0065】
図22に示されるように、試験品B〜Gは、RFタグ機能部単体の試験品Aよりも高い通信性能が認められた。この結果により、RFタグ機能部を金属製放熱板に設置することで、RFタグ機能部の通信性能を向上できることが示された。
【0066】
また、試験品C,Dの通信性能は、試験品Bよりも若干劣っていた。この結果は、導電性のスペーサやボルトネジが放熱板に接触することで、放熱板の導電路が短絡され、これにより、放熱板の電波反射作用が低減したためと説明でき、スペーサやボルトネジを用いる場合は、通信性能を向上させるために、これらを絶縁材料で構成したほうが好ましいことがわかった。
【0067】
また、試験品Fの通信性能は、試験品Eよりも極めて高いものであった。この結果は、放熱板の長さを通信電波の半波長の長さとすることで、RFタグ機能部の通信性能を大幅に向上できることを示している。また、試験品Gでは、試験品Fよりも若干低いものの、試験品Eに比べて大幅な通信性能の向上が確認された。この結果は、放熱板を切り欠いて湾曲細長形状とし、放熱板の端部間の板面に沿った距離を通信電波の半波長とすることで、放熱板を大きくすることなく、通信性能を大幅に向上できることを示している。
【0068】
<温度変化テスト2>
本発明のRFタグの耐熱性について、さらなる評価をするために、下記の温度変化テストを行った。
【0069】
(試験品)
本試験に用いる8つの試験品a〜hを準備した。試験品aは、上記温度変化テスト1の試験品2と同じものである。すなわち、試験品aは、放熱板を0.5mm厚のステンレス板で構成し、放熱板と被着体の間に、2mm厚のステンレス製スペーサを左右両側に夫々二枚重ねで配設し、さらに、RFタグ機能部の下に敷く断熱シートに1mm厚の断熱性不織布を使用したものである。
【0070】
【表2】
【0071】
試験品bは、表2に示すように、試験品aの構成を一部変更し、放熱板と被着体の間に配設するスペーサとして、ステンレスよりも熱伝導率の低い、セラミック製スペーサを二枚重ねで用いたものである。
【0072】
試験品cは、表2に示すように、試験品aの構成を一部変更し、放熱板と被着体の間にスペーサを介して放熱補助板一枚を配設するとともに、放熱補助板と被着体の間に配設する底部スペーサとして二枚重ねのステンレス製スペーサを用いたものである。
【0073】
試験品dは、試験品cの構成を一部変更し、放熱補助板と被着体の間に配設する底部スペーサに、三枚重ねのステンレス製スペーサを用いたものである。また、試験品eは、底部スペーサとして二枚重ねのセラミック製スペーサを用いたものである。
【0074】
また、試験品fは、試験品dから放熱補助板の構成を変更したものである。すなわち、試験品dの放熱補助板は、図10に示す放熱補助板19と同様に、本体部21aと翼部21bで構成したのに対し、試験品fの放熱補助板は、翼部21bを設けず、放熱板3の直下を覆う本体部21aのみで構成した。
【0075】
また、試験品gは、試験品dの構成を変更し、放熱板と被着体の間にスペーサを介して放熱補助板を2枚積層するとともに、放熱補助板と被着体の間に三枚重ねのステンレス製スペーサを配設したものである。
【0076】
また、試験品hは、試験品gの構成を変更し、各放熱補助板を長手方向に拡張して、放熱板側の放熱補助板の面積を約25%、被着体側の放熱補助板の面積を約50%拡大したものである。
【0077】
(試験)
温度を300℃に保持した試験用ホットプレートの上に、ボルトネジを使用せずに試験品a〜hを載せて加熱し、RFタグ機能部の直下の温度変化を45分間計測した。また、試験品e,g,hについては、ホットプレートの温度を500℃に変更する他は同様の試験を別途行った。なお、本試験では、試験品の周囲のホットプレート表面から試験品に放射熱が放射されるように、25cm四方のホットプレートの中央に各試験品を載置した。試験の結果、いずれの試験品においても、加熱してしばらくすると測定温度の上昇が止まり、温度が略一定となった。表2に、各試験品について、測定温度が平衡状態となった時の最高温度を示す。
【0078】
平衡状態の温度を比較すると、試験品cの温度は試験品aよりも30℃以上低くなっており、放熱板と被着体の間に放熱補助板を介装することで、RFタグ機能部の温度を低減できることがわかった。また、試験品gの温度は試験品dよりも30℃以上低くなっており、放熱板と被着体の間に積層する放熱補助板の枚数を増やすほど、RFタグ機能部に伝わる熱を軽減できることが示唆された。
【0079】
また、試験品hの温度は、試験品gよりも20℃以上低くなっていた。この結果は、放熱補助板は、その面積が広いほど放熱効果や放射熱遮断効果が高くなり、RFタグ機能部に伝わる熱を軽減できることを示唆している。また、試験品fの温度は、試験品dに比べて15℃ほど高くなっており、放熱補助板の翼部が、RFタグ機能部の温度上昇の抑制に寄与していることが示された。
【0080】
さらに、試験品aと試験品b、ならびに、試験品cと試験品eを比較すると、セラミック製スペーサを用いた試験品b,eの方が温度が低くなっており、熱伝導率の低い材料をスペーサに用いることで、RFタグ機能部の温度を低減できることがわかった。また、試験品dの温度は、試験品cよりも低くなっており、被着体の上に配設するスペーサを厚くするほど、断熱効果が高くなることが示唆された。
【符号の説明】
【0081】
1,1a〜1k,1m RFタグ
2 RFタグ機能部
3 放熱板
3a 銅板
3b,3c ステンレス板
3d プリント基板
4 ボルトネジ
5,5a,5b,5c スペーサ
6 設置部
7 放熱部
8 係止爪
9 断熱シート
10 ICチップ
11 アンテナ
12 ケーシング
13 ネジ挿通孔
15 連通溝
16 フィン
19,19a〜19c 放熱補助板
28 スリット
30 コンデンサ
X 被着体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとアンテナとを封入したRFタグ機能部と、
該RFタグ機能部を設置する設置部と該設置部から延出する放熱部とからなる放熱板とを備え、
放熱板が、被着体とRFタグ機能部の間に位置するように被着体に固定されるものであることを特徴とするRFタグ。
【請求項2】
放熱板と被着体との間に配設されて、放熱板と被着体とを非接触とするスペーサを備えることを特徴とする請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
前記スペーサは、熱伝導率が低い断熱材からなることを特徴とする請求項2に記載のRFタグ。
【請求項4】
放熱板は、細長形状の導電性板材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項5】
放熱板の一端から他端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の半波長の倍数に相当する長さであることを特徴とする請求項4に記載のRFタグ。
【請求項6】
放熱板には、スペーサが当接する部分と、設置部との間に切欠状のスリットが形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項7】
放熱板は、材質の異なる金属板を貼り合わせたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項8】
放熱板は、設置部と、該設置部の両側から延出する一対の放熱部とを備えてなり、該一対の放熱部で、夫々スペーサを介して被着体に固定されていることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項9】
前記一対の放熱部は、被着体に固定するためのネジを挿通するネジ挿通孔が夫々切欠状に形成されて、平面視フック形状をなしていることを特徴とする請求項8に記載のRFタグ。
【請求項10】
放熱板は、導電性板材からなり、一方の放熱部の先端から他方の放熱部の先端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の半波長の倍数に相当する長さであることを特徴とする請求項9に記載のRFタグ。
【請求項11】
放熱板の少なくとも一面に、フィンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項12】
放熱板は、平面視略渦巻形状をなす導電性板材を備えてなり、
該導電性板材の両端には、コンデンサが接続されて、前記導電性板材を渦巻コイルとするLC共振回路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項13】
間隔をおいて放熱板に積層されて、放熱板と被着体の間に介装される放熱補助板を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項1】
ICチップとアンテナとを封入したRFタグ機能部と、
該RFタグ機能部を設置する設置部と該設置部から延出する放熱部とからなる放熱板とを備え、
放熱板が、被着体とRFタグ機能部の間に位置するように被着体に固定されるものであることを特徴とするRFタグ。
【請求項2】
放熱板と被着体との間に配設されて、放熱板と被着体とを非接触とするスペーサを備えることを特徴とする請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
前記スペーサは、熱伝導率が低い断熱材からなることを特徴とする請求項2に記載のRFタグ。
【請求項4】
放熱板は、細長形状の導電性板材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項5】
放熱板の一端から他端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の半波長の倍数に相当する長さであることを特徴とする請求項4に記載のRFタグ。
【請求項6】
放熱板には、スペーサが当接する部分と、設置部との間に切欠状のスリットが形成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項7】
放熱板は、材質の異なる金属板を貼り合わせたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項8】
放熱板は、設置部と、該設置部の両側から延出する一対の放熱部とを備えてなり、該一対の放熱部で、夫々スペーサを介して被着体に固定されていることを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項9】
前記一対の放熱部は、被着体に固定するためのネジを挿通するネジ挿通孔が夫々切欠状に形成されて、平面視フック形状をなしていることを特徴とする請求項8に記載のRFタグ。
【請求項10】
放熱板は、導電性板材からなり、一方の放熱部の先端から他方の放熱部の先端までの、板面に沿った沿面距離が、RFタグ機能部のアンテナが送受信する電波の半波長の倍数に相当する長さであることを特徴とする請求項9に記載のRFタグ。
【請求項11】
放熱板の少なくとも一面に、フィンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項12】
放熱板は、平面視略渦巻形状をなす導電性板材を備えてなり、
該導電性板材の両端には、コンデンサが接続されて、前記導電性板材を渦巻コイルとするLC共振回路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項13】
間隔をおいて放熱板に積層されて、放熱板と被着体の間に介装される放熱補助板を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のRFタグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−168917(P2012−168917A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130277(P2011−130277)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【出願人】(309031606)株式会社テララコード研究所 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【出願人】(309031606)株式会社テララコード研究所 (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]