説明

RFIDタグの読取方法

【課題】リーダからLF帯などの低い周波数帯の信号を利用して起動パターンを送信してRFIDタグを呼び出す際に、特定のRFIDタグのみを起動させてそのIDを読み取るRFIDタグの読取方法を提供する。
【解決手段】リーダ100が、LF帯にて特定の起動パターンを含む呼び出し信号を出力し、LF帯にて呼び出し信号を待ち受けるアクティブタイプのRFIDタグ200が、設定された起動パターンと一致する起動パターンを検出した場合に、RFIDタグ200全体を起動し、LF帯よりも高い周波数帯にてIDをリーダ100に対して送信することで、リーダ100がIDを読み取るRFIDタグの読取方法であって、RFIDタグ200には異なる起動パターンが設定されており、リーダ100は、呼び出し信号を出力する際に、起動パターンとして、呼び出す対象のRFIDタグB(200b)に設定された起動パターンを動的に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダによりRFID(Radio Frequency IDentification)タグの固有識別子を読み取る技術に関し、特に、複数のRFIDタグのうち特定のものを起動してその固有識別子を読み取るRFIDタグの読取方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、物流管理等のシステムにおいては、RFIDタグを利用した対象物の管理手法が普及してきている。これらのシステムでは、固有識別子(以下では単に「ID」と記載する場合がある)を記憶したRFIDタグを個々の管理対象物に付しておき、この情報を、RFID読取装置(以下では単に「リーダ」と記載する場合がある)が、RFIDタグと無線通信することにより非接触で読み取る。これにより、管理対象物の個体や種別を特定してその所在等を的確に把握することができ、効率的な管理を行うことが可能となる。
【0003】
RFIDタグとリーダとの間の通信では、一般的に、リーダからの呼び出し(質問)の信号に対して、これを受信した各RFIDタグが、回答として自己のIDをリーダに対して送信する。リーダは、受信したIDの情報をRFIDタグに送信することで、各RFIDタグは自己のIDがリーダに読み取られたか否かを認識する。なお、RFIDタグの方式としては、電池を内蔵するアクティブタイプと、電池を内蔵せず、リーダから出力された無線電波から電力や搬送波の源振を取得するパッシブタイプとがある。
【0004】
物流管理等のシステムにおいては、比較的大きな領域に存在する多数の物品に付されたRFIDタグを短時間で読み取って、物品の種類等を検知したり、対象の物品を探したりする必要がある。このため、通信可能範囲の広いアクティブタイプが主に利用されている。しかし、アクティブタイプは内蔵電池を使用して動作するため、長期間の使用等を考慮した場合に、消費電力の低減を図ることが必須である。
【0005】
これに対して、例えば、特開2006−339964号公報(特許文献1)には、第1の周波数帯域の信号を受信する第1のアンテナと、第2の周波数帯域の信号を送信する第2のアンテナと、前記第1のアンテナが受信する制御信号を検出し制御データを出力する制御回路と、該制御データが入力されると第2のアンテナから応答信号を出力する送信回路とを有し、前記第1の周波数帯域が前記第2の周波数帯域より低い周波数帯に設定されている非接触IC媒体が記載されている。
【0006】
特許文献1の非接触IC媒体では、第1の周波数帯域がLF(長波)帯(周波数30kHz〜300kHz,波長10km〜1km)であり、LF帯(第1の周波数帯域)にて発信された制御信号を受信し、この制御信号に重畳された制御データであるビジートーンを抽出し、このビジートーンに対応して非接触IC媒体が、LF帯(第1の周波数帯域)より高い周波数帯の第2の周波数にて効率的なデータの送受信の制御を行う。これにより、待機時に高い周波数帯域を用いないため、高い周波数で動作する同調回路等が必要なくなり、従来の非接触IC媒体に比較して制御情報の入力待ち受け状態において、消費電力を大幅に削減することを可能としている。
【0007】
RFIDタグ等の非接触IC媒体では、上記のような構成を可能とするために、例えば、リーダからのLF帯による呼び出し信号(制御信号)を待ち受けて特定の起動パターンを検出し、特定の起動パターンを検出した場合にRFIDタグ内部のマイコン等を起動するための信号を出力する制御回路として、ウェイクアップレシーバー(例えば非特許文献1)などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−339964号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“製品情報:AS3932 Programmable 3D Low Power LF Wakeup Receiver”、[online]、austriamicrosystems、[平成21年8月18日検索]、インターネット<URL:http://www.austriamicrosystems.com/jpn/node_78/node_379/Low-Frequency/AS3932>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術のRFIDタグでは、上記のように、リーダからの呼び出し信号にLF帯を利用することで、通常時は、リーダからのLF帯の呼び出し信号を待ち受ける制御回路(ウェイクアップレシーバー等)のみが低消費電力で動作しており、その他のマイコン等は停止状態とすることで、待ち受け時の消費電力を低減させている。
【0011】
しかしながら、従来技術のRFIDタグでは、制御回路が検出する起動パターンは、通常、RFIDタグやリーダの製造業者等の単位で一律のものに設定されている。従って、物流管理等のシステムにおいて、多数の物品にRFIDタグが付されており、その中から特定の物品(RFIDタグ)を探し出すというような場合には、リーダからの呼び出し信号(起動パターン)に対して、読取可能範囲に含まれる全てのRFIDタグが一度起動して自己のIDを送信することになる。また、目的のRFIDタグが見つかる(リーダが目的のRFIDタグからのIDを受信する)まで、この処理が繰り返されることになる。
【0012】
この結果、各RFIDタグの起動回数・動作回数が増え、全体として消費電力が大きくなるため、内蔵の電池の消耗が早くなってしまう。また、目的のもの以外のRFIDタグも起動して自己のIDを送信することになるため、リーダでコリジョンや読み取りミスが発生する可能性が高くなり、読み取りに要する時間も長くなってしまう。
【0013】
そこで本発明の目的は、リーダからLF帯などの低い周波数帯の信号を利用して起動パターンを送信してRFIDタグを呼び出す際に、特定のRFIDタグのみを起動させてそのIDを読み取るRFIDタグの読取方法を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
本発明の代表的な実施の形態によるRFIDタグの読取方法は、リーダが、第1の周波数帯にて特定の起動パターンを含む呼び出し信号を出力し、前記第1の周波数帯にて前記呼び出し信号を待ち受けるアクティブタイプのRFIDタグが、前記呼び出し信号において前記RFIDタグに設定された第1の起動パターンと一致する前記起動パターンを検出した場合に、前記RFIDタグ全体を起動し、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯にて前記RFIDタグのIDを前記リーダに対して送信することで、前記リーダが前記RFIDタグの前記IDを読み取るRFIDタグの読取方法であって、以下の特徴を有するものである。
【0017】
すなわち、前記RFIDタグには、1または複数の前記RFIDタグ毎に異なる前記第1の起動パターンが設定されており、前記リーダは、前記呼び出し信号を出力する際に、前記呼び出し信号が含む前記起動パターンとして、呼び出す対象の前記RFIDタグに設定された前記第1の起動パターンを動的に設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
本発明の代表的な実施の形態によれば、リーダから、LF帯などの低い周波数帯の信号を利用し、特定の起動パターンを設定して送信することにより、呼び出したい対象のRFIDタグのみを起動させることができる。これにより、RFIDタグ全体での消費電力を極小化することができ、また、リーダにおいても、不要なRFIDタグから送信されたIDを読み取ることがないため、コリジョンや読み取りミスが低減され、読み取りに要する時間を短くすることができる。
【0020】
また、本発明の代表的な実施の形態によれば、LF帯による呼び出し信号を待ち受けて特定の起動パターンを検出し、特定の起動パターンを検出した場合に全体を起動させる信号を出力する制御回路をリーダにも実装して中継器とすることで、リーダは、他のRFIDタグや中継器に対する呼び出し信号との干渉を回避しつつ、特定の中継器を呼び出して起動させて通信を行うことができる。これにより、待ち受け時の消費電力を極小化しつつ、遠隔地の拠点や端末に対して、リーダが読み取ったRFIDタグのIDの情報を無線通信により転送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1であるRFIDタグの読取方法の概要について示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるリーダの構成例の概要を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるRFIDタグの構成例の概要を示した図である。
【図4】本実施の形態におけるリーダから送信される呼び出し信号の例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態2であるRFIDタグの読取方法の概要について示した図である。
【図6】本発明の実施の形態2における中継器の構成例の概要を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態2であるRFIDタグの読取方法における処理の流れの例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
<実施の形態1>
[概要]
図1は、本発明の実施の形態1であるRFIDタグの読取方法の概要について示した図である。図1では、RFIDタグが付された多数の物品の中から特定の物品を探す場合の例を示しており、上段の図は、リーダから各物品に付されたRFIDタグを呼び出す際の概要を示しており、下段の図は、リーダからの呼び出しに対して起動したRFIDタグがIDを応答する際の概要を示している。
【0024】
上段の図において、各RFIDタグA〜C(200a〜c)には、自己の固有の起動パターンとして、それぞれ、「A」〜「C」の起動パターンが設定されているものとし、自己の起動パターンを含むリーダ100からのLF帯による呼び出し信号を待ち受ける動作のみを低消費電力で行っている。
【0025】
一方、リーダ100は、LF帯による呼び出し信号を出力するためのLFアンテナ111を有しており、LFアンテナ111から特定の起動パターンを含む制御信号を呼び出し信号として送信する。このとき、リーダ111では、特定の起動パターンとして、呼び出しの対象であるRFIDタグ(図1の例では、RFIDタグB(200b))に対応する起動パターン(図1の例では「B」)を動的に設定することが可能である。
【0026】
このリーダ100からの呼び出し信号に対し、下段の図において、起動パターン「B」が設定されているRFIDタグB(200b)のみが反応して起動し、応答として自己のID「BB」を、呼び出し信号のLF帯より高い周波数帯(例えば2.4GHz帯)を利用して送信する。このとき、他のRFIDタグA(200a)およびRFIDタグC(200c)は、呼び出し信号に含まれる起動パターン(「B」)が自己のもの(「A」、「C」)とは異なるため起動しない。
【0027】
これにより、不要なRFIDタグA(200a)およびRFIDタグC(200c)を起動させないことで、消費電力を抑えつつ、対象のRFIDタグB(200b)を素早く探し出し、探し出したRFIDタグB(200b)との間で確実な通信を行ってIDを読み取ることが可能となる。
【0028】
[機器構成]
図2は、本実施の形態におけるリーダの構成例の概要を示した図である。リーダ100は、例えば、LF送信部110、LFアンテナ111、RF部130、制御部140、メモリ150、入出力部160などの各部を有する。LF送信部110は、起動パターンを含む呼び出し信号を生成して、LFアンテナ111からLF帯を利用して出力する機能を有する。このLF送信部110は、例えば、専用のIC(Integrated Circuit)などを用いて構成することができる。LFアンテナ111は、起動パターンを含む呼び出し信号をLF帯にて出力するためのアンテナであり、本実施の形態では、例えば、400mmΦのループアンテナを用いる。
【0029】
RF部130は、呼び出し信号のLF帯より高い周波数帯として、例えば2.4GHz帯を利用して、呼び出し信号により起動したRFIDタグとの間でIDの送受信などの双方向通信を行う機能を有する。このRF部130は、例えば、アンテナを含む専用のデバイスなどを用いて構成することができる。なお、本実施の形態では、双方向通信に利用する周波数帯として、大容量のデータを高速かつ省電力で行うためのデバイスを容易に入手することが可能である2.4GHz帯を利用するものとしているが、特にこれに限るものではなく、他の周波数帯であってもよい。
【0030】
制御部140は、リーダ100の各部に対するインタフェースを有し、各部の動作を制御する機能を有する。この制御部140は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有するマイコンなどを用いて構成することができる。制御部140は、さらに、起動パターン設定部141を有し、呼び出す対象のRFIDタグに対応する起動パターンをLF送信部110に対して指示することによって、呼び出し信号に設定することができる。なお、起動パターン設定部141は、指示・設定する起動パターンを、例えば、後述する入出力部160を介したユーザからの指示等に基づいて、後述するメモリ150から取得する構成とすることも可能である。
【0031】
メモリ150は、リーダ100に固有のデータやアプリケーションデータなどを保持する記憶媒体であり、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリによって構成される。このメモリ150には、リーダ100が送信可能な各起動パターンの値が、例えば、ユーザによる識別が容易な表示名などのキーとなるデータと対応付けられて格納されている。
【0032】
入出力部160は、ユーザに対する入出力のインタフェースの機能を有する。例えば、外部のPC等の端末と接続し、当該端末から呼び出し対象のRFIDタグの起動パターンの指定などを含む動作指示を入力したり、当該端末に対して読み取ったRFIDタグのID等の情報を出力したりすることが可能である。上記のような構成を有するリーダ100は、例えば、物流管理等のシステムにおいて、RFIDタグが付された物品を多数積載したパレットが通過するゲートなどに配置される。
【0033】
図3は、本実施の形態におけるRFIDタグの構成例の概要を示した図である。RFIDタグ200は、内蔵電池260を有するアクティブタイプであり、例えば、LF受信部220、RF部230、制御部240、メモリ250などの各部を有する。
【0034】
LF受信部220は、リーダ100からLF帯にて出力された呼び出し信号のうち、LF受信部220の内部に保持している自己の起動パターンと一致する起動パターンを含む呼び出し信号を検出して、他の各部を起動するための起動信号を出力する機能を有する。このLF受信部220は、例えば、上述したウェイクアップレシーバーのIC、および受信用のトランスポンダコイルなどを用いて構成することができ、これにより、RFIDタグ200全体としては停止している状態であっても、常時リーダ100からの呼び出し信号の待ち受け動作を継続することができる。
【0035】
RF部230は、リーダ100のRF部130と同様に、例えば2.4GHz帯を利用して、リーダ100との間でIDの送受信などの双方向通信を行う機能を有する。このRF部230は、例えば、アンテナを含む専用のデバイスなどを用いて構成することができる。
【0036】
制御部240は、リーダ100の制御部140と同様に、RFIDタグ200の各部に対するインタフェースを有し、各部の動作を制御する機能を有する。この制御部240は、例えば、CPUを有するマイコンなどを用いて構成することができる。メモリ250は、リーダ100のメモリ150と同様に、RFIDタグ200に固有のデータやアプリケーションデータなどを保持する記憶媒体であり、例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリによって構成される。
【0037】
通常、LF受信部220がLF帯による呼び出し信号を待ち受ける際に常時流れる電流は数μA程度である。これに対し、起動パターンが一致する呼び出し信号を検出して、制御部240等の他の各部を起動した場合、数mA〜十数mAの電流が流れる。また、その後、RF部230によってIDをリーダ100に対して送信する際にも十数mAの電流を要する。
【0038】
従って、リーダ100が、呼び出し対象のRFIDタグ200を特定するために起動パターンを識別信号として用いることで、呼び出し対象外の不要なRFIDタグ200について消費電力の大きい各部の起動を抑制し、システム全体として消費電力を極小化することができる。
【0039】
[呼び出し信号]
図4は、本実施の形態におけるリーダ100から送信される呼び出し信号の例を示した図である。呼び出し信号は、例えば、先頭からプリアンブル、起動パターン、およびデータによって構成される。ここで、プリアンブルは、一定時間のCW波(Continuous Wave:無変調連続波)であり、RFIDタグ200のLF受信部220による呼び出し信号の特定を可能とするとともに、RFIDタグ200に対する電力の供給にも用いられる。
【0040】
起動パターンは、例えば8ビットの長さの値であり、この場合は256通りの起動パターンを設定することができる。RFIDタグ200のLF受信部220に用いられるウェイクアップレシーバー等の種類によっては16ビットの値とすることも可能である。この起動パターンは、対象の物品毎や、物品の種類毎、所在場所毎など、物品を特定したい単位でユニークとなるように任意に設定し、RFIDタグ200のLF受信部220に保持することができる。
【0041】
また、RFIDタグ200のLF受信部220に設定された起動パターンは、LF受信部220に対する、リーダ100もしくはRFIDタグ200の制御部240からのコマンド等による指示により、動的に変更することができる。これにより、例えば、RFIDタグ200の内部に設けたタイマーを利用して、制御部240によって当該RFIDタグ200が物品に付されてから所定の期間が経過したか否かを判定し、所定の期間が経過している場合にはLF受信部220に設定された起動パターンを特定のものに変更することで、消費期限切れの物品を容易に検出する、というような用途に適用することが可能となる。
【0042】
以上に説明したように、本実施の形態のRFIDタグ200の読取方法によれば、リーダ100から、LF帯などの低い周波数帯の信号を利用し、特定の起動パターンを設定して送信することにより、呼び出したい対象のRFIDタグ200のみを起動させてIDを読み取ることができるため、RFIDタグ200全体での消費電力を極小化することができる。また、リーダ100においても、不要なRFIDタグ200から送信されたIDを読み取ることがないため、コリジョンや読み取りミスが低減され、読み取りに要する時間を短くして、特定の物品等を素早く確実に探し出すことができる。
【0043】
<実施の形態2>
[概要]
図5は、本発明の実施の形態2であるRFIDタグの読取方法の概要について示した図である。図5では、リーダが読み取ったRFIDタグのIDの情報を、中継器を介して遠隔地の拠点や端末に対して無線通信により転送する場合の例を示している。
【0044】
図5の例において、リーダ100が各RFIDタグA〜C(200a〜c)に対して起動パターン(図5の例では起動パターン「B」)を含む呼び出し信号を出力する部分については、上述した実施の形態1の図1と同様である。このとき、図示しないが、実施の形態1の図1と同様に、起動パターンが一致するRFIDタグB(200b)が起動して、自己のID「BB」をリーダ100に対して送信する。
【0045】
リーダ100は、呼び出し対象のRFIDタグB(200b)からのID「BB」を受信すると、中継器A(300a)に設定されたユニークな起動パターン「a」を設定して、再度LF帯による呼び出し信号を出力する。この呼び出し信号を検出して中継器A(300a)が起動すると、図示しないが、リーダ100は、読み取ったID「BB」の情報を、2.4GHz帯による双方向通信により中継器A(300a)に転送する。
【0046】
中継器A(300a)は、リーダ100からID「BB」の情報を受信すると、上記と同様に、中継器B(300b)に設定されたユニークな起動パターン「b」を設定して、LF帯による呼び出し信号を出力する。この呼び出し信号を検出して中継器B(300b)が起動すると、図示しないが、中継器A(300a)は、受信したID「BB」の情報を、2.4GHz帯による双方向通信により中継器B(300b)に転送する。
【0047】
上記のように、互いにユニークな起動パターンを用いて中継器間の転送処理(中継器でのホップ)を繰り返すことにより、各中継器での呼び出し信号の干渉を起こさずに、遠隔地の中継器N(300n)に対してリーダ100が読み取ったID「BB」の情報を無線通信により確実に転送することができる。すなわち、多数の物品に付されたRFIDタグ200から、対象のRFIDタグ200のIDを読み取り、この情報を遠隔地から把握するということが可能となる。
【0048】
なお、リーダ100と中継器A(300a)、および各中継器間の距離は、呼び出し信号にLF帯を用いているため最大で約30〜50m程度となるが、各中継器A〜N(300a〜n)は、RFIDタグA〜C(200a〜c)と同様に、通常時はLF帯の呼び出し信号の待ち受け動作のみを行っており、低消費電力である。従って、このように中継器を複数用いたマルチホップの構成とすることで、長距離の通信(IDの転送)を行うことが可能となる。
【0049】
[機器構成]
図6は、本実施の形態における中継器の構成例の概要を示した図である。中継器300は、基本的には実施の形態1の図2に示したリーダ100の各部(LF送信部110、LFアンテナ111、RF部130、制御部140、メモリ150、入出力部160)と同様のLF送信部310、LFアンテナ311、RF部330、制御部340、メモリ350、入出力部360を有する。また、これに加えて、実施の形態1の図3に示したRFIDタグ200におけるLF受信部220と同様のLF受信部320を有する。
【0050】
これにより、中継器300は、リーダ100における、特定の起動パターンを含む呼び出し信号をLF帯にて出力し、出力した起動パターンを検出して起動した相手(他の中継器300)と2.4GHz帯による双方向通信によりID等の情報を送受信するという機能と、RFIDタグ200における、通常時には全体として停止しつつ、LF帯による呼び出し信号の待ち受け動作のみを低消費電力で行うという機能とを併せ持つことになる。
【0051】
なお、中継器300のメモリ350には、転送先(ホップ先)の他の中継器300を起動するための起動パターンを保持していてもよい。また、本実施の形態において、リーダ100および各RFIDタグA〜C(200a〜c)の構成については、それぞれ実施の形態1の図2、3と同様であるため省略する。
【0052】
[処理の流れ]
図7は、本実施の形態のRFIDタグの読取方法における処理の流れの例を示したフロー図である。図7では、説明を簡略化するため、図5の例において、リーダ100で読み取ったRFIDタグB(200b)のID「BB」の情報を、中継器A(300a)を介して中継器B(300b)に転送し、中継器B(300b)にて、RFIDタグB(200b)のID「BB」の情報を把握する場合(ホップ数2の場合)の例を示している。
【0053】
まずリーダ100において、RFIDタグB(200b)を呼び出す際の起動パターンを設定する(S101)。ここでは、リーダ100の起動パターン設定部141により、メモリ150に保持している起動パターンから対応するものを取得して設定してもよいし、後述するような中継器間および中継器とリーダ100との間の2.4GHz帯での双方向通信を利用して、中継器B(300b)のほうから中継器A(300a)を経由してリーダ100に対して対象の起動パターンを指定するようにしてもよい。図7の例では、RFIDタグB(200b)に設定された起動パターン「B」を設定するものとする。
【0054】
次に、リーダ100は、設定された起動パターン「B」を含む呼び出し信号をLF帯にて出力することで、対象のRFIDタグB(200b)を呼び出す(S102)。これにより、起動パターン「B」が設定されているRFIDタグB(200b)が起動する(S201)。なお、このとき中継器A(300a)は起動パターンが「a」で異なるため起動せず、干渉することはない。
【0055】
起動パターン「B」を含む呼び出し信号を検出して起動したRFIDタグB(200b)は、自己のID「BB」をリーダ100に対して2.4GHz帯にて送信して応答する(S202)。RFIDタグB(200b)からのID「BB」の応答を受信したリーダ100は、ID「BB」を読み取った旨をRFIDタグB(200b)に対して2.4GHz帯にて送信して通知する(S103)。リーダ100からの通知を受信したRFIDタグB(200b)は、LF受信部220での呼び出し信号の待ち受け動作以外の動作を停止する(S203)。
【0056】
ステップS103で、ID「BB」を読み取った旨をRFIDタグB(200b)に対して通知したリーダ100は、次に、読み取ったID「BB」の情報を中継器A(300a)に転送するため、中継器A(300a)の起動パターン「a」を設定して、これを含む呼び出し信号をLF帯にて出力することで、中継器A(300a)を呼び出す(S104)。これにより、起動パターン「a」が設定されている中継器A(300a)が起動する(S301)。なお、このときRFIDタグB(200b)は起動パターンが「B」で異なるため起動せず、干渉することはない。
【0057】
起動パターン「a」を含む呼び出し信号を検出して起動した中継器A(300a)は、自己のIDをリーダ100に対して2.4GHz帯にて送信して応答する(S302)。中継器A(300a)からのIDの応答を受信したリーダ100は、IDを受信した旨を中継器A(300a)に対して2.4GHz帯にて送信して通知する(S105)。その後、読み取ったID「BB」の情報を、中継器A(300a)に対して2.4GHz帯にて転送する(S106)。
【0058】
リーダ100から、読み取ったID「BB」の情報を受信した中継器A(300a)は、次に、受信したID「BB」の情報を中継器B(300b)に転送するため、中継器B(300b)の起動パターン「b」を設定して、これを含む呼び出し信号をLF帯にて出力することで、中継器B(300b)を呼び出す(S303)。これにより、起動パターン「b」が設定されている中継器B(300b)が起動する(S311)。なお、このときリーダ100は特に影響を受けることはない。
【0059】
起動パターン「b」を含む呼び出し信号を検出して起動した中継器B(300b)は、自己のIDを中継器A(300a)に対して2.4GHz帯にて送信して応答する(S312)。中継器B(300b)からのIDの応答を受信した中継器A(300a)は、IDを受信した旨を中継器B(300b)に対して2.4GHz帯にて送信して通知する(S304)。その後、リーダ100から受信したID「BB」の情報を、中継器B(300b)に対して2.4GHz帯にて転送し(S305)、LF受信部320での呼び出し信号の待ち受け動作以外の動作を停止する(S306)。
【0060】
中継器A(300a)から、リーダ100が読み取ったID「BB」の情報を受信した中継器B(300b)は、この情報を入出力部360を介して外部の端末等に表示したり、アプリケーションプログラムに対して出力したりすることで、遠隔地の拠点に存在するリーダ100が読み取ったID「BB」の情報を出力する(S313)。
【0061】
以上に説明したように、本実施の形態のRFIDタグ200の読取方法によれば、リーダ100の構成にLF受信部320を追加して中継器300とすることで、リーダ100および中継器300は、他のRFIDタグ200や他の中継器300に対する呼び出し信号との干渉を回避しつつ、特定の中継器300を呼び出して起動させて双方向通信を行うことができる。これにより、待ち受け時の全体での消費電力を極小化しつつ、遠隔地の中継器300に対して、リーダ100が読み取ったRFIDタグ200のIDの情報を無線通信により確実に転送することができる。すなわち、遠隔地から特定のRFIDタグ200のIDを読み取って把握することが可能となる。
【0062】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、複数のRFIDタグのうち特定のものを起動してそのIDを読み取るRFIDタグの読取方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
100…リーダ、110…LF送信部、111…LFアンテナ、130…RF部、140…制御部、141…起動パターン設定部、150…メモリ、160…入出力部、
200…RFIDタグ、200a〜c…RFIDタグA〜C、220…LF受信部、230…RF部、240…制御部、250…メモリ、260…内蔵電池、
300…中継器、300a,b,n…中継器A,B,N、310…LF送信部、320…LF受信部、330…RF部、340…制御部、341…起動パターン設定部、350…メモリ、360…入出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダが、第1の周波数帯にて特定の起動パターンを含む呼び出し信号を出力し、
前記第1の周波数帯にて前記呼び出し信号を待ち受けるアクティブタイプのRFIDタグが、前記呼び出し信号において前記RFIDタグに設定された第1の起動パターンと一致する前記起動パターンを検出した場合に、前記RFIDタグ全体を起動し、前記第1の周波数帯よりも高い第2の周波数帯にて前記RFIDタグのIDを前記リーダに対して送信することで、
前記リーダが前記RFIDタグの前記IDを読み取るRFIDタグの読取方法であって、
前記RFIDタグには、1または複数の前記RFIDタグ毎に異なる前記第1の起動パターンが設定されており、
前記リーダは、前記呼び出し信号を出力する際に、前記呼び出し信号が含む前記起動パターンとして、呼び出す対象の前記RFIDタグに設定された前記第1の起動パターンを動的に設定することを特徴とするRFIDタグの読取方法。
【請求項2】
請求項1に記載のRFIDタグの読取方法において、
前記第1の周波数帯はLF帯であることを特徴とするRFIDタグの読取方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のRFIDタグの読取方法において、
前記RFIDタグは、前記リーダからの指示もしくは前記RFIDタグ内での所定の処理結果に基づいて、前記RFIDタグに設定された前記第1の起動パターンを変更することを特徴とするRFIDタグの読取方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のRFIDタグの読取方法において、
前記リーダは、前記RFIDタグの前記IDの情報を読み取った際に、前記第1の周波数帯にて、第1の中継器に設定された第2の起動パターンを含む前記呼び出し信号を出力し、
前記第1の周波数帯にて前記呼び出し信号を待ち受ける前記第1の中継器が、前記呼び出し信号において前記第2の起動パターンを検出した場合に、前記第1の中継器全体を起動し、前記第2の周波数帯にて前記第1の中継器のIDを前記リーダに対して送信し、
その後、前記リーダから前記第1の中継器に対して前記RFIDタグの前記IDの情報を送信して転送することを特徴とするRFIDタグの読取方法。
【請求項5】
請求項4に記載のRFIDタグの読取方法において、
前記第1の中継器は、前記RFIDタグの前記IDの情報を受信した際に、前記第1の周波数帯にて、第2の中継器に設定された第3の起動パターンを含む前記呼び出し信号を出力し、
前記第1の周波数帯にて前記呼び出し信号を待ち受ける前記第2の中継器が、前記呼び出し信号において前記第3の起動パターンを検出した場合に、前記第2の中継器全体を起動し、前記第2の周波数帯にて前記第2の中継器のIDを前記第1の中継器に対して送信し、
その後、前記第1の中継器から前記第2の中継器に対して前記RFIDタグの前記IDの情報を送信して転送することを特徴とするRFIDタグの読取方法。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−59877(P2011−59877A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207255(P2009−207255)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【Fターム(参考)】