説明

RFIDタグを取り付けた流体製品製造プラント設備のシール部材及びその取り付け方法

【課題】ガスケット等のシール部材が有する、製造履歴や出荷履歴等の多種多様な情報を一括で管理可能とすることで、シール部材の点検作業、模造品の判別作業等を迅速に行うことを可能とすると共に、使用用途の誤り等による事故の発生を未然に防止することが可能なシール部材を提供、及び、上記情報の管理をRFIDタグによって実現可能とする
【解決手段】ガスケット内部に上記ガスケットの管理情報を記録したRFIDタグを埋設により封入し、製造履歴や出荷履歴等の多種多様な情報を一括で管理可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体製品製造プラントを構成する各設備の接続部に配設され、上記製造プラント内に流通する流体の漏出を防止するためのシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
流体製品の製造プラントは、多種多様の設備が接続されることで構成され、個々の設備の接続部位には、流通する流体の漏出を防止するためのシール部材が夫々配設されている。
上記流体製品の製造プラントを構成する設備の一つとして、流体製品の加熱冷却を行うためのプレート式熱交換機がある。
図7に示すように、一般的に、プレート式熱交換機80は、伝熱プレート81a及び81bが交互に複数枚積層されて形成された伝熱プレート部81を備え、互いに隣接する上記伝熱プレート81aと81bの間隙部82には、交互に流体製品(図示せず)と熱交換用流体(図示せず)が流通し、上記流体製品と上記熱交換用流体との間において、上記伝熱プレート81a、又は81bを介して熱交換が行われることで、上記流体製品を加熱若しくは冷却する機能を有している。
図8に示すように、上記伝熱プレート81aと81bは略長方形の薄型板状に形成され、一方面部90、91には、より大きな接液面積を確保するために複数の波型突起84が設けられると共に、周縁部には上記流体製品と上記熱交換用流体の漏出を防止するためのガスケットであるシール部材83が装着されている。
また、図8に示すように、上記伝熱プレート81a及び81bの長さ方向一方端部94には、上記伝熱プレート81a及び81bを厚さ方向に貫通する流体製品送入孔85と熱交換用流体送出孔86とが上記伝熱プレート81a及び81bの幅方向に沿って並設され、上記伝熱プレート81a及び81bの長さ方向他方端部95には、上記伝熱プレート81a及び81bを厚さ方向に貫通する流体製品送出孔87と熱交換用流体送入孔88とが上記伝熱プレート81a及び81bの幅方向に沿って並設されている。
また、上記ガスケット83は、上記伝熱プレート81aの一方面部90上において、上記伝熱プレート81aの外周縁部と、上記熱交換用流体送入孔88と上記熱交換用流体送出孔86の外周縁部全域をシールするように装着されると共に、上記ガスケット83は、上記伝熱プレート81bの一方面部91上において、上記伝熱プレート81bの外周縁部と、上記流体製品送入孔85と上記流体製品送出孔87の外周縁部全域をシールするように装着されている。
また、図7に示すように、上記伝熱プレート部81は、上記伝熱プレート81aと上記伝熱プレート81bとを交互に圧接して積層して形成されている。
また、図9に示すように、上記伝熱プレート81aの一方面部90と上記伝熱プレート81bの他方面部93との間隙部82には、上記流体製品送入孔85から流体製品が送入され、矢印Aに示す経路で、上記流体製品送出孔87より送出される。
一方、上記伝熱プレート81aの他方面部92と上記伝熱プレート81bの一方面部91との間隙部82には、上記熱交換用流体送入孔88から熱交換用流体が送入され、矢印Bに示す経路で、上記熱交換用流体送出孔86から送出される。
従って、交互に積層された上記伝熱プレート81aと上記伝熱プレート81bの間隙部82において、上記ガスケット83で囲まれることによって形成される空間に、交互に流体製品若しくは熱交換用流体が流通し、上記流体製品と熱交換用流体との間で、上記伝熱プレート81a、又は81bを介して熱交換が行われ、上記流体製品が冷却若しくは加熱される。
【0003】
また、一般的に上記ガスケットの原料には、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)若しくは水素化ニトリルゴム(HNBR)等のゴム素材が用いられ、流体製品の種類、加熱若しくは冷却温度によって適宜選択される。
また、適宜フッ素樹脂素材等によるコーティングが施されている。
【0004】
上記ガスケットは経時によって次第に消耗するため、定期的なメンテナンスが必要となる。
従来、ガスケットの表面に印字若しくは刻字されたロット番号、若しくはシリアル番号等の管理用番号を基に、紙台帳若しくは別途パーソナルコンピュータ上に作製した管理台帳で、各ガスケットの製造履歴や出荷履歴等の情報管理を行っていた。
しかしながら、一台のプレート式熱交換機に装着される上記伝熱プレートは、数十枚から数百枚と非常に多数であるため、上記伝熱プレートに装着されるガスケットの個々の管理及びメンテナンス作業に、多大な時間と労力とを要していた。
また、上記ガスケットの素材が異なっていても、外観上判別し難く、誤った用途による使用、出荷先の誤配送等が発生しても、実際に使用されて何等かの問題が発生するまで、誤りに気づくことが困難であった。
また、廃棄品と使用可能品を一見では判別し難いことから、廃棄品と使用可能品とを誤って上記伝熱プレートに取り付け、その結果、流体製品の漏出や異種の流体の混入による流体製品の汚染等の事故が発生する虞もあった。
【0005】
更に、近年においては上記のロット番号、若しくはシリアル番号等の管理番号を、恰も意図的に削除したように見せかけた安価な模造品が出回っている。
上記のように、上記ガスケットは、外観において模造品と正規品との判別が困難なことから、模造品が、正規品の管理番号を意図的に削除したものなのか、若しくはそのように見せかけた模造品であるかの判別は、別途模造品を取り寄せて、化学的な組成分析を行う等によって証明する必要があった。
従って、判別に要する調査時間と調査コストが大きく、結果的に対策が後手に回り、顧客の信頼度失墜を招くという問題をも有していた。
上記のような課題を解決するためには、多種多様な情報を管理する必要があるが、管理する情報量が膨大になることから、台帳やバーコードでの管理は困難であった。
また、製品や設備の管理情報をRFIDタグに記録して、上記RFIDタグを対象の製品や設備に取り付けて情報の管理を行う方法も用いられている。
しかしながら、流体製品製造プラント設備に用いられるシール部材のように設備の内部に装着され、且つ高温、高圧といった過酷な環境下で使用されることが多いものについては、RFIDタグの取り付け方法として、貼付や吊下げといった単純な手段を用いることができず、RFIDタグの取り付けが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ガスケット等のシール部材が有する、製造履歴や出荷履歴等の多種多様な情報を一括で管理できるようにして、シール部材の点検作業、模造品の判別作業等を迅速に行うことを可能とすると共に、使用用途の誤り等による事故の発生を未然に防止することが可能なシール部材を提供し、また、上記情報の管理をRFIDタグによって実現可能とするための、シール部材へのRFIDタグの装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明にあっては、流体製品製造プラントを構成する各設備に配設され、上記製造プラント内に流通する流体の漏出を防止するためのシール部材であって、上記シール部材の内部には、上記シール部材の管理情報を携帯用端末を介して読み取り/書き込み可能に記録したRFIDタグが埋設されていることを特徴とする。
【0008】
従って、上記シール部材に関する管理情報を上記RFIDタグの記録情報を読み取ることで容易に、かつ一括して把握することができる。
また、管理情報に更新変更が生じた場合であっても、上記携帯用端末を介してRFIDタグの格納情報を更新することで管理情報の変更することができる。
また、RFIDタグが埋設によって装着されることから、シール部材によって高圧や高温等の環境から上記RFIDタグが保護される。
【0009】
また、請求項2の発明にあっては、上記設備は、複数枚が積層された伝熱プレートの間隙部に、交互に流体製品と熱交換用流体とを流通させることによって、流体製品の冷却または加熱を行うプレート式熱交換機であって、上記シール部材は、上記伝熱プレートに装着され、積層された上記伝熱プレートの間隙において流体製品及び、熱交換用流体の漏出を防止するガスケットであることを特徴とする。
【0010】
従って、上記プレート式熱交換機に多数のガスケットが装着されていても、夫々のガスケットの管理情報を、上記ガスケットに埋設されているRFIDタグの記録情報を一括して読み取ることで迅速に把握することができる。
【0011】
また、請求項3の発明にあっては、上記ガスケットは、上記伝熱プレートに着脱可能に装着されると共に、上記RFIDタグは、上記ガスケットにおいて、上記伝熱プレートに上記ガスケットを装着した状態において、上記ガスケットが上記流体製品及び熱交換用流体のいずれにも接触しない所定部位に埋設されていることを特徴とする。
従って、埋設部分のガスケットが破損した場合であっても、RFIDタグが湿潤して故障することがない。
【0012】
また、請求項4の発明にあっては、上記RFIDタグは、上記ガスケットの内部において、上記伝熱プレートの一般面に対して平行となるように上記ガスケット内に埋設されていることを特徴とする。
従って、製造プラントにおいては、上記伝熱プレートを床面に載置した状態でタグの情報の読み取りを行うが、上記RFIDタグに内蔵されるアンテナが、上方に向くように配置されるため、読み取り装置の電波、若しくは電磁波を傍受し易くなる。
【0013】
また、請求項5の発明にあっては、上記管理情報は、上記ガスケットの出荷先を示す情報を含むことを特徴とする。
従って、納品されたガスケットが自己向けに出荷されたものであるかを容易に把握することができる。
【0014】
また、請求項6の発明にあっては、上記管理情報は、上記ガスケットの使用対象の流体製品の種別情報を含むことを特徴とする。
また、請求項7の発明にあっては、上記管理情報は、上記ガスケットの組成情報を含むことを特徴とする。
従って、納品されたガスケットが自己の製品用のものであるかを容易に把握することができる。
【0015】
また、請求項8の発明にあっては、上記管理情報は、上記ガスケットのメンテナンス結果の履歴情報を含むことを特徴とする。
従って、メンテナンス作業員が前回以前のメンテナンス結果を容易に把握することができる。
【0016】
また、請求項9の発明にあっては、上記管理情報は、上記ガスケットの使用可否判別用のフラグ情報を含むことを特徴とする。
従って、廃棄品と使用可能品の区別を確実に行うことができる。
【0017】
また、請求項10の発明にあっては、上記管理情報は、文字情報であることを特徴とする。
また、請求項11の発明にあっては、上記管理情報は、画像情報であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項12の発明にあっては、流体製品製造プラントを構成する各設備に配設され、上記製造プラント内に流通する流体の漏出を防止するためのシール部材へのRFIDタグの取り付け方法であって、棒状に形成されたシール部材の所定部位において、表面部を切り取る第一の工程と、上記第一の工程で切片が切り取られた部位にRFIDタグを載置する第二の工程と、上記切片を上記シール部材の所定位置に、上記シール部材と上記切片でRFIDタグを挟持するように置き戻す第三の工程と、上記シール部材を圧接により熱成形して、上記シール部材の断面を所定形状に加工すると共に、上記切片を上記シール部材内に埋設して封入する第四の工程とを有することを特徴する。
【0019】
従って、RFIDタグは上記シール部材の内部に埋設して封入されることから、外部からの衝撃や、水分の浸入により破損することがない。
【0020】
また、請求項13の発明にあっては、上記伝熱プレートには、取り付け対象の上記伝熱プレートガスケットの管理情報を、携帯用端末を通して読み取り/書き込み可能に記録したRFIDタグが取り付けられていることを特徴とする。
従ってガスケットを取り付けたままであっても、伝熱プレート側の管理情報を合わせて確認することで、ガスケットと伝熱プレートとの整合性を確認することができる。
【0021】
また、請求項14の発明にあっては、上記ガスケットの管理情報は、上記RFIDタグのみによって管理されることを特徴とする。
従って、別途パーソナルコンピュータ上に管理台帳を作成する必要がない。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明にあっては、シール部材の内部に、上記シール部材の管理情報を携帯用端末を介して読み取り/書き込み可能に記録したRFIDタグが埋設されることによって装着されていることから、シール部材自身によってRFIDタグが保護される。
従って、高温、高圧等の条件下において使用されるシール部材に対してもRFIDタグを装着することが可能となり、製造履歴や出荷履歴等の多種多様な管理情報を一括に管理することが可能なシール部材を提供することができる。
【0023】
また、請求項2〜11記載の発明にあっては、RFIDタグの装着対象設備がプレート式熱交換機の伝熱プレートに装着されたガスケットであることから、数百枚からなる上記伝熱プレートのガスケットについて、製造履歴や出荷履歴等の多種多様な情報を一括に管理することが可能となる。
特に、請求項3の発明にあっては、上記RFIDタグが、上記ガスケットにおいて、上記伝熱プレートに上記ガスケットを装着した状態において流体製品及び熱交換用流体のいずれにも接触しない所定部位に埋設されていることから、埋設部分のガスケットが破損した場合であっても、上記RFIDタグに流体製品等が触れて湿潤し破損する虞がない。
また、請求項4記載の発明にあっては、上記RFIDタグが、上記ガスケットの内部において、上記伝熱プレートの一般面に対して平行となるように上記ガスケット内に埋設されていることで、伝熱プレートを床面に載置した状態で、RFIDタグのアンテナが上方を向いて配置されるため、読み取り装置の電波、若しくは電磁波を傍受し易くなり、上記RFIDタグの読み取り操作がより容易となる。
また、請求項5〜9記載の発明にあっては、上記管理情報に、上記ガスケットの出荷先を示す情報、使用対象の流体製品の種別情報、上記ガスケットの組成情報、上記ガスケットのメンテナンス結果の履歴情報、上記ガスケットの使用可否判別用のフラグ情報を夫々含むことから、請求項2の発明の効果に加え、使用用途の誤り、及び廃棄品の誤使用による事故の発生を防止し、メンテナンス作業においても、前回以前のメンテナンス情報を参照することで、メンテナンス作業がより効率的かつ迅速となる。
また、模造品が出回った場合であっても、上記管理情報を照合することで容易に模造品の判別が可能となり、模造品に対する対応を迅速に実施することが可能となる。
更に、請求項10〜11記載の発明にあっては、上記管理情報が文字情報、又は画像情報であることから、請求項2の発明の効果に加え、管理情報の内容の把握がより容易となる。
【0024】
また、請求項12記載の発明にあっては、流体製品製造プラントを構成する各設備に配設され、上記製造プラント内に流通する流体の漏出を防止するためのシール部材へのRFIDタグの取り付け方法であって、棒状に形成されたシール部材の所定部位において、表面部を切り取る第一の工程と、上記第一の工程で切片が切り取られた部位にRFIDタグを載置する第二の工程と、上記切片を上記シール部材の所定位置に、上記シール部材と上記切片でRFIDタグを挟持するように置き戻す第三の工程と、上記シール部材を圧接により熱成形して、上記シール部材の断面を所定形状に加工すると共に、上記切片を上記シール部材内に埋設して封入する第四の工程とを有することを特徴する。
【0025】
従って、RFIDタグは上記シール部材の内部に直接埋設して封入されることから、外部からの衝撃や水分の浸入により破損することがないため、高温、高圧下の環境で使用されるガスケットのようなシール部材であってもRFIDタグの取り付けが可能となる。
【0026】
また、請求項13の発明にあっては、上記伝熱プレートには、取り付け対象の上記伝熱プレートガスケットの管理情報を、携帯用端末を通して読み取り/書き込み可能に記録したRFIDタグが取り付けられていることから、伝熱プレートとガスケットの整合性を容易に確認することができる。
従って、誤装着による事故の発生の虞がない。
【0027】
また、請求項14の発明にあっては、上記ガスケットの管理情報が上記RFIDタグのみによって管理されることから、管理用システムを構築する際に、別途のPC及び無線LAN設備等の構築は不要であり、低コストでシステム構築が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、流体製品製造プラントを構成する各設備がプレート式熱交換機であり、且つシール部材が上記プレート式熱交換器の伝熱プレートに装着されるガスケットである場合を例として、以下図面を用いて説明する。
図7に示すように、本実施の形態に係るシール部材は、プレート式熱交換機11に取り付けられた伝熱プレート12a、12bに装着され、積層された上記伝熱プレート12a、12bの間隙部14において流体製品(図示せず)及び、上記流体製品の加熱/冷却を行うための熱交換用流体(図示せず)の漏出を防止する伝熱プレート用のガスケット10である。
図1に示すように、上記ガスケット10の内部には、上記ガスケット10の管理情報が記録されたRFIDタグ13が埋設されている。
また、図2に示すように、上記ガスケット10は、上記伝熱プレート12aに着脱可能に装着されると共に、上記RFIDタグ13(図2上では視認されず)は、上記伝熱プレート12に上記ガスケット10を装着した状態において、上記ガスケット10が上記流体製品及び熱交換用流体のいずれにも接触しない所定部位である10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10hの何れか埋設して封入されている。
なお、図8に示すように、伝熱プレート12bにおける上記ガスケット13の装着態様は、図2に示す伝熱プレート12aの装着態様を左右対称に反転した以外は伝熱プレート12aへの上記ガスケット13の装着態様と同様である。
また、図1に示すように、上記RFIDタグ13は、上記ガスケット10の内部において、上記ガスケット10の断面に対し直交する方向に埋設されている。
【0029】
上記RFIDタグに記録される管理情報としては、以下のようなものがある。
1文字情報及び画像情報による、上記ガスケットの出荷先情報:
上記出荷先に情報には「出荷日」、「出荷量」の他、「出荷先の顧客に関する情報」等が含まれる。
2文字情報及び画像情報による、上記ガスケットの組成情報:
上記組成情報には、上記ガスケットを組成する原料名である「エチレンプロピレンゴム(EPDM)」、「ニトリルゴム(NBR)」、若しくは「水素化ニトリルゴム(HNBR)」等の組成種別情報、及びフッ素樹脂等のコーティング材の情報が含まれる。
3文字情報及び画像情報による各設備に関する、上記ガスケットのメンテナンスの作業の結果の履歴情報:
上記履歴情報には、「メンテナンス時の留意事項」、「メンテナンス箇所の画像
情報」等が含まれる。
4文字情報及び画像情報による、上記ガスケットの使用対象流体製品情報:
上記流体製品情報には、上記プレート式熱交換機を流れる流体製品の種別、例えば「乳製品」、「一般飲料」、「洗浄液」等の情報が含まれる。
5文字情報及び画像情報による、上記ガスケットの使用可否判別用のフラグ情報:
上記管理情報には、点検作業等により破損や傷等が発見された場合に当該ガスケットの使用を禁止する旨のフラグ情報が含まれる。
【実施例1】
【0030】
従来技術と同様に、本実施例の形態においても、図7に示すように、プレート式熱交換機11は、伝熱プレート12a及び12bが交互に複数枚積層されて形成された伝熱プレート部12を備え、互いに隣接する上記伝熱プレート12aと12bの間隙部14には、交互に流体製品(図示せず)と熱交換用流体(図示せず)が流通し、上記流体製品と上記熱交換用流体と間において、上記伝熱プレート12a、又は12bを介して熱交換が行われる。
また、図8に示すように、上記伝熱プレート12aと12bは略長方形の薄型板状に形成され、一方面部15、16には、より大きな接液面積を確保するために複数の波型突起17が設けられると共に、周縁部には上記流体製品と上記熱交換用流体の漏出を防止するためのガスケットであるシール部材10が装着されている。
また、図8に示すように、上記伝熱プレート12a及び12bの長さ方向一方端部18には、上記伝熱プレート12a及び12bを厚さ方向に貫通する流体製品送入孔19と熱交換用流体送出孔20とが上記伝熱プレート12a及び12bの幅方向に沿って並設され、上記伝熱プレート12a及び12bの長さ方向他方端部21には、上記伝熱プレート12a及び12bを厚さ方向に貫通する流体製品送出孔22と熱交換用流体送入孔23とが上記伝熱プレート12a及び12bの幅方向に沿って並設されている。
また、上記ガスケット10は、上記伝熱プレート12aの一方面部15上において、上記伝熱プレート12aの外周縁部と、上記熱交換用流体送入孔23と上記熱交換用流体送出孔20の外周縁部全域をシールするように装着されると共に、上記ガスケット10は、上記伝熱プレート12bの一方面部16上において、上記伝熱プレート12bの外周縁部と、上記流体製品送入孔19と上記流体製品送出孔22の外周縁部全域をシールするように装着されている。
また、図7に示すように、上記伝熱プレート部12は、上記伝熱プレート12aと上記伝熱プレート12bとを交互に圧接して積層して形成されている。
また、図9に示すように、上記伝熱プレート12aの一方面15と上記伝熱プレート12bの他方面25との間隙部14には、上記流体製品送入孔19から流体製品が送入され、矢印Aに示す経路で、上記流体製品送出孔22より送出される。
一方、上記伝熱プレート12aの他方面部24と上記伝熱プレート12bの一方面部16との間隙部14には、上記熱交換用流体送入孔23から熱交換用流体が送入され、矢印Bに示す経路で、上記熱交換用流体送出孔20から送出される。
従って、交互に積層された上記伝熱プレート12aと上記伝熱プレート12bの間隙部において、上記ガスケット10で囲まれることによって形成される空間に、交互に流体製品若しくは熱交換用流体が流通し、上記流体製品と熱交換用流体との間で、上記伝熱プレート12a、又は12bを介して熱交換が行われ、上記流体製品が冷却若しくは加熱される。
【0031】
図1は、本実施の形態におけるガスケットの断面拡大図である。
図1において、ガスケット10は、断面略変形八角形状に成形加工され、取り付け基部44と突部45とを有する。
RFIDタグ13は、上記ガスケット10の内部において、上記伝熱プレートの一般面に対して平行となるように上記ガスケット10の上記基部44内に埋設されている。
また、図2は上記ガスケット10を伝熱プレート12aに取り付けた状態の正面図である。
図2に示すように、熱交換用流体は、上記熱交換用流体送入孔23から送入され、上記ガスケット10の熱交換用流体シール部10iにシールされつつ、波型突起17を有する表面を流れて、熱交換用流体送出孔20から送出される。
また、流体製品は上記流体製品送入孔19と上記流体製品送出孔22が全周にわたり流体製品シール部10jによってシールされているため、伝熱プレート12aの一方面15の表面に流出せず、そのまま隣接する伝熱プレート12b(図示せず)に流通する。
従って、上記ガスケット10の所定部位10a、10b、10c、10d、10f、10g、10g、10hには流体製品及び熱交換用流体のいずれも接することがない。
上記RFIDタグ13は、上記所定部位10a乃至10hの何れかの内部において、図1に示すような形態で埋設されている。
【0032】
本実施の形態において、図1に示す上記RFIDタグ13に記録された各種管理データの「書き込み作業」及び「読み取り作業」は、汎用の携帯情報端末(図示せず)により行われる。
上記携帯情報端末は、上記RFIDタグ13からの管理情報の読み取り、及び上記RFIDタグ13への管理情報の書き込みが可能に構成されていれば、任意の種別のものを適宜適用することができる。
【0033】
流体製品の製造プラント現場における作業者は、伝熱プレート12a、12bへのガスケット10の取り付け作業時、及び定期メンテナンス時等に常に上記携帯情報端末を携帯し、取り付け作業、若しくは点検作業の対象となるガスケット10に上記携帯用端末を近接させることで、上記の各種管理情報を読み取ることができる。
従って、上記ガスケット10の出荷先を誤った場合であっても、上記出荷先情報を確認することで、上記ガスケット10が自己向けに出荷されたものであるか否かを即時に把握することが可能となる。
また、同一の出荷先であっても、上記ガスケット10の使用用途が異なる可能性がある。
この場合であっても、上記ガスケット10の組成情報、及び使用対象流体に関する管理情報を読み取って確認することで、上記ガスケットの誤使用による事故を未然に防止することが可能となる。
また、上記RFIDタグ13には、上記携帯用端末を用いて情報の書き込みが可能であることから、メンテナンス作業時において、上記ガスケットに亀裂や破損部分を発見した場合には、使用不可、若しくは廃棄品である旨を示すフラグを上記RFIDタグ13に書き込むことができる。
従って、メンテナンス作業を中途で別の作業員に引き継いだ場合であっても、携帯用端末で上記フラグを読み取って確認することで、故障品や廃棄品を誤って再使用することが防止され、流体製品の漏出等事故等の発生を未然に防ぐことが可能となる。
また、上記RFIDタグ13に、上記フラグ情報と合わせて破損部位等の画像データを記録させておくことで、より管理情報の把握が容易となる。
【0034】
また、模造品が流通した場合であっても、上記RFIDタグ13が内蔵されていなければ、即時に模造品である旨の判別が可能となる。
従って、模造品に対する対処を迅速に行うことが可能となることから、模造品対策が後手に回ることがなく、顧客の信頼度失墜という事態を招く虞がない。
【0035】
更に、上記の各種管理情報を携帯用端末で読み込むことによって、上記ガスケットに関する情報を現場作業員が現場にて確認することができる。
従って、従来の製品のように、紙台帳や、別置きのパーソナルコンピュータで管理台帳にアクセスしなくても、上記携帯用端末のみで、上記ガスケットの管理を行うことが可能となる。
これにより、紙台帳やパーソナルコンピュータの管理台帳の更新作業が不要となり、また上記パーソナルコンピュータへのアクセスのために、通信設備等を整備する必要が無いため、低コストで管理システムを構築することができる。
【0036】
以下に、本実施例の形態における上記RFIDタグ13の、上記ガスケット10への埋設方法について説明する。
図3に示すように、上記RFIDタグ13のガスケット10への埋め込みは、
ガスケット10であるシール部材30の所定位置31から適宜の厚さ寸法分の切片32を切り取る第一の工程33と、上記切片32を切り取った所定位置31にRFIDタグ13を載置する第2の工程34と、上記切片32を上記所定位置31に置き戻す第3の工程35と、図4に示すように、上型36と下型37で、上記シール部材30を熱圧接することで、上記切片31が再びシール部材30に熱圧着されると共に、上記RFIDタグ13が上記シール部材30内に埋設して封入される第4の工程38によって行われる。
また、図5に示すように、本実施例におけるRFIDタグ13は、小型板状の基板40の表面に上記の管理情報を記録するためのICチップ41と、上記ICチップ41の外周にコイル状に配設され、携帯用端末からの電波、若しくは電磁波を受け、上記ICチップ41に電流を供給するためのアンテナ42とを備え、上記ICチップ41とアンテナ42は、合成樹脂である被覆部材43によって被覆されている。
上記被覆部材43は図3に示す上記シール部材30への埋設作業時や、図7に示すように伝熱プレート12a、12b使用時における高温、高湿度の環境下から、上記ICチップ41とアンテナ42を保護する目的で配設されている。
【0037】
上記の各工程について、図面を用いて詳述する。
図3(a)に示すように、上記シール部材30は所定長の棒状に形成され、上記切片32は所定の厚さ寸法を有し、上記シール部材30から長さ方向に沿って切り取られることで形成される。
この際、上記切片32の所定の厚さ寸法は、図1に示すように、上記RFIDタグ13が上記ガスケット10の断面における略中央位置に埋設されるように適宜調節する。
次に、図3(b)に示すように、上記RFIDタグ13は、上記所定位置31の切取り面39に、上記ICチップ41と上記アンテナ42を上方に向けて載置される。
更に、図3(c)に示すように、上記切片32を上記所定位置31に置き戻し、切取り面39と上記切片32の間に上記RFIDタグ13を挟み込む。
その後、図4に示すように、上記シール部材30を所定の下型37上に載置し、上型36によって熱圧着することで、図1に示す形状に熱成形される。
本実施例の方法によれば、上記RFIDタグ13が上記ガスケット10の内部に埋設して封入されるため、上記ガスケット10自体によって、高温、高圧等の環境から上記RFIDタグ13が保護され、上記RFIDタグ13が破損等によって故障する虞が無い。
【実施例2】
【0038】
また、図8に示す伝熱プレート12aおよび12bに、上記ガスケット10の管理情報を記録した別途のRFIDタグ(図示せず)を装着することも可能である。
これにより、携帯用端末によって、ガスケット10の管理情報を上記RFIDタグから読み取ることで、ガスケット10側のRFIDタグ13(図8には図示せず)の管理情報との一致/不一致によって、上記ガスケット10と上記伝熱プレート12a又は12bとの整合性を迅速に把握することが可能となる。
【0039】
なお、本実施例においては、RFIDタグ13を埋設する所定位置を10a乃至10iの8箇所の何れかとしているが、ガスケットにおいて、流体製品及び熱交換用流体に接液しないという条件を満たす部位であれば、特に箇所数、及び当該箇所の形状についての制限は無い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、プレート式熱交換器の伝熱プレートに装着するガスケットの他、流体製品の製造プラントにおいて用いられるシール部材に広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態においてガスケット内部にRFIDタグが埋設された状態を示す断面斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態における伝熱プレートの一形態を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態のガスケットへのRFIDタグの埋め込み手順を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示し、実施例の形態のガスケットへRFIDタグを埋設して封入する手順を示す概略側面図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかるRFIDタグを示す側方断面図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかるガスケットの製造工程を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態及び従来の形態において、ガスケットが装着された伝熱プレートが取り付けられたプレート型熱交換器を示す全体斜視図である。
【図8】本実施の形態及び従来の形態において、ガスケットが装着された伝熱プレートの異なる形態を示す平面図である。
【図9】本実施の形態及び従来の形態において、ガスケットが装着された伝熱プレートが取り付けられたプレート式熱交換器における流体製品及び熱交換用流体の流れを示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
10 伝熱プレート用ガスケット
10aガスケットの所定位置
10bガスケットの所定位置
10cガスケットの所定位置
10dガスケットの所定位置
10eガスケットの所定位置
10fガスケットの所定位置
10gガスケットの所定位置
10hガスケットの所定位置
10i熱交換用流体シール部
10j流体製品シール部
11 プレート式熱交換機
12 伝熱プレート部
12a伝熱プレート
12b伝熱プレート
13 RFIDタグ
14 伝熱プレートの間隙部
15 伝熱プレートの一方面部
16 伝熱プレートの一方面部
17 伝熱プレートの波型突起
18 伝熱プレートの長さ方向一方端部
19 流体製品送入孔
20 熱交換用流体送出孔
21 伝熱プレートの長さ方向他方端部
22 流体製品送出孔
23 熱交換流体送入孔
24 伝熱プレートの他方面部
25 伝熱プレートの他方面部
30 シール部材
31 シール部材の所定位置
32 切片
33 第一の工程
34 第二の工程
35 第三の工程
36 上型
37 下型
38 第4の工程
39 切片の切取り面
40 基板
41 ICチップ
42 アンテナ
43 被覆部材
44 基部
45 突部
80 プレート式熱交換機
81 伝熱プレート部
81a伝熱プレート
81b伝熱プレート
82 間隙部
83 ガスケット
84 波型突起
85 流体製品送入孔
86 熱交換用流体送出孔
87 流体製品送出孔
88 熱交換用流体送入孔
90 伝熱プレート一方面部
91 伝熱プレートの一方面部
92 伝熱プレートの他方面部
93 伝熱プレートの他方面部
94 伝熱プレートの長さ方向一方端部
95 伝熱プレートの長さ方向他方端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体製品製造プラントを構成する各設備に配設され、上記各設備内を流通する流体の漏出を防止するためのシール部材であって、
上記シール部材の内部には、上記シール部材の管理情報を携帯用端末を介して読み取り/書き込み可能に記録したRFIDタグが埋設されていることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
上記設備は、複数枚が積層された伝熱プレートの間隙部に、交互に流体製品と熱交換用流体とを流通させることによって、流体製品の冷却または加熱を行うプレート式熱交換機であって、上記シール部材は、上記伝熱プレートに装着され、積層された上記伝熱プレートの間隙において流体製品及び、熱交換用流体の漏出を防止する伝熱プレート用のガスケットであることを特徴とする請求項1記載のシール部材。
【請求項3】
上記ガスケットは、上記伝熱プレートに着脱可能に装着されると共に、上記RFIDタグは、上記ガスケットにおいて、上記伝熱プレートに上記ガスケットを装着した状態において、上記ガスケットが上記流体製品及び熱交換用流体のいずれにも接触しない所定部位に埋設されていることを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項4】
上記RFIDタグは、上記ガスケットの内部において、上記伝熱プレートの一般面に対して平行となるように上記ガスケット内に埋設されていることを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項5】
上記管理情報は、上記ガスケットの出荷先を示す情報を含むことを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項6】
上記管理情報は、上記ガスケットの使用対象の流体製品の種別情報を含むことを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項7】
上記管理情報は、上記ガスケットの組成情報を含むことを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項8】
上記管理情報は、上記ガスケットのメンテナンス結果の履歴情報を含むことを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項9】
上記管理情報は、上記ガスケットの使用可否判別用のフラグ情報を含むことを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項10】
上記管理情報は、文字情報であることを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項11】
上記管理情報は、画像情報であることを特徴とする請求項2記載のシール部材。
【請求項12】
流体製品製造プラントを構成する各設備に配設され、上記製造プラント内に流通する流体の漏出を防止するためのシール部材へのRFIDタグの取り付け方法であって、
棒状に形成されたシール部材の所定位置において、所定の厚さ寸法の切片を切り取る第一の工程と、
上記第一の工程で切片が切り取られた部位にRFIDタグを載置する第二の工程と、
上記切片を上記第一の工程で切片が切り取られた部位に置き戻す第三の工程と、
上記シール部材を圧接により熱成形し、上記シール部材の断面を所定形状に加工すると共に、上記切片を上記シール部材に再接合し、上記RFIDタグを上記シール部材内に埋設して封入する第四の工程とを有することを特徴するシール部材へのRFIDタグの取り付け方法。
【請求項13】
上記伝熱プレートには、取り付け対象の上記伝熱プレートガスケットの管理情報を、携帯用端末を通して読み取り/書き込み可能に記録したRFIDタグが取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の伝熱プレート。
【請求項14】
上記ガスケットの管理情報は、上記RFIDタグのみによって管理されることを特徴とするガスケットの管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−294924(P2009−294924A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148251(P2008−148251)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000157946)岩井機械工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】