説明

RFIDタグ

【課題】 利便性が損なわれることなく、しかも記憶されている情報が読み取られるのを防止することができるRFIDタグを提供すること。
【解決手段】 ループアンテナ20に対して直列に抵抗33を挿入したうえで、その両端を短絡線34で短絡しておき、抵抗33の両端を短絡した受信感度の高い受信状態と、この受信状態から抵抗33の両端から短絡線34を分離してループアンテナ20とIC回路部32との間に抵抗33を直列に挿入した、受信感度の低い受信状態に変更することができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダライタとの間でデータの授受を行うことが可能な非接触型のRFIDタグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードと呼ばれる新しい情報記録媒体が、市場に広く出回っている。ICカードは、クレジットカード、銀行カード、ポイントカード等のカード状あるいはシート状の形状を備え、カード内にIC(Integrated Circuit)が組み込まれているものを総称した名称である。
特に、非接触型のICカードは、鉄道の駅改札において乗降時に使用される定期券等として、多くの駅で磁気カード方式と併用して採用されている。また、前記した非接触型ICカードはデータのやり取りをリーダライタとの間で電波を介して行うため、リーダライタとICカード間のプロトコル、変調波形、及び符号化の標準化作業が進められている。また上記した非接触型のICカードと同等の機能を有するものとしてRFID(Radio Frequency IDentification)タグがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような非接触型ICカードやRFIDタグは、リーダライタとの間でデータのやり取りを行うようにしているため、例えば離れた場所からIC回路内の情報が読み取られるおそれがある。このため、例えば非接触型ICカードやRFIDタグ内に個人情報などを書きこんだ場合は、いかにしてプライバシーを保護するかが問題になる。
離れた場所から情報が読み取られるのを防止する一つの方法としては、非接触型のICカードやRFIDタグの受信感度を低くすることが考えられる。
しかしながら、RFIDタグの受信感度を低くした場合は、離れた場所からの情報の読み取りを防止することができる反面、正規のリーダライタによる読み取りに支障が生じて、その利便性を悪化させる。
このため、例えば物品販売時において物品の識別に使用するRFIDタグと、販売後に購入者の個人情報などの記憶に使用するRFIDタグを共有する場合、物品販売時の利便性を考慮して受信感度の高いRFIDタグを使用すると物品販売後の個人情報のプラバシー保護が困難になる。一方、プライバシー保護の観点から受信感度の低いRFIDタグを使用した場合は物品販売時の利便性が損なわれてしまう。
そこで、本発明は、上記したような点を鑑みてなされたものであり、利便性を損なうことなく、しかも情報が読み取られるのを防止することができるRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ループアンテナを介して所定の変調方式に基づく搬送波を受信して、内部電力を生成することにより、外部とのデータの授受を行う非接触型のRFIDタグにおいて、少なくとも、前記ループアンテナと接続される送受信回路、該送受信回路と接続される制御回路、及び該制御回路と接続されるメモリ装置とを有するIC回路部と、該IC回路部と前記ループアンテナとの間に配置された受信感度を調整する受信感度調整手段とを備え、前記受信感度調整手段は、異なる複数の受信感度に変更可能なように構成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記受信感度調整手段は、前記ループアンテナと前記IC回路部との間に直列に挿入したインピーダンス素子と、該インピーダンス素子の両端を接続する接続回路とを備えていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、ループアンテナを介して、所定の変調方式に基づく搬送波を受信して、内部電力を生成することにより、外部とのデータの授受を行う非接触型のRFIDタグにおいて、少なくとも、前記ループアンテナと接続される送受信回路、該送受信回路と接続される制御回路、及び該制御回路と接続されるメモリ装置とを有するIC回路部と、該IC回路部と前記ループアンテナとの間に、前記ループアンテナと前記IC回路部との接続を断続する断続手段を備えていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記断続手段は、ループアンテナと前記IC回路部との間に直列に挿入されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記断続手段は、ループアンテナに対して並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の本発明によれば、受信感度調整手段により第1の受信状態と、この第1の受信状態より受信感度が低い第2の受信状態に変更できるように構成している。これにより、通常時は第1の受信状態で使用することでRFIDタグの利便性が損なわれるのを防止することができる。また、プライバシー保護を重んじる時は、第2の受信状態で使用することで、RFIDタグのメモリ装置に書き込まれている個人情報などが外部から読み取られるのを防止することができる。
請求項2記載の本発明によれば、受信感度調整手段をインピーダンス素子とその両端を接続する接続回路により形成できるので、殆どコストアップなしで実現することができるという利点もある。
請求項3記載の本発明によれば、断続手段によりループアンテナとIC回路部との間に断続手段を設け、この断続手段により、RFIDタグの動作をオン/オフできるように構成することで、例えば正規のリーダライタで情報を読み取るときだけ、断続手段によりループアンテナとIC回路とを接続すれば、RFIDタグの個人情報が外部から読み取られるのを防止することができる。また使用の形態によっては利便性の悪化も抑えることができる。
請求項4及び請求項5記載の発明によれば、前記断続手段をループアンテナとIC回路部との間に直列に挿入する、或いはループアンテナに対して並列に接続するといった簡単な構成で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態としての非接触型のRFIDタグについて説明するが、本実施の形態のRFIDタグについての説明を行う前に、一般的なリーダライタと非接触型のRFIDタグの構成、及びその動作について説明しておく。
図1は、本発明の一実施形態のRFIDタグ用リーダライタの構成を示すブロック図である。このRFIDタグ用リーダライタ100は、外部にあるリーダライタ100に対してデータの授受を行ってシステム全体を制御するコンピュータ(上位機器)50によって制御される。リーダライタ100は、外部のコンピュータ50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、変調器4からのコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICタグとの電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、対を成すRFIDタグの構成を先に説明しておく。
図2は、本発明の実施形態のRFIDタグの構成を示すブロック図である。本実施形態のRFIDタグ200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするループアンテナ20と、ループアンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する整流平滑回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、RFIDタグ200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。なお、変調方式としては、ASK(Amplitude Shift Keying)の他、PSK(Phase Shift Keying)方式、FSK(Frequency Shift Keying)方式などがある。
【0007】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、RFIDタグ200に電力を供給するために、コマンド送信時は変調器4で変調を行い、RFIDタグ200からのレスポンス受信時は無変調とした信号を電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、RFIDタグ200がリーダライタ100に近接すると、ループアンテナ20が電力供給用信号を受信し、整流平滑回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、タグ内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って制御を開始する。
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してループアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してRFIDタグ200が規格に合致したタグであると認識する。それにより、以後リーダライタ100とRFIDタグ200の間でデータの授受が行われる。
【0008】
以下、上記したリーダライタ100と非接触型のRFIDタグ200の動作説明を踏まえたうえで、本実施の形態に係る非接触型のRFIDタグについて説明する。
まず、図3を用いて、第1の実施の形態に係るRFIDタグについて説明する。
図3(a)は、第1の実施の形態に係るRFIDタグの回路構成を示したブロック図、同図(b)はRFIDタグの概略構造を示した図である。なお、上記図1と同一ブロックには同一番号を付して詳細に説明する。
この図3(a)に示すように、第1の実施の形態に係るRFIDタグ31は、ループアンテナ20とIC回路部32とから構成される。この場合のIC回路部32には、上記図2に示したRFIDタグの回路構成のうち、ループアンテナ20以外の回路部が設けられることになる。
ループアンテナ20とIC回路部32との間には、受信感度調整手段としてインピーダンス素子である抵抗33が直列挿入されていると共に、抵抗33の両端には接続回路として短絡線34が接続されている。
【0009】
このようなRFIDタグ31の構造としては、例えば図3(b)に示すように、基板41上にIC回路部32、ループアンテナ20、抵抗33、及び短絡線34が形成されている。基板41上には、その一部を分離するための切取線35が設けられており、このような切取線35により切取可能な基板部分に短絡線34を形成するようにしている。これにより、切取線34により基板41の一部を切り取るか否かによって、IC回路部32とループアンテナ20との間を短絡線34により接続した受信感度の高い受信状態と、IC回路32とループアンテナ20との間を抵抗33により接続した受信感度の低い受信状態という複数の受信状態に変更可能に構成されている。
このように構成すれば、例えば物品などの販売時といった通常使用時は、抵抗33の両端を短絡線路34により短絡した受信感度の高い動作状態で使用することでRFIDタグ31の利便性が損なわれるのを防止することができる。
一方、消費者が物品を購入し、消費者の個人情報を書き込んだ後は、切取部35により基板41の一部を切り取って使用すれば、ループアンテナ20に抵抗33を直列に挿入した受信感度の低い動作状態が得られるので、離れた位置からRFIDタグ31に書き込まれた個人情報などが離れた位置から読み取られるのを防止することができる。これにより、プライバシーを保護することが可能になる。
また、本実施の形態のように、受信感度調整手段をインピーダンス素子とその両端を接続する接続回路により形成すると殆どコストアップなしで実現することができる。なお、上記例では、インピーダンス素子33の両端に短絡線路34を接続する場合を例に挙げて説明したが、短絡線路の代わりにインピーダンスの小さい抵抗などを接続することももちろん可能である。
【0010】
次に、図4を用いて、第2の実施の形態に係るRFIDタグについて説明する。
図4(a)は、第2の実施の形態に係るRFIDタグの回路構成を示したブロック図である。なお、上記図3と同一ブロックには同一番号を付して詳細に説明する。
この図4(a)に示すRFIDタグ50は、ループアンテナ20とIC回路部32との間に断続手段であるスイッチ51が設けられている。この場合のスイッチ51としては、例えば図4(b)に示すように、上方から押圧力が加わると、接続板54により接点52、53が接続して導通する。一方、上方からの押圧力がなくなると、接続板54が取り付けられている部分の弾性力によって接続板54が接点52、53から離れて、接点52、53間の導通が解除されるといった構造のスイッチが考えられる。
このように図4(a)に示すRFIDタグ50は、スイッチ51がオンの時のみIC回路部32とループアンテナ20とが接続されて、RFIDタグが動作する構造になっている。このように構成すれば、RFIDタグ50は、例えばユーザがスイッチ51を押圧したときしか動作しないので、ユーザが知らないうちに離れた場所からRFIDタグ50に書き込まれた個人情報が読み取られるといったことがなくなる。また、何らかの手段によりスイッチ51を押圧し続けた状態で保持できるような構造にしておくと、通常使用時におけるRFIDタグ50の利便性が損なわれるのも防止することができる。
また、上記図4(a)に示した例では、スイッチ51をIC回路部32とループアンテナ20との間に接続するようにしているが、これはあくまでも一例であり、例えば図4(c)に示すように、ループアンテナ20に対して並列にスイッチ51を接続することも可能である。その場合は、スイッチ51を押圧したときのみスイッチ51が開放状態となりIC回路部32に対してループアンテナ20が接続されるように構成すればよい。
また、これまで説明した本実施の形態としてのリーダライタの構成はあくまでも一例であり、本実施の形態により本発明のリーダライタの構成が限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リーダライタの動作を説明するためのブロック図。
【図2】非接触型のRFIDタグの動作を説明するためのブロック図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る非接触型のRFIDタグの構成を示した図。
【図4】第2の実施の形態に係る非接触型のRFIDタグの構成を示した図。
【符号の説明】
【0012】
1 送受信装置、2 制御回路、3 メモリ装置、4 変調器、5 入力装置、6 表示装置、7 電力増幅器、8、8a 検波復調器、9、20 ループアンテナ、11 リーダライタ、12 A/D変換器、13 蓄積装置、31、50 RFIDタグ、32 IC回路部、33 抵抗、34 短絡線、35 切取部、51 スイッチ、52、53 接点、54 接続板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループアンテナを介して所定の変調方式に基づく搬送波を受信して、内部電力を生成することにより、外部とのデータの授受を行う非接触型のRFIDタグにおいて、
少なくとも、前記ループアンテナと接続される送受信回路、該送受信回路と接続される制御回路、及び該制御回路と接続されるメモリ装置とを有するIC回路部と、該IC回路部と前記ループアンテナとの間に配置された受信感度を調整する受信感度調整手段とを備え、前記受信感度調整手段は、異なる複数の受信感度に変更可能なように構成されていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記受信感度調整手段は、前記ループアンテナと前記IC回路部との間に直列に挿入したインピーダンス素子と、該インピーダンス素子の両端を接続する接続回路とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
ループアンテナを介して、所定の変調方式に基づく搬送波を受信して、内部電力を生成することにより、外部とのデータの授受を行う非接触型のRFIDタグにおいて、
少なくとも、前記ループアンテナと接続される送受信回路、該送受信回路と接続される制御回路、及び該制御回路と接続されるメモリ装置とを有するIC回路部と、該IC回路部と前記ループアンテナとの間に、前記ループアンテナと前記IC回路部との接続を断続する断続手段を備えていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項4】
前記断続手段は、ループアンテナと前記IC回路部との間に直列に挿入されていることを特徴とする請求項3に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記断続手段は、ループアンテナに対して並列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−31473(P2006−31473A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210605(P2004−210605)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】