説明

RFIDタグ

【課題】タグの通信距離を伸ばすとともに、電波方式のリーダライタでも読取り可能とし、タグを被着体に貼り付けた際に生じるアンテナ特性のズレを最小限に抑える。
【解決手段】マイクロ波帯の通信に適応したRFIDタグであって、基材上に設けられた単一巻のループアンテナにICチップの入出力端子を接続させ、前記ループアンテナの導体部にはキャパシタンスを生じるスリットからなるギャップ部を設け、ギャップが設けられた基材面とは反対側に浮島状導体パターンが形成され、前記浮島状の導体パターンが、前記ループアンテナ導体のギャップ部分よりも大きく、前記ループアンテナ導体のギャップ部を完全に覆う形状・配置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波帯(300MHz〜3GHz)を利用した電磁誘導方式によるRFIDタグのアンテナ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活や社会のいたるところにコンピュータ、ネットワークが在り、いつでも、どこからでも、自由にコンピュータにアクセスできるユビキタスコンピューティングがビジネスや暮らしを快適にサポートできる様になっており、そのキーテクノロジーの一つがRFIDタグである。
【0003】
RFIDタグを利活用するには、RFID技術が必要となる。無線通信を利用し非接触による書き込みと読み込みを行なう自動認識技術を利用した技術であり、それを使った製品、システムである。数ミリから数センチほどのRFIDタグにデータを記録して、その内容を機器(リーダ/ライタ)からの電波(無線通信信号)で読み込んだり、書き込んだりすることができる。交通カードや、電子マネーなどのICカードに使われているのをはじめ、商品などのモノに付けて、トレーサビリティシステムや物品管理などにも使われはじめている。
【0004】
RFIDは、基本的にメモリ機能のあるICチップとアンテナを搭載したRFIDタグ(ICタグ、電子タグなどとも呼ばれている。)と、RFIDタグ内のデータの読み取り、書き込みを行なうリーダ/ライタ、その情報管理を行なうコンピュータシステムによって構成されている。RFIDタグを目標物に貼り付けることで、自動識別、所在確認、追跡、履歴情報などの記録や、呼び出しなどの用途に使用されている。
【0005】
そうした中、マイクロ波帯での通信に適応したICチップの入出力端子に単一巻のループアンテナを接続することでICタグを形成し、更に別のループアンテナを有するリーダライタを用いて電磁誘導方式により、このタグを読取ることを可能にした電磁誘導方式のアンテナデザインがインピンジ社(Impinj,Inc)から提案されている(非特許文献1)。
【0006】
しかし、このタグの通信距離はせいぜい20〜30cm程度であり、同じ周波数帯を用いる電波方式によるタグの通信距離(3〜7m)と比べるとかなり短いと言える。これは、タグの通信距離を伸ばすために必要なループの開口面積の拡大とICチップとアンテナとのインピーダンスマッチング(特に虚部インピーダンスの整合)の両立が図れないことに起因する。
【0007】
また、マイクロ波帯のRFIDタグを、一般的な電波方式のリーダライタでは殆ど読取ることができない。単にタグの応答の有無を確認するだけの目的であっても、電磁誘導方式のリーダライタを用いる必要がある。
【0008】
ループコイルに、基材裏面の浮島状パターンと同表面のループパターンのギャップで形成されるキャパシタンスを、取り付けることによりループコイルのインダクタンスを増やさずにループの開口面積を拡大することができる。しかしながら、ループコイル上にキャパシタンスを設けた場合、ループコイル(タグ)を実運用する際の貼り付け対象物(誘電体)によっては容量が増大してしまう。キャパシタンスの容量が増大すると、キャパシタンスを有するループコイルのインダクタンスも変化してしまうという問題が発生する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Impinj White Papers”UHF Gen 2: The Definitive,Myth−busting, Item−level Solution”(http://www.impinj.com/Applications/White_Papers.aspx) Impinj,Inc、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、従来技術のRFIDタグを基本としつつ、ループの開口面積の拡大と、ICチップとアンテナとのインピーダンスマッチングの両立を図ることでタグの通信距離を伸ばすとともに、電波方式のリーダライタでも読取り可能とし、タグを被着体に貼り付けた際に生じるアンテナ特性のズレを最小限に抑えることすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、マイクロ波帯での通信に適応したRFIDタグであって、基材上に設けられた単一巻のループアンテナにICチップの入出力端子を接続させ、前記ループアンテナの導体部にはキャパシタンスを生じるスリットからなるギャップ部を設け、ギャップが設けられた基材面とは反対側に浮島状導体パターンが形成され、前記ギャップ部分と浮島状の導体パターンが基材を挟んで、対峙する位置に配置されており、前記浮島状の導体パターンが、前記ループアンテナ導体のギャップ部分よりも大きく、前記ループアンテナ導体のギャップ部を完全に覆う形状・配置であることを特徴とするRFIDタグである。
【0012】
浮島状の導体パターンが、ギャップ部を完全に覆う形状・配置であることは、浮島状の導体パターンがギャップ部およびその近傍と完全に重なる形状・配置であることを意味する。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分を除き、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンの輪郭との距離の差が、少なくとも両者を形成・保持している基材の厚みよりは大きいことを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、両者が互いに略直交する配置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のRFIDタグである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、前記ループアンテナの導体パターンの幅が、他の部位に比べてスポット的に細くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFIDタグである。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、ループアンテナ導体パターンはギャップ部分に向かって、又は反対の方向に向かってテーパ状に広がる形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のRFIDタグである。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面が被着体に貼り付けられる面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のR
FIDタグである。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のRFIDタグである。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンが配置されている基材面側の少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、比誘電率が2以下の低誘電率材料が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のRFIDタグである。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、前記ループアンテナ、浮島状導体パターン、及びそれらが形成されている基材が、非金属製の筐体に納められており、前記ループアンテナ導体パターンが配置されている基材面側には少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、空隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のRFIDタグである。
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、マイクロ波帯での通信に適応したRFIDタグであって、基材上に設けられた単一巻のループアンテナにICチップの入出力端子を接続させ、前記ループアンテナの導体部にはキャパシタンスを生じるスリットからなるギャップ部を設け、ギャップが設けられた基材面とは反対側に浮島状導体パターンが形成され、前記ギャップ部分と浮島状の導体パターンが基材を挟んで、対峙する位置に配置されており、かつ前記浮島状の導体パターンが、前記ループアンテナ導体のギャップ部分よりも小さく、ギャップ部分に配置されていることを特徴とするRFIDタグである。
【0022】
また、請求項11に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分を除き、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンの輪郭との距離の差は、少なくとも両者を形成・保持している基材の厚みよりは大きいことを特徴とする請求項10に記載のRFIDタグである。
【0023】
また、請求項12に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが基材を挟んで対峙して設けられており、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と前記浮島状導体パターンとが、互いに略直交するように配置されていることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のRFIDタグである。
【0024】
また、請求項13に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、特に前記浮島状導体パターンの幅は、他の部位に比べてスポット的に細くなっていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のRFIDタグである。
【0025】
また、請求項14に記載の発明は、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、前記浮島状導体パターンがギャップ部分とは反対の方向に向かってテーパ状に広がる形状であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のRFIDタグである。
【0026】
また、請求項15に記載の発明は、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面が被着体に貼り付けられる面であることを特徴とする請求項10または請求項14に記載のRFIDタグである。
【0027】
また、請求項16に記載の発明は、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項15に記載のRFIDタグである。
【0028】
また、請求項17に記載の発明は、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側の少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、比誘電率が2以下の低誘電率材料が取り付けられていることを特徴とする請求項10または請求項16に記載のRFIDタグである。
【0029】
また、請求項18に記載の発明は、前記ループアンテナ、浮島状導体パターン、及びそれらを形成している基材は非金属製の筐体に納められており、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側には少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、空隙が設けられていることを特徴とする請求項10または請求項16に記載のRFIDタグである。
【発明の効果】
【0030】
コイル状のアンテナ上に一箇所以上のギャップを設けることにより、コイルサイズを拡大することが出来、アンテナの開口部を大きくすることにより通信性能の向上と、タグを被着体に貼り付けた際に生じるアンテナ特性のズレを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のRFIDタグに用いられるループアンテナの外観を示した平面概念図である。
【図2】本発明のRFIDタグに用いられるループアンテナの構成を示した断面概念図である。
【図3】本発明のRFIDタグに関する請求項1〜3に関する実施例の構成を示した概念図である。
【図4】本発明のRFIDタグに関する請求項4に関する実施例の構成を示した概念図である。
【図5】本発明のRFIDタグに関する請求項5に関する実施例の構成を示した概念図である。
【図6】本発明のRFIDタグに関する請求項6、7に関する実施例の構成を示した断面概念図である。
【図7】本発明のRFIDタグに関する請求項8に関する実施例の構成を示した断面概念図である。
【図8】本発明のRFIDタグに関する請求項9に関する実施例の構成を示した断面概念図である。
【図9】本発明のRFIDタグに関する請求項10〜12に関する実施例の構成を示した平面概念図である。
【図10】本発明のRFIDタグに関する請求項13に関する実施例の構成を示した平面概念図である。
【図11】本発明のRFIDタグに関する請求項14に関する実施例の構成を示した平面概念図である。
【図12】本発明のRFIDタグに関する請求項15,16に関する実施例の構成を示した断面概念図である。
【図13】本発明のRFIDタグに関する請求項17に関する実施例の構成を示した断面概念図である。
【図14】本発明のRFIDタグに関する請求項18に関する実施例の構成を示した断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1はループアンテナ5の外観を示しており、基材上に設けられた単一巻のループアンテナ5である。ICチップ2が入出力端子上のIC実装部3に実装され、ループアンテナの導体部5にはキャパシタンスを生じるスリットからなるギャップ部4が設けられている。
【0033】
図2はRFIDタグのループアンテナ5の構成を示した部分断面概念図であり、ギャップ部4が設けられた基材面とは反対側に浮島状導体パターン6が形成されている。前記浮島状の導体パターンが、前記ループアンテナ導体のギャップ部分4よりも大きく、前記ループアンテナ導体のギャップ部を完全に覆う形状・配置となっている。
【0034】
これにより、ICチップ2とループアンテナ5を流れる電圧と電流の位相差による無効電力をなくすことができ、ループアンテナ5とICチップ2の間で効率良くエネルギーの送受が行えるようになるため、ICタグの通信距離を伸ばすことが可能となる。
【0035】
また、アンテナ上のギャップ部分4の形状を調整することで、ギャップ部分4のキャパシタンスを調整することが可能となる。ループアンテナ長を増やすことで増大するループアンテナ5の虚部インピーダンスをギャップ部分のキャパシタンスで減少させ、ICチップ2とループアンテナ5の虚部インピーダンスの整合を保ちつつループアンテナの開口を大きくし、ICタグの通信距離を増大させることができる。アンテナに対してRFID機能を有するバンプ端子付きのICチップを直接実装することが容易となるため、ICタグの生産コストを下げることができる。
【0036】
図3は本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の構成例を示した概念図であり、図1のギャップ部4を詳細に示している。浮島状の導体パターン6が、ループアンテナ導体のギャップ部分4よりも大きく、ループアンテナ導体のギャップ部4を完全に覆う形状・配置されている。基材1を介して設けられている裏面導体層6のエッジと表面導体層5があり、ループアンテナ導体パターン5と、浮島状導体パターン6の輪郭とが重なる部分において、両者が互いに略直交する配置となっている。
【0037】
さらに、ループアンテナ導体パターン5と、浮島状導体パターン6とが重なる部分で、ループアンテナ導体パターン5と、浮島状導体パターン6の輪郭とが重なる部分(図3のギャップ部分4)を除き、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、浮島状導体パターンの輪郭との距離の差a、b、c、d、eが、少なくとも両者を形成・保持している基材厚みtよりは大きく、ループアンテナエッジとの距離と基材厚みtとの関係がa、b、c、d、e>tとなっている。
【0038】
このことにより、浮島状導体パターン側に粘着材9を塗布し、誘電体への貼り付けを行っても、浮島状導体とアンテナ導体との静電容量の変化量を殆ど無くすことが可能となり、タグの貼り付け状態によるタグの特性の変化(虚部インピーダンスの変化→通信距離の変化)を抑えることが可能となる。一方、前記各パラメータが基材厚みtよりも小さくなると、浮島状導体パターン側に粘着材9を塗布し、誘電体への貼り付けを行った際の浮島状導体とアンテナ導体との静電容量の変化量が端部効果の増大によって大きくなり、タグの貼り付け状態によるタグの特性の変化(虚部インピーダンスの変化→通信距離の変化)も大きくなってしまう。
【0039】
図4は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示した概念図であり、浮島状導体パターン6の輪郭とが重なる部分の、ループアンテナの導体パターン5の幅が、他の部位に比べてスポット的に細くなっており、基材1を介して設けられている裏面導体層6のエッジと表面導体層であるループアンテナエッジとの距離a、b、c、d、e、f、gと基材厚みtとの関係がa、b、c、d、e、f、g>tとなっている。
【0040】
また、浮島状導体端部とアンテナ導体が交差する部分から、アンテナ導体部分の浮島状導体とは重ならない側で、線幅が太くなる部分との距離“f”を基材厚tよりも大きくすることにより、アンテナ導体と浮島状導体端部との間の静電容量を減らすことができ、浮島状導体とアンテナ導体間全体の静電容量に対する前記静電容量の割合を減らすことで、浮島状導体パターン側に粘着材を塗布し、誘電体への貼り付けを行った際の浮島状導体とアンテナ導体との静電容量の変化量(増加量)を減らすことが可能となる。
【0041】
図5、は本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示した概念図であり、ループアンテナ導体パターン5と、浮島状導体パターン6の輪郭とが重なる部分において、ループアンテナ導体パターン5はギャップ部分4に向かって、テーパ状に広がる形状であることを示している。
【0042】
また、浮島状導体端部と、アンテナ導体部分の浮島状導体とは重ならない側で、テーパ状となっている部分との距離”f”を基材厚tよりも大きくすることにより、同部位と浮島状導体端部との間の静電容量を減らすことができ、浮島状導体とアンテナ導体間全体の静電容量に対する前記静電容量の割合を減らすことで、浮島状導体パターン側に粘着材9を塗布し、誘電体への貼り付けを行った際の浮島状導体とアンテナ導体との静電容量の変化量を減らすことが可能となる。また、アンテナ導体部分の浮島状導体と重なる部分においても、同導体部分をテーパ状としても良い。その場合、タグを誘電体へ貼り付けた際の本テーパ部分と浮島状導体との静電容量の変化量(増加量)を僅かながら未対策状態のものに比べて減らすことが可能となる。
【0043】
図6は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示した断面図であり、浮島状導体パターンが配置されている基材面が被着体に貼り付けられる面であり、浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられていることを示している。粘着材層又は接着剤層が設けられことにより被着体10に容易に貼り付けることができる。
【0044】
図3〜6の構成により、ICタグを被着体10に貼り付けた際に、特に生じ得る、アンテナのギャップ部分におけるキャパシタンスの増加を最小限に抑え、ICチップとループアンテナの虚部インピーダンスの不整合の増加を最小限に留めることが可能となり、被着体に貼付後でもICタグは安定した通信距離を確保することができる。
【0045】
図7は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示した断面であり、ループアンテナ導体パターン5が配置されている基材面側の少なくとも、ループアンテナ導体パターンと、浮島状導体パターン6の輪郭とが重なる部分において、比誘電率が2以下の低誘電率材料11が取り付けられていることを示している。
【0046】
このような構造を採用することにより、タグの上方に誘電体が置かれた場合においても、浮島状導体とアンテナ導体端部の間の静電容量の増加を減らすことが可能となる。具体的には、浮島状導体と特にアンテナ導体端部との間で形成される静電容量は周囲の誘電体(特にアンテナ導体側に密着される形で設置されるもの)の影響を非常に受けやすい。予めこの部分に低誘電率の誘電体を設置しておくことにより、誘電体の影響(静電容量増加)を緩和することが可能となる。タグに貼り付ける低誘電率材11の比誘電率は小さい程好ましく、例えば発泡PET材(比誘電率2以下)等が入手性も良く、適当な材料であると言える。
【0047】
図8は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示した断面概念図であ
り、ループアンテナ5、浮島状導体パターン6、及びそれらが形成されている基材が、非金属製の筐体に納められており、ループアンテナ導体パターンが配置されている基材面側には少なくとも、ループアンテナ導体パターンと、浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、空隙が設けられていることを示している。
【0048】
このような構造を採用することにより、タグの上方に誘電体が置かれた場合においても、浮島状導体とアンテナ導体端部の間の静電容量の増加を殆ど無くすことが可能となる。具体的には、浮島状導体と特にアンテナ導体端部との間で形成される静電容量は周囲の誘電体(特にアンテナ導体側に密着される形で設置されるもの)の影響を非常に受けやすい。予めこの部分に空隙を設けることにより、誘電体の影響(静電容量増加)を緩和することが可能となる。
【0049】
図7、図8の構成により、RFIDタグを被着体10に貼り付けた後に、タグ上に誘電体を重ね置かれると、アンテナのギャップ部分におけるキャパシタンスの増加を最小限に抑え、ICチップとループアンテナの虚部インピーダンスの不整合の増加を最小限に留めることが可能となり、タグ上に誘電体を重ね置かれてもRFIDタグは安定した通信距離を確保することができる。
【0050】
図9は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示した平面概念図であり、ループアンテナ5に設けられたギャップ部分4と浮島状の導体パターン6がループアンテナ導体のギャップ部分よりも小さく、またギャップ部分に配置され、基材の厚みよりは大きい構成を示しており、図10は、さら浮島状導体部分の別の構成例を示した平面概念図であり、浮島状導体パターンのギャップ部分4の幅は、他の部位に比べてスポット的に細くなっていることを示している。
【0051】
また、浮島状導体部とアンテナ導体端部が交差する部分において、浮島状導体部の線幅を細くすることにより、同部位における静電容量を減らすことができ、浮島状導体とアンテナ導体間全体の静電容量に対する前記静電容量の割合を減らすことで、アンテナ導体パターン側に粘着材9を塗布し、誘電体への貼り付けを行った際の浮島状導体とアンテナ導体との間の静電容量の変化量(増加量)を減らすことが可能となる。
【0052】
図11は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示しおり、浮島状導体パターン6がギャップ部分の両端から反対の方向に向かってテーパ状に広がる形状であることを示している。図12は、さらに浮島状導体部分の別の構成例を示した断面概念図であり、浮島状導体パターンが配置されている基材面が被着体に貼り付けられたものと、浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられていることを示している。
【0053】
図12は、本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例の構成を示しており、表面導体層(ループアンテナ)5と裏面導体層(浮島状導体)6の位置が入れ替わった構造になっている。前記浮島状導体パターン6が配置されている基材面が被着体10に貼り付けられる面であり、浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられている構成を示しており、ループアンテナ5側に粘着材9が設けられ被着体10に貼り付けられる。
【0054】
図10〜12の構成により、RFIDタグを被着体10に貼り付けた際に、特に生じ得る、アンテナのギャップ部分におけるキャパシタンスの増加を最小限に抑え、ICチップとループアンテナの虚部インピーダンスの不整合の増加を最小限に留めることが可能となり、被着体に貼付後でもRFIDタグは安定した通信距離を確保することができる。
【0055】
図13、図14はさらに本発明のRFIDタグの浮島状導体部分の別の構成例を示しており、それぞれ図6、7、8における表面導体層(ループアンテナ)5と裏面導体層(浮島状導体)6の位置が入れ替わった構造になっている。
【0056】
図13の構成では、図7の構成で示したのと同様に、タグの上方に誘電体が置かれた場合においても、浮島状導体とアンテナ導体端部の間の静電容量の増加を減らすことが可能となる。タグに貼り付ける低誘電率材11の比誘電率は小さい程好ましく、例えば発泡PET材(比誘電率2以下)等が入手性も良く、適当な材料であると言える。
また図14のような構造を採用することにより、図8の構成と同様に、タグの上方に誘電体が置かれた場合においても、浮島状導体とアンテナ導体端部の間の静電容量の増加を殆ど無くすことが可能となる。
【0057】
図13、図14の構成により、RFIDタグを被着体に貼り付けた後に、タグ上に誘電体を重ね置かれた際に、特に生じ得るアンテナのギャップ部分におけるキャパシタンスの増加を最小限に抑え、ICチップとループアンテナの虚部インピーダンスの不整合の増加を最小限に留めることが可能となり、タグ上に誘電体を重ね置かれてもRFIDタグは安定した通信距離を確保することができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・基材(誘電体)
2・・・ICチップ
3・・・IC実装部
4・・・ギャップ部
5・・・表面導体層(ループアンテナ)
6・・・裏面導体層(浮島状導体)
7・・・スポット的に導体幅が狭くなる部分
8・・・浮島状導体がテ―パ状に広がる部分
9・・・粘着材
10・・・被着体
11・・・低誘電率材
12・・・筐体(非金属)
13・・・表面導体層と裏面導体層が直交する部分
t・・・基材厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波帯での通信に適応したRFIDタグであって、基材上に設けられた単一巻のループアンテナにICチップの入出力端子を接続させ、前記ループアンテナの導体部にはキャパシタンスを生じるスリットからなるギャップ部を設け、ギャップが設けられた基材面とは反対側に浮島状導体パターンが形成され、前記ギャップ部分と浮島状の導体パターンが基材を挟んで、対峙する位置に配置されており、前記浮島状の導体パターンが、前記ループアンテナ導体のギャップ部分よりも大きく、前記ループアンテナ導体のギャップ部を完全に覆う形状・配置であることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分を除き、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンの輪郭との距離の差が、少なくとも両者を形成・保持している基材の厚みよりは大きいことを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、両者が互いに略直交する配置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、前記ループアンテナの導体パターンの幅が、他の部位に比べてスポット的に細くなっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、ループアンテナ導体パターンはギャップ部分に向かって、又は反対の方向に向かってテーパ状に広がる形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記浮島状導体パターンが配置されている基材面が被着体に貼り付けられる面であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のRFIDタグ。
【請求項8】
前記ループアンテナ導体パターンが配置されている基材面側の少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、比誘電率が2以下の低誘電率材料が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項9】
前記ループアンテナ、浮島状導体パターン、及びそれらが形成されている基材が、非金属製の筐体に納められており、前記ループアンテナ導体パターンが配置されている基材面側には少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分において、空隙が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項10】
マイクロ波帯での通信に適応したRFIDタグであって、基材上に設けられた単一巻のループアンテナにICチップの入出力端子を接続させ、前記ループアンテナの導体部にはキャパシタンスを生じるスリットからなるギャップ部を設け、ギャップが設けられた基材面とは反対側に浮島状導体パターンが形成され、前記ギャップ部分と浮島状の導体パター
ンが基材を挟んで、対峙する位置に配置されており、かつ前記浮島状の導体パターンが、前記ループアンテナ導体のギャップ部分よりも小さく、ギャップ部分に配置されていることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項11】
前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、前記ループアンテナ導体パターンと、前記浮島状導体パターンの輪郭とが重なる部分を除き、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンの輪郭との距離の差は、少なくとも両者を形成・保持している基材の厚みよりは大きいことを特徴とする請求項10に記載のRFIDタグ。
【請求項12】
前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが基材を挟んで対峙して設けられており、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と前記浮島状導体パターンとが、互いに略直交するように配置されていることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のRFIDタグ。
【請求項13】
前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、特に前記浮島状導体パターンの幅は、他の部位に比べてスポット的に細くなっていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項14】
前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、前記浮島状導体パターンがギャップ部分とは反対の方向に向かってテーパ状に広がる形状であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項15】
前記浮島状導体パターンが配置されている基材面が被着体に貼り付けられる面であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項16】
前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側に予め粘着材層又は接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項15に記載のRFIDタグ。
【請求項17】
前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側の少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、比誘電率が2以下の低誘電率材料が取り付けられていることを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項に記載のRFIDタグ。
【請求項18】
前記ループアンテナ、浮島状導体パターン、及びそれらを形成している基材は非金属製の筐体に納められており、前記浮島状導体パターンが配置されている基材面側には少なくとも、前記ループアンテナ導体パターンの輪郭と、前記浮島状導体パターンとが重なる部分において、空隙が設けられていることを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項に記載のRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−13002(P2013−13002A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145624(P2011−145624)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】