説明

RFIDラベル

【課題】 RFIDラベルへの印字や電子情報の書き込み及び読み出しをする際に生じる静電気による不具合を解消する。
【解決手段】 台紙41のインレット45の裏側面に、導電体46をインレット45の周囲から所定の間隔dを開け、かつ台紙41の長手方向に沿って形成する。ラベルプリンタにより印字ラベル42への印字及びICチップ43への情報の書き込みや読み出しを行う際、RFIDラベル40が静電気を生じても、その静電気を導電体46を介してラベルプリンタの筐体側へ逃すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を使用し非接触でデータの書き込みと読み出しとが可能なRFID(Radio Frequency IDentification)ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDは、ICチップとそれに接続した平面状のアンテナから構成されるインレット(フィルム状の基板)を有している。ICチップは、記憶部、電源整流部、送信部、受信部の4つに区分され、それぞれが働きを分担して通信を行うようになっている。記憶部の容量は、8〜2000バイトであり、何度でもデータの書き換えが行える。
【0003】
通信手順としては、平面状のアンテナがリーダライタからの電波を受信すると
、共振作用により起電力が発生(電磁誘導等)し、ICチップが起動してチップ内の情報を信号化し、アンテナから信号がリーダライタ側に発信される。リーダライタ側では、その信号をキャッチすると、データ処理を行うことで、RFID側の情報を認識する。
【0004】
ところで、ICチップに記憶された内容は人間の視覚や従来のバーコードリーダでは読み取れないため、RFIDをラベルやタグと一体化したRFIDラベルとし、そのラベルの表面に文字やバーコードを印字することで、人間の視覚、OCR、バーコードリーダ等で読み取り可能とする利用形態が拡大しつつある。
【0005】
一方、このRFIDラベルに印字を行うラベルプリンタは、印字手段の他にRFIDと通信する非接触通信手段 (リーダライタ)を備えている。また、そのリーダライタは、通信用アンテナを有しており、この通信用アンテナを用いてRFIDのアンテナと通信し、ICチップに情報を書き込んだり、ICチップに記録された情報を読み取ったりしている。
【0006】
ところで、このようなRFIDラベルに対して上記のラベルプリンタにより、印字及びICチップへの情報の書き込みを行う際、ラベルプリンタ内部ではRFIDラベルがゴムローラやガイド部材によって搬送されることになる。
【0007】
その際、RFIDラベルがゴムローラやガイド部材等に摺接したり、印字部のサーマルヘッド及びプラテンローラから熱や圧力を受けるため、静電気による破壊や断線、さらには接触不良等が生じてRFIDが故障してしまう可能性がある

【0008】
ここで、特許文献1では、電気取着パッドを画成する第1の導電材料と、ラベル領域内に被着されかつ取着パッドを包囲する誘電材料と、誘電材料に被着されてアンテナを画成するとともに取着パッドに電気的に接続された第2の導電材料とを有する積層ラベルと、ラベル領域内に被着された膨張自在の材料とを備え、膨張自在の材料を膨張させることによりICチップを収容するキャビティを、取着パッドを包囲して形成するように構成されているRFIDラベルを提案している。
【特許文献1】特公表2002−535758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献1に示されるRFIDラベルでは、積層ラベルが剥離自在のライナにシルクスクリーニング、すなわちスクリーン印刷(silk screening)することにより形成されるため、基板を必要とせずに、しかもその形成の自動化が容易となるが、静電気対策が施されていない。
【0010】
そのため、上述したラベルプリンタにより印字及びICチップへの情報の書き込みやICチップからの情報の読み出しを行う際、RFIDラベルがガイドローラや他のガイド部材等に摺接したり、印字部のサーマルヘッド及びプラテンローラから熱や圧力を受けて静電気を帯びると、その静電気によりICチップの破壊やコイルの断線等によるRFIDの故障を生じてしまう可能性がある。
【0011】
また、RFIDラベルが静電気を帯びると、RFIDラベルの印字等に伴う搬送の際にガイドローラや他のガイド部材等に吸着してRFIDラベルの搬送スピードが変化してしまい、印字ずれやICチップへの情報の書き込み不良及びICチップからの情報の読み出しが不良が生じてしまうおそれがあるばかりか、用紙ジャムを招いてしまうことも予測される。
【0012】
すなわち、本発明が解決しようとする問題点は、ラベルプリンタにより印字及びICチップへの情報の書き込みやICチップからの情報の読み出しを行う際に、静電気によりICチップの破壊やコイルの断線等によるRFIDの故障を生じてしまうおそれがあるという点や、RFIDラベルの印字等に伴う搬送の際に
、印字ずれや用紙ジャムを招いてしまうおそれがあるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のRFIDラベルは、ICチップとそれに接続した平面状のアンテナからなるインレットが配置される台紙と、この台紙のインレットが配置される面に貼着される印字ラベルとを有するRFIDラベルであって、前記台紙のインレットが配置される面、及び/又は前記台紙の裏面に、導電体が前記インレットから所定の間隔を開け、かつ前記台紙の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする。
また、前記導電体は、前記インレットの周囲に形成することができる。
本発明のRFIDラベルでは、台紙のインレットが配置される面、及び/又は台紙の裏面に、導電体をインレットから所定の間隔を開け、かつ台紙の長手方向に沿って形成したので、ラベルプリンタにより印字ラベルへの印字及びICチップへの情報の書き込みやICチップからの情報の読み出しを行う際、RFIDラベルが摺動・摩擦しても、発生する静電気を導電体を通じてラベルプリンタ側に設けた除電ブラシや除電ローラを介して筐体側へ逃すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のRFIDラベルによれば、RFIDラベルが静電気を帯びても、その静電気を導電体を介してラベルプリンタの筐体側へ逃すことができ、ICチップの破壊やコイルの断線等によるRFIDの故障を防止することができ、さらには印字ずれやICチップへの情報の書き込み不良及びICチップからの情報の読み出し不良を防止することができるとともに、用紙ジャムの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態では、台紙のインレットが配置される面に、導電体をインレットから所定の間隔を開け、かつ台紙の長手方向に沿って形成し、ラベルプリンタにより印字ラベルへの印字及びICチップへの情報の書き込みやICチップからの情報の読み出しを行う際、RFIDラベルが静電気を帯びても、その静電気を導電体を介してラベルプリンタの筐体側へ逃すようにすることで、ICチップの破壊やコイルの断線等によるRFIDの故障を防止し、さらには印字ずれやICチップへの情報の書き込み不良及びICチップからの情報の読み出し不良を防止するとともに、用紙ジャムの発生を防止するようにした。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のRFIDラベルに対して印字及びICチップへの情報の書き込みを行うラベルプリンタの一例を示す図、図2は、本発明のRFIDラベルの一実施形態を示す外観斜視図、図3は、図2のRFIDラベルの内部構造を示す拡大斜視図、図4は、図2のRFIDラベルの構成を変えた場合の他の実施形態を示す斜視図、図5は、図2のRFIDラベルの構成を変えた場合のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【0017】
図に示すラベルプリンタは、主として、供給部10、リーダ/ライタ20、印字部30を備えている。
【0018】
供給部10の供給軸11には、ロール状に巻回されたRFIDラベル40が装着されている。RFIDラベル40は、印字部30のプラテンローラ31の回転駆動により供給軸11から繰り出され、リーダ/ライタ20を経て印字部30に移送される。リーダ/ライタ20と印字部30との間には、センサ34及びガイドローラ33が設けられており、このセンサ34によってRFIDラベル40の後述の台紙41の検出マーク(不図示)が検出される。印字部30は、センサ34が検出マークを検出したタイミングに基づいて、印字を開始する。
【0019】
印字部30は、対向配置されたプラテンローラ31とサーマルヘッド32を有している。プラテンローラ31とサーマルヘッド32との間には、供給部10から繰り出されたRFIDラベル40と、供給リール50から繰り出されたインクリボン51とが供給される。
【0020】
そして、サーマルヘッド32の熱によりインクリボン51のインクを溶解することによりRFIDラベル40にインクが転写されて印字が行われる。印字後のRFIDラベル40は、取出口53から取り出され、また印字後のインクリボン51は、巻き取りリール52によって巻き取られる。
【0021】
リーダ/ライタ20は、供給部10と印字部30との間に配設されており、アンテナ21を備えている。アンテナ21は、RFIDラベル40の搬送通路に近接して配置されている。
【0022】
リーダ/ライタ20は、このアンテナ21と、RFIDラベル40の後述のアンテナ44とを介してICチップ43と通信し、ICチップ43に情報を書き込んだり、ICチップ43から情報を読み取ったりする。
【0023】
次に、RFIDラベル40について説明する。
図2及び図3に示すように、RFIDラベル40は、台紙41と印字ラベル42との間に、ICチップ43とそれに接続した平面状のアンテナ44から構成されるインレット(フィルム状の基板)45が所定の間隔で配置されている。なお、アンテナ44にあっては、図2及び図3のようにコイル状に限らず、UHF帯で使用されるコイル状以外の形状であってもよい。
【0024】
また、台紙41のインレット45が配置される面には、アルミ等の導電部材からなる2本の導電体46が台紙41の長手方向に沿ってインレット45を挟むように形成されている。ここで、導電体46は、たとえばアルミ箔を台紙41の長手方向に沿って貼着するか、蒸着あるいはカーボン等の導電インクによる印刷によって形成することができる。
【0025】
また、台紙41のインレット45の裏面には、アルミ等の導電部材からなる2本の導電体46が台紙41の長手方向に沿ってインレット45を挟むように形成されている。ここで、導電体46は、たとえばアルミ箔を台紙41の長手方向に沿って貼着するか、蒸着あるいはカーボン等の導電インクによる印刷によって形成することができる。
【0026】
また、導電体46とインレット45との間隔dは、たとえば1cm以上とされている。これは、平面状のアンテナ44とリーダ/ライタ20のアンテナ21との間で、電波により情報の書き込みと読み出しとが行われるとき、平面状のアンテナ44における電波の送受信の影響を避けるためである。
【0027】
また、台紙41及び印字ラベル42には、RFIDラベル40を一枚毎に切断できるようにミシン目47が形成されている。なお、ラベルプリンタにカッターが搭載されている場合は、ミシン目47の形成は不要である。
【0028】
このような構成では、RFIDラベル40を製造する際、台紙41のインレット45が配置される面に、アルミ等の導電部材からなる導電体46を台紙41の長手方向に沿ってインレット45を挟むように形成する。次いで、台紙41上にインレット45を所定の間隔をおいて配置した後、印字ラベル42を台紙41のインレット45が配置される面に貼着する。その後、所定の間隔をおいて、ミシン目47を形成する。
【0029】
また、このような構成のRFIDラベル40に対して、上述したラベルプリンタにより、印字や情報の書き込み/読み出しが行われる場合、図1に示したように、印字部30のプラテンローラ31の回転駆動によりRFIDラベル40が供給軸11から繰り出される。
【0030】
このとき、リーダ/ライタ20のアンテナ21と、RFIDラベル40のアンテナ44とを介してICチップ43との通信が行われ、ICチップ43への情報の書き込みや、ICチップ43からの情報の読み取りが行われる。
【0031】
次いで、リーダ/ライタ20と印字部30との間のセンサ34により、RFIDラベル40の台紙41の検出マーク(不図示)が検出されると、その検出したタイミングに基づいてサーマルヘッド32により印字ラベル42へのインクリボン51を介しての印字が行われる。
【0032】
次いで、印字後のRFIDラベル40は、取出口53から取り出され、台紙41及び印字ラベル42に形成されているミシン目47に沿って切断することにより、RFIDラベル40を一枚毎に分離することができる。
【0033】
ここで、RFIDラベル40がガイドローラ33や他のガイド部材等に摺接したり、サーマルヘッド32及びプラテンローラ31から熱や圧力を受けると、RFIDラベル40に静電気が帯電するが、その静電気はRFIDラベル40の台紙41のインレット45が配置される面に形成されている導電体46を介してラベルプリンタの筐体側へ逃すことができる。
【0034】
このように、本実施形態では、台紙41のインレット45が配置される面に、導電体46をインレット45から所定の間隔dを開け、かつ台紙41の長手方向に沿って形成し、ラベルプリンタにより印字ラベル42への印字及びICチップ43への情報の書き込みやICチップ43からの情報の読み出しを行う際、RFIDラベル40が静電気を帯びても、その静電気を導電体46を介してラベルプリンタの筐体側へ逃すようにした。
【0035】
これにより、RFIDラベル40に対する印字や情報の書き込み及び読み出しがRFIDラベル40に静電気が帯びない状態で行われるため、ICチップ43の破壊や平面状のアンテナ44の断線等によるRFIDの故障を防止することができる。
【0036】
また、印字等に伴う搬送の際に、RFIDラベル40がガイドローラ33や他のガイド部材等に吸着してRFIDラベル40の搬送スピードが変化してしまうことがなくなり、印字ずれやICチップ43への情報の書き込み不良及びICチップ43からの情報の読み出し不良を防止することができるとともに、用紙ジャムの発生をも防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、台紙41のインレット45が配置される面に導電体46を形成するようにしているので、印字ラベル42の印字領域が狭められるといった印字面への影響も回避できる。
【0038】
なお、本実施形態では、導電体46を2本とした場合について説明したが、インレット45から所定の間隔dだけ空けることができるのであれば、導電体46を3本以上としてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、台紙41のインレット45が配置される面に、アルミ等の導電部材からなる2本の導電体46を台紙41の長手方向に沿ってインレット45を挟むように形成した場合について説明したが、この例に限らず、図4に示すように、一枚のRFIDラベル40のインレット45毎に台紙41の一方の辺と他方の辺とに跨るように1本の導電体46aを台紙41の長手方向に沿って形成してもよい。
【0040】
この場合、導電体46aとインレット45との間隔dは、上記同様に、平面状のアンテナ44における電波の送受信の影響を避けるために、たとえば1cm以上とすることが好ましい。
【0041】
また、図5に示すように、台紙41のインレット45の裏面において、導電体46bをインレット45の周囲にたとえば1cm以上の間隔dを空けて形成するようにしてもよい。導電体46bを形成する場合、たとえばアルミ箔をインレット45の周囲に貼着するか、蒸着あるいはカーボン等の導電インクによる印刷を同様にインレット45の周囲に施すことで形成することができる。
【0042】
また、以上の各実施形態では、導電体46,46a,46bを台紙41のインレット45の裏面に形成した場合について説明したが、この例に限らず、台紙41のインレット45側の面に形成してもよい。
【0043】
いずれにせよ、ラベルプリンタ側の図示しない除電ブラシや除電ローラ等の接地部材と、RFIDラベル40側の導電体46,46a,46bとの導通を妨げないように、これらの導電体46,46a,46bの配置位置を考慮すべきである。
【0044】
また、センサ34によって検出される台紙41の裏面の図示しない検出マークの検出を妨げないように導電体46,46a,46bの配置位置を考慮すべきである。
【0045】
また、導電体46,46a,46bにあっては、導電体46,46a,46bを台紙41のインレット45が配置される面と台紙41の裏面との両方に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のRFIDラベルに対して印字及びICチップへの情報の書き込みを行うラベルプリンタの一例を示す図である。
【図2】本発明のRFIDラベルの一実施形態を示す外観斜視図である。
【図3】図2のRFIDラベルの内部構造を示す拡大斜視図である。
【図4】図2のRFIDラベルの構成を変えた場合の他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】図2のRFIDラベルの構成を変えた場合のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
20 リーダ/ライタ
21 アンテナ
30 印字部
31 プラテンローラ
32 サーマルヘッド
33 ガイドローラ
40 RFIDラベル
41 台紙
42 印字ラベル
43 ICチップ
44 アンテナ
45 インレット
46 導電体
46a 導電体
46b 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとそれに接続した平面状のアンテナからなるインレットが配置される台紙と、この台紙のインレットが配置される面に貼着される印字ラベルとを有するRFIDラベルであって、
前記台紙のインレットが配置される面、及び/又は前記台紙の裏面に、導電体が前記インレットから所定の間隔を開け、かつ前記台紙の長手方向に沿って形成されている
ことを特徴とするRFIDラベル。
【請求項2】
前記導電体は、前記インレットの周囲に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−155414(P2006−155414A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347634(P2004−347634)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】