説明

RFIDラベル

【課題】溶剤を用いてラベルを剥がす際に、OVD層が大きく変形すると同時に、アンテナも大きく修復不可能な状態に変形して確実にラベルに内蔵されている非接触IC媒体の通信機能を完全に不能するため、目視的にも電気的にもその痕跡を確認することができるRFIDラベルを提供する。
【解決手段】ラベル基材6の主面上にOVD層2と接着層7とICチップ4に記憶された所定の識別情報をアンテナ3によって無線で送信する非接触IC媒体が設けられたRFIDラベル1において、アンテナ3と積層するようにパターン状に剥離層を設け、かつアンテナ3と接着層7の間に変形層10を設け、接着層の被接着に対する接着強度がラベル基材とOVD層との層間接着強度より大きく、かつ接着層の被着体に対する接着強度がOVD層、隠蔽層、アンテナ、変形層、接着層の破断強度の合計よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な効果を呈するOVDの機能を備え、かつ非接触で外部装置との間でデータの受信および/または送信を行うことができるRFIDタグの機能を有するRFIDラベルであって、被着体から剥がした際にOVD機能、RFIDタグ機能ともに復元不可能な状態まで破壊して、その痕跡を視覚的にも電気的にも確認できるとともに、使い回しが不可能なことを特徴とするRFIDラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
小売店やレンタル店での商品の管理において、RFID用のICチップとアンテナを備えたRFIDタグが利用されている。RFIDは、Radio Frequency IDentificationの略であり、高周波を用いてRFID用のICチップの固有の情報のデータの授受を非接触で行うことを可能とする方式の総称である。RFIDタグに組み込まれているICチップには、各々のRFIDタグを区別するための固有の情報であるID情報が書き込まれている。該ICチップは、場合によっては、該ID情報の入ったメモリー領域とは別の汎用メモリー領域をもち、商品に関連した情報などを読み書きすることができるタイプもある。ICチップのID情報の読み込みや、前記汎用メモリー領域の情報の読み込みや書き込みは、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって、専用のデータ読み書き装置(以下、RW(RW=Reader Writerの略)と記載する)により、非接触で行うことができる。
【0003】
たとえば、前記RFIDタグを商品に取り付け、RWにより前記ID情報を読み込むことで、該RWをコンピュータシステムと組み合わせて、商品の出入庫管理、在庫管理、貸し出し管理等に応用することができる。さらに、前記汎用メモリー領域に、商品コードや、入荷日、担当者などの商品に関連する情報をRWで書き込めば、該情報を別のコンピュータシステムに接続されたRWで読み込むことで、商品の情報をコンピュータシステム間で伝達することも可能となる。
【0004】
以下では、RFIDタグに接着層などを組み込み、商品等に貼り付け、ラベルとして用いることのできるRFIDタグをRFIDラベルとする。
【0005】
このRFIDタグの普及とともに、RFIDタグにOVD( Optical Variable Device)機能を付加したOVD一体型RFIDタグの実用化が期待されている。
【0006】
OVDとは、見る角度、または、測定する角度によって色の変化や画像の変化のような光学的な効果を発現させることのできる手段の総称である。この光学的な効果を発現させるために、OVDは、必要な効果に応じて、ホログラムなどの光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できる層や、回折格子から成る層や、光学特性の異なる薄膜層などを適宜選択して組み合わせて成る多層薄膜構造をとることが多い。
【0007】
このOVDは立体画像や色の変化といった独特な効果を与えることができるため、優れた装飾効果を発揮でき、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。さらに、OVDは高度な製造技術を要することから偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等に適用されている。
【0008】
また、OVDに光学的読み取り装置で読み取り可能な光学情報としてコード化された商品情報を記録しておくことも可能である。これにより、たとえば、OVDを更に高度な偽
造防止媒体として利用することができる。
【0009】
前記のような特徴をもつOVDをRFIDタグと一体化することにより、次に示すような利点が想定される。
【0010】
例えば、これまで、RFIDタグとOVDが別々に商品等に取り付けられていた場合には、RFIDタグとOVDとを一体化して、商品等に一括で取り付けることが可能になり、総合的なコストダウンができる。
【0011】
さらに、OVDは、様々なデザインが可能であり、該OVDとRFIDタグとを一体化した場合に、RFIDタグに、該OVDにより、意匠性や高級感、偽造防止機能などを持たせることができる。
【0012】
偽造防止機能の例としては、たとえば、OVDとRFIDタグを一体化させる事により、RFIDタグのRWによる情報と目視を含む光学的読み取りからの情報のいずれかを用いたRFIDタグの真偽判定が可能となる。従って、RFID用のRWがない場合でも、目視などの光学的読み取り手段によりRFIDタグの真偽判定が可能となる。すなわち、なんらかの理由で高周波を使った情報の読み取りが困難な場合に、光学的読み取り手段により読み取ることもできる。従って、低コストで、RFIDタグの真偽判定の市場適用範囲を広げることができる。
【0013】
また、更に高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVDに光学情報としてコード化された商品情報を記録しておき、該光学情報を光学的読み取り装置で読み取り、RWで読み込んだRFID用のICチップの商品情報と比較する事ができる。これにより、たとえば、OVDもしくは該ICチップのどちらかが偽造された際に真偽判定を行うことも可能となる(特許文献1)。
【0014】
このように、様々なメリットを有するため、RFIDタグにOVDを組み合わせ、一体化したOVD一体型のRFIDラベルがすでに考案されている。
【0015】
しかしながら、上記のようなラベルは、正規物品に貼り付けられていたものを綺麗に剥がすことが可能であり、いわゆる“使いまわし”ができるため、たとえば、該商品の偽造品に本物の商品から剥がした該OVD一体型のRFIDラベルが転用できるという偽造防止上の大きな問題があった(特許文献2)。また、一部に脆い材料からなる脆質層を設けてパターンで破壊するようなラベルも提案されている(特許文献3)が、再度、綺麗に貼り合せると見た目には分からない、また通信もできてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−227435号公報
【特許文献2】特許第3854124号公報
【特許文献3】特開2010−55467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、悪意にRFIDラベルを被着体から剥がそうとした際に、OVD機能とRFIDタグ機能の両方を復元不可能な状態まで破壊して、その痕跡を視覚的にも電気的にも確実に残すとともに再使用することができないようなRFIDラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、非接触で外部装置とデータの送受信を行う、少なくとも、ラベル基材上に、OVD層を配置し、次にRFID用のICチップと該ICチップと電気的に接続されたアンテナとを配置し、さらにRFIDラベルを被着体に貼り付けるための接着層を配置して成るRFIDラベルにおいて、
該OVD層が、導電性を示さない光学的な効果を呈する機能を有し、隠蔽層が該OVD層の上、および/または、該OVD層のないラベル基材の上、に配置され、かつ前記ICチップと前記アンテナとが、該隠蔽層の上に配置され、
接着層下には柔軟性を有する高分子材料からなる変形層を介在させてOVD層が積層され、
接着層の被接着対象物に対する接着強度がラベル基材とOVD層との層間接着強度より大きく、
かつ接着層の被接着体対象物に対する接着強度がOVD層、隠蔽層、アンテナ、変形層、接着層の破断強度の合計よりも小さくなるように設定されていることを特徴とするRFIDラベルラベルである。
【0019】
上記課題を解決するための請求項2に記載の発明は、前記変形層は、破断伸度が100%以上の高分子材料からなることを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベルラベルである。
【0020】
上記課題を解決するための請求項3に記載の発明は、ラベル基材とOVD層間に剥離層がパターン状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFIDラベルである。
【0021】
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、ラベル基材とOVD層間に接着層がパターン状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFIDラベルである。
【0022】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、アンテナが導電性インキで設けられ、かつ前記アンテナが前記隠蔽層の上に直接配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のRFIDラベルである。
【0023】
上記課題を解決するための請求項6に記載の発明は、光学的な効果が、可視光領域で発現することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のRFIDラベルである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるRFIDラベルによって、前記RFIDラベルを被着体から剥がす際に、前記OVD層とラベル基材の間で剥離が生ずると同時に、変形層が伸びて変形するため、それに伴ってOVD層が復元不可能な状態に変形してしまう。これにより、OVD層が復元不可能な状態に変形してしまうため、目視でその痕跡を確認することができる。それと同時に、OVD層と積層しているアンテナも復元不可能な状態に破断・変形してしまうためRFIDラベルの情報を取り出すことをできなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の光学機能付きRFIDラベルの一例を示す断面説明図で、(a)はラベル状態、(b)は被着体から剥がした状態
【図2】本発明の光学機能付きRFIDラベルの一例を説明するための平面説明図
【図3】本発明の光学機能付きRFIDラベルの他の例を示す断面説明図で、(a)はラベル状態、(b)は被着体から剥がした状態
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明によるRFIDラベルについて図を用いてその実施の形態の一例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
図1(a)に、本発明によるRFIDラベル1の断面図の一例を示す。ラベル基材6の上に剥離層11を複数、同じパターン状に配置し、その上にOVD層2、隠蔽層9を設ける。さらにその上にアンテナ3を配置し、該アンテナ3の上にICチップ4を設ける。ここで、該アンテナ3は、該ICチップ4の電極部に接合されている。このような構成の層の上に変形層10が構成され、さらに接着層7、離型シート8を配置する。
【0028】
アンテナ3の配線パターンは、例えば図2のようにメアンダ状に形成されている。この配線パターンは、前記ICチップの端子に対応して、必要に応じてデザインし配置してよいが、後述するように被着体からラベルを剥がそうとした際に、アンテナが断線しやすいように複雑な形状が好ましい。
【0029】
このようなアンテナ3を具備するRFIDタグは、図示しない情報読取装置からの電波をこのアンテナによって受け、その長手方向に生じる電位差をICチップに供給するようになっている。
【0030】
ICチップ4は、例えば、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.4mm程度、高さ寸法が0.1mm程度のものである。なお、辺部の長さ寸法は、これらに限定されるものではなく、適宜なものに設定可能である。
【0031】
アンテナに電波が照射され、このICチップに電力が供給されると、ICチップは稼動状態となり、情報読取装置からの電波に重畳されて送られてくるタイミング信号やコマンドに合わせて、そこに記憶されている情報を情報読取装置に返送する。そして、情報読取装置はこの再放射の強度を測定することで、ICチップに格納されている情報を読み出す。
【0032】
RWとRFIDラベルとの交信に使用する周波数は2.45GHz帯(2.400〜2.482MHz)および/または900MHz帯(850〜950MHz)が望ましいが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0033】
ラベル基材6としては、絶縁性材料であれば特に限定されるものではなく、例えばPET、PVC、ABS、紙等を用いることができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0034】
(剥離層11)
剥離層11はラベル基材6に部分的に設けられることが好ましい。用いる材料としては、容易にラベル基材からはがれるものが使用され、基材に使用される材料に基づいて適宜選択される。
【0035】
剥離層11はパターン状で部分的に配置するほうが、全面に設けるよりも好ましい。該剥離層11をパターン状に配置することにより、面内で剥離強度の差ができるために、被着体に貼り付けた後に剥がそうとすると、図1(b)のように剥離層11のパターンに沿ってOVD層が破壊すると同時にアンテナ3を断線させることが期待できるためである。この場合は、特に、ICチップ4やアンテナ3の周辺に設けることで、RFIDラベルを離型シートから剥がす際は壊れることなく、被着体に貼り付けた後に剥がそうとした場合にのみアンテナ3を断線させることができ、通信機能を不能にすることができる。またさらに、レーザー等でラベル全層もしくは一部の層をカットして切り込みを設けることにより、より、RFIDラベルの破断を確実に行うことができる。このとき、剥離層11がある部分とない部分の境界部に切り込みを設けるとより高い効果が得られる。
【0036】
(接着層12の場合)
一方剥離層の代わりに、図3のようにラベル基材6に接着層12を部分的に設け、かつOVD層2にラベル基材からはがれる材料を用いてもよい。用いる材料としては、容易にラベル基材からはがれるものが使用され、基材に使用される材料に基づいて適宜選択される。
【0037】
(OVD層2)
OVD層2は、たとえば、ラベル基材6に蒸着法によりアルミや金などの金属薄膜層を形成し、該金属薄膜層を加工して形成することができる。すなわち、金属薄膜層に、ホログラムや回折格子のような光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や体積方向に干渉縞を記録する体積型などを用いて加工することによりOVDとなる。
【0038】
(OVD層の非導電性)
OVD層2としては、アンテナ3の電波通信を阻害しないように、導電性を示さないことが必要である。従って、例えばアルミ蒸着膜でホログラムを作製した後に、エッチング法を用いて格子状に蒸着膜を切る方法がとられる。この場合、ホログラムの光学的機能を失わないように、10μm以下のラインで切ることが好ましい。他にも、導電性を示さない方法であれば適宜使用できる。例えば、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じさせる方法として、光学特性の異なるセラミックスの薄膜を多層に積層して多層薄膜構造とさせる方法を用いることもできる。
【0039】
(アンテナ3)
アンテナ3の形成方法としては、導電性ペーストを印刷によってパターン状に塗布して形成する方法などを用いることができる。該導電性ペーストの導電性材料としては、銀系が好ましい。例としては、バインダーとしての樹脂と溶剤と微細な銀粒子を含む銀ペーストなどがあげられる。
【0040】
前記銀ペーストは、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方法で印刷してパターン形成することができる。その後、加熱して、溶剤を蒸発させることで塗膜が形成される。この塗膜に含まれる銀粒子間の接触により、導体としての機能を持つ。これによりアンテナを形成することができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0041】
また、導電性のインクをインクジェットプリンタでプリントしてもよい。これにより、アンテナ3の厚みを薄く均一に形成でき、よりアンテナ3を破断しやすい構造とすることができる。さらに、RFIDラベル全体の厚さをより薄く平滑とすることができる。
【0042】
アンテナ3はICチップ4の接続端子と接続される。接合部分は、ACP(Anisotropic Conductive Paste:異方導電性ペースト)やACF(Anisotropic Conductive Film:異方導電性フィルム)などのような異方性導電材料や、NCP(Non-Conductive Paste)やNCF(Non-Conductive Film)などのような接合用の材料などを適宜選択してもちいることができる。また、超音波などにより、直接接合してもよい。
【0043】
このようにして、図1に示すように、OVD層2の上にアンテナ3を印刷することで、被着体からRFIDラベルを剥がそうとした際に、確実にアンテナ3まで断線、かつ後述する変形層の作用により大きく変形させることができ、RFIDラベル1の破壊や剥離を試みようとした履歴を残すことが可能となる。このとき、剥がれたOVD層を再度貼り付
けて、元の状態を再現することは不可能であり、また被着体に残ったICチップ、アンテナを綺麗に剥がすことも難しいため、RFIDラベルを使いまわすことはできない。
【0044】
(変形層10)
アンテナ3と接着層7の間に設けられている変形層10であるが、この層はラベルを被着体から剥がそうとすると伸び、その全面あるいは一部に変形が生じ、それに伴ってOVD層が変形するように設けられる層である。そのためこの変形層10は他の層と較べて十分に変形することが望まれ、破断伸度100%以上の柔軟性の高い高分子材料から形成されることが好ましい。一方で、剥がす際の力で切断されないような設計が必要であり、破断強度は他のそうの性能によるが、30MPa以上のものが好ましい。
【0045】
変形層10の材料としては柔軟性の高い高分子樹脂が挙げられ、具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム等のゴム系樹脂や、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等により形成される。しかし、変形層10の形成材料はこれらのものに限定されるものではなく、シート剥離時に加わる力により復元不可能な状態に変形する材料であれば、その他の公知の材料が使用可能である。また、この層は破断しにくくするために、その厚みを2〜50μmと厚くすることが好ましい。
【0046】
接着層7の材料としては、アクリル系の熱接着剤、ホットメルト樹脂(例えば、ポリアミド、ウレタン、EVA等)、あるいは粘着剤等などをもちいることができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。また、接着層7の表面には、容易に剥離できるような離型シート8が仮粘着されている。
離型シートとしては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層されているセパレータを用いることができる。
【0047】
(力の関係)
本発明によるRFIDラベルは、以上のような構成からなるが、各層間での強度の関係は以下のような条件になるように設計する必要がある。
(a)ラベル基材と剥離層部分の接着力<接着層と被着体の接着力
(b)接着層と被着体の接着力<各層間の接着力
(c)接着層と被着体の接着力<OVD層、隠蔽層、アンテナ、変形層、接着層の破断強度
(d)接着層を被着体から剥がす力=接着力によりOVD層、隠蔽層、アンテナ、変形層、接着層が変形すること
以上のようにRFIDラベルの構成を設計することにより、ラベルを被着体から剥がした際に図1(b)のように各層が変形して復元不可能な状態することが可能となる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0049】
<実施例1>
(ホログラム用のラベル基材の作製)
50μmの厚さのPETフィルムに、剥離層をグラビア法にて部分的に0.5μm塗布した。次に、OVD層2をグラビア法にて5μm塗工し、ロールエンボス法でOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚80nmのアルミニウム反射層を設けた。該ホログラム蒸着シートをアルカリエッチング法を用いて線幅10μmの格子状にパターニングし、ラベル基材にホログラムを形成した。
以下に各組成物の配合の割合を示す。また、「部」は、質量部を意味する。
〔剥離層〕
アクリル樹脂 ・・・15部
メチルエチルケトン ・・・60部
トルエン ・・・25部
〔OVD層〕
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 ・・・15部
ウレタン樹脂 ・・・10部
メチルエチルケトン ・・・50部
トルエン ・・・25部
(隠蔽層の形成)
被着体と同色のエポキシ樹脂ベースのインキをラベル基材のOVDであるホログラムの形成面側に、スクリーン印刷にて全面塗布し、乾燥を行って隠蔽層を設けた。
(RFIDタグの形成)
前述のラベル基材の隠蔽層側に、エボキシ樹脂に銀粉を分散させた銀ペーストをスクリーン印刷(350メッシュ)にて印刷し、70℃3分温風乾燥機にて乾燥を行って5μm厚みのアンテナを得た。このアンテナに0.4mm角のICチップの2つの端子をACP(異方導電性ペースト)により接合した。
(変形層・接着層の形成)
前述のラベル基材のアンテナ側に変形層15μm設けた。次に、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施した離型シート(厚さ112μm)にアクリル系の粘着剤を20μm塗布し、その上に変形層15μmを積層した。これを上記RFIDラベル基材に転写することで接着層7を設け、光学機能付きRFIDラベルAを作製した。
[変形層形成材料]
ウレタン樹脂( 破断伸度100%) …15部
メチルエチルケトン … 60部
トルエン … 20部
得られたRFIDラベルAは、ICリーダライタ装置で読み取りが可能であった。
【0050】
<実施例2>
(ホログラム用のラベル基材の作製)
50μmの厚さのPETフィルムに、接着層12をグラビア法にて部分的に0.5μm塗布した。次に、OVD層2をグラビア法にて5μm塗工し、ロールエンボス法でOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚80nmのアルミニウム反射層を設けた。該ホログラム蒸着シートをアルカリエッチング法を用いて線幅10μmの格子状にパターニングし、ラベル基材にホログラムを形成した。以下、実施例1と同様にして光学機能付きRFIDラベルBを作製した。
〔接着層〕
ポリエステル樹脂 ・・・15部
メチルエチルケトン ・・・60部
トルエン ・・・25部
〔OVD層〕
アクリル樹脂 ・・・15部
ウレタン樹脂 ・・・10部
メチルエチルケトン ・・・50部
トルエン ・・・25部
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0051】
<比較例1>
実施例1と同様に、RFIDラベルCを作製した。但し、剥離層はラベル基材上全面を覆うように設け、また変形層は設けなかった。
【0052】
<比較例2>
実施例1と同様に、RFIDラベルDを作製した。但し、変形層は設けなかった。
【0053】
このようにして作製したRFIDラベルA、BおよびC、Dを商品が内蔵されたボックスに貼り付けた。その後、このラベルを被着体から慎重に剥がした。
【0054】
なお接着層7として、以下の表に示したアクリル系接着材料を用い、接着層と被接着対象物との接着強度(単位、N)、ラベル基材と剥離OVD層との接着強度(単位、N)を測定した。なお、ラベル基材と剥離OVD層との接着強度は、実施例2の測定結果で、実施例1は、剥離層を部分的に形成したことから、さらに小さくなるので、省略した。
【0055】
【表1】

実施例1、2のRFIDラベルA、およびBでは、被着体から剥がした際に、図1(b)、および図3(b)のように、パターン状にホログラムのアルミ蒸着膜が剥離すると同時にアンテナも破壊して通信機能を不可能にすることができた。その際、変形層が伸びて戻る力が作用することにより、OVD画像が変形破壊するため、貼り替えによる再利用を目視で確認できた。また同時にアンテナも変形破壊するため、完全にRFIDラベルとしての非接触での情報の読み書きの機能を不可能にすることができた。またこれらOVD画像、およびアンテナの変形は復元不可能な状態であり、使い回すことも不可能であった。
【0056】
それに対し、比較例1のRFIDラベルCでは、被着体から剥がした際、ホログラムのアルミ蒸着膜・アンテナがラベル基材から全面綺麗に剥がれてしまった。またRFIDラベルとしての通信も可能であった。また、比較例2のRFIDラベルDでは、被着体から剥がした際は、パターン状にホログラムのアルミ蒸着膜・アンテナが破壊するが、再度貼り合せると元に戻ってしまい、目視での判定は困難であった。またアンテナも綺麗に元のように接触させることにより、通信を復活させることができた。特に、破断部分を銀ペーストで補強することで通信は可能になった。
【符号の説明】
【0057】
1 光学機能付きRFIDラベル
2 OVD層
3 アンテナ
4 ICチップ
6 ラベル基材
7 接着層
8 離型シート
9 隠蔽層
10 変形層
11 剥離層
12 接着層
13 被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で外部装置とデータの送受信を行う、少なくとも、ラベル基材上に、OVD層を配置し、次にRFID用のICチップと該ICチップと電気的に接続されたアンテナとを配置し、さらにRFIDラベルを被着体に貼り付けるための接着層を配置して成るRFIDラベルにおいて、
該OVD層が、導電性を示さない光学的な効果を呈する機能を有し、隠蔽層が該OVD層の上、および/または、該OVD層のないラベル基材の上、に配置され、かつ前記ICチップと前記アンテナとが、該隠蔽層の上に配置され、
接着層下には柔軟性を有する高分子材料からなる変形層を介在させてOVD層が積層され、
接着層の被接着対象物に対する接着強度がラベル基材とOVD層との層間接着強度より大きく、
かつ接着層の被接着体対象物に対する接着強度がOVD層、隠蔽層、アンテナ、変形層、接着層の破断強度の合計よりも小さくなるように設定されていることを特徴とするRFIDラベル。
【請求項2】
前記変形層は、破断伸度が100%以上の高分子材料からなることを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベル。
【請求項3】
ラベル基材とOVD層間に剥離層がパターン状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFIDラベル。
【請求項4】
ラベル基材とOVD層間に接着層がパターン状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFIDラベル。
【請求項5】
アンテナが導電性インキで設けられ、かつ前記アンテナが前記隠蔽層の上に直接配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のRFIDラベル。
【請求項6】
光学的な効果が、可視光領域で発現することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のRFIDラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−150538(P2012−150538A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6786(P2011−6786)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】