説明

RFIDリーダライタ装置及びその制御方法

【課題】リーダライタにおいて、通信に最適なチャネルを決定することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】隣接するリーダライタ2と同一のチャネルを利用してRFIDタグとの間で信号の送受を行うことが可能な送受信部6を有するリーダライタ2において、送受信処理部5は、タグとの間で送受する信号を処理する。キャリアセンス処理部9は、複数のチャネルの受信レベルを検知する。ランダム時間発生器8は、キャリアセンス処理部9で受信レベルの検知を行うタイミングを発生させる。制御部3は、ランダム時間発生器8において発生させたタイミングに応じて、送受信部6への接続を送受信処理部5からキャリアセンス処理部9へと切り替えを行い、検知した受信レベルの中で、最も低い受信レベルのチャネルを使用するチャネルに設定する。送受信部6は、制御部3において設定したチャネルを用いて、送受信処理部5において処理される信号の送受を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)タグとの間で複数の送受信チャネルを利用可能なRFIDリーダライタ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、RFIDシステムにおいては、RFIDリーダライタ装置(以下、リーダライタと略記)が複数のチャネルをRFIDタグ(以下、タグと略記)との通信に利用可能な場合には、複数のチャネルの中から通信に適したチャネルを決定する処理が、広く一般的に行われている。リーダライタは、決定したチャネルを用いて通信を行うことにより、他のリーダライタとの間で干渉が生じることを防いでいる。
【0003】
従来におけるチャネルの決定方法としては、手動によりシステムにチャネルを設定する方法と、システムにおいて最適なチャネルを決定する方法とがある。
システムにおいてチャネルを決定する方法について、図11に示す従来のリーダライタの構成図を参照して説明する。従来技術におけるリーダライタ102は、タグとの通信を開始する前にテスト等を行って、システム内の各リーダライタ102に設定すべきチャネルを決定する。このとき、例えばリーダライタ102の上位装置であるサーバ101により、システム内の各リーダライタ102のチャネルを決定する。リーダライタ102は、サーバ102から通知されたチャネルを自装置内の使用チャネル保存部104に保存しておく。そして、リーダライタ102内の送受信処理部105は、タグとの信号の送受信に係わる処理を実行するときは、使用チャネル保存部104に保存したチャネルを使用して、信号の送受を行う。
【0004】
RFIDシステムにおいて使用するチャネルに関しては、読取り器間に干渉を与えないよう、使用周波数をチャネル数だけ分離して使う技術が存在する。例えば、読取り器が、タグに単側波帯域のコマンド信号を送信し、単側波帯域の周波数帯域をシフトさせて、タグから周波数帯域がシフトされた両側波帯域の応答信号を受信する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、システムにおいて、タグと通信する複数のタグリーダがそれぞれタグと通信するタイミングを制御するための信号を送信する同期装置を備える技術についても知られている(例えば、特許文献2)。これによれば、同期装置は、タグリーダより送信されるキャリアを受信すると、タグと同様のバックスキャッタ方式で同期要求信号を返信する。複数のタグリーダは、同期要求信号を検出すると、同期開始モードに移行して無変調キャリアを連続配信する。同期装置は、同期要求信号を返信した後、複数のタグリーダに制御開始用のトリガを与え、複数のタグリーダは、トリガが与えられると、タグと通信するための制御を開始する。このように、同期装置により、各タグリーダによるタグと通信するための制御のタイミングが重複しないように制御される技術が知られている。
【0006】
また、近年では、リーダライタが、隣接する他のリーダライタと同一のチャネルを利用してタグと通信する技術も実現されている。これに関して、例えば、リーダライタが、ミラーサブキャリア方式により変調されたタグからの応答信号の周波数における干渉信号の有無を判定し、干渉信号があると判定されると、送信部の搬送波の周波数を切り替える技術が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−151132号公報
【特許文献2】特開2009−021848号公報
【特許文献3】特開2010−021684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば手動でチャネルを決定する方法によれば、システムごとにRFIDの専門家がリーダライタの配置に応じて最も効率のよいチャネル配分を決定して、リーダライタごと、あるいはシステムに設定する必要がある。具体的には、距離の近い隣り合うリーダライタのチャネルはなるべく離れるよう設定する必要がある。このため、システムごとにRFIDの専門家がチャネル設定に関与する必要があった。また、リーダライタの配置や周囲の状況が変更された場合には、現場の周囲の状況等によりチャネルの再設定が必要となる等の欠点があった。
【0009】
また、前述のシステムにおいてチャネルを決定する方法によれば、例えば特許文献2に記載されている技術のように、複数のリーダライタ間で通信のタイミングをずらすために、他の装置をシステムに設ける必要があった。
【0010】
本発明は、RFIDリーダライタ装置が、隣接する他のRFIDリーダライタ装置と同一のチャネルを利用して通信を可能な場合に、RFIDリーダライタ装置において、通信に最適なチャネルを決定することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、複数のチャネルのうち、隣接するRFIDリーダライタ装置と同一のチャネルを利用してRFIDタグとの間で信号の送受を行うことが可能な送受信部を有するRFIDシステムにおけるRFIDリーダライタ装置であって、前記RFIDタグとの間で送受する信号を処理する送受信処理部と、前記複数のチャネルの受信レベルを検知するキャリアセンス処理部と、前記キャリアセンス処理部で前記受信レベルの検知を行うタイミングを発生させるキャリアセンス開始タイミング発生部と、前記キャリアセンス開始タイミング発生部において発生させたタイミングに応じて、前記送受信部への接続を前記送受信処理部から前記キャリアセンス処理部へと切り替えを行い、前記キャリアセンス処理部が検知した受信レベルの中で、最も低い受信レベルのチャネルを使用するチャネルに設定する制御部と、を備え、前記送受信部は、前記制御部において設定したチャネルを用いて、前記送受信処理部において処理される信号の送受を行う。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、複数のチャネルのうち、隣接するRFIDリーダライタ装置と同一のチャネルを利用してRFIDタグとの間で信号の送受を行うことが可能な送受信部を有するRFIDシステムにおけるRFIDリーダライタ装置の制御方法であって、前記複数のチャネルの受信レベルの検知を行うタイミングを発生させ、前記発生させたタイミングに応じて、前記送受信部への接続を、前記RFIDタグとの間で送受する信号を処理する送受信処理部から前記複数のチャネルの受信レベルの検知を行うキャリアセンス処理部へと切り替えを行い、前記検知した受信レベルの中で、最も低い受信レベルのチャネルを使用するチャネルに設定し、前記設定したチャネルを用いて、前記RFIDタグとの間で送受する信号の送受を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、RFIDリーダライタ装置が、隣接する他のRFIDリーダライタ装置と同一のチャネルを利用して通信を可能な場合に、RFIDリーダライタ装置において、通信に最適なチャネルを決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】RFIDシステムの構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るリーダライタの構成図である。
【図3】チャネルの組み合わせについて説明する図である。
【図4】第1の実施形態に係るリーダライタのキャリアセンスタイミングを説明する図である。
【図5】第1の実施形態に係るリーダライタのチャネルの遷移を説明する図である。
【図6】第1の実施形態に係るリーダライタの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態に係るリーダライタの構成図である。
【図8】キャリアセンスタイミング発生器の構成図である。
【図9】第2の実施形態に係るリーダライタのキャリアセンスタイミングを説明する図である。
【図10】第2の実施形態に係るリーダライタの制御部の動作を示すフローチャートである。
【図11】従来におけるリーダライタの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係るリーダライタを含むRFIDシステムの構成例を示す図である。
【0016】
リーダライタ2は、アンテナ7を備え、アンテナ7を介して、タグ10に向けて信号を送出し、また、これに対するタグ10からの応答信号を受信することで、タグ10への情報の書き込みや、タグ10からの情報の読み出しを行う。
【0017】
サーバ1は、リーダライタ2の上位装置であり、RFIDシステム100において必要な情報の管理等を行う。タグ10は、メモリに情報を保持しており、リーダライタ2から受信した信号に応じてメモリに保持する情報の更新を行う、保持する情報を応答信号に含めて送信する等の処理を実行する。実施例では、タグ10は、UHF(Ultra-High Frequency)帯のRFIDタグである。
【0018】
リーダライタ2は、RFIDシステム100内に1台あるいは複数台が設置される。以下においては、本実施形態に係るリーダライタ2が、他のリーダライタ2との間で干渉が生じないようにチャネルを決定する方法について説明するために、図1においては、RFIDシステム100が3台のリーダライタ2を備える構成を例示する。
【0019】
3台のリーダライタ2を、それぞれリーダライタ2A、2B、2Cとする。各リーダライタ2A、2B、2Cの電波の出力範囲11A、11B、11C内にあるタグ10を、それぞれ10A、10B、10Cとする。以下の説明では、3台のリーダライタ2及び電波出力範囲11並びにタグ10を区別する必要がある場合には、A、B、Cの符号を付して記載する。それぞれを区別する必要がない場合はこれらの符合については省略し、「リーダライタ2」等のように表現する。
【0020】
図1においては、説明の簡単のため、3台のリーダライタ2A〜2Cが直線状に配置される構成を示す。すなわち、リーダライタ2Aに隣接するリーダライタ2は、リーダライタ2Bであり、リーダライタ2Bに隣接するリーダライタ2は、リーダライタ2A及びリーダライタ2C、リーダライタ2Cに隣接するリーダライタ2は、リーダライタ2Bとする。
【0021】
以下の説明では、図1のリーダライタ2A〜2Cは、各々2つのチャネルを利用可能であり、隣接するリーダライタ2と同一のチャネルを用いてもタグ10との信号の送受が可能であることを前提としている。実施例では、RFIDシステム100においてミラーサブキャリア方式を採用することにより、これを実現している。
【0022】
図2は、本実施形態に係るリーダライタ2の構成図である。図2に示すリーダライタ2は、制御部3、アンテナ7、使用チャネル保存部4、送受信処理部5、送受信部6、キャリアセンス処理部9及びランダム時間発生器8を有する。図2においては、本実施形態に係るチャネルの決定方法に係わる構成のみを示す。
【0023】
送受信部6は、アンテナ7を介して送受信処理部5及びキャリアセンス処理部9から受け取った信号を送出するとともに、アンテナ7を介してタグ10からの応答信号を受信する。
【0024】
送受信処理部5は、タグ10との信号の送受に係わる処理を実行する。具体的には、送信する信号の生成や、受信した応答信号の解析等の処理を行う。
使用チャネル保存部4は、送受信部6においてタグ10との信号の送受に使用するチャネルを保存する。
【0025】
キャリアセンス処理部9は、キャリアセンスを実行する。具体的には、キャリアセンス処理部9は、タグ10との信号の送受に係わる処理を実行する前に、リーダライタ2が利用可能なチャネルの受信レベルを検出する。例えば、図1においては、3台のリーダライタ2A〜2Cが直線状に配置される構成例を示しているが、実際は、キャリアセンスにより、リーダライタ2間の距離が最近接のリーダライタ2との間でチャネルが被らないよう制御を行っている。
【0026】
ランダム時間発生器8は、キャリアセンス処理部9において受信レベルの検知を行うタイミングを発生させる。具体的には、ランダム時間発生器8は、タグ10との間で信号を送受する期間であることを示す「ランダム時間」を発生させる。キャリアセンス処理部9は、ランダム時間が経過すると、キャリアセンスを開始する。キャリアセンスが行われない期間を所定の範囲内に納めるため、ランダム時間は、所定の時間内で発生させる。
【0027】
制御部3は、リーダライタ2の各部を制御して、タグ10との信号の送受に使用するチャネルを決定する。
以下に、本実施形態に係るリーダライタ2が、キャリアセンスにより、タグ10と信号を送受するときに使用するチャネルを決定する方法について、具体的に説明する。
【0028】
図3は、チャネルの組み合わせについて説明する図である。上述のとおり、3台のリーダライタ2A〜2Cのそれぞれは、2つのチャネル(チャネル1及びチャネル2とする)を使用可能である。図3は、各リーダライタ2A〜2Cが2つのチャネルの中から使用するチャネルを決定した場合に取り得るチャネルのパターンを示す。図3中のリーダライタチャネルの「1」はチャネル1を、「2」はチャネル2を使用チャネルとして決定したことを表す。各チャネルパターンでのタグ10との送受信効率が最良となるパターンを「○」、中程度の送受信効率となるパターンを「△」、送受信効率が最も低いパターンを「×」で表す。
【0029】
図3に示すとおり、チャネルパターンは8とおりである。このうち、タグ10との信号の送受信効率が最良となるパターンは、隣接するリーダライタ2と同じチャネルを使用しないパターンであり、パターン3とパターン6とがこれに相当する。各リーダライタ2において隣接するリーダライタ2と異なるチャネルが設定されている場合には、送受信効率がおよそ同程度(○)であると仮定することができ、以下においてはこれらのパターンを「チャネルの安定状態」と表す。
【0030】
また、パターン2、パターン4、パターン5及びパターン7は、図1の構成の3台のリーダライタ2A〜2Cのうち、リーダライタ2Bが隣接する2台のリーダライタ2A、2Cのうちいずれか一方とは異なるチャネルを選択しているが、他方とは同一のチャネルを選択している場合である。このため、これらの4つのチャネルパターンについては、送受信効率はおよそ同程度(△)としている。
【0031】
同様に、パターン1及びパターン8は、3台のリーダライタ2A〜2Cの全てが同一のチャネルを選択している。このため、これら2つのチャネルパターンについては、送受信効率はおよそ同程度(×)としている。
【0032】
本実施形態に係るリーダライタ2によれば、図2のランダム時間発生器8が発生させたランダム時間を計数し、ランダム時間が経過すると、送受信処理部5による処理を停止させて、キャリアセンスを実行する。3台のリーダライタ2A〜2Cがそれぞれ自装置のランダム時間発生器8が発生させたランダム時間が経過するごとにキャリアセンスを実行し、使用するチャネルを決定していくことで、RFIDシステム100全体での送受信効率が最良(図3の送受信効率が○)のパターン3またはパターン6へとパターンが切り替わり、安定状態となる。
【0033】
例えば、送受信効率が中程度・△のパターンのうち、パターン2では、互いに隣り合うリーダライタ2Aとリーダライタ2Bとが同一のチャネル1に設定されている。各リーダライタ2のチャネルの設定がパターン2である場合に、3台のリーダライタ2A〜2Cの中のいずれかがキャリアセンスを実行する。
【0034】
リーダライタ2Aがパターン2の状態でキャリアセンスを実行した場合には、リーダライタ2Aは、キャリアセンスにより、隣接するリーダライタ2Bのチャネル1とは異なるチャネル2を選択する。これにより、RFIDシステム100においては、チャネルパターンは図3のパターン2からパターン6へと移行し、チャネルの安定状態となる。
【0035】
リーダライタ2Bがパターン2の状態でキャリアセンスを実行した場合には、リーダライタ2Bは、キャリアセンスにより、2台の隣接するリーダライタ2A、2Cのうち距離が近い方のリーダライタ2と異なるチャネルを選択する。リーダライタ2Cにより近く、チャネル1を選択した場合は、パターン2が維持されることとなる。一方、リーダライタ2Aにより近く、チャネル2を選択した場合は、チャネルパターンはパターン2からパターン4へと移行する。ここで、パターン4の送受信効率は、パターン2と同程度であり、「△」のままである。
【0036】
リーダライタ2Cがパターン2の状態でキャリアセンスを実行した場合には、リーダライタ2Cは、隣接するリーダライタ2Bのチャネルとは異なるチャネルが設定されているため、チャネルは2のままで変化しない。
【0037】
パターン1及びパターン8のように、全てのリーダライタ2A〜2Cが同一のチャネルを設定している場合には、最初にキャリアセンスを実行するリーダライタ2が必ず他の2台のリーダライタ2と異なるチャネルを設定する。このため、実際には、パターン1及びパターン8の送受信効率が低い(図3の送受信効率が×の)パターンに設定されることはない。また、パターン3やパターン6のように、チャネルが安定状態にある場合は、他のパターンへと移行することはない。そこで、送受信効率が中程度のキャリアパターンが設定されている場合について考えればよい。
【0038】
図4は、本実施形態に係るリーダライタ2A〜2Cのキャリアセンスタイミングを説明する図である。
前述のとおり、リーダライタ2A〜2Cは、それぞれ自装置のランダム時間発生器8で発生させたランダム時間が経過すると、キャリアセンスを実行する。例えば、キャリアセンスの所要時間は、通常は、5ミリ秒程度である。ランダム時間としては、キャリアセンスの所要時間に対して十分に長い時間を取るようにランダム時間発生器8を調整する。例えば、ランダム時間の最小値を200ミリ秒とする。これは、リーダライタ2がタグ10との間で信号を送受信するために必要な時間から設定している。このように、ランダム時間発生器8を調整して、ランダム時間に1分程度が設定されるようにすることで、RFIDシステム100内のリーダライタ2A〜2Cの間で、キャリアセンス実行タイミングが重複することを回避している。
【0039】
リーダライタ2A〜2Cは、ランダム時間の経過後にキャリアセンスを実行する。キャリアセンスが完了すると、再度発生させたランダム時間の経過後にキャリアセンスを実行し、以降はこれを繰り返す。
【0040】
図5は、本実施形態に係るリーダライタ2A〜2Cのチャネルの遷移を説明する図である。図5においては、チャネルの初期値は、図3に示す8パターンのうち、送受信効率が中程度(図3においては△)のパターン7である場合を示す。以下、3台のリーダライタ2A乃至リーダライタ2Cのチャネルがそれぞれチャネル2、チャネル2及びチャネル1である場合、「チャネルパターン2−2−1」と表す。キャリアセンスは、図4に示す順序で実行される場合について説明する。
【0041】
図5(a)では、まず、1回目のキャリアセンスは、リーダライタ2Cが実行する。隣接するリーダライタ2Bと異なるチャネルが設定されているため、チャネルの切り替えは行わず、チャネルパターンは「2−2−1」のままで変化しない。
【0042】
2回目のキャリアセンスは、リーダライタ2Bが実行する。ここでは、隣接する2台のリーダライタ2A、2Cのうち、より距離が近いリーダライタ2Aと異なるチャネルを使用するチャネルに設定する場合を示す。これにより、チャネルパターンは「2−2−1」から「2−1−1」(パターン5)へと切り替わる。
【0043】
3回目のキャリアセンスは、リーダライタ2Aが実行する。リーダライタ2Aは、隣接するリーダライタ2Bと異なるチャネルが設定されているため、チャネルの切り替えは行わず、チャネルパターンは「2−1−1」のままで変化しない。
【0044】
4回目のキャリアセンスは、リーダライタ2Cが実行する。リーダライタ2Cは、隣接するリーダライタ2Bと異なるチャネルであるチャネル2へと使用するチャネルを切り替える。これにより、チャネルパターンは「2−1−2」(パターン6)へと切り替わる。
【0045】
5回目以降のキャリアセンスでは、各リーダライタ2は、隣接するリーダライタ2と異なるチャネルが設定されているため、4回目のキャリアセンスで設定されたパターン6が維持され、これにより、チャネルの安定状態のまま推移することとなる。
【0046】
図5(a)においては、リーダライタ2Bに最も近いリーダライタ2は、リーダライタ2Aである場合のチャネルパターンの遷移について示している。このため、2回目のキャリアセンスにおいては、リーダライタ2Bはリーダライタ2Aに設定されているチャネル1と異なるチャネル1を使用するチャネルとして決定している(図5(a)中の*1)。これに対し、図5(b)においては、リーダライタ2Bに最も近いリーダライタ2がリーダライタ2Cである場合のチャネルパターンの遷移を示す。
【0047】
図5(b)に示すように、リーダライタ2Cの方がよりリーダライタ2Bに近い場合は、2回目のキャリアセンスにおいて、リーダライタ2Bは、リーダライタ2Cのチャネルと異なるチャネルが設定されているため、チャネルの切り替えは行わず、チャネルパターンは「2−2−1」のままで変化しない(図5(b)の*2)。
【0048】
この場合は、3回目のキャリアセンスで、リーダライタ2Aが、隣接するリーダライタ2Bと異なるチャネルであるチャネル1へと使用するチャネルを切り替える。これにより、チャネルパターンは「1−2−1」(パターン3)へと切り替わる。4回目のキャリアセンス以降では、安定状態であるパターン3が維持される。
【0049】
このように、隣接するリーダライタ2がいずれであっても、同様に、最終的にはチャネルパターンは安定状態へと移行することとなる。
なお、もし仮にキャリアセンスを実行するタイミングが重複した場合には、あるリーダライタ2によりチャネルパターン切り替えても、他のリーダライタ2により元の状態に戻されてしまう、といった事態が起こり得る。しかし、先にも図4の説明においても延べたとおり、本実施形態に係るリーダライタ2では、キャリアセンス所要時間に対して、ランダム時間には、十分に長い時間を取ることにより、RFIDシステム100内の複数のリーダライタ2間でキャリアセンスを実行するタイミングが重複することを回避している。
【0050】
図6は、本実施形態に係るリーダライタ2の制御部3の動作を示すフローチャートである。リーダライタ2の制御部3は、リーダライタ2の電源がオフからオンに切り替わり、リーダライタ2が起動したことを契機として、図6に示す一連の処理を開始する。
【0051】
まず、ステップS1で、制御部3は、ランダム時間発生器8を起動し、ステップS2で、ランダム時間発生器8のタイミング信号の状態を読み出す。
ステップS3で、制御部3は、ランダム時間発生器8から読み出したタイミング信号の状態が、「ランダム時間経過済状態」であるか否かを判定する。ランダム時間発生器8において発生させたランダム時間が経過している場合には、読み出したタイミング信号の状態は、「ランダム時間経過済状態」であり、未経過である場合には、「ランダム時間未経過状態」であるとする。
【0052】
ステップS3の判定において、読み出したタイミング信号がランダム時間経過済状態である場合には、制御部3は、処理をステップS4へと移行させる。
ステップS4で、制御部3は、ランダム時間発生器8の動作を停止させる。具体的には、制御部3は、ランダム時間発生器8に対して動作を停止するよう指示する停止信号を送信する。これとともに、キャリアセンス処理部9を送受信部6へと接続させる。
【0053】
ステップS5で、制御部3は、キャリアセンス処理部9に対してキャリアセンスに係わる処理を実行させる。そして、ステップS6で、制御部3は、ステップS5のキャリアセンスの結果最も受信レベルの低いチャネルをリーダライタ2の使用チャネルとして決定する。最も受信レベルの低いチャネルを使用チャネルとして決定することにより干渉を回避する技術については、公知の技術を用いているため、ここでは、詳細な説明は省略する。決定した使用チャネルを使用チャネル保存部4に保存し、ステップS1に戻る。
【0054】
一方、ステップS3の判定において、読み出したタイミング信号がランダム時間未経過状態である場合には、制御部3は、処理をステップS7へと移行させる。
ステップS7で、制御部3は、タグ10との間で信号の送受信があるか否かを判定する。タグ10との間で信号の送受がない場合は、制御部3は、処理をステップS1へと戻し、タグ10との間で信号の送受がある場合は、処理をステップS8へと移行させる。
【0055】
ステップS8で、制御部3は、送受信部6への接続をキャリアセンス処理部9から送受信処理部5へと切り替え、使用チャネル保存部4に格納されているチャネルを使用チャネルに設定し、ステップS9に進む。
【0056】
ステップS9で、制御部3は、送受信処理部5に対してタグ10との間の送受信処理を実行させると、ステップS1に戻る。
なお、リーダライタ2は、ステップS2において読み出したタイミング信号状態よりランダム時間が経過したことを認識してからステップS5においてキャリアセンスを開始するまでの間に、ステップS3〜ステップS4の処理を実行する。これらの処理に要する時間は、ランダム時間やキャリアセンスに必要な時間と比べて無視できるほど短いため、前述の図4の説明においては、省略している。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るリーダライタ2によれば、RFIDシステム100内の複数のリーダライタ2のそれぞれが、自装置において発生させたタイミングでキャリアセンスを開始する。キャリアセンス開始タイミングが複数のリーダライタ2間で異なるため、キャリアセンスを実行する各リーダライタ2は、隣接する他のリーダライタ2と干渉が生じないように、受信レベルの低いチャネルを自装置が使用するチャネルに設定する。タグ10との間で信号の送受を行うときは、キャリアセンスにおいて決定したチャネルを使用する。これにより、サーバ1による制御や、RFIDシステム100内にタイミング制御のための他の装置を設けることなく、リーダライタ2のそれぞれが最適なチャネルを選択し、使用チャネルに設定することが可能となる。
【0058】
<第2の実施形態>
上記の実施形態においては、ランダム時間をキャリアセンス時間と比べて十分に長く取ることにより、RFIDシステム100内の各リーダライタ2のキャリアセンス開始タイミングが重複することを回避している。これに対し、本実施形態に係るリーダライタ2によれば、他のリーダライタ2との間で重複しないタイミングを計算により求めている点で異なる。
【0059】
図7は、本実施形態に係るリーダライタ2の構成図である。RFIDシステム100の構成は上記の実施形態と同様であり、図1に示すとおりとする。また、図7に示すリーダライタ2の構成のうち、上記の実施形態と同様の構成については同じ符号を付している。ここでは、図2に示す構成と異なる構成を中心に説明する。
【0060】
本実施形態に係るリーダライタ2は、図2のランダム時間発生器8の代わりに、キャリアセンスタイミング発生器12を有する点で異なる。
図8は、キャリアセンスタイミング発生器12の構成図である。図8に示すとおり、キャリアセンスタイミング発生器12は、カレンダ時計13、リーダライタ固有ID(identification)用設定スイッチ(以下設定スイッチと略記)14、キャリアセンス時間15及びキャリアセンスタイミング信号作成部(以下信号作成部と略記)16を有する。
【0061】
カレンダ時計13は、リーダライタ2の時刻情報を保有する。設定スイッチ14は、RFIDシステム100内のリーダライタ2ごとに割り当てられる固有値を設定する。キャリアセンス時間15は、RFIDシステム100内のリーダライタ2間で共通の所定の時間を保有する。当該所定の時間は、キャリアセンス処理部9においてキャリアセンスを実行するための時間であり、以下「キャリアセンス時間」とする。
【0062】
信号作成部16は、カレンダ時計13から取得する時刻情報、設定スイッチ14に設定されている固有値及びキャリアセンス時間15が保有するキャリアセンス時間を用いて、自装置においてキャリアセンスを開始するタイミングを示すタイミング信号を発生させる。
【0063】
具体的には、以下の式により、キャリアセンスを実行するタイミング(時刻)を決定する。以下の(1)式において、aは、所定の時間間隔ごとにカレンダ時計13から取得する時刻情報を表す。
キャリアセンス開始タイミング(時刻)=a+(キャリアセンス時間×固有値)・・・(1)
(1)式によりキャリアセンスを開始する時刻を算出し、算出した時刻になると、信号作成部16は、キャリアセンスの開始タイミングであることを示すタイミング信号を発生させる。キャリアセンス処理部9は、信号作成部16が発生させた当該タイミング信号を検知すると、キャリアセンスを開始する。
【0064】
図9は、本実施形態に係るリーダライタ2A〜2Cのキャリアセンスタイミングを説明する図である。図9中の「a」は、(1)式のaに相当する。
ここでは、リーダライタ2A、2B、2Cに割り当てられた上記固有値は、それぞれ1、2、3であるとする。また、カレンダ時計13から時刻情報を取得する時間間隔は、1分であり、図9においては12時0分0秒、12時1分0秒及び12時2分0秒に時刻aを取得した場合のキャリアセンスタイミングを示す。
【0065】
この場合は、リーダライタ2Aのキャリアセンスタイミング(時刻)bは、時刻aからキャリアセンス時間×固有値(=1)分の時間が経過した時刻となる。同様に、リーダライタ2Bのキャリアセンスタイミング(時刻)c及びリーダライタ2Cのキャリアセンスタイミング(時刻)dについても同様に、リーダライタ2B、2Cそれぞれの固有値2及び3を(1)式に代入することにより算出される。
【0066】
各リーダライタ2のキャリアセンス時刻は、リーダライタ2ごとに異なる固有値を用いて算出しているため、リーダライタ2同士で重複することがない。これにより、より確実にチャネルを安定状態へと遷移させることが可能となる。
【0067】
図10は、本実施形態に係るリーダライタ2の制御部3の動作を示すフローチャートである。ここでは、上記の実施形態に係るリーダライタの制御部の動作と異なる動作を中心に説明する。リーダライタ2の制御部3は、リーダライタ2の電源がオフからオンに切り替わり、リーダライタ2が起動したことを契機として、図10に示す一連の処理を開始する。
【0068】
まず、ステップS11で、制御部3は、キャリアセンスタイミング発生器12を起動し、ステップS12で、キャリアセンスタイミング発生器12のタイミング信号状態を読み出す。
【0069】
ステップS13で、制御部3は、読み出したタイミング信号の状態が、「タイミング信号発生状態」であるか否かを判定する。キャリアセンスタイミング発生器12からタイミング信号が出力されている場合は、「タイミング信号発生状態」であり、当該信号が出力されていない場合は、「タイミング信号未発生状態」であるとする。
【0070】
ステップS13の判定において、タイミング信号発生状態である場合には、制御部3は、処理をステップS14へと移行させる。
ステップS14で、制御部4は、キャリアセンス処理部9を送受信部6へと接続させて、キャリアセンス処理部9に対してキャリアセンスに係わる処理を実行させる。そして、ステップS15で、制御部3は、ステップS14のキャリアセンスの結果最も受信レベルの低いチャネルをリーダライタ2の使用チャネルとして決定する。決定した使用チャネルを使用チャネル保存部4に保存し、ステップS12に戻る。
【0071】
一方、ステップS13の判定において、タイミング信号未発生状態である場合には、制御部3は、処理をステップS16へと移行させる。
ステップS16〜ステップS18の処理については、図6のステップS7〜ステップS9の処理とそれぞれ同様である。
【0072】
なお、上記の説明においては、各リーダライタ2に固有の値(ID)を割り当てる構成について記載している。サーバ1と各リーダライタ2が、例えばUSB(Universal Serial Bus)等で互いに接続されている場合には、上記のとおり、設定スイッチ14で固有の値を割り当てて置く必要があるが、本実施形態に係るリーダライタ2は、これに限定されるものではない。例えば、サーバ1と各リーダライタ2がLAN(Local Area Network)で接続される構成であれば、設定スイッチ14を設けず、MACアドレスを利用することも可能である。MACアドレスを利用する場合であっても同様の効果を得る。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るリーダライタ2によれば、RFIDシステム100内のリーダライタ2ごとに固有の値(ID)等を用いて、各リーダライタ2が自装置においてキャリアセンスを実行するタイミングを決定している。確実に異なるタイミングで各リーダライタ2においてキャリアセンスを実行することとなるため、チャネルパターンが元の状態に戻ることを防止して、確実にチャネルを安定状態へと遷移させることが可能となる。
【0074】
なお、本発明は、上述の実施の形態に例示した構成に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 サーバ
2 リーダライタ
3 制御部
4 使用チャネル保存部
5 送受信処理部
6 送受信部
7 アンテナ
8 ランダム時間発生器
9 キャリアセンス処理部
10 タグ
11 リーダライタの電波出力範囲
12 キャリアセンスタイミング発生器
13 カレンダ時計
14 リーダライタ固有ID用設定スイッチ(設定スイッチ)
15 キャリアセンス時間
16 キャリアセンスタイミング信号作成部(信号作成部)
100 RFIDシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルのうち、隣接するRFIDリーダライタ装置と同一のチャネルを利用してRFIDタグとの間で信号の送受を行うことが可能な送受信部を有するRFIDシステムにおけるRFIDリーダライタ装置であって、
前記RFIDタグとの間で送受する信号を処理する送受信処理部と、
前記複数のチャネルの受信レベルを検知するキャリアセンス処理部と、
前記キャリアセンス処理部で前記受信レベルの検知を行うタイミングを発生させるキャリアセンス開始タイミング発生部と、
前記キャリアセンス開始タイミング発生部において発生させたタイミングに応じて、前記送受信部への接続を前記送受信処理部から前記キャリアセンス処理部へと切り替えを行い、前記キャリアセンス処理部が検知した受信レベルの中で、最も低い受信レベルのチャネルを使用するチャネルに設定する制御部と、
を備え、
前記送受信部は、前記制御部において設定したチャネルを用いて、前記送受信処理部において処理される信号の送受を行う
ことを特徴とするRFIDリーダライタ装置。
【請求項2】
前記キャリアセンス開始タイミング発生部は、所定の時間以内のランダムな時間を発生させるランダム時間発生器からなり、
前記制御部は、前記ランダムな時間が経過すると、前記送受信部への接続を前記送受信処理部から前記キャリアセンス処理部へと切り替える
ことを特徴とする請求項1記載のRFIDリーダライタ装置。
【請求項3】
前記キャリアセンス開始タイミング発生部は、前記RFIDリーダライタ装置の時刻情報を読み取り、該時刻情報と、RFIDリーダライタ装置ごとに割り当てられる固有値とを用いて、キャリアセンスタイミング信号を発生させ、
前記前記制御部は、前記キャリアセンスタイミング信号により、前記送受信部への接続を前記送受信処理部から前記キャリアセンス処理部へと切り替える
ことを特徴とする請求項1記載のRFIDリーダライタ装置。
【請求項4】
前記キャリアセンス開始タイミング発生部は、前記時刻情報を所定の時間ごとに読み取り、該所定の時間に、所定のキャリアセンス時間に前記固有値を積算した値を加算した値を求めて得られた時刻に、前記キャリアセンスタイミング信号を発生させる
ことを特徴とする請求項3記載のRFIDリーダライタ装置。
【請求項5】
複数のチャネルのうち、隣接するRFIDリーダライタ装置と同一のチャネルを利用してRFIDタグとの間で信号の送受を行うことが可能な送受信部を有するRFIDシステムにおけるRFIDリーダライタ装置の制御方法であって、
前記複数のチャネルの受信レベルの検知を行うタイミングを発生させ、
前記発生させたタイミングに応じて、前記送受信部への接続を、前記RFIDタグとの間で送受する信号を処理する送受信処理部から前記複数のチャネルの受信レベルの検知を行うキャリアセンス処理部へと切り替えを行い、
前記検知した受信レベルの中で、最も低い受信レベルのチャネルを使用するチャネルに設定し、
前記設定したチャネルを用いて、前記RFIDタグとの間で送受する信号の送受を行う
ことを特徴とするRFIDリーダライタ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208716(P2012−208716A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73535(P2011−73535)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】