RFID情報媒体、および同媒体を貼付された物品
【課題】読み取り装置(または読み書き装置)との適正な通信が可能で、かつ容易に小型化が可能なRFID情報媒体を提供すること。
【解決手段】このRFID情報媒体は、外部の読み取り装置と非接触でデータの送受信を行うものであって、絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方と、前記本体部に設けられた導電体とを備え、前記導電体は導電性材料の層を有する。前記導電性材料の層は、前記アンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられている。
【解決手段】このRFID情報媒体は、外部の読み取り装置と非接触でデータの送受信を行うものであって、絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方と、前記本体部に設けられた導電体とを備え、前記導電体は導電性材料の層を有する。前記導電性材料の層は、前記アンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の読み取り装置(または読み書き装置)と非接触でデータの送受信を行うことが可能なRFID情報媒体、および同媒体を貼付された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小売店やレンタル店での商品の管理において、ICチップとアンテナとを備えるRFID(Radio Frequency IDentification)タグが利用されている(例えば、下記の特許文献1参照)。例えば、RFIDタグを商品に取り付け、専用のデータ読み書き装置によって商品のデータを読み書きし、商品の入出庫管理、在庫管理、貸し出し管理等を行う。RFIDタグはICチップを備えているので、商品コードだけでなく、入荷日、担当者などの豊富な情報を商品といっしょに管理することができる。マイクロ波(現在は2.45GHzが利用されている)を用いた電波方式のRFIDタグは、静電結合や電磁誘導を用いたRFIDタグに比べて通信距離が1〜2mと長いことから、物品管理等、多方面で利用されている。
【0003】
また、RFIDタグが普及するにつれ、RFIDタグに光学変化デバイス(OVD: Optical Variable Device)を取り付けることが期待されている。OVDとは、見る角度によって、色が変化する/立体画像が見える/あるいは画像が変化する、等々の特殊な光学効果を呈するデバイスの総称である。例えば、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できるホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより、見る角度によって色の変化を生じる多層薄膜の総称である。これらOVDは、見る者に立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるなど優れた装飾効果を有しているので、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。さらに、このOVDの製造には高度な技術を要することから、偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、または、証明書類、等にも設けられている。
【0004】
OVDをRFIDタグに取り付けると、下記のようなメリットがある。例えば、商品等にそれぞれ別個に取り付けられていたRFIDタグおよびOVDを、RFIDタグにOVDを取り付けることによって一体化すると、RFIDタグおよびOVDを商品等に迅速かつ容易に取り付けることができる。また、RFIDタグにOVDを取り付けることにより、商品等の意匠性や高級感を高めたり、商品等の偽造を防止したりすることができる。偽造防止効果については、RFIDタグにOVDを取り付けることにより、読み取り装置(または読み書き装置)による読み取り、および目視の双方からRFIDタグの真偽判定を行うことが可能となる。また、読み取り装置(または読み書き装置)がない場合でも、目視によってRFIDタグの真偽判定を行うことが可能となる。OVDを取り付けられたRFIDタグを、さらに高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVDに機械読み取り可能な光学情報を記録しておき、RFIDタグのICチップ内の情報と関連付けることによって、OVDもしくはICチップのどちらかが偽造された場合でも、真偽判定を行うことが可能である。
上記のように、OVDを取り付けられたRFIDタグは、様々なアプリケーションへの展開が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−78725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、RFIDタグにOVDを取り付けると、読み取り装置(または読み書き装置)とRFIDタグとの通信に不具合が生じるおそれがある。具体的には、OVDに多層薄膜を用い、薄膜材料が導電性を有している場合、または、OVDにホログラムや回折格子を用い、その光学効果を持たせる目的でアルミ蒸着層等を有している場合などである。上記のOVDは導電性を有しているため、OVDとRFIDタグのアンテナとが近い場合、OVDが読み取り装置(または読み書き装置)からの電波を遮蔽してしまったり、OVDがRFIDタグのアンテナに影響して共振周波数がずれてしまったりする。そのため、読み取り装置(または読み書き装置)とRFIDタグとの通信距離が短くなってしまい、場合によっては両者の間で通信できなくなってしまうこともある。
その対策として、例えば、OVDをRFIDタグのアンテナから離して配置してもよい。しかしながら、アンテナからOVDを離すと、RFIDタグ全体が大きくなってしまい、小型のRFIDタグを作ることが難しい。また、OVDの大きさや意匠等も制限を受けてしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、読み取り装置(または読み書き装置)との適正な通信が可能で、かつ容易に小型化が可能なRFID情報媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明のRFID情報媒体は、外部の読み取り装置と非接触でデータ通信を行うRFID情報媒体であって、絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナ用部材と、前記本体部に設けられた導電体と、目視する見方によって色彩や画像が変化する光学変化デバイスと、を備え、前記導電体は導電性材料の層を有し、該導電性材料の層が、前記アンテナ用部材に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられており、前記光学変化デバイスが、導電性の反射層または導電性の透明層を備え、前記光学変化デバイスの前記反射層または前記透明層が、前記導電性材料の層と兼用される。
ここで、「導電性材料の層が、前記アンテナに部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられている」とは、アンテナのうちICチップがある部分をほぼ境にして、導電体の導電性材料の層が、アンテナの片側では適当な1乃至数ヶ所に重ねられる状態を指す。導電性材料の層が重ねられるのは、アンテナの片側のほぼ全面でも良い。そして、導電性材料の層がアンテナの両側ともに重ねられる場合、一方の導電性材料の層と他方の導電性材料の層とが繋がらないように、双方の層を形成する必要がある。アンテナの片側のほぼ全面と反対側のほぼ全面とにそれぞれ導電性材料の層を形成する場合には、アンテナの片側に形成される層を、反対側に形成される層から僅かでも離間させる(最低でも約50μm程度以上の間隔は必要である)。
【0009】
前記アンテナは、前記導電体と、容量結合によって前記厚さ方向に電気的に接続されてもよい。本発明のRFID情報媒体においては、アンテナの一部と導電体とが、本体部の厚さ方向に対向して配される。そのため、アンテナが導電体に容量結合によって電気的に接続される。両者を容量結合させるためには、導電体の導電性材料の層とアンテナとの重なりでコンデンサが形成されるように、両者の間に適当な間隔を確保する絶縁性の層を設ける。これにより、アンテナと導電体とをひとつのアンテナとして、簡単かつ確実に機能させることができる。
【0010】
本発明のRFID情報媒体によれば、光学変化デバイスは、見る者に立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるなど優れた装飾効果を発揮する。目視する見方の代表例には、目視する角度によって色彩や画像が変化する場合、偏光板(好ましい例として円偏光板がある)を介して目視することによって色彩や画像が変化する場合などがある。前者の代表例では、ホログラム、回折格子、多層薄膜、パールインキ、コレステリックインキ、またはOVI(Optical Variable Ink)を用いた場
合が挙げられる。後者の代表例では、上記コレステリックインキを用いた場合が挙げられる。これは円偏光の回転方向の向きによって変化の仕方が違う。
【0011】
なお、「アンテナ」とは、それ自身で単独でアンテナとして機能するものをいい、「アンテナ用部材」とは、それ自身で単独ではアンテナとして機能しないものをいう。
【0012】
また、アンテナを導電体に導電性部材を介して直に接続してもよいし、アンテナ用部材を導電体に導電性部材を介して直に接続してもよい。
【0013】
さらに、RFID情報媒体のICチップが、データの読み取りが可能なだけでなくデータの書き込みも可能な場合には、読み書き装置によってデータを書き込むことも可能である。
【0014】
本発明のRFID情報媒体において、前記アンテナ用部材は、単独ではアンテナ機能を有しておらず、前記導電体との共働によって生み出されるアンテナ機能を有していてもよい。
本発明のRFID情報媒体によれば、アンテナ用部材と導電体とが共働してひとつのアンテナとして機能しており、導電体が除かれると、アンテナ用部材だけとなってアンテナとしては機能しなくなる。導電体を故意に取り外されると、RFID情報媒体は通信ができなくなる。これにより、セキュリティを向上させることができる。
【0015】
本発明のRFID情報媒体において、前記アンテナ用部材は、ダイポールアンテナ用として長尺状に形成され、前記アンテナ用部材の長さが、前記データ通信を行う搬送波の波長に対して通信可能な長さよりも短く設定され、重ねられた前記アンテナ用部材と前記導電体とを組み合わせた全体の長さが、通信可能な長さに設定されていてもよい。
本発明のRFID情報媒体によれば、アンテナ用部材と導電体とが共働してひとつのダイポールアンテナとして機能し、導電体を故意に取り外されると、RFID情報媒体は通信ができなくなる。これにより、セキュリティを向上させることができる。
【0016】
本発明のRFID情報媒体は、目視する見方によって色彩や画像が変化する光学変化デバイスをさらに備えていてもよい。さらに、前記光学変化デバイスは、導電性の反射層または導電性の透明層を備え、前記光学変化デバイスの前記反射層または前記透明層が、前記導電性材料の層と兼用されてもよい。
【0017】
本発明のRFID情報媒体において、本発明のRFID情報媒体は、前記データの送受信における通信方式が電波方式であってもよい。本発明のRFID情報媒体によれば、確実に通信を行うことができることに加え、静電結合や電磁誘導を用いたRFID情報媒体に比べて通信距離を延ばすことができる。電波方式の場合の代表的な周波数は、マイクロ波では2.45GHz、UHF帯では950MHzが挙げられる。
【0018】
本発明の物品は、上記RFID情報媒体を貼付されている。
本発明の物品において、前記RFID情報媒体は、前記物品に直に貼付されていてもよいし、前記物品を包装する包装物に貼付されていてもよい。
【0019】
本発明の物品によれば、物品の管理等が行い易くなることに加え、優れた装飾効果を発揮しつつ、物品の偽造を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アンテナに導電体を組み合わせたり、アンテナ用部材に導電体を組み合わせたりして、ひとつのアンテナとして機能させることができる。これにより、本体部に導電体を取り付けても、データ読み書き装置との間で適正に通信を行うことができる。
さらに、導電体をアンテナ(またはアンテナ用部材)から離して配置する必要性が無いので、RFID情報媒体を容易に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態を示す図であって、RFID情報媒体としてのRFIDタグを示す平面図である。
【図2】図2は、図1のRFIDを厚さ方向に破断した様子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態を示す図であって、RFID情報媒体としてのRFIDタグを示す平面図である。
【図4】図4は、図3のRFIDを厚さ方向に破断した様子を示す断面図である。
【図5】図5は、アンテナのカット前とカット後を比較して示す説明図である。
【図6】図6は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図7】図7は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図8】図8は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図9】図9は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図11】図11は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図12】図12は、本発明の第3の実施形態を示す図であって、RFIDタグを貼付された物品を示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明の物品の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態におけるRFID情報媒体について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、RFID情報媒体をRFIDタグに適用した例を示している。RFIDタグ1Aは、例えば、衣料メーカーのブランドタグとして利用される。
このRFIDタグ1Aは、板状に延びる本体部2を備えている。本体部2は、図2に示すように、ともに薄板状の第1基材7と第2基材8とを備えている。第1基材7および第2基材8の材料としては、絶縁性材料であれば特に限定されるものはなく、例えばPET、PVC、ABS、紙等が挙げられる。
【0023】
第1基材7の第2基材8に向く内面、および第2基材8の第1基材7に向く内面には、それぞれ接着層9が設けられている。接着層9の材料としては、アクリル系の熱接着剤、例えばポリアミド、ウレタン、EVA等のホットメルト樹脂、または粘着剤等が採用される。接着層9の材料が熱接着剤系であれば、加熱することによって接着層9が溶融し、後に接着層9が固化することによって第1基材7と第2基材8とが強固に接着される。
【0024】
本体部2には、ICインレット6が内蔵されている。すなわち、第1基材7と第2基材8とが、ICインレット6を介して接合されている。ICインレット6は不図示のシート状の支持体の上に設けられており、アンテナ11と、情報を記憶する記憶部を有するICチップ12とを備えている。ICチップ12は、アンテナ11を介して、外部の読み取り装置と非接触で通信することが可能である。本実施形態では、RFIDタグの面積を小さくし易いと云う理由から、アンテナ11が本体部2の長さ方向に延びるように配置されている。
【0025】
アンテナ11は、導電性を有し、外部に設置される不図示のリーダライタ装置(読み書き装置)に接続されたアンテナからの電波を受信する半波長ダイポールアンテナである。半波長ダイポールアンテナは、代表的な例としては、PET、ポリイミド、PVC等を材料とする支持体としてのシート状の基材上に形成された銅、アルミ等の金属箔を、エッチング処理により適当な形状にパターニングすることで形成したエッチングアンテナ、または、PET、紙等を材料とするシート状の基材上に銀、ニッケル、銅等の金属材料を含む導電性インキを印刷により適当な形状にパターニングした印刷アンテナである。
また、半波長ダイポールアンテナは、電波の指向特性はそれほど良くはないが、その長尺の形から、支持体となる前記シート状の基材上に形成された場合、シート1枚当たりのアンテナ数量が多いというメリットがあり、RFIDタグ用のICインレットとしては最も低コストに作ることができるアンテナのひとつである。
なお、アンテナ11の長さは、2.45GHzの搬送波の波長の1/2に設定されており、アンテナ11はそれ自身で単独でアンテナとして機能する。
【0026】
ICチップ12は、アンテナ11の長さ方向の中央に配置され、アンテナ11に接続されている。ICチップ12は、アンテナ11に、フリップチップ実装、ワイヤボンディング等によって電気的に接続されている。
【0027】
本体部2の表面(一方の主面)には、ブランド名、ロゴ、デザインイメージ等の情報表示4が印刷されている。また、本体部2の表面には、接着層10を介して光学変化デバイス(以下、OVDと称する)3が設けられている。
接着層10の材料としてはアクリル系の熱接着剤等が採用される。接着層10の材料が熱接着剤系であれば、加熱することによって接着層10が溶融し、後に接着層10が固化することによってOVD3が第2基材8の表面に強固に接着される。
【0028】
OVDには、反射層または透明層を有するものと、これらをいずれも持たないものとがある。反射層または透明層の材料に、例えば金属または金属化合物を採用した場合は、結果的にそれらの反射層または透明層が導電性をも呈することができる。
本発明のRFID情報媒体がOVDを備える場合、最も好適な態様は、OVDの反射層または透明層が、RFID情報媒体の導電性材料の層と「兼用される」構成である。これによると、RFID情報媒体が不正目的で分解される等した場合に、光学変化デバイスの光学効果が損なわれ易く、かつ正常な通信が不能になり易い。また、製造コストを低く抑えたり、生産性を高めたりすることも可能であるなど、本発明の効果が高いと云える。本発明のRFID情報媒体がOVDを備える場合で、次に好ましい態様は、OVDの反射層または透明層が、RFID情報媒体の導電性材料の層と「兼用されない」構成であるとか、OVDが反射層または透明層を持たない構成である。
【0029】
OVDの代表的な例としては、まずレリーフ型ホログラムや回折格子がある。これらはいずれもエンボス加工による生産が可能な為に大量複製に適する。また、本体内部に向かって干渉縞を記録する体積型ホログラム(一般に上記導電性の反射層や透明層は持たない)、屈折率が異なる複数の光学干渉薄膜を適宜重ねることでカラーシフト効果を得られる多層薄膜等がある。特殊なインキを採用した光学変化デバイス(OVD)において用いられるインクとしては、パール顔料を使用したパールインキ、コレステリック液晶による顔料を使用したコレステリックインキ、或る波長域の電磁波(例えば紫外線、赤外線など)を良く吸収する材料を使用したインキ、または、或る波長域の電磁波(例えば紫外線、赤外線、可視光線など)の照射によって励起され或る波長域の電磁波(例えば可視光線、赤外線、紫外線など)の蛍光を発する材料を使用したインキ、などが挙げられる。なお、これらのインキには、上記導電性の反射層や透明層は一般に必須ではない。
【0030】
レリーフ型ホログラムは、一般的に光学的な撮影方法によって微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスターホログラムを作製し、これから電気メッキ法によって凹凸パターンを複製したニッケル製のプレス版を複製し、さらにそのプレス版をホログラム形成層上に加熱しながら押圧するという周知の方法により大量に複製される。
一方、体積型ホログラムは、レリーフ型ホログラムとは異なり、感光性樹脂などの記録材を用いて、内部に向かって干渉縞を記録する。このタイプのホログラムとしては、リップマンホログラムと呼ばれるものが一般に使用されている。
【0031】
また、ホログラム画像とは異なり、微小なエリアに複数種類の単純な回折格子を配置して画素とし、画像を表現するグレーティングイメージ、ピクセルグラムといった回折格子による画像もまた、レリーフ型ホログラムと同様の方法で大量に複製される。一方、ホログラムや回折格子とは製造手法が異なり、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層し、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜方式のデバイスもOVDの一例である。上記のOVDの中でも、量産性やコストを考慮する場合には、レリーフ型ホログラム(回折格子)や多層薄膜方式のデバイスを採用するのが好ましい。レリーフ型ホログラム(回折格子)は、その光学効果を持たせる目的で光を反射させる反射層を設けておく必要から、金属薄膜(例えばアルミ蒸着層等)を有していたり、観察する角度によって反射性を現わす透明反射膜(微細凹凸の層よりも屈折率が高い透明な薄膜)を有していたりする。後者の透明反射膜を本発明に適用する場合は、その透明導電膜が導電性をも有することが好ましい。また、多層薄膜方式のデバイスを本発明に適用する場合も、適当な層の薄膜に導電性を有する材料を使用する。
【0032】
本発明では、OVD3の導電性材料の層がアンテナの一部として機能する。OVD3の全面に導電性材料の層が存在すれば、OVD3の形状がそのままアンテナの形状の一部となる。
アンテナパターンの設計に関しては、アンテナ利得やアンテナ効率を高めることを優先してOVD3の形が決定される場合と、アンテナ利得やアンテナ効率を多少犠牲にしても意匠性を高めることを優先してOVD3の形が決定される場合とがある。また、OVD3の一部が導電性で、他の部分が非導電性であれば、非導電性の部分の形状を自由な設計することが可能である。
【0033】
さらに、OVD3は、アンテナ11の一部に第2基材8を介して本体部2の厚さ方向に重ねられている。すなわち、本体部2を正面から見たとき、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域とOVD3とが重ねられている。換言すると、OVD3が、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域に、絶縁材料からなる第2基材8を介して、本体部2の厚さ方向に向き合うように配置されている。
【0034】
次に、このように構成された本実施形態におけるRFIDタグ1Aの作用について説明する。
まず、2.45GHzの電波を放射するリーダライタ装置にRFIDタグ1Aを近づける。すると、アンテナ11はリーダライタ装置からの電波を受信して、ICチップ12に電力を供給する。これにより、ICチップ12が駆動され、種々の処理が行われる。例えば、ICチップ12の記憶部に記憶された各種情報が読み出され、その各種情報が搬送波に載せられてアンテナ11を介して放射される。このアンテナ11から放射された電波をリーダライタ装置が受信して、ICチップ12の各種情報が読み出される。
【0035】
ここで、本実施形態におけるRFIDタグ1Aにおいては、図2に示すように、OVD3が、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域に、絶縁材料からなる第2基材8を介して、本体部2の厚さ方向に向き合うように配置されていることから、アンテナ11とOVD3とが容量結合されて電気的に接続される。詳述すると、図2において二点鎖線の円で囲まれた領域が、OVD3とアンテナ11との容量結合部5となり、この容量結合部5が、電気回路的にコンデンサとなってOVD3とアンテナ11とが電気的に接続される。容量結合部5の電気的な結合容量は、通信周波数が2.45GHzの場合、最低でも1PF前後の容量を有していれば高周波的には導通が得られる。
【0036】
これにより、アンテナ11とOVD3とが共働して一つのアンテナ(以下、「結合アンテナ」という)として機能する。これらアンテナ11とOVD3とを備える結合アンテナを介して、外部のリーダライタ装置とRFIDタグ1Aとの間で、非接触でデータの送受信が行われる。
なお、アンテナ11とOVD3とが容量結合した状態においては、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域は、それほど通信に寄与することはなく、OVD3が支配的となって、主としてOVD3がアンテナ機能を担うことになる。
【0037】
本実施形態のRFIDタグ1Aによれば、アンテナ11の一部とOVD3とを重ねることにより、これらアンテナ11とOVD3とを一つのアンテナとして機能させることができる。これにより、本体部2にOVD3を取り付けても、リーダライタ装置と適正に通信を行うことができる。また、RFIDタグ1Aを容易に小型化することができる。さらに、OVD3の大きさやデザイン等の制限を少なくすることもできる。
本発明では、OVD3の導電性材料の層のパターンとアンテナ11のパターンとを組み合わせて構成された全体のアンテナのパターンの長さ、つまり、OVD3の導電性材料の層とアンテナ11とを組み合わせた全体の長さは、アンテナの性能の観点から、本来の半波長ダイポールアンテナの長さと同じかまたは同程度であることが好ましい。また、全体のアンテナの幅(OVD3の導電性材料の層のパターンの幅)は、RFIDタグ1Aの大きさが許す範囲であれば広くてもよい。
OVD3(の導電性材料の層のパターン)の配置は、本実施形態で説明した以外にも、例えば、複数のOVD3(の導電性材料の層のパターン)が本来のアンテナ11の複数箇所にそれぞれ重なるようにしてもよいし、OVD3(の導電性材料の層のパターン)を本体部2の表裏両面に設けてもよい。
【0038】
RFIDタグ1Aによれば、リーダライタ装置による読み取り、および目視の双方からRFIDタグ1Aの真偽判定を行うことが可能である。例えば、リーダライタ装置がない場合でも、OVD3を目視してRFIDタグ1Aの真偽を判定することができる。
高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVD3に機械読み取り可能な光学情報を記録しておき、ICチップ12内の情報と関連付けることによって、OVD3またはICチップ12のどちらかが偽造された際に真偽判定を行うこともできる。OVD3に記録される光学情報を暗号化しておくと、さらに偽造防止性をアップさせることもできる。
【0039】
アンテナ11の一部とOVD3とが容量結合によって本体部2の厚さ方向に電気的に接続されることから、アンテナ11とOVD3とを簡単かつ確実にひとつのアンテナとして機能させることができる。
電波方式の通信を行うので、データの送受信を確実に行うことに加えて、通信距離をのばすことができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について、図3および図4を参照して説明する。
図3および図4において、図1および図2に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。本実施形態の基本的な構成は上記第1の実施形態と同一なので、以下では上記第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0041】
本実施形態において、ICインレット6aは、長尺状に形成されたアンテナ用部材11aを備えている。ICインレット6aは、アンテナ11でなくアンテナ用部材11aを備える点で前記ICインレット6と相違する。
アンテナ用部材11aの長さは、2.45GHzの搬送波の波長λに対して通信可能な長さよりも短い。ここで、通信可能な長さとは、搬送波の波長λに対して例えば1/2、1/4など、搬送波に対して共振し得る所定の長さのことである。本実施形態においては、アンテナの通信可能な長さが搬送波の波長λの1/2に設定され、アンテナ用部材11aの長さは、搬送波の波長λの1/2よりも短い。
【0042】
具体的には、図5に示すように、搬送波長λの1/2の長さを有するアンテナ11(図5中に示す(a))を、アンテナ11の中央に配されたICチップ12の近傍の位置Cで切断して、アンテナ用部材11a(図5中に示す(b))を形成する。
これにより、アンテナ用部材11aは、それ自身で単独ではアンテナとして機能しない。すなわち、アンテナ用部材11aは、アンテナ11の片側の一部を切断することにより、ICインレット6aだけでは外部の読み取り装置と通信できない。
【0043】
また、図3に示すように、RFIDタグ1Bを本体部2の厚さ方向から見て(本体部2を正面から見て)、アンテナ用部材11aとOVD3とを組み合わせた全体の長さ(アンテナ用部材11aの一端からOVD3の他端までの長さ)は、搬送波長λの1/2である。すなわち、アンテナ用部材11aとOVD3とによって、全体として通信可能な長さである。
なお、本発明では、OVD3(の導電性材料の層)は、アンテナ11の切断された側に重ねられる。
【0044】
上記のように構成されたRFIDタグ1Bを読み取り装置に近づけると、上記と同様にして、通信が行われる。
すなわち、本実施形態におけるRFIDタグ1Bによれば、アンテナ用部材11aとOVD3との共働によってひとつの結合アンテナを形成し、その結合アンテナを介して読み取り装置と容易に通信を行うことができる。
また、アンテナ用部材11aは、単独ではアンテナとして機能し得ないことから、OVD3を取り外されると、RFIDタグ1Bが読取装置と通信ができなくなる。これにより、セキュリティを向上させることができる。
【0045】
本実施形態のRFIDタグ1Bについて検証実験を行った。この実験に使用したRFIDタグは、電波方式の通信が可能な周波数2.45GHzのICインレットと、反射性薄膜としてアルミ蒸着層を持つ表面レリーフ型ホログラムのOVDとを組み合わせたもので、両者が重なる領域を約1.5mm×約1.5mmの矩形とし、かつ両者の間隔を約100μmとしたところ、必要な結合容量が得られ、外部の読み取り装置との通信が行えた。
【0046】
ところで、上記第1および第2の実施形態の各RFIDタグはブランドタグだが、本発明のRFID情報媒体はブランドタグに限らない。例えば、カード、コイン、ラベル、スティックなどであってもよいし、有価証券等の印刷物などであってもよい。
アンテナ11およびアンテナ用部材11aをとして半波長ダイポールアンテナを例示したが、電波方式の通信が可能なアンテナであれば、その形態は半波長ダイポールアンテナに限定されない。
第2実施形態において、アンテナ11の片側の一部を切断することによりアンテナ用部材11aを形成したが、アンテナ11の両側をそれぞれ切断することによりアンテナ用部材を形成してもよい。
また、OVD3(の導電性材料の層のパターン)の配置は、本実施形態で説明した以外にも、例えば、複数のOVD3(の導電性材料の層のパターン)がアンテナ用部材11aの複数箇所にそれぞれ重なるようにしたり、OVD3(の導電性材料の層のパターン)を本体部2の表裏両面に設けたりしてもよい。そして、OVD3の導電性材料の層のパターンとアンテナ用部材11aのパターンとを組み合わせて構成された全体のアンテナのパターンは、アンテナの性能の観点から、本来の半波長ダイポールアンテナの長さと同じかまたは同程度であることが好ましい。また、全体のアンテナの幅(OVD3の導電性材料の層のパターンの幅)は、RFIDタグ1Bの大きさが許す範囲であれば広くてもよい。
【0047】
本発明に係るRFIDタグの変形例を図6から図11に示す。
まず、図6に示すRFIDタグ1Cは、円板状に形成された本体部2cと、本体部2cに設けられたICインレット6と、本体部2cに設けられた2枚のOVD3cとを備えている。2枚のOVD3cは、いずれも略半円形の板状に形成されている。一方のOVD3cは、本体部2cを構成する絶縁材を介して、ICインレット6を構成するアンテナ11の一端に重なるように配置され、他方のOVD3cは、同絶縁材を介してアンテナ11の他端に重なるように配置されている。2枚のOVD3cは、周縁の一部をなす円弧状の部分が本体部2cの外郭線に沿うように配置され、かつ互いの直線状の部分が平行をなすように配置されている。ICインレット6を構成するICチップ12は、離間して配置された2枚のOVD3cの間に配置されている。
【0048】
なお、2枚のOVDの形状は、半円形に限らず、図7に示すように矩形であってもよいし、図8に示すように三角形であってもよい。さらに、上記のような定形に限らず、様々な形状を採用することができる。例えば、動物や植物などの自然物のシルエットをかたどったものでもよい。本体部の形状は、OVDの形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0049】
図9に示すRFIDタグ1Dは、円板状に形成された本体部2dと、本体部2dに設けられたICインレット16と、本体部2dに設けられたOVD13とを備えている。ICインレット16は、長さ方向に配列された2つのアンテナ用部材11aと、両アンテナ用部材11a間に掛け渡されるように配置されたICチップ12とを備えている。OVD13は、2枚の略半円形の板状部13aと、両板状部13aと一体に形成されて両板状部13aを連結している連結部13bとからなる。一方の板状部13aは、本体部2dを構成する絶縁材を介して、一方のアンテナ用部材11aに重なるように配置され、他方の板状部13aは、同絶縁材を介して他方のアンテナ用部材11aに重なるように配置されている。各板状部13aは、周縁の一部をなす円弧状の部分が本体部2dの外郭線に沿うように配置され、かつ互いの直線状の部分が平行をなすように配置されている。ICチップ12は、離間して配置された2枚の板状部13aの間に配置されている。
【0050】
上記と同様に、OVDを構成する2枚の板状部の形状は、半円形に限らず、図10に示すように矩形であってもよいし、図11に示すように三角形であってもよい。さらに、上記のような定形に限らず、様々な形状を採用することができる。例えば、動物や植物などの自然物のシルエットをかたどったものでもよい。本体部の形状は、OVDの形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0051】
次に、本発明の第3の実施形態について、図12を参照して説明する。
図12において、上記した構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
図12は、上記したRFIDタグ1Aを直に貼付された物品20を示している。物品20は、RFIDタグ1Aを使って、入出庫管理、在庫管理、貸し出し管理等、流通過程のあらゆる管理を効率的に行うことができる。加えて、物品20の意匠性や高級感を高めたり、偽造を防止したりすることができる。
なお、本実施形態においては、RFIDタグ1Aを物品に直に貼付した例を示したが、本発明の物品は、図13に示すように、RFIDタグ1Aを、物品20を包装した包装物21に貼付してもよい。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、外部の読み取り装置と非接触でデータの送受信を行うRFID情報媒体であって、絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方と、前記本体部に設けられた導電体とを備え、前記導電体は導電性材料の層を有し、該導電性材料の層が、前記アンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられているRFID情報媒体に関する。本発明のRFID情報媒体は、読み取り装置(または読み書き装置)との適正な通信が可能で、かつ容易に小型化が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1A〜1D…RFIDタグ(RFID情報媒体)、2…本体部、3…OVD(光学変化デバイス)、11…アンテナ、11a…アンテナ用部材、20…物品、21…包装物
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の読み取り装置(または読み書き装置)と非接触でデータの送受信を行うことが可能なRFID情報媒体、および同媒体を貼付された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、小売店やレンタル店での商品の管理において、ICチップとアンテナとを備えるRFID(Radio Frequency IDentification)タグが利用されている(例えば、下記の特許文献1参照)。例えば、RFIDタグを商品に取り付け、専用のデータ読み書き装置によって商品のデータを読み書きし、商品の入出庫管理、在庫管理、貸し出し管理等を行う。RFIDタグはICチップを備えているので、商品コードだけでなく、入荷日、担当者などの豊富な情報を商品といっしょに管理することができる。マイクロ波(現在は2.45GHzが利用されている)を用いた電波方式のRFIDタグは、静電結合や電磁誘導を用いたRFIDタグに比べて通信距離が1〜2mと長いことから、物品管理等、多方面で利用されている。
【0003】
また、RFIDタグが普及するにつれ、RFIDタグに光学変化デバイス(OVD: Optical Variable Device)を取り付けることが期待されている。OVDとは、見る角度によって、色が変化する/立体画像が見える/あるいは画像が変化する、等々の特殊な光学効果を呈するデバイスの総称である。例えば、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できるホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより、見る角度によって色の変化を生じる多層薄膜の総称である。これらOVDは、見る者に立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるなど優れた装飾効果を有しているので、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。さらに、このOVDの製造には高度な技術を要することから、偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、または、証明書類、等にも設けられている。
【0004】
OVDをRFIDタグに取り付けると、下記のようなメリットがある。例えば、商品等にそれぞれ別個に取り付けられていたRFIDタグおよびOVDを、RFIDタグにOVDを取り付けることによって一体化すると、RFIDタグおよびOVDを商品等に迅速かつ容易に取り付けることができる。また、RFIDタグにOVDを取り付けることにより、商品等の意匠性や高級感を高めたり、商品等の偽造を防止したりすることができる。偽造防止効果については、RFIDタグにOVDを取り付けることにより、読み取り装置(または読み書き装置)による読み取り、および目視の双方からRFIDタグの真偽判定を行うことが可能となる。また、読み取り装置(または読み書き装置)がない場合でも、目視によってRFIDタグの真偽判定を行うことが可能となる。OVDを取り付けられたRFIDタグを、さらに高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVDに機械読み取り可能な光学情報を記録しておき、RFIDタグのICチップ内の情報と関連付けることによって、OVDもしくはICチップのどちらかが偽造された場合でも、真偽判定を行うことが可能である。
上記のように、OVDを取り付けられたRFIDタグは、様々なアプリケーションへの展開が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−78725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、RFIDタグにOVDを取り付けると、読み取り装置(または読み書き装置)とRFIDタグとの通信に不具合が生じるおそれがある。具体的には、OVDに多層薄膜を用い、薄膜材料が導電性を有している場合、または、OVDにホログラムや回折格子を用い、その光学効果を持たせる目的でアルミ蒸着層等を有している場合などである。上記のOVDは導電性を有しているため、OVDとRFIDタグのアンテナとが近い場合、OVDが読み取り装置(または読み書き装置)からの電波を遮蔽してしまったり、OVDがRFIDタグのアンテナに影響して共振周波数がずれてしまったりする。そのため、読み取り装置(または読み書き装置)とRFIDタグとの通信距離が短くなってしまい、場合によっては両者の間で通信できなくなってしまうこともある。
その対策として、例えば、OVDをRFIDタグのアンテナから離して配置してもよい。しかしながら、アンテナからOVDを離すと、RFIDタグ全体が大きくなってしまい、小型のRFIDタグを作ることが難しい。また、OVDの大きさや意匠等も制限を受けてしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、読み取り装置(または読み書き装置)との適正な通信が可能で、かつ容易に小型化が可能なRFID情報媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明のRFID情報媒体は、外部の読み取り装置と非接触でデータ通信を行うRFID情報媒体であって、絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナ用部材と、前記本体部に設けられた導電体と、目視する見方によって色彩や画像が変化する光学変化デバイスと、を備え、前記導電体は導電性材料の層を有し、該導電性材料の層が、前記アンテナ用部材に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられており、前記光学変化デバイスが、導電性の反射層または導電性の透明層を備え、前記光学変化デバイスの前記反射層または前記透明層が、前記導電性材料の層と兼用される。
ここで、「導電性材料の層が、前記アンテナに部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられている」とは、アンテナのうちICチップがある部分をほぼ境にして、導電体の導電性材料の層が、アンテナの片側では適当な1乃至数ヶ所に重ねられる状態を指す。導電性材料の層が重ねられるのは、アンテナの片側のほぼ全面でも良い。そして、導電性材料の層がアンテナの両側ともに重ねられる場合、一方の導電性材料の層と他方の導電性材料の層とが繋がらないように、双方の層を形成する必要がある。アンテナの片側のほぼ全面と反対側のほぼ全面とにそれぞれ導電性材料の層を形成する場合には、アンテナの片側に形成される層を、反対側に形成される層から僅かでも離間させる(最低でも約50μm程度以上の間隔は必要である)。
【0009】
前記アンテナは、前記導電体と、容量結合によって前記厚さ方向に電気的に接続されてもよい。本発明のRFID情報媒体においては、アンテナの一部と導電体とが、本体部の厚さ方向に対向して配される。そのため、アンテナが導電体に容量結合によって電気的に接続される。両者を容量結合させるためには、導電体の導電性材料の層とアンテナとの重なりでコンデンサが形成されるように、両者の間に適当な間隔を確保する絶縁性の層を設ける。これにより、アンテナと導電体とをひとつのアンテナとして、簡単かつ確実に機能させることができる。
【0010】
本発明のRFID情報媒体によれば、光学変化デバイスは、見る者に立体画像や色の変化といった独特な印象を与えるなど優れた装飾効果を発揮する。目視する見方の代表例には、目視する角度によって色彩や画像が変化する場合、偏光板(好ましい例として円偏光板がある)を介して目視することによって色彩や画像が変化する場合などがある。前者の代表例では、ホログラム、回折格子、多層薄膜、パールインキ、コレステリックインキ、またはOVI(Optical Variable Ink)を用いた場
合が挙げられる。後者の代表例では、上記コレステリックインキを用いた場合が挙げられる。これは円偏光の回転方向の向きによって変化の仕方が違う。
【0011】
なお、「アンテナ」とは、それ自身で単独でアンテナとして機能するものをいい、「アンテナ用部材」とは、それ自身で単独ではアンテナとして機能しないものをいう。
【0012】
また、アンテナを導電体に導電性部材を介して直に接続してもよいし、アンテナ用部材を導電体に導電性部材を介して直に接続してもよい。
【0013】
さらに、RFID情報媒体のICチップが、データの読み取りが可能なだけでなくデータの書き込みも可能な場合には、読み書き装置によってデータを書き込むことも可能である。
【0014】
本発明のRFID情報媒体において、前記アンテナ用部材は、単独ではアンテナ機能を有しておらず、前記導電体との共働によって生み出されるアンテナ機能を有していてもよい。
本発明のRFID情報媒体によれば、アンテナ用部材と導電体とが共働してひとつのアンテナとして機能しており、導電体が除かれると、アンテナ用部材だけとなってアンテナとしては機能しなくなる。導電体を故意に取り外されると、RFID情報媒体は通信ができなくなる。これにより、セキュリティを向上させることができる。
【0015】
本発明のRFID情報媒体において、前記アンテナ用部材は、ダイポールアンテナ用として長尺状に形成され、前記アンテナ用部材の長さが、前記データ通信を行う搬送波の波長に対して通信可能な長さよりも短く設定され、重ねられた前記アンテナ用部材と前記導電体とを組み合わせた全体の長さが、通信可能な長さに設定されていてもよい。
本発明のRFID情報媒体によれば、アンテナ用部材と導電体とが共働してひとつのダイポールアンテナとして機能し、導電体を故意に取り外されると、RFID情報媒体は通信ができなくなる。これにより、セキュリティを向上させることができる。
【0016】
本発明のRFID情報媒体は、目視する見方によって色彩や画像が変化する光学変化デバイスをさらに備えていてもよい。さらに、前記光学変化デバイスは、導電性の反射層または導電性の透明層を備え、前記光学変化デバイスの前記反射層または前記透明層が、前記導電性材料の層と兼用されてもよい。
【0017】
本発明のRFID情報媒体において、本発明のRFID情報媒体は、前記データの送受信における通信方式が電波方式であってもよい。本発明のRFID情報媒体によれば、確実に通信を行うことができることに加え、静電結合や電磁誘導を用いたRFID情報媒体に比べて通信距離を延ばすことができる。電波方式の場合の代表的な周波数は、マイクロ波では2.45GHz、UHF帯では950MHzが挙げられる。
【0018】
本発明の物品は、上記RFID情報媒体を貼付されている。
本発明の物品において、前記RFID情報媒体は、前記物品に直に貼付されていてもよいし、前記物品を包装する包装物に貼付されていてもよい。
【0019】
本発明の物品によれば、物品の管理等が行い易くなることに加え、優れた装飾効果を発揮しつつ、物品の偽造を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アンテナに導電体を組み合わせたり、アンテナ用部材に導電体を組み合わせたりして、ひとつのアンテナとして機能させることができる。これにより、本体部に導電体を取り付けても、データ読み書き装置との間で適正に通信を行うことができる。
さらに、導電体をアンテナ(またはアンテナ用部材)から離して配置する必要性が無いので、RFID情報媒体を容易に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態を示す図であって、RFID情報媒体としてのRFIDタグを示す平面図である。
【図2】図2は、図1のRFIDを厚さ方向に破断した様子を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態を示す図であって、RFID情報媒体としてのRFIDタグを示す平面図である。
【図4】図4は、図3のRFIDを厚さ方向に破断した様子を示す断面図である。
【図5】図5は、アンテナのカット前とカット後を比較して示す説明図である。
【図6】図6は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図7】図7は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図8】図8は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図9】図9は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図11】図11は、本発明のRFID情報媒体の変形例を示す平面図である。
【図12】図12は、本発明の第3の実施形態を示す図であって、RFIDタグを貼付された物品を示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明の物品の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態におけるRFID情報媒体について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、RFID情報媒体をRFIDタグに適用した例を示している。RFIDタグ1Aは、例えば、衣料メーカーのブランドタグとして利用される。
このRFIDタグ1Aは、板状に延びる本体部2を備えている。本体部2は、図2に示すように、ともに薄板状の第1基材7と第2基材8とを備えている。第1基材7および第2基材8の材料としては、絶縁性材料であれば特に限定されるものはなく、例えばPET、PVC、ABS、紙等が挙げられる。
【0023】
第1基材7の第2基材8に向く内面、および第2基材8の第1基材7に向く内面には、それぞれ接着層9が設けられている。接着層9の材料としては、アクリル系の熱接着剤、例えばポリアミド、ウレタン、EVA等のホットメルト樹脂、または粘着剤等が採用される。接着層9の材料が熱接着剤系であれば、加熱することによって接着層9が溶融し、後に接着層9が固化することによって第1基材7と第2基材8とが強固に接着される。
【0024】
本体部2には、ICインレット6が内蔵されている。すなわち、第1基材7と第2基材8とが、ICインレット6を介して接合されている。ICインレット6は不図示のシート状の支持体の上に設けられており、アンテナ11と、情報を記憶する記憶部を有するICチップ12とを備えている。ICチップ12は、アンテナ11を介して、外部の読み取り装置と非接触で通信することが可能である。本実施形態では、RFIDタグの面積を小さくし易いと云う理由から、アンテナ11が本体部2の長さ方向に延びるように配置されている。
【0025】
アンテナ11は、導電性を有し、外部に設置される不図示のリーダライタ装置(読み書き装置)に接続されたアンテナからの電波を受信する半波長ダイポールアンテナである。半波長ダイポールアンテナは、代表的な例としては、PET、ポリイミド、PVC等を材料とする支持体としてのシート状の基材上に形成された銅、アルミ等の金属箔を、エッチング処理により適当な形状にパターニングすることで形成したエッチングアンテナ、または、PET、紙等を材料とするシート状の基材上に銀、ニッケル、銅等の金属材料を含む導電性インキを印刷により適当な形状にパターニングした印刷アンテナである。
また、半波長ダイポールアンテナは、電波の指向特性はそれほど良くはないが、その長尺の形から、支持体となる前記シート状の基材上に形成された場合、シート1枚当たりのアンテナ数量が多いというメリットがあり、RFIDタグ用のICインレットとしては最も低コストに作ることができるアンテナのひとつである。
なお、アンテナ11の長さは、2.45GHzの搬送波の波長の1/2に設定されており、アンテナ11はそれ自身で単独でアンテナとして機能する。
【0026】
ICチップ12は、アンテナ11の長さ方向の中央に配置され、アンテナ11に接続されている。ICチップ12は、アンテナ11に、フリップチップ実装、ワイヤボンディング等によって電気的に接続されている。
【0027】
本体部2の表面(一方の主面)には、ブランド名、ロゴ、デザインイメージ等の情報表示4が印刷されている。また、本体部2の表面には、接着層10を介して光学変化デバイス(以下、OVDと称する)3が設けられている。
接着層10の材料としてはアクリル系の熱接着剤等が採用される。接着層10の材料が熱接着剤系であれば、加熱することによって接着層10が溶融し、後に接着層10が固化することによってOVD3が第2基材8の表面に強固に接着される。
【0028】
OVDには、反射層または透明層を有するものと、これらをいずれも持たないものとがある。反射層または透明層の材料に、例えば金属または金属化合物を採用した場合は、結果的にそれらの反射層または透明層が導電性をも呈することができる。
本発明のRFID情報媒体がOVDを備える場合、最も好適な態様は、OVDの反射層または透明層が、RFID情報媒体の導電性材料の層と「兼用される」構成である。これによると、RFID情報媒体が不正目的で分解される等した場合に、光学変化デバイスの光学効果が損なわれ易く、かつ正常な通信が不能になり易い。また、製造コストを低く抑えたり、生産性を高めたりすることも可能であるなど、本発明の効果が高いと云える。本発明のRFID情報媒体がOVDを備える場合で、次に好ましい態様は、OVDの反射層または透明層が、RFID情報媒体の導電性材料の層と「兼用されない」構成であるとか、OVDが反射層または透明層を持たない構成である。
【0029】
OVDの代表的な例としては、まずレリーフ型ホログラムや回折格子がある。これらはいずれもエンボス加工による生産が可能な為に大量複製に適する。また、本体内部に向かって干渉縞を記録する体積型ホログラム(一般に上記導電性の反射層や透明層は持たない)、屈折率が異なる複数の光学干渉薄膜を適宜重ねることでカラーシフト効果を得られる多層薄膜等がある。特殊なインキを採用した光学変化デバイス(OVD)において用いられるインクとしては、パール顔料を使用したパールインキ、コレステリック液晶による顔料を使用したコレステリックインキ、或る波長域の電磁波(例えば紫外線、赤外線など)を良く吸収する材料を使用したインキ、または、或る波長域の電磁波(例えば紫外線、赤外線、可視光線など)の照射によって励起され或る波長域の電磁波(例えば可視光線、赤外線、紫外線など)の蛍光を発する材料を使用したインキ、などが挙げられる。なお、これらのインキには、上記導電性の反射層や透明層は一般に必須ではない。
【0030】
レリーフ型ホログラムは、一般的に光学的な撮影方法によって微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスターホログラムを作製し、これから電気メッキ法によって凹凸パターンを複製したニッケル製のプレス版を複製し、さらにそのプレス版をホログラム形成層上に加熱しながら押圧するという周知の方法により大量に複製される。
一方、体積型ホログラムは、レリーフ型ホログラムとは異なり、感光性樹脂などの記録材を用いて、内部に向かって干渉縞を記録する。このタイプのホログラムとしては、リップマンホログラムと呼ばれるものが一般に使用されている。
【0031】
また、ホログラム画像とは異なり、微小なエリアに複数種類の単純な回折格子を配置して画素とし、画像を表現するグレーティングイメージ、ピクセルグラムといった回折格子による画像もまた、レリーフ型ホログラムと同様の方法で大量に複製される。一方、ホログラムや回折格子とは製造手法が異なり、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層し、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜方式のデバイスもOVDの一例である。上記のOVDの中でも、量産性やコストを考慮する場合には、レリーフ型ホログラム(回折格子)や多層薄膜方式のデバイスを採用するのが好ましい。レリーフ型ホログラム(回折格子)は、その光学効果を持たせる目的で光を反射させる反射層を設けておく必要から、金属薄膜(例えばアルミ蒸着層等)を有していたり、観察する角度によって反射性を現わす透明反射膜(微細凹凸の層よりも屈折率が高い透明な薄膜)を有していたりする。後者の透明反射膜を本発明に適用する場合は、その透明導電膜が導電性をも有することが好ましい。また、多層薄膜方式のデバイスを本発明に適用する場合も、適当な層の薄膜に導電性を有する材料を使用する。
【0032】
本発明では、OVD3の導電性材料の層がアンテナの一部として機能する。OVD3の全面に導電性材料の層が存在すれば、OVD3の形状がそのままアンテナの形状の一部となる。
アンテナパターンの設計に関しては、アンテナ利得やアンテナ効率を高めることを優先してOVD3の形が決定される場合と、アンテナ利得やアンテナ効率を多少犠牲にしても意匠性を高めることを優先してOVD3の形が決定される場合とがある。また、OVD3の一部が導電性で、他の部分が非導電性であれば、非導電性の部分の形状を自由な設計することが可能である。
【0033】
さらに、OVD3は、アンテナ11の一部に第2基材8を介して本体部2の厚さ方向に重ねられている。すなわち、本体部2を正面から見たとき、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域とOVD3とが重ねられている。換言すると、OVD3が、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域に、絶縁材料からなる第2基材8を介して、本体部2の厚さ方向に向き合うように配置されている。
【0034】
次に、このように構成された本実施形態におけるRFIDタグ1Aの作用について説明する。
まず、2.45GHzの電波を放射するリーダライタ装置にRFIDタグ1Aを近づける。すると、アンテナ11はリーダライタ装置からの電波を受信して、ICチップ12に電力を供給する。これにより、ICチップ12が駆動され、種々の処理が行われる。例えば、ICチップ12の記憶部に記憶された各種情報が読み出され、その各種情報が搬送波に載せられてアンテナ11を介して放射される。このアンテナ11から放射された電波をリーダライタ装置が受信して、ICチップ12の各種情報が読み出される。
【0035】
ここで、本実施形態におけるRFIDタグ1Aにおいては、図2に示すように、OVD3が、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域に、絶縁材料からなる第2基材8を介して、本体部2の厚さ方向に向き合うように配置されていることから、アンテナ11とOVD3とが容量結合されて電気的に接続される。詳述すると、図2において二点鎖線の円で囲まれた領域が、OVD3とアンテナ11との容量結合部5となり、この容量結合部5が、電気回路的にコンデンサとなってOVD3とアンテナ11とが電気的に接続される。容量結合部5の電気的な結合容量は、通信周波数が2.45GHzの場合、最低でも1PF前後の容量を有していれば高周波的には導通が得られる。
【0036】
これにより、アンテナ11とOVD3とが共働して一つのアンテナ(以下、「結合アンテナ」という)として機能する。これらアンテナ11とOVD3とを備える結合アンテナを介して、外部のリーダライタ装置とRFIDタグ1Aとの間で、非接触でデータの送受信が行われる。
なお、アンテナ11とOVD3とが容量結合した状態においては、アンテナ11のICチップ12よりも一端に近い領域は、それほど通信に寄与することはなく、OVD3が支配的となって、主としてOVD3がアンテナ機能を担うことになる。
【0037】
本実施形態のRFIDタグ1Aによれば、アンテナ11の一部とOVD3とを重ねることにより、これらアンテナ11とOVD3とを一つのアンテナとして機能させることができる。これにより、本体部2にOVD3を取り付けても、リーダライタ装置と適正に通信を行うことができる。また、RFIDタグ1Aを容易に小型化することができる。さらに、OVD3の大きさやデザイン等の制限を少なくすることもできる。
本発明では、OVD3の導電性材料の層のパターンとアンテナ11のパターンとを組み合わせて構成された全体のアンテナのパターンの長さ、つまり、OVD3の導電性材料の層とアンテナ11とを組み合わせた全体の長さは、アンテナの性能の観点から、本来の半波長ダイポールアンテナの長さと同じかまたは同程度であることが好ましい。また、全体のアンテナの幅(OVD3の導電性材料の層のパターンの幅)は、RFIDタグ1Aの大きさが許す範囲であれば広くてもよい。
OVD3(の導電性材料の層のパターン)の配置は、本実施形態で説明した以外にも、例えば、複数のOVD3(の導電性材料の層のパターン)が本来のアンテナ11の複数箇所にそれぞれ重なるようにしてもよいし、OVD3(の導電性材料の層のパターン)を本体部2の表裏両面に設けてもよい。
【0038】
RFIDタグ1Aによれば、リーダライタ装置による読み取り、および目視の双方からRFIDタグ1Aの真偽判定を行うことが可能である。例えば、リーダライタ装置がない場合でも、OVD3を目視してRFIDタグ1Aの真偽を判定することができる。
高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVD3に機械読み取り可能な光学情報を記録しておき、ICチップ12内の情報と関連付けることによって、OVD3またはICチップ12のどちらかが偽造された際に真偽判定を行うこともできる。OVD3に記録される光学情報を暗号化しておくと、さらに偽造防止性をアップさせることもできる。
【0039】
アンテナ11の一部とOVD3とが容量結合によって本体部2の厚さ方向に電気的に接続されることから、アンテナ11とOVD3とを簡単かつ確実にひとつのアンテナとして機能させることができる。
電波方式の通信を行うので、データの送受信を確実に行うことに加えて、通信距離をのばすことができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について、図3および図4を参照して説明する。
図3および図4において、図1および図2に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。本実施形態の基本的な構成は上記第1の実施形態と同一なので、以下では上記第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0041】
本実施形態において、ICインレット6aは、長尺状に形成されたアンテナ用部材11aを備えている。ICインレット6aは、アンテナ11でなくアンテナ用部材11aを備える点で前記ICインレット6と相違する。
アンテナ用部材11aの長さは、2.45GHzの搬送波の波長λに対して通信可能な長さよりも短い。ここで、通信可能な長さとは、搬送波の波長λに対して例えば1/2、1/4など、搬送波に対して共振し得る所定の長さのことである。本実施形態においては、アンテナの通信可能な長さが搬送波の波長λの1/2に設定され、アンテナ用部材11aの長さは、搬送波の波長λの1/2よりも短い。
【0042】
具体的には、図5に示すように、搬送波長λの1/2の長さを有するアンテナ11(図5中に示す(a))を、アンテナ11の中央に配されたICチップ12の近傍の位置Cで切断して、アンテナ用部材11a(図5中に示す(b))を形成する。
これにより、アンテナ用部材11aは、それ自身で単独ではアンテナとして機能しない。すなわち、アンテナ用部材11aは、アンテナ11の片側の一部を切断することにより、ICインレット6aだけでは外部の読み取り装置と通信できない。
【0043】
また、図3に示すように、RFIDタグ1Bを本体部2の厚さ方向から見て(本体部2を正面から見て)、アンテナ用部材11aとOVD3とを組み合わせた全体の長さ(アンテナ用部材11aの一端からOVD3の他端までの長さ)は、搬送波長λの1/2である。すなわち、アンテナ用部材11aとOVD3とによって、全体として通信可能な長さである。
なお、本発明では、OVD3(の導電性材料の層)は、アンテナ11の切断された側に重ねられる。
【0044】
上記のように構成されたRFIDタグ1Bを読み取り装置に近づけると、上記と同様にして、通信が行われる。
すなわち、本実施形態におけるRFIDタグ1Bによれば、アンテナ用部材11aとOVD3との共働によってひとつの結合アンテナを形成し、その結合アンテナを介して読み取り装置と容易に通信を行うことができる。
また、アンテナ用部材11aは、単独ではアンテナとして機能し得ないことから、OVD3を取り外されると、RFIDタグ1Bが読取装置と通信ができなくなる。これにより、セキュリティを向上させることができる。
【0045】
本実施形態のRFIDタグ1Bについて検証実験を行った。この実験に使用したRFIDタグは、電波方式の通信が可能な周波数2.45GHzのICインレットと、反射性薄膜としてアルミ蒸着層を持つ表面レリーフ型ホログラムのOVDとを組み合わせたもので、両者が重なる領域を約1.5mm×約1.5mmの矩形とし、かつ両者の間隔を約100μmとしたところ、必要な結合容量が得られ、外部の読み取り装置との通信が行えた。
【0046】
ところで、上記第1および第2の実施形態の各RFIDタグはブランドタグだが、本発明のRFID情報媒体はブランドタグに限らない。例えば、カード、コイン、ラベル、スティックなどであってもよいし、有価証券等の印刷物などであってもよい。
アンテナ11およびアンテナ用部材11aをとして半波長ダイポールアンテナを例示したが、電波方式の通信が可能なアンテナであれば、その形態は半波長ダイポールアンテナに限定されない。
第2実施形態において、アンテナ11の片側の一部を切断することによりアンテナ用部材11aを形成したが、アンテナ11の両側をそれぞれ切断することによりアンテナ用部材を形成してもよい。
また、OVD3(の導電性材料の層のパターン)の配置は、本実施形態で説明した以外にも、例えば、複数のOVD3(の導電性材料の層のパターン)がアンテナ用部材11aの複数箇所にそれぞれ重なるようにしたり、OVD3(の導電性材料の層のパターン)を本体部2の表裏両面に設けたりしてもよい。そして、OVD3の導電性材料の層のパターンとアンテナ用部材11aのパターンとを組み合わせて構成された全体のアンテナのパターンは、アンテナの性能の観点から、本来の半波長ダイポールアンテナの長さと同じかまたは同程度であることが好ましい。また、全体のアンテナの幅(OVD3の導電性材料の層のパターンの幅)は、RFIDタグ1Bの大きさが許す範囲であれば広くてもよい。
【0047】
本発明に係るRFIDタグの変形例を図6から図11に示す。
まず、図6に示すRFIDタグ1Cは、円板状に形成された本体部2cと、本体部2cに設けられたICインレット6と、本体部2cに設けられた2枚のOVD3cとを備えている。2枚のOVD3cは、いずれも略半円形の板状に形成されている。一方のOVD3cは、本体部2cを構成する絶縁材を介して、ICインレット6を構成するアンテナ11の一端に重なるように配置され、他方のOVD3cは、同絶縁材を介してアンテナ11の他端に重なるように配置されている。2枚のOVD3cは、周縁の一部をなす円弧状の部分が本体部2cの外郭線に沿うように配置され、かつ互いの直線状の部分が平行をなすように配置されている。ICインレット6を構成するICチップ12は、離間して配置された2枚のOVD3cの間に配置されている。
【0048】
なお、2枚のOVDの形状は、半円形に限らず、図7に示すように矩形であってもよいし、図8に示すように三角形であってもよい。さらに、上記のような定形に限らず、様々な形状を採用することができる。例えば、動物や植物などの自然物のシルエットをかたどったものでもよい。本体部の形状は、OVDの形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0049】
図9に示すRFIDタグ1Dは、円板状に形成された本体部2dと、本体部2dに設けられたICインレット16と、本体部2dに設けられたOVD13とを備えている。ICインレット16は、長さ方向に配列された2つのアンテナ用部材11aと、両アンテナ用部材11a間に掛け渡されるように配置されたICチップ12とを備えている。OVD13は、2枚の略半円形の板状部13aと、両板状部13aと一体に形成されて両板状部13aを連結している連結部13bとからなる。一方の板状部13aは、本体部2dを構成する絶縁材を介して、一方のアンテナ用部材11aに重なるように配置され、他方の板状部13aは、同絶縁材を介して他方のアンテナ用部材11aに重なるように配置されている。各板状部13aは、周縁の一部をなす円弧状の部分が本体部2dの外郭線に沿うように配置され、かつ互いの直線状の部分が平行をなすように配置されている。ICチップ12は、離間して配置された2枚の板状部13aの間に配置されている。
【0050】
上記と同様に、OVDを構成する2枚の板状部の形状は、半円形に限らず、図10に示すように矩形であってもよいし、図11に示すように三角形であってもよい。さらに、上記のような定形に限らず、様々な形状を採用することができる。例えば、動物や植物などの自然物のシルエットをかたどったものでもよい。本体部の形状は、OVDの形状に合わせて適宜変更してもよい。
【0051】
次に、本発明の第3の実施形態について、図12を参照して説明する。
図12において、上記した構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
図12は、上記したRFIDタグ1Aを直に貼付された物品20を示している。物品20は、RFIDタグ1Aを使って、入出庫管理、在庫管理、貸し出し管理等、流通過程のあらゆる管理を効率的に行うことができる。加えて、物品20の意匠性や高級感を高めたり、偽造を防止したりすることができる。
なお、本実施形態においては、RFIDタグ1Aを物品に直に貼付した例を示したが、本発明の物品は、図13に示すように、RFIDタグ1Aを、物品20を包装した包装物21に貼付してもよい。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、外部の読み取り装置と非接触でデータの送受信を行うRFID情報媒体であって、絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方と、前記本体部に設けられた導電体とを備え、前記導電体は導電性材料の層を有し、該導電性材料の層が、前記アンテナまたはアンテナ用部材のいずれか一方に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられているRFID情報媒体に関する。本発明のRFID情報媒体は、読み取り装置(または読み書き装置)との適正な通信が可能で、かつ容易に小型化が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1A〜1D…RFIDタグ(RFID情報媒体)、2…本体部、3…OVD(光学変化デバイス)、11…アンテナ、11a…アンテナ用部材、20…物品、21…包装物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の読み取り装置と非接触でデータ通信を行うRFID情報媒体であって、
絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナ用部材と、前記本体部に設けられた導電体と、目視する見方によって色彩や画像が変化する光学変化デバイスと、を備え、
前記導電体は導電性材料の層を有し、該導電性材料の層が、前記アンテナ用部材に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられており、
前記光学変化デバイスが、導電性の反射層または導電性の透明層を備え、
前記光学変化デバイスの前記反射層または前記透明層が、前記導電性材料の層と兼用されるRFID情報媒体。
【請求項2】
前記導電体と前記アンテナ用部材とが、容量結合によって前記厚さ方向に電気的に接続される請求項1に記載のRFID情報媒体。
【請求項3】
前記アンテナ用部材が、単独ではアンテナ機能を有しておらず、前記導電体との共働によって生み出されるアンテナ機能を有する請求項1または請求項2に記載のRFID情報媒体。
【請求項4】
前記アンテナ用部材が、ダイポールアンテナ用として長尺状に形成され、
前記アンテナ用部材の長さが、前記データ通信を行う搬送波の波長に対して通信可能な長さよりも短く設定され、
重ねられた前記アンテナ用部材と前記導電体とを組み合わせた全体の長さが、通信可能な長さに設定されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のRFID情報媒体。
【請求項5】
前記データ通信における通信方式が電波方式である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のRFID情報媒体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のRFID情報媒体を貼付された物品。
【請求項7】
前記RFID情報媒体は、前記物品に直に貼付されている請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記RFID情報媒体は、前記物品を包装する包装物に貼付されている請求項6に記載の物品。
【請求項1】
外部の読み取り装置と非接触でデータ通信を行うRFID情報媒体であって、
絶縁部材を有する本体部と、前記本体部に設けられたアンテナ用部材と、前記本体部に設けられた導電体と、目視する見方によって色彩や画像が変化する光学変化デバイスと、を備え、
前記導電体は導電性材料の層を有し、該導電性材料の層が、前記アンテナ用部材に部分的に、前記本体部の厚さ方向に重ねられており、
前記光学変化デバイスが、導電性の反射層または導電性の透明層を備え、
前記光学変化デバイスの前記反射層または前記透明層が、前記導電性材料の層と兼用されるRFID情報媒体。
【請求項2】
前記導電体と前記アンテナ用部材とが、容量結合によって前記厚さ方向に電気的に接続される請求項1に記載のRFID情報媒体。
【請求項3】
前記アンテナ用部材が、単独ではアンテナ機能を有しておらず、前記導電体との共働によって生み出されるアンテナ機能を有する請求項1または請求項2に記載のRFID情報媒体。
【請求項4】
前記アンテナ用部材が、ダイポールアンテナ用として長尺状に形成され、
前記アンテナ用部材の長さが、前記データ通信を行う搬送波の波長に対して通信可能な長さよりも短く設定され、
重ねられた前記アンテナ用部材と前記導電体とを組み合わせた全体の長さが、通信可能な長さに設定されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のRFID情報媒体。
【請求項5】
前記データ通信における通信方式が電波方式である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のRFID情報媒体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のRFID情報媒体を貼付された物品。
【請求項7】
前記RFID情報媒体は、前記物品に直に貼付されている請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記RFID情報媒体は、前記物品を包装する包装物に貼付されている請求項6に記載の物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−54751(P2013−54751A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−224292(P2012−224292)
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2008−536398(P2008−536398)の分割
【原出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月9日(2012.10.9)
【分割の表示】特願2008−536398(P2008−536398)の分割
【原出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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