説明

RFID用アンテナ、およびそれを備えた電子機器、それに用いるチップフェライト部品

【課題】低コストで安定した通信特性を得ることができるRFID用アンテナ、およびそれを備えた電子機器、それに用いるチップフェライト部品を提供する。
【解決手段】チップフェライト34を、アンテナ基板31のアンテナパターン32自体に表面実装することで、その搭載位置精度を高めて、アンテナ特性のばらつきを抑え、生産性を高める。また、各チップフェライト34の電極と、アンテナパターンとの半田付け部分に、それぞれ半田フィレットを形成し、アンテナパターン32の断面積を実質的に増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)機能を実現するRFID用アンテナ、およびそれを備えた電子機器、それに用いるチップフェライト部品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の携帯電話端末には、電波を用いてデータの記録または読み出しを行い、アンテナを介して外部と通信を行うことで認識を行うRFID機能が標準的に搭載されている。このようなRFID機能は、携帯電話端末に限らず、その他の各種電子機器にも備えることができる。
【0003】
RFID機能は、メモリを搭載した半導体チップからなる制御部と、アンテナとから構成される。メモリには、電子機器のそれぞれに個別に割り当てられたID情報等が格納されている。外部のリーダ/ライタからアンテナに無線でコマンドを送信すると、制御部では、メモリに対して、データの記録または読み出しを行う。
図8、図9に示すように、RFID機能を構成するアンテナ1は、FPC(Flexible Printed Circuits)やガラスエポキシ樹脂からなるアンテナ基板2と、アンテナ基板2上にループ状に形成されたアンテナパターン3と、制御部に電気的に接続される接続端子4A、4Bと、アンテナパターン3の切り返し用の貫通ビア5と、を備える。
【0004】
ところで、電子機器においては、RFID機能以外にも、各種の機能を備えており、これらの機能を実現するために、各種の部品が備えられている。すると、これらの部品が金属等の導電性材料からなる場合、RFID機能を構成するアンテナ1における通信特性が悪影響を受けることがある。
特許文献1、2には、アンテナ基板2上に、アンテナパターン3を覆うようにフェライト系材料からなる磁性体シート6を積層し、周囲に存在する金属等の導電性材料からなる部品との間に磁性体シート6を介在させて、アンテナ1の周囲の導電性材料による影響を軽減する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−285709号公報
【特許文献2】特開2008−97071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような構成においては、以下に示すような問題が存在する。
まず、磁性体シート6を積層する場合、生産工程においては、アンテナパターン3が形成されたアンテナ基板2に磁性体シート6を貼り付ける工程が必須となり、生産性が悪い。さらに、磁性体シート6の貼り付け作業を手作業で行う場合、その貼り付け位置精度は、±1mm程度であり、これによりアンテナ1における通信特性にばらつきが生じることもある。さらに、フェライト系材料をシート状とした磁性体シート6は、材料自体高価であり、しかも磁性体シート6でアンテナパターン3の全体を覆うため、費用対効果の面において向上の余地がある。
そこでなされた本発明の目的は、低コストで安定した通信特性を得ることのできるRFID用アンテナ、およびそれを備えた電子機器、それに用いるチップフェライト部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のRFID用アンテナは、導電性材料からなるアンテナパターンが形成されたアンテナ基板と、アンテナパターン上に表面実装された磁性材料からなるチップ部品と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のRFID用アンテナを備えたことを特徴とする電子機器とすることもできる。
【0009】
また、本発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のRFID用アンテナに用いられ、フェライト系材料からなる磁性材料部と、複数の電極と、のみから構成され、アンテナ基板上に形成されたアンテナパターンに表面実装可能とされていることを特徴とするチップフェライト部品とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁性材料からなるチップ部品を、アンテナ基板のアンテナパターンに表面実装するようにした。チップ部品は、表面実装装置によりアンテナ基板に高い位置精度で実装することができるため、アンテナ特性のばらつきを抑え、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における携帯電話端末を示す斜視図である。
【図2】RFID通信部の構成を示す図である。
【図3】アンテナの構成を示す平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】(a)はチップフェライトをアンテナパターン上に表面実装した状態を示す断面図、(b)はチップフェライトを電極が形成された底面側から見た図である。
【図6】チップフェライトビーズを示す図である。
【図7】他の実施形態を示す図であり、チップフェライトをアンテナパターン上に表面実装した状態を示す断面図である。
【図8】従来のアンテナの構成を示す平面図である。
【図9】図8の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子機器を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
図1に本発明を適用した携帯電話端末(電子機器)10の構成を示す。
図1に示すように、携帯電話端末10は、画像や文字、映像等の各種情報を表示するモニター部を有した表示筐体11Aと、ユーザが携帯電話端末10を操作するための操作キー12等を備えた本体筐体11Bとを備えている。
これら表示筐体11Aと本体筐体11Bとは、それぞれの一辺側において、ヒンジにより回転可能に連結された折り畳み式とされている。ただし、これは一例に過ぎず、携帯電話端末10は、折り畳み式に限らず、表示筐体11Aと本体筐体11Bとが一体化されたものであっても良い。
【0014】
そして、本体筐体11Bの内部には、携帯電話端末10の動作を制御する制御基板や電源となるバッテリーパックが内蔵されている。
【0015】
図2に示すように、表示筐体11A、本体筐体11Bの内部には、RFID通信部20が内蔵されている。RFID通信部20は、磁界結合を行うアンテナ(RFID用アンテナ)21と、制御チップ22とから構成されている。制御チップ22は、アンテナ21と電気的に接続するための接続コネクタ23と、予め定められたプログラムに基づいた動作制御を行う制御部24と、制御部24とアンテナ21との間でやり取りする信号の変換を行うRF部25とを備える。
【0016】
本実施形態においては、アンテナ21は、表示筐体11Aの内部に、モニター部の背面側に位置するよう設けられている。
図3、図4に示すように、アンテナ21は、表面実装(Surface Mount Technology)が可能なアンテナ基板31と、アンテナ基板31の表面に形成されたアンテナパターン32と、アンテナパターン32の端部に設けられた接続端子33A、33Bと、アンテナパターン32に表面実装されたチップフェライト(チップ部品、チップフェライト部品)34と、アンテナパターン32のパターン切り返し用のジャンパ抵抗35と、を備えている。
【0017】
アンテナパターン32は、一方の接続端子33Aから、アンテナ基板31の外周部から内周部に向けてループ状(渦巻き状)に多重に巻き回されて形成されている。アンテナパターン32の内周側の端部32eは、ジャンパ抵抗35を介し、アンテナパターン32の外周側に設けられた他方の接続端子33Bに接続されている。
【0018】
このようなアンテナパターン32上には、アンテナパターン32が連続する方向に沿って多数のチップフェライト34が表面実装されている。
図5(a)、(b)に示すように、各チップフェライト34は、フェライト本体(磁性材料部)34aと、フェライト本体34aに設けられた一対の電極34b、34cとから構成されている。ここで、チップフェライト34は、フェライト本体34aが、電極34b、34cの上方(チップフェライト34をアンテナ基板31の表面に実装した状態で、アンテナ基板31から離間した側)を覆うように設けられている。
図5(a)に示したように、各チップフェライト34は、ループ状に多重に巻き回されたアンテナパターン32を、径方向に跨ぐよう設けられている。各チップフェライト34において、一方の電極34bは外周側のアンテナパターン32aに電気的に接続され、他方の電極34cは内周側のアンテナパターン32cに電気的に接続されている。
ここで、各チップフェライト34の電極34b、34cと、アンテナパターン32a、32cとの半田付け部分に、それぞれ半田フィレット36が形成されている。
【0019】
このようなアンテナ21は、予めアンテナパターン32を形成しておいたアンテナ基板31に、チップフェライト34を表面実装する。このときには、チップフェライト34をアンテナ基板31上にセットし、アンテナ基板31のアンテナパターン32にチップフェライト34を半田付けするが、これらの作業は表面実装装置により自動的に行うことができる。
しかるのち、アンテナ21の接続端子33A、33Bに、制御チップ22の接続コネクタ23を接続し、表示筐体11A、本体筐体11Bに内蔵させることで、アンテナ21を構成することができる。
【0020】
上述したような構成によれば、複数のチップフェライト34を、アンテナ基板31のアンテナパターン32自体に表面実装することで、図8に示したような従来の磁性体シート6を用いた場合と同等のアンテナ特性を得ることができる。しかも、チップフェライト34は表面実装装置によりアンテナ基板31上に自動的に実装することができ、その搭載位置精度は±0.1mm程度と極めて高い。したがって、アンテナ特性のばらつきを抑え、生産性を高めることができる。
【0021】
また、図8に示した従来のアンテナ1においては、アンテナパターン3のパターン幅が例えば35μm程度であり、断面積が小さいために、アンテナ1のQ値を高く確保できない。
これに対し、本実施形態で示した構成によれば、各チップフェライト34の電極34b、34cと、アンテナパターン32a、32cとの半田付け部分に、それぞれ半田フィレット36が形成されている。これにより、アンテナパターン32が連続する方向に直交する断面において、アンテナパターン32a、32b、32cのみの断面積に比較し、半田フィレット36が形成されている分、アンテナパターン32の断面積が実質的に増大している。これにより、アンテナパターン32の直列抵抗が低減するのでアンテナ21のQ値を高めることができ、アンテナ特性が向上する。
【0022】
また、図8に示した従来のアンテナ1においては、接続端子4A、4Bを近接して並べて設けている。このような構成においては、ループ状のアンテナパターン3の内周側の端部3aを、アンテナパターン3の外周側に位置する接続端子4Bに接続する必要がある。このため貫通ビア5、5を、端部3aと、接続端子4Bに接続されたアンテナパターン3とに形成し、これらをアンテナ基板2の裏面側で電気的に接続する必要があり、アンテナ基板2に表裏2層構造のものを用いる必要があった。
これに対し、本実施形態で示した上記構成によれば、アンテナパターン32の内周側の端部32eは、ジャンパ抵抗35を介して他方の接続端子33Bに接続されている。ジャンパ抵抗35は、アンテナ基板31において、チップフェライト34が実装されている側と同じ側に表面実装できる。したがって、1層構造のアンテナ基板31においても、接続端子33A、33Bを近接させて隣接させた構成を実現できる。
【0023】
また、上記構成において、チップフェライト34に代えて、図6に示すように、フェライト本体34dと、一対の電極34e、34fと、インダクタ34gとを備えたチップフェライトビーズ34Bを用いることも考えられるが、本発明においては、電極34e、34f間の導通は必要としないため、図5に示したように、フェライト本体34aと、電極34b、34cのみがあれば所要の機能を果たすことができる。これにより、チップフェライト34の構造を簡略化することができ、チップフェライト34を低コスト化できる。
さらに、チップフェライト34は、フェライト本体34aが、電極34b、34cの上方を覆うように設けられている。これにより、フェライト本体34aにより、アンテナパターン32を覆う面積を増大させることができ、アンテナ特性を有効に向上させることができる。
【0024】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、チップフェライト34は、図7に示すような構成とすることもできる。すなわち、図7に示すチップフェライト34は、図5に示したものと基本的に同様の構成であるが、フェライト本体34aに、電極34b、34cの間に位置する中央電極34hを備えている。これにより、アンテナパターン32において、外周側のアンテナパターン32aと内周側のアンテナパターン32cとの間に位置する中間部のアンテナパターン32bに対しても、チップフェライト34を中央電極34hにより半田付けすることができる。これにより、中間部のアンテナパターン32bにおいても半田フィレット36を形成することができて直列抵抗値を下げることが可能となり、さらにQ値の高いアンテナ21を構成することが可能である。
また、携帯電話端末10において、アンテナ21以外の部分については、その構成を何ら限定するものではなく、適宜他の構成を採用することができる。
さらに、携帯電話端末10に限らず、PHS(Personal Handy-phone System)、トランシーバ、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯音楽プレーヤー等、RFID機能を有した各種電子機器にも上記実施形態で示した構成を同様に適用することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 携帯電話端末(電子機器)
11A 表示筐体
11B 本体筐体
20 RFID通信部
21 アンテナ(RFID用アンテナ)
22 制御チップ
23 接続コネクタ
24 制御部
31 アンテナ基板
32、32a、32b、32c アンテナパターン
33A、33B 接続端子
34 チップフェライト(チップ部品、チップフェライト部品)
34a フェライト本体(磁性材料部)
34b、34c 電極
34h 中央電極
35 ジャンパ抵抗
36 半田フィレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料からなるアンテナパターンが形成されたアンテナ基板と、
前記アンテナパターン上に表面実装された磁性材料からなるチップ部品と、
を備えることを特徴とするRFID用アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナパターンは、前記アンテナ基板上において多重に巻き回され、前記チップ部品は、前記アンテナパターンが連続する方向に沿って複数個が設けられ、それぞれの前記チップ部品は、外周側の前記アンテナパターンと内周側の前記アンテナパターンとを跨ぐように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のRFID用アンテナ。
【請求項3】
前記チップ部品は、フェライト系材料からなる磁性材料部と、前記アンテナパターンに電気的に接続される電極と、を備えることを特徴とする請求項2に記載のRFID用アンテナ。
【請求項4】
前記磁性材料部は、前記アンテナパターンに電気的に接続された前記電極を、前記アンテナパターンから離間した側において覆うよう設けられていることを特徴とする請求項3に記載のRFID用アンテナ。
【請求項5】
前記電極が前記アンテナパターンに電気的に接続される部分には、半田付けによる半田フィレットが形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のRFID用アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナパターンの外周側に設けられた接続端子と、前記アンテナパターンの内周側の端部とが、前記アンテナ基板上に表面実装されたジャンパ抵抗により電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のRFID用アンテナ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のRFID用アンテナを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のRFID用アンテナに用いられ、
フェライト系材料からなる磁性材料部と、複数の電極と、のみから構成され、
アンテナ基板上に形成されたアンテナパターンに表面実装可能とされていることを特徴とするチップフェライト部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−74987(P2012−74987A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219182(P2010−219182)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】