説明

RFID評価システム、目標位置指示装置及び目標位置指示プログラム

【課題】導入する場所でRFIDシステムを容易に評価できるRFID評価システム、目標位置指示装置及び目標位置指示プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】RFIDシステムを評価するRFID評価システム1であって、操作者から手動による操作を受け付けてRFIDタグ16の位置を可変させ、且つ、RFIDタグ16の姿勢を自動で可変させるタグ位置姿勢可変手段12と、RFIDタグ16に対して試験用の無線信号の発信、及びRFIDタグ16から送信された無線信号の受信を行うアンテナ手段10と、RFIDタグ16の位置及び姿勢の組み合わせ毎にアンテナ手段10を制御してRFIDタグ16の応答電波強度の計測を行う制御手段11とを有し、制御手段11は、RFIDタグ16の位置を計測する位置計測手段14と、操作者に、RFIDタグ16を目標位置に移動させるための情報を提供する情報提供手段13と、を有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID評価システム、目標位置指示装置及び目標位置指示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグについて無線認証特有の相対姿勢の自由度を考慮して評価を行うRFIDタグの評価システムは従来から知られている。例えばRFIDタグの評価システムの一例としては、評価対象のRFIDタグを保持する被試験体固定部を移動自在に支持する細長い板状の動径方向レールと、前記動径方向レール上で被試験体固定部を前後に移動させて任意の動径に変化させる動径駆動部と、前記動径方向レールの一端の基部を原点として動径方向レールを水平面に対して上下方向に回転させて任意の仰角方向に駆動する仰角駆動部と、前記動径方向レールを前記原点に位置する水平面に対して垂直な垂直部を軸として任意の方位角に回転するよう駆動する方位角駆動部とを備えた位置決め装置を設け、前記原点の位置にRFIDタグに対して試験用の無線信号の発信とRFIDタグから送信された無線信号の受信を行うアンテナを設け、前記各動径、仰角、方位角の各値の組み合わせ毎に前記アンテナから前記RFIDタグに対して無線信号の送信と、前記RFIDタグから受信した無線信号を受信して、各動径、仰角、方位角を変化させて評価する試験装置とを備えることを特徴とするRFIDタグの評価システムがあった(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記したRFIDタグの評価システムは、位置決め装置が産業用ロボットである場合、労働安全衛生法などの規定に基づき、運転中の位置決め装置に人間が接触することによる危険を防止するため、作業現場の状況、作業形態等を勘案して、柵や囲いなどを位置決め装置の可動範囲の外側に設けるといった措置を講ずる必要があった。
【0004】
したがって、上記したRFIDタグの評価システムは、RFIDシステムを実際に導入する場所に持ち込むことが容易でないという問題があった。なお、上記したRFIDタグの評価システムは、例えばRFIDシステムを実際に導入する場所に近似する環境を電波暗室などに整え、RFIDタグの評価を行ったとしても、RFIDシステムを実際に導入する場所におけるRFIDタグの評価と異なる場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、導入する場所でRFIDシステムを容易に評価できるRFID評価システム、目標位置指示装置及び目標位置指示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、RFIDシステムを評価するRFID評価システムであって、操作者から手動による操作を受け付けてRFIDタグの位置を可変させ、且つ、前記RFIDタグの姿勢を自動で可変させるタグ位置姿勢可変手段と、前記RFIDタグに対して試験用の無線信号の発信、及び前記RFIDタグから送信された無線信号の受信を行うアンテナ手段と、前記RFIDタグの位置及び姿勢の組み合わせ毎に前記アンテナ手段を制御して前記RFIDタグの応答電波強度の計測を行う制御手段とを有し、前記制御手段は、前記RFIDタグの位置を計測する位置計測手段と、前記操作者に、前記RFIDタグを目標位置に移動させるための情報を提供する情報提供手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導入する場所でRFIDシステムを容易に評価できるRFID評価システム、目標位置指示装置及び目標位置指示プログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態のRFID評価システムの一例の構成図である。
【図2】制御ユニットの一例の構成図である。
【図3】タグ位置姿勢可変ユニットの一例の構成図である。
【図4】PCの一例のハードウェア構成図である。
【図5】RFID評価システムの処理の一例のフローチャートである。
【図6】複数の計測点の一例のイメージ図である。
【図7】クレーンの姿勢を計算する処理の一例のフローチャートである。
【図8】クレーンの方位角を計算する処理の一例のイメージ図である。
【図9】絶対座標系、姿勢制御座標系の設定について説明する一例の説明図である。
【図10】投影パターン及びスクリーンパターンの一例のイメージ図である。
【図11】スクリーン上に投影された投影パターンの一例のイメージ図である。
【図12】目標位置指示方法の他の例の説明図である。
【図13】目標位置指示方法の他の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
RFIDシステムを導入する場合はRFIDタグを必要な場所で検知し、必要でない場所で検知しないようにRFIDシステムを設計する必要がある。特に長距離(〜数m)で認識を行うUHF帯のRFIDシステムの場合は、電波が目に見えない上、広範囲での検知となるため、判断が難しい。
【0012】
このようにRFIDシステムを導入する場合は、見えない電波を評価して、実際のRFIDシステムが安定して稼働するか、言い換えればRFIDタグを読めるか、RFIDタグの読み落としがないか、余計なRFIDタグを読まないか、を評価する必要がある。
【0013】
実際のRFIDシステムが安定して稼働するかを判断する為には、実際にRFIDシステムを導入する場所の空間内において、RFIDタグがどのような位置にどのような姿勢で存在するとき(どのような位置姿勢のとき)に、どのような応答電波強度となるのかをRFIDタグの応答電波強度分布として把握しておく必要がある。
【0014】
RFIDタグの応答電波強度分布を把握しておくことで、RFIDタグの安定した運用条件(どのような姿勢で、どのような範囲を通過させていくのが良いのか)は認識されることになる。
【0015】
運用前のRFIDタグの応答電波強度分布を正確に把握しておければ、RFIDシステムは実際の運用後に何らかの原因でRFIDタグの読み取り性能が低下した場合にもRFIDタグの応答電波強度分布を把握し、運用前のRFIDタグの応答電波強度分布と比較することで原因の究明、対処法の提案などを短時間で正確に行える。
【0016】
そこで、本実施の形態のRFID評価システムは、実際にRFIDシステムを導入する場所に容易に持ち込め、実際にRFIDシステムを導入する場所の空間内でRFIDタグの位置姿勢を任意に指定し、そのときの応答電波強度を計測することで、実際にRFIDシステムを導入する場所の空間内でのRFIDタグの応答電波強度分布を把握し、RFIDシステムの評価ができるものとしている。
【0017】
(構成図)
図1は本実施の形態のRFID評価システムの一例の構成図である。図1のRFID評価システム1はアンテナユニット10、制御ユニット11、タグ位置姿勢可変ユニット12を有する。図1では2つのアンテナユニット10によりゲートを構成している。アンテナユニット10は2つに限定されるものではない。
【0018】
アンテナユニット10は図1において図示を省略しているが、制御ユニット11のPC15と通信可能に接続されている。なお、アンテナユニット10とPC15との接続の形態は有線、無線を問わない。アンテナユニット10はPC15からの制御によりタグ位置姿勢可変ユニット12が保持しているRFIDタグ16に対して試験用の無線信号の発信とRFIDタグ16から送信された無線信号の受信とを行う。アンテナユニット10は受信した無線信号をPC15に送信する。RFIDリーダライタは例えばアンテナユニット10に内蔵されている。RFIDリーダライタはアンテナユニット10とPC15との間に別途、設けられていてもよい。アンテナユニット10はRFIDタグ検知手段の一例である。
【0019】
制御ユニット11はプロジェクタ13、ステレオカメラ14、PC15を有する。プロジェクタ13はPC15の制御によりRFIDタグ16を目標位置に移動させる為の情報をタグ位置姿勢可変ユニット12のスクリーン17に投影し、タグ位置姿勢可変ユニット12を操作する操作者に指示する。RFIDタグ16を目標位置に移動させる為の情報はタグ位置姿勢可変ユニット12のPC20に表示させてもよい。
【0020】
ステレオカメラ14はPC15の制御によりタグ位置姿勢可変ユニット12のマーカ18を撮影する。マーカ18はタグ位置姿勢可変ユニット12のクレーン19の所定位置に取り付けられている。
【0021】
PC15はステレオカメラ14による撮影結果からマーカ18の3次元位置を計測することができる。PC15はクレーン19に取り付けられたRFIDタグ16とマーカ18との位置関係を予め設定しておくことで、マーカ18の3次元位置からRFIDタグ16の3次元位置を計算できる。
【0022】
また、PC15はステレオカメラ14による撮影結果からマーカ18の3次元位置を計測することでクレーン19の方位角を計算し、タグ位置姿勢可変ユニット12にクレーン19の方位角を送信できる。
【0023】
タグ位置姿勢可変ユニット12はクレーン19の先端に取り付けられているRFIDタグ16の位置を移動させる移動機構と、クレーン19の先端に取り付けられているRFIDタグ16の姿勢を制御する姿勢制御機構と、PC20とを有する。
【0024】
クレーン19にはRFIDタグ16、スクリーン17、マーカ18、PC20、重力加速度センサ(図示せず)が取り付けられている。例えばマーカ18はLEDにより実現できる。例えばマーカ18は異なる色のLEDにより実現することが望ましい。
【0025】
タグ位置姿勢可変ユニット12の移動機構は、操作者がタグ位置姿勢可変ユニット12の位置を手動で移動させ、又は、クレーン19の仰俯角及び方位角を手動で変化させることで、クレーン19の先端に取り付けられたRFIDタグ16の位置を移動させる。タグ位置姿勢可変ユニット12の姿勢制御機構は、PC20の制御によりRFIDタグ16の姿勢を自動で変化させる。
【0026】
このように、タグ位置姿勢可変ユニット12の移動機構は、操作者が手動でタグ位置姿勢可変ユニット12の位置、又は、クレーン19の仰俯角及び方位角を変化させるものであるため、産業用ロボットでなく、柵や囲いなどをタグ位置姿勢可変ユニット12の可動範囲の外側に設けるといった措置を講ずる必要がない。したがって、タグ位置姿勢可変ユニット12はRFIDシステム1を実際に導入する場所に持ち込むことが容易となる。
【0027】
クレーン19の方位角は上記したように制御ユニット11側から受信する。クレーン19の仰俯角(ピッチ角)は重力加速度センサにより計測される。PC20はクレーン19の方位角及び仰俯角によりクレーン19の姿勢を計算できる。したがって、PC20は計算したクレーン19の姿勢に基づき、アンテナユニット10に対するRFIDタグ16の相対姿勢が所定の姿勢となるように、クレーン19の先端に取り付けられているRFIDタグ16の姿勢を制御できる。
【0028】
アンテナユニット10に対するRFIDタグ16の相対姿勢を所定の姿勢に制御したあとでPC20は制御ユニット11のPC15に応答電波強度の計測を要求する。PC15はアンテナユニット10を制御してRFIDタグ16の応答電波強度を計測する。応答電波強度の計測が終了すると、PC15は応答電波強度の計測の終了をタグ位置姿勢可変ユニット12のPC20に通知する。
【0029】
制御ユニット11のPC15とタグ位置姿勢可変ユニット12のPC20とは通信可能に接続される。なお、制御ユニット11のPC15とタグ位置姿勢可変ユニット12のPC20との接続形態は有線、無線を問わない。
【0030】
したがって、図1のRFID評価システム1では、クレーン19の先端に取り付けられているRFIDタグ16を、タグ位置姿勢可変ユニット12の操作者がスクリーン17に投影された指示に従って導入する場所の空間内の任意の位置に移動することにより、RFIDタグ16の姿勢が自動で制御され、応答電波強度を計測できる。
【0031】
図2は制御ユニットの一例の構成図である。図2の制御ユニット11はプロジェクタ13及びステレオカメラ14が三脚21に取り付けられている。プロジェクタ13及びステレオカメラ14はPC15とケーブルで通信可能に接続されている。なお、図2の制御ユニット11ではPC15が三脚21に取り付けられていないが、PC15を三脚21に取り付ける構成であってもよい。
【0032】
図3は、タグ位置姿勢可変ユニットの一例の構成図である。図3のタグ位置姿勢可変ユニット12はペデスタル22にクレーン19が方位角及び仰俯角を可動できるように取り付けられている。ペデスタル22は車輪がついており、タグ位置姿勢可変ユニット12の位置の移動を容易にしている。RFIDタグ16の位置を移動させる移動機構はクレーン19の方位角及び仰俯角の可動とペデスタル22によるタグ位置姿勢可変ユニット12の位置の移動により実現される。
【0033】
図3のクレーン19には、RFIDタグ16、スクリーン17、3つのマーカ18、PC20、重力加速度センサ23、バッテリ24、バランスウェイトユニット25が取り付けられている。
【0034】
クレーン19の先端には、PC20から姿勢を制御できるようにRFIDタグ16が取り付けられている。例えばRFIDタグ16の姿勢を制御する姿勢制御機構はRFIDタグ16が取り付けられた部位の方向をモータ等でPC20から制御することにより実現できる。
【0035】
スクリーン17は操作者から見やすい方向を向かせることができるようにクレーン19へ取り付けられている。マーカ18はLEDにより実現できる。重力加速度センサ23はクレーン19の仰俯角(ピッチ角)を計測してPC20に送信する。バッテリ24は姿勢制御機構やマーカ18で使用する電力を供給する。また、バランスウェイトユニット25はクレーン19の方位角及び仰俯角を可動させるときに必要な力を軽減するためのバランスウェイトである。
【0036】
制御ユニット11のPC15とタグ位置姿勢可変ユニット12のPC20とは例えば図4に示すようなハードウェア構成により実現される。図4はPCの一例のハードウェア構成図である。ここではPC15を一例として説明する。
【0037】
PC15はバス39で相互に接続されている入力装置31、出力装置32、記録媒体読取装置33、補助記憶装置34、主記憶装置35、演算処理装置36及びインタフェース装置37を含むように構成される。
【0038】
入力装置31はキーボードやマウス等である。入力装置31は各種信号を入力するために用いられる。出力装置32はディスプレイ装置等である。出力装置32は各種ウインドウやデータ等を表示するために用いられる。インタフェース装置37は、モデム、LANカード、USB(Universal Serial Bus)等である。インタフェース装置37は例えばプロジェクタ13、ステレオカメラ14などの他の機器、インターネットやLANなどのネットワークに接続するために用いられる。
【0039】
制御ユニット11を実現する為の目標位置指示プログラムは、PC15を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。目標位置指示プログラムは例えば記録媒体38の配布やネットワーク等からのダウンロードなどによって提供される。
【0040】
記録媒体38はCD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0041】
目標位置指示プログラムを記録した記録媒体38が記録媒体読取装置33にセットされると、目標位置指示プログラムは記録媒体38から記録媒体読取装置33を介して補助記憶装置34にインストールされる。ネットワーク等からダウンロードされた目標位置指示プログラムはインタフェース装置37を介して補助記憶装置34にインストールされる。
【0042】
補助記憶装置34は目標位置指示プログラムを含むプログラム、ファイル、データ等を格納する。主記憶装置35は目標位置指示プログラムの起動時に補助記憶装置34から目標位置指示プログラムを読み出して格納する。演算処理装置36は主記憶装置35に格納された目標位置指示プログラムに従って各種処理を実現する。
【0043】
(処理手順)
RFID評価システム1は例えば図5に示すフローチャートの手順で処理を行う。図5はRFID評価システムの処理の一例のフローチャートである。図5のフローチャートの処理は例えば操作者がPC20から指示することで開始される。
【0044】
ステップS1において、PC15はステレオカメラ14を制御してタグ位置姿勢可変ユニット12のマーカ18を撮影する。PC15はステレオカメラ14による撮影結果からマーカ18の3次元位置を計測する。そして、PC15はクレーン19に取り付けられたRFIDタグ16とマーカ18との位置関係と、計測したマーカ18の3次元位置からRFIDタグ16の3次元位置を計算する。
【0045】
ステップS2において、PC15は計算したRFIDタグ16の3次元位置と次の計測点である目標位置とに基づき、操作者がRFIDタグ16を目標位置に移動させる為の情報を作成する。操作者がRFIDタグ16を目標位置に移動させる為の情報の詳細は後述する。そして、PC15はプロジェクタ13を制御して、操作者がRFIDタグ16を目標位置に移動させる為の情報を、タグ位置姿勢可変ユニット12のスクリーン17に投影させる。
【0046】
PC15は計算したRFIDタグ16の3次元位置が次の計測点である目標位置となるまでステップS1〜S3の処理を繰り返す。操作者はスクリーン17に投影された情報を確認しながらタグ位置姿勢可変ユニット12の移動機構によりRFIDタグ16を目標位置に移動させる。ステップS3において、PC15はRFIDタグ16の3次元位置が次の計測点である目標位置となった、言い換えればRFID16が目標位置に移動したと判定すると、ステップS4の処理を行う。
【0047】
ステップS4において、PC15はステレオカメラ14による撮影結果からマーカ18の3次元位置を計測することでクレーン19の方位角を計算する。PC15はRFIDタグ16が目標位置に移動したと判定すると、クレーン19の方位角をPC20に送信することで、RFIDタグ16が目標位置に移動した旨を通知できる。
【0048】
PC20はクレーン19の方位角と重力加速度センサにより計測されたクレーン19の仰俯角とによりクレーン19の姿勢を計算する。なお、ステップS4の処理の詳細は後述する。ステップS4の処理は、クレーン19の仰俯角及び方位角を変化させることで同時に変化してしまったRFIDタグ16の姿勢を、クレーン19の姿勢から求めるためのものである。
【0049】
ステップS5において、PC20は計算したクレーン19の姿勢に基づき、アンテナユニット10に対するRFIDタグ16の相対姿勢が所定の姿勢となるように、クレーン19の先端に取り付けられているRFIDタグ16の姿勢を制御する。アンテナユニット10に対するRFIDタグ16の相対姿勢を所定の姿勢に制御したあとでPC20は制御ユニット11のPC15に応答電波強度の計測を要求する。PC20はPC15に応答電波強度の計測を要求することで、アンテナユニット10に対するRFIDタグ16の相対姿勢が所定の姿勢になった旨を通知できる。
【0050】
ステップS6において、PC15はアンテナユニット10を制御してRFIDタグ16の応答電波強度を計測する。応答電波強度の計測が終了すると、PC15は応答電波強度の計測の終了をタグ位置姿勢可変ユニット12のPC20に通知する。
【0051】
ステップS7において、PC20はステップS3で移動した計測点においてRFIDタグ16の全ての姿勢における応答電波強度の計測が終了したかを判定する。なお、応答電波強度を計測する為のRFIDタグ16の姿勢は予め複数設定しておく。ステップS3で移動した計測点においてRFIDタグ16の全ての姿勢における応答電波強度の計測が終了していなければ、PC20はステップS5に戻る。
【0052】
ステップS3で移動した計測点においてRFIDタグ16の全ての姿勢における応答電波強度の計測が終了していれば、PC20はステップS8において、全ての計測点の応答電波強度の計測が終了したかを判定する。全ての計測点の応答電波強度の計測が終了していなければ、PC20はステップS1に戻り、次の計測点に対する処理を開始する。全ての計測点の応答電波強度の計測が終了していれば、PC20は処理を終了する。
【0053】
図5に示したフローチャートの処理により、RFID評価システム1は例えば図6に示すような複数の計測点におけるRFID16の全ての姿勢の応答電波強度の計測を行うことができる。
【0054】
図6は複数の計測点の一例のイメージ図である。図6は範囲1.2m、測定間隔30cmの場合の計測点を表している。図6では計測点が交点で表される。RFID評価システム1は測定方向をx→z→yの順番に行い、測定する空間の端まで測定したあと、折り返して計測する。図6は測定する順番を矢印で示している。
【0055】
図7はクレーンの姿勢を計算する処理の一例のフローチャートである。図8はクレーンの方位角を計算する処理の一例のイメージ図である。ここでは、図7のフローチャートに含まれるクレーンの方位角を計算する処理について、図8を参照しつつ説明する
ステップS11において、PC15はステレオカメラ14を制御してタグ位置姿勢可変ユニット12のマーカ18−1、18−2を撮影する。PC15はステレオカメラ14による撮影結果からマーカ18−1の3次元位置[x1、y1、z1]とマーカ18−2の3次元位置[x2、y2、z2]を計測する。
【0056】
ステップS12において、PC15はマーカ18−1、18−2の三次元位置から以下の式(1)を用いてクレーン19の方位角wを計算する。
【0057】
w=tan−1{(x2−x1)/(z2−z1)}…(1)
ステップS13において、PC15は計算したクレーン19の方位角wをPC20に送信する。ステップS14において、PC20はクレーン19に取り付けられた重力加速度センサ23からクレーン19の仰俯角を計測する。ステップS15において、PC20はクレーン19の方位角w及び仰俯角によりクレーン19の姿勢を計算する。
【0058】
ステップS15におけるクレーン19の方位角w及び仰俯角によりクレーン19の姿勢を計算する処理の詳細について更に説明する。PC20は絶対座標系Σcとクレーン19の姿勢制御座標系Σsとを図9のように設定する。図9は絶対座標系、姿勢制御座標系の設定について説明する一例の説明図である。
【0059】
絶対座標系Σcは三脚21に取り付けられた雲台の回転角を中心としたときのステレオカメラ14の座標系(xc、yc、zc)となる。姿勢制御座標系Σsはクレーン19の座標系(xs、ys、zs)となる。クレーン19の仰俯角(ピッチ角)pはクレーン先端が上に上がる方向を正とする。クレーン19の方位角(ヨー角)wは上から見たとき時計回りに回転する方向を正とする。
【0060】
また、絶対座標系Σcにおける姿勢制御座標系Σsの姿勢を
【0061】
【数1】

とする。ピッチ角p=0、方位角w=0のときの
【0062】
【数2】

を姿勢制御座標系Σsのデフォルト姿勢
【0063】
【数3】

とする。xc軸回りにp回転し、yc軸方向にw回転させる回転行列Rpwは、
【0064】
【数4】

とする。ピッチ角p、ヨー角wだけ回転したクレーン19の絶対座標系Σcにおける姿勢制御座標系Σsの姿勢は
【0065】
【数5】

となる。以上のように、PC20はクレーン19の方位角w及び仰俯角pによりクレーン19の絶対座標系Σcにおけるクレーン19の姿勢を計算できる。
【0066】
ここでは更に、RFIDタグ16を目標位置に移動させる為の情報の一例について図10及び図11を参照しつつ説明する。図10は投影パターン及びスクリーンパターンの一例のイメージ図である。図10(A)はプロジェクタ13からスクリーン17に投影される投影パターンのイメージ図である。図10(B)はスクリーン17に表示しておくスクリーンパターンのイメージ図である。
【0067】
図11は、スクリーン上に投影された投影パターンの一例のイメージ図である。例えば目標位置からRFIDタグ16が奥行き後方向にずれている場合、スクリーン17上には図11(A)に示すような投影パターンが表示される。目標位置からRFIDタグ16が奥行き前方向にずれている場合、スクリーン17上には図11(B)に示すような投影パターンが表示される。
【0068】
目標位置からRFIDタグ16が左方向にずれている場合、スクリーン17上には図11(C)に示すような投影パターンが表示される。目標位置からRFIDタグ16が上方向にずれている場合、スクリーン17上には図11(D)に示すような投影パターンが表示される。
【0069】
RFIDタグ16が目標位置とあった場合、スクリーン17上には図11(E)に示すような投影パターンが表示される。操作者は図11(E)に示すような投影パターンが表示されると、RFIDタグ16の移動を終了する。このように、操作者はスクリーン17上に表示された投影パターンの形状を見ることで、RFIDタグ16を動かすべき方向を判断できる。
【0070】
なお、PC15はスクリーン17上に表示させる投影パターンを例えば目標位置に近づくにつれて赤→橙→黄→緑などに変化させることで、操作者がRFIDタグ16と目標位置との距離を理解し易くするようにしてもよい。
【0071】
以下では、操作者にRFIDタグ16を目標位置に移動させる為の目標位置指示の他の例と、クレーン19の姿勢を計算する処理の他の例とを説明する。
【0072】
操作者にRFIDタグ16を目標位置に移動させる為の目標位置指示は、図10及び図11に示した方法の他、以下のような方法がある。
【0073】
図12は目標位置指示方法の他の例の説明図である。図12の目標位置指示方法は指向性のある光を交差させるように照射することにより、光が重なった位置を目標位置として指示できる。RFIDタグ16が目標位置より遠い場合、タグ位置姿勢可変ユニット12側のスクリーン17には図12(A)に示すような照射パターンが表示される。RFIDタグ16が目標位置にある場合、タグ位置姿勢可変ユニット12側のスクリーン17には図12(B)に示すような照射パターンが表示される。RFIDタグ16が目標位置より近い場合、タグ位置姿勢可変ユニット12側のスクリーン17には図12(C)に示すような照射パターンが表示される。
【0074】
図12の目標位置指示方法はプロジェクタ13の代わりに指向性のある光を照射する目標位置指示部を設け、その目標位置指示部にパン、チルト機構を設ければよく、安価に実現できる。
【0075】
図13は目標位置指示方法の他の例の説明図である。図13の目標位置指示方法はプロジェクタ13からスクリーン17上に表示されているスクリーンパターン(模様)と同じ投影パターン(模様)を投影し、スクリーンパターンと投影パターンとが重なった位置を目標位置として指示できる。
【0076】
図13(A)はRFIDタグ16が目標位置より近い場合、RFIDタグ16が目標位置にある場合、RFIDタグ16が目標位置より遠い場合に、タグ位置姿勢可変ユニット12側のスクリーン17に表示される投影パターンを示している。
【0077】
また、図13(B)はRFIDタグ16が目標位置から横にずれている場合、RFIDタグ16が目標位置にある場合に、タグ位置姿勢可変ユニット12側のスクリーン17に表示される投影パターンを示している。
【0078】
操作者は投影パターンとスクリーンパターンとの大きさの違いからRFIDタグ16を動かすべき方向を判断できる。また、操作者はスクリーン17に投影された投影パターンからRFIDタグ16を動かすべき方向を判断できる。図13の目標位置指示方法はプロジェクタ13で投影パターンを投影するため、装置構成が簡単になり、複雑な指示を操作者に指示することもできる。
【0079】
その他、目標位置指示方法の他の例としては、タグ位置姿勢可変ユニット12の操作者の手元に指示パネルを設け、その指示パネルにタグ位置姿勢可変ユニット12を操作する方向を指示する方法がある。操作者は指示パネルに従って操作すればよい為、作業が簡単になる。
【0080】
また、目標位置指示方法の他の例としては、操作者にヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着させ、そのHMDに未計測の計測点(目標位置)を表示することで、タグ位置姿勢可変ユニット12を操作する方向を指示する方法がある。操作者はタグ位置姿勢可変ユニット12を操作する方向を直感的に判断できる。
【0081】
クレーン19の姿勢を計算する処理は、上記した方法の他、以下のような方法を利用することもできる。例えばタグ位置姿勢可変ユニット12に姿勢センサとして地磁気センサ及び重力加速度センサを搭載すれば、タグ位置姿勢可変ユニット12は姿勢センサからの計測値を元にクレーン19の姿勢を計算できる。
【0082】
また、タグ位置姿勢可変ユニット12はカメラを搭載し、外部のマーカ等を撮影することによりクレーン19の位置姿勢を計算できる。また、タグ位置姿勢可変ユニット12はマーカ18の代わりに超音波発信機をクレーン19に搭載し、ステレオカメラ14の代わりに離して配置された3個の超音波受信機に超音波を受信させることで、超音波の到達時間の違いからクレーン10の姿勢を計算できる。さらに、制御ユニット11はステレオカメラ14で撮影した撮影結果からマーカ18の3次元位置を計測することでクレーン19の方位角及び仰俯角を計測し、クレーン19の姿勢を計算することもできる。
【0083】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。なお、特許請求の範囲に記載したタグ位置姿勢可変手段はタグ位置姿勢可変ユニット12に相当する。アンテナ手段はアンテナユニット10に相当する。制御手段は制御ユニット11に相当する。位置計測手段はステレオカメラ14に相当する。情報提供手段はプロジェクタ13に相当する。第1通知手段はステップS13の処理に相当する。応答電波強度計測手段はステップS6の処理に相当する。姿勢制御手段及び第2通知手段はステップS5の処理に相当する。
【符号の説明】
【0084】
1 RFID評価システム
10 アンテナユニット
11 制御ユニット
12 タグ位置姿勢可変ユニット
13 プロジェクタ
14 ステレオカメラ
15 PC
16 RFIDタグ
17 スクリーン
18 マーカ
19 クレーン
20 PC
21 三脚
22 ペデスタル
23 重力加速度センサ
24 バッテリ
25 バランスウェイトユニット
31 入力装置
32 出力装置
33 記録媒体読取装置
34 補助記憶装置
35 主記憶装置
36 演算処理装置
37 インタフェース装置
38 記録媒体
39 バス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特許第4579599号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDシステムを評価するRFID評価システムであって、
操作者から手動による操作を受け付けてRFIDタグの位置を可変させ、且つ、前記RFIDタグの姿勢を自動で可変させるタグ位置姿勢可変手段と、
前記RFIDタグに対して試験用の無線信号の発信、及び前記RFIDタグから送信された無線信号の受信を行うアンテナ手段と、
前記RFIDタグの位置及び姿勢の組み合わせ毎に前記アンテナ手段を制御して前記RFIDタグの応答電波強度の計測を行う制御手段と
を有し、
前記制御手段は、前記RFIDタグの位置を計測する位置計測手段と、
前記操作者に、前記RFIDタグを目標位置に移動させるための情報を提供する情報提供手段と、
を有することを特徴とするRFID評価システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記RFIDタグが目標位置に移動した旨を前記タグ位置姿勢可変手段に通知する第1通知手段と、
前記アンテナ手段に対する前記RFIDタグの相対姿勢が所定の姿勢になった旨を前記タグ位置姿勢可変手段から通知されると、前記アンテナ手段を制御して前記RFIDタグの応答電波強度の計測を行う応答電波強度計測手段と、
を有し、
前記タグ位置姿勢可変手段は、前記制御手段から前記RFIDタグが目標位置に移動した旨を通知されると、前記アンテナ手段に対する前記RFIDタグの相対姿勢が所定の姿勢になるように順次制御する姿勢制御手段と、
前記アンテナ手段に対する前記RFIDタグの相対姿勢が所定の姿勢になった後で前記アンテナ手段に対する前記RFIDタグの相対姿勢が所定の姿勢になった旨を前記制御手段に通知する第2通知手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のRFID評価システム。
【請求項3】
前記位置計測手段は、前記タグ位置姿勢可変手段に取り付けられているマーカを撮影して前記マーカの3次元位置を計測し、前記マーカと前記RFIDタグとの位置関係から前記RFIDタグの3次元位置を計算すること
を特徴とする請求項2記載のRFID評価システム。
【請求項4】
前記情報提供手段は、前記RFIDタグを目標位置に移動させるための情報を、前記タグ位置姿勢可変手段に取り付けられているスクリーンに投影すること
を特徴とする請求項2又は3記載のRFID評価システム。
【請求項5】
前記タグ位置姿勢可変手段は、位置、方位角及び仰俯角を手動で変化できるように固定されたクレーンと、
前記クレーンに取り付けられている前記マーカと、
前記クレーンに取り付けられている前記スクリーンと、
姿勢を自動で制御できるように前記クレーンに取り付けられている前記RFIDタグと
を有することを特徴とする請求項4記載のRFID評価システム。
【請求項6】
操作者から手動による操作を受け付けてRFIDタグの位置を可変させ、且つ、前記RFIDタグの姿勢を自動で可変させるタグ位置姿勢可変手段と、
前記RFIDタグに対して試験用の無線信号の発信、及び前記RFIDタグから送信された無線信号の受信を行うアンテナ手段と、
前記RFIDタグの位置及び姿勢の組み合わせ毎に前記アンテナ手段を制御して前記RFIDタグの応答電波強度の計測を行う制御手段と
を有する、RFIDシステムを評価するRFID評価システムに含まれる目標位置指示装置であって、
前記RFIDタグの位置を計測する位置計測手段と、
前記操作者に、前記RFIDタグを目標位置に移動させるための情報を提供する情報提供手段と、
を有することを特徴とする目標位置指示装置。
【請求項7】
請求項6記載の目標位置指示装置としてコンピュータを機能させるための目標位置指示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−50802(P2013−50802A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187603(P2011−187603)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】