説明

RFID通信装置、RFID通信方法およびRFID通信プログラム

【課題】本発明は、複数のRFID規格が混在する環境であっても、煩雑な処理を行うことなく、意図したRFID規格を用いた通信を行うことができるRFID通信装置を提供する。
【解決手段】通信手段81は、複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信する。固定プロトコル記憶手段82は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルと、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールを記憶する。プロトコル特定手段83は、通信手段81が送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、その応答波が示すRFIDプロトコルとプロトコル規定ルールとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定する。通信手段81は、プロトコル特定手段83が特定したRFIDプロトコルのキャリアを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のRFID(Radio Frequency Identification)規格が混在する環境において、各RFID規格に応じた通信を行うRFID通信装置、RFID通信方法およびRFID通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を利用した認証 (認識) 技術として、RFIDが知られている。RFIDでは、例えば、認証対象のICタグを認証装置(リーダライタ)を用いて認証する。
【0003】
RFIDには、複数の規格が存在するため、例えば、周波数帯が異なる複数種類のRFIDに応じた読取書込(以下、読み書きと記すこともある。)を行うためには、それぞれの周波数帯やプロトコルに応じた装置を準備する必要がある。以下の説明では、RFIDプロトコルに対応するICタグのことを、単にRFIDと記すこともある。
【0004】
一方、近年、複数のRFID規格に対応した読取書込装置(以下、マルチプロトコル対応RFIDリーダライタと記すこともある。)が増加している。このような装置を利用すれば、1台の装置で複数種類のプロトコルに対応するICタグを読み書き出来るようになる。
【0005】
特許文献1には、搬送波の周波数が異なる複数種類の非接触式ICカードと通信を行う非接触式ICカードリーダライタが記載されている。特許文献1に記載されたリーダライタは、搬送波ごとに通信の時間帯を割り当てて、特定の周波数の搬送波で通信している間は他の周波数の搬送波の送信を停止または出力レベルを小さくする。特許文献1に記載されたリーダライタは、このような制御を行うことで、互いの搬送波が干渉することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4532970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述するように、RFIDには、複数のプロトコルが存在する。しかし、これら複数のプロトコル間で、通信を行う周波数帯が統一されることは困難な状況である。そのため、市場には複数のプロトコルのICタグが混在している。このことが原因で、マルチプロトコル対応RFIDリーダライタを利用してICタグの読み取りを行う場合、リーダライタは、意図したプロトコル以外のICタグを読み取ってしまうことがある。
【0008】
意図したプロトコル以外のICタグからデータを読み取ることを前提として、読み取ったデータに対するフィルタ処理を行う方法も考えられる。例えば、事前に読取予定データを保持しておき、読み取ったデータと照合をかけることで、必要なデータを抽出する方法である。しかし、一般に、このような意図しないデータに対するその後の処理は、煩雑になってしまうという問題がある。
【0009】
一方、マルチプロトコル対応RFIDリーダライタのファームウェアを特定のプロトコルのみに対応するように調整すれば、複数のプロトコルのICタグが混在している状況であっても、特定のプロトコルのICタグにのみに反応させるようにすることは可能である。
【0010】
しかし、複数のプロトコルのICタグが混在している状況では、特定のプロトコルだけでなく、複数のプロトコルを利用してICタグの読み書きを行う場面も多い。このような場面で、使用するプロトコルごとにファームウェアを調整するのは、やはり処理が煩雑になってしまう。また、このような対応では、そもそも、複数のプロトコルに対応したマルチプロトコルRFIDリーダライタの特性を生かすことができない。
【0011】
また、特許文献1に記載されたリーダライタは、搬送波ごとに通信の時間帯を割り当てて短波方式のICカードと長波方式のICカードのいずれのカードも利用できるようにしている。しかし、特許文献1に記載されたリーダライタは、互いの搬送波による干渉の抑制を目的としており、両方式のICカードが混在している状況では、やはり、意図したICカードの読取書込を行うことができないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、複数のRFID規格が混在する環境であっても、煩雑な処理を行うことなく、意図したRFID規格を用いた通信を行うことができるRFID通信装置、RFID通信方法およびRFID通信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるRFID通信装置は、複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信する通信手段と、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールを記憶する固定プロトコル記憶手段と、通信手段が送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、その応答波が示すRFIDプロトコルとプロトコル規定ルールとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定するプロトコル特定手段とを備え、通信手段が、プロトコル特定手段が特定したRFIDプロトコルのキャリアを送信することを特徴とする。
【0014】
本発明によるRFID通信方法は、複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信し、送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールと、応答波が示すRFIDプロトコルとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定し、特定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信することを特徴とする。
【0015】
本発明によるRFID通信プログラムは、コンピュータに、複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信する通信処理、および、送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールと、応答波が示すRFIDプロトコルとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定するプロトコル特定処理を実行させ、通信処理で、プロトコル特定処理で特定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のRFID規格が混在する環境であっても、煩雑な処理を行うことなく、意図したRFID規格を用いた通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるRFID通信装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】プロトコル規定ルールの例を示す説明図である。
【図3】プロトコル規定ルールの他の例を示す説明図である。
【図4】本実施形態のRFID通信装置の動作例を示すフローチャートである。
【図5】特性ごとにRFIDリーダライタを分類した例を示す説明図である。
【図6】プロトコルが混在した環境で特定のプロトコルのICタグのみ読み出す例を示す説明図である。
【図7】梱包用機内の対象物を読み取る例を示す説明図である。
【図8】入荷予定数との照合を行う処理の例を示す説明図である。
【図9】本発明によるRFID通信装置の最小構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明によるRFID通信装置の一実施形態を示すブロック図である。本実施形態のRFID通信装置10は、固定プロトコル記憶手段11と、通信手段12と、プロトコル特定手段13とを備えている。なお、本実施形態のRFID通信装置が、上述するマルチプロトコル対応RFIDリーダライタに対応する。
【0020】
固定プロトコル記憶手段11は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルと、その後に送信する質問波(以下、キャリアと記す。)のRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルール(以下、プロトコル規定ルールと記す。)を記憶する。なお、以下の説明では、RFID通信装置が応答波を受信することを、RFID通信装置が応答波を読み取ると記すこともある。
【0021】
また、プロトコル規定ルールは、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルに応じて、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを定めたルールであることから、その後のRFIDプロトコルを固定するルールであるということもできる。
【0022】
このプロトコル規定ルールは、直前に受信したRFIDプロトコルと、その直後に固定するRFIDプロトコルとを一対一に対応づけた対応関係であってもよい。また、このプロトコル規定ルールは、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に固定するRFIDプロトコルの順番とを対応づけた対応関係であってもよい。また、このプロトコル規定ルールは、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に利用可能なプロトコルとして固定する少なくとも1つ以上のRFIDプロトコルとを対応づけた対応関係であってもよい。
【0023】
図2は、プロトコル規定ルールの例を示す説明図である。図2に例示するプロトコル規定ルールは、対応関係をテーブル形式で定義している。以下、このようなテーブルをプロトコル対応テーブルと記す。図2に示す例示するプロトコル対応テーブルは、本RFID通信装置が通信可能なRFIDプロトコルが上側に記載され、その直後に固定するRFIDプロトコルが左側に記載されている。言い換えると、図2に例示するプロトコル対応テーブルの左側に記載されたRFIDプロトコルに固定する場合には、その直前に、上側に記した対応するRFIDプロトコルに基づく受信処理が必要であることを示す。
【0024】
例えば、図2に示す例において、対応エリア31は、RFIDプロトコルである「ISO18092」が直前にかざされた(すなわち、受信処理、読取処理が行われた)プロトコルの場合、その後に固定するRFIDプロトコルが「ISO18000−6」であることを示している。すなわち、対応エリア31は、直前に受信したRFIDプロトコルと、その直後に固定するRFIDプロトコルとを一対一に対応づけた対応関係を示している。
【0025】
また、図2に示す例において、対応エリア32は、RFIDプロトコルである「ISO14443−B」が直前にかざされたプロトコルの場合、その後は、「ISO18092」,「ISO18000−4」,「ISO18000−6」の順にRFIDプロトコルを固定することを示す。すなわち、対応エリア32は、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に固定するRFIDプロトコルの順番を対応づけた対応関係を示している。
【0026】
また、図2に示す例において、対応エリア33は、RFIDプロトコルである「ISO18000−6」が直前にかざされたプロトコルの場合、その後に固定するRFIDプロトコルが、13.56MHz(具体的には、「ISO18092」,「ISO14443−A」,「ISO14443−B」,「ISO15693」のいずれか)であることを示す。すなわち、対応エリア33は、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に利用可能なプロトコルとして固定する1つ以上のRFIDプロトコルとを対応づけた対応関係を示している。
【0027】
なお、図2に示す例では、対応関係がテーブル形式で定義されている場合を例に説明したが、対応関係の定義方法は、テーブル形式に限定されない。直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に固定されるプロトコルとの対応関係を特定できる方法であれば、他の方法で対応関係を定義してもよい。また、複数のプロトコルの対応関係を組み合わせて、プロトコル規定ルールを定義してもよい。
【0028】
また、プロトコル規定ルールには、固定されるRFIDプロトコルのキャリアの送信を解除する条件を含んでいてもよい。すなわち、プロトコル規定ルールは、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後の利用を固定するRFIDプロトコルおよびその固定されたRFIDプロトコルを解除する条件との対応関係を規定したルールであってもよい。
【0029】
例えば、ICタグに対するキャリアの出力回数を解除する条件に利用してもよい。また、キャリアの出力される時間を解除する条件に利用してもよい。また、特定のRFIDプロトコルのICタグが読み取られることを解除の条件に利用してもよい。すなわち、キャリアに対する応答波が、特定のRFIDプロトコルの場合に、固定されたRFIDプロトコルのキャリアの送信を解除するとしてもよい。
【0030】
例えば、社員が資産に添付されたRFIDの読取作業を行うとする。ここで、作業を行う社員の社員証には、RFIDプロトコル「ISO18092」のICタグが添付され、資産には、RFIDプロトコル「ISO18000−6」のICタグが添付されているとする。この場合、プロトコル規定ルールとして、直前に受信したRFIDプロトコルを「ISO18092」と設定し、その後に固定するRFIDプロトコルを「ISO18000−6」と設定し、解除の条件を、キャリアに対する応答波がRFIDプロトコル「ISO18092」と設定すればよい。このような条件を設定すれば、複数のRFID規格が混在する環境であっても、煩雑な処理を行うことなく、マルチプロトコルRFIDリーダライタが意図したRFID規格を用いた通信を行うことができる。
【0031】
図3は、プロトコル規定ルールの他の例を示す説明図である。図3に示す例において、対応エリア34は、RFIDプロトコルである「ISO18092」が直前にかざされたプロトコルの場合、固定したRFIDプロトコル「ISO18000−6」による100回のキャリアが出力されたことを条件に、固定を解除する条件を示している。
【0032】
また、図3に示す例において、対応エリア35は、RFIDプロトコルである「ISO14443−A」が直前にかざされたプロトコルの場合、固定したRFIDプロトコル「ISO14443−A」による読取後、または、RFIDプロトコル「ISO18000−6」による100秒間のキャリア出力後に、固定を解除する条件を示している。なお、対応エリア35に示す例では、両方の条件を満たす場合に、固定を解除すると規定してもよい。
【0033】
なお、プロトコル規定ルールにおいて、直前に受信したRFIDプロトコルと、その直後に固定するRFIDプロトコルとは、同一のプロトコルであってもよく、異なるプロトコルであってもよい。同一のプロトコルが対応づけられている場合、例えば、一度読み取ったプロトコルで処理を継続する用途に利用できる。また、異なるプロトコルが対応づけられている場合、例えば、処理を開始する際に利用するプロトコルと、継続的に処理を行う対象のプロトコルとを明確に分けることができるため、意図するプロトコルによる読取処理を確実に行うことが可能になる。
【0034】
通信手段12は、複数のRFIDプロトコルのキャリアを認証媒体20に対して送信し、ICタグ21の読取処理やICタグ21への書込処理を行う。ここで、通信手段12が行う処理には、ICタグ21の読取処理とICタグ21への書込処理のいずれか一方、または両方の処理が含まれる。また、通信手段12は、送信したキャリアに対する応答波をICタグ21から受信し、受信したICタグ21のRFIDプロトコルを示す情報を、プロトコル特定手段13に入力する。
【0035】
また、通信手段12は、後述するプロトコル特定手段13が特定したRFIDプロトコルに従って、次に送信するキャリアを制限する。すなわち、通信手段12は、プロトコル特定手段13が特定したRFIDプロトコルのキャリアを送信する。
【0036】
すなわち、通信手段12が特定のRFIDプロトコルのキャリアのみ送信するようにすることで、それ以外のRFIDプロトコルのICタグへの処理を制限することができる。
【0037】
また、通信手段12は、後述するプロトコル特定手段13から、プロトコル固定の解除指示に従って、特定のRFIDプロトコルのみに対応したキャリアの送信処理を終了してもよい。
【0038】
プロトコル特定手段13は、通信手段12が受信したRFIDプロトコルとプロトコル規定ルールとに基づいて、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定する。具体的には、プロトコル特定手段13は、通信手段12が直前に受信したRFIDプロトコルに対応するRFIDプロトコルを、固定プロトコル記憶手段11に記憶されたプロトコル規定ルールから特定する。
【0039】
例えば、直前に受信したRFIDプロトコルと、その直後に固定するRFIDプロトコルとを一対一に対応づけた対応関係がプロトコル規定ルールに規定されていたとする。この場合、プロトコル特定手段13は、通信手段12が受信したRFIDプロトコルに対応づけられているRFIDプロトコルを固定するプロトコルとして特定してもよい。この場合、通信手段12は、この特定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信する。
【0040】
また、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に利用可能なプロトコルとして固定する少なくとも1つ以上のRFIDプロトコルとを対応づけた対応関係がプロトコル規定ルールに規定されていたとする。この場合、プロトコル特定手段13は、通信手段12が受信したRFIDプロトコルに対応づけられている1つ以上のRFIDプロトコルのキャリアを固定するプロトコルとして特定してもよい。この場合、通信手段12は、この特定された1つ以上のRFIDプロトコルのキャリアを送信する。
【0041】
また、直前に受信したRFIDプロトコルと、その後に固定するRFIDプロトコルの順番とを対応づけた対応関係がプロトコル規定ルールに規定されていたとする。この場合、プロトコル特定手段13は、通信手段12が受信したRFIDプロトコルに対応づけられている順番にRFIDプロトコルを固定すると特定してもよい。この場合、通信手段12は、特定されたRFIDプロトコルの順番に従ってキャリアを送信する。
【0042】
また、特定されたRFIDプロトコルのキャリアの送信を解除する条件がプロトコル規定ルールに含まれている場合、プロトコル特定手段13は、特定したRFIDプロトコルを解除する条件を満たしているか否かを判断する。言い換えると、プロトコル特定手段13は、特定したRFIDプロトコルによる処理がプロトコル規定ルールで規定された解除する条件を満たしているか否かを判断する。そして、その条件を満たしている場合、プロトコル特定手段13は、通信手段12にプロトコル固定の解除指示を行う。この指示を受けた通信手段12は、特定されたRFIDプロトコルのキャリアの送信を停止する。
【0043】
通信手段12と、プロトコル特定手段13とは、プログラム(プロトコル固定プログラム)に従って動作するコンピュータのCPUによって実現される。例えば、プログラムは、RFID通信装置10の記憶部(図示せず)に記憶され、CPUは、そのプログラムを読み込み、プログラムに従って、通信手段12及びプロトコル特定手段13として動作してもよい。また、通信手段12と、プロトコル特定手段13とは、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。
【0044】
また、固定プロトコル記憶手段11は、例えば、不揮発性メモリ等により実現される。
【0045】
次に、本実施形態のRFID通信装置の動作を説明する。図4は、本実施形態のRFID通信装置の動作例を示すフローチャートである。
【0046】
まず、通信手段12は、複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信して(ステップS1)、ICタグ21からの応答波を待つ。特定のRFIDプロトコルの応答波を受信しない場合(ステップS2におけるNO)、通信手段12は、ステップS1の処理を繰り返す。
【0047】
一方、特定のRFIDプロトコルの応答波を受信した場合(ステップS2におけるYES)、プロトコル特定手段13は、プロトコル規定ルールをもとに、固定するRFIDプロトコルを特定する(ステップS3)。以後、通信手段12は、固定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信する(ステップS4)。すなわち、通信手段12は、特定のプロトコルに対応したICタグの読取(書込)処理を行う。
【0048】
その後、プロトコル特定手段13は、固定したRFIDプロトコルを解除する条件を満たしているか否かを判断する(ステップS5)。解除条件を満たしていない場合(ステップS5におけるNO)、通信手段12は、固定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信するステップS4の処理を繰り返す。
【0049】
一方、解除条件を満たしている場合(ステップS5におけるYES)、プロトコル特定手段13は、通信手段12にプロトコル固定の解除指示を行う。すなわち、プロトコル特定手段13は、固定したRFIDプロトコルを解除する(ステップS6)。
【0050】
その後、ユーザ等の指示により、処理を継続する場合(ステップ7におけるYES)、ステップS1以降の処理が繰り返される。一方、処理を継続しない場合(ステップ7におけるNO)、処理を終了する。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、通信手段12が送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、プロトコル特定手段13が、その応答波が示すRFIDプロトコルとプロトコル規定ルールとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定する。そして、通信手段12が、特定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信する。そのため、複数のRFID規格が混在する環境であっても、煩雑な処理を行うことなく、意図したRFID規格を用いた通信を行うことができる。
【0052】
例えば、13.56MHzに対応したICタグを組み込んだ社員証を用いた個人認証と、UHF帯に対応したICタグを用いた検品作業とが行われるとする。この場合、プロトコル規定ルールにおいて、直前に受信するRFIDプロトコルに13.56MHzに対応するプロトコルを設定し、その直後に固定するRFIDプロトコルにUHF帯に対応するプロトコルを設定すればよい。
【0053】
また、プロトコル規定ルールは、キャリアの送信を解除する条件を含んでいてもよい。そして、特定されたRFIDプロトコルを解除する条件が満たされている場合、通信手段12は、そのRFIDプロトコルのキャリアの送信を停止してもよい。このようにすることで、固定したプロトコルを解除する煩雑さを抑えることができる。
【実施例1】
【0054】
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲は以下に説明する内容に限定されない。図5は、特性ごとにRFIDリーダライタを分類した例を示す説明図である。RFIDリーダは、可搬型か据置型か、また、低出力型か高出力型か(すなわち、通信距離が短いか長いか)に分類できる。例えば、図5に示す例では、象限1は、低出力型の可搬型リーダライタを示しており、象限2は、高出力(または中出力)型の可搬型リーダライタを示している。同様に、図5に示す例では、象限3は、低出力型の据置型リーダライタを示しており、象限4は、高出力(または中出力)型の据置型リーダライタを示している。
【0055】
象限1に対応するリーダライタとして、低出力ハンディタイプのリーダライタが挙げられる。このリーダライタは、通信距離が1〜2cm程度と短いため、例えば、個品管理や現品照合を行う際に利用される。
【0056】
象限2に対応するリーダライタとして、ハンディターミナル型のリーダライタが挙げられる。このリーダライタは、通信距離が50cm〜1m程度と比較的長いため、例えば、一括読取を行う棚卸や資産管理を行う際に利用される。
【0057】
象限3に対応するリーダライタとして、交通機関などで利用される入退出ゲートや、パソコン用のICカードリーダライタなどが挙げられる。このリーダライタは、例えば、本人認証を行う用途に利用される。
【0058】
象限4に対応するリーダライタとして、RFIDゲートが挙げられる。このリーダライタは、多くのICタグを一括で読み取る用途に利用される。
【0059】
本発明におけるRFID通信装置は、象限1〜4のいずれの用途にも利用可能である。以下、RFID通信装置の想定用途を具体例を用いて説明する。
【0060】
まず初めに、象限2に例示したリーダライタを使用する具体例を説明する。図6は、プロトコルが混在した環境で特定のプロトコルのICタグのみ読み出す例を示す説明図である。図6に示す例では、PC(パーソナルコンピュータ)、マウス、キーボードにそれぞれ異なったRFIDプロトコルに対応するICタグが付加されている。ここでは、PCには、RFIDプロトコル「ISO18000−6」に対応するICタグが付加され、マウスには、RFIDプロトコル「ISO18000−4」に対応するICタグが付加され、キーボードには、RFIDプロトコル「μ−chip」に対応するICタグが付加されているとする。
【0061】
ここで、『直前に受信したRFIDプロトコルが「ISO18092」の場合に、RFIDプロトコルを「ISO18000−6」に固定する』というプロトコル規定ルールを定めるものとする。このとき、RFIDプロトコルが「ISO18092」であるICタグが組み込まれたICカード等を予め準備しておけば、リーダライタがこのICカードを読み取ることにより、その後に送信されるキャリアのRFIDプロトコルを「ISO18000−6」に固定することができる。
【0062】
この状態で、例えば、マウスのICタグを読み取ろうとしても、RFIDプロトコルが「ISO18000−4」で異なるため、マウスのICタグが読み取られることはない。したがって、このような複数のRFID規格が混在する環境であっても、別途用意したICタグを読み取るだけで、意図したRFID規格を用いた通信を行うことができる。
【0063】
なお、マウスについても同様の処理を行いたい場合、『直前に受信したRFIDプロトコルが「ISO15693」の場合に、RFIDプロトコルを「ISO18000−4」に固定する』というプロトコル規定ルールを定めておく。そして、RFIDプロトコルが「ISO15693」であるICタグを読み取った後で、マウスに付加されたICタグを読み取ればよい。キーボードについても同様である。
【実施例2】
【0064】
次に、象限2に例示したリーダライタを使用する他の具体例を説明する。図7は、梱包用機内の対象物を読み取る例を示す説明図である。図7に示す例では、梱包材と、その梱包材に封入された対象物に、それぞれ異なるRFIDプロトコルのICタグが付加されている。本実施例では、対象物に付加されたICタグのみ読み取ることを想定する。
【0065】
図7に示す例では、対象物には、RFIDプロトコル「ISO18000−6」に対応するICタグが付加され、梱包材には、RFIDプロトコル「ISO15693」に対応するICタグが付加されている。また、作業者が有するICカードには、RFIDプロトコル「ISO18092」に対応するICタグが付加されているとする。
【0066】
このような状況の場合、『直前に受信したRFIDプロトコルが「ISO18092」の場合に、RFIDプロトコルを「ISO18000−6」に固定する』というプロトコル規定ルールを定めておけばよい。この場合、作業者のICカードを読み取ったあとで、梱包材に対して読取処理を行えば、RFIDプロトコル「ISO18000−6」のキャリアのみ送信される。すなわち、RFIDプロトコル「ISO18000−6」に対応するICタグのみ読み取ることが可能になる。
【実施例3】
【0067】
次に、象限4に例示したリーダライタを使用する具体例を説明する。図8は、入荷予定数との照合を行う処理の例を示す説明図である。図8に示す例では、照合する複数の対象物が段ボール60に封入されており、その対象物を据置型リーダライタ61でまとめて読み取ることを示している。
【0068】
ここで、対象物の入荷数量はサプライヤーとの間で共有し、各入荷予定物に付加されたICタグに記憶された識別情報は不明であるとする。この場合、対象物と計画データとを照合することは困難である。しかし、入荷数量が分かっている場合であれば、そのICタグに対応するRFIDプロトコルのキャリアを、入荷数量の分だけ送信すればよい。このような処理を行うことで、ICタグの読み取りを行うことが可能になる。
【0069】
具体的には、プロトコル規定ルールのうち、入荷数量の分に相当する回数のキャリアを送信した後にプロトコルを解除するという条件を設定しておけばよい。
【実施例4】
【0070】
以上の実施例では、送信するキャリアを特定のRFIDプロトコルに固定して、ICタグを読み取る場合を例に説明した。以下では、RFIDプロトコルを固定した場合の効果を利用した他の想定場面を説明する。なお、ここでは、象限3に例示したリーダライタを使用する場合を例に説明する。
【0071】
具体的には、複数の関係者による合意確認をする場面において、本発明のRFID通信装置を利用することができる。
【0072】
例えば、医療現場において、医者と患者の両方の合意のもと、所定のデータを加工することを許可するような場面を想定する。ここで、医者が保有するICカードには、RFIDプロトコル「ISO18092」に対応するICタグが付加されているものとし、患者が保有するICカードには、RFIDプロトコル「ISO14443−A」に対応するICタグが付加されているものとする。
【0073】
この場合、一方のICタグを読み取らせることで、送信するキャリアを他方のRFIDプロトコルに固定する。そして、この状態で他方のICタグを読み取ることで、データを加工するために必要な情報が得られるようにすれば、複数のRFIDプロトコルを組み合わせてアクセス権(パーミッション)を制御できるようになる。
【0074】
なお、このようなパーミッション制御は、医者と患者の関係の他、例えば、申請者と承認者の関係などにも同様に適用可能である。
【0075】
他にも、高いセキュリティを要求されるセキュリティゲートを開錠する場面においても、本発明のRFID通信装置を利用することができる。例えば、特定の順番で、特定のプロトコルを読み取った場合(例えば、RFIDプロトコル「ISO14443−B」→「ISO14443−A」→「ISO18092」など)に、セキュリティゲートを開錠するといった制御を行うことができる。
【0076】
このように、本発明のRFID通信装置は、様々な用途に利用が可能である。例えば、今後、クラウドコンピューティングがIT(Information Technology)の主流になった場合、より高度な認証が必要になる。この場合、IDとパスワードのみを用いた、いわゆるソフトウェア認証以外にも、RFIDを利用した、いわゆる物理認証が求められることが予想される。この場合、本発明のRFID通信装置で読み取った情報を、IDとパスワードの役割を補佐する情報として利用できることが考えられる。
【0077】
次に、本発明の最小構成例を説明する。図9は、本発明によるRFID通信装置の最小構成の例を示すブロック図である。本発明によるRFID通信装置は、複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信する通信手段81(例えば、通信手段12)と、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルと、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールを記憶する固定プロトコル記憶手段82(例えば、固定プロトコル記憶手段11)と、通信手段81が送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、その応答波が示すRFIDプロトコルとプロトコル規定ルールとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定するプロトコル特定手段83(例えば、プロトコル特定手段13)とを備えている。そして、通信手段81は、プロトコル特定手段83が特定したRFIDプロトコルのキャリアを送信する。
【0078】
以上のような構成により、複数のRFID規格が混在する環境であっても、煩雑な処理を行うことなく、意図したRFID規格を用いた通信を行うことができる。
【0079】
また、固定プロトコル記憶手段82は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルと、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルおよびそのキャリアの送信を解除する条件との対応関係を規定したプロトコル規定ルールを記憶していてもよい。そして、通信手段81は、特定されたRFIDプロトコルによる処理がプロトコル規定ルールで規定された解除する条件を満たしている場合、そのRFIDプロトコルのキャリアの送信を停止してもよい。このような構成により、固定したプロトコルを解除する煩雑さを抑えることができる。
【0080】
また、固定プロトコル記憶手段82は、解除する条件として、特定されたキャリアの送信回数(例えば、キャリアを100回送信した場合に解除する)と、特定されたキャリアの送信時間(例えば、キャリアを100秒間送信した場合に解除する)と、キャリアに対する応答波が示す特定のRFIDプロトコル(例えば、キャリアに対する応答波が特定のRFIDプロトコルの場合に解除する)のうちの少なくとも一つの条件を記憶していてもよい。
【0081】
また、固定プロトコル記憶手段82は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルに対して少なくとも1つ以上のRFIDプロトコルを対応させたプロトコル規定ルールを記憶していてもよい。そして、プロトコル特定手段83は、プロトコル規定ルールに基づいて、応答波が示すRFIDプロトコルに対応する少なくとも1つ以上のRFIDプロトコルを、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルと特定してもよい。
【0082】
また、固定プロトコル記憶手段82は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルに対して、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルの順番を規定したプロトコル規定ルールを記憶していてもよい。そして、プロトコル特定手段83は、プロトコル規定ルールに基づいて、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルの順番を特定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、複数のRFID規格が混在する環境において、各RFID規格に応じた通信を行うRFID通信装置に好適に適用される。
【符号の説明】
【0084】
10 RFID通信装置
11 固定プロトコル記憶手段
12 通信手段
13 プロトコル特定手段
20 認証媒体
21 ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信する通信手段と、
直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールを記憶する固定プロトコル記憶手段と、
前記通信手段が送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、当該応答波が示すRFIDプロトコルと前記プロトコル規定ルールとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定するプロトコル特定手段とを備え、
前記通信手段は、前記プロトコル特定手段が特定したRFIDプロトコルのキャリアを送信する
ことを特徴とするRFID通信装置。
【請求項2】
固定プロトコル記憶手段は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルと、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルおよび当該キャリアの送信を解除する条件との対応関係を規定したプロトコル規定ルールを記憶し、
通信手段は、特定されたRFIDプロトコルによる処理が前記プロトコル規定ルールで規定された解除する条件を満たしている場合、当該RFIDプロトコルのキャリアの送信を停止する
請求項1記載のRFID通信装置。
【請求項3】
固定プロトコル記憶手段は、解除する条件として、特定されたキャリアの送信回数と、特定されたキャリアの送信時間と、キャリアに対する応答波が示す特定のRFIDプロトコルのうちの少なくとも一つの条件を記憶する
請求項2記載のRFID通信装置。
【請求項4】
固定プロトコル記憶手段は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルに対して少なくとも1つ以上のRFIDプロトコルを対応させたプロトコル規定ルールを記憶し、
プロトコル特定手段は、前記プロトコル規定ルールに基づいて、応答波が示すRFIDプロトコルに対応する少なくとも1つ以上のRFIDプロトコルを、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルと特定する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のRFID通信装置。
【請求項5】
固定プロトコル記憶手段は、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルに対して、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルの順番を規定したプロトコル規定ルールを記憶し、
プロトコル特定手段は、前記プロトコル規定ルールに基づいて、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルの順番を特定する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のRFID通信装置。
【請求項6】
複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信し、
送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールと、前記応答波が示すRFIDプロトコルとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定し、
特定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信する
ことを特徴とするRFID通信方法。
【請求項7】
特定されたRFIDプロトコルによる処理が、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルと、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルおよび当該キャリアの送信を解除する条件との対応関係を規定したプロトコル規定ルールにおける当該解除する条件を満たしている場合、当該RFIDプロトコルのキャリアの送信を停止する
請求項6記載のRFID通信方法。
【請求項8】
コンピュータに、
複数のRFIDプロトコルのキャリアを送信する通信処理、および、
送信したキャリアに対する応答波を受信したときに、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルとの対応関係を規定したルールであるプロトコル規定ルールと、前記応答波が示すRFIDプロトコルとから、その後に送信するキャリアのRFIDプロトコルを特定するプロトコル特定処理を実行させ、
前記通信処理で、前記プロトコル特定処理で特定されたRFIDプロトコルのキャリアを送信させる
ためのRFID通信プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
通信処理で、特定されたRFIDプロトコルによる処理が、直前に受信した応答波が示すRFIDプロトコルとその後に送信するキャリアのRFIDプロトコルおよび当該キャリアの送信を解除する条件との対応関係を規定したプロトコル規定ルールにおける当該解除する条件を満たしている場合、当該RFIDプロトコルのキャリアの送信を停止させる
請求項8記載のRFID通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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