説明

RI化合物合成装置

【課題】発熱体から反応器への熱伝導効率を高め、周囲への放熱を低減することが可能な反応器の加熱機構を備えるRI化合物合成装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るRI化合物合成装置1は、放射性同位元素及び試薬から放射性同位元素標識化合物を生成するためのRI化合物合成装置において、放射性同位元素と試薬との合成反応を行う反応器10と、反応器10を加熱する加熱機構20とを備えており、加熱機構20は、励磁電流が供給される誘導コイル24と、誘導コイル24に電磁気的に結合された電磁誘導体22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素及び試薬から放射性同位元素標識化合物を生成するためのRI化合物合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性同位元素標識化合物(RI化合物)は、放射性同位元素(RI)を所定の原料試薬と化学反応させるRI化合物合成装置で合成される。このRI化合物合成装置では、化学反応を行う反応器にRIや原料試薬等を導入し、化学反応に必要な温度まで反応器を加熱した後に、所定のプロセスが実行される(例えば、特許文献1)。
【0003】
このRI化合物合成装置において、反応器を加熱する手法としては、エアヒータやオイルヒータなどを用いる手法が知られている。これらの手法では、不活性ガスやオイルなどの熱伝導媒介物質を外部から流入し、発熱体によって媒介物質を加熱し、媒介物質によって反応器を加熱する(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−342139号公報
【特許文献2】特開2005−106658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアヒータやオイルヒータなどを用いる手法では、発熱体→媒介物質→反応器という複数段にわたる経路で熱伝導を行うこととなるので、発熱体から反応器への熱伝導効率が低い。例えば、この熱伝導経路において多くの熱量を損失することとなるので、発熱体は、合成反応に必要な熱量に対して超過剰の熱量を供給しなければならない。また、発熱体の発熱開始から反応器の加熱終了までの時間が長くなってしまう。
【0006】
更には、発熱体及び媒介物質の熱伝導経路からその周囲に対して、長時間にわたり放熱が行われることとなり、周辺器具や周辺部品に熱損傷を与える虞がある。
【0007】
更には、不活性ガスやオイルなどの熱伝導媒介物質の流入忘れなどの誤操作により発熱体が高温になると、周辺器具や周辺部品の熱損傷に加えて、周辺の配線や配管などが接触により熱損傷してしまう虞がある。例えば、配管が溶けて変形したり、配線の被覆が溶けてショートしたりする虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、発熱体から反応器への熱伝導効率を高め、周囲への放熱を低減することが可能な反応器の加熱機構を備えるRI化合物合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のRI化合物合成装置は、放射性同位元素及び試薬から放射性同位元素標識化合物を生成するためのRI化合物合成装置において、放射性同位元素と試薬との合成反応を行う反応器と、反応器を加熱する加熱機構とを備えており、加熱機構は、励磁電流が供給される誘導コイルと、誘導コイルに電磁気的に結合された電磁誘導体とを備える。ここで、電磁誘導体が誘導コイルに電磁気的に結合するとは、励磁電流に応じて発生する誘導コイルからの磁束に応じて、電磁誘導体が発熱する状態をいう。
【0010】
このRI化合物合成装置によれば、反応器の加熱機構によって、誘導コイルに励磁電流が供給されると、電磁誘導体が発熱体となって反応器を加熱することができる。そして、電磁誘導により反応器を加熱するので、周囲への放熱を低減することができる。また、不活性ガスやオイルなどの熱伝導媒介物質を外部から流入しないので、流入忘れなどの誤操作に起因する発熱体の温度上昇を防止することができる。
【0011】
ところで、反応器の加熱手法としては、不活性ガスやオイルなどの熱伝導媒介物質を用いないブロックヒータやペルチエヒータなどを用いる手法も知られている。これらの手法に比べ、この反応器の加熱機構では、電磁誘導方式を用いるので、加熱の立ち上がりがよく、発熱体の発熱開始から反応器の加熱終了までの時間が短い。また、これらの手法に比べ、電磁誘導方式を用いる反応器の加熱機構では、供給電力−発熱効率が良い。
【0012】
上記した電磁誘導体は、反応器に一体的に設けられていることが好ましい。これによれば、発熱体から反応器への熱伝導効率を高めることができ、周囲への放熱をより低減することができる。
【0013】
上記した電磁誘導体は、反応器の底部に当接されていることが好ましい。これによれば、加熱機構によって、反応器の側部からの反応器内の化学反応の様子の視認性を損なうことがない。
【0014】
上記した電磁誘導体は、反応器に粒子状に含まれていることが好ましい。上記したブロックヒータやペルチエヒータなどを用いる手法において、加熱効率を上げるためには、ブロックヒータやペルチエヒータなどにより反応器全体を覆うことが考えられる。しかしながら、反応器全体を覆ってしまうと、反応器内の化学反応の様子を視認することができなくなってしまう。しかしながら、これによれば、例えば、ガラスを主成分とする反応器に電磁誘導体が粒子状に含まれるので、反応器の透過性を損なうことなく、反応器内の化学反応の様子を視認することができる。また、反応器自体全体が発熱体となるので、熱伝導効率を更に高めることができ、周囲への放熱をより低減することができる。また、反応器とは別体として電磁誘導体を設ける必要が無いので、RI化合物合成装置の小型化が可能となる。
【0015】
上記したRI化合物合成装置は、誘導コイルと電磁誘導体との結合を損なうことなく、誘導コイルを囲うように設けられた遮蔽体を更に備えることが好ましい。ここで、誘導コイルと電磁誘導体との結合を損なわないとは、誘導コイルと電磁誘導体との電磁気的結合を妨げない状態をいう。更には、誘導コイルと電磁誘導体との結合を損なわないとは、誘導コイルと電磁誘導体との電磁気的結合の効率を低減しない、すなわち、電磁気的結合の度合いを弱めない状態をもいうものとする。これによれば、電磁誘導性の材質を含む周辺器具や周辺部品が誘導コイルの磁束により温度上昇することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発熱体から反応器への熱伝導効率を高め、周囲への放熱を低減することができる。その結果、周辺器具や周辺部品の熱損傷を防止することができると共に、周辺の配線や配管など熱損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るRI化合物合成装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】図1に示すRI化合物合成装置における反応器及び加熱機構の構成を詳細に示す概略断面図である。
【図3】本発明の比較例に係るエアヒータを用いたRI化合物合成装置における反応器及び加熱機構の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るRI化合物合成装置の構成を示す概略断面図である。図1に示すRI化合物合成装置1は、例えば、病院等のPET検査等に使用される放射性薬剤としての放射性同位元素標識化合物(RI化合物)を、放射性同位元素(RI)と各種試薬との合成反応により生成するための装置である。
【0020】
このRI化合物合成装置1は、合成装置本体部2と、合成装置本体部2を覆うホットセル3とを備えている。また、RI化合物合成装置1は、ホットセル3の内部に分離精製部4とガス調整ユニット5とを備え、ホットセル3の外部に制御部6を備えている。また、RI化合物合成装置1は、RI化合物合成装置1の外部に設けられたターゲット部100に接続されている。
【0021】
合成装置本体部2は、ターゲット部100から送られてくる放射性同位元素(RI)と、合成装置本体部2に貯留された試薬とから、RI化合物を生成する装置である。合成装置本体部2は、抽出カラム7と、回収ボトル8と、試薬貯留容器9と、反応器10と、加熱機構20とを備えている。また、合成装置本体部2は、分離精製部4と、ガス調整ユニット5と、制御部6と、ターゲット部100に接続されている。
【0022】
試薬貯留容器9は、RI化合物の合成に必要となる試薬を貯留する容器である。試薬貯留容器9は、反応器10や抽出カラム7、ガス調整ユニット5に接続されている。試薬貯留容器9には、試薬導入口9aが設けられており、この試薬導入口9aから試薬を補充する。試薬貯留容器9内の試薬は、後述のガス調整ユニット5からガスが送られることにより、試薬貯留容器9から送り出される。
【0023】
ガス調整ユニット5は、試薬貯留容器9や反応器10へ送るガスの量等を調整する装置である。ガス調整ユニット5は、ホットセル3外のガス供給部(図示無し)に接続されており、このガス供給部からガスが供給されている。ガス調整ユニット5で調整するガスは、不活性ガスであり、例えば窒素が挙げられる。
【0024】
抽出カラム7は、ターゲット部100から送られてくるRIを一時的に吸着・抽出するものである。本実施形態では、RIである18Fは、18O−HOと共にターゲット部100から送られてくる。18Fは抽出カラム7に吸着され、18O−HOは回収ボトル8へ送られる。18O−HOは、貴重な物質であるため、回収ボトル8に集められ、回収される。抽出カラム7で吸着された18Fは、ガス調整ユニット5から送られてきて試薬貯留容器9を通過する際に試薬を含んだガスにより、抽出カラム7から反応器10へと送られる。この際、ガスには試薬が含まれているので、抽出カラム7に吸着されている18Fを抽出カラム7から剥がし取ることができる。
【0025】
反応器10は、反応器10に接続された試薬貯留容器9から送られてくる試薬と18F(RI)とから、RI化合物を生成する反応容器である。生成されたRI化合物は、ガス調整ユニット5から反応器10へガスが送られてくることにより、後述の分離精製部4へ送られる。
【0026】
加熱機構20は、反応器10を加熱する機構である。反応器10で合成反応を行うためには、RI及び試薬を加熱する必要がある(最大で200℃程度)。
【0027】
分離精製部4は、反応器10から送られてくるRI化合物及びガスを分離して、RI化合物の精製を行うものである。精製されたRI化合物は、ホットセル3内に設けられたRI化合物回収容器(図示無し)に貯留されて回収されるか、ホットセル3外部に設けられた分注装置や分注投与装置へ送られる。
【0028】
制御部6は、RI化合物合成装置1における上記合成動作の制御を行うものである。
【0029】
ホットセル3は、ホットセル3外への放射線の漏洩を防ぐ放射線遮蔽壁である。ホットセル3には図示せぬ扉が設けられており、その扉から合成装置本体への試薬の補充や、RI化合物回収容器に貯留されたRI化合物の回収を行う。なお、この扉は試薬の補充や、RI化合物の回収等の用途に応じて、複数設けても良い。
【0030】
以上、RI化合物合成装置1の構造を説明したが、RI化合物合成装置1の構造は、上記の構成に限定されるものではなく、必要に応じて種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。例えば、RIは、18Fではなく、他の物質でも良い。また、回収ボトルを設けなくても良い。
【0031】
次に、RI化合物合成装置1における反応器10及び加熱機構20について詳細に説明する。図2は、図1に示すRI化合物合成装置における反応器10及び加熱機構20の構成を詳細に示す概略断面図である。
【0032】
反応器10では、上述したように、RIと各種試薬とが導入され、合成反応が行われる。合成反応を行うためには、RI及び各種試薬を加熱する必要がある(最大で200℃程度)。そのために、反応器10の下部には、反応器10を加熱することによって、その内部のRI及び各種試薬を加熱する加熱機構20が設けられている。なお、反応器10は、ガラスなどの透明性を有する物質からなり、内部の合成反応を視認可能になっている。
【0033】
加熱機構20は、電磁誘導体22と、誘導コイル24と、遮蔽体26と、誘導コイル24に接続された高周波電源(図示せず)とを備えている。
【0034】
電磁誘導体22は、反応器10の近傍に設けられている。本実施形態では、電磁誘導体22は、反応器10の底部に当接して、反応器10と一体的に設けられている。電磁誘導体22には、透磁率が高く、抵抗値が高い鉄などの材質が用いられる。電磁誘導体22は、下部に設けられた誘導コイル24と電磁気的に結合しており、誘導コイル24からの磁束φに応じて自らが発熱することによって、反応器10を加熱する。
【0035】
誘導コイル24は、高周波電源から励磁電流が供給されることによって、上下方向に磁束φを発生する。これにより、誘導コイル24は電磁誘導体22を発熱させる。例えば、誘導コイル24は、周囲の少なくとも一部がモールド部材で覆われた誘導コイルユニットの態様であり、この誘導コイルユニットが電磁誘導体22に当接して配置されていることが好ましい。これにより、誘導コイル24に供給される励磁電流に対する電磁誘導体22の発熱効率を高めることができる。すなわち、供給電力−発熱効率を高めることができる。誘導コイル24の横側周囲には、遮蔽体26が配置されている。
【0036】
遮蔽体26は、誘導コイル24からの磁束φが周囲に漏れることを防止する。例えば、遮蔽体26の材料には、磁束が通りやすく、磁束を吸収する電磁誘導性を有する物質であって、透磁率が比較的高い鉄などが用いられることが好ましい。また、遮蔽体26は、反応器10の加熱のための電磁誘導体22より透磁率が低く、周囲に配置される電磁誘導性物質を含む周辺機器や周辺部品よりも透磁率が高いことが好ましい。
【0037】
遮蔽体26は、誘導コイル24の横側周囲を囲うように環状をなしている。なお、遮蔽体26は、複数の遮蔽体が略等間隔に離間して環状に配置された集合体であってもよい。遮蔽体26には、放熱用のフィン28やファン29が設けられていると、遮蔽体26からの放熱を効率的に行うことができる。
【0038】
ここで、図3に、本発明の比較例に係るエアヒータを用いたRI化合物合成装置における反応器及び加熱機構の概略断面構成を示す。比較例のRI化合物合成装置1Xは、RI化合物合成装置1において、電磁誘導方式の加熱機構20に代えて、エアヒータ方式の加熱機構20Xを備える構成で、本実施形態と相違する。RI化合物合成装置1Xのその他の構成は、RI化合物合成装置1と同一である。
【0039】
エアヒータ方式の加熱機構20Xは、発熱体であるヒータ22Xと、不活性ガス導入管24Xとを備えている。エアヒータ方式の加熱機構20Xでは、不活性ガス導入管24Xを通して外部から不活性ガスを熱伝導媒介物質として流入し、ヒータ22Xによって不活性ガスを加熱する。その後、加熱された不活性ガスが反応器10の外壁まで流れることによって、反応器10が加熱される。
【0040】
このエアヒータ方式の加熱機構20Xでは、発熱体(ヒータ)22X→媒介物質(不活性ガス)→反応器10という複数段にわたる経路Aで熱伝導を行うこととなるので、発熱体22Xから反応器10への熱伝導効率が低い。例えば、この熱伝導経路Aにおいて多くの熱量を損失することとなるので、発熱体22Xは、合成反応に必要な熱量に対して超過剰の熱量を供給しなければならない。また、発熱体22Xの発熱開始から反応器10の加熱終了までの時間が長くなってしまう。
【0041】
更には、熱伝導経路Aからその周囲に対して、長時間にわたり放熱が行われることとなり、周辺器具や周辺部品に熱損傷を与える虞がある。
【0042】
更には、熱伝導媒介物質の流入忘れなどの誤操作により発熱体22Xが高温になると、周辺器具や周辺部品の熱損傷に加えて、周辺の配線や配管などが接触により熱損傷してしまう虞がある。例えば、配管が溶けて変形したり、配線の被覆が溶けてショートしたりする虞がある。
【0043】
また、比較例のRI化合物合成装置1Xでは、RI化合物合成装置1X内に存在する粉塵が熱伝導媒介物質の流入によって巻き上げられて、RI化合物合成装置1X内の周囲環境のクリーン度が損なわれる虞がある。
【0044】
しかしながら、本実施形態のRI化合物合成装置1によれば、電磁誘導方式の加熱機構20によって、誘導コイル24に励磁電流が供給されると、電磁誘導体22が発熱体となって反応器10を加熱することができる。そして、電磁誘導により反応器を加熱するので、周囲への放熱を低減することができる。特に、電磁誘導体22が反応器10に一体的に設けられているので、発熱体から反応器への熱伝導効率を高めることができ、周囲への放熱をより低減することができる。また、不活性ガスやオイルなどの熱伝導媒介物質を外部から流入しないので、流入忘れなどの誤操作に起因する発熱体の温度上昇を防止することができる。更に、エアヒータを用いないので、ホットセル内のクリーン度を損なうことがない。
【0045】
また、本実施形態の電磁誘導方式の加熱機構20では、不活性ガスやオイルなどの熱伝導媒介物質を用いないブロックヒータやペルチエヒータなどを用いる手法に比べ、加熱の立ち上がりがよく、発熱体の発熱開始から反応器の加熱終了までの時間が短い。また、ブロックヒータやペルチエヒータなどを用いる手法に比べ、本実施形態の電磁誘導方式の加熱機構20では、供給電力−発熱効率が良い。
【0046】
また、本実施形態のRI化合物合成装置1によれば、誘導コイル24の横側周囲を囲うように遮蔽体26が配置されているので、発熱体である電磁誘導体22の発熱、すなわち反応器10の加熱を損なうことなく、電磁誘導性の材質を含む周辺器具や周辺部品が誘導コイル24の磁束φにより温度上昇することを抑制することができる。
【0047】
更に、本実施形態のRI化合物合成装置1によれば、遮蔽体26に放熱用のフィン28やファン29が設けられているので、遮蔽体26の発熱による周辺器具や周辺部品の温度上昇を抑制することができる。
【0048】
その結果、周辺器具や周辺部品の熱損傷を防止することができると共に、周辺の配線や配管など熱損傷を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態のRI化合物合成装置1によれば、電磁誘導体22が反応器10の底部に当接して設けられているので、加熱機構20によって、反応器10の側部からの反応器10内の化学反応の様子の視認性を損なうことがない。
【0050】
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、本実施形態では、電磁誘導体22を反応器10の底部に当接したが、電磁誘導体は、反応器に粒子状に含まれていてもよい。例えば、反応器を成形する際に、主成分であるガラスの粒子に電磁誘導体の粒子を練り込むことによって実現可能である。これにより、反応器の透明性を損なうことなく、反応器内の化学反応の様子を視認することができる。また、反応器自体全体が発熱体となるので、熱伝導効率を更に高めることができ、周囲への放熱をより低減することができる。また、反応器とは別体として電磁誘導体を設ける必要が無いので、RI化合物合成装置の小型化が可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、電磁誘導体22を反応器10に一体的に設けたが、電磁誘導体は、反応器に一体的に設けられていなくともよい。例えば、電磁誘導体から反応器への熱伝導効率が大きく低下しない程度に、電磁誘導体と反応器との間に若干の隙間を設けてもよい。
【0052】
また、本発明は、合成装置の反応器の加熱機構のみならず、乾燥固化を行う濃縮装置など、クリーン環境下で使用される装置全般の加熱機構として適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,1X…RI化合物合成装置、2…合成装置本体部、3…ホットセル、4…分離精製部、5…ガス調整ユニット、6…制御部、7…抽出カラム、8…回収ボトル、9…試薬貯留容器、10…反応器、20,20X…加熱機構、22…電磁誘導体、22X…ヒータ、24…誘導コイル、24X…不活性ガス導入管、26…遮蔽体、28…放熱用フィン、29…放熱用ファン、100…ターゲット部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素及び試薬から放射性同位元素標識化合物を生成するためのRI化合物合成装置において、
前記放射性同位元素と前記試薬との合成反応を行う反応器と、
前記反応器を加熱する加熱機構とを備えており、
前記加熱機構は、励磁電流が供給される誘導コイルと、前記誘導コイルに電磁気的に結合された電磁誘導体とを備える
ことを特徴とするRI化合物合成装置。
【請求項2】
前記電磁誘導体は、前記反応器に一体的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のRI化合物合成装置。
【請求項3】
前記電磁誘導体は、前記反応器の底部に当接されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のRI化合物合成装置。
【請求項4】
前記電磁誘導体は、前記反応器に粒子状に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のRI化合物合成装置。
【請求項5】
前記誘導コイルと前記電磁誘導体との結合を損なうことなく、前記誘導コイルを囲うように設けられた遮蔽体を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のRI化合物合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−13442(P2012−13442A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147709(P2010−147709)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】