RI製造装置及びRI製造方法
【課題】荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることが可能なRI製造装置及びRI製造方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子線の照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段9を備える構成とし、荷電粒子線の照射中のRI製造部3内のRI製造量を測定する。荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、RI製造装置1では、中性子線量測定手段9によって測定された測定結果に基づいて、加速器2による荷電粒子線の照射を制御する制御手段12を備える構成とし、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節する。
【解決手段】荷電粒子線の照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段9を備える構成とし、荷電粒子線の照射中のRI製造部3内のRI製造量を測定する。荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、RI製造装置1では、中性子線量測定手段9によって測定された測定結果に基づいて、加速器2による荷電粒子線の照射を制御する制御手段12を備える構成とし、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RI(放射性同位元素)製造装置及びRI製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポジトロン断層撮影(PET;Positron Emission Tomography)に用いる検査用薬剤を製造するための原料の一つである放射性同位元素(RI;Radio Isotope)の製造や、放射線治療に用いられる高エネルギーの荷電粒子線の生成には、サイクロトロン等の粒子加速器が使用される。RIを製造する際には、ターゲット物質にサイクロトロンで加速された荷電粒子線を照射することで、RIが製造される。例えばRIを製造する技術として、特許文献1に記載の製造装置がある。
【0003】
この特許文献1に記載の技術では、製造されたRIが捕集される捕集ビンに接近してRIデテクターが設けられている。このRIデテクターを用いて、荷電粒子ビームの照射後にRIの製造量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−119197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、荷電粒子線のターゲット物質への照射終了後にRI製造量の測定を実施しているため、RI製造量が必要量に達していないと判明した場合には、荷電粒子線を再照射して必要量を確保する必要がある。
【0006】
また、RIを製造する装置の運転中において荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容する収容室内の圧力、ターゲット物質の温度をリアルタイムに測定し、測定値を基にRIの製造量を算出することが考えられる。しかし、荷電粒子線は必ずしもその全線量がターゲット物質に照射されるのではなく、その一部が収容室を構成する壁部等に照射されてしまうことがある。また収容室内は冷却手段により冷却されるため、収容室内の圧力は低下するし、ターゲット物質の温度も低下する。従って、これらの測定値に基づいて、RIを製造する装置の運転中に正確なRI製造量を測定することは困難である。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることが可能なRI製造装置およびRI製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のRI製造装置は、荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器から出射された荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造部と、荷電粒子線の照射によりRI製造部で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段と、中性子線量測定手段による測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成されたRI製造装置によれば、荷電粒子線の照射によりRI製造部で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造部内のRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容するRI製造部の収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、本発明のRI製造装置では、中性子線量測定手段によって測定された測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御手段を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線照射後の再照射の必要がない。
【0010】
ここで、放射性同位元素の目標とする製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値を記憶する記憶手段を備え、制御手段は、測定結果である中性子線の線量の積算値が目標積算値に達した場合に、荷電粒子線の照射を停止することが好ましい。これにより、制御手段は、測定された中性子線の線量の積算値と目標積算値とを比較し、測定された中性子線の線量の積算値が目標積算値に達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、荷電粒子線の照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0011】
また、RI製造装置は、測定結果である中性子線の線量が目標とする値となっているか判定するための判定閾値を記憶する記憶手段を備え、制御手段は、測定結果である中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整する構成であることが好適である。これにより、制御手段は、測定結果である中性子線の線量と判定閾値とを比較して中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整して、加速器から出射される荷電粒子線の照射位置などを修正することが可能である。
【0012】
また、照射パラメータは、荷電粒子線の照射位置であることが好適である。例えば、測定した中性子線の線量が判定閾値に達していない場合には、荷電粒子線が正しい位置(被照射物質が存在する位置)に照射されていない可能性がある。従って、このような場合には、荷電粒子線の照射位置を調整することで、荷電粒子線が被照射物質に照射され、効率的なRIの製造を実現することが可能となる。
【0013】
また、本発明のRI製造方法は、荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、出射された荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造工程と、RI製造工程での荷電粒子線の照射により発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程と、中性子線量測定工程による測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御工程とを備えることを特徴としている。
を備える。
【0014】
このようなRI製造方法によれば、荷電粒子線の照射によりRI製造工程で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程を備えるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容するRI製造部の収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、本発明のRI製造方法では、中性子線量測定工程によって測定された測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御工程を備えるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線照射後の再照射の必要がない。
【0015】
ここで、制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の積算値が、放射性同位元素の目標とする製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値に達した場合に、荷電粒子線の照射を停止することが好ましい。これにより、制御工程は、測定された中性子線の線量の積算値と目標積算値とを比較し、測定された中性子線の線量の積算値が目標積算値に達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、荷電粒子線の照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0016】
また、RI製造方法の制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量が、測定結果である中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するための判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整することが好適である。これにより、制御工程は、測定結果である中性子線の線量と判定閾値とを比較して中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整して、加速器から出射される荷電粒子線の照射位置などを修正することが可能である。
【0017】
また、RI製造方法の制御工程では、照射パラメータとして、荷電粒子線の照射位置を調整することが好適である。例えば、測定した中性子線の線量が判定閾値に達していない場合には、荷電粒子線が正しい位置(被照射物質が存在する位置)に照射されていないおそれがある。従って、このような場合には、荷電粒子線の照射位置を調整することで、荷電粒子線が被照射物質に照射されるので、効率的なRIの製造を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明のRI製造装置及びRI製造方法によれば、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することが可能であるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることができ、必要なRI製造量を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るRI製造装置を示す概略構成図である
【図2】本発明の実施形態に係るサイクロトロンの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るRI製造装置の概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るサイクロトロン制御装置で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の測定値(瞬時値)の一例を示すグラフである。
【図6】中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の積算値の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるRI製造装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
【0021】
(RI製造装置)
図1は、本発明の実施形態に係るRI製造装置の概略構成図である。本実施形態に係るRI製造装置1は、放射性同位元素(RI)を製造するものである。RI製造装置1は、例えばPET用サイクロトロンとして使用可能であり、製造されたRIは、放射性同位元素標識化合物(RI化合物)である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)の製造に用いられる。例えば病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)に使用される放射性薬剤としては、18F−FLT(フルオロチミジン)、18F−FMISO(フルオロソニダゾール)、11C−ラクロプライド等がある。
【0022】
RI製造装置1は、荷電粒子を加速させるサイクロトロン(粒子加速器)2、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線が照射されてRIを製造するRI製造部(ターゲット)3、ビーム照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定器9、及び荷電粒子線の照射を制御するサイクロトロン制御装置10を備えている。
【0023】
(粒子加速器)
加速器2は、図2に示すように、いわゆる縦型のサイクロトロンであり、一対の磁極22と、真空箱23と、これらの一対の磁極22及び真空箱23を取り囲む環状のヨーク24とを有している。一対の磁極22は、一部が真空箱23内で上面同士が所定間隔空けて対面している。これらの一対の磁極22の隙間内で、水素イオン等の荷電粒子が多重加速される。真空ポンプ4は、加速器2内の真空環境を維持するために使用されるものであり、例えば加速器2の側部に固定されている。
【0024】
(RI製造部)
RI製造部3は、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線を受けてRIを製造するためのものであり、内部にターゲット物質(被照射物質;例えばターゲット水)を収容する収容室(収容部、不図示)が形成されている。RI製造部3は、サイクロトロン2の側部に固定されている。そして、RI製造部3の収容室内のターゲット物質に荷電粒子線が照射されて、核反応が起こり、RIが製造される。
【0025】
(中性子線量測定器)
中性子線量測定器9は、中性子線の線量を測定する測定器である。中性子線量測定器9としては、例えば、公知の中性子サーベイメータなどがある。中性子は、荷電粒子線が照射され、RI製造部3の収容部内で荷電粒子線とターゲット物質との核反応が発生している間だけ放出され、放射化されたRI製造部の収容部等からの残留放射線からの観測は殆どない。従って、中性子線量測定器9は、荷電粒子線の照射による荷電粒子線とターゲット物質との核反応に由来する中性子線の線量のみを測定することになる(バックグラウンドはほとんどない)。
【0026】
発生する中性子の数は、核反応した数とほぼ等しく、1回の核反応(A(p,n)B反応によるnの放出)で1個の中性子が発生する。また、RI製造量は、核反応(A(p,n)B反応によるBの生成)の数と等しくなり、中性子の発生量と比例関係にある。
【0027】
核反応の発生確率は、RI製造部3に荷電粒子線が正しく照射されたときが1番高く、RI製造装置の部品(例えば、収容室を構成する壁部等)に荷電粒子線が照射されたときは低くなる。核反応する確率は、反応断面積の違いにより変化する。従って、RI製造部3の収容室内のターゲット物質に荷電粒子線が照射されたときに、中性子線量測定器9による中性子線量の測定値(瞬間値)が最も高くなる。
【0028】
仮にRI製造部3内の収容室に収められたターゲット物質以外に荷電粒子線が照射されたときは、核反応の数が減少するため中性子の発生量も減り、中性子線量測定器9によって測定された中性子線の線量の測定値は、ターゲット物質に荷電粒子線が照射されたときと比較して少ない。
【0029】
(サイクロトロン制御装置)
サイクロトロン制御装置10は、演算処理を行うCPU、記憶部11となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。サイクロトロン制御装置10は、サイクロトロン2及び中性子線量測定器9と電気的に接続されている。サイクロトロン制御装置10のCPUでは、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することで制御部12が構築される。
【0030】
記憶部11は、目標とするRI製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値を記憶する記憶手段として機能する。また、記憶部11は、中性子線の線量の積算値ではなく単位時間での中性子線の線量が所定値に達しているか否かを判定するためのビーム照射判定閾値を記憶する記憶手段として機能する。
【0031】
制御部12は、中性子線量測定器9から出力された測定値データを入力し、中性子線量測定器9による測定結果に基づいて、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を制御する制御手段として機能する。制御部12は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量の積算値が目標積算値に達した場合に、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を停止する制御を行う。また制御部12は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達していない場合に、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射パラメータを調整する。具体的には、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射位置を調整する制御を行う。
【0032】
また、制御部12は、サイクロトロン2へデータを入力する。具体的には、サイクロトロン2から出力する荷電粒子線の線量に関するデータ、荷電粒子線の照射時間(サイクロトロン2からの荷電粒子線の出射時間)に関するデータ、荷電粒子線の照射位置に関するデータを入力する。なお、荷電粒子線の照射位置とは、荷電粒子線がRI製造部3に照射される際に、RI製造部3内で荷電粒子線が照射される位置(荷電粒子線が当たる位置)のことである。また制御部12は、中性子線量測定器9による測定結果に基づいて、荷電粒子線の線量、残りの照射時間を演算し、演算結果である荷電粒子線の線量、及び残りの照射時間に関する指令信号をサイクロトロン2に出力し、サイクロトロン2を制御することもできる。
【0033】
(中性子線量測定器の配置)
次に中性子線量測定器9の配置例について説明する。図1に示すように、RI製造部3の背面側(荷電粒子線の照射方向上流側をRI製造部3の正面とする)に、中性子線量測定器9を配置する。中性子線量測定器9は、RI製造部3の背面側に限定されず、他の位置、例えばRI製造部3の側面側(荷電粒子線の照射方向と直交する向きの側)に配置してもよい。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係るRI製造装置の概略断面図であり、中性子線量測定器9の配置を示す図である。図3に示すRI製造装置1は、いわゆる自己シールド型の粒子加速器システムであり、サイクロトロン2を取り囲んで放射線を遮蔽するための自己シールド(壁体)6を備えている。自己シールド6によって取り囲まれて形成された内部空間には、サイクロトロン2の運転に必要な付属品(不図示)、RI製造部3内のRIをRI製造装置1外に導出するための導出チューブ(不図示)、RI製造部3の冷却に用いられる付属機器(不図示)等が配置されている。
【0035】
RI製造部3は、サイクロトロン2を挟んで図示X方向の両側に配置されている。例えば、図示左側に配置されたRI製造部3(3A)は上段側に配置され、図示右側に配置されたRI製造部3(3B)は下段側に配置されている。そして、中性子線量測定器9は、例えば、自己シールド6によって囲まれた内部空間Sの図示左側の床面上に配置されている。中性子線量測定器9とサイクロトロン制御装置10とを接続するケーブル、サイクロトロン2とサイクロトロン制御装置10とを接続するケーブルは、床面に設置されたピット(通路)内を通り、自己シールド6外へ導出されている。
【0036】
(RI製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るRI製造方法について説明する。本実施形態のRI製造方法では、荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、出射された荷電粒子線が照射されることで被照射物質からRIを製造するRI製造工程と、RI製造工程での荷電粒子線の照射中に発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程と、中性子線量測定工程による測定結果に基づいて、RI製造工程における荷電粒子線の照射を制御する制御工程とを実行する。
【0037】
また、制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の積算値が、目標とするRI製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値に達した場合に、荷電粒子線の照射を停止する。また、制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するためのビーム照射判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整する。制御工程では、照射パラメータとして、荷電粒子線の照射位置を制御する。
【0038】
次に、図4を参照して、RI製造方法における処理手順について説明する。RI製造方法は、例えば図1に示すRI製造装置1を用いて実行される。図4は、RI製造装置のサイクロトロン制御装置で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず、RI製造装置1のサイクロトロン制御装置10では、製造するRIを用いて合成されるRI化合物を用いて検査(ポジトロン断層撮影による診断検査)が行われる検査人数が入力される(ステップS1)。サイクロトロン制御装置10には、図示しない入力部(例えばキーボード、タッチパネル)が設けられている。RI製造装置1を操作する操作者は、入力部を用いてPET検査を行う人数を入力する。
【0040】
サイクロトロン制御装置10の制御部12は、入力された検査人数に基づいて、必要なRI(製造)量を算出する(ステップS2)。次に、制御部12は、サイクロトロン2の運転条件を算出し、算出した運転条件をサイクロトロン2に設定する(ステップS3)。具体的には、制御部12は必要なRI量を製造するための荷電粒子線の線量、及び荷電粒子線の照射時間等を、サイクロトロン2の運転条件として算出し、算出された荷電粒子線の線量に関する指令信号、及び、照射時間に関する指令信号をサイクロトロン2へ出力して、サイクロトロン2の運転条件を設定する。また、制御部12は、必要なRI量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値を算出し、算出された目標積算値を記憶部11に記憶することも可能である。
【0041】
次に、サイクロトロン2は荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、RI製造部3の収容部に収容されたターゲット物質への荷電粒子線の照射を開始(ステップS4)する。
【0042】
荷電粒子線の照射開始後、中性子線量測定器9は荷電粒子線とターゲット物質との核反応により生じる中性子線の線量を測定し、測定結果がサイクロトロン制御装置10の制御部12に入力される(ステップS5)。制御部12は、測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達しているか否かを判定する(ステップS6)。測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達している場合にはステップS8に進み、測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達していない場合には、ステップS7に進み、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射位置を調整し、ステップS4に戻る。なお、「判定閾値に達している場合」とは「判定閾値以上になった場合」と「判定閾値を超えた場合」の何れの場合でもよい。
【0043】
図5は、中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の測定値の一例を示すグラフである。図5では横軸に時間経過(t)を示し、縦軸に中性子線の線量の測定値(瞬時値m)を示している。制御部12は、記憶部11に記憶されているビーム照射判定閾値thと、リアルタイムの測定結果である中性子線の線量の測定値mを比較して、測定値mがビーム照射判定閾値thに達した場合には、ステップS8に進み、そうでない場合には、ステップS7へ進む。
【0044】
中性子線の線量の測定値mがビーム照射判定閾値thに達していない場合には、制御部12はビーム照射位置を調整し(ステップS7)、荷電粒子線の照射を継続し(ステップS4)、中性子線の線量の測定値を入力し(ステップS5)、再びステップS6を実行する。
【0045】
中性子線の線量の測定値mがビーム照射判定閾値thに達していると判定された場合にはステップS8に進み、制御部12は、中性子線の線量の積算値が目標積算値に達しているか否かを判定する。中性子線の線量の積算値が目標積算値に達している場合には、ステップS9に進み、中性子線の線量の積算値が目標積算値に達していない場合には、ステップS4に戻る。
【0046】
図6は、中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の積算値の一例を示すグラフである。図6では横軸に時間経過(t)を示し、縦軸に中性子線の線量の積算値を示している。制御部12は、記憶部11に記憶されている目標積算値Sと中性子線の線量の積算値Mと比較して、積算値Mが目標積算値Sに達した場合には、ステップS9に進み、そうでない場合にはステップS4に戻る。なお、「目標積算値に達している場合」とは「目標積算値以上になった場合」と「目標積算値を超えた場合」の何れの場合でもよい。
【0047】
中性子線量の積算値Mが目標積算値Sに達していない場合には、荷電粒子線の照射を継続し(ステップS4)、中性子線の線量の測定値を入力し(ステップS5)、再びステップS6,S8を実行する。
【0048】
中性子線の線量の積算値Sが目標積算値Sに達していると判定された場合にはステップS9に進み、制御部12は、サイクロトロン2に指令信号を送信し、荷電粒子線の照射(サイクロトロン2からの荷電粒子線の出射)を停止する制御を実行する。続くステップS10では、RI製造部3の収容室内に納められたRIが移送されて取り出され、RIの収量の確認が行われる(ステップS11)。
【0049】
本実施形態のRI製造装置1によれば、荷電粒子線の照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定器9を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造部3内のRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容する収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、RI製造装置1では、中性子線量測定器9によって測定された測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御するサイクロトロン制御装置10を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線の照射後の再照射の必要がない。その結果、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることができ、必要なRI製造量を確実に確保すること可能なRI製造装置1を実現することがすることができる。
【0050】
また、RI製造装置1は、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線がRI製造部3に照射されているときの中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するためのビーム照射判定閾値を記憶する記憶部11を備え、サイクロトロン制御装置10は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値thに達していない場合に、サイクロトロン2によるビーム照射位置を制御する構成とされている。これにより、サイクロトロン制御装置10は、測定された中性子線の線量の瞬時値mとビーム照射判定閾値thとを比較して中性子線の線量の瞬時値mがビーム照射判定閾値thに達していない場合に、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線がRI製造部3の照射室内のターゲット物質に照射されておらず核反応が起こっていないと判定することが可能である。そのため、荷電粒子線の照射位置を制御して補正し核反応を発生させてRIを製造することができる。
【0051】
また、RI製造装置1は、中性子線の線量の目標積算値Sを記憶する記憶部11を備え、サイクロトロン制御装置10は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量の積算値Mが目標積算値Sに達した場合に、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を停止する構成とされている。これにより、サイクロトロン制御装置10は、測定された中性子線の線量の積算値Mと目標積算値Sとを比較して中性子線の線量の積算値Mが目標積算値Sに達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、ビーム照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0052】
また、本実施形態のRI製造方法によれば、荷電粒子線の照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程(ステップS5)を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中のRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容する収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、本実施形態に係るRI製造方法では、中性子線量測定工程によって測定された測定結果に基づいて、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を制御する制御工程(ステップS4,S6,S7,S8,S9)を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線照射後の再照射の必要がない。その結果、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることができ、必要なRI製造量を確実に確保すること可能なRI製造方法を実現することがすることができる。
【0053】
また、RI製造方法の制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の測定値mが、ビーム照射判定閾値thに達しない場合に、荷電粒子線の照射位置を制御することができる。これにより、測定された中性子線の線量の瞬時値mとビーム照射判定閾値thとを比較して中性子線の線量の瞬時値mがビーム照射判定閾値thに達していない場合に、RI製造工程(ステップS4)において荷電粒子線が正しく照射されておらず核反応が起こっていないと判定することが可能である。そのため、荷電粒子線の照射位置を制御して補正し核反応を発生させてRIを製造することができる。
【0054】
また、RI製造方法の制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の積算値Mが、目標積算値Sに達した場合に、荷電粒子線の照射を停止することができる。これにより、制御工程では、測定された中性子線の線量の積算値Mと目標積算値Sとを比較して中性子線量の積算値Mが目標積算値Sに達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、ビーム照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0055】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、加速器をサイクロトロンとして説明しているが、加速器はサイクロトロンに限定されず、他の加速器(例えばシンクロサイクロトロンやシンクロトロン)でも良い。
【0056】
また、上記実施形態では、中性子線の線量の目標積算値を記憶する記憶部を備える構成としているが、記憶部が中性子線量の目標積算値を記憶していない構成でもよい。また、上記実施形態では、ビーム照射判定閾値を記憶する記憶部を備える構成としているが、記憶部がビーム照射判定閾値を記憶していない構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量の積算値が目標積算値に達した場合に、加速器によるビーム照射を停止する制御を実施しているが、本発明はこれに限定されず、中性子線の線量の積算値に基づいて荷電粒子線の照射を停止する制御を実行しない構成でもよい。例えば、中性子線の線量の積算値に基づいて製造したRI及び残ったターゲット物質を回収し、その後すぐに次のターゲット物質を補充してRIの製造を行っても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、中性子線量測定器9による測定結果である測定値(瞬時値)がビーム照射判定閾値thに達していない場合に、加速器によるビーム照射位置を制御しているが、本発明はこれに限定されず、中性子線量の測定値に基づいてビーム照射位置を調整する制御を実行しない構成でもよい。例えば、中性子線の線量の測定値に基づいてビームの径を調整(拡大)しても良いし、ビームの電流値を調整(高く)してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…RI製造装置、2…加速器、3…ターゲット、4…真空ポンプ、6…自己シールド、7、8…ターゲットシールド、9…中性子線量測定部、10…サイクロトロン制御装置、11…記憶部、12…制御部、S…内部空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、RI(放射性同位元素)製造装置及びRI製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポジトロン断層撮影(PET;Positron Emission Tomography)に用いる検査用薬剤を製造するための原料の一つである放射性同位元素(RI;Radio Isotope)の製造や、放射線治療に用いられる高エネルギーの荷電粒子線の生成には、サイクロトロン等の粒子加速器が使用される。RIを製造する際には、ターゲット物質にサイクロトロンで加速された荷電粒子線を照射することで、RIが製造される。例えばRIを製造する技術として、特許文献1に記載の製造装置がある。
【0003】
この特許文献1に記載の技術では、製造されたRIが捕集される捕集ビンに接近してRIデテクターが設けられている。このRIデテクターを用いて、荷電粒子ビームの照射後にRIの製造量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−119197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、荷電粒子線のターゲット物質への照射終了後にRI製造量の測定を実施しているため、RI製造量が必要量に達していないと判明した場合には、荷電粒子線を再照射して必要量を確保する必要がある。
【0006】
また、RIを製造する装置の運転中において荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容する収容室内の圧力、ターゲット物質の温度をリアルタイムに測定し、測定値を基にRIの製造量を算出することが考えられる。しかし、荷電粒子線は必ずしもその全線量がターゲット物質に照射されるのではなく、その一部が収容室を構成する壁部等に照射されてしまうことがある。また収容室内は冷却手段により冷却されるため、収容室内の圧力は低下するし、ターゲット物質の温度も低下する。従って、これらの測定値に基づいて、RIを製造する装置の運転中に正確なRI製造量を測定することは困難である。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることが可能なRI製造装置およびRI製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のRI製造装置は、荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射する加速器と、加速器から出射された荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造部と、荷電粒子線の照射によりRI製造部で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段と、中性子線量測定手段による測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成されたRI製造装置によれば、荷電粒子線の照射によりRI製造部で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造部内のRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容するRI製造部の収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、本発明のRI製造装置では、中性子線量測定手段によって測定された測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御手段を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線照射後の再照射の必要がない。
【0010】
ここで、放射性同位元素の目標とする製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値を記憶する記憶手段を備え、制御手段は、測定結果である中性子線の線量の積算値が目標積算値に達した場合に、荷電粒子線の照射を停止することが好ましい。これにより、制御手段は、測定された中性子線の線量の積算値と目標積算値とを比較し、測定された中性子線の線量の積算値が目標積算値に達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、荷電粒子線の照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0011】
また、RI製造装置は、測定結果である中性子線の線量が目標とする値となっているか判定するための判定閾値を記憶する記憶手段を備え、制御手段は、測定結果である中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整する構成であることが好適である。これにより、制御手段は、測定結果である中性子線の線量と判定閾値とを比較して中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整して、加速器から出射される荷電粒子線の照射位置などを修正することが可能である。
【0012】
また、照射パラメータは、荷電粒子線の照射位置であることが好適である。例えば、測定した中性子線の線量が判定閾値に達していない場合には、荷電粒子線が正しい位置(被照射物質が存在する位置)に照射されていない可能性がある。従って、このような場合には、荷電粒子線の照射位置を調整することで、荷電粒子線が被照射物質に照射され、効率的なRIの製造を実現することが可能となる。
【0013】
また、本発明のRI製造方法は、荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、出射された荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造工程と、RI製造工程での荷電粒子線の照射により発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程と、中性子線量測定工程による測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御工程とを備えることを特徴としている。
を備える。
【0014】
このようなRI製造方法によれば、荷電粒子線の照射によりRI製造工程で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程を備えるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容するRI製造部の収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、本発明のRI製造方法では、中性子線量測定工程によって測定された測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御する制御工程を備えるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線照射後の再照射の必要がない。
【0015】
ここで、制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の積算値が、放射性同位元素の目標とする製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値に達した場合に、荷電粒子線の照射を停止することが好ましい。これにより、制御工程は、測定された中性子線の線量の積算値と目標積算値とを比較し、測定された中性子線の線量の積算値が目標積算値に達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、荷電粒子線の照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0016】
また、RI製造方法の制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量が、測定結果である中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するための判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整することが好適である。これにより、制御工程は、測定結果である中性子線の線量と判定閾値とを比較して中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整して、加速器から出射される荷電粒子線の照射位置などを修正することが可能である。
【0017】
また、RI製造方法の制御工程では、照射パラメータとして、荷電粒子線の照射位置を調整することが好適である。例えば、測定した中性子線の線量が判定閾値に達していない場合には、荷電粒子線が正しい位置(被照射物質が存在する位置)に照射されていないおそれがある。従って、このような場合には、荷電粒子線の照射位置を調整することで、荷電粒子線が被照射物質に照射されるので、効率的なRIの製造を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明のRI製造装置及びRI製造方法によれば、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することが可能であるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることができ、必要なRI製造量を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るRI製造装置を示す概略構成図である
【図2】本発明の実施形態に係るサイクロトロンの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るRI製造装置の概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るサイクロトロン制御装置で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【図5】中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の測定値(瞬時値)の一例を示すグラフである。
【図6】中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の積算値の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるRI製造装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
【0021】
(RI製造装置)
図1は、本発明の実施形態に係るRI製造装置の概略構成図である。本実施形態に係るRI製造装置1は、放射性同位元素(RI)を製造するものである。RI製造装置1は、例えばPET用サイクロトロンとして使用可能であり、製造されたRIは、放射性同位元素標識化合物(RI化合物)である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)の製造に用いられる。例えば病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)に使用される放射性薬剤としては、18F−FLT(フルオロチミジン)、18F−FMISO(フルオロソニダゾール)、11C−ラクロプライド等がある。
【0022】
RI製造装置1は、荷電粒子を加速させるサイクロトロン(粒子加速器)2、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線が照射されてRIを製造するRI製造部(ターゲット)3、ビーム照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定器9、及び荷電粒子線の照射を制御するサイクロトロン制御装置10を備えている。
【0023】
(粒子加速器)
加速器2は、図2に示すように、いわゆる縦型のサイクロトロンであり、一対の磁極22と、真空箱23と、これらの一対の磁極22及び真空箱23を取り囲む環状のヨーク24とを有している。一対の磁極22は、一部が真空箱23内で上面同士が所定間隔空けて対面している。これらの一対の磁極22の隙間内で、水素イオン等の荷電粒子が多重加速される。真空ポンプ4は、加速器2内の真空環境を維持するために使用されるものであり、例えば加速器2の側部に固定されている。
【0024】
(RI製造部)
RI製造部3は、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線を受けてRIを製造するためのものであり、内部にターゲット物質(被照射物質;例えばターゲット水)を収容する収容室(収容部、不図示)が形成されている。RI製造部3は、サイクロトロン2の側部に固定されている。そして、RI製造部3の収容室内のターゲット物質に荷電粒子線が照射されて、核反応が起こり、RIが製造される。
【0025】
(中性子線量測定器)
中性子線量測定器9は、中性子線の線量を測定する測定器である。中性子線量測定器9としては、例えば、公知の中性子サーベイメータなどがある。中性子は、荷電粒子線が照射され、RI製造部3の収容部内で荷電粒子線とターゲット物質との核反応が発生している間だけ放出され、放射化されたRI製造部の収容部等からの残留放射線からの観測は殆どない。従って、中性子線量測定器9は、荷電粒子線の照射による荷電粒子線とターゲット物質との核反応に由来する中性子線の線量のみを測定することになる(バックグラウンドはほとんどない)。
【0026】
発生する中性子の数は、核反応した数とほぼ等しく、1回の核反応(A(p,n)B反応によるnの放出)で1個の中性子が発生する。また、RI製造量は、核反応(A(p,n)B反応によるBの生成)の数と等しくなり、中性子の発生量と比例関係にある。
【0027】
核反応の発生確率は、RI製造部3に荷電粒子線が正しく照射されたときが1番高く、RI製造装置の部品(例えば、収容室を構成する壁部等)に荷電粒子線が照射されたときは低くなる。核反応する確率は、反応断面積の違いにより変化する。従って、RI製造部3の収容室内のターゲット物質に荷電粒子線が照射されたときに、中性子線量測定器9による中性子線量の測定値(瞬間値)が最も高くなる。
【0028】
仮にRI製造部3内の収容室に収められたターゲット物質以外に荷電粒子線が照射されたときは、核反応の数が減少するため中性子の発生量も減り、中性子線量測定器9によって測定された中性子線の線量の測定値は、ターゲット物質に荷電粒子線が照射されたときと比較して少ない。
【0029】
(サイクロトロン制御装置)
サイクロトロン制御装置10は、演算処理を行うCPU、記憶部11となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。サイクロトロン制御装置10は、サイクロトロン2及び中性子線量測定器9と電気的に接続されている。サイクロトロン制御装置10のCPUでは、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することで制御部12が構築される。
【0030】
記憶部11は、目標とするRI製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値を記憶する記憶手段として機能する。また、記憶部11は、中性子線の線量の積算値ではなく単位時間での中性子線の線量が所定値に達しているか否かを判定するためのビーム照射判定閾値を記憶する記憶手段として機能する。
【0031】
制御部12は、中性子線量測定器9から出力された測定値データを入力し、中性子線量測定器9による測定結果に基づいて、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を制御する制御手段として機能する。制御部12は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量の積算値が目標積算値に達した場合に、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を停止する制御を行う。また制御部12は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達していない場合に、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射パラメータを調整する。具体的には、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射位置を調整する制御を行う。
【0032】
また、制御部12は、サイクロトロン2へデータを入力する。具体的には、サイクロトロン2から出力する荷電粒子線の線量に関するデータ、荷電粒子線の照射時間(サイクロトロン2からの荷電粒子線の出射時間)に関するデータ、荷電粒子線の照射位置に関するデータを入力する。なお、荷電粒子線の照射位置とは、荷電粒子線がRI製造部3に照射される際に、RI製造部3内で荷電粒子線が照射される位置(荷電粒子線が当たる位置)のことである。また制御部12は、中性子線量測定器9による測定結果に基づいて、荷電粒子線の線量、残りの照射時間を演算し、演算結果である荷電粒子線の線量、及び残りの照射時間に関する指令信号をサイクロトロン2に出力し、サイクロトロン2を制御することもできる。
【0033】
(中性子線量測定器の配置)
次に中性子線量測定器9の配置例について説明する。図1に示すように、RI製造部3の背面側(荷電粒子線の照射方向上流側をRI製造部3の正面とする)に、中性子線量測定器9を配置する。中性子線量測定器9は、RI製造部3の背面側に限定されず、他の位置、例えばRI製造部3の側面側(荷電粒子線の照射方向と直交する向きの側)に配置してもよい。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係るRI製造装置の概略断面図であり、中性子線量測定器9の配置を示す図である。図3に示すRI製造装置1は、いわゆる自己シールド型の粒子加速器システムであり、サイクロトロン2を取り囲んで放射線を遮蔽するための自己シールド(壁体)6を備えている。自己シールド6によって取り囲まれて形成された内部空間には、サイクロトロン2の運転に必要な付属品(不図示)、RI製造部3内のRIをRI製造装置1外に導出するための導出チューブ(不図示)、RI製造部3の冷却に用いられる付属機器(不図示)等が配置されている。
【0035】
RI製造部3は、サイクロトロン2を挟んで図示X方向の両側に配置されている。例えば、図示左側に配置されたRI製造部3(3A)は上段側に配置され、図示右側に配置されたRI製造部3(3B)は下段側に配置されている。そして、中性子線量測定器9は、例えば、自己シールド6によって囲まれた内部空間Sの図示左側の床面上に配置されている。中性子線量測定器9とサイクロトロン制御装置10とを接続するケーブル、サイクロトロン2とサイクロトロン制御装置10とを接続するケーブルは、床面に設置されたピット(通路)内を通り、自己シールド6外へ導出されている。
【0036】
(RI製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るRI製造方法について説明する。本実施形態のRI製造方法では、荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、出射された荷電粒子線が照射されることで被照射物質からRIを製造するRI製造工程と、RI製造工程での荷電粒子線の照射中に発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程と、中性子線量測定工程による測定結果に基づいて、RI製造工程における荷電粒子線の照射を制御する制御工程とを実行する。
【0037】
また、制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の積算値が、目標とするRI製造量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値に達した場合に、荷電粒子線の照射を停止する。また、制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するためのビーム照射判定閾値に達していない場合に、荷電粒子線の照射パラメータを調整する。制御工程では、照射パラメータとして、荷電粒子線の照射位置を制御する。
【0038】
次に、図4を参照して、RI製造方法における処理手順について説明する。RI製造方法は、例えば図1に示すRI製造装置1を用いて実行される。図4は、RI製造装置のサイクロトロン制御装置で実行される処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず、RI製造装置1のサイクロトロン制御装置10では、製造するRIを用いて合成されるRI化合物を用いて検査(ポジトロン断層撮影による診断検査)が行われる検査人数が入力される(ステップS1)。サイクロトロン制御装置10には、図示しない入力部(例えばキーボード、タッチパネル)が設けられている。RI製造装置1を操作する操作者は、入力部を用いてPET検査を行う人数を入力する。
【0040】
サイクロトロン制御装置10の制御部12は、入力された検査人数に基づいて、必要なRI(製造)量を算出する(ステップS2)。次に、制御部12は、サイクロトロン2の運転条件を算出し、算出した運転条件をサイクロトロン2に設定する(ステップS3)。具体的には、制御部12は必要なRI量を製造するための荷電粒子線の線量、及び荷電粒子線の照射時間等を、サイクロトロン2の運転条件として算出し、算出された荷電粒子線の線量に関する指令信号、及び、照射時間に関する指令信号をサイクロトロン2へ出力して、サイクロトロン2の運転条件を設定する。また、制御部12は、必要なRI量に対応する中性子線の線量の積算値である目標積算値を算出し、算出された目標積算値を記憶部11に記憶することも可能である。
【0041】
次に、サイクロトロン2は荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、RI製造部3の収容部に収容されたターゲット物質への荷電粒子線の照射を開始(ステップS4)する。
【0042】
荷電粒子線の照射開始後、中性子線量測定器9は荷電粒子線とターゲット物質との核反応により生じる中性子線の線量を測定し、測定結果がサイクロトロン制御装置10の制御部12に入力される(ステップS5)。制御部12は、測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達しているか否かを判定する(ステップS6)。測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達している場合にはステップS8に進み、測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値に達していない場合には、ステップS7に進み、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射位置を調整し、ステップS4に戻る。なお、「判定閾値に達している場合」とは「判定閾値以上になった場合」と「判定閾値を超えた場合」の何れの場合でもよい。
【0043】
図5は、中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の測定値の一例を示すグラフである。図5では横軸に時間経過(t)を示し、縦軸に中性子線の線量の測定値(瞬時値m)を示している。制御部12は、記憶部11に記憶されているビーム照射判定閾値thと、リアルタイムの測定結果である中性子線の線量の測定値mを比較して、測定値mがビーム照射判定閾値thに達した場合には、ステップS8に進み、そうでない場合には、ステップS7へ進む。
【0044】
中性子線の線量の測定値mがビーム照射判定閾値thに達していない場合には、制御部12はビーム照射位置を調整し(ステップS7)、荷電粒子線の照射を継続し(ステップS4)、中性子線の線量の測定値を入力し(ステップS5)、再びステップS6を実行する。
【0045】
中性子線の線量の測定値mがビーム照射判定閾値thに達していると判定された場合にはステップS8に進み、制御部12は、中性子線の線量の積算値が目標積算値に達しているか否かを判定する。中性子線の線量の積算値が目標積算値に達している場合には、ステップS9に進み、中性子線の線量の積算値が目標積算値に達していない場合には、ステップS4に戻る。
【0046】
図6は、中性子線量測定器で測定された中性子線の線量の積算値の一例を示すグラフである。図6では横軸に時間経過(t)を示し、縦軸に中性子線の線量の積算値を示している。制御部12は、記憶部11に記憶されている目標積算値Sと中性子線の線量の積算値Mと比較して、積算値Mが目標積算値Sに達した場合には、ステップS9に進み、そうでない場合にはステップS4に戻る。なお、「目標積算値に達している場合」とは「目標積算値以上になった場合」と「目標積算値を超えた場合」の何れの場合でもよい。
【0047】
中性子線量の積算値Mが目標積算値Sに達していない場合には、荷電粒子線の照射を継続し(ステップS4)、中性子線の線量の測定値を入力し(ステップS5)、再びステップS6,S8を実行する。
【0048】
中性子線の線量の積算値Sが目標積算値Sに達していると判定された場合にはステップS9に進み、制御部12は、サイクロトロン2に指令信号を送信し、荷電粒子線の照射(サイクロトロン2からの荷電粒子線の出射)を停止する制御を実行する。続くステップS10では、RI製造部3の収容室内に納められたRIが移送されて取り出され、RIの収量の確認が行われる(ステップS11)。
【0049】
本実施形態のRI製造装置1によれば、荷電粒子線の照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定器9を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中におけるRI製造部3内のRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容する収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、RI製造装置1では、中性子線量測定器9によって測定された測定結果に基づいて、荷電粒子線の照射を制御するサイクロトロン制御装置10を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線の照射後の再照射の必要がない。その結果、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることができ、必要なRI製造量を確実に確保すること可能なRI製造装置1を実現することがすることができる。
【0050】
また、RI製造装置1は、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線がRI製造部3に照射されているときの中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するためのビーム照射判定閾値を記憶する記憶部11を備え、サイクロトロン制御装置10は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量がビーム照射判定閾値thに達していない場合に、サイクロトロン2によるビーム照射位置を制御する構成とされている。これにより、サイクロトロン制御装置10は、測定された中性子線の線量の瞬時値mとビーム照射判定閾値thとを比較して中性子線の線量の瞬時値mがビーム照射判定閾値thに達していない場合に、サイクロトロン2から出射された荷電粒子線がRI製造部3の照射室内のターゲット物質に照射されておらず核反応が起こっていないと判定することが可能である。そのため、荷電粒子線の照射位置を制御して補正し核反応を発生させてRIを製造することができる。
【0051】
また、RI製造装置1は、中性子線の線量の目標積算値Sを記憶する記憶部11を備え、サイクロトロン制御装置10は、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量の積算値Mが目標積算値Sに達した場合に、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を停止する構成とされている。これにより、サイクロトロン制御装置10は、測定された中性子線の線量の積算値Mと目標積算値Sとを比較して中性子線の線量の積算値Mが目標積算値Sに達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、ビーム照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0052】
また、本実施形態のRI製造方法によれば、荷電粒子線の照射中にRI製造部3で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程(ステップS5)を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中のRI製造量を測定することができる。このように荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定することで、従前のように、荷電粒子線のビーム電流値、ターゲット物質を収容する収容室内の圧力、ターゲット物質の温度を測定する場合と比較して、精度良くRI製造量を測定することができる。また、本実施形態に係るRI製造方法では、中性子線量測定工程によって測定された測定結果に基づいて、サイクロトロン2による荷電粒子線の照射を制御する制御工程(ステップS4,S6,S7,S8,S9)を備える構成であるため、荷電粒子線の照射中に中性子線の線量を測定してRI製造量を把握した上で荷電粒子線の照射を調節することができる。そのため、RIの必要製造量を確保するために、荷電粒子線照射後の再照射の必要がない。その結果、荷電粒子線の照射中におけるRI製造量の測定精度の向上を図ることができ、必要なRI製造量を確実に確保すること可能なRI製造方法を実現することがすることができる。
【0053】
また、RI製造方法の制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の測定値mが、ビーム照射判定閾値thに達しない場合に、荷電粒子線の照射位置を制御することができる。これにより、測定された中性子線の線量の瞬時値mとビーム照射判定閾値thとを比較して中性子線の線量の瞬時値mがビーム照射判定閾値thに達していない場合に、RI製造工程(ステップS4)において荷電粒子線が正しく照射されておらず核反応が起こっていないと判定することが可能である。そのため、荷電粒子線の照射位置を制御して補正し核反応を発生させてRIを製造することができる。
【0054】
また、RI製造方法の制御工程では、中性子線量測定工程による測定結果である中性子線の線量の積算値Mが、目標積算値Sに達した場合に、荷電粒子線の照射を停止することができる。これにより、制御工程では、測定された中性子線の線量の積算値Mと目標積算値Sとを比較して中性子線量の積算値Mが目標積算値Sに達している場合に、必要なRI製造量に達したと判定することが可能であるため、ビーム照射を停止してRIの製造を完了することができる。
【0055】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、加速器をサイクロトロンとして説明しているが、加速器はサイクロトロンに限定されず、他の加速器(例えばシンクロサイクロトロンやシンクロトロン)でも良い。
【0056】
また、上記実施形態では、中性子線の線量の目標積算値を記憶する記憶部を備える構成としているが、記憶部が中性子線量の目標積算値を記憶していない構成でもよい。また、上記実施形態では、ビーム照射判定閾値を記憶する記憶部を備える構成としているが、記憶部がビーム照射判定閾値を記憶していない構成でもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、中性子線量測定器9による測定結果である中性子線の線量の積算値が目標積算値に達した場合に、加速器によるビーム照射を停止する制御を実施しているが、本発明はこれに限定されず、中性子線の線量の積算値に基づいて荷電粒子線の照射を停止する制御を実行しない構成でもよい。例えば、中性子線の線量の積算値に基づいて製造したRI及び残ったターゲット物質を回収し、その後すぐに次のターゲット物質を補充してRIの製造を行っても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、中性子線量測定器9による測定結果である測定値(瞬時値)がビーム照射判定閾値thに達していない場合に、加速器によるビーム照射位置を制御しているが、本発明はこれに限定されず、中性子線量の測定値に基づいてビーム照射位置を調整する制御を実行しない構成でもよい。例えば、中性子線の線量の測定値に基づいてビームの径を調整(拡大)しても良いし、ビームの電流値を調整(高く)してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…RI製造装置、2…加速器、3…ターゲット、4…真空ポンプ、6…自己シールド、7、8…ターゲットシールド、9…中性子線量測定部、10…サイクロトロン制御装置、11…記憶部、12…制御部、S…内部空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器から出射された前記荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造部と、
前記荷電粒子線の照射により前記RI製造部で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段と、
前記中性子線量測定手段による測定結果に基づいて、前記荷電粒子線の照射を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするRI製造装置。
【請求項2】
前記放射性同位元素の目標とする製造量に対応する前記中性子線の線量の積算値である目標積算値を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記測定結果である前記中性子線の線量の積算値が前記目標積算値に達した場合に、前記荷電粒子線の照射を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載のRI製造装置。
【請求項3】
前記測定結果である前記中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するための判定閾値を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記測定結果である前記中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、前記荷電粒子線の照射パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のRI製造装置。
【請求項4】
前記照射パラメータは、前記荷電粒子線の照射位置である
ことを特徴とする請求項3に記載のRI製造装置。
【請求項5】
荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、出射された前記荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造工程と、
前記RI製造工程での前記荷電粒子線の照射により発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程と、
前記中性子線量測定工程による測定結果に基づいて、前記荷電粒子線の照射を制御する制御工程と、
を備えることを特徴とするRI製造方法。
【請求項6】
前記制御工程では、前記中性子線量測定工程による前記測定結果である前記中性子線の線量の積算値が、前記放射性同位元素の目標とする製造量に対応する前記中性子線の線量の積算値である目標積算値に達した場合に、前記荷電粒子線の照射を停止する
ことを特徴とする請求項5に記載のRI製造方法。
【請求項7】
前記制御工程では、前記中性子線量測定工程による前記測定結果である前記中性子線の線量が、前記測定結果である前記中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するための判定閾値に達していない場合に、前記荷電粒子線の照射パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のRI製造方法。
【請求項8】
前記制御工程では、前記照射パラメータとして、前記荷電粒子線の照射位置を調整する
ことを特徴とする請求項7に記載のRI製造方法。
【請求項1】
荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射する加速器と、
前記加速器から出射された前記荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造部と、
前記荷電粒子線の照射により前記RI製造部で発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定手段と、
前記中性子線量測定手段による測定結果に基づいて、前記荷電粒子線の照射を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするRI製造装置。
【請求項2】
前記放射性同位元素の目標とする製造量に対応する前記中性子線の線量の積算値である目標積算値を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記測定結果である前記中性子線の線量の積算値が前記目標積算値に達した場合に、前記荷電粒子線の照射を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載のRI製造装置。
【請求項3】
前記測定結果である前記中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するための判定閾値を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記測定結果である前記中性子線の線量が判定閾値に達していない場合に、前記荷電粒子線の照射パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のRI製造装置。
【請求項4】
前記照射パラメータは、前記荷電粒子線の照射位置である
ことを特徴とする請求項3に記載のRI製造装置。
【請求項5】
荷電粒子を加速させて、荷電粒子線を出射し、出射された前記荷電粒子線が照射されることで被照射物質から放射性同位元素を製造するRI製造工程と、
前記RI製造工程での前記荷電粒子線の照射により発生した中性子線の線量を測定する中性子線量測定工程と、
前記中性子線量測定工程による測定結果に基づいて、前記荷電粒子線の照射を制御する制御工程と、
を備えることを特徴とするRI製造方法。
【請求項6】
前記制御工程では、前記中性子線量測定工程による前記測定結果である前記中性子線の線量の積算値が、前記放射性同位元素の目標とする製造量に対応する前記中性子線の線量の積算値である目標積算値に達した場合に、前記荷電粒子線の照射を停止する
ことを特徴とする請求項5に記載のRI製造方法。
【請求項7】
前記制御工程では、前記中性子線量測定工程による前記測定結果である前記中性子線の線量が、前記測定結果である前記中性子線の線量が目標とする値となっているか否かを判定するための判定閾値に達していない場合に、前記荷電粒子線の照射パラメータを調整する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のRI製造方法。
【請求項8】
前記制御工程では、前記照射パラメータとして、前記荷電粒子線の照射位置を調整する
ことを特徴とする請求項7に記載のRI製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−202933(P2012−202933A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70073(P2011−70073)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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