説明

RNAリガンドを含むナノ粒子

金属および/または半導体原子を含有するコアを有し、そのコアが、RNAリガンドを含む複数のリガンドと共有結合しているナノ粒子を作製するための材料および方法を提供する。RNAリガンドはsiRNAまたはmiRNAを含み得る。また、治療および診断におけるこれらのナノ粒子の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ粒子、より詳しくは、低分子干渉RNA(siRNA)およびマイクロRNA(miRNA)などのRNAリガンドを含むナノ粒子、および種々の用途におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
小さなRNA分子は、遺伝子発現の調節において多様な役割を果たすことがわかっている。これらとしては、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAのターゲッティングされた分解、転写後遺伝子サイレンシング(PTG)、マイクロRNA(miRNA)による、発生的に調節されたmRNAの配列特異的翻訳抑制およびターゲッティングされた転写遺伝子サイレンシングが挙げられる。RNAi活性はトランスポゾン可動化を制限し、抗ウイルス防御を提供する(Pal-Bhadraら、2004)。異質染色質複合体のターゲッティングおよび特定の染色体上の遺伝子座でのエピジェネティックな遺伝子サイレンシングにおけるRNAi機構および低分子RNAの役割も実証されている(Verdelら、2004)。また、低分子阻害RNA(siRNA)またはRNA干渉(RNAi)として知られる二本鎖RNA(dsRNA)依存性転写後サイレンシングは、dsRNA複合体が短期間、サイレンシングのために特定の相同な遺伝子をターゲッティングできる現象である。シグナルとして作用して配列同一性を有するmRNAの分解を促進する。20ntのsiRNAは一般に、遺伝子特異的サイレンシングを誘導するには十分に長いが、宿主応答を逃れるには十分に短い(Elbashirら、2001)。ターゲッティングされた遺伝子産物の発現の減少は大きなものであり得、数分子のsiRNAによって90%サイレンシングが誘導される。
【0003】
低分子オリゴヌクレオチドの送達は遺伝子療法に伴う困難を回避できるので、siRNAの使用は、従来の遺伝子療法を越える利点を有し得る。今日まで、in vivoでのベクターベースの治療遺伝子の効率的な送達が、依然として遺伝子療法の成功への障害となっている。siRNAによる標的遺伝子のノックダウンは永久的なものではないが、単一のsiRNAトランスフェクションが、親ならびに後代の細胞において標的タンパク質の阻害の延長をもたらし得るということが観察されている(Tuschl、2001)。しかし、siRNAの送達の技術分野には依然として問題がある。
【0004】
WO02/32404(Consejo Superior de Investigaciones Scientificas)には、炭水化物を含むリガンドがナノ粒子のコアと共有結合している、金属または半導体原子から形成されるナノ粒子が開示されている。これらのナノ粒子は炭水化物によって媒介される相互作用を改変するために用いられ、可溶性であり、非毒性である。GB-A-0313259.4(Consejo Superior de Investigaciones Scientificas and Midatech Limited)からの優先権を主張するPCT出願には、不動態化金属原子および磁性金属原子を含むコアであって、リガンドと共有結合しているコアを有する磁性ナノ粒子が開示されている。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
概して、本発明は、金属および/または半導体原子を含有し、RNAリガンドを結合しているコアを有することを含むナノ粒子に関する。RNAリガンドとは一般に、低分子干渉RNA(siRNA)およびマイクロRNA配列(miRNA)を模倣するよう設計された短いRNA配列である。ナノ粒子はRNAリガンドを送達するために使用でき、広範な適用において、in vitro系および治療適用または診断適用のための用途がある。一例として、本発明のナノ粒子は(1)ターゲッティングされた転写遺伝子サイレンシングに、(2)ターゲッティングされたmRNA分解に、(3)mRNAのイメージングに、(4)同一または異なるナノ粒子上の複数のRNAリガンドを用いることによる経路の阻害に、(5)例えば、肺へのエアゾール送達に、(6)siRNA耐性mRNAをターゲッティングするためにmRNAサイレンシングと組み合わせて、および(7)機能ゲノミクスにおけるツールを用いるために使用できる。
【0006】
当技術分野では、短いRNA配列を、その起源に応じて「低分子干渉RNA」(siRNA)または「マイクロRNA」(miRNA)と呼ぶ。両種類の配列とも、相補的RNA(nmRNA)と結合し、mRNA排除を引き起こすか(RNAi)、mRNAのタンパク質への翻訳を停止することのいずれかによって遺伝子発現をダウンレギュレートするために使用できる。siRNAは長い二本鎖RNAをプロセシングすることによって得られ、自然界に見出される場合には、通常、外因性起源のものである。マイクロ干渉RNA(miRNA)は内因的にコードされる小さな非コードRNAであり、短いヘアピンのプロセシングによって得られる。siRNAとmiRNAは双方とも、RNAを切断せずに部分的に相補的な標的配列を保持するmRNAの翻訳を阻害し、完全に相補的な配列を保持するmRNAを分解できる。RNAi経路はまた、Science、301:1060〜1061頁、2003に論じられるようにゲノムにも作用する。
【0007】
ナノ粒子と会合しているRNAは一本鎖である場合も二本鎖(duplex)である場合もある。miRNA様配列をリガンドとして用いる場合には、RNA配列はヘアピンであり得る、すなわち、アニーリングしてヘアピンを形成し得る、その末端に向かって部分的に相補的な領域を含み得る。ナノ粒子は、さらなる種類のリガンド、例えば、糖ナノ粒子を形成するための炭水化物、および/または2種以上の種類のsiRNAを場合により含み得る。ナノ粒子およびその使用を以下により詳細に論じる。siRNAのナノ粒子への結合は、siRNAに血中、組織培養培地中または細胞内に存在するエキソリボヌクレアーゼからの保護を提供できることが有利である。
【0008】
したがって、第1の態様では、本発明は、金属および/または半導体原子を含有するコアを含み、そのコアが、RNAリガンドを含む複数のリガンドと共有結合しているナノ粒子を提供する。
【0009】
ナノ粒子を形成するsiRNAリガンドは一本鎖であっても二本鎖(duplex)であってもよい。しかし、標的遺伝子の機能のRNA媒介性ダウンレギュレーションの有効性を最適化するためには、siRNA分子の長さを、mRNA標的のsiRNAによる認識を媒介するRISC複合体によるsiRNAの正確な認識を確実にするよう選択することが好ましく、ナノ粒子をin vivoで投与する場合には、siRNAが宿主応答を低減するのに十分に短いことが好ましい。
【0010】
miRNAリガンドは、通常、一本鎖であり、部分的に相補的な、リガンドがヘアピンを形成するのを可能にする領域を有する。miRNAは、通常、一本鎖RNAの形であり、その他の遺伝子の発現を調節すると考えられている。miRNAは、DNAから転写されるが、タンパク質に翻訳されないRNA遺伝子である。miRNA遺伝子をコードするDNA配列はmiRNAよりも長い。このDNA配列は、miRNA配列と適当な逆向き相補体とを含む。このDNA配列が一本鎖RNA分子に転写されると、miRNA配列およびその逆向き相補体塩基対が二本鎖RNAセグメントを形成し、このRNA構造全体がヘアピン構造と呼ばれる(「ショートヘアピンRNA」またはshRNA)。次いで、ダイサー酵素がヘアピン構造から二本鎖領域を切断し、成熟miRNAを放出する。
【0011】
shRNAは、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、例えば、ヒトH1または7SKプロモーターの制御下にshRNA配列をコードするDNA構築物で、細胞をトランスフェクトすることによって細胞内で産生させることができる。あるいは、shRNAは、外因的に合成し、細胞に直接導入することもできる。
【0012】
通常、siRNAまたはmiRNAの作用を模倣するよう意図されるRNAリガンドは、10と40リボヌクレオチド(または、その合成類似体)の間、より好ましくは、17と30リボヌクレオチドの間、より好ましくは、19と25リボヌクレオチドの間、最も好ましくは、21と23リボヌクレオチドの間を有する。二本鎖siRNAを用いる本発明の実施形態の中には、分子が、例えば、1個または2個の(リボ)ヌクレオチドの合成3'オーバーハング、通常、dTdT3'オーバーハングのUUを有する場合もある。
【0013】
miRNAがshRNAの切断によって生じる場合には、shRNA配列は40塩基と100塩基の間の長さであることが好ましく、40塩基と70塩基の間の長さであることがより好ましい。ヘアピンのステムは19塩基対と30塩基対の間の長さであることが好ましい。ステムは、ヘアピン構造を安定化するためにG-U対形成を含み得る。
【0014】
二本鎖RNAを用いる実施形態では、センスおよびアンチセンス鎖をアニーリングして二本鎖を形成することができる。ナノ粒子を形成するために反応混合物に二本鎖を含めることによって、RNAが粒子の自己組織化の際にコアと結合できる。二本鎖siRNAの誘導体化された末端の数に応じて(4つの可能性、各鎖の5'および3'末端)、単一のsiRNA二本鎖に、4個までのナノ粒子が結合され得、理論上は各二本鎖siRNAにつき15種までの可能性ある構築物が形成され、これらのうち1種が4個のナノ粒子を有し(各末端に2個)、4種が1個のナノ粒子を有し、6種が2個のナノ粒子を有し、4種が3個のナノ粒子を有する。一本鎖siRNAを用いる場合には、ナノ粒子コアは、siRNAの誘導体化された末端のいずれかまたは双方(すなわち、5'または3'末端)に結合され得、例えば、3種の異なる種類のナノ粒子が生じる。これらのナノ粒子はこの形で用いてもよいし、または本方法に、ナノ粒子を含むsiRNAをsiRNAの相補鎖とアニーリングするというさらなるステップを適宜含めてもよく、それによってin situで予め形成されたナノ粒子上に二本鎖が形成される。miRNA様リガンドの形成では、RNA配列の末端に、通常、1個または2個のナノ粒子が結合される。
【0015】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるナノ粒子の製造方法を提供する。本方法は、RNAの鎖(両鎖)をリンカーを用いて誘導体化し、誘導体化されたRNAを、ナノ粒子のコアが合成される反応混合物に含めることによって、RNAリガンドをナノ粒子のコアにコンジュゲートすることを含むことが好都合である。ナノ粒子の自己組織化の際、ナノ粒子コアはリンカーを介してRNAと結合する。リンカーはジスルフィドリンカー、例えば、混合ジスルフィドリンカーであることが好ましいが、エチレンリンカーまたはペプチドリンカーも使用できる。例示的リンカー基は、一般式HO-(CH2)n-S-S-(CH2)m-OH(式中、nおよびmは独立に1と5の間である)によって表される。RNAは末端リン酸基を介して、好ましい混合ジスルフィドリンカーの場合には、末端ヒドロキシ基の1個を介してスペーサーと結合させられることが好都合である。ナノ粒子を合成する場合には、リンカーの-S-S-を分割して2個のチオリンカーを形成し、-S-基を介してそれらが各々ナノ粒子のコアと共有結合できる。混合ジスルフィドリンカーの使用は、RNA二量体の形成を避けるのに役立つ。
【0016】
上記で示したように、ナノ粒子コアと結合しているRNAが一本鎖である場合には、本方法に、第1鎖と相補的であるRNA分子をアニーリングし、ナノ粒子と結合している二本鎖RNAリガンドを提供するというさらなるステップを含めてもよい。ジスルフィドリンカーで鎖の一方または双方が官能基化された、アニーリングしている二本鎖RNAを含むナノ粒子を調製することも可能である。あるいはまたはさらに、RNAのセンスおよびアンチセンス鎖を異なるナノ粒子と結合し、一緒にアニーリングすることもできる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、二本鎖RNAがナノ粒子の自己組織化において組み込まれるよう、RNAの末端の一方または双方を混合ジスルフィドで誘導体化できる。ナノ粒子への二本鎖の組み込みの後、RNAと混合ジスルフィドの化学成分の双方がビーズに組み込まれる。その結果、混合ジスルフィドの化学組成物はそれ自体で重要な情報、例えば、ターゲッティング特性(例えば、特異的結合対の一員)を含むことができ、または最終的に形成されたナノ粒子にさらなる物理特徴を提供する可能性がある。混合ジスルフィドは、センスまたはアンチセンス鎖の3'末端(または両末端)または5'末端(または両末端)のいずれかと結合できる。
【0018】
一実施形態では、WO02/32404に最初に記載されたプロトコールを用いて金原子を含むコアを有するナノ粒子を合成でき、これでは、ジスルフィドリンカーを用いてリガンドを誘導体化し、還元剤の存在下で誘導体化されたリガンドをHAuC14(テトラクロロ金酸)と反応させてナノ粒子を製造する。この方法では、メタノールまたは水中のジスルフィド保護されたRNAを、テトラクロロ金酸の水溶液に加えることができる。好ましい還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウムがある。この方法のこれらまたはその他の特徴はWO02/32404に記載されている。
【0019】
いくつかの適用では、複数の異なるRNA分子を使用できる。これらは1セットのナノ粒子とコンジュゲートしている異なるリガンドとして提供される場合もあるし、または異なるRNA分子がナノ粒子の別個の集団であり、適宜一緒に混合される場合もある。第1の場合では、当業者ならば産物の混合はRNAのナノ粒子とのコンジュゲーションの結果起こり、上記で示したように一連のナノ粒子は種々の産物を含み得るということは理解されよう。複数のリガンドを用いる場合には、siRNAおよびmiRNAの双方を模倣するリガンドを使用できる。
【0020】
RNA分子に加え、ナノ粒子は1種または複数のさらなる種類のリガンドを含むことができ、および/または、RNAリガンドは、RNA成分に加え、1種または複数の異なる種類の基またはドメインを含み得る。例えば、さらなるリガンドまたはリガンドの基もしくはドメインは、1種または複数のペプチド、タンパク質ドメイン、核酸分子、脂質基、炭水化物基、いずれかの有機基または陰イオン基または陽イオン基を含み得る。炭水化物基は多糖、オリゴ糖または単糖基であり得る。好ましいリガンドは、複合糖質を含み、それによって糖ナノ粒子が形成される。ナノ粒子の使用に関する議論で以下に示すように、リガンド(RNAまたはさらなるリガンド)は特異的結合対の一員であり得、特異的結合対のもう一方の一員が存在する標的位置への、ナノ粒子のターゲッティングに用いることができる。RNAリガンドに加え、核酸分子が存在する場合には、核酸分子は一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAを含み得る。粒子はそれに固定化された2種以上の種のリガンド、例えば、2、3、4、5、10、20または100種の異なるリガンドを有し得る。あるいはまたはさらに、複数の異なる種類のナノ粒子を一緒に使用してもよい。好ましい実施形態では、粒子の個々の金属コアと結合している全リガンドの平均数は少なくとも1リガンドであり50リガンドがより好ましく、60リガンドが最も好ましい。
【0021】
ナノ粒子は平均直径が0.5と50nmの間の、より好ましくは、0.5と10nmの間の、より好ましくは1.0と5nmの間の、さらにより好ましくは、3.0と7.0nmの間のコアを有することが好ましい。コアに加えてリガンドを考慮する場合には、粒子の全平均直径が5.0と100nmの間であることが好ましく、5と50nmの間がより好ましく、10と30nmの間が最も好ましい。平均直径は当技術分野で周知の技術、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。
【0022】
コア物質は金属または半導体であり得、2種以上の種類の原子から形成される場合もある。コア物質はAu、FeまたはCuから選択される金属であることが好ましい。ナノ粒子コアはまた、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/GdおよびAu/Fe/Cu/Gdをはじめとする合金から形成される場合もあり、本発明に使用できる。好ましいコア物質は、AuおよびFeであり、最も好ましい物質はAuである。ナノ粒子のコアは、約100と500原子(例えば、金原子)の間を含み、ナノメートル範囲のコアの直径を提供することが好ましい。その他の特に有用なコア物質は、NMR活性である1種または複数の原子がドープされており、in vitroおよびin vivoの双方でNMRを用いてナノ粒子が検出されるのを可能にする。NMR活性原子の例としては、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3およびランタニド+3または本願の別の場所に記載される量子ドットが挙げられる。
【0023】
半導体原子を含むナノ粒子コアは、量子ドットとして作用できる、すなわち、光を吸収でき、それによって物質中の電子をより高いエネルギーレベルに励起し、続いて、物質に特徴的な周波数で光の光子を放出するナノメートルスケールの半導体結晶として検出できる。半導体コア物質の一例としては、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウムがある。また、硫化亜鉛などの亜鉛化合物も含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子またはRNA分子は検出可能な標識を含む。標識はナノ粒子のコアまたはRNAリガンドまたは別のリガンドの要素であり得る。標識は、ナノ粒子のその要素の固有の特性によって、または検出可能であるさらなる部分と結合、コンジュゲートまたは会合していることによって検出できる。標識の好ましい例としては、蛍光基、放射性核種、磁性標識または色素である標識が挙げられる。蛍光基としては、フルオレセイン、ローダミンまたはテトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5などが挙げられ、蛍光標識の励起およびラマン散乱分光法を用いる放射光の検出によって検出できる(Y.C.Cao、R.Jin、C.A.Mirkin、Science 2002、297:1536〜1539頁)。
【0025】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、例えば、PET、SPECTを用いることによって、放射性核種によって放射される放射能を用いてナノ粒子を検出するのに用いる放射性核種、または治療用、すなわち、標的細胞を死滅させるための放射性核種を含み得る。本発明における使用に容易に適応させることができる当技術分野でよく用いられる放射性核種の例としては、種々の酸化状態で存在するが、最も安定なものはTcO4-である99mTc、32Pまたは33P、57Co、59Fe、Cu2+塩として用いられることが多い67Cu、Ga3+塩、例えば、クエン酸ガリウムがよく用いられる67Ga、68Ge、82Sr、99Mo、103Pd、通常In3+塩として用いられる111In、通常ヨウ化ナトリウムとして用いられる、125Iまたは131I、137Cs、153Gd、153Sm、158Au、186Re、通常塩化タリウムなどのTl+塩として用いられる201Tl、39Y3+71Lu3+および24Cr2+が挙げられる。標識およびトレーサーとしての放射性核種の一般的な使用は当技術分野では周知であり、当業者であれば本発明の態様における使用に容易に適応させることができる。放射性核種はナノ粒子のコアをドープすることによって、またはナノ粒子上に固定化されたリガンドの一部として存在する標識としてそれらを含めることによって最も容易に使用できる。
【0026】
さらにまたはあるいは、本発明のナノ粒子、またはその他の種とのそれらの相互作用の結果は、上記に示されるようなナノ粒子と会合している標識を用いて、またはそれらの特性を用いることによって当技術分野で周知のいくつかの技術を用いて検出できる。これらのナノ粒子の検出方法は、例えば、簡単な目視検査による、または光散乱(ナノ粒子を含有する溶液の透過率)を用いることによるナノ粒子が別の種と結合する場合に生じる凝集の検出から、ナノ粒子を可視化するための透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)などの洗練された技術の使用にまでに及ぶ。金属粒子を検出するさらなる方法としては、通常光学的放射によって引き起こされる金属の表面の電子の励起であるプラズモン共鳴を用いることがある。表面プラズモン共鳴(SPR)という現象は、金属(例えば、AgまたはAu)と空気または水などの誘電体との界面に存在する。分析物がナノ粒子の表面に固定化されたリガンドと結合し、界面の屈折率が変化すると、SPRの変化が生じる。SPRのさらなる利点は、リアルタイム相互作用をモニターするために使用できることである。上記で記載したように、ナノ粒子が、NMR活性である原子を含むか、それでドープされている場合、この技術を用い、当技術分野で周知の技術を用いてin vitroまたはin vivoの双方で粒子を検出できる。ナノ粒子はまた、ナノ粒子によって促進される銀(I)の還元を用いる定量的シグナル増幅に基づく系を用いても検出できる。ナノ粒子が蛍光プローブとしてリガンドを含む場合には蛍光分光法を使用できる。
また、炭水化物の同位体標識を使用して、その検出を容易にすることもできる。
【0027】
本発明は先行技術において提案されるその他の種類のアレイを上回る利点を有する、リガンドの球状アレイを提示する方法を提供する。詳しくは、ナノ粒子はほとんどの有機溶媒、特に水に可溶性である。これはその精製に用いることができ、重要なことに、粒子の表面に固定化されたリガンドを提示するためにそれらを溶液中で使用できるということを意味する。ナノ粒子が可溶性であるという事実は、天然のコンホメーションでリガンドを提示するという利点を有する。治療適用には、ナノ粒子は生理学的条件下で非毒性であり、可溶性であり、安定である。
【0028】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子のコアは磁性であり、磁性金属原子を、場合により不動態化金属原子と組み合わせて含み得る。一例として、不動態化金属は、金、白金、銀または銅であり得、磁性金属は鉄またはガドリニウムであり得る。好ましい実施形態では、不動態化金属は金であり、かつ、磁性金属は鉄である。この場合には、コア中の不動態化金属原子対磁性金属原子の割合は、約5:0.1と約2:5の間であることが好都合である。割合は約5:0.1と約5:1の間であることがより好ましい。本明細書において用語「不動態化金属」とは、磁性特性を示さず、酸化に対して化学的に安定である金属を指す。本発明の不動態化金属は反磁性であり得る。反磁性とは、すべての電子が対を形成しており、したがって、原子当たり、永久的な正味の磁気モーメントを有さない物質を指す。磁性物質はいくらかの対形成していない電子を有し、外部の磁場に対して正に影響を受ける。すなわち、外部磁場が電子が加えられる場にそって並ぶのを誘導し、そのようにして電子の磁気モーメントが整列される。磁性物質は常磁性、超常磁性または強磁性であり得る。常磁性物質は外部磁場に対してあまり影響を受けず、外部磁場が除去された場合にはその磁性特性を保持しない。強磁性物質は外部磁場に対して高度に影響を受け、隣接する原子が協力し、その電子スピンが平行であるために外部磁場が存在しない場合にも磁性ドメインを含む。外部磁場は、隣接するドメインの磁気モーメントを整列させ、磁性作用を拡大する。通常強磁性特性を有する極めて小さな粒子の物質は、300nm以下の粒子では協力作用が生じず、その結果、物質が永久的な磁性を有さないので強磁性ではない。しかし、粒子は依然として外部磁場に対して極めて影響を受けやすく、強力な常磁性特性を有し、超常磁性として知られている。本発明のナノ粒子は超常磁性であることが好ましい。
【0029】
常磁性金属を含むコアを有するナノ粒子の例としては、Mn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3およびランタニド+3を含むものが挙げられる。
【0030】
その他の磁性ナノ粒子は、MnFe(スピネルフェライト)などの物質から形成することもでき、またはCoFe(コバルトフェライト)をナノ粒子に形成することもできる(磁性流体、上記で定義されるさらなるコア物質を添加して、または添加せずに)。このようなナノ粒子を製造するための自己組織化結合化学の例は、Biotechnol.Prog.、19:1095〜100頁(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:9828〜33頁(2003)、J.Colloid Interface Sci.255:293〜8頁(2002)に示されている。
【0031】
さらなる態様では、本発明は、1種または複数の上記で定義した粒子の集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の集団は、種々の密度の、コアと結合している同一または異なるリガンドを有し得る。いくつかの場合では、複数のナノ粒子を標的部位に送達することができるよう、ナノ粒子をカプセル化することが望ましい場合がある。適したカプセル化技術は当業者には周知である。カプセル化されるナノ粒子の集団は、1種、2種、3種または複数の異なる種類であり得る。一実施形態では、本発明は、本明細書に定義されるナノ粒子のエアゾール組成物を提供する。本エアゾール組成物は、ナノ粒子と場合により希釈剤とを含み得る。これらの組成物の使用の例を以下に論じる。
【0032】
以下のナノ粒子の適用例は、本明細書に記載される技術の広い適用性を支持するよう、例示として提供するものであって、制限するものではない。siRNAの一般的な使用についての概説はDorseet & Tuschl、Nature Reviews、3:318〜329頁、2004に記載されている。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、治療または診断に用いるための、上記で定義されるナノ粒子を提供する。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、ナノ粒子の投与によって寛解される状態を治療するための医薬を調製するための、上記で定義されるナノ粒子の使用を提供する。本発明にしたがって治療され得る特定の使用の例を、in vitroおよびin vivo使用双方におけるナノ粒子のその他の適用とともに以下に記載する。例えば、本明細書に記載されるナノ粒子またはその誘導体は、特にRNAリガンドの投与によって寛解される状態を治療するために、薬剤組成物に製剤し、種々の形で患者に投与できる。一例として、遺伝子がRNAによってダウンレギュレートされる、RNAによる遺伝子発現のダウンレギュレーションによって寛解される状態の治療に、またはRNAによってターゲッティングされ、ダウンレギュレートされる遺伝子の過剰発現と関連している状態の治療に、これを使用できる。
【0035】
遺伝子発現の調節
RNAリガンドを含むナノ粒子を用い、低分子干渉RNA(siRNA)によるmRNAのターゲッティングされた分解、転写後遺伝子サイレンシング(PTG)、マイクロRNA(miRNA)による発生的に調節されたmRNAの配列特異的翻訳抑制およびターゲッティングされた転写遺伝子サイレンシングをはじめ、いくつかの方法で遺伝子発現を調節できる。
【0036】
一般的に言えば、本発明は、標的遺伝子のダウンレギュレーションのための本明細書に記載されるナノ粒子の使用を提供する。この適用では、ダウンレギュレーションは、例えば遺伝子発現を調べるためにin vitroである場合もあるし、注目する実験系においてか、医学的用途のためのいずれかでin vivoである場合もある。すなわち、ナノ粒子を、RNAによる標的遺伝子の発現のダウンレギュレーションによって寛解される状態を治療するための、または標的遺伝子の過剰発現と関連している状態を治療するための医薬の調製のために使用できる。例えば、状態としては、癌、例えば、Her2/Neu配列に基づいたRNAを用いて治療できる乳癌が挙げられる。本明細書に示したように、RNAによって提供されるダウンレギュレーションは実質的に一過性であり得るので、いくつかの実施形態では、ナノ粒子が、ナノ粒子が標的遺伝子をダウンレギュレートする細胞を治療または死滅させるための放射性核種、薬物またはその他の薬剤をさらに含むことが好ましい。
【0037】
RNA干渉を用い、例えば、発癌遺伝子抑制のためにRNAを用いて、過剰活性遺伝子または遺伝子類と関連している何らかの疾患、例えば、ほとんどの種類の癌を治療できる。肝炎または過剰活性遺伝子発現が疾患病理に寄与しているその他の障害において細胞死受容体などの特定の遺伝子の活動を停止させることもRNA治療の目的である。本発明のナノ粒子を用いる治療にとって適した状態のさらなる例として、眼の黄斑変性症があり、または病原性ウイルスと、それらのRNAを無力にすることによって戦う手段としてのその天然の役割でRNAを適用することによっては、中でもHIV、C型肝炎またはインフルエンザが挙げられる(Check、2003;Zamoreら、2003;Songら、2003;Matzke & Matzke、2003)。
【0038】
経路のダウンレギュレーション
本発明により、2種以上のRNA分子を送達すること、当技術分野ではこれまで可能でなかったことが可能となることは、特に注目に値する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、遺伝子経路において発現をダウンレギュレートするのに使用できる、同一のナノ粒子とコンジュゲートしているか、または少なくとも2種の異なる種類のナノ粒子の組成物中に存在している、少なくとも2種の異なるRNA配列を有するナノ粒子組成物を提供する。組成物中に存在するRNAリガンドの数は、経路の複雑性およびダウンレギュレーションのためにターゲッティングされる必要がある遺伝子の数に応じて変わる。研究または治療のいずれかのために、ターゲッティングされ得る経路の例としては、炎症経路、抗ウイルス経路、癌におけるシグナル伝達経路、転移経路または代謝経路が挙げられる。一例として、これとしては、II型糖尿病におけるグルコース産生のためのグルコース新生(neoglucgogenesis)経路の調節が挙げられる。
【0039】
さらなる関連実施形態では、RNAをファミリーメンバー間で保存されているドメインをターゲッティングするよう設計することによって、RNA-ナノ粒子を用いて遺伝子ファミリーの発現をダウンレギュレートできる。
【0040】
RNAを用いて遺伝子発現を阻害するためのナノ粒子の何らかの使用では、ナノ粒子はまた、標的mRNAに対するsiRNA配列およびmRNAサイレンシング配列を含み得る。これらのナノ粒子を用いてsiRNA耐性mRNAを阻害できる。標的細胞が、siRNA阻害機構を阻害するタンパク質を発現するためにsiRNAサイレンシングに対して耐性である状況においてこれを使用できる。この場合には、siRNAが、発現されて耐性を誘導する遺伝子産物を対象とすることによって、siRNA耐性を回復させることができる。
【0041】
さらなるリガンドを用いるか、RNAを用いるターゲッティング適用
一適用では、本発明のナノ粒子の組成物を用いて、RNAを標的細胞に送達するためのターゲッティング特性を付与できる。これは、ナノ粒子のコアとコンジュゲートしているさらなる種類のリガンドまたはRNAナノ粒子が標的細胞集団と特異的に相互作用するのを可能にするRNAリガンドと会合しているドメインを含むナノ粒子を提供することによって達成できる。一例として、標的細胞の表面または内側に存在するその結合パートナーと特異的に結合できる特異的結合対の一員であるリガンドを含むナノ粒子を提供することによって、RNA含有ナノ粒子を細胞集団に選択的に向け、例えば、核などの特定の細胞構造をターゲッティングすることができる。ナノ粒子をターゲッティングするために、それらとコンジュゲートしているリガンドとして用いるのに適した特異的結合対の例としては、リガンドおよび受容体が挙げられるが、多数の代替法が当業者には明らかであろう。例えば、グルコース誘導体化したナノ粒子を用いて、GLUTファミリーのタンパク質のメンバーを含有する細胞をターゲッティングできる(18)。ナノ粒子にはその他の糖リガンド、例えば、Glcβ4GlcNAcまたはGlcβ4GlcNH2を使用してもよい。まず前者を用いて、siRNA含有ナノ粒子を細胞表面GLUT輸送タンパク質にターゲッティングし、次いで、細胞に入る際に(グリコシダーゼによる切断後)、GlcNAcがsiRNAナノ粒子を核にさらにターゲッティングする。後者の構築物は正の電荷をナノ粒子表面に加え、細胞へ接着し、取り込まれるのがさらに容易になる。自己組織化ナノ粒子を用いて、スペーサーによってジスルフィドと結合している、脂質、ペプチドまたは何らかのその他の化学成分(例えば、リガンドについての議論において上記に記載したような)などの異種リガンドを組み込むことができるので、種々のその他のターゲッティング分子を用いてRNAナノ粒子を特定の細胞種にターゲッティングできる。一例として、これらの技術を用いてRNAを保持するナノ粒子を腫瘍細胞にターゲッティングできる。
【0042】
細胞種をターゲッティングするためのナノ粒子のさらなる使用例では、ナノ粒子のRNAリガンドを、RNAリガンドと相互作用するmRNAが発現される細胞にナノ粒子を向けることによって、ナノ粒子のターゲッティングを提供する実体として使用できる。この方法でターゲッティングされ得る標的細胞の種類の例としては、RNAを用いて標的細胞におけるウイルス遺伝子または腫瘍マーカーまたは発癌遺伝子の発現をターゲッティングすることによる、腫瘍細胞またはウイルス感染した細胞がある。この実施形態では、RNA-ナノ粒子が細胞膜を通って透過できること、その小さなサイズによって提供され、ナノ粒子を膜移行シグナルを用いて誘導体化することによって場合によって増強され得る効果が好ましい(Nature Biotechnology 18、410〜414頁、2000参照)。対応するmRNAが発現される細胞へのRNA-ナノ粒子のターゲッティングは、標的mRNAを細胞選択的にダウンレギュレートするという利点を有する。しかし、この効果は一般的に一時的であるので、RNAを用いてターゲッティングされる細胞を選択的に死滅させるよう放射性核種または薬物を有するナノ粒子を提供することが好ましい。ナノ粒子を、例えば、上記に記載したように放射性または磁性ナノ粒子を用いて標識することによって、標的細胞および治療プロセスをイメージングし、追跡することができる。
【0043】
mRNAのイメージング
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるナノ粒子を用いる、mRNAの検出方法および/またはイメージング方法を提供する。特に、本発明以前に、mRNAをイメージングするための当技術分野で公知の方法はなかった。本方法は、ナノ粒子上に存在するRNAリガンドが標的mRNAと相互作用する条件下、in vivoまたはサンプル中のいずれかでRNAをナノ粒子と接触させることと、ナノ粒子-RNA-mRNA複合体を検出することとを含み得る。複合体を検出するステップは、ナノ粒子の固有の特性を用いることであるか、ナノ粒子と会合している標識を検出することによってであり得る。本発明のこの態様における使用に適した標識の好ましい例としては、磁性基、量子ドットまたは放射性核種を含むナノ粒子が挙げられる。例えば、セレン化カドミウムのナノ結晶によって提供されるような量子ドット、またはセレニドに加えその他の陰イオン、例えば、スルフィドを用いることができるが、これは電子装置および光学装置の双方での生物学的イメージング、量子コンピュータおよび候補薬物のスクリーニングにおいて利用される可能性がある。
【0044】
機能ゲノミクスにおけるツールとしてのRNA-ナノ粒子
ゲノムスクリーニングでは、通常、ランダムに作製したRNA配列を利用し、次いで、それを試験細胞にトランスフェクトし、タンパク質発現の変化をモニターする。本発明のナノ粒子には、ゲノムスクリーニングについてのこれらの先行技術の方法を上回る2つの大きな利点がある。第1は、多数のランダムsiRNA配列が実際には効果がないが、目下のところ試験細胞は個々にスクリーニングされる必要があるため、この形のこれらの実験の労力と費用が増大する。本発明によって複数のsiRNA配列がナノ粒子上にリガンドとして含まれることが可能となり、それによってスクリーニング速度を高めることが可能になる。したがって、細胞において効果が観察される場合には、ビーズ上に存在するRNA分子をスクリーニングしてどの配列が効果の原因であったかを調べることができる。さらに、ナノ粒子はRNAの送達系を提供するので、先行技術において必要とされるトランスフェクション剤の使用を避けることができる。トランスフェクション剤はそれ自体、試験される細胞においてタンパク質発現に変化を引き起こし得るので、これは望ましい利点である。したがって、さらなる態様では、本発明のナノ粒子を、例えば、Nature Reviews、第3巻、2004年4月、318〜329頁に記載されるように、機能ゲノミクスにおけるツールとして使用できる。ナノ粒子は、in vivoで遺伝子機能を調べるために、また、ゲノム規模でのスクリーニングのためのツールとして、粒子当たり3種以上、6種以上、11種以上または21種以上または101種以上のRNA配列を有し得る。
【0045】
エアゾール送達
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載されるナノ粒子のエアゾール中での使用を提供する。これは小さなサイズのナノ粒子によって可能になる。イメージングおよび/または治療用途のために、例えば、肺に影響を及ぼす状態の治療において、エアゾール組成物を用いて、RNAリガンドを、特に肺に送達できる。
【0046】
上記の態様のいずれかにおいて、ナノ粒子を、抗体または腫瘍を死滅させる薬物などの治療上活性な物質と結合できる。また、ナノ粒子の磁性特性を用い、磁場を用いナノ粒子を腫瘍細胞に導くことによって、腫瘍をターゲッティングできる。しかし、ナノ粒子を腫瘍細胞に向けるために磁場単独を使用することは、通常適したものではなく、また正確なものでもないので、本発明は腫瘍特異的リガンドを介して、ナノ粒子が腫瘍細胞に特異的に向けられることを可能にするという利点を提供する。これにより、薬物が、必要とされる細胞にのみ向けられ、健常細胞には向けられないので、少ない薬物を用い、副作用の機会を低減することが可能となる。
【0047】
本発明のナノ粒子のもう1つの利点は、その非常に小さいサイズであり、それによってそれらが、ターゲッティング分子または治療分子と結合している場合であってさえも細胞によって取り込まれやすくなる。
【0048】
さらなる態様では、リガンドが抗原であるナノ粒子をワクチンとして、例えば、表皮の外層を通るその経皮通過を加速するために送達銃を用いて衝撃によって投与できる。次いで、ナノ粒子は、例えば、樹状細胞によって取り込まれ、リンパ系を介して遊走する際に成熟し、抗原に対する免疫応答の調節およびワクチン接種をもたらし得る。
【0049】
本発明のナノ粒子は、固体または液体組成物の形であり得る薬剤組成物として製剤できる。このような組成物は通常、ある種の担体、例えば、ゼラチンまたはアジュバントまたは不活性の希釈剤などの固体担体、または水、石油、動物性油または植物性油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水溶液またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールを含めてもよい。このような組成物および製剤は通常、少なくとも0.1wt%の化合物を含む。
【0050】
ナノ粒子組成物は任意の数の異なる経路によって患者に投与できる。非経口投与としては、以下の経路による投与が挙げられる:静脈内経路、皮膚経路または皮下経路、鼻腔経路、筋肉内経路、眼球内経路、経上皮経路、腹膜内経路および局所経路(経皮経路、眼内経路、直腸経路、鼻腔経路、吸入およびエアゾールを含む)および直腸全身経路。静脈内注射、皮膚注射もしくは皮下注射、または苦痛部位への注射には、有効成分は発熱物質不含であり、適したpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容される水溶液の形であり得る。当業者ならば、例えば、生理食塩水、グリセロール、液体ポリエチレングリコールまたはオイルを用いて調製した分散物中の、例えば、化合物またはその誘導体の溶液を用いて適した溶液を調製することは十分に可能である。
【0051】
本組成物は、適宜、その他の有効成分と組み合わせた、1種または複数の化合物の他、1種または複数の製薬上許容される賦形剤、担体、バッファー、安定剤、等張化剤、保存料、または酸化防止剤または当業者に周知のその他の物質を含み得る。このような物質は非毒性でなくてはならず、有効成分の有効性を干渉してはならない。担体またはその他の物質の正確な性質は、投与経路に応じて、例えば、経口または非経口によって変わり得る。
【0052】
液体薬剤組成物は通常、約3.0と9.0の間の、より好ましくは約4.5と8.5の間の、いっそうより好ましくは、約5.0と8.0の間のpHを有するよう製剤する。組成物のpHは、通常約1mM〜50mMの範囲で用いられる、酢酸、クエン酸、リン酸、コハク酸、Trisまたはヒスチジンなどのバッファーを用いることで維持できる。あるいは、組成物のpHは、生理学的に許容される酸または塩基を用いることによって調節できる。
【0053】
保存料は通常、微生物の増殖を阻止し、組成物の保管寿命を延長し、複数回使用包装を可能にするために薬剤組成物中に含まれる。保存料の例としては、フェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸およびそのエステル、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。保存料は通常、約0.1〜1.0%(w/v)の範囲で用いる。
【0054】
薬剤組成物は予防上有効量または治療上有効量で(場合によって、予防は治療と考えられるが)個体に与えられることが好ましく、これは個体に利益をもたらすために十分なものである。通常、これは治療上有用な活性を引き起こし、個体に利益を提供することとなる。投与される化合物の実際の量ならびに投与の速度および時間的経過は、治療されている状態の性質および重篤度に応じて変わる。治療の指示、例えば、投与量の決定などは、一般開業医及びその他の医師の責任の範囲内であり、通常、治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および開業医に公知のその他の因子を考慮する。上記で記載した技術およびプロトコールの例は、Handbook of Pharmaceutical Additives、第2版(M.AshおよびI.Ash編)、2001(Synapse Information Resources社、Endicott,New York,USA)、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company,Easton,Pa.、1990、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994に見出すことができる。一例として、本組成物は患者に、体重1kg当たり約0.01と100mgの間の活性化合物という投与量で投与することが好ましく、約0.5と10mg/体重1kgの間がより好ましい。
【0055】
本発明の実施形態を、例として、制限するものではなく、添付の図を参照してここで記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
詳細な説明
[実施例]
Her-2/neu発癌遺伝子およびそのコードされる産物pl85Her-2/neuは上皮成長因子受容体チロシンキナーゼに属する(Bargmannら、1986)。HER受容体ファミリーは、4種の膜貫通型チロシンキナーゼ:EGFR(Her-1またはerbB-1としても知られる)、erbB-2(Her-2)、erbB-3(Her-3)およびerbB-4(Her-4)からなる。Her-2/neuシグナル伝達経路は、細胞増殖および分化、悪性形質転換および化学療法薬に対する耐性において重要な役割を果たすことがわかっている(Yarden & Sliwkowski、2001)。Her-2/neuは、ヒト乳癌および卵巣癌の約1/3の場合において過剰発現され、その過剰発現が悪い予後と関連している(Berchuckら、1990)。
【0057】
癌細胞においてHer-2/neu発現を阻害するために、可能性ある治療的アプローチとして多数の試みがなされてきた。Her-2/neuに対するヒト化モノクローナル抗体(トラスツズマブまたはヘルセプチン)はHer-2/neu過剰発現転移性癌において有効であった(Mendelsohn & Baselga、2000;Baselgaら、1996)が、Her-3発現をアップレギュレートすることがわかった。Her-2/neuに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Her-2/neuを過剰発現するヒト乳癌細胞株においてアポトーシスを誘導することがわかっている(Rohら、2000)。リポソームによって、またはアデノウイルスベクターによって送達される、E1Aを用いる遺伝子療法は、Her-2/neu過剰発現卵巣癌のモデルにおいて腫瘍保有マウスの間で死亡率を低減させることができ、また乳癌のモデルにおいて遠隔転移の発生率を低減させることができる(Changら、1996)。
【0058】
Her-2/neu発現のダウンレギュレーションはPI3K、Aktおよびリン酸化Aktの減少をもたらし、これがサイクリンD1、すなわちG0/G1細胞停止の調節および発癌遺伝子の形質転換に関与しているサイクリンの発現の減少をもたらすことがわかった(Sherr & Roberts、1999)。アンチセンスオリゴヌクレオチドとsiRNAの有効性を比較する最近の研究により、siRNAはnMベースでレポーター遺伝子のサイレンシングに少なくとも10倍有効であることが実証された(Miyagishiら、2003)。いくつかのこれまでの研究によって、Her-2/neuはVEGF、強力な血管新生促進因子の転写を刺激し(Kumar & Yarmand-Bagheri、2001)、Her-2/neu発現のサイレンシング後にそのレベルが著しく低下したということが実証されている。レトロウイルスsiRNA によるHer-2/neuのダウンレギュレーションは、トロンボスポンジン-1レベル、血管新生の強力な阻害剤を高めた(Izumiら、2002)。In vitroデータにより、HER2 siRNA治療はまた、ヒト腫瘍におけるHLA クラスI表面発現を大幅にアップレギュレートするということが実証された(Choudhuryら、2004)。
【0059】
a.戦略:サイレンシング
Her2/Neu cDNA標的配列:AAG CCT CAC AGA GAT CTT GAA
a)センス: 5'-G CCU CAC AGA GAU CUU GAAdTdT-3'
b)アンチセンス:3'-dTdTC GGA GUG UCU CUA GAA CUU-5'
c)センス: 5'-G CCU CAC AGA GAU CUU GAAdTdT-3'SS
d)アンチセンス:3'SS-dTdTC GGA GUG UCU CUA GAA CUU-5'
【0060】
b.アニーリング
【化1】

【0061】
c.可能性あるGNP組合せ
【表1】

【0062】
d.方法
1.細胞株
ATCCから得たSK-BR-3ヒト乳腺腺癌(カタログ番号HTB-30)。NCI-フレデリック癌DCTD腫瘍/細胞株貯蔵所(NCI-Frederick Cancer DCTD Tumor/cell line repository)(バイアル0502296)から得たOVCAR-3ヒト腹水腺癌。
2.siRNA保存溶液
選択したHer-2/neu DNA標的配列はAAGCCTCACA GAGATCTTGAAであった。
センスsiRNAは配列r(GCCUCACAGAGAUCUUGAA)d(TT)3Thssを有していた。(K-塩の分子量7416.25)また、アンチセンス配列r(UUCAAGAUCUCUGUGAGGC)d(TT)3Thss(K-塩の分子量7409.57)をQiagenから入手した。
対照(非サイレンシング)siRNA二本鎖配列はQiagenから得(カタログ番号1022076)、センスはr(UUC UCC GAA CGU GUC ACG U)d(TT)であり、アンチセンスはr(ACG UGA CAC GUU CGG AGA A)d(TT)であり、アニーリングしたK-塩の分子量は14839.5であった。
1mlの滅菌バッファー(100mM酢酸カリウム、30mM Hepes-KOH、2mM酢酸マグネシウムpH7.4)に、1本のセンスsiRNA試験管の内容物(296.65μg)を溶解して40μMの保存液を作製する。1μl当たり0.297μgのsiRNAを含む。
1mlの滅菌バッファー(100mM酢酸カリウム、30mM Hepes-KOH、2mM酢酸マグネシウムpH7.4)に、1本のアンチセンスsiRNA試験管の内容物(296.38μg)を溶解して40μMの保存液を作製した。1μl当たり0.296μgのsiRNAを含んでいた。
アニーリングするために、各RNAオリゴ溶液30μlを15μlの5×アニーリングバッファーと混合した。最終バッファー濃度は、DEPC処理した水に溶かした、50mM Tris、pH7.5〜8.0、100mM NaClとした。最終容積は75μlとし、siRNA二本鎖の最終濃度は16μMとした。
溶液を90〜95℃の水浴中で1分間インキュベートし、室温(すなわち、30℃より低い)に放冷した。この試験管を短時間遠心分離してすべての液体を試験管の底に集めた。室温に徐々に冷却すると45〜60分かかった。得られた溶液は、使用する準備ができるまで-20℃で保存し、凍結および解凍の繰り返しに対して耐久性があった。
3.siRNA Nanogold保存溶液
一般法
HAuCl4(99.999%)およびNaBH4はAldrich Chemical社から購入した。2-チオエチル-β-D-グルコピラノシドはcurラボラトリー(cur laboratory)において標準的な手順を用いて合成した。すべての実験および溶液には、DEPC(ジエチルピロカーボネート)で処理したNanopure水(18.1mΩ)を用いた。すべてのエッペンドルフ、スパチュラおよびバイアルはRNaseフリーであった。アニーリングしている二本鎖siRNAはQiagen-Xeragon社から購入した。明細は以下の通りであった。
DNA 標的配列AAGCCTCACAGAGATCTTGAA
センスsiRNA r(GCCUCACAGAGAUCUUGAA)d(TT) 3'に3'-チオール-(SS)-C3-リンカー
(K-塩の分子量7416.25)
アンチセンス r(UUCAAGAUCUCUGUGAGGC)d(TT)
(K-塩の分子量7409.57)
【0063】
e.RNA-Au-Glcナノ粒子の調製
TRISバッファー100mM、pH7.7(250μL)中、2-チオエチル-β-D-グルコピラノシド(0.9mg、3.75μmol)およびsiRNA(0.148mg、0.01μmol)の溶液に、HAuCl4水溶液(22μL、0.025M)を加えた。次いで、NaBH4の1N水溶液(30μL)を数回で加え、迅速に振盪した。形成された褐色の懸濁液をさらに1時間、4℃で振盪した。この懸濁液を遠心分離濾過によって精製した(AMICON分子量10000、30分、4℃、14000rpm)。このプロセスを2回反復し、125μLのTRISバッファーで洗浄した。AMICONフィルター中の残渣を250μLのTRISバッファーに溶解し、凍結乾燥すると、4mgのRNA-Au-Glcナノ粒子が得られた(1mLの水に固体を再懸濁することによって、20mM TRISバッファー中のRNAの6±1μM溶液が得られるはずである)。濾液をAMICON(分子量3000、4℃、14000rpm)を用いて脱塩し、凍結乾燥した。残渣の重量は<50μgであった。図1に示される透過型電子顕微鏡写真(TEM)は、粒子の平均サイズが2.8nmであったことを示し、図4に表されるように、平均807個の金原子/粒子、siRNAおよび100分子のグルコース誘導体を有し、およその分子量は>160,000である。
【0064】
f.ナノ粒子中のRNAの存在の検査
RNA-Au-Glcナノ粒子、Glc-Auナノ粒子およびRNAオリゴヌクレオチドとグルコース誘導体とを含有すると推定されるRNA-Au-Glcナノ粒子の洗浄の残渣を、30μLの水に各々溶解した。これらの溶液のアリコート(1μL)を、エチジウムブロマイド(EtBr)の水溶液(1μL、0.1%v/v)と混合した。UVランプ下で蛍光を観察したところ(図2参照)、このように調製したナノ粒子にはsiRNAが組み込まれているが(図2b、試験管1)、グルコースしか含有していないナノ粒子は蛍光をまったく示さない(図2b、試験管2)ということが実証された。
148μg siRNAから作製した4mgのsiRNA/nanogold複合体を水1mlに溶解し、20mMtris中、6±1μMの保存溶液を得た。溶液1μl当たり0.078μgのsiRNA相当物を含んでいた。
【0065】
細胞プレーティング
1.トランスフェクションの24時間前に6×104個細胞を24ウェルプレートにピペットで入れ、適当な培養培地で容量を0.5mlとした。
2.この細胞をおよそ24時間かけて50〜80%コンフルエンシーに到達させた。
3.培養培地を除去し、300μlの新鮮培地/ウェルで置き換えた。
【0066】
siRNA複合体を用いた細胞のトランスフェクション
1.3.3μl(または12.8μlのnanogold複合体)の適当な二本鎖siRNA保存液を24ウェルプレートに、細胞を含むものに対応して分配した。
2.各ウェルに、96.7μl(またはnanogold複合体については87.2μl)の適当な培養培地を加え、上下に5回ピペッティングすることによって十分に混合した。
3.各ウェル(nanogold複合体のウェル以外)に、6μlのRNAiFectを加え、上下に5回ピペッティングすることによって十分に混合した。
4.この溶液を室温で10〜15分間インキュベートし、複合体を形成させた。
5.300μlの細胞培地中の細胞を100μlの適当なトランスフェクション複合体で覆った。
6.このプレートを穏やかに揺らして回旋をさけながら混合した。
7.このプレートをCO2インキュベーター中、37℃で48〜72時間インキュベートした。
8.培地を除去し、氷冷PBSで細胞を3回洗浄した。
9.細胞を溶解し、溶解物のタンパク質含量を求めた。
10.SDS-PAGEと、続いてCell Signalling Technologyから得たHer2/ErbB2ポリクローナルウサギ抗体(カタログ番号2242)を用いるウェスタンブロッティングによってタンパク質を分離した。
11.ブロットを抗ウサギIgG-HRP複合体で処理し、続いてECLを発現させた。
【0067】
g.結果
1μgのsiRNA/ウェルを用いた予備的観察結果を図3aおよび3bに示す。siRNA-金ナノ粒子をRNAiFectamineを用いずに細胞に加えた。SKBR3細胞は、80%コンフルエンシーに達するのがOVCAR細胞よりも遅かった。SKBR3の結果は、トランスフェクションの48時間後の溶解物から得たものであり、OVCARの結果はトランスフェクションの72時間後の溶解物から得たものであった。ナノ粒子の概略図を図4に示す。
【0068】
siRNA-Au-Glc ナノ粒子の、細胞に対する非毒性
細胞をsiRNA単独を用いて、および金糖ナノ粒子とコンジュゲートしているsiRNAを用いてトランスフェクトした。図5は、ナノ粒子がコンジュゲートしているsiRNAは有効であり、毒性作用がなかったということを示す。細胞数に対する用量依存効果が見られ、このことは、siRNAナノ粒子が細胞増殖を増加させたということを示す。
【0069】
siRNA-Au-Glcナノ粒子の細胞への侵入
OVCAR細胞を、siRNA-ナノ粒子を用いて、siRNAを用いる細胞のトランスフェクションには通常必要とされるトランスフェクション試薬を用いて、または用いずにトランスフェクトした。図6は、siRNA-ナノ粒子の細胞への侵入にはトランスフェクション試薬が必要でなかったことを示す。この結果は、siRNAナノ粒子はトランスフェクション試薬の不在下でさえも細胞内に効率的に送達されたことを示し、実際には、送達はトランスフェクション試薬なしでより効率的であると思われた。細胞数に対する効果の用量依存性は、siRNA-ナノ粒子に対する真の応答を示す。
【0070】
参照文献
本明細書に記載した参照文献は、参照によりすべて明確に組み込まれる。
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Changら、Inhibition of intratracheal lung cancer development by systemic delivery of E1A.(1996)Oncogene 13、1405〜1412頁
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WO 02/32404
GB-A-0313259.4からの優先権を主張するPCT出願
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】RNA-Au-Glcナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図2】調製したナノ粒子中のRNAの存在についての試験を示す図である。(a)UV光なし:1.RNA-Au-Glcナノ粒子+EtBr、2.Glc-Au+EtBr、3.Glc-Au、4.洗浄液の残渣+EtBr。(b)UV光あり:1.RNA-Au-Glcナノ粒子+EtBr、2.Glc-Au+EtBr、3.Glc-Au、4.洗浄液の残渣+EtBr。
【図3a】図3aはHer-2/neu siRNAでトランスフェクションした48時間後の、等容積のSKBR3細胞の溶解物から得たHer-2/neuタンパク質のウェスタンブロットを示す図である。C=対照(未処理)細胞、Au=RNAiFectamineを用いない、金ナノ粒子と結合しているsiRNAで処理した細胞。S= RNAiFectamineを用いたサイレンシングsiRNA、NS= RNAiFectamineを用いた非サイレンシングsiRNA。
【図3b】図3bはHer-2/neu siRNAでトランスフェクションした72時間後の、等容積のOVCAR細胞溶解物から得たHer-2/neuタンパク質のウェスタンブロットを示す図である。C=対照(未処理)細胞、Au= RNAiFectamineを用いない、金ナノ粒子と結合しているsiRNAで処理した細胞。
【図4】siRNA と炭水化物リガンドとを含む本発明の好ましいナノ粒子の模式図を示す図である。
【図5】siRNA単独で(A)またはsiRNA-ナノ粒子で(B)、1000個の細胞当たり0.25μg(菱形)、0.5μg(四角)、1.0μg(三角)、1.5μg(灰色×)および2.0μg(黒色×)siRNA-ナノ粒子でトランスフェクトされたOVCAR細胞に関する細胞増殖に対する効果を示す図である。X軸=日、Y軸=細胞数(log10)。
【図6】トランスフェクト試薬を用いて、および用いずに、siRNA-ナノ粒子でトランスフェクトされたOVCAR細胞に関する細胞増殖に対する効果を示す図である。3濃度のナノ粒子を用いた: 1:トランスフェクション試薬あり(四角)およびトランスフェクション試薬なし(菱形)、 2:トランスフェクション試薬あり(灰色×)およびトランスフェクション試薬なし(三角)、 3:トランスフェクション試薬あり(丸)およびトランスフェクション試薬なし(黒色×)。X軸=日、Y軸=細胞数(log10)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属および/または半導体原子を含有するコアを含むナノ粒子であって、コアが複数のリガンドと共有結合しており、リガンドがRNAリガンドを含むナノ粒子。
【請求項2】
RNAリガンドがsiRNAまたはmiRNAリガンドである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
炭水化物基を含むリガンドをさらに含む、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
リンカー基を介してsiRNA分子と共有結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
リンカー基がチオール基、エチレン基またはペプチド基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
RNAリガンドの長さが17リボヌクレオチドと30リボヌクレオチドの間である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
リガンドがsiRNAリガンドであり、2リボヌクレオチドの3'オーバーハングを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
RNA分子の第1センスまたはアンチセンス鎖が、その5'および/または3'末端を介してナノ粒子コアと共有結合している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
第1鎖と相補的であるRNA分子の第2鎖はRNA分子の第1鎖とアニーリングする、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
第2のRNA鎖が、その5'および/または3'末端を介してナノ粒子コアと共有結合している、請求項9に記載のナノ粒子。
【請求項11】
RNA分子の第1および第2鎖はナノ粒子コアと個別に結合しているが、後に一緒になってアニーリングする、請求項9または10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
RNAリガンドがmiRNAリガンドであり、ヘアピンを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
RNAリガンドがHer2遺伝子配列に基づくものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項14】
標識を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項15】
標識が蛍光基、放射性核種、磁性標識、色素、NMR活性原子または表面プラズモン共鳴を用いて検出できる原子である、請求項14に記載のナノ粒子。
【請求項16】
蛍光基がフルオレセイン、ローダミンまたはテトラメチルローダミン、テキサスレッド、Cy3またはCy5である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
放射性核種が99mTc、32P、33P、57Co、59Fe3+67Cu2+67Ga3+68Ge、82Sr、99Mo、103Pd、111In3+125I、131I、137Cs、153Gd、153Sm、158Au、186Re、201Tl+39Y3+71Lu3+または24Cr2+である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項18】
磁性標識がMn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3またはランタニド+3を含む常磁性基である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項19】
NMR活性原子がMn+2、Gd+3、Eu+2、Cu+2、V+2、Co+2、Ni+2、Fe+2、Fe+3またはランタニド+3である、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項20】
水溶性である、請求項1〜19のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項21】
ナノ粒子のコアの平均直径が0.5と10nmの間である、請求項1〜20のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項22】
ナノ粒子のコアの平均直径が1と5nmの間である、請求項1〜21のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項23】
リガンドを含むナノ粒子の平均直径が10と30nmの間である、請求項1〜22のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項24】
コアが金属コアである、請求項1〜23のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項25】
金属コアがAu、AgまたはCuを含む、請求項24に記載のナノ粒子。
【請求項26】
金属コアがAu/Ag、Au/Cu、Au/Ag/Cu、Au/Pt、Au/Pd、Au/Ag/Cu/Pd、Au/Fe、Au/Cu、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/GdまたはAu/Fe/Cu/Gdから選択される合金である、請求項24または25に記載のナノ粒子。
【請求項27】
ナノ粒子のコアが磁性である、請求項24〜26のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項28】
約5:0.1と約2:5の間の割合でコアに不動態化金属原子および磁性金属原子を含む、請求項26に記載のナノ粒子。
【請求項29】
不動態化金属が金、白金、銀または銅であり、磁性金属が鉄またはコバルトである、請求項28に記載のナノ粒子。
【請求項30】
コアがMnFe(スピネルフェライト)またはCoFe(コバルトフェライト)を含む、請求項27に記載のナノ粒子。
【請求項31】
コアが半導体原子を含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項32】
半導体原子が量子ドットとして作用しうる、請求項31に記載のナノ粒子。
【請求項33】
半導体がセレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウム化または硫化亜鉛である、請求項31または32に記載のナノ粒子。
【請求項34】
複数の異なる種類のリガンドを含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項35】
リガンドがペプチド、タンパク質ドメイン、核酸セグメントまたは炭水化物基をさらに含む、請求項1〜34のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項36】
リガンドが多糖、オリゴ糖または単糖基を含む、請求項1〜35のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項37】
リガンドが糖ナノ複合体である、請求項1〜36のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項38】
糖ナノ複合体が糖脂質または糖タンパク質を含む、請求項37に記載のナノ粒子。
【請求項39】
リガンドがDNAまたはRNAを含む、請求項1〜38のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか一項に記載の、1種または複数のナノ粒子の集団を含む組成物。
【請求項41】
RNAをナノ粒子のコアとコンジュゲートすることによる、請求項1〜39のいずれか一項に記載のナノ粒子の調製方法であって、
RNAの第1鎖および/または第2鎖をリンカーを用いて誘導体化して、5'および/または3'末端においてリンカーで誘導体化された第1および/または第2のRNA鎖を作製するステップと、
ナノ粒子のコアを作製するために、リンカーで誘導体化されたRNAを反応物と反応させ、その結果、ナノ粒子の自己組織化の際に、ナノ粒子コアがリンカーを介してRNAに結合するステップとを含む方法。
【請求項42】
リンカーがチオールリンカー、エチレンリンカーまたはペプチドリンカーである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
反応混合物が、ナノ粒子を製造するための誘導体化siRNAと、金属および/または半導体原子の塩と、還元剤とを含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
請求項41〜43のいずれか一項に記載の方法によって得られるナノ粒子。
【請求項45】
治療または診断に用いるための、請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項46】
遺伝子の発現のダウンレギュレーションによって寛解される状態または遺伝子の過剰発現と関連している状態であって、遺伝子がRNAリガンドによってターゲッティングされ、ダウンレギュレートされる状態を治療するための医薬の調製のための、請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項47】
癌、ウイルス感染または眼の黄斑変性症を治療するための医薬の調製のための、請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項48】
癌が乳癌であるか、またはウイルスがHIV、肝炎またはインフルエンザである、請求項46または47に記載の使用。
【請求項49】
RNAがHer2/Neu遺伝子配列に基づくものである、請求項46〜48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
ナノ粒子が、ナノ粒子のコアとコンジュゲートしているさらなるリガンドまたはRNA分子と会合しているドメインを含み、さらなるリガンドまたはドメインが標的遺伝子を発現する細胞と特異的に相互作用できる、請求項46〜49のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
さらなるリガンドまたはドメインが、特異的結合対の一員であり、標的細胞の表面または内側に存在するその結合パートナーと特異的に結合できる、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
RNA分子が、RNA分子と相互作用できるmRNAを発現する細胞にナノ粒子をターゲッティングする、請求項46〜51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
RNA分子によってターゲッティングされる細胞を治療または死滅させるために、ナノ粒子が放射性核種、薬物またはその他の薬剤をさらに含む、請求項46〜52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
ナノ粒子が膜移行シグナルを含み、その結果、細胞膜を透過できる、請求項46〜53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項55】
標的遺伝子をダウンレギュレートするための使用方法であって、該遺伝子を含む細胞を、請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させることを含む方法。
【請求項56】
in vitroで実施する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
標的遺伝子の一時的なノックアウトをもたらす、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
同一のナノ粒子にコンジュゲートしているか、または少なくとも2種の異なる種類のナノ粒子の組成物中に存在している、少なくとも2種の異なるRNAリガンドを有するナノ粒子を用いて、経路中少なくとも2種の遺伝子の発現をダウンレギュレートする、請求項55〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
経路が炎症経路、抗ウイルス経路、癌におけるシグナル伝達経路、転移経路または代謝経路である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
RNAリガンドが遺伝子ファミリーの保存されたドメインに基づいており、遺伝子ファミリーの複数のメンバーの発現をダウンレギュレートする、請求項55〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
RNAを検出またはイメージングするための、請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項62】
請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子を用いるmRNAを検出および/またはイメージングする方法であって、ナノ粒子上に存在するRNAリガンドが標的mRNAと相互作用し、ナノ粒子-RNA-mRNA複合体を検出できる条件下で、ナノ粒子を標的mRNAを含有するサンプル/細胞と接触させることを含む方法。
【請求項63】
複合体を検出するステップがナノ粒子の固有の特性を用いるか、またはナノ粒子と関連している標識を検出することによる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
標識が磁性基、量子ドットまたは放射性核種である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
mRNAを含有するサンプルでin vitroで実施する、請求項61〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
細胞においてmRNAを検出するためにin vitroで実施する、請求項61〜65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
RNA分子を標的細胞に送達するための、請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子の使用。
【請求項68】
疾患または障害によって影響を受ける標的細胞にRNA分子を送達するための医薬を調製するための、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子の、機能ゲノミクスのツールとしての使用。
【請求項70】
肺に送達するための医薬を調製するための請求項1〜40のいずれか一項に記載のナノ粒子を含むエアゾール組成物の使用であって、該ナノ粒子がイメージングのための標識を含むか、または哺乳類の肺に影響を及ぼす状態の治療のためのものである使用。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−506636(P2008−506636A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514090(P2007−514090)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002058
【国際公開番号】WO2005/116226
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506390085)ミダテック リミテッド (2)
【Fターム(参考)】