説明

RNA干渉の治療的利用のための方法及び組成物

【課題】本発明は、標的遺伝子の発現をイン・ビボで減衰させる方法及び組成物を提供する。
【解決手段】一般に、この方法は、RNAi構築物(例えば、特定のmRNA配列を標的とする小型の干渉性RNA(siRNA)、又は細胞中でsiRNAを生成することのできる核酸物質)を、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるのに十分な量で、例えば配列依存的、PKR非依存的様式で投与することを含む。特に、主題の方法は、治療又は化粧目的のために、細胞の成長、生存又は分化変えるために利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞の構造及び生物学的振る舞いは、所定時間での細胞内の遺伝子発現のパターンにより決定される。遺伝子発現の撹乱は、多くの種類の癌、血管の病気、神経の病気及び内分泌疾患を含む莫大な数の病気を説明すると長い間認められてきた。増幅、欠失、遺伝子再配置、及び機能の喪失若しくは亢進変異の形態における異常な発現パターンは、今や、病気の細胞の異常な振る舞いへと導くことが知られている。異常な遺伝子発現は又、病原体の脅威を避けるためのある種の生物の防御機構としても注目されてきた。
【0002】
医学の主たる挑戦の一つは、様々な生理的応答に関与する標的とされた遺伝子の発現を調節することであった。外因的に導入されたトランスジーンの真核細胞における過剰発現は、比較的単純であり、特定の遺伝子の狙いを定めた阻止は、達成するのが一層困難であった。遺伝子発現の抑制(位置指定遺伝子破壊、アンチセンスRNA又は同時抑制若しくは同時注入を含む)のための伝統的なアプローチは、複雑な遺伝子操作又は多大な投薬量のサプレッサー(しばしば、宿主細胞の毒性許容レベルを超える)を必要とする。
【0003】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖(ds)RNA依存性の遺伝子特異的な転写後スプライシングを減少させる現象である。哺乳動物細胞実験操作にこの現象を利用する最初の試みは、長いdsRNA分子に応答して活性化された粗野な非特異的なアンチウイルス防御機構によってくじかれた。Gil等、Apoptosis 2000, 5:107-114。この分野は、合成の二本鎖の21ヌクレオチドRNAが、包括的なアンチウイルス防御機構にたよることなく、哺乳動物細胞において遺伝子特異的なRNAiを媒介することができるということの実証によって有意に進歩した。Elbashir等、Nature 2001,411:494-498;Caplen等、Proc.Natl.Acad.Sci. 2001, 98:9742-9747。結果として、小型の干渉性RNA(siRNA)が、遺伝子機能を切り裂く強力なツールとなってきた。小型RNAの化学合成は、有望な結果を生み出してきた一本道である。多くのグループが、細胞内でかかるsiRNAを生成することのできるDNAベースのベクターの開発をも追及してきた。幾つかのグループが、最近、このゴールに到達して、一般に、細胞内で効率的にプロセッシングを受けてsiRNAを形成する短いヘアピン(sh)RNAの転写を含む類似のストラテジーを公開した。Paddison等、PNAS 2002,99:1443-1448;Paddison等、Genes & Dev 2002, 16:948-958;Sui等、PNAS 2002, 8:5515-5520;及びBrummelkamp等、Science 2002, 296:550-553。これらの報告は、多くの内因的及び外因的に発現された遺伝子を特異的に標的とすることのできるsiRNAを生成する方法を記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Gil等、Apoptosis 2000, 5:107-114
【非特許文献2】Elbashir等、Nature 2001,411:494-498
【非特許文献3】Caplen等、Proc.Natl.Acad.Sci. 2001, 98:9742-9747
【非特許文献4】Paddison等、PNAS 2002,99:1443-1448
【非特許文献5】Paddison等、Genes & Dev 2002, 16:948-958
【非特許文献6】Sui等、PNAS 2002, 8:5515-5520
【非特許文献7】Brummelkamp等、Science 2002, 296:550-553
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の一つの面は、RNAi構築物を含む安定な呼吸用配合物であって、治療上有効な量の該RNAi構築物の患者の肺への肺又は鼻送達のために生成された当該配合物を提供することである。ある具体例において、これらのRNAi構築物は、20ミクロンより小さい平均直径を有し、一層好ましくは0.5〜10ミクロンの平均直径を有する微粒子として配合される。ある具体例において、これらの微粒子を、多糖類、ジケトピペラジン、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリビニル化合物、ポリシロキサン、アクリル酸及びメタクリル酸のポリマー、ポリウレタン、セルロース、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、及びポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、又はこれらのコポリマーよりなる群から選択する一種以上のポリマーから形成する。
【0006】
ある具体例において、これらの微粒子は、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出又は熱溶融封入により生成されるが、他の具体例では、これらの微粒子は、乾燥形態又は凍結乾燥形態である。他の具体例においては、これらのRNAi構築物は、リポソームにて配合される。
【0007】
更に別の具体例において、これらのRNAi構築物は、多次元ポリマーネットワークを含む超分子複合体として配合される。好ましくは、これらの超分子複合体は、カチオン性ポリマー例えばポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)又はこれらのコポリマーから形成される。一層好ましくは、これらの超分子複合体は、シクロデキストリンで改変されたポリマー例えば次式の構造を有するシクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成される:
【化1】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化2】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【0008】
ある具体例において、RNAi構築物を含む呼吸用配合物は、噴射剤を含む。
【0009】
ある具体例において、この呼吸用配合物は、計測された投与量の吸入器、乾燥粉末吸入器又はエアジェット噴霧器に含まれる。好適具体例において、このRNAi構築物は、治療上有効な量を与える量で配合される(1〜10計量投与量)。
【0010】
この発明の他の面は、RNAi構築物の呼吸できる配合物を含む肺又は鼻送達用のエアゾールの医薬組成物を含む計量された投与量のエアゾール分配機を与える。
【0011】
この発明の更に別の面は、該RNAi構築物の全身投与量を送達するように肺深部で取り込まれるRNAi構築物の呼吸できる配合物を肺投与により患者に投与することを含むRNAi構築物の全身投与を達成する方法を提供する。
【0012】
この発明の更に別の面は、肺又は鼻送達用に配合された少なくとも一種のRNAi構築物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を提供する。適宜、製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、肺又は鼻送達用に配合された少なくとも一のRNAi構築物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図示)と共に含む医薬パッケージを提供する。
【0013】
本発明の他の面は、超分子複合体に配合された少なくとも一種のRNAi構築物を、処理した細胞において標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるのに十分な量で含む組成物を提供する。例えば、RNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは、19〜30塩基対の長さである。或は、RNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処理された細胞でsiRNAを生成する)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。適宜、RNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、これは、該処理された細胞中でプロセッシングを受けてsiRNAになる。ある具体例においては、この組成物を、細胞の処理のためにイン・ビボ又はイン・ビトロで投与する。
【0014】
ある具体例において、これらの超分子複合体は、凝集して、平均直径20〜500nm(一層好ましくは、20〜200nm)を有する粒子となる。
【0015】
更に説明するために、超分子複合体は、直鎖状ポリマー又は分枝したポリマーを含む多次元ポリマーネットワークであってよい。典型的ポリマーは、カチオン性ポリマー例えばポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)又はこれらのコポリマーである。ある具体例では、これらの超分子複合体は、シクロデキストリン改変ポリマー例えば下記式の構造を有するシクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成される:
【化3】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化4】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは、10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【0016】
本発明の他の面は、イン・ビボで細胞の標的遺伝子の発現を減衰させる方法であって、超分子複合体に配合されたRNAi構築物を、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させ、それにより処理された細胞の成長、生存又は分化を変化させるのに十分な量で投与することを含む当該方法を提供する。
【0017】
この発明の更に別の面は、超分子複合体に配合された少なくとも一種のRNAi構築物と製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を提供する。適宜、製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、超分子複合体中に配合された少なくとも一種のRNAi構築物及び製薬上許容しうるキャリアーを該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬製剤を含む医薬パッケージを提供する。
【0018】
本発明の他の面は、RNAi構築物を内部に分散させて有するポリマーマトリクスを含む医用デバイスの表面での利用のためのコーティングを提供する(該RNAi構築物は、患者の身体中の部位に移植された場合にマトリクスから溶出されて、その移植されたデバイスの近くの細胞の成長、生存又は分化を変える)。典型的な医用デバイスには、スクリュー、プレート、ワッシャー、縫合糸、補綴留め具、留め鋲、ステープル、電気導線、バルブ、膜、カテーテル、移植用血管出入口、血液貯蔵用バッグ、血管、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管移植片、大動脈バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、生体外デバイス、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿搬出ユニット、及び血管内の分散のために適合させたフィルターが含まれる。ある好適具体例は、コートされたステントを提供する。
【0019】
ある具体例において、このコーティングのRNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは19〜30塩基対の長さである。或は、このRNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処理された細胞でsiRNAを生じる)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。適宜、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、これは、処理された細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAとなる。
【0020】
説明のために、このコーティングのRNAi構築物は、サイクリン依存性キナーゼ、c−myb、c−myc、増殖中の細胞核抗原(PCNA)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)及び転写因子核因子カッパーB(NF−κB)、E2F、HER−2/neu、PKA、TGF−α、EGFR、TGF−β、IGFIR、P12、MDM2、BRCA、Bcl−2、VEGF、MDR、フェリチン、トランスフェリンレセプター、IRE、C−fos、HSP27、C−raf、及びメタロチオネイン遺伝子から選択される少なくとも一つの標的遺伝子を減衰させるものであってよい。
【0021】
ある好適具体例において、このRNAi構築物は、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を減衰させるように遺伝子の発現を阻害する。
【0022】
本発明の更に別の面は、医用デバイスを少なくとも一種のRNAi構築物でコートする方法であって、下記:
a)デバイスの表面をコートするために、RNAi構築物を、該デバイスを患者の身体中の部位に移植した場合に該RNAi構築物が表面から溶出されるように配合し、
b)配合されたRNAi構築物を医用デバイス上にコートする
ことを含み、該RNAi構築物でコートされた医用デバイスが、その移植されたデバイスの近くの細胞内での少なくとも一つの遺伝子の発現を減衰させる
ことを特徴とする当該方法を提供する。
【0023】
本発明の他の面は、動物への経皮的心膜内送達のために配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む組成物を提供する。一具体例において、この組成物のRNAi構築物は、遺伝子の発現を減衰させて、心筋梗塞時及びその前後における増大した血管形成及び/又は減少した虚血性ダメージを生じる。適宜、このRNAi構築物は、全身で利用可能であり、心臓周囲の空間から遠い細胞において少なくとも一つの遺伝子の発現を減衰させる。
【0024】
ある具体例において、この組成物のRNAi構築物は、リポソームに封入され又はリポソームに結合される。例えば、これらのリポソームは、カチオン性小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソームである。適宜、この組成物のリポソームは、約200nm未満の平均直径を有する。
【0025】
他の具体例において、このRNAi構築物は、多次元ポリマーネットワークを含む超分子複合体として配合される。好ましくは、これらのポリマーは、カチオン性ポリマー例えばポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)又はこれらのコポリマーである。
【0026】
ある具体例において、この組成物の超分子複合体は、シクロデキストリン改変ポリマー例えば下記式の構造を有するシクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成される:
【化5】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化6】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000、又は100〜1,000の整数を表す)。
【0027】
ある具体例において、この組成物のRNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは、19〜30塩基対の長さである。或は、このRNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処理された細胞内でsiRNAを生じる)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。適宜、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、それは、処理された細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる。好適具体例において、この組成物の動物は、ヒトである。
【0028】
一具体例において、本発明は、経皮的心膜内送達のために配合された少なくとも一種のRNAi構築物と製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を提供する。適宜、製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、経皮的心膜内送達のために配合された少なくとも一種のRNAi及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を該製剤のヒト患者への投与のための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージを提供する。
【0029】
本発明の更に別の面は、少なくとも一種のRNAi構築物のイン・ビボでの経皮的心膜内送達のための方法であって、RNAi構築物の配合物を動物の心臓周囲の空間に投与することを含み、該RNAi構築物は処置した動物の細胞の少なくとも一つの標的遺伝子の発現を減衰させるのに十分な量で存在する当該方法を提供する。例えば、心臓周囲の空間は、RNAi構築物の送達用貯臓器として利用される。ある具体例において、この方法のRNAi構築物は、心臓と周囲の血管系に局所的に送達される。他の具体例においては、この方法のRNAi構築物は、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を低減させるために利用され、一層好ましくは、心筋梗塞の治療のために利用される。
【0030】
本発明の他の面は、イン・ビボで細胞の標的遺伝子の発現をRNAi干渉機構によって減衰させるためにリポソーム中に配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む組成物を提供する。ある好適具体例において、このRNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは、19〜30塩基対の長さである。或は、このRNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処置した細胞においてsiRNAを生じる)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。適宜、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、それは、処置した細胞でプロセッシングを受けてsiRNAになる。好ましくは、この細胞は、哺乳動物細胞例えばヒトの細胞である。
【0031】
ある具体例において、この組成物のリポソームは、カチオン性の小胞形成性脂質を含むカチオン性リポソームである。他の具体例においては、これらのリポソームは、約200nm未満の平均直径を有する。
【0032】
本発明の更に別の面は、患者の細胞の標的遺伝子の発現を減衰させる方法であって、リポソーム中に配合されたRNAi構築物を、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるのに十分な量で投与し、それにより該細胞の成長、生存又は分化を変化させることを含む当該方法を提供する。ある好適具体例において、この方法のRNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは19〜30塩基対の長さである。或は、このRNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処置した細胞内でsiRNAを生じる)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。適宜、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、これは、処置した細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる。好ましくは、この方法の細胞は、哺乳動物細胞例えばヒトの細胞である。
【0033】
ある具体例において、この方法のリポソームは、カチオン性の小胞形成性脂質を含むカチオン性リポソームである。他の具体例において、これらのリポソームは、約200nm未満の平均直径を有する。
【0034】
ある具体例において、本発明は、リポソーム中に配合された少なくとも一種のRNAi構築物と製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を提供する。適宜、製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、リポソーム中に配合された少なくとも一種のRNAiと製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージを提供する。
【0035】
本発明の他の面は、細胞へのイン・ビボでのエレクトロポレーション用に配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む組成物を提供する。例えば、このRNAi構築物は、超分子複合体中に又はリポソーム中に配合される。ある具体例において、これらの細胞は、上皮細胞又は筋細胞である。
【0036】
本発明の更に別の面は、少なくとも一種のRNAi構築物を患者にエレクトロポレーションによって送達するための方法であって、動物にエレクトロポレーションによって十分な量のRNAi構築物を投与することを含み、該RNAi構築物が患者の細胞中の標的遺伝子の発現を減衰させる当該方法を提供する。例えば、この方法のRNAi構築物は、超分子複合体に配合され、又はリポソーム中に配合される。ある具体例において、この方法の細胞は、上皮細胞であり又は筋細胞である。
【0037】
一具体例において、本発明は、細胞中へのエレクトロポレーションのために配合された少なくとも一種のRNAi構築物と製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を提供する。適宜、この製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、細胞内へのエレクトロポレーションのために配合された少なくとも一種のRNAiと製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を、該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージを提供する。
【0038】
本発明の他の面は、望ましくない細胞増殖をイン・ビボで阻止するための少なくとも一種の配合されたRNAi構築物を含む組成物を提供し、ここに、このRNAi構築物は、RNA干渉機構によって、細胞の有糸分裂に必須の及び/又は該細胞のアポトーシスの阻止に必須の標的遺伝子の発現を低減させる。
【0039】
ある好適具体例において、この方法のRNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは、19〜30塩基対の長さである。或は、このRNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処置した細胞でsiRNAを生じる)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。例えば、この発現ベクターは、エピソーム性の発現ベクター、組込み型の発現ベクター、及びウイルス性発現ベクターから選択される。他の好適具体例において、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、これは、処置した細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる。
【0040】
ある具体例において、この組成物のRNAi構築物は、細胞の増殖を阻害する。或は、このRNAi構築物は、その細胞のアポトーシスを促進する。
【0041】
典型的なRNAi構築物は、オンコジーンである標的遺伝子例えばc−myc、c−myb、mdm2、PKA−I、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos、src又はBcr/Abl融合遺伝子の発現を阻止する。
【0042】
ある具体例において、このRNAi構築物は、トランスフォームされた細胞の処置のために、例えば過形成性細胞増殖を阻止し又は減衰させるために利用され、癌などの治療の部分であってよい。
【0043】
他の具体例において、このRNAi構築物は、リンパ球の活性化を阻止するために利用される(免疫媒介の炎症性疾患の治療及び予防を含む)。
【0044】
更に別の具体例において、このRNAi構築物は、平滑筋細胞の増殖を阻止するために利用される(再狭窄の治療及び予防を含む)。
【0045】
更に別の具体例において、このRNAi構築物は、上皮細胞の増殖を阻止するために利用される(例えば、化粧用製剤の成分として)。
【0046】
ある具体例において、この組成物のRNAi構築物は、超分子複合体に配合される。適宜、この超分子複合体は、少なくとも一種のポリマー例えばシクロデキストリン含有ポリマーを含む。或は、このRNAi構築物は、リポソーム(例えば、カチオン性の小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソーム)に封入され又は結合される。適宜、このRNAi構築物と複合体化されたリポソームは、典型的には約200nm未満の実質的に均一な大きさである。
【0047】
好適具体例において、動物は、ヒトの患者である。
【0048】
本発明の更に別の面は、望ましくない細胞のイン・ビボでの成長を阻止する方法であって、動物に十分な量の配合されたRNAi構築物を投与することを含み、RNA干渉機構によって、RNAi構築物が細胞の有糸分裂に必須の及び/又は該細胞のアポトーシスの防止に必須の標的遺伝子の発現を減じる当該方法を提供する。
【0049】
ある好適具体例において、この方法のRNAi構築物は、小型の干渉性RNA(siRNA)であり、好ましくは19〜30塩基対の長さである。或は、このRNAi構築物は、転写されて少なくとも一種の転写産物(処置した細胞においてsiRNAを生じる)を生成するコード配列を有する発現ベクターである。例えば、発現ベクターは、エピソーム性発現ベクター、組込み型発現ベクター、及びウイルス性発現ベクターから選択される。他の好適具体例において、このRNAi構築物は、ヘアピンRNAであり、それは、処置した細胞でプロセッシングを受けてsiRNAになる。
【0050】
ある具体例において、この組成物のRNAi構築物は、細胞の増殖を阻止する。或は、このRNAi構築物は、細胞のアポトーシスを促進する。
【0051】
ある好適具体例において、標的遺伝子は、オンコジーン例えばc−myc、c−myb、mdm2、PKA−I、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos、src又はBcr/Abl融合遺伝子である。ある具体例において、この細胞は、RNAi構築物が過形成性細胞増殖の治療(癌の治療を含む)に用いられるようにトランスフォームされた細胞である。他の具体例において、このRNAi構築物は、リンパ球の活性化を阻止するために用いられる(免疫媒介の炎症性疾患の治療又は予防を含む)。更に別の具体例において、このRNAi構築物は、平滑筋細胞の増殖を阻止するために利用される(再狭窄の治療又は予防を含む)。更に別の具体例において、このRNAi構築物は、上皮細胞の増殖を阻止するために利用される(例えば、化粧用製剤の成分として)。
【0052】
他の具体例において、この方法のRNAi構築物は、超分子複合体に配合される。適宜、この超分子複合体は、少なくとも一種のポリマー例えばシクロデキストリン含有ポリマーを含む。
【0053】
或は、このRNAi構築物は、リポソーム(例えば、カチオン性の小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソーム)に封入され又は結合される。適宜、このRNAi構築物と複合体化されたリポソームは、典型的には約200nm未満の実質的に均一な大きさを有する。
【0054】
好適具体例において、この方法の動物は、ヒトである。
【0055】
この発明の他の面は、望ましくない細胞の増殖を阻止するために配合された少なくとも一種のRNAiと製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を提供する。適宜、製薬上許容しうるキャリアーは、製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩から選択される。ある好適具体例において、本発明は、望ましくない細胞の増殖を阻止するために配合された少なくとも一種のRNAiと製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤を該製剤のヒト患者への投与のための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージを提供する。他の具体例において、本発明は、上皮細胞の増殖又は分化を阻止するために配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む化粧用製剤を提供する。
【0056】
本発明の更に別の面は、細胞死を誘導する方法であって、標的細胞に、イン・ビボで、標的細胞でPKR応答を活性化するのに十分な長さの二本鎖RNA又は二本鎖RNAを転写することのできる発現ベクターを投与することを含む当該方法を提供する(該二本鎖RNAは、超分子複合体の部分として配合される)。
【0057】
ある好適具体例において、この二本鎖RNAは、35塩基対より長く、一層好ましくは75、100、200塩基対より長く、又は400塩基対より長いことさえある。ある具体例において、標的細胞は、哺乳動物細胞である(トランスフォームされた細胞を含む)。ある具体例において、超分子複合体は、多次元ポリマーネットワークである(直鎖状ポリマー又は分枝鎖ポリマーを含む)。好ましくは、この超分子複合体は、カチオン性ポリマー例えばポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーから形成される。208。
【0058】
ある具体例において、超分子複合体は、シクロデキストリン改変ポリマーから形成され、下記式の構造を有するシクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)を含む:
【化7】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化8】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【0059】
本発明の更に別の面は、製薬事業を行う方法であって、下記:
a)標的細胞の増殖をイン・ビボで阻止して病気の影響(望ましくない標的細胞の増殖を含む)を低減させるRNAi構築物を同定し;
b)ステップa)で同定されたRNAi構築物の治療プロファイリングを動物における効力及び毒性につき実行し;そして
c)ステップb)で許容しうる治療プロフィルを有するとして同定された少なくとも一種のRNAi構築物を含む医薬製剤を配合する
ことを含む当該方法を提供する。
【0060】
好ましくは、製薬事業を行う方法は、販売のために医薬製剤を分配するための分配システムを確立する更なるステップ及び(適宜)該医薬製剤のマーケティングのための販売グループを確立するステップを包含する。
【0061】
本発明の尚更に別の面は、製薬事業を行う方法であって、下記:
a)標的細胞の増殖をイン・ビボで阻止して、望ましくない標的細胞の増殖を含む病気の影響を低減させるRNAi構築物を同定し;
b)ステップa)で同定したRNAi構築物の(適宜)治療プロファイリングを動物における効力及び毒性につき行い;そして
c)RNAi構築物の更なる開発の権利を第三者に許諾する
ことを含む当該方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードするプラスミド及び/又はsiRNAオリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖をコードするプラスミドのHEK 293−EcR細胞への送達を示している。プラスミドを、これらの細胞への送達のために、分枝したPEI25k−hi−CDポリマーと、15N/Pの比で複合体化した(0.5mlのopti−MEM中)。相対的GFP発現を、細胞に示したプラスミドをトランスフェクトした後に測定した。
【図2】図2は、β−CDポリマー4/DNA充填比及び血清条件の、トランスフェクション効率(●及び■)並びにBHK−21細胞における細胞生存に対する効果を示している。10%血清及び無血清培地におけるトランスフェクションからの結果を、それぞれ、点線及び実線で示してある。データは、3つの試料の平均値±S.D.として示してある。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
I.概観
本発明は、標的遺伝子の発現をイン・ビボで減衰させる方法及び組成物を提供する。一般に、この方法は、RNAi構築物(例えば、特定のmRNA配列に狙いを定めた小型の干渉性RNA(即ち、siRNA))を、又はsiRNAを細胞中で生成することのできる核酸物質を、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるのに十分な量で、例えば配列依存的に、PKR非依存的方法で投与することを含む。
【0064】
この発明の一つの面は、RNAi構築物の、増殖制御遺伝子(アポトーシス阻害遺伝子を含む)の発現を減衰させるための利用に関係する。かかる具体例は、望ましくない細胞の増殖(特に、トランスフォームされた細胞の増殖)をイン・ビボで阻止し又は少なくとも低減させる治療処置又は化粧処置プログラムの部分として利用することができる。
【0065】
発明の他の面は、肺投与のためのRNAi構築物(例えば、呼吸可能なRNAi構築物)の配合物に関係する。かかる配合物は、RNAi構築物の局所送達又は全身送達のために利用することができ、様々な適応症の何れかのために、RNAi構築物の投与のための慣用の方法を指名することができる(例えば、増殖性疾患の治療に限らない)。単に説明のために、主題の発明のある種のRNAi組成物は、全身性及び肺性の高血圧症の患者における血圧を低下させるために、血管収縮物質の発現をノックダウンし、又は血管収縮物質のレセプターレベルを低減させるために利用することができる。
【0066】
この発明の更に別の面は、患者を、経皮的な心膜内への薬物送達によって、RNAi構築物を用いて治療する方法に関係する(該送達では、心臓周囲の空間がRNAi構築物の送達用貯蔵器として効果的に利用される)。RNAi構築物の全身送達においても有用であるが、かかる技術は、心臓及び周囲血管系への局所的送達に特に有用でありうる。
【0067】
例えば、心筋梗塞の治療において、この発明は、血管形成性RNAi構築物を投与して血管形成を促進し、それにより、回復を促進し及び/又は梗塞周囲の組織に対する更なる障害を防止する方法を提供する。例えば、主題の方法は、NF−κBレセプターIκBの発現を阻止するなどにより、NF−κB転写因子の活性の負の調節を行うタンパク質又は塩基性繊維芽細胞成長因子に誘導される血管形成をイン・ビボで低下させる任意の他の細胞性因子の活性の負の調節を行うタンパク質の発現を阻止するRNAi構築物を送達するために利用することができる。RNAi媒介の減衰の他の標的には、C反応性タンパク質(CRP)をコードする遺伝子が含まれる。CRPは、塩基性及び血管内皮成長因子に刺激された血管形成の両方を阻止する。
【0068】
心膜内薬物送達は又、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を減じるRNAi構築物の送達にも利用することができ、それにより、新生内膜過形成例えば再狭窄、アテローム性動脈硬化症などの治療において有用でありうる。単に説明のために、新生内膜過形成の阻止は、c−myb、c−myc、増殖細胞核抗原(PCNA)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)及び転写因子例えば核因子カッパーB(NF−κB)及びE2Fの遺伝子発現を減衰させるためのRNAi構築物の投与によって達成することができる。新生内膜過形成を減じるための心膜内薬物送達に加えて、本発明は又、特に、RNAi構築物の「ステントへの」送達(ステントの少なくとも一部分を直接RNAi構築物でコートするか又はRNAi構築物が放出される高分子コーティングによるかの何れかによる)を企図している。
【0069】
この発明の他の面は、コートされた医用デバイスに関係する。例えば、ある具体例において、主題の発明は、少なくとも一つの面に付着したコーティングを有する医用デバイスを提供し、該コーティングは、主題のポリマーマトリクスとRNAi構築物を含む。かかるコーティングは、外科用器具例えばスクリュー、プレート、ワッシャー、ステント、捕綴留め具、留め鋲、ステープル、電気導線、バルブ、膜に適用することができる。これらのデバイスは、カテーテル、移植用血管出入口、血液貯蔵用バッグ、血管、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管移植片、大動脈バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、生体外デバイス、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿搬出ユニット、及び血管内の分散のために適合させたフィルターであってよい。
【0070】
この発明の更に別の面は、上皮組織(皮膚、粘膜など)並びに筋肉(平滑筋又は骨格筋)内へのエレクトロポレーションなどの細胞内へのイン・ビボでのエレクトロポレーションに適したRNAi構築物の組成物を提供する。
【0071】
この発明の他の面では、RNAi構築物は、超分子複合体に配合されて、医薬としての利用に適しており、例えば、実質的に発熱物質を含まない。例えば、超分子複合体は、直鎖ポリエチレンイミン又は直鎖シクロデキストリン含有ポリマー及び分枝したポリエチレンイミン又は分枝鎖シクロデキストリンポリマーを含む多次元ポリマーネットワークから形成することができる。ある好適具体例においては、これらの発現構築物をシクロデキストリンと配合する(例えば、シクロデキストリン細胞送達システムなど)。
【0072】
この発明の更に別の面は、ある種の細胞における配列非依存性dsRNA応答を活性化するため(例えば、dsRNA依存性プロテインキナーゼPKRを活性化するため)の長い二本鎖RNAの利用に関係する。PKRの媒介による長鎖dsRNA(例えば、35塩基対より長い、尚一層好ましくは、39、50、75、100又は200塩基対よりも長いdsRNA)に対する応答は、主にウイルスに感染した細胞で活性化されて細胞死を誘導する強力な成長阻害タンパク質である。配列依存性のRNA干渉を行なうためにここに記載した主題の組成物は、長鎖dsRNA(例えば、PKRを活性化して細胞死を誘導するのに十分な長さの、例えば40〜1000塩基対、好ましくは100〜800塩基対、尚一層好ましくは200〜500塩基対の範囲のdsRNA分子)を細胞に送達するために容易に適応させることができる。一具体例において、主題の長鎖dsRNA配合物は、癌細胞を殺すために利用することができる。
【0073】
II.定義
便宜のために、この明細書、実施例及び添付の請求の範囲で用いるある種の用語をここに集めた。
【0074】
ここで用いる場合、用語「動物」は、哺乳動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物をいう。同様に、この発明の方法により治療される「患者」は、ヒト又は非ヒト動物の何れかを意味することができる。
【0075】
用語「アポトーシス」又は「プログラムされた細胞死」は、望ましくない又は無用の細胞を発生及び他の正常な生物学的過程において排除する生理的過程をいう。アポトーシスは、正常な生理的条件下で起きる細胞死の一つの様式であり、その細胞は、それ自身の終焉(「細胞の自殺」)の積極的参与者である。それは、正常な細胞のターンオーバー及び組織のホメオスタシス、胚形成、免疫寛容の誘導及び維持、神経系の発生及び内分泌依存性の組織退行において、最も頻繁に見出される。アポトーシスを受ける細胞は、形態的及び生化学的な特徴を示す。これらの特徴には、クロマチン凝集、核及び細胞質の濃縮、細胞質及び核の、リボソーム、形態的に完全なミトコンドリア及び核物質を含む膜に結合した小胞(アポトーシス体)への分割が含まれる。イン・ビボでは、これらのアポトーシス体は、マクロファージか隣接する上皮細胞の何れかに速やかに認識されて貪食作用を受ける。このイン・ビボでのアポトーシスを受ける細胞の除去のための効率的な機構によっては、炎症性応答は誘出されない。イン・ビトロでは、アポトーシス体並びに残りの細胞断片は、最終的には膨潤して溶解される。このイン・ビトロ細胞死の最終フェーズは、「二次的壊死」と呼ばれてきた。
【0076】
「細胞」、「宿主細胞」又は「組換え宿主細胞」は、ここでは交換可能に用いられる用語である。かかる用語は、特定の主題の細胞だけでなくかかる細胞の子孫又は潜在的な子孫をも指すものであるということは理解される。突然変異又は環境の影響のために、ある種の改変が連続する生成において起こりうるので、かかる子孫は、実際は親の細胞と同じでなくてよいが、やはり、ここで用いる用語の範囲に包含される。
【0077】
「病気と関連する」又は「病気を引き起こす」遺伝子は、その発現が、望ましくない細胞表現型に必須であり又は実質的に寄与している任意の遺伝子をいう。それは、異常に高レベルで発現されるようになる遺伝子であってよく;異常に低レベルで発現されるようになる遺伝子であってよい(その変化した発現が、病気の出現及び/又は進行と相関している)。病気と関連する遺伝子は又、直接的に病気の原因となり又は病因である遺伝子と連鎖不均衡にある突然変異又は遺伝的変化を有する遺伝子をもいう。これらの転写又は翻訳産物は、既知であっても未知であってもよく、正常レベルであっても異常レベルで合ってもよい。
【0078】
ここで用いる場合、用語「dsRNA」は、siRNA分子をいい、又は二本鎖の特徴を含み、細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになることのできる他のRNA分子(ヘアピンRNA部分など)をいう。
【0079】
同様に、用語「コードする」は、文脈から明らかである場合以外は、ポリペプチドをコードするDNA配列を包含することを意味し(この用語が典型的に用いられる場合)、並びに、阻害性のアンチセンス分子に転写されるDNA配列を意味する。
【0080】
用語「発現」は、遺伝子配列に関して、その遺伝子の転写をいい、適宜、その結果生成したmRNA転写産物のタンパク質への翻訳をいう。それ故、文脈から明らかであるように、タンパク質をコードする配列の発現は、コード配列の転写及び翻訳から生じる。
【0081】
細胞の「生育状態」は、細胞の増殖速度及び分化状態をいう。
【0082】
ここで用いる場合、「不滅化細胞」は、化学的、遺伝的及び又は組換え手段によって変化されて、培養において無限回分裂して生育する能力を有するようになった細胞をいう。
【0083】
「遺伝子発現の阻害」は、標的遺伝子に由来するタンパク質及び/又はmRNA産物のレベルにおける非存在(又は認めうる減少)をいう。「特異性」は、細胞の他の遺伝子に明白な影響を与えずに標的遺伝子を阻害する能力をいう。阻害の結果は、細胞又は器官の外観的特性の試験によって(以下の実施例に与えるように)又は生化学的技術例えばRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、遺伝子発現のマイクロアレイによるモニター、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ及び蛍光活性化細胞分析(FACS)によって確認することができる。
【0084】
用語「機能喪失」は、主題のRNAi法によって阻害された遺伝子に言及する場合は、遺伝子の発現レベルの、RNAi構築物の非存在下でのレベルと比較した場合の減少をいう。
【0085】
ここで用いる場合、語句「RNAiを媒介する」は、何れのRNAがRNAiプロセスによって分解されるべきかを識別する能力をいう(指す)(例えば、分解は、配列非依存的dsRNA応答(例えば、PKR応答)によるよりもむしろ配列特異的様式で起きる)。
【0086】
用語「鼻送達」は、RNAi構築物の鼻内への吸入による患者の全身への送達をいう。
【0087】
ここで用いる場合、用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)及び適宜リボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドをいう。この用語は、記載した具体例に適用可能である場合には、一本鎖(例えば、センス又はアンチセンス鎖)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むとも理解されるべきである。
【0088】
「操作可能に結合された」は、2つのDNA領域の間の関係を記載する場合には、単に、それらが相互に機能的に関係していることを意味する。例えば、プロモーター又は他の転写調節配列は、それがコード配列の転写を制御するならば、コード配列に操作可能に結合される。
【0089】
用語「製薬上許容しうる塩」は、この発明の化合物の生理的及び製薬的に許容しうる塩即ち、親化合物の所望の生物学的活性を保持していて且つ望ましくない毒物学的効果を付与しない塩をいう。
【0090】
ここで用いる場合、「増殖性」及び「増殖」は、有糸分裂を受ける細胞をいう。
【0091】
「タンパク質コード配列」又は特定のポリペプチド若しくはペプチドを「コードする」配列は、イン・ビトロ又はイン・ビボで、適当な調節配列の制御下に置かれた場合に、転写されて(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシル)末端の翻訳停止コドンにより決められる。コード配列は、原核生物又は真核生物のmRNAに由来するcDNA、原核生物又は真核生物のゲノムDNA配列、及び合成のDNA配列をも含むことができるが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常、コード配列の3’側に位置する。
【0092】
用語「肺送達」及び「呼吸送達」は、RNAi構築物の、口から肺への吸入による患者への全身送達をいう。
【0093】
「組換えウイルス」とは、例えば異種核酸構築物のウイルス粒子への追加又は挿入によって、遺伝的に変えられたウイルスを意味する。
【0094】
ここで用いる場合、用語「RNAi構築物」は、この明細書中で用いられる包括的用語であって、小型の干渉性RNA(siRNA)、ヘアピンRNA、及びイン・ビボで開裂されてsiRNAを形成することのできる他のRNA種を包含する。ここでは、RNAi構築物は、dsRNA又はヘアピンRNAを細胞内で形成する転写物及び/又はsiRNAをイン・ビボで生成することのできる転写物を生じることのできる発現ベクター(RNAi発現ベクターとも呼ぶ)をも包含する。
【0095】
「RNAi発現ベクター」(ここでは、「dsRNAをコードするプラスミド」とも呼ぶ)は、複製可能な核酸構築物であって、それが発現した細胞内でsiRNA部分を生成するRNAの発現(転写)に用いられる当該複製可能な核酸構築物をいう。かかるベクターには、(1)遺伝子発現における調節の役割を有する遺伝子エレメント例えばプロモーター、オペレーター又はエンハンサー、(2)該遺伝子エレメントが機能的に結合された「コード」配列であって、転写されて二本鎖RNA(細胞内でアニールしてsiRNAを形成する2つのRNA部分、又はプロセッシングを受けてsiRNAになることのできる一本鎖ヘアピンRNA)を生成する当該コード配列、並びに(3)適当な転写開始配列及び終止配列のアセンブリを含む転写ユニットが含まれる。プロモーターその他の調節エレメントの選択は、一般に、意図している宿主細胞によって変化する。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、ベクター形態において染色体に結合していない環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形態である。本願明細書においては、「プラスミド」及び「ベクター」は、交換可能に用いられるが、プラスミドが最も一般的に用いられるベクターの形態である。しかしながら、この発明は、かかる他の形態の発現ベクターであって同じ機能を果たす当該発現ベクター(以下で知らせるもの)を包含することを意図している。
【0096】
これらの発現ベクターにおいて、転写を制御する調節エレメントは、一般に、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫の遺伝子から得られる。通常、複製起点により与えられる宿主において複製する能力及び、トランスフォーマントの認識を容易にする選択遺伝子は、追加的に組み込むことができる。ウイルス例えばレトロウイルス、アデノウイルスなどから得られたベクターを用いることができる。
【0097】
用語「小型の干渉性RNA」又は「siRNA」は、19〜30ヌクレオチドの長さの、一層好ましくは21〜23ヌクレオチドの長さの核酸をいう。これらのsiRNAは、二本鎖であり、各末端に短いオーバーハングを含んでよい。好ましくは、これらのオーバーハングは、3’末端で1〜6ヌクレオチドの長さである。これらのsiRNAは、化学合成することができ、又は一層長い二本鎖RNA又はヘアピンRNAから得ることができるということは、当業者には公知である。これらのsiRNAは、標的RNAと対合してその標的RNAのRNA干渉機構による配列特異的な分解を生じることができるように、標的RNAに対する有意の配列類似性を有する。適宜、これらのsiRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。
【0098】
用語「超分子複合体」は、少なくとも一つのポリマーにより形成された多次元ポリマーネットワークをいう。このポリマー分子は、直鎖状でも分子鎖であってもよく、例えば、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)、及びこれらのコポリマーであってよい。ある具体例においては、本発明は、超分子複合体として配合されたRNAi構築物に関係する。
【0099】
「転写調節配列」は、操作可能に結合されたコード配列の転写を誘導し又は制御する開始シグナル、エンハンサー及びプロモーターなどのDNA配列を指すためにこの明細書中で用いられる包括的用語である。
【0100】
ここで用いる場合、用語「形質導入」及び「トランスフェクション」は、技術的に認められており、核酸例えば発現ベクターのレシピエント細胞への、核酸媒介の遺伝子トランスファーによる導入を意味する。「トランスフォーメーション」は、ここで用いる場合、外因性DNA又はRNAの細胞への取込みの結果として細胞の遺伝子型が変化され、例えば、トランスフォームされた細胞がRNAi構築物を発現する過程をいう。細胞は、核酸構築物が娘細胞に遺伝されうるならば、該核酸構築物によって「安定にトランスフェクトされている」。
【0101】
ここで用いる場合、「トランスフォームされた細胞」は、無制限の増殖状態に自然に変換された細胞をいい、即ち、それらは、培養において、無限回の分裂により増殖する能力を獲得している。トランスフォームされた細胞は、それらの増殖制御の喪失に関して、新生物、未分化及び/又は過形成などの用語によって特徴付けることができる。この発明の目的に関して、用語「悪性の哺乳動物細胞のトランスフォームされた表現型」及び「トランスフォームされた表現型」は、次の哺乳動物細胞の細胞トランスフォーメーションに関係する表現型の特徴の何れかを包含することを意図しているが、これらに限らない:不滅化、形態的又は増殖性のトランスフォーメーション、及び腫瘍形成性(細胞培養における延長された増殖、半固体培地における増殖、又は免疫不全の又は同系の動物における腫瘍形成性により検出)。
【0102】
「一時的トランスフェクション」は、外因性DNAがトランスフェクトされた細胞のゲノムに組み込まれない場合をいう(例えば、エピソーム性DNAがmRNAに転写されてタンパク質に翻訳される場合)。
【0103】
ここで用いる場合、用語「ベクター」は、それが結合された他の核酸分子を運ぶことのできる核酸分子をいう。ベクターの一つの型は、ゲノムに組み込まれるベクター即ち「組込み型ベクター」であり、これは、宿主細胞の染色体DNA中に組み込まれうる。他の型のベクターは、エピソーム型ベクター即ち染色体外で複製することのできる核酸である。機能的に結合された遺伝子の発現を指示することのできるベクターは、ここでは、「発現ベクター」と呼ぶ。本願明細書においては、「プラスミド」及び「ベクター」は、文脈から明らかな場合以外、交換可能に用いられる。
【0104】
III.典型的なRNAi構築物
これらのRNAi構築物は、細胞の生理的条件下で、阻害すべき遺伝子(即ち、「標的」遺伝子)のmRNA転写物の少なくとも一部分のヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。この二本鎖RNAは、RNAiを媒介する能力を持つように、天然のRNAに十分類似していることだけが必要である。それ故、この発明は、遺伝子変異、系統多型又は環境の相違のために予想されうる配列の変化を許容することができるという利点を有する。標的配列とRNAi構築物の配列との間の許容されるヌクレオチドのミスマッチの数は、5塩基対中1個以下であり、又は10塩基対中1個以下、又は20塩基対中1個以下、又は50塩基対中1個以下である。二本鎖siRNAの中心におけるミスマッチは、最も重大であり、本質的に標的RNAの開裂を完全に破壊しうる。対照的に、標的RNAに相補的なsiRNA鎖の3’末端のヌクレオチドは、標的認識の特異性に対して有意の寄与をしていない。
【0105】
配列同一性は、当分野で公知の配列の比較及びアラインメントアルゴリズム(Gribskov及びDevereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991及び該文献中の引用文献を参照されたい)及びヌクレオチド配列間の差異パーセントを、例えば、デフォルトのパラメーターを利用するBESTFITソフトウェアプログラム(例えば、ウィスコンシン大学、Genetic Computing Group)などで実行されるSmith-Watermanアルゴリズムにより計算することによって最適化することができる。阻害性RNAと標的遺伝子の部分との間では、90%を超える配列同一性、又は100%の配列同一性が好ましい。或は、このRNAの二本鎖領域を、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズすることのできるヌクレオチド配列として機能的に限定することができる(例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃又は70℃で12〜16時間のハイブリダイゼーション;とその後の洗浄)。
【0106】
RNAi構築物の生成は、化学合成法により又は組換え核酸技術によって行なうことができる。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼは、イン・ビボで転写を媒介することができ、或は、クローン化RNAポリメラーゼを、イン・ビトロ転写に利用することができる。これらのRNAi構築物は、例えば細胞のヌクレアーゼに対する感受性を低減させ、バイオアベイラビリティーを改善し、特性を改良し、及び/又は他の薬物速度論的特性を変更するために、リン酸−糖主鎖又はヌクレオシドの何れかに対する改変を含むことができる。例えば、天然のRNAのホスホジエステル結合を改変して、少なくとも一つの窒素又は硫黄ヘテロ原子を含むようにすることができる。RNA構造中の改変は、dsRNAに対する全体的応答を回避しつつ、特定の遺伝的阻害を可能にするように調整することができる。同様に、塩基を改変して、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックすることができる。このRNAi構築物は、酵素的に又は部分的に/全体的に有機合成によって生成することができ、任意の改変されたリボヌクレオチドを、イン・ビトロの酵素的又は有機合成によって導入することができる。
【0107】
RNA分子を化学的に改変する方法は、RNAi構築物を改変するために適合させることができる(例えば、Heidenreich等、(1997) Nucleic Acids Res. 25:776-780;Wilson等、(1994) J Mol Recog 7:89-98;Chen等、(1995) Nucleic Acids Res 23:2661-2668;Hirschbein等、(1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 7:55-61参照)。単に説明のために、RNAi構築物の主鎖を、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホジチオエート、キメラのメチルホスホネート−ホスホジエステル、ペプチド核酸、5−プロピニル−ピリミジン含有オリゴマーにより又は糖の改変(例えば、2’−置換されたリボヌクレオシド、a−立体配置)により改変することができる。
【0108】
この二本鎖構造は、一本の自己相補性RNA鎖又は二本の相補的RNA鎖によって形成することができる。RNAの二本鎖形成は、細胞の内側でも外側でも開始することができる。このRNAは、細胞当たり少なくとも1コピーの送達を可能にする量で導入することができる。一層多い投与量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)の二本鎖物質は、一層効果的な阻害を生じることができるが、一層少ない投与量も又、特定の適用には有用でありうる。阻害は、RNAの二本鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝的阻害の標的となる点において配列特異的である。
【0109】
ある具体例において、主題のRNAi構築物は、「小型の干渉性RNA」又は「siRNA」である。これらの核酸は、凡そ19〜30ヌクレオチドの長さであり、尚一層好ましくは、21〜23ヌクレオチドの長さであって、例えば、一層長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ「ダイシング」により生成された断片の長さに対応している。これらのsiRNAは、ヌクレアーゼ複合体をリクルートし、それらの複合体を特異的配列との対合によって標的mRNAに導くと理解される。結果として、その標的mRNAは、タンパク質複合体中でヌクレアーゼによって分解される。特定の具体例において、21〜23ヌクレオチドのsiRNA分子は、3’ヒドロキシル基を含む。
【0110】
本発明のsiRNA分子は、当業者に公知の幾つかの技術を利用して得ることができる。例えば、このsiRNAは、当分野で公知の方法を利用して、化学合成し又は組換えにより生成することができる。例えば、短いセンス及びアンチセンスRNAオリゴマーを合成して、各末端の2ヌクレオチドのオーバーハングを利用してアニールさせて二本鎖RNA構造を形成することができる(Caplen等、(2001) Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 98:9742-9747;Elbashir等、(2001) EMBO J, 20:6877-88)。これらの二本鎖siRNA構造は、その後、直接細胞に、受動的取込みにより又は下記のような選択的送達システムによって導入することができる。
【0111】
ある具体例において、これらのsiRNA構築物は、一層長い二本鎖RNAのプロセッシングによって、例えば、ダイサー酵素の存在下で生成することができる。一具体例においては、キイロショウジョウバエのイン・ビトロの系を利用する。この具体例においては、dsRNAを、キイロショウジョウバエ胚から得られた可溶性抽出物と合わせ、それにより、組合せ物を生成させる。この組合せ物を、dsRNAがプロセッシングを受けて約21〜23ヌクレオチドのRNA分子になる条件化に維持する。
【0112】
これらのsiRNA分子を、当業者に公知の幾つかの技術を利用して精製することができる。例えば、ゲル電気泳動を利用して、siRNAを精製することができる。或は、非変性法(例えば、非変性カラムクロマトグラフィー)を利用して、siRNAを精製することができる。加えて、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、抗体を用いるアフィニティー精製を利用してsiRNAを精製することができる。
【0113】
ある好適具体例において、siRNA分子の少なくとも一つの鎖は、約1〜6ヌクレオチドの長さの3’オーバーハングを有するが、2〜4ヌクレオチドの長さであってよい。一層好ましくは、3’オーバーハングは、1〜3ヌクレオチドの長さである。ある具体例において、一方の鎖は3’オーバーハングを有し、他方の鎖は、鈍端化されているか又はやはりオーバーハングを有している。これらのオーバーハングの長さは、各鎖について同じであっても異なっていてもよい。siRNAの安定性を更に増大させるために、3’オーバーハングを分解に対して安定化させることができる。一具体例において、このRNAを、プリンヌクレオチド例えばアデノシン又はグアノシンヌクレオチドを含有させることによって安定化させる。或は、ピリミジンヌクレオチドの改変類似体による置換、例えばウリジンヌクレオチド3’オーバーハングの2’−デオキシチミジンによる置換は、許容され、RNAiの効率に影響を与えない。2’ヒドロキシルの非存在は、オーバーハングのヌクレオチド耐性を組織培養培地において有意に増大させ、イン・ビボにおいて有益でありうる。
【0114】
他の具体例において、このRNAi構築物は、長い二本鎖RNAの形態である。ある具体例において、このRNAi構築物は、少なくとも25、50、100、200、300又は400塩基である。ある具体例において、このRNAi構築物は、400〜800塩基の長さである。これらの二本鎖RNAは、細胞内で消化されて、例えば、siRNA配列をその細胞内で生成する。しかしながら、長い二本鎖RNAのイン・ビボでの利用は、常に実施可能という訳ではなく、それは、おそらく、配列非依存性のdsRNA応答により引き起こされうる有害作用のためであろう。かかる具体例において、局所的送達システム及び/又はインターフェロン若しくはPKRの影響を低下させる薬剤の利用は、好ましい。
【0115】
ある具体例において、このRNAi構築物は、ヘアピン構造の形態である(ヘアピンRNAと命名する)。これらのヘアピンRNAは、外因的に合成することもできるし、RNAポリメラーゼIIIプロモーターからのイン・ビボ転写によって形成することもできる。哺乳動物細胞における遺伝子サイレンシングのためのかかるヘアピンRNAの製造及び利用の例は、例えば、Paddison等、Genes Dev, 2002, 16:948-58;McCaffrey等、Nature, 2002, 418:38-9;McManus等、RNA, 2002, 8:842-50;Yu等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 2002, 99:6047-52に記載されている。好ましくは、かかるヘアピンRNAは、細胞内又は動物内で加工されて、所望の遺伝子の継続的且つ安定した抑制を保証する。siRNAが細胞内でのヘアピンRNAのプロセッシングにより生成されうるということは当分野では公知である。
【0116】
更に別の具体例においては、プラスミドを利用して、二本鎖RNA(例えば、転写産物として)を送達する。かかる具体例においては、プラスミドは、RNAi構築物のセンス及びアンチセンス鎖の各々の「コード配列」を含むようにデザインされる。これらのコード配列は、例えば逆向きのプロモーターが隣接した同じ配列であってよく、又は別々のプロモーターの転写制御下にある2つの別々の配列であってもよい。コード配列が転写された後で、相補的RNA転写物が対合して二本鎖RNAを形成する。
【0117】
PCT出願WO 01/77350は、真核細胞の同じトランスジーンのセンス及びアンチセンスRNA転写物の両方を生成するための、トランスジーンの二方向転写のための典型的なベクターを記載している。従って、ある具体例において、本発明は、次のユニークな特性を有する組換えベクターを提供する:それは、逆向きに配置されて且つ関心あるRNAi構築物のトランスジーンに隣接する2つの重複する転写ユニットを有するウイルスのレプリコンを含み、ここに、これらの2つの重複する転写ユニットは、センス及びアンチセンス両RNA転写物を同じトランスジーン断片から宿主細胞中で生成する。
【0118】
IV.典型的な配合物
この発明のRNAi構築物は、取込み、分布及び/又は吸収を補助するために、他の分子、分子構造又は化合物と、例えばリポソーム、ポリマー、レセプター標的分子、経口、直腸、局所投与用若しくは他の配合物の混合物と混合し、カプセル封入し、結合体化し又は会合させることができる。主題のRNAi構築物は、やはり透過エンハンサー、キャリアー化合物及び/又はトランスフェクション用薬剤を含む配合物にて提供することができる。
【0119】
かかる取込み、分布及び/又は吸収助成用配合物であって、RNAi構築物(特に、siRNA分子)の送達に適合させることのできる当該配合物の製造方法を教示する代表的な米国特許には、米国特許第5,108,921号;5,354,844号;5,416,016号;5,459,127号;5,521,291号;51543,158号;5,547,932号;5,583,020号;5,591,721号;4,426,330号;4,534,899号;5,013,556号;5,108,921号;5,213,804号;5,227,170号;5,264,221号;5,356,633号;5,395,619号;5,416,016号;5,417,978号;5,462,854号;5,469,854号;5,512,295号;5,527,528号;5,534,259号;5,543,152号;5,556,948号;5,580,575号;及び5,595,756号が含まれるが、これらに限らない。
【0120】
この発明のRNAi構築物は又、製薬上許容しうる塩、エステル又はかかるエステルの塩、或は、動物(ヒトを含む)への投与に際して生物学的に活性な代謝産物又は残基を与えることのできる任意の化合物をも包含する。従って、例えば、この開示は又、RNAi構築物及び製薬上許容しうるsiRNAの塩、かかるRNAi構築物の製薬上許容しうる塩及び他の生物学的同等物に向けられる。
【0121】
製薬上許容しうる塩基付加塩は、金属又はアミンにより形成される(例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属又は有機アミン)。カチオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適当なアミンの例は、N,NI−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジクロロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、及びプロカインである(例えば、Berge等、「Pharmaceutical Salts」J.of Pharma Sci., 1977, 66, 1-19参照)。該酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を十分量の所望の塩基と接触させて、慣用の方法で塩を生成することにより製造される。遊離酸の形態は、塩形態を酸と接触させて遊離酸を慣用の方法で分離することによって再生することができる。遊離酸形態は、それらの各々の塩形態とは、ある種の物理的特性例えば極性溶媒における溶解度において幾分か異なっているが、それ以外は、これらの塩は、本発明の目的に関して、それらの各々の遊離酸と同等である。ここで用いる場合、「製薬上の付加塩」は、この発明の組成物の成分の一つの酸形態の製薬上許容しうる塩を包含する。それらは、これらのアミンの有機酸又は無機酸の塩を包含する。好適な酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。他の適当な製薬上許容しうる塩は、当業者に周知であり、様々な無機及び有機酸の塩基性塩が含まれる。
【0122】
siRNAオリゴヌクレオチドに関して、製薬上許容しうる塩の好適な例には、(a)カチオン例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン例えばスペルミン及びスペルミジンなどから形成される塩;(b)無機酸例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などにより形成される酸付加塩;(c)有機酸例えば酢酸、蓚酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などにより形成される塩;及び(d)元素アニオン例えば塩素、臭素及びヨウ素から形成される塩が含まれるが、これらに限られない。
【0123】
A.超分子複合体
ある具体例において、主題のRNAi構築物は、「超分子複合体」の部分として配合される。更に説明するために、RNAi構築物は、少なくとも一種のポリマーと接触させて複合物を形成することができ、次いで、その複合物のポリマーを、RNAi構築物と多次元ポリマーネットワークとを含む超分子複合体を形成するのに十分な条件下で処理することができる。このポリマー分子は、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。従って、少なくとも二種のポリマー分子のグループは、直鎖、分枝鎖、又は直鎖と分枝鎖ポリマーの混合物であってよい。この複合物は、当分野で公知の任意の適当な手段によって製造することができる。例えば、この複合物は、RNAi構築物をポリマーと、単に接触させ、混合し又は分散させることにより形成することができる。複合物は又、直鎖又は分枝鎖ポリマーを発現構築物の存在下で形成することのできるモノマー(同じであっても異なってもよい)を重合させることによっても製造することができる。この複合物を更に少なくとも一種のリガンドによって改変して、例えば、発現構築物の細胞取込みを指示し或は発現構築物の組織又は細胞へのイン・ビボでの分配を達成することができる。この複合物は、任意の適当な形態をとることができ、好ましくは、粒子の形態である。
【0124】
ある好適具体例において、主題のRNAi構築物は、カチオン性ポリマーと配合される。代表的なカチオン性ポリマーには、ポリ(L)リジン(PLL)及びポリエチレンイミン(PEI)が含まれる。ある好適具体例において、主題の発現構築物は、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)と配合される。βCD−ポリマーは、核酸とポリプレックスを形成して、培養細胞をトランスフェクトすることができる。これらのβCD−ポリマーは、例えばジアミノ−シクロデキストリンモノマーAのジイミデートコモノマーBとの縮合によって合成することができる。シクロデキストリンは、天然のD(+)−グルコピラノース単位をα−(1,4)結合で含む環状多糖類である。最も一般的なシクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンであり、これらは、それぞれ、6、7又は8個のグルコピラノース単位を含む。容易に主題のRNAi構築物の送達用に適合させることのできる代表的なシクロデキストリン送達システムは、例えば、Gonzalez等、PCT出願 WO00/01734及びDavis、PCT出願 WO00/33885に記載されている。
【0125】
ある具体例において、これらの超分子複合体は、粒子に凝集し、例えば、粒子の配合物は、平均直径20〜500ナノメートル(nm)を有し、尚一層好ましくは、20〜200nmを有する。
【0126】
B.他のカチオン性の非脂質配合物
ある具体例において、これらのRNAi構築物は、カチオン性の非脂質ビヒクルにて提供されて、気道からのエアゾール送達において使用するために配合される。ポリ(エチレンイミン)及び巨大分子例えばdsRNA及びdsRNAをコードするプラスミドを用いた配合物は、噴霧療法において、高レベルの肺のトランスフェクション及び増大した安定性を生じうる。PEI−核酸配合物は又、肺に対する高度の特性をも示すことができる。
【0127】
RNAi構築物をPEIと配合することに加えて、この発明は又、シクロデキストリンで改変されたポリマー例えばシクロデキストリンで改変されたポリ(エチレンイミン)の利用をも企図する。ある具体例において、これらの主題のポリマーは、下記式の構造を有する:
【化9】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分又は
【化10】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【0128】
ある具体例において、Rは、窒素原子の少なくとも約1%、一層好ましくは少なくとも約2%、又は少なくとも約3%、最大で約5%又は10%について、シクロデキストリン部分を表し、該窒素原子は、シクロデキストリン部分以外は、第一アミンである(即ち、Hを表す2つのRの出現を有する)。
【0129】
ある具体例において、これらのシクロデキストリン部分は、シクロデキストリンで改変されたポリマーの少なくとも約2重量%、3重量%又は4重量%を構成し、最大で、5重量%、7重量%又は10重量%さえ構成する。
【0130】
ある具体例において、このポリマー中の少なくとも約2重量%、3重量%又は4重量%の、最大で5重量%、7重量%又は10重量%ものエチレンイミンサブユニットが、シクロデキストリン部分によって改変される。
【0131】
シクロデキストリン部分による誘導体化を受けやすい親核アミノ置換基を有するポリ(エチレンイミン)のコポリマーを利用して、本発明の範囲内のシクロデキストリンで改変されたポリマーを製造することもできる。
【0132】
典型的なシクロデキストリン部分は、本質的に7〜9個の糖質部分よりなる環状構造を含む(例えば、シクロデキストリン及び酸化されたシクロデキストリン)。シクロデキストリン部分は、適宜、環状構造とポリマー主鎖との間で共有結合を形成するリンカー部分を含み、該リンカーは、ジカルボン酸誘導体(例えば、グルタル酸誘導体、コハク酸誘導体など)を含むアルキル鎖、及びへテロアルキル鎖例えばオリゴエチレングリコール鎖などの鎖中に好ましくは1〜20原子を有している。
【0133】
C.リポソーム配合物
ある具体例において、この発明は、dsRNA又はdsRNAをコードするプラスミド(リポソームに封入されるか又はリポソームと会合したもの)を含む組成物を提供する。単に説明のために、dsRNA部分又はdsRNAをコードするプラスミドを、ポリカチオン性縮合剤によって縮合し、低イオン強度の水性媒質中に懸濁させて、カチオン性リポソームをカチオン性ビヒクル形成性脂質から形成することができる。リポソームの脂質のプラスミドに対する比を調節して最大のトランスフェクションを達成することができる。その比(nモルリポソーム脂質/μgプラスミド)は、しばしば、5より大きくて25未満であり、好ましくは8より大きくて18未満であり、一層好ましくは10より大きくて15未満であり、最も好ましくは12〜14である。かかる複合体は、好ましくは、実質的に均一な大きさ(即ち、±20%、好ましくは±10%又は一層好ましくは±5%の大きさ)であって、典型的には、約200nm未満であり、好ましくは50〜200nmの範囲にある。
【0134】
リポソームは、ここで用いる場合、典型的に少なくとも一の脂質二分子層で形成された外側の脂質のシェルを有して、水性の内部をカプセル封入する脂質小胞をいう。好適具体例において、これらのリポソームは、約20〜80モルパーセントのカチオン性小胞形成性脂質と残りの天然の小胞形成性脂質及び/又は他の成分からなるカチオン性リポソームである。ここで用いる場合、「小胞形成性脂質」は、リン脂質に代表されるように、疎水性で極性のヘッド基の部分を有し且つそれだけで水中で自然に二分子層小胞を形成することのできる任意の両親媒性脂質をいう。好適な小胞形成性脂質は、ジアシル鎖脂質例えばリン脂質(そのアシル鎖は、典型的には、約14〜22炭素原子の長さであって、変化する不飽和度を有する)である。
【0135】
カチオン性の小胞形成性脂質は、その極性ヘッド基が操作用pH(例えば、pH4〜9)で正味の正の電荷を有するものである。典型的な例には、リン脂質例えばホスファチジルエタノールアミンが含まれ、その極性ヘッド基は、陽性部分例えばリジンによって、例えばL−リジンで誘導体化された脂質DOPE(LYS−DOPE)(Guo,等、1993)について説明されたように誘導体化される。やはりこのケースに含まれるのは、カチオン性ヘッド基を有する糖脂質例えばセレブロシド及びガングリオシドである。
【0136】
他の用いることのできるカチオン性の小胞形成性脂質は、コレステロールアミン及び関連するカチオン性ステロールである。典型的なカチオン性脂質には、1,2−ジオレリルオキシ−3−(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP);N−[1−(2,3−ジテトラデシルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE);N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);3β[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモリ]コレステロール(DC−Chol);及びジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)が含まれる。
【0137】
リポソームの残りは、中性の小胞形成性脂質(正味の電荷を有しない小胞形成性脂質を意味する)より形成され、又は極性ヘッド基に負の電荷を有する脂質の少ないパーセンテージを含むことができる。このクラスの脂質に含まれるのは、リン脂質例えばホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、及びスフィンゴミエリン(SM)及びコレステロール、コレステロール誘導体及び他の非帯電ステロールである。
【0138】
上記の脂質は、市販されており、又は公開された方法によって製造することができる。この発明に含まれる他の脂質は、糖脂質例えばセレブロシド及びガングリオシドである。
【0139】
この発明の一具体例において、dsRNA又はdsRNAをコードするプラスミド−リポソーム複合体は、このプラスミド/リポソーム複合体の血液循環時間を延ばすのに有効な親水性ポリマー鎖の表面コーティングを有するリポソームを包含する。適当な親水性ポリマーには、シクロデキストリン(CD)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、及び誘導体化セルロース例えばヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースが含まれる。好適な親水性ポリマー鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)であり、分子量500〜10,000ダルトンを有するPEG鎖が好ましく、一層好ましくは、1,000〜5,000ダルトンである。この親水性ポリマーは、水及び非水性溶媒例えばクロロホルムに溶解性であってよい。
【0140】
このコーティングは、好ましくは、小胞形成性脂質にリン脂質又は他のジアシル鎖脂質(ヘッド基にて、ポリマー鎖により誘導体化したもの)を含有させることにより調製する。かかる脂質を製造しポリマーでコートされたリポソームを形成する代表的な方法は、米国特許第5,013,556号及び5,395,619号(これらを参考として本明細書中に援用する)に記載されている。
【0141】
親水性ポリマーは、安定に脂質と結合させることができるし、又はポリマーでコートされたリポソーム複合体が血流中を循環している間に又は標的部位に局在化した後に親水性ポリマーコーティングを落し若しくは「放出する」ことを可能にする不安定な結合によって結合させることもできるということは認められよう。親水性ポリマーの特にポリエチレングリコール(PEG)の小胞形成性脂質への、刺激に応答してポリマー鎖を放出するのに効果的な結合による付着は、例えば、WO 98/16202、WO 98/16201(これらを参考として本明細書中に援用する)及びKirpotin, D.等(FEBS Letters, 388:115-118(1996))により記載されている。
【0142】
この放出可能な結合は、一具体例において、化学的に放出可能な結合であって、それは適当な放出剤の投与により開裂され又は選択的生理的条件下例えば酵素若しくは還元剤の存在下で開裂される。例えば、エステル結合及びペプチド結合は、酵素エステラーゼ又はペプチダーゼによって開裂される。ジスルフィド結合は、還元剤例えばグルタチオン又はアスコルベートの投与により、又はイン・ビボで存在する還元剤例えばシステイン(血漿中又は細胞内に存在する)によって開裂される。
【0143】
他の放出可能な結合には、pH感受性の結合及びグルコース、光又は熱にさらされると開裂する結合が含まれる。例として、親水性ポリマー鎖を、pH感受性の結合によってリポソームに結合することができ、プラスミド−リポソーム複合体は、その結合を開裂させて親水性鎖を放出させるのに有効なpHを有する部位例えば腫瘍領域を標的としている。代表的なpH感受性結合には、アシルオキシアルキルエーテル、アセタール及びケタール結合が含まれる。他の例は、開裂可能な結合がジスルフィド結合である場合であり、該結合は、本明細書においては、広く硫黄含有結合を指すことを意図している。硫黄含有結合は、選択した程度の不安定さを達成するために合成することができ、ジスルフィド結合、混合されたスルフィド−スルホン結合及びスルフィド−スルホキシド結合を含むことができる。これら3種類の結合の内で、ジスルフィド結合は、少なくともチオ開裂を受けやすく、ジスルフィド−スルホキシド結合は、最も受けやすい。
【0144】
かかる放出可能な結合は、親水性ポリマー断片のリポソーム複合体からの放出速度を調整するのに有用である。例えば、非常に不安定なジスルフィド結合を、血液細胞又は内皮細胞へのターゲティングのために利用することができる(何故なら、これらの細胞は、利用しやすく且つ一層短いリポソームの血液循環寿命で十分であるから)。逆に、長く続く又は丈夫なジスルフィド結合は、標的が、複合体の所望の標的への到達に一層長いリポソームの血液循環寿命を一般に必要とする腫瘍組織又は他の臓器である場合に利用することができる。
【0145】
親水性ポリマー鎖をリポソームに結合させる放出可能な結合は、典型的には、イン・ビボで、環境の変化の結果例えばリポソームが僅かに低いpHを有する特定の部位(腫瘍組織の領域など)又は還元条件を有する部位(低酸素腫瘍など)に達した場合に開裂される。イン・ビボでの還元条件は又、還元剤例えばアスコルベート、システイン又はグルタチオンの投与によっても達成されうる。この開裂可能な結合は又、光又は熱などの外部からの刺激に応答しても切断されうる。
【0146】
他の具体例において、これらのリポソーム複合体は、治療を企図した標的細胞に対する特異的結合に有効なアフィニティー部分又はターゲティングリガンドを含有する。かかる部分は、リポソームの表面又は親水性ポリマー鎖の遠位末端に結合することができる。典型的な部分には、抗体、標的細胞表面レセプターに対する特異的結合のためのリガンドなど(例えば、PCT出願番号WO US94/03103、WO 98/16202及びWO 98/16201に記載されている)が含まれる。該部位は又、複合体の標的細胞との融合を容易にするように疎水性断片であってもよい。
【0147】
dsRNA及びdsRNAをコードするプラスミドを縮合するために用いるポリカチオン性縮合剤は、多く帯電したカチオン性ポリマーであってよく、好ましくはバイオポリマー例えばスペルミジン、スペルミン、ポリリジン、プロタミン、全ヒストン、特定のヒストン画分例えばH1、H2、H3、H4及び他のポリカチオン性ポリペプチドであるが、ポリミキシンBなどの生体適合性ポリマーをも含むことができる。これらのポリカチオン性縮合剤が遊離の塩基又は塩の形態(例えば、プロタミンサルフェート及びポリリジンヒドロブロミド)において利用できるということは認められよう。好適具体例において、ポリカチオン性縮合剤は、ヒストンであり、これは、本明細書で言及する場合には、全ヒストン又は特定のヒストン画分を包含する。
【0148】
ある具体例においては、ポリマー−脂質結合体中の疎水性断片は、疎水性ポリペプチド配列である。好ましくは、このポリペプチド配列は、約5〜80の、一層好ましくは10〜50の、最も好ましくは20〜30の、非極性で且つ/又は脂肪族/芳香族アミノ酸残基よりなる。これらの配列は、ある種のエンベロープを有するウイルスの宿主細胞との融合を開始させることにおいて活性であり、パラインフルエンザウイルス例えばセンダイ、シミアンウイルス−5(SV5)、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)及び呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)を含む。他の例は、ヒトのレトロウイルス例えばヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)(ウイルスエンベロープの宿主細胞の原形質膜との融合によって細胞に感染するAIDSの原因因子)を含む。融合は、生理的pH(即ち、中性)で起き、続いて、ウイルスの遺伝物質(ヌクレオキャプシッド)の宿主細胞質区画への注入が起きる。
【0149】
D.リガンド指向性配合物
ある具体例において、主題の発明の超分子複合体及びリポソームは、標的細胞上の特異的細胞表面タンパク質又はマトリクスに対する結合に有効な少なくとも一種のリガンドと会合することができ、それにより、複合体の標的細胞への封鎖を容易にし、例えば、RNAi構築物の細胞による取込みを増大させる。単に説明のために、本発明の超分子複合体及びリポソームの特定の細胞型へのターゲティングにおける利用に適したリガンドの例を下記の表に列記する。
【0150】
【表1】

【0151】
E.呼吸可能なRNAi構築物
この発明の他の面は、RNAi構築物の気道への送達のためのエアゾールを提供する。この気道には、中咽頭及び喉頭を含む上気道とそれに続く下気道(気管とそれに続く気管支への分岐点及び呼吸細気管支を含む)が含まれる。これらの上下気道は、通道性気道と呼ばれる。末端の呼吸細気管支は、その後、呼吸呼吸細気管支へと分かれ、それは、最終的に呼吸域である肺胞(即ち、深部肺)に達する。
【0152】
ここでは、吸入による投与は、経口及び/又は経鼻であってよい。エアゾール送達のための薬学的デバイスの例には、投与量を計量する吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、及びエアジェット噴霧器が含まれる。主題のRNAi構築物の送達のために容易に適合させることのできる典型的な吸入による核酸送達システムは、例えば、米国特許第5,756,353号;5,858,784号;及びPCT出願WO98/31346;WO98/10796;WO00/27359;WO01/54664;WO02/060412に記載されている。他の二本鎖RNAの送達に利用できるエアゾール配合物は、米国特許第6,294,153号;6,344,194号;6,071,497号;及びPCT出願WO02/066078;WO02/053190;WO01/60420;WO00/66206に記載されている。更に、RNAi構築物を送達する方法は、他のオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)の吸入による送達に利用されているもの例えばTemplin等、Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2000, 10:359-68;Sandrasagra等、Expert Opin Biol Ther, 2001, 1:979-83;Sandrasagra等、Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2002, 12:177-81に記載されたものから適合させることができる。
【0153】
ヒトの肺は、加水分解により開裂しうる付着したエアゾルを除去し又は迅速に分解することが、数分から数時間にわたってできる。上気道においては、繊毛上皮が、気道から口へ粒子を掃き出す「粘膜繊毛除去」に寄与している。Pavia, D.,「LungMucociliary Clearance」(Aerosols and the Lung: Clinical and Experimental Aspects, Clarke, S. W.及びPavia, D.編、Butterworths, London, 1984)。深部肺においては、肺胞マクロファージが、粒子を、それらの付着後すぐにファゴサイトーシスにより貪食することができる(Warheit等、Microscopy Res. Tech., 26:412-422 (1993);及びBrain, J.D., 「Physiology and Pathophysiology of Pulmonary Macrophages」(The Reticuloendothelial System, S.M. Reichard及びJ. Filkins,編、Plenum, New. York, pp.315-327, 1985))。この深部肺又は肺胞は、RNAi構築物の全身性送達のために吸入された治療用エアゾルの第1の標的である。
【0154】
好適具体例において、特にRNAiの全身投与が望まれる場合に、エアゾル化RNAi構築物を微粒子として配合する。0.5〜10ミクロンの直径を有する微粒子は、殆どの天然のバリアーを通り抜けて、肺に浸透する。10ミクロン未満の直径は、のどを迂回するのに必要であり;0.5ミクロン以上の直径は、吐き出されるのを回避するのに必要である。
【0155】
ある好適具体例において、主題のRNAi構築物は、上記のように超分子複合体に配合され、該構築物は、0.5〜10ミクロンの直径を有して、直径0.5〜10ミクロンの粒子に凝集されうる。
【0156】
他の具体例において、主題のRNAi構築物は、肺送達のために適当に配合されたリポソーム又は超分子複合体(上記のようなもの)にて供給される。
【0157】
(i)微粒子を形成するためのポリマー
上記の超分子複合体に加えて、幾つかの他のポリマーも、微粒子を形成するために利用することができる。ここで用いる場合、用語「微粒子」は、ミクロスフェア(一様な球体)、マイクロカプセル(コアと外側のポリマーの層とを有する)、及び不規則形状の粒子を包含する。
【0158】
ポリマーは、好ましくは、RNAi構築物の放出が望まれる期間内で又は放出後比較的短期間において生物分解性である(一般に、一年以内、一層典型的には数ヶ月、尚一層典型的には数日から数週間)。生物分解は、微粒子の崩壊(即ち、微粒子を形成するポリマーの及び/又はポリマー自体の解離)を指すことができる。これは、粒子が投与されるキャリアーから放出部位のpHへのpHの変化の結果として起こりうる(ジケトピペラジンの加水分解の場合)、加水分解(ポリ(ヒドロキシ酸)の場合)、微粒子外のカルシウムなどのイオンの分散(アルギネートなどのポリマーのイオン結合により形成された微粒子の場合)及び酵素作用(多くの多糖類及びタンパク質の場合)によって起こりうる。幾つかの場合に、直線的放出は、最も有用でありうる(他において、パルス放出又は「バルク放出」は、一層効果的な結果を与えうるけれども)。
【0159】
代表的な合成材料は:ジケトピペラジン、ポリ(ヒドロキシ酸)例えばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)及びこれらのコポリマー、ポリ無水物、ポリエステル例えばポリオルトエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニル化合物例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハリド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、及びポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリシロキサン、アクリル酸及びメタクリル酸のポリマー{ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリウレタン及びこれらのコポリマーを含む}、セルロース{アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、及びセルロースサルフェートナトリウム塩、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、及びポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)を含む}である。
【0160】
天然ポリマーは、アルギネート及び他の多糖類(デキストラン及びセルロースを含む)、コラーゲン、アルブミン及び他の親水性タンパク質、ゼインその他のプロラミン及び疎水性タンパク質、これらのコポリマー及び混合物を含む。ここで用いる場合、これらの化学的誘導体は、化学基例えばアルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、及び他の当業者が日常的に行なう改変を指す。
【0161】
生体粘着性ポリマーは、H.S. Sawhney, C.P. Pathak及びJ.A. Hubell(Macromolecules,1993, 26, 581-587)に記載された生体腐食性ヒドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルティン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン及びポリアクリレートを包含する。
【0162】
更に説明するために、これらのマトリクスは、これらのポリマーから溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当業者に公知の他の方法によって形成することができる。薬物送達のためのミクロスフェアを製作するために開発された方法は、文献例えばMathiowitz及びLanger, J.Controlled Release 5,13-22(1987);Mathiowitz等、Reactive Polymers 6,275-283 (1987);及びMathiowitz等、J.Appl.Polymer Sci. 35,755-774(1988)に記載されている。この方法の選択は、例えば、Mathiowitz等、Scanning Microscopy 4,329-340(1990);Mathiowitz等、J.Appl.Polymer Sci. 45,125-134(1992);及びBenita等、J.Pharm.Sci.73,1721-1724(1984)に記載されたように、ポリマーの選択、サイズ、外形、及び所望の結晶化度に依存している。
【0163】
例えば、Mathiowitz等、(1990), Benita,及びJaffeの米国特許第4,272,398号に記載された溶媒蒸発において、ポリマーは、揮発性有機溶媒に溶解される。RNAi構築物を、溶解形態で又は微粒子として懸濁させて、ポリマー溶液に加え、この混合物を、ポリ(ビニルアルコール)などの界面活性剤を含む水相中に懸濁させる。その結果生成したエマルジョンを、殆どの有機溶媒が固体のミクロスフェアを残して蒸発するまで攪拌する。
【0164】
一般に、このポリマーは、メチレンクロリドに溶解することができる。様々な異なるポリマー濃度(例えば、0.05〜0.20g/ml)を用いることができる。薬物を溶液に加えた後で、その溶液を、激しく攪拌している1%(w/v)ポリ(ビニルアルコール)(Sigma Chemical Co., ミズーリ、St. Louis在)を含む蒸留水200mlに懸濁させる。4時間の攪拌の後に、有機溶媒はポリマーから蒸発しており、その結果生成したミクロスフェアを水で洗って一晩凍結乾燥機内で乾燥させる。
【0165】
ポリエステル及びポリスチレンなどの比較的安定なポリマーについて有用なこの方法によって、異なるサイズ(1〜1000ミクロン、但しエアゾル用途には10ミクロン未満)及び形態のミクロスフェアを得ることができる。しかしながら、ポリ無水物などの不安定なポリマーは、水にさらされることにより分解されうる。これらのポリマーについては、高温溶融カプセル封入及び溶媒除去が好適でありうる。
【0166】
高温溶融カプセル封入において、このポリマーは、先ず溶融させてから、RNAi構築物の固体粒子と混合し、好ましくは、適当なサイズにふるいわけする。この混合物を不混和性溶媒例えばシリコン油に懸濁させて、連続的に攪拌しながら該ポリマーの融点より5℃高い温度に加熱する。一度エマルジョンが安定化したら、それを、ポリマー粒子が凝固するまで冷却する。その結果生成したミクロスフェアを、石油エーテルを用いるデカンテーションによって洗って、さらさらした粉末を与える。この方法によって1〜1000ミクロンの直径を有するミクロスフェアを得ることができる。この技術により製造した球体の外表面は、通常、滑らかであり且つ密である。この手順は、水に不安定なポリマーに有用であるが、分子量1000〜50000を有するポリマーに使用が限られる。
【0167】
噴霧乾燥においては、このポリマーを、有機溶媒例えばメチレンクロリド(0.04g/ml)に溶解させる。既知量のRNAi構築物を、このポリマー溶液に懸濁させ(不溶性の場合)又は一緒に溶解させる(可溶性の場合)。この溶液又は分散液を、次いで、噴霧乾燥する。ポリマーの選択に依存する形態の直径0〜10ミクロンの範囲のミクロスフェアを得ることができる。
【0168】
ゲル型ポリマー例えばアルギネート又はポリホスファジン又は他のジカルボン酸ポリマーからなるヒドロゲルミクロスフェアを、このポリマーを水溶液に溶解させ、混合物に組み込ませるべき材料を懸濁させ、そしてそのポリマー混合物を窒素ガスジェットを備えた微小滴形成装置を通して押し出すことによって製造することができる。その結果生成したミクロスフェアは、例えば、Salib等、Pharmazeutische Industrie 40-111A, 1230 (1978)により記載されたように、ゆっくりと攪拌しているイオン性硬化浴に落ちる。このシステムの利点は、ミクロスフェアの表面を、例えば、Lim等、J.Pharm.Sci. 70, 351-354 (1981)に記載されたように、製造後に、ポリカチオン性ポリマー例えばポリリジンでコートすることによって更に改変する能力である。例えば、アルギネートの場合、ヒドロゲルは、アルギネートをカルシウムイオンによってイオン的に架橋し、次いで、微粒子の外表面を、製造後に、ポリカチオン例えばポリリジンで架橋することにより形成することができる。このミクロスフェア粒子のサイズは、様々なサイズの押出機、ポリマー流量及びガス流量を用いて制御されよう。
【0169】
このポリマーを酸性溶液に溶解させて、トリポリホスフェートで架橋することにより、キトサンミクロスフェアを製造することができる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)ミクロスフェアを、このポリマーを酸溶液に溶解させて、ミクロスフェアを鉛イオンによって沈殿させることにより製造することができる。アルギネート/ポリエチレンイミン(PEI)は、アルギネートマイクロカプセル上のカルボキシル基の量を低減させるように製造することができる。
【0170】
(ii)医薬組成物
これらの微粒子を、患者への投与のために任意の適当な製薬用キャリアー例えば塩溶液に懸濁させることができる。最も好適な具体例において、これらの微粒子は、投与直前まで乾燥又は凍結乾燥形態で貯蔵される。それらを、次いで、エアゾルとしての投与のために十分な溶液例えば水溶液に懸濁させ又は乾燥粉末として投与することができる。
【0171】
(iii)標的を定めた投与
これらの微粒子は、特異的な細胞(特に、貪食性の細胞)及び臓器に送達することができる。パイエル板内の貪食性の細胞は、経口投与された微粒子を選択的に取り込むようである。細網内皮系の貪食性細胞も又、静脈投与された場合に、微粒子を取り込む。微粒子の肺におけるマクロファージによるエンドサイトーシスを利用して、それらの微粒子を、脾臓、骨髄、肝臓及びリンパ節に標的を定めて送達することができる。
【0172】
これらの微粒子は又、特定の標的に特異的に又は非特異的に結合する上記のようなリガンドの結合によっても標的を定めて送達することができる。かかるリガンドの例には、抗体及びその可変領域を含む断片、レクチン、及び標的細胞の表面にレセプターを有するホルモンその他の有機分子も含まれる。
【0173】
(iv)微粒子の貯蔵
好適具体例において、これらの微粒子は、凍結乾燥して貯蔵される。その投薬量は、カプセル封入されたRNAi構築物の量、肺系内での放出速度、及びこの化合物の薬物速度論によって決定される。
【0174】
(v)微粒子の送達
これらの微粒子は、該粒子の幾らかが肺系に到達するような鼻通路への直接投与から、粉末注入装置の利用、気道まで達するカテーテル又は管の利用までの様々な方法を利用して送達することができる。乾燥粉末吸入器は市販されているが、炭化水素噴射剤を利用するものはもはや用いられておらず、患者の呼吸の吸い込みに依存するものは一定しない投与量を生じうる。適当な噴射剤の例には、ヒドロフルオロアルカン噴射剤例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CF3CH2F)(HFA−134a)及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(CF3CHFCF3)(HFA−227)、ペルフルオロエタン、モノクロロイフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン及びこれらの組合せが含まれる。
【0175】
F.RNAi構築物の放出のための医用デバイスコーティング
この発明の他の面は、コートされた医用デバイスに関係する。例えば、ある具体例において、主題の発明は、少なくとも一つの面に付着されたコーティングを有する医用デバイスであって、そのコーティングが、主題のポリマーマトリクス及びRNAi構築物を含む当該医用デバイスを提供する。かかるコーティングは、外科用器具例えばスクリュー、プレート、ワッシャー、縫合糸、補綴留め具、留め鋲、ステープル、電気導線、バルブ、膜に適用することができる。これらのデバイスは、カテーテル、移植用血管出入口、血液貯蔵用バッグ、血管、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管移植片、大動脈バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、生体外デバイス、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿搬出ユニット、及び血管内の分散のために適合させたフィルターであってよい。
【0176】
本発明による幾つかの具体例において、ポリマーを形成するためのモノマーを、RNAi構築物と合わせて、混合してRNAi構築物のモノマー溶液中の均一な分散を生成する。この分散を、次いで、ステント又は他のデバイスに慣用のコーティング工程によって適用し、その後、架橋工程を慣用の開始剤例えばUV光によって開始する。本発明による他の具体例においては、ポリマー組成物をRNAi構築物と合わせて分散を形成する。この分散を、次いで、医用デバイスの表面に適用して、このポリマーを架橋させて固体のコーティングを形成する。本発明による他の具体例においては、ポリマーとRNAi構築物を適当な溶媒と合わせて分散を形成し、次いで、それをステントに慣用の方法で適用する。次いで、その溶媒を慣用の工程例えば熱蒸発によって除去し、その結果ポリマーとRNAi構築物(一緒に、持続的放出用の薬物送達システムを形成する)がステント上にコーティングとして残る。RNAi構築物がポリマー組成物に溶解している場合にも、同様の方法を用いることができる。
【0177】
本発明による幾つかの具体例において、このシステムは、比較的硬いポリマーを含む。他の具体例においては、このシステムは、軟らかく展性のポリマーを含む。更に別の具体例においては、このシステムは、接着性を有するポリマーを含む。このポリマーの硬さ、弾力性、粘着性、及び他の特性は、以下で一層詳細に論じるように、システムの特定の最終的な物理的形態によって多いに変化しうる。
【0178】
本発明によるシステムの具体例は、多くの異なる形態をとる。幾つかの具体例において、このシステムは、ポリマー中に懸濁され又は分散されたRNAi構築物からなる。ある別の具体例においては、このシステムは、RNAi構築物と半固体又はゲル状ポリマーからなり、これは、注射器から身体内へ注射されるように適合される。本発明による他の具体例において、このシステムは、RNAi構築物と軟らかい可撓性のポリマーからなり、これは、適当な外科的方法によって身体へ挿入又は移植されるように適合される。本発明による尚更なる具体例において、このシステムは、硬い、固体のポリマーからなり、これは、適当な外科的方法に依って身体に挿入され又は移植されるように適合される。更なる具体例において、このシステムは、RNAi構築物を懸濁又は分散させて有するポリマーを含み、ここに、このRNAi構築物及びポリマー混合物は、スクリュー、ステント、ペースメーカーなどの外科的器具上にコーティングを形成する。本発明による特定の具体例において、このデバイスは、硬い、固体のポリマーからなり、それは、外科的器具例えばスクリュー、プレート、ステントなど、又はこれらのある部分の形態に形作られる。本発明による他の具体例において、このシステムは、RNAi構築物を内部に分散又は懸濁させた縫合糸の形態のポリマーを含む。
【0179】
本発明による幾つかの具体例において、表面例えば外表面及びその外表面上のコーティングを有する基体を含む医用デバイスを提供する。このコーティングは、ポリマー及び該ポリマー中に分散されたRNAi構築物を含み、該ポリマーは、RNAi構築物を透過させ又は生物分解性であって該RNAi構築物を放出する。本発明によるある具体例において、このデバイスは、RNAi構築物を適当なポリマー中に懸濁又は分散させて含み、該RNAi構築物及びポリマーは、基体(例えば、外科用器具)全体にコーティングされる。かかるコーティングは、スプレーコーティング又はディップコーティングによって達成することができる。
【0180】
本発明による他の具体例において、このデバイスは、RNAi構築物とポリマー懸濁液又は分散液を含み、このポリマーは、硬くて身体に挿入又は移植されるべきデバイスの構成部分を形成する。例えば、本発明の特定の具体例において、このデバイスは、このポリマー中に懸濁又は分散させたRNAi構築物でコートされた外科用スクリュー、ステント、ペースメーカーなどである。本発明の他の特定の具体例において、このRNAi構築物が懸濁されたポリマーは、外科用スクリューのチップ若しくはヘッド又はそれらの部分を形成する。本発明の他の具体例において、このRNAi構築物が懸濁又は分散されたポリマーは、外科用器具例えば外科用管類(例えば、結腸フィステル形成術、腹腔洗浄、カテーテル及び静脈用チューブ)上にコーティングされる。本発明の尚更なる具体例において、このデバイスは、このポリマー及びRNAi構築物をコーティングされて有する静脈用の針である。
【0181】
上記のように、本発明のコーティングは、生物腐食性の又は非生物腐食性のポリマーを含む。生物腐食性ポリマーと非生物腐食性ポリマーの選択は、このシステム又はデバイスの意図される最終用途に基づいてなされる。本発明の幾つかの具体例においては、このポリマーは、有利には、生物腐食性である。例えば、このシステムが、外科的移植用デバイス例えばスクリュー、ステント、ペースメーカーなどのコーティングである場合、このポリマーは、有利には、生物腐食性である。このポリマーが有利には生物腐食性である本発明の他の具体例は、移植可能な、吸入可能な又は注射可能なRNAi構築物の、ポリマー中の懸濁又は分散であるデバイスを含み、更なる要素(スクリュー又は留め具など)は用いられない。
【0182】
このポリマーの透過性及び生物腐食性が乏しい本発明の幾つかの具体例において、該ポリマーの生物腐食速度は、有利には、RNAi構築物の放出速度より十分に遅く、それで、該ポリマーは、RNAi構築物が放出された後、相当な期間同じ場所に残っているが、最終的には、生物腐食を受けて周囲の組織に吸収される。例えば、このデバイスが、RNAi構築物を生物腐食性ポリマーに懸濁又は分散させて含む生物腐食性の縫合糸である場合、該ポリマーの生物腐食速度は、有利には、RNAi構築物が約3〜14日にわたって直線的様式で放出されるだけ十分に遅いものであるが、該縫合糸は、約3週間から6ヶ月の期間にわたって存続する。本発明による同様のデバイスには、RNAi構築物を生物腐食性ポリマーに懸濁又は分散させて含む外科用ステープルが含まれる。
【0183】
本発明の他の具体例において、このポリマーの生物腐食速度は、有利には、RNAi構築物放出速度と同じオーダーである。例えば、このシステムが、整形外科用スクリュー、ステント、ペースメーカー又は非生物腐食性縫合糸などの外科用器具にコートされるポリマー中に懸濁又は分散されたRNAi構築物を含む場合、このポリマーは、有利には、周囲の身体の組織に直接さらされるRNAi構築物の表面積が実質的に経時的に一定に保たれるような速度で生物腐食する。
【0184】
本発明の他の具体例において、このポリマービヒクルは、周囲の組織中の水即ち血漿を透過させる。かかる場合には、水溶液は、このポリマーを透過することができ、それにより、RNAi構築物と接触する。溶解速度は、ポリマーの透過性、RNAi構築物の溶解度、生理的液体のpH、イオン強度及びタンパク質組成などの変数の複雑なセットによって支配されうる。
【0185】
本発明の幾つかの具体例において、このポリマーは、非生物腐食性である。非生物腐食性ポリマーは、システムが、身体に永久的に又は半永久的に挿入又は移植されるように適合される外科用器具の構成部分にコートされること、又は該部分を形成することを意図するポリマーを含む場合に、特に有用である。このポリマーが外科用器具上に永久的コーティングを有利に形成する典型的デバイスには、整形外科用スクリュー、ステント、補綴関節、人工弁、永久縫合糸、ペースメーカーなどが含まれる。
【0186】
経皮的内腔貫通冠状動脈形成術後に利用することのできる様々な異なるステントがある。本発明に従って、任意の数のステントを利用することができるが、簡単のために、本発明の典型的実施例においては、制限された数のステントを記載する。当業者は、任意の数のステントを本発明と共に利用することができることを認めるであろう。更に、上記のように、他の医用デバイスを利用することができる。
【0187】
ステントは、一般に、閉塞を救済ために管の内腔に残される管状構造として用いられる。一般に、ステントは、非拡張形態で内腔に挿入されてから、自律的に拡張するか又は、現場で第二のデバイスの助成により拡張する。拡張の典型的方法は、血管壁の構成要素と関連する閉塞を剪断して破壊して拡大された内腔を得るために、狭窄した血管内又は身体の通路内でふくらませるカテーテル装着血管形成用バルーンの利用によるものである。
【0188】
本発明のステントは、任意の数の方法を利用して製造することができる。例えば、このステントは、レーザー、放電フライス削り、化学的エッチング又は他の手段を利用して機械加工することのできる中空の又は成形されたステンレス鋼管から製造することができる。このステントは、身体に挿入されて、所望の部位に未拡張形態で置かれる。一つの典型的具体例において、拡張は、血管内においてバルーンカテーテルによって達成することができ、ステントの最終的な直径は、用いたバルーンカテーテルの直径の関数である。
【0189】
本発明によるステントは、形状記憶金属例えば適当なニッケルとチタン又はステンレス鋼との合金にて具体化されうるということは認められるべきである。
【0190】
ステンレス鋼から形成された構造は、そのステンレス鋼を予め決めた仕方で形成することによって、例えば編まれた配置にねじることによって、自己拡張するように作ることができる。この具体例において、ステントが形成された後で、それを挿入手段によって血管又は他の組織への挿入を可能にするだけ十分に小さい空間を占めるように圧縮することができ、該挿入手段には、適当なカテーテル又は可撓性の棒が含まれる。
【0191】
カテーテルから明らかとなるように、このステントは、所望の配置に拡張するように配置させることができ、該拡張は、自動的に起き又は圧力、温度若しくは電気刺激によって開始される。
【0192】
このステントのデザインに無関係に、障害部位において有効な投薬量を与えるだけ十分な特異性及び十分な濃度を有して適用されたRNAi構築物を有することは好ましい。この点で、このコーティングにおける「貯蔵規模」は、好ましくは、このRNAi構築物を所望の位置に所望の量で十分に適用するようなものとする。
【0193】
別の典型的な具体例において、このステントの全ての内表面及び外表面を、治療的投薬量のRNAi構築物でコートすることができる。しかしながら、コーティング技術は、RNAi構築物によって変化しうることに注意することは重要である。コーティング技術は又、ステント又は他の管腔内医用デバイスを構成する材料によっても変化しうる。
【0194】
この管腔内医用デバイスは、持続的放出用の薬物送達用コーティングを含む。RNAi構築物のコーティングは、慣用のコーティング工程(例えば、含浸コーティング、スプレーコーティング及びディップコーティング)によってステントに適用することができる。
【0195】
一具体例において、管腔内医用デバイスは、管腔内表面及び反対の外表面(ステントの長軸に沿って伸びる)を有する細長い半径方向に拡張しうる管状ステントを含む。このステントには、永久移植用ステント、移植可能なグラフテッドステント又は一時的ステントが含まれうる(一時的ステントは、血管内に伸長させることができ、その後引込めることのできるステントとして定義される)。ステントの外形は、コイル型ステント、メモリーコイルステント、ニチノールステント、メッシュステント、足場ステント、スリーブステント、透過性ステント、温度センサーを有するステント、多孔性ステントなどを含むことができる。このステントは、慣用の方法論によって配備することができ、例えば、可膨張性バルーンカテーテルにより、自己配備機構により(カテーテルからの放出後)、又は他の適当な手段によって配備することができる。この細長い半径方向に拡張可能な管状ステントは、グラフテッドステントであってよく、同ステントは、移植片の内側又は外側にステントを有する複合デバイスである。この移植片は、血管移植片例えばePTFE移植片、生物学的移植片又は織られた移植片であってよい。
【0196】
このRNAi構築物は、多くの方法でステントに組み込み又は添付することができる。典型的具体例においては、このRNAi構築物は、ポリマーマトリクスに直接組み込まれ、ステントの外表面上にスプレーされる。このRNAi構築物は、ポリマーマトリクスから経時的に溶出して周囲の組織に入る。このRNAi構築物は、好ましくは、ステント上に少なくとも3日間から最長で約6ヶ月間、一層好ましくは7〜30日間留まる。
【0197】
ある具体例において、本発明のポリマーは、RNAiを透過させる任意の生物学的に許容されるポリマーを含み、透過性を有するが、それは、RNAi構築物のポリマーからの放出速度における主たる速度決定因子ではない。
【0198】
本発明の幾つかの具体例において、このポリマーは、非生物腐食性である。本発明で有用な非生物腐食性ポリマーの例には、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)(EVA)、ポリビニルアルコール及びポリウレタン例えばポリカーボネートベースのポリウレタンが含まれる。本発明の他の具体例においては、このポリマーは、生物腐食性である。本発明で有用な生物腐食性ポリマーの例には、ポリ無水物、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルシアノアクリレート又はこれらの誘導体及びコポリマーが含まれる。当業者は、生物腐食性又は非生物腐食性のポリマーの選択は、以下で非常に詳細に説明するように、このシステムの最終的な物理的形態に依るということを認めるであろう。他の典型的なポリマーには、ポリシリコーン及びヒアルロン酸から誘導されたポリマーが含まれる。当業者は、本発明のポリマーが、RNAi構築物のポリマーからの放出において主たる速度決定因子ではないように透過性を付与するのに適した条件下で製造されるということを理解するであろう。
【0199】
その上更に、適当なポリマーには、天然の(コラーゲン、ヒアルロン酸など)又は体液及び哺乳動物の組織と適合性で、該ポリマーが接触する体液に本質的に不溶性の合成材料が含まれる。加えて、適当なポリマーは、本質的に、該ポリマー中に分散/懸濁されたRNAi構築物と体液中のタンパク質様物質との間の相互作用を阻止する。体液に迅速に溶解するポリマー又は高度に溶解性の、又はRNAi構築物とタンパク質様成分との間の相互作用を許すポリマーの利用は、ポリマーの溶解又はタンパク質様成分との相互作用が薬物放出の定常性に影響をあたえるので、ある場合には回避すべきである。
【0200】
他の適当なポリマーには、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンビニルアセテート(PVA又はEVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリカルボン酸、ポリアルキルアクリレート、セルロースエーテル、シリコーン、ポリ(dl−ラクチド−コグリコリド)、様々なEudragrit(例えば、NE30D、RS PO及びRL PO)、ポリアルキル−アルキルアクリレートコポリマー、ポリエステル−ポリウレタンブロックコポリマー、ポリエーテル−ポリウレタンブロックコポリマー、ポリジオキサノン、ポリ−(β−ヒドロキシブチレート)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸及びPEO−PLAコポリマーが含まれる。
【0201】
本発明のコーティングは、少なくとも一種の適当なモノマーと適当なRNAi構築物とを混合してから該モノマーを重合させてポリマー系を形成することにより形成されうる。この方法において、RNAi構築物は、ポリマーに溶解され又は分散される。他の具体例においては、このRNAi構築物を、脂質ポリマー又はポリマー分散中に混合してから、そのポリマーを更に処理してこの発明のコーティングを形成する。適当な更なる処理には、適当な架橋用RNAi構築物による架橋、液体ポリマー又はポリマー分散の更なる重合、適当なモノマーとの共重合、適当なポリマーブロックとのブロック共重合などが含まれる。この更なる処理は、RNAi構築物をポリマー中にトラップし、それで、RNAi構築物は、ポリマービヒクル中に懸濁され又は分散される。
【0202】
任意の数の非腐食性ポリマーを、このRNAi構築物と共に用いることができる。この適用におけるコーティングで用いることのできるフィルム形成性ポリマーは、吸収性であってもなくてもよいが、血管壁への刺激を最小にするように生体適合性でなければならない。このポリマーは、所望の放出速度又は所望のポリマー安定度によって、生体安定性であるか又は生体吸収性であってよいが、生体吸収性ポリマーが、生体安定性ポリマーと異なり、移植後長期間存在して有害な慢性的局所応答を引き起こすことがないので好適でありうる。その上更に、生体吸収性ポリマーは、長期にわたって生物学的環境のストレスによるステントとコーティングとの間の接着喪失が生じる危険(コーティングを取り除き、ステントが組織に封入された後でさえ更なる問題を導入しうる)を与えない。
【0203】
使用することのできる適当なフィルム形成性生体適合性ポリマーには、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミド基を含むポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、生体分子及びこれらの混合物よりなる群から選択するポリマーが含まれる。この発明の目的に関して、脂肪族ポリエステルは、ラクチド(乳酸、d−、l−及びメゾ乳酸を含む)、ε−カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、パラ−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート(及びそのアルキル誘導体)、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オンのホモポリマー及びコポリマー及びこれらのポリマーブレンドを包含する。この発明の目的に関して、ポリ(イミノカーボネート)は、Kemnitzer及びKohn(Handbook of Biodegradable Polymers, Domb, Kost及びWiseman編、Hardwood Academic Press, 1997, p251-272)により記載されたようなを含む。コポリ(エーテル−エステル)は、この発明の目的に関して、Journal of Biomaterials Research, Vol.22, p993-1009, 1988 Cohn及びYounes及びCohn, Polymer Preprints(ACS Division of Polymer Chemistry)Vol.30(1), p498, 1989(例えば、PEO/PLA)に記載されたようなコポリエステル−エーテルを含む。ポリアルキレンオキサレートは、この発明の目的に関して、米国特許第4,208,511号;4,141,087号;4,130,639号;4,140,678号;4,105,034号;及び4,205,399号(参考として、本明細書中に援用する)を包含する。ポリホスファゼン、コ−、ター及び一層高次の混合モノマーベースのポリマー(L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチルカーボネート及びε−カプロラクトンなどから生成)は、Allcock(Intersciences, John Wiley & Sons,1988)及びVandorpe, Schacht, Dejardin及びLemmouchi(Handbook of Biodegradable Polymers, Domb, Kost及びWisemen編、Hardwood Academic Press, 1997, p161-182)(これらを参考として本明細書中に援用する)により記載されている。HOOC−C64−O−(CH2)m−O−C64−COOH型の二酸(式中、mは、2〜8の範囲の整数である)又はその、最大で12炭素の脂肪族オメガ二酸とのコポリマーに由来するポリ無水物。ポリオキサエステルポリオキサアミド並びにアミン及び/又はアミド基を含むポリオキサエステルは、次の米国特許第5,464,929号;5,595,751号;5,597,579号;5,607,687号;5,618,552号;5,620,698号;5,645,850号;5,648,088号;5,698,213号及び5,700,583号(これらを参考として本明細書中に援用する)の少なくとも一つに記載されている。Heller(Handbook of Biodegradable Polymers, Domb, Kost及びWisemen編、Hardwood Academic Press, 1997, p99-118)(参考として本明細書中に援用する)に記載されたようなポリオルトエステル。フィルム形成性高分子生体分子は、この発明の目的に関して、身体内で酵素的に分解されうる又は人体内で加水分解により不安定な天然物質例えばフィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、エラスチン、及び吸収可能な生体適合性の多糖類例えばキトサン、澱粉、脂肪酸(及びそのエステル)、グルコソ−グリカン及びヒアルロン酸を含む。
【0204】
適当なフィルム形成性の、比較的低い慢性的組織応答を有する生物安定性ポリマー例えばポリウレタン、シリコーン、ポリ(メト)アクリレート、ポリエステル、ポリアルキルオキシド(ポリエチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドン並びにヒドロゲル例えば架橋されたポリビニルピロリジノン及びポリエステルも用いることができる。他のポリマーも又、ステント上に溶解、硬化又は重合されうるならば用いることができる。これらは、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−アルファオレフィンコポリマー;アクリルポリマー(メタクリレート)及びコポリマー、ビニルハリドポリマー及びコポリマー、例えばポリビニルクロリド;ポリビニルエーテル、例えばポリビニルメチルエーテル;ポリビニリデンハリド例えばポリビニリデンフルオリド及びポリビニリデンクロリド;ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族化合物例えばポリスチレン;ポリビニルエステル例えばポリビニルアセテート;ビニルモノマー同士及びオレフィンとのコポリマー例えばエチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー;ポリアミド例えばナイロン66及びポリカプロラクタム;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート、セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースニトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル(即ち、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース);及びこれらの組合せを含む。この出願の目的に関してポリアミドは又、−NH−(CH2)n−CO−及びNH−(CH2)x−NH−CO−(CH2)y−CO型のポリアミドをも含む(式中、nは、好ましくは、6〜13の整数であり;xは、6〜12の範囲の整数であり;そしてyは、4〜16の範囲の整数である)。上記の列記は、説明であって、制限ではない。
【0205】
コーティングに用いられるこれらのポリマーは、ワックス状又は粘着性にならないような十分な高分子量を有するフィルム形成性ポリマーであってよい。これらのポリマーは又、ステントに付着すべきであり、ステントに付着後は、血流力学的応力によって置換されうる程に容易に変形すべきでない。これらのポリマーの分子量は、十分な丈夫さを与えるだけ十分高く、それで、これらのポリマーは、ステントの操作中又は配備中にすり落とされず、ステントの拡張中にひび割れない。ある具体例において、このポリマーは、40℃より高い、好ましくは45℃より高い、一層好ましくは50℃より高い、最も好ましくは55℃より高い溶融温度を有する。
【0206】
コーティングは、少なくとも一種の治療用RNAi構築物をコーティング用混合物中でコーティング用ポリマーと混合することによって配合することができる。このRNAi構築物は、液体、微粉固体又は任意の他の適当な物理的形態で存在することができる。適宜、この混合物は、少なくとも一種の添加剤例えば無毒性の補助物質例えば希釈剤、キャリアー、賦形剤、安定剤などを含むことができる。他の適当な添加剤を、このポリマー及びRNAi構築物と配合することができる。例えば、前に列記した生体適合性のフィルム形成性ポリマーから選択する親水性ポリマーを、生体適合性の疎水性コーティングに加えて放出プロフィルを改変することができる(或は、疎水性ポリマーを親水性コーティングに加えて、放出プロフィルを改変することができる)。一例は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びこれらの組合せよりなる群から選択する親水性ポリマーを、脂肪族ポリエステルコーティングに添加して放出プロフィルを改変することである。適当な放出量は、治療用RNAi構築物につきイン・ビトロ及び/又はイン・ビボ放出プロフィルをモニターすることにより決定することができる。
【0207】
このコーティングの厚みは、RNAi構築物がマトリクスから溶出する速度を決定することができる。本質的に、このRNAi構築物は、マトリクスから、ポリマーマトリクス中の拡散によって溶出する。ポリマーは、透過性であり、それにより、固体、液体及び気体が該ポリマーから逃げるのを許す。このポリマーマトリクスの全厚みは、約1〜20ミクロンの範囲にあり、又はそれより厚い。ポリマーマトリクスを医用デバイスに加える前に下塗り層及び金属表面処理を利用することができるということに注意することは重要である。例えば、酸洗浄、アルカリ(塩基)洗浄、塩処理及びパリレン付着を、記載した全工程の部分として利用することができる。
【0208】
更に説明するために、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリブチルメタクリレート及びRNAi構築物溶液をステント内又は上に、多くの方法によって組み込むことができる。例えば、この溶液を、ステント上にスプレーすることができ、又はステントを溶液に浸すことができる。他の方法は、スピンコーティング及びRFプラズマ重合を含む。一つの典型的具体例において、この溶液を、ステント上にスプレーしてから乾燥させる。他の典型的具体例においては、この溶液を電気的に一つの極性に帯電させ且つステントを電気的に反対の極性に帯電させる。この方法において、この溶液とステントは、互いに引き寄せられる。この型のスプレー法の利用で、浪費が低減され、コートの厚みの一層正確な制御が達成されうる。
【0209】
他の典型的具体例において、RNAi構築物を、重合されたビニリデンフルオリド及び重合されたテトラフルオロエチレンよりなる群から選択するある量の第一の部分、及びある量の第一の部分以外の第一の部分と共重合され、それによりポリフルオロコポリマーを生成する第二の部分を含むフィルム形成性ポリフルオロコポリマーに組み込むことができ、この第二の部分は、ポリフルオロコポリマーに丈夫さ又は弾性特性を与えることができ、第一の部分と第二の部分の相対量は、それから生成されるコーティング及びフィルムに移植可能な医用デバイスの処理における利用に有効な特性を与えるのに効果的である。
【0210】
本発明の一具体例において、本発明の管腔内医用デバイスの拡張可能な管状ステントの外表面は、本発明のコーティングを含む。コーティングを有するステントの外表面は、組織と接触する表面であり、生体適合性である。「持続的放出用RNAi構築物送達システムでコートされた表面」は、「コートされた表面」と同義語であり、該表面は、本発明の持続的放出用RNAi構築物送達システムによりコートされ、カバーされ又は含浸される。
【0211】
別の具体例においては、本発明の管腔内医用デバイスの細長い迅速に拡張できる管状ステントの管腔内表面又は全表面(即ち、内表面及び外表面の両方)は、コートされた表面を有する。この発明の持続的放出用RNAi構築物送達用システムのコーティングを有する管腔内表面は、液体と接触する表面でもあり、生体適合性で且つ血液適合性である。
【0212】
V.典型的利用
一面において、主題の方法は、イン・ビボでの細胞の望ましくない成長(特に、特にトランスフォームされた細胞の成長)を阻止し又は少なくとも低減させるために利用される。ある具体例において、主題の方法は、増殖調節タンパク質をコードする遺伝子の発現を選択的に阻止するためにRNAiを利用する。例えば、主題の方法を用いて、標的細胞における有糸分裂に必須の及び/又は標的細胞のアポトーシスの防止に必須の遺伝子産物の発現を阻止することができる。本発明のRNAi構築物は、標的の増殖調節タンパク質をコードするmRNAのコード配列又は他の部分に対応するようにデザインすることができる。このRNAi構築物で治療した場合、標的細胞を生じる発現喪失表現型は、その細胞を休止させ又はアポトーシスを受けさせる。
【0213】
ある具体例において、主題のRNAi構築物は、細胞成長及び有糸分裂を刺激する遺伝子産物の発現を阻止するように選択される。本発明の方法により標的とされうる遺伝子のクラスにおいて、オンコジーンとして知られるものがある。ここで用いる場合、用語「オンコジーン」は、細胞成長を刺激する遺伝子をいい、その細胞内での発現レベルが低下すると細胞成長速度が低下し又は細胞が休止する遺伝子をいう。本発明の関連において、オンコジーンは、オートクリン又はパラクリン機能によって細胞増殖を刺激しうる細胞内タンパク質並びに細胞外成長因子を含む。ヒトのオンコジーンであって、それに対してRNAi構築物をデザインすることのできるオンコジーンの例には、c−myc、c−myb、mdm2、PKA−I(プロテインキナーゼAI型)、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(cdks)、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos及びsrcが含まれるが、これらは、ほんの少数例である。本発明の関連において、オンコジーンは又、染色体転座から生じた融合遺伝子(例えば、Bcr/Abl融合オンコジーン)をも含む。
【0214】
ある好適具体例において、主題のRNAi構築物は、トランスフォームされた細胞(特に、腫瘍細胞)の増殖に必須の遺伝子の発現を阻止するそれらの能力によって選択される。かかるRNAi構築物は、新生物形成性、再生性及び/又は過形成性のイン・ビボでの細胞成長の治療又は予防の部分として利用されうる(腫瘍の治療の部分を含む)。c−mycタンパク質は、多くの種類の癌において、統制解除されており、増大した発現を生じている。c−mycRNAレベルの低下は、イン・ビトロで、アポトーシスの誘導を生じる。それ故、c−mycに相補的なsiRNAは、潜在的に、抗癌治療のための治療剤として用いられる。好ましくは、主題のRNAi構築物を、慢性リンパ白血病の治療において利用することができる。慢性リンパ性白血病は、しばしば、第9及び第12染色体の転座(Bcr/Abl融合産物を生じる)によって引き起こされる。その結果生成した融合タンパク質は、オンコジーンとして作用し;それ故、Bcr/Abl融合mRNAの特異的な排除は、白血病細胞における細胞死を生じうる。実際、Bcr/Abl融合mRNAに特異的なsiRNA分子の培養白血病細胞へのトランスフェクションは、この融合mRNA及び対応するオンコジーンを低下させただけでなく、これらの細胞のアポトーシスを増大させもした(例えば、Wilda等、Oncogene, 2002,21:5716-5724を参照されたい)。
【0215】
他の具体例において、主題のRNAi構築物は、リンパ球の活性化に必須の遺伝子の発現(例えば、B細胞又はT細胞の増殖)、特に、抗原媒介によるリンパ球の活性化を阻止するそれらの能力によって選択される。かかるRNAi構築物は、免疫抑制剤として例えば免疫媒介性の炎症性疾患の治療又は予防の部分として利用されうる。
【0216】
ある具体例においては、自己免疫疾患の治療のために、ここに記載した方法を利用することができる。例えば、主題のRNAi構築物を、サイトカインをコードし又はその発現を調節する遺伝子の発現を阻止するそれらの能力について選択する。従って、サイトカイン例えばTHFα、IL−1α、IL−6若しくはIL−12又はこれらの組合せの発現の阻止又は低減を引き起こす構築物は、リウマチ様関節炎の治療又は予防の部分として利用することができる。同様に、炎症に関与するサイトカインの発現を阻止又は低減させる構築物は、炎症及び炎症関連疾患例えば多発性硬化症の治療又は予防において利用することができる。
【0217】
他の具体例において、主題のRNAi構築物は、糖尿病の開始又は進行に関連する遺伝子の発現を阻止するそれらの能力について選択される。例えば、実験的真性糖尿病は、p21WAF1/CIP1(p21)の発現の増大と関係することが見出されており、TGF−β1は、糸球体の肥厚に関連付けられてきた(例えば、Al-Douahji等、Kidney Int. 56:1691-1699を参照されたい)。従って、これらのタンパク質の発現を阻止し又は減少させる構築物は、糖尿病の治療又は予防において利用することができる。
【0218】
他の具体例において、主題のRNAi構築物は、ICAM−1(細胞内接着分子)の発現を阻止するそれらの能力について選択される。ICAM−1の発現を阻止するアンチセンス核酸は、Isis pharmaceutics によって乾癬用に開発されつつある。加えて、ICAM−1遺伝子に対するアンチセンス核酸は、急性腎不全及び再灌流障害を防止すること及び同系腎臓移植片の生存を延長させることが示唆されている(例えば、Haller等、(1996) Kidney Int. 50:473-80;Dragun等(1998) Kidney Int. 54:590-602;Dragun等、(1998) Kidney Int. 54:2113-22を参照されたい)。従って、本発明は、RNAi構築物の上記の疾患における利用を企図している。
【0219】
他の具体例において、主題のRNAi構築物は、血管内皮の平滑筋細胞及び他の細胞の増殖(例えば、新たな内膜形成に関与する細胞の増殖)に必須の遺伝子の発現を阻止するそれらの能力によって選択される。かかる具体例において、主題の方法は、再狭窄の治療又は予防の部分として利用することができる。
【0220】
単に説明のために、血管形成術後に血管内皮細胞に適用されるRNAi構築物は、その手順後に、これらの細胞の増殖を低下させることができる。単に説明のために、特定の例は、c−myc(オンコジーン)に相補的なsiRNAである。c−mycのダウンレギュレーションは、細胞成長を阻止する。それ故、siRNAは、下記のオリゴヌクレオチドを合成することにより製造することができる:
【化11】

【0221】
デオキシリボ核酸である太字で示したチミジン(一層安定であるため)を除いて、すべての塩基は、リボ核酸である。二本鎖RNAを、これらのオリゴヌクレオチドを、10mM トリス−Cl(pH7.0)及び20mM NaCl中で等モル濃度で混合し、95℃に加熱した後に、37℃までゆっくり冷却することにより製造することができる。その結果生成したsiRNAを、次いで、アガロースゲル電気泳動によって精製して、細胞に遊離形態で又はシクロデキストリンポリマーなどの送達システムと複合体化させて送達することができる。イン・ビトロ実験のために、siRNAの効果を、成長曲線分析、RT−PCR又はc−mycタンパク質についてのウエスタンブロット分析によってモニターすることができる。
【0222】
c−myc遺伝子に対するアンチセンスオリゴでオキシヌクレオチドは、冠状動脈ステント移植直後に局所送達により与えられた場合、再狭窄を阻止するということが示されている(例えば、Kutryk等(2002) J Am Coll Cardiol. 39:281-287;Kipshidze等(2002) J Am Coll Cardiol. 39:1686-1691を参照されたい)。それ故、本発明は、c−myc遺伝子に対するRNAi構築物(即ち、c−Myc RNAi構築物)をステント移植部位に浸潤物送達システム(Interventional Technologies, カリフォルニア、San Diego在)を用いて送達することを企図する。好ましくは、このc−Myc RNAi構築物は、再狭窄を阻止するために直接ステント上にコートされる。同様に、このc−Myc RNAi構築物は、経皮的内腔貫通冠状動脈形成術(PTCA)後に、筋内膜過形成の阻止のために局所的に送達することができ、かかる局所的送達の典型的な方法は、例えば、Kipshidze等(2001) Catheter Cardiovasc Interv. 54:247-56に見出すことができる。好ましくは、これらのRNAi構築物は、例えば、ホスホロチオエート又はホスホルアミデートによって、化学的に改変される。
【0223】
初期成長応答因子1(例えば、Egr−1)は、機械的傷害時に活性化されて、細胞の増殖と移動に関与する多くの遺伝子の転写を調節する転写因子である。それ故、このタンパク質のダウンレギュレーションは、やはり、再狭窄防止のための一つのアプローチでありうる。Egr−1遺伝子に対するsiRNAは、下記のオリゴヌクレオチドの合成によって製造することができる:
【化12】

【0224】
再び、デオキシリボ核酸である太字で示したチミジンを除いて、すべての塩基はリボ核酸である。これらのsiRNAを、これらのオリゴヌクレオチドから製造して、ここに記載したような細胞に導入することができる。
【実施例】
【0225】
典型的具体例
今や、この発明を一般的に説明したので、それは、下記の実施例を参照することにより、一層容易に理解されるであろう(該実施例は、単に、本発明のある面及び具体例の説明のために本願に含まれるものであり、この発明を制限することを意図したものではない)。
【0226】
1.siRNAをコードするプラスミドDNAのイン・ビトロ送達
ヒト胎児腎臓細胞(HEK293−EcR)を、6ウェルプレートに、ウェル当たり200,000細胞で播種した。これらのHEK293−EcR細胞は、エクジソンレセプターをコードするプラスミドで安定にトランスフェクトしてある。2〜3日後に、これらの細胞を、pIND−rev−GFP(誘導性エレメントとグリーン蛍光タンパク質をコードするプラスミド)及びpTZU6+1/siRNA(siRNAオリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖をコードするプラスミド)で同時トランスフェクトした。これらのプラスミド(Lee等(2002) Nature Biotechnology,20:500-505参照)を、分枝したPEI25k−hiCDポリマー(高度シクロデキストリングラフト)と、0.5mlのopti−MEM中で15N/Pの比で複合体化した。4時間後、培地を、2mlの完全培地と置き換えた。24時間の時点で、これらの細胞を5μM ポナステロンAにより誘導してGFP標的遺伝子発現を誘導した。72時間の時点で、これらの細胞を、verseneにより取り出して、集めて、GFP発現につきフローサイトメトリーにより分析した。図1に示したように、siRNAのトランスフェクションは、GFP発現を投与量依存様式でダウンレギュレートした。GFP発現の約50%減少が約2マイクログラムのsiRNAにより認められたが、4マイクログラムのsiRNAではGFP発現の約40%減少が認められた。上記の実験は、RNAi構築物を、培養細胞において、β−シクロデキストリンポリマーによって上首尾に送達することができて、遺伝子発現をRNA干渉機構によって減衰させることを示している。
【0227】
2.イン・ビトロでのDNAプラスミドの送達及びルシフェラーゼ発現
BHK−21細胞を、24ウェルプレートに配置して、無血清条件下で、β−シクロデキストリンポリマー(βCDP)と様々な充填比で複合体化した1μgのpGL3−CVプラスミド(ルシフェラーゼ遺伝子含有プラスミド)をトランスフェクトした。トランスフェクション効率は、ルシフェラーゼタンパク質活性をアッセイすることにより測定して相対的光単位(RLU)で示した結果を得た(図2参照)。トランスフェクションの48時間後に得られた細胞溶解物中のタンパク質の量を細胞生存力の尺度として利用した。トランスフェクトされた細胞のタンパク質レベルを、BioradのDCタンパク質アッセイ(カリフォルニア、Hercules在)により測定して、裸のDNAでトランスフェクトした細胞のタンパク質レベルにより標準化した。タンパク質標準曲線を、セル・カルチャー・リシス・バッファー中で、様々な濃度のウシIgG(Biorad)を用いて作成した。上記の実験は、トランスフェクション効率は、β−シクロデキストリンポリマーとRNAi構築物との間の充填比を調節することによって最適化されうるということを示している。
【0228】
3.マウスにおけるDNAプラスミドの送達及びルシフェラーゼ発現
DNA以外のすべての物質を、使用前に、0.2μmフィルターを通して濾過することにより滅菌し、凍結乾燥した。直鎖状シクロデキストリンポリマーを10%グルコース中で調製してから、等容積のpGL3−CVプラスミド(ルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミド)(水中)に、最終的な溶液が5%グルコース溶液になるように加えた。粒子を、5+/−で且つDNA終濃度0.5mg/mLで調製した。雌のBalb/Cマウスに、門脈注射によって、200μLのポリマー溶液(100μgのルシフェラーゼDNA含有)を注射した。DNA投与の4時間後に、マウスを麻酔して、腹腔内にルシフェリンを注射し、ルシフェラーゼタンパク質活性をゼノゲンカメラを用いて像を得た。ルシフェラーゼ発現は、プラスミド投与後4時間以内で肝臓で認められた。上記の実験は、β−シクロデキストリンポリマーと複合体化したRNAi構築物がイン・ビボで送達されうることを示している(例えば、マウスにおいて)。
【0229】
4.siRNAオリゴヌクレオチドのイン・ビトロ送達
ヒトの急性白血病K562懸濁細胞(p210 Bcr−Abl融合の外因性発現を有する)を、6ウェルプレート中、0.5mlのopti−MEM中に、ウェル当たり1,000,000細胞で播種する。直鎖状PEI−hi−CDポリマーを有する0.25mlのopti−MEM中の2μM dsRNA(Dharmacon Research Inc.)を用いて、15N/P比で、ポリプレックスを形成する(0.25mlのopti−MEM中でも)。Bcr−Abl融合mRNAスプライス1標的を認識するように、下記のdsRNAオリゴヌクレオチドをデザインする:
【化13】

【0230】
0.5mlのトランスフェクション培地を、0.5mlの細胞に加える。4時間後に、これらのウェルに、4mlの完全培地を補足する。48時間後に、これらの細胞を集めて、洗浄して、溶解させる。タンパク質濃度を測定して、20μgのタンパク質をSDS−PAGEゲルに載せて電気泳動する。これらのタンパク質をPVDFメンブレンにトランスファーして、1% BSAでブロックし、抗Bcr抗体をブロットする。p210シグナルを、化学ルミネセンス(Amersham)により検出し、バンド強度の未処理試料と比較しての低下によってダウンレギュレーションを観察する。上記の実験は、超分子複合体(例えば、β−シクロデキストリンポリマー)に配合されたsiRNAは、急性白血病の遺伝子治療のために送達されうることを示している。
【0231】
5.DNAザイムのマウスにおける送達
腫瘍を有するヌードマウスに、250μLのD5W中の1mgの蛍光標識したDNAザイムと配合した粒子を注射する。配合物は、CDポリマー、AD−PEG、及びAD−PEG−トランスフェリン(腫瘍ターゲティング用)を前に記載されたように[Bellocq,2002 #459]含んだ。注射の24時間後にマウスを犠牲にして、立体蛍光顕微鏡による分析のために腫瘍を取り出した。細胞内のDNAザイムの配置を、共焦点顕微鏡観察によって可視化した。腫瘍キャップを超えて腫瘍細胞内に至る浸透は、トランスフェリン−改変された粒子によってのみ達成される。上記の実験は、β−シクロデキストリンポリマーを、イン・ビボ遺伝子治療のための他の発現構築物(例えば、DNAザイム)の送達に用いることができることを示している。
【0232】
6.長鎖RNAのマウスにおける送達
RNA以外のすべての物質を、使用前に、0.2μmフィルターを通す濾過により滅菌して、凍結乾燥した。直鎖状シクロデキストリンポリマーを10%グルコース中で調製してから、等容積のルシフェラーゼRNA(水中)に、最終的な溶液が5%グルコース溶液になるように加えた。粒子を、5+/−で且つRNA終濃度0.5mg/mLで調製した。雌のBalb/Cマウスに、門脈注射によって、200μLのポリマー溶液(100μgのルシフェラーゼRNA含有)を注射した。RNA投与の4時間後に、マウスを麻酔して、腹腔内にルシフェリンを注射し、ルシフェラーゼタンパク質活性をゼノゲンカメラを用いて像を得た。ルシフェラーゼ発現は、ルシフェラーゼRNA投与後4時間以内で肝臓で認められた。上記の実験は、β−シクロデキストリンポリマーと複合体化した長鎖RNAがイン・ビボで送達されうることを示している(例えば、マウスにおいて)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量のRNAi構築物の患者の肺への肺送達又は鼻送達のために配合されたRNAi構築物を含む安定な呼吸用配合物。
【請求項2】
前記のRNAi構築物を20ミクロン未満の平均直径を有する微粒子として配合してある、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記の微粒子が0.5〜10ミクロンの平均直径を有する、請求項2に記載の配合物。
【請求項4】
前記の微粒子が、生物分解性ポリマーから形成される、請求項2に記載の配合物。
【請求項5】
前記の微粒子が、多糖類、ジケトピペラジン、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ無水物、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリビニル化合物、ポリシロキサン、アクリル酸及びメタクリル酸のポリマー、ポリウレタン、セルロース、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、及びポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、又はこれらのコポリマーよりなる群から選択する少なくとも一のポリマーから形成される、請求項2に記載の配合物。
【請求項6】
前記の微粒子を、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出又は熱溶融封入によって形成する、請求項2に記載の配合物。
【請求項7】
前記の微粒子が、乾燥形態又は凍結乾燥形態である、請求項2に記載の配合物。
【請求項8】
前記のRNAi構築物が、多次元ポリマーネットワークを含む超分子複合体として配合される、請求項1又は2に記載の配合物。
【請求項9】
前記の超分子複合体が、カチオン性ポリマーから形成される、請求項8に記載の配合物。
【請求項10】
前記のカチオン性ポリマーを、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーよりなる群から選択する、請求項9に記載の配合物。
【請求項11】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリンで改変されたポリマーから形成される、請求項8に記載の配合物。
【請求項12】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成されて下記式の構造を有する、請求項11に記載の配合物:
【化1】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化2】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【請求項13】
前記のRNAi構築物が、リポソームに配合される、請求項1又は2に記載の配合物。
【請求項14】
噴射剤を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項15】
計測された投与量の吸入器、乾燥粉末吸入器又はエアジェット噴霧器に含まれる、請求項1に記載の配合物。
【請求項16】
前記のRNAi構築物が、1〜10計量投与量の治療上有効な量を与える量で配合される、請求項1に記載の配合物。
【請求項17】
RNAi構築物が、リン酸−糖主鎖又はヌクレオシドに対する改変を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項18】
RNAi構築物が、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホジチオエート、キメラのメチルホスホネート−ホスホジエステル、ペプチド核酸、及び5−プロピニル−ピリミジン含有オリゴマーから選択する主鎖の改変を含む、請求項17に記載の配合物。
【請求項19】
RNAi構築物の呼吸できる配合物を含む肺又は鼻送達用のエアゾールの医薬組成物を含む計量された投与量のエアゾール分配機。
【請求項20】
RNAi構築物の全身投与量を送達するように肺深部で取り込まれるRNAi構築物の呼吸できる配合物を肺投与により患者に投与することを含む、RNAi構築物の全身投与を達成するための方法。
【請求項21】
請求項1に記載の配合物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤。
【請求項22】
製薬上許容しうるキャリアーを、製薬上許容しうる塩、エステル、及びかかるエステルの塩から選択する、請求項21に記載の医薬製剤。
【請求項23】
請求項21に記載の医薬製剤を該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図示)と共に含む医薬パッケージ。
【請求項24】
超分子複合体に配合された少なくとも一種のRNAi構築物を、処理した細胞において標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるのに十分な量で含む組成物。
【請求項25】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処理された細胞でsiRNAを生成する、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであり、該RNAが、前記の処理された細胞においてプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
イン・ビボでの細胞の処理のための、請求項24に記載の組成物。
【請求項30】
イン・ビトロでの細胞の処理のための、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
超分子複合体が、直鎖状ポリマーを含む多次元ポリマーネットワークである、請求項24〜28の何れかに記載の組成物。
【請求項32】
超分子複合体が、分枝したポリマーを含む多次元ポリマーネットワークである、請求項24〜28の何れかに記載の組成物。
【請求項33】
前記の超分子複合体が、カチオン性ポリマーから形成される、請求項24に記載の組成物。
【請求項34】
前記のカチオン性ポリマーを、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーよりなる群から選択する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリマーから形成される、請求項24に記載の組成物。
【請求項36】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成され且つ下記式の構造を有する、請求項35に記載の組成物:
【化3】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化4】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは、10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【請求項37】
平均直径20〜500nmを有する粒子に凝集した、請求項24〜36の何れかに記載の組成物。
【請求項38】
前記の粒子が、平均直径20〜200nmを有する、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
イン・ビボで細胞の標的遺伝子の発現を減衰させる方法であって、超分子複合体に配合されたRNAi構築物を、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させ、それにより処理された細胞の成長、生存又は分化を変化させるのに十分な量で投与することを含む当該方法。
【請求項40】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処理された細胞でsiRNAを生じる、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであって、それが前記の処理された細胞において、プロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
イン・ビボでの細胞の処理のための、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
イン・ビトロでの細胞の処理のための、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
超分子複合体が、直鎖状ポリマーを含む多次元ポリマーネットワークである、請求項39〜43の何れかに記載の方法。
【請求項47】
超分子複合体が、分枝したポリマーを含む多次元ポリマーネットワークである、請求項39〜43の何れかに記載の方法。
【請求項48】
前記の超分子複合体が、カチオン性ポリマーから形成される、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記のカチオン性ポリマーを、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーよりなる群から選択する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリマーから形成される、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成され且つ下記式の構造を有する、請求項50に記載の方法:
【化5】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化6】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000、又は100〜1,000の整数を表す)。
【請求項52】
超分子複合体が、平均直径0.5〜200ミクロンを有する粒子に凝集した、請求項39〜51の何れかに記載の方法。
【請求項53】
前記の粒子が、平均直径0.5〜10ミクロンを有する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項39〜43に記載の組成物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤。
【請求項55】
製薬上許容しうるキャリアーが、少なくとも一種の許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩を含む、請求項54に記載の医薬製剤。
【請求項56】
請求項54に記載の医薬製剤を該製剤のヒト患者への投与のための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージ。
【請求項57】
RNAi構築物を内部に分散させて有するポリマーマトリクスを含む医用デバイスの表面での利用のためのコーティングであって、該RNAi構築物は、患者の身体中の部位に移植された場合にマトリクスから溶出されて、その移植されたデバイスの近くの細胞の成長、生存又は分化を変える当該コーティング。
【請求項58】
医用デバイスを、スクリュー、プレート、ワッシャー、縫合糸、補綴留め具、留め鋲、ステープル、電気導線、バルブ、膜、カテーテル、移植用血管出入口、血液貯蔵用バッグ、血管、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管移植片、大動脈バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、生体外デバイス、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿搬出ユニット、及び血管内の分散のために適合させたフィルターから選択する、請求項57に記載のコーティング。
【請求項59】
医用デバイスが、ステントである、請求項57に記載のコーティング。
【請求項60】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項57に記載のコーティング。
【請求項61】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項60に記載のコーティング。
【請求項62】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処理された細胞で、siRNAを生じる、請求項57に記載のコーティング。
【請求項63】
RNAi構築物が、ヘパリンRNAであり、それが、前記の処理された細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項57に記載のコーティング。
【請求項64】
RNAi構築物が、サイクリン依存性キナーゼ、c−myb、c−myc、増殖中の細胞核抗原(PCNA)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)及び転写因子核因子カッパーB(NF−κB)、E2F、HER−2/neu、PKA、TGF−α、EGFR、TGF−β、IGFIR、P12、MDM2、BRCA、Bcl−2、VEGF、MDR、フェリチン、トランスフェリンレセプター、IRE、C−fos、HSP27、C−raf、及びメタロチオネイン遺伝子から選択される少なくとも一つの標的遺伝子を減衰させる、請求項57に記載のコーティング。
【請求項65】
医用デバイスを少なくとも一種のRNAi構築物でコートする方法であって、下記:
a)デバイスの表面をコートするために、RNAi構築物を、該デバイスを患者の身体中の部位に移植した場合に該RNAi構築物が表面から溶出されるように配合し、
b)配合されたRNAi構築物を医用デバイス上にコートする
ことを含み、該RNAi構築物でコートされた医用デバイスが、その移植されたデバイスの近くの細胞内での少なくとも一つの遺伝子の発現を減衰させる
ことを特徴とする当該方法。
【請求項66】
医用デバイスを、スクリュー、プレート、ワッシャー、縫合糸、補綴留め具、留め鋲、ステープル、電気導線、バルブ、膜、カテーテル、移植用血管出入口、血液貯蔵用バッグ、血管、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、血管移植片、大動脈バルーンポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、人工心臓、ペースメーカー、心室補助ポンプ、生体外デバイス、血液フィルター、血液透析ユニット、血液吸着ユニット、血漿搬出ユニット、及び血管内の分散のために適合させたフィルターから選択する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
医用デバイスが、ステントである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処理された細胞で、siRNAを生成する、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであって、それが、前記の処理された細胞においてプロセッシングを受けてsiRNAになる請求項65に記載の方法。
【請求項72】
RNAi構築物が、サイクリン依存性キナーゼ、c−myb、c−myc、増殖中の細胞核抗原(PCNA)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)及び転写因子核因子カッパーB(NF−κB)、E2F、HER−2/neu、PKA、TGF−α、EGFR、TGF−β、IGFIR、P12、MDM2、BRCA、Bcl−2、VEGF、MDR、フェリチン、トランスフェリンレセプター、IRE、C−fos、HSP27、C−raf、及びメタロチオネイン遺伝子から選択される少なくとも一つの標的遺伝子を減衰させる、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
RNAi構築物が、遺伝子の発現を減衰させて、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を低減させる、請求項65に記載の方法。
【請求項74】
動物への経皮的心膜内送達のために配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む組成物。
【請求項75】
RNAi構築物が、遺伝子の発現を減衰させて、心筋梗塞時及びその前後における増大した血管形成及び/又は減少した虚血性ダメージを生じる、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
RNAi構築物が、全身で利用可能であり、心臓周囲の空間から遠い細胞において少なくとも一つの遺伝子の発現を減衰させる、請求項74に記載の組成物。
【請求項77】
前記のRNAi構築物が、多次元ポリマーネットワークを含む超分子複合体として配合される、請求項73に記載の組成物。
【請求項78】
前記の超分子複合体が、カチオン性ポリマーから形成される、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
前記のカチオン性ポリマーを、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーよりなる群から選択する、請求項78に記載の組成物。
【請求項80】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリマーから形成される、請求項77に記載の組成物。
【請求項81】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成され且つ下記式の構造を有する、請求項80に記載の組成物:
【化7】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化8】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【請求項82】
RNAi構築物が、リポソームに封入され又は会合している、請求項73に記載の組成物。
【請求項83】
リポソームが、カチオン性の小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソームである、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
リポソームが、約200nm未満の平均直径を有する、請求項82に記載の組成物。
【請求項85】
動物が、ヒトである、請求項73に記載の組成物。
【請求項86】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項73に記載の組成物。
【請求項87】
siRNA構築物が、19〜30塩基対の長さである、請求項86に記載の組成物。
【請求項88】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物は、処理された細胞で、siRNAを生成する、請求項73に記載の組成物。
【請求項89】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであり、それが、前記の処理された細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項73に記載の組成物。
【請求項90】
少なくとも一種のRNAi構築物のイン・ビボでの経皮的心膜内送達のための方法であって、RNAi構築物の配合物を動物の心臓周囲の空間に投与することを含み、該RNAi構築物は処置した動物の細胞の少なくとも一つの標的遺伝子の発現を減衰させるのに十分な量で存在する当該方法。
【請求項91】
心臓周囲の空間を、RNAi構築物の送達用貯臓器として利用する、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
RNAi構築物が、心臓と周囲の血管系に局所的に送達される、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
RNAi構築物が、平滑筋細胞の増殖及び/又は移動を低減させるために利用される、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
RNAi構築物が、心筋梗塞の治療のために利用される、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
前記のRNAi構築物が、多次元ポリマーネットワークを含む超分子複合体として配合される、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記の超分子複合体が、カチオン性ポリマーから形成される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記のカチオン性ポリマーを、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーよりなる群から選択する、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリマーから形成される、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成され且つ下記式の構造を有する、請求項98に記載の方法:
【化9】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分又は
【化10】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【請求項100】
RNAi構築物が、リポソームに封入され又は会合している、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
リポソームが、カチオン性小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソームである、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
リポソームが、約200nm未満の平均直径を有する、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
動物が、ヒトである、請求項90に記載の方法。
【請求項104】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項90に記載の方法。
【請求項105】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処理された細胞で、siRNAを生成する、請求項90に記載の方法。
【請求項107】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであって、それが、前記の処理された細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項90に記載の方法。
【請求項108】
請求項90に記載の組成物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤。
【請求項109】
製薬上許容しうるキャリアーが、少なくとも一の製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩を含む、請求項108に記載の医薬製剤。
【請求項110】
請求項108に記載の医薬製剤を該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージ。
【請求項111】
イン・ビボで細胞の標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるためにリポソーム中に配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む組成物。
【請求項112】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項111に記載の組成物。
【請求項113】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項112に記載の組成物。
【請求項114】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処置した細胞において、siRNAを生じる、請求項111に記載の組成物。
【請求項115】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであり、それが、前記の処理した細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項111に記載の組成物。
【請求項116】
細胞が、哺乳動物細胞である、請求項111に記載の組成物。
【請求項117】
細胞が、ヒト細胞である、請求項116に記載の組成物。
【請求項118】
リポソームが、カチオン性小胞形成性脂質を含むカチオン性リポソームである、請求項111に記載の組成物。
【請求項119】
リポソームが、約200nm未満の平均直径を有する、請求項111に記載の組成物。
【請求項120】
患者の細胞の標的遺伝子の発現を減衰させる方法であって、リポソーム中に配合されたRNAi構築物を、標的遺伝子の発現をRNA干渉機構によって減衰させるのに十分な量で投与し、それにより該細胞の成長、生存又は分化を変化させることを含む当該方法。
【請求項121】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処置した細胞内で、siRNAを生じる、請求項120に記載の方法。
【請求項124】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであり、それが、前記の処理した細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項120に記載の方法。
【請求項125】
細胞が、哺乳動物細胞である、請求項120に記載の方法。
【請求項126】
細胞が、ヒト細胞である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
リポソームが、カチオン性小胞形成性脂質を含むカチオン性リポソームである、請求項120に記載の方法。
【請求項128】
リポソームが、約200nm未満の平均直径を有する、請求項120に記載の方法。
【請求項129】
請求項111に記載の組成物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤。
【請求項130】
製薬上許容しうるキャリアーが、少なくとも一の製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩を含む、請求項129に記載の医薬製剤。
【請求項131】
請求項129に記載の医薬製剤を該製剤のヒト患者への投与のための指示書(文章及び/又は図)と共に含む医薬パッケージ。
【請求項132】
細胞内へのイン・ビボでのエレクトロポレーションのために配合された少なくとも一種のRNAi構築物を含む組成物。
【請求項133】
RNAi構築物が、超分子複合体又はリポソームに配合された、請求項132に記載の組成物。
【請求項134】
細胞が、上皮細胞である、請求項132に記載の組成物。
【請求項135】
細胞が、筋細胞である、請求項132に記載の組成物。
【請求項136】
少なくとも一種のRNAi構築物を患者にエレクトロポレーションによって送達するための方法であって、動物にエレクトロポレーションによって十分な量のRNAi構築物を投与することを含み、該RNAi構築物が患者の細胞中の標的遺伝子の発現を減衰させる当該方法。
【請求項137】
RNAi構築物が、超分子複合体に配合され、又はリポソーム中に配合される、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
細胞が、上皮細胞である、請求項136に記載の方法。
【請求項139】
細胞が、筋細胞である、請求項136に記載の方法。
【請求項140】
請求項132に記載の組成物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤。
【請求項141】
製薬上許容しうるキャリアーが、少なくとも一の製薬上許容しうる塩、エステル及びかかるエステルの塩を含む、請求項140に記載の医薬製剤。
【請求項142】
医薬製剤を、請求項140に記載の該製剤をヒト患者に投与するための指示書(文章及び/又は図)と共にを含む医薬パッケージ。
【請求項143】
望ましくない細胞増殖をイン・ビボで阻止するための少なくとも一種の配合されたRNAi構築物を含む組成物であって、このRNAi構築物は、RNA干渉機構によって、細胞の有糸分裂に必須の及び/又は該細胞のアポトーシスの阻止に必須の標的遺伝子の発現を低減させる当該組成物。
【請求項144】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項143に記載の組成物。
【請求項145】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項144に記載の組成物。
【請求項146】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処置した細胞においてsiRNAを生じる、請求項143に記載の組成物。
【請求項147】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであり、それが、処置した細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項143に記載の組成物。
【請求項148】
発現ベクターを、エピソーム性発現ベクター、組込み型発現ベクター、又はウイルス性発現ベクターから選択する、請求項146に記載の組成物。
【請求項149】
RNAi構築物が、細胞の増殖を阻止する、請求項143に記載の組成物。
【請求項150】
RNAi構築物が、細胞のアポトーシスを促進する、請求項143に記載の組成物。
【請求項151】
標的遺伝子が、オンコジーンである、請求項143に記載の組成物。
【請求項152】
オンコジーンを、c−myc、c−myb、mdm2、PKA−I、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos、src及びBcr/Abl融合遺伝子から選択する、請求項151に記載の組成物。
【請求項153】
細胞が、トランスフォームされた細胞である、請求項143、149及び150の何れかに記載の組成物。
【請求項154】
RNAi構築物が、過形成性細胞増殖の治療に用いられる、請求項143に記載の組成物。
【請求項155】
RNAi構築物が、癌の治療に用いられる、請求項154に記載の組成物。
【請求項156】
RNAi構築物が、リンパ球の活性化を阻止するために用いられる、請求項143に記載の組成物。
【請求項157】
RNAi構築物が、免疫媒介の炎症性疾患の治療又は予防のために用いられる、請求項156に記載の組成物。
【請求項158】
RNAi構築物が、平滑筋細胞の増殖を阻止するために利用される、請求項143に記載の組成物。
【請求項159】
RNAi構築物が、再狭窄の治療又は予防に利用される、請求項158に記載の組成物。
【請求項160】
RNAi構築物が、上皮細胞の増殖を阻止するために利用される、請求項143に記載の組成物。
【請求項161】
RNAi構築物が、化粧用製剤のために利用される、請求項160に記載の組成物。
【請求項162】
RNAi構築物が、超分子複合体に配合される、請求項143に記載の組成物。
【請求項163】
超分子複合体が、少なくとも一種のポリマーを含む、請求項162に記載の組成物。
【請求項164】
ポリマーが、シクロデキストリン含有ポリマーである、請求項163に記載の組成物。
【請求項165】
RNAi構築物が、リポソームに封入され又はリポソームと会合している、請求項143に記載の組成物。
【請求項166】
リポソームが、カチオン性小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソームである、請求項165に記載の組成物。
【請求項167】
RNAi構築物と複合体化されたリポソームが、典型的には約200nm未満の実質的に均一なサイズを有する、請求項165に記載の組成物。
【請求項168】
動物が、ヒトである、請求項143に記載の組成物。
【請求項169】
望ましくない細胞のイン・ビボでの成長を阻止する方法であって、動物に十分な量の配合されたRNAi構築物を投与することを含み、RNA干渉機構によって、RNAi構築物が細胞の有糸分裂に必須の及び/又は該細胞のアポトーシスの防止に必須の標的遺伝子の発現を減じる当該方法。
【請求項170】
RNAi構築物が、小型の干渉性RNA(siRNA)である、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
siRNAが、19〜30塩基対の長さである、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
RNAi構築物が、転写されて少なくとも一種の転写産物を生成するコード配列を有する発現ベクターであって、該転写産物が、処置した細胞において、siRNAを生じる、請求項169に記載の方法。
【請求項173】
RNAi構築物が、ヘアピンRNAであり、それが、処理された細胞内でプロセッシングを受けてsiRNAになる、請求項169に記載の方法。
【請求項174】
発現ベクターを、エピソーム性発現ベクター、組込み型発現ベクター、又はウイルス性発現ベクターから選択する、請求項172に記載の方法。
【請求項175】
RNAi構築物が、細胞の増殖を阻止する、請求項169に記載の方法。
【請求項176】
RNAi構築物が、細胞のアポトーシスを促進する、請求項169に記載の方法。
【請求項177】
標的遺伝子が、オンコジーンである、請求項169に記載の方法。
【請求項178】
オンコジーンを、c−myc、c−myb、mdm2、PKA−I、Abl−1、Bcl2、Ras、c−Rafキナーゼ、CDC25ホスファターゼ、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、テロメラーゼ、PDGF/sis、erb−B、fos、jun、mos、src及びBcr/Abl融合遺伝子から選択する、請求項169に記載の方法。
【請求項179】
細胞が、トランスフォームされた細胞である、請求項169、175及び176の何れかに記載の方法。
【請求項180】
RNAi構築物が、過形成性細胞増殖の治療に用いられる、請求項169に記載の方法。
【請求項181】
RNAi構築物が、癌の治療に用いられる、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
RNAi構築物が、リンパ球の活性化の阻止に用いられる、請求項169に記載の方法。
【請求項183】
RNAi構築物が、免疫媒介の炎症性疾患の治療又は予防のために利用される、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
RNAi構築物が、平滑筋細胞の増殖を阻止するために利用される、請求項169に記載の方法。
【請求項185】
RNAi構築物が、再狭窄の治療又は予防のために利用される、請求項184に記載の方法。
【請求項186】
RNAi構築物が、上皮細胞の増殖を阻止するために利用される、請求項169に記載の方法。
【請求項187】
RNAi構築物が、化粧用製剤に利用される、請求項186に記載の方法。
【請求項188】
RNAi構築物が、超分子複合体に配合される、請求項169に記載の方法。
【請求項189】
超分子複合体が、少なくとも一種のポリマーを含む、請求項188に記載の方法。
【請求項190】
ポリマーが、シクロデキストリン含有ポリマーである、請求項189に記載の方法。
【請求項191】
RNAi構築物が、リポソームに封入され又はリポソームに会合している、請求項169に記載の方法。
【請求項192】
リポソームが、カチオン性小胞形成性脂質から形成されたカチオン性リポソームである、請求項191に記載の方法。
【請求項193】
RNAi構築物と複合体化されたリポソームが、典型的には約200nm未満の実質的に均一なサイズを有する、請求項191に記載の方法。
【請求項194】
動物が、ヒトである、請求項169に記載の方法。
【請求項195】
請求項143に記載の組成物及び製薬上許容しうるキャリアーを含む医薬製剤。
【請求項196】
製薬上許容しうるキャリアーを、製薬上許容しうる塩、エステル、及びかかるエステルの塩から選択する、請求項195に記載の医薬製剤。
【請求項197】
請求項195に記載の医薬製剤を、該製剤のヒト患者への投与のための指示書と共に含む医薬パッケージ。
【請求項198】
RNAi構築物が、上皮細胞の増殖又は分化を阻止する、請求項143に記載の組成物を含む化粧用製剤。
【請求項199】
細胞死を誘導する方法であって、標的細胞に、イン・ビボで、標的細胞でPKR応答を活性化するのに十分な長さの二本鎖RNA又は二本鎖RNAを転写することのできる発現ベクターを投与することを含み、該二本鎖RNAは、超分子複合体の部分として配合される当該方法。
【請求項200】
二本鎖RNAが、35塩基対より長い、請求項199に記載の方法。
【請求項201】
二本鎖RNAが、75ヌクレオチドより長い、請求項200に記載の方法。
【請求項202】
標的細胞が、哺乳動物細胞である、請求項199に記載の方法。
【請求項203】
標的細胞が、トランスフォームされた細胞である、請求項199に記載の方法。
【請求項204】
超分子複合体が、直鎖状ポリマーを含む多次元ポリマーネットワークである、請求項199〜203の何れかに記載の方法。
【請求項205】
超分子複合体が、分枝したポリマーを含む多次元ポリマーネットワークである、請求項199〜203の何れかに記載の方法。
【請求項206】
前記の超分子複合体が、カチオン性ポリマーから形成される、請求項199に記載の方法。
【請求項207】
前記のカチオン性ポリマーを、ポリ(L)リジン(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、β−シクロデキストリン含有ポリマー(βCD−ポリマー)及びこれらのコポリマーよりなる群から選択する、請求項206に記載の方法。
【請求項208】
前記の超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリマーから形成される、請求項199に記載の方法。
【請求項209】
超分子複合体が、シクロデキストリン改変ポリ(エチレンイミン)から形成され且つ下記式の構造を有する、請求項208に記載の方法:
【化11】

(式中、
Rは、各出現につき独立に、H、低級アルキル、シクロデキストリン部分、又は
【化12】

を表し;そして
mは、各出現につき独立に、2〜10,000の、好ましくは10〜5,000の又は100〜1,000の整数を表す)。
【請求項210】
事業を行う方法であって、下記:
a)標的細胞の増殖をイン・ビボで阻止して、望ましくない標的細胞の増殖を含む病気の影響を低減させるRNAi構築物を同定し;
b)ステップa)で同定されたRNAi構築物の治療プロファイリングを動物における効力及び毒性につき実行し;そして
c)ステップb)で許容しうる治療プロフィルを有するとして同定された少なくとも一種のRNAi構築物を含む医薬製剤を配合する
ことを含む当該方法。
【請求項211】
販売のために医薬製剤を分配するための分配システムを確立する更なるステップ及び(適宜)該医薬製剤のマーケティングのための販売グループを確立するステップを包含する、請求項210に記載の方法。
【請求項212】
製薬事業を行う方法であって、下記:
a)標的細胞の増殖をイン・ビボで阻止して、望ましくない標的細胞の増殖を含む病気の影響を低減させるRNAi構築物を同定し;
b)ステップa)で同定したRNAi構築物の(適宜)治療プロファイリングを動物における効力及び毒性につき行い;そして
c)RNAi構築物の更なる開発の権利を第三者に許諾する
ことを含む当該方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116765(P2011−116765A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34189(P2011−34189)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2004−543172(P2004−543172)の分割
【原出願日】平成14年11月4日(2002.11.4)
【出願人】(503220244)カランド・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (4)
【復代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【Fターム(参考)】