説明

RNA結合タンパク質を同定するための方法および組成物

本発明は、予め決められたRNA配列に結合するポリペプチドの同定のための組成物、方法およびキットを包含する。本発明は、部分的に、こうしたポリペプチドの同定において補助する光反応性部分を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への交差引用
本出願は、2003年12月22日に出願された米国仮出願第60/531,719号明細書に対する、35U.S.C.§119(e)に関する優先権を与えられている。
【背景技術】
【0002】
生存細胞においては、一次RNA転写物が完成する瞬間から、該転写物によりコードされるタンパク質の実際の発現まで、プレRNAスプライシング、RNAエディティング、核と細胞質との間のmRNAのシャッフリング、ならびに輸送されたmRNAの安定性および翻訳制御を確実にすることを包含する、複数の細胞事象および機構が存在する。これらの事象のそれぞれは、細胞にRNAレベルで遺伝子発現を調節する機会を提供する。
【0003】
最近の研究は、RNA結合タンパク質(RBP)が、これらの重要な転写後事象のそれぞれに関与する分子「機構」の決定的な機能的成分であることを示した(非特許文献1)。「細胞インテグレーター」としてもまた知られるこれらのRBPの破壊は、癲癇(非特許文献2)、リウマチ(非特許文献3)、癌、運動ニューロン疾患(非特許文献4)および精神遅滞(非特許文献5)の発病に関与している。利用可能な治療的ツールの現在の欠如は、部分的に、非常に少ないin vivo RNA−タンパク質複合体が同定かつ特徴付けられているために存在する。従って、特定のRNA、およびそれらがともにリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成するタンパク質の同定は、遺伝子発現の調節のような治療的ツールの開発を可能にするであろう。これは、順に、実験室における遺伝子発現の生物学的操作の使用を可能にし、かつ、現在理解されていない細胞過程の治療的ツールとしてのその使用を発展させるであろう。
【0004】
いくつかの方法が、RNA−タンパク質結合活性を理解するために以前に使用された。これらの方法は、フィルター結合アッセイ、UV架橋アッセイおよびゲルシフトアッセイを包含する。例えば、ゲルシフトアッセイは、RNAとタンパク質との間の相互作用を示唆する、RNAがタンパク質とのインキュベーション後により高分子量で移動することを示すことにより、RNA結合活性を確認するのに一般に使用される。その後、主張されるRBPに対し生成された抗体へのRNA−タンパク質複合体すなわちリボ核タンパク質(RNP)の曝露よりなるスーパーシフトアッセイが、このRNP−Ab複合体が電気泳動ゲル内をなおより高分子量の種の速度で移動する場合に、RNP複合体中のタンパク質の存在を確認する。これらの古典的方法を使用して得られる結果の有用性および応用可能性は、RNA結合活性の詳細な理解を得ることに関して制限される。該方法はどの結合相互作用がin vitroで起こるかのみを示すからである。他のより少なく便宜的な技術がこの懸念を取り扱うために考案された(非特許文献6、非特許文献7)が、しかし、これらの方法は、例えばcDNAアレイを介して胎児の致死的な異常な視覚系(ELAV)様のニューロンRNA結合タンパク質「HuB」のRNA標的を評価するための免疫沈降法(IP)の使用と同様に、それらの方法論においてin vitro技術になお頼っている(非特許文献6)。RNAとタンパク質の相互作用の動力学を真に理解するために、in vivoで相互作用を同定する能力を有することが最初に必要である。in vitro相互作用を同定するための試みにおいて、Miyashiroらは、抗体の標的タンパク質とin vivoで複合体形成するRNAカーゴ(cargo)を同定するAPRA(抗体で位置を決められたRNA増幅)の方法論を開発した(非特許文献8)。しかしながら、この技術もまた、RNA結合タンパク質の同一性を最初に知らなければならないという要件を包含するいくつかの欠点に苦しみ、そして、未知のタンパク質は従って該技術で同定され得ない。
【0005】
これらの手順のそれぞれは、特定のRBPに結合するRNAカーゴの特徴付けを可能にする。しかしながら、いずれか特定のRNAに結合するRBPを特徴付けるために、既存の方法論は煩雑かつ複雑であり、それらはかなりの量の時間を必要とし、それらは大量の出発原料を必要とし、そしてそれらは多くの偽陽性につながる。加えて、こうした特徴付けを試みる既存のアッセイの全部はin vitroの方法論を利用する。必要とされるものは、標的mRNAとin vivoで相互作用するタンパク質の同定を提供する方法論である。従って、予め選択されたRNAとin vivoで相互作用するタンパク質を同定する方法を提供するという長い間の切実な必要性が存在する。本発明はこの必要性を取扱い、そしてそれにかなう。
【非特許文献1】Maquat,L.E.ら、Cell、104、173−6(2001)
【非特許文献2】Musunuru,K.ら、Annu.Rev.Neurosci.、24、239−62(2001)
【非特許文献3】Fritsch,R.ら、J.Immunol.、169、1068−76(2002)
【非特許文献4】Pellizzoni,L.ら、Cell、95、615−24(1998)
【非特許文献5】Turner,G.ら、Am.J.Med.Genet.、64、196−7(1996)
【非特許文献6】Tenenbaum,S.A.ら、PNAS、97、14085−90(2000)
【非特許文献7】Brodsky,A.S.ら、Molecular & Cellular Proteomics、1.12、922−9(2002)
【非特許文献8】Miyashiro,K.Y.ら、Neuron、37、417−31(2003)
【発明の開示】
【0006】
[発明の要約]
本発明は、細胞内ポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸アナログ(該核酸アナログは最低1個の光反応性部分を含んでなる)、R−CPP−Rを含んでなるペプチド部分(式中CPPは細胞透過性ペプチドであり、さらに、式中、RおよびRのそれぞれは、ペプチド、アミノ酸、NH、H若しくはOHよりなる群から独立に選択され、さらに、該核酸アナログは、R、R、該ペプチド部分内のシステイン残基、若しくは該ペプチド部分内のリシン(K)残基よりなる群から選択されるメンバーの1種に共有結合される)、ならびに該核酸アナログおよび該ペプチド部分を連結する化学結合、を包含する、脂質膜を横断する膜浸透性構築物の輸送のための膜浸透性構築物を特徴とする。
【0007】
一態様において、膜浸透性構築物は、配列番号2、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択されるCPPを包含する。一局面において、膜浸透性構築物は、配列番号2、配列番号6、配列番号7および配列番号8の変異体、フラグメント若しくはバリアントよりなる群から選択されるCPPを包含する。一態様において、ペプチド部分のRおよびRの少なくとも一方がシステインを含んでなり、さらに、該核酸アナログが該システインにジスルフィド結合されている。一局面において、核酸アナログはペプチドのリシン残基にジスルフィド結合されている。別の局面において、ジスルフィド結合は一対のシステイン残基の間に配置される。なお別の局面において、該ペプチドのC末端ロイシン残基がアミド化されている。
【0008】
本発明の一態様において、膜浸透性構築物は不安定な化学結合を含有する。一局面において、該不安定な化学結合は、ジスルフィド結合、エステル結合、アビジン−ビオチン結合、環状不飽和マレアマートおよび13−アシルヒドラゾンよりなる群から選択される。
【0009】
本発明の一態様において、膜浸透性構築物は、ペプチド核酸(PNA)、PNA/DNAキメラ、PNA/RNAキメラ、RNA、DNA、2’−O−アルキルRNA、2’−O−アルキルRNA/DNAキメラ、および核酸塩基が修飾された(nucleobase−modified)オリゴヌクレオチドよりなる群から選択される核酸アナログを包含する。
【0010】
一態様において、膜浸透性構築物は、光反応性アミノ酸、p−ベンゾイルベンゾイル(BzBz)部分、アジド部分、4−ベンゾイル安息香酸誘導体、4−アジド−2,3,5,6,−テトラフルオロ安息香酸誘導体、およびN−((2−ピリジルジチオ)エチル)−4−アジドサリチルアミド誘導体よりなる群から選択される光反応性部分を包含する。一局面において、光反応性アミノ酸は、パラ−ベンゾイル−L−フェニルアラニン(Bpa)およびパラ−アジド−L−フェニルアラニン(Apa)よりなる群から選択される。
【0011】
一態様において、膜浸透性構築物は標識を包含する。本発明の一局面において、標識は、ビオチン、ジニトロフェニル、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、シアニン、ジゴキシゲニン、インターカレート、副溝結合物質、化学発光前駆体、セレンおよびカドミウムよりなる群から選択される。
【0012】
本発明はまた、細胞内ポリヌクレオチドとハイブリダイズする、構造R−Cys−PNA−Lys−アミドの核酸アナログ(式中Rは光反応性アミノ酸である)、R−AGYLLGKINLKALAALAKKIL−R(配列番号2)を含んでなるペプチド部分(式中Rは水素でありかつRはNHであり、さらに、該核酸アナログは該ペプチド部分内のシステイン残基に共有結合される)、ならびに該核酸アナログおよび該ペプチドを連結するジスルフィド結合を包含する、脂質膜を横断する膜浸透性構築物の輸送のための膜浸透性構築物も特徴とする。一局面において、該核酸アナログは、構造Bpa−Cys−PNA−Lys−アミドを有する。別の局面において、核酸アナログは、配列番号3、配列番号4および配列番号5よりなる群から選択されるPNAである。
【0013】
本発明はまた、予め決められたRNA配列を含んでなる細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定方法も特徴とし、該方法は、本発明の膜浸透性構築物を提供する段階、該構築物を、該構築物の該細胞内ポリヌクレオチドとの結合に適する条件下で該ポリヌクレオチドと結合させて構築物−ポリヌクレオチド複合体を形成させる段階、該光反応性部分を活性化して、それにより該予め決められたRNA配列に結合するタンパク質と該核酸アナログを共有架橋させる段階、該架橋された核酸アナログ−タンパク質を細胞から単離する段階、ならびに該核酸アナログに架橋されたタンパク質を同定する段階を包含する。
【0014】
本発明の一態様において、一方法は、架橋された核酸アナログ−タンパク質を含有する細胞を溶解して細胞ライセートを生じさせること、該架橋された核酸アナログ−タンパク質を固体支持体に結合させるのに適する条件下で、該予め決められたRNA配列を含んでなる固体支持体と該細胞ライセートを接触させて複合体を形成させること、および該ライセートから複合体を分離することを包含する。一局面において、単離段階は、架橋された核酸アナログ−タンパク質を含有する細胞を溶解して細胞ライセートを生じさせること、該細胞ライセートを、CPP、核酸アナログ、CPP−核酸アナログ構築物および予め決められたRNA配列に結合するタンパク質よりなる群のメンバーの最低1種に特異的な抗体を含んでなる支持体と、該架橋された核酸アナログ−タンパク質を該抗体に結合させるのに適する条件下で接触させて複合体を形成させること、ならびに該複合体を前記ライセートから分離することを包含する。別の局面において、PNAは、配列番号3、配列番号4、配列番号5よりなる群から選択される。なお別の局面において、ペプチド部分は配列番号2を含んでなり、式中Rは水素でありかつRはNHであり、さらに、前記核酸アナログが前記ペプチド部分内のシステイン残基に共有結合されている。
【0015】
本発明はまた、本発明の膜浸透性構築物、アプリケーター、およびその使用のための説明資料を包含する、予め決められたRNA配列を含んでなる細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定のためのキットも特徴とする。
[発明の詳細な記述]
RNA結合タンパク質(RBP)は、多くの転写後事象に関与する分子「機構」の決定的な機能的成分であり、そしてこれらのRBPの破壊は多数の疾患状態の発病に関与している。本発明は、これらの状態の背後にある分子機序を同定する必要性を取扱い、そして従って、こうした処置のための新規組成物および方法を提供することにより、これらの状態を処置するための方法を同定する。
【0016】
細胞透過性ペプチド(CPP)および修飾ペプチド核酸(PNA)技術の組合せにより、本発明は、標的mRNAとin vivoで相互作用するタンパク質の同定のための方法および組成物を初めて提供する(図1)。本発明は、CPP+PNA構築物のRBPとの核酸様ハイブリダイゼーションおよび標的を定められた架橋により、特定のRNAにin vivoで結合するRBPを標的とし、架橋しかつ同定するのに使用し得る光反応性標識をさらに包含する、CPP+PNA構築物を提供する。加えて、本発明の組成物および方法はPNAに加え他の核酸アナログの使用に拡大し得る。本発明はまた、DNA結合タンパク質の同定にも応用可能である。
定義
本明細書で使用されるところの以下の用語のそれぞれは、本節のそれに関連した意味するところを有する。
【0017】
冠詞「a」および「an」は、該冠詞の文法上の目的語の1つ若しくは1つ以上(すなわち最低1つ)を指すのに本明細書で使用する。例として「an element(ある要素)」は1個の要素若しくは1個以上の要素を意味している。
【0018】
「増幅」は、ポリヌクレオチド配列がコピーされかつ従って例えばとりわけ逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応により多数のポリヌクレオチド分子に拡大されるいかなる手段も指す。
【0019】
本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、抗原上の特定の一エピトープに特異的に結合することが可能である免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然の供給源若しくは組換え供給源由来の無傷の免疫グロブリンであり得、また、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。抗体は、典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)、ならびに一本鎖抗体およびヒト化抗体を包含する多様な形態で存在しうる(Harlowら、1999、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク;Harlowら、1989、Antibodies:A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー;Houstonら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;Birdら、1988、Science 242:423−426)。
【0020】
本明細書で使用されるところの「合成抗体」という用語により、例えば本明細書に記述されるところのバクテリオファージにより発現される抗体のような、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味している。該用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成により生成され、および、そのDNA分子が抗体タンパク質若しくは抗体を指定するアミノ酸配列を発現する抗体を意味するともまた解釈されるべきであり、ここで、該DNA若しくはアミノ酸配列は、当該技術分野で利用可能かつ公知である合成DNA若しくはアミノ酸配列技術を使用して得られる。
【0021】
「アンチセンス」は、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の非コーディング鎖の核酸配列、若しくは非コーディング鎖に実質的に相同である配列を指す。本明細書で使用されるところのアンチセンス配列は、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列がDNA分子のコーディング鎖のコーディング部分にのみ相補的である必要はない。アンチセンス配列は、タンパク質をコードするDNA分子のコーディング鎖上の指定される制御配列に相補的であることができ、その制御配列はコーディング配列の発現を制御する。
【0022】
該用語が本明細書で使用されるところの「アプリケーター」という用語により、限定されるものでないが核酸、タンパク質および小分子の化学的部分を挙げることができる1種若しくはそれ以上の分子を哺乳動物に投与するための、限定されるものでないが皮下シリンジ、ピペットなどを挙げることができるいかなる装置も意味している。
【0023】
「結合」は、第一の部分が第二の部分と物理的に相互作用することを意味するために本明細書で使用され、ここで該第一および第二の分子は相互に物理的に接触している。
【0024】
該用語が本明細書で使用されるところの「生物学的サンプル」は、核酸の発現のレベル、存在するタンパク質のレベル、若しくは双方を評価するのに使用し得る、哺乳動物から得られる若しくは哺乳動物中のサンプルを意味している。こうしたサンプルは、限定されるものでないが、細胞、血液サンプル、神経組織サンプル、脳サンプルおよび脳脊髄液サンプルを挙げることができる。
【0025】
「細胞透過性ペプチド」は、1個若しくはそれ以上の膜を横断して細胞の内側への、ポリペプチドと会合したいかなる分子とも一緒の前記ポリペプチドの進入を助長するポリペプチドを指すのに本明細書で使用される。
【0026】
本明細書で使用されるところの「相補的」および「アンチセンス」という用語は完全に同義ではない。「アンチセンス」は、とりわけ、あるタンパク質をコードする二本鎖DNA分子の非コーディング鎖の核酸配列、若しくは該非コーディング鎖に実質的に相同である配列を指す。
【0027】
本明細書で使用されるところの「相補的」は、2種の核酸、例えば2種のDNA分子間のサブユニット配列の相補性の広範な概念を指す。分子の双方中のあるヌクレオチド位置が、相互と塩基対形成することが通常可能なヌクレオチドにより占有されている場合には、該核酸はこの位置で相互に相補的であるとみなされる。従って、2種の核酸は、該分子のそれぞれ中の対応する位置のかなりの数(最低50%)が相互と通常塩基対形成するヌクレオチド(例えばA:TおよびG:Cヌクレオチド対)により占有されている場合に、相互に相補的である。本明細書で定義されるところのアンチセンス配列は、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列はDNA分子のコーディング鎖のコーディング部分にのみ相補的である必要はない。アンチセンス配列は、タンパク質をコードするDNA分子のコーディング鎖上の指定された制御配列に相補的であることができ、その制御配列はコーディング配列の発現を制御する。
【0028】
遺伝子の「コーディング領域」は、該遺伝子の転写により産生されるmRNA分子のコーディング領域とそれぞれ相同若しくはそれに対し相補的である、該遺伝子のコーディング鎖のヌクレオチド残基および該遺伝子の非コーディング鎖のヌクレオチドよりなる。
【0029】
mRNA分子の「コーディング領域」はまた、mRNA分子の翻訳の間に転移RNA分子のアンチコドン領域と一致するか、若しくは終止コドンをコードする、mRNA分子のヌクレオチド残基よりもなる。コーディング領域は、従って、該mRNA分子によりコードされる成熟タンパク質中に存在しないアミノ酸残基(例えばタンパク質輸出シグナル配列中のアミノ酸残基)に対応するヌクレオチド残基を包含しうる。
【0030】
「コードすること」は、ヌクレオチド(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)の定義された配列若しくはアミノ酸の定義された配列およびそれから生じる生物学的特性のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型としてはたらくための、遺伝子、cDNA若しくはmRNAのようなポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。従って、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞若しくは他の生物学的系中でタンパク質を産生する場合に、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列に同一でありかつ通常配列表に提供されるコーディング鎖、および遺伝子若しくはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖の双方が、その遺伝子若しくはcDNAのタンパク質若しくは他の産物をコードすると称され得る。
【0031】
オリゴヌクレオチドの第一の領域は、2領域が相互に隣接する場合、若しくは2領域が約1000を超えないヌクレオチド残基、および好ましくは約100を超えないヌクレオチド残基だけ分離されている場合に、該オリゴヌクレオチドの第二の領域に「隣接する」。
【0032】
該用語が本明細書で使用されるところの「機能的フラグメント」は、そのより大きな対照物と同一の活性若しくは能力を保持する、より大きなポリペプチド若しくはポリヌクレオチドのフラグメントを指す。機能的フラグメントの活性のレベルは、より大きな対照物の活性と同一でも、それ未満でも、若しくはそれより大きくてもよい。例えば、CPPトランスポータン(transportan)の機能的一フラグメントは、完全長のトランスポータンより少ないアミノ酸から構成されるペプチドでありうるが、しかし、完全長のトランスポータンより低い活性を伴い、細胞膜を横断してカーゴを輸送する能力をなお保持しうる。あるいは、トランスポータンの機能的フラグメントは、完全長のトランスポータンより大きなカーゴ輸送活性を有しうる。
【0033】
本明細書で使用されるところの「相同な」は、2種のポリマー分子間、例えば2種の核酸分子、例えば2種のDNA分子若しくは2種のRNA分子間、または2種のポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を指す。2種の分子の双方中の1サブユニット位置が同一の単量体サブユニットにより占有されている場合、例えば、2種のDNA分子のそれぞれ中のある位置がアデニンにより占有されている場合には、それらはその位置で相同である。2種の配列間の相同性は、一致する若しくは相同な位置の数の直接の関数であり、例えば、2化合物の配列中の位置の半分(例えば長さ10サブユニットのポリマー中の5個の位置)が相同である場合には、該2配列は50%相同であり、位置の90%、例えば、10個のうち9個が一致するか若しくは相同である場合は、該2配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列3’ATTGCC5’および3’TATGGCは50%の相同性を共有する。
【0034】
本明細書で使用されるところの「相同性」は「同一性」と同義に使用される。
【0035】
2種のヌクレオチド若しくはアミノ酸配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成し得る。例えば、2配列を比較するのに有用な数学的アルゴリズムは、KarlinとAltschul(1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877)でのように改変されたKarlinとAltschul(1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2263−2268)のアルゴリズムである。このアルゴリズムは、Altschulら(1990、J.Mol.Biol.215:403−410)のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれており、そして、例えば国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイトでアクセスし得る。BLASTヌクレオチド検索を、以下のパラメータ、すなわちギャップペナルティ(gap penalty)=5;ギャップ伸張ペナルティ(gap extension penalty)=2;ミスマッチペナルティ(mismatch penalty)=3;マッチ報酬(match reward)=1;期待値10.0;および語サイズ(word size)=11を使用して、NBLASTプログラム(NCBIウェブサイトで「blastn」と呼称される)を用いて実施して、本明細書に記述される核酸に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、以下のパラメータ、すなわち期待値10.0、BLOSUM62スコアリングマトリックス(scoring matrix)を使用して、XBLASTプログラム(NCBIウェブサイトで「blastn」と呼称される)若しくはNCBI「blastp」プログラムを用いて実施して、本明細書に記述されるタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的上、ギャップをつけたアライメントを得るために、Gapped BLASTをAltschulら(1997、Nucleic Acids Res.25:3389−3402)に記述されるとおり利用し得る。あるいは、PSI−Blast若しくはPHI−Blastを使用して、分子間の離れた関係(同上)および共通のパターンを共有する分子間の関係を検出する反復検索を実施し得る。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BlastおよびPHI−Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用し得る。
【0036】
2配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容し若しくは許容せずに上述されたものに類似の技術を使用して決定し得る。同一性パーセントの計算において、典型的には正確な一致を計数する。
【0037】
本明細書で使用されるところの「相同な」は、同一の核酸鎖の2領域間、若しくは2種の異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列の類似性を指す。双方の領域中の1ヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基により占有される場合には、該領域はその位置で相同である。第一の領域は、各領域の最低1個のオリゴヌクレオチド残基位置が同一の残基により占有される場合に、第二の領域に相同である。2領域間の相同性は、同一のヌクレオチド残基により占有される2領域のヌクレオチド残基位置の比率に関して表される。例として、ヌクレオチド配列5’−ATTGCC−3’を有する一領域およびヌクレオチド配列5’−TATGGC−3’を有する一領域は、50%の相同性を共有する。好ましくは、第一の領域は第一の部分を含んでなり、また、第二の領域は第二の部分を含んでなり、それにより、該部分のそれぞれのヌクレオチド残基位置の最低約50%、および好ましくは最低約75%、最低約90%、若しくは最低約95%が、同一のヌクレオチド残基により占有される。より好ましくは、該部分のそれぞれの全部のヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基により占有される。
【0038】
本明細書で使用されるところの「説明資料」は、本発明の組成物の有用性をその指定された使用のため伝えるのに使用し得る刊行物、録音・録画、図若しくはいかなる他の表現媒体も包含する。本発明のキットの説明資料は、例えば組成物を含有する容器に貼付されうるか、若しくは組成物を含有する容器と一緒に発送されうる。あるいは、説明資料は、該説明資料および組成物が受領者により共同して使用されるという意図をもって、容器と別個に発送されうる。
【0039】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から分離されている核酸セグメント若しくはフラグメント、例えば通常該フラグメントに隣接する配列、例えば該フラグメントが天然に存在するゲノム中でそれに隣接する配列から分離されているDNAフラグメントを指す。該用語はまた、該核酸に天然に付随する他の成分、例えば細胞中でそれに天然に付随するRNA配列若しくはDNAまたはタンパク質から実質的に精製されている核酸にも当てはまる。該用語は、従って、例えば、ベクター、自律複製するプラスミド若しくはウイルス、または原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれているか、あるいは他の配列と独立に別個の分子として(例えば、PCR若しくは制限酵素消化により生じられるcDNAまたはゲノム若しくはcDNAフラグメントとして)存在する、組換えDNAを包含する。それはまた、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも包含する。
【0040】
対象に適用されるところの「天然に存在する」は、該対象が天然に見出され得るという事実を指す。例えば、天然の供給源から単離し得かつ人により意図的に改変されている生物体(ウイルスを包含する)中に存在するポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0041】
本発明の文脈において、一般に存在する核酸塩基の以下の略語を使用する。「A」はアデノシンを指し、「C」はシチジンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、そして「U」はウリジンを指す。
【0042】
別の方法で明記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、相互の縮重バージョンでありかつ同一のアミノ酸配列をコードする全部のヌクレオチド配列を包含する。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを包含しうる。
【0043】
2種のポリヌクレオチドを「操作可能に連結される」として記述することにより、2種のポリヌクレオチドの少なくとも一方が、他者に対してそれが特徴付けられる生理学的効果を発揮することが可能であるような様式で、一本鎖若しくは二本鎖核酸部分が、該核酸部分内に配置された2種のポリヌクレオチドを含んでなることを意味している。例として、ある遺伝子のコーディング領域に作動可能に連結されたプロモーターは、該コーディング領域の転写を促進することが可能である。
【0044】
「ポリヌクレオチド」は、核酸の一本鎖若しくは平行および反平行鎖を意味している。従って、ポリヌクレオチドは一本鎖若しくは二本鎖いずれの核酸でもありうる。
【0045】
「核酸」という用語は、典型的に、大きなポリヌクレオチドを指す。
【0046】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、短いポリヌクレオチド、一般に約50を超えないヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわちA、T、G、C)により表される場合、これはまた「U」が「T」を置き換えるRNA配列(すなわちA、U、G、C)も包含することが理解されるであろう。
【0047】
慣習的表記法を、ポリヌクレオチド配列を記述するのに本明細書で使用する。すなわち、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側の端は5’端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左の方向は5’の方向と称される。
【0048】
新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’への付加の方向を転写の方向と称する。mRNAと同一の配列を有するDNA鎖は「コーディング鎖」と称され;DNA上の参照点に対し5’に位置するDNA鎖上の配列は「上流配列」と称され;DNA上の参照点に対し3’であるDNA鎖上の配列は「下流配列」と称される。
【0049】
ポリヌクレオチドの一「部分」は、該ポリヌクレオチドの少なくとも最低約20の連続するヌクレオチド残基を意味している。ポリヌクレオチドの一部分は、該ポリヌクレオチドのすべてのヌクレオチド残基を包含しうることが理解される。
【0050】
「プライマー」は、指定されたポリヌクレオチド鋳型に特異的にハイブリダイズしかつ相補ポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供することが可能であるポリヌクレオチドを指す。こうした合成は、合成が誘導される条件下、すなわちヌクレオチド、相補ポリヌクレオチド鋳型、およびDNAポリメラーゼのような重合のための剤の存在下に、ポリヌクレオチドプライマーが置かれる場合に起こる。プライマーは典型的には一本鎖であるが、しかし二本鎖であってもよい。プライマーは典型的にはデオキシリボ核酸であるが、しかし、多様な合成および天然に存在するプライマーが多くの応用に有用である。プライマーは、それがハイブリダイズして合成の開始のための部位としてはたらくよう設計されている鋳型に相補的であるが、しかし該鋳型の正確な配列を反映する必要はない。こうした場合、鋳型へのプライマーの特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件の緊縮性に依存する。プライマーは、例えば色素生産性、放射活性若しくは蛍光部分で標識し得、そして検出可能な部分として使用し得る。
【0051】
「プローブ」は、別のポリヌクレオチドの指定された配列に特異的にハイブリダイズすることが可能であるポリヌクレオチドを指す。プローブは標的の相補ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするが、しかし、該鋳型の正確な相補配列を反映する必要はない。こうした場合、標的へのプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件の緊縮性に依存する。プローブは、例えば色素生産性、放射活性若しくは蛍光部分で標識し得、そして検出可能な部分として使用し得る。
【0052】
「組換えポリヌクレオチド」は、天然に一緒に結合されていない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅若しくは集成された組換えポリヌクレオチドを適するベクター中に包含することができ、そして、該ベクターを使用して適する宿主細胞を形質転換し得る。
【0053】
組換えポリヌクレオチドは、非コーディング機能(例えばプロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)を同様に供しうる。
【0054】
組換えポリヌクレオチドを含んでなる宿主細胞は「組換え宿主細胞」と称される。遺伝子が組み換えポリヌクレオチドを含んでなる組換え宿主細胞中で発現される該遺伝子は「組換えポリペプチド」を産生する。
【0055】
「組換えポリペプチド」は、組換えポリヌクレオチドの発現に際して産生されるものである。
【0056】
「ポリペプチド」は、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関係する天然に存在する構造バリアント、およびペプチド結合を介して連結されたそれらの合成の天然に存在しないアナログ、関係する天然に存在する構造バリアント、ならびにそれらの合成の天然に存在しないアナログを指す。合成ポリペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成機を使用して合成し得る。
【0057】
「タンパク質」という用語は、典型的に、大きなポリペプチドを指す。
【0058】
「ペプチド」という用語は、典型的には、短いポリペプチドを指す。
【0059】
慣習的な表記法を、ポリペプチド配列を表現するのに本明細書で使用する。すなわち、ポリペプチド配列の左側の端がアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右側の端がカルボキシル末端である。
【0060】
本明細書で使用されるところの「プロモーター/制御配列」という用語は、該プロモーター/制御因子配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味している。いくつかの例において、この配列はコアプロモーター配列であることができ、そして、他の例において、この配列は、エンハンサー配列、および該遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントもまた包含しうる。プロモーター/制御配列は、例えば組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものでありうる。
【0061】
「治療的」処置は、病理学の兆候を現す被験体にそれらの兆候を減少若しくは排除する目的上投与される処置である。
【0062】
化合物の「治療上有効な量」は、該化合物が投与される被験体に有益な効果を提供するのに十分である化合物の量である。
【0063】
「ベクター」は、単離された核酸を含んでなりかつ該単離された核酸を細胞の内側に送達するのに使用し得る組成物である。限定されるものでないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性若しくは両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを挙げることができる多数のベクターが当該技術分野で既知である。従って、「ベクター」という用語は自律複製するプラスミド若しくはウイルスを包含する。該用語はまた、例えばポリリシン化合物、リポソームなどのような細胞中への核酸の移動を助長する非プラスミドおよび非ウイルス化合物を包含するとも解釈されるべきである。ウイルスベクターの例は、限定されるものでないがアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどを挙げることができる。
【0064】
「発現ベクター」は、発現されるべきヌクレオチド配列に効果をもたらして連結された発現制御配列を含んでなる組換えポリヌクレオチドを含んでなるベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なcis作動性要素を含んでなり;発現のための他の要素は宿主細胞により若しくはin vitro発現系で供給され得る。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込む、コスミド、プラスミド(例えば裸の若しくはリポソーム中に含有される)およびウイルスのような、当該技術分野で既知の全部のものを包含する。
【0065】
「核酸アナログ」は、単量体のヌクレオチドアナログ単位から化学合成により作成されかつ該核酸と関連する性質および特性のいくつかを有する、DNAおよびRNAの構造的に改変されたポリマーアナログである。PNAおよびホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、当該技術分野で既知の多くの核酸アナログの2つの例である。「ワトソン/クリック塩基対形成」および「ワトソン/クリック相補性」は、水素結合により一緒に結合するヌクレオチドおよびそれらのアナログの特定の対のパターンを指す(例えばAはTおよびUと対形成し、そしてGはCと対形成する)。特異的塩基対形成の活動が「ハイブリダイゼーション」若しくは「ハイブリダイズすること」である。核酸若しくは核酸アナログの2種若しくはそれ以上の相補鎖が塩基対形成を受ける場合に、ハイブリッドが生じる。
【0066】
「複合物」若しくは「複合した」は、それにより分子の該部分が一緒に保持されかつ近接して保存される、共有、イオン性若しくは疎水性相互作用を指す。
【0067】
「リンカー」は、核酸アナログをペプチド、標識、修飾物質、安定化する基などのような部分に結合する鎖を含んでなる1個若しくはそれ以上の原子を指す。
【0068】
本明細書で使用されるところの「キメラ」は、1個若しくはそれ以上のヌクレオチドおよび1個若しくはそれ以上のヌクレオチドアナログ単位を包含するオリゴヌクレオチドを指す。単量体単位はホスホジエステルおよびホスホジエステルアナログ結合により連結される。
【0069】
「ホスホジエステルアナログ」若しくは「ヌクレオチド間アナログ」は、限定されるものでないが2’,5’−結合、3’,3’−結合、5’,5’−結合、メチルホスホネート、アルキル化ホスホトリエステル、3’−N−ホスホルアミデートおよび架橋しないN−置換ホスホルアミデートを挙げることができる、ヌクレオチドへの結合のそれらの組成および/若しくは位置が異なる、天然のホスホジエステル3’,5’−ヌクレオチド間結合のアナログを指す。
【0070】
「2’−修飾RNA」という用語は、糖の2’位がヒドロキシルを置き換える置換基をもつ1個若しくはそれ以上のリボヌクレオチドを含有する核酸アナログを意味している。一例として、2’−O−アルキルRNAは、糖の2’位が部分−−OR(式中Rは限定されるものでないがメチル若しくはエチル部分を挙げることができる低級アルキルである)よりなる、1個若しくはそれ以上のリボヌクレオチドを含有する核酸アナログを含んでなる(Sproat、1994、Protocols for Oligonucleotides and Analogs、Humana Press)。
【0071】
「浸透物質」および「浸透性の」という用語は、細胞膜を通過する本発明の構築物の、若しくは構築物にそれらを通過させやすいという細胞膜の特徴として帰される能力を指す(Albertsら、1989、Molecular Biology of the Cell、第2版、Garland Publishing、ニューヨーク)。
【0072】
「標識」は、核酸塩基オリゴマーの一方若しくは双方の末端に共有結合された基を指す。標識は、蛍光、化学発光および電気化学発光のような手段により該分子の検出のためのシグナルを生じることのような機能を実施することが可能である。あるいは、標識は、特異的若しくは非特異的捕捉法による分子の分離若しくは固定を見込む(Andrus、1995、PCR2:A Practical Approach、Oxford University Press、オックスフォード、pp.39−54)。標識は、限定されるものでないが、フルオレセインおよびローダミン誘導体のような蛍光色素(Menchenら、1993、米国特許第5,188,934号明細書;Bergotら、1994、米国特許第5,366,860号明細書)、シアニン色素ならびにエネルギー転移色素(Clegg、1992、Meth.Enzymol.211:353−388;Cardulloら、1988、PNAS 85:8790−8794)を挙げることができる。
【0073】
「光反応性標識」は、光エネルギーでの標識の照射に際して化学的に活性になる標識を指す。こうした標識を活性化するのに有用な光エネルギーは、限定されるものでないがとりわけ可視光、紫外(UV)光、赤外(IR)光を挙げることができる。活性化された標識は、フリーラジカル若しくは他の高度に反応性の基を含有することができ、そして隣接する分子と反応しうる。制限しない一例として、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン(BPA)は、ペプチド中に組み込みうる光反応性アミノ酸である。UV光でのBPAの活性化は、該アミノ酸のベンゾイル部分を遊離させて、近傍内の他のアミノ酸および/若しくはタンパク質と架橋するのに利用可能である、フリーラジカルを含有するフェニルアラニン残基を残す。
【0074】
「検出」は、検出標識の特性に基づき構築物を検出、観察若しくは測定することを指す。
【0075】
「不安定な」という用語は、試薬、酵素若しくは細胞の構成要素により切断される潜在性をもつ分子中の結合(1個若しくは複数)を指す。
【0076】
「核酸塩基が修飾された」という用語は、A、G、C、T、U、すなわちDNAおよびRNA中で見出される天然に存在する核酸塩基の塩基対形成する誘導体を指す。
【0077】
「膜浸透性構築物」は、2種若しくはそれ以上の別個に同定可能な部分から構成される分子を指し、該部分は一緒に結合されて単一の部分すなわち「構築物」を形成し、また、該構築物全体は膜浸透性である。すなわち、該構築物全体は脂質若しくは細胞膜を横断する能力を有する。
【0078】
光反応性標識は、該標識が核酸アナログ若しくは細胞透過性ペプチドに結合されるか、それ内に取り込まれるか、それ内に組み込まれるか、若しくはそれに連結される場合に、核酸アナログ若しくは細胞透過性ペプチド「に組み込まれる」。これは、核酸アナログ若しくは細胞透過性ペプチドの末端への標識の結合、ならびに、こうした標識を含有する核酸塩基若しくはアミノ酸アナログを包含することにより核酸アナログ若しくは細胞透過性ペプチドに標識を組み込むことを包含する。
記述
I.核酸および核酸アナログ
A.細胞透過性ペプチドをコードする核酸
一局面において、本発明は、細胞透過性ペプチド(CPP)若しくはその機能的フラグメントをコードする単離された核酸を包含し、ここで、CPPは、CPPに細胞透過特性を賦与するアミノ酸配列を含んでなる。当業者により理解されるであろうとおり、CPPは細胞膜を透過する、若しくは細胞膜を横断して輸送される能力を有する。さらに、本明細書の別の場所に記述されるとおり、CPPは細胞膜を横断してカーゴを運搬する能力を有する。こうしたカーゴは、限定されるものでないがペプチド、核酸、光反応性標識を挙げることができる。CPPの他の特性は、限定されるものでないが、細胞中へのカーゴのエンドサイトーシスを誘導する能力を挙げることができる。
【0079】
CPPトランスポータンは、細胞に浸潤すること(Pooga,M.、FASEB J.、12、67−77(1998))、ならびにまたGFPおよびアビジン−TRITC複合物のようなタンパク質をカーゴとして細胞膜を横断して転位すること(Pooga,M.ら、FASEB J.、10、1096(2001))が示されている。加えて、トランスポータンおよびそのアナログは、PNAアンチセンスオリゴマーの輸送に使用されている(Pooga,M.ら、Nat.Biotechnol.、16、857−61(1998))。従って、一態様において、本発明のCPPはTP10であり、その配列は配列番号1に示される。本発明の別に態様において、CPPはトランスポータンであり、その配列は配列番号6に示される。本発明の別の態様において、CPPはペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK;配列番号7(Derossiら、1994、J Biol Chem 269:10444−10450))である。本発明のなお別の態様において、CPPはpTat(GRKKRRQRRRPPQ;配列番号8(Vivesら、1997、J Biol Chem 272:16010−16017)である。
【0080】
TP10をコードする核酸は、配列番号1の配列を有する核酸と最低約50%の同一性を共有する。好ましくは、該核酸は配列番号1に約60%同一であり、より好ましくは、該核酸は約65%同一である。好ましくは、該核酸は配列番号1に約70%同一であり、より好ましくは、該核酸は約75%同一である。好ましくは、該核酸は配列番号1に約80%同一であり、より好ましくは、該核酸は約85%同一である。好ましくは、該核酸は配列番号1に約90%同一であり、より好ましくは、該核酸は約95%同一である。好ましくは、該核酸は配列番号1に約97%同一であり、より好ましくは、該核酸は約98%同一である。好ましくは、該核酸は、配列番号1に約99%同一であり、より好ましくは、該核酸は約99.9%同一である。なおより好ましくは、該核酸は配列番号1に同一であり、該核酸はTP10をコードする。
【0081】
当業者は、本明細書に示される開示を備える場合に、本発明で有用なTP10をコードする核酸の同定方法を知るであろう。簡潔には、本発明で有用なTP10は、最低1個の光反応性部分を含んでなる核酸アナログと結合される場合に、膜浸透性構築物を形成し得るものである。すなわち、TP10−核酸アナログ−光反応性部分構築物に膜浸透性の特性を賦与するいかなるTP10も、本発明により包含される。同様に、当業者は、TP10−核酸アナログ−光反応性部分構築物に膜浸透性の特性を賦与するいかなる細胞透過性ペプチドをコードする核酸もまた、本発明に包含されることを認識するであろう。
B.核酸アナログ
本発明は、ペプチド核酸(PNA)(Nielsen,P.E.ら、Science、254:1497−1500(1991);Bennet,C.、Biochem.Pharmacol.、55:9−19(1998))である核酸アナログを特徴とする。PNAは、優れたハイブリダイゼーション特性、すなわち極めて高い特異性および親和性をもたらす、中性の光学不活性のポリ[2−アミノエチルグリシン]アミドバックボーンにより連結された、ワトソン/クリック塩基対形成を受ける天然の核酸塩基を利用する(Egholm,M.ら、Nature、365:566−68(1993);Peffer,N.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:10648−52(1993))。PNAは、いかなる既知のヌクレアーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ若しくは他の修飾酵素の基質でもなく(Demidov,V.ら、Biochem.Pharmacol.、48:1310−13(1994))、これは、天然の核酸すなわちDNAおよびRNAがヌクレアーゼにより迅速に分解され得るので重要な特性である(Akhtar,S.ら、Science 261:1004−12(1991))。PNAはタンパク質発現を転写および翻訳レベルで阻害することが示されており、また、微小注入したPNAは無傷の細胞中で強いアンチセンス効果を示す(Knudsen,H.ら、Nucl.Acids Res.、24:494−500(1996);Knudsen,H.ら、Anticancer Drug、8:113−18(1997))。標的ポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより、PNA/DNA若しくはPNA/RNAハイブリッド二重鎖は、転写レベルで細胞内DNA、および翻訳レベルでRNAの正常な機能を効果的に阻害しうる。こうして、細胞内ポリヌクレオチド内で見出される予め決められた標的配列に結合するPNAは、こうしたポリヌクレオチドにもまた結合されるポリペプチドを同定するように拡大しうる。しかしながら、PNAオリゴマーは独力で細胞の内側に効果的に送達若しくは輸送されず、それが、ポリヌクレオチドに結合するタンパク質を特異的に同定するための手段としてのPNAのin vivo応用を現在まで妨害している(Nielsen,P.E.ら、Anti−Cancer Drug Design、8:53−63(1993);(Hanvey,J.ら、Science 258:1481−1485(1992);(Knudsen,H.ら、Anticancer Drug、8:113−18(1997))。
【0082】
本発明の一態様において、PNAは、Ank mRNAの残基−123ないし−102に対応する配列TACGAAACCTCTAAATCAAGG(配列番号3)を有する。別の態様において、PNAは、Ank mRNAの残基+1592ないし+1610に対応する配列AAACCTCTAAATCAAGGCCTC(配列番号4)を有する。本発明のなお別の態様において、PNAは、Ank mRNAの残基+1594ないし+1614に対応する配列AAGCGCGGCTGCTCTAGCAGAA(配列番号5)を有する。
【0083】
本発明の別の態様において、核酸アナログは修飾糖アナログである。一局面において、核酸アナログのヌクレオチドの最低1個の糖部分が修飾される。一態様において、ヌクレオシドの2’位が修飾される。2’修飾ヌクレオシドをもつオリゴヌクレオチドは、リボザイム、ヌクレアーゼ抵抗性アンチセンスアナログおよび他の細胞機構のプローブとして研究されている(Lamond,A.ら、Cell、58:383−90(1989);(Goodchild,J.、Nucleic Acids Research、20:4607−12(1992))。2’−O−アルキル−オリゴリボヌクレオシドの所望の特徴は、高い化学的安定性、かなりのRNAおよびDNAヌクレアーゼ抵抗性(RNアーゼHを包含する)、ならびに増大された熱二重鎖安定性を包含する(Ohtsuka,E.ら、米国特許第5,013,830号明細書、1991年5月7日交付))。
【0084】
別の態様において、核酸アナログのリボヌクレオチドの画分は2’−O−アルキルリボヌクレオチド、好ましくは2’−O−メチル−リボヌクレオチドである。付加的な好ましい修飾リボヌクレオチドは、2’−O−アリル−リボヌクレオチド、2’−アリルリボヌクレオチド、2’−ハロ−リボヌクレオチド、2’−O−メトキシエチル−リボヌクレオチド、2’−分枝状基−リボヌクレオチド、および2’−O−分枝状基−リボヌクレオチドを包含する。
【0085】
本発明の別の態様において、1個若しくはそれ以上のヌクレオチドが1’位で修飾される。一局面において、1’位は、糖の1’位の天然の立体化学が反転されている、すなわち複素環および5’原子がcisの向きの代わりにtransの向きにあるα−アノマーヌクレオチド塩基を包含する(Morvan F.ら、Nucleic Acids Research、14:5019−35(1986))。1’位はまた分枝状基をもつこともある(Azhayeva,E.ら、Nucleic Acids Res.、23:1170−76(1995))。あるいは、修飾された糖アナログは、糖の4’−酸素原子が炭素、イオウ若しくは窒素原子で置換されている炭素環ヌクレオチドである(Perbostら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、165:742−(1989))。
【0086】
本発明の別の態様において、核酸アナログ部分を構成するヌクレオチドの最低2個が、標準的でないヌクレオチド間結合により連結される。制限しない一例として、標準的でないヌクレオチド間結合は、とりわけ、2’−5’−結合、反転3’−3’および5’−5’結合、メチルホスホネート、架橋しないN−置換ホスホルアミデート、アルキル化ホスホトリエステルの分枝状構造、3’−N−ホスホルアミデート、ペプチド核酸(PNA)、ならびに非ヌクレオシドポリマーを包含する。「非ヌクレオシドポリマー」という用語は、ポリヌクレオチドでないポリマー、例えばポリエチレンオキシド、ポリペプチド、ポリアクリルアミドおよびポリ炭水化物を指す。
【0087】
本発明のなお別の態様において、核酸アナログ中のヌクレオチドの最低1個が修飾核酸塩基を包含する。本発明の核酸塩基修飾は、限定されるものでないが、C−5−アルキルピリミジン、2,6−ジアミノプリン、2−チオピリミジン、C−5−プロピンピリミジン、7−デアザプリン、イソシトシンおよびイソグアニン、ならびに、ワトソン/クリックの塩基対を形成するハイブリダイゼーション相互作用において低下した塩基特異的識別を示す普遍的な塩基、例えば3−ニトロピロール(Nichols,R.ら、Nature、369:492−3(1994))および5−ニトロインドール(Loakes,D.ら、Nucleic Acids Research、22:4039−43(1994))を挙げることができる。
【0088】
一般に、本発明の核酸アナログの設計および合成は慣習的教示に従う。制限しない一例として、核酸アナログは、ホスホルアミダイト化学(Beaucage,S.L.ら、Tetrahedron、48:2223−2311(1992));(Caruthers,M.ら、米国特許第4,415,732号明細書、1983年11月15日交付)を使用する自動固相DNA合成機;例えばABI 392若しくは394DNA合成機(PE Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)、または自動固相ペプチド合成機、例えばABI 433ペプチド合成機(PE Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)で合成される。
【0089】
本発明の核酸アナログは、一般に、既知の合成技術を使用して合成される。ポリヌクレオチドを形成するのに使用される化学は当該技術分野で公知であり、そして、Beaucage、1992のような参考文献に見出し得る。本発明の核酸アナログを作成するためのポリヌクレオチド合成のホスホルアミダイト法は、その効率的かつ迅速な結合、および出発ヌクレオシド単量体の安定性のために好ましい方法である。該合成は、典型的には、固体支持体に結合された成長するポリマー鎖を用いて実施され、その結果、液相中にある過剰の試薬を濾過により容易に除去し得、それにより周期間の精製段階に対する必要性を排除する(Caruthers,M.ら、米国特許第4,458,066号明細書、1984年7月3日交付)。
【0090】
高い分離度および分離効率は、電荷および分子内水素結合による複数の安定なコンホメーションをしばしば採用する核酸アナログ、ペプチドおよび構築物のような高分子量分子の分析および精製において挑戦的である。慣習的HPLC分離で使用される非変性の逆相条件下で、複数のピークが存在することがあり、生成物の同定および収集を複雑にする。
【0091】
従って、本発明の一態様において、変性剤として7M尿素を含むスラブポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を、構築物の分析および精製に使用し得る。構築物は、標準的条件下でサンプルの電気泳動を実施すること、UV光下での可視化後にバンドを切り出すこと、水中に室温で一夜浸積すること、およびオリゴヌクレオチド精製カートリッジ上で脱塩/濃縮することにより、1回の電気泳動から単離し得る。ポリマー吸着体での陰イオン交換HPLC(例えばDionex NucleoPac PA100;4×250mm、Dionex Co.)は、良好な分離、予測可能な溶出パターンおよび再現可能な保持時間を与え得る。構築物のための有用なプロトコルは、以下、すなわち移動相−溶媒A:10%アセトニトリル中100mM NaCl、10mM NaOH(pH12);溶媒B:10%アセトニトリル中800mM NaCl、10mM NaOH(pH12);溶出流速=1.0Ml/分;および0分で0%Bから25分で80%Bまでの直線状勾配を必要とする(Andrus,A.ら、HPLC of Macromolecules、Oliver,R.W.A.(編)、Oxford University Press、オックスフォード、pp.141−70(1998))。しかしながら、本発明は本明細書に記述されるような精製条件のみに制限されるべきでない。むしろ、当業者は、本開示を備える場合に、他の単離および精製方法が利用可能であることを理解するであろう。例えば、Kochら、1997、J.Pept.Res.49:80−8(引用することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
C.光反応性標識を伴う核酸アナログ
本発明は最低1個の光反応性標識を包含する核酸アナログを特徴とする。すなわち、本発明の核酸アナログは最低1個の光反応性標識を含んでなる。本発明の一態様において、光反応性標識は光反応性アミノ酸である。本発明の光反応性標識は、該核酸アナログが結合されている同一のポリヌクレオチドに結合された核酸結合タンパク質との核酸アナログの架橋に有用である。本発明の一態様において、光反応性標識はPNAをRNA配列結合タンパク質と架橋するのに使用される。
【0092】
本発明により架橋するのに有用な光反応性標識の例は、限定されるものでないがアジド化合物、ジアゾ化合物などを挙げることができる。光反応性標識を使用する場合、典型的な架橋条件は、標識を含有するサンプルから0.1ないし100インチの範囲での約0.1分から約10分までの範囲の時間の約4℃から約40℃までの範囲の温度での紫外放射への曝露を含んでなる。しかしながら、本発明はこれらの条件に制限されると解釈されるべきでなく、そして、当業者は、本明細書に示される開示を備える場合に、架橋条件がいずれかの特定の環境の組に対する条件および必要性に従って変動し得ることを理解するであろう。
【0093】
制限しない一例として、本発明で有用な光反応性アミノ酸は、限定されるものでないがパラ−ベンゾイルフェニルアラニン、パラ−アジドフェニルアラニンを挙げることができる。本発明で有用な他の光反応性標識は、ベンゾイルベンゾイル(BzBz)部分、アジド部分、4−ベンゾイル安息香酸誘導体、4−アジド−2,3,5,6,−テトラフルオロ安息香酸誘導体、およびN−((2−ピリジルジチオ)エチル)−4−アジドサリチルアミド誘導体などを包含するが、しかしそれらに制限されると解釈されるべきでない。
【0094】
光反応性部分は、本明細書の別の場所に詳細に記述されるとおり核酸アナログに組み込みうる。本発明の一態様において、光反応性部分は本発明の核酸アナログに化学結合される。別の態様において、光反応性部分は、アミノ酸若しくはペプチド構築物の一部として核酸アナログと複合される。例えば、光反応性アミノ酸を、エステル媒介性のカップリング化学によりPNAに結合し得る。あるいは、光反応性アミノ酸を、該光反応性アミノ酸が結合されている1個若しくはそれ以上のアミノ酸によりPNAに結合し得る。本明細書に示される開示に基づき、当業者は、当該技術分野で公知の合成方法を使用して、光反応性部分を核酸アナログに結合する方法を理解するであろう。
【0095】
光反応性部分はCPPにもまた組み込まれることができ、そして、該CPPは結果として、光反応性部分を核酸アナログに組み込むために、核酸アナログと化学結合される。CPPへの核酸アナログの結合方法は本明細書の別の場所に詳細に記述されている。光反応性部分は、光反応性部分をCPPの末端、CPPの残基の側鎖、若しくはCPPのバックボーンに結合することにより、CPPに組み込みうる。光反応性部分はまた、光反応性部分をアミノ酸残基若しくはCPPの他のサブユニットの一部として包含して、それによりCPP構造へのアミノ酸残基若しくは他のサブユニットの組み込みによって光反応性部分をCPPの不可欠の部分とすることによっても、CPPに組み込みうる。
【0096】
光反応性部分はまた、核酸アナログをCPPと結合するのに使用されるリンカー部分にも組み込みうる。一態様において、光反応性部分は、核酸アナログをCPPと結合するのに使用されるリンカー部分内に含有される。光反応性部分はリンカー内部に配置されうるか、若しくは、光反応性部分はリンカーの一方の末端にありうる。別の態様において、光反応性部分は、核酸アナログをCPPと結合するのに使用されるリンカー部分である。
【0097】
本発明の全部の態様において、1個以上の光反応性部分を、核酸アナログ、CPP、若しくはCPPおよび核酸アナログを結合するリンカー内の位置のいかなる組合せでも、核酸アナログ中に組み込みうることを理解するであろう。
D.他の核酸
本発明は、本明細書に開示されるところの核酸アナログ、若しくは核酸およびそれらによりコードされるポリペプチドにのみ制限されると解釈されるべきでない。本発明を一旦備えれば、本明細書に開示されるところの他の核酸および核酸アナログの生成について実験の詳細の節で本明細書に記述される手順(例えば、部位特異的突然変異誘発、フレームシフト突然変異、多様な化学合成および修飾方法など)、ならびに当該技術分野で公知若しくは開発されるはずである手順に従うことにより、他の核酸を得ることができることが、当業者に容易に明らかである。
【0098】
さらに、いずれかの他の数の手順を、例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク)およびAusubelら(1997、Current Protocols in Molecular Biology、Green & Wiley、ニューヨーク)に記述されるもののような当該技術分野で公知の組換えDNAの方法論を使用するCPPの誘導体若しくはバリアントの形態の生成に使用しうる。ポリペプチドをコードするDNA配列を変えることによる、タンパク質若しくはポリペプチド中のアミノ酸の変化の導入手順は、当該技術分野で公知であり、かつ、Sambrookら(2001、上記);Ausubelら(1997、上記)にもまた記載されている。
II.ペプチドおよびポリペプチド
本発明は、単離された細胞透過性ペプチド(CPP)を包含する。本明細書の別の場所に詳細に記述されるとおり、CPPは、細胞膜に浸透する、若しくは細胞膜を横断して輸送される能力、ならびに、細胞膜を横断してカーゴを運搬する能力を有する。本発明の一局面において、CPPを含んでなる単離されたポリペプチドは、配列番号2(AGYLLGKINLKALAALAKKIL)若しくはそのフラグメントのアミノ酸配列を有するポリペプチドに最低約50%同一である。好ましくは、単離されたCPPは、配列番号2若しくはその何らかのフラグメントに約55%同一、より好ましくは約60%同一、より好ましくは約65%同一である。なおより好ましくは、単離されたCPPは、配列番号2若しくはその何らかのフラグメントに約70%同一、より好ましくは約75%同一、より好ましくは約80%同一である。より好ましくは、単離されたCPPは、配列番号2若しくはその何らかのフラグメントに約85%同一、より好ましくは約90%同一、より好ましくは約95%同一である。なおより好ましくは、単離されたCPPは、配列番号2若しくはその何らかのフラグメントに約96%同一、より好ましくは約97%同一、より好ましくは約98%同一、およびなおより好ましくは約99%同一である。最も好ましくは、CPPを含んでなる単離されたポリペプチドの部分は、配列番号2すなわちTP10のアミノ酸配列である。
【0099】
当業者は、本明細書に示される開示を備える場合に、本発明で有用なCPPの同定方法を知るであろう。簡潔には、本発明で有用なCPPは、最低1種の光反応性部分を含んでなる核酸アナログと結合される場合に、膜浸透性構築物を形成し得るものである。すなわち、CPP−核酸アナログ−光反応性部分構築物に膜浸透性の特性を賦与するいかなるCPPも、本発明により包含される。
【0100】
本発明の一態様において、CPPとしてTP10であり、その配列は配列番号2に示される。本発明の別の態様において、CPPはペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK;配列番号7(Derossiら、1994、J Biol Chem 269:10444−10450))である。本発明のなお別の態様において、CPPはpTat(GRKKRRQRRRPPQ;配列番号8(Vivesら、1997、J Biol Chem 272:16010−16017)である。一般に、CPP若しくは膜転位配列若しくはタンパク導入ドメインと称される全部のペプチドが、(Eiriksdottirら、2004、Drug Delivery Reviews 1:161−173)に総説されている。
【0101】
本発明のなお別の態様において、CPPはトランスポータン(Pooga,M.ら、FASEB J.、12:67−77(1998))である。トランスポータンは、本明細書の別の場所に詳細に記述されるところの生物学的タンパク質発現および化学的ペプチド合成を包含する方法の1種若しくはそれ以上により全体で若しくは部分的に合成しうる。別の態様において、トランスポータンは、また本明細書の別の場所に記述されるところの核酸アナログに複合しうる。トランスポータンの配列は後に続くとおりである:
GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL−アミド(配列番号6)
トランスポータン(ガルパラン)は、ニューロペプチド、ガラニン(Bartfai,T.、Raven Press,1185 Ave of the Americas, New York,N.Y.10036(1995));(Habert−Ortoli,E.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:9780−83(1994))のN末端、およびC末端のマストパランからの27アミノ酸のペプチドであり、双方のフラグメントはリシンを介して結合されている。トランスポータンは、ビオチニル化アナログ、Nδ13−ビオチニル−トランスポータンを使用する間接的免疫蛍光により判断されるとおり、細胞透過性ペプチドである。トランスポータンの取り込みは迅速かつ効率的であり、そしてビオチニル−トランスポータンの内部移行はエネルギー非依存性でありかつ0〜37℃から効率的に起こり、そして最大の細胞内濃度は37℃で約20分で達せられる。トランスポータンの細胞透過性能力は細胞型により制限されないが、しかし該ペプチド配列の一般的特徴である(例えばLangelら、米国特許第6,025,140号明細書を参照されたい)。
【0102】
しかしながら、本発明で有用なCPPは本明細書に開示されるものに制限されない。むしろ、当業者は、本開示を備える場合に、現在知られている若しくはなお発見されるはずである、核酸アナログを細胞中に輸送し得るいかなるCPPも本発明により包含されると解釈されるべきであることを理解するであろう。本発明はまた、本明細書に開示されるところのCPPを含んでなるタンパク質若しくはペプチドのアナログも提供する。アナログは、保存的アミノ酸配列の差違、若しくは配列に影響を及ぼさない修飾、または双方により、天然に存在するタンパク質若しくはペプチドと異なりうる。例えば、該タンパク質若しくはペプチドの一次配列をそれらが変えるとは言えその機能を通常は変えない、保存的アミノ酸変化を行いうる。保存的アミノ酸置換は、典型的に、以下の群、すなわち
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リシン、アルギニン;
フェニルアラニン、チロシン
内の置換を包含する。修飾(通常は一次配列を変えない)は、ポリペプチドのin vivo若しくはin vitroの化学的誘導体化、例えばアセチル化若しくはカルボキシル化を包含する。グリコシル化の改変、例えば、その合成およびプロセシングの間若しくはさらなるプロセシング段階においてポリペプチドのグリコシル化パターンを改変することにより;例えばグリコシル化に影響を及ぼす酵素、例えば哺乳動物のグリコシル化若しくは脱グリコシル化酵素にポリペプチドを曝露することにより、作成されるものもまた包含される。リン酸化されたアミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン若しくはホスホトレオニンを有する配列もまた包含される。
【0103】
タンパク質分解性の分解に対するそれらの抵抗性を向上させるように、若しくは溶解性の特性を最適化するように、若しくはそれらを治療薬としてより適するようにするように、通常の分子生物学技術を使用して改変されたポリペプチドもまた包含される。こうしたポリペプチドのアナログは、天然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸、若しくは天然に存在しない合成アミノ酸を含有するものを包含する。本発明のペプチドは、本明細書に列挙される特定の例示的方法のいずれかの産物に制限されない。
【0104】
本発明はまた、本発明のペプチド(若しくはそれをコードするDNA)の「誘導体」および「バリアント」を包含するとも解釈されるべきであり、それらの誘導体およびバリアントは、生じるペプチド(若しくはDNA)が本明細書で列挙される配列に同一でないが、しかし、該ペプチドが本発明のCPPの生物学的/生化学的特性を有するために本明細書に開示されるペプチドと同一の生物学的特性を有するような、1個若しくはそれ以上のアミノ酸が変えられている(または、それをコードするヌクレオチド配列を指す場合は、1個若しくはそれ以上の塩基対が変えられている)CPPである。例えば、CPPトランスポータンの誘導体は、該ペプチドのいずれかの端に1個若しくはそれ以上の付加的なアミノ酸を付加させうる。こうした生物学的/生化学的特性は、限定されるものでないが、細胞膜を横断するカーゴの輸送を挙げることができる。
【0105】
本発明はまた、1種若しくはそれ以上の標識が付加されているペプチドも包含する。標識は、該ペプチドの同定および/若しくは精製、または該ペプチドの生物学的役割若しくは生物学的相互作用の同定のため使用しうる。本発明で有用な標識は、当該技術分野で既知のいずれかの分光学的若しくは分光測光学的技術を使用して検出可能でありうる、蛍光、放射活性シグナル、発光、リン光、常磁性などのような独特のすなわち同定可能な特性を有すべきである。本発明で有用なタンパク質標識は、限定されるものでないが、ビオチン、ジニトロフェニル、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、シアニン(とりわけCy3およびCy5のような)、ジゴキシゲニン、インターカレート、副溝結合物質、化学発光前駆体、セレン、カドミウム、量子ドット技術において有用な標識などを挙げることができる。
【0106】
本明細書で使用されるところのアミノ酸は、以下の表に示されるところのそれらの完全な名称、それらに対応する三文字記号、若しくはそれらに対応する一文字記号により表される:
完全な名称 三文字記号 一文字記号
アスパラギン酸 Asp D
グルタミン酸 Glu E
リシン Lys K
アルギニン Arg R
ヒスチジン His H
チロシン Tyr Y
システイン Cys C
アスパラギン Asn N
グルタミン Gln Q
セリン Ser S
トレオニン Thr T
グリシン Gly G
アラニン Ala A
バリン Val V
ロイシン Leu L
イソロイシン Ile I
メチオニン Met M
プロリン Pro P
フェニルアラニン Phe F
トリプトファン Trp W
本発明のペプチドは、Stewartら(Solid Phase Peptide Synthesis、第2版、1984、Pierce Chemical Company、イリノイ州ロックフォード)により記述されるところの、および、BodanszkyとBodanszky(The Practice of Peptide Synthesis、1984、Springer−Verlag、ニューヨーク)により記述されるところの、標準的な十分に確立された固相ペプチド合成(SPPS)により容易に製造しうる。最初は、適して保護されたアミノ酸残基を、そのカルボキシル基により、架橋ポリスチレン若しくはポリアミド樹脂のような誘導体化された不溶性ポリマー支持体に結合する。「適して保護された」は、アミノ酸のα−アミノ基およびいかなる側鎖官能基の双方上の保護基の存在を指す。側鎖保護基は、一般に、合成を通じて使用される溶媒、試薬および反応条件に対し安定であり、そして、最終ペプチド生成物に影響を及ぼさないことができる条件下で除去可能である。オリゴペプチドの段階的合成を、最初のアミノ酸からのN−保護基の除去、および所望のペプチドの配列中の次のアミノ酸のカルボキシル端のそれへの結合により実施する。このアミノ酸もまた適して保護する。次のアミノ酸のカルボキシルを、カルボジイミド、対称性酸無水物、またはヒドロキシベンゾトリアゾール若しくはペンタフルオロフェニルエステルのような「活性エステル」基の形成のような、反応性基の形成により、支持体に結合させたアミノ酸のN末端と反応するように活性化し得る。
【0107】
固相ペプチド合成法の例は、α−アミノ保護基としてtert−ブチルオクスカルボニルを利用するBOC法、および9−フルオレニルメチルオクスカルボニルを利用してアミノ酸残基のα−アミノを保護するFMOC法を包含し、それらの双方の方法は当業者により公知である。
【0108】
Nおよび/若しくはC−ブロック基の組み込みもまた、固相ペプチド合成法に慣習的なプロトコルを使用して達成し得る。例えば、C末端ブロック基の組み込みのため、所望のペプチドの合成は、典型的には、樹脂からの切断が所望のC末端ブロック基を有するペプチドをもたらすように化学的に修飾された支持樹脂を固相として使用して実施する。例えば、C末端が一級アミノブロック基をもつペプチドを提供するために、ペプチド合成が完了した場合にフッ化水素酸での処理が所望のC末端がアミド化されたペプチドを遊離するように、p−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂を使用して、合成を実施する。同様に、C末端でのN−メチルアミンブロック基の組み込みは、HF(フッ化水素酸)処理に際してN−メチルアミド化されたC末端をもつペプチドを遊離する、N−メチルアミノエチル−誘導体化DVB、樹脂を使用して達成される。エステル化によるC末端のブロックもまた慣習的手順を使用して達成し得る。これは、樹脂からの側鎖ペプチドの遊離を可能にして、エステル官能基を形成するための所望のアルコールとのその後の反応を見込む、樹脂/ブロック基の組合せの使用を必要とする。メトキシアルコキシベンジルアルコール若しくは同等のリンカーで誘導体化したDVB樹脂と組合せのFMOC保護基を、この目的上使用し得、支持体からの切断はジクロロメタン中TFAにより遂げられる。適して活性化されたカルボキシル官能基の例えばDCCでのエステル化を、その後、所望のアルコールの添加、次いでエステル化されたペプチド生成物の脱保護および単離により進行させ得る。
【0109】
N末端ブロック基の組み込みは、合成されたペプチドが樹脂になお結合されている間に、例えば適する無水物およびニトリルでの処理により達成し得る。例えば、アセチルブロック基をN末端に組み込むために、樹脂に結合させたペプチドをアセトニトリル中20%無水酢酸で処理し得る。Nブロックペプチド生成物をその後、樹脂から切断し、脱保護しそしてその後単離し得る。
【0110】
化学的若しくは生物的いずれかの合成技術から得られたペプチドが所望のペプチドであることを確実にするために、ペプチド組成の分析を実施すべきである。こうしたアミノ酸組成分析は、ペプチドの分子量を決定するための高分解能質量分析を使用して実施しうる。あるいは、若しくは付加的に、ペプチドのアミノ酸含量を、該ペプチドを水性酸中で加水分解すること、およびHPLC若しくはアミノ酸分析機を使用して混合物の成分を分離、同定かつ定量することにより確認し得る。ペプチドを順次分解しそしてアミノ酸を順番に同定するタンパク質配列決定装置もまた、ペプチドの配列を確かに決定するのに使用しうる。
【0111】
その使用前に、ペプチドを精製して汚染物質を除去する。この点に関して、適切な規制当局により若しくは特定の用途のため設定された基準に合致するようにペプチドを精製することができることが認識されるであろう。例えば、C−、C−若しくはC18−シリカのようなアルキル化したシリカカラムを使用する逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を包含する、多数の慣習的精製手順のいずれか1つを使用して、必要とされるレベルの純度を達成しうる。増大する有機含量の勾配移動相、例えば、通常少量のトリフルオロ酢酸を含有する水性緩衝液中のアセトニトリルを一般に使用して、精製を達成する。イオン交換クロマトグラフィーもまた、それらの電荷に基づきペプチドを分離するのに使用し得る。
III.膜浸透性構築物
本発明は、単離されたペプチドおよび非ペプチド部分を含んでなる単離されたペプチド構築物をさらに包含する。本発明の構築物のペプチド部分は細胞透過性ペプチド(CPP)を含んでなる。本発明の非ペプチド部分は、光反応性部分をさらに含んでなる核酸アナログを包含する。核酸アナログは、予め決められた細胞内の核酸配列に特異的に結合する核酸配列を含んでなる。本発明の構築物の利用性は、CPPが、核酸結合部分のようなカーゴを、細胞膜を横断しかつ細胞中に運搬し得ることである。
【0112】
細胞膜を横断する構築物の輸送後、および予め決められた配列への該構築物の核酸アナログ部分の結合に際して、該核酸アナログの光反応性部分は、予め決められた核酸配列を含んでなるポリヌクレオチドにまた結合されている核酸結合タンパク質に接近している。核酸アナログ上の光反応性部分の活性化に際して、活性化された部分は核酸結合タンパク質に化学的に架橋し得る。核酸アナログ−核酸結合タンパク質が架橋した複合体の特異的分離は、その後、該核酸結合タンパク質の同定を助長し得る。
【0113】
本発明の一態様において、CPPトランスポータンを、細胞内の進行性強直症mRNA(「ank」、「テルメシン」としてもまた知られる)内の特異的部位へのPNAアンチセンス核酸アナログの細胞内送達に使用する。光反応性アミノ酸付加物、p−ベンゾイルフェニルアラニン(BPA)がアンチセンスPNAに結合され、そして、PNA−BPA複合物が、ジスルフィド結合によってトランスポータンに結合されている。トランスポータンによる細胞膜を横断するPNAの輸送後に、PNAはank mRNA標的にハイブリダイズする。PNA含有細胞のUV照射がBPAを活性化して、BPAのベンゾイル部分を遊離させ、かつ、最も近い物質、すなわちank標的RNAに結合されたRNA結合タンパク質(RNP)を架橋し得る遊離のフェニルアラニン基を創製する。架橋されたPNA−RNP複合体をその後、PNAの配列に対しアンチセンスである配列を有するビオチニル化センスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより単離し、そしてストレプトアビジン磁性ビーズに結合させる。
【0114】
こうして、本発明のPNAアニーリングおよびRNA結合の特徴付け(「PARC」)は、いかなる標的mRNAと相互作用するRBPも同定され得るin vivoの方法論を提供する。制限しない一例として、強直症(ank)mRNAと複合体形成するタンパク質を同定することは、コードされる無機ピロリン酸輸送体の発現の調節の機構を解明し得る。
【0115】
本発明の構築物を製造するための一般的な複合戦略は、核酸アナログおよびペプチド部分を別個に合成することである。試薬および自動合成機が、ペプチドおよび核酸アナログの合成に商業的に利用可能である。各部分は、結合を形成させるための反応性の官能性を含有するようにさらに誘導体化し得る。核酸アナログは、いずれかの適する結合によりペプチドに共有結合し得る。本発明の一態様において、適する結合はジスルフィドのような不安定な結合を包含する。構築物中で核酸アナログとペプチドとの間でジスルフィド結合を形成させるために、該2部分を、チオール基を含有するように誘導体化することができ、その一方は脱離基を含有し得る。本発明の別の態様において、アビジン−ビオチンの化学を使用して、核酸アナログとペプチドとの間で結合を形成しうる。核酸アナログおよびペプチドへのアビジンおよびビオチンの結合方法は当該技術分野で公知であり、そして本明細書で論考されないであろう。
【0116】
不安定なリンカーは、望ましくない効果の低減のため、若しくは核酸アナログの機能の最適化のためにいくつかの条件下で重要でありうるCPP−核酸アナログ構築物の分解を可能にする。細胞内送達のため、多様な不安定なリンカーを使用し得る。制限しない一例として、ジスルフィド架橋、pH感受性のリンカー、およびプロテアーゼ/ヌクレオアーゼ基質を使用し得る。細胞内環境は、高(mM範囲)濃度のグルタチオンにより化学電位が高度に還元性である。チオールを含有するグルタチオンは酸化型(ジスルフィド)若しくは還元型(チオール)で存在し得、その比は酵素グルタチオン−S−トランスフェラーゼならびに他の酸化的種により調節される。ジスルフィド結合を含有する化合物は、還元型グルタチオンとの反応を受けて、還元されたジスルフィド結合および酸化されたグルタチオンに至る。ジスルフィドを含有するCPP複合物については、該過程がHaellbrinkら(2001、Biochim Biophys Acta.1515:101−9)により特徴付けられている。
【0117】
こうした構築物は細胞膜を直接、若しくは他の場合にはエンドサイトーシスにより膜を横断し得る。エンドサイトーシス取り込みの機構は、内部移行後のエンドサイトーシス小胞中のpH下落を伴う。従って、本発明の一態様において、pH感受性のリンカーを、pH変化に際してのCPPからの核酸アナログの高められた遊離のため利用する。この目的上有用なリンカーは、とりわけ、環状の不飽和マレアマートおよび13−アシルヒドラゾンを包含する(Fletcherら、2004、Org Lett.6:4245−4248;Braslawskyら、1991、Cancer Immunol Immunother.33:367−74)。本発明の別の態様において、ペニシリンGアシラーゼのような酵素を利用して、核酸アナログからのCPPの分離を媒介し得る。(Gretherら、2001、Chemistry 7:959−971。)
本発明の別の態様において、細胞中への核酸アナログの内部移行は、内部移行を駆動するPNAのような核酸アナログへの部分の結合により高められる。こうした部分は、限定されるものでないが、(Lys)1−4、CPP−(PNAがペプチドのN末端に結合されるかC末端に結合されるかは、CPPの構造的要件に依存し、そして、核酸アナログは従ってペプチド中の内的側鎖に結合されうる;Poogaら、1998、FASEB J.12:67−77)、内部移行されるリガンド、ジスルフィド結合によって核酸アナログに結合されたペプチド若しくはリガンド、核局在化シグナル、SV40コアタンパク質からのPKKKRKVのような高度に正に荷電したヘプタマーを挙げることができる。本発明の一態様において、[N13ε−Cys(Npys)]−トランスポータンが結合された部分である。
【0118】
本発明の一態様において、本明細書に示される核酸アナログおよびCPPペプチド部分の複合すなわち結合のスキームは、実験実施例により詳細に記述されるとおり、システインアミノ酸上でニトロピリジル脱離基(Npys)で誘導体化された核酸アナログを包含する。ペプチドのNpys基の核酸アナログのチオールによる置換は、ジスルフィド結合された構築物を生じる。
【0119】
本発明はまた、細胞の内側の予め決められた核酸配列を結合する目的上、親水性物質、例えば核酸アナログの細胞内送達も特徴とする。本発明の一態様において、予め決められた核酸配列はDNAである。本発明の別の態様において、予め決められた核酸配列はRNAである。一局面において、RNAは進行性強直症リン酸輸送体RNAである。別の局面において、RNAはグルタミン酸受容体をコードするRNAである。いずれかのこうしたRNA配列への光反応性核酸アナログのターゲッティングは、こうしたRNA配列に結合されたタンパク質の架橋、単離および同定を見込む。
【0120】
従って、当業者は、本明細書に示される開示を備える場合に初めて、本発明が、RNA結合タンパク質(RBP)により翻訳後に調節されるいずれかの疾患若しくは状態の発症および進行に関与する機構を同定するのに有用であることを理解するであろう。こうした疾患は、限定されるものでないが癲癇、リウマチ、癌、運動ニューロン疾患および精神遅滞を挙げることができる。この範囲に包含される分子機構は、限定されるものでないが、ank mRNA調節、グルタミン酸受容体mRNA調節、脆弱性X症候群、癲癇、トリヌクレオチド反復疾患(ハンチントン病のような)および外傷性脳傷害を挙げることができる。本発明は従って、新規治療薬を開発するための基礎的分子生物学を理解しかつ使用するための強力な新たなツールを提供する。
【0121】
当業者は、本明細書に記述される構築物および方法が、いかなる生存する種からの細胞とともにも使用し得ることもまた理解するであろう。それは、本発明が、改良されたより効率的な薬物発見を可能にし、治療的介入の新規の点の同定で補助し、そして、本発明のCPP構築物の膜浸透物質活性によって本質的にいかなる細胞中への核酸アナログの一般化された導入方法も提供するからである。
IV.ベクター
他の関連する局面において、本発明は、核酸が好ましくは該核酸によりコードされるペプチドの発現を指図することが可能であるような、プロモーター/制御配列を含んでなる核酸に作動可能に連結されたCPPをコードする単離された核酸を包含する。従って、本発明は、例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク)およびAusubelら(1997、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク)に記述されるもののような細胞中での外因性DNAの付随する発現を伴う、細胞中への外因性DNAの導入のための発現ベクターおよび方法を包含する。
【0122】
細胞中での単独若しくは検出可能なタグポリペプチドに融合されたかのいずれかのCPPの発現は、ベクターが導入される細胞中でタグを伴う若しくは伴わないタンパク質の発現を駆動するようはたらくプロモーター/制御配列に作動可能に連結された所望の核酸を含んでなるプラスミド、ウイルス若しくは他の型のベクターを生成させることにより達成し得る。遺伝子の構成的発現を駆動するのに有用な多くのプロモーター/制御配列が当該技術分野で利用可能であり、そして、限定されるものでないが、例えばサイトメガロウイルス前初期プロモーターエンハンサー配列、SV40初期プロモーター、ならびにラウス肉腫ウイルスプロモーターなどを挙げることができる。さらに、CPPをコードする核酸の誘導可能なおよび組織特異的発現は、タグを伴う若しくは伴わないCPPをコードする核酸を誘導可能な若しくは組織特異的プロモーター/制御配列の制御下に置くことにより達成しうる。本目的上有用である組織特異的若しくは誘導可能なプロモーター/制御配列の例は、限定されるものでないがMMTV LTRの誘導可能なプロモーター、およびSV40後期エンハンサー/プロモーターを挙げることができる。加えて、金属、グルココルチコイド、ホルモンなどのような誘導剤に応答して誘導される、当該技術分野で公知であるプロモーターもまた本発明で企図している。従って、本発明は既知若しくは未知のいずれかでありかつそれに作動可能に連結された所望のタンパク質の発現を駆動することが可能であるいかなるプロモーター/制御配列の使用も包含することが認識されるであろう。
【0123】
ベクターを使用してCPPを発現することは、大量の組換え的に産生されたタンパク質の単離を可能にする。さらに、プロモーター/制御配列により駆動されるCPPの発現は、多様な細胞および組織型中でのCPPの発現を可能にし得る。従って、本発明は本発明の方法での使用のためのCPPの製造方法を包含するのみならず、本発明はさらに、真核生物細胞、原核生物細胞、真核生物の生物体からの組織サンプルなどを包含する当該技術分野で既知のいかなる細胞若しくは組織型中での発現CPPの方法も包含する。
【0124】
いずれかの特定のプラスミドベクター若しくは他のDNAベクターの選択は本発明における制限要因でなく、そして、多様なベクターが当該技術分野で公知である。さらに、特定のプロモーター/制御配列を選ぶこと、および所望のポリペプチドをコードするDNA配列にそれらのプロモーター/制御配列を作動可能に連結することは、当業者の熟練内に十分にある。こうした技術は当該技術分野で公知であり、そして例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク)およびAusubelら(1997、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク)に記述されている。
【0125】
本発明は従って、CPPをコードする単離された核酸を含んでなるベクターを包含する。所望の核酸のベクターへの組み込みおよびベクターの選択は、例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク)およびAusubelら(1997、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク)に記述されるとおり、当該技術分野で公知である。
【0126】
本発明はまた、こうしたベクターを含有する細胞、ウイルス、プロウイルスなども包含する。ベクターおよび/若しくは外因性核酸を含んでなる細胞の製造方法は当該技術分野で公知である。例えば、Sambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク)およびAusubelら(1997、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク)を参照されたい。
【0127】
CPPをコードする核酸は多様なプラスミドベクターにクローン化しうる。しかしながら、本発明は、プラスミド若しくはいずれかの特定のベクターに制限されると解釈されるべきでない。代わりに、本発明は、容易に入手可能でありかつ/若しくは当該技術分野で公知である多くのベクターを包含すると解釈されるべきである。
V.組換え細胞
本発明は、とりわけ、CPPをコードする単離された核酸、CPPを特異的に結合する抗体をコードする核酸などを含んでなる組換え細胞を包含する。一局面において、組換え細胞は、CPPをコードする核酸の一部分をコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトし得る。該核酸は細胞ゲノムに組込まれる必要はなく、また、それは細胞中で発現される必要もない。さらに、細胞は原核生物細胞であっても真核生物細胞であってもよく、そして、本発明はいずれか特定の細胞株若しくは細胞型に制限されると解釈されるべきでない。こうした細胞は、限定されるものでないが大腸菌(E.coli)、昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を挙げることができる。
VI.抗体
本発明はさらに、CPP、核酸アナログ、若しくは本発明のCPP−核酸アナログ構築物、またはそれらのフラグメントを特異的に結合する抗体を包含する。
【0128】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物を特異的に結合する抗体が、とりわけ細胞、組織若しくは器官中のこうした分子の検出に有用であることを理解するであろう。該抗体はまた、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物を単離かつ/若しくは精製するのにも使用し得る。さらに、CPP−核酸アナログ構築物が、該構築物内に含有される光活性化可能な部分によってRBPに一旦架橋されれば、抗体を使用して、該架橋された複合体を単離かつ/若しくは精製し得る。
【0129】
ポリクローナル抗体の生成は、所望の動物に抗原を接種すること、および例えばHarlowら(1988、Antibodies,A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー中)に記述されるもののような標準的抗体製造法を使用して、抗原を特異的に結合する抗体をそれから単離することにより達成される。こうした技術は、マルトース結合タンパク質若しくはグルタチオン(GSH)タグポリペプチド部分のような別のタンパク質の一部分、および/またはCPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物部分が免疫原性にされるような(例えばキーホールリンペットヘモシアニン、KLHと複合されたCPP)部分を含んでなるキメラタンパク質で動物を免疫することを包含する。キメラタンパク質は、例えばCPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物(例えば配列番号2)をコードする適切な核酸を、限定されるものでないがpMAL−2若しくはpCMXのような本目的上適するプラスミドベクターにクローン化することにより製造される。
【0130】
しかしながら、本発明は、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物を結合するポリクローナル抗体にのみ制限されると解釈されるべきでない。むしろ、本発明は、とりわけ、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物に結合しかつウェスタンブロット上若しくは細胞ライセート中に存在する場合はこれらの分子を結合することが可能である抗体を包含すると解釈されるべきである。
【0131】
当業者は、本明細書に提供される開示に基づき、該抗体がタンパク質のいずれかの部分と特異的に結合し得、また、完全長タンパク質を使用してそれに特異的な抗体を生成し得ることを認識するであろう。しかしながら、本発明は免疫原として完全長の分子を使用することに制限されない。むしろ、本発明は、分子の免疫原性の一部分を使用して、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物と特異的に結合する抗体を製造することを包含する。すなわち、本発明は、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物の免疫原性の一部分すなわち抗原決定子を使用して動物を免疫することを包含する。
【0132】
該抗体は、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物、またはそれらの一部分で、限定されるものでないがウサギ若しくはマウスのような動物を免疫することにより、あるいは、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物の少なくとも一部分を含んでなるタンパク質、または適切なCPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物を含んでなる一部分と共有結合された、例えばマルトース結合タンパク質タグポリペプチド部分を含んでなるタグポリペプチド部分を包含する融合タンパク質を使用して動物を免疫することにより、製造し得る。当業者は、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物を特異的に結合する抗体を製造するのにこれらのタンパク質のより小さいフラグメントもまた使用し得る。
【0133】
タンパク質若しくはペプチドの完全長若しくはペプチドフラグメントに向けられたモノクローナル抗体は、例えばHarlowら(1988、Antibodies,A Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー中)およびTuszynskiら(1988、Blood、72:109−115)に記述されるもののようないずれかの公知のモノクローナル抗体製造手順を使用して製造しうる。所望のペプチドの量は化学合成技術を使用してもまた合成しうる。あるいは、所望のペプチドをコードするDNAをクローン化し、そして大量のペプチドの生成に適する細胞中で適切なプロモーター配列から発現させうる。該ペプチドに向けられたモノクローナル抗体は、本明細書で参照されるところの標準的手順を使用して該ペプチドで免疫したマウスから生成される。
【0134】
本明細書に記述される手順を使用して得られるモノクローナル抗体をコードする核酸は、当該技術分野で利用可能でありかつ例えばWrightら(1992、Critical Rev.Immunol.12:125−168)およびその中に引用される参考文献に記述される技術を使用してクローン化かつシークェンシングしうる。
【0135】
さらに、本発明の抗体は、例えば、Wrightら(1992、Critical Rev.Immunol.12:125−168)およびその中に引用される参考文献、ならびにGuら(1997、Thrombosis and Hematocyst 77:755−759)に記述される技術を使用して「ヒト化」しうる。本発明はまた、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物のエピトープと特異的に反応性のヒト化抗体の使用も包含する。こうした抗体は、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物、またはそれらのフラグメントを特異的に結合することが可能である。本発明のヒト化抗体はヒト枠組みを有し、また、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物、またはそれらのフラグメントと特異的に反応性の抗体、典型的にはしかし限定されるものでないがマウス抗体からの1個若しくはそれ以上の相補性決定領域(CDR)を有する。
【0136】
本発明で使用される抗体をヒト化する場合、抗体は、Queenら(米国特許第6,180,370号明細書)、Wrightら(1992、Critical Rev.Immunol.12:125−168)およびその中に引用される参考文献、若しくはGuら(1997、Thrombosis and Hematocyst 77(4):755−759)に記述されるとおり生成させうる。Queenらに開示される方法は、アクセプターヒト枠組み領域をコードするDNAセグメントに結合されたCPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物のような所望の抗原に結合することが可能なドナー免疫グロブリンからのHおよびL鎖相補性決定領域(CDR)をコードする組換えDNAセグメントを発現することにより産生されるヒト化免疫グロブリンを設計することに、部分的に向けられる。一般的に言って、Queenの特許の発明は、実質的にいかなるヒト化免疫グロブリンの設計に対する応用可能性も有する。Queenは、DNAセグメントは、天然に会合している若しくは異種のプロモーター領域を包含するヒト化免疫グロブリンコーディング配列に作動可能に連結された発現制御DNA配列を典型的に包含することができることを説明している。発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換若しくはトランスフェクトすることが可能なベクター中の真核生物プロモーター系であり得るか、または、発現制御配列は、原核生物宿主細胞を形質転換若しくはトランスフェクトすることが可能なベクター中の原核生物プロモーター系であり得る。ベクターが適切な宿主に一旦組み込まれれば、該宿主を、導入されたヌクレオチド配列の高レベル発現に適する条件下で維持し、そして所望のとおり、ヒト化L鎖、H鎖、L/H鎖二量体若しくは無傷の抗体、結合フラグメントまたは他の免疫グロブリンの形態の収集および精製が後に続きうる(Beychok、Cells of Immunoglobulin Synthesis、Academic Press、ニューヨーク、(1979)(引用することにより本明細書に組込まれる))。
【0137】
多様なヒト細胞からのヒト定常領域(CDR)DNA配列は、公知の手順に従って単離し得る。好ましくは、ヒト定常領域DNA配列は、第WO 87/02671号明細書(引用することにより本明細書に組込まれる)に記述されるところの不死化B細胞から単離する。本発明の抗体の製造において有用なCDRは、同様に、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物に結合することが可能なモノクローナル抗体をコードするDNAに由来しうる。こうしたヒト化抗体は、限定されるものでないがマウス、ラット、ウサギ若しくは他の脊椎動物を挙げることができる、抗体を産生することが可能ないずれかの便宜的な哺乳動物供給源において公知の方法を使用して生成しうる。定常領域および枠組みDNA配列に適する細胞、ならびに抗体が発現かつ分泌される宿主細胞は、多数の供給源、例えばAmerican Type Culture Collection、バージニア州マナサスから得ることができる。
【0138】
上で論考されたヒト化抗体に加え、天然の抗体配列に対する他の改変を、当業者に公知の多様な組換えDNA技術を利用して容易に設計かつ製造し得る。さらに、多様な異なるヒト枠組み領域を、CPP、核酸アナログ、若しくはCPP−核酸アナログ構築物に向けられた抗体をヒト化するための基礎として、単独で若しくは組合せで使用しうる。一般に、遺伝子の改変は、部位特異的突然変異誘発(GillmanとSmith、Gene、8:81−97(1979);Robertsら、1987、Nature、328:731−734)のような多様な公知の技術を使用して、容易に達成しうる。
【0139】
あるいは、ファージ抗体ライブラリーを生成させうる。ファージ抗体ライブラリーを生成させるために、cDNAライブラリーを、最初に、発現されるべき所望のタンパク質、例えば所望の抗体をファージ表面上に発現する細胞、例えばハイブリドーマから単離されるmRNAから得る。該mRNAのcDNAコピーを、逆転写酵素を使用して製造する。免疫グロブリンフラグメントを指定するcDNAをPCRにより得、そして、生じるDNAを適するバクテリオファージベクターにクローン化して、免疫グロブリン遺伝子を指定するDNAを含んでなるバクテリオファージDNAライブラリーを生成させる。異種DNAを含んでなるバクテリオファージライブラリーの作成手順は当該技術分野で公知であり、そして、例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク)に記述されている。
【0140】
所望の抗体がその対応する結合タンパク質、例えば該抗体が向けられる抗原への結合に利用可能であるような様式で、それがその表面上に表示されるような、所望の抗体をコードするバクテリオファージを工作しうる。従って、特異的抗体を発現するバクテリオファージを、対応する抗原を発現する細胞の存在下でインキュベートする場合、該バクテリオファージは細胞に結合することができる。抗体を発現しないバクテリオファージは細胞に結合しないことができる。こうしたパニング技術は当該技術分野で公知でありかつWrightら(992、Critical Rev.Immunol.12:125−168)に記述されている。
【0141】
上述されたもののような方法は、M13バクテリオファージディスプレイを使用するヒト抗体の製造のため開発された(Burtonら、1994、Adv.Immunol.57:191−280)。本質的には、cDNAライブラリーを、抗体産生細胞の一集団から得たmRNAから生成させる。該mRNAは再配列された免疫グロブリン遺伝子をコードし、そして従って該cDNAはそれをコードする。増幅されたcDNAをM13発現ベクターにクローン化して、ヒトFabフラグメントをそれらの表面上に発現するファージのライブラリーを創製する。目的の抗体を表示するファージを抗原結合により選択し、そして細菌中で繁殖させて可溶性ヒトFab免疫グロブリンを産生させる。従って、慣習的なモノクローナル抗体合成と対照的に、本手順は、ヒト免疫グロブリンを発現する細胞よりもむしろヒト免疫グロブリンをコードするDNAを不死化する。
【0142】
たった今提示された手順は、抗体分子のFab部分をコードするファージの生成を記述する。しかしながら、本発明は、Fab抗体をコードするファージの生成にのみ制限されると解釈されるべきでない。むしろ、一本鎖抗体をコードするファージ(scFv/ファージ抗体ライブラリー)もまた本発明に包含される。Fab分子はIg L鎖全体を含んでなる。すなわち、それらはL鎖の可変および定常双方の領域を含んでなるが、しかし、H鎖の可変領域および第一の定常領域ドメイン(CH1)のみを包含する。一本鎖抗体分子は、Ig Fvフラグメントを含んでなるタンパク質の単一の鎖を含んでなる。Ig Fvフラグメントは抗体のHおよびL鎖の可変領域のみを包含し、その中に定常領域を含有させない。scFv DNAを含んでなるファージライブラリーは、Marksら(1991、J.Mol.Biol.222:581−597)に記述される手順に従って生成させうる。そのように生成されたファージの、所望の抗体の単離のためのパニングは、Fab DNAを含んでなるファージライブラリーについて記述されたものに類似の様式で実施する。
【0143】
本発明は、HおよびL鎖可変領域がほぼ全部の可能な特異性を包含するような、それらが合成されうる合成ファージディスプレイライブラリー(Barbas、1995、Nature Medicine 1:837−839;de Kruifら 1995、J.Mol.Biol.248:97−105)を包含するともまた解釈されるべきである。
VII.方法
本発明は、部分的に、CPP−核酸アナログ膜浸透性構築物が、予め決められた細胞内ポリヌクレオチド配列に結合するタンパク質を同定するのに使用し得るという新規発見に基づく。本明細書の別の場所で詳細に記述されるとおり、1個若しくはそれ以上の光反応性基を含有するCPP−核酸アナログを使用して、該核酸アナログと同一の予め決められた細胞内ポリヌクレオチド配列に結合するタンパク質に架橋し得る・
本発明の一態様において、RNA配列に結合するタンパク質の同定方法が提供される。本発明の別の態様において、DNA配列に結合するタンパク質の同定方法が提供される。
【0144】
一態様において、予め決められたRNA配列を含んでなる細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定方法は、膜浸透性構築物に細胞膜を横断させるのに適する条件下で細胞に膜浸透性構築物を提供する段階、該構築物のポリヌクレオチドとの結合に適する条件下で、構築物を細胞内ポリヌクレオチドと結合させて構築物−ポリヌクレオチド複合体を形成させる段階、構築物上の光反応性部分を活性化させて、それにより核酸アナログを予め決められたRNA配列に結合するタンパク質と共有架橋する段階、架橋された核酸アナログ−タンパク質複合体を細胞から単離する段階、および架橋されたタンパク質を同定する段階を包含する。
【0145】
本発明の一局面において、膜浸透性構築物は、最低1個の光反応性アミノ酸を含有する核酸アナログを包含する。一局面において、光反応性アミノ酸はBPAである。本発明の別の局面において、膜浸透性構築物は、同一性R−CPP−Rのペプチド部分を包含し、式中CPPは細胞透過性ペプチドであり、さらに、式中、RおよびRのそれぞれはペプチド、アミノ酸、NH、H若しくはOHよりなる群から独立に選択され、さらに、核酸アナログは、R、R、前記ペプチド部分内のシステイン残基、若しくは前記ペプチド部分内のリシン(K)残基よりなる群から選択されるメンバーの1種に共有結合する。本発明の別の局面において、CPPはトランスポータンである。本発明のなお別の局面において、CPPはTP10すなわちR−AFYLLGKINLKALAALAKKIL−R(配列番号2)であり、式中Rは水素でありかつRはNHである。本発明で有用な他のCPPは、本明細書の別の場所に詳細に記述されている。
【0146】
本発明の別の局面において、核酸アナログはPNAである。別の局面において、核酸アナログはPNA/DNAキメラである。本発明のなお別の局面において、核酸アナログは核酸塩基が修飾されたオリゴヌクレオチドである。本発明の一態様において、PNAは、Ank mRNAの残基−123ないし−102に対応する配列TACGAAACCTCTAAATCAAGG(配列番号3)を有する。別の態様において、PNAは、Ank mRNAの残基+1592ないし+1610に対応する配列AAACCTCTAAATCAAGGCCTC(配列番号4)を有する。本発明のなお別の態様において、PNAは、Ank mRNAの残基+1594ないし+1614に対応する配列AAGCGCGGCTGCTCTAGCAGAA(配列番号5)を有する。
【0147】
本発明の一局面において、核酸アナログは化学結合によりCPP部分に連結される。一局面において、該結合はジスルフィド結合である。なお別の局面において、核酸アナログはCPP部分内のシステイン残基に共有結合される。本発明の方法で有用な多数の他の膜浸透性構築物が、本明細書に別の場所により詳細に記述されており、そして従ってこの時点ではさらに論考されないであろう。
【0148】
本発明の別の態様において、細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定方法は、架橋された核酸アナログ−タンパク質複合体の単離のための特定の方法段階を包含する。一局面において、該方法は、架橋された核酸アナログ−タンパク質を含有する細胞を溶解して細胞ライセートを生じさせること、前記細胞ライセートを、架橋された核酸アナログ−タンパク質を固体支持体に結合させるのに適する条件下で予め決められたRNA配列を含んでなる固体支持体と接触させて付加的な複合体を形成させること、および細胞ライセートから該付加的な複合体を分離することを包含する。本発明のなお別の態様において、該方法は、架橋された核酸アナログ−タンパク質を含有する細胞を溶解して細胞ライセートを生じさせること、該細胞ライセートを、CPP、核酸アナログ、CPP−核酸アナログ構築物、および予め決められたRNA配列に結合するタンパク質の最低1種に特異的な抗体を含んでなる固体支持体と接触させることを包含する。該インキュベーションは、架橋された核酸アナログ−タンパク質を抗体に結合させて複合体を形成させるのに適した条件下で実施し、そして、細胞ライセートから抗体複合体を分離すること。
【0149】
図1は、PNAのアニーリングおよびRNA結合の特徴付け(「PARC」)を使用してRNA結合タンパク質を同定する、本発明の一態様を描く。本態様において、細胞透過性ペプチド−ペプチド核酸(CPP−PNA)構築物を、PNAに直接結合された光活性化可能なアミノ酸、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン(BPA)を用いて合成する。細胞をCPP−PNAに一旦曝露すれば、標的RNA上の相補配列にハイブリダイズすることができる結合されたPNAをCPPとともに運搬して細胞膜を横断するのに十分な時間をCPPに提供する。UV照射は、PNAを最も近い物質すなわちRNA結合タンパク質に架橋する遊離フェニルアラニン基の創製をもたらす。細胞を溶解し、そして、タンパク質ライセートを、PNAに対しアンチセンスのビオチニル化オリゴヌクレオチドと以前に結合させたストレプトアビジン磁性ビーズとともにインキュベートして、かようにPNAに結合されるタンパク質のみを回収する。これらの単離されたタンパク質を電気泳動で分離し、クマシータンパク質色素で染色することにより可視化し、ゲル薄片中で単離し、そして質量分析により分離する。
【0150】
当業者により理解されるであろうとおり、本発明の方法は、本明細書に示される開示に基づく、核酸アナログ−タンパク質複合体の単離若しくは精製のための、いかなる固体支持体の使用にもまた敏感である。
VIII.キット
本発明は、CTT−核酸アナログ膜浸透性構築物、アプリケーター、および本発明の方法を実施するための該キットの使用を記述する説明資料を含んでなる、細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定のための多様なキットを包含する。これらの説明は、本明細書に提供される方法および例を単純に例示する。モデルキットを下述するとは言え、他の有用なキットの内容が本開示に照らして当業者に明らかであろう。これらのキットのそれぞれは本発明内で企図されている。
【0151】
本発明のキットの膜浸透性構築物は、核酸アナログ部分に連結されたCPP部分を包含する。一態様において、CPP部分はトランスポータンである。該構築物は核酸アナログ部分をさらに包含する。一態様において、該核酸アナログ部分はPNA分子である。一局面において、PNAは、ACGAAACCTCTAAATCAAGG(配列番号3)、AAACCTCTAAATCAAGGCCTC(配列番号4)およびAAGCGCGGCTGCTCTAGCAGAA(配列番号5)よりなる群から選択される。該構築物はさらに光反応性標識を包含する。本発明の一態様において、光反応性標識は光反応性アミノ酸である。一局面において、光反応性アミノ酸は該構築物の核酸アナログ部分の一部である。
【0152】
本発明のキットに包含される膜浸透性構築物は、本明細書の別の場所に記述されるところの単離されたポリペプチドであり得る。さらに、本明細書に記述される本発明の組成物および方法が、本発明のキットでの使用に等しく応用可能であることが理解されるであろう。
【実施例】
【0153】
実験実施例
本発明は今や以下の実施例に関して記述する。これらの実施例は具体的説明の目的上のみ提供され、そして、本発明は、これらの実施例に制限されるといかなる方法でも解釈されるべきでなく、しかし、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるいかなるおよび全部の変形物も包含すると解釈されるべきである。
実験実施例1:PNA合成
一般的配列Bpa−Cys−PNA−Lys−アミドを有するPNAオリゴマーを、Kochら(Koch,T.ら、J.Pept.Res.、Jan;49(1):80−8(1997))により記述されたプロトコルに従って合成した。簡潔には、(4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂を、テトラフルオロホウ酸2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(TBTU)/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(Hobt)で活性化したt−Boc−Lys−OH、ならびにその後の置換0,1mmol/gまでのアセチル化で負荷を落とした(download)。t−Boc PNA単量体を、Applied Biosystems 433A合成機上で10μmolスケールでヘキサフルオロリン酸N−O−(7−アザベンゾトリアゾル−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(HATU)エステルとして集成した。t−Boc−Cys(4−MeBzl)−OHおよびt−Boc−Bpa−OHをTBTUエステルとして人的に結合した。
【0154】
担体ペプチドTP10は、t−Boc戦略およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)/Hobt活性化を使用して、Applied Biosystems 431A合成機で合成した。(Pooga,M.ら、Methods Mol.Biol.、;208:225−36(2002))のLysの直交する保護基(orthogonal protection group)を、主ペプチド鎖の完成後に特異的に除去し、そして、TBTU/Hobtで活性化したt−Boc−Cys(Npys)−OHを側鎖に結合した。
【0155】
ペプチドおよびPNAオリゴマーを、フッ化水素により0℃で45分樹脂から切断した。p−クレゾール若しくはp−クレゾールおよびp−チオクレゾールの混合物を、それぞれペプチドおよびPNAのスカベンジャーとして使用した。切断されたペプチドを逆相HPLC(C18、Discovery 25cm×21.2mm、5μm、Supelco)上で精製した。PNAおよびペプチドの質量を、MALDI−TOF(Voyager−DE STR)質量分析により確認した(図3)。
【0156】
1μmolのペプチドおよびPNAオリゴマーを、100μlのジメチルスルホキシド(DMSO)、100μlのジメチルホルミアミドおよび300μlの0.1M酢酸緩衝液 pH5.5中で複合させた。PNAがペレットのままであった場合に30μlのトリフルオロ酢酸を添加した。混合物を室温で一夜攪拌し、そして反応生成物を逆相HPLC C18カラム(Discovery、25cm×10mm、5μm)で分離した。各複合物の同一性を、HPLCの多波長検出器での吸光度プロファイルおよびMALDI−TOF質量分析により決定した。生じたCPP−PNAは後に続くとおりであった。「Ank3」はAnk mRNAの残基−123ないし−102に対応するPNAであり、「Ank2」はAnk mRNAの残基+1592ないし+1610に対応するPNAであり、そして「Ank1」はAnk mRNAの残基+1594ないし+1614に対応するPNAである。
【0157】
下に具体的に説明されるとおり、ジスルフィド架橋がPNAのN末端CysとTP10中のLysの側鎖に結合されたCysとの間で形成される:
【0158】
【表1】

【0159】
実験実施例2:皮質培養物
皮質培養物はB27補充物質を含むNB中5%CO中で37℃で維持した。細胞が適切な齢(7ないし22日)のものに一旦なれば、それらを直ちにPARC手順をやり遂げるか若しくはカリウムで前処理するかのいずれかであり、細胞のDHPG若しくはBDNFカリウム刺激を、NB/B27培地を細胞から除去すること、およびそれを予め加温した1×MAPEX溶液で37℃で5%CO中5分間置き換えることにより実施し、その後溶液を除去しかつ予め加温したNB/B27培地で置き換えた。細胞をDHPGで処理するため、予め加温したNB/B27培地を使用する培地の半分の交換を実施した。新鮮培地との30分のインキュベーション後に、DHPGを20μMの最終濃度まで添加し、そして細胞を30分間インキュベートした。実験実施例3に記述されるところの本発明のPARC過程を実施するために、DHPGを含有する培地を、予め加温したNB/B27培地で置き換えた。Ank RNAの発現は、体細胞ならびに樹状突起中で、50ng/mlの最終濃度のBDNFの存在下で3時間にわたって劇的に増大した。実験実施例3に示されるところのPARC処理を使用して得られる結果の発展のため、50ng/mlのBDNFを90分の前処理の間NB/B27培地に添加し、次いで3時間の総BDNF処理時間の間、PNAを添加した。
実験実施例3:PARC手順
TP10−PNA複合物を5μMの濃度で1M HBS(HEPES緩衝生理的食塩水)、pH7.4に懸濁し、そして使用されるまで−20℃で保存した。皮質細胞を、予め加温した神経基礎(neurobasal)培地で希釈した50nM TP10−PNAと一緒に、神経基礎培地およびB27補充物質を含む培養物中、5%CO中37℃で90分間インキュベートした。PNAを含有する神経基礎培地を培養皿から吸引し、そして氷冷1M HBS、pH7.4を皿に迅速に添加して細胞を洗浄しかつそれらを溶解のため準備した。溶解前に、細胞を、PNAおよびRNA結合タンパク質を架橋させるために、UV光源から2.5インチの距離で2.5分間UV照射した。細胞をその後溶解した。
実験実施例4:細胞溶解およびタンパク質ライセートの単離
細胞は、UV照射後にHBSを除去すること、および氷冷TX−100溶解緩衝液(25mM HEPES、pH7.4、0.1%トリトンX−100、300mM NaCl、20mMβグリセロリン酸、1.5mM MgCl2、1mM DTT、200nM Na3VO4、2mM EDTA、pH8.0、1mMベンズアミジン、1mM PMSF、2μg/mlロイペプチン、2μg/mlアプロチニン)を迅速に添加することにより溶解した。細胞を直ちにプレートから掻き取り、収集しかつ氷上に置いた。タンパク質ライセートは使用するまで−70℃で保存した。
実験実施例5:ビオチニル化したセンスオリゴヌクレオチドのストレプトアビジン磁性ビーズへの結合
ビオチニル化したセンスオリゴヌクレオチドのストレプトアビジン磁性ビーズへの結合は、10mgのストレプトアビジン磁性ビーズ(Pure Biotech、カタログ番号MSTR0502)を保存溶液から磁性的に分離すること、およびPBS、pH7.4で2回洗浄することにより達成した。第二のPBS洗浄液をビーズから吸引し、ビーズをその後、50μgのビオチニル化センスオリゴヌクレオチドを含有する1mlのPBSに再懸濁した。この結合反応を回転振とう器上室温で1時間インキュベートした。磁性分離後に、ビーズ−ストレプトアビジン−ビオチン−オリゴ複合体をPBS、pH7.4で洗浄した。洗浄段階を5回反復して、いかなる未結合のビオチニル化オリゴヌクレオチドも除去した。最後のPBS洗浄液を吸引分離し、そして、ビーズを、保存緩衝液(10ml PBS、pH7.4中10mg BSAおよび2mg NaN)中に10mg/mlで再懸濁したか、若しくはそれらを直ちに使用するはずであった場合はTX−100溶解緩衝液に10mg/mlで再懸濁したかのいずれかであった。オリゴを結合させたビーズは使用の準備ができるまで4℃で保存し、その時点でそれらを保存溶液から磁性的に分離し、そしてTX−100溶解緩衝液に10mg/mlで再懸濁した。
実験実施例6:全タンパク質ライセートからのRBPの単離
全ライセートのアリコートをゲル分析のため−70℃に保ち;ライセートの残部は、センスオリゴに以前に結合させた100μgの磁性ビーズとともに室温で1時間回転した。磁性分離後に流出液(flowthrough)を除去した(1アリコートを将来のゲル分析のため保存した)。ビーズは今や、RBPに架橋させたPNAにハイブリダイズするはずである。ビーズ−オリゴ−PNA−RBP複合体をTX−100緩衝液で2回洗浄して、いかなる未結合のPNA−RBPも除去した。プロテアーゼ阻害剤を、予め加温した塩を含まないバージョンのTX−100溶解緩衝液に添加し、そしてタンパク質を、30μlのこの予め加温した塩を含まない緩衝液とともにRT/37℃/50℃で20分間回転することにより、磁性ビーズから溶出する。
実験実施例7:ゲル電気泳動および染色
ポリアクリルアミドゲル電気泳動を、NuPAGE 10%ビス−トリスゲル(Invitrogen、カタログ番号NP0301−3)を使用して、全ライセート、流出液および結合したタンパク質で実施した。PARCプロトコルを使用して得られた結果を検査するため、Biorad銀染色プラスキット(Silverstain Plus Kit)(Bioradカタログ番号161−0449)を使用してタンパク質を可視化した。より感受性の銀染色を使用して最適条件が一旦決定されれば、結合したタンパク質の可視化を、質量分析の前にクマシーブルータンパク質染色を使用して実施した。タンパク質ゲルを、固定剤(46%メタノール、7%酢酸)中で1時間、次いで染色液(46%メタノール、7%酢酸、濾過滅菌した0.1%クマシー染色ブリリアントブルーR250)中で1時間、振とうしながら室温でインキュベートし、そしてその後、タンパク質のバンドが検出され得るまで、5%メタノール、7.5%酢酸中で脱染した。その時点で、ゲルを5%酢酸停止溶液に移した。結合したタンパク質の濃縮を具体的に説明したバンドをその後ゲルから切り出し、そして該ゲル薄片を1〜2%酢酸に入れ、そして質量分析を実施するまで−20℃で保存した。
【0160】
多数のタンパク質が、本発明の本明細書に示される本技術を使用して、Ank mRNAとの複合体中で単離された。単離されたタンパク質は質量分析を使用して同定し;hnRNP Kおよびヌクレオリンのようなこれらのタンパク質のいくつかは、RNA結合活性を示すことが以前に示された。ヌクレオリンは、本発明のPARC方法により同定されたいかなる他のタンパク質とも異なり、本明細書で使用される各PNAとともに、およびすべての前処理条件下で単離された。この知見の機能的意義は、この偏在する特性がAnk発現の調節におけるヌクレオリンの顕著な役割に関係することを示唆している。他のタンパク質は、本明細書に開示されるPNAの1若しくは2種との複合物中でのみ単離されたが、しかし全3種でなかった。hnRNP KはAnk 1 PNAとともにのみ、また、hnRNP UはAnk 2 PNAおよびAnk 3 PNAとともにのみ見出された(図3、4および4A)。
【0161】
図3は、BNDF処理および「PARC」分析(図1に記述されるところの)後に回収されたタンパク質を含有するクマシー色素染色した電気泳動ゲルの結果を示す。10日齢の皮質細胞は、50nMのAnk 1 PNAを追加の90分間添加する前に90分から50ng/mlのBDNFで処理した。細胞をその後UV照射し、溶解し、そして結合したタンパク質を、アンチセンス−PNAビオチニル化オリゴヌクレオチドに結合させたストレプトアビジン磁性ビーズにより回収した。全ライセート(TL)、流出液(FT)および結合したタンパク質を、SDS−PAGEにより分離しかつクマシー染色した。濃縮されたバンド(具体的に説明されるところの)を単離し、タンパク質分解し(proteolyzed)、そして質量分析を介して同定した。
【0162】
ank RNAのヌクレオリンタンパク質との共存を、ank RNAについて同時蛍光in situハイブリダイゼーション、およびヌクレオリンについて蛍光免疫組織化学により確認した。ヌクレオリン抗体を、固定した皮質ニューロンに適用した。抗体の結合は蛍光を使用して検出した。in situハイブリダイゼーションは、Ank RNAの異なる領域に結合する短い蛍光標識オリゴヌクレオチドの混合物を用いて実施した。各領域に使用した蛍光色素は、抗体染色が緑色を出現させかつRNAが赤色を出現させたように、また、共存する実体が黄色で出現したように異なった。
【0163】
表1は、本発明の方法および組成物による、薬理学的刺激の関数としての各PNA(Ank 1、Ank 2およびAnk 3)に結合するRNA結合タンパク質を具体的に説明する。これらのデータは、より多くのRBPが他の領域よりもank RNAの3’端に結合すること、およびこの結合が薬理学的に調節され得ることを示す。
【0164】
【表2】

【0165】
実験実施例8:ジスルフィド結合を使用するPNAの細胞透過性ペプチドへの複合
PNAと細胞透過性ペプチドとの間のヘテロ二量体ジスルフィド架橋を得るために、1成分すなわちPNA若しくはペプチドのいずれかのシステイン残基を誘導体化しなければならない。3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル(NPys)誘導体化Cysは遊離チオールに対し特異的に反応性である。Npys標識したCysは商業的に入手可能であり、そして一般的に保護されたアミノ酸のようにペプチド鎖に集成し得る。
【0166】
最初に、1モル等量(0.5〜2mg)のペプチドおよび1モル等量のPNAを、個別の微小遠心管中で調製する。結合効率はPNAおよびペプチド双方の配列間で変動し、そしてそれぞれの溶解性および純度に依存する。従って、1:1のモル比はすべての場合で最適でないかもしれず、そして、所望の結果を達成するために、比の最適化が必要とされることができる。PNAを200μlの脱酸素DMSOに溶解する。ペプチドを100μlの0.01M酢酸緩衝液 pH5.5に溶解し、そして200μlのDMFを溶液の双方に添加する。2種の溶液を混合しかつ徹底的にボルテックス攪拌する。混合物を一夜、若しくは最低4時間、室温で光から遮蔽して攪拌する。
【0167】
反応生成物は半調製的RP−HPLCにより分離し得る。C−18カラム、若しくは異なる場合はペプチドの精製に使用されるカラムを使用する。アイソクラチック勾配、例えば20%溶離液Aを5分間、次いで40分での溶離液Aの100%までの漸次の増大を使用し得る。20%アセトニトリルは、「未反応の」PNAがカラム中の固定相と相互作用することを予防することができ、そして未反応のPNAは溶媒(DMSOおよびDMF)と一緒にカラムから洗浄することができる。複合されたPNAはペプチドピークに先行する。使用される検出波長は:218nm(ペプチド結合の吸収極大)および260nm(PNA核酸塩基)を包含する。単一波長検出器については、260nmを検出に使用する。双方の波長を吸収する画分を収集する。
【0168】
画分(1個若しくは複数)を凍結乾燥しかつ暗所に−20℃で保管する。複合物の質量分析を使用して、所望の生成物をさらに確認しうる。サンプルの調製若しくは質量分析データの収集の間にジスルフィド架橋を還元しないように注意を払わなくてはならない。
【0169】
本明細書で引用されるそれぞれのかつすべての特許、特許出願および刊行物の開示は、そっくりそのまま引用することによりここに本明細書に組込まれる。
【0170】
本発明は特定の態様を参照して開示された一方、本発明の他の態様および変形物が、本発明の真の技術思想および範囲から離れることなく当業者により考案されうることが明らかである。付属として付けられる請求の範囲は、全部のこうした態様および同等の変形物を包含すると解釈されることを意図している。
【0171】
本発明を具体的に説明する目的上、本発明のある態様が図面に描かれる。しかしながら、本発明は、図面に描かれる態様の正確な配置および手段に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の一態様のPNAアニーリングおよびRNA結合の特徴付け(「PARC」)技術を一般的に描く図である。図1に具体的に説明されるPNA配列は配列番号2に示される。
【図2】Ank mRNA配列を具体的に説明し、対応するアミノ酸配列がヌクレオチド配列の下に示される。強直症mRNAの本配列は、コーディング配列に関して、本発明の多様な態様で使用される3種のPNAの位置を具体的に説明する。Ank 1(配列番号5)およびAnk 2(配列番号4)PNAは、3’−UTR中の数塩基を除きオーバーラップし;Ank 3(配列番号3)PNAは、他方、5’−UTR中に位置する。
【図3】BDNF処理および「PARC」分析(図1に記述されるところの)後に回収されるタンパク質を含有するクマシー色素染色した電気泳動ゲルの画像である。
【図4】Ank mRNAの3個の異なる領域に向けられたPNA−CPP構築物を使用するRNA結合タンパク質の同定を具体的に説明する要約した表である。「処理なし」=PNA−CPP構築物を含有する細胞の処理なし;「DHPG」=PNA−CPP構築物を含有する細胞の20μM DHPGでの処理;「K+」=PNA−CPP構築物を含有する細胞の3mMカリウムでの処理;および「BDNF」=PNA−CPP構築物を含有する細胞の50ng/ml BDNFでの処理)。「Ank3」はAnk mRNAの残基−123ないし−102に対応するPNAであり、「Ank2」はAnk mRNAの残基+1508ないし+1525に対応するPNAであり、および、「Ank1」はAnk mRNAの残基+1594ないし+1614に対応するPNAである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)細胞内ポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸アナログであって、前記核酸アナログは最低1個の光反応性部分を含んでなり;
b)R−CPP−Rを含んでなるペプチド部分であって、式中CPPは細胞透過性ペプチドであり、さらに、式中、RおよびRのそれぞれは、ペプチド、アミノ酸、NH、H若しくはOHよりなる群から独立に選択され、さらに、前記核酸アナログが、R、R、前記ペプチド部分内のシステイン残基、若しくは前記ペプチド部分内のリシン(K)残基よりなる群から選択されるメンバーの1種に共有結合されており;ならびに
c)前記核酸アナログおよび前記ペプチド部分を連結する化学結合
を含んでなる、脂質膜を横断する膜浸透性構築物の輸送のための膜浸透性構築物。
【請求項2】
前記CPPが、配列番号2、配列番号6、配列番号7および配列番号8よりなる群から選択される、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項3】
前記化学結合が不安定である、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項4】
前記不安定な化学結合が、ジスルフィド結合、エステル結合、アビジン−ビオチン結合、環状不飽和マレアマートおよび13−アシルヒドラゾンよりなる群から選択される、請求項2に記載の膜浸透性構築物。
【請求項5】
およびRの一方がシステインを含んでなり、さらに、前記核酸アナログが前記システインにジスルフィド結合されている、請求項2に記載の膜浸透性構築物。
【請求項6】
ペプチド部分が、配列番号2のホモログ若しくは保存的バリアントを含んでなる、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項7】
核酸アナログが、ペプチド核酸(PNA)、PNA/DNAキメラ、PNA/RNAキメラ、RNA、DNA、2’−O−アルキルRNA、2’−O−アルキルRNA/DNAキメラ、および核酸塩基が修飾されたオリゴヌクレオチドよりなる群から選択される、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項8】
前記光反応性部分が、光反応性アミノ酸、p−ベンゾイルベンゾイル(BzBz)部分、アジド部分、4−ベンゾイル安息香酸誘導体、4−アジド−2,3,5,6,−テトラフルオロ安息香酸誘導体、およびN−((2−ピリジルジチオ)エチル)−4−アジドサリチルアミド誘導体よりなる群から選択される、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項9】
前記光反応性部分が、パラ−ベンゾイル−L−フェニルアラニン(Bpa)およびパラ−アジド−L−フェニルアラニン(Apa)よりなる群から選択される光反応性アミノ酸である、請求項8に記載の膜浸透性構築物。
【請求項10】
標識をさらに含んでなる、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項11】
標識が、ビオチン、ジニトロフェニル、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、シアニン、ジゴキシゲニン、インターカレート、副溝結合物質、化学発光前駆体、セレンおよびカドミウムよりなる群から選択される、請求項10に記載の膜浸透性構築物。
【請求項12】
R1およびR2の一方がシステインを含んでなり、かつ、前記核酸アナログが前記システインにジスルフィド結合されている、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項13】
前記核酸アナログが、ジスルフィド結合により、前記ペプチド部分中のリシン残基に結合されている、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項14】
C末端ロイシン残基がアミド化されている、請求項1に記載の膜浸透性構築物。
【請求項15】
ジスルフィド結合が一対のシステイン残基の間に配置されている、請求項13に記載の膜浸透性構築物。
【請求項16】
a)細胞内ポリヌクレオチドとハイブリダイズする、構造R−Cys−PNA−Lys−アミドの核酸アナログであって、式中Rは光反応性アミノ酸であり;
b)R−AFYLLGKINLKALAALAKKIL−R(配列番号2)を含んでなるペプチド部分であって、式中Rは水素でありかつRはNHであり、さらに、前記核酸アナログが前記ペプチド部分内のシステイン残基に共有結合されており;ならびに
c)該核酸アナログおよび該ペプチドを連結するジスルフィド結合
を含んでなる、脂質膜を横断する膜浸透性構築物の輸送のための膜浸透性構築物。
【請求項17】
前記核酸アナログが、構造Bpa−Cys−PNA−Lys−アミドを有する、請求項16に記載の膜浸透性構築物。
【請求項18】
前記PNAが:
a)TACGAAACCTCTAAATCAAGG(配列番号3);
b)AAACCTCTAAATCAAGGCCTC(配列番号4);および
c)AAGCGCGGCTGCTCTAGCAGAA(配列番号5)
よりなる群から選択される、請求項16に記載の膜浸透性構築物。
【請求項19】
予め決められたRNA配列を含んでなる細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定方法であって、前記方法が:
a)i)細胞内ポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸アナログであって、前記核酸アナログは最低1個の光反応性部分を含んでなり;
ii)R−CPP−Rを含んでなるペプチド部分であって、式中CPPは細胞透過性ペプチドであり、さらに、式中、RおよびRのそれぞれが、ペプチド、アミノ酸、NH、H若しくはOHよりなる群から独立に選択され、さらに、前記核酸アナログが、R、R、前記ペプチド部分内のシステイン残基若しくは前記ペプチド部分内のリシン(K)残基よりなる群から選択されるメンバーの1種に共有結合されており;ならびに
iii)前記核酸アナログおよび前記ペプチド部分を連結する化学結合
を含んでなる、脂質膜を横断する膜浸透性構築物の輸送のための膜浸透性構築物を提供する段階;
b)前記構築物を、前記構築物の前記細胞内ポリヌクレオチドとの結合に適する条件下で前記ポリヌクレオチドと結合させて、構築物−ポリヌクレオチド複合体を形成させる段階;
c)前記光反応性部分を活性化して、それにより、前記核酸アナログを、前記予め決められたRNA配列に結合する前記タンパク質と共有架橋させる段階;
d)前記架橋された核酸アナログ−タンパク質を前記細胞から単離する段階;ならびに
e)前記核酸アナログに架橋された前記タンパク質を同定して;
それにより予め決められたRNA配列に結合するタンパク質を同定する段階
を含んでなる、上記方法。
【請求項20】
段階d)における前記単離することが:
i)架橋された核酸アナログ−タンパク質を含有する細胞を溶解して細胞ライセートを生じさせること;
ii)前記架橋された核酸アナログ−タンパク質を固体支持体に結合させるのに適する条件下で、前記予め決められたRNA配列を含んでなる前記固体支持体と前記細胞ライセートを接触させて複合体を形成させること;および
iii)前記ライセートから前記複合体を分離すること
を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記単離することの段階d)が:
i)架橋された核酸アナログ−タンパク質を含有する細胞を溶解して細胞ライセートを生じさせること;
ii)前記細胞ライセートを:
A)CPP;
B)核酸アナログ;
C)CPP−核酸アナログ構築物;および
D)予め決められたRNA配列に結合するタンパク質
よりなる群のメンバーの最低1種に特異的な抗体を含んでなる支持体と;
前記架橋された核酸アナログ−タンパク質を前記抗体に結合させるのに適する条件下で接触させて複合体を形成させること;ならびに
iii)前記複合体を前記ライセートから分離すること
を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記PNAが:
a)TACGAAACCTCTAAATCAAGG(配列番号3);
b)AAACCTCTAAATCAAGGCCTC(配列番号4);および
c)AAGCGCGGCTGCTCTAGCAGAA(配列番号5)
よりなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ペプチド部分が、R−AFYLLGKINLKALAALAKKIL−R(配列番号2)を含んでなり、式中Rは水素でありかつRはNHであり、さらに、前記核酸アナログが前記ペプチド部分内のシステイン残基に共有結合されている、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
予め決められたRNA配列を含んでなる細胞内ポリヌクレオチドに結合するタンパク質の同定のためのキットであって、前記キットが:
a)i)細胞内ポリヌクレオチドとハイブリダイズする核酸アナログであって、前記核酸アナログは最低1個の光反応性部分を含んでなり;
ii)R−CPP−Rを含んでなるペプチド部分であって、式中CPPは細胞透過性ペプチドであり、さらに、式中、RおよびRのそれぞれが、ペプチド、アミノ酸、NH、H若しくはOHよりなる群から独立に選択され、さらに、前記核酸アナログが、R、R、前記ペプチド部分内のシステイン残基若しくは前記ペプチド部分内のリシン(K)残基よりなる群から選択されるメンバーの1種に共有結合されており;ならびに
iii)前記核酸アナログおよび前記ペプチド部分を連結する化学結合
を含んでなる、脂質膜を横断する膜浸透性構築物の輸送のための膜浸透性構築物;
b)アプリケーター;ならびに
c)その使用のための説明資料
を含んでなる、上記キット。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−515186(P2007−515186A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547393(P2006−547393)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/043401
【国際公開番号】WO2005/062947
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】