説明

RO膜エレメント交換装置

【課題】圧力容器からRO膜エレメントの取り出しと搬送を効率的に行うことができるRO膜エレメント交換装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明のRO膜エレメント交換装置10は、長手方向を水平にしたRO膜エレメントを支持可能な載置台12を備えた本体と、前記載置台12の前記RO膜エレメントを取り出す箇所と前記RO膜エレメントが挿入された圧力容器の開口の間を移動可能な移動手段と、前記RO膜エレメントの軸芯に沿ってロッドを前記載置台から前記圧力容器の前記RO膜エレメントへ伸縮可能な伸縮手段15と、前記ロッドに取り付けて、前記RO膜エレメントの中心管と結合する結合手段300と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水淡水化や超純水を製造するRO(逆浸透)膜ろ過装置に使用されるRO膜エレメントを交換するRO膜エレメント交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RO膜は、水に溶けている塩類、有機物等を除去し、水だけを通すことができる分離膜である。RO膜は海水から真水を得る海水淡水化や、電子部品の洗浄に用いる超純水を製造する膜として利用されている。
【0003】
図26はRO膜エレメントの構成概略図である。RO膜エレメント280を構成する逆浸透膜284は、内部に透過水流路材286を保持して、3辺を接着樹脂で封止された封筒状になっている。逆浸透膜284と逆浸透膜284の間のメッシュスペーサー288は、原水流路の確保と、乱流を促進させる機能を有している。上流側から供給される原水は中心管282と平行に軸方向に流れる。逆浸透膜284を透過した透過水は、透過水流路材286に沿って膜封筒の開放端へ流れ、中心管282側面の孔から管内へ流入して、下流側から外部へと取り出される。一方、透過水流路材286を透過しない原水は、メッシュスペーサー288内を中心管282と平行に軸方向に流れて下流側から濃縮水として外部へ取り出される。
【0004】
図27はRO膜モジュールの概略断面図である。RO膜エレメント280は、圧力容器292に収容されている。RO膜モジュール294が長尺の場合には、RO膜エレメント280が複数本直列に装填される。このときRO膜エレメント280同士の中心管はエレメント間ジョイント296で連結されて、原水が混入しないようにしている。RO膜モジュール294の最上流のRO膜エレメント280には中心管への原水の混入を防止するためにプロダクトキャップ297を装着している。またRO膜モジュール294の最下流のRO膜エレメント280はスペシャルアダプター298を介して中心管と圧力容器292の透過水配管部を連結させている。
【0005】
RO膜ユニットは、複数の前記RO膜モジュールを立体的に配置することによって形成することができる。このようなRO膜ユニットは省スペース化を図りつつ、体積効率の優れたユニットであり、大量の処理水を処理することができる。またRO膜ろ過装置のユニット化によってメンテナンスするユニットをローテーション化すれば、常時ろ過膜を稼動させることができ、大容量の処理水(例えば、百万トン/日)を製造することができる。
【0006】
このようなRO膜エレメントは、長さ数m、重さ数十kgと重量物であり、また使用後のRO膜エレメントは、水分を含み重量が倍以上となっている。このため、手作業で運搬することができず、特許文献1,2に開示のような運搬装置を用いてRO膜エレメントの取り付け、取り外しの作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3291655号公報
【特許文献2】特開平11−130392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら従来のRO膜エレメントの取り付け・取り外しは、特許文献1,2に開示のような搬送装置を用いて、RO膜エレメントを挟持しながら圧力容器の開口まで膜エレメントを搬送することはできるが、その後は、複数の作業員による手作業で圧力容器内へ膜エレメントを取り付け又は取り外し作業を行っていた。このため、作業者の熟練を要する煩雑な作業であり、交換に時間がかかり、RO膜ろ過工程を長時間停止しなければならず、生産効率が悪くなっていた。またRO膜ユニットへの取り付け又は取り外し作業は高所での重量物を取り扱う危険な作業であった。
【0009】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、圧力容器からRO膜エレメントの引き抜きと搬送を効率的に行うことができるRO膜エレメント交換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のRO膜エレメント交換装置は、長手方向を水平にしたRO膜エレメントを支持可能な載置台を備えた本体と、前記載置台の前記RO膜エレメントを取り出す箇所と前記RO膜エレメントが挿入された圧力容器の開口の間を移動可能な移動手段と、前記RO膜エレメントの軸芯に沿ってロッドを前記載置台から前記圧力容器の前記RO膜エレメントへ向けて伸縮可能な伸縮手段と、前記ロッドに取り付けて、前記RO膜エレメントの中心管と結合する結合手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
この場合において、前記結合手段は、前記中心管のエレメント間ジョイントに形成された突起部に掛止する掛止部を備えているとよい。
これにより、エレメント間ジョイントと共にRO膜エレメントと確実に結合して圧力容器から容易に引き抜くことができる。
【0012】
前記結合手段は、膨張体を膨張させて前記中心管の内壁に圧着可能な圧着部を備えているとよい。
これにより、RO膜エレメントと確実に結合させることができ、圧力容器から容易に引き抜くことができる。また圧力容器の交換装置側にあるRO膜エレメントを近距離で引き抜くことができる。
【0013】
前記本体は、前記RO膜エレメントの引き抜き時に反力を抑制する反力受部を備えているとよい。
これにより、RO膜エレメントの引き抜き時に生じる反力による装置の移動がなくなり、RO膜エレメントを効率よく引き抜くことができる。
【0014】
前記載置台は、前記RO膜エレメントの載置面に前記RO膜エレメントが摺動可能な摩擦抵抗低減手段を備えているとよい。
これにより、載置台とRO膜エレメントの間で摩擦抵抗が低減されて、圧力容器から引き抜かれたRO膜エレメントを容易に載置台へ載置することができる。
【0015】
前記本体は、複数のロッドを収容可能なラックを備えているとよい。
これにより、複数のRO膜エレメントの引き抜きを迅速に行うことができる。
【0016】
前記伸縮手段は、ロッドをテレスコピック構造とした多段式シリンダであるとよい。
これにより伸縮手段を長尺化させることができ、圧力容器内の複数のRO膜エレメントを引き抜くことができる。
【0017】
前記移動手段は、前記載置台を鉛直方向に移動可能な昇降部と、前記載置台を前記RO膜エレメントの載置方向と平行に移動可能な平行移動部と、からなるとよい。
これにより、RO膜ユニットにおける高所の圧力容器の開口へ載置台を移動させることができる。従って作業者の高所作業がなくなり安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のRO膜エレメント交換装置によれば、圧力容器から容易にRO膜エレメントを取り出すことができる。また高所の圧力容器の開口まで載置台を移動させることができ、作業者の高所作業がなくなり、安全かつ迅速な交換作業を行なうことができる。またRO膜エレメントの交換作業に係る作業員の人数を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のRO膜エレメント交換装置の側面図である。
【図2】第1実施形態のRO膜エレメント交換装置の正面図である。
【図3】第1実施形態のRO膜エレメント交換装置の平面図である。
【図4】第1実施形態のRO膜エレメント交換装置の斜め上方から見た斜視図である。
【図5】第1実施形態の逆浸透膜エレメント交換装置における載置台の構成を示す図であり、押出手段にチェーン駆動方式を採用した場合の例を示す。
【図6】第1実施形態の逆浸透膜エレメント交換装置における載置台の構成を示す図であり、押出手段にリニアガイド方式を採用した場合の例を示す。
【図7】反力受の変形形態としての圧力容器把持冶具の構成を示す斜視図である。
【図8】圧力容器把持冶具と、載置台とを連結するための連結棒の構成を示す斜視図である。
【図9】圧力容器把持冶具の使用形態を示す斜視図である。
【図10】反力受の変形形態としての床面滑り防止冶具の構成を示す斜視図である。
【図11】床面滑り防止冶具における脚部の内部構造を示す図であり、(A)は定常時、(B)はロック時を示す図である。
【図12】第1実施形態の結合手段の動作説明図である。
【図13】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの結合の様子を示す斜視図である。
【図14】第1の実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの引き抜きの様子を示す斜視図である。
【図15】第2実施形態の逆浸透膜エレメント交換装置に用いる油圧シリンダの構成を示す図であり、(A)はロッドを短縮させた状態(B)はロッドを伸張させた状態をそれぞれ示す。
【図16】第2実施形態の逆浸透膜エレメント交換装置による逆浸透膜エレメントの引き抜き準備の様子を示す斜視図である。
【図17】第2実施形態の逆浸透膜エレメント交換装置により逆浸透膜エレメントを装填する様子のうち、第2ロッドを縮小させた状態を示す斜視図である。
【図18】第2実施形態の逆浸透膜エレメント交換装置により逆浸透膜エレメントを装填する様子のうち、第1ロッドを縮小させた状態を示す斜視図である。
【図19】第2実施形態の結合手段の説明図である。
【図20】図19におけるA−A矢視図である。
【図21】図19におけるB−B矢視図である。
【図22】結合手段を中心管に挿入し掛止部が突起部を通過するときの断面図である。
【図23】RO膜エレメントを引き抜く際の図19における中心管内のC矢視図である。
【図24】ラックを備えた載置台の側面図である。
【図25】図24のD−D矢視図である。
【図26】RO膜エレメントの構成概略図である。
【図27】RO膜モジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のRO膜エレメント交換装置の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
まず、第1実施形態に係る逆浸透膜エレメント交換装置について説明する。図1は、第1実施形態のRO膜エレメント交換装置の側面図であり、図2は同正面図、図3は同平面図、図4は同斜視図である。なお図1〜図4に示すXYZ軸は互いに直交し、X軸方向を水平方向、Y軸方向を垂直方向、Z軸方向を載置方向とする。また、図5、図6は、それぞれRO膜エレメント交換装置の一部構成である載置台の構成例を示す図である。本実施形態に係るRO膜エレメント交換装置(以下、単に交換装置10と称す)は、本体に載置台12と、載置台12を支持するベース40とを備えた構成である。
【0021】
載置台12は、RO膜エレメント280を載置する台である。載置台12には、少なくとも支持部14と、伸縮手段15と、結合手段300が備えられる。実施形態で用いるRO膜エレメント280は、円柱形を成すものであるため、載置台12には水平状態、すなわち長手方向に寝かせた状態で載置することとなる。このような載置形態を採ることで、水平状態で配置された圧力容器に対する装填が可能となるからである。
【0022】
このような理由から支持部14は、RO膜エレメント280の載置方向(Z軸方向)に沿って配置される。本実施形態の場合、支持部14は、載置台12の幅方向端部側に、長手方向に沿って2列のライン状に設けている。円柱状のRO膜エレメント280を安定支持するためには、断面視した状態で、最低2点の支持点が必要となる。一方で、支持点を増やすことによれば、RO膜エレメント280の支持状態の安定化を図ることはできるが、RO膜エレメント280を押し出す、又は引き抜く際の摺動抵抗(摩擦抵抗)が増加することとなる。このため、支持部14を2列のライン状とすることで、摩擦抵抗の低減と、支持状態の安定化の双方の効果を得ることができる。
【0023】
ここで、本実施形態の支持部14には、摩擦抵抗低減手段14aが設けられている。なお、摩擦抵抗低減手段14aとは、RO膜エレメント280を圧力容器側へ押し出す、又は圧力容器から載置台12側へ引き抜く際の摩擦抵抗を低減することができる手段であれば良く、その構成を限定するものでは無い。例えば、図1から図4に示す例では、摩擦抵抗低減手段14aとして、支持部14の先端に複数のローラを配置している。ローラの転がり方向とRO膜エレメント280の押し出し又は引き抜き方向を一致させれば、支持部14とRO膜エレメント280との間における摩擦抵抗を低減することができるからである。また、ローラに替えて、支持部14の先端に樹脂製のレールを配置した場合でも、摩擦抵抗低減手段14aとしての体を成す。滑り性の良い樹脂(例えばポリエチレン系の樹脂)であれば、RO膜エレメント280を押し出し又は引き抜いた際の摩擦抵抗を低減することができるからである。
【0024】
伸縮手段15は、本実施形態の場合、当接棒18とスライド板16を基本として構成されている。当接棒18は、支持部14に載置されたRO膜エレメント280の後端部分に当接され、詳細を後述するスライド板16による押し出し又は結合手段による引き抜きにより、RO膜エレメント280を圧力容器内部へ押し込む役割、又は圧力容器から載置台12へ引き抜く役割を担う。本実施形態では、当接棒18の先端に、RO膜エレメント280に対する押圧力の分散を図るための当接板18aを設けている。具体的な構成としては、当接板18aの平面積を当接棒18の先端部の平面積よりも大きく、かつRO膜エレメント280の端板90の平面積より小さくすれば良い。
【0025】
スライド板16は、上述した当接棒18の後端側を支持すると共に、載置台12の長手方向に沿って設けられた溝に沿ってスライドする板片である。スライド板16のスライドは、スライド板16の下部、すなわち載置台12の内部に設けられた駆動機構により実現される。駆動機構の方式については特に限定するものでは無いが、例えば図5に示すようなチェーン駆動方式や、図6に示すようなリニアガイド方式などを挙げることができる。
【0026】
チェーン駆動方式は、図5に示すように、駆動歯車20と従動歯車22の間に掛け回されたチェーン26と、チェーン26に固着されたスライダ28を基本として構成される。スライド板16は、スライダ28上に固定されることで、駆動歯車20の回動に伴ってスライドが成されることとなる。ここで、スライダ28の下部には、スライダ28の安定性を向上させるためのスライドガイド24を設けるようにすると良い。なお、駆動歯車20には、モータ等の図示しない駆動手段を設けるようにする。
【0027】
リニアガイド方式は、2つの軸受30,32間に架け渡されたボールネジ34と、このボールネジ34の回転に応じてボールネジ34上を移動するスライダ36とを基本として構成される。上述したように、スライダ36上にスライド板16を配置することで、ボールネジ34の回転に伴ってスライド板16のスライドが成されることとなる。なお、何れか一方の軸受け側には、ボールネジ34を回転させるための駆動手段38を設けるようにする。
【0028】
このように、載置台12の内部に伸縮手段15の駆動機構を備えるようにすることで、RO膜エレメント280の搭載スペースの延長線上に駆動機構を配置する必要が無い。このため、載置台12の短縮化、すなわち交換装置10の小型化を図ることができる。
【0029】
結合手段300は、当接板18aの外側(圧力容器側)に取り付けてある。第1実施形態の結合手段は圧着部302を備えている。圧着部302は、膨張体304と注入ケーブル306から構成されている。膨張体304は、所定の弾性力を備え、中心管の開口に挿入する際には開口径よりも小さい直径の中空体である。注入ケーブル306は前記膨張体に気体又は流体を注入又は排出可能なケーブルである。このような構成の圧着部302は、膨張体304を中心管の開口に挿入する。膨張体304を挿入した後、注入ケーブル306を介して膨張体304に気体又は流体を注入する。膨張体304は所定の弾性力を備えており、内部に気体又は流体が充満して体積が増大して中心管の内壁に圧着して結合できる。
【0030】
なお、本実施形態では、載置台12の先端側に、図13、図14に示すように、圧力容器292の先端に係合する反力受94を設けるようにしている。反力受94を圧力容器292先端に装着し、この状態でRO膜エレメント280の引き抜きを行うことで、RO膜エレメント280を引き抜く際の反力で、交換装置10が圧力容器292の開口部へ接近してしまうといった事態を避けることができる。なお、反力受94の形態は特に限定するものでは無い。例えば、反力受の形態を、図7に示すような治具(以下、圧力容器把持冶具94aと称す)としても良い。すなわち、円弧状の2つの冶具本体95a,95bにおける一方の端部を蝶番95cにより連結し、他方の端部に、把持固定のためのロック機構95dを設けるというものである。なお、反力受として、図7に示すような圧力容器把持治具94aを採用する場合、圧力容器把持冶具94aと載置台12との間に図8に示すような連結棒96を設けるようにすると良い。圧力容器把持冶具94aと連結棒96の接続に関しては、種々の形態を採ることができるが、一例としては、次のようなものを挙げることができる。
【0031】
すなわち、圧力容器把持冶具94aにおける冶具本体95bの外周に、連結棒96の直径より若干大きな幅を持つ凹部(図7に示す例では円弧状凹部95e)を形成する。これに対し連結棒96には、一対のフランジ96aを設ける。対を成すフランジ96aの配置幅を冶具本体95bの厚みより若干広くする。圧力容器把持冶具94aと連結棒96とにこのような構成を付加することで、冶具本体95bの円弧状凹部95eに連結棒96を嵌め込み、フランジ96aにより軸方向(RO膜エレメント280の引き抜き方向)への抜け止めを図ることができる(図9参照)。なお、本発明では、連結棒96自体を反力受として適用させることもできる。具体的には、圧力容器292自体を固定するためのフレーム(棚:不図示)に、連結棒96のフランジ96aを引掛けるようにすれば良い。このような構成であっても、反力受としての効果を得ることができるからである。
【0032】
また、実施形態で使用する反力受としては、載置台12を圧力容器に固定するものだけでなく、交換装置10そのものが圧力容器へ接近する方向へ動くことを防止する効果を得られるものも適用することができる。具体的には、図10に示す床面滑り防止冶具94bのようなものを、詳細を後述する交換装置10の台車部68の下に配置する場合であっても、これを反力受とすることができる。床面滑り防止冶具94bは、冶具フレーム98aと、脚部98bとを基本として構成される。図10に示す実施形態においては、冶具フレーム98aは、コ字状を成し、脚部98bは、コ字状を成す冶具フレーム98aの両端部に設けられている。このような構成とすることで、床面滑り防止冶具94bを床面に載置した際、冶具フレーム98aに傾斜面が形成され、台車部68の下部に形成される隙間に配置しやすくなる。
【0033】
図10に示す例では、脚部98bにフロアストッパ機構を持たせている。具体的には、脚部98bの下面にゴム板などの弾性体シート98dを設け、ストッパーレバー98cを下げることにより、弾性体シート98dの中央部を引き上げ、載置面(床面)に対する吸盤作用を奏するようにするというものである(図11(A)、(B)参照)。これにより、床面に対する滑り防止効果を高めることができる。
【0034】
ベース40は、詳細を上述した載置台12を支持する役割を担う。ベース40は、垂直フレーム42と水平フレーム54、台車部68を基本として構成される。垂直フレーム42は、詳細を後述する台車部68を基部として垂直方向(Y軸方向)に立設された支柱型フレームである。垂直フレーム42には、詳細を後述する水平フレーム54を垂直方向に昇降させるための昇降部と、作業員が交換装置10を移動させる際に使用するハンドル50が設けられている。
【0035】
昇降部は、例えばリニアガイド方式のものであれば良い。すなわち、垂直フレーム42の長手方向(垂直方向:Y軸方向)に沿って配置されたボールネジ44と、このボールネジ44の回転に伴って昇降移動することを可能とするスライダ48とを有するものであれば良い。このような基本構成を有する昇降部では、ボールネジ44の一方の端部(本実施形態では上端部)には軸受、他方の端部(本実施形態では下端部)には、駆動用のモータ46等を設けるようにすれば良い。このような構成とすることで、モータ46を駆動させてボールネジ44を回転させることで、スライダ48を垂直フレーム42に沿って昇降させることが可能となる。なお、垂直フレーム42におけるハンドル50の配置側には、図示しない操作盤が設けられている。操作盤は、載置台12の昇降動作、水平移動、および伸縮手段15による押し込み動作を行うための制御信号を、各駆動部であるモータ等に出力するための制御部である。また、本実施形態では、垂直フレーム42における幅方向両端部に、スライドレール52を設け、載置台12の昇降動作の安定化を図るようにしている。
【0036】
水平フレーム54は、上述した載置台12を支持するフレームであり、上述した垂直フレーム42に設けられたスライダ48に接続された水平フレームベース56を基点として、水平方向(X軸方向)に延設されている。具体的には、水平フレーム54は、水平フレームベース56を基点として、垂直フレーム42から離間する方向に延設されたフォーク状のフレームである。水平フレーム54には、リニアガイド58、ハンドル66、操作盤64、マニュアルハンドル62などが設けられている。
【0037】
リニアガイド58は、上述した載置台12をRO膜エレメント280の載置方向に対して平行に移動させるための平行移動部の一例である。本実施形態におけるリニアガイド58は、水平フレーム54を構成する複数(実施形態においては2つ)のフォーク部分にそれぞれ設けられる。このような構成とすることで、重量物、および長尺物を移動させる際の安定性を向上させることができる。このような構成とする場合、各リニアガイド58を構成するボールネジを駆動させる各モータは、同期制御されるように電気的に接続しておく。このような構成とすることで、各ボールネジ上を水平移動するスライダ60の移動量が等しくなるからである。なお、水平フレーム54に設けたリニアガイド58のスライダ60上には、上述した載置台12が搭載・固定される。このような構成とすることで、載置台12をRO膜エレメント280の載置方向(Z軸方向)に対して平行に移動させることができる。
【0038】
ハンドル50は、水平フレーム54を構成するフォーク部分の先端側に設けられるバーハンドル(パイプ)である。ハンドル50の配置形態は、水平フレーム54を構成する複数のフォーク部分の先端を接続するというものである。このような構成のハンドル50を設けることにより、交換装置10を水平フレーム54の先端側からでも移動させることが可能となる。
【0039】
操作盤64は、載置台12の昇降動作、水平移動、および伸縮手段15による押し込み又は引き抜き、結合手段300によるRO膜エレメント280との結合動作を行うための制御信号を、各駆動部であるモータ等に出力するための制御部である。水平フレーム54の先端側に操作盤64を配置することで、水平フレーム54の先端側からであっても、載置台12の昇降動作、水平移動、押し込み又は引き抜き、結合動作を行わせることが可能となる。
【0040】
マニュアルハンドル62は、載置台12の水平移動を手動で行うための回転ハンドルである。マニュアルハンドル62を介して載置台12を水平移動させる場合には、マニュアルハンドル62を回転させれば良い。このため、RO膜エレメント280を装填する対象となる圧力容器292との位置ズレを微調整する場合に使用するのが好適である。制御信号による移動動作では、初期挙動が大きくなり、位置ズレの微調整が困難となる場合があるからである。
【0041】
台車部68は、交換装置10の移動を容易にするための走行手段である。台車部68は、交換装置10の安定性を高めるために、垂直フレーム42よりも幅広に形成し、水平フレーム54を延設させた側に延設する形態とすると良い。台車部68には、垂直フレーム42を立設した面と反対側の面に、複数(本実施形態では4つ)の車輪70,74が設けられている。本実施形態のように車輪70,74を4つとした場合、4つの車輪70,74は、台車部68を平面視した際に四隅となる部分に設けるようにすると良い。このような構成とすることで、交換装置10の安定性を高めることができる。
【0042】
車輪70,74を4つとした場合、少なくとも2つの車輪74は、固定のための軸を回転可能な構成とする。このような構成とすることで、交換装置10の進行方向を変えることが容易となる。また、少なくとも2つの車輪70には、車輪70の回転を止めるロック機構72を備えるようにする。このような構成とすることで、交換装置10を所定位置に停止させておくことが可能となる。
【0043】
上記のような交換装置を用いたRO膜エレメント280の引き抜き作業は、次のようにして行われる。図12は第1実施形態の結合手段の動作説明図である。
まず、交換装置10における載置台12を圧力容器292の開口部まで移動させる。具体的な載置台12の移動作業は、台車部68でRO膜エレメント280を引き抜く圧力容器292の開口部付近まで装置を移動する。そして昇降部、および平行移動部を用いて、載置台12の伸縮手段の中心軸を圧力容器292の開口部の中心位置(長手方向中心軸)に合わせる。そして、反力受94を圧力容器292の開口部外周に装着する。位置合わせ、反力受94の設置を終えた後、伸縮手段15を伸長させてRO膜エレメント280の中心管282へ圧着部302を挿入させる。圧着部302の膨張体304を所定量中心管内へ挿入した後、注入ケーブル306を介して、膨張体304に気体又は液体を注入する。膨張体304は所定の弾性力を供えており、内部に気体又は液体が充満して体積が増大して中心管282の内壁に圧着して結合する(図13参照)。
【0044】
次に圧着部302が中心管に圧着し結合した状態で、伸縮手段15を縮小させて圧力容器292内のRO膜エレメント280を外部へと引き抜き、RO膜エレメント280を載置台12上に載置する(図14参照)。
【0045】
このような交換装置を用いたRO膜エレメントの装填作業によれば、最も労力を伴うRO膜エレメントの引き抜き作業を自動で行うことができる。また、水平に配置されたRO膜エレメントを水平状態のまま外部へ引き抜く装置であるため、従来技術のように、RO膜エレメントの落下による危険性は少なく、作業時の安全性が高い。圧着部によるRO膜エレメントとの結合は、特に圧力容器に単一のRO膜エレメントが充填されている場合に特に有効である。
【0046】
次に、第2実施形態の交換装置について以下説明する。なお、本実施形態に係る交換装置の殆どの構成は、上述した第1実施形態の交換装置10と同様である。よって、その構成を同一とする箇所には、図面に100を足した符号を付して(伸縮手段15と結合手段300を除く)、詳細な説明は省略することとする。第1実施形態に係る交換装置10と、本実施形態に係る交換装置110との相違点は、伸縮手段15と結合手段300の形態にある。
【0047】
具体的には、本実施形態に係る交換装置110では、伸縮手段を液圧(油圧)シリンダ115としている。さらに、本実施形態では、ロッドを圧力容器292の内部深くまで挿入することを可能とするために、シリンダロッドをテレスコピック型とした多段(図15に示す例では2段)式油圧シリンダ115とした。本実施形態で用いる油圧シリンダ115は、内部に油室(不図示)を備えるシリンダ115aと、油室に対する作動油の流入により伸張する第1ロッド115bと、第2ロッド115cを基本として構成される。またシリンダ115は軸芯を中心として回転可能に構成している。このような構成とすることで、第1実施形態に係る交換装置10よりも、圧力容器292の内部深く配置されたRO膜エレメント280を引き抜くことが可能となる。
【0048】
図19は第2実施形態の結合手段の説明図である。図20は図19におけるA−A矢視図である。図21は図19におけるB−B矢視図である。図22は結合手段を中心管に挿入し掛止部が突起部を通過するときの中心管の断面図である。図23はRO膜エレメントを引き抜く際の図19における中心管内のC矢視図である。
【0049】
第2実施形態の結合手段300は、伸縮手段15の最先端のシリンダロッド(図15では第2ロッド115c)に取り付けた掛止部310である。掛止部310はエレメント間ジョイント296の内部に設けた突起部320と平面視で重ならない形状に形成されている。具体的に実施形態の突起部320は、一例として、エレメント間ジョイント296の内壁から軸芯に向かって突出した十字状に形成されている。なお突起部320の突出量は、開口径の半径よりも短く、互いに接触しない長さに設定している。また最先端のシリンダロッドは突起部320と接触しない直径に設定している。実施形態の掛止部310は、断面形状が、エレメント間ジョイント296の突起部320と平面視で重ならない箇所に中心管282の軸芯に沿った溝状に加工された凹部312が形成されている。このような構成の掛止部310は、挿入の際に凹部312で突起部320を回避することができる(図22)。また掛止部310が突起部320を通過した後シリンダを回転させて、突起部320と掛止部310の凸部314(凹部が形成されていない外周部分)が平面視で重なる位置に合わせることができる(図23)。
【0050】
このような構成の交換装置110によるRO膜エレメント280の引き抜き作業は、次のようにして行われる。まず、交換装置110における載置台112を、RO膜エレメント280の装填対象となる圧力容器292の開口部付近まで移動させる。圧力容器292の開口部付近まで交換装置110を移動させた後、昇降部、および平行移動部を用いて、伸縮手段の中心軸を圧力容器292の開口部の中心位置に合わせる。載置台(RO膜エレメント280)の位置合わせを行った状態で、反力受194を圧力容器292に装着する。そして第1ロッド115b及び第2ロッド115cを伸張させる(図16参照)。次に掛止部310が中心管の突起部に当接したら、第2ロッド115cを伸張しながら回転させて、突起部320を掛止部310の凹部312に挿入させる(図22)。掛止部310が突起部320を通過した後、伸縮手段15を回転させて、掛止部310の凸部314と突起部320が平面視で重なるように配置する(図23)。
【0051】
次ぎに図17に示すように、油圧シリンダ115の二段目のロッド(第2ロッド115c)を縮小させる。この動作により、RO膜エレメント280の圧力容器292内部のRO膜エレメント280間の結合が解除されて、交換装置側のRO膜エレメント280が引き抜かれる。次に、図18に示すように、油圧シリンダ115の一段目のロッド(第1ロッド115b)を縮小させる。これにより、RO膜エレメント280を圧力容器292から載置台112上に引き抜くことができる。
【0052】
図24はラックを備えた載置台の説明図である、図25は図24のD−D矢視図である。ラック400は、載置台112の先端側に取り付けることができる。ラック400は、圧力容器から引き抜いたRO膜エレメント280を複数収容できる棚である。本実施形態のラック400は、中心Cを回転中心として回転可能に構成されたラック400である。このような構成のラック400は、載置台112と圧力容器の開口の間に配置し、ラック400の何れかの開口402の軸芯を伸縮手段15及び圧力容器292の軸芯に合わせる。そして伸縮手段15を伸張させてラック400の開口402を貫通させた結合手段300をRO膜エレメント280に結合させる。伸縮手段15を縮小させて、圧力容器292から引き抜かれたRO膜エレメント280をラック400内の開口402に収納することができる。
【0053】
このような構成の交換装置110であっても、RO膜エレメント280の装填作業の自動化と、作業の安全性向上を図ることができる。また圧力容器292の長尺化により、装填するRO膜エレメント280の数が増えた場合や、RO膜エレメント280の大径化が成された場合であっても、引き抜き作業が容易となる。なお、上記説明では、油圧シリンダにおけるロッドの段数を2段としていたが、さらに多段に延びる油圧シリンダを用いても良い。また、油圧シリンダを用いて第1実施形態に係る交換装置と同様な効果を奏する場合には、油圧シリンダを単純な復動型のものとすれば良い。なお、伸縮手段として油圧シリンダを採用する場合には、作動油を貯留するためのタンクと、この作動油を圧送するためのポンプを備えるようにする必要があるが、機械式の伸縮手段に比べ、簡易な構成で大きな押し込み力を得ることが可能となる。掛止部によるRO膜エレメントの結合は、特に長尺の圧力容器に複数のRO膜エレメントが充填されている場合に有効である。また、伸縮手段に取り付ける掛止部と圧着部を組み替えることによって、効率的にRO膜エレメントを引き抜くことができる。
【符号の説明】
【0054】
10………交換装置、12………載置台、14………支持部、14a………摩擦抵抗低減手段、15………伸縮手段、16………スライド板、18………当接棒、18a………当接板、20………駆動歯車、22………従動歯車、24………スライドガイド、26………チェーン、28………スライダ、30………軸受、32………軸受、34………ボールネジ、36………スライダ、38………駆動手段、40………ベース、42………垂直フレーム、44………ボールネジ、46………モータ、48………スライダ、50………ハンドル、52………スライドレール、54………水平フレーム、56………水平フレームベース、58………リニアガイド、60………スライダ、62………マニュアルハンドル、64………操作盤、66………ハンドル、68………台車部、70………車輪、72………ロック機構、74………車輪、94………反力受、96………連結棒、280………RO膜エレメント、282………中心管、284………逆浸透膜、286………透過水流路材、288………メッシュスペーサー、292………圧力容器、294………RO膜モジュール、296………エレメント間ジョイント、297………プロダクトキャップ、298………スペシャルアダプター、300………結合手段、302………圧着部、304………膨張体、306………注入ケーブル、310………掛止部、312………凹部、314………凸部、320………突起部、400………ラック、402………開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を水平にしたRO膜エレメントを支持可能な載置台を備えた本体と、
前記載置台の前記RO膜エレメントを取り出す箇所と前記RO膜エレメントが挿入された圧力容器の開口の間を移動可能な移動手段と、
前記RO膜エレメントの軸芯に沿ってロッドを前記載置台から前記圧力容器の前記RO膜エレメントへ向けて伸縮可能な伸縮手段と、
前記ロッドに取り付けて、前記RO膜エレメントの中心管と結合する結合手段と、
を備えたことを特徴とするRO膜エレメント交換装置。
【請求項2】
前記結合手段は、前記中心管のエレメント間ジョイントに形成された突起部に掛止する掛止部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のRO膜エレメント交換装置。
【請求項3】
前記結合手段は、膨張体を膨張させて前記中心管の内壁に圧着可能な圧着部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のRO膜エレメント交換装置。
【請求項4】
前記本体は、前記RO膜エレメントの引き抜き時に反力を吸収する反力受を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のRO膜エレメント交換装置。
【請求項5】
前記載置台は、前記RO膜エレメントの載置面に前記RO膜エレメントが摺動可能な摩擦抵抗低減手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のRO膜エレメント交換装置。
【請求項6】
前記本体は、複数のロッドを収容可能なラックを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のRO膜エレメント交換装置。
【請求項7】
前記伸縮手段は、ロッドをテレスコピック構造とした多段式シリンダであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のRO膜エレメント交換装置。
【請求項8】
前記移動手段は、前記載置台を鉛直方向に移動可能な昇降部と、前記載置台を前記RO膜エレメントの載置方向と平行に移動可能な平行移動部と、からなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のRO膜エレメント交換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図27】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2013−52317(P2013−52317A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190096(P2011−190096)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、最先端研究開発支援プログラム(最先端PG(Mega−ton Water System)100万m3/日規模大型プラント構成最適化インテリジェントメガトンモジュールシステム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】