RS7抗体
本発明は、一価および多価の単一特異性結合タンパク質、ならびに多価多重特異性タンパク質に関する。これらの結合タンパク質の一つの実施態様は一以上の結合部位を有し、各結合部位は標的抗原または標的抗原上のエピトープと結合する。これらの結合タンパク質のもう一つの実施態様は二以上の結合部位を有し、各結合部位は標的抗原上の異なるエピトープに対して親和性を有するか、または標的抗原かハプテンのいずれかに対して親和性を有する。本発明はさらに、宿主においてこれらの機能的結合タンパク質を発現させるために有用な組換えベクターに関する。より詳しくは、本発明は、RS7と呼ばれる腫瘍関連抗原結合タンパク質、およびその他のEGP−1結合タンパク質に関する。本発明はさらに、ヒト化、ヒトおよびキメラRS7抗原結合タンパク質、ならびに診断および治療におけるこのような結合タンパク質の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、一価および多価の単一特異性結合タンパク質、ならびに多価多重特異性タンパク質に関する。これらの結合タンパク質の一つの実施態様は一以上の結合部位を有し、各結合部位は標的抗原または標的抗原上のエピトープと結合する。これらの結合タンパク質のもう一つの実施態様は二以上の結合部位を有し、各結合部位は標的抗原上の異なるエピトープに対して親和性を有するか、または標的抗原かハプテンのいずれかに対して親和性を有する。本発明はさらに、宿主においてこれらの機能的結合タンパク質を発現させるために有用な組換えベクターに関する。より詳しくは、本発明は、RS7と呼ばれる腫瘍関連抗原結合タンパク質に関する。本発明はさらに、ヒト化RS7抗原結合タンパク質、ならびに診断および治療におけるこのような結合タンパク質の使用に関する。
【0002】
背景技術
人工の結合タンパク質、特に、モノクローナル抗体および改変抗体または抗体フラグメントは幅広く研究され、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、および循環器病をはじめとする種々のヒト疾患の検出および治療において重要なものであることがわかっている(Filpula and McGuire, Exp. Opin. Ther. Patents (1999) 9: 231-245)。例えば、放射性同位元素で標識した抗体が、患者への注入後に当技術分野において利用可能な検出器を用いて腫瘍を可視化するために研究されている。抗体または抗体由来薬剤の臨床的有用性は、主として、特定の標的抗原とのその結合能に依存している。選択性は、とりわけ、診断薬または治療薬が体内の正常組織に対して毒性がある場合に、ヒト疾患の検出および治療段階において診断薬または治療薬、例えば、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、酵素、複合体、放射性核種、または金属を標的位置に送達する上で重要である。
【0003】
抗体系の潜在的な制限については、Goldenberg, The American Journal of Medicine (1993) 94: 298-299に記載されている。検出および治療の技術において重要なパラメーターは、標的細胞が存在する部位に特異的に局在する注入投与量および摂取率、すなわち、正常組織周辺に存在する放射能濃度に対する特異的に結合した抗体の濃度の比である。抗体を血流に注入すると、それは多くのコンパートメントを通過し、代謝されて排出される。抗体は、位置を突きとめ、標的細胞抗原と結合することが可能でなければならないが、その一方で、体の他の部分も通過する。抗原のターゲッティング(標的化)を制御する因子としては、位置、大きさ、抗原密度、抗原接近可能性、病理組織の細胞組成、およびターゲッティング(標的化)する抗体の薬物動態学が挙げられる。抗体による腫瘍ターゲッティングに特異的に影響を与えるその他の因子としては、腫瘍およびその他の組織の両方における標的抗原の発現、および放射性標識した抗体の血液クリアランスが遅いために起こる骨髄毒性が挙げられる。標的腫瘍細胞と一体となるターゲッティング抗体の量は、腫瘍の血管形成および抗体浸透を妨げる障害、ならびに腫瘍内圧力によって影響を受ける。非標的器官、例えば、肝臓、腎臓または骨髄による非特異的取り込みは、この技術、特に放射線免疫療法のもう1つの潜在的制限となり、放射線免疫療法では、骨髄照射により用量制限をもたらす毒性が引き起されることが多い。
【0004】
提案されている一つの手法はダイレクト・ターゲッティングと呼ばれ、診断用または治療用の放射性同位元素を含む抗体を用いて特異的抗原をターゲッティングするように設計された技術である。腫瘍に関しては、このダイレクト・ターゲッティング法では、その抗原によって標的腫瘍を認識する放射性標識抗腫瘍単一特異性抗体が用いられる。この技術は、標識された単一特異性抗体を患者に注入し、標的腫瘍に抗体を局在させ、診断または治療上の効用を得ることを含む。結合していない抗体は体内から除去する。この手法は他の哺乳類疾患を診断または治療するためにも使用できる。
【0005】
提案されているもう一つの解決法は「親和性増強系」(Affinity Enhancement System, AES)と呼ばれ、特に、診断用または治療用の放射性同位元素を含む抗体による腫瘍ターゲッティングの欠陥を克服するように設計された技術である(米国特許第5,256,395号明細書(1993), Barbet et al., Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals (1999) 14: 153-166)。AESでは、放射性標識したハプテン、ならびに標的腫瘍および放射性ハプテンの両方を認識する抗腫瘍/抗ハプテン二重特異性結合タンパク質が用いられる。この手法ではまた、原子価のより高いハプテンおよび特異性のより高い結合タンパク質を用いてもよい。この技術は、結合タンパク質を患者に注入し、それを標的腫瘍に局在させることを含む。結合していない結合タンパク質が血流から除去されるのに十分な時間の経過後、放射性標識したハプテンを投与する。ハプテンは標的細胞の部位に局在する抗体−抗原複合体と結合し、診断上または治療上の効用が得られる。結合していないハプテンは体内から除去される。Barbetは、二重特異性抗体が腫瘍表面と結合している場合に、二価ハプテンが該二重特異性抗体と架橋しうるという可能性を記述している。結果として、放射性標識複合体はより安定となり、より長い時間腫瘍に留まる。この系は哺乳類の疾患を診断または治療するために使用できる。
【0006】
当技術分野では、ダイレクト・ターゲッティング系で有用な多価多重特異性結合タンパク質の生産、および親和性増強系で有用な多価多重特異性結合タンパク質の生産が必要とされている。詳細には、標的抗原において高い取り込みを示し、血中濃度は低く、正常な組織および細胞を有毒な医薬から最適に保護する結合タンパク質が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の一つの目的は、ヒト非小細胞肺癌に対して作製されたマウスMAb RS7−3G11により、上皮糖タンパク質−1(EGP−1)として規定される腫瘍関連抗原を認識する単一特異性モノクローナル抗体およびそのフラグメントを提供することである。肺癌および分化抗原に関する第3回国際IASLCワークショップの提案に従って、RS7抗原はEGP−1(上皮糖タンパク質−1)と呼ばれている。あるいは、文献では、EGP−1に関連する少なくとも一つのエピトープがTROP2と呼ばれている。一つの好ましい実施態様では、本発明による抗体または抗体フラグメントは、Stein(前掲)およびこれに先行する他の研究により開示されているマウスRS7抗体と同じエピトープと結合する。あるいは、前記抗体または抗体フラグメントは、Steinにより開示されているマウスRS7抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープにも結合しうる。ある好ましい実施態様では、抗EGP−1抗体もしくは抗TROP2抗体またはそのフラグメントは、キメラ、ヒト化、または完全ヒトRS7抗体またはそのフラグメントである。
【0008】
例えば、本発明では、ヒト化抗体またはそのフラグメントであって、該ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)が、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなるものが意図される。本発明のもう一つの実施態様は、ヒト化抗体またはそのフラグメントであって、該ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである。また、好ましくは、前記ヒト化抗体または抗体フラグメントは、マウスRS7 MAbのCDRと、ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域の枠組み構造領域(FR)とを含んでなり、ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなり、ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである。さらに好ましくは、前記ヒト化抗体またはそのフラグメントは、ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域のFRをさらに含んでなる。
【0009】
ある好ましい実施態様では、前記ヒト化RS7抗体またはフラグメントは、RS7マウス抗体の対応する位置に見られるアミノ酸残基により置換されている少なくとも一つのアミノ酸を含んでなるL鎖および/またはH鎖のFRを含んでなる。例えば、少なくとも一つの置換アミノ酸残基は、好ましくは図3BのマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基38、46、68および91からなる群から選択される位置にあり、かつ/または少なくとも一つの置換アミノ酸残基は、好ましくは図3AのマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基20、85および100からなる群から選択される位置にある。
【0010】
また、本発明によれば、少なくとも二つの抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該MAbまたはそのフラグメントが本発明による抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントから選択される、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントも記載される。関連する傾向として、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントは、本発明による抗EGP−1抗体のいずれかの少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、本発明による抗EGP抗体またはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントとを含んでなる。例えば、この第二の抗体またはそのフラグメントは、癌腫関連抗体またはそのフラグメントであってもよい。もう一つの好ましい実施態様は、二つの異なるエピトープ結合抗EGP−1抗体またはそのフラグメントを含んでなる融合タンパク質またはそのフラグメントである。
【0011】
本発明の一つの目的は、RS7抗原上の一を超えるエピトープを認識するか、またはRS7抗原およびハプテン分子に対して親和性を有する多重特異性抗体およびそのフラグメントを提供することである。後者の結合タンパク質は標的抗原をプレターゲッティングするのに有用である。よって、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)多価多重特異性MAbまたはそのフラグメントを被験体に投与する工程、(ii)ある量の非結合タンパク質が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および(iii)該被験体に、該抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与する工程を含んでなる方法も記載される。
【0012】
本発明のさらなる目的は、EGP−1抗原を発現する標的疾患に診断薬または治療薬を送達する方法を提供することである。例えば、診断薬もしくは治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも一種の治療薬および/または診断薬に結合された抗EGP−1抗体またはそのフラグメントを含んでなる組成物を用意する工程、および(ii)該組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる方法が記載される。好ましくは、診断薬または治療薬は、同位元素、薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、酵素、増殖因子、放射性核種、金属、造影剤および検出剤からなる群から選択される。
【0013】
本発明の他の実施態様では、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法は、(i)EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以上の抗原結合部位とハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位とを含んでなる多価多重特異性抗体またはそのフラグメントを被験体に投与する工程、(ii)ある量の非結合抗体またはフラグメントが被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および(iii)該被験体に、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程を含んでなる。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、本発明による抗体のいずれか一つの抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなり、該抗EGP−1抗体またはそのフラグメントが少なくとも一種の診断薬または治療薬に結合されている、癌細胞に標的化された診断用または治療用の複合体を提供することである。好適な治療薬は、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、抗生物質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する薬物である。また、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬も好ましい。好ましくは、診断薬は、光活性放射性核種、好ましくは25〜4000keVのもの、および造影剤からなる群から選択される。
【0015】
ある好ましい実施態様によれば、本発明による抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント;少なくとも二つの該MAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;本発明による抗EGP−1抗体およびフラグメントのMAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、本明細書に記載の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;または本明細書に記載の抗体のいずれかの該MAbまたはそのフラグメントを含んでなる少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメントと、本明細書に記載の抗体のいずれか一つのMAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;を含むMAbまたはフラグメントをコードする核酸を含んでなるDNA配列が提供され、該第二のMAbはEGP−2、MUC1−4、A33、CSAp、CEA、Le(y)、Tn、Tag−72、PSMA、PSA、EGFR、HER2/neu、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、PLAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、PAM4−抗原、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性がある。第二のMAbは、これらに代えて、VEGF(血管内皮増殖因子)およびPlGF(胎盤増殖因子)などの腫瘍に関連する血管内皮抗原と反応性があってもよい。第二の抗体の選択は腫瘍細胞のタイプによって異なる。例えば、前立腺癌の治療または診断のためには抗PSMAまたは抗PSA抗体を、乳癌、卵巣癌、肺癌および結腸癌では抗CEAまたは抗MUC1、MUC2、MUC3およびMUC4抗体を、結腸癌および頭頸部癌ではEGFRを、結腸癌および卵巣癌では抗CSAp抗体を、また、乳癌、卵巣癌およびその他の癌では抗HER/neuを用いればよい。これらは単に例として示したものであり、これらに限定されるものではない。このDNA配列を含む発現ベクターおよび宿主細胞もまた本発明の好ましい実施態様である。
【0016】
本明細書ではまた、悪性腫瘍を診断および治療する方法が提供される。例えば、癌を診断または治療する方法は、(i)EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以上の抗原結合部位、およびハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体またはフラグメントを、それを必要とする被験体に投与する工程、(ii)ある量の非結合タンパク質が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および(iii)該被験体に、該抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程を含んでなる。
【0017】
同様に、悪性腫瘍を診断および治療する方法は、治療上有効量の抗EGP−1融合タンパク質もしくはそのフラグメント、またはEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントを含んでなる治療用複合体を投与することを含んでなってもよく、このEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは医薬上好適な賦形剤中で少なくとも一種の治療薬と結合されている。これに関連して、裸の抗EGP−1融合タンパク質およびそのフラグメントなどの、裸の抗EGP−1抗体およびそのフラグメントもまた悪性腫瘍の治療に使用できる。裸の抗EGP−1抗体は、例えば免疫アッセイまたは免疫組織化学法とともに悪性腫瘍のin vitro診断に用いてもよいが、AESなどのプレターゲッティング技術を含まない限り、in vivo診断には使用できない。しかし、標識されたEGP−1抗体であれば、悪性腫瘍のin vivo診断および治療に使用できる。例えば、本明細書には、被験体の癌細胞を治療する方法であって、(i)該被験体に、抗EGP−1MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含む治療上有効量の組成物を投与する工程、および(ii)EGP−1 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤する工程を含んでなる方法が記載される。同様に、本発明ではまた、裸のMAbおよびそのフラグメントと、複合体化されたMAbもしくはそのフラグメントまたは融合タンパク質もしくはそのフラグメントとの組み合わせも意図される。
【好ましい実施態様の詳細な説明】
【0018】
特に断りのない限り、可算名詞("a"または"an")は1つ以上のものを意味する。
【0019】
RS7抗体(以前はRS7−3G11と呼ばれていた)は、肺由来のヒト原発性扁平上皮細胞癌腫の膜粗調製物に対して作製されたマウスIgG1である。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al., Cancer Res. 50: 1330 (1990)を参照されたい。このRS7抗体は、ヒト非小細胞肺癌に対して作製されたマウスMAb RS7−3G11により規定されている腫瘍関連抗原を認識する。Steinらは、クラスター13として同定されている46〜48kDaの糖タンパク質を認識することを開示している。Stein et al., Int. J. Cancer Supp. 8:98-102 (1994)。Basu et al., Int. J. Cancer 52:472-479 (1995)も参照されたい。この抗原は肺癌および分化抗原に関する第3回国際IASLCワークショップの提案により、EGP−1(上皮糖タンパク質−1)と呼ばれている。例えば、DeLeij et al., Int. J. Cancer Supp., 8:60-63 (1994)を参照されたい。従って、本明細書に記載されるように、RS7およびEGP−1抗原は同義である。EGP−1抗原はまた、文献ではTROP2とも呼ばれているが、EGP−1およびTROP2の複数のエピトープが存在するのかもしれない。
【0020】
フローサイトメトリーおよび免疫組織化学染色の研究では、RS7 MAbは、正常ヒト組織への結合は限定され、種々の腫瘍種の抗原を検出することが示されている(Stein et al., (1990),前掲)。RS7抗体はEGP−1糖タンパク質と反応性があり、迅速にインターナライズされうる。EGP−1は主として肺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌および前立腺癌などの癌により発現される。動物モデルにおいて放射性標識したマウスRS7 MAbを用いた位置決定および治療法の研究では、腫瘍のターゲッティングおよび治療効果が示されている(Stein et al., (1990),前掲,Stein et al., (1991),前掲)。
【0021】
より最近の研究では、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌および前立腺癌由来の腫瘍における強いRS7染色が示されている。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al., Int. J. Cancer 55: 938 (1993)を参照されたい。さらにこの研究では、扁平上皮癌と腺癌の双方からなる肺癌が生じる。すなわち、両細胞腫とも強く染色され、RS7抗体は非小細胞肺癌の組織学的種類を区別しないことが示唆される。
【0022】
上記で論じたように、RS7 MAbは標的細胞に迅速にインターナライズされる(Stein et al. (1993),前掲)。RS7 MAbのインターナリゼーション速度定数は、イムノトキシンの生産に重要であることが証明されている、迅速にインターナライズする他の二種類のMAbのインターナリゼーション速度定数の中間型である。すなわち、イムノトキシンコンジュゲートのインターナリゼーションは抗腫瘍活性の絶対的必要条件であることが十分に報告されている(Pastan et al., Cell 47:641 (1986))。薬物イムノコンジュゲートのインターナリゼーションはまた、抗腫瘍効果における主要な因子として記載されている(Yang et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85: 1189 (1988))。従って、RS7抗原は治療薬のインターナリゼーションを要するこれらの種の免疫療法にとって重要な標的となりうる。
【0023】
このように、RS7 MAbを用いた研究は、この抗体が、臨床診断および治療適用の候補となるいくつかの重要な特性を示すことを示唆している。RS7抗原は診断および治療の有用な標的となるので、RS7抗原のエピトープを認識するMAbを得ることが望ましい。さらに、臨床サンプルにおいてRS7抗原を検出するのに望ましく、ヒトでのin vivo適用に不可欠な二重決定基固相酵素免疫検定法(ELISA)の開発のためには、キメラ、ヒト化およびヒト RS7抗体が利用可能であることが不可欠である。
【0024】
この目的のため、本発明は、RS7抗原と結合し、診断および治療法に使用可能なキメラ、ヒト化およびヒト抗体、ならびにそのフラグメントを記載する。ヒト化抗体および抗体フラグメントは、"Anti-CD20 Antibodies And Fusion Proteins Thereof And Methods Of Use"と題された米国仮出願(代理人事件番号18733/1073)、米国仮出願番号60/356,132、米国仮出願番号60/416,232、および代理人事件番号18733/1155に記載されており;米国出願番号5,874,540に開示されているものなどの、クラスIII抗癌胎児性抗原抗体(抗CEA抗体)であるhMN−14抗体;米国出願番号10/116,116に開示されているものなどのMu−9抗体;米国仮出願番号60/399,707に開示されているものなどのAFP抗体;"Monoclonal Antibody cPAM4"と題された米国仮出願(代理人事件番号18733/1102)に開示されているものなどのPAM4抗体;米国仮出願番号60/360,229に記載されているものなどのRS7抗体;および米国特許第5,789,554号および同第6,187,287号、ならびに米国出願番号09/741,843および09/988,013に開示されているものなどのCD22抗体があり、これらは総て引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。本明細書に開示されるキメラ抗体は、ある種に由来する抗体、好ましくは齧歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であるが、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。獣医学における適用では、キメラ抗体の定常ドメインはその他の種のものに由来してもよい。ヒト化抗体は、ある種に由来する抗体、例えば齧歯類抗体のCDRがその齧歯類抗体のH鎖およびL鎖からヒトH鎖およびH鎖可変ドメインへ転移された組換えタンパク質である。
【0025】
好ましい実施態様では、RS7抗体はヒト化されている。非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主によっては外来タンパク質として認識され、繰り返し注射すると体液性の過敏感反応を招く可能性があることから、マウスRS7配列のヒト化は患者が受けうる有害な免疫応答を顕現することができる。マウスに基づくモノクローナル抗体に関しては、これはしばしばヒト抗マウス抗体(HAMA)応答と呼ばれる。本発明のもう一つの実施態様は、ヒトより下等な霊長類の抗EGP−1抗体、マウスモノクローナル抗EGP−1抗体(獣医学適用に限られる)、キメラ抗EGP−1抗体、ヒト抗EGP−1抗体、およびヒト化抗EGP−1抗体である抗EGF−1抗体またはそのフラグメントである。ヒト化RS7抗体またはそのフラグメントの枠組み構造領域のいくつかのヒト残基がそれらのマウス対応物で置換されていることが好ましい。また、VHとして、二種の異なるヒト抗体由来の枠組み構造領域の組み合わせを用いるのも好ましい。この抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。
【0026】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、ヒトRS7抗体である。ヒト抗体は、抗原投与に応答して特定のヒト抗体を産生するよう「操作」されているトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座のエレメントを、内在するH鎖およびL鎖遺伝子座のターゲッティング破壊を含む胚幹細胞系統に由来するマウス株へ導入する。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作出することができる。トランスジェニックマウス由来のヒト抗体を得る方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994)、およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579 (1994)に記載されている。また、完全ヒト抗体も、遺伝子または染色体トランスフェクション法、ならびにファージディスプレー技術により構築することができ、これらは総て当技術分野で公知である。例えば、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体およびそのフラグメントのin vitro生産に関しては、McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子を糸状バクテリオファージの主働または微働外被タンパク質遺伝子のフレーム内にクローン化し、ファージ粒子表面の機能的抗体フラグメントとして提示する。この糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含んでいるので、抗体の機能的特性に基づいて選択すればまた、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択されることになる。このように、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレーは種々の形式で行うことができる。総説としては、例えば、Johnson and Chiswell, Current Opiniion in Structural Biology 3:5564-571 (1993)を参照されたい。
【0027】
本発明の抗体およびそのフラグメントは、ヒト原発性肺扁平上皮癌由来の膜粗調製物に対して作製するのが好ましい。また、RS7抗体およびそのフラグメントはヒト卵巣癌細胞系統由来の生細胞の膜調製物に対して作製するのが好ましい。RS7抗原はColo 316生細胞により提供されることがいっそう好ましい。これに関して、RS7抗体はRS7抗原の実質的に純粋な調製物を用いて得ることができる。実質的に純粋なタンパク質とは、本来そのタンパク質に伴っている細胞成分が実質的に混入しないタンパク質である。本明細書に記載のように、「RS7抗体」はまた、キメラ、ヒトおよびヒト化RS7抗体も含む。
【0028】
キメラ、ヒト化およびヒトRS7抗体の調製
特定の抗原に対するモノクローナル抗体は当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495(1975)、およびColigan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5. 1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照されたい。要するに、RS7などのMAbは、マウスにRS7抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマをクローニングし、RS7抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、RS7抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、RS7抗体をハイブリドーマ培養物から単離することにより得ることができる。
【0029】
免疫原に対する最初の抗体生成の後に、その抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に周知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いで枠組み構造領域中のヒト残基をマウスの対応物で置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う潜在的な問題が防げる。
【0030】
本発明のヒト抗体、すなわち、ヒトEGP−1 MAb、あるいはヒト化、キメラまたはヒトRS7抗体との併用療法のためのその他のヒト抗体、例えば抗EGP−2、MUC1−4、CEA、CC49、CSAp、PSMA、PSA、EGFR、A33およびHER2/neu MAbはトランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるMendez et al., Nature Genetics, 15: 146-156 (1997); 米国特許第5,633,425号を参照されたい。併用療法に用いうる本発明のヒト抗体はまた、Le(y)、Tn、Tag−72、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性があってもよい。例えば、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。このマウス体液性免疫系は、内在する免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は極めて複雑で、多数の離散セグメントを含み、それはヒトゲノムのほぼ0.2%を占める。トランスジェニックマウスが十分な抗体レパートリーを産生できることを保証するには、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座の大きな部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは、生殖系構造においてヒトH鎖またはL鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成に始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入配列はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。一つはH鎖遺伝子座、もう一つはL鎖遺伝子座を含む二つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞の融合を通じてマウスに個々に導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られたキメラ雄動物を、生殖細胞系を通じてYACを伝達する能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスと交配させる。一種はヒトH鎖遺伝子座を含み、もう一種はヒトL鎖遺伝子座を含む二種のトランスジェニック系統を繁殖させ、免疫感作に応答してヒト抗体を産生する後代をつくる。
【0031】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる刊行物Orlandi et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:3833 (1989)に記載されている。ヒト化MAbを産生する技術は、例えば、Carter et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992)、Singer et al., J Immun. 150:2844 (1992)、Mountain et al. Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 10:1 (1992)、およびColigan at pages 10.19.1-10.19.11に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0032】
一般に、RS7抗体のVK(可変L鎖)およびVH(可変H鎖)配列はRT−PCR、5’−RACEおよびcDNAライブラリースクリーニングなどの種々の分子クローニング手順によって得ることができる。特に、MAb RS7のVHおよびVK遺伝子は、ハイブリドーマ細胞からそれぞれRT−PCRおよび5’−RACEによりPCR増幅によりクローニングし、それらの配列をDNAシーケンシングにより決定した。それらの忠実性を確認するため、クローニングしたVLおよびVH遺伝子を、引用することにより本明細書の一部とされるOrlandi et al. (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86: 3833 (1989))に記載されているように、細胞培養にてキメラAbとして発現させることができる。このV遺伝子配列に基づき、次にヒト化RS7抗体を、引用することにより本明細書の一部とされるLeung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))に記載されているように設計および構築することができる。cDNAは一般的な分子クローニング技術(Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed (1989))により、マウスまたはキメラRS7抗体を産生する、いずれの公知のハイブリドーマ系統またはトランスフェクション細胞系統から調製してもよい。ある好ましい実施態様では、RS7ハイブリドーマ系統が用いられる。mAbのVK配列はプライマーVK1BACKおよびVK1FOR(Orlandi et al., 1989)または引用することにより本明細書の一部とされるLeung et al. (BioTechniques, 15:286 (1993))に記載されている伸張プライマーセットを用いて増幅してもよく、一方、VH配列はプライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al., 1989, 前掲)または引用することにより本明細書の一部とされるLeung et al. (Hybridoma, 13:469 (1994))に記載されているマウスIgGの定常領域へアニーリングするプライマーを用いて増幅することができる。10μlの第一鎖cDNA産物、10μlの10X PCRバッファー[5
00mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、および0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、250μMの各dNTP、200nMのプライマー、および5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)を含有するPCR反応混合物に対して30サイクルのPCRを行うことができる。各PCRサイクルは好ましくは94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる。増幅されたVKおよびVHフラグメントは2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製することができる。同様に、ヒト化V遺伝子は、Leung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))に記載されているように、長いオリゴヌクレオチド鋳型合成とPCR増幅の組み合わせにより構築することができる。
【0033】
VKのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列、およびVκPCR産物のフレーム内連結を容易にする便宜な制限部位を含む、pBR327に基づく足場ベクターVKpBRなどの足場ベクター中にサブクローニングすることができる。VHのPCR産物は、pBluescriptに基づくVHpBSなどの同様の足場ベクター中へサブクローニングすることができる。各PCR産物を含む個々のクローンは、例えば引用することにより本明細書の一部とされるSanger et al. (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74:5463 (1977))の方法により配列決定してもよい。
【0034】
本明細書に記載のDNA配列は、天然に存在するものであれ誘導されたものであれ、あらゆるその対立遺伝子、突然変異体および変異体を含むと考えられる。
【0035】
VKおよびVHを含む発現カセットをプロモーターおよびシグナルペプチド配列とともに、HindIII−BamHI断片として二重制限消化により、それぞれVKpBRおよびVHpBSから切り出すことができる。次に、VKおよびVH発現カセットをそれぞれpKhおよびpG1gなどの適当な発現ベクターへ連結することができる(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))。これらの発現ベクターは、適当な細胞、例えば骨髄腫Sp2/0−Ag14(ATCC,VA)へ同時トランスフェクトし、コロニーをハイグロマイシン耐性に関して選択し、上清液を例えば、下記のように、ELISAアッセイによりキメラまたはヒト化RS7 MAbの産生に関してモニタリングすることができる。あるいは、VKおよびVH発現カセットを改変足場ベクターVKpBR2およびVHpBS2中で組み立て、それぞれXbaI/BamHIおよびXhoI/BamHI断片として切り出し、Gilles et al. (J. Immunol. Methods 125:191 (1989)に記載されているように(また、Sp2/0−Ag14細胞での発現に関してはLosman et al., Cancer, 80:2660 (1997)にも示されている)、pdHL2などの単一の発現ベクター中へサブクローニングすることもできる。本発明において有用なその他のベクターとしては、Barnes et al., Cytotechnology 32:109-123 (2000)に記載されているようなGSベクターがあり、これはNS0細胞系統およびCHO細胞で好ましく発現される。他の適当な哺乳類発現系がWerner et al., Arzneim.-Forsch./Drug Res.48(II), Nr. 8,870-880 (1998)に記載されている。
【0036】
同時トランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンのアッセイは次のようにして行うことができる。引用することにより本明細書の一部とされるCo et al., J Immunol., 148:1149 (1992)に従うエレクトロポレーション(BioRad, Richmond, CA)による5×106個のSP2/0骨髄腫細胞のトランスフェクションには、約10μgのVKpKh(L鎖発現ベクター)および20μgのVHpG1g(H鎖発現ベクター)を用いることができる。トランスフェクション後、細胞を37℃、5%CO2下、96ウェルマイクロタイタープレートにて完全HSFM培地(Life Technologies, Inc., Grand Island, NY)中で増殖させればよい。選択プロセスは2日後、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem, San Diego, CA)を最終濃度500単位/mlハイグロマイシンで加えることで開始することができる。コロニーは通常エレクトポレーション後2〜3週間で出現する。次に、これらの培養物をさらなる分析のために増殖させることができる。
【0037】
好適な宿主細胞としては微生物または哺乳類宿主細胞が挙げられる。好ましい宿主としては、MAbおよびその他の融合タンパク質の生産のために開発されたヒト細胞系統PER.C6がある。よって、本発明の一つの好ましい実施態様は、抗EGP−1 MAb、複合体、融合タンパク質またはそのフラグメントをコードするDNA配列を含む宿主細胞である。PER.C6細胞(WO97/00326)は、ヒトホスホグリセンリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの制御下にAd血清型5(Ad5)E1A−およびE1B−コード配列(Ad5ヌクレオチド459−3510)を含むプラスミドを用いた、ヒト胎児網膜一次細胞のトランスフェクションにより作製されたものである。E1AおよびE1Bはそれぞれアデノウイルス初期遺伝子活性化タンパク質1Aおよび1Bである。これらの方法および組成物は、例えばグリコシル化により翻訳後されている目的のヒト組換えタンパク質の安定発現を作り出すのに特に有用である。PER.C6は完全に同定されたヒト細胞系統であり、また、実験室での実践に応じて開発されたものであるなど、いくつかの特徴によりPER.C6は組換えタンパク質の生産のための宿主として特に有用なものとなる。さらに、PER.C6はいずれのヒト由来または動物由来タンパク質も含まない規定の血清フリー培地中の懸濁培養物として増殖させることができ、その増殖は倍加時間約35時間の、回転瓶、シェーカーフラスコ、スピンフラスコおよびバイオリアクターに適合している。最後に、E1Aが存在すると、CMVエンハンサー/プロモーターの制御下にある遺伝子の発現がアップレギュレートされ、E13が存在すると、おそらくは組換えトランスジーンの過剰発現によって増強されたp53依存性のアポトーシスが妨げられる。ある実施態様では、この細胞は従来の哺乳類細胞系統よりも200倍高い組換えタンパク質および/またはタンパク質性物質を産生することができる。
【0038】
キメラまたはヒト化H鎖の分泌に関して陽性のトランスフェクトーマクローンはELISAアッセイにより同定することができる。要するに、トランスフェクトーマ培養物からの上清サンプル(〜100μl)を、ヤギ抗ヒト(GAH)−IgG、F(ab’)2フラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)をプレコートしたELISAマイクロタイタープレートに3反復で添加する。プレートを室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することで結合していないタンパク質を除去する。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)をウェルに加える(抗体原液を104倍希釈したもの100μl、非結合抗体を最終濃度1.0μg/mlまで添加)。1時間インキュベートした後、プレートを通常3回洗浄する。反応溶液[PBS中、167μgのオルトフェニレンジアミン(OPD)(Sigma, St. Louis, MO)、0.025%過酸化水素を含有する100μl]をウェルに加える。暗所にて30分間、発色させる。各ウェルに50μlの4N HCl溶液を加えることで反応を停止させた後、自動ELISAリーダー(Bio-Tek instruments, Winooski, VT)で490nmにて吸光度を測定する。次に、無関係なキメラ抗体標品(Scotgen, Ltd., Edinburg, Scotlandから入手可能)に対して結合キメラ抗体を測定する。
【0039】
抗体は細胞培養培地から次のようにして単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を血清フリー培地に適用する。キメラ抗体の生産のためには、HSFMを用い細胞を回転瓶中500mlの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分子し、上清を0.2μメンブランで濾過する。濾過した培地をAタンパク質カラム(1×3cm)に流速1ml/分で通す。次にこの樹脂を約10倍カラム量のPBSで洗浄し、10mMEDTAを含有する0.1Mグリシンバッファー(pH3.5)を用いて、Aタンパク質結合抗体をカラムから溶出させる。1.0ml画分を、10μlの3M Tris(pH8.6)の入った試験管に回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を求める。ピーク画分をプールし、PBSの対して透析し、例えばCentricon 30(Amicon, Beverly, MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度は上記のようにELISAにより測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mlに調整する。保存のためには、サンプルにアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を加えると便宜である。
【0040】
RS7抗体の調製に用いるプライマーのヌクレオチド配列は下記実施例2に挙げられている。ある好ましい実施態様では、ヒト化RS7抗体または抗体フラグメントはマウスRS7 MAbの相補性決定領域(CDR)、およびヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域とヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域の枠組み構造(FR)領域を含んでなり、ここでヒト化RS7のL鎖可変領域のCDRは、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1;アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2;およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなり;ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRは、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1;アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2;およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを福でなるCDR3を含んでなる。また、ヒト化抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFRは、マウスRS7 MAbの対応するFRから置換された少なくとも一つのアミノ酸を含んでなるのが好ましい。
【0041】
RS7 MAbは十分確立されている種々の技術によりハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。このような単離技術としては、タンパク質Aセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12およびpages 2.9.1-2.9.3を参照されたい。また、Baines et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG)," in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc. 1992)も参照されたい。
【0042】
RS7 MAbは当業者に周知の種々の技術によって同定することができる。例えば、RS7 MAbのRS7抗原に対する結合能力は、間接的免疫蛍光アッセイ、フローサイトメトリー分析、またはウエスタン分析を用いて確認することができる。
【0043】
RS7抗体フラグメントの生産
本発明はRS7およびhRS7抗体の使用を意図する。特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部分である。他の抗体フラグメントとしては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(ab)'2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できるFab'フラグメントが挙げられる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書および同第4,331,647号明細書、ならびにそこに含まれている参照文献により記載されており、これらの特許はその全開示内容を引用することにより本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89: 230 (1960); Porter, Biochem. J. 73: 119 (1959), Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422 (Academic Press 1967)、およびColigan at pages 2.8.1-2.8.10および2.10.-2.10.4も参照されたい。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするFab’発現ライブラリーを構築することができる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274-1281)。本発明は抗体および抗体フラグメントを包含する。
【0044】
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含んでなる。このVLおよびVHドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合されている。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部である場合、VL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部である場合、VH−L−VLと表される。scFv分子の作製方法、および好適なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号明細書、同第4,946,778号明細書、R. Raag and M. Whitlow,"Single Chain Fvs."FASEB Vol 9:73-80(1995)およびR. E. Bird and B. W. Walker,"Single Chain Antibody Variable Regions,"TIBTECH, Vol 9:132-137(1991)を参照されたい。これらの参照文献は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0045】
抗体フラグメントは、全長抗体のタンパク質加水分解、またはフラグメントをコードするDNAの、大腸菌(E.coli)もしくは他の宿主中での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、常法により全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される5Sフラグメントを与えることにより作製することができる。このフラグメントはチオール還元剤、および所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、3.5SFab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書および同第4,331,647号明細書、ならびにそこに含まれる参照文献に記載されており、これらの特許は引用することによりその全開示内が本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959)、Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422(Academic Press 1967)、および Coligan at pages 2.8. 1-2.8.10および2.10.-2. 10.4.も参照されたい。
【0046】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超可変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。かかる遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991); Courtenay-Luck,"Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995);およびWard et al.,"Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい。
【0047】
H鎖を分離して一価のL−H鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、または他の酵素学的、化学的または遺伝学的技術も、それらのフラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り用いてよい。
【0048】
キメラ、ヒト化およびヒト RS7抗体融合タンパク質の生産
抗体融合タンパク質およびそのフラグメントは、官能基間のグルタルアルデヒド結合からより特異的な結合まで、種々の常法により調製することができる。抗体および/または抗体フラグメントは好ましくは、別のものに直接共有結合させるか、リンカー部分を介して、または例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオールもしくはヒドロキシル基など、抗体またはフラグメント上の一以上の官能基を介して共有結合させる。グルタルアルデヒドの他、例えばジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどの種々の通常のリンカーを使用できる。
【0049】
キメラ、ヒト化およびヒトRS7抗体融合タンパク質を生産する簡単な方法としては、グルタルアルデヒドの存在下で抗体またはフラグメントを混合して抗体融合タンパク質を形成させるものがある。最初のシッフの塩基結合は例えば第二級アミンへのホウ化水素還元により安定化させることができる。非位置特異的リンカーとしてグルタルアルデヒドの代わりにジイソチオシアネートまたはカルボジイミドを使用することもできる。抗体融合タンパク質は、RS7抗原の少なくとも二つのエピトープに結合する部分を含んでいるので、この融合タンパク質はMAbよりも結合特異性が大きいと期待される。よって、抗体融合タンパク質は治療用途において好ましい形態のRS7抗原結合タンパク質である。
【0050】
これに関して、抗体融合タンパク質は少なくとも二つのキメラ、ヒト化またはヒトRS7 MAb、またはそのフラグメントを含んでなり、ここで、少なくとも二つのこのMAbまたはフラグメントは、RS7抗原の異なるエピトープに、あるいはRS7エピトープおよび完全に異なる抗原のそれに結合する。例えば、二重特異性RS7抗体融合タンパク質は、CEA抗体またはそのフラグメントとRS7 MAbまたはそのフラグメントを含んでなる。このような二重特異性RS7抗体融合タンパク質は、例えば、上記のようにCEAからF(ab’)2フラグメントを得ることにより調製することができる。抗体F(ab’)2フラグメントの鎖内ジスルフィド結合は、L鎖−H鎖結合が起こらないよう注意しながらシステインで穏やかに還元し、Fab’−SHフラグメントを形成させる。このSH基をビス−マレイミドリンカー(1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス−マレイミド)で活性化させる。RS7 MAbをFab’−SHに変換した後、活性化させたCEA Fab’−SHフラグメントと反応させて二重特異性RS7抗体融合タンパク質を得る。
【0051】
多重特異性RS7抗体融合タンパク質は、二重特異性キメラ、ヒト化またはヒトRS7抗体融合タンパク質にRS7抗原結合部分を付加することにより得ることができる。例えば、二重特異性抗体融合タンパク質は、上記のビス−マレイミド活性化手順を用いて、二重特異性融合タンパク質を第三のRS7抗原MAbまたはフラグメントと結合させる際に用いられる一以上のスルヒドリル基を導入するために2−イミノチオランと反応させることができる。これらの抗体生産技術は当業者に周知である。例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる米国特許第4,925,648号明細書を参照されたい。
【0052】
二重特異性抗体は、例えばジスルフィド結合を切断し、全IgGまたは好ましくはF(ab’)2フラグメントの混合物を再形成し、一を超えるハイブリドーマを融合して一を超える特異性を有する抗体を生産するなどの種々の従来法、また、遺伝子操作により作製することができる。二重特異性抗体融合タンパク質は異なる抗体の還元的切断によって生じるFab’フラグメントの酸化的切断によって作製されてきた。これは二つの異なる抗体のペプシン消化によって生じた二つの異なるF(ab’)2フラグメントを混合し、還元的切断によりFab’フラグメントの混合物を形成し、次いで、酸化的にジスルフィド結合を再形成して、元のエピトープの各々に特異的なFab’部分を含む二重特異性抗体融合タンパク質を含むF(ab’)2フラグメントの混合物を作製することにより行うのが有利である。抗体融合タンパク質の調製のための一般的技術は、例えばNisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 93: 470 (1961)、Hammerling et al., J. Exp. Med. 128: 1461 (1968)、および米国特許第4,331,647号明細書に見出せる。本発明では、少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、本発明による抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが意図される。
【0053】
より選択性の高い結合は、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどのヘテロ二官能性リンカーを用いることで達成することができる。このエステルと抗体またはフラグメントとの反応により抗体またはフラグメント上のアミン基が誘導体化され、次にこの誘導体は例えば遊離スルヒドリル基を有する抗体Fabフラグメント(あるいは、例えばトラウトの試薬によりスルヒドリル基が付加されたより大きなフラグメントまたは完全抗体)と反応させることができる。このようなリンカーは同じ抗体の基を架橋しているとは考えにくく、結合の選択性は向上する。
【0054】
抗原結合部位から離れた部位で抗体またはフラグメントを連結するのが有利である。これは、例えば上記のように切断された鎖内スルヒドリル基に連結することで達成することができる。別法としては、酸化された炭化水素部分を有する抗体を、少なくとも一つの遊離アミン官能基を有する別の抗体と反応させることを含む。これにより最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは好ましくは、例えばホウ化水素還元により第二級アミンへ還元することにより安定化され、最終複合体が形成される。このような部位特異的結合が、小分子に関しては米国特許第4,671,958号明細書に、大きな付加物に関しては米国特許第4,699,784号明細書に開示されており、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0055】
12アミノ酸残基長よりも長いリンカー(例えば15または18残基のリンカー)を有するScFvでは、同じ鎖上のVHとVLドメイン間の相互作用が可能であり、一般に単量体、二量体(ダイアボディーと呼ばれる)、および少量のより高次の多量体の混合物が生じる(Kortt et al., Eur. J. Biochem. (1994) 221: 151-157)。しかし、5以下のアミノ酸残基のリンカーを有するScFvでは、同じ鎖上のVHとVLドメインの分子内対合は妨げられ、異なる鎖上のVHとVLドメインの対合が促される。3〜12残基の間のリンカーでは主として二量体が形成される(Atwell et al., Protein Engineering (1999) 12: 597-604)。0〜2残基の間のリンカーでは、scFvの三量体(トリアボディーと呼ばれる)、四量体(テトラボディーと呼ばれる)、またはより高次のオリゴマー構造が形成されるが、オリゴマー化の厳密なパターンはリンカーの長さの他、Vドメインの組成ならびに方向に依存するようである。例えば、抗ノイラミニダーゼ抗体NC10のscFvでは、0残基のリンカーと用いた場合、主として三量体(VHからVL方向)または四量体(VLからVH方向)が生じた(Dolezal et al., Protein Engineering (2000) 13: 565-574)。1および2残基のリンカーを用いてNC10から構築されたscFvでは、VHからVL方向で、主としてダイアボディーが形成されたが(Atwell et al., Protein Engineering (1999) 12: 597-604)、これに対して、VLからVH方向では四量体、三量体、二量体およびより高次の多量体が形成された(Dolezal et al., Protein Engineering (2000) 13: 565-574)。抗CD19抗体HD37から、VHからVL方向で、構築されたscFvについては、0残基リンカーではもっぱら三量体が形成され、1残基リンカーではもっぱら四量体が形成された(Le Gall et al., FEBS Letters (1999) 453: 164-168)。
【0056】
本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントはまた、多価であるが単一特異性の抗原特異的ダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディーを作製するために使用できる。二以上のscFv分子の非共有結合的結合が機能的なダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディーを形成することができる。単一特異性ダイアボディーは同種のscFvのホモ二量体であり、各scFvは、選択された抗体に由来する、短いリンカーによって同じ抗体のVLドメインに連結されたVHドメインを含んでなる。ダイアボディーは二つのscFvの非共有結合的結合によって形成された二価の二量体であり、二つのFv結合部位が生じる。トリアボディーは三つのscFvからなる三価の三量体の形成によるもので、三つの結合部位が生じ、また、テトラボディーは四つのscFvからなる四価の四量体であり、四つの結合部位が生じている。数種の単一特異性ダイアボディーが、VH1−リンカー−VL1を含んでなる組換え遺伝子構築物を含む発現ベクターを用いて作製されている。Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993); Atwell et al., Molecular Immunology 33: 1301-1302 (1996); Holliger et al., Nature Biotechnology 15: 632-631(1997); Helfrich et al., Int. J. Cancer 76: 232-239 (1998); Kipriyanov et al., Int. J. Cancer 77: 763-772 (1998); Holiger et al., Cancer Research 59: 2909-2916(1999)を参照されたい。scFvの構築方法は米国特許第4,946,778号明細書(1990)および同第5,132,405号明細書(1992)に開示されている。scFvに基づく多価多重特異性結合タンパク質の作製方法は、米国特許第5,837,242号明細書(1998)、同第5,844,094号明細書(1998)およびWO98/44001(1998)に開示されている。本発明の好ましい実施態様は、EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以
上の抗原結合部位と、ハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体またはそのフラグメントである。
【0057】
抗体結合親和性の測定
このようにして単離されたmRS7、cRS7およびhRS7抗体の競合的結合親和性は、直接的ラジオイムノアッセイによって測定すればよい。RS7はクロラミンT法(引用することにより本明細書の一部とされるGreenwood et al., Biochem. J., 89: 123 (1963)を参照されたい)を用いて131Iまたは125Iで標識することができる。ヨウ素化した抗体の比活性は通常約10μCi/μgに調節する。非標識抗体および標識抗体を反応培地(1%ウマ血清および100μg/mlゲンタマイシンを添加したHSFM)で適当な濃度に希釈する。適当な濃度の標識抗体および非標識抗体の両者を総量100μlで反応試験管内に一緒に加える。ME180細胞(ヒト子宮頚癌細胞系統)の培養物をサンプリングし、細胞濃度を測定する。この培養物を遠心分離し、回収した細胞を反応培地で一回洗浄した後、最終濃度約107細胞/mlで反応培地に再懸濁させる。総ての手順を4℃の低温中で行う。この細胞懸濁液100μlを反応試験管に加える。反応試験管を周期的に穏やかに振盪させて細胞を再懸濁しつつ、4℃で2時間反応を行う。反応期間の後、5mlの洗浄バッファー(1%BSAを含むPBS)を各試験管へ加える。この懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットをさらに5mlの洗浄バッファーで再度洗浄する。遠心分離後、細胞ペレットに残留する残留放射活性の量をガンマーカウンター(Minaxi, Packard Instruments, Sterling, Va.)で測定する。
【0058】
発現ベクター
発現ベクターは、宿主細胞中で発現される遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成的または誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーをはじめとする特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は調節エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。プロモーターは構造遺伝子の転写を指令するDNA配列である。構造遺伝子はメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写されるDNA配列であり、これは次に特定のポリペプチドに特徴的なアミノ酸配列へと翻訳される。典型的には、プロモーターは構造遺伝子の転写開始部位に隣接して遺伝子の5’領域に置かれる。プロモーターが誘導性プロモーターであれば、誘導因子に応答して転写速度が高まる。これに対し、プロモーターが構成的プロモーターであれば、転写速度は誘導因子によって調節を受けない。エンハンサーは転写の開始部位に対してエンハンサーの距離または方向に関係なく、転写効率を高めうるDNA調節エレメントである。
【0059】
単離されたDNA分子とは、生物のゲノムDNAに組み込まれていないDNAの断片である。例えば、クローニングされたRS7抗原遺伝子は、哺乳類細胞のゲノムDNAから分離されているDNA断片である。単離されたDNA分子の別の例としては、生物のゲノムDNAに組み込まれていない化学合成されたDNA分子がある。相補的DNA(cDNA)は、逆転写酵素によってmRNA鋳型から形成された一本鎖DNA分子である。逆転写の開始には、典型的にはmRNAの一部に相補的なプライマーが用いられる。当業者はまた、このような一本鎖DNA分子およびその相補的DNA鎖からなる二本鎖DNA分子に対しても「cDNA」を用いる。
【0060】
クローニングベクターは、プラスミド、コスミドまたはバクテリオファージなど、宿主細胞で自律的に複製する能力を有するDNA分子である。クローニングベクターは典型的には一または少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、この部位に、ベクターの必須の生物学的機能を失うことなく、確定的に外来DNA配列を挿入することができ、さらにはクローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択に用いるのに好適なマーカー遺伝子を挿入することができる。マーカー遺伝子としては、典型的にはテトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性を与える遺伝子が挙げられる。組換え宿主としては、クローニングベクターか発現ベクターのいずれかを含むいずれの原核または真核細胞であってもよい。この用語はまた、宿主細胞の染色体またはゲノム中にクローニングされた遺伝子を含むよう遺伝子操作された原核または真核細胞も含まれる。発現とは、遺伝子産物の生合成をさす。例えば、構造遺伝子の場合、発現とは、その構造遺伝子のmRNAへの転写およびmRNAの一以上のポリペプチドへの翻訳を含む。
【0061】
治療および診断に用いるヒト化、ヒトおよびキメラRS7抗体
本発明では、被験体の悪性腫瘍を診断または治療する方法であって、該被験体に、EGP−1 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる方法が意図され、ここでは、EGP−1 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは、少なくとも一種の治療薬と結合され、医薬上好適な賦形剤中に調剤されている。また、結合されていない(裸の)EGP−1 MAb、または他の抗原結合部分との融合構築物も、EGP−1を発現する癌細胞の治療薬として適したものとすることができると考えられる。これらの非結合抗体は有利には、化学療法、放射線療法および/または免疫療法などの他の治療法をともに、または様々な順序および計画で組み合わせて施すことができる。また、癌を診断または治療する方法であって、EGP−1抗原に対する一以上の抗原結合部位および一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体またはそのフラグメントを、それを必要とする被験体に投与する工程、ある量の非結合タンパク質が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および該被験体に、その多価多重特異性抗体またはそのフラグメントの結合部位と結合する診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与する工程を含んでなる方法が好ましい。ある好ましい実施態様では、癌は肺癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌または結腸癌である。
【0062】
モノクローナル抗体(MAb)の生産のためのハイブリドーマ技術により、癌細胞を限局化するか、または死滅させることができる分子プローブの作製のための技術を提供された。いくつかの悪性腫瘍で癌の浸潤の詳細を示すために放射性標識MAbを用いた腫瘍イメージング技術が用いられている。試験動物およびヒトで、癌胎児性抗原を発現する様々な腫瘍における癌胎児性抗原、ならびに他のターゲッティング抗体を用いた黒色腫、結腸癌および乳癌などの腫瘍のラジオイムノ検出に抗体が用いられている(Goldenberg et al., Cancer Res. 40: 2984 (1980); Hwang et al., Cancer Res. 45: 4150 (1985); Zalcberg et al., J. Nat'l Cancer Inst. 71: 801 (1983); Colcher et al., Cancer Res. 43: 736 (1983); (Larson et al., J. Nucl. Med. 24: 123 (1983); DeLand et al., Cancer Res. 40: 3046 (1980); Epenetos et al., Lancet 2: 999 (1982))。
【0063】
in vitro診断のためのMAbの使用は周知である。例えば、Carlsson et al., Bio/Technology 7 (6): 567 (1989)を参照されたい。例えば、MAbは生検サンプル由来の組織における腫瘍関連抗原の存在を検出するのに用いることができる。MAbはまた、ラジオイムノアッセイ、固相酵素免疫検定法、および蛍光免疫アッセイなどの技術を用い、臨床液体サンプル中の腫瘍関連抗原の量を測定するためにも使用できる。
【0064】
腫瘍標的化MAbと毒素との複合体はin vivoにおいて癌細胞を選択的に死滅させるために使用できる(Spalding, Bio/Technology 9(8): 701 (1991); Goldenberg, Scientific American Science & Medicine 1(1): 64 (1994))。例えば、試験動物モデルにおける治療研究では、細胞傷害性放射性核種を有する抗体の抗腫瘍活性が証明されている(Goldenberg et al., Cancer Res. 41: 4354 (1981), Cheung et al., J. Nat'l Cancer Inst. 77: 739 (1986)、およびSenekowitsch et al., J. Nucl. Med. 30: 531 (1989))。また、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al., Antibody Immunoconj. Radiopharm. 4: 703 (1991)も参照されたい。さらに、これらのMAbのいくつかを用いた第I相治療試験が、リンパ腫、黒色腫およびその他の悪性腫瘍の治療に関してすでに開始されている。例えば、DeNardo et al., Int. J. Cancer Suppl. 3: 96 (1988)、およびGoldenberg et al., J. Clin. Oncol. 9: 548 (1991)を参照されたい。
【0065】
ヒト化、キメラおよび完全ヒト抗体ならびにそのフラグメントは治療法および診断法に用いるのに好適である。従って、本発明では、診断薬もしくは治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)抗EGP−1抗体を含んでなる組成物を用意する工程、および(ii)その診断または治療用抗体複合体をそれを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる方法が意図される。好ましくは、本発明のキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体ならびにそのフラグメントは、悪性腫瘍を治療する方法で用いられる。
【0066】
また、本明細書では、癌細胞と結合する抗EGP−1 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる抗体成分を含んでなる、癌細胞を標的とする診断用または治療用複合体も記載され、ここでは、この抗体成分は少なくとも一種の診断薬または少なくとも一種の治療薬に結合されている。好ましくは、診断用複合体は少なくとも一種の光活性診断薬またはMRI造影剤を含んでなる。いっそう好ましくは、診断薬は60〜4,000keVの間のエネルギーを有する放射性標識である。
【0067】
治療用組成物は、少なくとも一種の裸のまたは結合型のヒト化、キメラまたはヒトRS7抗体を単独で、あるいは本発明による他の裸のまたは結合型のヒト化、キメラ、ヒトまたはその他の抗体、あるいは本明細書に開示されていない他の裸のまたは結合型のヒト化、キメラまたはヒト抗体と組み合わせて含む。本発明はまた、抗EGP−1抗体と結合されていない、免疫調節剤などの治療薬、または診断薬を伴う結合型のまたは裸の抗体の投与も意図する。また、同じまたは異なるエピトープまたは抗原に対する裸のまたは結合型の抗体を本発明による一以上の抗体と組み合わせてもよい。
【0068】
よって、本発明は、抗EGP−1抗体およびフラグメントの、裸の抗体またはフラグメントとして単独での投与、あるいは多様な療法としての投与を意図する。好ましくは、この抗体はヒト化、キメラまたは完全ヒトRS7抗体またはそのフラグメントである。本発明による多様な療法はさらに、裸の抗体、融合タンパク質の形での、または免疫複合体としての他の抗体の投与を伴う、裸の抗EGP−1抗体による免疫療法を含む。例えば、ヒト化、キメラまたは完全ヒトRS7抗体は別の裸のヒト化、キメラRS7もしくはその他の抗体、あるいは同位元素、一以上の化学療法剤、サイトカイン、毒素またはそれらの組み合わせと結合されたヒト化、キメラRS7もしくはその他の抗体と組み合わせてもよい。例えば、本発明は、抗EGP−2、CEA、CSAp、MUC1−4、EGFR、HER2/neu、PSA、CC49(抗Tag72抗体)およびPSMA抗体などの他の固形腫瘍/癌腫関連抗体の前に、または組み合わせて、またはその後に、裸のまたは結合型のEGP−1またはRS7抗体またはそのフラグメントで処置することを意図する。これらの固形腫瘍抗体は裸であってもよいし、あるいはとりわけ薬物、酵素、ホルモン、毒素、同位元素または免疫調節剤と結合させてもよい。また、本発明では、ヒト化、キメラまたは完全ヒトRS7抗体と毒素の融合タンパク質を用いてもよい。裸の抗体として、または部分的に裸で、部分的に治療薬または免疫調節剤と結合したものとして多くの異なる組み合わせを構築してもよい。あるいは、細胞傷害薬などの他の治療薬または放射線と組み合わせて投与するため、種々の裸の抗体の組み合わせを用いてもよい。このような抗体の組早生は有利には、当業者に公知のように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて作製することができる。治療用複合体はそれ自体、好ましくはB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子および癌遺伝子産物に対して向けられたオリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでなってよい。また、例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる米国特許第5,734,033号明細書(Reed)に記載されている、bcl−2の発現を阻害するアンチセンス分子を本発明によるヒト化RS7抗体と結合させてもよいし、あるいは抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してもよいし、あるいは本発明によるヒト化RS7抗体とともに投与してもよい。
【0069】
診断薬または治療薬に結合された本明細書に記載の単一特異性結合タンパク質はRS7陽性腫瘍を直接ターゲッティングする。これらの単一特異性分子は標的抗原と選択的に結合し、分子上の結合部位の数が増すにつれ、標的細胞に対する親和性が増し、所望の場所に見られる耐性時間が長くなる。さらに、非抗原結合分子は身体から速やかに除去され、正常組織の暴露が最小となる。多重特異性結合タンパク質を用いると、その後の診断薬または治療薬の特異的送達のためにRS7陽性腫瘍がプレターゲッティングされる。これらの薬剤はヒスタミンスクシニルグリシル(HSG)含有ペプチドによって運ばれる。679と呼ばれるマウスモノクローナル抗体(IgG1,K)は高い親和性でトリペプチド部分HSGを含む分子と結合する(Morel et al, Molecular immunology, 27, 995-1000, 1990)。679 MAbはhRS7とともに、HSGと標的抗原に結合する二重特異性結合タンパク質を形成することができる。また、この代わりにハプテンを用いてもよい。これらの結合タンパク質は標的抗原に選択的に結合し、親和性の増強および所望の場所での耐性時間の延長を可能とする。さらに、非抗原結合ダイアボディーは身体から速やかに除去され、正常組織の暴露が最小となる。
【0070】
RS7抗体およびそのフラグメントは癌などの哺乳類疾患の治療に使用することができる。癌としては、限定されるものではないが、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌および結腸癌が挙げられる。
【0071】
本発明に従う診断または治療を目的とした診断薬または治療薬の標的への送達は、診断薬または治療薬を有する抗EGP−1抗体またはそのフラグメントを用意すること、およびその結合タンパク質をそれを必要とする被験体に投与することを含む。さらに診断では、既知の技術を用いて結合したタンパク質を検出する工程が必要である。
【0072】
本発明による抗体およびそれらのフラグメントの、診断薬または治療薬を伴う投与は、哺乳類では静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜腔内、髄腔内、局所的カテーテルを通じた潅流、または直接病巣注射により行うことができる。結合タンパク質を注射により投与する場合には、投与は点滴、または単回もしくは複数回のボーラス注射によればよい。治療用としては、20〜800mg/m2の範囲の用量が可能であり、100〜500mg/m2の用量が好ましく、また、診断イメージングについて奨励されるのは、例えば0.5mg〜100mg/患者といった相応に低い用量である。このような用量は臨床状況および患者の許容度に応じて種々の頻度で繰り返してよい。
【0073】
診断薬または治療薬を伴う抗体は医薬上許容される注射用ビヒクル、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、生理的pHおよび濃度で、ヒトまたは哺乳類の治療および診断用キットとして提供してもよい。この製剤は、特にヒトでの使用を意図する場合には無菌であることが好ましい。このようなキットの任意の成分としては、安定剤、緩衝剤、標識試薬、放射性同位元素、常磁性化合物、クリアランスを促進するための第二の抗体、および通常のシリンジ、カラム、バイアルなどが挙げられる。
【0074】
裸の抗体での療法
治療上有効量の裸のキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体、またはそれらのフラグメントは、医薬上許容される賦形剤中に調剤することができる。また、裸のキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体の効力は、これらの裸の抗体に一以上の他の裸の抗体、あるいは薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、増殖因子、酵素または治療用放射性核種などの治療薬と結合されたキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体の一以上の免疫複合体、あるいはRS7抗体またはそのフラグメントと同時に、または逐次に、または指示された投与計画に従って投与される薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、増殖因子、酵素、オリゴヌクレオチド、または治療用放射性核種をはじめとする一以上の治療薬を添加することにより増強することもできる。
【0075】
ある好ましい実施態様では、本発明による裸のまたは結合型のRS7抗体は少なくとも一種の癌薬物と組み合わせる。このような組み合わせ療法では薬物の効果を向上させ、必要な薬物用量を引き下げることができる。例えば、肺癌細胞系統Calu3と、二種の乳癌細胞系統MDA468およびT47Dそれぞれに対するDox−RS7および2P−Dox−RS7のIC50値が決定されている。Calu3およびT47D細胞はEGP−1抗原陽性であり、CEA抗原陰性であるが、MDA468はEGP−1およびCEA抗原の両者が陽性である。結果は、Dox−RS7のIC50値は0.04μg/mlであり、2P−Dox−RS7のIC50値は0.023μg/mlであることを示す。従って、本発明による裸のヒト、ヒト化またはキメラ抗EGP−1抗体またはフラグメントを、2P−Doxなどの特定の薬物に結合させると多剤耐性を克服する助けとなる。これはまた、記載されているように、抗体を特定の薬物と組み合わせて与えた場合にも可能である。
【0076】
RS7免疫複合体
本発明はまた、ヒト化、キメラおよびヒトRS7抗体ならびにそのフラグメントの、治療のための使用を意図する。免疫療法の目的は、非標的組織への暴露を最小限にして、細胞傷害量の放射活性、毒素、サイトカイン、酵素またはホルモン、薬物を標的細胞へ送達することである。本発明によるRS7抗原結合タンパク質は、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌および前立腺癌などの種々の腫瘍を治療するために使用できる。
【0077】
本発明によるいずれの抗体または抗体融合タンパク質およびその断片を、一種以上の治療薬または診断薬と結合させてもよい。一般に、一種の治療薬または診断薬がそれぞれの抗体または抗体フラグメントに結合されるが、一を超える治療薬または診断薬を同じ抗体または抗体フラグメントに結合させることもできる。Fc領域が存在しなければ(例えば免疫複合体の抗体成分としても用いられる抗体が抗体フラグメントである場合)、全長抗体または抗体フラグメントのL鎖可変領域へ炭水化物部分を導入することができる。例えば、Leung et al., J. Immunol. 154: 5919 (1995); Hansen et al., 米国特許第5,443,953号明細書(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号明細書を参照されたい(なお、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。この操作された炭水化物部分を用いて治療薬または診断薬を結合させる。
【0078】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に周知である。例えば、Shih et al., Int. J. Cancer 41: 832 (1988); Shih et al., Int. J. Cancer 46: 1101 (1990);およびShih et al., 米国特許第5,057,313号明細書を参照されたい(なお、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。一般的な方法は、炭水化物部分が酸化された抗体成分を、少なくとも一つの遊離アミン基を有し、かつ、複数のペプチドが付加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され、最終の複合体を形成し得る。また、DTPA(Mx−DTPAなど)、DOTA、TETA、またはNOTAなどのキレーターを抗体に結合させることができる。
【0079】
本発明による抗体融合タンパク質は、二種以上の抗体またはそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を構成する各々の抗体またはフラグメントは治療薬または診断薬を含むことができる。また、抗体融合タンパク質の一以上の抗体またはフラグメントは結合した一以上の治療薬または診断薬を含むことができる。さらに、これらの治療薬は同一である必要はなく、異なる治療薬であってもよく、例えば、薬物および放射性同位元素を同じ融合タンパク質へ結合させることができる。特に、IgGは131Iで放射性標識し、薬物と結合させることができる。この131IはIgGのチロシンへ導入でき、薬物はIgGリジンのεアミノ基へ結合させることができる。また、治療薬および診断薬は双方とも還元されたSH基、および炭水化物側鎖に結合させることもできる。
【0080】
多種多様な診断薬および治療薬が、本発明による抗体と有利にも結合できる。本明細書に列挙された治療薬は、上記のように裸の抗体とは別に投与しても有用な薬剤である。治療薬としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピトフィロトキシン、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、抗生物質、置換尿素、酵素、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、およびこれらまたは他の種類の抗癌剤由来の他のもの、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソールなどの化学療法薬が挙げられる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の癌化学療法薬としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体、ホルモン、チロシンキナーゼ阻害剤(EGF受容体チロシンキナーゼBCR ABLチロシンキナーゼまたはVEGF受容体チロシンキナーゼを阻害するものなど)などが挙げられる。好適な化学療法薬は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995およびGOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法薬も、当業者に公知である。
【0081】
シュードモナス外毒素のような毒素も複合化しうるし、あるいは本発明によるRS7およびhRS7抗体の免疫複合体の治療薬部分を形成することができる。このような複合体または他の融合タンパク質の調製に適切に使用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986)、およびGoldenberg, CA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。本発明で用いるのに好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる米国特許第6,077,499号明細書に開示されている。
【0082】
サイトカインのような免疫調節剤もまた結合させることができ、あるいはEGP−1、RS7およびhRS7免疫複合体の治療薬部分を形成することができ、あるいは本発明によるキメラ、ヒト化もしくはヒトRS7抗体またはそのフラグメントに結合させずに投与することができる。本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18およびIL−21)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンなどの造血因子、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な免疫調節剤部分の例としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、L−21、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。あるいは、被験体に裸のEGP−1またはRS7抗体を投与してもよく、別にサイトカインを投与することもでき、これは裸のRS7抗体の投与前、同時または投与後に投与することができる。RS7抗体はまた、免疫調節剤と結合させてもよい。この免疫調節剤はまた、異なる抗原と結合する一以上の抗体からなるハイブリッド抗体と結合させてもよい。
【0083】
治療薬または診断薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。あるいは、このようなペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)。このような結合に関する一般的な技術は当技術分野で周知である。例えば、Wong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING (CRC Press 1991); Upeslacis et al.,"Modification of Antibody by Chemical Methods, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187-230(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60-84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。あるいは、治療薬または診断薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合させることもできる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じペプチドの付加量を増大させるためにも使用できるし、あるいはこの炭化水素部分は異なるペプチドに結合するためにも使用できる。
【0084】
さらに、放射性標識抗体もしくは免疫複合体、またはそのフラグメントは、診断イメージングに有用なγ線放射性同位元素または陽電子放射体を含んでよい。、特にエネルギー範囲が25〜4,000keVの好適な放射性同位元素としては、131I、123I、124I、86Y、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび75Brなどが挙げられる。例えば、18F、68Gaおよび94mTcなどのような造影を目的とする陽電子放射体が開示されている、発明者G. L.Griffiths and W. J. McBrideの「Labeling Targeting Agents with Gallium-68」と題された米国特許出願(米国仮出願番号60/342,104)を参照されたい(なお、その全開示内容は引用することにより本明細書の一部とされる)。診断用および治療用放射性核種のエネルギー範囲は25〜4,000keVであるのが好ましい。その他の有用な放射性核種としては、90Y、111In、125I、3H、35S、14C、186Re、188Re、189Re、177Lu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、94mTc、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、111Ag、197Pt、109Pd、32P、33P、47Sc、153Sm、177Lu、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、18F、75Se、201Tl、225Ac、76Br、86Y、169Yb、166Dy、212Pb、および223Raが挙げられる。
【0085】
例えば、67Cuは61.5というその半減期とβ粒子とγ線を豊富に供給することから放射線免疫療法のためのより有望な放射性同位元素と考えられるが、これはキレート剤p−ブロモアセタミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸(TETA)を用いてRS7抗原結合タンパク質と結合させることができる(Chase,前掲)。あるいは、エネルギーに富んだβ粒子を放出する90Yは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を用いてRS7抗原結合タンパク質に結合させることができる。また、RS7 MAbを131Iで直接放射性標識するための方法がStein et al.(1991,前掲)および"Stable Radioiodine Conjugates and Methods for Their Synthesis"と題されたGovindan et al.のWO9911294A1の特許(引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)に記載されている。
【0086】
熱中性子活性化療法のため、ホウ素付加物を付加した担体を有する本発明によるRS7抗体またはそのフラグメントも、通常同様にして達成される。しかし、中性子照射を行う前に、非標的RS7免疫複合体が除去されるまで待つのが有利である。クリアランスはRS7抗体に結合する抗体を用いて促進することができる。この一般原理を記載したものとしては、米国特許第4,624,846号明細書を参照されたい。例えば、カルボランなどのホウ素付加物をRS7抗体に結合させることができる。カルボランは、当技術分野で周知のように、ペンダント側鎖上のカルボキシル官能基を用いて調製することができる。アミノデキストランなどの担体へのカルボランの結合は、カルボランおよび縮合物のカルボキシル基を担体上のアミンで活性化することにより達成することができる。次に、この中間複合体をRS7抗体と結合させる。RS7抗体複合体を投与した後、熱中性子の照射によってホウ素付加物を活性化し、α放射により崩壊して毒性の高い短期の作用を生じる放射性原子へと変換させる。
【0087】
さらに、本発明は、被験体の癌を診断する方法を含む。診断は、医薬上好適な賦形剤中に調剤した診断上有効量の診断用複合体を投与し、その標識を検出することによって達成すればよい。例えば、放射性薬および非放射性薬を診断薬として用いることができる。好適な非放射性診断薬は、磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影法または超音波法に好適な造影剤である。磁気イメージング剤としては、例えば、本発明による抗体とともに用いる場合は、マンガン、鉄およびガドリニウムなどの非放射性金属を、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤の組み合わせと錯化したものを含む。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる、2001年10月10日出願の米国出願番号09/921,290を参照されたい。
【0088】
従って、被験体の悪性腫瘍を診断する方法が記載され、該方法は(i)裸の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる組成物を用いて、被験体からの検体に対してin vitro診断アッセイを行うことを含んでなる。例えば、有用な診断/検出法として、組織、血液およびその他の体液中の微量のEGP−1の存在を検出するためには、RT−PCRおよび免疫アッセイin vitro診断法を用いることができる。細胞または組織中のEGP−1の存在を検出するためには、免疫組織化学法が使用できる。好ましくは、診断される悪性腫瘍は癌である。最も好ましくは、癌は、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、結腸癌および膀胱癌からなる群から選択される。
【0089】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETAまたはNOTAのようなキレート剤または好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識、または重金属もしくは放射性核種のような細胞傷害剤を結合させることができる。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬または色素を抗体融合タンパク質に結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、および他の色素原、または可視光線に感受性のあるポルフィリンのような色素は、好適な光線を病巣に当てることにより病巣の検出および治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法または光線力学療法と呼ばれている(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))。さらに、光療法を行うためには、モノクローナル抗体が光活性化色素と結合させられてきた(Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);前掲, Cancer Res. 45:4380 (1985); Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744 (1986);前掲, Photochem. Photobiol. 46:83 (1987); Hasan et al., Prog. Clin. Biol. Res. 288:471 (1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422 (1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991))。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントの使用を伴った内視鏡療法の適用は含まれていなかった。従って、本発明は、光活性薬または色素を含んでなる免疫複合体の治療的使用を意図する。
【0090】
本発明ではまた、MRI造影剤、常磁性イオンおよび超音波増強剤などの造影剤も意図される。例えば、ガドリニウムイオン、ランタニド、マンガンイオンまたはその他の同等の標識、CT造影剤、および超音波造影剤が、本発明における使用に好適である。ある好ましい実施態様では、超音波増強剤は、ヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである。また、リポソームはガス充填されていることが好ましい。
【0091】
治療目的では、本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントは治療上有効量で患者に投与される。抗体は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。その存在が受容患者の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、薬剤は生理学上有意である。
【0092】
in vitro診断
本発明は、生体サンプルをRS7抗原の存在に関してin vitroスクリーニングするための、RS7抗体(RS7およびhRS7抗体ならびにそのフラグメントを含む)の使用を意図する。このような免疫アッセイでは、RS7抗体は以下に記載されるように、液相で用いてもよいし、固相担体に結合させてもよい。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al.(1993, 前掲)、およびStein et al., Cancer Res. 49: 32 (1989)も参照されたい。
【0093】
生体サンプルがRS7抗原を含むかどうかを判定するためのスクリーニング方法の一例として、ラジオイムノアッセイ(RIA)がある。例えば、RIAの一形態では、試験下の物質を放射性標識RS7抗原の存在下でRS7抗原MAbと混合する。この方法では、試験物質の濃度は、MAbと結合している標識RS7抗原の量に反比例し、遊離している標識RS7抗原の量と直接相関する。他の好適なスクリーニング法も当業者には容易に明らかになろう。
【0094】
あるいは、RS7抗原結合タンパク質が固相担体に結合されているin vitroアッセイを行うこともできる。例えば、ポリマーをコーティングしたビーズ、プレートまたは試験管などの不溶性の支持体にMAbを結合させるためには、MAbをアミノデキストランのようなポリマーに結合させればよい。
【0095】
他の好適なin vitroアッセイも当業者には容易に明らかになろう。検出可能なように標識されたRS7抗原結合タンパク質およびRS7抗原の具体的な濃度、インキュベーションの温度および時間、ならびにその他のアッセイ条件は、サンプル中のRS7抗原の濃度、サンプルの性質などをはじめとする種々の因子によって異なる。RS7抗原結合タンパク質のサンプルの結合活性は周知の方法に従って測定することができる。当業者ならば、通常の実験を用いて、各測定に関して実施可能で最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
【0096】
特定の条件に関する慣例または必要に応じて、洗浄、攪拌、振盪、濾過などの他の工程をアッセイに加えてもよい。
【0097】
生体サンプル中のRS7抗原の存在は、固相酵素免疫検定アッセイ(ELISA)を用いて判定することができる。直接競合ELISAでは、純粋または半精製抗原調製物を、試験する体液または細胞抽出物に不溶な固相支持体に結合させ、検出可能なように標識した一定量の可溶性抗体を加えれば、固相抗原と標識抗体の間で形成された二元複合体の検出および/または定量が可能となる。
【0098】
これに対し、「二部位ELISA」または「サンドイッチアッセイ」としても知られる「二重決定基」ELISAでは少量の抗原しか必要とせず、このアッセイでは抗原の大量精製の必要はない。このように二重決定基ELISAは、臨床サンプル中の抗原の検出に関しては直接競合ELISAと呼ばれる。例えば、生検検体中のc−myc癌タンパク質の定量のための二重決定基ELISAの使用(Field et al., Oncogene 4: 1463 (1989); Spandidos et al., AntiCancer Res. 9: 821 (1989))を参照されたい。
【0099】
二重決定基ELISAでは、一定量の非標識MAbまたは抗体フラグメント(「キャプチャー抗体」)を固相支持体に結合させ、試験サンプルをキャプチャー抗体と接触させ、検出可能なように標識した可溶性抗体(または抗体フラグメント)を加えればキャプチャー抗体、抗原および標識抗体の間で形成された三元複合体の検出および/または定量が可能となる。抗体フラグメントとは、F(ab')2、F(ab)2、Fab’、 Fabなどのような抗体の部分をいう。本発明では、抗体フラグメントRS7抗原のエピトープと結合するRS7 MAbの部分である。「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成または遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、L鎖可変領域からなる単離されたフラグメント、H鎖およびL鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、およびL鎖およびH鎖可変領域がペプチドリンカーにより連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子が挙げられる。抗体融合タンパク質とは、少なくとも二種の実質的に単一特異性の抗体または抗体フラグメント(ここで、少なくとも二種の抗体または抗体フラグメントはRS7抗原の異なるエピトープに結合する)を含んでなる多重特異性抗体組成物である。RS7融合タンパク質には、抗体融合タンパク質と診断薬もしくは治療薬との複合体も含まれる。RS7抗体には、ヒト化、キメラ、ヒトおよびマウス抗体、その抗体フラグメント、免疫複合体およびそのフラグメント、ならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントが含まれる。
【0100】
二重決定基ELISAを行う方法は周知である。例えば、Field et al.,前掲、Spandidos et al.,前掲、およびMoore et al., "Twin-Site ELISAs for fos and myc Oncoproteins Using the AMPAK System," in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 273-281 (The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい。例えば、二重決定基ELISAを用いてRS7抗原を検出する一つの方法では、生検サンプル由来の組織を細かく刻んだものを凍結乾燥させ、1%ノニデット−p40(NP40)、6μl/mlアプロチニン、0.2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、0.1μg/mlロイペプチンおよび1mM EDTAを含有する溶解バッファー(100mM NaCl、50mM Tris−HCl、pH7.4)に、500μl溶液当たり組織10〜20mg(湿重)の濃度で再懸濁させる。この懸濁液を氷上で60分間インキュベートした後、10秒間隔で約6回音波処理する。不溶性物質は遠心分離によって除去する。
【0101】
この可溶性抽出液を、キャプチャー抗体としてRS7抗原MAbを吸着させたマイクロタイタープレートのウェルに加える。次に、捕捉されたRS7を、アルカリ性ホスファターゼを結合させた第二のRS7抗原MAbにより認識させる。結合しているアルカリ性ホスファターゼの量は抽出液中のRS7抗原の量に比例するものであり、これをp−ニトロフェニルホスフェートのような発色基質を用いて比色法にて検出する。
【0102】
あるいは、RS7抗原に対する二重決定基ELISAは西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて行うこともできる。サンプル調製および二重決定基ELISAの他のバリエーションは当業者ならば通常の実験を用いて考案することができる。
【0103】
二重決定基ELISAでは、可溶性抗体または抗体フラグメントは、キャプチャー抗体によって認識されるエピトープとは異なるRS7エピトープと結合しなければならない。例えば、可溶性抗体はRS7 MAbであってもよく、キャプチャー抗体はMR23であってよい。あるいは、可溶性抗体はMR23であってもよく、キャプチャー抗体はRS7 MAbであってよい。
【0104】
二重決定基ELISAは、生検サンプル中にRS7抗原が存在するかどうかを確認するために行うことができる。あるいは、このアッセイは、体液の臨床サンプル中に存在するRS7抗原を定量するために行うこともできる。この定量アッセイは、精製されたRS7抗原の希釈物を含めて行うことができる。RS7抗原を精製する方法は以下に説明されている。
【0105】
本発明によるRS7 MAbおよびそのフラグメントはまた、アッセイキットの製造にも適している。このようなキットはバイアル、試験管などのような一以上の密閉収容手段(これらの各収容手段は免疫アッセイの個々のヨウ素を含む)に収容するように区画化されている輸送手段を含んでなってもよい。
【0106】
例えば、固相支持体に固定化されたキャプチャー抗体を含む収容手段と、液相として検出可能なように標識された抗体を含むさらなる収容手段が存在してもよい。さらなる収容手段にはRS7抗原の連続希釈物を含む標準液を含んでもよい。RS7抗原の標準液は、横座標にプロットしたRS7抗原の濃度と縦座標上の検出シグナルを用いて標準曲線を作成するために使用できる。RS7抗原を含むサンプルから得られた結果をこのようなプロットから推定し、生体サンプル中のRS7濃度を得ることができる。
【0107】
本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントはまた、組織学的検体から作製した組織切片中のRS7の存在を検出するためにも使用できる。このようなin situ検出を用いてRS7抗原の存在を判定したり、また、検査組織におけるRS7抗原の分布を調べたりすることができる。in situ検出は、検出可能なように標識したRS7抗原結合タンパク質を凍結組織切片に適用することで達成することができる。研究によれば、RS7抗原はパラフィン包埋切片では保存できないことが示されている(Stein et al. (1993), 前掲)。in situ検出の一般技術は当業者に周知である。例えば、Ponder, "Cell Marking Techniques and Their Application," in MAMMALIAN DEVELOPMENT: A PRACTICAL APPROACH 113-38 Monk (ed.) (IRL Press 1987)、およびColigan at pages 5.8.1-5.8.8を参照されたい。また、Stein et al.(1989, 前掲)、およびStein et al.(1993, 前掲)も参照されたい。
【0108】
RS7抗体およびそれらのフラグメントは、好適ないずれかの検出剤、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識または常磁性標識で検出可能なように標識することができる。このような検出可能なように標識されたRS7抗原結合タンパク質を作製および検出する方法は当業者に周知であり、また、以下にもさらに詳細に記載する。
【0109】
マーカー部分は、γカウンターまたはシンチレーションカウンターを用いるなどの手段、またはオートラジオグラフィーによって検出される放射性同位元素であってもよい。ある好ましい実施態様では、診断用複合体はγ線、β線または陽電子放出同位元素である。本明細書においてマーカー部分とは、所定の条件下でシグナルを生じる分子をさす。マーカー部分の例としては、放射性同位元素、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および常磁性標識が挙げられる。本明細書において、診断薬または治療薬とは、診断または治療に有用な複合体を形成するように抗体部分と結合されている分子または原子である。診断薬または治療薬の例としては、薬物、毒素、キレート剤、色素、色素原、ホウ素化合物、およびマーカー部分が挙げられる。本発明の目的において特に有用な同位元素としては、3H、131I、35S、14C、好ましくは125Iがある。他の放射性核種の例としては、例えば、90Y、111In、99mTc、186Re、188Re、177Lu、67Cu、212Bi、213Biおよび211Atがある。また、これ以外の放射性核種も診断薬および治療薬として利用できる。好適な診断イメージング同位元素は通常25〜4,000keVの範囲であり、一方、好適な治療用放射性核種は通常60〜700keVの範囲である。
【0110】
本発明によるRS7抗体およびそれらのフラグメントはまた、蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識MAbの存在は、RS7抗原結合タンパク質に適当な波長の光を当て、生じた蛍光を検出することにより判定される。蛍光標識化合物としてはフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびスルオレスカミンが挙げられる。蛍光標識RS7抗原結合タンパク質はフローサイトメトリー分析に特に有用である。
【0111】
あるいは、RS7抗体およびそれらのフラグメントは、RS7抗原結合タンパク質を化学発光化合物と結合させることによって検出可能なように標識することができる。化学発光タグが付けられたMAbの存在は、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより判定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが挙げられる。
【0112】
同様に、生物発光化合物を用いて本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントを標識することもできる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める生物系で見られる化学発光の一種である。生物発光タンパク質の存在は発光の存在を検出することにより判定される。標識に有用な生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられる。
【0113】
あるいは、RS7抗体およびそのフラグメントは、RS7抗体を酵素と結合させることによっても検出可能なように標識することができる。RS7抗体−酵素複合体を適当な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分が基質と反応して化学部分が生じ、これは例えば分光光度的手段、蛍光測定手段または視覚的手段により検出することができる。RS7抗体を検出可能なように標識するのに使用できる酵素の例としては、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0114】
RS7抗体、融合タンパク質およびそのフラグメントはまた、in vivo診断目的での常磁性イオンで標識することができる。磁気共鳴イメージングに特に有用な造影剤は、Gd、Mn、DyまたはFeイオンを含んでなる。RS7抗体およびそのフラグメントはまた、超音波造影剤と結合させることもできる。例えば、超音波造影剤は、ヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである。また、超音波造影剤は、ガス充填されたリポソームであることが好ましい。
【0115】
これに関連して、二重特異性抗体は、造影剤と結合させることができる。例えば、二重特異性抗体は超音波イメージングで用いるための一種以上のイメージ増強剤を含んでなってもよい。ある好ましい実施態様では、造影剤はリポソームである。リポソームはリポソームの外面に共有結合された二価のDTPA−ペプチドを含んでなるのが好ましい。リポソームがガス充填されていることがいっそう好ましい。
【0116】
当業者には、本発明に従って使用できる他の好適な標識が知られている。マーカー部分とRS7抗体との結合は当技術分野で公知の標準技術を用いて達成することができる。これに関する典型法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1 (1976)、Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1 (1977)、Shih et al., Int'l J. Cancer 46:1101 (1990)、Stein et al. (1990),前掲、およびStein et al. (1993),前掲に記載されている。
【0117】
上記のin vitroおよびin situ検出法を診断または病状の病期判定の補助に用いてもよい。例えば、このような方法は、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌および前立腺癌をはじめとする、RS7抗原を発現する腫瘍を検出するのに用いることができる。
【0118】
in vovo診断
本発明はまた、in vivo診断のためのRS7抗体の使用も意図する。放射性標識MAbを用いた診断イメージングの方法は周知である。イムノシンチグラフィー技術では、例えば抗体をγ線を放出する放射性同位元素で標識し、患者へ導入する。γ線を放出する放射性同位元素の位置および分布を検出するには、ガンマカメラが用いられる。例えば、Srivastava (ed.), RADIOLABELED MONOCLONAL ANTIBODIES FOR IMAGING AND THERAPY (Plenum Press 1988), Chase, "Medical Applications of Radioisotopes," in REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition, Gennaro et al. (eds.), pp. 624-652 (Mack Publishing Co., 1990)、およびBrown, "Clinical Use of Monoclonal Antibodies," in BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY 227-49, Pezzuto et al. (eds.) (Chapman & Hall 1993)を参照されたい。
【0119】
診断イメージングでは、放射性同位元素をRS7抗体に直接または中間的官能基を用いることで間接的に結合させればよい。有用な中間的官能基としては、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸などのキレート剤が挙げられる。例えば、Shih et al.(前掲)、および米国特許第5,057,313号明細書を参照されたい。
【0120】
患者に送達する線量は、最小の半減期、最小の身体残留、および検出と正確な測定が可能な最少の同位元素量の最良の組み合わせとして同位元素を選択することにより、可能な限り低レベルに維持される。RS7抗体と結合させることができ、かつ、診断イメージングに適当な放射性同位元素の例としては、99mTcおよび111Inがある。
【0121】
医薬上好適な賦形剤
治療適用においてRS7抗体の作用期間を制御するために、さらなる薬学的方法を用いてもよい。徐放性製剤はRS7抗体と複合体形成するか、RS7抗体を吸着するポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックスおよびステラリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる(Sherwood et al., Bio/Technology 10: 1446 (1992))。このようなマトリックスからのRS7抗体の放出速度は、RS7抗体の分子量、マトリックス内のRS7抗体の量、および分散している粒子の大きさによって異なる(Saltzman et al., Biophys. J. 55: 163 (1989); Sherwood et al., 前掲)。その他の固相投与形は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th ed. (1990)に記載されている。
【0122】
被験体に送達されるヒト化、キメラおよびヒトRS7抗体は、抗体単独、免疫複合体、融合タンパク質から構成されるか、または一以上の医薬上好適な賦形剤、一以上の付加的成分またはこれらのある組み合わせを含みうる。
【0123】
本発明による免疫複合体、裸の抗体、融合タンパク質およびそのフラグメントは、医薬上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、この免疫複合体または裸の抗体は、混合物中で医薬上好適な賦形剤と結合する。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は当業者に周知である。例えば、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびそれらの改訂版を参照されたい。
【0124】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、例えばボーラス注射または点滴による静脈内投与のために調剤できる。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、または保存剤を加えた複数回投与用容器で提供することができる。この組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとってもよく、沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は使用前に例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルで構成するための粉末形態であってもよい。
【0125】
治療用もしくは診断用複合体または裸の抗体の作用時間を制御するために、その他の製薬法を用いてもよい。徐放性製剤は、免疫複合体または裸の抗体と複合体形成するか、または免疫複合体または裸の抗体を吸着するポリマーの使用によって調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる(Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446(1992))。このようなマトリックスからの免疫複合体または抗体の放出速度は、免疫複合体または抗体の分子量、マトリックス内の免疫複合体、抗体の量、および分散している粒子の大きさによって異なる(Saltzman et al., Biophys. J. 55:163(1989); Sherwood et al., 前掲)。他の固形投与形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition(Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびその改定版に記載されている。
【0126】
また、免疫複合体、抗体融合タンパク質、裸の抗体、およびそのフラグメントは、哺乳類に皮下投与または他の非経口経路でも投与できる。ある好ましい実施態様では、抗EGP−1抗体またはそのフラグメントは、一用量当たり10〜2000mgタンパク質の用量で投与される。さらに、投与は、点滴でも、単回または複数回のボーラス注射によってもよい。一般に、ヒトにおいては、投与される免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、および既往歴といった因子によって異なる。通常、単回の静脈点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によってはより低い、またはより高い用量を投与してもよい。この用量は必要に応じて繰り返してもよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月といったように低い頻度で投与してもよい。用量および日程を適宜調節して、種々の非経口経路により投与してよい。
【0127】
本発明によるRS7抗体は、医薬上有用な組成物を調製する既知の方法に従って調剤することができ、それによりRS7抗体は混合物中で医薬上許容される担体と結合する。組成物は、その投与が受容患者によって許容される場合、「医薬上許容される担体」であると言われる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上許容される担体の一例である。他の好適な担体は当業者に周知である。例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Ed. (1990)を参照されたい。
【0128】
治療目的では、治療上有効な量の免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体が哺乳類に投与される。ヒト以外の動物被験体もまた意図されるが、本発明における好適な被験体は、通常、ヒトである。抗体製剤は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。薬物は、その存在が受容哺乳類の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、生理学上有意である。
【0129】
当業者には、本発明による組成物および方法に対して種々の改変および変更をなしうることが明らかである。よって、本発明は、添付のクレームおよびそれらの均等物の範囲内に入る限り、このような改変および変更を含むものとする。
【0130】
上記に挙げられた総ての刊行物、特許および特許出願の開示は、その各々が個々に引用されることにより本明細書に組み込まれるのと同程度に、引用することによりその全開示内容が明確に本明細書の一部とされる。
【0131】
以下の実施例は本発明の実施態様を例示するものであり、本発明の範囲を何ら限定するために用いてはならない。
【実施例】
【0132】
実施例1:キメラRS7抗体の構築
全細胞質RNAおよびmRNAをRS7産生ハイブリッド細胞から調製した。VKおよびVH配列をコードする遺伝子をRT−PCRおよび5’RACEによりクローニングし、DNAシーケンシングにより配列を決定した。多重依存性クローンを配列決定し、PCR反応によって生じる可能性のあるエラーを除去した。配列解析から二つのVK(#1および#23)と一つのVH(RS7VH)転写物の存在が明らかとなった。この推定される各マウスVKとVHを組み合わせると、ヒト定常領域ドメインを含む二つのキメラAb(cAb)ができ、トランスフェクションによりSp2/0細胞で発現させた。cAb産生クローンは、ELISAにより、トランスフェクト細胞クローンの細胞培養上清をスクリーニングすることにより同定した。陽性クローンを拡張し、細胞培養上清からcAbを精製した。Ag結合アッセイから、VK#23とVHからなるcAb、すなわちcAb−VK#23だけがヒト子宮頚癌細胞ME180(ATCC, Rockville, MD)の粗膜画分でコーティングしたマイクロウェルに結合したことが示された(図1)。VK#1とVHの組み合わせを有するcAb、すなわちcAb−VK#1はAgコートウェルへの結合を示さなかった。よって、この免疫反応性cAb(VK#23を有する)をcRS7と呼んだ。クローニングしたマウスVHおよび最終的なPCR産物としての機能的VK(#23)配列をそれぞれRS7VK(図2A)およびRS7VH(図2B)と呼んだ。
【0133】
RS7 Abの結合活性アッセイ
競合的ELISA結合アッセイを用いて操作したcRS7の結合親和性を評価した。要するに、一定量のビオチニル化マウスRS7を種々の濃度(0.01〜100μg/ml)の試験Ab(RS7またはcRS7)と混合し、Agコートマイクロウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、HPR結合ストレプトアビジンを加え、室温で1時間インキュベートした。Agコートビオチニル化RS7に結合したHPR結合ストレプトアビジンの量を、4mMオルトフェニレンジアミン二塩酸塩および0.04% H2O2を含む基質溶液を添加した後にOD490値を読みとることで明らかにした。この種の競合的Ag結合アッセイによれば、抗原コートウェルに対するビオチニル化マウスRS7の結合に関して同程度よく競合したことが明らかになり、得られたVKおよびVH配列の確実性が確認された(図1)。
【0134】
実施例2:hRS7抗体の構築方法
hRS7 V遺伝子の配列デザイン
KabatデータベースでヒトVKおよびVH配列を検索することにより、RS7 VKおよびVHのFRはそれぞれヒトSA−1A’cl VKおよびRF−TS3 VHと最も高い程度の配列相同性を示すことが分かった。一つの例外がRS7VHのFRであり、NEWM VHのそれと最大の配列相同性を示した。従って、ヒトSA−1A’CLフレームワーク配列をRS7VKのCDRをグラフトするための足場として用い(図3)、RS7VHに対してはRF−TS3とNEWMのフレームワーク配列の組み合わせを用いた(図4)。開始ヒト抗体フレームワークと比べると、これらのCDR領域の外側の各鎖にはいくつかのアミノ酸変化がある。推定CDRをフランキングするマウスFRにおけるいくつかのアミノ酸残基はこれまでに確立されている指針に基づいた改造型hRS7において維持されていた(Qu,Z., Losman, M.J., Eliassen, K.C., Hansen, H.J., Goldenberg, D.M., and Leung,S.O. (1999) Humanization of Immu31, an alpha-fetoprotein-specific antibody. Clin. Cancer Res. 5, 3095s-3100s)。これらの残基はRS7VKのS20、D60、V85およびA100、ならびにRS7VHのK38、K46、A78およびF91である(図3Aおよび3B)。
【0135】
hRS7 V配列の構築
Leung et al. Leung, S.O., Shevitz, J., Pellegrini, M.C., Dion, A.S., Shih, L.B., Goldenberg, D.M., and Hansen, H.J. (1994) Chimerization of LL2, a rapidly internalizing antibody specific for B cell lymphoma. Hybridoma, 13: 469-476)に記載されているような改変法を用いて、図4で示されるような長いオリゴヌクレオチド合成とPCRの組み合わせを用い、hRS7の、デザインされたVLおよびVH遺伝子を構築した。hRS7 VHドメインの構築に関しては、hRS7VHA(176マー)とhRS7VHB(168マー)の二つの長いオリゴヌクレオチドを自動DNAシンセサイザー(Applied Biosystem)にて合成した。
【0136】
hRSVHAはhRS7VHドメインのnt23〜198を表す:
5'-GGTCTGAGTT GAAGAAGCCT GGGGCCTCAG TGAAGGTTTC CTGCAAGGCT TCTGGATACA CCTTCACAAA CTATGGAATG AACTGGGTGA AGCAGGCCCC TGGACAAGGG CTTAAATGGA TGGGCTGGAT AAACACCTAC ACTGGAGAGC CAACATATAC TGATGACTTC AAGGGA-3'。
【0137】
hRS7VHBはnt174〜340に相当するhRS7VHドメインの負鎖を表す:
5'-ACCCTTGGCC CCAGACATCG AAGTACCAGT AGCTACTACC GAACCCCCCT CTTGCACAGA AATACACGGC AGTGTCGTCA GCCTTTAGGC TGCTGATCTG GAGATATGCC GTGCTGACAG AGGTGTCCAA GGAGAAGGCA AACCGTCCCT TGAAGTCATC AGTATATG-3'。
【0138】
hRS7VHAとBの3’末端配列(23nt残基)は互いに相補的である所定のPCR条件下で、hRS7VHAとBの3’末端はアニーニングして、長いオリゴヌクレオチドの残りによってフランキングされた短い二本鎖DNAを形成する。アニーリングした各末端は一本鎖DNAの転写のためのプライマーとして働き、hRS7VHのnt23〜340からなる二本鎖DNAが生じる。このDNAを、hRS7VHBACKおよびhRS7VHFORの二種の短いオリゴヌクレオチドの存在下でさらに増幅し、全長hRS7VHを形成した:
hRS7VHBACK:5'-GTGGTGCTGC AGCAATCTGG GTCTGAGTTG AAGAAGCC-3';
hRS7VHFOR:5'-TGAGGAGACG GTGACCAGGG ACCCTTGGCC CCAGACAT-3'。
【0139】
最少量のhRS7VHAおよびB(実験的に決定)を10μlの10×PCRバッファー(500mM KCl、100mM Tris.HCLバッファー、pH8.3、15mM MgCl2)、2μmolのhRS7VHBACKおよびhRS7VHFOR、ならびに2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus, Norwalk, Ct)の存在下で増幅した。この反応混合物に対して、94℃で1分間の変性、45℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる3サイクルのPCR反応、その後、94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1分間の重合からなる27サイクルのPCR反応を行った。hRS7VHの二本鎖PCR増幅産物をゲル精製し、PstIおよびBstEIIで制限消化し、H鎖足場ベクターVHpBS2の相補的PstI/BstEII部位へクローニングした。
【0140】
ヒト化VK配列の全長DNAの構築に関しては、hRS7VKA(156マー)およびhRS7VKB(155マー)を上記のように合成した。hRS7VKAおよびBは上記のように二種の短いオリゴヌクレオチドhRS7VKBACKおよびhRS7VKFORによって増幅した。
【0141】
HRS7VKAはhRS7VKドメインのnt20〜175を表す:
5'-CTCCATCCTC CCTGTCTGCA TCTGTAGGAG ACAGAGTCAG CATCACCTGC AAGGCCAGTC AGGATGTGAG TATTGCTGTA GCCTGGTATC AGCAGAAACC AGGGAAAGCC CCTAAGCTCC TGATCTACTC GGCATCCTAC CGGTACACTG GAGTCC-3'。
【0142】
hRS7VKBはnt155〜320に相補的なhRS7VKドメインの負鎖を表す:
5'-CCTTGGTCCC AGCACCGAAC GTGAGCGGAG TAATATAATG TTGCTGACAG TAATAAACTG CAAAATCTTC AGGTTGCAGA CTGCTGATGG TGAGAGTGAA ATCTGTCCCA GATCCACTGC CACTGAACCT ATCAGGGACT CCAGTGTACC GGTAG-3'。
hRS7VKBACK:5'-GACATTCAGC TGACCCAGTC TCCATCCTCC CTGTCTG-3';
hRS7VKFOR:5'-ACGTTAGATC TCCACCTTGG TCCCAGCACC G-3'。
【0143】
hRS7VKのゲル精製したPCR産物をPvuIIおよびBglIIIで制限消化し、L鎖足場ベクターVKpBR2の相補的なPvuI/BcII部位へクローニングした。最終の発現ベクターhRS7pdHL2は、上記のように、それぞれhRS7VKおよびVHのXbaI−BamHIおよびXhoI/BamHI断片をpdHL2へ順次サブクローニングすることにより構築した。
【0144】
hRS7抗体のトランスフェクションおよび発現
hRS7の発現ベクター約30μgをSalI消化により線状化し、エレクトロポレーション(450Vおよび25μF)によりSp2/0−Ag14細胞へトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を96ウェルプレートで2日間平板培養した後、最終濃度0.025μMでMTXを培地に加えることで薬剤耐性に関して選択した。2〜3週間でMTX耐性コロニーが出現した。選択に生き残っているコロニーの上清をELISAアッセイによりヒトAb分泌に関して選択した。要するに、100μlの上清を、F(ab’)2フラグメント特異的AbであるGAH−Igでプレコートしたマイクロタイタープレートのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。結合していないタンパク質は洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することによって除去した。Fcフラグメント特異的AbであるHRP結合GAH−IgGをウェルに加えた。1時間インキュベートした後、プレートを洗浄した。結合しているHRP結合Abは、4mM OPDおよび0.04% H2O2を含む基質溶液を添加した後、A490nmで読みとることにより、明らかにした。陽性細胞クローンを拡張し、Aタンパク質カラムでのアフィニティークロマトグラフィーにより、細胞培養上清からhRS7 IgGを精製した。
【0145】
ヒト化RS7抗体の結合活性
ME180細胞膜抽出物をコーティングしたプレートを用いるELISA競合結合アッセイを用いて、記載のように(Stein et al., Int. J. Cancer 55:938-946(1993))hRS7の免疫反応性を評価した。ME180細胞膜画分を音波処理と遠心分離により調製した。粗膜抽出物を遠心分離により96ウェル平底PVCプレートにコーティングし、0.1%グルタルアルデヒドで固定した。種々の濃度のmRS7、cRS7またはhRS7と混合した一定量のビオチニル化マウスRS7をこの膜コートウェルに加え、室温で1〜2時間インキュベートした。洗浄後、HRP結合ストレプトアビジンを加え、室温で1時間インキュベートした。膜結合ビオチニル化mRS7に結合したHRP結合ストレプトアビジンは、4mMオルトフェニレンジアミン二塩酸塩および0.04%H2O2を含む基質溶液を加えた後、A490nmを読みとることによって明らかにした。図6の競合アッセイによって示されるように、hRS7 IgGはmRS7およびcRS7のものに匹敵する結合活性を示し、RS7の結合親和性はヒト化しても保存されていることが確認された。
【0146】
実施例3:レシデュアライジング(residualizing)ラベルを用いたヒト化RS7の放射性ヨウ素化
レシデュアライジング部分(IMP−R4、IMP−R5またはIMP−R8)を放射性ヨウ素化し、他所に記載の手順(Govindan SV, et al. Bioconjugate Chem. 1999;10:231-240)に沿ってジスルフィドを還元したhRS7と結合させた。図9を参照されたい。125I−IMP−Rx−hRS7(ここで、x=4、5または8)を作製するための、125Iを用いたレシデュアライジング放射性ヨウ素標識では、IMP−R4、IMP−R5およびIMP−R8を用いた場合にそれぞれ87.1%(3.38mCi/mg)、34.3%(0.97mCi/mg)、および76.6%(2.93mCi/mg)といった全体収率および(比活性)が得られた。131I−IMP−R4種を用いた大規模131I標識では、次のような結果が得られた。20.4mCiの131I、35.7nmolのIMP−R4および3.22mgのDTTで還元したhRS7を用いたところ、全体収率60%(3.80mCi/mg)が得られた。30.3mCiの131I、IMP−R4および還元型hRS7を用いた別の試験では、69.7%の収率(3.88mCi/mg)が得られた。13.97mCiの131Iを用いた三つ目の試験では、71.8%の組み込み(4.42mCi/mg)が得られた。13.6mCiの131Iおよび非特異的ヒト化抗体hLL2を用いた131I−IMP−R4標識では収率64.4%(3.67mCi/mg)であった。
【0147】
実施例4:乳癌動物モデルにおける臨床前試験
腫瘍ターゲッティング試験のため、5〜8週齢の雌ヌードマウスにおいて、〜2.3×107個の培養MDA−MB−468細胞を皮下注射することで腫瘍を増殖させ、この動物を一ヶ月後、腫瘍サイズが〜01〜0.2cm3に達した時に用いた。マウスに〜10μCiの125I−[IMP−Rx]−hRS7(ここで、x=4、5または8)および20〜25μCiの131I−MAbの混合物を静注した(CT法)。従って、各試験は125I/131Iによる一対の標識試験であった。示された時点で、種々の器官および血中の生体分布を調べ、注射量%/gで表した。125Iの生体分布を決定するに当たっては、131Iの125I枠への後方散乱に関する補正を行った。
【0148】
治療試験のため、様々な形式で腫瘍増殖パターンを試験して腫瘍増殖を安定化させるのに最適な方法を決定した。ターゲッティング試験に用いる方法は約8週間腫瘍増殖させた後に最適となり、腫瘍増殖プロフィールに基づき30〜50%の動物が使用できた。治療試験のため、腫瘍を持つ動物に試験薬剤の131I−IMPR4−hRS7を静注し、直接放射性ヨウ素化した材料131I−hRS7と比べた。基準体重を毎週の体重および腫瘍体積測定値と比較した。腫瘍が3cm3に達した際に動物を屠殺した。動物試験は総てIACUCに承認されたプロトコールに従って行った。
【0149】
in vivo動物における生体分布
これらの試験はNIHスイスヌードマウスで増殖させた腫瘍において二重標識hRS7調製物(125I−IMP−Rx−hRS7(ここで、x=4、5または8、各薬剤は直接標識131I−hRS7と混合した)を用いて行った。表1A、1Bおよび1Cは詳細な生体分布を示しているが、これらはレシデュアライジングラベルを用いた優れた性能を表している。例えば、125I−IMP−R4−hRS7、125I−IMP−R5−hRS7および125I−IMP−R8−hRS7に関する7日目の腫瘍1g当たりの注射量%はそれぞれ41.6±3.0%、32.2±11.6%および24.7±8.5%であったが、各二重標識試験において同じ時点の直接標識131I−hRS7の場合は5.9±0.9%、6.2±2.1%および6.7±2.3%であった。同じ時点での腫瘍/非腫瘍比は、131I−hRS7の場合の比と比べた場合、125I−IMP−R4−hRS7では1.7〜7.6倍高く、125I−IMP−R5−hRS7では1.7〜6.0倍高く、125I−IMP−R8−hRS7では2.0〜4.8倍高かった(データは示されていない)。
【0150】
表1:MDA-MB-468腫瘍異種移植片を有するNIHスイスヌードマウスにおける125I-IMP-R(R4またはR5またはR8)および131I-hRS7で二重標識したヒト化RS7の生態分布 (CT法)
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
131Iの代わりに125Iを用いた生体分布に基づく線量計測はSiegel, JA and Stabin, MG (Journal of Nuclear Medicine 1994; 35:152-156)の方法を用いて行った。表2はレシデュアライジング放射性ヨウ素標識と従来の放射性ヨウ素標識の各組を比較したものであり、図10はそのデータをグラフ化したものである。総てのレシデュアライジング剤が腫瘍へ送達される用量および腫瘍/非腫瘍比の点で最適にふるまっているものと思われ、放射性化学収率が有利であること、および同じ薬剤に対しても特異的活性が得られることから、治療試験のため131I−IMP−R4−hRS7を選択した。
【0154】
【表4】
【0155】
ヌードマウスにおけるMDA−MB−468ヒト乳癌異種移植片の治療
最大許容量(MTD):線量測定データ(表2、群−1)から、血液に1500cGyの線量をもたらす131I−IMP−R4−hRS7および131I−hRS7のmCi量(MTD見積値)を計算するとそれぞれ0.231mCiおよび0.285mCiであった。MTDの実験的測定はスイスヌードマウスにおいて各薬剤の濃度を増加させて行った。131I−IMP−R4−hRS7では、動物群に200、225、250、275、300および325μCiを投与したところ、250μCiの用量で5個体のうち1個体が第4週までに死に至り、300μCi用量群では4個体のうち3個体が2週間〜4週間の間に死に至った。275および325μCiの用量群で第5週目に動物が生き残っているとは予期されなかったが、発明者らはMTDの投与量は、231μCi(線量測定データから算出したもの)〜250μCiの間である結論づけた。131I−hRS7(’CT’に基づく放射性ヨウ素化)では、動物群に250、280、310、340、370および400μCiを注射したところ、2〜3週間の間に340μCiの用量群では6個体のうち6個体が、370μCiの用量群では6個体のうち3個体が、また、400μCの用量群では4個体のうち4個体が死に至った。これらのことに基づけば、MTDは280〜310μCiの範囲であると見積もられた。
【0156】
治療試験−1
この第一の治療試験では、131I−IMPR−4−hRS7と131I−hRS7(CT法)の効力を比較するために、各薬剤をその最大許容量の〜70%で用いた。単回用量175μCiのレシデュアライジング剤は、通常の放射性ヨウ素剤200μCiよりも有意に効力が高いと思われる。非処置動物も含むこの実験では、各群10または11個体の動物を用い、開始時の腫瘍サイズの分布がほとんど同じになるように全3群を無作為化した。この3群の処置前(−2日)の平均腫瘍体積は0.312±0.181、0.308±0.203および0.303±0.212であった。
【0157】
この実験では、49日目までの中間データが以下の図11に示されている。図11の上のパネルは各群の個々の動物の腫瘍体積(cm3)を示し、下のパネルは二種類の形式で平均腫瘍体積を示す。非処置動物では3個体が死に至った。腫瘍増殖抑制は、49日目までの平均腫瘍体積(MTV)に対する曲線下面積(AUC)のスチューデントのt検定によって判断した場合、通常の標識および非処置動物と比べて、レシデュアライジング標識群で有意に良好である。49日目において、MTVのAUCにおける差に関する有意性(p値)は131I−IMP−R4−hRS7によるものであり、括弧内に示される処置前(−2日)の腫瘍体積の差に対する個々のp値は次の通りである。非処置に対して:0.05(0.78);131I−hRS7(CT)に対して:0.03(0.98);非処置に対しての131I−hRS7(CT):0.14(0.81)。49日目の従来の放射性ヨウ素化群とレシデュアライジング放射性ヨウ素化群の間の平均腫瘍体積には連続的発散があり、後者の群は連続的低下に至る。処置8週間後では、131I−IMP−R4−hRS7で処置したマウス11個体のうち5個体で完全緩解が見られ、そのMTVは開始時の値の20%であった。8週間目の非処置および131I−hRS7処置マウスのMTVはそれぞれ個々の開始時の値の280%および163%であり、131I−hRS7群の11個体のマウスのうち1個体が完全緩解を示した。
【0158】
これらの処置は十分許容されるものであった。IMP−R4群の−2日時の平均体重は21.93±2.03であり、49日目は23.68±1.81であり;「CT」群の平均体重は−2日時と49日目でそれぞれ21.77±2.21および23.90±2.64であった。血球数によって判断した場合の処置群の骨髄毒性を図12に示す。要するに、131I−IMP−R4−hRS7では、薬剤投与1週間後に、WBC、リンパ球数および好中球数は、それぞれ対照レベルの34%、7%および61%という最下点に達した。5週間目までにこれらはそれぞれ対照レベルの74%、58%および92%に回復し、49日目に対照レベルの45%、36%および51%に留まった。また、131I−hRS7(CT)では、薬剤投与1週間後にWBC、リンパ球数および好中球数は、それぞれ対照レベルの41%、13%および67%という最下点に達した。5週間目までにこれらはそれぞれ対照レベルの85%、67%および103%に達し、49日目に対照レベルの42%、32%および49%に留まった。
【0159】
治療試験−2
MDA−MB−468腫瘍モデルにおける131I−IMP−R4−hRS7を用いたRAITの特異性
131I−IMP−R4−hRS7の効力を131I−IMP−R4で標識した非特異的対照ヒト化抗体hLL2(抗CD−22 MAb)の効力と比較した。この試験では、各薬剤175μCiを投与した。これは131I−IMP−R4−hRS7の最大許容量の〜70%に相当する。非処置対照を含むこの試験では、各群7〜8個体の動物を用い、各群は治療試験−1と同様に開始時の腫瘍体積分布に関して無作為化した。図13は3群の相対的平均腫瘍体積(MTV)を示しているが(処置前のMTVを100とする)、これは増殖抑制特異性を示している。
【0160】
実施例5:Y−90ヒト化RS7 mAbおよび裸のヒト化RS7 mAbによる乳癌患者の治療
再発性乳房腺癌の病歴を持つ56歳の女性は子宮系リンパ節および左の肺に転移を持っていた。この患者は化学療法およびホルモン療法後に2回再発していた。そこでこの患者にY−90−結合ヒト化RS7 mAbを抗体タンパク質量100mg中20mCiのY−90の各用量で、2週間おきに2回静注した。処置4週間後、この患者の白血球および血小板の数は約50%まで低下したが、処置9週間目までに回復した。処置12週間後に病期の再判定を行ったところ、コンピューター断層撮影法により肺とリンパ節の転移に約30%の退縮が測定された。その後、この患者に裸のヒト化RS7を各3時間かけてし、毎週1回、4回の点滴を行ったが、これは時々一時的な硬直や悪寒があったこと以外は、血球数や血液化学に副作用もなく、十分許容されるものであった。各点滴の裸の抗体の用量は400mg/m2とした。約8週間後、コンピューター断層撮影法により病期の再判定を行ったところ、さらに約20%の測定可能な病巣の退縮が示された。3ヶ月後の追跡試験では、この患者の疾病は安定したことが明らかであった(すなわち、さらなる増殖、または進行性の増殖の形跡がなかった)。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】競合結合アッセイにおけるmRS7、cAb−VK#23(cRS7)、およびcAb−VK#1の比較を示す。異なる濃度の競合Abを用いて、一定量のビオチニル化mRS7抗体の結合と競合させた。結果はVK#1L鎖はRS7抗原と結合しないことを示す。
【図2】(A)5’RACEによってクローニングされたRS7 VKおよび(B)RT−PCRによりクローニングされたRS7 VHをコードするDNAおよびアミノ酸配列を示す。推定CDR領域は下線で示されている。ヌクレオチド残基には連続番号が付けられている。アミノ酸残基にはKabatのIg分子番号体系が用いられている。(B)では、(上に)文字が付いている残基の番号付けは、前の残基の番号に文字を付したものであり、例えば、N52の後のTの番号は52Aであり、I82の後のN、NおよびLの番号はそれぞれ82A、82Bおよび82Cである。
【図3】(A)ヒトSA−1A’cl、マウスRS7、およびhRS7 VK鎖と、(B)ヒトRF−TS3、マウスRS7、およびhRS7 VH鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。(A)では、点はRS7の残基がSA−1A’clの対応する残基と同一であることを示す。ダッシュはアライメントのために挿入されたギャップを表す。囲み線はCDR領域を表す。hRS7のN末端およびC末端残基(下線)は双方とも用いる足場ベクターによって固定されている。従って、RS7の対応する末端残基はヒト配列のものには匹敵しない。Kabatの番号体系法を用いている。(B)では、点はRS7の残基がRF−TS3の対応する残基と同一であることを示す。ダッシュはアライメントのために挿入されたギャップを表す。囲み線はCDR領域を表す。hRS7のN末端およびC末端残基(下線)は双方とも用いる足場ベクターによって固定されている。従って、RS7の対応する末端残基はヒトVH配列のものには匹敵しない。
【図4】(A)ヒト化RS7 VKおよび(B)ヒト化RS7 VHのDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の太字で下線が施されたセクションは、Kabat番号体系法によって定義されるCDRを示す。
【図5】(A)ヒト化RS7 VKのL鎖cDNA配列およびアミノ酸配列と、ヒト化RS7 VHのH鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の下線のセクションは分泌に関するリーダーペプチド配列を示す。「*」は終止コドンを示す。
【図6】競合結合アッセイにおけるmRS7、cRS7、およびhRS7の比較を示す。異なる濃度の競合Abを用い、96ウェルELISAプレートにコーティングしたAgに対する一定量のビオチニル化RS7の結合と競合させた。hRS7は、RS7およびcRS7に匹敵する遮断活性を示した。
【図7】ヒト化RS7 VKのL鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の下線のセクションは分泌に関するリーダーペプチド配列を示す。「*」は終止コドンを示す。リジン残基にも下線が施されている。
【図8】ヒト化RS7 VKのH鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の下線のセクションは分泌に関するリーダーペプチド配列を示す。「*」は終止コドンを示す。リジン残基にも下線が施されている。
【図9】レシデュアライジング部分IMP−R4、IMP−R5およびIMP−R8の構造を示す。
【図10】MDA−MB−468腫瘍モデルにおける放射性ヨウ素化hRS7による線量計測の棒グラフである。
【図11】ヌードマウスにおける乳癌異種移植片の腫瘍成長に対する放射性免疫療法の効果を示す一連のグラフを示す。
【図12】ヌードマウスにおける乳癌異種移植片の放射性免疫療法処置後の毒性を評価する一連のグラフを示す。
【図13】相対的平均腫瘍体積(MTV)を示すグラフである。
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、一価および多価の単一特異性結合タンパク質、ならびに多価多重特異性タンパク質に関する。これらの結合タンパク質の一つの実施態様は一以上の結合部位を有し、各結合部位は標的抗原または標的抗原上のエピトープと結合する。これらの結合タンパク質のもう一つの実施態様は二以上の結合部位を有し、各結合部位は標的抗原上の異なるエピトープに対して親和性を有するか、または標的抗原かハプテンのいずれかに対して親和性を有する。本発明はさらに、宿主においてこれらの機能的結合タンパク質を発現させるために有用な組換えベクターに関する。より詳しくは、本発明は、RS7と呼ばれる腫瘍関連抗原結合タンパク質に関する。本発明はさらに、ヒト化RS7抗原結合タンパク質、ならびに診断および治療におけるこのような結合タンパク質の使用に関する。
【0002】
背景技術
人工の結合タンパク質、特に、モノクローナル抗体および改変抗体または抗体フラグメントは幅広く研究され、癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、および循環器病をはじめとする種々のヒト疾患の検出および治療において重要なものであることがわかっている(Filpula and McGuire, Exp. Opin. Ther. Patents (1999) 9: 231-245)。例えば、放射性同位元素で標識した抗体が、患者への注入後に当技術分野において利用可能な検出器を用いて腫瘍を可視化するために研究されている。抗体または抗体由来薬剤の臨床的有用性は、主として、特定の標的抗原とのその結合能に依存している。選択性は、とりわけ、診断薬または治療薬が体内の正常組織に対して毒性がある場合に、ヒト疾患の検出および治療段階において診断薬または治療薬、例えば、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、酵素、複合体、放射性核種、または金属を標的位置に送達する上で重要である。
【0003】
抗体系の潜在的な制限については、Goldenberg, The American Journal of Medicine (1993) 94: 298-299に記載されている。検出および治療の技術において重要なパラメーターは、標的細胞が存在する部位に特異的に局在する注入投与量および摂取率、すなわち、正常組織周辺に存在する放射能濃度に対する特異的に結合した抗体の濃度の比である。抗体を血流に注入すると、それは多くのコンパートメントを通過し、代謝されて排出される。抗体は、位置を突きとめ、標的細胞抗原と結合することが可能でなければならないが、その一方で、体の他の部分も通過する。抗原のターゲッティング(標的化)を制御する因子としては、位置、大きさ、抗原密度、抗原接近可能性、病理組織の細胞組成、およびターゲッティング(標的化)する抗体の薬物動態学が挙げられる。抗体による腫瘍ターゲッティングに特異的に影響を与えるその他の因子としては、腫瘍およびその他の組織の両方における標的抗原の発現、および放射性標識した抗体の血液クリアランスが遅いために起こる骨髄毒性が挙げられる。標的腫瘍細胞と一体となるターゲッティング抗体の量は、腫瘍の血管形成および抗体浸透を妨げる障害、ならびに腫瘍内圧力によって影響を受ける。非標的器官、例えば、肝臓、腎臓または骨髄による非特異的取り込みは、この技術、特に放射線免疫療法のもう1つの潜在的制限となり、放射線免疫療法では、骨髄照射により用量制限をもたらす毒性が引き起されることが多い。
【0004】
提案されている一つの手法はダイレクト・ターゲッティングと呼ばれ、診断用または治療用の放射性同位元素を含む抗体を用いて特異的抗原をターゲッティングするように設計された技術である。腫瘍に関しては、このダイレクト・ターゲッティング法では、その抗原によって標的腫瘍を認識する放射性標識抗腫瘍単一特異性抗体が用いられる。この技術は、標識された単一特異性抗体を患者に注入し、標的腫瘍に抗体を局在させ、診断または治療上の効用を得ることを含む。結合していない抗体は体内から除去する。この手法は他の哺乳類疾患を診断または治療するためにも使用できる。
【0005】
提案されているもう一つの解決法は「親和性増強系」(Affinity Enhancement System, AES)と呼ばれ、特に、診断用または治療用の放射性同位元素を含む抗体による腫瘍ターゲッティングの欠陥を克服するように設計された技術である(米国特許第5,256,395号明細書(1993), Barbet et al., Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals (1999) 14: 153-166)。AESでは、放射性標識したハプテン、ならびに標的腫瘍および放射性ハプテンの両方を認識する抗腫瘍/抗ハプテン二重特異性結合タンパク質が用いられる。この手法ではまた、原子価のより高いハプテンおよび特異性のより高い結合タンパク質を用いてもよい。この技術は、結合タンパク質を患者に注入し、それを標的腫瘍に局在させることを含む。結合していない結合タンパク質が血流から除去されるのに十分な時間の経過後、放射性標識したハプテンを投与する。ハプテンは標的細胞の部位に局在する抗体−抗原複合体と結合し、診断上または治療上の効用が得られる。結合していないハプテンは体内から除去される。Barbetは、二重特異性抗体が腫瘍表面と結合している場合に、二価ハプテンが該二重特異性抗体と架橋しうるという可能性を記述している。結果として、放射性標識複合体はより安定となり、より長い時間腫瘍に留まる。この系は哺乳類の疾患を診断または治療するために使用できる。
【0006】
当技術分野では、ダイレクト・ターゲッティング系で有用な多価多重特異性結合タンパク質の生産、および親和性増強系で有用な多価多重特異性結合タンパク質の生産が必要とされている。詳細には、標的抗原において高い取り込みを示し、血中濃度は低く、正常な組織および細胞を有毒な医薬から最適に保護する結合タンパク質が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の一つの目的は、ヒト非小細胞肺癌に対して作製されたマウスMAb RS7−3G11により、上皮糖タンパク質−1(EGP−1)として規定される腫瘍関連抗原を認識する単一特異性モノクローナル抗体およびそのフラグメントを提供することである。肺癌および分化抗原に関する第3回国際IASLCワークショップの提案に従って、RS7抗原はEGP−1(上皮糖タンパク質−1)と呼ばれている。あるいは、文献では、EGP−1に関連する少なくとも一つのエピトープがTROP2と呼ばれている。一つの好ましい実施態様では、本発明による抗体または抗体フラグメントは、Stein(前掲)およびこれに先行する他の研究により開示されているマウスRS7抗体と同じエピトープと結合する。あるいは、前記抗体または抗体フラグメントは、Steinにより開示されているマウスRS7抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープにも結合しうる。ある好ましい実施態様では、抗EGP−1抗体もしくは抗TROP2抗体またはそのフラグメントは、キメラ、ヒト化、または完全ヒトRS7抗体またはそのフラグメントである。
【0008】
例えば、本発明では、ヒト化抗体またはそのフラグメントであって、該ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)が、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなるものが意図される。本発明のもう一つの実施態様は、ヒト化抗体またはそのフラグメントであって、該ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである。また、好ましくは、前記ヒト化抗体または抗体フラグメントは、マウスRS7 MAbのCDRと、ヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域の枠組み構造領域(FR)とを含んでなり、ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなり、ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである。さらに好ましくは、前記ヒト化抗体またはそのフラグメントは、ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域のFRをさらに含んでなる。
【0009】
ある好ましい実施態様では、前記ヒト化RS7抗体またはフラグメントは、RS7マウス抗体の対応する位置に見られるアミノ酸残基により置換されている少なくとも一つのアミノ酸を含んでなるL鎖および/またはH鎖のFRを含んでなる。例えば、少なくとも一つの置換アミノ酸残基は、好ましくは図3BのマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基38、46、68および91からなる群から選択される位置にあり、かつ/または少なくとも一つの置換アミノ酸残基は、好ましくは図3AのマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基20、85および100からなる群から選択される位置にある。
【0010】
また、本発明によれば、少なくとも二つの抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該MAbまたはそのフラグメントが本発明による抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントから選択される、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントも記載される。関連する傾向として、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントは、本発明による抗EGP−1抗体のいずれかの少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、本発明による抗EGP抗体またはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントとを含んでなる。例えば、この第二の抗体またはそのフラグメントは、癌腫関連抗体またはそのフラグメントであってもよい。もう一つの好ましい実施態様は、二つの異なるエピトープ結合抗EGP−1抗体またはそのフラグメントを含んでなる融合タンパク質またはそのフラグメントである。
【0011】
本発明の一つの目的は、RS7抗原上の一を超えるエピトープを認識するか、またはRS7抗原およびハプテン分子に対して親和性を有する多重特異性抗体およびそのフラグメントを提供することである。後者の結合タンパク質は標的抗原をプレターゲッティングするのに有用である。よって、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)多価多重特異性MAbまたはそのフラグメントを被験体に投与する工程、(ii)ある量の非結合タンパク質が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および(iii)該被験体に、該抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与する工程を含んでなる方法も記載される。
【0012】
本発明のさらなる目的は、EGP−1抗原を発現する標的疾患に診断薬または治療薬を送達する方法を提供することである。例えば、診断薬もしくは治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも一種の治療薬および/または診断薬に結合された抗EGP−1抗体またはそのフラグメントを含んでなる組成物を用意する工程、および(ii)該組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる方法が記載される。好ましくは、診断薬または治療薬は、同位元素、薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、酵素、増殖因子、放射性核種、金属、造影剤および検出剤からなる群から選択される。
【0013】
本発明の他の実施態様では、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法は、(i)EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以上の抗原結合部位とハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位とを含んでなる多価多重特異性抗体またはそのフラグメントを被験体に投与する工程、(ii)ある量の非結合抗体またはフラグメントが被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および(iii)該被験体に、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程を含んでなる。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、本発明による抗体のいずれか一つの抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなり、該抗EGP−1抗体またはそのフラグメントが少なくとも一種の診断薬または治療薬に結合されている、癌細胞に標的化された診断用または治療用の複合体を提供することである。好適な治療薬は、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、抗生物質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する薬物である。また、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される治療薬も好ましい。好ましくは、診断薬は、光活性放射性核種、好ましくは25〜4000keVのもの、および造影剤からなる群から選択される。
【0015】
ある好ましい実施態様によれば、本発明による抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント;少なくとも二つの該MAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;本発明による抗EGP−1抗体およびフラグメントのMAbまたはそのフラグメントを含む少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、本明細書に記載の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含む抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;または本明細書に記載の抗体のいずれかの該MAbまたはそのフラグメントを含んでなる少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメントと、本明細書に記載の抗体のいずれか一つのMAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント;を含むMAbまたはフラグメントをコードする核酸を含んでなるDNA配列が提供され、該第二のMAbはEGP−2、MUC1−4、A33、CSAp、CEA、Le(y)、Tn、Tag−72、PSMA、PSA、EGFR、HER2/neu、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、PLAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、PAM4−抗原、癌遺伝子産物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性がある。第二のMAbは、これらに代えて、VEGF(血管内皮増殖因子)およびPlGF(胎盤増殖因子)などの腫瘍に関連する血管内皮抗原と反応性があってもよい。第二の抗体の選択は腫瘍細胞のタイプによって異なる。例えば、前立腺癌の治療または診断のためには抗PSMAまたは抗PSA抗体を、乳癌、卵巣癌、肺癌および結腸癌では抗CEAまたは抗MUC1、MUC2、MUC3およびMUC4抗体を、結腸癌および頭頸部癌ではEGFRを、結腸癌および卵巣癌では抗CSAp抗体を、また、乳癌、卵巣癌およびその他の癌では抗HER/neuを用いればよい。これらは単に例として示したものであり、これらに限定されるものではない。このDNA配列を含む発現ベクターおよび宿主細胞もまた本発明の好ましい実施態様である。
【0016】
本明細書ではまた、悪性腫瘍を診断および治療する方法が提供される。例えば、癌を診断または治療する方法は、(i)EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以上の抗原結合部位、およびハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体またはフラグメントを、それを必要とする被験体に投与する工程、(ii)ある量の非結合タンパク質が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および(iii)該被験体に、該抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程を含んでなる。
【0017】
同様に、悪性腫瘍を診断および治療する方法は、治療上有効量の抗EGP−1融合タンパク質もしくはそのフラグメント、またはEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントを含んでなる治療用複合体を投与することを含んでなってもよく、このEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは医薬上好適な賦形剤中で少なくとも一種の治療薬と結合されている。これに関連して、裸の抗EGP−1融合タンパク質およびそのフラグメントなどの、裸の抗EGP−1抗体およびそのフラグメントもまた悪性腫瘍の治療に使用できる。裸の抗EGP−1抗体は、例えば免疫アッセイまたは免疫組織化学法とともに悪性腫瘍のin vitro診断に用いてもよいが、AESなどのプレターゲッティング技術を含まない限り、in vivo診断には使用できない。しかし、標識されたEGP−1抗体であれば、悪性腫瘍のin vivo診断および治療に使用できる。例えば、本明細書には、被験体の癌細胞を治療する方法であって、(i)該被験体に、抗EGP−1MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含む治療上有効量の組成物を投与する工程、および(ii)EGP−1 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤する工程を含んでなる方法が記載される。同様に、本発明ではまた、裸のMAbおよびそのフラグメントと、複合体化されたMAbもしくはそのフラグメントまたは融合タンパク質もしくはそのフラグメントとの組み合わせも意図される。
【好ましい実施態様の詳細な説明】
【0018】
特に断りのない限り、可算名詞("a"または"an")は1つ以上のものを意味する。
【0019】
RS7抗体(以前はRS7−3G11と呼ばれていた)は、肺由来のヒト原発性扁平上皮細胞癌腫の膜粗調製物に対して作製されたマウスIgG1である。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al., Cancer Res. 50: 1330 (1990)を参照されたい。このRS7抗体は、ヒト非小細胞肺癌に対して作製されたマウスMAb RS7−3G11により規定されている腫瘍関連抗原を認識する。Steinらは、クラスター13として同定されている46〜48kDaの糖タンパク質を認識することを開示している。Stein et al., Int. J. Cancer Supp. 8:98-102 (1994)。Basu et al., Int. J. Cancer 52:472-479 (1995)も参照されたい。この抗原は肺癌および分化抗原に関する第3回国際IASLCワークショップの提案により、EGP−1(上皮糖タンパク質−1)と呼ばれている。例えば、DeLeij et al., Int. J. Cancer Supp., 8:60-63 (1994)を参照されたい。従って、本明細書に記載されるように、RS7およびEGP−1抗原は同義である。EGP−1抗原はまた、文献ではTROP2とも呼ばれているが、EGP−1およびTROP2の複数のエピトープが存在するのかもしれない。
【0020】
フローサイトメトリーおよび免疫組織化学染色の研究では、RS7 MAbは、正常ヒト組織への結合は限定され、種々の腫瘍種の抗原を検出することが示されている(Stein et al., (1990),前掲)。RS7抗体はEGP−1糖タンパク質と反応性があり、迅速にインターナライズされうる。EGP−1は主として肺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌および前立腺癌などの癌により発現される。動物モデルにおいて放射性標識したマウスRS7 MAbを用いた位置決定および治療法の研究では、腫瘍のターゲッティングおよび治療効果が示されている(Stein et al., (1990),前掲,Stein et al., (1991),前掲)。
【0021】
より最近の研究では、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌および前立腺癌由来の腫瘍における強いRS7染色が示されている。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al., Int. J. Cancer 55: 938 (1993)を参照されたい。さらにこの研究では、扁平上皮癌と腺癌の双方からなる肺癌が生じる。すなわち、両細胞腫とも強く染色され、RS7抗体は非小細胞肺癌の組織学的種類を区別しないことが示唆される。
【0022】
上記で論じたように、RS7 MAbは標的細胞に迅速にインターナライズされる(Stein et al. (1993),前掲)。RS7 MAbのインターナリゼーション速度定数は、イムノトキシンの生産に重要であることが証明されている、迅速にインターナライズする他の二種類のMAbのインターナリゼーション速度定数の中間型である。すなわち、イムノトキシンコンジュゲートのインターナリゼーションは抗腫瘍活性の絶対的必要条件であることが十分に報告されている(Pastan et al., Cell 47:641 (1986))。薬物イムノコンジュゲートのインターナリゼーションはまた、抗腫瘍効果における主要な因子として記載されている(Yang et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85: 1189 (1988))。従って、RS7抗原は治療薬のインターナリゼーションを要するこれらの種の免疫療法にとって重要な標的となりうる。
【0023】
このように、RS7 MAbを用いた研究は、この抗体が、臨床診断および治療適用の候補となるいくつかの重要な特性を示すことを示唆している。RS7抗原は診断および治療の有用な標的となるので、RS7抗原のエピトープを認識するMAbを得ることが望ましい。さらに、臨床サンプルにおいてRS7抗原を検出するのに望ましく、ヒトでのin vivo適用に不可欠な二重決定基固相酵素免疫検定法(ELISA)の開発のためには、キメラ、ヒト化およびヒト RS7抗体が利用可能であることが不可欠である。
【0024】
この目的のため、本発明は、RS7抗原と結合し、診断および治療法に使用可能なキメラ、ヒト化およびヒト抗体、ならびにそのフラグメントを記載する。ヒト化抗体および抗体フラグメントは、"Anti-CD20 Antibodies And Fusion Proteins Thereof And Methods Of Use"と題された米国仮出願(代理人事件番号18733/1073)、米国仮出願番号60/356,132、米国仮出願番号60/416,232、および代理人事件番号18733/1155に記載されており;米国出願番号5,874,540に開示されているものなどの、クラスIII抗癌胎児性抗原抗体(抗CEA抗体)であるhMN−14抗体;米国出願番号10/116,116に開示されているものなどのMu−9抗体;米国仮出願番号60/399,707に開示されているものなどのAFP抗体;"Monoclonal Antibody cPAM4"と題された米国仮出願(代理人事件番号18733/1102)に開示されているものなどのPAM4抗体;米国仮出願番号60/360,229に記載されているものなどのRS7抗体;および米国特許第5,789,554号および同第6,187,287号、ならびに米国出願番号09/741,843および09/988,013に開示されているものなどのCD22抗体があり、これらは総て引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。本明細書に開示されるキメラ抗体は、ある種に由来する抗体、好ましくは齧歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であるが、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。獣医学における適用では、キメラ抗体の定常ドメインはその他の種のものに由来してもよい。ヒト化抗体は、ある種に由来する抗体、例えば齧歯類抗体のCDRがその齧歯類抗体のH鎖およびL鎖からヒトH鎖およびH鎖可変ドメインへ転移された組換えタンパク質である。
【0025】
好ましい実施態様では、RS7抗体はヒト化されている。非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主によっては外来タンパク質として認識され、繰り返し注射すると体液性の過敏感反応を招く可能性があることから、マウスRS7配列のヒト化は患者が受けうる有害な免疫応答を顕現することができる。マウスに基づくモノクローナル抗体に関しては、これはしばしばヒト抗マウス抗体(HAMA)応答と呼ばれる。本発明のもう一つの実施態様は、ヒトより下等な霊長類の抗EGP−1抗体、マウスモノクローナル抗EGP−1抗体(獣医学適用に限られる)、キメラ抗EGP−1抗体、ヒト抗EGP−1抗体、およびヒト化抗EGP−1抗体である抗EGF−1抗体またはそのフラグメントである。ヒト化RS7抗体またはそのフラグメントの枠組み構造領域のいくつかのヒト残基がそれらのマウス対応物で置換されていることが好ましい。また、VHとして、二種の異なるヒト抗体由来の枠組み構造領域の組み合わせを用いるのも好ましい。この抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。
【0026】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、ヒトRS7抗体である。ヒト抗体は、抗原投与に応答して特定のヒト抗体を産生するよう「操作」されているトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座のエレメントを、内在するH鎖およびL鎖遺伝子座のターゲッティング破壊を含む胚幹細胞系統に由来するマウス株へ導入する。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作出することができる。トランスジェニックマウス由来のヒト抗体を得る方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994)、およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579 (1994)に記載されている。また、完全ヒト抗体も、遺伝子または染色体トランスフェクション法、ならびにファージディスプレー技術により構築することができ、これらは総て当技術分野で公知である。例えば、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体およびそのフラグメントのin vitro生産に関しては、McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990)を参照されたい。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子を糸状バクテリオファージの主働または微働外被タンパク質遺伝子のフレーム内にクローン化し、ファージ粒子表面の機能的抗体フラグメントとして提示する。この糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含んでいるので、抗体の機能的特性に基づいて選択すればまた、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択されることになる。このように、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレーは種々の形式で行うことができる。総説としては、例えば、Johnson and Chiswell, Current Opiniion in Structural Biology 3:5564-571 (1993)を参照されたい。
【0027】
本発明の抗体およびそのフラグメントは、ヒト原発性肺扁平上皮癌由来の膜粗調製物に対して作製するのが好ましい。また、RS7抗体およびそのフラグメントはヒト卵巣癌細胞系統由来の生細胞の膜調製物に対して作製するのが好ましい。RS7抗原はColo 316生細胞により提供されることがいっそう好ましい。これに関して、RS7抗体はRS7抗原の実質的に純粋な調製物を用いて得ることができる。実質的に純粋なタンパク質とは、本来そのタンパク質に伴っている細胞成分が実質的に混入しないタンパク質である。本明細書に記載のように、「RS7抗体」はまた、キメラ、ヒトおよびヒト化RS7抗体も含む。
【0028】
キメラ、ヒト化およびヒトRS7抗体の調製
特定の抗原に対するモノクローナル抗体は当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495(1975)、およびColigan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5. 1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照されたい。要するに、RS7などのMAbは、マウスにRS7抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマをクローニングし、RS7抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、RS7抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、RS7抗体をハイブリドーマ培養物から単離することにより得ることができる。
【0029】
免疫原に対する最初の抗体生成の後に、その抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に周知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンのHおよびL可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いで枠組み構造領域中のヒト残基をマウスの対応物で置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う潜在的な問題が防げる。
【0030】
本発明のヒト抗体、すなわち、ヒトEGP−1 MAb、あるいはヒト化、キメラまたはヒトRS7抗体との併用療法のためのその他のヒト抗体、例えば抗EGP−2、MUC1−4、CEA、CC49、CSAp、PSMA、PSA、EGFR、A33およびHER2/neu MAbはトランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるMendez et al., Nature Genetics, 15: 146-156 (1997); 米国特許第5,633,425号を参照されたい。併用療法に用いうる本発明のヒト抗体はまた、Le(y)、Tn、Tag−72、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性があってもよい。例えば、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。このマウス体液性免疫系は、内在する免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は極めて複雑で、多数の離散セグメントを含み、それはヒトゲノムのほぼ0.2%を占める。トランスジェニックマウスが十分な抗体レパートリーを産生できることを保証するには、ヒトH鎖およびL鎖遺伝子座の大きな部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは、生殖系構造においてヒトH鎖またはL鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成に始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入配列はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。一つはH鎖遺伝子座、もう一つはL鎖遺伝子座を含む二つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞の融合を通じてマウスに個々に導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られたキメラ雄動物を、生殖細胞系を通じてYACを伝達する能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスと交配させる。一種はヒトH鎖遺伝子座を含み、もう一種はヒトL鎖遺伝子座を含む二種のトランスジェニック系統を繁殖させ、免疫感作に応答してヒト抗体を産生する後代をつくる。
【0031】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる刊行物Orlandi et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:3833 (1989)に記載されている。ヒト化MAbを産生する技術は、例えば、Carter et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992)、Singer et al., J Immun. 150:2844 (1992)、Mountain et al. Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 10:1 (1992)、およびColigan at pages 10.19.1-10.19.11に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0032】
一般に、RS7抗体のVK(可変L鎖)およびVH(可変H鎖)配列はRT−PCR、5’−RACEおよびcDNAライブラリースクリーニングなどの種々の分子クローニング手順によって得ることができる。特に、MAb RS7のVHおよびVK遺伝子は、ハイブリドーマ細胞からそれぞれRT−PCRおよび5’−RACEによりPCR増幅によりクローニングし、それらの配列をDNAシーケンシングにより決定した。それらの忠実性を確認するため、クローニングしたVLおよびVH遺伝子を、引用することにより本明細書の一部とされるOrlandi et al. (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86: 3833 (1989))に記載されているように、細胞培養にてキメラAbとして発現させることができる。このV遺伝子配列に基づき、次にヒト化RS7抗体を、引用することにより本明細書の一部とされるLeung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))に記載されているように設計および構築することができる。cDNAは一般的な分子クローニング技術(Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed (1989))により、マウスまたはキメラRS7抗体を産生する、いずれの公知のハイブリドーマ系統またはトランスフェクション細胞系統から調製してもよい。ある好ましい実施態様では、RS7ハイブリドーマ系統が用いられる。mAbのVK配列はプライマーVK1BACKおよびVK1FOR(Orlandi et al., 1989)または引用することにより本明細書の一部とされるLeung et al. (BioTechniques, 15:286 (1993))に記載されている伸張プライマーセットを用いて増幅してもよく、一方、VH配列はプライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al., 1989, 前掲)または引用することにより本明細書の一部とされるLeung et al. (Hybridoma, 13:469 (1994))に記載されているマウスIgGの定常領域へアニーリングするプライマーを用いて増幅することができる。10μlの第一鎖cDNA産物、10μlの10X PCRバッファー[5
00mM KCl、100mM Tris−HCl(pH8.3)、15mM MgCl2、および0.01%(w/v)ゼラチン](Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)、250μMの各dNTP、200nMのプライマー、および5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus)を含有するPCR反応混合物に対して30サイクルのPCRを行うことができる。各PCRサイクルは好ましくは94℃で1分間の変性、50℃で1.5分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる。増幅されたVKおよびVHフラグメントは2%アガロース(BioRad, Richmond, CA)上で精製することができる。同様に、ヒト化V遺伝子は、Leung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))に記載されているように、長いオリゴヌクレオチド鋳型合成とPCR増幅の組み合わせにより構築することができる。
【0033】
VKのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列、およびVκPCR産物のフレーム内連結を容易にする便宜な制限部位を含む、pBR327に基づく足場ベクターVKpBRなどの足場ベクター中にサブクローニングすることができる。VHのPCR産物は、pBluescriptに基づくVHpBSなどの同様の足場ベクター中へサブクローニングすることができる。各PCR産物を含む個々のクローンは、例えば引用することにより本明細書の一部とされるSanger et al. (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74:5463 (1977))の方法により配列決定してもよい。
【0034】
本明細書に記載のDNA配列は、天然に存在するものであれ誘導されたものであれ、あらゆるその対立遺伝子、突然変異体および変異体を含むと考えられる。
【0035】
VKおよびVHを含む発現カセットをプロモーターおよびシグナルペプチド配列とともに、HindIII−BamHI断片として二重制限消化により、それぞれVKpBRおよびVHpBSから切り出すことができる。次に、VKおよびVH発現カセットをそれぞれpKhおよびpG1gなどの適当な発現ベクターへ連結することができる(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))。これらの発現ベクターは、適当な細胞、例えば骨髄腫Sp2/0−Ag14(ATCC,VA)へ同時トランスフェクトし、コロニーをハイグロマイシン耐性に関して選択し、上清液を例えば、下記のように、ELISAアッセイによりキメラまたはヒト化RS7 MAbの産生に関してモニタリングすることができる。あるいは、VKおよびVH発現カセットを改変足場ベクターVKpBR2およびVHpBS2中で組み立て、それぞれXbaI/BamHIおよびXhoI/BamHI断片として切り出し、Gilles et al. (J. Immunol. Methods 125:191 (1989)に記載されているように(また、Sp2/0−Ag14細胞での発現に関してはLosman et al., Cancer, 80:2660 (1997)にも示されている)、pdHL2などの単一の発現ベクター中へサブクローニングすることもできる。本発明において有用なその他のベクターとしては、Barnes et al., Cytotechnology 32:109-123 (2000)に記載されているようなGSベクターがあり、これはNS0細胞系統およびCHO細胞で好ましく発現される。他の適当な哺乳類発現系がWerner et al., Arzneim.-Forsch./Drug Res.48(II), Nr. 8,870-880 (1998)に記載されている。
【0036】
同時トランスフェクションおよびELISAによる抗体分泌クローンのアッセイは次のようにして行うことができる。引用することにより本明細書の一部とされるCo et al., J Immunol., 148:1149 (1992)に従うエレクトロポレーション(BioRad, Richmond, CA)による5×106個のSP2/0骨髄腫細胞のトランスフェクションには、約10μgのVKpKh(L鎖発現ベクター)および20μgのVHpG1g(H鎖発現ベクター)を用いることができる。トランスフェクション後、細胞を37℃、5%CO2下、96ウェルマイクロタイタープレートにて完全HSFM培地(Life Technologies, Inc., Grand Island, NY)中で増殖させればよい。選択プロセスは2日後、ハイグロマイシン選択培地(Calbiochem, San Diego, CA)を最終濃度500単位/mlハイグロマイシンで加えることで開始することができる。コロニーは通常エレクトポレーション後2〜3週間で出現する。次に、これらの培養物をさらなる分析のために増殖させることができる。
【0037】
好適な宿主細胞としては微生物または哺乳類宿主細胞が挙げられる。好ましい宿主としては、MAbおよびその他の融合タンパク質の生産のために開発されたヒト細胞系統PER.C6がある。よって、本発明の一つの好ましい実施態様は、抗EGP−1 MAb、複合体、融合タンパク質またはそのフラグメントをコードするDNA配列を含む宿主細胞である。PER.C6細胞(WO97/00326)は、ヒトホスホグリセンリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの制御下にAd血清型5(Ad5)E1A−およびE1B−コード配列(Ad5ヌクレオチド459−3510)を含むプラスミドを用いた、ヒト胎児網膜一次細胞のトランスフェクションにより作製されたものである。E1AおよびE1Bはそれぞれアデノウイルス初期遺伝子活性化タンパク質1Aおよび1Bである。これらの方法および組成物は、例えばグリコシル化により翻訳後されている目的のヒト組換えタンパク質の安定発現を作り出すのに特に有用である。PER.C6は完全に同定されたヒト細胞系統であり、また、実験室での実践に応じて開発されたものであるなど、いくつかの特徴によりPER.C6は組換えタンパク質の生産のための宿主として特に有用なものとなる。さらに、PER.C6はいずれのヒト由来または動物由来タンパク質も含まない規定の血清フリー培地中の懸濁培養物として増殖させることができ、その増殖は倍加時間約35時間の、回転瓶、シェーカーフラスコ、スピンフラスコおよびバイオリアクターに適合している。最後に、E1Aが存在すると、CMVエンハンサー/プロモーターの制御下にある遺伝子の発現がアップレギュレートされ、E13が存在すると、おそらくは組換えトランスジーンの過剰発現によって増強されたp53依存性のアポトーシスが妨げられる。ある実施態様では、この細胞は従来の哺乳類細胞系統よりも200倍高い組換えタンパク質および/またはタンパク質性物質を産生することができる。
【0038】
キメラまたはヒト化H鎖の分泌に関して陽性のトランスフェクトーマクローンはELISAアッセイにより同定することができる。要するに、トランスフェクトーマ培養物からの上清サンプル(〜100μl)を、ヤギ抗ヒト(GAH)−IgG、F(ab’)2フラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)をプレコートしたELISAマイクロタイタープレートに3反復で添加する。プレートを室温で1時間インキュベートする。洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することで結合していないタンパク質を除去する。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合GAH−IgG、Fcフラグメント特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)をウェルに加える(抗体原液を104倍希釈したもの100μl、非結合抗体を最終濃度1.0μg/mlまで添加)。1時間インキュベートした後、プレートを通常3回洗浄する。反応溶液[PBS中、167μgのオルトフェニレンジアミン(OPD)(Sigma, St. Louis, MO)、0.025%過酸化水素を含有する100μl]をウェルに加える。暗所にて30分間、発色させる。各ウェルに50μlの4N HCl溶液を加えることで反応を停止させた後、自動ELISAリーダー(Bio-Tek instruments, Winooski, VT)で490nmにて吸光度を測定する。次に、無関係なキメラ抗体標品(Scotgen, Ltd., Edinburg, Scotlandから入手可能)に対して結合キメラ抗体を測定する。
【0039】
抗体は細胞培養培地から次のようにして単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を血清フリー培地に適用する。キメラ抗体の生産のためには、HSFMを用い細胞を回転瓶中500mlの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分子し、上清を0.2μメンブランで濾過する。濾過した培地をAタンパク質カラム(1×3cm)に流速1ml/分で通す。次にこの樹脂を約10倍カラム量のPBSで洗浄し、10mMEDTAを含有する0.1Mグリシンバッファー(pH3.5)を用いて、Aタンパク質結合抗体をカラムから溶出させる。1.0ml画分を、10μlの3M Tris(pH8.6)の入った試験管に回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を求める。ピーク画分をプールし、PBSの対して透析し、例えばCentricon 30(Amicon, Beverly, MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度は上記のようにELISAにより測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mlに調整する。保存のためには、サンプルにアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を加えると便宜である。
【0040】
RS7抗体の調製に用いるプライマーのヌクレオチド配列は下記実施例2に挙げられている。ある好ましい実施態様では、ヒト化RS7抗体または抗体フラグメントはマウスRS7 MAbの相補性決定領域(CDR)、およびヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域とヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域の枠組み構造(FR)領域を含んでなり、ここでヒト化RS7のL鎖可変領域のCDRは、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1;アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2;およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなり;ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRは、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1;アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2;およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを福でなるCDR3を含んでなる。また、ヒト化抗体のL鎖およびH鎖可変領域のFRは、マウスRS7 MAbの対応するFRから置換された少なくとも一つのアミノ酸を含んでなるのが好ましい。
【0041】
RS7 MAbは十分確立されている種々の技術によりハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。このような単離技術としては、タンパク質Aセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12およびpages 2.9.1-2.9.3を参照されたい。また、Baines et al., "Purification of Immunoglobulin G (IgG)," in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc. 1992)も参照されたい。
【0042】
RS7 MAbは当業者に周知の種々の技術によって同定することができる。例えば、RS7 MAbのRS7抗原に対する結合能力は、間接的免疫蛍光アッセイ、フローサイトメトリー分析、またはウエスタン分析を用いて確認することができる。
【0043】
RS7抗体フラグメントの生産
本発明はRS7およびhRS7抗体の使用を意図する。特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部分である。他の抗体フラグメントとしては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(ab)'2フラグメント、およびF(ab')2フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できるFab'フラグメントが挙げられる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書および同第4,331,647号明細書、ならびにそこに含まれている参照文献により記載されており、これらの特許はその全開示内容を引用することにより本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89: 230 (1960); Porter, Biochem. J. 73: 119 (1959), Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422 (Academic Press 1967)、およびColigan at pages 2.8.1-2.8.10および2.10.-2.10.4も参照されたい。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするFab’発現ライブラリーを構築することができる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274-1281)。本発明は抗体および抗体フラグメントを包含する。
【0044】
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含んでなる。このVLおよびVHドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合されている。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部である場合、VL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部である場合、VH−L−VLと表される。scFv分子の作製方法、および好適なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号明細書、同第4,946,778号明細書、R. Raag and M. Whitlow,"Single Chain Fvs."FASEB Vol 9:73-80(1995)およびR. E. Bird and B. W. Walker,"Single Chain Antibody Variable Regions,"TIBTECH, Vol 9:132-137(1991)を参照されたい。これらの参照文献は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0045】
抗体フラグメントは、全長抗体のタンパク質加水分解、またはフラグメントをコードするDNAの、大腸菌(E.coli)もしくは他の宿主中での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、常法により全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)2と表される5Sフラグメントを与えることにより作製することができる。このフラグメントはチオール還元剤、および所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、3.5SFab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号明細書および同第4,331,647号明細書、ならびにそこに含まれる参照文献に記載されており、これらの特許は引用することによりその全開示内が本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959)、Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422(Academic Press 1967)、および Coligan at pages 2.8. 1-2.8.10および2.10.-2. 10.4.も参照されたい。
【0046】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超可変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。かかる遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991); Courtenay-Luck,"Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995);およびWard et al.,"Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい。
【0047】
H鎖を分離して一価のL−H鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、または他の酵素学的、化学的または遺伝学的技術も、それらのフラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り用いてよい。
【0048】
キメラ、ヒト化およびヒト RS7抗体融合タンパク質の生産
抗体融合タンパク質およびそのフラグメントは、官能基間のグルタルアルデヒド結合からより特異的な結合まで、種々の常法により調製することができる。抗体および/または抗体フラグメントは好ましくは、別のものに直接共有結合させるか、リンカー部分を介して、または例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオールもしくはヒドロキシル基など、抗体またはフラグメント上の一以上の官能基を介して共有結合させる。グルタルアルデヒドの他、例えばジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどの種々の通常のリンカーを使用できる。
【0049】
キメラ、ヒト化およびヒトRS7抗体融合タンパク質を生産する簡単な方法としては、グルタルアルデヒドの存在下で抗体またはフラグメントを混合して抗体融合タンパク質を形成させるものがある。最初のシッフの塩基結合は例えば第二級アミンへのホウ化水素還元により安定化させることができる。非位置特異的リンカーとしてグルタルアルデヒドの代わりにジイソチオシアネートまたはカルボジイミドを使用することもできる。抗体融合タンパク質は、RS7抗原の少なくとも二つのエピトープに結合する部分を含んでいるので、この融合タンパク質はMAbよりも結合特異性が大きいと期待される。よって、抗体融合タンパク質は治療用途において好ましい形態のRS7抗原結合タンパク質である。
【0050】
これに関して、抗体融合タンパク質は少なくとも二つのキメラ、ヒト化またはヒトRS7 MAb、またはそのフラグメントを含んでなり、ここで、少なくとも二つのこのMAbまたはフラグメントは、RS7抗原の異なるエピトープに、あるいはRS7エピトープおよび完全に異なる抗原のそれに結合する。例えば、二重特異性RS7抗体融合タンパク質は、CEA抗体またはそのフラグメントとRS7 MAbまたはそのフラグメントを含んでなる。このような二重特異性RS7抗体融合タンパク質は、例えば、上記のようにCEAからF(ab’)2フラグメントを得ることにより調製することができる。抗体F(ab’)2フラグメントの鎖内ジスルフィド結合は、L鎖−H鎖結合が起こらないよう注意しながらシステインで穏やかに還元し、Fab’−SHフラグメントを形成させる。このSH基をビス−マレイミドリンカー(1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス−マレイミド)で活性化させる。RS7 MAbをFab’−SHに変換した後、活性化させたCEA Fab’−SHフラグメントと反応させて二重特異性RS7抗体融合タンパク質を得る。
【0051】
多重特異性RS7抗体融合タンパク質は、二重特異性キメラ、ヒト化またはヒトRS7抗体融合タンパク質にRS7抗原結合部分を付加することにより得ることができる。例えば、二重特異性抗体融合タンパク質は、上記のビス−マレイミド活性化手順を用いて、二重特異性融合タンパク質を第三のRS7抗原MAbまたはフラグメントと結合させる際に用いられる一以上のスルヒドリル基を導入するために2−イミノチオランと反応させることができる。これらの抗体生産技術は当業者に周知である。例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる米国特許第4,925,648号明細書を参照されたい。
【0052】
二重特異性抗体は、例えばジスルフィド結合を切断し、全IgGまたは好ましくはF(ab’)2フラグメントの混合物を再形成し、一を超えるハイブリドーマを融合して一を超える特異性を有する抗体を生産するなどの種々の従来法、また、遺伝子操作により作製することができる。二重特異性抗体融合タンパク質は異なる抗体の還元的切断によって生じるFab’フラグメントの酸化的切断によって作製されてきた。これは二つの異なる抗体のペプシン消化によって生じた二つの異なるF(ab’)2フラグメントを混合し、還元的切断によりFab’フラグメントの混合物を形成し、次いで、酸化的にジスルフィド結合を再形成して、元のエピトープの各々に特異的なFab’部分を含む二重特異性抗体融合タンパク質を含むF(ab’)2フラグメントの混合物を作製することにより行うのが有利である。抗体融合タンパク質の調製のための一般的技術は、例えばNisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 93: 470 (1961)、Hammerling et al., J. Exp. Med. 128: 1461 (1968)、および米国特許第4,331,647号明細書に見出せる。本発明では、少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、本発明による抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが意図される。
【0053】
より選択性の高い結合は、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどのヘテロ二官能性リンカーを用いることで達成することができる。このエステルと抗体またはフラグメントとの反応により抗体またはフラグメント上のアミン基が誘導体化され、次にこの誘導体は例えば遊離スルヒドリル基を有する抗体Fabフラグメント(あるいは、例えばトラウトの試薬によりスルヒドリル基が付加されたより大きなフラグメントまたは完全抗体)と反応させることができる。このようなリンカーは同じ抗体の基を架橋しているとは考えにくく、結合の選択性は向上する。
【0054】
抗原結合部位から離れた部位で抗体またはフラグメントを連結するのが有利である。これは、例えば上記のように切断された鎖内スルヒドリル基に連結することで達成することができる。別法としては、酸化された炭化水素部分を有する抗体を、少なくとも一つの遊離アミン官能基を有する別の抗体と反応させることを含む。これにより最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは好ましくは、例えばホウ化水素還元により第二級アミンへ還元することにより安定化され、最終複合体が形成される。このような部位特異的結合が、小分子に関しては米国特許第4,671,958号明細書に、大きな付加物に関しては米国特許第4,699,784号明細書に開示されており、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0055】
12アミノ酸残基長よりも長いリンカー(例えば15または18残基のリンカー)を有するScFvでは、同じ鎖上のVHとVLドメイン間の相互作用が可能であり、一般に単量体、二量体(ダイアボディーと呼ばれる)、および少量のより高次の多量体の混合物が生じる(Kortt et al., Eur. J. Biochem. (1994) 221: 151-157)。しかし、5以下のアミノ酸残基のリンカーを有するScFvでは、同じ鎖上のVHとVLドメインの分子内対合は妨げられ、異なる鎖上のVHとVLドメインの対合が促される。3〜12残基の間のリンカーでは主として二量体が形成される(Atwell et al., Protein Engineering (1999) 12: 597-604)。0〜2残基の間のリンカーでは、scFvの三量体(トリアボディーと呼ばれる)、四量体(テトラボディーと呼ばれる)、またはより高次のオリゴマー構造が形成されるが、オリゴマー化の厳密なパターンはリンカーの長さの他、Vドメインの組成ならびに方向に依存するようである。例えば、抗ノイラミニダーゼ抗体NC10のscFvでは、0残基のリンカーと用いた場合、主として三量体(VHからVL方向)または四量体(VLからVH方向)が生じた(Dolezal et al., Protein Engineering (2000) 13: 565-574)。1および2残基のリンカーを用いてNC10から構築されたscFvでは、VHからVL方向で、主としてダイアボディーが形成されたが(Atwell et al., Protein Engineering (1999) 12: 597-604)、これに対して、VLからVH方向では四量体、三量体、二量体およびより高次の多量体が形成された(Dolezal et al., Protein Engineering (2000) 13: 565-574)。抗CD19抗体HD37から、VHからVL方向で、構築されたscFvについては、0残基リンカーではもっぱら三量体が形成され、1残基リンカーではもっぱら四量体が形成された(Le Gall et al., FEBS Letters (1999) 453: 164-168)。
【0056】
本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントはまた、多価であるが単一特異性の抗原特異的ダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディーを作製するために使用できる。二以上のscFv分子の非共有結合的結合が機能的なダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディーを形成することができる。単一特異性ダイアボディーは同種のscFvのホモ二量体であり、各scFvは、選択された抗体に由来する、短いリンカーによって同じ抗体のVLドメインに連結されたVHドメインを含んでなる。ダイアボディーは二つのscFvの非共有結合的結合によって形成された二価の二量体であり、二つのFv結合部位が生じる。トリアボディーは三つのscFvからなる三価の三量体の形成によるもので、三つの結合部位が生じ、また、テトラボディーは四つのscFvからなる四価の四量体であり、四つの結合部位が生じている。数種の単一特異性ダイアボディーが、VH1−リンカー−VL1を含んでなる組換え遺伝子構築物を含む発現ベクターを用いて作製されている。Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993); Atwell et al., Molecular Immunology 33: 1301-1302 (1996); Holliger et al., Nature Biotechnology 15: 632-631(1997); Helfrich et al., Int. J. Cancer 76: 232-239 (1998); Kipriyanov et al., Int. J. Cancer 77: 763-772 (1998); Holiger et al., Cancer Research 59: 2909-2916(1999)を参照されたい。scFvの構築方法は米国特許第4,946,778号明細書(1990)および同第5,132,405号明細書(1992)に開示されている。scFvに基づく多価多重特異性結合タンパク質の作製方法は、米国特許第5,837,242号明細書(1998)、同第5,844,094号明細書(1998)およびWO98/44001(1998)に開示されている。本発明の好ましい実施態様は、EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以
上の抗原結合部位と、ハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体またはそのフラグメントである。
【0057】
抗体結合親和性の測定
このようにして単離されたmRS7、cRS7およびhRS7抗体の競合的結合親和性は、直接的ラジオイムノアッセイによって測定すればよい。RS7はクロラミンT法(引用することにより本明細書の一部とされるGreenwood et al., Biochem. J., 89: 123 (1963)を参照されたい)を用いて131Iまたは125Iで標識することができる。ヨウ素化した抗体の比活性は通常約10μCi/μgに調節する。非標識抗体および標識抗体を反応培地(1%ウマ血清および100μg/mlゲンタマイシンを添加したHSFM)で適当な濃度に希釈する。適当な濃度の標識抗体および非標識抗体の両者を総量100μlで反応試験管内に一緒に加える。ME180細胞(ヒト子宮頚癌細胞系統)の培養物をサンプリングし、細胞濃度を測定する。この培養物を遠心分離し、回収した細胞を反応培地で一回洗浄した後、最終濃度約107細胞/mlで反応培地に再懸濁させる。総ての手順を4℃の低温中で行う。この細胞懸濁液100μlを反応試験管に加える。反応試験管を周期的に穏やかに振盪させて細胞を再懸濁しつつ、4℃で2時間反応を行う。反応期間の後、5mlの洗浄バッファー(1%BSAを含むPBS)を各試験管へ加える。この懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットをさらに5mlの洗浄バッファーで再度洗浄する。遠心分離後、細胞ペレットに残留する残留放射活性の量をガンマーカウンター(Minaxi, Packard Instruments, Sterling, Va.)で測定する。
【0058】
発現ベクター
発現ベクターは、宿主細胞中で発現される遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成的または誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーをはじめとする特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は調節エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。プロモーターは構造遺伝子の転写を指令するDNA配列である。構造遺伝子はメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写されるDNA配列であり、これは次に特定のポリペプチドに特徴的なアミノ酸配列へと翻訳される。典型的には、プロモーターは構造遺伝子の転写開始部位に隣接して遺伝子の5’領域に置かれる。プロモーターが誘導性プロモーターであれば、誘導因子に応答して転写速度が高まる。これに対し、プロモーターが構成的プロモーターであれば、転写速度は誘導因子によって調節を受けない。エンハンサーは転写の開始部位に対してエンハンサーの距離または方向に関係なく、転写効率を高めうるDNA調節エレメントである。
【0059】
単離されたDNA分子とは、生物のゲノムDNAに組み込まれていないDNAの断片である。例えば、クローニングされたRS7抗原遺伝子は、哺乳類細胞のゲノムDNAから分離されているDNA断片である。単離されたDNA分子の別の例としては、生物のゲノムDNAに組み込まれていない化学合成されたDNA分子がある。相補的DNA(cDNA)は、逆転写酵素によってmRNA鋳型から形成された一本鎖DNA分子である。逆転写の開始には、典型的にはmRNAの一部に相補的なプライマーが用いられる。当業者はまた、このような一本鎖DNA分子およびその相補的DNA鎖からなる二本鎖DNA分子に対しても「cDNA」を用いる。
【0060】
クローニングベクターは、プラスミド、コスミドまたはバクテリオファージなど、宿主細胞で自律的に複製する能力を有するDNA分子である。クローニングベクターは典型的には一または少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、この部位に、ベクターの必須の生物学的機能を失うことなく、確定的に外来DNA配列を挿入することができ、さらにはクローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択に用いるのに好適なマーカー遺伝子を挿入することができる。マーカー遺伝子としては、典型的にはテトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性を与える遺伝子が挙げられる。組換え宿主としては、クローニングベクターか発現ベクターのいずれかを含むいずれの原核または真核細胞であってもよい。この用語はまた、宿主細胞の染色体またはゲノム中にクローニングされた遺伝子を含むよう遺伝子操作された原核または真核細胞も含まれる。発現とは、遺伝子産物の生合成をさす。例えば、構造遺伝子の場合、発現とは、その構造遺伝子のmRNAへの転写およびmRNAの一以上のポリペプチドへの翻訳を含む。
【0061】
治療および診断に用いるヒト化、ヒトおよびキメラRS7抗体
本発明では、被験体の悪性腫瘍を診断または治療する方法であって、該被験体に、EGP−1 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる方法が意図され、ここでは、EGP−1 MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントは、少なくとも一種の治療薬と結合され、医薬上好適な賦形剤中に調剤されている。また、結合されていない(裸の)EGP−1 MAb、または他の抗原結合部分との融合構築物も、EGP−1を発現する癌細胞の治療薬として適したものとすることができると考えられる。これらの非結合抗体は有利には、化学療法、放射線療法および/または免疫療法などの他の治療法をともに、または様々な順序および計画で組み合わせて施すことができる。また、癌を診断または治療する方法であって、EGP−1抗原に対する一以上の抗原結合部位および一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体またはそのフラグメントを、それを必要とする被験体に投与する工程、ある量の非結合タンパク質が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および該被験体に、その多価多重特異性抗体またはそのフラグメントの結合部位と結合する診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与する工程を含んでなる方法が好ましい。ある好ましい実施態様では、癌は肺癌、乳癌、頭頸部癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌または結腸癌である。
【0062】
モノクローナル抗体(MAb)の生産のためのハイブリドーマ技術により、癌細胞を限局化するか、または死滅させることができる分子プローブの作製のための技術を提供された。いくつかの悪性腫瘍で癌の浸潤の詳細を示すために放射性標識MAbを用いた腫瘍イメージング技術が用いられている。試験動物およびヒトで、癌胎児性抗原を発現する様々な腫瘍における癌胎児性抗原、ならびに他のターゲッティング抗体を用いた黒色腫、結腸癌および乳癌などの腫瘍のラジオイムノ検出に抗体が用いられている(Goldenberg et al., Cancer Res. 40: 2984 (1980); Hwang et al., Cancer Res. 45: 4150 (1985); Zalcberg et al., J. Nat'l Cancer Inst. 71: 801 (1983); Colcher et al., Cancer Res. 43: 736 (1983); (Larson et al., J. Nucl. Med. 24: 123 (1983); DeLand et al., Cancer Res. 40: 3046 (1980); Epenetos et al., Lancet 2: 999 (1982))。
【0063】
in vitro診断のためのMAbの使用は周知である。例えば、Carlsson et al., Bio/Technology 7 (6): 567 (1989)を参照されたい。例えば、MAbは生検サンプル由来の組織における腫瘍関連抗原の存在を検出するのに用いることができる。MAbはまた、ラジオイムノアッセイ、固相酵素免疫検定法、および蛍光免疫アッセイなどの技術を用い、臨床液体サンプル中の腫瘍関連抗原の量を測定するためにも使用できる。
【0064】
腫瘍標的化MAbと毒素との複合体はin vivoにおいて癌細胞を選択的に死滅させるために使用できる(Spalding, Bio/Technology 9(8): 701 (1991); Goldenberg, Scientific American Science & Medicine 1(1): 64 (1994))。例えば、試験動物モデルにおける治療研究では、細胞傷害性放射性核種を有する抗体の抗腫瘍活性が証明されている(Goldenberg et al., Cancer Res. 41: 4354 (1981), Cheung et al., J. Nat'l Cancer Inst. 77: 739 (1986)、およびSenekowitsch et al., J. Nucl. Med. 30: 531 (1989))。また、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al., Antibody Immunoconj. Radiopharm. 4: 703 (1991)も参照されたい。さらに、これらのMAbのいくつかを用いた第I相治療試験が、リンパ腫、黒色腫およびその他の悪性腫瘍の治療に関してすでに開始されている。例えば、DeNardo et al., Int. J. Cancer Suppl. 3: 96 (1988)、およびGoldenberg et al., J. Clin. Oncol. 9: 548 (1991)を参照されたい。
【0065】
ヒト化、キメラおよび完全ヒト抗体ならびにそのフラグメントは治療法および診断法に用いるのに好適である。従って、本発明では、診断薬もしくは治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)抗EGP−1抗体を含んでなる組成物を用意する工程、および(ii)その診断または治療用抗体複合体をそれを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる方法が意図される。好ましくは、本発明のキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体ならびにそのフラグメントは、悪性腫瘍を治療する方法で用いられる。
【0066】
また、本明細書では、癌細胞と結合する抗EGP−1 mAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる抗体成分を含んでなる、癌細胞を標的とする診断用または治療用複合体も記載され、ここでは、この抗体成分は少なくとも一種の診断薬または少なくとも一種の治療薬に結合されている。好ましくは、診断用複合体は少なくとも一種の光活性診断薬またはMRI造影剤を含んでなる。いっそう好ましくは、診断薬は60〜4,000keVの間のエネルギーを有する放射性標識である。
【0067】
治療用組成物は、少なくとも一種の裸のまたは結合型のヒト化、キメラまたはヒトRS7抗体を単独で、あるいは本発明による他の裸のまたは結合型のヒト化、キメラ、ヒトまたはその他の抗体、あるいは本明細書に開示されていない他の裸のまたは結合型のヒト化、キメラまたはヒト抗体と組み合わせて含む。本発明はまた、抗EGP−1抗体と結合されていない、免疫調節剤などの治療薬、または診断薬を伴う結合型のまたは裸の抗体の投与も意図する。また、同じまたは異なるエピトープまたは抗原に対する裸のまたは結合型の抗体を本発明による一以上の抗体と組み合わせてもよい。
【0068】
よって、本発明は、抗EGP−1抗体およびフラグメントの、裸の抗体またはフラグメントとして単独での投与、あるいは多様な療法としての投与を意図する。好ましくは、この抗体はヒト化、キメラまたは完全ヒトRS7抗体またはそのフラグメントである。本発明による多様な療法はさらに、裸の抗体、融合タンパク質の形での、または免疫複合体としての他の抗体の投与を伴う、裸の抗EGP−1抗体による免疫療法を含む。例えば、ヒト化、キメラまたは完全ヒトRS7抗体は別の裸のヒト化、キメラRS7もしくはその他の抗体、あるいは同位元素、一以上の化学療法剤、サイトカイン、毒素またはそれらの組み合わせと結合されたヒト化、キメラRS7もしくはその他の抗体と組み合わせてもよい。例えば、本発明は、抗EGP−2、CEA、CSAp、MUC1−4、EGFR、HER2/neu、PSA、CC49(抗Tag72抗体)およびPSMA抗体などの他の固形腫瘍/癌腫関連抗体の前に、または組み合わせて、またはその後に、裸のまたは結合型のEGP−1またはRS7抗体またはそのフラグメントで処置することを意図する。これらの固形腫瘍抗体は裸であってもよいし、あるいはとりわけ薬物、酵素、ホルモン、毒素、同位元素または免疫調節剤と結合させてもよい。また、本発明では、ヒト化、キメラまたは完全ヒトRS7抗体と毒素の融合タンパク質を用いてもよい。裸の抗体として、または部分的に裸で、部分的に治療薬または免疫調節剤と結合したものとして多くの異なる組み合わせを構築してもよい。あるいは、細胞傷害薬などの他の治療薬または放射線と組み合わせて投与するため、種々の裸の抗体の組み合わせを用いてもよい。このような抗体の組早生は有利には、当業者に公知のように、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて作製することができる。治療用複合体はそれ自体、好ましくはB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子および癌遺伝子産物に対して向けられたオリゴヌクレオチド、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでなってよい。また、例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる米国特許第5,734,033号明細書(Reed)に記載されている、bcl−2の発現を阻害するアンチセンス分子を本発明によるヒト化RS7抗体と結合させてもよいし、あるいは抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成してもよいし、あるいは本発明によるヒト化RS7抗体とともに投与してもよい。
【0069】
診断薬または治療薬に結合された本明細書に記載の単一特異性結合タンパク質はRS7陽性腫瘍を直接ターゲッティングする。これらの単一特異性分子は標的抗原と選択的に結合し、分子上の結合部位の数が増すにつれ、標的細胞に対する親和性が増し、所望の場所に見られる耐性時間が長くなる。さらに、非抗原結合分子は身体から速やかに除去され、正常組織の暴露が最小となる。多重特異性結合タンパク質を用いると、その後の診断薬または治療薬の特異的送達のためにRS7陽性腫瘍がプレターゲッティングされる。これらの薬剤はヒスタミンスクシニルグリシル(HSG)含有ペプチドによって運ばれる。679と呼ばれるマウスモノクローナル抗体(IgG1,K)は高い親和性でトリペプチド部分HSGを含む分子と結合する(Morel et al, Molecular immunology, 27, 995-1000, 1990)。679 MAbはhRS7とともに、HSGと標的抗原に結合する二重特異性結合タンパク質を形成することができる。また、この代わりにハプテンを用いてもよい。これらの結合タンパク質は標的抗原に選択的に結合し、親和性の増強および所望の場所での耐性時間の延長を可能とする。さらに、非抗原結合ダイアボディーは身体から速やかに除去され、正常組織の暴露が最小となる。
【0070】
RS7抗体およびそのフラグメントは癌などの哺乳類疾患の治療に使用することができる。癌としては、限定されるものではないが、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌および結腸癌が挙げられる。
【0071】
本発明に従う診断または治療を目的とした診断薬または治療薬の標的への送達は、診断薬または治療薬を有する抗EGP−1抗体またはそのフラグメントを用意すること、およびその結合タンパク質をそれを必要とする被験体に投与することを含む。さらに診断では、既知の技術を用いて結合したタンパク質を検出する工程が必要である。
【0072】
本発明による抗体およびそれらのフラグメントの、診断薬または治療薬を伴う投与は、哺乳類では静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜腔内、髄腔内、局所的カテーテルを通じた潅流、または直接病巣注射により行うことができる。結合タンパク質を注射により投与する場合には、投与は点滴、または単回もしくは複数回のボーラス注射によればよい。治療用としては、20〜800mg/m2の範囲の用量が可能であり、100〜500mg/m2の用量が好ましく、また、診断イメージングについて奨励されるのは、例えば0.5mg〜100mg/患者といった相応に低い用量である。このような用量は臨床状況および患者の許容度に応じて種々の頻度で繰り返してよい。
【0073】
診断薬または治療薬を伴う抗体は医薬上許容される注射用ビヒクル、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、生理的pHおよび濃度で、ヒトまたは哺乳類の治療および診断用キットとして提供してもよい。この製剤は、特にヒトでの使用を意図する場合には無菌であることが好ましい。このようなキットの任意の成分としては、安定剤、緩衝剤、標識試薬、放射性同位元素、常磁性化合物、クリアランスを促進するための第二の抗体、および通常のシリンジ、カラム、バイアルなどが挙げられる。
【0074】
裸の抗体での療法
治療上有効量の裸のキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体、またはそれらのフラグメントは、医薬上許容される賦形剤中に調剤することができる。また、裸のキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体の効力は、これらの裸の抗体に一以上の他の裸の抗体、あるいは薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、増殖因子、酵素または治療用放射性核種などの治療薬と結合されたキメラ、ヒト化および完全ヒトRS7抗体の一以上の免疫複合体、あるいはRS7抗体またはそのフラグメントと同時に、または逐次に、または指示された投与計画に従って投与される薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、増殖因子、酵素、オリゴヌクレオチド、または治療用放射性核種をはじめとする一以上の治療薬を添加することにより増強することもできる。
【0075】
ある好ましい実施態様では、本発明による裸のまたは結合型のRS7抗体は少なくとも一種の癌薬物と組み合わせる。このような組み合わせ療法では薬物の効果を向上させ、必要な薬物用量を引き下げることができる。例えば、肺癌細胞系統Calu3と、二種の乳癌細胞系統MDA468およびT47Dそれぞれに対するDox−RS7および2P−Dox−RS7のIC50値が決定されている。Calu3およびT47D細胞はEGP−1抗原陽性であり、CEA抗原陰性であるが、MDA468はEGP−1およびCEA抗原の両者が陽性である。結果は、Dox−RS7のIC50値は0.04μg/mlであり、2P−Dox−RS7のIC50値は0.023μg/mlであることを示す。従って、本発明による裸のヒト、ヒト化またはキメラ抗EGP−1抗体またはフラグメントを、2P−Doxなどの特定の薬物に結合させると多剤耐性を克服する助けとなる。これはまた、記載されているように、抗体を特定の薬物と組み合わせて与えた場合にも可能である。
【0076】
RS7免疫複合体
本発明はまた、ヒト化、キメラおよびヒトRS7抗体ならびにそのフラグメントの、治療のための使用を意図する。免疫療法の目的は、非標的組織への暴露を最小限にして、細胞傷害量の放射活性、毒素、サイトカイン、酵素またはホルモン、薬物を標的細胞へ送達することである。本発明によるRS7抗原結合タンパク質は、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌および前立腺癌などの種々の腫瘍を治療するために使用できる。
【0077】
本発明によるいずれの抗体または抗体融合タンパク質およびその断片を、一種以上の治療薬または診断薬と結合させてもよい。一般に、一種の治療薬または診断薬がそれぞれの抗体または抗体フラグメントに結合されるが、一を超える治療薬または診断薬を同じ抗体または抗体フラグメントに結合させることもできる。Fc領域が存在しなければ(例えば免疫複合体の抗体成分としても用いられる抗体が抗体フラグメントである場合)、全長抗体または抗体フラグメントのL鎖可変領域へ炭水化物部分を導入することができる。例えば、Leung et al., J. Immunol. 154: 5919 (1995); Hansen et al., 米国特許第5,443,953号明細書(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号明細書を参照されたい(なお、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。この操作された炭水化物部分を用いて治療薬または診断薬を結合させる。
【0078】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に周知である。例えば、Shih et al., Int. J. Cancer 41: 832 (1988); Shih et al., Int. J. Cancer 46: 1101 (1990);およびShih et al., 米国特許第5,057,313号明細書を参照されたい(なお、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。一般的な方法は、炭水化物部分が酸化された抗体成分を、少なくとも一つの遊離アミン基を有し、かつ、複数のペプチドが付加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され、最終の複合体を形成し得る。また、DTPA(Mx−DTPAなど)、DOTA、TETA、またはNOTAなどのキレーターを抗体に結合させることができる。
【0079】
本発明による抗体融合タンパク質は、二種以上の抗体またはそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を構成する各々の抗体またはフラグメントは治療薬または診断薬を含むことができる。また、抗体融合タンパク質の一以上の抗体またはフラグメントは結合した一以上の治療薬または診断薬を含むことができる。さらに、これらの治療薬は同一である必要はなく、異なる治療薬であってもよく、例えば、薬物および放射性同位元素を同じ融合タンパク質へ結合させることができる。特に、IgGは131Iで放射性標識し、薬物と結合させることができる。この131IはIgGのチロシンへ導入でき、薬物はIgGリジンのεアミノ基へ結合させることができる。また、治療薬および診断薬は双方とも還元されたSH基、および炭水化物側鎖に結合させることもできる。
【0080】
多種多様な診断薬および治療薬が、本発明による抗体と有利にも結合できる。本明細書に列挙された治療薬は、上記のように裸の抗体とは別に投与しても有用な薬剤である。治療薬としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピトフィロトキシン、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、抗生物質、置換尿素、酵素、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、ドキソルビシン類似体、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、およびこれらまたは他の種類の抗癌剤由来の他のもの、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソールなどの化学療法薬が挙げられる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の癌化学療法薬としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体、ホルモン、チロシンキナーゼ阻害剤(EGF受容体チロシンキナーゼBCR ABLチロシンキナーゼまたはVEGF受容体チロシンキナーゼを阻害するものなど)などが挙げられる。好適な化学療法薬は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995およびGOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法薬も、当業者に公知である。
【0081】
シュードモナス外毒素のような毒素も複合化しうるし、あるいは本発明によるRS7およびhRS7抗体の免疫複合体の治療薬部分を形成することができる。このような複合体または他の融合タンパク質の調製に適切に使用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986)、およびGoldenberg, CA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。本発明で用いるのに好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる米国特許第6,077,499号明細書に開示されている。
【0082】
サイトカインのような免疫調節剤もまた結合させることができ、あるいはEGP−1、RS7およびhRS7免疫複合体の治療薬部分を形成することができ、あるいは本発明によるキメラ、ヒト化もしくはヒトRS7抗体またはそのフラグメントに結合させずに投与することができる。本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18およびIL−21)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンなどの造血因子、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適な免疫調節剤部分の例としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、L−21、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。あるいは、被験体に裸のEGP−1またはRS7抗体を投与してもよく、別にサイトカインを投与することもでき、これは裸のRS7抗体の投与前、同時または投与後に投与することができる。RS7抗体はまた、免疫調節剤と結合させてもよい。この免疫調節剤はまた、異なる抗原と結合する一以上の抗体からなるハイブリッド抗体と結合させてもよい。
【0083】
治療薬または診断薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。あるいは、このようなペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)。このような結合に関する一般的な技術は当技術分野で周知である。例えば、Wong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING (CRC Press 1991); Upeslacis et al.,"Modification of Antibody by Chemical Methods, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187-230(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60-84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。あるいは、治療薬または診断薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合させることもできる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じペプチドの付加量を増大させるためにも使用できるし、あるいはこの炭化水素部分は異なるペプチドに結合するためにも使用できる。
【0084】
さらに、放射性標識抗体もしくは免疫複合体、またはそのフラグメントは、診断イメージングに有用なγ線放射性同位元素または陽電子放射体を含んでよい。、特にエネルギー範囲が25〜4,000keVの好適な放射性同位元素としては、131I、123I、124I、86Y、62Cu、64Cu、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15Oおよび75Brなどが挙げられる。例えば、18F、68Gaおよび94mTcなどのような造影を目的とする陽電子放射体が開示されている、発明者G. L.Griffiths and W. J. McBrideの「Labeling Targeting Agents with Gallium-68」と題された米国特許出願(米国仮出願番号60/342,104)を参照されたい(なお、その全開示内容は引用することにより本明細書の一部とされる)。診断用および治療用放射性核種のエネルギー範囲は25〜4,000keVであるのが好ましい。その他の有用な放射性核種としては、90Y、111In、125I、3H、35S、14C、186Re、188Re、189Re、177Lu、67Cu、212Bi、213Bi、211At、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、94mTc、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、111Ag、197Pt、109Pd、32P、33P、47Sc、153Sm、177Lu、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、18F、75Se、201Tl、225Ac、76Br、86Y、169Yb、166Dy、212Pb、および223Raが挙げられる。
【0085】
例えば、67Cuは61.5というその半減期とβ粒子とγ線を豊富に供給することから放射線免疫療法のためのより有望な放射性同位元素と考えられるが、これはキレート剤p−ブロモアセタミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸(TETA)を用いてRS7抗原結合タンパク質と結合させることができる(Chase,前掲)。あるいは、エネルギーに富んだβ粒子を放出する90Yは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を用いてRS7抗原結合タンパク質に結合させることができる。また、RS7 MAbを131Iで直接放射性標識するための方法がStein et al.(1991,前掲)および"Stable Radioiodine Conjugates and Methods for Their Synthesis"と題されたGovindan et al.のWO9911294A1の特許(引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)に記載されている。
【0086】
熱中性子活性化療法のため、ホウ素付加物を付加した担体を有する本発明によるRS7抗体またはそのフラグメントも、通常同様にして達成される。しかし、中性子照射を行う前に、非標的RS7免疫複合体が除去されるまで待つのが有利である。クリアランスはRS7抗体に結合する抗体を用いて促進することができる。この一般原理を記載したものとしては、米国特許第4,624,846号明細書を参照されたい。例えば、カルボランなどのホウ素付加物をRS7抗体に結合させることができる。カルボランは、当技術分野で周知のように、ペンダント側鎖上のカルボキシル官能基を用いて調製することができる。アミノデキストランなどの担体へのカルボランの結合は、カルボランおよび縮合物のカルボキシル基を担体上のアミンで活性化することにより達成することができる。次に、この中間複合体をRS7抗体と結合させる。RS7抗体複合体を投与した後、熱中性子の照射によってホウ素付加物を活性化し、α放射により崩壊して毒性の高い短期の作用を生じる放射性原子へと変換させる。
【0087】
さらに、本発明は、被験体の癌を診断する方法を含む。診断は、医薬上好適な賦形剤中に調剤した診断上有効量の診断用複合体を投与し、その標識を検出することによって達成すればよい。例えば、放射性薬および非放射性薬を診断薬として用いることができる。好適な非放射性診断薬は、磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影法または超音波法に好適な造影剤である。磁気イメージング剤としては、例えば、本発明による抗体とともに用いる場合は、マンガン、鉄およびガドリニウムなどの非放射性金属を、2−ベンジル−DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤の組み合わせと錯化したものを含む。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる、2001年10月10日出願の米国出願番号09/921,290を参照されたい。
【0088】
従って、被験体の悪性腫瘍を診断する方法が記載され、該方法は(i)裸の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる組成物を用いて、被験体からの検体に対してin vitro診断アッセイを行うことを含んでなる。例えば、有用な診断/検出法として、組織、血液およびその他の体液中の微量のEGP−1の存在を検出するためには、RT−PCRおよび免疫アッセイin vitro診断法を用いることができる。細胞または組織中のEGP−1の存在を検出するためには、免疫組織化学法が使用できる。好ましくは、診断される悪性腫瘍は癌である。最も好ましくは、癌は、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、結腸癌および膀胱癌からなる群から選択される。
【0089】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETAまたはNOTAのようなキレート剤または好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識、または重金属もしくは放射性核種のような細胞傷害剤を結合させることができる。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬または色素を抗体融合タンパク質に結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、および他の色素原、または可視光線に感受性のあるポルフィリンのような色素は、好適な光線を病巣に当てることにより病巣の検出および治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法または光線力学療法と呼ばれている(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))。さらに、光療法を行うためには、モノクローナル抗体が光活性化色素と結合させられてきた(Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);前掲, Cancer Res. 45:4380 (1985); Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744 (1986);前掲, Photochem. Photobiol. 46:83 (1987); Hasan et al., Prog. Clin. Biol. Res. 288:471 (1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422 (1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991))。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントの使用を伴った内視鏡療法の適用は含まれていなかった。従って、本発明は、光活性薬または色素を含んでなる免疫複合体の治療的使用を意図する。
【0090】
本発明ではまた、MRI造影剤、常磁性イオンおよび超音波増強剤などの造影剤も意図される。例えば、ガドリニウムイオン、ランタニド、マンガンイオンまたはその他の同等の標識、CT造影剤、および超音波造影剤が、本発明における使用に好適である。ある好ましい実施態様では、超音波増強剤は、ヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである。また、リポソームはガス充填されていることが好ましい。
【0091】
治療目的では、本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントは治療上有効量で患者に投与される。抗体は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。その存在が受容患者の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、薬剤は生理学上有意である。
【0092】
in vitro診断
本発明は、生体サンプルをRS7抗原の存在に関してin vitroスクリーニングするための、RS7抗体(RS7およびhRS7抗体ならびにそのフラグメントを含む)の使用を意図する。このような免疫アッセイでは、RS7抗体は以下に記載されるように、液相で用いてもよいし、固相担体に結合させてもよい。引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるStein et al.(1993, 前掲)、およびStein et al., Cancer Res. 49: 32 (1989)も参照されたい。
【0093】
生体サンプルがRS7抗原を含むかどうかを判定するためのスクリーニング方法の一例として、ラジオイムノアッセイ(RIA)がある。例えば、RIAの一形態では、試験下の物質を放射性標識RS7抗原の存在下でRS7抗原MAbと混合する。この方法では、試験物質の濃度は、MAbと結合している標識RS7抗原の量に反比例し、遊離している標識RS7抗原の量と直接相関する。他の好適なスクリーニング法も当業者には容易に明らかになろう。
【0094】
あるいは、RS7抗原結合タンパク質が固相担体に結合されているin vitroアッセイを行うこともできる。例えば、ポリマーをコーティングしたビーズ、プレートまたは試験管などの不溶性の支持体にMAbを結合させるためには、MAbをアミノデキストランのようなポリマーに結合させればよい。
【0095】
他の好適なin vitroアッセイも当業者には容易に明らかになろう。検出可能なように標識されたRS7抗原結合タンパク質およびRS7抗原の具体的な濃度、インキュベーションの温度および時間、ならびにその他のアッセイ条件は、サンプル中のRS7抗原の濃度、サンプルの性質などをはじめとする種々の因子によって異なる。RS7抗原結合タンパク質のサンプルの結合活性は周知の方法に従って測定することができる。当業者ならば、通常の実験を用いて、各測定に関して実施可能で最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
【0096】
特定の条件に関する慣例または必要に応じて、洗浄、攪拌、振盪、濾過などの他の工程をアッセイに加えてもよい。
【0097】
生体サンプル中のRS7抗原の存在は、固相酵素免疫検定アッセイ(ELISA)を用いて判定することができる。直接競合ELISAでは、純粋または半精製抗原調製物を、試験する体液または細胞抽出物に不溶な固相支持体に結合させ、検出可能なように標識した一定量の可溶性抗体を加えれば、固相抗原と標識抗体の間で形成された二元複合体の検出および/または定量が可能となる。
【0098】
これに対し、「二部位ELISA」または「サンドイッチアッセイ」としても知られる「二重決定基」ELISAでは少量の抗原しか必要とせず、このアッセイでは抗原の大量精製の必要はない。このように二重決定基ELISAは、臨床サンプル中の抗原の検出に関しては直接競合ELISAと呼ばれる。例えば、生検検体中のc−myc癌タンパク質の定量のための二重決定基ELISAの使用(Field et al., Oncogene 4: 1463 (1989); Spandidos et al., AntiCancer Res. 9: 821 (1989))を参照されたい。
【0099】
二重決定基ELISAでは、一定量の非標識MAbまたは抗体フラグメント(「キャプチャー抗体」)を固相支持体に結合させ、試験サンプルをキャプチャー抗体と接触させ、検出可能なように標識した可溶性抗体(または抗体フラグメント)を加えればキャプチャー抗体、抗原および標識抗体の間で形成された三元複合体の検出および/または定量が可能となる。抗体フラグメントとは、F(ab')2、F(ab)2、Fab’、 Fabなどのような抗体の部分をいう。本発明では、抗体フラグメントRS7抗原のエピトープと結合するRS7 MAbの部分である。「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成または遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、L鎖可変領域からなる単離されたフラグメント、H鎖およびL鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、およびL鎖およびH鎖可変領域がペプチドリンカーにより連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子が挙げられる。抗体融合タンパク質とは、少なくとも二種の実質的に単一特異性の抗体または抗体フラグメント(ここで、少なくとも二種の抗体または抗体フラグメントはRS7抗原の異なるエピトープに結合する)を含んでなる多重特異性抗体組成物である。RS7融合タンパク質には、抗体融合タンパク質と診断薬もしくは治療薬との複合体も含まれる。RS7抗体には、ヒト化、キメラ、ヒトおよびマウス抗体、その抗体フラグメント、免疫複合体およびそのフラグメント、ならびに抗体融合タンパク質およびそのフラグメントが含まれる。
【0100】
二重決定基ELISAを行う方法は周知である。例えば、Field et al.,前掲、Spandidos et al.,前掲、およびMoore et al., "Twin-Site ELISAs for fos and myc Oncoproteins Using the AMPAK System," in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 273-281 (The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい。例えば、二重決定基ELISAを用いてRS7抗原を検出する一つの方法では、生検サンプル由来の組織を細かく刻んだものを凍結乾燥させ、1%ノニデット−p40(NP40)、6μl/mlアプロチニン、0.2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、0.1μg/mlロイペプチンおよび1mM EDTAを含有する溶解バッファー(100mM NaCl、50mM Tris−HCl、pH7.4)に、500μl溶液当たり組織10〜20mg(湿重)の濃度で再懸濁させる。この懸濁液を氷上で60分間インキュベートした後、10秒間隔で約6回音波処理する。不溶性物質は遠心分離によって除去する。
【0101】
この可溶性抽出液を、キャプチャー抗体としてRS7抗原MAbを吸着させたマイクロタイタープレートのウェルに加える。次に、捕捉されたRS7を、アルカリ性ホスファターゼを結合させた第二のRS7抗原MAbにより認識させる。結合しているアルカリ性ホスファターゼの量は抽出液中のRS7抗原の量に比例するものであり、これをp−ニトロフェニルホスフェートのような発色基質を用いて比色法にて検出する。
【0102】
あるいは、RS7抗原に対する二重決定基ELISAは西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて行うこともできる。サンプル調製および二重決定基ELISAの他のバリエーションは当業者ならば通常の実験を用いて考案することができる。
【0103】
二重決定基ELISAでは、可溶性抗体または抗体フラグメントは、キャプチャー抗体によって認識されるエピトープとは異なるRS7エピトープと結合しなければならない。例えば、可溶性抗体はRS7 MAbであってもよく、キャプチャー抗体はMR23であってよい。あるいは、可溶性抗体はMR23であってもよく、キャプチャー抗体はRS7 MAbであってよい。
【0104】
二重決定基ELISAは、生検サンプル中にRS7抗原が存在するかどうかを確認するために行うことができる。あるいは、このアッセイは、体液の臨床サンプル中に存在するRS7抗原を定量するために行うこともできる。この定量アッセイは、精製されたRS7抗原の希釈物を含めて行うことができる。RS7抗原を精製する方法は以下に説明されている。
【0105】
本発明によるRS7 MAbおよびそのフラグメントはまた、アッセイキットの製造にも適している。このようなキットはバイアル、試験管などのような一以上の密閉収容手段(これらの各収容手段は免疫アッセイの個々のヨウ素を含む)に収容するように区画化されている輸送手段を含んでなってもよい。
【0106】
例えば、固相支持体に固定化されたキャプチャー抗体を含む収容手段と、液相として検出可能なように標識された抗体を含むさらなる収容手段が存在してもよい。さらなる収容手段にはRS7抗原の連続希釈物を含む標準液を含んでもよい。RS7抗原の標準液は、横座標にプロットしたRS7抗原の濃度と縦座標上の検出シグナルを用いて標準曲線を作成するために使用できる。RS7抗原を含むサンプルから得られた結果をこのようなプロットから推定し、生体サンプル中のRS7濃度を得ることができる。
【0107】
本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントはまた、組織学的検体から作製した組織切片中のRS7の存在を検出するためにも使用できる。このようなin situ検出を用いてRS7抗原の存在を判定したり、また、検査組織におけるRS7抗原の分布を調べたりすることができる。in situ検出は、検出可能なように標識したRS7抗原結合タンパク質を凍結組織切片に適用することで達成することができる。研究によれば、RS7抗原はパラフィン包埋切片では保存できないことが示されている(Stein et al. (1993), 前掲)。in situ検出の一般技術は当業者に周知である。例えば、Ponder, "Cell Marking Techniques and Their Application," in MAMMALIAN DEVELOPMENT: A PRACTICAL APPROACH 113-38 Monk (ed.) (IRL Press 1987)、およびColigan at pages 5.8.1-5.8.8を参照されたい。また、Stein et al.(1989, 前掲)、およびStein et al.(1993, 前掲)も参照されたい。
【0108】
RS7抗体およびそれらのフラグメントは、好適ないずれかの検出剤、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識または常磁性標識で検出可能なように標識することができる。このような検出可能なように標識されたRS7抗原結合タンパク質を作製および検出する方法は当業者に周知であり、また、以下にもさらに詳細に記載する。
【0109】
マーカー部分は、γカウンターまたはシンチレーションカウンターを用いるなどの手段、またはオートラジオグラフィーによって検出される放射性同位元素であってもよい。ある好ましい実施態様では、診断用複合体はγ線、β線または陽電子放出同位元素である。本明細書においてマーカー部分とは、所定の条件下でシグナルを生じる分子をさす。マーカー部分の例としては、放射性同位元素、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および常磁性標識が挙げられる。本明細書において、診断薬または治療薬とは、診断または治療に有用な複合体を形成するように抗体部分と結合されている分子または原子である。診断薬または治療薬の例としては、薬物、毒素、キレート剤、色素、色素原、ホウ素化合物、およびマーカー部分が挙げられる。本発明の目的において特に有用な同位元素としては、3H、131I、35S、14C、好ましくは125Iがある。他の放射性核種の例としては、例えば、90Y、111In、99mTc、186Re、188Re、177Lu、67Cu、212Bi、213Biおよび211Atがある。また、これ以外の放射性核種も診断薬および治療薬として利用できる。好適な診断イメージング同位元素は通常25〜4,000keVの範囲であり、一方、好適な治療用放射性核種は通常60〜700keVの範囲である。
【0110】
本発明によるRS7抗体およびそれらのフラグメントはまた、蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識MAbの存在は、RS7抗原結合タンパク質に適当な波長の光を当て、生じた蛍光を検出することにより判定される。蛍光標識化合物としてはフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびスルオレスカミンが挙げられる。蛍光標識RS7抗原結合タンパク質はフローサイトメトリー分析に特に有用である。
【0111】
あるいは、RS7抗体およびそれらのフラグメントは、RS7抗原結合タンパク質を化学発光化合物と結合させることによって検出可能なように標識することができる。化学発光タグが付けられたMAbの存在は、化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することにより判定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルが挙げられる。
【0112】
同様に、生物発光化合物を用いて本発明によるRS7抗体およびそのフラグメントを標識することもできる。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める生物系で見られる化学発光の一種である。生物発光タンパク質の存在は発光の存在を検出することにより判定される。標識に有用な生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられる。
【0113】
あるいは、RS7抗体およびそのフラグメントは、RS7抗体を酵素と結合させることによっても検出可能なように標識することができる。RS7抗体−酵素複合体を適当な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分が基質と反応して化学部分が生じ、これは例えば分光光度的手段、蛍光測定手段または視覚的手段により検出することができる。RS7抗体を検出可能なように標識するのに使用できる酵素の例としては、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0114】
RS7抗体、融合タンパク質およびそのフラグメントはまた、in vivo診断目的での常磁性イオンで標識することができる。磁気共鳴イメージングに特に有用な造影剤は、Gd、Mn、DyまたはFeイオンを含んでなる。RS7抗体およびそのフラグメントはまた、超音波造影剤と結合させることもできる。例えば、超音波造影剤は、ヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである。また、超音波造影剤は、ガス充填されたリポソームであることが好ましい。
【0115】
これに関連して、二重特異性抗体は、造影剤と結合させることができる。例えば、二重特異性抗体は超音波イメージングで用いるための一種以上のイメージ増強剤を含んでなってもよい。ある好ましい実施態様では、造影剤はリポソームである。リポソームはリポソームの外面に共有結合された二価のDTPA−ペプチドを含んでなるのが好ましい。リポソームがガス充填されていることがいっそう好ましい。
【0116】
当業者には、本発明に従って使用できる他の好適な標識が知られている。マーカー部分とRS7抗体との結合は当技術分野で公知の標準技術を用いて達成することができる。これに関する典型法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1 (1976)、Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1 (1977)、Shih et al., Int'l J. Cancer 46:1101 (1990)、Stein et al. (1990),前掲、およびStein et al. (1993),前掲に記載されている。
【0117】
上記のin vitroおよびin situ検出法を診断または病状の病期判定の補助に用いてもよい。例えば、このような方法は、肺癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、胃癌および前立腺癌をはじめとする、RS7抗原を発現する腫瘍を検出するのに用いることができる。
【0118】
in vovo診断
本発明はまた、in vivo診断のためのRS7抗体の使用も意図する。放射性標識MAbを用いた診断イメージングの方法は周知である。イムノシンチグラフィー技術では、例えば抗体をγ線を放出する放射性同位元素で標識し、患者へ導入する。γ線を放出する放射性同位元素の位置および分布を検出するには、ガンマカメラが用いられる。例えば、Srivastava (ed.), RADIOLABELED MONOCLONAL ANTIBODIES FOR IMAGING AND THERAPY (Plenum Press 1988), Chase, "Medical Applications of Radioisotopes," in REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition, Gennaro et al. (eds.), pp. 624-652 (Mack Publishing Co., 1990)、およびBrown, "Clinical Use of Monoclonal Antibodies," in BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY 227-49, Pezzuto et al. (eds.) (Chapman & Hall 1993)を参照されたい。
【0119】
診断イメージングでは、放射性同位元素をRS7抗体に直接または中間的官能基を用いることで間接的に結合させればよい。有用な中間的官能基としては、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸などのキレート剤が挙げられる。例えば、Shih et al.(前掲)、および米国特許第5,057,313号明細書を参照されたい。
【0120】
患者に送達する線量は、最小の半減期、最小の身体残留、および検出と正確な測定が可能な最少の同位元素量の最良の組み合わせとして同位元素を選択することにより、可能な限り低レベルに維持される。RS7抗体と結合させることができ、かつ、診断イメージングに適当な放射性同位元素の例としては、99mTcおよび111Inがある。
【0121】
医薬上好適な賦形剤
治療適用においてRS7抗体の作用期間を制御するために、さらなる薬学的方法を用いてもよい。徐放性製剤はRS7抗体と複合体形成するか、RS7抗体を吸着するポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックスおよびステラリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる(Sherwood et al., Bio/Technology 10: 1446 (1992))。このようなマトリックスからのRS7抗体の放出速度は、RS7抗体の分子量、マトリックス内のRS7抗体の量、および分散している粒子の大きさによって異なる(Saltzman et al., Biophys. J. 55: 163 (1989); Sherwood et al., 前掲)。その他の固相投与形は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th ed. (1990)に記載されている。
【0122】
被験体に送達されるヒト化、キメラおよびヒトRS7抗体は、抗体単独、免疫複合体、融合タンパク質から構成されるか、または一以上の医薬上好適な賦形剤、一以上の付加的成分またはこれらのある組み合わせを含みうる。
【0123】
本発明による免疫複合体、裸の抗体、融合タンパク質およびそのフラグメントは、医薬上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、この免疫複合体または裸の抗体は、混合物中で医薬上好適な賦形剤と結合する。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は当業者に周知である。例えば、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびそれらの改訂版を参照されたい。
【0124】
本発明による免疫複合体または裸の抗体は、例えばボーラス注射または点滴による静脈内投与のために調剤できる。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、または保存剤を加えた複数回投与用容器で提供することができる。この組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとってもよく、沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は使用前に例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルで構成するための粉末形態であってもよい。
【0125】
治療用もしくは診断用複合体または裸の抗体の作用時間を制御するために、その他の製薬法を用いてもよい。徐放性製剤は、免疫複合体または裸の抗体と複合体形成するか、または免疫複合体または裸の抗体を吸着するポリマーの使用によって調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる(Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446(1992))。このようなマトリックスからの免疫複合体または抗体の放出速度は、免疫複合体または抗体の分子量、マトリックス内の免疫複合体、抗体の量、および分散している粒子の大きさによって異なる(Saltzman et al., Biophys. J. 55:163(1989); Sherwood et al., 前掲)。他の固形投与形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition(Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびその改定版に記載されている。
【0126】
また、免疫複合体、抗体融合タンパク質、裸の抗体、およびそのフラグメントは、哺乳類に皮下投与または他の非経口経路でも投与できる。ある好ましい実施態様では、抗EGP−1抗体またはそのフラグメントは、一用量当たり10〜2000mgタンパク質の用量で投与される。さらに、投与は、点滴でも、単回または複数回のボーラス注射によってもよい。一般に、ヒトにおいては、投与される免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、および既往歴といった因子によって異なる。通常、単回の静脈点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によってはより低い、またはより高い用量を投与してもよい。この用量は必要に応じて繰り返してもよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月といったように低い頻度で投与してもよい。用量および日程を適宜調節して、種々の非経口経路により投与してよい。
【0127】
本発明によるRS7抗体は、医薬上有用な組成物を調製する既知の方法に従って調剤することができ、それによりRS7抗体は混合物中で医薬上許容される担体と結合する。組成物は、その投与が受容患者によって許容される場合、「医薬上許容される担体」であると言われる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上許容される担体の一例である。他の好適な担体は当業者に周知である。例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Ed. (1990)を参照されたい。
【0128】
治療目的では、治療上有効な量の免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体が哺乳類に投与される。ヒト以外の動物被験体もまた意図されるが、本発明における好適な被験体は、通常、ヒトである。抗体製剤は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。薬物は、その存在が受容哺乳類の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、生理学上有意である。
【0129】
当業者には、本発明による組成物および方法に対して種々の改変および変更をなしうることが明らかである。よって、本発明は、添付のクレームおよびそれらの均等物の範囲内に入る限り、このような改変および変更を含むものとする。
【0130】
上記に挙げられた総ての刊行物、特許および特許出願の開示は、その各々が個々に引用されることにより本明細書に組み込まれるのと同程度に、引用することによりその全開示内容が明確に本明細書の一部とされる。
【0131】
以下の実施例は本発明の実施態様を例示するものであり、本発明の範囲を何ら限定するために用いてはならない。
【実施例】
【0132】
実施例1:キメラRS7抗体の構築
全細胞質RNAおよびmRNAをRS7産生ハイブリッド細胞から調製した。VKおよびVH配列をコードする遺伝子をRT−PCRおよび5’RACEによりクローニングし、DNAシーケンシングにより配列を決定した。多重依存性クローンを配列決定し、PCR反応によって生じる可能性のあるエラーを除去した。配列解析から二つのVK(#1および#23)と一つのVH(RS7VH)転写物の存在が明らかとなった。この推定される各マウスVKとVHを組み合わせると、ヒト定常領域ドメインを含む二つのキメラAb(cAb)ができ、トランスフェクションによりSp2/0細胞で発現させた。cAb産生クローンは、ELISAにより、トランスフェクト細胞クローンの細胞培養上清をスクリーニングすることにより同定した。陽性クローンを拡張し、細胞培養上清からcAbを精製した。Ag結合アッセイから、VK#23とVHからなるcAb、すなわちcAb−VK#23だけがヒト子宮頚癌細胞ME180(ATCC, Rockville, MD)の粗膜画分でコーティングしたマイクロウェルに結合したことが示された(図1)。VK#1とVHの組み合わせを有するcAb、すなわちcAb−VK#1はAgコートウェルへの結合を示さなかった。よって、この免疫反応性cAb(VK#23を有する)をcRS7と呼んだ。クローニングしたマウスVHおよび最終的なPCR産物としての機能的VK(#23)配列をそれぞれRS7VK(図2A)およびRS7VH(図2B)と呼んだ。
【0133】
RS7 Abの結合活性アッセイ
競合的ELISA結合アッセイを用いて操作したcRS7の結合親和性を評価した。要するに、一定量のビオチニル化マウスRS7を種々の濃度(0.01〜100μg/ml)の試験Ab(RS7またはcRS7)と混合し、Agコートマイクロウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、HPR結合ストレプトアビジンを加え、室温で1時間インキュベートした。Agコートビオチニル化RS7に結合したHPR結合ストレプトアビジンの量を、4mMオルトフェニレンジアミン二塩酸塩および0.04% H2O2を含む基質溶液を添加した後にOD490値を読みとることで明らかにした。この種の競合的Ag結合アッセイによれば、抗原コートウェルに対するビオチニル化マウスRS7の結合に関して同程度よく競合したことが明らかになり、得られたVKおよびVH配列の確実性が確認された(図1)。
【0134】
実施例2:hRS7抗体の構築方法
hRS7 V遺伝子の配列デザイン
KabatデータベースでヒトVKおよびVH配列を検索することにより、RS7 VKおよびVHのFRはそれぞれヒトSA−1A’cl VKおよびRF−TS3 VHと最も高い程度の配列相同性を示すことが分かった。一つの例外がRS7VHのFRであり、NEWM VHのそれと最大の配列相同性を示した。従って、ヒトSA−1A’CLフレームワーク配列をRS7VKのCDRをグラフトするための足場として用い(図3)、RS7VHに対してはRF−TS3とNEWMのフレームワーク配列の組み合わせを用いた(図4)。開始ヒト抗体フレームワークと比べると、これらのCDR領域の外側の各鎖にはいくつかのアミノ酸変化がある。推定CDRをフランキングするマウスFRにおけるいくつかのアミノ酸残基はこれまでに確立されている指針に基づいた改造型hRS7において維持されていた(Qu,Z., Losman, M.J., Eliassen, K.C., Hansen, H.J., Goldenberg, D.M., and Leung,S.O. (1999) Humanization of Immu31, an alpha-fetoprotein-specific antibody. Clin. Cancer Res. 5, 3095s-3100s)。これらの残基はRS7VKのS20、D60、V85およびA100、ならびにRS7VHのK38、K46、A78およびF91である(図3Aおよび3B)。
【0135】
hRS7 V配列の構築
Leung et al. Leung, S.O., Shevitz, J., Pellegrini, M.C., Dion, A.S., Shih, L.B., Goldenberg, D.M., and Hansen, H.J. (1994) Chimerization of LL2, a rapidly internalizing antibody specific for B cell lymphoma. Hybridoma, 13: 469-476)に記載されているような改変法を用いて、図4で示されるような長いオリゴヌクレオチド合成とPCRの組み合わせを用い、hRS7の、デザインされたVLおよびVH遺伝子を構築した。hRS7 VHドメインの構築に関しては、hRS7VHA(176マー)とhRS7VHB(168マー)の二つの長いオリゴヌクレオチドを自動DNAシンセサイザー(Applied Biosystem)にて合成した。
【0136】
hRSVHAはhRS7VHドメインのnt23〜198を表す:
5'-GGTCTGAGTT GAAGAAGCCT GGGGCCTCAG TGAAGGTTTC CTGCAAGGCT TCTGGATACA CCTTCACAAA CTATGGAATG AACTGGGTGA AGCAGGCCCC TGGACAAGGG CTTAAATGGA TGGGCTGGAT AAACACCTAC ACTGGAGAGC CAACATATAC TGATGACTTC AAGGGA-3'。
【0137】
hRS7VHBはnt174〜340に相当するhRS7VHドメインの負鎖を表す:
5'-ACCCTTGGCC CCAGACATCG AAGTACCAGT AGCTACTACC GAACCCCCCT CTTGCACAGA AATACACGGC AGTGTCGTCA GCCTTTAGGC TGCTGATCTG GAGATATGCC GTGCTGACAG AGGTGTCCAA GGAGAAGGCA AACCGTCCCT TGAAGTCATC AGTATATG-3'。
【0138】
hRS7VHAとBの3’末端配列(23nt残基)は互いに相補的である所定のPCR条件下で、hRS7VHAとBの3’末端はアニーニングして、長いオリゴヌクレオチドの残りによってフランキングされた短い二本鎖DNAを形成する。アニーリングした各末端は一本鎖DNAの転写のためのプライマーとして働き、hRS7VHのnt23〜340からなる二本鎖DNAが生じる。このDNAを、hRS7VHBACKおよびhRS7VHFORの二種の短いオリゴヌクレオチドの存在下でさらに増幅し、全長hRS7VHを形成した:
hRS7VHBACK:5'-GTGGTGCTGC AGCAATCTGG GTCTGAGTTG AAGAAGCC-3';
hRS7VHFOR:5'-TGAGGAGACG GTGACCAGGG ACCCTTGGCC CCAGACAT-3'。
【0139】
最少量のhRS7VHAおよびB(実験的に決定)を10μlの10×PCRバッファー(500mM KCl、100mM Tris.HCLバッファー、pH8.3、15mM MgCl2)、2μmolのhRS7VHBACKおよびhRS7VHFOR、ならびに2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus, Norwalk, Ct)の存在下で増幅した。この反応混合物に対して、94℃で1分間の変性、45℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1.5分間の重合からなる3サイクルのPCR反応、その後、94℃で1分間の変性、55℃で1分間のアニーリングおよび72℃で1分間の重合からなる27サイクルのPCR反応を行った。hRS7VHの二本鎖PCR増幅産物をゲル精製し、PstIおよびBstEIIで制限消化し、H鎖足場ベクターVHpBS2の相補的PstI/BstEII部位へクローニングした。
【0140】
ヒト化VK配列の全長DNAの構築に関しては、hRS7VKA(156マー)およびhRS7VKB(155マー)を上記のように合成した。hRS7VKAおよびBは上記のように二種の短いオリゴヌクレオチドhRS7VKBACKおよびhRS7VKFORによって増幅した。
【0141】
HRS7VKAはhRS7VKドメインのnt20〜175を表す:
5'-CTCCATCCTC CCTGTCTGCA TCTGTAGGAG ACAGAGTCAG CATCACCTGC AAGGCCAGTC AGGATGTGAG TATTGCTGTA GCCTGGTATC AGCAGAAACC AGGGAAAGCC CCTAAGCTCC TGATCTACTC GGCATCCTAC CGGTACACTG GAGTCC-3'。
【0142】
hRS7VKBはnt155〜320に相補的なhRS7VKドメインの負鎖を表す:
5'-CCTTGGTCCC AGCACCGAAC GTGAGCGGAG TAATATAATG TTGCTGACAG TAATAAACTG CAAAATCTTC AGGTTGCAGA CTGCTGATGG TGAGAGTGAA ATCTGTCCCA GATCCACTGC CACTGAACCT ATCAGGGACT CCAGTGTACC GGTAG-3'。
hRS7VKBACK:5'-GACATTCAGC TGACCCAGTC TCCATCCTCC CTGTCTG-3';
hRS7VKFOR:5'-ACGTTAGATC TCCACCTTGG TCCCAGCACC G-3'。
【0143】
hRS7VKのゲル精製したPCR産物をPvuIIおよびBglIIIで制限消化し、L鎖足場ベクターVKpBR2の相補的なPvuI/BcII部位へクローニングした。最終の発現ベクターhRS7pdHL2は、上記のように、それぞれhRS7VKおよびVHのXbaI−BamHIおよびXhoI/BamHI断片をpdHL2へ順次サブクローニングすることにより構築した。
【0144】
hRS7抗体のトランスフェクションおよび発現
hRS7の発現ベクター約30μgをSalI消化により線状化し、エレクトロポレーション(450Vおよび25μF)によりSp2/0−Ag14細胞へトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を96ウェルプレートで2日間平板培養した後、最終濃度0.025μMでMTXを培地に加えることで薬剤耐性に関して選択した。2〜3週間でMTX耐性コロニーが出現した。選択に生き残っているコロニーの上清をELISAアッセイによりヒトAb分泌に関して選択した。要するに、100μlの上清を、F(ab’)2フラグメント特異的AbであるGAH−Igでプレコートしたマイクロタイタープレートのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。結合していないタンパク質は洗浄バッファー(0.05%ポリソルベート20を含有するPBS)で3回洗浄することによって除去した。Fcフラグメント特異的AbであるHRP結合GAH−IgGをウェルに加えた。1時間インキュベートした後、プレートを洗浄した。結合しているHRP結合Abは、4mM OPDおよび0.04% H2O2を含む基質溶液を添加した後、A490nmで読みとることにより、明らかにした。陽性細胞クローンを拡張し、Aタンパク質カラムでのアフィニティークロマトグラフィーにより、細胞培養上清からhRS7 IgGを精製した。
【0145】
ヒト化RS7抗体の結合活性
ME180細胞膜抽出物をコーティングしたプレートを用いるELISA競合結合アッセイを用いて、記載のように(Stein et al., Int. J. Cancer 55:938-946(1993))hRS7の免疫反応性を評価した。ME180細胞膜画分を音波処理と遠心分離により調製した。粗膜抽出物を遠心分離により96ウェル平底PVCプレートにコーティングし、0.1%グルタルアルデヒドで固定した。種々の濃度のmRS7、cRS7またはhRS7と混合した一定量のビオチニル化マウスRS7をこの膜コートウェルに加え、室温で1〜2時間インキュベートした。洗浄後、HRP結合ストレプトアビジンを加え、室温で1時間インキュベートした。膜結合ビオチニル化mRS7に結合したHRP結合ストレプトアビジンは、4mMオルトフェニレンジアミン二塩酸塩および0.04%H2O2を含む基質溶液を加えた後、A490nmを読みとることによって明らかにした。図6の競合アッセイによって示されるように、hRS7 IgGはmRS7およびcRS7のものに匹敵する結合活性を示し、RS7の結合親和性はヒト化しても保存されていることが確認された。
【0146】
実施例3:レシデュアライジング(residualizing)ラベルを用いたヒト化RS7の放射性ヨウ素化
レシデュアライジング部分(IMP−R4、IMP−R5またはIMP−R8)を放射性ヨウ素化し、他所に記載の手順(Govindan SV, et al. Bioconjugate Chem. 1999;10:231-240)に沿ってジスルフィドを還元したhRS7と結合させた。図9を参照されたい。125I−IMP−Rx−hRS7(ここで、x=4、5または8)を作製するための、125Iを用いたレシデュアライジング放射性ヨウ素標識では、IMP−R4、IMP−R5およびIMP−R8を用いた場合にそれぞれ87.1%(3.38mCi/mg)、34.3%(0.97mCi/mg)、および76.6%(2.93mCi/mg)といった全体収率および(比活性)が得られた。131I−IMP−R4種を用いた大規模131I標識では、次のような結果が得られた。20.4mCiの131I、35.7nmolのIMP−R4および3.22mgのDTTで還元したhRS7を用いたところ、全体収率60%(3.80mCi/mg)が得られた。30.3mCiの131I、IMP−R4および還元型hRS7を用いた別の試験では、69.7%の収率(3.88mCi/mg)が得られた。13.97mCiの131Iを用いた三つ目の試験では、71.8%の組み込み(4.42mCi/mg)が得られた。13.6mCiの131Iおよび非特異的ヒト化抗体hLL2を用いた131I−IMP−R4標識では収率64.4%(3.67mCi/mg)であった。
【0147】
実施例4:乳癌動物モデルにおける臨床前試験
腫瘍ターゲッティング試験のため、5〜8週齢の雌ヌードマウスにおいて、〜2.3×107個の培養MDA−MB−468細胞を皮下注射することで腫瘍を増殖させ、この動物を一ヶ月後、腫瘍サイズが〜01〜0.2cm3に達した時に用いた。マウスに〜10μCiの125I−[IMP−Rx]−hRS7(ここで、x=4、5または8)および20〜25μCiの131I−MAbの混合物を静注した(CT法)。従って、各試験は125I/131Iによる一対の標識試験であった。示された時点で、種々の器官および血中の生体分布を調べ、注射量%/gで表した。125Iの生体分布を決定するに当たっては、131Iの125I枠への後方散乱に関する補正を行った。
【0148】
治療試験のため、様々な形式で腫瘍増殖パターンを試験して腫瘍増殖を安定化させるのに最適な方法を決定した。ターゲッティング試験に用いる方法は約8週間腫瘍増殖させた後に最適となり、腫瘍増殖プロフィールに基づき30〜50%の動物が使用できた。治療試験のため、腫瘍を持つ動物に試験薬剤の131I−IMPR4−hRS7を静注し、直接放射性ヨウ素化した材料131I−hRS7と比べた。基準体重を毎週の体重および腫瘍体積測定値と比較した。腫瘍が3cm3に達した際に動物を屠殺した。動物試験は総てIACUCに承認されたプロトコールに従って行った。
【0149】
in vivo動物における生体分布
これらの試験はNIHスイスヌードマウスで増殖させた腫瘍において二重標識hRS7調製物(125I−IMP−Rx−hRS7(ここで、x=4、5または8、各薬剤は直接標識131I−hRS7と混合した)を用いて行った。表1A、1Bおよび1Cは詳細な生体分布を示しているが、これらはレシデュアライジングラベルを用いた優れた性能を表している。例えば、125I−IMP−R4−hRS7、125I−IMP−R5−hRS7および125I−IMP−R8−hRS7に関する7日目の腫瘍1g当たりの注射量%はそれぞれ41.6±3.0%、32.2±11.6%および24.7±8.5%であったが、各二重標識試験において同じ時点の直接標識131I−hRS7の場合は5.9±0.9%、6.2±2.1%および6.7±2.3%であった。同じ時点での腫瘍/非腫瘍比は、131I−hRS7の場合の比と比べた場合、125I−IMP−R4−hRS7では1.7〜7.6倍高く、125I−IMP−R5−hRS7では1.7〜6.0倍高く、125I−IMP−R8−hRS7では2.0〜4.8倍高かった(データは示されていない)。
【0150】
表1:MDA-MB-468腫瘍異種移植片を有するNIHスイスヌードマウスにおける125I-IMP-R(R4またはR5またはR8)および131I-hRS7で二重標識したヒト化RS7の生態分布 (CT法)
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
131Iの代わりに125Iを用いた生体分布に基づく線量計測はSiegel, JA and Stabin, MG (Journal of Nuclear Medicine 1994; 35:152-156)の方法を用いて行った。表2はレシデュアライジング放射性ヨウ素標識と従来の放射性ヨウ素標識の各組を比較したものであり、図10はそのデータをグラフ化したものである。総てのレシデュアライジング剤が腫瘍へ送達される用量および腫瘍/非腫瘍比の点で最適にふるまっているものと思われ、放射性化学収率が有利であること、および同じ薬剤に対しても特異的活性が得られることから、治療試験のため131I−IMP−R4−hRS7を選択した。
【0154】
【表4】
【0155】
ヌードマウスにおけるMDA−MB−468ヒト乳癌異種移植片の治療
最大許容量(MTD):線量測定データ(表2、群−1)から、血液に1500cGyの線量をもたらす131I−IMP−R4−hRS7および131I−hRS7のmCi量(MTD見積値)を計算するとそれぞれ0.231mCiおよび0.285mCiであった。MTDの実験的測定はスイスヌードマウスにおいて各薬剤の濃度を増加させて行った。131I−IMP−R4−hRS7では、動物群に200、225、250、275、300および325μCiを投与したところ、250μCiの用量で5個体のうち1個体が第4週までに死に至り、300μCi用量群では4個体のうち3個体が2週間〜4週間の間に死に至った。275および325μCiの用量群で第5週目に動物が生き残っているとは予期されなかったが、発明者らはMTDの投与量は、231μCi(線量測定データから算出したもの)〜250μCiの間である結論づけた。131I−hRS7(’CT’に基づく放射性ヨウ素化)では、動物群に250、280、310、340、370および400μCiを注射したところ、2〜3週間の間に340μCiの用量群では6個体のうち6個体が、370μCiの用量群では6個体のうち3個体が、また、400μCの用量群では4個体のうち4個体が死に至った。これらのことに基づけば、MTDは280〜310μCiの範囲であると見積もられた。
【0156】
治療試験−1
この第一の治療試験では、131I−IMPR−4−hRS7と131I−hRS7(CT法)の効力を比較するために、各薬剤をその最大許容量の〜70%で用いた。単回用量175μCiのレシデュアライジング剤は、通常の放射性ヨウ素剤200μCiよりも有意に効力が高いと思われる。非処置動物も含むこの実験では、各群10または11個体の動物を用い、開始時の腫瘍サイズの分布がほとんど同じになるように全3群を無作為化した。この3群の処置前(−2日)の平均腫瘍体積は0.312±0.181、0.308±0.203および0.303±0.212であった。
【0157】
この実験では、49日目までの中間データが以下の図11に示されている。図11の上のパネルは各群の個々の動物の腫瘍体積(cm3)を示し、下のパネルは二種類の形式で平均腫瘍体積を示す。非処置動物では3個体が死に至った。腫瘍増殖抑制は、49日目までの平均腫瘍体積(MTV)に対する曲線下面積(AUC)のスチューデントのt検定によって判断した場合、通常の標識および非処置動物と比べて、レシデュアライジング標識群で有意に良好である。49日目において、MTVのAUCにおける差に関する有意性(p値)は131I−IMP−R4−hRS7によるものであり、括弧内に示される処置前(−2日)の腫瘍体積の差に対する個々のp値は次の通りである。非処置に対して:0.05(0.78);131I−hRS7(CT)に対して:0.03(0.98);非処置に対しての131I−hRS7(CT):0.14(0.81)。49日目の従来の放射性ヨウ素化群とレシデュアライジング放射性ヨウ素化群の間の平均腫瘍体積には連続的発散があり、後者の群は連続的低下に至る。処置8週間後では、131I−IMP−R4−hRS7で処置したマウス11個体のうち5個体で完全緩解が見られ、そのMTVは開始時の値の20%であった。8週間目の非処置および131I−hRS7処置マウスのMTVはそれぞれ個々の開始時の値の280%および163%であり、131I−hRS7群の11個体のマウスのうち1個体が完全緩解を示した。
【0158】
これらの処置は十分許容されるものであった。IMP−R4群の−2日時の平均体重は21.93±2.03であり、49日目は23.68±1.81であり;「CT」群の平均体重は−2日時と49日目でそれぞれ21.77±2.21および23.90±2.64であった。血球数によって判断した場合の処置群の骨髄毒性を図12に示す。要するに、131I−IMP−R4−hRS7では、薬剤投与1週間後に、WBC、リンパ球数および好中球数は、それぞれ対照レベルの34%、7%および61%という最下点に達した。5週間目までにこれらはそれぞれ対照レベルの74%、58%および92%に回復し、49日目に対照レベルの45%、36%および51%に留まった。また、131I−hRS7(CT)では、薬剤投与1週間後にWBC、リンパ球数および好中球数は、それぞれ対照レベルの41%、13%および67%という最下点に達した。5週間目までにこれらはそれぞれ対照レベルの85%、67%および103%に達し、49日目に対照レベルの42%、32%および49%に留まった。
【0159】
治療試験−2
MDA−MB−468腫瘍モデルにおける131I−IMP−R4−hRS7を用いたRAITの特異性
131I−IMP−R4−hRS7の効力を131I−IMP−R4で標識した非特異的対照ヒト化抗体hLL2(抗CD−22 MAb)の効力と比較した。この試験では、各薬剤175μCiを投与した。これは131I−IMP−R4−hRS7の最大許容量の〜70%に相当する。非処置対照を含むこの試験では、各群7〜8個体の動物を用い、各群は治療試験−1と同様に開始時の腫瘍体積分布に関して無作為化した。図13は3群の相対的平均腫瘍体積(MTV)を示しているが(処置前のMTVを100とする)、これは増殖抑制特異性を示している。
【0160】
実施例5:Y−90ヒト化RS7 mAbおよび裸のヒト化RS7 mAbによる乳癌患者の治療
再発性乳房腺癌の病歴を持つ56歳の女性は子宮系リンパ節および左の肺に転移を持っていた。この患者は化学療法およびホルモン療法後に2回再発していた。そこでこの患者にY−90−結合ヒト化RS7 mAbを抗体タンパク質量100mg中20mCiのY−90の各用量で、2週間おきに2回静注した。処置4週間後、この患者の白血球および血小板の数は約50%まで低下したが、処置9週間目までに回復した。処置12週間後に病期の再判定を行ったところ、コンピューター断層撮影法により肺とリンパ節の転移に約30%の退縮が測定された。その後、この患者に裸のヒト化RS7を各3時間かけてし、毎週1回、4回の点滴を行ったが、これは時々一時的な硬直や悪寒があったこと以外は、血球数や血液化学に副作用もなく、十分許容されるものであった。各点滴の裸の抗体の用量は400mg/m2とした。約8週間後、コンピューター断層撮影法により病期の再判定を行ったところ、さらに約20%の測定可能な病巣の退縮が示された。3ヶ月後の追跡試験では、この患者の疾病は安定したことが明らかであった(すなわち、さらなる増殖、または進行性の増殖の形跡がなかった)。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】競合結合アッセイにおけるmRS7、cAb−VK#23(cRS7)、およびcAb−VK#1の比較を示す。異なる濃度の競合Abを用いて、一定量のビオチニル化mRS7抗体の結合と競合させた。結果はVK#1L鎖はRS7抗原と結合しないことを示す。
【図2】(A)5’RACEによってクローニングされたRS7 VKおよび(B)RT−PCRによりクローニングされたRS7 VHをコードするDNAおよびアミノ酸配列を示す。推定CDR領域は下線で示されている。ヌクレオチド残基には連続番号が付けられている。アミノ酸残基にはKabatのIg分子番号体系が用いられている。(B)では、(上に)文字が付いている残基の番号付けは、前の残基の番号に文字を付したものであり、例えば、N52の後のTの番号は52Aであり、I82の後のN、NおよびLの番号はそれぞれ82A、82Bおよび82Cである。
【図3】(A)ヒトSA−1A’cl、マウスRS7、およびhRS7 VK鎖と、(B)ヒトRF−TS3、マウスRS7、およびhRS7 VH鎖のアミノ酸配列アライメントを示す。(A)では、点はRS7の残基がSA−1A’clの対応する残基と同一であることを示す。ダッシュはアライメントのために挿入されたギャップを表す。囲み線はCDR領域を表す。hRS7のN末端およびC末端残基(下線)は双方とも用いる足場ベクターによって固定されている。従って、RS7の対応する末端残基はヒト配列のものには匹敵しない。Kabatの番号体系法を用いている。(B)では、点はRS7の残基がRF−TS3の対応する残基と同一であることを示す。ダッシュはアライメントのために挿入されたギャップを表す。囲み線はCDR領域を表す。hRS7のN末端およびC末端残基(下線)は双方とも用いる足場ベクターによって固定されている。従って、RS7の対応する末端残基はヒトVH配列のものには匹敵しない。
【図4】(A)ヒト化RS7 VKおよび(B)ヒト化RS7 VHのDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の太字で下線が施されたセクションは、Kabat番号体系法によって定義されるCDRを示す。
【図5】(A)ヒト化RS7 VKのL鎖cDNA配列およびアミノ酸配列と、ヒト化RS7 VHのH鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の下線のセクションは分泌に関するリーダーペプチド配列を示す。「*」は終止コドンを示す。
【図6】競合結合アッセイにおけるmRS7、cRS7、およびhRS7の比較を示す。異なる濃度の競合Abを用い、96ウェルELISAプレートにコーティングしたAgに対する一定量のビオチニル化RS7の結合と競合させた。hRS7は、RS7およびcRS7に匹敵する遮断活性を示した。
【図7】ヒト化RS7 VKのL鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の下線のセクションは分泌に関するリーダーペプチド配列を示す。「*」は終止コドンを示す。リジン残基にも下線が施されている。
【図8】ヒト化RS7 VKのH鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を示す。アミノ酸配列の下線のセクションは分泌に関するリーダーペプチド配列を示す。「*」は終止コドンを示す。リジン残基にも下線が施されている。
【図9】レシデュアライジング部分IMP−R4、IMP−R5およびIMP−R8の構造を示す。
【図10】MDA−MB−468腫瘍モデルにおける放射性ヨウ素化hRS7による線量計測の棒グラフである。
【図11】ヌードマウスにおける乳癌異種移植片の腫瘍成長に対する放射性免疫療法の効果を示す一連のグラフを示す。
【図12】ヌードマウスにおける乳癌異種移植片の放射性免疫療法処置後の毒性を評価する一連のグラフを示す。
【図13】相対的平均腫瘍体積(MTV)を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGP−1糖タンパク質と結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
RS7抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
ヒト化されている、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
完全にヒト型である、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)が、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
マウスRS7 MAbのCDRとヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域の枠組み構造領域(FR)とを含んでなり、ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなるものであり、かつ、ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域のFRをさらに含んでなる、請求項7に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
前記ヒト化抗体のL鎖またはH鎖可変領域のFRが、マウスRS7 MAbの対応する位置に見られるアミノ酸残基により置換されている少なくとも一つのアミノ酸を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
少なくとも一つの置換アミノ酸残基が、図3BのマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基38、46、68および91からなる群から選択される位置にあるものである、請求項9に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
少なくとも一つの置換アミノ酸残基が、図3AのマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基20、85および100からなる群から選択される位置にあるものである、請求項9に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
キメラである、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
図2AのRS7 VKヌクレオチド配列および図2BのRS7 VHヌクレオチド配列を含んでなる、請求項12に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
図4AのhRS7 VKヌクレオチド配列および図4BのhRS7 VHヌクレオチド配列を含んでなる、請求項3に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
癌細胞と結合する請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる抗体成分を含んでなり、該抗体成分が少なくとも一種の診断薬または少なくとも一種の治療薬に結合されている、癌細胞に標的化された診断用または治療用の複合体。
【請求項16】
前記診断薬が少なくとも一種の光活性診断薬を含んでなるものである、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項17】
前記診断薬が、25〜4,000keVの間のエネルギーを有する放射性標識である、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項18】
前記放射性標識が、γ、β、または陽電子放射性同位元素である、請求項17に記載の診断用複合体。
【請求項19】
前記放射性標識が、125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15O、177Luおよび76Brからなる群から選択されるものである、請求項18に記載の診断用複合体。
【請求項20】
前記診断薬が造影剤である、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項21】
前記造影剤が常磁性イオンである、請求項20に記載の診断用複合体。
【請求項22】
前記造影剤が超音波増強剤である、請求項20に記載の診断用複合体。
【請求項23】
前記超音波増強剤が、ヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである、請求項22に記載の診断用複合体。
【請求項24】
前記リポソームがガス充填されている、請求項23に記載の診断用複合体。
【請求項25】
前記常磁性イオンが、マンガン、鉄またはガドリニウムを含んでなる金属である、請求項21に記載の診断用複合体。
【請求項26】
前記抗体成分が抗体融合タンパク質またはそのフラグメントであり、前記MAbまたはそのフラグメントの各々が少なくとも一種の治療薬に結合されている、請求項15に記載の治療用複合体。
【請求項27】
前記治療薬が、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、光活性治療薬、細胞傷害剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項15または26に記載の治療用複合体。
【請求項28】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項29】
前記薬物が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤および抗生物質、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有するものである、請求項28に記載の治療用複合体。
【請求項30】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、およびそれらの類似体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項28に記載の治療用複合体。
【請求項31】
前記毒素が、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択されるものである、請求項28に記載の治療用複合体。
【請求項32】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項33】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、 前記インターフェロンがインターフェロン−α、−βまたは−γであり、前記幹細胞増殖因子が「S1因子」と呼ばれるものである、請求項32に記載の治療用複合体。
【請求項34】
前記放射性核種が60〜4000keVの間のエネルギーを有するものである、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項35】
前記免疫調節剤が、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせを含んでなるものである、請求項32に記載の治療用複合体。
【請求項36】
前記放射性標識が60〜700keVの間のエネルギーを有するものである、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項37】
前記放射性標識が、32P、33P、47Sc、64Cu、67Cu、67Ga、86Y、90Y、111Ag、111In、125I、131I、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177Lu、186Re、188Re、189Re、212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Raおよび225Ac、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項38】
前記光活性治療薬が色素原または色素である、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項39】
EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以上の抗原結合部位、およびハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる、多価多重特異性抗体。
【請求項40】
ヒト化されている、請求項39に記載の抗体。
【請求項41】
ヒト抗体である、請求項39に記載の抗体。
【請求項42】
キメラ化されている、請求項39に記載の抗体。
【請求項43】
診断薬または治療薬をさらに含んでなる、請求項39に記載の抗体。
【請求項44】
少なくとも二つの抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該MAbまたはそのフラグメントが請求項1〜43のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメントから選択されるものである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項45】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、請求項1〜43のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントとを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項46】
前記第二のMAbが癌腫関連抗体である、請求項45に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項47】
前記癌腫関連抗体が、頭頸部癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、前立腺癌、結腸癌および/または膀胱癌からなる群から選択される癌上の抗原と結合するものである、請求項46に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項48】
前記癌腫関連抗体が、CEA、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、PLAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性のある抗体またはフラグメントである、請求項46に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項49】
(a)請求項1〜43のいずれか一項に記載の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント、
(b)少なくとも二つの前記MAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、
(c)請求項1〜43のいずれか一項に記載の前記MAbまたはそのフラグメントを含んでなる少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、請求項1〜43のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメント以外の、少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、ならびに
(d)請求項1〜43のいずれか一項に記載の前記MAbまたはそのフラグメントを含んでなる少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメントと、請求項1〜39のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメント以外の、少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントとを含んでなり、該第二のMAbが、CEA、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、PLAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性のある抗体またはフラグメントである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント
からなる群から選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなる、DNA配列。
【請求項50】
請求項49に記載のDNA配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項51】
請求項49に記載のDNA配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項52】
診断薬もしくは治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも一種の診断薬または少なくとも一種の治療薬に結合された抗EGP−1抗体を含んでなる組成物を用意する工程、および(ii)該組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる、方法。
【請求項53】
前記診断薬または治療薬が、同位元素、薬物、毒素、免疫調節剤、酵素、ホルモン、増殖因子、放射性核種、金属、造影剤および検出剤からなる群から選択されるものである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記診断薬または治療薬が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫調節剤である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記診断薬または治療薬がサイトカインである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記診断薬または治療薬が同位元素である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記同位元素が25〜4,000keVの範囲のエネルギーを有するものである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記同位元素が、123I、124I、125I、131I、86Y、90Y、186Re、188Re、189Re、62Cu、64Cu、67Cu、111In、67Ga、68Ga、94mTc、94Tc、99mTc、18F、11C、13N、15O、52Fe、89Zr、154−158Gd、177Lu、76Br、225Ac、212Bi、213Bi、211At、32P、33P、47Sc、111Ag、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、212Pb、および223Raからなる群から選択されるものである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記薬物が、細胞傷害薬、光力学薬、蛍光色素および免疫調節剤からなる群から選択されるものである、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記診断薬または治療薬が金属である、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
MRIに用いられる常磁性イオンである、請求項60に記載の診断薬。
【請求項62】
前記造影剤が、ガドリニウム、鉄またはマンガンである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記検出剤が、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物からなる群から選択されるものである、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記検出剤が蛍光化合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記蛍光化合物が、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリセリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオロスカミンからなる群から選択されるものである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記検出剤が化学発光化合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記化学発光化合物が、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルからなる群から選択されるものである、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記検出剤が生物発光化合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記生物発光化合物が、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンからなる群から選択されるものである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記造影剤が超音波造影剤である、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記超音波増強剤がヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記リポソームがガス充填されている、請求項64に記載の診断用複合体。
【請求項73】
前記抗EGP−1抗体がRS7抗体である、請求項52〜72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、
(i)請求項39に記載の抗体を被験体に投与する工程、
(ii)ある量の非結合抗体が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および
(iii)前記被験体に、前記抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程
を含んでなる、方法。
【請求項75】
前記ハプテンが前記抗体の一以上の結合部位に結合するものである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記診断薬または前記治療薬が、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、ホルモン、増殖因子、複合体、放射性核種、および金属からなる群から選択されるものである、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
癌を診断または治療する方法であって、
(i)請求項39に記載の抗体を、それを必要とする被験体に投与する工程、
(ii)ある量の非結合抗体が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および
(iii)前記被験体に、前記抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程
を含んでなる、方法。
【請求項78】
前記癌が、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌および乳癌からなる群から選択されるものである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
被験体の悪性腫瘍を治療する方法であって、該被験体に、医薬上好適な賦形剤中に調剤された、請求項1〜44のいずれか一項に記載の前記MAbから選択される少なくとも二つのMAbもしくはそれらのフラグメントを含んでなるか、または請求項1〜44のいずれか一項に記載の少なくとも一つのMAbもしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与することを含んでなる、方法。
【請求項80】
被験体の悪性腫瘍を治療する方法であって、該被験体に、医薬上好適な賦形剤中に調剤された、少なくとも一種の治療薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載のEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる、方法。
【請求項81】
前記治療薬が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記治療薬が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、抗生物質およびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する薬物である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
請求項1〜48のいずれか一項に記載のものではない、第二のMabもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記第二のMabもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、裸のMabまたはそのフラグメントである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第二のMAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、CEA、AFP、HCG、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、テネイシン、癌遺伝子産物、サイトケラチン、およびA33からなる群から選択される抗原との反応性を有するものである、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記第二のMAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、治療薬または診断薬に結合されている、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の第二のMabまたはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
前記抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、非経口投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項89】
前記抗EGP−1抗体もしくそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、一用量当たり10〜2000mgタンパク質の用量で投与される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記用量が反復投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記抗EGP−1抗体またはそのフラグメントが、ヒトより下等な霊長類の抗EGP−1抗体、マウスモノクローナル抗EGP−1抗体、キメラ抗EGP−1抗体、ヒト抗EGP−1抗体、およびヒト化抗EGP−1抗体からなる群から選択されるものである、請求項80に記載の方法。
【請求項92】
前記キメラ、ヒトおよびヒト化抗EGP−1抗体の定常およびヒンジ領域が、ヒトIgG1の定常およびヒンジ領域を含んでなるものである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、第二の抗体またはそのフラグメントが前記被験体に投与される前、投与されると同時、または投与された後に投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項94】
抗EGP−1抗体またはそのフラグメントの第一の結合部位が多価多重特異性融合タンパク質または化学複合体に存在し、第二の結合部位がEGP−1以外の腫瘍マーカー物質との反応性を有するものである、請求項80に記載の方法。
【請求項95】
前記抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、少なくとも一種の治療薬の前、同時、または後に投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項96】
前記第二の抗体またはそのフラグメントが、少なくとも一種の治療薬または診断薬に結合されている、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
前記抗EGP−1抗体がRS7抗体である、請求項80〜96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
被験体の悪性腫瘍を診断する方法であって、該被験体に、医薬上好適な賦形剤中に調剤された、少なくとも一種の診断薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載の抗EGP−1MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる、方法。
【請求項99】
被験体の癌細胞を治療する方法であって、(i)該被験体に、請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載の裸の抗EGP−1MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる治療上有効量の組成物を投与する工程、および(ii)該裸のEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤する工程を含んでなる、方法。
【請求項100】
前記組成物が、請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載のものではない第二の裸の抗体またはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記組成物が、請求項1〜48のいずれか一項に記載の第二の抗体またはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記組成物が、請求項1〜38のいずれか一項に記載のものではない第二の抗体またはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記第二のMAbまたはそのフラグメントが、CEA、AFP、HCG、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、テネイシン、癌遺伝子産物、サイトケラチン、およびA33からなる群から選択される抗原との反応性を有するものである、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記第二の抗体またはそのフラグメントが、CEA、AFP、HCG、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、テネイシン、癌遺伝子産物、サイトケラチン、およびA33からなる群から選択される抗原との反応性を有するものである、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記裸の抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、非経口投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
前記裸の抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、一用量当たり10〜2000mgタンパク質の用量で投与される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記用量が反復投与される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記裸の抗EGP−1抗体またはそのフラグメントが、ヒトより下等な霊長類の抗EGP−1抗体、マウスモノクローナル抗EGP−1抗体、キメラ抗EGP−1抗体、ヒト抗EGP−1抗体、およびヒト化抗EGP−1抗体からなる群から選択されるものである、請求項99に記載の方法。
【請求項109】
前記キメラ、ヒトおよびヒト化型の裸の抗EGP−1抗体の定常およびヒンジ領域が、ヒトIgG1の定常およびヒンジ領域を含んでなるものである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記裸の抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、前記悪性腫瘍により発現される第二の腫瘍マーカーと反応性のある第二の裸の抗体またはそのフラグメントが前記被験体に投与される前、投与されると同時、または投与された後に投与される、請求項102に記載の方法。
【請求項111】
前記裸の抗EGP−1抗体が、治療薬の前、同時、または後に投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項112】
前記裸の抗EGP−1抗体が裸のRS7抗体である、請求項99〜111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
被験体の悪性腫瘍を診断する方法であって、(i)請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載の裸の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる組成物を用いて、該被験体からの検体に対してin vitro診断アッセイを行うことを含んでなる、方法。
【請求項114】
前記悪性腫瘍が癌腫である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記癌が、頭頸部癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、結腸癌、胃癌および膀胱癌からなる群から選択されるものである、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記in vitro診断アッセイが、免疫アッセイ、RT−PCRおよび免疫組織化学法からなる群から選択されるものである、請求項113に記載の方法。
【請求項117】
前記in vitro診断アッセイが、RT−PCRまたは免疫アッセイである、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記検体が体液または組織である、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記診断アッセイが免疫組織化学法である、請求項116に記載の方法。
【請求項120】
前記検体が細胞または組織である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
癌の治療のための、請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載の裸の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントの使用。
【請求項122】
悪性腫瘍の治療のための、少なくとも一種の治療薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載のEGF−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる治療用複合体の使用。
【請求項123】
悪性腫瘍の診断のための、少なくとも一種の治療薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載のEGF−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる診断用複合体の使用。
【請求項124】
細胞上のEGP−1標的抗原を標的化するための、請求項39〜48のいずれか一項に記載の少なくとも一種の抗体を含んでなる、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせの使用。
【請求項1】
EGP−1糖タンパク質と結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
RS7抗体またはそのフラグメントである、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
ヒト化されている、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
完全にヒト型である、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)が、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
マウスRS7 MAbのCDRとヒト抗体のL鎖およびH鎖可変領域の枠組み構造領域(FR)とを含んでなり、ヒト化RS7 MAbのL鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列KASQDVSIAVAを含んでなるCDR1、アミノ酸配列SASYRYTを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列QQHYITPLTを含んでなるCDR3を含んでなるものであり、かつ、ヒト化RS7 MAbのH鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列NYGMNを含んでなるCDR1、アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKGを含んでなるCDR2、およびアミノ酸配列GGFGSSYWYFDVを含んでなるCDR3を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
ヒト抗体のL鎖およびH鎖定常領域のFRをさらに含んでなる、請求項7に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
前記ヒト化抗体のL鎖またはH鎖可変領域のFRが、マウスRS7 MAbの対応する位置に見られるアミノ酸残基により置換されている少なくとも一つのアミノ酸を含んでなるものである、請求項3に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
少なくとも一つの置換アミノ酸残基が、図3BのマウスH鎖可変領域のアミノ酸残基38、46、68および91からなる群から選択される位置にあるものである、請求項9に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
少なくとも一つの置換アミノ酸残基が、図3AのマウスL鎖可変領域のアミノ酸残基20、85および100からなる群から選択される位置にあるものである、請求項9に記載のヒト化抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
キメラである、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
図2AのRS7 VKヌクレオチド配列および図2BのRS7 VHヌクレオチド配列を含んでなる、請求項12に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
図4AのhRS7 VKヌクレオチド配列および図4BのhRS7 VHヌクレオチド配列を含んでなる、請求項3に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
癌細胞と結合する請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる抗体成分を含んでなり、該抗体成分が少なくとも一種の診断薬または少なくとも一種の治療薬に結合されている、癌細胞に標的化された診断用または治療用の複合体。
【請求項16】
前記診断薬が少なくとも一種の光活性診断薬を含んでなるものである、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項17】
前記診断薬が、25〜4,000keVの間のエネルギーを有する放射性標識である、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項18】
前記放射性標識が、γ、β、または陽電子放射性同位元素である、請求項17に記載の診断用複合体。
【請求項19】
前記放射性標識が、125I、131I、123I、124I、86Y、186Re、188Re、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15O、177Luおよび76Brからなる群から選択されるものである、請求項18に記載の診断用複合体。
【請求項20】
前記診断薬が造影剤である、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項21】
前記造影剤が常磁性イオンである、請求項20に記載の診断用複合体。
【請求項22】
前記造影剤が超音波増強剤である、請求項20に記載の診断用複合体。
【請求項23】
前記超音波増強剤が、ヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである、請求項22に記載の診断用複合体。
【請求項24】
前記リポソームがガス充填されている、請求項23に記載の診断用複合体。
【請求項25】
前記常磁性イオンが、マンガン、鉄またはガドリニウムを含んでなる金属である、請求項21に記載の診断用複合体。
【請求項26】
前記抗体成分が抗体融合タンパク質またはそのフラグメントであり、前記MAbまたはそのフラグメントの各々が少なくとも一種の治療薬に結合されている、請求項15に記載の治療用複合体。
【請求項27】
前記治療薬が、放射性標識、免疫調節剤、ホルモン、酵素、光活性治療薬、細胞傷害剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項15または26に記載の治療用複合体。
【請求項28】
前記細胞傷害剤が薬物または毒素である、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項29】
前記薬物が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤および抗生物質、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有するものである、請求項28に記載の治療用複合体。
【請求項30】
前記薬物が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、およびそれらの類似体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項28に記載の治療用複合体。
【請求項31】
前記毒素が、リシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択されるものである、請求項28に記載の治療用複合体。
【請求項32】
前記免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項33】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子(TNF)であり、前記造血因子がインターロイキン(IL)であり、前記コロニー刺激因子が顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)であり、 前記インターフェロンがインターフェロン−α、−βまたは−γであり、前記幹細胞増殖因子が「S1因子」と呼ばれるものである、請求項32に記載の治療用複合体。
【請求項34】
前記放射性核種が60〜4000keVの間のエネルギーを有するものである、請求項15に記載の診断用複合体。
【請求項35】
前記免疫調節剤が、IL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、IL−21、インターフェロン−γ、TNF−αまたはそれらの組み合わせを含んでなるものである、請求項32に記載の治療用複合体。
【請求項36】
前記放射性標識が60〜700keVの間のエネルギーを有するものである、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項37】
前記放射性標識が、32P、33P、47Sc、64Cu、67Cu、67Ga、86Y、90Y、111Ag、111In、125I、131I、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177Lu、186Re、188Re、189Re、212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Raおよび225Ac、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項38】
前記光活性治療薬が色素原または色素である、請求項27に記載の治療用複合体。
【請求項39】
EGP−1標的抗原に対して親和性を有する一以上の抗原結合部位、およびハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる、多価多重特異性抗体。
【請求項40】
ヒト化されている、請求項39に記載の抗体。
【請求項41】
ヒト抗体である、請求項39に記載の抗体。
【請求項42】
キメラ化されている、請求項39に記載の抗体。
【請求項43】
診断薬または治療薬をさらに含んでなる、請求項39に記載の抗体。
【請求項44】
少なくとも二つの抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントを含んでなり、該MAbまたはそのフラグメントが請求項1〜43のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメントから選択されるものである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項45】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、請求項1〜43のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントとを含んでなる、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項46】
前記第二のMAbが癌腫関連抗体である、請求項45に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項47】
前記癌腫関連抗体が、頭頸部癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、胃癌、前立腺癌、結腸癌および/または膀胱癌からなる群から選択される癌上の抗原と結合するものである、請求項46に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項48】
前記癌腫関連抗体が、CEA、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、PLAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性のある抗体またはフラグメントである、請求項46に記載の抗体融合タンパク質またはそのフラグメント。
【請求項49】
(a)請求項1〜43のいずれか一項に記載の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメント、
(b)少なくとも二つの前記MAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、
(c)請求項1〜43のいずれか一項に記載の前記MAbまたはそのフラグメントを含んでなる少なくとも一つの第一の抗EGP−1 MAbまたはそのフラグメントと、請求項1〜43のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメント以外の、少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメント、ならびに
(d)請求項1〜43のいずれか一項に記載の前記MAbまたはそのフラグメントを含んでなる少なくとも一つの第一のMAbまたはそのフラグメントと、請求項1〜39のいずれか一項に記載のMAbまたはそのフラグメント以外の、少なくとも一つの第二のMAbまたはそのフラグメントとを含んでなり、該第二のMAbが、CEA、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、AFP、HCG、HCG−β、フェリチン、PAP、PLAP、EGP−2、ヒストン、サイトケラチン、テネイシン、CanAg、腎臓癌G250、VGFR1、VGFR2、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、癌遺伝子産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗原と反応性のある抗体またはフラグメントである、抗体融合タンパク質またはそのフラグメント
からなる群から選択されるMAbまたはそのフラグメントをコードする核酸を含んでなる、DNA配列。
【請求項50】
請求項49に記載のDNA配列を含んでなる、発現ベクター。
【請求項51】
請求項49に記載のDNA配列を含んでなる、宿主細胞。
【請求項52】
診断薬もしくは治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも一種の診断薬または少なくとも一種の治療薬に結合された抗EGP−1抗体を含んでなる組成物を用意する工程、および(ii)該組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含んでなる、方法。
【請求項53】
前記診断薬または治療薬が、同位元素、薬物、毒素、免疫調節剤、酵素、ホルモン、増殖因子、放射性核種、金属、造影剤および検出剤からなる群から選択されるものである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記診断薬または治療薬が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫調節剤である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記診断薬または治療薬がサイトカインである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記診断薬または治療薬が同位元素である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記同位元素が25〜4,000keVの範囲のエネルギーを有するものである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記同位元素が、123I、124I、125I、131I、86Y、90Y、186Re、188Re、189Re、62Cu、64Cu、67Cu、111In、67Ga、68Ga、94mTc、94Tc、99mTc、18F、11C、13N、15O、52Fe、89Zr、154−158Gd、177Lu、76Br、225Ac、212Bi、213Bi、211At、32P、33P、47Sc、111Ag、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、212Pb、および223Raからなる群から選択されるものである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記薬物が、細胞傷害薬、光力学薬、蛍光色素および免疫調節剤からなる群から選択されるものである、請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記診断薬または治療薬が金属である、請求項53に記載の方法。
【請求項61】
MRIに用いられる常磁性イオンである、請求項60に記載の診断薬。
【請求項62】
前記造影剤が、ガドリニウム、鉄またはマンガンである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記検出剤が、蛍光化合物、化学発光化合物、および生物発光化合物からなる群から選択されるものである、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
前記検出剤が蛍光化合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記蛍光化合物が、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリセリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオロスカミンからなる群から選択されるものである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記検出剤が化学発光化合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記化学発光化合物が、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルからなる群から選択されるものである、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記検出剤が生物発光化合物である、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記生物発光化合物が、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンからなる群から選択されるものである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記造影剤が超音波造影剤である、請求項53に記載の方法。
【請求項71】
前記超音波増強剤がヒト化RS7 IgGまたはそのフラグメントを含んでなるリポソームである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記リポソームがガス充填されている、請求項64に記載の診断用複合体。
【請求項73】
前記抗EGP−1抗体がRS7抗体である、請求項52〜72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、
(i)請求項39に記載の抗体を被験体に投与する工程、
(ii)ある量の非結合抗体が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および
(iii)前記被験体に、前記抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程
を含んでなる、方法。
【請求項75】
前記ハプテンが前記抗体の一以上の結合部位に結合するものである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記診断薬または前記治療薬が、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、ホルモン、増殖因子、複合体、放射性核種、および金属からなる群から選択されるものである、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
癌を診断または治療する方法であって、
(i)請求項39に記載の抗体を、それを必要とする被験体に投与する工程、
(ii)ある量の非結合抗体が被験体の血流から除去されるのに十分な時間待つ工程、および
(iii)前記被験体に、前記抗体の結合部位と結合する、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせを含んでなるハプテンを投与する工程
を含んでなる、方法。
【請求項78】
前記癌が、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、胃癌、膀胱癌および乳癌からなる群から選択されるものである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
被験体の悪性腫瘍を治療する方法であって、該被験体に、医薬上好適な賦形剤中に調剤された、請求項1〜44のいずれか一項に記載の前記MAbから選択される少なくとも二つのMAbもしくはそれらのフラグメントを含んでなるか、または請求項1〜44のいずれか一項に記載の少なくとも一つのMAbもしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の抗体融合タンパク質またはそのフラグメントを投与することを含んでなる、方法。
【請求項80】
被験体の悪性腫瘍を治療する方法であって、該被験体に、医薬上好適な賦形剤中に調剤された、少なくとも一種の治療薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載のEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる、方法。
【請求項81】
前記治療薬が、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、ドキソルビシン、ドキソルビシン類似体およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記治療薬が、抗有糸分裂剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、アルカロイド剤、抗生物質およびそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有する薬物である、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
請求項1〜48のいずれか一項に記載のものではない、第二のMabもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記第二のMabもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、裸のMabまたはそのフラグメントである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第二のMAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、CEA、AFP、HCG、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、テネイシン、癌遺伝子産物、サイトケラチン、およびA33からなる群から選択される抗原との反応性を有するものである、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記第二のMAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、治療薬または診断薬に結合されている、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の第二のMabまたはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
前記抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、非経口投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項89】
前記抗EGP−1抗体もしくそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、一用量当たり10〜2000mgタンパク質の用量で投与される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記用量が反復投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記抗EGP−1抗体またはそのフラグメントが、ヒトより下等な霊長類の抗EGP−1抗体、マウスモノクローナル抗EGP−1抗体、キメラ抗EGP−1抗体、ヒト抗EGP−1抗体、およびヒト化抗EGP−1抗体からなる群から選択されるものである、請求項80に記載の方法。
【請求項92】
前記キメラ、ヒトおよびヒト化抗EGP−1抗体の定常およびヒンジ領域が、ヒトIgG1の定常およびヒンジ領域を含んでなるものである、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、第二の抗体またはそのフラグメントが前記被験体に投与される前、投与されると同時、または投与された後に投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項94】
抗EGP−1抗体またはそのフラグメントの第一の結合部位が多価多重特異性融合タンパク質または化学複合体に存在し、第二の結合部位がEGP−1以外の腫瘍マーカー物質との反応性を有するものである、請求項80に記載の方法。
【請求項95】
前記抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、少なくとも一種の治療薬の前、同時、または後に投与される、請求項80に記載の方法。
【請求項96】
前記第二の抗体またはそのフラグメントが、少なくとも一種の治療薬または診断薬に結合されている、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
前記抗EGP−1抗体がRS7抗体である、請求項80〜96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
被験体の悪性腫瘍を診断する方法であって、該被験体に、医薬上好適な賦形剤中に調剤された、少なくとも一種の診断薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載の抗EGP−1MAbもしくはそのフラグメント、または抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる、方法。
【請求項99】
被験体の癌細胞を治療する方法であって、(i)該被験体に、請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載の裸の抗EGP−1MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる治療上有効量の組成物を投与する工程、および(ii)該裸のEGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤する工程を含んでなる、方法。
【請求項100】
前記組成物が、請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載のものではない第二の裸の抗体またはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記組成物が、請求項1〜48のいずれか一項に記載の第二の抗体またはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記組成物が、請求項1〜38のいずれか一項に記載のものではない第二の抗体またはそのフラグメントをさらに含んでなる、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記第二のMAbまたはそのフラグメントが、CEA、AFP、HCG、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、テネイシン、癌遺伝子産物、サイトケラチン、およびA33からなる群から選択される抗原との反応性を有するものである、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記第二の抗体またはそのフラグメントが、CEA、AFP、HCG、CSAp、Tn、Le(y)、MUC−1−4、Tag−72、EGFR、HER2/neu、PSMA、PSA、VEGF、PlGF、インスリン様成長因子、テネイシン、癌遺伝子産物、サイトケラチン、およびA33からなる群から選択される抗原との反応性を有するものである、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記裸の抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、非経口投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
前記裸の抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、一用量当たり10〜2000mgタンパク質の用量で投与される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記用量が反復投与される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記裸の抗EGP−1抗体またはそのフラグメントが、ヒトより下等な霊長類の抗EGP−1抗体、マウスモノクローナル抗EGP−1抗体、キメラ抗EGP−1抗体、ヒト抗EGP−1抗体、およびヒト化抗EGP−1抗体からなる群から選択されるものである、請求項99に記載の方法。
【請求項109】
前記キメラ、ヒトおよびヒト化型の裸の抗EGP−1抗体の定常およびヒンジ領域が、ヒトIgG1の定常およびヒンジ領域を含んでなるものである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記裸の抗EGP−1抗体もしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが、前記悪性腫瘍により発現される第二の腫瘍マーカーと反応性のある第二の裸の抗体またはそのフラグメントが前記被験体に投与される前、投与されると同時、または投与された後に投与される、請求項102に記載の方法。
【請求項111】
前記裸の抗EGP−1抗体が、治療薬の前、同時、または後に投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項112】
前記裸の抗EGP−1抗体が裸のRS7抗体である、請求項99〜111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
被験体の悪性腫瘍を診断する方法であって、(i)請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載の裸の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる組成物を用いて、該被験体からの検体に対してin vitro診断アッセイを行うことを含んでなる、方法。
【請求項114】
前記悪性腫瘍が癌腫である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記癌が、頭頸部癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、結腸癌、胃癌および膀胱癌からなる群から選択されるものである、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記in vitro診断アッセイが、免疫アッセイ、RT−PCRおよび免疫組織化学法からなる群から選択されるものである、請求項113に記載の方法。
【請求項117】
前記in vitro診断アッセイが、RT−PCRまたは免疫アッセイである、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記検体が体液または組織である、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記診断アッセイが免疫組織化学法である、請求項116に記載の方法。
【請求項120】
前記検体が細胞または組織である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
癌の治療のための、請求項1〜14および44〜48のいずれか一項に記載の裸の抗EGP−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは裸の抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントの使用。
【請求項122】
悪性腫瘍の治療のための、少なくとも一種の治療薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載のEGF−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる治療用複合体の使用。
【請求項123】
悪性腫瘍の診断のための、少なくとも一種の治療薬に結合されている請求項1〜48のいずれか一項に記載のEGF−1 MAbもしくはそのフラグメントまたは抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントを含んでなる診断用複合体の使用。
【請求項124】
細胞上のEGP−1標的抗原を標的化するための、請求項39〜48のいずれか一項に記載の少なくとも一種の抗体を含んでなる、診断薬、治療薬またはそれらの組み合わせの使用。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−502698(P2006−502698A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−573031(P2003−573031)
【出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000885
【国際公開番号】WO2003/074566
【国際公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月3日(2003.3.3)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000885
【国際公開番号】WO2003/074566
【国際公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】
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