説明

RXRホモダイマー形成ならびに架橋二環式芳香族化合物および調節遺伝子発現におけるそれらの使用

【課題】本発明は、物質およびレチノイドXレセプターを含む溶液を合わせる工程、およびホモダイマー形成の存在を測定する工程を包含する、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成に影響を及ぼす能力について物質をスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】レチノイドXレセプターホモダイマーの形成に影響を及ぼす能力について物質をスクリーニングする方法であって、該物質とレチノイドXレセプターを含む溶液とを合わせる工程、およびホモダイマー形成の存在を測定する工程であって、ここで該ホモダイマー形成の存在が該レチノイドXレセプターホモダイマーによる転写の活性化を検出することにより測定される、工程を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にレチノイドレセプターによる遺伝子発現の調節に関し、そしてより特定すれば、レチノイドXレセプター、ならびに、レチノイン酸レセプター、レチノイドXレセプター、ビタミンDレセプターおよび甲状腺レセプターによる遺伝子発現の調節において有用である、新規の架橋二環式芳香族化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンA代謝生成物全−トランス−レチノイン酸(RA)およびその天然および合成誘導体(レチノイド)は、広範囲の生物学的効果を奏する1,2。臨床的に、レチノイドは皮膚病および癌の治療において重要な治療薬である3−6。多数のレチノイドの作用が分子レベルでどのように仲介され得るかの理解は、特定の核レセプター、レチノイン酸レセプター(RAR)7−12およびレチノイドXレセプター(RXR)13−17のクローニングおよび特徴付けによって顕著に高められた。RARおよびRXRはステロイド/甲状腺ホルモンレセプタースーパーファミリーの一部である18,19。両方のタイプのレセプターは、3つの異なった遺伝子(α、β、およびγ)によってコード化され、それから、RARの場合多重イソ型が生成され得る20−22。興味深いことに、RARは脊椎動物では特異的であるが、その一方RXRはショウジョウバエからヒトまでよく保存されている17,23。近年レチノイドレセプター作用の分子機構の理解がかなり進んでいるにもかかわらず、天然に存在しているレチノイドについて異なる分子経路が存在するかどうかという中心的な問題については、いまだ答えが出ていない。RAの立体異性体9−シス−RAがRXRに高親和性で結合するという最近の観察23,24は、全−トランス−RAの経路とは異なるレチノイド応答経路を示唆した。しかしながら、RARが効果的にDNA結合および機能するために補助レセプターとの相互作用を必要とし、しかもRXRがそのような補助レセプターであるということが、いくつかの研究室によってほぼ同時に発見された15,16,26−29。従って、RARは、ヘテロダイマー性RAR/RXR複合体として、またはさらに同定される必要のある相当する補助タンパク質との組合せでのみ効果的に機能するようである。同様に、RXRは、効果的なDNA結合のために、RAR、甲状腺ホルモンレセプター(TR)、またはビタミンDレセプター(VDR)を必要とすることが示された15,16,26−29。従って、これらのDNA結合研究から、RXRは、専ら補助レセプターとしてでなくても優先的に機能し得ることが明らかとなり、それによって、転写調節の高度な多様性および特異性を発生させ、ならびにリガンド活性化レセプターの少なくとも3つの異なるクラスに対するDNA親和性および特異性を増加することにより異なるホルモンの非常に多面的な効果を仲介することにおいて重要な役割を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの知見とは反対に、本発明は、RXRがホモダイマーを形成することを提供する。本発明は、これらホモダイマーが補助レセプターの非存在下で特異的な応答エレメントに効果的に結合し、そしてそれらのDNA結合特異性がヘテロダイマーを含有するRXRのDNA結合特異性と異なることを提供する。本発明は、レチノイドの作用について新規の機構を説明し、それによって、リガンド誘導ホモダイマーが異なったレチノイド経路を仲介する。さらに、RXRホモダイマー形成を選択的に活性化するリガンドが提供される。
【0004】
本発明はまた、本明細書で詳細に記載されるように、架橋二環式芳香族化合物の形態の
新規なクラスのレチノイドを提供する。これら新規化合物は、レチノイン酸ファミリー中のレセプター(例えば、RAR、RXR、ビタミンDレセプター(VDR)、甲状腺ホルモンレセプター(THR))による選択的遺伝子発現の調節および/または誘発のために効果的である。理論によって束縛されることは意図しないが、本明細書で開示され、そして請求項に記載の化合物は、前述のレセプターに結合するレセプタータンパク質と相互作用するそれらの能力のために調節遺伝子発現に有効である。前記化合物はまた、RAR−RXR、VDR−RXR、およびTHR−RXRヘテロダイマーに加えて、RXRホモダイマーの形成を誘導することにより、調節遺伝子発現において有用である。
【0005】
新規化合物は、従って、甲状腺ホルモン、ビタミンD、および9−シス−レチノイン酸のようなレチノイド(RXRに対する天然リガンド)により調節される細胞プロセスを制御するために有用である。それ故、座瘡、白血病、乾癬、および皮膚老化(すべてはレチノイン酸により調節される)は、骨石灰化作用(ビタミンDによって調節され得る)およびエネルギーレベル(甲状腺ホルモンによって調節され得る)と同様に、本発明の化合物を用いて治療され得る。先行技術の合成レチノイドとは異なって、本発明化合物は、実質的に減少した副作用および奇形遺伝性を提供すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成に影響を及ぼす能力について物質をスクリーニングする方法であって、上記物質およびレチノイドXレセプターを含む溶液を合わせる工程、およびホモダイマー形成の存在を測定する工程を包含する、方法を提供する。
【0007】
2.好ましい実施形態において、上記ホモダイマー形成の存在が、上記レチノイドXレセプターホモダイマーによる転写の活性化を検出することにより測定される、上記項1に記載の方法を提供する。
【0008】
3.好ましい実施形態において、上記ホモダイマー形成の存在が、共沈澱により測定される、上記項1に記載の方法を提供する。
【0009】
4.好ましい実施形態において、上記影響がホモダイマー形成の誘導である、上記項1に記載の方法を提供する。
【0010】
5.好ましい実施形態において、上記影響がホモダイマー形成の阻害である、上記項1に記載の方法を提供する。
【0011】
6.好ましい実施形態において、上記レチノイドXレセプターがレチノイドXレセプターαである、上記項1に記載の方法を提供する。
【0012】
7.好ましい実施形態において、上記物質がレチノイドXレセプターヘテロダイマーを誘導するかどうかを測定する工程、およびレチノイドXレセプターホモダイマーの形成を選択的に誘導する上記物質を選択する工程をさらに包含する、上記項4に記載の方法を提供する。
【0013】
8.一つの局面において、本願発明は、以下の工程を包含する、レチノイドXレセプターホモダイマーよりもレチノイドXレセプターヘテロダイマーの形成を選択的に誘導する能力について物質をスクリーニングする方法を提供する:
a)上記物質がレチノイドXレセプターホモダイマー形成を誘導するかどうかを測定する工程;
b)上記物質がレチノイドXレセプターヘテロダイマー形成を誘導するかどうかを測定
する工程;および
c)レチノイドXレセプターホモダイマーよりもレチノイドXレセプターヘテロダイマーの形成を選択的に誘導する化合物を選択する工程。
【0014】
9.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターホモダイマーのDNAを結合する能力への影響について物質をスクリーニングする方法であって、上記物質を上記ホモダイマーと合わせる工程、およびDNAを結合するホモダイマーの能力への化合物の影響を測定する工程を包含する、方法を提供する。
【0015】
10.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターホモダイマーと結合するための応答エレメントをスクリーニングする方法であって、上記応答エレメントを上記レチノイドXレセプターホモダイマーと合わせる工程、および結合の存在を検出する工程を包含する、方法を提供する。
【0016】
11.好ましい実施形態において、上記結合の存在が、上記応答エレメントに作動可能に連結されるマーカーの転写活性化により検出される、上記項10に記載の方法を提供する。
【0017】
12.一つの局面において、本願発明は、精製レチノイドXレセプターホモダイマーを提供する。
【0018】
13.一つの局面において、本願発明は、以下の構造式を有する二環式芳香族化合物:
【0019】
【化1】

ここで、
は、低級アルキルおよびアダマンチルからなる群より選択され;
は、−O−Rまたは−S−Rであり、ここでRは低級アルキルであり;または、RがRに対してオルトであるとき、RおよびRが互いに連結して5または6員のシクロアルキレン環を形成し得、非置換であるかまたは1〜4個の低級アルキル基で置換され、そして任意にO、S、およびNRからなる群より選択される1または2個のヘテロ環式原子を含み、ここでRは水素または低級アルキルであり;
は、カルボニル、
【0020】
【化2】

からなる群より選択され、ここでXおよびXは、独立して、O、S、およびメチレンからなる群より選択され、ここでXおよびXの少なくとも1つはOまたはSであり、またはXおよびXの1つがNRでありそして他方がメチレンであり、mは2または3であり、R、R、R、およびRは、独立して、水素または低級アルキルであり、ただし、nが0、RおよびRであるときは両方とも水素ではなくそしてRおよびRは両方とも水素ではなく、またはRおよびRは互いに連結して3〜6個の炭素原子を含むシクロアルキレン環を形成し得、そしては分子の残りの部分へのR置換基の付加位置を示し;そして
は、
【0021】
【化3】

からなる群より選択され、ここでR10は水素またはメチルであり、lは0または1であり、そして**は分子の残りの部分へのR置換基の付加位置を示し、
は、独立して、低級アルキルおよび低級アルコキシからなる群より選択され;そして
nは0、1、2、または3であり、
ただし、nが0であるとき、Rはカルボニル、C=CH、またはCH以外であり、
および上記化合物の薬学的に受容可能なエステル、アミド、および塩を提供する。
【0022】
14.
【0023】
【化4】

からなる群より選択される構造を有する、上記項13に記載の化合物であって、ここでR11がO、S、(CHC、およびCHからなる群より選択され、そしてR12が水素またはメチルである、化合物を提供する。
【0024】
15.好ましい実施形態において、上記構造式(II)を有する、上記項14に記載の化合物を提供する。
【0025】
16.好ましい実施形態において、nが0である、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0026】
17.好ましい実施形態において、R
【0027】
【化5】

であり、そしてlが1である、上記項16に記載の化合物を提供する。
【0028】
18.好ましい実施形態において、R
【0029】
【化6】

である、上記項17に記載の化合物を提供する。
【0030】
19.好ましい実施形態において、R
【0031】
【化7】

である、上記項17に記載の化合物を提供する。
【0032】
20.好ましい実施形態において、Rが構造式
【0033】
【化8】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0034】
21.好ましい実施形態において、Rが構造式
【0035】
【化9】

を有する、上記項17に記載の化合物を提供する。
【0036】
22.好ましい実施形態において、Rが構造式
【0037】
【化10】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0038】
23.好ましい実施形態において、Rが構造式
【0039】
【化11】

を有する、上記項17に記載の化合物を提供する。
【0040】
24.好ましい実施形態において、R
【0041】
【化12】

からなる群より選択される、上記項23に記載の化合物を提供する。
【0042】
25.好ましい実施形態において、Rが構造式
【0043】
【化13】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0044】
26.好ましい実施形態において、Rが構造式
【0045】
【化14】

を有する、上記項17に記載の化合物を提供する。
【0046】
27.好ましい実施形態において、R
【0047】
【化15】

からなる群より選択される、上記項26に記載の化合物を提供する。
【0048】
28.好ましい実施形態において、構造式
【0049】
【化16】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0050】
29.好ましい実施形態において、構造式
【0051】
【化17】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0052】
30.好ましい実施形態において、構造式
【0053】
【化18】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0054】
31.好ましい実施形態において、構造式
【0055】
【化19】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0056】
32.好ましい実施形態において、構造式
【0057】
【化20】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0058】
33.好ましい実施形態において、構造式
【0059】
【化21】

を有する、上記項15に記載の化合物であって、ここで、XおよびXが、独立して、OおよびSからなる群より選択される化合物、および上記化合物のアンモニウム塩を提供する。
【0060】
34.好ましい実施形態において、構造式
【0061】
【化22】

を有する、上記項15に記載の化合物であって、ここで、XおよびXが、独立して、OおよびSからなる群より選択される化合物、および上記化合物のアンモニウム塩を提供する。
【0062】
35.好ましい実施形態において、構造式
【0063】
【化23】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0064】
36.好ましい実施形態において、構造式
【0065】
【化24】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0066】
37.好ましい実施形態において、構造式
【0067】
【化25】

を有し、RがOまたはSである、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0068】
38.好ましい実施形態において、構造式
【0069】
【化26】

を有する、上記項15に記載の化合物、および上記化合物のアンモニウム塩を提供する。
【0070】
39.好ましい実施形態において、構造式
【0071】
【化27】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0072】
40.好ましい実施形態において、構造式
【0073】
【化28】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0074】
41.好ましい実施形態において、構造式
【0075】
【化29】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0076】
42.好ましい実施形態において、構造式
【0077】
【化30】

を有する、上記項15に記載の化合物を提供する。
【0078】
43.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターヘテロダイマーの活性を阻害する方法であって、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成を誘導する工程を包含し、それにより上記レチノイドXレセプターのヘテロダイマー形成を抑制し、そして生じるヘテロダイマー活性を抑制する、方法を提供する。
【0079】
44.好ましい実施形態において、上記活性が転写の活性化または抑制化である、上記項43に記載の方法を提供する。
【0080】
45.好ましい実施形態において、上記レチノイドXレセプターヘテロダイマーが甲状腺ホルモンレセプターおよびレチノイドXレセプターである、上記項43に記載の方法を提供する。
【0081】
46.一つの局面において、本願発明は、細胞中でレチノイドXレセプターホモダイマーにより活性化される遺伝子の転写を促進する方法であって、上記細胞を、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成を促進し得る量の合成化合物と接触させる工程を包含する、方法を提供する。
【0082】
47.好ましい実施形態において、上記化合物が構造式
【0083】
【化31】

を有する、上記項46に記載の方法を提供する。
【0084】
48.好ましい実施形態において、上記化合物が構造式
【0085】
【化32】

を有する、上記項46に記載の方法を提供する。
【0086】
49.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成を抑制する工程を包含する、上記レチノイドXレセプターホモダイマーの活性を阻害する方法を提供する。
【0087】
50.好ましい実施形態において、上記活性が転写の活性化または抑制化である、上記項49に記載の方法を提供する。
【0088】
51.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターホモダイマーのその応答エレメントへの結合を抑制する工程を包含する、上記レチノイドXレセプターホモダイマーの活性を阻害する方法を提供する。
【0089】
52.好ましい実施形態において、上記活性が転写の活性化または抑制化である、上記項51に記載の方法を提供する。
【0090】
53.一つの局面において、本願発明は、レチノイドXレセプターホモダイマー形成に関連する病状の増加の確率を測定する方法であって、被験体において、正常被験体と比較したときのレチノイドXレセプターホモダイマー形成の減少を検出する工程を包含する、方法を提供する。
【0091】
54.一つの局面において、本願発明は、被験体においてレチノイドXレセプターホモダイマーに関連する病状を治療する方法であって、上記被験体においてレチノイドXレセプターホモダイマー形成を誘導する工程を包含し、それによりレチノイドXレセプターホモダイマーにより活性化され得る遺伝子の発現を増加する、方法を提供する。
【0092】
55.好ましい実施形態において、レチノイドXレセプターホモダイマー形成が構造式
【0093】
【化33】

を有する化合物の添加により誘導される、上記項54に記載の方法を提供する。
【0094】
56.好ましい実施形態において、レチノイドXレセプターホモダイマー形成が構造式
【0095】
【化34】

を有する化合物の添加により誘導される、上記項54に記載の方法を提供する。
【0096】
57.好ましい実施形態において、上記病状が皮膚に関連する、上記項54に記載の方法を提供する。
【0097】
58.好ましい実施形態において、上記皮膚の病状が座瘡および乾癬からなる群より選択される、上記項54に記載の方法を提供する。
【0098】
59.好ましい実施形態において、上記病状が癌である、上記項54に記載の方法を提供する。
【0099】
60.好ましい実施形態において、上記遺伝子がアポリポタンパク質AI遺伝子である、上記項54に記載の方法を提供する。
【0100】
61.一つの局面において、本願発明は、細胞中でレチノイドXレセプターホモダイマー形成を選択的に活性化する方法であって、ホモダイマー形成特異的リガンドを上記細胞に添加する工程を包含し、それにより上記細胞中の上記レチノイドXレセプターホモダイマー形成を選択的に活性化する、方法を提供する。
【0101】
62.好ましい実施形態において、上記化合物が構造式
【0102】
【化35】

を有する、上記項61に記載の方法を提供する。
【0103】
63.好ましい実施形態において、上記化合物が構造式
【0104】
【化36】

を有する、上記項61に記載の方法を提供する。
【0105】
64.一つの局面において、本願発明は、細胞中での9−シス−RAの発現を包含する、上記細胞におけるレチノイドXレセプターホモダイマー形成を促進する方法を提供する。
【0106】
65.一つの局面において、本願発明は、上記項13に記載の化合物の有効に調節する量を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、レチノイン酸、ビタミンD、または甲状腺ホルモンにより調節される細胞プロセスの制御ための薬学的組成物を提供する。
【0107】
66.一つの局面において、本願発明は、上記項15に記載の化合物の有効に調節する量を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、レチノイン酸、ビタミンD、または甲状腺ホルモンにより調節される細胞プロセスの制御ための薬学的組成物を提供する。
【0108】
67.一つの局面において、本願発明は、レチノイン酸レセプター、レチノイドXレセプター、ビタミンDレセプター、および甲状腺レセプターからなる群より選択されるレセプターにより、被験体における遺伝子発現を調節する方法であって、上記項13に記載の化合物の有効に調節する量またはその薬学的組成物を上記被験体に投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0109】
68.一つの局面において、本願発明は、レチノイン酸レセプター、レチノイドXレセプター、ビタミンDレセプター、および甲状腺レセプターからなる群より選択されるレセプターにより、被験体における遺伝子発現を調節する方法であって、上記項15に記載の化合物の有効に調節する量またはその薬学的組成物を上記被験体に投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0110】
69.一つの局面において、本願発明は、レチノイド、甲状腺ホルモン、またはビタミンDにより調節される細胞分化プロセスの機能不全により生じる病気に罹患した被験体を治療する方法であって、治療的に有効な量の上記項13に記載の化合物またはその薬学的組成物を上記被験体に投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0111】
70.一つの局面において、本願発明は、レチノイド、甲状腺ホルモン、またはビタミンDにより調節される細胞分化プロセスの機能不全により生じる病気に罹患した被験体を治療する方法であって、治療的に有効な量の上記項15に記載の化合物またはその薬学的組成物を上記被験体に投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0112】
(発明の要旨)
本発明は、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成に影響する能力について物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、この物質とレチノイドXレセプターを含有する溶液とを合わせる工程、およびホモダイマー形成の存在を測定する工程を包含する。また、DNAに結合するレチノイドXレセプターホモダイマーの能力に関する影響について物質をスクリーニングする方法が提供され、この方法は上記物質をホモダイマーと合わせる工程、およびDNAに結合するホモダイマーの能力に関して上記化合物の影響を測定する工程を包含する。また、レチノイドXレセプターホモダイマーの形成を増加させる工程を包含し、それによってレチノイドXレセプターがヘテロダイマーを形成することを抑制し、そして得られるヘテロダイマーの活性を抑制するレチノイドXレセプターヘテロダイマー活性を阻害する方法が提供される。さらに、レチノイドXレセプターホモダイマーの活性を阻害する方法も提供される。レチノイドXレセプターホモダイマー形成と関連する病状が増加する確率を測定、およびそのような病状を治療する方法がさらに提供される。さらに、レチノイドXレセプターホモダイマーとの結合について応答エレメントをスクリーニングする方法が提供される。最後に、本発明は、レチノイドXレセプターホモダイマー形成を活性化する方法を提供する。
【0113】
さらに、レセプターのレチノイン酸ファミリー中のレセプターにより、遺伝子発現を調節するために有用な新規の化合物を提供することにより、上記で述べた当該技術分野での要求を満たすことが、本発明の第1の目的である。本発明の別の目的は、甲状腺ホルモン、ビタミンD、および/または9−シス−レチノイン酸のようなレチノイドにより調節される細胞分化プロセスを制御するために有用な新規化合物を提供することである。本発明のさらに別な目的は、架橋された二環式構造形態の新規化合物を提供することである。本発明のさらに別の目的は、1つまたはそれ以上の新規化合物を含有する薬学的組成物を提供することである。本発明のさらに別の目的は、レチノイン酸レセプター、レチノイドXレセプター、ビタミンDレセプター、および甲状腺レセプターから成る群から選択されるレセプターの遺伝子発現を調節するための方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、甲状腺ホルモン、ビタミンD、および/または9−シス−レチノイン酸のようなレチノイドにより調節される細胞分化プロセスを制御するための方法を提供することである。
【0114】
本発明のさらなる目的、利点および新規の特徴は、以下の記載で部分的に提示され、そして一部は以下を読めば当業者に明らかとなり得、または本発明の実施により学ばれ得る。 次に、1つの局面で、本発明は構造式(I)を有する新規の化合物に関する:
【0115】
【化37】

ここで、
は低級アルキルおよびアダマンチルから成る群から選択され;
は−O−Rまたは−S−Rであり、ここでRは低級アルキルであり;または
ここでRはRに対してオルトであり、RおよびRは共に連結して、5員環または6員環シクロアルキレン環を形成し、このシクロアルキレン環は、炭素数1〜4個の低
級アルキル基で置換されないまたは置換され、そして必要に応じてO、SおよびNRからなる群から選択される1個または2個のヘテロ環原子を含み、ここでRは水素または低級アルキル、好ましくは芳香族環に隣接し;
はカルボニル、
【0116】
【化38】

からなる群より選択され、
ここで、XおよびXはO、Sおよびメチレンからなる群から独立して選択され、ここでXおよびXの少なくとも1つはOまたはSであり、またはここでXおよびXの1つはNRであり、および他はメチレンであり、mは2または3であり、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または低級アルキルであり、ただし、nが0のとき、RおよびRは両方とも水素でなくかつRおよびRは両方とも水素でなく、またはRおよびRは共に連結して、3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン環を形成し得、そして*は分子の残り部分へのR置換基の結合位置を示す;そして
は以下からなる群から選択され、
【0117】
【化39−1】

【0118】
【化39−2】

ここで、R10は水素またはメチルであり、lは0または1であり、**は分子の残りへのR置換基の結合位置表し、
は低級アルキルおよび低級アルコキシからなる群から独立して選択され;そして
nは0、1、2または3であり、
ただし、nが0のとき、Rはカルボニル、C=CHまたはCH以外である。
【0119】
本発明はまた、以下に詳細に説明されるように、薬学的に受容可能なエステル、アミドおよびそのような化合物の塩を包含する。
【0120】
他の局面では、本発明は、前述の化合物を含有する薬学的組成物、ならびにレセプターのレチノイン酸ファミリーに属するレセプターによる選択的遺伝子発現を調節するための上記化合物を使用する方法に関する。
【0121】
発明の詳細な説明
定義および名称:
本発明の化合物、組成物、および方法を開示・記載するにあたり、本発明は、特定の合成方法、特定の薬学上のキャリア、あるいは特定の薬学的製剤または投与のレジメ(regimen)に限定されずに当然変化し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を記載するためだけに使用され、制限することを意図しないこともまた理解すべきである。
【0122】
本明細書中および添付の請求項中で使用されるとき、単数形「a」「an」および「the」は、文脈が他を明らかに指示しない場合、複数形の指示対象を包含する。従って、例えば「二環式芳香族化合物」に関しては、二環式芳香族化合物の混合物を包含し、「薬学的キャリア」に関しては、2種またはそれ以上のそのようなキャリアの混合物などを包含する。
【0123】
本明細書および添付の請求項において、多くの用語になされ得る参照は以下の意味を有すると規定される:
本明細書で使用する用語「アルキル」は、分枝または分枝していない1〜24個の炭素原子の飽和炭化水素基をいう。即ち、それらは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。本明細書における好ましいアルキル基は1〜12個の炭素原子を含む。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基を意図し、好ましくは、1〜4個の炭素原子を意図する。用語「シクロアルキル」は、3〜8個、好ましくは5または6個の炭素原子の環状アルキル基を意図する。
【0124】
本明細書中で使用した用語「アルコキシ」は、一重の末端エーテル結合を介して結合したアルキル基を意図する;即ち、「アルコキシ」基は、Rが上記で定義されたようなアルキルである−ORと定義され得る。「低級アルキル」基は、1〜6個、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基を意図する。
【0125】
本明細書中で使用した用語「アルキレン」は、1〜24個の炭素原子を含む、二官能性の飽和分枝または分枝していない炭化水素鎖をいい、そして例えばメチレン(−CH−)、エチレン(−CH−CH−)、ポリエチレン(−CH−CH−CH−)、2メチルプロピレン[−−CH−CH(CH)−CH−]、へキシレン[−(CH−]などを包含する。「低級アルキレン」は、1〜6個、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子のアルケン基をいう。本明細書中で使用した用語「シクロアルキレン」は、環状アルキレン基、代表的には5−または6−員環をいう。
【0126】
本明細書中で使用した用語「アルケン」は、2〜24個の炭素原子のモノ不飽和またはジ不飽和炭化水素基を意図する。このクラスにはいる好ましい基は、2〜12個の炭素原子を含有する。(AB)C=C(CD)のような不斉構造は、EおよびZ異性体の両方を含むことを意図する。このことは、本明細書の構造式において仮定され得、ここで不斉アルケンが存在し、または結合シンボル
【0127】
【化39−3】

で明瞭に示され得る。
【0128】
「任意の」または「必要に応じて」は引き続いて記載される事象または状況が生じ得または生じ得ないことを意味し、そしてこの記載はこの事象または状況が生じる例および生じない例を包含する。例えば、語句「必要に応じて置換されたフェニル」は、フェニルが、置換され得または置換され得ないことを意味し、しかもこの記載は、非置換フェニルおよび置換があるフェニルの両者を包含する。
【0129】
本明細書中で提供される化合物の、用語「有効量」により、非毒性であって所望の遺伝子発現の調節を提供するに十分な化合物の量を意味する。以下で指摘され得るように、正確な必要量は被験体によって変化し得る。それは、種、年齢、被験体の一般的状態、治療されている病気の重篤度、用いた特定の二環式化合物、その投与方法などによる。従って、正確な「有効量」を明細書に記載することは不可能である。しかし、適切な有効量は、ルーチンの実験のみを用い当業者により決定され得る。
【0130】
用語「薬学的に受容可能」は、生物学的にまたはその他に所望されない材料ではないことを意味する。すなわち、望ましくない任意の生物学的影響を生じることなく、または薬学的組成物に含まれる任意の他の成分と心身に有害な様式で相互作用することのなく、選択された二環式化合物とともに個体に投与され得る材料であり得る。
【0131】
選択的な遺伝子発現の「誘導」「調節」または「調整」は、化合物が、特定のレセプター(すなわち、レチノイン酸ファミリー)により遺伝子発現のアクティベーターまたはアンタゴニストとして作用し得ることを意味することを意図する。
【0132】
レセプターの「レチノイン酸ファミリー」は、「レチノイドレセプター」とも呼ばれ、レチノイン酸レセプター、レチノイドXレセプター、ビタミンDレセプター、および甲状腺ホルモンレセプターを包含することを意図する。前述の3つの群のレセプターはまた、本明細書では「レチノイン酸レセプター」と広く呼ばれる。すなわち、この用語は、レチノイド酸レセプターそれ自身に加えて、レチノイドXレセプター、ビタミンDレセプター、および甲状腺ホルモンレセプターを含有する。
【0133】
「架橋二環式芳香族化合物」は、式(I)の構造に包含される全ての化合物を示す。これらの化合物はまた、「レチノイド」と呼ばれ、その用語はさらにレチノイン酸および9−シスレチノイン酸のような種を包含することを意図する。
【0134】
本発明は、RXRホモダイマーの形成に影響を及ぼす能力について物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、この物質およびRXRを含む溶液を合わせる工程、およびホモダイマー形成の存在を測定する工程を包含する。ホモダイマー形成の存在は、例えば、RXRホモダイマーまたは共沈により転写の活性化を検出することにより決定され得る。この影響は、ホモダイマー形成の誘導、例えば、9−シス−RAにより活性化された活性に類似の活性または、ヘテロダイマー形成に対してホモダイマー形成を選択的に活性化する活性であり得る。用語「選択的に活性化する」は、ホモダイマー形成を活性化するが、ヘテロダイマーを顕著に活性化しない化合物を意味する。あるいは、「選択的に活性化する」は、ヘテロダイマー形成を活性化するが、ホモダイマー形成を顕著に活性化しない化合物を包含する。用語「顕著な活性化」は、被験体に有害な薬理学的影響を起こすに十分な活性化を包含する。この影響はまた、ホモダイマー形成の阻害であり得る。阻害の例は、9−シス−RAのレセプターへの結合に対し競争するが、それ自身は二量体化を活性化または誘導しない物質、またはその活性をブロックするために9−シス−RAを結合する物質を包含する。物質のこのようなスクリーニングは被験体が居れば、ホモダイマー形成の発見をルーチンに実施し得る。以下に提示される特定のアッセイセットは、9−シス−RAを、目的の物質で単に置換することで、スクリーニングのために一般に使用され得る。このような「物質」をスクリーニングするための良好な出発点は、本明細書中に
記載される9−シス−RA活性である。9−シス−RAに関する置換体は、9−シス−RAアナログを作成するために変化し得、およびホモダイマー形成の任意の増加または減少を測定するための方法でスクリーニングされ得る。しかし、任意の物質が、ホモダイマー形成について任意の影響を測定するために、このアッセイでスクリーニングされ得る。このような化合物は、次いで細胞中でホモダイマー形成および遺伝子転写を促進するために用いられ得る。本明細書中で用いられる細胞は、インビトロまたはインビボのいずれにか見い出される細胞を包含する。従って、RXRホモダイマー形成に影響を与え、そしてRXRホモダイマーにより活性化される遺伝子の転写を促進するためにヒト被験体にこれら化合物が投与され得る。このような化合物を、以下の実施例に提示する。
【0135】
以下の本明細書で提示されたデータはRXRαを利用する。しかし、RXRα、β、およびγの間で高い相同性が与えられれば各タンパク質は、ホモダイマーを形成すべきであり、そしてRXRαホモダイマーについて記載された活性を有する。関連して、ホモダイマーは異なったRXR間で形成され得る。例えば、ホモダイマーは、RXRαとRXRβの間、あるいはRXRβとRXRγの間、あるいはRXRαとRXRγの間で形成され得る。これらのホモダイマーの活性は、本明細書で提示される方法を用いて確認され得る。
【0136】
本発明はまた、RXRホモダイマーのDNAを結合する能力に関する影響について物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、この物質を上記ホモダイマーと合わせる工程、およびDNAと結合するホモダイマーの能力への化合物の影響を測定する工程を包含する。例えば、ホモダイマーを結合し得る、またはRXRホモダイマーにより認識されるDNA応答エレメントを結合し得る化合物は、この方法でスクリーニングされ得る。
【0137】
本発明は、さらに、RXR含有ヘテロダイマーの活性を阻害する方法を提供し、この方法は、RXRホモダイマーの形成を増加させ、それによってRXRがヘテロダイマーの形成を抑制しそして得られるヘテロダイマー活性を抑制する工程を包含する。この活性は、任意の活性であり得るが、一般には転写の活性化または抑制化である。この活性は、例えば、そうでなければヘテロダイマーを形成するために利用され得るRXRを、ホモダイマーを形成するために利用することによりブロックされ得る。ヘテロダイマーの数が減少するので、ヘテロダイマーの活性は減少する。1つの実施例では、RXRヘテロダイマーは、甲状腺ホルモンレセプターおよびRXRから成る。RXR/TRヘテロダイマーの活性は減少した。その他のヘテロダイマーを、本明細書で提示された標準方法を用いて試験し得る。
【0138】
本発明はまた、RXRレセプターホモダイマーの活性を阻害する方法を提供し、この方法は、RXRホモダイマー形成を抑制する工程を包含する。このような阻害は、例えば、9−シス−RA、または9−シス−RAによる転写または活性化を阻害することにより得られ得る。この阻害される活性は、一般に転写の活性化または抑制化である。
【0139】
本発明はまた、RXRホモダイマーの活性を阻害する方法を提供し、この方法は、RXRホモダイマーのその応答エレメントへの結合を抑制する工程を包含する。例えば、同じ応答エレメントと競合するレセプターの活性が促進され得る。一般に、阻害される活性は、転写の活性化または抑制化である。
【0140】
本発明は、RXRホモダイマー形成に関連する病状の増加の確率を測定する方法をさらに提供し、この方法は、被験体において正常被験体と比較したときのRXRホモダイマー形成の調節を検出する工程を包含する。この調節は、ホモダイマー形成を増加または減少し得る。このような調節は、例えば、変異したRXRから生じ得る。この減少は、サンプル中でホモダイマーについてのアッセイにより、またはホモダイマー形成を減少することが知られている変異体を検出することにより検出され得る。
【0141】
関連して、本発明は、被験体においてホモダイマー形成を調節する工程を包含する、被験体中でRXRホモダイマー形成に関連する病状を治療する方法を提供する。この調節は、病状に依存して増加または減少され得る。このような増加は、例えば、RXR転写を促進する化合物を利用して達成され得る。この病状は、例えば座瘡および乾癬のような皮膚に関連し得る。さらに、この病状は癌であり得る。このような化合物の正確な必要量は、被験体によって変化し得、それは、種、年齢、被験体の一般的状態、治療されている病気の重篤度、用いられる特定の化合物、その投与方法などに依存する。従って、正確な活性促進量を特定することは不可能である。しかし、適切な量は、本明細書で教示が与えられれば、ルーチンの実験のみを用いて当業者により決定され得る。
【0142】
本発明はまた、精製されたRXRホモダイマーを提供する。用語「精製された」は、天然環境中でRXRホモダイマーに関連する少なくとも数種の細胞成分が無いこと意味する。
【0143】
本発明は、RXRホモダイマーとの結合するための応答エレメントをスクリーニングする方法を提供し、この方法は、この応答エレメントを上記RXRホモダイマーと合わせる工程、および結合の存在を検出する工程を包含する。結合の存在を、多くの標準的な方法により決定し得る。1つの方法では、応答エレメントに作動可能に連結するマーカーの転写活性化により結合を検出する。用語「作動可能に連結」は、転写アクティベーターの存在下でマーカーが転写され得ることを意味する。
【0144】
本研究は、天然のビタミンA誘導体9−シス−RAのレチノイドレセプターDNA結合および転写活性化に関する影響の研究から得られる。全−トランス−RAと反対に、9−シスアナログは、10−9〜10−8M濃度で、天然TREまたはEREへのではなくいくつかのRXR−特異的RAREへのRXRα結合を劇的に促進する。この影響は、RXRα、βまたはγの応答エレメントへの結合を、9−シス−RAが誘導しないので、RXRに特異的である(図1、図3)。ゲルシフトアッセイにおける移動パターンから判断して、RXRトリマーまたはテトラマーを包含するより大きな複合体が生じ得るが(特にCRBPII−RAREの場合)、9−シス−RAがホモダイマー形成を誘導すると推定される。このようなトリマーまたはテトラマー形成は、本明細書に提示の方法を用いて試験され得る。
【0145】
RXRαホモダイマーは、ヘテロダイマーと異なる応答エレメント特異性を奏する。rCRBPI応答エレメントは、RXRホモダイマーと相互作用せず、その一方CRBPII応答エレメント(完全繰返しを含むこれまでに同定された天然のRARE)のみが、9−シス−RAで誘導されるRXRαホモダイマーの強力なバインダーであった。この応答エレメントがRXRα24,30により良好に活性化されることは先に示されていた。この応答エレメントはまた、RXRα−RARαヘテロダイマー(図3)27,29により効果的に結合されるが、ヘテロダイマーはリプレッサー機能を有するようである30
【0146】
CV−1細胞は、試験された全ての他のほ乳類組織培養細胞のように、部分的に影響を不明瞭にし得る内因性のレチノイドレセプターを包むけれども、転写活性化研究で得られた結果は、DNA結合研究で得られた結果と良く一致する。それにもかかわらず、9−シス−RA−RXRαホモダイマーと強く結合する応答エレメントはまた、9−シス−RAの存在下で同時トランスフェクトしたRXRαに強く応答する。その一方、RXRαホモダイマーに良好に結合しない応答エレメントは、rCRBPI−RAREまたはMHC−TREのように、RXRα単独によっては活性化され得なかった。
【0147】
核ホルモンレセプターの二量体化−ホモ二量体化またはヘテロ二量体化は、レセプター
とそれらの同族の応答エレメントとの高親和性の相互作用に重要である一般に信じられている。RXRは溶液中で主にモノマーとして存在し16、効果的なDNA結合活性を示すために高濃度またはRAR、TRあるいはVDRの存在を13,15,16,26−30必要とする。9−シス−RAの存在下で増加した協同RXR DNA結合活性の観察は、9−シス−RAが、DNAに対する増加した親和性を有するRXRホモダイマーの形成を誘導したことを示す。従って、9−シス−RAのRXRへの結合は、構造変換を誘導し得、それはホモ二量体化を起こす。9−シス−RAおよびRAがRARに結合し得るが24,25、それらはRARホモダイマー形成を誘導しないことは興味深い。
【0148】
RXRαホモダイマー形成は、DNA非存在下の溶液中で生じ得る。従って、9−シス−RAが細胞に利用されるようになる場合、モノマー性とダイマー性レセプターとの間の平衡が変化し、そしてさらなる種、RXRホモダイマーが形成され得、新規の応答経路を与える。インビトロのゲルシフトアッセイにより観察されるようにリガンド誘導ホモダイマー結合の概念は、変異したエストロゲンレセプター(ER−val−400)を除く核レセプターについて先に観察されている44,45
【0149】
関連TRについて、リガンドの影響は、ホモダイマー結合に関して報告されているが46,47、しかし、リガンド(T3)は、ホモダイマー応答エレメント相互作用を減少させた。TRおよびRARのカルボキシ末端の半分が、リガンドおよび二量体化機能の両方をコード化するので36,46,48、ここで観察されるように二量体化に関するリガンドの強い影響は、全く驚くべきことではない。しかし、この影響の特異性は、ヘテロダイマー形成ではなくホモダイマー形成のみに影響するようなので、きわめて劇的である。全体像は、その相互に混合されたドメインを介するレセプターのカルボキシ末端領域(転写活性化領域もまた含有する)49が、他の制御タンパク質50との相互作用をも含み得る個々のレセプター多重の活性を許容することから生じる。
【0150】
本出願に記載のデータは、2つの機能を有するRXRの中心の役割を実証した。それは、ヘテロ二量体化を通じてRAR、TRおよびVDRのホルモンレセプターの3つのクラスについて補助レセプターとして作用することを可能にする。RXRの2つの機能−ホモ二量体化およびヘテロ二量体化−は、2つの別個の転写調節制御を説明する。それは、別個の生理的プロセスに影響すると予想され得る。従って、9−シス−RAは、全−トランス−RAの治療特性とは別個の治療特性を有し得る。
【0151】
本明細書で提供される新規化合物は、上記の構造式(I)により定義される化合物である。この一般構造に入る好ましい化合物は以下を包含する:
【0152】
【化40−1】

【0153】
【化40−2】

ここで、R11は、O、S、(CHCおよびCHからなる群から選択され、そしてR12は水素またはメチルである。この群に入る特に好ましい化合物は構造式(II)に示されるような化合物である。
【0154】
好ましいR置換体は、Rが、以下の一般構造を有する場合であり、
【0155】
【化41】

以下よりなる群から選択される:
【0156】
【化42】


好ましいR置換体は、Rが以下の一般構造の場合であり、
【0157】
【化43】

以下よりなる群から選択される:
【0158】
【化44】


式(II)に包含される好ましい構造の例は以下を包含する:
【0159】
【化45−1】

【0160】
【化45−2】

【0161】
【化45−3】

式(II)により定義される化合物のクラスに入る特定の詳細な好ましい化合物の例は以下を包含する:
【0162】
【化46−1】

【0163】
【化46−2】

本発明はまた、カルボン酸部分を含む式(I)の化合物の薬学的に受容可能な無毒性エステル、アミド、および塩の誘導体を包含する。
【0164】
薬学的に受容可能な塩は、遊離酸を適量の薬学的に受容可能な塩基で処理することによ
り調製される。代表的な薬学的に受容可能な塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、リジン、アルギニン、ヒスチジンなどである。反応は、水中で、水のみまたは不活性な水と混和し得る有機溶媒と組み合わせて、約0℃〜約100℃の温度で、好ましくは室温で行われる。用いられる塩基に対する構造式(I)の化合物のモル比は、任意の特定の塩に所望の比を提供するように選択される。例えば、遊離酸出発物質のアンモニウム塩(本明細書中の特に好ましい実施態様)の調製については、この出発物質は、約1当量の薬学的に受容可能な塩基で処理されて中性塩が得られ得る。カルシウム塩が調製される場合、約1/2モル当量の塩基を用いて中性塩が得られるが、アンモニウム塩については、約1/3モル当量の塩基が用いられる。
【0165】
エステル誘導体は、代表的には、化合物の酸形態に対する前駆体として調製され(以下の実施例に例示する)、したがってプロドラッグとして用いられ得る。一般的には、これらの誘導体は、アセテート、プロピオネートなどの低級アルキルエステルである。アミド誘導体の、−(CO)NH、−(CO)NHR、および−(CO)NR(ここでRは低級アルキルである)は、カルボン酸含有化合物とアンモニアまたは置換アミンとの反応により調製され得る(以下の実施例VIIに例示する)。
【0166】
合成方法:
本発明の化合物は、有機合成化学者に一般に公知の技法を用いて容易に合成され得る。架橋二環式芳香族化合物の製造および誘導体化に適切な実験方法は、例えば、上記の要約したMaignanらの特許に記載されており、その特許の開示内容は参考として本明細書中に援用されている。本発明の特定のおよび好ましい化合物の製造方法は、以下の実施例III〜XVIIに詳細に記載されている。
【0167】
有用性および投与:
構造式(I)で定義される本発明の化合物(その薬理学的に受容可能なエステル、アミド、または塩を含む)は、レチノイン酸ファミリーにおけるレセプターによる選択的遺伝子発現を誘導および/または調節すること、およびレチノイド、ビタミンD、および/または甲状腺ホルモンにより調節される細胞分化プロセスを制御することに有用である。したがって、上記のように、本発明の化合物は、座瘡(acne)、白血病、乾癬、皮膚の老化、骨の石灰化、およびエネルギーレベル、ならびにレチノイン酸、ビタミンD、甲状腺ホルモン、および9−シス−レチノイン酸により調節される細胞プロセスに関連する他の徴候を治療することに有用である。
【0168】
本発明の化合物は、薬学的に受容可能なキャリアと共に1つまたはそれ以上の化合物から構成される薬学的組成物中に好都合に処方され得る。例えば、Remington’s
Pharmaceutical Sciences、最新版、E.W.Martin(Mack Publ.Co.、Easton PA)は、代表的なキャリア、および本発明の化合物の処方物の調製に関連して用いられ得る薬学的組成物の従来の調製方法を開示していることを参照のこと。
【0169】
化合物は、経口的、非経口的(例えば、静脈内)、筋肉内注射、腹腔内注射、局所的、経皮的などにより投与され得るが、代表的には経口または局所投与が好ましい。もちろん、投与される活性化合物の量は、治療される被験体、被験体の体重、投与方法、処方する医師の判断に依存する。しかし、一般に、投与量はレチノイン酸の投与に代表的な量に近似しており、好ましくは約2μg/kg/日〜2mg/kg/日の範囲である。
【0170】
所定の投与の態様に依存して、薬学的組成物は、固体形態、半固体形態、または液体投与形態であり得、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤などであり得、好ましくは、正確な単回投与用量に適切な単位投与形態であり得る。この組成物は、上記のように、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、選択された有効量の薬物を含み、そしてさらに、他の医用剤、薬用剤、キャリア、アジュバント、希釈剤などを含み得る。
【0171】
固体組成物については、従来の無毒性固体キャリアには、例えば、薬用グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、本明細書に記載のような活性化合物および任意の薬学的アジュバントを、例えば、水、生理食塩液、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどの賦形剤中に、溶解、分散などすることにより調製されて、それにより溶液または懸濁液を形成し得る。所望であれば、投与される薬学的組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミンオレエートなど)の少量の無毒性の補助剤を含み得る。このような投与形態を調製する実際の方法は、当該技術分野の当業者に公知または明らかであり、例えば、上記参考のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0172】
経口投与については、微細粉末または顆粒は、希釈剤、分散剤、および/または界面活性剤を含み得、そして水中にまたはシロップ中に、乾燥状態ではカプセルまたは袋(sachet)中に、または懸濁化剤が含まれ得る非水性溶液または懸濁液中に、結合剤または滑沢剤が含まれ得る錠剤中に、または水またはシロップ中の懸濁液中に存在し得る。所望であればまたは必要であれば、矯味剤、保存剤、懸濁化剤、濃稠化剤、または乳化剤が含まれ得る。錠剤および顆粒剤は好ましい経口投与形態であり、そしてこれらはコーティングされ得る。
【0173】
非経口投与は、用いるのであれば、一般に注射により特徴づけられる。注射剤は、液体溶液または懸濁液、注射前の液体中での溶液または懸濁液に適切な固体形態として、または乳化剤としてのいずれかで、従来の形態で調製され得る。非経口投与の最近再検討されたアプローチには、一定レベルの投与量が維持されるような、徐放性または持効性システムの使用が含まれる。例えば、米国特許第3,710,795号を参照のこと。これは、本明細書中に参考として援用されている。
【実施例】
【0174】
(実験)
以下の実施例は、本明細書中で請求項に挙げた方法、組成物および化合物を、どのように作製し評価したかという完全な開示および記載を、当業者に提供するために提出した。そして実施例は、発明者らの発明の範囲を制限することは意図していない。数値(例えば、量、温度など)について正確さを保証する努力をしたが、いく分かの誤差および偏差を考慮しなければならない。特に指示がない限り、部は重量部、温度は℃、そして圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0175】
記載中の基および置換基の位置は、以下の番号付けシステムを実施例を通じて採用する:
【0176】
【化47】

実施例I
ホモダイマー形成の同定
9−シス−RAは、TREpal上でRXRホモダイマー結合を誘導する
RXRを高濃度で用いる場合、RXRがRA応答エレメント(RARE)に結合することを示されているが28,30,31、さらに最近の研究により、RXRは溶液中でモノマーとして主に存在すること10、そして効果的なDNA相互作用に、RARまたはTRまたはVDRとのヘテロダイマー形成が必要であること15,16,26−29が明らかになった。種々の応答エレメントへのヘテロダイマーの結合は、リガンド非依存性であることが見出された32。新たに発見された天然のRA異性体9−シス−RAは、RARまたはTRのいずれも含んでいないことが知られているDrosophila Schneider細胞中のRXRの効果的なアクティベーターであることが報告された17,24。9−シス−RAが、RXRに対する確かに真のリガンドである場合、このリガンドが、RXR応答エレメント相互作用を調節すると予想される。従って、コレセプター(TRおよびRAR)の非存在下および存在下で、パリンドローム性TRE(TREpal)、RXR応答エレメント14へのRXRαの結合に及ぼす9−シス−RAの影響を研究した。
【0177】
RXRα、RARβ、またはTRαのレセプターcDNAのpBluescript(Stratagene,San Diego,CA)へのクローニングは、先に記載されている26。フラッグ−RXRαを、ATGコドンを含む2本鎖のオリゴヌクレオチドとRXRαのN末端に相当するフラッグ(Arg−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)[配列番号:1]をコードするDNA配列とのライゲーションにより、先の記載33のように構築した。次いで、融合生成物を、pBluescriptにクローニングした。インビトロでの転写/翻訳系を用いるレセプタータンパク質の合成、および合成したレセプタータンパク質および2本鎖TREpalを用いるゲル遅延アッセイ34は、記載されたとおりである33。9−シス−RA(融点184−187℃)を、HOAc−MeOHの存在下で2段階の連続MnO酸化35により、9−シス−レチナールから調製し、メチルエステル(69%)を得、続いて25% MeOH水溶液中の0.5N KOH中で加水分解(80%)し、そして結晶化した(MeOH);HPLC(Novapak C18、32% MeCN、27% MeCH、16% −PrOH、24% HO、1% HOAc、1.9mL/分、260nM)t 15.4分(100%)。ホルモンの影響を分析するために、DNA結合アッセイを行う前に、レセプタータンパク質を適切な濃度のホルモンと、室温で30分間インキュベートした。抗フラッグ抗体(Immunex,Seattle,WA)を用いて、DNA結合アッセイを行う前に、1μlの抗血清をレセプタータンパク質と、室温でさらに30分間インキュベートした。
【0178】
リガンド非存在下では、RXR単独ではTREpalに効果的に結合せず、そして応答エレメント相互作用のためにTRまたはRARを必要としたが、RXRの結合は、9−シス−RAの存在下で劇的に増加し(図1a)、そしてTRまたはRARを必要としなかった。9−シス−RAの存在下で観察されるRXR特異的バンドは、ヘテロダイマーTR−RXRおよびRAR/RXR複合体を用いて得たバンドと同じくらい目立った。RXR複
合体は、RAR/RXRヘテロダイマーTREpal複合体の位置と非常に似た位置に、TR−RXR複合体に比べより遅くと移動した。従って、これらのデータは、9−シス−RAがRXRホモダイマー形成を誘導することを示す。9−シス−RAで誘導されるRXRホモダイマー複合体と同じ位置でのRAR−RXR複合体が移動するため、両方の複合体が形成されるか否かを、この実験において決定し得なかった。特筆すべきことには、全−トランス−RAを10−6Mの濃度で添加した場合もまた、RXRαホモダイマー結合をある程度誘導したが、Tは誘導しなかった。RAの影響は、幾つかの用時調製RA溶液を用いて観察し得たが、RAの存在下におけるこのホモダイマー形成が、本明細書で用いた全−トランス−RA溶液中の9−シス−RA不純物のせいであるか、または全−トランス−RAの直接の影響であるのかは現時点では明確ではない(以下を参照のこと)。興味深いことには、9−シス−RAは、RXRに対するその影響とは異なって、RARには結合し得ると報告24されているが、9−シス−RAが、TREpalへのRARホモダイマー結合を誘導することは見出されなかった。
【0179】
9−シス−RAの存在下で観察された複合体が、確かにRXR複合体であるという証拠をさらに提供するために、DNA結合実験をフラッグ−RXRを用いて行った。この誘導体は、抗フラッグ(αF)抗体により特異的に認識される8個のアミノ酸アミノ末端エピトープを保持する33。図1bに示したように、αFは、9−シス−RA誘導複合体をシフトさせたが、非特異的抗体はしなかった。このことは、9−シス−RAの存在下でTREpalにより観察された複合体が、確かにRXRタンパク質を含有することを証明した。9−シス−RA誘導ホモダイマー形成が、RXRタンパク質の濃度にどのように依存しているかを調べるために、インビトロでの翻訳されたRXRタンパク質の増加する濃度を、9−シス−RAの存在下または非存在下で、標識したTREpalと混合した(図2a)。これらの混合物を、ゲル遅延アッセイにより分析した場合、ホモダイマーのDNA結合に、RXRαタンパク質濃度に正の相関で依存する、強い協同の影響が見られた(図2a,b)。高濃度のRXRを用いた場合、RXRのわずかな結合を観察し得るが、用いた全てのレセプター濃度において、9−シス−RAが効果的な複合体形成に必要であった。用いた全てのレセプター濃度において、ホモダイマー複合体形成に必要な9−シス−RAの濃度をさらに決定した。ホモダイマー複合体形成に必要な9−シス−RAの濃度をさらに決定した。10−9Mで著しい影響が既に観察されたが、最適結合は10−8Mで見られた(図2c)。従って、効果的なRXRホモダイマーDNA相互作用は、RXRタンパク質濃度に依存し、そして低レベルの9−シス−RAで生じ得る。
【0180】
9−シス−RAは、特定の応答エレメントとのホモダイマーの相互作用を誘導する
RXR含有ヘテロダイマーは、種々の天然の応答エレメントとの高い特異的な相互作用を有し、TR−RXRヘテロダイマーはTREと強く結合するだけであり、RAREとは結合しない。ところが、RAR−RXRヘテロダイマーについては、逆が真実である15,32。多数の天然および合成応答エレメントを用いて、9−シス−RA誘導RXRホモダイマーのDNA結合に必要な配列を調べた(図3a)。
【0181】
インビトロで合成されたレセプタータンパク質を用いるゲル遅延アッセイを、図1説明に記載する。以下のオリゴヌクレオチドおよびそれらの相補鎖を、図3および図4においてプローブとして用いた。ApoAI−RARE、2bpスペーサーを有する直接反復応答エレメント31
【0182】
【化48】

[配列番号:2];CRBPII−RARE、1bpスペーサーを有する直接反復RXR特異的応答エレメント30
【0183】
【化49】

[配列番号:3];βRARE、RARβプロモーターに存在するRA応答エレメントの直接反復36,37
【0184】
【化50】

[配列番号:4];CRBPI−RARE、ラットCRBPIプロモーターに存在する直接反復RA特異的応答エレメント38
【0185】
【化51】

[配列番号:5];MHC−TRE、ラットα−ミオシンH鎖遺伝子に存在する、直接反復T特異的応答エレメント40
【0186】
【化52】

[配列番号:6];ME−TRE、ラットリンゴ酸酵素遺伝子に存在する直接反復T特異的応答エレメント41
【0187】
【化53】

[配列番号:7];DR−4、4bpのスペーサーを有する理想化した直接反復T特異的応答エレメント39
【0188】
【化54】

[配列番号:8];DR−5、5bpスペーサーを有する理想化した直接反復RA特異的応答エレメント39
【0189】
【化55】

[配列番号:9];ERE、完全なパリンドローム性のER応答エレメント42
【0190】
【化56】

[配列番号:10]。TREpal配列[配列番号:11]を、比較のために示す。
【0191】
ApoAI−RARE(2bpのスペーサーを含む直接反復応答エレメント)は、RXR特異的であると示唆31されているが、9−シス−RAの存在下で強いRXR複合体として得られ、そしてRA(10−6M)とはより低い程度の複合体として得られた。RXR−RARヘテロダイマーはまた、この応答エレメントと効果的に結合した。ヘテロダイ
マー複合体は、RXRホモダイマーと同じ位置で移動したので、9−シス−RAのRXR−RARヘテロダイマーの影響は明確には決定され得ない。RARホモダイマー結合は、9−シス−RAにより誘導されなかった(図3b)。他のRXR応答エレメント30、つまりCRBPII−RAREへのRXR結合を誘導する9−シス−RAを研究したところ、(リガンドの非存在下で)ヘテロダイマーよりさらに遅く移動した複合体を観察したが、9−シス−RAおよびRARの存在下では、ホモダイマー結合およびヘテロダイマー結合のいずれもがその強さに減少が見られた(図3);同様の影響が、高RA濃度において、または9−シス−RAおよびRAがいずれも存在する場合において見られた。9−シス−RAはまた、RXRのβRARE、(5bpのスペーサーを含むヒトRARβプロモーター由来のRAR応答エレメント36,37)との相互作用を誘導した(図4a)。しかし、RXRホモダイマーバンドは、用いたタンパク質濃度において、RAR−RXRヘテロダイマーバンドよりかなり弱い。興味深いことに、ラットCRBPIプロモーター由来の他の天然のRARE38(2bpのスペーサーを含むApoAI−RAREに似ている)は、9−シス−RAの存在下で、RXRのいかなる結合も示さなかった(図4a)。これは、反復コアモチーフの実際の配列が、RXRホモダイマー結合に重要であることを示している。同様に、DR−5−RARE、つまりβ−RARE由来の完全な反復エレメント39は、9−シス−RAの存在下ではRXRとの相互作用を示さなかったが、RAREが存在する場合に、RXRと強く相互作用する(図4a)。
【0192】
RXRホモダイマー結合が特定のRAREに特異的であるか否かを決定するために、ラットα−ミオシンH鎖プロモーター(MHC−TRE)由来のT応答エレメント40、ラットリンゴ酸酵素(ME−TRE)由来のT応答エレメント41、および完全な反復DR−4由来のT応答エレメント39を用いてゲルシフト実験をまた行った。3つの場合の全てにおいて、9−シス−RAの存在下または非存在下でRXRの特異的な結合は観察され得なかったが、3つの応答エレメントの全ては、TR/RXRヘテロダイマーと効果的に結合し、これらのエレメントは、レチノイドによって誘導されないという見解と一致する。同様に、完全なパリンドローム性ERE42はまた、RXRホモダイマーと相互作用しなかった(図4c)。
DNAの非存在下で9−シス−RAで誘導されるホモダイマー形成が生じる
RXRは、溶液中に主にモノマーとして存在することが報告された16。重要な問題は、9−シス−RAで誘導されるRXRホモダイマー(ヘテロダイマー含有のRXRに似ている)が、DNAの非存在下で溶液中で形成し得るか否かということである。この問題に解決するためにフラッグ−RXR誘導体の利点、即ち、抗フラッグ抗体と特異的に沈殿し得るが、RXR野生型は沈殿し得ないという利点を用いた。
【0193】
フラッグ−RXRαを、発現ベクターpGex 2T(Pharmacia)中に読み取り枠を合わせてクローニングし、そして製造業者により提供された手順を用いて細菌中で発現させた。タンパク質を、予め充填されたグルタチオンセファロース4Bカラム(Pharmacia)上で部分精製し、そして抗フラッグ抗体を用いるゲル遅延アッセイおよびウエスタンブロッティングにより、その機能について試験した。免疫共沈殿アッセイを、本質的には記載26されたように行った。簡単に言えば、インビトロにおいて35S標識した10μlの合成RXRαタンパク質を、5μl(約0.1μg)の部分精製した細菌で発現させたフラッグ−RXRα融合タンパク質または同様に調製したグルタチオントランスフェラーゼ対照タンパク質と、100μl緩衝液(10−7M 9−シス−RA、50mM KCl、および10% グリセロール含有)中で、室温で30分間インキュベートした。化学的架橋剤またはオリゴヌクレオチドの存在下でアッセイした場合、DMSOに溶解した2μlの100mM ジチオビススクシンイミジルプロピオネート(DSP)、または10ngのオリゴヌクレオチドを添加し、そして室温で15分間インキュベートを続けた。次いで、反応混合物を1μlの抗フラッグ抗体または非特異的プレ免疫血清と、氷上で2時間インキュベートした。免疫複合体を、50μlのプロテイン−A−セ
ファローススラリーを添加し、そして低温室で1時間連続的に混合することにより沈殿させた。免疫複合体を、10−7M9−シス−RA含有の冷NET−N緩衝液(20mM トリス、pH 8.0、100mM NaCl、1mM DTT、0.5% NP−40)でよく洗浄し、SDS試料緩衝液中で煮沸し、そしてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。ゲルを固定し、乾燥し、そしてオートラジオグラフィーにより可視化した。
【0194】
フラッグ−RXRを、インビトロにおいて標識した35S−RXRタンパク質と混合した場合、標識RXRは、抗フラッグ抗体の存在下では沈殿し得たが、非特異的血清の存在下で沈殿し得なかった(図5)。ApoAI−RARE存在下では、共沈殿効率はわずかに増加したが、MHC−TREの存在下では増加しなかった。さらに、架橋剤(DSP)とのインキュベートにより、標識RXRの共沈殿がさらに増強された。全ての場合において、特異的な共沈殿は、9−シス−RAの存在下でのみ観察された。従って、これらのデータにより、9−シス−RA誘導RXRホモダイマー形成が、溶液中で生じ、そしてRXR−DNA相互作用を必要としないという仮説が強く指示される。
9−シス−RAおよびRXRαによる応答エレメント特異的転写活性化
9−シス−RA/RXRαホモダイマー応答エレメント相互作用が、9−シス−RA/RXR複合体によるそのような応答エレメントによる転写活性化と関連し得るか否かを研究するために、CV−1細胞において一連の一時的なトランスフェクションアッセイを行った。ここでは、レセプター発現ベクターを、tkプロモーターの種々の上流の応答エレメントを有するCATリポーター構築物で同時トランスフェクトした。CV−1細胞を、先に記載43のように改変したリン酸カルシウム沈殿手順を用いて、一時的にトランスフェクトした。同時トランスフェクトしたβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミド(pCH110、Pharmacia)由来の酵素活性を測定することにより、CAT活性をトランスフェクション効率について標準化した。トランスフェクトした細胞を、10−7M 9−シス−RAまたは全−トランス−RAの非存在下または存在下で生育させた。
【0195】
TREpal含有リポーターを用いて、9−シス−RAの存在下でのRXRαによる強い活性化、およびRAを添加した場合活性化がほとんど観察されなかった。活性化は、RARαの同時トランスフェクションによりさらに増強され得た。しかし、この場合、RAはまた、9−シス−RAほど効率的ではないが、効果的なアクティベーターとして機能した。全体で、RARαおよびRXRαの存在下で、9−シス−RAによる活性化は、RXRα単独でみられた強さの約2倍であり、両方のレセプターが存在した場合、結合が9−シス−RAの存在下でヘテロダイマーおよびホモダイマーの両者によって観察された、DNA結合データと一致する(図6a)。βRAREを試験したとき(図6b)、この応答エレメントは、先の観察37,42と一致して、内因性のCV−1細胞レセプターにより高く活性化されることが観察されたが、低濃度の同時トランスフェクトしたレセプターによるさらなる活性化は観察され得なかった。しかし、9−シス−RAは、興味深いことに、10−7Mにおいて、RAより強い活性化剤であった。従って、これらのデータは、CV−1細胞が内因性レチノイドレセプター活性を含んでおり、その活性はβRAREについて特に活性であり、そして9−シス−RAに応答性であるということを示す。
【0196】
ApoAIエレメント含有リポーターはまた、9−シス−RAの存在下でRXRαにより非常に効果的に活性化されたが(図6c)、RXRαの非存在下で得られるレベルを超えてRAは誘導しなかった。TREpalと同様に、レセプターRXRαおよびRARαの両方を同時トランスフェクトした時、最大の活性化がみられた。これらの条件下で、RAはまた強い活性化に至った。それに対して、CRBPIエレメント(ここでは、9−シス−RAの存在下でRXRによるDNA結合は観察されなかった)はまた、一時的なトランスフェクション研究においてRXRおよび9−シス−RAにより活性化されなかったが(図6d)、RARα単独で、大体において9−シス−RA依存性である顕著な活性化に
至った。ヘテロダイマーRARαRXRαは、9−シス−RAの存在下で最大の活性化を可能にした。予測しなかったことではないが、RXRαおよび9−シス−RAによる誘導は、MHC−TRE、ME−TRE、またはEREについては観察されなかった。これらのインビボでの分析は、インビトロでのDNA結合研究で得られた結果に顕著な相関を示した。そこでは、9−シス−RAの存在下でRXRαによる強い活性化が、9−シス−RA誘導RXRαホモダイマーと強く相互作用する応答エレメントについてのみ観察される。
9−シスレチレイン酸は、TR/RXRヘテロダイマーによる活性化を阻害する
甲状腺ホルモン(T)の存在下で、甲状腺ホルモンレセプター/RXRヘテロダイマーにより活性化されるCATでリポートされた遺伝子は、9−シス−RAを添加することにより阻害され得る。この型の阻害は、トランスフェクションアッセイを用いて最も容易に測定される。
【0197】
実施例II
RXR活性を誘導する化合物の同定および選択
TREpal−tk−リポーター遺伝子を、本質的には記載51のように一時的なトランスフェクションアッセイに用い、RXR活性の誘導について化合物を評価した。簡単に言えば、CV−1細胞またはHep G2細胞を、10%ウシ胎児血清を補填したDME培地中で生育させた。細胞は、トランスフェクション前に24ウェルプレート中16〜24時間でウェル当たり1.0×10個にプレート培養した。一般的に、100ngのリポータープラスミド、150ngのβ−ガラクトシダーゼ発現ベクター(pCH110、Pharmacia)、およびレセプター発現ベクターの種々の量を、キャリアDNA(pBluescript)と混合し、ウェル当たり1,000ng全DNAとした。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)活性を、先に記載52のように対応するβ−ガラクトシダーゼ活性によりトランスフェクション効率を標準化した。実施例Iに示したように、TREpalは、RAR/RXRヘテロダイマーおよびRXRホモダイマーの両方により活性化される応答エレメントを表す。RXR発現ベクターをTREpal−tk−リポーター遺伝子と、CV−1細胞に同時トランスフェクションする場合、全−トランス−RAは、リポーターを効果的に活性化しないが、9−シス−RAは活性化する。一連のレチノイドの評価は、幾つかがRXRとの活性を示すことを指摘した。次いで、これらの構造物の薬効を有する(pharmacophoric)エレメントを組み合わせ、そしてさらに改変してRXRに対する活性化プロフィールが、9−シス−RAのそれに類似するレチノイドのサブセットを生成した。RXRとの幾つかのレチノイド活性についての誘導曲線を図7aに示す。興味深いことには、活性化合物のいずれもが、10−8Mでは活性を示さなかったが、10−7Mでは、全てが9−シス−RAと同様の活性を示した。次に細胞質レチノール結合タンパク質II(CRBPII)のRARE30を有するリポーター遺伝子を用いた。これは、RXRホモダイマーによってのみ活性化されるが、RAR/RXRヘテロダイマーによっては活性化されない応答エレメントである。この応答エレメントにより得られた誘導プロフィールは、TREpal応答物に似ていた(図7b)。従って、合成レチノイドのSR11203、SR11217、SR11234、SR11235、SR11236、およびSR11237は、RXRαの効果的なアクティベーターのようであった。化合物の構造は、以下の通りである:
【0198】
【化57】

この一連のレチノイドについての活性ランキングは、TREpalおよびCRBPIIリポーター遺伝子の両者について同じであった。ケタールSR11237が最も活性であり、続いてイソプロピリデニルレチノイドSR11217、ヘミチオケタールSR11235およびチオケタールSR11234であった。ジチアンSR11203およびジオキサンSR11236は最も低い活性を有した。構造分析により、これらのレチノイドは、9−シス−RAの親油性の頭部およびカルボキシル末端の空間的配向と類似の空間的配向を有し、しかも、活性がテトラヒドロナフタレンおよびフェニル環系に結合している置換基(CRR)の長さおよび体積に関係し得ることが示された。
【0199】
実施例Iに、RXRαホモダイマー形成を誘導することにより、9−シス−RAがRXRαを特異的に活性化することを示したので、ゲル遅延アッセイを用いて、TREpalへのレチノイド誘導RXRホモダイマー結合を研究した。簡単に言えば、ゲル遅延アッセイを、本質的には先に記載33のように行った。インビトロで翻訳したレセプターレセプタータンパク質(翻訳効率に依存して1〜5ml)を、32P標識オリゴヌクレオチドと20mlの反応混合物(10mM Hepes緩衝液、pH 7.9、50mM KCl、1mM DTT、2.5mM MgCl、10%グリセロール、および1mgのポリ(dI−dC)含有)中で、25℃、20分間インキュベートした。次いで、反応混合物を、0.5×TBE(1×TBE=0.089M トリスボレート、0.089M ホウ酸、および0.002M EDTA)含有の5%非変性ポリアクリルアミドゲル上にロードした。
【0200】
9−シス−RAの非存在下で、RXRはこの応答エレメントに結合しなかった。レチノイドSR11217、およびSR11237は、濃度に依存する様式で、応答エレメントへのRXRホモダイマー結合を誘導した。レチノイド11203(これは、一時的なトランスフェクションアッセイにおいて弱いアクティベーターとしてふるまった)はまた、弱いRXR結合のみを誘導した。SR11231(これは、RXRホモダイマーを活性化しなかった)はまた、RXRホモダイマー結合を誘導し得なかった。同様の結果が、CRBPII−RAREおよびApoAI−RAREで得られた。従って、本明細書中において、RXRαを活性化する合成レチノイドのクラスを、ホモダイマー形成およびDNAへの結合により規定した。
【0201】
重要な問題は、9−シス−RA様のこれらのRXR活性化化合物がまた、RAR/RXRヘテロダイマーを活性化し得るか、あるいは、それらが真にRXR選択性であり得るか否かであった。この問題を分析するために、以下のいずれかを保持する4つの異なるリポーター構築物を用いた:i)ラット細胞質レチノール結合性タンパク質I(CRBPI)遺伝子RARE38であり、これだけがRAR/RXRヘテロダイマーにより結合され活性化される;ii)RARβ2遺伝子プロモーターRARE36、37、これはヘテロダ
イマーにより最も効率的に結合されるが、RXRホモダイマーによってもまたある程度までは活性化される;iii)CRBPII−RARE、これはRXRホモダイマーによってのみ活性化され、そしてRARはRXR活性を抑制する30;iv)アポリポプロテインAI(apoAI)遺伝子RARE31であり、これはRAR/RXRヘテロダイマーにより、およびRXRホモダイマーにより結合され、そして活性化される。4つの異なるリポーター構築物を、RARα、RARβ、RXRαで、またはRXRαとRARαで一緒に同時トランスフェクトした51。レチノイドを、5×10−7の濃度で分析した(示した投与量でほとんど完全な誘導が得られた(図7))。
【0202】
CV−1細胞を、100ngのリポータープラスミドのa)CRBPI−tk−CAT、b)βRARE−tk−CAT、c)CRBPII−tk−CAT、およびd)apoAI−tk−CATで、同時トランスフェクトした。レチノイドを、5×10−7Mで適用した。代表的な実験の結果を示す。
【0203】
RXR特異的レチノイドは、RXRホモダイマーを活性化するのみであるが、RAR/RXRヘテロダイマーを活性化しない点で、9−シス−RA(またはRA)とは著しく異なって作用する。9−シス−RAとのように、SR11217およびSR11237の両者は、CRBPII−RARE(すなわち、RXRホモダイマーによってのみ顕著に活性化されるRARE)の強いアクティベーターである。しかし、9−シス−RAに比べて、それらは、RAR/RXRヘテロダイマーによってのみ活性化されるCRBPI−RAREを誘導しなかった。従って、SR11217およびSR11237は、CRBPII−RAREについて、9−シス−RAに非常に似た作用をするが、それらはCRBPI−RAREについては応答を示さず、ここでは、9−シス−RAは最適のアクティベーターである。βRAREは、SR11217およびSR11237によりわずかに活性化され、この応答エレメントについてのRXRホモダイマーの比較的低い親和性と一致した。apoAI−RAREは、9−シス−RAの存在下で、RAR/RXRヘテロダイマーにより最も効果的に活性化された。CV−1細胞中で見出された活性に加えて、レチノイドSR11217およびSR11237により、顕著なそしてRXR特異的な活性化がまた、種々の他の細胞株(Hep G2細胞を含む)においても観察され、ここでは、特に高い応答が観察された。RARαおよびRARβは、同時トランスフェクトしただけの場合は、試験した任意の応答エレメントについても、任意の合成レチノイドによっても顕著に活性化されなかった。同様のネガティブな結果がRARγについて得られた。RARαおよびβは、CV−1細胞中で、内因性のRXR様タンパク質とヘテロダイマーを形成すると仮定される。従って、これらのヘテロダイマーはまた、合成レチノイドに非応答性である。
【0204】
これらのデータは、新規なクラスのレチノイド類を同定したことを示す。これらのレチノイド類は、RXRホモダイマー形成を特異的に誘導し、そして特異的に応答エレメントについてRXRホモダイマーを活性化するが、RAR/RXRヘテロダイマーを活性化しない。これらのレチノイド類は、RXR選択的応答経路の特異的な活性化を可能にするが、RAR依存性応答経路の誘導はしない。これらのレチノイド類は、現在用いられているRA異性体または他のレチノイドに比べさらに制限された生理学的応答を提供する。
【0205】
実施例III
【0206】
【化58】

(a.)メチル4−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)カルボニル]ベンゾエート():
1.5mLの1,2−ジクロロメタン中の塩化アルミニウム(1.13g、8.5mmol)の懸濁液に、0℃で、アルゴン雰囲気下にて、6mLの1,2−ジクロロエタン中の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,4,4−テトラメチルナフタレン(1.45g、7.7mmol)(Kagechika,H.ら、J.Med.Chem.31:2182(1988))および4−カルボメトキシベンゾイルクロライド(1.56g、7.9mmol)の溶液を添加した(4−カルボメトキシベンゾイルクロライドは、Aldrichから容易に入手可能なモノメチルテレフタレートから、1工程(SOCl、DMF)により得た)。得られた溶液を室温まで昇温し、その後16時間撹拌した。反応混合物を、氷水上に注ぎ、40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。溶液を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して橙色の固体(4.5g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(50%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物を、淡黄色の固体(2.07g)として得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により、所望の生成物を、白色の結晶性固体として得た(1.96g、50%):融点146〜148℃;R 0.14(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0207】
(b.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−ジチアン():
3mLのクロロホルム中のケト−エステル(97mg、0.277mmol)の溶液に、0℃で、アルゴン雰囲気下にて、1,3−プロパンジオール(33μL、36mg、0.332mmol)の溶液、続いて三フッ化ホウ素エーテル錯体(17μL、0.140mmol)を添加した。得られた混合物を、0℃で1時間撹拌し、次いで一晩室温まで温めた。反応混合物を、飽和NaCO水溶液中に注ぐことによりクエンチし、そしてジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して黄色の固体(0.108g)を得た。酢酸エチル/ヘキサンからの再結晶により、所望のジチアンを、白色の結晶性固体として得た(0.087g、71%):融点195〜197℃;R 0.32(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0208】
(c.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチルナフタレン−2−イル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−ジチアン():
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル(85mg、0.193mmol)の懸濁液に、0.024gの水酸化カリウムを添加し、そして混合物を50℃でこの物質が溶解するまで2時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液で酸性にし
、次いで80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ベンゼン/ヘキサンからの再結晶により、所望の酸を、白色粉末として得た(0.076g、92%):融点229〜231℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0209】
実施例IV
【0210】
【化59】

(a.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−ジチオラン():
ジクロロメタン(2mL)中のケト−エステル(80mg、0.228mmol)の溶液に、0℃で、アルゴン雰囲気下にて、ジクロロメタン(0.5mL)中のエタンジチオール(26mg、0.27mmol)、続いて三フッ化ホウ素エーテル錯体(0.04mL、0.3mmol)を添加した。得られた混合物を、0℃で1時間撹拌し、次いで一晩室温まで温めた。反応混合物を、飽和NaCO水溶液中に注ぐことによりクエンチし、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(30;40%CHCl/ヘキサン)により、所望のジチアンを白色固体として得た(0.088g、90%):融点105〜107℃;R 0.33(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0211】
(b.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−ジチオラン():
75%水性メタノール溶液(3mL)中のエステル(85mg、0.199mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.11g)を添加し、そして混合物を70℃でこの物質が溶解するまで1時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液で酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン−ヘキサンからの再結晶により、所望の酸を、白色粉末として得た(0.064g、79%):融点218〜221℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0212】
実施例V
【0213】
【化60】

(a.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−ジオキソラン():
1mLのベンゼン中のケト−エステル(80mg、0.228)の溶液に、エチレングリコール(1mL)、1,2−ビス(トリメチルシリルオキシ)エタン(2mL)、および触媒量の−TsOHを添加した。反応混合物を4時間還流加熱し、次いで室温まで冷却した。溶液を飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(50%CHCl/ヘキサン)により、所望のケタールを白色固体として得た(0.082g、91%):融点145〜147℃;R 0.16(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0214】
(b.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−ジオキソランアンモニウム塩(10):
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル(50mg、0.127mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.1g)を添加し、そして反応混合物を70℃でこの物質が溶解するまで1時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液で酸性にし、次いで80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。この酸を、アルゴン雰囲気下にてジクロロメタン(4mL)に溶解し、そして溶液中にアンモニアガスを凝縮し、それを5分間、−33℃で撹拌した。溶液を20分間室温まで温め、アンモニアをエバポレートし、そして濃縮してアンモニウム塩10を白色粉末として得た(47mg、93%):融点259〜261℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0215】
実施例VI
【0216】
【化61】

(a.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−オキサチオラン(11):
2mLのベンゼン中のケト−エステル(88mg、0.251)の溶液に、2−メルカプトエタノール(1mL)、および触媒量の−TsOHを添加した。反応混合物を一晩還流加熱し、次いで室温まで冷却した。溶液を、飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(50%CHCl/ヘキサン)により、所望のケタール11を白色固体として得た(0.09g、87%):融点122〜124℃;R 0.24(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0217】
(b.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−オキサチオラン(12):
75%水性メタノール溶液(3mL)中のエステル11(64mg、0.156mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.12g)を添加し、そして反応混合物を75℃でこの物質が溶解するまで1時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液で酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン−ヘキサンからの再結晶により、所望の酸12を、白色粉末として得た(0.06g、97%):融点216〜217.5℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0218】
実施例VII
【0219】
【化62】

(a.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−ジオキサン(13):
5mLのベンゼン中のケト−エステル(150mg、0.428mmol)の溶液に、1,3−プロパンジオール(1.5mL)、および触媒量の−TsOHを添加した。反応混合物を、一晩還流加熱し、次いで室温まで冷却した。溶液を飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(50%CHCl/ヘキサン)により、所望のケタール13を白色固体として得た(0.164g、94%):融点157〜159℃;R 0.24(5%酢酸エチル/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0220】
(b.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−ジオキサンアンモニウム塩(15):
75%水性メタノール溶液(3mL)中のエステル13(0.1g、0.245mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.12g)を添加した。反応混合物を80℃でこの物質が溶解するまで30分間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液で酸性にし、次いで80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体14を得た。酸14を、アルゴン雰囲気下にてジクロロメタン(4mL)に溶解した。アンモニアガスをフラスコ中に凝縮し、そして混合物を5分間、−33℃で撹拌した。溶液を、20分間で室温まで温め、アンモニアをエバポレートし、そして濃縮してアンモニウム塩15を、白色粉末として得た(0.238g、97%):融点228〜230℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0221】
実施例VIII
【0222】
【化63】

(a.)メチル4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エテニル]ベンゾエート(16):
5mLのベンゼン中のメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.78g、2.18mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、ヘキサメチルジシラジドカリウムの0.5Mトルエン溶液(4.4mL、2.2mmol)を添加し、そして黄色の溶液を5分間撹拌した。7mLのベンゼン中のケトエステル(0.51g、1.455mmol)の溶液を添加し、そして橙色の溶液を、1時間室温で撹拌した。反応混合物を、飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、シリカゲルのプラグを通して濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(30%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物16を白色固体として得た(0.405g、80%):融点117〜118℃;R 0.2(25%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0223】
(b.)[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−(4−カルボメトキシフェニル)]シクロプロパン(17):
10mLのベンゼン中のエテン16(0.130g、0.373mmol)の溶液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、ジエチル亜鉛の1Mヘキサン溶液(5.6mL、5.6mmol)を添加し、そして反応混合物を60℃まで加熱した。2mLのベンゼン中のジヨードメタン(0.48mL、6.0mmol)を5分間滴下した。反応混合物を室温まで冷却し、そして酸素を3時間通じた。濁った溶液を、40%酢酸エチル/ヘキサンで希釈し、そして塩酸水溶液、水、および飽和NaHCO水溶液で洗浄した。有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(30%;40%CHCl/ヘキサン)により、所望の生成物17を白色固体として得た(0.08g、59%):融点100〜102℃;R 0.36(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0224】
(c.)[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−(4−カルボキシフェニル)]シクロプロパン(18)
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル17(60mg、0.166mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.12g)を添加し、そして反応混合物を70℃でこの物質が溶解するまで1時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液で酸性にし、次いで80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶により、所望の酸18を、白色粉末として得た(0.055g、95%):融点333〜335℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて
確認した。
【0225】
実施例IX
【0226】
【化64】

(a.)メチル4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−メチル−1−プロペニル]ベンゾエート(19):
3mLのベンゼン中のイソプロピルトリフェニルホスホニウムヨージド(0.35g、0.807mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、トルエン(1.8mL、0.89mmol)中のヘキサメチルジシラジドカリウムの0.5M溶液を添加し、そして赤色の溶液を、5分間撹拌した。3mLのベンゼン中のケト−エステル(0.169g、0.481mmol)を添加し、そして、約4mLのベンゼンが蒸発する間、赤色の溶液を110℃まで加熱した。1時間後、反応混合物を、40%の酢酸エチル/ヘキサンで希釈し、そして飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。有機層を無水MgSOで乾燥し、シリカゲルのプラグを介して濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(40%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物19を白色粉末として得た(0.128g、71%):R 0.44(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0227】
(b.)4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−2−メチル−1−プロペニル]安息香酸(20):
75%水性メタノール溶液(3mL)中のエステル19(0.115g、0.304mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.12g)を添加した。混合物を、この物質が溶解するまで1時間、75℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して所望の酸20を白色粉末として得た(0.11g、99%):融点204〜206℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0228】
実施例X
【0229】
【化65】

(a.)メチル4−[(4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾピラン−6−イル)カルボニル]ベンゾエート(22)(Maignan,J.ら、BE 1,000,195):
1mLの1,2−ジクロロエタン中の塩化アルミニウム(1.6g、12mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて9mLの1,2−ジクロロエタン中の4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾピラン21(1.5g、9.25mmol)(Dawson,M.I.ら、J.Med.Chem.27:1516−1531(1984))および4−カルボメトキシベンゾイルクロライド(1.79g、9mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、氷水上に注ぎ、40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。溶液を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して黄色の固体(3.24g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(80%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物22を白色粉末として得た(1.42g、49%):融点129〜131℃;R 0.26(CHCl)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0230】
(b.)[2−(4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾピラン−6−イル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−ジチアン(23):
ジクロロメタン(3mL)中のケト−エステル22(0.152g、0.469mmol)の溶液に、0℃でアルゴン雰囲気下にて1,3−プロパンジチオール(0.061g、0.563mmol)を添加し、続いて三フッ化ホウ素エーテル錯体(0.07mL、0.57mmol)を添加した。得られた混合物を0℃で1時間、そして常温で一晩撹拌した。反応混合物を、飽和NaCO水溶液に注いでクエンチし、次いで、40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮してオイルを得た。フラッシュクロマトグラフィー(80%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望のジチアン23を白色固体として得た(0.175g、90%):融点103〜105℃;R 0.2(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0231】
(c.)[2−(4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾピラン−6−イル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−ジチアン(24):
75%水性メタノール溶液(4mL)中のジチアン23(0.145g、0.349mmol)の懸濁液に、水酸化ナトリウム1粒(0.106g)を添加した。反応混合物を、この物質が溶解するまで1時間、70℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン−ヘキサンから再結晶することにより、所望の酸24を白色粉末として得た(0.
127g、90%):融点204〜205℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0232】
実施例XI
【0233】
【化66】

(a.)メチル4−[(4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾチオピラン−6−イル)カルボニル]ベンゾエート(26):
1mLの1,2−ジクロロエタン中の塩化アルミニウム(1.65g、9.25mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下で、9mLの1,2−ジクロロエタン中の4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾチオピラン25(1.65g、9.25mmol)(Waugh,K.M.ら、J.Med.Chem.28:116−124(1985))および4−カルボメトキシベンゾイルクロライド(1.8g、9.06mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、一晩撹拌し、氷水上に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。溶液を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して緑色の固体(2.1g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(80%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物26を白色粉末として得た(1.23g、40%):融点118〜120℃;R 0.35(CHCl)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0234】
(b.)[2−(4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾチオピラン−6−イル)−2−(4−カルボメトキシフェニル)]−1,3−ジチアン(27):
ジクロロメタン(3mL)中のケト−エステル26(0.12g、0.353mmol)の溶液に、0℃でアルゴン雰囲気下にて1,3−プロパンジチオール(0.06mL、0.53mmol)を添加し、続いて三フッ化ホウ素エーテル錯体(0.07mL、0.57mmol)を添加した。得られる混合物を0℃で1時間撹拌し、そして室温で一晩温めた。反応混合物を、飽和NaCO水溶液中に注いでクエンチし、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮してオイルを得た。フラッシュクロマトグラフィー(80%CHCl/ヘキサン)により、所望のジチアン27を白色固体として得た(0.145g、96%):融点164〜166℃;R 0.27(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0235】
(c.)[2−(4,4−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2−1−ベンゾチオピラン−6−イル)−2−(4−カルボキシフェニル)]−1,3−ジチアン(28):
75%水性メタノール溶液(4mL)中のジチアン27(0.1g、0.232mmo
l)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.12g)を添加した。反応混合物を、この物質が溶解するまで1時間、75℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により、所望の酸28を白色粉末として得た(0.089g、92%):融点211〜212.5℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0236】
実施例XII
【0237】
【化67】

(a.)メチル[4−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)カルボニル]ベンゾエート(30):
30mLの1,2−ジクロロエタン中の塩化アルミニウム(1.10g、8.25mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下で、15mLの1,2−ジクロロエタン中の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,4,4,6−ペンタメチルナフタレン29(1.52g、7.5mmol)(Kagechika,H.ら、J.Med.Chem.31:2182(1988))および4−カルボメトキシベンゾイルクロライド(1.57g、7.87mmol)の溶液を添加した。反応混合物を一晩撹拌し、氷水上に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。溶液を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して褐色の固体(2.56g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(60%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物30を白色の結晶性固体として得た(1.733g、64%):融点146〜149℃;R 0.11(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0238】
(b.)[4−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)カルボニル]安息香酸(31):
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル30(0.120g、0.329mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム(0.055g)を添加した。反応混合物を、この物質が溶解するまで1時間、60℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た(0.109g)。ベンゼン/ヘキサンからの再結晶により、31を白色の結晶性固体として得た(0.102g、89%):融点209〜212℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0239】
実施例XIII
【0240】
【化68】

(a.)メチル4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)−1−エテニル]ベンゾエート(32):
1mLのベンゼン中のメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.196g、0.55mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、トルエン(1.2mL、0.6mmol)中のヘキサメチルジシラジドカリウムの0.5M溶液を添加し、そしてこの黄色溶液を5分間撹拌した。1.5mLのベンゼン中のケト−エステル30(0.1g、0.274mmol)の溶液を添加し、そして橙色の溶液を室温で3時間撹拌した。反応混合物を、40%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカゲルのプラグを介して濾過した。濾液を濃縮して、固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(30%;40%ジクロロメタン/ヘキサン)により、所望の生成物32を白色の結晶性固体として得た(0.077g、78%):融点167〜168℃;R 0.4(50%ジクロロメタン/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0241】
(b.)[4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)−1−エテニル]安息香酸(33):
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル32(0.058g、0.16mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.1g)を添加した。混合物を、この物質が溶解するまで1時間、70℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により、所望の酸33を白色の結晶性固体として得た(42mg、91%):融点230〜231℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0242】
実施例XIV
【0243】
【化69】

(a.)5−カルボエトキシチオフェン−2−カルボン酸(35):
10mLのTHF中のジイソプロピルアミン(3.6mL、25.75mmol)の溶液に、−78℃でアルゴン雰囲気下にて、ヘキサン(16.1mL、25.75mmol)中の−ブチルリチウムの1.6M溶液を添加した。混合物を15分間撹拌し、そして5mLのTHF中の2−チオフェンカルボン酸34(1.5g、11.705mmol)(2−チオフェンカルボン酸34はAldrichより容易に入手可能である)の溶液を徐々に添加した。混合物を15分間撹拌し、そしてエチルクロロホルメート(2.7mL、28.33mmol)を添加した。混合物を−78℃で30分間撹拌し、そして次の30分間で0℃まで昇温した。反応混合物を飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、そして80%酢酸エチル/ヘキサンで洗浄した。水層を酢酸で酸性にし、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して黄色の固体を得た。フラッシュクロマトグラフィーにより、所望の酸35(1.76g、75%)を白色固体として得た:融点は300℃を超える。生成物の構造もまた、IR、
NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0244】
(b.)5−カルボエトキシチオフェン−2−カルボニルクロライド(36):
ジクロロメタン(20mL)中の酸35(0.64g、3.2mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、ジクロロメタン(2.4mL、4.8mmol)中の(COCl)の2.0M溶液およびDMF2滴を添加し、1時間撹拌した。過剰の(COCl)およびジクロロメタンを減圧下で除去し、そして粘性の明るい黄色の生成物を、一晩乾燥し、所望のベンゾイルクロライド36を黄色の固体として得た。生成物の構造もまた、IR、およびH NMR分光法を用いて確認した。
【0245】
(c.)エチル5−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)カルボニル]チオフェン−2−カルボキシレート(37):
1mLの1,2−ジクロロエタン中の塩化アルミニウム(0.5g、3.75mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、3.5mLの1,2−ジクロロエタンの1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,4,4,6−ペンタメチルナフタレン29(0.712g、3.52mmol)および36(0.7g、3.2mmol)の溶液を滴下した。反応混合物を一晩撹拌し、次いで、氷水上に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。溶液を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して黄色固体(1.5g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(50%ジクロロメタン/ヘキサン)により、明るい黄色の
固体を得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により、37を白色の結晶性固体として得た(0.62g、50%):融点111〜112℃;R 0.2(50%CHCl/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0246】
(d.)5−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)カルボニル]チオフェン−2−カルボン酸(38):
75%水性メタノール溶液(3mL)中のエステル37(50mg、0.13mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム1粒(0.1g)を添加した。反応混合物を、この物質が溶解するまで1.5時間、70℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た(46mg)。メタノールからの再結晶により、所望の酸38を白色の結晶性固体として得た(42g、91%):融点214〜215℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0247】
実施例XV
【0248】
【化70】

(a.)2−アセチル−3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン(39):
1mLの1,2−ジクロロエタン中の塩化アルミニウム(0.96g、7.17mmol)の懸濁液に、室温でアルゴン雰囲気下にて、9mLの1,2−ジクロロエタン中の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,1,4,4,6−ペンタメチルナフタレン29(1.2g、5.93mmol)およびアセチルクロライド(0.51g、6.52mmol)の溶液を添加した。反応混合物を1時間撹拌し、次いで、氷水上に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、飽和NaHCO水溶液および塩水で洗浄した。溶液を、無水MgSOで乾燥し、シリカゲルのプラグを介して濾過し、そ
して濃縮して白色固体39を得た(1.45g、99%):融点54〜57℃;R 0.62(10%酢酸エチル/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0249】
(b.)エチル()−4−ヒドロキシ−3−メチル−6−オキソ−6−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−2−ヘキセノエート(41):
7mLのTHF中のジイソプロピルアミン(0.5mL、3.52mmol)の溶液に、−78℃でアルゴン雰囲気下にて、ヘキサン(2.2mL、3.52mmol)中の−ブチルリチウムの1.6M溶液を添加した。混合物を25分間撹拌し、そして4mLのTHF中のケトン39(0.78g、3.2mmol)の溶液を徐々に添加した。混合物を20分間撹拌し、そして3mLのTHF中のエチル()−3−ホルミル−2−ブテノエート40(0.45g、3.2mmol)(エチル()−3−ホルミル−2−ブテノエート40はFlukaより容易に入手可能である)の溶液を徐々に添加した。混合物を−78℃で35分間撹拌し、飽和NHCl水溶液中に注ぎ、そして40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して明るい黄色の固体を得た。フラッシュクロマトグラフィーにより、所望のアルコール41を白色の結晶性固体として得た(0.98g、80%):融点126〜128℃;R
0.13(10%酢酸エチル/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0250】
(c.)エチル(2,4)−6−オキソ−6−(3,5,5,8,8−ペンタメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−2,4−ヘキサジエノエート(42):
8mLのTHF中の41(0.33g、0.85mmol)の溶液に、0℃で、トリエチルアミン(0.5mL、4mmol)および2mLのTHF中のメチルスルホニルクロライド(0.106g、0.93mmol)の溶液を徐々に添加した。混合物を0℃で1時間撹拌し、そして30分間室温まで昇温した。混合物を、10%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカゲルのプラグを介して濾過した。濾液を濃縮して、42を明るい黄色の固体として得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により、所望の酸42を黄色の粉末として得た(0.3g、95%):融点101〜102℃;R 0.42(10%酢酸エチル/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0251】
(d.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボエトキシ−2,4−3−メトキシブタジエニル)]−1,3−ジオキソラン(43):
2mLのベンゼン中のケト−エステル42(0.12g、0.33mmol)の溶液に、エチレングリコール(0.8mL)、1,2−ビス(トリメチルシリルオキシ)エタン(2mL)および触媒量の−TsOHを添加した。反応混合物を2日間還流加熱し、次いで、室温まで冷却した。溶液を、飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、40%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(5%酢酸エチル/ヘキサン)により、所望のケタール43を無色のオイルとして得た(0.109g、80%):R 0.43(10%酢酸エチル/ヘキサン)。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0252】
(e.)[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)−2−(4−カルボキシ−2,4−3−メチルブタジエニル)]−1,3−ジオキソラン(44):
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル43(30mg、0.073mmol)の溶液に、水酸化カリウム1粒(0.1g)を添加した。反応混合物を、この物質が溶解するまで0.5時間、60℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、1Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、80%酢酸エチル/ヘキサンで抽出した。合わせた有機層を、無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ジクロロメタン/ヘキサンからの再結晶により、所望の酸44を白色の結晶性固体として得た(27mg、96%):融点189〜190℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0253】
実施例XVI
【0254】
【化71】

)および()−4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)プロペン−1−イル]安息香酸(46および47):
1mLのTHF中のエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(160mg、0.43mmol)の懸濁液に、0℃でアルゴン雰囲気下にて、トルエン(0.95mL、0.47mmol)中のヘキサメチルジシラジドカリウムの0.5M溶液を添加し、そして反応混合物を、5分間撹拌した。0.8mLのTHF中のケト−エステルの溶液(100mg、0.28mmol)を添加し、そして橙色の溶液を室温で3時間撹拌した。反応混合物を20%酢酸エチル/ヘキサンで希釈し、そして20%酢酸エチル/ヘキサンを用いてシリカのプラグを介して濾過した。溶液を濃縮して黄色のゴム状物を得た。クロマトグラフィー(38%ジクロロメタン/ヘキサン)により、45の混合物を淡黄色のゴム状物として得た(51mg、50%):R 0.43、0.47(40%CHCl/ヘキサン)。分取HPLC(Waters Radialpak Novapakシリカ、8mm×10cm、2%エーテル/ヘキサン、1.0mL/分、260nm)により、無色のガム状物45a(20mg、t=9.8分)および白色の固体45b(25mg、t=10.8分)を得た。
【0255】
0.5mLのエタノール中のエステル45a(20mg)の懸濁液に、水酸化カリウム(0.2g)の40%水溶液を添加し、そして反応混合物を、この物質が溶解するまで2時間、70℃でアルゴン雰囲気下にて撹拌した。次いで、溶液をアルゴン雰囲気下で濃縮した。残渣を室温まで冷却し、1Nの硫酸水溶液を用いてpH2〜3に酸性にし、次いで、濾過した。沈殿物を繰り返し水(6回×1mL)で洗浄し、そして乾燥して白色粉末(20mg)を得た。酢酸エチル/ヘキサンからの再結晶により、酸46を白色粉末として得た(16mg、全収率16%):融点212℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。46の位置化学(regiochemistry)をH nOe NMR分光法により確認した。
【0256】
エステル45bを上記のように加水分解して25mgの淡黄色の固体を得た。酢酸エチ
ル/ヘキサンからの再結晶により、酸47を淡黄色の粉末として得た(21mg、全収率20%):融点229℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。47の位置化学をH nOe NMR分光法により確認した。
【0257】
実施例XVII
【0258】
【化72】

(a.)4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エテニル]安息香酸(48):
75%水性メタノール溶液(2mL)中のエステル16(94mg、0.27mmol)の懸濁液に、水酸化カリウム(0.045g)を添加し、そして反応混合物を、この物質が溶解するまで14時間、50℃で撹拌した。溶液を室温まで冷却し、2Nの塩酸水溶液を用いて酸性にし、次いで、エーテルで抽出した。合わせた有機層を、水および塩水で洗浄した。次いで、有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮して白色固体を得た。ベンゼン−ヘキサンからの再結晶により、所望の酸48を白色の結晶性固体として得た(0.074g、82%):融点201〜204℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0259】
(b.)4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エチル]安息香酸(49):
オレフィン48(0.0105g、0.0314mmol)を、室温および大気圧下で、チャコール担持5%パラジウムで水素化した。1当量(0.7mL)の水素を取り込ませた後、触媒を小さなセライトパッドを介して濾過することにより取り除いた。溶媒を真空下で取り除き、粗製の酸を白色固体として得た(0.019g)。ベンゼン−ヘキサンからの再結晶により、所望の酸49を白色の結晶性固体として得た(0.0078g、74%):融点186〜188℃。生成物の構造もまた、IR、H NMRおよび質量分析を用いて確認した。
【0260】
上記の実施例は、本発明を限定するのではなく、例示するためものであることが意図される。それらが使用され得る代表的なものである一方で、当業者に公知の他の手順が、代わりに用いられ得る。
【0261】
本出願を通して、種々の刊行物が番号により援用される。それにより、それらの刊行を完全に引用する。これらの刊行物における開示は全体として、本発明が属する当該分野の状態をより充分に記載するために、本出願に参考として援用される。
【0262】
【化73−1】

【0263】
【化73−2】

【0264】
【化73−3】

【0265】
【化74−1】

【0266】
【化74−2】

【0267】
【化74−3】

【0268】
【化74−4】

【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、9−シス−レチノイン酸がTREpalに関してRXRホモダイマー結合を誘導することを示す。
【0270】
(a)インビトロで合成されたRXRαを、インビトロ合成TRαまたはRARβの存在下または非存在下のいずれかで、示されたホルモン(10−7M 9−シス−RA;10−6M RA;10−6M T)とともに(+)またはなし(−)のいずれかで室温で30分間インキュベートした。このプレインキュベーションの後、反応混合物をプローブとして32P−標識TREpalを使用してゲル遅延アッセイにより分析した。レーン1は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を表す。白三角は、非プログラム
化網状赤血球溶解液で観測される非特異的複合体を示す。黒三角は、特異的TRα−RXRαヘテロダイマー結合を示す。矢印は、特異的RXRαホモダイマー結合を示す。RXRα/RARβヘテロダイマーは、RXRαホモダイマーと同じ位置に移動する。比較のために、RARβ結合に関する9−シス−RAの影響を示す。
【0271】
(b)9−シス−RAで誘導されたDNA結合複合体がRXRαタンパク質を含むことを測定するために、フラッグ(Flag)−RXRα(F−RXR)(特異的抗フラッグモノクローナル抗体によって認識され得る、アミノ末端に8個のアミノ酸のエピトープ(フラッグ)を含むRXRα誘導体である)を構築した。インビトロ合成F−RXRαを、特異的抗フラッグ抗体(αF)または非特異的プレ免疫血清(NI)のいずれかの存在中で10−7M 9−シス−RAとともに(+)またはなし(−)のいずれかで室温で30分間インキュベートした。次に、9−シス−RAの存在下でF−RXRα結合に関する抗フラッグ抗体の影響を、プローブとして32P−標識TREpalを用いるゲル遅延アッセイにより分析した。レーン1は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を示す(白三角)。矢印は、特異的F−RXRαホモダイマーおよびRAR−RXRヘテロダイマー結合を示す。菱形は、抗フラッグ抗体で上にシフトしたF−RXRホモダイマーを示す。
【図2−1】図2は、TPEpalに関する9−シス−RAで誘導されたRXRホモダイマーの特徴付けを示す。
【0272】
(a)9−シス−RAで誘導されたRXRαホモダイマーの協同的結合。10−7M 9−シス−RAの存在下または非存在下で異なるレセプター濃度でのRXR−DNA複合体の形成を、プローブとして標識TPEpalを使用するゲル遅延アッセイにより分析した。白三角は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を示す。矢印は、特異的にRXRが結合した複合体を示す。
【0273】
【図2−2】(b)9−シス−RAの存在下の異なるレセプター濃度でのRXR結合複合体の定量。図2(a)に示した9−シス−RA存在下のRXR結合複合体を含有するゲルスライスを切除し、そしてシンチレーションカウンターで計測しそしてプロットした。
【0274】
【図2−3】(c)TREpalに関するRXRホモダイマーの9−シス−RA濃度依存性結合。等量のインビトロ合成RXRタンパク質を、9−シス−RAの示された濃度を用いてインキュベートした。次に、反応混合物をプローブとして標識TPEpalを使用するゲル遅延アッセイにより分析した。白三角は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を示す。矢印は、特異的にRXRが結合した複合体を示す。
【図3−1】図3は、9−シス−RAが、RXR特異的応答エレメントに関してRXRホモダイマー結合を誘導することを示す。
【0275】
(a)本研究で使用した核レセプター結合エレメント。これらのオリゴヌクレオチドを、小文字で示したように両端の適切な制限部位を有して合成した。AGG/TTCAモチーフに緊密に関連する配列を矢印で示す。
【図3−2】(b)ApoAI−RAREまたはCRBPII−RAREのRXRホモダイマー結合に関する9−シス−RAの影響を、本質的に図1aに記載されるように分析した。レーン1は非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を表し、これは白三角により示される。黒三角は、RAR/RXRヘテロダイマー複合体を示す。矢印は特異的にRXRが結合した複合体を示す。
【図4−1】図4は、RXRホモダイマーの応答エレメント特異的結合を示す。RA特異的応答エレメント(a)、T特異的応答エレメント(b)、またはエストロゲン特異的応答エレメント(c)上のRXR結合に関する9−シス−RAの影響を、図1aで記載されたようなゲル遅延アッセイにより分析した。比較として、RXR/RARヘテロダイマー(a)、RXR/TRヘテロダイマー(b)またはエストロゲン(c)の結合を示す。白三角は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を示す。黒三角形は、RAR/RXRヘテロダイマー複合体(a)、TR/RXRヘテロダイマー複合体(b)またはER複合体(c)を示す。
【図4−2】図4は、RXRホモダイマーの応答エレメント特異的結合を示す。RA特異的応答エレメント(a)、T特異的応答エレメント(b)、またはエストロゲン特異的応答エレメント(c)上のRXR結合に関する9−シス−RAの影響を、図1aで記載されたようなゲル遅延アッセイにより分析した。比較として、RXR/RARヘテロダイマー(a)、RXR/TRヘテロダイマー(b)またはエストロゲン(c)の結合を示す。白三角は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を示す。黒三角形は、RAR/RXRヘテロダイマー複合体(a)、TR/RXRヘテロダイマー複合体(b)またはER複合体(c)を示す。
【図4−3】図4は、RXRホモダイマーの応答エレメント特異的結合を示す。RA特異的応答エレメント(a)、T特異的応答エレメント(b)、またはエストロゲン特異的応答エレメント(c)上のRXR結合に関する9−シス−RAの影響を、図1aで記載されたようなゲル遅延アッセイにより分析した。比較として、RXR/RARヘテロダイマー(a)、RXR/TRヘテロダイマー(b)またはエストロゲン(c)の結合を示す。白三角は、非プログラム化網状赤血球溶解液の非特異的結合を示す。黒三角形は、RAR/RXRヘテロダイマー複合体(a)、TR/RXRヘテロダイマー複合体(b)またはER複合体(c)を示す。
【図5】図5は、RXRホモダイマー化が溶液中で起こることを示す。35S−標識インビトロ合成RXRαタンパク質を、示されたように応答エレメントまたは化学的架橋剤DSPの存在下または非存在下のいずれかで、部分精製された細菌発現フラッグ−RXR(F−RXR)(+)または同様に調製されたグルタチオントランスフェラーゼ制御タンパク質(−)とともにインキュベートした。インキュベーション後、抗フラッグ抗体(F)または非特異的プレ免疫血清(NI)のいずれかを添加した。10−7M 9−シス−RAを作業プロセスの間維持した。10−7M 9−シス−RAの存在下で免疫複合体を洗浄し、SDS試料緩衝液中で沸騰し、そして10% SDS−PAGE上で分離した。35S−標識インビトロ合成RXRαタンパク質を右のパネルに示した。
【図6−1】図6は、RXRおよびRARαの転写活性化を示す:天然応答エレメントに関する9−シス−RAによるRXRヘテロダイマー。100ngのレポータープラスミド(a)TREpal−tk−CAT (b)βRARE−tk−CAT (c)ApoAI−RARE−tk−CAT および(d)CRBPI−RARE−tk−CATならびに5ngの空(empty)pECE発現ベクター、pECE−RXRα、pECE RARαまたは示されたような両者の組み合わせでCV−1細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、ホルモンなし(白棒)、10−7M RA(斜線棒)、または10−7M 9−シス−RA(濃斜線棒)で処理した。2回行った代表的な実験の結果を示す。
【図6−2】図6は、RXRおよびRARαの転写活性化を示す:天然応答エレメントに関する9−シス−RAによるRXRヘテロダイマー。100ngのレポータープラスミド(a)TREpal−tk−CAT (b)βRARE−tk−CAT (c)ApoAI−RARE−tk−CAT および(d)CRBPI−RARE−tk−CATならびに5ngの空(empty)pECE発現ベクター、pECE−RXRα、pECE RARαまたは示されたような両者の組み合わせでCV−1細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、ホルモンなし(白棒)、10−7M RA(斜線棒)、または10−7M 9−シス−RA(濃斜線棒)で処理した。2回行った代表的な実験の結果を示す。
【図7】図7は、レポーター構築物 (a)TREpal−tk−CAT (10)または(b)CRBPII−tk−CAT (10)RXRα−依存性のトランス活性化を、9−シス−RAまたはレチノイドSR11203、SR11217、SR11234、SR11235、SR11236、およびSR11237により示す。4回実行した代表的な実験の結果を示す。4つの独立した実験において誘導プロフィルは有意に変化しなかった。CAT活性を、トラスフェクションについて、および同時トランスフェクトしたβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミド(pCH110、Pharmacia)由来の酵素活性を測定することにより回収効率について標準化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された架橋二環式芳香族化合物、該化合物を含む薬学的組成物および該化合物または該組成物を使用する方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−1982(P2007−1982A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192124(P2006−192124)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【分割の表示】特願平6−513405の分割
【原出願日】平成5年11月24日(1993.11.24)
【出願人】(500204625)リガンド・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】