説明

Rho−キナーゼの新規基質ペプチド

【課題】Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化される基質ペプチド等を提供する。
【解決手段】本発明のペプチドは、例えば、下記式(1):[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (1) で示されるアミノ酸配列を含むペプチドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化される基質ペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
セリン/スレオニンキナーゼであるRho-キナーゼは、心血管疾患等の循環器疾患や脳神経疾患に深く関与するリン酸化酵素(キナーゼ)であり(非特許文献1)、2種類のサブタイプ(ROCK IとROCK II)が存在するものである。ROCK Iは心血管部位に、ROCK IIは心血管部位及び脳神経部位に高濃度で存在し、それぞれの生体に対する機能は異なることが知られている。
従って、Rhoキナーゼに特異的に反応する基質(基質ペプチド)が提供されれば、Rhoキナーゼによる疾患発症メカニズムの解明、Rhoキナーゼをターゲットする創薬研究への寄与、及び循環器疾患等の診断用途の開発が期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Somlyo, A. P., and Somlyo, A. V. (2003) Physiol. Rev. 83, 1325-1358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下において、Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化される新規基質ペプチドの開発が望まれていた。また、Rho-キナーゼに対して阻害活性を有する新規ペプチドの開発も望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示すペプチド、Rho-キナーゼ活性の測定方法、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断用医薬組成物、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療方法、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療用医薬組成物等を提供するものである。
【0006】
(1)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (配列番号1) (1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[R/K/L]はアルギニン、リジン又はロイシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R/V]はリジン、アルギニン又はバリンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[M/R/P]はメチオニン、アルギニン又はプロリンを表し、[M/L/G]はメチオニン、ロイシン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(1)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【0007】
本発明のペプチドは、例えば、前記式(1)で示されるアミノ酸配列が、下記式(1')で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
K-[S/A/P]-[D/A]-R-K-K-R-Y-[S/T]-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号2) (1')
(式中、[S/A/P]はセリン、アラニン又はプロリンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表す。)
本発明のペプチドは、例えば、前記式(1)で示されるアミノ酸配列が、下記式(1-1)〜(1-5)のいずれかで示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号3) (1-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号4) (1-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号5) (1-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号6) (1-4)
K-P-A-R-K-K-R-Y-S-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号7) (1-5)
【0008】
(2)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(2)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K/G]-[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R]-[Q/G/V]-X-[F/M/R]-[R/K/Q]-[R/G] (配列番号8) (2)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K/G]はアルギニン、リジン又はグリシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R]はリジン又はアルギニンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表し、[R/K/Q]はアルギニン、リジン又はグルタミンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(2)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【0009】
本発明のペプチドは、例えば、前記式(2)で示されるアミノ酸配列が、下記式(2-1)で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
G-R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R-Q-G (配列番号9) (2-1)
【0010】
(3)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(3)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-[S/T]-[L/F/T]-[K/R/G]-[Q/G/V]-X-[F/M/R] (配列番号10) (3)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/F/T]はロイシン、フェニルアラニン又はスレオニンを表し、[K/R/G]はリジン、アルギニン又はグリシンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表す。)
(b) 上記式(3)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【0011】
本発明のペプチドは、例えば、前記式(3)で示されるアミノ酸配列が、下記式(3')で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
R-A-K-[R/Y]-[R/K]-[S/T]-[L/T]-[R/G]-[Q/V]-[S/I]-[F/R] (配列番号11) (3')
(式中、[R/Y]はアルギニン又はチロシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/T]はロイシン又はスレオニンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表し、[Q/V]はグルタミン又はバリンを表し、[S/I]はセリン又はイソロイシンを表し、[F/R]はフェニルアラニン又はアルギニンを表す。)
本発明のペプチドは、例えば、前記式(3)で示されるアミノ酸配列が、下記式(3-1)又は(3-2)で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (配列番号12) (3-1)
R-A-K-R-R-S-T-G-V-S-F (配列番号13) (3-2)
【0012】
(4)下記式(1-1)〜(1-4)及び(3-1)のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号3) (1-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号4) (1-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号5) (1-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号6) (1-4)
R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (配列番号12) (3-1)
【0013】
上記(1)〜(4)のペプチドは、例えば、標識物質により標識化されたものが挙げられる。
【0014】
(5)Rho-キナーゼ活性の測定方法であって、
(a) 上記(1)〜(4)のペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたペプチドを定量する工程と
を含む、前記方法。
(6)上記(1)〜(4)のペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬。
【0015】
(7)Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法であって、
(a) 上記(1)〜(4)のペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むRho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたペプチドを定量する工程と
を含む、前記方法。
(8)上記(1)〜(4)のペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断用医薬組成物。
【0016】
(9)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(4)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-A-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (配列番号14) (4)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[R/K/L]はアルギニン、リジン又はロイシンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R/V]はリジン、アルギニン又はバリンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[M/R/P]はメチオニン、アルギニン又はプロリンを表し、[M/L/G]はメチオニン、ロイシン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(4)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【0017】
本発明のペプチドは、例えば、前記式(4)で示されるアミノ酸配列が、下記式(4')で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
K-[S/A/P]-[D/A]-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号15) (4')
(式中、[S/A/P]はセリン、アラニン又はプロリンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表す。)
本発明のペプチドは、例えば、前記式(4)で示されるアミノ酸配列が、下記式(4-1)〜(4-5)のいずれかで示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
K-S-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号16) (4-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号17) (4-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号18) (4-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号19) (4-4)
K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号20) (4-5)
【0018】
(10)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(5)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K/G]-[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-A-[L/V/F]-[K/R]-[Q/G/V]-X-[F/M/R]-[R/K/Q]-[R/G] (配列番号21) (5)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K/G]はアルギニン、リジン又はグリシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R]はリジン又はアルギニンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表し、[R/K/Q]はアルギニン、リジン又はグルタミンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(5)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【0019】
本発明のペプチドは、例えば、前記式(5)で示されるアミノ酸配列が、下記式(5-1)で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
G-R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R-Q-G (配列番号22) (5-1)
【0020】
(11)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(6)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-A-[L/F/T]-[K/R/G]-[Q/G/V]-X-[F/M/R] (配列番号23) (6)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[L/F/T]はロイシン、フェニルアラニン又はスレオニンを表し、[K/R/G]はリジン、アルギニン又はグリシンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表す。)
(b) 上記式(6)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【0021】
本発明のペプチドは、例えば、前記式(6)で示されるアミノ酸配列が、下記式(6')で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
R-A-K-[R/Y]-[R/K]-A-[L/T]-[R/G]-[Q/V]-[S/I]-[F/R] (配列番号24) (6')
(式中、[R/Y]はアルギニン又はチロシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[L/T]はロイシン又はスレオニンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表し、[Q/V]はグルタミン又はバリンを表し、[S/I]はセリン又はイソロイシンを表し、[F/R]はフェニルアラニン又はアルギニンを表す。)
本発明のペプチドは、例えば、前記式(6)で示されるアミノ酸配列が、下記式(6-1)又は(6-2)で示されるアミノ酸配列であるものが挙げられる。
R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R (配列番号25) (6-1)
R-A-K-R-R-A-T-G-V-S-F (配列番号26) (6-2)
【0022】
(12)上記(9)〜(11)のペプチドを、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の患者に投与することを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療方法。
(13)上記(9)〜(11)のペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療用医薬組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、Rho-キナーゼにより特異的にリン酸化を受ける新規基質ペプチドを提供することができる。当該ペプチドは、Rho-キナーゼ活性の測定方法、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬、及びRho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断薬等の、各種用途に利用することができる点で、極めて有用なものである。
また、本発明によれば、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有する新規ペプチドを提供することができる。当該ペプチドは、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療方法、及びRho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療薬等の用途に利用することができる点で、極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】候補基質ペプチドに対するRho-キナーゼによるリン酸化の評価結果を示す図である。
【図2】候補基質ペプチドに対するRho-キナーゼによるリン酸化の評価結果を示す図である。
【図3】候補基質ペプチドに対するRho-キナーゼによるリン酸化の評価結果を示す図である。
【図4】候補基質ペプチドに対するRho-キナーゼによるリン酸化の評価結果を示す図である。
【図5】候補基質ペプチドに対するRho-キナーゼによるリン酸化の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0026】

1.Rho-キナーゼ基質ペプチド及びその利用
(1)Rho-キナーゼ基質ペプチド
本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドとしては、前述の通り、以下の(a1)又は(b1)のペプチドが挙げられる。
(a1) 下記式(1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (配列番号1) (1)
(b1) 上記式(1)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【0027】
上記(a1)のペプチドに関し、上記式(1)中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[R/K/L]はアルギニン、リジン又はロイシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R/V]はリジン、アルギニン又はバリンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[M/R/P]はメチオニン、アルギニン又はプロリンを表し、[M/L/G]はメチオニン、ロイシン又はグリシンを表す。
【0028】
ここで、上記式(1)で示されるアミノ酸配列としては、例えば、下記式(1')で示されるアミノ酸配列が好ましく、下記式(1-1)〜(1-5)に示されるアミノ酸配列がより好ましい。
K-[S/A/P]-[D/A]-R-K-K-R-Y-[S/T]-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号2) (1')
上記式(1')中、[S/A/P]はセリン、アラニン又はプロリンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表す。
K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号3) (1-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号4) (1-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号5) (1-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号6) (1-4)
K-P-A-R-K-K-R-Y-S-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号7) (1-5)
【0029】
上記(b1)のペプチドに関し、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし、本発明においては、前記式(1)で示されるアミノ酸配列における第9番目のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されていないものが好ましい。上記欠失、置換、付加等の変異の導入は、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えば、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、及びTaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。また、上記欠失、置換又は付加の変異が導入されたペプチドであるかどうかは、各種アミノ酸配列決定法、並びにX線及びNMR等による構造解析法などを用いて確認することができる。
【0030】
また、上記「Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド」とは、Rho-キナーゼのみによりリン酸化され、その他のセリン/スレオニンキナーゼ類によっては全くリン酸化を受けないペプチドだけでなく、Rho-キナーゼによるリン酸化速度が他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化速度と比較して高く、Rho-キナーゼによるリン酸化を測定する際に、混在する他のセリン/スレオニンキナーゼ類によるリン酸化の影響を実質的に無視できるペプチドをも包含する意味である。
本発明において、「ペプチド」とは、少なくとも2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合して構成されたものを意味し、オリゴペプチド、ポリペプチドなどが含まれる。さらに、ポリペプチドが一定の立体構造を形成したものはタンパク質と呼ばれるが、本発明においては、このようなタンパク質も上記「ペプチド」に含まれるものとする。従って、本発明の誘導剤に含まれるペプチドは、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれをも意味し得るものである。
【0031】
上記(a1)及び(b1)のペプチドは、前記式(1)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは16残基以上であり、例えば16〜25残基であってもよいし、16〜30残基であってもよい。
前記(a1)又は(b1)のペプチドは、天然物由来のペプチドであってもよいし、人工的に化学合成して得られたものであってもよく、限定はされない。化学合成ペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてペプチドを精製することができる。
【0032】
本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドの他の態様としては、前述の通り、以下の(a2)又は(b2)のペプチドが挙げられる。

(a2) 下記式(2)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K/G]-[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R]-[Q/G/V]-X-[F/M/R]-[R/K/Q]-[R/G] (配列番号8) (2)
(b2) 上記式(2)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【0033】
上記(a2)のペプチドに関し、上記式(2)中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K/G]はアルギニン、リジン又はグリシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R]はリジン又はアルギニンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表し、[R/K/Q]はアルギニン、リジン又はグルタミンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表す。
ここで、上記式(2)で示されるアミノ酸配列としては、例えば、下記式(2-1)で示されるアミノ酸配列が好ましい。
G-R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R-Q-G (配列番号9) (2-1)
【0034】
上記(b2)のペプチドに関し、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし、本発明においては、前記式(2)で示されるアミノ酸配列における第7番目のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されていないものが好ましい。
上記(a2)及び(b2)のペプチドは、前記式(2)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは14残基以上であり、例えば14〜20残基であってもよいし、14〜30残基であってもよい。
なお、上記(a2)及び(b2)のペプチドに関し、上述した以外は、前述の(a1)及び(b1)のペプチドに関する説明が同様に適用できる。
本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドの他の態様としては、前述の通り、以下の(a3)又は(b3)のペプチドが挙げられる。
【0035】
(a3) 下記式(3)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-[S/T]-[L/F/T]-[K/R/G]-[Q/G/V]-X-[F/M/R] (配列番号10) (3)
(b3) 上記式(3)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【0036】
上記(a3)のペプチドに関し、上記式(3)中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/F/T]はロイシン、フェニルアラニン又はスレオニンを表し、[K/R/G]はリジン、アルギニン又はグリシンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表す。
【0037】
ここで、上記式(3)で示されるアミノ酸配列としては、例えば、下記式(3')で示されるアミノ酸配列が好ましく、下記式(3-1)及び(3-2)で示されるアミノ酸配列がより好ましい。
R-A-K-[R/Y]-[R/K]-[S/T]-[L/T]-[R/G]-[Q/V]-[S/I]-[F/R] (配列番号11) (3')
上記式(3')中、[R/Y]はアルギニン又はチロシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/T]はロイシン又はスレオニンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表し、[Q/V]はグルタミン又はバリンを表し、[S/I]はセリン又はイソロイシンを表し、[F/R]はフェニルアラニン又はアルギニンを表す。
R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (配列番号12) (3-1)
R-A-K-R-R-S-T-G-V-S-F (配列番号13) (3-2)
【0038】
上記(b3)のペプチドに関し、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし、本発明においては、前記式(3)で示されるアミノ酸配列における第6番目のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されていないものが好ましい。
上記(a3)及び(b3)のペプチドは、前記式(3)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは11残基以上であり、例えば11〜20残基であってもよいし、11〜30残基であってもよい。
なお、上記(a3)及び(b3)のペプチドに関し、上述した以外は、前述の(a1)及び(b1)のペプチドに関する説明が同様に適用できる。
【0039】
以上に述べた本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドのうち、特に好ましいものとしては、下記式(1-1)〜(1-4)及び(3-1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチドであり、最も好ましいものとしては下記式(1-1)〜(1-4)及び(3-1)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドである。
K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号3) (1-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号4) (1-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号5) (1-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号6) (1-4)
R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (配列番号12) (3-1)
【0040】
本発明のRho-キナーゼ基質ペプチド、特に上記式(1-1)〜(1-4)及び(3-1)で示されるアミノ酸配列からなるペプチドは、Rho-キナーゼの2つのサブタイプ(ROCK I及びROCK II)のうち、ROCK IIに対する基質活性が高い(よりリン酸化されやすい)。よって、本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドは、限定はされないが、ROCK II基質ペプチドとして用いられることがより好ましい。
【0041】
(2)Rho-キナーゼ活性の測定方法及び測定用試薬
前述した本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドは、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬として当該活性の測定方法に利用することができる。
本発明のRho-キナーゼ活性の測定方法は、下記(a)及び(b)の工程を含むことを特徴とする方法である。
(a) 前述したRho-キナーゼ基質ペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、当該ペプチドをリン酸化する工程
(b) 工程(a)でリン酸化されたペプチドを定量する工程
本発明のRho-キナーゼ活性の測定方法は、具体的には、Rho-キナーゼ基質ペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある被験試料とを適当なバッファー中などで接触させて反応させ、基質ペプチドがリン酸化され得る状況を経た後、リン酸化を検出する(すなわちリン酸基の存在を検出する)方法によりリン酸化ペプチドを検出及び定量する。ここで、リン酸化ペプチドの検出及び定量方法としては、限定はされないが、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)を用いる方法や、放射性同位体元素(ラジオアイソトープ)を用いる方法などが挙げられる。
【0042】
(3)Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法
本発明のRho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法は、下記(a)及び(b)の工程を含むことを特徴とする方法である。
(a) 前述したRho-キナーゼ基質ペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むRho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、当該ペプチドをリン酸化する工程
(b) 工程(a)でリン酸化されたペプチドを定量する工程

本発明の診断方法は、具体的には、前述した本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドを用いて、哺乳動物(例えばヒト、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ)から単離された成分(例えば血液、尿、哺乳動物の任意の組織(脳、肝臓、心臓、筋肉、皮膚など)の溶解産物(lysate)、哺乳動物の正常または癌培養細胞の溶解産物、および哺乳動物に発生した癌組織の溶解産物)を含む試料中のRho-キナーゼ活性を測定する(すなわちリン酸化されたペプチドを定量する)ことにより、その測定結果を指標として、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患を診断することができる。
本発明において「Rho-キナーゼ活性に関連する疾患」とは、罹患患者と健常者との間で上記試料中のRho-キナーゼ活性が相違するような疾患を指す。このような疾患としては循環器疾患、浸潤性および転移性癌疾患等が挙げられるが、これらには限定されない。
なお、リン酸化ペプチドの検出及び定量方法は、上記(2)項での説明が同様に適用できる。
【0043】
(4)Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断用医薬組成物及び診断用キット
本発明のRho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断用医薬組成物は、前述したRho-キナーゼ基質ペプチドを含むことを特徴とするものである。
本発明のRho-キナーゼ基質ペプチドは、診断用途で許容される担体または賦形剤等の任意の成分と組み合わせてRho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断薬(診断用医薬組成物)として提供され得る。
また、当該診断薬は、検出用抗体などと組み合わせて、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断用キットとして提供され得る。
【0044】

2.Rho-キナーゼ阻害活性を有するペプチド及びその利用
(1)Rho-キナーゼ阻害活性を有するペプチド
本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドとしては、前述の通り、以下の(a4)又は(b4)のペプチドが挙げられる。
(a4) 下記式(4)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-A-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (配列番号14) (4)
(b4) 上記式(4)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【0045】
上記(a4)のペプチドに関し、上記式(4)中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[R/K/L]はアルギニン、リジン又はロイシンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R/V]はリジン、アルギニン又はバリンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[M/R/P]はメチオニン、アルギニン又はプロリンを表し、[M/L/G]はメチオニン、ロイシン又はグリシンを表す。
【0046】
ここで、上記式(4)で示されるアミノ酸配列としては、例えば、下記式(4')で示されるアミノ酸配列が好ましく、下記式(4-1)〜(4-5)に示されるアミノ酸配列がより好ましい。
K-[S/A/P]-[D/A]-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号15) (4')
上記式(4')中、[S/A/P]はセリン、アラニン又はプロリンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表す。
K-S-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号16) (4-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号17) (4-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号18) (4-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号19) (4-4)
K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号20) (4-5)
【0047】
なお、上記式(4)、(4')及び(4-1)〜(4-5)で示されるアミノ酸配列においては、第9番目のA(アラニン残基)が、例えば、G、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、N、Q、D、E、K、R及びHであってもよく、限定はされない。
【0048】
上記(b4)のペプチドに関し、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし、本発明においては、前記式(4)で示されるアミノ酸配列における第9番目のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されていないものが好ましい。上記欠失、置換、付加等の変異の導入は、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えば、GeneTailorTM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社)、及びTaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。また、上記欠失、置換又は付加の変異が導入されたペプチドであるかどうかは、各種アミノ酸配列決定法、並びにX線及びNMR等による構造解析法などを用いて確認することができる。
【0049】
また、上記「Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド」とは、Rho-キナーゼのみに対して阻害活性を有し、その他のセリン/スレオニンキナーゼ類に対しては全く阻害活性を有しないペプチドだけでなく、Rho-キナーゼに対する阻害活性が他のセリン/スレオニンキナーゼ類に対する阻害活性と比較して高く、Rho-キナーゼに対する阻害活性を測定する際に、混在する他のセリン/スレオニンキナーゼ類に対する阻害活性の影響を実質的に無視できるペプチドをも包含する意味である。なお、本発明において、阻害活性とは、Rho-キナーゼの活性を阻害する活性という意味であり、またRho-キナーゼの活性を阻害するとは、Rho-キナーゼの活性を完全に失活させるということに限られず、Rho-キナーゼの活性を抑制する(活性を弱める)ということも含む意味である。
【0050】
本発明において、「ペプチド」とは、少なくとも2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合して構成されたものを意味し、オリゴペプチド、ポリペプチドなどが含まれる。さらに、ポリペプチドが一定の立体構造を形成したものはタンパク質と呼ばれるが、本発明においては、このようなタンパク質も上記「ペプチド」に含まれるものとする。従って、本発明の誘導剤に含まれるペプチドは、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質のいずれをも意味し得るものである。
上記(a4)及び(b4)のペプチドは、前記式(4)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは16残基以上であり、例えば16〜25残基であってもよいし、16〜30残基であってもよい。
【0051】
前記(a4)又は(b4)のペプチドは、天然物由来のペプチドであってもよいし、人工的に化学合成して得られたものであってもよく、限定はされない。化学合成ペプチドは、公知のペプチド合成方法を用いて得ることができる。合成方法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法及び酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法及び液相合成法のいずれをも適用することができる。市販のペプチド合成装置を使用してもよい。合成反応後は、クロマトグラフィー等の公知の精製法を組み合わせてペプチドを精製することができる。
本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドの他の態様としては、前述の通り、以下の(a5)又は(b5)のペプチドが挙げられる。
【0052】
(a5) 下記式(5)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K/G]-[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-A-[L/V/F]-[K/R]-[Q/G/V]-X-[F/M/R]-[R/K/Q]-[R/G] (配列番号21) (5)
(b5) 上記式(5)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【0053】
上記(a5)のペプチドに関し、上記式(5)中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K/G]はアルギニン、リジン又はグリシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R]はリジン又はアルギニンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表し、[R/K/Q]はアルギニン、リジン又はグルタミンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表す。
【0054】
ここで、上記式(5)で示されるアミノ酸配列としては、例えば、下記式(5-1)に示されるアミノ酸配列が好ましい。
G-R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R-Q-G (配列番号22) (5-1)
【0055】
なお、上記式(5)及び(5-1)で示されるアミノ酸配列においては、第7番目のA(アラニン残基)が、例えば、G、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、N、Q、D、E、K、R及びHであってもよく、限定はされない。
【0056】
上記(b5)のペプチドに関し、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし、本発明においては、前記式(5)で示されるアミノ酸配列における第7番目のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されていないものが好ましい。
上記(a5)及び(b5)のペプチドは、前記式(5)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは14残基以上であり、例えば14〜20残基であってもよいし、14〜30残基であってもよい。
なお、上記(a5)及び(b5)のペプチドに関し、上述した以外は、前述の(a4)及び(b4)のペプチドに関する説明が同様に適用できる。
本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドの他の態様としては、前述の通り、以下の(a6)又は(b6)のペプチドが挙げられる。
【0057】
(a6) 下記式(6)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-A-[L/F/T]-[K/R/G]-[Q/G/V]-X-[F/M/R] (配列番号23) (6)
(b6) 上記式(6)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【0058】
上記(a6)のペプチドに関し、上記式(6)中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[L/F/T]はロイシン、フェニルアラニン又はスレオニンを表し、[K/R/G]はリジン、アルギニン又はグリシンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表す。
【0059】
ここで、上記式(6)で示されるアミノ酸配列としては、例えば、下記式(6')で示されるアミノ酸配列が好ましく、下記式(6-1)及び(6-2)に示されるアミノ酸配列がより好ましい。
R-A-K-[R/Y]-[R/K]-A-[L/T]-[R/G]-[Q/V]-[S/I]-[F/R] (配列番号24) (6')
上記式(6')中、[R/Y]はアルギニン又はチロシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[L/T]はロイシン又はスレオニンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表し、[Q/V]はグルタミン又はバリンを表し、[S/I]はセリン又はイソロイシンを表し、[F/R]はフェニルアラニン又はアルギニンを表す。
R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R (配列番号25) (6-1)
R-A-K-R-R-A-T-G-V-S-F (配列番号26) (6-2)
【0060】
なお、上記式(6)、(6')及び(6-1)〜(6-2)で示されるアミノ酸配列においては、第6番目のA(アラニン残基)が、例えば、G、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、N、Q、D、E、K、R及びHであってもよく、限定はされない。
【0061】
上記(b6)のペプチドに関し、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜5個程度、好ましくは1個〜2個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列が挙げられ、限定はされない。ただし、本発明においては、前記式(6)で示されるアミノ酸配列における第6番目のアミノ酸残基が欠失、置換又は付加されていないものが好ましい。
上記(a6)及び(b6)のペプチドは、前記式(6)のアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むペプチドである限り、その構成アミノ酸の残基数は限定されず、好ましくは11残基以上であり、例えば11〜20残基であってもよいし、11〜30残基であってもよい。
なお、上記(a6)及び(b6)のペプチドに関し、上述した以外は、前述の(a4)及び(b4)のペプチドに関する説明が同様に適用できる。
【0062】
(2)Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療用医薬組成物及び治療方法
本発明のRho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療用医薬組成物は、前述したRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドを有効成分として含むものである。
当該医薬組成物は、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療薬として有用である。ここで、「Rho-キナーゼ活性に関連する疾患」とは、罹患患者と健常者との間でRho-キナーゼ活性が相違するような疾患を指す。このような疾患としては循環器疾患、浸潤性および転移性癌疾患等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0063】
本発明の医薬組成物は、本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドを有効成分として含み、さらに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の形態で提供することが好ましい。「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。また、本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドを生体内に投与する場合は、コロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、上記ペプチドの生体内の安定性を高めたり、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果が期待される。コロイド分散系は、通常用いられるものであればよく限定はされないが、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを包含する脂質をベースとする分散系を挙げることができ、好ましくは、特定の臓器、組織又は細胞へ化合物を効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞である。
【0064】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは医薬組成物に含有される本発明の誘導剤(前述した(a)及び(b)のペプチド)の種類などにより異なっていてもよい。通常、成人一人あたり、一回につき100μg〜5000mgの範囲で投与することができるが、限定はされない。
例えば注射剤により投与する場合は、ヒト患者に対し、1回の投与において1kg体重あたり、100μg〜100mgの量を、1日平均あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などが挙げられるが、好ましくは静脈内注射である。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合等により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。すなわち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
【0065】
なお、本発明は、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患を治療する医薬(薬剤)を製造するための、前記本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドの使用を提供するものでもある。また、本発明は、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療用の前記Rho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドを提供するものでもある。
さらに、本発明は、前記本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドを用いること(すなわち患者に投与すること)を特徴とする、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療方法を提供するものであり、また、当該疾患を治療するための、前記本発明のRho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドの使用を提供するものでもある。
【0066】

3.核酸
本発明はまた、上述した本発明のペプチドをコードする核酸も提供することができる。核酸としてはDNA又はRNAが挙げられ、DNAが好ましい。当該核酸をベクターに導入し、生体内において本発明の基質ポリペプチドを発現させることが可能である。また、当該核酸と、マーカー分子(例えば抗原抗体反応を使って検出可能なマーカー分子)をコードする核酸とを融合した核酸配列をベクターに組み込み、生体内において本発明の基質ポリペプチドとマーカー分子との融合ポリペプチドを発現させることにより、生体内のキナーゼ活性をインビボで解析することができるものと期待される。
【0067】

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
<Rhoキナーゼによる基質ペプチドのリン酸化の評価>
(1)Rho-キナーゼ基質ポリペプチドの合成
本実施例においては、Rho-キナーゼ基質ポリペプチドの候補ペプチドとなる合計135種類ものオリゴペプチドを合成した(各ペプチドのアミノ酸配列の詳細は省略)。合成方法の詳細は以下の通りである。
Rho-キナーゼ基質ポリペプチドは、標準的なFmoc法により自動ペプチド合成装置を用いて合成した。TFA切断の後、ポリペプチドはBioCADパーフュージョンクロマトグラフィーシステム (Ikemoto Scientific Technology, Co., 東京,日本) を用い、Intersil ODS-3 カラム (250 x 20 mm, 3.5μm, GL Sciences Inc., 東京,日本) により精製した。このとき、溶出液Aとして0,1% トリフルオロ酢酸 (TFA)水溶液を用い、溶出液Bとして0.1% TFA アセトニトリル溶液を用いて、流速8ml/分のA-Bリニアグラジエントにより溶出を行った。このグラジエントは、30分間かけてアセトニトリル/水を、10/90から30/70にして行った。ポリペプチドの種類に関係なく、目的とするポリペプチドの保持時間は12.1分〜28.4分であった。
【0069】
(2)MALDI-TOF/MSによるRho-キナーゼ基質のリン酸化評価
本実施例では、合成ポリペプチドにおけるリン酸化の検出を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)により行った。MALDI-TOF/MSは Voyager DE RP BioSpectrometry Workstation 装置 (Applied Biosystems, Framingham, MA, USA)をポジティブイオンモードで用いて行った。加速電圧を20kVとし、遅延引き出し時間を100-nsとした。原則として100回のレーザーショットを平均化してシグナルノイズ比を高めた。全てのスペクトルはData Explorer TM ソフトウェア (Applied Biosystems) を用いて分析した。
Rho-キナーゼ基質ポリペプチドをRho-キナーゼによりリン酸化するときは、リン酸化反応は、30μMのポリペプチドと1μg/mlのRho-キナーゼを含有する50μlの緩衝液 [20 mM Tris-HCl (pH 7.5)および10 mM MgCl2] 中で行った。反応温度は37℃であり、反応時間は60分であった。α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸 (CHCA) マトリクス (10 mg/ml) を50% 水/アセトニトリルおよび0.1% TFA中で調製した。マトリクスとリン酸化反応試料とを1:1の比で混合した。各混合物1μlの全量をサンプルプレートに適用し、乾燥させて結晶化させた。リン酸化されたポリペプチドの相対強度 (%) は下記式から算出した。

(リン酸化されたポリペプチドの強度)/[(リン酸化されたポリペプチドの強度)+(リン酸化されていないポリペプチドの強度)] x 100
【0070】
(3)放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を用いた方法によるRho-キナーゼ基質のリン酸化評価
リン酸化反応は50μMのポリペプチドと1 μg/mlのRho-キナーゼを含有する25μlの緩衝液 [5 mM 3-モルホリノプロパンスルホン酸(pH 7.2), 2.2 mM β-グリセロリン酸(β-glycerophosphate),1 mMグリコールエーテルジアミン四酢酸, 4 mM MgCl2, 0.05 mMジチオトレイトールおよび100 μM ATPと放射性同位元素(32P)ラベルしたATP] 中で行った。反応時間は10分、反応温度は25℃であった。10分後、30%トリクロロ酢酸を5 μl添加することで反応を止めた。各反応液(24μl)をP-81 ホスホセルロース膜にスポットした。5%トリクロロ酢酸で三回洗浄を行い、アセトンで膜を乾かした。膜の放射性同位元素を液体シンチレーションカウンタ(liquid scintillation counting)を用いて測定し、その結果をカウント毎分[CPM(counts per minute)]として現した。
【0071】
(4)基質活性の高いペプチドの選択
合成した合計135種類のオリゴペプチド(候補基質ペプチド)のすべてについて、Rho-キナーゼによるリン酸化の評価を行った結果(図1〜5を参照)、リン酸化の程度が高い下記の5つのオリゴペプチド(R134、R4、R22、R133及びR135)について、Km値(μM)及びVmax値(pmol/min/mg)を測定した。その結果を、以下の表1に示す。なお、表1中、R134、R4、R22、R133及びR135のRho-Noが付されたオリゴペプチドは、それぞれ順に、下記の配列番号3、配列番号12、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるペプチドである。
【0072】
R134: K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号3)
R4: R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (配列番号12)
R22: K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号4)
R133: K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号5)
R135: K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号6)
【0073】
【表1】

【実施例2】
【0074】
<Rhoキナーゼ阻害活性の評価>
放射性同位元素(ラジオアイソトープ)を用いる方法により、Rho-キナーゼ阻害活性を有するペプチドの評価を行った。

反応は、30μMのS6Kペプチド(Km = 3.1μM)、Rho-キナーゼ阻害ペプチド(10および30μM)、および1 μg/mlのRho-キナーゼを含有する25μlの緩衝液 [5 mM 3-モルホリノプロパンスルホン酸(pH 7.2), 2.2 mM β-グリセロリン酸(β-glycerophosphate),1 mMグリコールエーテルジアミン四酢酸, 4 mM MgCl2, 0.05 mMジチオトレイトールおよび100μM ATPと放射性同位元素(32P)ラベルしたATP] 中で行った。反応時間は10分、反応温度は25℃であった。10分後、30%トリクロロ酢酸を5 μl添加することで反応を止めた。各反応液(24μl)をP-81 ホスホセルロース膜にスポットした。5%トリクロロ酢酸で三回洗浄を行い、アセトンで膜を乾かした。膜の放射性同位元素を、液体シンチレーションカウンタを用いて測定し、Ki値を算出した。その結果を以下の表2に示した。なお、表2中、ペプチドNo.4、22、133、135及び134のRho-キナーゼ阻害ペプチドは、それぞれ順に、下記の配列番号3、配列番号12、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるペプチドである。
【0075】
No.4: R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R (配列番号25)
No.22: K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号17)
No.133: K-S-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号18)
No.135: K-A-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号19)
No.134: K-S-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (配列番号16)
【0076】
【表2】

【配列表フリーテキスト】
【0077】
配列番号1:合成ペプチド
配列番号1:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:1)。
配列番号1:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:2)。
配列番号1:XaaはAsp又はAlaを表す(存在位置:3)。
配列番号1:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:4,5,6)。
配列番号1:XaaはArg, Lys又はLeuを表す(存在位置:7)。
配列番号1:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:8)。
配列番号1:XaaはSer又はThrを表す(存在位置:9)。
配列番号1:XaaはLeu, Val又はPheを表す(存在位置:10)。
配列番号1:XaaはLys, Arg又はValを表す(存在位置:11)。
配列番号1:XaaはGln, Gly又はValを表す(存在位置:12)。
配列番号1:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:13)。
配列番号1:XaaはMet, Arg又はProを表す(存在位置:14)。
配列番号1:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:15,16)。
配列番号1:XaaはMet, Leu又はGlyを表す(存在位置:17)。
【0078】
配列番号2:合成ペプチド
配列番号2:XaaはSer, Ala又はProを表す(存在位置:2)。
配列番号2:XaaはAsp又はAlaを表す(存在位置:3)。
配列番号2:XaaはSer又はThrを表す(存在位置:9)。
配列番号3:合成ペプチド
配列番号4:合成ペプチド
配列番号5:合成ペプチド
配列番号6:合成ペプチド
配列番号7:合成ペプチド
【0079】
配列番号8:合成ペプチド
配列番号8:XaaはArg, Lys又はGlyを表す(存在位置:1)。
配列番号8:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:2)。
配列番号8:XaaはAla又はGluを表す(存在位置:3)。
配列番号8:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:4)。
配列番号8:XaaはArg, Lys, Leu又はTyrを表す(存在位置:5)。
配列番号8:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:6)。
配列番号8:XaaはSer又はThrを表す(存在位置:7)。
配列番号8:XaaはLeu, Val又はPheを表す(存在位置:8)。
配列番号8:XaaはLys又はArgを表す(存在位置:9)。
配列番号8:XaaはGln, Gly又はValを表す(存在位置:10)。
配列番号8:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:11)。
配列番号8:XaaはPhe, Met又はArgを表す(存在位置:12)。
配列番号8:XaaはArg, Lys又はGlnを表す(存在位置:13)。
配列番号8:XaaはArg又はGlyを表す(存在位置:14)。
配列番号9:合成ペプチド
【0080】
配列番号10:合成ペプチド
配列番号10:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:1)。
配列番号10:XaaはAla又はGluを表す(存在位置:2)。
配列番号10:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:3)。
配列番号10:XaaはArg, Lys, Leu又はTyrを表す(存在位置:4)。
配列番号10:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:5)。
配列番号10:XaaはSer又はThrを表す(存在位置:6)。
配列番号10:XaaはLeu, Phe又はThrを表す(存在位置:7)。
配列番号10:XaaはLys, Arg又はGlyを表す(存在位置:8)。
配列番号10:XaaはGln, Gly又はValを表す(存在位置:9)。
配列番号10:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:10)。
配列番号10:XaaはPhe, Met又はArgを表す(存在位置:11)。
配列番号11:合成ペプチド
【0081】
配列番号11:XaaはArg又はTyrを表す(存在位置:4)。
配列番号11:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:5)。
配列番号11:XaaはSer又はThrを表す(存在位置:6)。
配列番号11:XaaはLeu又はThrを表す(存在位置:7)。
配列番号11:XaaはArg又はGlyを表す(存在位置:8)。
配列番号11:XaaはGln又はValを表す(存在位置:9)。
配列番号11:XaaはSer又はIleを表す(存在位置:10)。
配列番号11:XaaはPhe又はArgを表す(存在位置:11)。
配列番号12:合成ペプチド
配列番号13:合成ペプチド
【0082】
配列番号14:合成ペプチド
配列番号14:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:1)。
配列番号14:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:2)。
配列番号14:XaaはAsp又はAlaを表す(存在位置:3)。
配列番号14:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:4,5,6)。
配列番号14:XaaはArg, Lys又はLeuを表す(存在位置:7)。
配列番号14:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:8)。
配列番号14:XaaはLeu, Val又はPheを表す(存在位置:10)。
配列番号14:XaaはLys, Arg又はValを表す(存在位置:11)。
配列番号14:XaaはGln, Gly又はValを表す(存在位置:12)。
配列番号14:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:13)。
配列番号14:XaaはMet, Arg又はProを表す(存在位置:14)。
配列番号14:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:15,16)。
配列番号14:XaaはMet, Leu又はGlyを表す(存在位置:17)。
配列番号15:合成ペプチド
配列番号15:XaaはSer, Ala又はProを表す(存在位置:2)。
配列番号15:XaaはAsp又はAlaを表す(存在位置:3)。
配列番号16:合成ペプチド
配列番号17:合成ペプチド
配列番号18:合成ペプチド
配列番号19:合成ペプチド
配列番号20:合成ペプチド
【0083】
配列番号21:合成ペプチド
配列番号21:XaaはArg, Lys又はGlyを表す(存在位置:1)。
配列番号21:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:2)。
配列番号21:XaaはAla又はGluを表す(存在位置:3)。
配列番号21:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:4)。
配列番号21:XaaはArg, Lys, Leu又はTyrを表す(存在位置:5)。
配列番号21:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:6)。
配列番号21:XaaはLeu, Val又はPheを表す(存在位置:8)。
配列番号21:XaaはLys又はArgを表す(存在位置:9)。
配列番号21:XaaはGln, Gly又はValを表す(存在位置:10)。
配列番号21:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:11)。
配列番号21:XaaはPhe, Met又はArgを表す(存在位置:12)。
配列番号21:XaaはArg, Lys又はGlnを表す(存在位置:13)。
配列番号21:XaaはArg又はGlyを表す(存在位置:14)。
配列番号22:合成ペプチド
【0084】
配列番号23:合成ペプチド
配列番号23:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:1)。
配列番号23:XaaはAla又はGluを表す(存在位置:2)。
配列番号23:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:3)。
配列番号23:XaaはArg, Lys, Leu又はTyrを表す(存在位置:4)。
配列番号23:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:5)。
配列番号23:XaaはLeu, Phe又はThrを表す(存在位置:7)。
配列番号23:XaaはLys, Arg又はGlyを表す(存在位置:8)。
配列番号23:XaaはGln, Gly又はValを表す(存在位置:9)。
配列番号23:Xaaは任意のアミノ酸残基を表す(存在位置:10)。
配列番号23:XaaはPhe, Met又はArgを表す(存在位置:11)。
【0085】
配列番号24:合成ペプチド
配列番号24:XaaはArg又はTyrを表す(存在位置:4)。
配列番号24:XaaはArg又はLysを表す(存在位置:5)。
配列番号24:XaaはLeu又はThrを表す(存在位置:7)。
配列番号24:XaaはArg又はGlyを表す(存在位置:8)。
配列番号24:XaaはGln又はValを表す(存在位置:9)。
配列番号24:XaaはSer又はIleを表す(存在位置:10)。
配列番号24:XaaはPhe又はArgを表す(存在位置:11)。
配列番号25:合成ペプチド
配列番号26:合成ペプチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(1)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (1)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[R/K/L]はアルギニン、リジン又はロイシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R/V]はリジン、アルギニン又はバリンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[M/R/P]はメチオニン、アルギニン又はプロリンを表し、[M/L/G]はメチオニン、ロイシン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(1)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【請求項2】
前記式(1)で示されるアミノ酸配列が、下記式(1')で示されるアミノ酸配列である、請求項1記載のペプチド。
K-[S/A/P]-[D/A]-R-K-K-R-Y-[S/T]-V-V-G-N-P-Y-W-M (1')
(式中、[S/A/P]はセリン、アラニン又はプロリンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表す。)
【請求項3】
前記式(1)で示されるアミノ酸配列が、下記式(1-1)〜(1-5)のいずれかで示されるアミノ酸配列である、請求項1記載のペプチド。
K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-4)
K-P-A-R-K-K-R-Y-S-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-5)
【請求項4】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(2)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K/G]-[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-[S/T]-[L/V/F]-[K/R]-[Q/G/V]-X-[F/M/R]-[R/K/Q]-[R/G] (2)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K/G]はアルギニン、リジン又はグリシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R]はリジン又はアルギニンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表し、[R/K/Q]はアルギニン、リジン又はグルタミンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(2)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【請求項5】
前記式(2)で示されるアミノ酸配列が、下記式(2-1)で示されるアミノ酸配列である、請求項4記載のペプチド。
G-R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R-Q-G (2-1)
【請求項6】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(3)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-[S/T]-[L/F/T]-[K/R/G]-[Q/G/V]-X-[F/M/R] (3)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/F/T]はロイシン、フェニルアラニン又はスレオニンを表し、[K/R/G]はリジン、アルギニン又はグリシンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表す。)
(b) 上記式(3)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼにより選択的にリン酸化され得るペプチド。
【請求項7】
前記式(3)で示されるアミノ酸配列が、下記式(3')で示されるアミノ酸配列である、請求項6記載のペプチド。
R-A-K-[R/Y]-[R/K]-[S/T]-[L/T]-[R/G]-[Q/V]-[S/I]-[F/R] (3')
(式中、[R/Y]はアルギニン又はチロシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[S/T]はセリン又はスレオニンを表し、[L/T]はロイシン又はスレオニンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表し、[Q/V]はグルタミン又はバリンを表し、[S/I]はセリン又はイソロイシンを表し、[F/R]はフェニルアラニン又はアルギニンを表す。)
【請求項8】
前記式(3)で示されるアミノ酸配列が、下記式(3-1)又は(3-2)で示されるアミノ酸配列である、請求項6記載のペプチド。
R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (3-1)
R-A-K-R-R-S-T-G-V-S-F (3-2)
【請求項9】
下記式(1-1)〜(1-4)及び(3-1)のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
K-S-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-T-V-V-G-N-P-Y-W-M (1-4)
R-A-K-Y-K-T-L-R-Q-I-R (3-1)
【請求項10】
標識物質により標識化されたものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項11】
Rho-キナーゼ活性の測定方法であって、
(a) 請求項1〜10のいずれか1項に記載のペプチドと、Rho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたペプチドを定量する工程と
を含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性の測定用試薬。
【請求項13】
Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断方法であって、
(a) 請求項1〜10のいずれか1項に記載のペプチドと、哺乳動物から単離された成分を含むRho-キナーゼ活性を有する可能性のある試料とを反応させて、ペプチドをリン酸化する工程と、
(b) 工程(a)でリン酸化されたペプチドを定量する工程と
を含む、前記方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の診断用医薬組成物。
【請求項15】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(4)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-X-[D/A]-[R/K]-[R/K]-[R/K]-[R/K/L]-X-A-[L/V/F]-[K/R/V]-[Q/G/V]-X-[M/R/P]-X-X-[M/L/G] (4)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表し、[R/K/L]はアルギニン、リジン又はロイシンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R/V]はリジン、アルギニン又はバリンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[M/R/P]はメチオニン、アルギニン又はプロリンを表し、[M/L/G]はメチオニン、ロイシン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(4)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【請求項16】
前記式(4)で示されるアミノ酸配列が、下記式(4')で示されるアミノ酸配列である、請求項15記載のペプチド。
K-[S/A/P]-[D/A]-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (4')
(式中、[S/A/P]はセリン、アラニン又はプロリンを表し、[D/A]はアスパラギン酸又はアラニンを表す。)
【請求項17】
前記式(4)で示されるアミノ酸配列が、下記式(4-1)〜(4-5)のいずれかで示されるアミノ酸配列である、請求項15記載のペプチド。
K-S-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (4-1)
K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (4-2)
K-S-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (4-3)
K-A-D-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (4-4)
K-P-A-R-K-K-R-Y-A-V-V-G-N-P-Y-W-M (4-5)
【請求項18】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(5)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K/G]-[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-A-[L/V/F]-[K/R]-[Q/G/V]-X-[F/M/R]-[R/K/Q]-[R/G] (5)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K/G]はアルギニン、リジン又はグリシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[L/V/F]はロイシン、バリン又はフェニルアラニンを表し、[K/R]はリジン又はアルギニンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表し、[R/K/Q]はアルギニン、リジン又はグルタミンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表す。)
(b) 上記式(5)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【請求項19】
前記式(5)で示されるアミノ酸配列が、下記式(5-1)で示されるアミノ酸配列である、請求項18記載のペプチド。
G-R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R-Q-G (5-1)
【請求項20】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a) 下記式(6)で示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
[R/K]-[A/E]-[R/K]-[R/K/L/Y]-X-A-[L/F/T]-[K/R/G]-[Q/G/V]-X-[F/M/R] (6)
(式中、Xは任意のアミノ酸残基を表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[A/E]はアラニン又はグルタミン酸を表し、[R/K/L/Y]はアルギニン、リジン、ロイシン又はチロシンを表し、[L/F/T]はロイシン、フェニルアラニン又はスレオニンを表し、[K/R/G]はリジン、アルギニン又はグリシンを表し、[Q/G/V]はグルタミン、グリシン又はバリンを表し、[F/M/R]はフェニルアラニン、メチオニン又はアルギニンを表す。)
(b) 上記式(6)で示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Rho-キナーゼに対する阻害活性を有するペプチド。
【請求項21】
前記式(6)で示されるアミノ酸配列が、下記式(6')で示されるアミノ酸配列である、請求項20記載のペプチド。
R-A-K-[R/Y]-[R/K]-A-[L/T]-[R/G]-[Q/V]-[S/I]-[F/R] (6')
(式中、[R/Y]はアルギニン又はチロシンを表し、[R/K]はアルギニン又はリジンを表し、[L/T]はロイシン又はスレオニンを表し、[R/G]はアルギニン又はグリシンを表し、[Q/V]はグルタミン又はバリンを表し、[S/I]はセリン又はイソロイシンを表し、[F/R]はフェニルアラニン又はアルギニンを表す。)
【請求項22】
前記式(6)で示されるアミノ酸配列が、下記式(6-1)又は(6-2)で示されるアミノ酸配列である、請求項20記載のペプチド。
R-A-K-Y-K-A-L-R-Q-I-R (6-1)
R-A-K-R-R-A-T-G-V-S-F (6-2)
【請求項23】
請求項15〜22のいずれか1項に記載のペプチドを、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の患者に投与することを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療方法。
【請求項24】
請求項15〜22のいずれか1項に記載のペプチドを含む、Rho-キナーゼ活性に関連する疾患の治療用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254937(P2012−254937A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211147(P2009−211147)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】