説明

RhoA遺伝子のRNAi調節及びその使用法

【課題】RhoA mRNAレベル、RhoA蛋白質レベルを低下させ、少なくとも部分
的にRhoAに媒介される病理過程を処置する、例えば、対象、例えば、ヒトのような哺
乳動物においてRhoAの軸索伸長・再生の阻害を阻止するのに有用な組成物及び方法を
提供すること。
【解決手段】本発明は、RhoA遺伝子の発現を調節するための組成物及び方法に関し、
さらに詳細には、化学修飾されたオリゴヌクレオチドによるRhoAの抑制に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年7月21日に申請された米国仮出願第60/701,470号明
細書、2005年10月14日に申請された米国仮出願第60/726,838号明細書
及び2005年12月7日に申請された米国仮出願第60/748,316号明細書の利
益を主張するものである。これらの優先出願の各々の内容は参照してその全体が本明細書
に組み込まれる。
【0002】
本発明は、RhoAの発現を調節するための組成物及び方法に関し、更に詳細には、R
NA干渉を介したオリゴヌクレオチド、例えば、化学修飾されたオリゴヌクレオチドによ
るRhoA mRNA及びRhoA蛋白質レベルの抑制に関する。
【背景技術】
【0003】
RNA干渉、即ち“RNAi”は、二本鎖RNA(dsRNA)が虫類に導入されると
遺伝子発現を阻害しうるという所見を説明するため、Fireとその共同研究者らによっ
て最初に作り出された用語である(ファイアーら(Fire et al.),Natu
re第391巻:806−811ページ(1998年))。短鎖dsRNAは脊椎動物を
含む多くの生物において遺伝子特異的転写後サイレンシングを導き、遺伝子機能を研究す
るための新しいツールを提供している。
【0004】
多くのミエリン由来の軸索成長阻害物質が特徴づけられている(閲覧のため、国際公開
第1999/995394547号パンフレット;米国特許第5,858,708号明細
書;シュワブ(Schwab),Neurochem.第21巻:755〜761ページ
(1996年)を参照)。軸索伸長に対する阻害活性を有するCNSの白質の幾つかの構
成要素であるNI35,NI250(Nogo)及びミエリン関連糖蛋白質(MAG)も
記載されている(国際公開第1990/9005191号パンフレット;米国特許第5,
684,133号明細書)。特に、RhoAは、それ自体がRas GTPアーゼのスー
パーファミリーに属するRho(Ras相同体(Ras homologue))GTP
アーゼの大ファミリーのメンバーである。全ての真核生物は少なくとも一つのRhoGT
Pアーゼを含む。進化の過程において、Rho GTPアーゼの数は1生物につき5〜6
(酵母)から20以上(哺乳動物)に増加した(カルノブ、エー.イー.ら(Karno
ub,A.E.et al.),Breast Cancer Res.Treat.,
第84巻:61ページ(2004年))。他のGTPアーゼと同様に、RhoAは内因性
GTPアーゼ活性を有し、不活性GDP結合状態と活性GTP結合状態との間を往来する
。インビトロではGDPのGTPへの変換は極めて緩徐に生じ、GDPをGTPと交換す
るグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)により触媒される。GTPアーゼ活性化蛋白
質(GAP)はGTPのγ−リン酸の加水分解を触媒する(ウィーラー、エー.ピー.(
Wheeler,A.P.),リドレイ、エー.ジェイ.(Ridley,A.J.),
Exp.Cell Res.,第301巻:43ページ(2004年))。第三のセット
の調節蛋白質であるグアニンヌクレオチド解離阻害物質(GDI)は、不活性GDP結合
状態にてGTPアーゼをサイトゾルに隔離する。
【0005】
Rho GTPアーゼのN末端半分は、GTP結合状態とGDP結合状態との間で構造
を変化させるスイッチ1及び2領域と共に、GTP結合及び加水分解に関与する大部分の
アミノ酸を含む(ビショップ、エー.エル.(Bishop,A.L.),ホール、エー
.(Hall,A.),Biochem.J.,第348巻(Pt.2):241ページ
(2000年))。RhoファミリーGTPアーゼのC末端は、蛋白質の正確な局在に不
可欠である。これは保存C末端システインのプレニル化によって翻訳後修飾され、次に、
最後の3個のアミノ酸のメチル化及び蛋白分解除去が生じる(シャオ(Shao,F.)
,ディクソン、ジェイ.イー.(Dixon,J.E.),Adv.Exp.Med.B
iol.,第529巻:79ページ(2003年))。プレニル基はGTPアーゼを膜内
に固着し、この修飾は細胞増殖、形質転換及び細胞骨格構成に不可欠である(アラル、シ
ーら(Allal,C,et al.),J.Biol.Chem.,第275巻:31
001ページ(2000年))。Rho蛋白質のプレニル化はその安定性のために重要だ
と思われ、プレニル基を合成する酵素の阻害物質はRho蛋白質レベル及びその機能の低
下を誘発する(スタマタキス、ケー.ら(Stamatakis,K.,et al.)
,J.Biol.Chem,第277巻:49389ページ(2002年))。RhoA
の場合、プレニル化はゲラニルゲラニル基を付加する。RhoAは主に細胞質内又は原形
質膜において見出される(アダムソン、ピー.ら(Adamson,P.,et al.
),J.Cell Biol.,第119巻:617ページ(1992年))。
【0006】
RhoAはp75NTRの細胞内部分に結合することができ、p75NTR依存的にN
ogo−Rにより活性化され(ワン、ケー.シー.ら(Wang,K.C.,et al
.),Nature,第420巻:74ページ(2002年))、このようにしてMAG
,Nogo−66及びオリゴデンドロサイト−ミエリン糖蛋白質がRhoAを活性化させ
る。Nogo−Aの中央阻害ドメインであってNogo−66と異なるNiG、及びコン
ドロイチン硫酸プロテオグリカンであってミエリンのもう1つの構成要素であるVers
ican V2は、未だ解明されていないRhoA活性化の別の経路により、p75NT
Rの非存在下にてRhoAを活性化することができる(シュバイガイテル、アール.ら(
Schweigreiter,R.,et al.,)Mol.Cell Neuros
ci.,第27巻:163ページ(2004年))。活性化の更なる経路が存在する可能
性がある。
【0007】
RhoAは中枢神経系(CNS)に存在するが末梢神経には存在しない成長抑制機構の
一部であり、損傷後のCNS組織の再生を阻害する。RhoAの発現及び活性化の双方は
脳及び脊髄損傷にて誘発される(ミューラー、ケー.ら(Mueller,K.,et
al.),Nature Reviews,第4巻:387ページ(2005年))。R
hoAの活性化は、神経成長円錘の破壊、退縮球の形成及び神経突起の消退を惹起する。
RhoAの不活性化はインビトロにて本来であれば阻害性の基質上の一次ニューロンにお
ける神経突起の伸長を惹起し、インビボにてラット及びマウスにおいて脊髄損傷後に軸索
の再生及び機能回復を促進する(レーマン、エム.エー.ら(Lehmann,M.A.
,et al.),J.Neurosci.,第19巻:7537ページ(1999年)
;ハラ、エム.ら(Hara,M,et al.),J.Neurosurg.,第93
巻:94ページ(2000年);ダーグハム、ピー.ら(Dergham,P.,et
al.),J.Neurosci.,第22巻:6570ページ(2002年))。更に
、RhoAの不活性化は、脊髄損傷に誘発されるアポトーシスから脊髄の内在細胞を防御
することが示されている(デュブリュイ、シー.アイ.ら(Dubreuil,C.I.
,et al),J.Cell Biol.,第162巻:233ページ(2003年)
)。脊髄損傷後の神経保護処置が機能回復の改善につながるため、これらの所見は臨床的
意義を有する(リュー、エックス.ゼット.ら(Liu,X.Z.,et al.),J
.Neurosci.,第17巻:5395ページ(1997年))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
明らかに、RhoAは、例えばCNS細胞の破壊および/または再生障害を伴う疾患及
び病態を対象にした治療的介入戦略の標的となりうる。本発明は、RhoA遺伝子を発現
している細胞内のRhoA mRNA及び蛋白質レベルの抑制を惹起する方法及び短鎖d
sRNAを含む薬剤を提供することにより、当該技術を進展させる。これらの方法及び薬
剤は、例えば、RhoAの軸索伸長の阻害を阻止し、その結果、神経の成長及び増殖を刺
激することにより、少なくとも部分的にRhoAに媒介される障害又は病理過程の処置に
用いられうる。
【0009】
本発明は、少なくとも部分的にiRNA剤を用いたRhoA遺伝子の検討、更に、Rh
oA部位を標的とするiRNA剤の試験に基づく。本発明は、RhoA mRNAレベル
、RhoA蛋白質レベルを低下させ、少なくとも部分的にRhoAに媒介される病理過程
を処置する、例えば、対象、例えばヒトのような哺乳動物においてRhoAの軸索伸長・
再生の阻害を阻止するのに有用な組成物及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、下記表1に示す物質番号6477〜6836から成る群か
ら選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだ
け異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜
6836から成る群から選択される任意の1つの物質のアンチセンス配列と僅かに1,2
又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチ
センス鎖とを含むiRNA剤を提供する。
【0011】
更なる態様において、本発明は、物質番号6477〜6836から成る群から選択され
る任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、
少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836か
ら成る群から選択される任意の1つの物質のアンチセンス配列の少なくとも15個の隣接
ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含む、細胞内のrhoA遺伝子の発現を阻害する
ためのiRNA剤であって、これらの物質とのインキュベーション後にヒト培養細胞に存
在するRhoA mRNAの量を、物質とインキュベートされなかった細胞に対して40
%以上減少させるiRNA剤を提供する。
【0012】
更なる態様において、本発明は、物質番号6477〜6836から成る群から選択され
る任意の1つの物質の配列の1つと本質的に同一の少なくとも16,17又は18個のヌ
クレオチドの配列、但し、それぞれ1鎖につき1,2又は3個以下のヌクレオチドが他の
ヌクレオチドに置換されているが(例えば、アデノシンがウラシルに置換)、RhoA発
現を阻害する能力を本質的に保持している配列を各々が含むセンス鎖とアンチセンス鎖と
を含む、細胞内のrhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤を提供する。このよ
うな物質では、センスおよび/またはアンチセンス鎖配列は、物質番号6523,652
4,6530,6614,6650,6656,6657,6661,6662,670
3,6712,6713,6732,6751,6756,6767,6769,678
7,6789,6790,6832のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択
されることが好ましい。
【0013】
明らかに、上記実施形態において、本発明のiRNA剤のセンス鎖および/またはアン
チセンス鎖は、物質番号6477〜6836の物質のセンス鎖及びアンチセンス鎖とも同
一でありうる。
【0014】
本発明のiRNA剤は修飾、例えばiRNA剤が生体試料において上昇した安定性を有
するような修飾を含むことができる。例えば、iRNA剤はホスホロチオアート、2’−
修飾ヌクレオチド、固定ヌクレオチド、非塩基性ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド
、ホスホロアミダート又はヌクレオチドを構成する非天然塩基を含むことができる。上記
実施形態のために、iRNA剤はヌクレオチド修飾の存在の可能性にかかわらず、物質番
号6477〜6836の物質の配列の1つを含むとみなされ、即ち2’−O−メチルグア
ノシンはそのような比較ではグアノシンとみなされうる。しかし、一定のパターンの修飾
が本発明の特に好ましい実施形態である。従って、別の実施形態において、本発明は、セ
ンスおよび/またはアンチセンス鎖配列が物質番号AL−DP−5972,AL−DP−
5973,AL−DP−5974,AL−DP−5975,AL−DP−5976,AL
−DP−5978,AL−DP−5979,AL−DP−5981,AL−DP−598
2,AL−DP−5983,AL−DP−5984,AL−DP−5986,AL−DP
−5987,AL−DP−5988,AL−DP−5989,AL−DP−5990,A
L−DP−5991,AL−DP−5992,AL−DP−5993,AL−DP−59
94,AL−DP−5995,AL−DP−6176,AL−DP−6177のセンス及
びアンチセンス鎖配列から成る群から選択される、細胞内のrhoA遺伝子の発現を阻害
するためのiRNA剤を提供する。
【0015】
本発明のiRNA剤において、アンチセンスRNA鎖は30以下のヌクレオチド長とな
り、iRNA剤の二重鎖領域は15〜30ヌクレオチド対長となることができる。
本発明に係る2’−修飾ヌクレオチドは、ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、
少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−ua−3’)ジヌクレオチド
;5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−
グアニン−3’(5’−ug−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2’−修飾ヌク
レオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−ca−3’
)ジヌクレオチド;又は5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1
つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−uu−3’)ジヌクレオチドを含みうる。
【0016】
本発明のiRNA剤は下記のように設計されうる。
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフ
におけるすべての5’−ヌクレオチドがセンス鎖において2’−修飾され、5’−ua−
3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドがアンチセンス
鎖において2’−修飾され、或いは、
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフ
におけるすべての5’−ヌクレオチドが、センス及びアンチセンス鎖において2’−修飾
され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドがセンス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’
及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドがアンチセンス鎖に
おいて2’−修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドがセンス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’
,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての
5’−ヌクレオチドがアンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチドが2’−修飾され、アンチセンス鎖で
はヌクレオチドが2’−修飾されない。
【0017】
本発明のiRNA剤における2’−修飾は、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−
フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−
O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−
DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−
ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)及び2’−O−N−メチ
ルアセトアミド(2’−O−NMA)から成る群から選択されうる。
【0018】
本発明のiRNA剤は、1〜4個の不対合ヌクレオチド、好ましくは2又は3個の不対
合ヌクレオチドを有するヌクレオチドオーバーハングを含むことができる。ヌクレオチド
オーバーハングはiRNA剤のアンチセンス鎖の3’−末端に存在することができる。i
RNA剤は、好ましくはiRNA剤のセンス鎖の3’−末端に共役結合したコレステロー
ル部分を含むことができる。好ましい実施形態では、iRNA剤は神経細胞又は神経鞘細
胞による取込みの標的となる。
【0019】
本発明は、細胞内のRhoA mRNAレベルを低下させるための方法を更に提供する
。本発明の方法は、細胞内のRhoA mRNAを選択的に低下させるためにRNA干渉
に関与する細胞機構を利用し、本発明のiRNA剤の1つと細胞を接触させるステップか
ら成る。このような方法は細胞に対して直接行うことができ、或いは本発明のiRNA剤
の1つを哺乳動物の被検体に投与することにより、被検体に対して行うことができる。細
胞内のRhoA mRNAの減少は産生されるRhoA蛋白質の量の減少をもたらし、生
体においてRhoA特異的病理/疾患作用の低下をもたらしえて、例えば、RhoAの軸
索伸長・再生の阻害を阻止する。
【0020】
本発明の別の態様では、本発明のiRNA剤を投与するステップを含む、少なくとも部
分的にRhoAに媒介される病理過程を有するヒト被験者を処置する方法が提供され、例
えば、iRNA剤は物質番号6477〜6836の任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅
かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを
含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836の任意の1つの物質のアンチセンス配列と
僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチド
を含むアンチセンス鎖とを含む。
【0021】
本発明の上記方法の一実施形態において、病理過程は、好ましくは神経の障害又は損傷
の結果としての神経の成長又は伸長の阻害である。別の好ましい実施形態において、iR
NA剤は対象の細胞又は組織内のRhoAの発現を低減させるのに十分な量にて投与され
る。対象はヒトであることが好ましい。
【0022】
別の態様では、本発明は、
a)本発明のiRNA剤と、
b)医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は本発明のiRNA剤を含む細胞を提供する。
別の実施形態において、本発明は細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するための方法
を提供し、当該方法は、
(a)本発明のiRNA剤を細胞に導入するステップと、
(b)RhoA遺伝子のmRNA転写の低下を得るのに十分な時間、ステップ(a)にて
作製された細胞を維持し、これにより細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するステップ
とを含む。
【0024】
別の実施形態において、本発明は細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのベク
ターを提供し、前記ベクターは、本発明のiRNA剤の少なくとも1つの鎖をコードする
ヌクレオチド配列に機能的に結合した調節配列を含む。
【0025】
別の実施形態において、本発明は上記ベクターを含む細胞を提供する。
本発明の方法及び組成物、例えば方法及びiRNA組成物は、本願で述べる任意の用量
/製剤及び本願で述べる任意の投与経路で使用されることができる。
【0026】
本発明の1又はそれ以上の実施形態の詳細は下記に示される。本発明の他の特徴、目的
及び利点は下記の説明及び特許請求の範囲から明らかになろう。本出願はあらゆる目的の
ために、引用されたすべての参考文献、特許及び特許出願を参照してその全体を組み込む
ものとする。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列
と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチ
ドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つ
の物質のアンチセンス配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくと
も15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含む、細胞内のRhoA遺伝子の
発現を阻害するためのiRNA剤。
(項目2)
物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列
と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチ
ドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つ
の物質のアンチセンス配列の少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖
とを含む、細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤であって、これら
の物質とのインキュベーション後に培養ヒト細胞に存在するRhoA mRNAの量を、
前記物質とインキュベートされなかった細胞に対して40%以上減少させるiRNA剤。
(項目3)
物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質の配列の1つと
本質的に同一の少なくとも16,17又は18個のヌクレオチドの配列、但し、それぞれ
1鎖につき1,2又は3個以下のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されているが(
例えば、アデノシンがウラシルに置換)、RhoA発現を阻害する能力を本質的に保持し
ている配列を各々が含むセンス鎖とアンチセンス鎖とを含む、細胞内のRhoA遺伝子の
発現を阻害するためのiRNA剤。
(項目4)
前記センスおよびアンチセンス鎖配列の少なくとも一方が、物質番号6523,6524
,6530,6614,6650,6656,6657,6661,6662,6703
,6712,6713,6732,6751,6756,6767,6769,6787
,6789,6790,6832のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択さ
れる、項目1から項目3のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目5)
前記センスおよびアンチセンス鎖配列の少なくとも一方が、物質番号AL−DP−597
2,AL−DP−5973,AL−DP−5974,AL−DP−5975,AL−DP
−5976,AL−DP−5978,AL−DP−5979,AL−DP−5981,A
L−DP−5982,AL−DP−5983,AL−DP−5984,AL−DP−59
86,AL−DP−5987,AL−DP−5988,AL−DP−5989,AL−D
P−5990,AL−DP−5991,AL−DP−5992,AL−DP−5993,
AL−DP−5994,AL−DP−5995,AL−DP−6176,AL−DP−6
177のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択される、項目1から項目
4のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目6)
前記アンチセンスRNA鎖が30以下のヌクレオチド長であり、前記iRNA剤の二重鎖
領域が15〜30ヌクレオチド対長である、項目1から項目5のいずれか一項に記載
のiRNA剤。
(項目7)
iRNA剤が生体試料において上昇した安定性を有するように修飾される、項目1から
項目6のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目8)
前記修飾が、ホスホロチオアート、2’−修飾ヌクレオチド、固定ヌクレオチド、非塩基
性ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート又はヌクレオチドを構成
する非天然型塩基である、項目7に記載のiRNA剤。
(項目9)
ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン
−3’(5’−ua−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチド
である、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−ug−3’)ジヌク
レオチド;5’−シチジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シ
チジン−アデニン−3’(5’−ca−3’)ジヌクレオチド;又は5’−ウリジンが2
’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’
−uu−3’)ジヌクレオチドを含む、項目1から項目8のいずれか一項に記載のi
RNA剤。
(項目10)
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフ
におけるすべての5’−ヌクレオチドが前記センス鎖において2’−修飾され、5’−u
a−3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記アン
チセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチー
フにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記センス及びアンチセンス鎖において2’−
修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドが前記センス鎖において2’−修飾され、5’−ua
−3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記アンチ
センス鎖において2’−修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドが前記センス鎖において2’−修飾され、5’−ua
−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるす
べての5’−ヌクレオチドが前記アンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
前記センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチドが2’−修飾され、前記アンチ
センス鎖ではヌクレオチドが2’−修飾されない、項目1から項目9のいずれか一項
に記載のiRNA剤。
(項目11)
前記2’−修飾が、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチ
ル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’
−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−
ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキ
シエチル(2’−O−DMAEOE)及び2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O
−NMA)から成る群から選択される、項目8から項目10のいずれか一項に記載の
iRNA剤。
(項目12)
1〜4個の不対合ヌクレオチドを有するヌクレオチドオーバーハングを含む、項目1か
ら項目11のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目13)
コレステロール部分を含む、項目1から項目12のいずれか一項に記載のiRNA剤

(項目14)
前記コレステロール部分が前記iRNA剤のセンス鎖の3’末端に接合している、項目
13に記載のiRNA剤。
(項目15)
前記iRNA剤が神経細胞又は神経鞘細胞による取込みの標的となる、項目1から請求
項14のいずれか一項に記載のiRNA剤。
(項目16)
項目1から項目15のいずれか一項に記載のiRNA剤を対象に投与するステップを
含む、部分的にRhoAに媒介される病理過程を有する対象を処置する方法。
(項目17)
前記病理過程が神経の成長又は伸長の阻害である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記病理過程が、神経の障害又は損傷の結果としての神経の成長又は伸長の阻害である、
項目17に記載の方法。
(項目19)
前記iRNA剤が、前記対象の細胞又は組織内のRhoAの発現を低減するのに十分な量
にて投与される、項目16から項目18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記対象がヒトである、項目16から項目19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
a)項目1から項目15のいずれか一項に記載のiRNA剤と、
b)医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
(項目22)
項目1から項目15のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む細胞。
(項目23)
細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するための方法であって、
(a)項目1から項目15のいずれか一項に記載のiRNA剤を細胞に導入するス
テップと、
(b)RhoA遺伝子のmRNA転写の低下を得るのに十分な時間、ステップ(a)に
て作製された細胞を維持し、これにより細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するステッ
プとを含む方法。
(項目24)
細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、項目1から項目
15のいずれか一項に記載のiRNA剤の少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド
配列に機能的に結合した調節配列を含むベクター。
(項目25)
項目24に記載のベクターを含む細胞。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】コレステロールと共役結合したRNA鎖の合成及び構造を示す概略図である。球体は固相(制御多孔性ガラス、CPG)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
説明を容易にするため、「ヌクレオチド」又は「リボヌクレオチド」という用語は、R
NA剤の1又はそれ以上のモノマーサブユニットに関して本願で用いられることがある。
本願における「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」という用語の用法は、修飾RN
A又はヌクレオチドサロゲートの場合、下記に更に説明するように、1又はそれ以上の位
置における修飾ヌクレオチド又はサロゲート置換部分も指すことを理解されよう。
【0029】
本願で用いられる「RNA剤」は非修飾RNA、修飾RNA又はヌクレオチドサロゲー
トであり、これらの各々は本願で説明され、或いはRNA合成技術分野で周知である。多
くの修飾RNA及びヌクレオシドサロゲートが記載されているが、好ましい例には、非修
飾RNAよりヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性が高いものが含まれる。好ましい例
には、2’糖修飾、一本鎖オーバーハング、好ましくは3’一本鎖オーバーハングの修飾
又は、特に一本鎖の場合、1つ以上のリン酸基若しくは1つ以上のリン酸基類似体を含む
5’−修飾を有するものが含まれる。
【0030】
本願で用いられる「iRNA剤」(「干渉RNA剤」の略語)は、標的遺伝子、例えば
RhoAの発現を抑制することができるRNA剤である。理論によって限定されることを
望まないが、iRNA剤は当該技術分野でRNAiと称されることもある標的mRNAの
転写後開裂又は転写前機序又は翻訳前機序を含む多くの機序の1又はそれ以上の機序によ
り作用することができる。iRNA剤は二本鎖iRNA剤とすることができる。
【0031】
本願で用いられる「dsiRNA剤」(「二本鎖iRNA剤」の略語)は、鎖間ハイブ
リダイゼーションが二重鎖構造の領域を形成することができる、二本以上、好ましくは二
本の鎖を含むiRNA剤である。本願における「鎖」はヌクレオチド(非天然型又は修飾
ヌクレオチドを含む)の隣接配列を指す。二本以上の鎖又は各鎖は別々の分子の一部を形
成し、或いは、例えばリンカー、例えばポリエチレングリコールリンカーによって共有結
合的に相互結合して1個の分子を形成することができる。少なくとも一本の鎖は、標的R
NAに対して十分に相補的な領域を含むことができる。このような鎖は「アンチセンス鎖
」と称される。アンチセンス鎖に相補的な領域を含む剤の第二の鎖は「センス鎖」と称さ
れる。しかし、dsiRNA剤は少なくとも部分的に自己相補的であって、例えば、二重
鎖領域を含むヘアピン又はパンハンドル構造を形成する単一RNA分子からも形成されう
る。このような場合、「鎖」という用語は同じRNA分子の別の領域に相補的なRNA分
子の1つの領域を指す。
【0032】
哺乳動物細胞において、長鎖dsiRNA剤は有害となる頻度が高いインターフェロン
応答を誘発しうるが、短鎖dsiRNA剤は少なくとも細胞および/または宿主に有害と
なるほどにインターフェロン応答を惹起しない(マンシェら(Manche et al
.),Mol.Cell.Biol.12:第5238巻,1992年;リーら(Lee
et al.,Virology 第199巻:491ページ,1994年;カステリ
ら(Castelli et al.),J.Exp.Med.第186巻:967ペー
ジ,(1997年);チェンら(Zheng et al.),RNA第10巻:193
4ページ,(2004年);ハイデルら(Heidel et al.)「動物における
裸のsiRNAに対するインターフェロン応答の欠如(”Lack of interf
eron response in animals to naked siRNAs
”)」、Nature Biotechm.advance online publi
cation doi:10.1038/nbt1038(2004年11月21日))
。本発明のiRNA剤は、十分に短く正常哺乳動物細胞において有害な非特異的インター
フェロン応答を惹起しない分子を含む。従って、iRNA剤を含む組成物(例えば、本願
で述べるように製剤化)の対象への投与は、インターフェロン応答を回避すると同時に、
対象においてRhoA発現細胞におけるRhoA遺伝子の発現を低減するのに用いられる
ことができる。十分に短く有害なインターフェロン応答を惹起しない分子は、本願ではs
iRNA剤又はsiRNAと称される。本願で用いられる「siRNA剤」又は「siR
NA」は、十分に短いためヒト細胞において有害なインターフェロン応答を誘発しないi
RNA剤、例えばdsiRNA剤を指し、例えば、60未満であるが好ましくは50,4
0又は30未満のヌクレオチド対の二重鎖領域を有する。
【0033】
dsiRNA剤及びsiRNA剤を含む、本願で述べられる単離されたiRNA剤は、
例えばRNA分解により、RhoA核酸の発現の低減を媒介することができる。説明の便
宜上、このようなRNAは本願においてサイレンシングされるRNAとも称される。この
ような核酸は標的遺伝子とも称される。サイレンシングされるRNAは、内在性RhoA
遺伝子の遺伝子産物であることが好ましい。
【0034】
本願で用いられるように、「RNAiを媒介する」という表現は標的遺伝子を配列特異
的にサイレンシングする物質の能力を指す。「標的遺伝子をサイレンシングする」とは、
当該物質と接触していない時に標的遺伝子のある種の産物を含み、および/または発現し
ている細胞が、当該物質と接触していない同様の細胞に対して、当該物質と接触した時、
このような遺伝子産物を少なくとも10%,15%,20%,25%,30%,35%,
40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%又
は90%減で含み、および/または発現するプロセスをいう。標的遺伝子のこのような産
物は、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、蛋白質又は調節エレメントでありう
る。
【0035】
本願で用いられるように、「相補的」という用語は、本発明の化合物と標的RNA分子
、例えば、RhoA mRNAとの間に安定した特異的な結合が生じるのに十分な相補性
を示すのに用いられる。特異的結合は、特異的結合が所望される条件下、即ち、インビボ
アッセイ又は治療上の処置の場合の生理学的条件下、或いはインビトロアッセイの場合、
アッセイが実施される条件下、オリゴマー化合物の非標的配列への非特異的結合を回避す
るのに十分な相補性を必要とする。典型的には、非標的配列は少なくとも4個のヌクレオ
チドだけ標的配列と異なる。
【0036】
本願で用いられるように、iRNA剤は、細胞において標的RNAにコードされた蛋白
質の産生を減少させる場合、標的RNA、例えば標的mRNA(例えば、標的RhoA
mRNA)に「十分に相補的」である。iRNA剤は標的RNAに「完全に相補的」とも
なることができ、例えば、標的RNAとiRNA剤はアニーリングし、好ましくはワトソ
ン・クリック型塩基対のみでできたハイブリッドを完全な相補性の領域に形成する。「十
分に相補的」なiRNA剤は、標的RhoA RNAに完全に相補的な(例えば、少なく
とも10個のヌクレオチドの)内部領域を含みうる。更に、一部の実施形態において、i
RNA剤は単一ヌクレオチドの相違を特異的に識別する。この場合、単一ヌクレオチドの
相違の領域(例えば、7ヌクレオチド以内)に完全な相補性が見出される場合、iRNA
剤はRNAiを媒介するだけである。好ましいiRNA剤は表1に示すセンス及びアンチ
センス配列に基づき、或いはこれらから成り、或いはこれらを含む。
【0037】
本願で用いられるように、第二のヌクレオチド配列と比較して第一のヌクレオチド配列
に言及して用いられる際の「本質的に同一」とは、第一のヌクレオチド配列が1,2又は
3つまでのヌクレオチド置換(例えば、アデノシンがウラシルに置換)を除き、第二のヌ
クレオチド配列と同一であることをいう。ヌクレオチドの欠失、付加又は置換により、表
1のiRNA剤の1つと同一ではないがその1つに由来するiRNA剤に言及して本願で
用いられる、「培養ヒトRhoA発現細胞におけるRhoA発現を阻害する能力を本質的
に保持している」とは、得られたiRNA剤がその由来源の表1のiRNA剤の阻害活性
と20%以下異なる阻害活性を有する(残存標的mRNAの点から)ことをいう。例えば
、培養ヒトRho−A発現細胞に存在するRhoA mRNAの量を70%低下させる表
1のiRNA剤に由来するiRNA剤は、培養ヒトRhoA発現細胞におけるRhoA発
現を阻害する能力を本質的に保持しているとみなされるために、それ自体が培養ヒトRh
oA発現細胞に存在するRhoA mRNAの量を少なくとも50%低下させうる。任意
で、本発明のiRNA剤は培養ヒトRhoA発現細胞に存在するRhoA mRNAの量
を少なくとも50%又は少なくとも40%低下させうる。
【0038】
本願で用いられるように、「対象」はRhoA蛋白質発現に媒介される障害に対する処
置を受ける哺乳動物を指す。対象はウシ、ウマ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギ又は
霊長動物のような任意の哺乳動物でよい。好ましい実施形態において、対象はヒトである

【0039】
iRNA剤の設計及び選択
本願で用いられるように、「RhoA発現と関連する障害」は、(1)RhoA mR
NAおよび/または蛋白質の存在に部分的に媒介され、(2)そのアウトカムが、存在す
るRhoA mRNAおよび/または蛋白質のレベルを低下させることによって影響を及
ぼされうる、任意の生体又は病理状態を指す。RhoA発現と関連する特異的障害は下記
に示され、主に軸索の伸長及び再生の阻害におけるRhoAの作用の原因に基づく。
【0040】
本発明は、RhoAを標的とするiRNA剤の設計、合成及び生成並びにiRNA剤と
のインキュベーション後の培養細胞におけるインビトロでのRhoA遺伝子のサイレンシ
ングの実証並びにその結果生じるRhoA特異的効果に基づく。
【0041】
iRNA剤は、配列情報及び所望の特性に基づき合理的に設計されうる。例えば、iR
NA剤は候補二重鎖の相対融解温度に従って設計されうる。一般的に、二重鎖はアンチセ
ンス鎖の5’末端においてアンチセンス鎖の3’末端より低い融解温度を有するものであ
る。
【0042】
候補iRNA剤は、例えば、標的遺伝子として機能する遺伝子の遺伝子歩行分析を行う
ことにより設計されることもできる。転写領域の全て又は一部に対応する、重複し、隣接
し、或いは近接配置された候補物質を生成し、試験することができる。各iRNA剤は標
的遺伝子の発現を抑制する能力を試験し、評価することができる(下記「候補iRNA剤
の評価」参照)。
【0043】
本出願において、ヒト、ラット及びマウスの既知のRhoA配列並びに他の既知のRh
oA配列を用いて、RhoAを標的とする、見込みのあるiRNA剤が設計された。上述
の表1に示す標的配列は、ラット及びマウスにおける対応配列との完全な相同性を示すヒ
トRhoA mRNA配列の領域から選択された。従って、siRNA剤、物質番号64
77〜6836はこれら3種間の交差反応性を示すはずである。得られた結果に基づき、
本発明は、培養ヒトRhoA発現細胞及び対象におけるRhoAをサイレンシングするi
RNA剤を提供する。
【0044】
表1はRhoAを標的とする例示的iRNA剤を示す。
【0045】
【表1】







































これらの結果に基づき、本発明は、物質番号6477〜6836によって表1に示され
る物質のセンス鎖配列の少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを有するセンス鎖と、物質
番号6477〜6836によって表1に示される物質のアンチセンス鎖配列の少なくとも
15個の隣接ヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含むiRNA剤を具体的に提供す
る。
【0046】
表1に示すiRNA剤は、標的配列に相補的な、或いは標的配列と同一の19ヌクレオ
チド長+3’−TTオーバーハングの二本鎖から成る。本発明は、これらの物質由来の1
5隣接ヌクレオチドを含む物質を提供する。しかし、これらの長さは至適である可能性が
あるが、iRNA剤はこれらの長さに限定されるものではない。一定の長さ範囲内では効
力は鎖長というよりもヌクレオチド配列の機能であるため、より短く、或いはより長いi
RNA剤が同様に効果的でありうることは当業者には周知のことである。例えば、ヤング
ら(Yang,et al.,PNAS第99巻:9942−9947ページ(2002
年))は21〜30塩基対長のiRNA剤に対する同様の有効性を実証した。他には約1
5塩基対長まで減じたiRNA剤による遺伝子の効果的なサイレンシングを示している者
もいる(バイロムら(Byrom,et al.)「RNアーゼIIIにより生成された
siRNAカクテルによるRNAiの誘発(”Inducing RNAi with
siRNA Cocktails Generated by RNase III”)
」、Tech Notes 10(1),アンビオン、インク.(Ambion,Inc
.)[米国テキサス州オースチン(Austin)]。
【0047】
従って、物質番号6477〜6836によって表1に示される配列の1つに由来するi
RNA剤を生成するため、物質番号6477〜6836によって表1に示される配列から
15〜22ヌクレオチドの部分配列を選択することが可能であるとともに本発明により企
図される。或いは、好ましいが必須ではなく、付加ヌクレオチドが標的遺伝子、例えばR
hoAのそれぞれの配列に相補的となるように、物質番号6477〜6836によって表
1に示される配列の1つ又はこれらの物質の1つに由来する15隣接ヌクレオチドを含む
物質に1つ又は複数のヌクレオチドを付加しうる。例えば、物質の1つに由来する最初の
15ヌクレオチドをRhoA mRNAに見出される5’からのこれらの配列の8ヌクレ
オチドと結合し、センス及びアンチセンス鎖において23ヌクレオチドを有する物質を得
ることができる。このようにして得られるiRNA剤は、培養ヒトRhoA発現細胞にお
いてRhoA発現を阻害する能力を本質的に保持するという条件下、すべて本発明のiR
NA剤に含まれる。
【0048】
iRNA剤のアンチセンス鎖は14,15,16 17,18,19,25,29,4
0又は50ヌクレオチド長と同等であり、或いは少なくとも14,15,16 17,1
8,19,25,29,40又は50ヌクレオチド長であるべきである。アンチセンス鎖
は60,50,40又は30ヌクレオチド長と同等であり、或いは60,50,40又は
30ヌクレオチド長未満であるべきである。好ましい範囲は15〜30,17〜25,1
9〜23及び19〜21ヌクレオチド長である。
【0049】
iRNA剤のセンス鎖は14,15,16 17,18,19,25,29,40又は
50ヌクレオチド長と同等であり、或いは少なくとも14,15,16 17,18,1
9,25,29,40又は50ヌクレオチド長であるべきである。センス鎖は60,50
,40又は30ヌクレオチド長と同等であり、或いは60,50,40又は30ヌクレオ
チド長未満であるべきである。好ましい範囲は15〜30,17〜25,19〜23及び
19〜21ヌクレオチド長である。
【0050】
iRNA剤の二本鎖部分は15,16 17,18,19,20,21,22,23,
24,25,29,40又は50ヌクレオチド対長と同等であり、或いは少なくとも15
,16 17,18,19,20,21,22,23,24,25,29,40又は50
ヌクレオチド対長であるべきである。二本鎖部分は60,50,40又は30ヌクレオチ
ド対長と同等であり、或いは60,50,40又は30ヌクレオチド対長未満であるべき
である。好ましい範囲は15〜30,17〜25,19〜23及び19〜21ヌクレオチ
ド対長である。
【0051】
通常、本発明のiRNA剤は、それぞれのRhoA遺伝子に十分に相補的な領域を含み
、ヌクレオチドの点から十分な長さであるため、iRNA剤又はその断片はRhoA遺伝
子の抑制を媒介することができる。物質番号6477〜6836下の表1のiRNA剤の
アンチセンス鎖のリボヌクレオチド部分は、それぞれRhoA遺伝子のmRNA配列に完
全に相補的であり、それらのセンス鎖のリボヌクレオチド部分は、単一オーバーハング設
計のiRNA剤におけるアンチセンス鎖上の2個の3’−末端ヌクレオチドを除き、それ
ぞれのアンチセンス鎖のリボヌクレオチド部分に完全に相補的である。しかし、iRNA
剤と標的との間に完全な相補性が存在する必要はないが、対応関係は、iRNA剤又はそ
の分解産物が、例えば、RNAiによるRhoA mRNAの開裂により配列特異的サイ
レンシングを導くことを可能にするほどに十分でなければならない。
【0052】
従って、本発明のiRNA剤は、物質番号6477〜6836下の表1の配列の1つと
下記のように本質的に同一の少なくとも16,17又は18個のヌクレオチドの配列、但
し、それぞれ1鎖につき1,2又は3個以下のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換さ
れているが(例えば、アデノシンがウラシルに置換)、それぞれ培養ヒトRho発現細胞
におけるRhoA発現を阻害する能力を本質的に保持している配列を各々が含むセンス鎖
とアンチセンス鎖とを含む物質を含む。従って、これらの物質は、物質番号6477〜6
836下の表1の配列の1つと同一の少なくとも15個のヌクレオチドを有するが、標的
RhoA mRNA配列に関する、或いはセンスとアンチセンス鎖の間の1,2又は3つ
の塩基ミスマッチが導入される。特にアンチセンス鎖における標的RhoA mRNA配
列へのミスマッチは末端領域で最も許容され、存在する場合、1つの末端領域又は複数の
末端領域に存在することが好ましく、例えば、5’および/または3’末端の6,5,4
若しくは3ヌクレオチド内、最も好ましくはセンス鎖の5’末端又はアンチセンス鎖の3
’末端の6,5,4若しくは3ヌクレオチド内に存在する。センス鎖は分子の総体的な二
本鎖特性を維持するため、アンチセンス鎖と十分に相補的である必要があるのみである。
【0053】
iRNA剤が分子の一端又は両端に一本鎖又は非対合領域を含むように、センス及びア
ンチセンス鎖が選択されることが好ましい。従って、iRNA剤は、好ましくは対合して
オーバーハング、例えば、1つ又は2つの5’又は3’オーバーハングであるが好ましく
は2〜3ヌクレオチドの1つの3’オーバーハングを含むセンス及びアンチセンス鎖を含
む。大部分の実施形態では1つの3’オーバーハングを含む。好ましいsiRNA剤は、
iRNA剤の一端又は両端において、1〜4、好ましくは2又は3ヌクレオチド長の一本
鎖オーバーハング、好ましくは3’オーバーハングを有する。オーバーハングは、一方の
鎖が他方の鎖より長いことの結果又は同じ長さの二本の鎖がねじれていることの結果であ
りうる。オーバーハングを形成する不対合ヌクレオチドはリボヌクレオチドでありえて、
或いはデオキシリボヌクレオチド、好ましくはチミジンでありうる。5’−末端はリン酸
化されることが好ましい。
【0054】
二重領域の好ましい長さは15〜30であり、最も好ましくは18,19,20,21
,22及び23ヌクレオチド長であり、例えば、上述のsiRNA剤の範囲内である。s
iRNA剤は長さ及び構造において、長鎖dsRNA由来のダイサー加工された天然産物
に類似しうる。siRNA剤の二本の鎖が連結、例えば、共有結合で連結した実施形態も
含まれる。必要な二本鎖領域及び好ましくは3’オーバーハングを付与するヘアピン又は
、他の一本鎖構造も本発明の範囲内である。
【0055】
候補iRNA剤の評価
候補iRNA剤は、標的遺伝子の発現を抑制する能力について評価されることができる
。例えば、候補iRNA剤を供し、内因的に、或いはRhoA蛋白質が発現可能な構造体
でトランスフェクションされたために、標的遺伝子、例えばRhoA遺伝子を発現する細
胞と接触させることができる。候補iRNA剤との接触前後の標的遺伝子の発現レベルを
、例えば、mRNA又は蛋白質レベルで比較することができる。標的遺伝子から発現され
たRNA又は蛋白質の量がiRNA剤との接触後に減少していると判定された場合、iR
NA剤は標的遺伝子の発現を抑制すると結論づけることができる。細胞内の標的RhoA
RNA又はRhoA蛋白質のレベルは、所望の任意の方法により求めることができる。
例えば、標的RNAのレベルはノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(RT−P
CR)を加えた逆転写又はRNアーゼ保護アッセイにより求めることができる。蛋白質の
レベルは、例えば、ウェスタンブロット分析又は免疫蛍光法により求められることができ
る。好ましくは、アッセイでは、例えば、iRNA剤の神経細胞成長を促進する能力を評
価することにより、機能レベルでRhoA発現を阻害するiRNA剤の能力、例えば、本
来であれば阻害性の基質、例えば、ミエリンを含む基質上での軸索成長の回復も試験する

【0056】
安定性試験、修飾及びiRNA剤の再試験
候補iRNA剤は、安定性、例えばiRNA剤が対象の体内に導入された時のように、
エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼによる切断に対する感受性に関して評価され
ることができる。修飾、特に切断、例えば、対象の体内に見出される成分による切断を受
けやすい部位を同定するための方法を用いることができる。
【0057】
切断を受けやすい部位が同定された時、更なるiRNA剤を設計し、および/または合
成することができ、例えば、切断部位上への2’−修飾、例えば2’−O−メチル基の導
入により、切断可能性のある部位は切断に対して抵抗性となる。この更なるiRNA剤は
安定性について再試験されることができ、iRNA剤が所望の安定性を示すことが見出さ
れるまで、このプロセスを繰り返しうる。
【0058】
インビボ試験
RhoA遺伝子発現を阻害することが可能であると同定されたiRNA剤は、動物モデ
ルにおいて(例えば、マウス又はラットのような哺乳動物において)インビボにて機能性
について試験されることができる。例えば、iRNA剤を動物に投与し、その生体内分布
、安定性並びにRhoA遺伝子発現を阻害し、或いは少なくとも部分的にRhoAに媒介
される生体又は病理過程を低減する能力に関し、iRNA剤を評価することができる。
【0059】
iRNA剤を、標的組織、例えば脊髄に、また、脊髄損傷モデルの場合には脊髄損傷部
位に、注射などによって直接投与することができる。iRNA剤はヒトに投与される場合
と同様に動物モデルに投与されることが好ましい。
【0060】
iRNA剤はその細胞内分布についても評価されることができる。その評価はiRNA
剤が細胞内に取り込まれたかを判定されることを含みうる。その評価はiRNA剤の安定
性(例えば、半減期)を判定されることも含みうる。インビボでのiRNA剤の評価は、
追跡可能なマーカー(例えば、フルオレセインのような蛍光マーカー;35S,32P,
33P若しくはHのような放射性標識;金粒子;又は免疫組織化学検査用の抗原粒子)
に接合したiRNA剤を用いることにより容易にすることができる。
【0061】
iRNA剤は、RhoA遺伝子発現を抑制する能力に関して評価されることができる。
インビボでのRhoA遺伝子発現のレベルは、例えば、原位置のハイブリダイゼーション
により、或いはiRNA剤への曝露前後の組織からのRNAの単離により測定されること
ができる。組織を採取するために動物を殺処分する必要がある場合、未処置対照動物を比
較のために用いる。RhoA mRNAは、RT−PCR、ノーザンブロット法、分枝D
NAアッセイ又はRNAアーゼ保護アッセイを含むがこれらに限定されない任意の所望の
方法により検出されることができる。或いは、又は更に、RhoA遺伝子発現は、iRN
A剤で処理した組織抽出物のウェスタンブロット分析を行うことによりモニタリングされ
ることができる。
【0062】
動物モデルを用いて一定の所望の効果(例えば、EC50又はED50)を得るのに必
要な濃度を確定することができる。このような動物モデルは、ヒト遺伝子、例えば標的ヒ
トRhoA RNAを産生する遺伝子を発現するトランスジェニック動物を含むことがで
きる。別の実施形態において、試験用組成物には、動物モデルにおける標的RhoA R
NAとヒトにおける標的RhoA RNAとの間に保存された配列に、少なくとも内部領
域において相補的なiRNA剤が含まれる。
【0063】
iRNAの化学的性質
本願で述べられるのは単離iRNA剤、例えば、RhoA遺伝子の発現を阻害するため
にRNAiを媒介するdsRNA剤である。
【0064】
本願で述べられるRNAは、他の点では非修飾のRNA及び、例えば有効性を改善する
ために修飾されたRNA及びヌクレオシドサロゲートのポリマーを含む。非修飾RNAは
、核酸の構成要素、即ち、糖、塩基及びリン酸部分が天然に生じるもの、好ましくはヒト
の体内で天然に生じるものと同じか、或いは本質的に同じ分子を指す。当該技術では稀或
いは稀有であるが天然に生じるRNAを修飾RNAと称しており、例えば、リンバッハら
(Limbach et al.)Nucleic Acids Res.第22巻:2
183−2196ページ(1994年)を参照されたい。このような稀或いは稀有なRN
Aは修飾RNAと称されることが多く(その理由は明らかにこれらが典型的に転写後修飾
の結果であるためである)、本願で用いられるように非修飾RNAという用語の範囲内に
ある。本願で用いられる修飾RNAは、1つ又はそれ以上の核酸の構成要素、即ち、糖、
塩基及びリン酸部分が天然に生じるものと異なり、好ましくはヒトの体内で生じるものと
異なる分子を指す。これらは修飾“RNA”と称されるが、当然のことながら修飾のため
にRNAではない分子を含む。ヌクレオシドサロゲートはリボリン酸(ribophos
phate)骨格が非リボリン酸構造体に置換された分子であり、非リボリン酸構造体は
、例えばリボリン酸骨格の非帯電模倣体のように、ハイブリダイゼーションがリボリン酸
骨格にみられるものと実質的に同様になるように、塩基が正確な空間関係に提示されるこ
とを可能にする。上記の例を本願で述べる。
【0065】
本願で述べられる修飾は、例えばiRNA剤のように、本願で述べられる任意の二本鎖
RNA及びRNA様分子に組み入れることができる。iRNA剤のアンチセンス及びセン
ス鎖の一方又は両方を修飾することは望ましいといえる。核酸はサブユニットのポリマー
又はモノマーであるため、下記の修飾の多くは核酸内で反復される位置で生じ、例えば、
塩基又はリン酸部分又はリン酸部分の非結合Oの修飾となる。場合により、修飾は核酸に
おけるすべての対象位置で生じるが、多くの場合、また、実際にはほとんどの場合、その
ようなことはない。例として、修飾は、3’又は5’末端位置でのみ生ずることができ、
末端領域、例えば末端ヌクレオチド上の位置又は鎖の最後の2,3,4,5又は10ヌク
レオチドにおいてのみ生ずることができる。修飾は二本鎖領域、一本鎖領域又はその両方
で生ずることができる。例えば、非結合O位置におけるホスホロチオアート修飾は、一方
又は両方の末端でのみ生ずることができ、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上の位置又
は鎖の最後の2,3,4,5又は10ヌクレオチドにおいてのみ生ずることができ、或い
は二本鎖及び一本鎖領域、特に末端において生ずることができる。同様に、修飾はセンス
鎖、アンチセンス鎖又はその両方において生ずることができる。場合により、センス鎖と
アンチセンス鎖は同修飾又は同種類の修飾を有するが、別の場合には、センス鎖とアンチ
センス鎖は異なる修飾を有し、例えば、場合により、一本鎖、例えばセンス鎖のみを修飾
することが望ましい
iRNAへの修飾の導入の2つの主たる目的は、生体内環境における分解に対する安定
性と、薬理特性、例えば薬力学特性の向上であり、これについては更に下記に述べる。i
RNA剤の糖、塩基又は骨格に対する他の好適な修飾が、2004年1月16日に申請さ
れた共同所有PCT出願第PCT/US2004/01193号に述べられている。iR
NA剤は非天然型塩基、例えば、2004年4月16日に申請された共同所有PCT出願
第PCT/US2004/011822号に述べられているような塩基を含むことができ
る。iRNA剤は非炭水化物環状担体分子のような非天然型糖を含むことができる。iR
NA剤において用いられる非天然型糖の例示的な特徴が、2003年4月16日に申請さ
れた共同所有PCT出願第PCT/US2004/11829号に述べられている。
【0066】
iRNA剤は、ヌクレアーゼ耐性を高めるのに有用なヌクレオチド間結合(例えば、キ
ラルホスホロチオアート結合)を含むことができる。加えて、或いは選択的に、iRNA
剤は、ヌクレアーゼ耐性を高めるためのリボース模倣体を含むことができる。ヌクレアー
ゼ耐性を高めるための例示的なヌクレオチド間結合及びリボース模倣体が、2004年3
月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に述べら
れている。
【0067】
iRNA剤はオリゴヌクレオチド合成のためのリガンド結合モノマーサブユニット及び
モノマーを含むことができる。例示的なモノマーが2004年8月10日に申請された共
同所有米国出願第10/916,185号明細書に述べられている。
【0068】
iRNA剤は、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2
004/07070号に述べられているようなZXY構造を有することができる。
iRNA剤は、両親媒性部分と複合体を形成することができる。iRNA剤と共に用い
られる例示的な両親媒性部分が、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第
PCT/US2004/07070号に述べられている。
【0069】
別の実施形態において、iRNA剤はモジュール複合体を特徴づける送達物質と複合体
を形成することができる。この複合体は、(a)縮合物質(例えば、例えばイオン相互作
用又は静電的相互作用により核酸を誘引、例えば結合することが可能な物質);(b)融
合誘導物質(例えば、融合することおよび/または細胞膜を通って輸送されることが可能
な物質);並びに(c)特定の細胞型に結合する標的基、例えば細胞又は組織標的物質、
例えばレクチン、糖蛋白質、脂質又は蛋白質、例えば抗体、の1つ以上(好ましくは2つ
以上、より好ましくは3つすべて)に結合した担体物質を含むことができる。送達物質と
複合体を形成するiRNA剤が、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第
PCT/US2004/07070号に述べられている。
【0070】
iRNA剤は、例えば、iRNA二重鎖のセンス配列とアンチセンス配列との間のよう
に、非標準型対合を有することができる。非標準型iRNA剤の例示的な特徴が、200
4年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に
述べられている。
【0071】
ヌクレアーゼ耐性の亢進
iRNA剤、例えば、RhoAを標的とするiRNA剤は亢進したヌクレアーゼ耐性を
有することができる。裸のRNAは、細胞質、血液又は脳脊髄液(CSF)のような生体
媒質に遍在するエキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼのような核酸分解酵素の好餌
となることが多い。速やかな分解はsiRNAの標的遺伝子の発現を阻害する能力を大幅
に妨げることができる。核酸分解に対する脆弱性は、siRNAのある種のヌクレオチド
を化学的に修飾することにより大幅に低減することができる。しかし、siRNAを安定
化させるために修飾を加えることは、その活性とのトレードオフを表すこともあり、安定
化させる修飾は毒性作用さえももたらすことができる。従って、なおも所望レベルの安定
性を付与する最少の修飾を導入することが望ましい。通常、センス鎖における修飾はsi
RNAの活性に対する影響が少ない。
【0072】
従って、2004年5月4日に申請された共同所有米国出願第60/559,917号
明細書、2004年5月27日に申請された共同所有米国出願第60/574,744号
明細書及び2005年5月27日に申請された共同所有国際出願PCT/US2005/
018931に述べられているように、エンドヌクレアーゼによる核酸分解に対するsi
RNAの安定性を高めるため、特に易分解性位置において限定数のヌクレオチドのみを修
飾することが有益である。ピリミジンヌクレオチド、具体的には5’−ua−3’配列コ
ンテクスト、5’−ug−3’配列コンテクスト、5’−ca−3’配列コンテクスト、
5’−uu−3’配列コンテクスト又は5’−cc−3’配列コンテクストにおける5’
ヌクレオチドが、ほぼその順で特に分解作用を受けやすいことを見出した。配列コンテク
スト5’−ua−3’及び5’−ca−3’のすべての発生或いは5’−ua−3’,5
’−ca−3’及び5’−uu−3’のすべての発生或いは5’−ua−3’,5’−c
a−3’,5’−uu−3’及び5’−ug−3’のすべての発生における5’−末端(
most)ピリミジンが、両鎖において2’−O−メチルヌクレオチドのような2’−修
飾ヌクレオチドに置換された時、本出願人らの研究所により十分に安定した高活性のsi
RNAが得られた。或いは、センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチド並びにア
ンチセンス鎖における配列コンテクスト5’−ua−3’及び5’−ca−3’のすべて
の発生における5’−末端(most)ピリミジンを2’−修飾することにより、活性及
び安定性の点で良好な結果が得られた。センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチ
ド並びにアンチセンス鎖における配列コンテクスト5’−ua−3’,5’−ca−3’
,5’−uu−3’及び5’−ug−3’のすべての発生における5’−末端(most
)ピリミジンを2’−修飾することが必要な場合もあった。iRNA剤は少なくとも2、
少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5個のこのようなジヌクレオチドを含むこと
ができる。
【0073】
2’−修飾ヌクレオチドは、例えば、2’−修飾リボースユニットを含むことが好まし
く、例えば、2’−ヒドロキシル基(OH)は多くの異なる「オキシ」又は「デオキシ」
置換基で修飾され、或いは置換されうる。
【0074】
「オキシ」−2’ヒドロキシル基の修飾の例には、アルコキシ又はアリルオキシ(OR
、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール
又は糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCH
R;2’ヒドロキシルが、例えばメチレン架橋により、同じリボース糖の4’炭素に結合
した「固定」核酸(LNA);O−AMINE及びアミノアルコキシ、O(CH
MINE、(例えば、AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロ
シクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテ
ロアリールアミノ、エチレンジアミノ、ポリアミノ)が含まれる。メトキシエチル基(M
OE)のみを含むオリゴヌクレオチド、(OCHCHOCH,PEG誘導体)が、
強固なホスホロチオアート修飾で修飾されたものに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すこ
とは注目に値する。
【0075】
「デオキシ」修飾は、水素(即ち、デオキシリボース糖であり、これらは部分的dsR
NAのオーバーハング部分に特に関連する);ハロ(例えば、フルオロ);アミノ(例え
ば、NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジ
アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ又はアミノ酸);NH
(CHCHNH)CHCH−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミ
ノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘ
テロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ)、−NHC(O)R(R=アルキル、
シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖)、シアノ;メルカプト
;アルキル−チオ−アルキル;チオアルコキシ;並びに任意に、例えばアミノ官能基に置
換されうるアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルを含む。
【0076】
好ましい置換基は、2’−メトキシエチル、2’−OCH、2’−O−アリル、2’
−C−アリル及び2’−フルオロである。
オリゴヌクレオチド骨格にフラノース糖を含めることも、エンドヌクレアーゼ的切断を
低減することができる。iRNA剤は、3’カチオン基を含むことにより、或いは3’−
3’結合により3’−末端においてヌクレオチドを転置することにより、更に修飾するこ
とができる。別の代替例では、3’−末端はアミノアルキル基で遮断することができ、例
えば、3’C5−アミノアルキルdTとなる。他の3’接合体は3’−5’エキソヌクレ
アーゼ的切断を阻害することができる。理論によって限定されることはないが、ナプロキ
セン又はイブプロフェンのような3’接合体は、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチ
ドの3’−末端に結合するのを立体的に遮断することにより、エキソヌクレアーゼ的切断
を阻害することができる。小アルキル鎖、アリール基又は複素環接合体又は修飾糖(D−
リボース、デオキシリボース、グルコース等)でも3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮
断することができる。
【0077】
核酸分解切断を、リン酸リンカー修飾、例えば、ホスホロチオアート結合の導入によっ
ても阻害することができる。従って、好ましいiRNA剤は、通常は酸素によって占めら
れる非架橋位置においてヘテロ原子を有する特定のキラル型の修飾リン酸基のために濃縮
され、或いは純粋なヌクレオチド二量体を含む。ヘテロ原子はS,Se,Nr又はBr
でよい。ヘテロ原子がSの場合、濃縮され、或いはキラル的に純粋なSp結合が好まし
い。濃縮とは少なくとも70,80,90,95又は99%の好ましい形態である。修飾
リン酸基結合は、特にiRNA剤の5’−又は3’−末端位置、好ましくは5’−末端位
置近傍に導入される時、エキソヌクレアーゼ的切断を阻害するのに効果的である。
【0078】
5’接合体も5’−3’エキソヌクレアーゼ的切断を阻害することができる。理論によ
って限定されないが、ナプロキセン又はイブプロフェンのような5’接合体は、エキソヌ
クレアーゼがオリゴヌクレオチドの5’−末端に結合するのを立体的に遮断することによ
り、エキソヌクレアーゼ的切断を阻害することができる。小アルキル鎖、アリール基又は
複素環接合体又は修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコース等)でも3’−
5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0079】
iRNA剤は、二重iRNA剤が少なくとも一端に一本鎖ヌクレオチドオーバーハング
を含む時、上昇したヌクレアーゼ耐性を有することができる。好ましい実施形態において
、ヌクレオチドオーバーハングは1〜4、好ましくは2〜3の不対合ヌクレオチドを含む
。好ましい実施形態において、末端ヌクレオチド対に直接隣接する一本鎖オーバーハング
の不対合ヌクレオチドはプリン塩基を有し、末端ヌクレオチド対はG−C対であり、或い
は最後の4つの相補的対合の少なくとも2つがG−C対である。更なる実施形態において
、ヌクレオチドオーバーハングは1又は2つの不対合ヌクレオチドを有しえて、例示的実
施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは5’−GC−3’である。好ましい実施形態
において、ヌクレオチドオーバーハングはアンチセンス鎖の3’−末端に存在する。一実
施形態において、iRNA剤は、2−ntオーバーハング5’−GC−3’が形成される
ように、アンチセンス鎖の3’−末端にモチーフ5’−CGC−3’を含む。
【0080】
従って、iRNA剤は、対象の体内に見出される、例えばヌクレアーゼ、例えばエンド
ヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼによる分解を阻害するために修飾を含む。これらの
モノマーは本願でNRM、即ち、ヌクレアーゼ耐性促進モノマーと称され、対応する修飾
はNRM修飾と称される。多くの場合、これらの修飾はiRNA剤の他の特性、例えば、
蛋白質、例えば輸送蛋白質、例えば血清アルブミン又はRISCのメンバーと相互作用す
る能力或いは第一及び第二の配列の互いに二重鎖を形成又は別の配列、例えば標的分子と
二重鎖を形成する能力も調節する。
【0081】
1又はそれ以上の異なるNRM修飾をiRNA剤又はiRNA剤の配列に導入すること
ができる。NRM修飾は配列又はiRNA剤において2回以上用いることができる。
NRM修飾は末端のみに配置可能なものと任意の位置でよいものとを含む。一部のNR
M修飾はハイブリダイゼーションを阻害しうるため、末端領域でのみ用いることが好まし
く、特にアンチセンス鎖における対象配列又は遺伝子を標的とする配列の切断部位又は切
断領域において用いないことが好ましい。NRM修飾はセンス鎖においては任意の位置で
用いることができるが、但し、dsiRNA剤の二本鎖間の十分なハイブリダイゼーショ
ンが維持されるものとする。一部の実施形態において、標的外れのサイレンシングを最小
化できるため、NRMをセンス鎖の切断部位又は切断領域に配置することが望ましい。
【0082】
多くの場合、NRM修飾はセンス鎖において構成されるか、又はアンチセンス鎖におい
て構成されるに依存し、異なって分配される。アンチセンス鎖の場合、エンドヌクレアー
ゼ切断に干渉し、或いはエンドヌクレアーゼ切断を阻害する修飾は、RISC媒介性切断
を受ける領域、例えば、切断部位又は切断領域に挿入されるべきではない(エルバシール
ら(Elbashir et al.),Genes and Dev.第15巻:18
8ページ(2001年))に記載のとおりであり、これは参照して本願に組み込まれる)
。標的の切断は、20又は21ntアンチセンス鎖のほぼ中央又はアンチセンス鎖と相補
的な標的mRNA上の第一のヌクレオチドの約10又は11ヌクレオチド上流にて生じる
。本願で用いるように、切断部位は標的又はこれにハイブリダイズするiRNA剤鎖上の
切断部位のいずれかの側におけるヌクレオチドを指す。標的領域とは、いずれかの方向に
おける、切断部位の1,2又は3ヌクレオチド内のヌクレオチドのことである。
【0083】
このような修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の末端領域、例えば、末端位置又は末
端の2,3,4若しくは5位置に導入することができる。
連結リガンド
薬理特性を含むiRNA剤の特性は、例えば、リガンド、例えば連結リガンドの導入に
より影響を受け、調整されうる。
【0084】
多種多様な構成要素、例えばリガンドを、iRNA剤、例えばリガンド接合モノマーサ
ブユニットの担体に連結することができる。リガンド接合モノマーサブユニットのコンテ
クストにおいて、例を下記に説明しているが、これは好ましいというだけのことであり、
構成要素は他の位置においてiRNA剤に結合されうる。
【0085】
好ましい部分はリガンドであり、リガンドは、好ましくは共有結合的に、介在テザーを
通じて直接又は間接に担体に結合される。好ましい実施形態において、リガンドは介在テ
ザーを通じて担体と結合する。リガンド又は連結リガンドは、リガンド接合モノマーが成
長鎖に組み込まれる時、リガンド接合モノマー上に存在しうる。一部の実施形態において
、リガンドは、「前駆体」リガンド接合モノマーサブユニットが成長鎖に組み込まれた後
、「前駆体」リガンド接合モノマーサブユニットに組み込まれうる。例えば、アミノ末端
テザー、例えばTAP−(CHNHを有するモノマーは成長センス鎖又はアンチ
センス鎖に組み込まれうる。引き続いての処理において、即ち、前駆体モノマーサブユニ
ットの鎖への組み込み後、求電子基、例えばペンタフルオロフェニルエステル又はアルデ
ヒド基を有するリガンドは、その後、リガンドの求電子基を前駆体リガンド接合モノマー
サブユニットテザーの末端求核基と結合することにより、前駆体リガンド接合モノマーに
結合することができる。
【0086】
好ましい実施形態において、リガンドはそれが組み込まれるiRNA剤の分布、標的又
は存続期間を変化させる。好ましい実施形態において、リガンドは、例えば、このような
リガンドが存在しない種に比し、選択された標的、例えば分子、細胞又は細胞型、区画、
例えば細胞又は器官区画、組織、器官或いは体内の領域に対する亢進した親和性を付与す
る。
【0087】
好ましいリガンドは輸送、ハイブリダイゼーション及び特異性を向上させることができ
、生成される天然型若しくは修飾オリゴリボヌクレオチド又は本願で述べられるモノマー
の任意の組合せを含む高分子および/または天然型若しくは修飾リボヌクレオチドのヌク
レアーゼ耐性を向上させうる。
【0088】
一般的に、リガンドは、例えば取込みを亢進するための治療的修飾;例えば分布をモニ
タリングするための診断化合物又はレポーター基;架橋剤;ヌクレアーゼ耐性付与部分;
並びに天然型又は稀有な核酸塩基を含むことができる。一般例には、親油性分子、脂質、
レクチン、ステロイド(例えば、ウバオール、hecigenin、ジオスゲニン)、テ
ルペン(例えばトリテルペン、例えばサルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラ
ノール(epifriedelanol)誘導化リトコール酸)、ビタミン、炭水化物(
例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン又
はヒアルロン酸)、蛋白質、蛋白質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプ
チド、ポリアミン及びペプチド模倣体が含まれる。
【0089】
リガンドは、天然型又は組換え又は合成分子、例えば合成ポリマー、例えば合成ポリア
ミノ酸となりうる。ポリアミノ酸の例には、ポリリシン(PLL)、ポリL−アスパラギ
ン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L−ラクチ
ド−co−解糖コポリマー、ジビニルエチル−無水マレイン酸コポリマー、N−(2−ヒ
ドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール
(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリ
ル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー又はポリホスファジンが含まれる。ポ
リアミン類の例には、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペル
ミジン、ポリアミン、擬ペプチド−ポリアミン、ペプチド擬似ポリアミン、デンドリマー
ポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン成分、例えばカチオン性脂質
、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩又はアルファ螺旋ペプチドが含まれる。
【0090】
リガンドは、標的基、例えば細胞又は組織標的剤、例えばチロトロピン、メラノトロピ
ン、界面活性蛋白質A、ムチン炭水化物、グリコシル化ポリアミノ酸、トランスフェリン
、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸又はRGDペプチド若しく
はRGDペプチド模倣体も含みうる。
【0091】
リガンドは、蛋白質、例えば糖蛋白質、リポ蛋白質、例えば低比重リポ蛋白質(LDL
)又はアルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)又はペプチド、例えばco−リ
ガンドに対する特異的親和性を有する分子又は抗体、例えば癌細胞、内皮細胞若しくは骨
細胞のような特定の細胞型に結合する抗体とすることができる。リガンドはホルモン及び
ホルモン受容体も含みうる。リガンドは、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、
N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース又は多価
フコースのような非ペプチド種を含むこともできる。リガンドは、例えばリポ多糖体、P
38 MAPキナーゼの活性化因子又はNF−κBの活性化因子とすることができる。
【0092】
リガンドは、例えば細胞骨格を破壊することにより、例えば細胞の微小管、ミクロフィ
ラメントおよび/または中間フィラメントを破壊することにより、iRNA剤の細胞への
取込みを高めることが可能なサブスタンス、例えば薬剤でよい。薬剤は、例えばタクソン
、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、japlakin
olide、latrunculin A、ファロイジン、スウィンホライドA(swi
nholide A)、インダノシン(indanocine)又はmyoservin
でよい。
【0093】
一態様において、リガンドは脂質又は脂質ベースの分子である。このような脂質又は脂
質ベースの分子は血清蛋白質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)に結合することが好
ましい。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば肝臓の実質細胞を含む肝臓組織、への
接合体の分布を可能にする。HSAに結合することが可能な他の分子もリガンドとして用
いることができる。例えば、neproxin又はアスピリンを用いることができる。脂
質又は脂質ベースのリガンドは、(a)接合体の分解に対する耐性を高め、(b)標的又
は標的細胞若しくは細胞膜への輸送を向上させ、および/または(c)血清蛋白、例えば
HSAへの結合を調整するのに用いることができる。
【0094】
脂質ベースのリガンドは接合体の標的組織への結合を調節、例えば制御するために用い
ることができる。例えば、HSAにより強固に結合する脂質又は脂質ベースのリガンドは
、腎臓を標的とする可能性が少なく、従って、体内から除去されにくい。HSAにより弱
く結合する脂質又は脂質ベースのリガンドは、腎臓に対して接合体を標的とするために用
いることができる。
【0095】
好ましい実施形態において、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。脂質ベースの
リガンドは、接合体が好ましくは非腎臓組織に分布されるように、十分な親和性をもって
HSAに結合することが好ましい。しかし、HSA−リガンド結合が転換しないほどに親
和性が強くないことが好ましい。
【0096】
別の態様において、リガンドは、成分、例えばビタミン又は栄養素であり、これは標的
細胞、例えば増殖細胞に取り込まれる。これらは、例えば悪性型又は非悪性型の不要な細
胞増殖、例えば癌細胞を特徴とする障害を処置するのに特に有用である。例示的なビタミ
ンにはビタミンA,E及びKが含まれる。他の例示的なビタミンには、ビタミンB、例え
ば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール又は癌細胞に取り込まれる他
のビタミン若しくは栄養素が含まれる。
【0097】
別の態様において、リガンドは細胞透過剤、好ましくは螺旋細胞透過剤である。細胞透
過剤は両親媒性であることが好ましい。好ましい細胞透過剤はtat又はアンテナペディ
アのようなペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、修飾することができ、こ
れにはペプチジル模倣体、インバートマー(invertomer)、非ペプチド若しく
は擬似ペプチド結合及びD−アミノ酸の使用が含まれる。螺旋細胞透過剤はα螺旋剤であ
ることが好ましく、親油性及び疎油性相を有することが好ましい。
【0098】
5’−リン酸修飾
好ましい実施形態において、iRNA剤は5’リン酸化され、或いは5’第一末端にお
いてホスホリル類似体を含む。アンチセンス鎖の5’リン酸修飾には、RISC媒介性遺
伝子サイレンシングに適合する修飾が含まれる。好適な修飾には、5’−一リン酸((H
O)2(O)P−O−5’);5’−二リン酸((HO)2(O)P−O−P(HO)(
O)−O−5’);5’−三リン酸((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−
P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャップ(7−メチル化又は非メチル
化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)
(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Appp)及び任意の修飾又は非修飾
ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−
O−P(HO)(O)−O−5’);5’−モノチオリン酸(ホスホロチオアート;(H
O)2(S)P−O−5’);5’−モノジチオリン酸(ホスホロジチオアート;(HO
)(HS)(S)P−O−5’),5’−ホスホロチオアート((HO)2(O)P−S
−5’);並びに酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸及び三リン酸の任意の付加的組合せ
(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホルア
ミダート((HO)2(O)P−NH−5’,(HO)(NH2)(O)P−O−5’)
,5’−アルキルホスホナート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピ
ルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−,(OH)2(O)P−5’−CH2
−),5’−アルキルエーテルホスホナート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(
MeOCH2−),エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−)が
含まれる。
【0099】
センス鎖はセンス鎖を不活性化し、活性RISCの形成を阻止するために修飾すること
ができ、これにより、標的外れの作用を低減する可能性がある。これは、センス鎖の5’
−リン酸化を阻止する修飾により、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドによる修
飾により可能となる(ニッカネンら(Nykanen et al.),「RNA干渉経
路におけるATP必要条件及び小干渉RNA構造(ATP requirements
and small interfering RNA structure in t
he RNA interference pathway)」Cell第107巻,3
09−321ページ(2001年)を参照)。リン酸化を阻止する他の修飾も用いること
ができ、例えば、単にO−MEではなくHで5’−OHを置換する。或いは、巨大基(l
arge bulky group)を5’−リン酸に付加し、ホスホジエステル結合に
変えうる。
【0100】
iRNA剤の細胞への輸送
理論によって限定されることを望まないが、コレステロール接合iRNA剤とリポ蛋白
質のある種の構成成分(例えば、コレステロール、コレステリルエステル、リン脂質)と
の化学的類似性は、血中におけるiRNA剤のリポ蛋白質(例えば、LDL,HDL)と
の結合および/またはコレステロールに対する親和性を有する細胞成分、例えばコレステ
ロール輸送経路の成分とのiRNA剤の相互作用をもたらしうる。リポ蛋白質及びその成
分は、種々の能動的及び受動的輸送メカニズム、例えば、限定されずに、LDL−受容体
結合LDLのエンドサイトーシス、スカベンジャー受容体Aとの相互作用を通じた酸化又
は修飾LDLのエンドサイトーシス、肝臓におけるスカベンジャー受容体B1媒介性のH
DLコレステロールの取込み、ピノサイトーシス又はABC(ATP結合カセット)輸送
蛋白質、例えば、ABC−A1,ABC−G1又はABC−G4によるコレステロールの
膜横断輸送によって、細胞により取り込まれ、処理される。従って、コレステロール接合
iRNA剤は、このような輸送メカニズムを有する細胞、例えば肝細胞による取込みを促
進しうる。このようにして、本発明は、このような成分(例えば、コレステロール)に対
する天然リガンドをiRNA剤に接合することにより、或いは成分(例えば、LDL,H
DL)に対する天然リガンドに結合するiRNA剤に化学的成分(例えば、コレステロー
ル)を接合することにより、ある種の細胞表面部分、例えば受容体を発現している細胞に
対してiRNA剤を標的とするための根拠及び一般的方法を提供する。
【0101】
他の実施形態
RNA、例えばiRNA剤は、例えば細胞内に送達される外因性DNAテンプレートか
ら、インビボにて細胞内に生成されうる。例えば、DNAテンプレートはベクターに挿入
され、遺伝子治療ベクターとして用いられることができる。遺伝子治療ベクターは、例え
ば静注、局所投与(米国特許第5,328,470号明細書)により、或いは定位的注射
(例えば、チェンら(Chen et al.)Proc.Natl.Acad.Sci
USA第91巻:3054−3057ページ(1994年)を参照)により、対象に送
達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は、許容可能な希釈剤中の遺伝子
治療ベクターを含むことができ、或いは遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放マトリッ
クスを含むことができる。DNAテンプレートは、例えば2つの転写ユニットを含むこと
ができ、その1つはiRNA剤の上部鎖を含む転写物を生成し、もう1つはiRNA剤の
下部鎖を含む転写物を生成する。テンプレートが転写されると、iRNA剤が生成され、
遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA剤断片に処理される。
【0102】
製剤化
本願で述べられるiRNA剤は、対象への投与のために製剤化されることができる。
説明を容易にするため、このセクションにおける製剤、組成物及び方法は、主に非修飾
iRNA剤に関して考察される。しかし、これらの製剤、組成物及び方法は他のiRNA
剤、例えば修飾iRNA剤について実施することができ、このような実施は本発明の範囲
内にあることを理解する必要がある。
【0103】
製剤化iRNA剤組成物は様々な状態をとりうる。一部の例では、組成物は少なくとも
部分的に結晶質、均一に結晶質および/または無水である(例えば、80,50,30,
20又は10%未満の水分)。別の例では、iRNA剤は水性相、例えば水分を含む溶液
中にある。
【0104】
水性相又は結晶性組成物は、例えば、送達ビヒクル、例えばリポソーム(特に水性相で
)又は粒子(例えば、結晶性組成物に適切でありうるような微粒子)に取り込まれうる。
一般的に、iRNA剤組成物は目的とする投与法に適合する態様にて製剤化される。
【0105】
iRNA剤調製物は、別の物質、例えば別の治療剤又はiRNA剤を安定化する物質、
例えばiRNA剤と複合してiRNPを形成する蛋白質と組み合わせて製剤化されること
ができる。更に他の物質には、キレート剤、例えばEDTA(例えば、Mg2+のような
二価カチオンを除去するため)、塩類、RNアーゼ阻害剤(例えば、RNAsinのよう
な広特異性RNアーゼ阻害剤)などが含まれる。
【0106】
一実施形態において、iRNA剤調製物は2以上のiRNA剤、例えば同じ遺伝子又は
異なる対立遺伝子に関して、或いは異なる遺伝子に関してRNAiを媒介しうる2以上の
iRNA剤を含む。このような調製物は少なくとも3,5,10,20,50又は100
以上の異なるiRNA剤種を含むことができる。このようなiRNA剤は同等数の異なる
遺伝子に関してRNAiを媒介することができる。
【0107】
このような調製物における2以上のiRNA剤が同じ遺伝子を標的とする場合、これら
は非重複及び非隣接標的配列を有することができ、或いは標的配列は重複又は隣接するこ
とができる。
【0108】
RhoA発現に関連する障害
RhoAを標的とするiRNA剤、例えば本願で述べられるiRNA剤は、対象、例え
ばRhoA遺伝子発現に関連する疾患若しくは障害を有し、又は発症するリスクを有する
ヒトを処置し、或いはRhoAに媒介される生体プロセスが不要な場合の対象を処置する
ために用いられることができる。Nogo−L,RhoA及びNogo−Rが軸索の成長
及び伸長の阻害に加わるため、本発明のiRNA剤は、この阻害を転換し、神経/軸索の
成長及び伸長をもたらすために用いられる。このような処置は、脊髄損傷又は末梢神経死
(例えば、CNSの転移癌、例えば膠芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫のよう
な神経膠腫を原因とする)のような神経系に対する損傷を処置するのに有用であり、髄膜
腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、脈絡叢乳頭腫、肉腫も本明細書で述べるiRNA剤により処
置することができる。他の適応には中枢神経系の疾患が含まれ、これには、脳脊髄炎、虚
血性脳卒中、アルツハイマー病、海綿状脳症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋
萎縮症(SMA)、多発性硬化症、横断性脊髄炎、運動ニューロン疾患、ギラン・バレー
症候群、前脊髄動脈症候群及び統合失調症が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
例えば、RhoA mRNAを標的とするiRNA剤は、脊髄損傷を有する対象或いは
神経の成長及び伸長により少なくとも部分的に改善することが可能な別の病理状態を有す
る対象を処置するために用いられることができる。このような用途では、本発明のiRN
A剤は、神経損傷部位又はRhoAの阻害作用が転換されることが所望される部位に局所
的に投与されることが好ましい。iRNA剤の投与はRhoA蛋白質の減少を引き起こし
、軸索の伸長及び成長のNogo媒介性阻害の転換をもたらす。
【0110】
処置方法及び送達経路
iRNA剤、例えばRhoAを標的とするiRNA剤を含む組成物は、作用部位への局
所送達又は対象への全身送達を成すため、様々な経路により対象に送達されうる。例示的
な経路には、処置部位への直接注射、髄腔内、実質、静脈内、経鼻、経口及び点眼送達が
含まれる。本発明のiRNA剤を投与する好ましい手段は処置部位への直接注射又は注入
による。
【0111】
iRNA剤は、投与に好適な医薬組成物に組み込まれることができる。例えば、組成物
は1種以上のiRNA剤と医薬的に許容可能な担体とを含むことができる。本願で用いら
れるように、「医薬的に許容可能な担体」という表現は、薬剤投与に適合するあらゆる溶
媒、分散媒、被覆剤、抗菌及び抗真菌剤、等張性吸収遅延剤などを含むものとする。医薬
的に活性化した物質に対してこのような媒質及び作用物質を用いることは当該技術分野で
周知である。従来の媒質又は作用物質が活性化合物に適合しない場合を除き、組成物にお
けるその使用は企図される。補助的活性化合物を組成物に組み込むことも可能である。
【0112】
本発明の医薬組成物は、局所又は全身処置が所望されるか、また、処置部位に依存し、
多くの方法で投与されうる。投与は局所的(点眼、鼻内、経皮)、経口又は非経口でよい
。非経口投与には、静脈内点滴、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又は髄腔内若しくは脳
室内投与が含まれる。
【0113】
送達経路は患者の障害に依存することができる。通例、本発明のiRNA剤の送達は対
象への全身送達を成すために行われる。これを達成する1つの好ましい手段は非経口投与
による。特に好ましい実施形態において、脊髄損傷部位のような神経損傷部位への医薬組
成物の直接適用により、処置が成される。非経口投与の製剤は、これもまた緩衝剤、希釈
剤や他の添加剤を含みうる滅菌水溶液を含むことができる。静注では溶質の総濃度は調製
物が等張性となるように調節される必要がある。
【0114】
前述の小干渉RNAベクターを用いて、本発明は、神経系及び又は/脳における標的位
置への干渉RNAの送達のためのデバイス、システム及び方法も提供する。送達の想定経
路は、本発明のdsRNAを含む少量の流体を局所神経又は局所脳組織に注入するための
手段を付与する、埋め込まれた髄腔内又は実質内留置カテーテルを用いることによるもの
である。これらのカテーテルの近位端は、患者のからだ又は頭蓋に外科的に固定された、
埋め込まれた髄腔内又は脳内アクセスポート或いは患者の胴部に位置する、埋め込まれた
薬剤ポンプに結合されることができる。
【0115】
或いは、埋め込み型ポンプのような埋め込み型送達デバイスを用いることができる。本
発明の範囲内の送達デバイスの例には8506型治験医療機器(メドトロニック社製[米
国ミネソタ州ミネアポリス])が含まれ、これは体内又は頭蓋に皮下移植可能であり、治
療剤が神経又は脳に送達されうるアクセスポートを付与する。送達は定位的に埋め込まれ
たポリウレタンカテーテルを通して行われる。8506型のアクセスポートと機能するこ
とが可能な2つの型のカテーテルには、米国特許第6,093,180号明細書に開示さ
れ、参照して本願に組み込まれる、脳内室への送達用のメドトロニック社製の8770型
脳室カテーテルと、米国特許出願第09/540,444号明細書及び第09/625,
751号明細書に開示され、参照して本願に組み込まれる、脳組織そのものへの送達(即
ち、実質内送達)用のメドトロニック社製のIPAIカテーテルが含まれる。後者のカテ
ーテルは、治療剤をカテーテル経路に沿って複数の部位に送達するために、その遠位端に
複数のアウトレットを有する。前述のデバイスに加えて、本発明による小干渉RNAベク
ターの送達は多種多様なデバイスを用いて成すことができ、これには米国特許第5,73
5,814号明細書,第5,814,014号明細書及び第6,042,579号明細書
が含まれるがこれらに限定されず、これらはすべて参照して本願に組み込まれる。本発明
の教示を用いて、これらや他のデバイス及びシステムが本発明に従って疼痛処置のために
小干渉RNAベクターの送達に好適でありうることを、当業者は認識するであろう。
【0116】
このような一実施形態において、当該方法はからだ又は脳の外側にポンプを埋め込むス
テップを更に含み、ポンプはカテーテルの近位端に結合され、ポンプを操作し、カテーテ
ルの排出部を通じて少なくとも1つの小干渉RNA又は小干渉RNAベクターの所定用量
を送達する。更なる実施形態では、前記体又は脳の外側のポンプに対する少なくとも1つ
の小干渉RNA又は小干渉RNAベクターの供給を定期的に更新する更なるステップを含
む。
【0117】
従って、本発明は、米国特許第5,735,814号明細書及び第6,042,579
号明細書に教示されているような埋め込み型ポンプ及びカテーテルを用いて、更に米国特
許第5,814,014号明細書に教示されているような、神経又は脳に送達される小干
渉RNAベクターの量を調節するために注入システムの一部としてセンサーを用いた、小
干渉RNAベクターの送達を含む。本発明の方法に従って他のデバイス及びシステムを用
いることができ、例えば、米国特許出願第09/872,698号明細書(2001年6
月1日に申請)及び第09/864,646号明細書(2001年5月23日に申請)に
開示されているデバイス及びシステムであり、これらは参照して本願に組み込まれる。
【0118】
ポンプ又はカテーテルのアウトレットは、脊髄又は他の神経の損傷部位近傍のように、
医薬組成物の所望の作用部位に近接して配置されることが好ましい。
投与は対象又は別の者、例えば介護者により提供することができる。介護者はヒトにケ
アを提供することに関与する任意の実在でよく、例えば、病院、ホスピス、診療所、外来
診療所;医師、看護師又は他の施術者のような医療従事者;或いは配偶者又は親のような
保護者である。薬剤は測定量又は計量を送達するディスペンサーにて供することができる

【0119】
「治療有効量」という用語は、期待される生理反応を与えるために処置される対象にお
いて所望レベルの薬剤を与えるのに必要な組成物に存在する量である。
「生理学的有効量」という用語は、所望の緩和又は治療効果を与えるために対象に送達
される量である。
【0120】
「医薬的に許容可能な担体」という用語は、肺に対する重大な有害毒性作用なしに担体
が肺に取り込まれることが可能であるこという。
「共投与」という用語は、2以上の薬剤、特に2以上のiRNA剤を対象に投与するこ
とを指す。薬剤は単一の医薬組成物に含有され、同時に投与することが可能であり、或い
は薬剤は別々の製剤に含有され、連続的に対象に投与することが可能である。2剤を対象
において同時に検出することが可能であるなら、2剤は共投与されるといわれる。一実施
形態において、Nogo−L,RhoA及びNogo−R iRNA剤が共投与される。
【0121】
担体として有用な医薬賦形剤の種類には、ヒト血清アルブミン(HSA)のような安定
化剤、炭水化物、アミノ酸及びポリペプチドのような充填剤;pH調整剤又は緩衝剤;塩
化ナトリウムのような塩類などが含まれる。これらの担体は結晶形又は非晶形でよく、或
いはこの2つの混合物でよい。
【0122】
特に価値のある充填剤には相溶性の炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸又はこれらの組
合せが含まれる。好適な炭水化物には、ガラクトース、D−マンノース、ソルボースなど
の単糖;ラクトース、トレハロースなどの二糖;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデ
キストリンのようなシクロデキストリン;及びラフィノース、マルトデキストリン、デキ
ストランなどの多糖;マンニトール、キシリトールなどのアルジトールが含まれる。好ま
しい炭水化物群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース マルトデキストリン及
びマンニトールが含まれる。好適なポリペプチドにはアスパルテームが含まれる。アミノ
酸にはアラニン及びグリシンが含まれ、グリシンが好ましい。
【0123】
好適なpH調整剤又は緩衝剤には、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムな
どのような有機性の酸及び塩基から調製される有機塩が含まれ、クエン酸ナトリウムが好
ましい。
【0124】
用量 iRNA剤は、約75mg未満/kg体重又は約70,60,50,40,30
,20,10,5,2,1,0.5,0.1,0.05,0.01,0.005,0.0
01若しくは0.0005mg未満/kg体重で、200nmol未満のiRNA剤/k
g体重(例えば、約4.4×1016の複製)又は1500,750,300,150,
75,15,7.5,1.5,0.75,0.15,0.075,0.015,0.00
75,0.0015,0.00075,0.00015nmol未満のiRNA剤/kg
体重の単位用量で投与することができる。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内又
は筋肉内、髄腔内、或いは器官に直接)、吸入用量又は局所適用により投与することがで
きる。
【0125】
iRNA剤の器官への直接送達(例えば、肝臓へ直接)は、約0.00001mg〜約
3mg/器官又は好ましくは約0.0001〜0.001mg/器官、約0.03〜3.
0mg/器官、約0.1〜3.0mg/眼若しくは約0.3〜3.0mg/器官の用量と
することができる。
【0126】
用量は疾患又は障害を処置し、或いは予防するのに有効な量となりうる。
一実施形態において、単位用量は1日1回より低頻度で、例えば、2,4,8又は30
日毎より少なく投与される。別の実施形態において、単位用量は頻度をもって投与されな
い(例えば、規則的な頻度でない)。例えば、単位用量は単回で投与されうる。iRNA
剤組成物の投与後、iRNA剤媒介性サイレンシングが数日間持続するため、多くの場合
、1日1回未満の頻度又は場合により、全治療レジメンで1回のみで組成物を投与するこ
とが可能である。
【0127】
一実施形態において、対象は、初期用量並びに1又はそれ以上の維持用量のiRNA剤
、例えば二本鎖iRNA剤又はsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤に
処理することが可能な比較的大きいiRNA剤又はiRNA剤をコードするDNA、例え
ば、二本鎖iRNA剤又はsiRNA剤又はその前駆体)を投与される。通常、維持用量
は初期用量より少なく、例えば、初期用量より半分少ない。維持レジメンは、0.01〜
75mg/kg体重/日の範囲、例えば、70,60,50,40,30,20,10,
5,2,1,0.5,0.1,0.05,0.01,0.005,0.001又は0.0
005mg/kg体重/日の用量で対象を処置することを含む。維持用量は5,10又は
30日毎に1回以下で投与されることが好ましい。更に、治療レジメンは特定の疾患の性
状、重症度及び患者の全体的な状態に依存して異なる期間、継続しうる。好ましい実施形
態において、用量は1日1回以下、例えば、24,36,48時間以上毎に1回以下、例
えば、5又は8日毎に1回以下、投与されうる。治療後、患者は状態の変化及び病態の症
状の緩和についてモニタリングされうる。化合物の用量は、患者が現行の用量レベルに有
意に応答しない場合には増量され、或いは用量は、病態の症状の緩和が認められる場合、
病態が消失した場合、又は望ましくない副作用が認められる場合には減量されうる。
【0128】
有効量は、具体的な状況下で望ましく、或いは適切であるとみなされるように、単回投
与又は2回以上の投与にて投与されうる。反復又は頻回注入を容易にすることが所望され
る場合、送達デバイス、例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、槽
内又は包内)又はレザバーが望ましい場合もある。
【0129】
良好な治療後、病態の再発を予防するために患者に維持療法を受けさせることが望まし
いことがあり、この場合、本発明の化合物は0.001g〜100g/kg体重の範囲の
維持用量にて投与される(米国特許第6,107,094号明細書を参照)。
【0130】
iRNA剤組成物の濃度は、障害を処置又は予防するのに有効であり、或いはヒトにお
ける生理状態を調整するのに十分な量である。投与されるiRNA剤の濃度又は量は、物
質に求められるパラメータ並びに投与法、例えば、経鼻、口腔内、肺内又は髄腔内若しく
は神経損傷部位のような局所投与に依存する。例えば、局所用製剤は刺激又は炎症を避け
るため、幾つかの成分の濃度がはるかに低くてよい。
【0131】
ある種の要因が対象を効果的に処置するのに必要な用量に影響を及ぼすことができ、こ
れには疾患又は障害の重症度、過去の治療、対象の全般的健康および/または年齢や他に
存在する疾患が含まれるがこれらに限定されない。治療に用いられるsiRNAのような
iRNA剤の有効量は、特定の治療の経過にわたり増加又は減少しうるということも理解
されよう。投与量の変更は診断アッセイの結果から生じ、或いはその結果から明らかとな
る。例えば、iRNA剤組成物の投与後、対象をモニタリングすることができる。モニタ
リングからの情報に基づき、追加量のiRNA剤組成物を投与することができる。
【0132】
投与は処置対象の病態の重症度及び応答性に依存し、治療過程は数日から数ヶ月或いは
治癒がもたらされ、又は病態の減弱が得られるまで継続する。至適投与計画は、患者の体
内における薬剤の蓄積又は局所、例えば神経損傷部位、例えば脊髄損傷部位に投与される
時の適用部位における薬剤の蓄積の測定から計算することができる。当業者であれば、至
適用量、投与法及び反復率を容易に決定することができる。至適用量は、個々の化合物の
相対的効力に依存して異なりえて、通常、上記のようにインビトロ及びインビボでの動物
モデルにおいて有効であると見出されるEC50に基づいて推定することができる。
【0133】
本発明は、以下の実施例により更に説明されるが、更に限定するものとみなされるべき
ではない。
【実施例】
【0134】
正式名称を用いて以下に核酸配列を表し、具体的には表2の省略形となる。
【0135】
【表2】



(試薬源)
本願で試薬源が具体的に示されない場合、このような試薬は分子生物学での適用に標準
的な品質/純度にて分子生物学用の試薬の任意の供給元から得られる。
【0136】
実施例1:配列の選択
マウス及びラットRhoA mRNAにおけるそれぞれの配列に対する完全な相同性を
有するヒトRhoA mRNAの配列内の領域を同定するため、配列アラインメントを行
った(ヒトRhoA mRNA:Genbankアクセッション番号NM_001664
;マウスRhoA mRNA:Genbankアクセッション番号NM_016802;
ラットRhoA mRNA:Genbankアクセッション番号NM_057132)。
このようにして同定した相同領域内で、ヒトに存在する他のmRNA配列に対する、この
ような配列を含むsiRNAの交差反応の可能性のBLASTによる更なる比較により、
19ヌクレオチドの可能性のあるすべての隣接配列を検討した。任意の他のヒトmRNA
又はゲノム配列に対する3以上のミスマッチを有する配列のみを選択した。得られた19
nt配列のセットを、表1に示す二重オーバーハングiRNA剤のセンス鎖リボヌクレオ
チド配列に表す。
【0137】
生体媒質における試験に対するsiRNAの安定性、特にエンド−及びエキソヌクレア
ーゼによる核酸分解作用に対する安定性を最大限にするため、センス鎖ではすべてのシチ
ジン及びウリジンヌクレオチドが2’−O−メチル基を含み、また、アンチセンス鎖では
5’−ca−3’又は5’−ua−3’の配列コンテクストに現れるすべてのシチジン及
びウリジンが2’−O−メチル基を含むように、siRNAを合成した。
【0138】
同じ目的で、3’−末端5’−TT−3’基チミジン間にオスホロチオアート結合を導
入した。siRNAのインビボ活性に関連する血清及び他の生体媒質中の最も活性の高い
エキソヌクレアーゼは、siRNA鎖3’−5’を分解することにより作用するという経
験をした。アンチセンス鎖における末位から二番目の2ヌクレオチドを、2’−O−メチ
ル−5’−オスホロチオアート修飾ヌクレオチドで置換することが有益であり、十分であ
ることが多いということが判明した(例えば、23ヌクレオチドアンチセンス鎖の5’〜
3’を計算し、21及び22位のヌクレオチド);末位から二番目のヌクレオチドのみを
修飾し、或いは5’−オスホロチオアート修飾ヌクレオチドのみを用いて、或いはその両
方で十分である場合もある。センス鎖は同様に保護されえて、および/またはホスホジエ
ステル又はオスホロチオアートジエステルを通じて連結リガンドに3’接合されうる。
【0139】
上記のように選択した配列に加えて、アフメッド、ゼット.ら((Ahmed,Z.,
et al),Mol Cell Neurosci.第28巻:509−23ページ(
2005年))の著者らが用いた4つのsiRNAに対応する4つのsiRNAを合成し
た。AL−DP−5850は上記アフメッド、ゼット.ら(Ahmed,Z.,et a
l.)のRHO−A1に対応し、AL−DP−5851は上記アフメッド、ゼット.ら(
Ahmed,Z.,et al.)のRHO−A2に、AL−DP−5852はRHO−
A5に、AL−DP−5853はRHO−A4に対応する。
【0140】
実施例2:siRNAの合成
Expedite 8909合成機(アプライドバイオシステムズ社(Applied
Biosystems),アプレラードイッチュラント社(Applera Deut
schland GmbH)[ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt)]と、
固相担体として制御多孔性ガラス(CPG,500A,グレンリサーチ社(Glen R
esearch)[米国バージニア州スターリング(Sterling)])を用いて、
1μモルの尺度で固相合成により一本鎖RNAを生成した。それぞれ対応するホスホルア
ミダイト及び2’−O−メチルホスホルアミダイトを用いて(プロリゴビオヒェミー社(
Proligo Biochemie GmbH))[ドイツ、ハンブルク(Hambu
rug)]、固相合成によりRNA及び2’−O−メチルヌクレオチドを含むRNAを生
成した。ビューケージ、エス.エル.ら(Beaucage,S.L.et al.)(
Edrs.),ジョンワイリーアンドサンズ社(John Wiley&Sons,In
c.)[米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York)]における核酸化学の現
行プロトコルに記載されているような標準ヌクレオチドホスホルアミダイト化学を用いて
、これらの構成単位をオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択部位に組み込んだ。ヨー
ド酸化溶剤をアセトニトリル(1%)中のBeaucage試薬(クルアケム社(Chr
uachem Ltd)[英国グラスゴー(Glasgow)])に置き換えることによ
り、オスホロチオアート結合を導入した。更なる補助試薬をマリンクロットベーカー社(
Mallinckrodt Baker)[ドイツ、グリースハイム(Grieshei
m)]から入手した。
【0141】
所定の手順に従って粗オリゴリボヌクレオチドのアニオン交換HPLCによる脱保護及
び精製を行った。分光光度計(DU 640B、ベックマン・コールター社(Beckm
an Coulter GmbH[ドイツ、ウンターシュライスハイム(Untersc
hleiβheim)])を用いて、260nmの波長にてそれぞれのRNA溶液のUV
吸収により、収量及び濃度を求めた。アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、
pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中、相補鎖の等モル溶液を混合して二本鎖RN
Aを生成し、85〜90℃で3分、水槽中で加熱し、3〜4時間にわたり室温まで冷却し
た。使用するまで精製RNA溶液を−20℃で保存した。
【0142】
上記合成法の結果、上記のように合成したオリゴヌクレオチドはすべて5’−末端(m
ost)ヌクレオチド上にリン酸基を含まない。
図1に示すように、コレステロールをsiRNAに3’接合した。これらの3’−コレ
ステロール−コンジュゲートされたsiRNAの合成のために、適切に修飾された固相担
体をRNA合成のために用いた。固相担体は次のように調製した。
ジエチル−2−アザブタン−1,4−ジカルボキシレートAA
【0143】
【化1】



水(50mL)中のエチルグリシナートヒドロクロリド(32.19g,0.23モル
)の撹拌氷冷溶液に、水酸化ナトリウムの4.7M溶液(50mL)を加えた。次に、ア
クリル酸エチル(23.1g,0.23モル)を加え、TLC(19時間)により反応の
完了を確認するまで、この混合物を室温で撹拌した。19時間後、これをジクロロメタン
(3×100mL)で分離した。無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、濾過し、蒸発さ
せた。残留物を蒸留し、AA(28.8g,61%)を得た。
3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン(fluoren)−9−
イルメトキシカルボニル−アミノ)−ヘキサノイル]−アミノ}−プロピオン酸エチルエ
ステルAB
【0144】
【化2】



Fmoc−6−アミノ−ヘキサン酸(9.12g,25.83mmol)をジクロロメ
タン(50mL)に溶解し、氷冷した。ジイソプロピルカルボジイミド(Diisopr
opylcarbodiimde)を0℃で溶液に加えた。次に、ジエチル−アザブタン
−1,4−ジカルボキシラート(5g,24.6mmol)及びジメチルアミノピリジン
(0.305g,2.5mmol)を加えた。溶液を室温にし、更に6時間撹拌した。T
LCにより反応の完了を確認した。反応混合物を真空内で濃縮し、ジイソプロピルウレア
を沈殿させるために酢酸エチルに加えた。懸濁液を濾過した。濾過物を5%塩酸水溶液、
5%重炭酸ナトリウム及び水で洗浄した。硫酸ナトリウム上で混合有機層を乾燥して濃縮
し、粗生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィー(50%EtOAC/ヘキサン)
により精製し、11.87g(88%)のABを生成した。
3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピオ
ン酸エチルエステルAC
【0145】
【化3】



3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカル
ボニルアミノ)−ヘキサノイル]−アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB(11.
5g,21.3mmol)を、0℃でジメチルホルムアミド中、20%ピペリジンに溶解
した。この溶液を1時間、撹拌し続けた。反応混合物を真空内で濃縮し、残留水を加え、
酢酸エチルで生成物を抽出した。塩酸塩に変換することにより粗生成物を精製した。
3−({6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3
,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒド
ロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)−3−イルオ
キシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル−アミノ)−プロピ
オン酸エチルエステルAD
【0146】
【化4】



3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピ
オン酸エチルエステルACの塩酸塩(4.7g,14.8mmol)をジクロロメタンに
取り込んだ。懸濁液を0℃まで氷冷した。懸濁液にジイソプロピルエチルアミン(3.8
7g,5.2mL,30mmol)を加えた。生成した溶液にコレステリルクロロホルマ
ート(6.675g,14.8mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌した。反応混
合物をジクロロメタンで希釈し、10%塩酸で洗浄した。フラッシュクロマトグラフィー
により生成物を精製した(10.3g,92%)。
1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,
4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ
−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)−3−イルオキ
シカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}−4−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチ
ルエステルAE
【0147】
【化5】



カリウムt−ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を30mLの乾燥トルエンの中
にスラリー化した。混合液を、氷上で0℃まで冷却し、5g(6.6mmol)のジエス
テルADをゆっくり、攪拌しながら、20分以内に加えた。添加中、温度は5℃より低く
保った。攪拌を0℃で30分間続けてから1mLの氷酢酸を加え、続いて直ぐ40mlの
水に溶解した4gのNaHPO/HOを加えた。得られた混合液をそれぞれ100
mLのジクロロメタンを用いて2回抽出し、一つにまとめた有機抽出物をそれぞれ10m
Lのリン酸緩衝液を用いて2回洗浄、乾燥させ、蒸発させて乾燥させた。残留物を60m
Lのトルエンに溶解し、0℃に冷却してから3回に分けて、pH9.5の冷した50mL
の炭酸緩衝液を用いて抽出した。水性抽出物をリン酸でpH3に調節し、5回に分けて4
0mLのクロロホルムで抽出し、一つにまとめてから乾燥、蒸発させて残留物を得た。残
留物を25%エチル酢酸/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1
.9のb−ケトエステルを得た(39%)。
[6−(3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−6−オキソ
−ヘキシル]−カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメ
チル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テ
トラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAF
【0148】
【化6】



メタノール(2mL)を1時間かけて、還流中のb−ケトエステルAE(1.5g、2
.2mmol)および水素ホウ化ナトリウム(0.226g,6mmol)のテトラヒド
ロフラン(10mL)混合液に滴下して加えた。還流温度で1時間攪拌を続けた。室温ま
で冷却した後、1NのHCl(12.5mL)を加え、混合液を酢酸エチル(3×40m
L)で抽出した。一つにまとめた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で
濃縮して生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl
)で精製した(89%)。
[6−{3−ビスー(4−ヒドロキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチル]−4−
ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル}−6−オキソ−ヘキシル)−カルバミン酸17−(
1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10
,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ
[a]フェナントレン−3−イルエステルAG
【0149】
【化7】



ジオールAF(1.25gm,1.994mmol)をピリジン(2×5mL)と一緒
に真空により蒸発させた。無水ピリジン(10mL)および4,4’−ジメトキシトリチ
ルクロリド(0.724g,2.13mmol)を攪拌しながら加えた。反応は室温で一
晩行った。反応はメタノールを加えて止めた。反応混合液を真空で濃縮し、残留物にジク
ロロメタン(50mL)を加えた。有機層を1Mの重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。
有機層を無水硫酸ナトリムで乾かし、濾過して濃縮した。残留ピリジンは、トルエンと共
に蒸発させて除いた。粗生成物はクロマトグラフィー(2%MeOH/クロロホルム、R
f=5%MeOH/CHCl中で0.5)(1.75g,95%)で精製した。
スクシン酸モノ−(4−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチ
ル]−1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2
,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカ
ヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]
ヘキサノイル}−ピロリジン−3−イル)エステルAH
【0150】
【化8】



化合物AG(1.0g、1.05mmol)を無水コハク酸(0.150g,1.5m
mol)およびDMAP(0.073g,0.6mmol)と混合し、真空において、4
0℃で一晩乾燥した。混合物を無水ジクロロエタン(3mL)に溶解し、トリエチルアミ
ン(0.318g,0.440mL,3.15mmol)を加え、溶液を室温、アルゴン
雰囲気中で16時間攪拌した。次に溶液をジクロロメタン(40mL)で希釈し、氷冷し
たクエン酸水溶液(5重量%,30mL)および水(2X20mL)で洗浄した。有機層
を無水硫酸ナトリムで乾燥し、濃縮して乾燥した。残留物をそのまま次の段階に用いた。
コレステロール誘導化CPG AI
【0151】
【化9】



コハク酸AH(0.254g,0.242mmol)をジクロロメタン/アセトニトリ
ル(3:2,3mL)の混合液に溶解した。この溶液にDMAP(0.0296g,0.
242mmol)のアセトニトリル(1.25mL)溶液、2,2’−ジチオ−ビス(5
−ニトロピリジン)(0.075g,0.242mmol)のアセトニトリル/ジクロロ
エタン(3:1,1.25mL)を連続して加えた。得られた溶液に、トリフェニルホス
フィン(0.064g,0.242mmol)のアセトニトリル(0.6ml)溶液を加
えた。反応混合液は明るいオレンジ色に変わった。溶液をリストアクション攪拌機を用い
て短時間(5分間)攪拌した。長鎖アルキルアミン−CPG(LCAA−CPG)(1.
5g,61mm/g)を加えた。懸濁液を2時間攪拌した。CPGを焼結フィルターを通
して濾過し、アセトニトリル、ジクロロメタン、およびエーテルを用いて連続的に洗浄し
た。未反応のアミノ基は、酸性の無水/ピリジンを用いてマスクした。CPGの負荷能力
は、UV測定を行って測定した(37mM/g)
コレステロール接合RNA鎖の合成および構造を図1に示す。
【0152】
活性スクリーニングのために、表3に掲載されたsiRNAを合成した。
【0153】
【表3】






実施例3:siRNA活性試験
表3に示したiRNA剤のヒトRhoAの発現を阻害する能力を、発現構築物から各遺
伝子産物が発現されているヒト細胞株、または各遺伝子産物を構成的に発現している細胞
株で試験した。iRNA剤は、例えばトランスフェクションまたはエレクトロポレーショ
ンによって細胞内にトランスフェクションされ、細胞に一定時間、例えば24時間作用さ
せることができ、RhoAの発現レベルは細胞溶解物中のRhoAのmRNA濃度を測定
することによって決定した。次にこれらの発現レベルを、同等であるがiRNA剤を加え
ることなしに処理した細胞のRhoA発現レベルと、またはハウスキーピング遺伝子(例
えばGAPDH)の発現レベルと比較し、それによって表3に示されたiRNA剤のヒト
RhoAの発現を阻害する能力を評価した。
【0154】
RhoA発現阻害のスクリーニング
トランスフェクションの1日前に、Neuroscreen−1細胞(セロミクス社(
Cellomics Inc.)[米国ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsbu
rgh)]を、96ウエルコラーゲンコーティングプレート(グライナーバイオワン社(
Greiner Bio−One GmbH)[ドイツ、フリッケンハオゼ(Frick
enhausen)]に、100μlの増殖培地(RPMI 1640,10%ウマ血清
、5%ウシ胎児血清、100uペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン、2m
MのL−グルタミン、バイオクロム社(Biochrom AG)[ドイツ、ベルリン(
Berlin)]に1.5×10細胞/ウエルの割合で接種した。トランスフェクショ
ンは三重でおこなった。各ウエルについて、0.5μlのリポフェクタミン2000(イ
ンビトロジェン社(Invitrogen GmbH)[ドイツ、カールスルーエ(Ka
rlsruhe)]を12μlのOpti−MEM(インビトロジェン社)と混合し、室
温で15分間インキュベーションした。ウエル当たり5μMのsiRNAのアニーリング
緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)の溶液
2μlを10.5μlのOpti−MEMと混合し、これとリポフェクタミン2000−
Opti−MEM混合液とを合わせて再度15分間室温でインキュベーションした。この
インキュベーションの間に細胞から増殖培地を取り除き、75μl/ウエルの新鮮な培地
と交換した。25μlのsiRNA−リポフェクタミン2000複合物を加え、100μ
lのインキュベーション体積での全体濃度を100nMにし、加湿インキュベータ(ヘレ
ウス社(Heraeus GmbH)[ドイツ、ハーナウ(Hanau)]内で細胞を3
7℃、5%COで24時間インキュベーションした。
【0155】
細胞溶解物中のmRNAのレベルを、市販の分岐DNAハイブリダイゼーションアッセ
イ(QuantiGene bDNA−kit、ジオスペクトラ社(Genospect
ra))[米国カリフォルニア州フレモント(Fremont)]を用いて定量化した。
細胞を、増殖培地を50μl追加し、75μlのLysis Mixture(Quan
tiGene bDNA−kit付属)を各ウエルに加えて集め、53℃で30分間溶解
した。溶解物50μlを、QuantiGene 製造元の「bDNA−kitアッセイ
に関するプロトコルに従って、ラットのRhoAおよびrGAPDHに特異的なプローブ
(プローブの配列は表4および表5に示す)とインキュベーションした。最後に化学発光
をVictor2−Light(パーキンエルマー社(Perkin Elmer))[
ドイツ、ヴィースバーデン(Wiesbaden)]を用いてRLU単位(相対光単位)
で測定し、各ウエルについてRhoAプローブで得た結果をそれぞれのGAPDH地につ
いて標準化した。モック(Mock)トランスフェクション細胞(siRNAを加える以
外は同じプロトコル通りの細胞)をコントロールとし、mRNAレベルの比較に用いた。
【0156】
スクリーニングで有効とされたsiRNAは、用量反応曲線を確立し、IC50濃度(
遺伝子発現の50%阻害が観察される濃度)を計算することで特徴付けを行った。用量反
応評価については、トランスフェクションを次の濃度で行った:5μMのsiRNA保存
溶液をアニーリング緩衝液で連続希釈して100nM、33.3nM、11.1nM、3
.7nM,1.2nM,0.4nM、137pM,46pM,15pM,5pM、および
モック(siRNAなし)の溶液を得て、上記プロトコルに従って希釈保存液2μlを用
いた。IC50は、次のパラメータを用いて、コンピュータソフトウエアX1fitを利
用したフカーブフィッティングによって決定した:投与反応1サイト、4パラメータロジ
スティクモデル、fit=(A+((B−A)/(1+(((10∧C)/x)∧D))
))、inv=((10∧C)/((((B−A)/(y−A))−1)∧(1/D))
)、res=(y−fit)。
【0157】
【表4】

【0158】
【表5】



表6には、選択された薬剤の物質番号、薬剤のセンス鎖の最も5’側のヌクレオチドに
対応するヒトRhoA mRNA配列中のヌクレオチドの位置(Genbank登録番号
NM_001664)、100nM濃度の薬剤で処理した細胞に残っている全RhoA
mRNAのコントロールの%で表した量、およびIC50値が記載されている。
【0159】
【表6】






まとめると、薬剤AL−DP−5979、AL−DP−5990、AL−DP−598
8、AL−DP−5981、AL−DP−5982、AL−DP−5986、AL−DP
−5989、AL−DP−6176、およびAL−DP−6177は、RhoA mRN
Aの発現を80%以上低下させることができ、AL−DP−5973、AL−DP−59
87、AL−DP−5994、AL−DP−5995、AL−DP−5976、AL−D
P−5984、およびAL−DP−5972は、RhoA mRNAの発現を70%以上
低下させることができ、AL−DP−5993、AL−DP−5975、およびAL−D
P−5983はRhoA mRNAの発現を60%以上低下させることができ、AL−D
P−5974はRhoA mRNAの発現を50%以上低下させることができ、AL−D
P−5991、AL−DP−5992、およびAL−DP−5978はRhoA mRN
Aの発現を40%以上低下させることができた。AL−DP−6176およびAL−DP
−6177の高い活性は、コレステリル成分が活性を大きく失わずにsiRNAのセンス
鎖の3’末端に接合できることを示している。AL−DP−6176およびAL−DP−
6177は、センス鎖上に3’接合コレステリルがあること以外を除いてそれぞれAL−
DP−5973およびAL−DP−5987と同一である。
【0160】
実施例4:安定性試験
それらが意図する生理学的な応用に最も関係する生物学的マトリックス、即ち脳脊髄液
(CSF)中でのsiRNAの安定性を検証するために、我々はこの媒体中でのsiRN
Aの分解半減期を決定する方法を確立した。この方法は、siRNAをCSFとインキュ
ベーションし、続いてCSFサンプルをプロテイナーゼK処理し、CSFサンプル成分を
HPLCで分離することを含む。
【0161】
以下の例はインビトロでsiRNAと接触したCSFサンプルの分析を示す。しかしな
がら、この方法は生体外の生物サンプル、即ちインビボでsiRNAと接触した被験体か
ら得たサンプルにも等しく適用できる。
【0162】
ウシCSFは、月齢6ヶ月のウシ(Bos bovis)から得た(ジェイ.リハーゲ
教授(Prof.Dr.J.Rehage),University of Veter
inary Medicine Hannover,Foundation)[ドイツ、
ハノーバー(Hannover)]。ブタCSFは、月齢3〜4ヶ月3匹の健康な乳離れ
したばかりのブタ(Sus scrofa domesticus)(エム.ヴェント教
授(Prof.Dr.M.Wendt),University of Veterin
ary Medicine Hannover,Foundation[ドイツ、ハノー
バー(Hannover)])からプールした。ラットCSFは、体重175〜200g
の20匹のオスSprague−Dawleyラット(Rattus norvegic
us)(チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Labo
ratories)[フランス、ラルブレール(L’Arbresle Cedex)]
)からプールした。プロテイナーゼK(20mg/ml)は、peQLab(カタログ番
号04−1075[ドイツ、エルランゲン(Erlangen)])から得て、脱イオン
水(18.2mΩ)で1:1に希釈しプロテイナーゼKの最終濃度を10mg/mlにし
た。プロテイナーゼK緩衝液(4.0mlのTRIS−HCl 1M pH7.5、1.
0mlのEDTA 0.5M、1.2mlのNaCl 5M、4.0mlのSDS 10
%)は新たに調製し、沈殿を避けるために使用時まで50℃に保った。
【0163】
40merのポリ(L−dT)、即ち(L−dT)40はノックソンファーマ社(No
xxon Pharma AG)[ドイツ、ベルリン(Berlin)]から得て、内部
標準物質として用いた。核酸のL−エナンチオマーのポリマーは、核酸溶解分解に対し極
めて高い安定性を示すが(クラスマン エスら(Klussman S,et al.)
,Nature Biotechn.第14巻:1112ページ(1996年))、それ
以外は天然産のR−エナンチオマーからなる核酸に極めて近い性質を示す。
【0164】
siRNAインキュベーションサンプルのプロテイナーゼK処理
50μMの各siRNAのリン酸緩衝化食塩水(PBS、シグマアルドリッチヒェミ
ー社(Sigma−Aldrich Chemie GmbH)[ドイツ、タウフキルヘ
ン(Taufkirchen)])溶液6μlを54μlのCSFと37℃で30分間、
1、2、4、8、16、24、または48時間インキュベーションした。siRNA−分
解を終了させるために、それぞれのインキュベーション時間が終了した直後にプロテイナ
ーゼK緩衝液25μlをインキュベーションサンプルに加え、混合液を5秒間高速で攪拌
し(Vortex Genie 2,カタログ番号SI0256,サイエンティフィック
インダストリーズ社(Scientific Industries,Inc.)[米国
ニューヨーク州ボヘミア(Bohemia)])、プロテイナーゼK(10mg/ml)
を8μl添加してから5秒間攪拌し、最後に混合液をサーモミキサーの中、42℃、10
50rpmで20分間インキュベーションした。
【0165】
50μMの(L−dT)40溶液(250pmole)5μLを内部標準物質として各
ウエルに加え、溶液を5秒間攪拌し、チューブを1分間小型遠心分離器にかけて遠心分離
し、壁内面に付いている滴を全て底に落とした。溶液を96ウエルのCaptiva 0
.2μmフィルタープレート[ドイツ、バリアン(Varian)](カタログ番号A5
960002)に移して、21900rcfで45分間遠心分離して濾過した。
【0166】
インキュベーション・ウェルを47.5μlの脱イオン水(18.2mΩ)で洗浄し、
洗浄液をキャプティバ・フィルター・ユニット(Captiva Filter Uni
t)で21900rcf、15分間にわたり濾過し、この洗浄ステップを繰り返した。理
論的全容量200μlのうちの約180μlが平均して2回目の洗浄ステップ後に回収さ
れた。
【0167】
複数のsiRNA一本鎖を互いに分離するとともに分解産物からそれらを分離するため
のイオン交換クロマトグラフィーによる分離:
インライン脱気装置、自動サンプリング装置、カラム・オーブン、および固定波長UV
検出器(ダイオネクス社(Dionex GmbH)[ドイツ、イドシュタイン(Ids
tein)])を備えたダイオネックス・バイオLC(Dionex BioLC)HP
LCシステムを、変性条件下で用いた。標準実行パラメータは以下の通りである。
【0168】
カラム:Dionex DNA−Pac100;4×250mm
温度:75℃
溶離液A:10mM NaClO、20mM TRIS−HCl、1mM EDTA
;10%アセトニトリル、pH=8.0
溶離液B:800mM NaClO、20mM TRIS−HCl、1mM EDT
A;10%アセトニトリル、pH=8.0
検出:@260nm
勾配:0〜1分:10%B
1〜11分:10% −> 35%B
11〜12分:35%B −> 100%B
12〜14分:100%B −> 10%B
14〜16分:カラム再平衡化のための10%B
注入量:20μl
siRNAの2本の鎖を分離することが期待通りに行われなかった場合または1本の鎖
とともに分解フラグメントが一緒に溶離された場合には、クロマトグラフィーのパラメー
タの調整を、温度、pH、NaBrによるNaClOの置換、アセトニトリルの濃度の
変更によって、および/またはセンスもしくはアンチセンス鎖由来のピークの分離定量を
可能にする分離が達成されるまでの溶離液勾配の勾配を調整することによって行う。
【0169】
完全長鎖のピーク面積は、機器(Chromeleon 6.6;ダイオネクス社(D
ionex GmbH)[ドイツ、イドシュタイン(Idstein)])の製造元から
提供されたソフトウェアを用いてUV検出器シグナルの積分によって得られた。
【0170】
データ分析:
積分されたセンス鎖、アンチセンス鎖、及び内部ピーク面積を全ての試料及び正規化対
照について得た。
【0171】
濾過及び洗浄ステップでの液体損失からなる補正率CFを、理論上の内部標準ピーク面
積に対する実験上の内部標準ピーク面積の比を計算することによって、試料毎に測定した
。理論上の内部標準ピーク面積を、例えば、HPLCカラム上に(L−dT)40の50
μM溶液の段階希釈を各々50μl注入することにより得た内部標準の較正曲線から得ら
れ、また希釈系列由来のピーク面積に適合する線形最小二乗によって得られた等式による
25pmol(L−dT)40に対応する理論ピーク面積の計算によって得られる。セン
スおよびアンチセンス鎖のピーク面積に適用される補正率CFを下記のようにして得る。
【0172】
CF=ピーク面積intStd(理論値)/ピーク面積intStd(試料)
この処置は、異なる試料のピーク面積を比較することができるように、フィルターを2
回洗浄することで、実質的に完全な回収が混合濾過液状態で達成され、フィルターに保持
された洗浄水の可変的な量が補正されると仮定する。
【0173】
時点ごとにセンスおよびアンチセンス鎖のピークについて得られたピーク面積を補正率
CFで乗算することで、正規化ピーク面積(NPAsense,t、NPAantise
nse,t)を得る。
【0174】
NPAsense or antisense,t=(ピーク面積sense or
antisense,t)×CF
時間tでのセンスおよびアンチセンス鎖についての残留完全長産物の相対量(%FLP
)を得るために、時間t=0分(NPAsense,t=0、NPAantisense
,t=0)での各鎖の正規化ピーク面積を100%として設定し、他の時点のNPAをこ
れらの値によって割る。
【0175】
%FLPt=1,2,3...n=(NPAt=1,2,3...n/NPAt=0
*100
siRNAをアニーリング緩衝液のみでインキュベートした対照試料から得られた値を
、本方法の精度の対照として用いることが可能である。両鎖の%FLPは、インキュベー
ション時間に関係なく許容誤差範囲内で、100%近傍に位置しなければならない。
【0176】
次に、ln(%FLP)対時間のプロット、すなわち下記に適合する線形最小二乗の勾
配から、一次速度方程式を仮定して、各々の鎖に関して分解半減期t1/2を計算する。
1/2=ln(0,5)/勾配
ラット、ウシ、およびブタCSFでのNogoLおよびRhoAに特異的なsiRNA
の安定性
表7は、各々の培地で48時間インキュベートした後のブタ、ラット、およびウシCS
FならびにPBSに存在する完全長二本鎖RNAの相対量の選択siRNAに関する測定
結果を示す。また、いくつかのsiRNAについてセンスおよびアンチセンス鎖の分解半
減期を別々に測定した。
【0177】
【表7】






表7から明らかなように、分解の影響を受けやすい選択部位内のsiRNAの修飾は、
活性および安定性に関して優れた特性を持つ薬剤をもたらし得る。例えば、AL−DP−
5871、AL−DP−5938、AL−DP−5963、AL−DP−5973、AL
−DP−5979、AL−DP−5981、AL−DP−5986、AL−DP−598
7、AL−DP−5989、およびAL−DP−5990の全ては、各々の標的遺伝子に
対する阻害が上記した生体外アッセイで70%を上回り、48時間にわたるブタCSFに
よるインキュベーション後の残存完全長二本鎖が70%を上回る。しかし、ラットCSF
がブタまたはウシCSFよりもsiRNAに対してより攻撃的であるといういくつかの兆
候がある。
【0178】
実施例5:ラット後根神経節(DRG)初代培養細胞におけるRhoA発現の阻害
RhoA発現の阻害を、上記したようにNeuroscreen1細胞を用いて得られ
る結果を確認するために、ラット後根神経節(DRG)初代培養細胞で評価した。
【0179】
DRG細胞を生後3〜6日目にSprague−Dawleyラットから単離した。ラ
ットを解剖し、1.3ml(0.28Wunsch単位/ml)リベラーゼ精製酵素ブレ
ンド(Liberase Blendzyme)ロシュ社(Roche)含有S−MEM
(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カ
ルスバド(Carlsbad)])を添加して37℃で35分間インキュベートすること
により解離させて単細胞にした。細胞懸濁液を組織培養プレートに前播種して非神経性細
胞を除去した。次に神経を、50ng/mlマウス神経成長因子2.5S(NGF;プロ
メガ社(Promega Corp.)[米国ウィスコンシン州マジソン(Madiso
n)])が追加された5%ウシ胎児血清(FBS、熱処理不活性化)および5%馬血清(
熱処理不活性化)(両方とも、Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen
)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])を含むグルタミン(Gi
bco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバ
ド(Carlsbad)])含有F12−HAM培地中の組織培養バイオコート(Bio
coat)(商標)PDLポリDリジン/ラミニン96穴プレート(米国マサチューセッ
ツ州ベッドフォード、BD Biosciences)に播種し、トランスフェクション
まで加湿インキュベーター中、37℃、5%COに保った。
【0180】
rhoA特異的siRNA(物質番号AL−DP−5987)を、濃度200nM、D
RG培地中で試験した。この際、トランス・メッセンジャー(TransMesseng
er)(商標)トランスフェクション試薬(カタログ番号301525、キアゲン社(Q
iagen GmbH)[ドイツ、ヒルデン(Hilden)])を用い、この試薬は脂
質製剤、特異的RNA濃縮試薬(EnhancerR(商標))に基づいており、siR
NA保持RNA濃縮緩衝液(BufferEC−R(商標)):エンハンサーR(商標)
比(μg:μl)は一定して1:2であり、さらにsiRNA:TransMeseng
er(登録商標)比(μg:μl)は一定して1:12である。
【0181】
DRGを24時間後平板培養でトランスフェクトさせた。各ウェルに関して、0.52
μlエンハンサー(Enhancer)R(商標)を最初に13.68μlバッファー(
Buffer)EC−R(商標)と最初に混合した。25μMのALDP−5987溶液
(0.26μl)を含むアニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;
100mM塩化ナトリウム)0.8μlまたはアニーリング緩衝液(siRNAフリー対
照)0.8μlを添加し、混合物をRTで5分間にわたりインキュベートした。3.12
μl TransMessenger(商標)トランスフェクション試薬を6.88μl
のバッファー(Buffer)EC−R(商標)で希釈し、混合物に添加し、この混合物
をさらに10分間、室温でインキュベートすることで、トランスフェクション複合体を形
成させた。50ng/mlNGF2.5S(プロメガ社(Promega Corp.)
[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)])を追加したグルタミン(Gib
co、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド
(Carlsbad)])を含む75μl血清フリーF12−HAM培地と、1:50B
27サプリメント(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カ
リフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])をトランスフェクション複合体に添
加し、穏やかに上下にピペッティングすることによって完全に混合させた。成長培地をD
RG細胞から除去し、90μlの上記トランスフェクション複合体混合物を細胞に添加し
た。加湿インキュベーター中5%CO、37℃での8時間インキュベーション後、上清
を細胞から除去し、5%FBS、5%馬血清(両方とも、Gibco、インビトロジェン
社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)]
)、50ng/mlマウスNGF2.5S(プロメガ社(Promega Corp.)
[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)])、および1:100ペニシリン
/ストレプトマイシン(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米
国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])を追加したグルタミンを含む新
鮮F12−HAM培地を添加し、細胞を加湿インキュベーター中で37℃、5%CO
さらに16時間インキュベートし、RhoA mRNAを定量した。
【0182】
RhoA mRNAレベルの測定は、製造元のプロトコルに従って、クアンチジーン(
QuantiGene)(商標)bDNAキット(米国フレモント、Genospect
ra)を用いておこなった。手短に言うと、上清をDRG細胞から除去し、該細胞の溶解
を、150μlの溶解作用試薬(Lysis Working Reagent)(溶解
混合物1容量プラス培地2容量)を添加し、52℃で30分間にわたりインキュベートす
ることによって、おこなった。ライセート40μlを、表4および表5に示したラットR
hoAおよびラットGAPDHに特異的なプローブ・セットとともに52℃、40分間に
わたりインキュベートした。化学発光の読み取りは、相対光単位(Relative L
ight Unit、RLU)として、Victor−Light(商標)(パーキン
エルマーライフアンドアナリティカルサイエンス社(PerkinElmer Life
And Analytical Sciences,Inc.)[米国マサチューセッ
ツ州ボストン(Boston)])上でおこなった。RhoAのRLUをウエル毎にGA
PDHのRLUに対して正規化した。次に、正規化RhoA/GAPDH比をsiRNA
フリー対照(100%として設定)と比較した。
【0183】
いくつかの独立した実験では、AL−DP−5987処理したDRG初代細胞では、s
iRNAフリー対照で見出されたRhoA mRNAの20〜25%まで一貫して、Rh
oA mRNAが減少した。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【公開番号】特開2012−61007(P2012−61007A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−282081(P2011−282081)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2011−170509(P2011−170509)の分割
【原出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】