説明

RhoCに基づく免疫療法

本発明は、一般に、転移癌の予防および治療の分野に関する。詳細には、抗癌免疫応答を惹起することができるタンパク質;Ras相同遺伝子ファミリー、メンバーC(RhoC)またはそのペプチドフラグメントを提供する。具体的には、本発明は、転移癌の処置のためのRhoCまたはそれに由来するペプチドまたはRhoC特異的T細胞の使用に関する。従って、本発明は、1つの態様において、癌の処置としてワクチン接種によりインビボで養子的に移入または誘導されるRhoC特異的T細胞に関する。癌の処置、診断および予後予測におけるRhoCおよびその免疫原性ペプチドフラグメントの使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願、すなわち本出願に引用するすべての特許および非特許参考文献は、それら全体が参照により本明細書にも援用されている。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、転移癌の予防および治療の分野に関する。詳細には、抗癌免疫応答を惹起することができるタンパク質;Ras相同遺伝子ファミリー、メンバーC(RhoC)またはそのペプチドフラグメントを提供する。具体的には、本発明は、転移癌の処置のためのRhoCまたはそれに由来するペプチドまたはRhoC特異的T細胞の使用に関する。したがって、本発明は、1つの態様において、癌の処置としてワクチン接種によりインビボで養子的に移入または導入されるRhoC特異的T細胞に関する。
【0003】
癌の処置、診断および予後予測におけるRhoCおよびその免疫原性ペプチドフラグメントの使用も提供する。
【背景技術】
【0004】
癌の転移の発生は、癌の処置の成功にとって大きな障害となる。大部分の癌死亡は、転移の発生に起因する。
【0005】
転移の原因であるタンパク質についての研究は、Ras相同遺伝子ファミリーGTPアーゼRhoCに関与していた。RhoCの過発現が転移の発生において、ある一定の役割を果たすことが示唆されている。RhoCがその転移効果を発揮する方法についての正確な理解は未だ定かではないが、卵巣癌、肺癌および黒色腫をはじめとする多くの癌において過発現されることが判明した。
【0006】
哺乳動物免疫系が異物または外来物質を認識し、反応するプロセスは、複合的なものである。この系の重要な一面は、T細胞応答である。この応答は、T細胞が、ヒト主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を構成するヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる細胞表面分子とペプチドとの複合体を認識し、それらと相互作用することを必要とする。前記ペプチドは、より大きな分子から誘導され、それらの分子が抗原提示細胞によってプロセッシングされ、その結果としてその抗原提示細胞がHLA/MHC分子を提示する。T細胞とHLA/ペプチドの複合体との相互作用は、HLA分子とペプチドの特定の組み合わせに特異的であるT細胞を必要とするので、制限される。特異的T細胞が存在しない場合、そのパートナー複合体がたとえ存在したとしてもT細胞応答はない。同様に、T細胞は存在するが、特異的複合体が存在しない場合、応答はない。
【0007】
T細胞が細胞異常を認識するメカニズムも癌に関連付けられている。例えば、特許文献1には、ペプチドへとプロセッシングされ、その結果として細胞表面で発現され、特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL、CD8細胞)により腫瘍細胞の溶解をもたらすことができる遺伝子ファミリーが開示されている。これらの遺伝子は、MAGEファミリーと呼ばれ、「腫瘍拒絶抗原前駆体」または「TRAP」分子をコードすると言われており、それらに由来するペプチドは、「腫瘍拒絶抗原」または「TRA」と呼ばれる。
【0008】
特許文献2には、HLA−A1分子に結合するノナペプチドが開示されている。この参考文献には、特定のHLA分子に対する特定のペプチドの既知特異性を考慮すれば、あるHLA分子に結合するが他のものには結合しない特定のペプチドが予想されるはずであると開示されている。これは、異なる個体は異なるHLA表現型を有するため、有意である。結果として、特定のペプチドが特定のHLA分子のパートナーであると同定されることは、診断的および治療的効果をもたらすが、これらは、特定のHLA表現型を有する個体についてしか該当しない。
【0009】
このように、腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチドエピトープが、MHC分子に関連してCTLによって抗原として認識され得ることは、十分立証されている。しかし、すべてではないにせよ大部分の腫瘍が抗原性であることは一般に認められているとはいえ、腫瘍進行が免疫系によって容易に制御されるという意味では、実際は、ほんの少数しか免疫原性でない。
【0010】
この制限を克服するために、幾つかの免疫療法の研究、例えば、TAA由来ペプチドでのワクチン接種が開始された。黒色腫、多数のCTL規定TAAが特性付けされている腫瘍については、抗原に対する強力なCTL応答がワクチン接種によって誘導され、一部の患者は、彼らの疾患の完全寛解を経験した。しかし、これらのワクチン接種の治験において使用されたペプチドエピトープの大部分は、メラニン形成細胞特異的であり、これらのペプチドをメラニン成細胞起源でない腫瘍に利用することはできない。さらに、これらのTAAの発現は、異なる患者からの腫瘍間で不均一であり、1人の患者から得られる転移の間でさえ様々であり得る。しかし、ここ数年の間に、多数の異なる癌において発現される多数の腫瘍特異的ペプチド抗原、すなわちHER−2、Muc−1およびテロメラーゼが同定された。
【0011】
過去10年の間に非常に多数の臨床試験が、癌患者において抗腫瘍T細胞応答を誘導するペプチド特異的ワクチン接種の実現の可能性を示した。しかし、これらの患者の臨床経過は、殆どの場合、改善されなかった。この矛盾は、非常に多数の症例において腫瘍細胞の免疫逃避メカニズムにより説明されている。
【0012】
他のRho GTPアーゼと同様に、RhoCは、成長制御についての幾つかの態様、および細胞外因子に応じての細胞骨格構成に影響を及ぼす。より最近のデータは、癌細胞の転移に重要な役割を果たすことが証明されているRhoCに関して、より特異的な役割を示唆している。例えば、幾つかの系統の証拠は、癌細胞におけるRhoCの高い発現、および癌細胞の転移の可能性がRhoCの発現に依存することを明示している。RhoCの選択的増加発現が転移癌に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第92/20356号
【特許文献2】国際公開第94/05304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、MHCクラスIおよびクラスII分子に結合することができるペプチドであるMHCクラスIおよびクラスII拘束ペプチドをRhoCから誘導することができるという驚くべき発見に基づく。驚くべきことに、本発明者らは、これらの自己抗原が、癌疾患、特に転移癌疾患に罹患している患者において自発的T細胞応答を惹起できることを発見した。これらの発見は、転移癌疾患の制御に一般に適用可能であり得る新規治療および診断アプローチへの道を開く。
【0015】
特に転移に対するワクチンを設計するために適切なタンパク質標的を見つけることは非常に難しかった。本発明は、細胞傷害性(CD8)T細胞によって認識されるものもあり、ヘルパー(CD4)T細胞によって認識されるものもある、新規RhoCペプチドを開示する。これらのエピトープは、クラスIIおよびクラスI MHCタンパク質によってそれぞれ拘束される。
【0016】
したがって、本発明の焦点は、腫瘍特異的T細胞免疫を惹起すること、すなわち、腫瘍が一般にはクラスII MHCを発現しないという事実にもかかわらず、クラスIおよびクラスII−MHC拘束エピトープでワクチン接種することにある。これは、RhoCに対するワクチン誘導抗腫瘍応答の誘導および効力が、腫瘍特異的CD4ポジティブT細胞の協同を必要とし得るという発見に基づく。
【0017】
したがって、1つの態様において、ワクチンの開発に駆り立てる重要な要因は、例えば、注意深く選択されたCTLおよびT細胞エピトープのコレクションを含むまたはコードするワクチンを設計することにより、多数の腫瘍抗原を標的にするという願望であり得る。マルチエピトープワクチンは、オンコプロテインなどの潜在的に有害なタンパク質(をコードする遺伝子)を導入する必要なく、幾つかの異なる抗原に由来するエピトープに対する免疫を生じさせる有効な方法となり得る。そのようなワクチンは、亜優占的で潜在的なT細胞エピトープに対する免疫を選択的に誘導することもでき、これは、正常組織に顕著に存在するエピトープに対する耐性が存在し得る腫瘍関連自己抗原の場合、特に重要であり得る。さらに、抗原提示細胞は、抗原提示細胞の免疫プロテアソームと大部分の腫瘍細胞に存在する「構成的」プロテアソームの間の機能的相違のため、腫瘍細胞上で発現する一定のエピトープを提示できない。
【0018】
ペプチド系ワクチンの場合、抗原取り込みおよび宿主抗原提示細胞によるプロセッシングに関係なく外因性負荷により提示を可能にする「MHC−ready」形態で、エピトープを投与することができる。本発明のペプチドは、短い「MHC−ready」形態のペプチドと、プロテアソームによるプロセッシングを必要とする、より長い形態のペプチドの両方を含み、それゆえ、多数の腫瘍抗原を標的にすることができる、より複雑なワクチン組成物を提供する。ワクチンが標的にするHLA群が多様であるほど、異なる集団においてそのワクチンが機能する尤度が高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、RhoCが、転移癌に対する免疫療法に適した標的のようであることを開示する。RhoCの発現は転移を促進すると言われており、これは、RhoCをワクチン接種の魅力的な標的にする可能性を秘めている。このタンパク質の発現のダウンレギュレーションまたは減少による免疫逃避が転移を損なわせるかもしれないからである。本発明者らは、ELISPOTアッセイを用いて黒色腫患者においてRhoC由来ペプチドについて研究し、驚くべきことに末梢血リンパ球(PBL)においてRhoC由来ペプチドに対する自発的T細胞活性を検出した。
【0020】
したがって、本発明は、第1の態様において、医薬品として使用するための、
a)配列番号1のRhoCもしくは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体、または前記RhoCもしくは前記その機能的相同体の連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメント、または前記RhoCもしくは前記ペプチドフラグメントをコードする核酸;と
b)アジュバントと
を含むワクチン組成物に関する。
【0021】
本発明の他の態様は、転移癌の予防または処置において医薬品として使用するためのRhoCまたはそのペプチドフラグメントに関する。
【0022】
詳細には、本発明は、多くて3個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCからの18から25個の連続するアミノ酸から成る単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは前記ペプチドフラグメントの機能的相同体に関し、この場合のペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0023】
また、本発明は、多くて3個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCからの8から10の連続するアミノ酸から成る単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは前記ペプチドフラグメントの機能的相同体に関し、この場合のペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0024】
さらに、本発明は、多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCからの26から75の連続するアミノ酸から成る単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたはその機能的相同体に関し、この場合のペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0025】
したがって、本発明は、第2の態様において、転移癌の予防または処置において医薬品として使用するためのRhoCの免疫原的に活性なペプチドフラグメントに関する。詳細には、本発明は、転移癌の予防または処置において医薬品として使用するための、RhoCに由来する単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントに関する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、本発明の上記タンパク質および/またはペプチドフラグメントを含む、医薬組成物を提供する。
【0027】
本発明の態様は、転移癌の予防または処置において医薬品として使用するための、RhoCもしくはこの免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは前記タンパク質もしく前記ペプチドフラグメントをコードする核酸を含むワクチン組成物を提供することでもある。
【0028】
なお、さらなる態様において、本発明は、癌患者におけるRhoCと反応性であるPBL中のもしくは腫瘍組織内のT細胞の存在のエクスビボもしくはインサイチュ診断のための診断キットに関し(このキットは、上で定義したとおりの本発明のペプチドフラグメント);本発明のペプチドフラグメントとクラスIもしくはクラスII HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体を含む。
【0029】
本発明の目的は、転移癌患者においてRhoC反応性T細胞の存在を検出する方法を提供することでもあり、この方法は、上で定義したとおりの本発明の複合体と腫瘍組織または血液サンプルとを接触させること、および前記複合体の前記組織または血液細胞への結合を検出することを含む。
【0030】
加えて、本発明のペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子、およびそのような結合を阻止することができる分子を提供する。
【0031】
もう1つの態様において、本発明は、転移癌疾患の処置方法に関し、この方法は、有効量の本発明の医薬組成物、本発明のペプチドフラグメントに特異的に結合することができる本発明の分子、および/またはそのような結合を遮断することができる本発明の分子を前記疾患に罹患している患者に投与することを含む。
【0032】
さらにもう1つの態様において、本発明は、癌疾患の処置のための医薬品の製造における、本発明において定義するとおりのタンパク質またはペプチドフラグメントの使用を提供する。
【0033】
加えて、転移癌の処置または予防において使用するための、配列番号1のRhoCもしくは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体または前記RhoCもしくは前記その機能的相同体の連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは前記RhoCもしくは前記ペプチドフラグメントをコードする核酸を提供する。
【0034】
さらに、転移癌の処置または予防において使用するための、本発明において定義するとおりのペプチドフラグメントまたは本発明において定義するとおりのワクチン組成物を提供する。
【0035】
本発明のもう1つの態様は、免疫処置をモニターする方法に関し、前記方法は、
i)個体からの血液サンプルを提供する工程;
ii)配列番号1のRhoCもしくは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体または前記RhoCもしくは前記その機能的相同体の連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは前記RhoCもしくは前記ペプチドフラグメントをコードする核酸を提供する工程;
iii)前記血液サンプルが、前記タンパク質またはペプチドに特異的に結合する抗体またはT細胞受容体を含むT細胞を含むかどうかを決定する工程;
iv)それによって、前記タンパク質またはペプチドへの免疫応答が前記個体において生じたかどうかを決定する工程、
を含む。
【0036】
本発明のもう1つの態様は、RhoCまたはそのペプチドフラグメントと特異的に相互作用することができる単離されたT細胞、および前記T細胞を産生する方法に関する。
【0037】
本発明のもう1つの態様は、単離されたRhoC特異的T細胞クローンを含む医薬組成物、ならびに単離されたRhoC特異的T細胞を含む組成物をその必要がある個体に投与することを含む転移癌の処置および/または予防方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の主目的は、癌の予防または処置において医薬品として使用するための、RhoCまたはその免疫原的に活性なペプチドフラグメントを提供することである。
【0039】
Rho GTPアーゼ
3個のヒトRhoファミリーメンバーRhoA、BおよびCは、非常に相同であり、RhoAとRhoCは、最も相同である。RhoAおよびRhoCは、両方とも193アミノ酸長であるが、RhoCは、191のアミノ酸から成る。RhoAとRhoCは非常に相同であるにもかかわらず、RhoAとRhoC間にはその配列のC末端において、甚だしい非相同性が存在する。図1は、RhoA、RhoBおよびRhoCのアラインメントを示すものであり、ここで、同一残基(「」)、保存的置換を有する残基(「:」)および半保存的置換を有する残基(「.」)に印が付いている。
【0040】
Rho GTPアーゼのN末端半分は、GTP結合および加水分解に関与する大多数のアミノ酸を、GTP結合状態とGDP結合状態の間で配座を変えるSwitch 1および2領域と共に含有する(Bishop,A.L.、Hall,A.、Biochem.J.2000、348(Pt.2):241)。
【0041】
RhoファミリーGTPアーゼのC末端は、これらのタンパク質の正確な局在定位に必要不可欠である。それは、保存C末端システインのプレニル化、続いての最後の3個のアミノ酸のメチル化およびタンパク質分解性除去により、翻訳後修飾される(Shao,F.、Dixon,J.E.、Adv.Exp.Med.Biol.2003、529:79)。プレニル基がGTPアーゼを膜に係留する、この修飾は、細胞成長、形質転換、およびRhoタンパク質の細胞骨格構成機能に必要不可欠である(Allal,C.ら、J.Biol.Chem.2000、275:31001)。Rhoタンパク質のプレニル化は、それらの安定性にとって重要であるようであり、プレニル基を合成する酵素の阻害剤は、Rhoタンパク質レベルおよびそれらの機能の低下を誘導する(Stamatakis,K.ら、J.Biol.Chem 2002、277:49389)。
【0042】
RhoA
RhoAは、幾つかのヒト癌において過発現され、RhoA過発現は、不良な予後と相関するようである。幾つかの報告は、充実性腫瘍の成長および転移を助長する血管新生へのRhoAの関与も明示している(Abecassisら、2003)。細胞骨格組立ての活性化は、細胞の成長および拡大を生じさせる結果となることが最も多く、ニューロンにおいては、Rhoファミリータンパク質が神経突起退縮を誘導し、細胞を丸くさせることが証明されている。
【0043】
本発明の一部の実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、配列番号2のRhoAと配列番号1のRhoCの両方に共通である。しかし、好ましい実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、配列番号1のヒトRhoCのみに特異的である。
【0044】
RhoC
最近のデータは、RhoCが癌細胞の転移に重要な役割を果たすことを示している。Rhoタンパク質依存性細胞シグナル伝達が悪性形質転換にとって重要であり得ることが研究によって示された。RhoCが黒色腫、炎症性乳癌(Clarkら、2000;Kleerら、2002)および卵巣癌(Horiuchiら、2003)における癌浸潤に関与することが証明されている。
【0045】
一般に、免疫系は「自己」タンパク質に対する応答をめったに惹起しないので、自己抗原に対する癌ワクチンを設計することは難しかった。驚くべきことに、本発明のRhoCペプチドは、癌疾患、特に転移癌疾患に罹患している患者において自発的T細胞応答を惹起することができた。
【0046】
本発明は、RhoCが、転移癌に対する免疫療法に適した標的のようであることを開示する。RhoCの発現は転移を促進すると言われており、これは、RhoCをワクチン接種の魅力的な標的にする可能性を秘めている。このタンパク質の発現のダウンレギュレーションまたは減少による免疫逃避が転移を損なわせるかもしれないからである。驚くべきことに、本発明者らは、ELISPOTアッセイを用いて黒色腫患者における末梢血リンパ球(PBL)においてRhoC由来ペプチドに対する自発的T細胞反応性を検出した。これは、RhoCペプチドフラグメントが、実際に有用なT細胞エピトープであり得ることを明示している。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、RhoCは、ヒトRhoCであり、さらに好ましくは、配列番号1のヒトRhoCである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、前記RhoCペプチドは、RhoBの配列とは異なるアミノ酸残基から選択される。さらに好ましい実施形態において、前記RhoCペプチドは、RhoAとRhoBのどちらの配列とも異なるアミノ酸残基を含むペプチドである。したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0049】
あまり好ましくない実施形態において、RhoCペプチドは、RhoBの配列とは異なるがRhoAの配列と同一であるアミノ酸残基を含むペプチドである。したがって、あまり好ましくない実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、アミノ酸残基
【0050】
【化1】

のうちの少なくとも1個を含有する。
【0051】
上に記載したように、RhoCは、主として、その配列のC末端部分がRhoAおよびRhoBと異なる。RhoCだけが、腫瘍の転移の可能性に対して影響を及ぼすようであるため、好ましい実施形態は、配列番号1のRhoCの120個の最もC末端側の残基、例えば、RhoCの100個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの75個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの52個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの40個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの30個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの25個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの24個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの23個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの22個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの21個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの20個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの19個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの18個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの17個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの16個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの15個の最もC末端側の残基、例えばRhoCの14個の最もC末端側の残基に由来するRhoCのペプチドに関する。配列番号1のRhoCの20個の最もC末端側の残基から成るペプチドが、最も好ましい。
【0052】
したがって、非常に好ましい実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCの20個の最C末端RhoC特異的アミノ酸残基G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCの20個の最もC末端側のアミノ酸残基から成る。したがって、この特定の実施形態におけるペプチドは、ATRAGLQVRKNKRRRGCPIL(配列番号4)である。
【0054】
本発明の他の特定の実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、配列RXGLQVRKNKを含み、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、多くて60アミノ酸長である。
【0055】
機能的相同体
野生型ヒトRhoC、すなわちこのタンパク質の自然に存在する非突然変異バージョン、を配列番号1として同定する。本発明は、RhoCの免疫学的に活性なペプチドフラグメントを包含する。本発明は、RhoC、多くて2個のアミノ酸が置換されているRhoCのペプチドフラグメント、または配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を含むRhoCの機能的相同体を含む、ワクチン組成物を包含する。
【0056】
機能的相同体は、野生型ヒトRhoCなどの野生型RhoCと配列の点で異なるが、野生型RhoCを発現する癌に対する免疫応答を依然として誘導することができるRhoCと定義することができる。機能的相同体は、突然変異バージョンである場合もあり、または野生型RhoCの選択的スプライス変異体である場合もある。もう1つの態様では、RhoCの機能的相同体を、本明細書において下で説明するように定義する。機能的相同体は、1つ以上の突然変異ならびに/またはエクスビボで導入された1つ以上の配列欠失および/もしくは付加を有するRhoCの組換えバージョンであり得るが、これらに限定されない。
【0057】
RhoCの機能的相同体は、配列番号7との少なくとも多少の配列同一性を示す、および野生型RhoCを発現する癌に対する免疫応答を誘導することができる、任意のタンパク質であり得る。
【0058】
したがって、本発明の1つの実施形態において、RhoCの機能的相同体は、図1に「太字」で示されているRhoC特異的残基Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはP192がいずれも置換されていない、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を含むことが好ましい。
【0059】
さらに、本発明のあまり好ましくない実施形態において、RhoCの機能的相同体は、図1において「」の印が付いている、RhoAおよびRhoC特異的であるアミノ酸残基L81、M82、C83、F84、S85、I86、D87、S88、P89、D90、S91、L92、E93、N94、I95、K98、W99、T100、P101、E102、V103、K104、H105、F106、C107、P108、N109、P111、I112、I113、V115、G116、N117、K118、K119、T127、R129、E142、E143、D146、N149、F154、D155、G166、V167、R168、E169、V170、F171、E172、M173、A174、T175、R176、A177、L179、Q180、R182、K185、G189、C190がいずれも置換されていない、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を含むことが好ましい。
【0060】
したがって、1つの実施形態において、RhoCの機能的相同体は、RhoC特異的アミノ酸残基Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはP192が、置換されていない、または保存的置換によってしか置換されていない、さらに好ましくは、本明細書において下で定義するような高い類似性レベルを有するアミノ酸によってしか置換されていない、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を有することが好ましい。さらにより好ましくは、これらの残基は、全く置換されていない。
【0061】
さらに、本発明のあまり好ましくない実施形態において、RhoCの機能的相同体は、図1において「」の印が付いている、RhoAおよびRhoC特異的アミノ酸残基L81、M82、C83、F84、S85、I86、D87、S88、P89、D90、S91、L92、E93、N94、I95、K98、W99、T100、P101、E102、V103、K104、H105、F106、C107、P108、N109、P111、I112、I113、V115、G116、N117、K118、K119、T127、R129、E142、E143、D146、N149、F154、D155、G166、V167、R168、E169、V170、F171、E172、M173、A174、T175、R176、A177、L179、Q180、R182、K185、G189、C190がいずれも置換されていない、または保存的置換によってしか置換されていない、さらに好ましくは、本明細書において下で定義するような高い類似性レベルを有するアミノ酸によってしか置換されていない、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を含むことが好ましい。さらにより好ましくは、これらの残基は、全く置換されていない。
【0062】
当業者は、あるアミノ酸で1つ以上の化学的および/または物理的特性を共有する別のアミンが置換される「保存的」アミノ酸置換をするおよび評定する方法を知っていることであろう。保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能に影響する可能性が低い。アミノ酸は、共有する特性によって分類することができる。保存的アミノ酸置換は、所定のアミノ酸群内のあるアミノ酸での、同じ群内の別のアミノ酸の置換であり、この場合、所定の群内のアミノ酸は、類似した、または実質的に類似した特性を示す。
【0063】
保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニンおよびヒスチジンであり;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0064】
本明細書において適用する場合の用語「保存的アミノ酸置換」の意味の中では、本明細書において下に示すアミノ酸群内で、あるアミノ酸で別のアミノ酸を置換することができる:
より低い類似性レベル:
極性:
i)極性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr、およびCys)、
ii)非極性側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、およびMet)
親水性または疎水性:
iii)疎水性アミノ酸(Ala、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Tyr、Val)
iv)親水性アミノ酸(Arg、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、His、Lys)
電荷:
v)中性アミノ酸(Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val)
vi)塩基性アミノ酸(Arg、His、Lys)
vii)酸性アミノ酸((asp、Glu)
高い類似性レベル:
viii)酸性アミノ酸およびそれらのアミド(Gln、Asn、Glu、Asp)
ix)脂肪族側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile)
x)芳香族側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp)
xi)塩基性側鎖を有するアミノ酸(Lys、Arg、His)
xii)ヒドロキシ側鎖を有するアミノ酸(Ser、Thr)
xiii)硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(Cys、Met)、
好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0065】
したがって、本発明の変異体またはそのフラグメントは、同じ配列変異体もしくはそのフラグメントの中での、または異なる配列変異体もしくはそのフラグメント間での、互いに独立して導入される少なくとも1個の置換、例えば複数の置換を含むことがある。
【0066】
同じ変異体またはそのフラグメントが、本明細書において上で定義したような保存的アミノ酸の1つより多い群からの1つより多い保存的アミノ酸置換を含む場合があることは、上の概説から明らかである。
【0067】
20の標準アミノ酸および2個の特別なアミノ酸、セレノシステインおよびピロリシンのほかに、インビボでタンパク質に取り込まれない非常に多数の「非標準アミノ酸」がある。非標準アミノ酸の例としては、硫黄含有タウリンならびに神経伝達物質GABAおよびドーパミンが挙げられる。他の例は、ランチオニン、2−アミノイソ酪酸、およびデヒドロアラニンである。さらなる非標準アミノ酸は、オルニチンおよびシトルリンである。
【0068】
非標準アミノ酸は、通常は、標準アミノ酸への修飾によって形成される。例えば、タウリンは、システインの脱カルボキシル化によって形成することができる一方で、ドーパミンは、チロシンから合成され、およびヒドロキシプロリンは、(コラーゲン中によくある)プロリンの翻訳後修飾によって作られる。非天然アミノ酸の例は、例えば、37C.F.R.section 1.822(b)(4)に挙げられており、それらのすべてが参照により本明細書に援用されている。
【0069】
本明細書に記載する標準および非標準アミノ酸残基は両方とも、「D」異性体形である場合もあり、または「L」異性体形である場合もある。
【0070】
本発明の機能的等価物は、非標準アミノ酸を含む任意のアミノ酸を含むことがあると考えられる。好ましい実施形態において、機能的等価物は、標準アミノ酸しか含まない。
【0071】
標準および/または非標準アミノ酸は、ペプチド結合によって連結されることもあり、または非ペプチド結合によって連結されることもあるが、一般には、ペプチド結合によってしか連結されない。用語ペプチドは、当該技術分野において公知であるような化学または酵素触媒反応によって導入される翻訳後修飾も包含する。そのような翻訳後修飾は、所望される場合には分配前に導入することができる。本明細書に明記するようなアミノ酸は、好適にはL立体異性体形であろう。20の自然に存在するアミノ酸の代わりにアミノ酸類似体を用いることができる。フルオロフェニルアラニン、ノルロイシン、アゼチジン−2−カルボン酸、S−アミノエチルシステイン、4−メチルトリプトファンおよびこれらに類するものをはじめとする幾つかのそのような類似体が公知である。
【0072】
適する変異体は、少なくとも70%であろう、したがって、変異体は、好ましくは、ヒトRhoCの所定の配列との少なくとも75%の配列同一性、例えば少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも92%の配列同一性、例えば少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性、例えば少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例えば少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0073】
配列同一性は、多数の周知アルゴリズムを用いて、および多数の異なるギャップペナルティーを適用して、計算することができる。配列同一性は、完全長配列番号1を基準にして計算される。任意の配列アラインメントツール、例えばFASTA、BLASTまたはLALIGN(しかし、これらに限定されない)を相同体の検索および配列同一性の計算に用いることができる。さらに、適する場合には、任意の一般に公知の置換行列、例えばPAM、BLOSSUMまたはPSSM行列(しかし、これらに限定されない)を前記検索アルゴリズムと共に利用することができる。例えば、PSSM(位置特異的スコア行列)は、PSI−BLASTプログラムによって利用することができる。さらに、ある範囲のギャップ開始および伸長ペナルティーを用いて配列アラインメントを行うことができる。例えば、BLASTアルゴリズムを5−12の範囲のギャップ開始ペナルティーと1−2の範囲のギャップ伸長ペナルティーで用いることができる。
【0074】
機能的等価物は、化学的修飾、例えば、ユビキチン化、(例えば、放射性核種、様々な酵素などでの)標識、PEG化(ポリエチレングリコールでの誘導体化)、またはアミノ酸(ヒトタンパク質中には通常存在しないアミノ酸、例えばオルニチン)の挿入(または化学合成による置換)による修飾をさらに含むことがあるが、機能的等価物は化学的修飾を含まないほうが好ましい。
【0075】
本明細書に記載するペプチジル化合物に加えて、立体的に類似した化合物をペプチド構造の重要な部分によく似るように調合することができ、そのような化合物も本発明のペプチドと同じ方法で用いることができる。これは、当業者に公知のモデリングおよび化学的設計技術によって達成することができる。例えば、エステル化および他のアルキル化を用いて、例えばジ−アルギニンペプチド骨格の、アミノ末端をテトラペプチド構造とよく似るように修飾することができる。すべてのそのような立体的に類似した構築物が本発明の範囲に入ることは理解されるであろう。
【0076】
N末端アルキル化およびC末端エステル化を有するペプチドも本発明の範囲内に包含される。機能的等価物は、グリコシル化コンジュゲート、および二量体または非関連化学的部分をはじめとする同じ分子とで形成された二重結合性または凝集性コンジュゲートも包含する。そのような機能的等価物は、当該技術分野において公知の手段による、フラグメントの中で見つけられる基への官能基の連結(N末端およびC末端のいずれか一方または両方でのものを含む)によって、調製される。
【0077】
機能的相同体は、少なくとも70%の配列番号1の共有によって同定されるようなRhoCの欠失突然変異体であり得、したがって、機能的相同体は、好ましくは、少なくとも75%配列同一性、例えば、少なくとも80%配列同一性、例えば、少なくとも85%配列同一性、例えば、少なくとも90%配列同一性、例えば、少なくとも91%配列同一性、例えば、少なくとも91%配列同一性、例えば、少なくとも92%配列同一性、例えば、少なくとも93%配列同一性、例えば、少なくとも94%配列同一性、例えば、少なくとも95%配列同一性、例えば、少なくとも96%配列同一性、例えば、少なくとも97%配列同一性、例えば、少なくとも98%配列同一性、例えば、少なくとも99%配列同一性を有する。
【0078】
MHC
2つのタイプのMHC分子;MHCクラスI分子およびMHCクラスII分子がある。MHCクラスI分子は、適応免疫応答の主エフェクター細胞であるCD8 T細胞によって認識される。MHCクラスII分子は、抗原提示細胞(APC)(これらのうち最も重要なものは樹状細胞であるようである)の表面に主として発現される。APCは、ナイーブT細胞、ならびに免疫系における他の細胞を刺激する。それらは、CD8 T細胞とCD4 T細胞の両方を刺激する。
【0079】
1つの実施形態において、配列番号1の多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの8−10個のアミノ酸から成る新規MHCクラスI拘束ペプチドフラグメントを提供し、これらは、幾つかの特徴のうちの少なくとも1つを有することを特徴とし、それらの1つは、本明細書おいて説明するようなアセンブリー結合アッセイによって決定したとき多くて50μMであるクラスI HLA分子の半最大回収が可能であるペプチドの量(C50値)によって測定されるような親和性で、それが拘束されるクラスI HLA分子に結合する能力である。このアセンブリーアッセイは、以前に記載されているように行うことができ(WO2005/049073、実施例1.2)、ならびにそれは、ペプチド輸送体欠失細胞系T2へのペプチドの負荷後のHLA分子の安定化に基づく。その後、正しくフォールディングされた安定なHLA重鎖を、配座依存性抗体を使用して免疫沈降させ、そのペプチド結合を定量する。この実施形態のペプチドは、配列番号1の多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の多くて200個、好ましくは多くて100個、さらに好ましくは多くて50個、さらにより好ましくは多くて25個、さらにより好ましくは多くて20個、さらに尚より好ましくは多くて15個、例えば多くて10個、例えば8から10個の範囲の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0080】
このアッセイは、上記親和性で所与のHLA対立遺伝子分子に結合するそれらの能力について候補ペプチドをスクリーニングする簡単な手段をもたらす。好ましい実施形態において、本発明のペプチドフラグメントは、多くて30μMであるC50値、例えば、多くて20μMであるC50値(多くて10μM、多くて5μMおよび多くて2μMのC50値を含む)を有するものである。
【0081】
もう1つの好ましい実施形態において、配列番号1の多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の新規MHCクラスII拘束ペプチドフラグメント(本明細書では「ペプチド」とも呼ばれる)を提供し、これらは本明細書において下で説明する幾つかの特徴のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする。この実施形態のペプチドは、配列番号1の多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1の配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、4個と120個の間、好ましくは8個と100個の間、さらに好ましくは10個と75個の間、さらにより好ましくは12個と60個の間、さらにより好ましくは15個と40個の間、例えば、18個と25個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0082】
したがって、配列番号1の多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、8−10個のアミノ酸の新規MHCクラスI拘束ペプチドフラグメントまたは18−25個のアミノ酸の新規MHCクラスII拘束ペプチドフラグメント、(共に、本明細書では「ペプチド」と呼ばれる)、を提供し、これらは、本明細書において下で説明する幾つかの特徴のうちの少なくとも1つを有することを特徴とし、そのうちの1つは、それが拘束されるクラスIまたはクラスII HLA分子に結合する能力である。
【0083】
特定の実施形態において、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有するMHCクラスI拘束ペプチドまたはMHCクラスII拘束ペプチドであるペプチドフラグメントを提供する:
(i)ELISPOTアッセイによって決定したとき、癌患者のPBL集団において10PBL当り少なくとも1の頻度でINF−γ産生細胞を惹起することができる、および/または
(ii)腫瘍組織においてエピトープペプチドと反応性であるCTLをインサイチュで検出することができる、
(iii)RhoC特異的T細胞のインビトロでの成長を誘導することができる。
【0084】
本発明のさらに好ましいペプチドは、ELISPOTアッセイ、例えば、本明細書において下の実施例1で説明するおよびWO2005/049073の実施例1.4に詳細に記載されているELISPOTアッセイによって決定したとき、特異的T細胞応答を惹起することができるペプチドである。一部のペプチドは、MHCクラスIまたはクラスIIに高い親和性で結合しないにもかかわらず、ELISPOTによって判定するとT細胞応答を生じさせることがある。MHCクラスIまたはクラスIIに高い親和性で結合することができる他のペプチドも、ELISPOTによって判定するとT細胞応答を生じさせる。両方の種類のペプチドが、本発明の好ましいペプチドである。
【0085】
したがって、本発明の好ましいペプチドは、10細胞当り、さらに好ましくは10当り、さらにより好ましくは10当り、さらにより好ましくは10細胞当り、例えば10細胞当り、50より多くのペプチド特異的スポットが測定される、ELISPOTアッセイによって測定して、特異的系T細胞応答を惹起することができるペプチドである。
【0086】
本発明の最も好ましいペプチドは、癌患者において細胞免疫応答を惹起することができるペプチドである。
【0087】
上述のように、HLA系は、ヒト主要組織適合(MHC)系の代表である。一般に、MHC系は、ある範囲の特性を制御する:移植抗原、胸腺依存性免疫応答、一定の補体因子および一定の疾患についての素因。より具体的には、MHCは、MHCのより一般的な特性を決定する3個の異なるタイプの分子、すなわちクラスI、IIおよびII分子をコードする。これらの分子のうち、クラスI分子は、殆どの有核細胞および血小板の表面に提示される、いわゆるHLA−A、HLA−BおよびHLA−C分子である。
【0088】
本発明のペプチドは、特定のMHCクラスI HLA分子に結合する(によって拘束される)それらの能力を特徴とする。したがって、1つの実施形態において、前記ペプチドは、HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A9、HLA−A10、HLA−A11、HLA−Aw19、HLA−A23(9)、HLA−A24(9)、HLA−A25(10)、HLA−A26(10)、HLA−A28、HLA−A29(w19)、HLA−A30(w19)、HLA−A31(w19)、HLA−A32(w19)、HLA−Aw33(w19)、HLA−Aw34(10)、HLA−Aw36、HLA−Aw43、HLA−Aw66(10)、HLA−Aw68(28)、HLA−A69(28)をはじめとする、MHCクラスI HLA−A分子によって拘束されるものである。主要な数値記号だけを用いる、例えば、HLA−Aw19およびHLA−A24(49)の代わりにそれぞれHLA−A19またはHLA−A24を用いる、より単純な記号も本文献を通して用いている。特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11およびHLA−A24からなる群より選択される、MHCクラスI HLA種によって拘束される。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、MHCクラスIHLA種HLA−A2またはHLA−A3によって拘束される。
【0089】
さらに有用な実施形態において、本発明のペプチドは、次のうちのいずれかを含む、MHCクラスI HLA−B分子によって拘束されるペプチドである:HLA−B5、HLA−B7、HLA−B8、HLA−B12、HLA−B13、HLA−B14、HLA−B15、HLA−B16、HLA−B17、HLA−B18、HLA−B21、HLA−Bw22、HLA−B27、HLA−B35、HLA−B37、HLA−B38、HLA−B39、HLA−B40、HLA−Bw41、HLA−Bw42、HLA−B44、HLA−B45、HLA−Bw46およびHLA−Bw47。本発明の特定の実施形態において、本発明のペプチドが結合することができるMHCクラスI HLA−B種は、HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27およびHLA−B51から選択される。
【0090】
さらに有用な実施形態において、本発明のペプチドは、次のうちのいずれかを含む(しかし、これらに限定されない)、MHCクラスI HLA−C分子によって拘束されるペプチドである:HLA−Cw1、HLA−Cw2、HLA−Cw3、HLA−Cw4、HLA−Cw5、HLA−Cw6、HLA−Cw7およびHLA−Cw1。
【0091】
さらに有用な実施形態において、本発明のペプチドは、次のうちのいずれかを含む(しかし、これらに限定されない)、MHCクラスII HLA分子によって拘束されるペプチドである:HLA−DPA−1、HLA−DPB−1、HLA−DQA1、HLA−DQB1、HLA−DRA、HLA−DRBおよびこれらの群におけるすべての対立遺伝子ならびにHLA−DM、HLA−DO。
【0092】
特定のHLA分子に結合する能力を有する可能性を秘めているペプチドの選択は、所与の特定のHLA分子に結合する既知配列をアラインメントして、それにより、それらのペプチドにおける特定の位置での少数の関連アミノ酸の支配を明らかにすることによって行うことができる。そのような支配的アミノ酸残基を、本明細書では「アンカー残基」または「アンカー残基モチーフ」とも呼ぶ。利用可能なデータベースにおいて見つけることができる公知の配列データに基づくそのような比較的単純な手順に従うことにより、特定のHLA分子に結合する可能性が高いペプチドをRhoCから誘導することができる。ある範囲のHLA分子についてのそのような分析の代表例を下の表に与える:
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

したがって、一例として、HLA−A3に結合する能力を有する可能性を秘めているノナペプチドは、次の配列のうちの1つを有するであろう:Xaa−L−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−K、Xaa−L−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Y;Xaa−L−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−FまたはXaa−V−Y−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−K(Xaaは、任意のアミノ酸残基を示す)。同様の方法で、任意の他のHLA分子に結合する能力を有する可能性を秘めている配列を設計することができる。
【0097】
通常の当業者が所与のHLA分子についてのさらなる「アンカー残基モチーフ」を同定することができるであろうことは、理解されるであろう。
【0098】
前記免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、前記配列番号1のRhoCまたは前記配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、2から100個、例えば5から75個、例えば8から50個の範囲、好ましくは9から25の範囲のアミノ酸の連続配列から成り得る。
【0099】
本発明のペプチドは、配列番号1の多くて3個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、多くて200個、好ましくは多くて100個、さらに好ましくは多くて60個、さらにより好ましくは多くて25個、さらにより好ましくは多くて20個、さらにより好ましくは多くて15個、例えば多くて10個、例えば、8から10個の範囲の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0100】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、配列RXGLQVRKNKを含み、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、配列番号1の多くて3個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、多くて200個、好ましくは多くて100個、さらに好ましくは多くて60個、さらにより好ましくは多くて25個、さらにより好ましくは多くて20個、さらにより好ましくは多くて15個、例えば多くて10個、例えば、8から10個の範囲の連続するアミノ酸である。
【0101】
本発明の他のペプチドは、配列番号1の配列番号1のRhoCまたは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、4個と120個の間、好ましくは8個と100個の間、さらに好ましくは10個と75個の間、さらにより好ましくは12個と60個の間、さらにより好ましくは15個と40個の間、例えば18個と25個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0102】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、配列RXGLQVRKNKを含み、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、配列番号1の配列番号1のRhoCまたは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、4個と120個の間、好ましくは8個と100個の間、さらに好ましくは10個と75個の間、さらにより好ましくは12個と60個の間、さらにより好ましくは15個と40個の間、例えば18個と25個の間の連続するアミノ酸である。
【0103】
本発明の他のペプチドは、配列番号1の配列番号1のRhoCまたは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、10個と150個の間、好ましくは12個と120個の間、さらに好ましくは15個と75個の間、さらにより好ましくは20個と70個の間、さらにより好ましくは22個と65個の間、例えば26個と60個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0104】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、配列RXGLQVRKNKを含み、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、配列番号1の配列番号1のRhoCまたは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、10個と150個の間、好ましくは12個と120個の間、さらに好ましくは15個と75個の間、さらにより好ましくは20個と70個の間、さらにより好ましくは22個と65個の間、例えば26個と60個の間の連続するアミノ酸である。
【0105】
本発明の特定の実施形態において、本発明のペプチドは、配列RXGLQVRKNKを含み、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメント前記ペプチドフラグメントは、長さが多くて200、好ましくは多くて100、さらに好ましくは多くて60アミノ酸である。
【0106】
本発明の一部の態様において、8から10アミノ酸より長いRhoC由来のペプチドを提供する。8から10アミノ酸より長いペプチドは、HLA分子への結合のために、より短い長さへとプロテアソームによってプロセッシングされる。したがって、8から10アミノ酸より長いペプチドを投与したとき、そのより長いペプチドは、サイトゾル中でプロテアソームによって一連のより小さなペプチドへとプロセッシングされる。1つの特定の実施形態において、前記より長いペプチドは、RhoCの20個の最C末端ペプチドATRAGLQVRKNKRRRGCPIL(配列番号4)を含むことがある。例えば、前記C末端RhoCペプチドは、プロテアソームによってノナ−および/またはデカペプチドへとプロセッシングされ得る。
【0107】
プロテアソームによって様々な異なる、より短いペプチドへとプロセッシングされ得る、より長いペプチドを使用することの利点は、特定のHLAクラスに拘束される8から10アミノ酸ペプチドより1個のペプチドで多くのHLAクラスを標的にすることができることである。
【0108】
本発明の他の実施形態では、RhoCのC末端ペプチドに由来するプロセッシングされる可能性のあるペプチドを提供する。
【0109】
特定の実施形態において、本発明のノナペプチドは、多くて2個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて1個のアミノ酸が置換されている、次のものから選択される配列を有するRhoC C末端由来ペプチドである:ATRAGLQVR(配列番号11)、TRAGLQVRK(配列番号12)、RAGLQVRKN(配列番号13)、AGLQVRKNK(配列番号14)、GLQVRKNKR(配列番号15)、LQVRKNKRR(配列番号16)、QVRKNKRRR(配列番号17)、VRKNKRRRG(配列番号18)、RKNKRRRGC(配列番号19)、KNKRRRGCP(配列番号20)、NKRRRGCPI(配列番号21)、およびKRRRGCPIL(配列番号22)。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0110】
特定の実施形態において、本発明のデカペプチドは、多くて2個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて1個のアミノ酸が置換されている、次のものから選択される配列を有するRhoC C末端由来ペプチドである:ATRAGLQVRK(配列番号23)、TRAGLQVRKN(配列番号24)、RAGLQVRKNK(配列番号25)、AGLQVRKNKR(配列番号26)、GLQVRKNKRR(配列番号27)、LQVRKNKRRR(配列番号28)、QVRKNKRRRG(配列番号29)、VRKNKRRRGC(配列番号30)、RKNKRRRGCP(配列番号31)、KNKRRRGCPI(配列番号32)およびNKRRRGCPIL(配列番号33)。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0111】
好ましい実施形態において、本発明の免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、配列番号2のRhoAおよび配列番号3のRhoBの配列とは異なる、多くて2個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の配列から選択される。
【0112】
したがって、1つの実施形態では、RhoBとは異なるRhoC配列が好ましい。RhoAとRhoBの両方と異なるC末端RhoC配列が最も好ましい。好適には、前記ペプチドは、7個のアミノ酸が、例えば6個のアミノ酸が、例えば5個のアミノ酸が、例えば4個のアミノ酸が、例えば3個のアミノ酸が、例えば2個のアミノ酸が、例えば少なくとも1個のアミノ酸が配列番号2のRhoAおよび配列番号3のRhoBの配列と異なるであろう。
【0113】
好ましくは、本発明の免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、少なくとも1個のアミノ酸が配列番号2のRhoAおよび配列番号3のRhoBの配列と異なる。したがって、本発明の好ましいペプチドは、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有し得る。
【0114】
あまり好ましくはないが、前記ペプチドは、7個のアミノ酸が、例えば6個のアミノ酸が、例えば5個のアミノ酸が、例えば4個のアミノ酸が、例えば3個のアミノ酸が、例えば2個のアミノ酸が、例えば少なくとも1個のアミノ酸が配列番号3のRhoBと異なるであろう。したがって、本発明の免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、アミノ酸残基
【0115】
【化2】

のうちの少なくとも1個を含有する。
【0116】
したがって、特定の実施形態において、本発明の免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの、50個のアミノ酸残基、例えば、多くて45個のアミノ酸残基、例えば多くて40個のアミノ酸残基、例えば多くて35個のアミノ酸残基、例えば多くて30個のアミノ酸残基、例えば多くて25個のアミノ酸残基、例えば18から25個の連続するアミノ酸から成り、この場合、多くて3個のアミノ酸が置換されており、および前記ペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのRhoC特異的アミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0117】
したがって、もう1つの特定の態様において、本発明の免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの、最大20個のアミノ酸残基、例えば多くて19個のアミノ酸残基、例えば多くて18個のアミノ酸残基、例えば多くて17個のアミノ酸残基、例えば多くて16個のアミノ酸残基、例えば多くて15個のアミノ酸残基、例えば多くて14個のアミノ酸残基、例えば多くて13個のアミノ酸残基、例えば多くて12個のアミノ酸残基、例えば多くて11個のアミノ酸残基、例えば8から10個の連続するアミノ酸から成り、この場合、多くて2個のアミノ酸が置換されており、および前記ペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのRhoC特異的アミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0118】
したがって、もう1つの特定の実施形態において、本発明の免疫原的に活性なペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの、100個のアミノ酸残基、例えば多くて90個のアミノ酸残基、例えば多くて80個のアミノ酸残基、例えば多くて70個のアミノ酸残基、例えば多くて65個のアミノ酸残基、例えば26から60の連続するアミノ酸から成り、この場合、多くて3個のアミノ酸が置換されており、および前記ペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのRhoC特異的アミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有する。
【0119】
したがって、一部の実施形態において、本発明のペプチドは、多くて2個のアミノ酸が置換されている、次のものを含む群から選択されるデカペプチドである:YVPTVFENYI(配列番号34)、VPTVFENYIA(配列番号35)、PTVFENYIAD(配列番号36)、TVFENYIADI(配列番号37)、VFENYIADIE(配列番号38)、FENYIADIEV(配列番号39)、ENYIADIEVD(配列番号40)、NYIADIEVDG(配列番号41)、YIADIEVDGK(配列番号42)、IADIEVDGKQ(配列番号43)、LVGNKKDLRQ(配列番号44)、VGNKKDLRQD(配列番号45)、GNKKDLRQDE(配列番号46)、NKKDLRQDEH(配列番号47)、KKDLRQDEHT(配列番号48)、DKLRQDEHTR(配列番号170)、KLRQDEHTRR(配列番号50)、LRQDEHTRRE(配列番号51)、RQDEHTRREL(配列番号171)、QDEHTRRELA(配列番号172)、LAKMKQEPVR(配列番号54)、AKMKQEPVRS(配列番号55)、KMKQEPVRSE(配列番号56)、MKQEPVRSEE(配列番号57)、KQEPVRSEEG(配列番号58)、QEPVRSEEGR(配列番号59)、EPVRSEEGRD(配列番号60)、PVRSEEGRDM(配列番号61)、VRSEEGRDMA(配列番号62)、RSEEGRDMAN(配列番号63)、SEEGRDMANR(配列番号64)、EGRDMANRIS(配列番号65)、GRDMANRISA(配列番号66)、RDMANRISAF(配列番号67)、DMANRISAFG(配列番号68)、MANRISAFGY(配列番号69)、ANRISAFGYL(配列番号173)、NRISAFGYLE(配列番号71)、RISAFGYLEC(配列番号174)、ISAFGYLECS(配列番号73)、SAFGYLECSA(配列番号175)、AFGYLECSAK(配列番号75)、FGYLECSAKT(配列番号76)、GYLECSAKTK(配列番号77)、YLECSAKTKE(配列番号78)、LECSAKTKEG(配列番号79)、ECSAKTKEGV(配列番号80)、CSAKTKEGVR(配列番号81)、SAKTKEGVRE(配列番号82)、AKTKEGVREV(配列番号176)、KTKEGVREVF(配列番号157)、TKEGVREVFE(配列番号89)、KEGVREVFEM(配列番号86)、EGVREVFEMA(配列番号177)、EVFEMATRAG配列番号88)、VFEMATRAGL(配列番号89)、FEMATRAGLQ(配列番号90)、EMATRAGLQV(配列番号91)、MATRAGLQVR(配列番号92)、ATRAGLQVRK(配列番号93)、TRAGLQVRKN(配列番号94)、RAGLQVRKNK(配列番号10)、AGLQVRKNKR(配列番号96)、GLQVRKNKRR(配列番号97)、LQVRKNKRRR(配列番号98)、QVRKNKRRRG(配列番号99)、VRKNKRRRGC(配列番号100)、RKNKRRRGCP(配列番号101)、KNKRRRGCPI(配列番号102)、NKRRRGCPIL(配列番号103)またはこれらの機能的相同体。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0120】
したがって、一部の実施形態において、本発明のペプチドは、多くて2個のアミノ酸が置換されている、次のものを含む群から選択されるノナペプチドである:VPTVFENYI(配列番号104)、PTVFENYIA(配列番号105)、TVFENYIAD(配列番号106)、VFENYIADI(配列番号107)、FENYIADIE(配列番号108)、ENYIADIEV(配列番号109)、NYIADIEVD(配列番号110)、YIADIEVDG(配列番号111)、IADIEVDGK(配列番号112)、VGNKKDLRQ(配列番号113)、GNKKDLRQD(配列番号114)、NKKDLRQDE(配列番号115)、KKDLRQDEH(配列番号116)、KDLRQDEHT(配列番号117)、KLRQDEHTR(配列番号118)、LRQDEHTRR(配列番号119)、RQDEHTRRE(配列番号120)、QDEHTRREL(配列番号121)、AKMKQEPVR(配列番号122)、KMKQEPVRS(配列番号123)、MKQEPVRSE(配列番号124)、KQEPVRSEE(配列番号125)、QEPVRSEEG(配列番号126)、EPVRSEEGR(配列番号127)、PVRSEEGRD(配列番号128)、VRSEEGRDM(配列番号129)、RSEEGRDMA(配列番号130)、SEEGRDMAN(配列番号131)、GRDMANRIS(配列番号132)、RDMANRISA(配列番号133)、DMANRISAF(配列番号134)、MANRISAFG(配列番号135)、ANRISAFGY(配列番号136)、NRISAFGYL(配列番号137)、RISAFGYLE(配列番号138)、ISAFGYLEC(配列番号139)、SAFGYLECS(配列番号140)、AFGYLECSA(配列番号141)、FGYLECSAK(配列番号142)、GYLECSAKT(配列番号144)、YLECSAKTKE(配列番号145)、LECSAKTKEG(配列番号146)、ECSAKTKEGV(配列番号147)、CSAKTKEGVR(配列番号148)、SAKTKEGVRE(配列番号149)、KTKEGVREV(配列番号150)、KEGVREVFE(配列番号152)、EGVREVFEM(配列番号153)、VFEMATRAG(配列番号154)、FEMATRAGL(配列番号155)、MATRAGLQV(配列番号157)、ATRAGLQVR(配列番号158)、TRAGLQVRK(配列番号159)、RAGLQVRKN(配列番号160)、AGLQVRKNK(配列番号161)、GLQVRKNKR(配列番号162)、LQVRKNKRR(配列番号163)、QVRKNKRRR(配列番号164)、VRKNKRRRG(配列番号165)、RKNKRRRGC(配列番号166)、KNKRRRGCP(配列番号167)、NKRRRGCPI(配列番号168)、KRRRGCPIL(配列番号169)またはこれらの機能的相同体。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0121】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、多くて3個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて2個のアミノ酸が置換されている、例えば多くて1個のアミノ酸が置換されている、次のものから選択される:VYVPTVFENYIADIEVDGKQV(配列番号5)、ILVGNKKLRQDEHTRRLAK(配列番号6)およびELAKMKQEPVRSEEGRDMANR(配列番号7)またはこれらの機能的相同体。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0122】
配列番号1のRhoCの配列のC末端部分が、配列番号2のRhoAおよび配列番号3のRhoBの配列と最も異なる。本発明の好ましい実施形態において、前記ペプチドは、配列番号1のRhoCのC末端部分から選択され得る。
【0123】
本発明の他のペプチドは、配列番号1のRhoCの多くて2個のアミノ酸が置換、欠失または付加されている、配列番号1のRhoCまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、4個と120個の間、好ましくは8個と100個の間、さらに好ましくは10個と75個の間、さらにより好ましくは12個と60個の間、さらにより好ましくは15個と40個の間、例えば18個と25個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0124】
本発明の好ましい実施形態において、前記ペプチドは、多くて3個のアミノ酸が置換、欠失または付加されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、4個と120個の間、好ましくは8個と100個の間、さらに好ましくは10個と75個の間、さらにより好ましくは12個と60個の間、さらにより好ましくは15個と40個の間、例えば18個と25個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0125】
本発明の他のペプチドは、配列番号1のRhoCの多くて2個のアミノ酸が置換、欠失または付加されている、配列番号1のRhoCまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、10個と150個の間、好ましくは12個と120個の間、さらに好ましくは15個と75個の間、さらにより好ましくは20個と70個の間、さらにより好ましくは22個と65個の間、例えば26個と60個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0126】
本発明の好ましい実施形態において、前記ペプチドは、多くて3個のアミノ酸が置換、欠失または付加されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、10個と150個の間、好ましくは12個と120個の間、さらに好ましくは15個と75個の間、さらにより好ましくは20個と70個の間、さらにより好ましくは22個と65個の間、例えば26個と60個の間の連続するアミノ酸を含む(またはさらに好ましくは、から成る)。
【0127】
本発明の好ましい実施形態において、前記ペプチドは、配列RXGLQVRKNKを含み、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンから成る群から選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、多くて60アミノ酸長である。
【0128】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、RhoCのC末端から選択され、したがって、次のEEGRDMANRISAFGYKECSAKTKEGVREVFEMATRAGLQVRKNKRRRGCPIL(配列番号8)またはATRAGLQVRKNKRRRGCPIL(配列番号4)またはRAGLQVRKNK(配列番号10)から選択される。もう1つの実施形態において、前記ペプチドは、RAGLQVRKNK(配列番号10)のアラニンがロイシンで置換されている、人工ペプチドであるRLGLQVRKNK(配列番号9)である。
【0129】
本発明の1つの実施形態において、RhoCペプチドは、変異体ペプチドを含む。本明細書において用いる場合、「変異体」という表現は、好適にはヒトRhoCである基本タンパク質と相同であるが、その配列内の1個以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されている点でそれらが由来する基本配列と異なる、ペプチドを指す。好適には、変異体は、多くて6個のアミノ酸置換、例えば、多くて5個のアミノ酸置換、例えば多くて4個のアミノ酸置換、例えば多くて3個のアミノ酸置換、例えば多くて2個のアミノ酸置換、例えば多くて1個のアミノ酸置換を有する。
【0130】
したがって、有用な実施形態において、本発明のペプチドは、それらの配列が、表に列挙した特定のHLA対立遺伝子のそれぞれについて、表に示したようなアミノ酸のいずれかを含むペプチドを含む。
【0131】
したがって、本発明のペプチドは、1から10個の範囲の、好ましくは1から5個の範囲の、さらに好ましくは1から3個の範囲の、さらにより好ましくは1から2個の範囲の、さらにより好ましくは1個のアミノ酸が、好ましくは、そのペプチドが、上の表に示したような所与のHLA−A特異的ペプチドの1個以上、好ましくはすべてのアンカー残基を含むような様式で、別のアミノ酸と交換されている、RhoCからの連続配列を含む上述のペプチドのいずれかであり得る。
【0132】
所与のHLA−A特異的ペプチドのアンカー残基を含むRhoCのペプチドを調製する方法の非限定的な例は、実施例1におけるセクション「RhoCからのHLA−A3結合ペプチド」において説明する。したがって、本発明の1つの実施形態において、前記ペプチド前記ペプチドは、多くて200個、好ましくは多くて100個、さらに好ましくは多くて50個、さらにより好ましくは多くて25個、さらにより好ましくは多くて20個、さらにより好ましくは多くて15個、さらにより好ましくは多くて10個のアミノ酸を含み、RAGLQVRKNK(配列番号10)またはRLGLQVRKNK(配列番号11)からなる群より選択される配列を含む、任意のペプチドであり得る。
【0133】
したがって、本発明の短いペプチドを同定するためのアプローチは、次の段階を含む:特定のHLA分子、例えば所与の集団において高い率で発生するもの、を選択する段階、上で説明したようなアラインメント分析を行って、Rho遺伝子タンパク質中の「アンカー残基モチーフ」を同定する段階、同定されたアンカー残基のうちの1個以上を含む、適するサイズのペプチドを単離または構築する段階、ならびに結果として得られたペプチドを、本明細書において実施例1で説明するおよびWO2005/049073に詳細に記載されているようなELISPOTアッセイによって決定したとき癌患者のPBL集団において10PBL当り少なくとも1の頻度でINF−γ産生細胞を惹起する該ペプチドの能力、および/または(iii)試験するエピトープペプチドと反応性であるCTLを腫瘍組織においてインサイチュで検出する該ペプチドの能力について試験する段階。
【0134】
本発明のペプチドは、上述のように、配列番号1のRhoCまたはそのフラグメントから誘導される。前記ペプチドを誘導することができるタンパク質は、そのタンパク質が発現される任意の動物種からの任意のRhoCであり得る。好ましい実施形態において、出発タンパク質は、齧歯動物種、ウサギおよび霊長類種、例えばヒトを含む、哺乳動物種からのものである。選択するタンパク質の配列に基づき、上に示したような、適するサイズのペプチドを結果として生じさせるタンパク質出発原料の任意の適切な化学的もしくは酵素的処理によって本発明のペプチドを誘導し、または通常の当業者によく知られている任意の従来のペプチド合成手順によってそれを合成することができる。
【0135】
本発明のペプチドは、それが由来するRhoCの天然配列である配列を有することがある。しかし、任意の所与のHLA分子に対する、より高い親和性を有するペプチドを、例えば、所与のHLA分子についてのアンカー残基モチーフを同定する、上で説明した手順に基づいて、少なくとも1個のアミノ酸残基の置換、欠失または付加により配列を修飾することによって、そのような天然配列から誘導することができる。
【0136】
本発明のペプチドの有意な特徴は、INF−γ産生性リスポンダーT細胞、すなわち、癌患者のPBL集団または腫瘍細胞(標的細胞)中の特定のペプチドを特異的に認識する細胞傷害性T細胞(CLT)、を認識または惹起するその能力である。この活性は、実施例1において説明するおよびWO2005/049073および実施例1に詳細に記載されているELISPOTアッセイに患者からのPBLまたは腫瘍細胞を付すことによって容易に判定される。このアッセイの前に、アッセイするPBL集団または腫瘍細胞を、試験するペプチドと細胞を接触させることによって、刺激することが有利である場合もある。好ましくは、前記ペプチドは、本明細書において用いるようなELISPOTアッセイによって決定したとき10PBL当り少なくとも1の頻度でINF−γ産生性T細胞を惹起または認識することができる。さらに好ましくは、前記頻度は、10PBL当り少なくとも5、最も好ましくは10PBL当り少なくとも10、例えば、10PBL当り少なくとも50または100である。
【0137】
ELISPOTアッセイは、RhoCペプチド特異的T細胞応答をモニターするための強力なツールの代表である。本明細書における発見の重要な含意は、本発明のペプチドを癌細胞上で発現させてHLA分子と複合させることができることである。これは、これらの細胞をCTLによる分解を受け易くし、および転移の発達を制御するRhoC免疫処置の潜在的有用性を強調する。実施例1において説明するような黒色腫患者からのPBLにおけるHLA拘束RhoC由来ペプチドエピトープへの自発的CTL応答の存在は、RhoC免疫原性ペプチドの免疫療法の可能性を示す。
【0138】
1つの実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号1のRhoCまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体が発現される癌疾患を有する患者のPBL集団におけるINF−γ産生細胞を惹起することができる。
【0139】
本発明の好ましい実施形態において、臨床状態は、癌である。本明細書において用いる場合の用語「癌」は、任意の癌、新生物性および前新生物性疾患を包含する意味を持つ。前記癌は、例えば、大腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌腫、規定細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、ヘパトーム、胆管癌腫、絨毛上皮癌腫、精上皮腫、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、膠芽腫、ニューロノーマ、頭蓋咽頭腫、神経鞘腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病およびリンパ腫、急性リンパ性白血病および急性骨髄性真性多血症、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、および重鎖病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、直腸癌、泌尿器の癌、子宮癌、口腔癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、喉頭癌、食道癌、乳房腫瘍、小児−null急性リンパ性白血病(ALL)、胸腺ALL、B細胞ALL、急性骨髄性白血病、骨髄単球様白血病、急性巨核球様白血病、バーキットリンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、およびT細胞白血病、小および大非小細胞肺癌、急性顆粒球性白血病、生殖細胞腫瘍、子宮内膜癌、胃癌、頭頚部癌、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病ならびに甲状腺癌からなる群より選択することができる。
【0140】
好ましい実施形態において、本発明のワクチン組成物は、黒色腫、卵巣癌または肺癌の群から選択される癌の処置用である。
【0141】
非常に好ましい実施形態において、前記癌疾患は、転移癌であり、したがって好ましくは、前記臨床状態は、転移癌である上述の癌のいずれかであり、さらにより好ましくは、前記臨床状態は、転移性黒色腫、転移性卵巣癌または転移性肺癌の群から選択される。
【0142】
PBL集団において免疫応答を惹起するそれらの能力に加えて、本発明のペプチドは、インサイチュで、すなわち充実性腫瘍組織において、細胞溶解性免疫応答を惹起することができることも考えられる。これは、例えば、HLA−ペプチド複合体を生じさせること、例えば、多量体化されることおよび検出可能なラベルを付与されること、ならびにそのような複合体を免疫組織化学染色に用いて、本発明のエピトープペプチドと反応性であるCTLを腫瘍組織において検出することによって、実証することができる。したがって、本発明のペプチドのさらなる有意な特徴は、前記エピトープペプチドと反応性であるCLTの腫瘍組織におけるインサイチュ検出ができることである。
【0143】
本発明のペプチドは、HLA分子に結合するそれらの能力(その結果、細胞表面にHLAとペプチドの複合体を提示し、そしてまたその複合体がエピトープとして作用する、または細胞溶解性T細胞を標的にする)ことに加えて、前記複合体に対する抗体の産生および/または遅延型過敏(DTH)反応を生じさせるB細胞応答などの他のタイプの免疫応答を惹起することがある。後のタイプの免疫応答は、本発明のペプチドの注射部位での発赤および触知可能な硬結と定義する。
【0144】
本発明のワクチン組成物は、上述のペプチドのいずれかを含み得る。本発明のワクチン組成物は、前記配列番号1のRhoCまたは前記配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、2から100個の範囲、例えば5から75個、例えば8から50個、好ましくは9から25個の範囲のアミノ酸の連続配列から成る。好ましい実施形態において、前記ワクチン組成物は、少なくとも1個のアミノ酸が配列番号3のRhoBの配列と異なる、配列番号1のRhoCの配列を含む。さらにより好ましい実施形態において、前記ワクチン組成物は、少なくとも1個のアミノ酸が配列番号2のRhoAまたは配列番号3のRhoBの配列と異なる、配列番号1のRhoCの配列を含む。
【0145】
1つの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、多くて50個のアミノ酸残基、例えば多くて45個のアミノ酸残基、例えば多くて40個のアミノ酸残基、例えば多くて35個のアミノ酸残基、例えば多くて30個のアミノ酸残基、例えば多くて25個のアミノ酸残基、例えば15から20個のアミノ酸残基から成るペプチドフラグメントを含むことがある。
【0146】
もう1つの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、多くて20個のアミノ酸残基、例えば多くて19個のアミノ酸残基、例えば多くて18個のアミノ酸残基、例えば多くて17個のアミノ酸残基、例えば多くて16個のアミノ酸残基、例えば多くて15個のアミノ酸残基、例えば多くて14個のアミノ酸残基、例えば多くて13個のアミノ酸残基、例えば多くて12個のアミノ酸残基、例えば多くて11個のアミノ酸残基、例えば8から10個のアミノ酸残基から成るペプチドフラグメントを含むことがある。
【0147】
もう1つの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、多くて100個のアミノ酸残基、例えば多くて90個のアミノ酸残基、例えば多くて80個のアミノ酸残基、例えば多くて70個のアミノ酸残基、例えば多くて65個のアミノ酸残基、例えば26から60個のアミノ酸残基から成るペプチドフラグメントを含むことがある。
【0148】
一部の実施形態において、前記ワクチン組成物は、多くて3個、例えば多くて2個のアミノ酸、例えば多くて1個のアミノ酸が置換されている、8から60個の範囲のアミノ酸、好ましくは8から20個の範囲のアミノ酸のペプチドフラグメントを含むことがある。前記置換は、半保存的であるこがあり、または好ましくは、前記置換は保存的である。
【0149】
RhoAとRhoBとRhoCにはそれらのタンパク質のC末端に関して大きな配列の違いがあるので、好ましい実施形態において、本発明のワクチン組成物は、配列番号1のRhoCまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の100個の最もC末端側のアミノ酸、例えば75個の最もC末端側のアミノ酸、例えば60個の最もC末端側のアミノ酸から選択される配列から成る。
【0150】
特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、多くて2個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて1個のアミノ酸が置換されている、次のものから選択される配列を有するRhoC C末端由来ペプチドを含むことがある:ATRAGLQVR(配列番号11)、TRAGLQVRK(配列番号12)、RAGLQVRKN(配列番号13)、AGLQVRKNK(配列番号14)、GLQVRKNKR(配列番号15)、LQVRKNKRR(配列番号16)、QVRKNKRRR(配列番号17)、VRKNKRRRG(配列番号18)、RKNKRRRGC(配列番号19)、KNKRRRGCP(配列番号20)、NKRRRGCPI(配列番号21)、およびKRRRGCPIL(配列番号22)。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0151】
特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、多くて2個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて1個のアミノ酸が置換されている、次のものから選択される配列を有するRhoC C末端由来ペプチドを含むことがある:ATRAGLQVRK(配列番号23)、TRAGLQVRKN(配列番号24)、RAGLQVRKNK(配列番号25)、AGLQVRKNKR(配列番号26)、GLQVRKNKRR(配列番号27)、LQVRKNKRRR(配列番号28)、QVRKNKRRRG(配列番号29)、VRKNKRRRGC(配列番号30)、RKNKRRRGCP(配列番号31)、KNKRRRGCPI(配列番号32)およびNKRRRGCPIL(配列番号33)。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0152】
他の特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、多くて2個のアミノ酸が置換されている、次のものを含む群から選択されるペプチドを含むことがある:YVPTVFENYI(配列番号34)、VPTVFENYIA(配列番号35)、PTVFENYIAD(配列番号36)、TVFENYIADI(配列番号37)、VFENYIADIE(配列番号38)、FENYIADIEV(配列番号39)、ENYIADIEVD(配列番号40)、NYIADIEVDG(配列番号41)、YIADIEVDGK(配列番号42)、IADIEVDGKQ(配列番号43)、LVGNKKDLRQ(配列番号44)、VGNKKDLRQD(配列番号45)、GNKKDLRQDE(配列番号46)、NKKDLRQDEH(配列番号47)、KKDLRQDEHT(配列番号48)、DKLRQDEHTR(配列番号170)、KLRQDEHTRR(配列番号50)、LRQDEHTRRE(配列番号51)、RQDEHTRREL(配列番号171)、QDEHTRRELA(配列番号172)、LAKMKQEPVR(配列番号54)、AKMKQEPVRS(配列番号55)、KMKQEPVRSE(配列番号56)、MKQEPVRSEE(配列番号57)、KQEPVRSEEG(配列番号58)、QEPVRSEEGR(配列番号59)、EPVRSEEGRD(配列番号60)、PVRSEEGRDM(配列番号61)、VRSEEGRDMA(配列番号62)、RSEEGRDMAN(配列番号63)、SEEGRDMANR(配列番号64)、EGRDMANRIS(配列番号65)、GRDMANRISA(配列番号66)、RDMANRISAF(配列番号67)、DMANRISAFG(配列番号68)、MANRISAFGY(配列番号69)、ANRISAFGYL(配列番号173)、NRISAFGYLE(配列番号71)、RISAFGYLEC(配列番号174)、ISAFGYLECS(配列番号73)、SAFGYLECSA(配列番号175)、AFGYLECSAK(配列番号75)、FGYLECSAKT(配列番号76)、GYLECSAKTK(配列番号77)、YLECSAKTKE(配列番号78)、LECSAKTKEG(配列番号79)、ECSAKTKEGV(配列番号80)、CSAKTKEGVR(配列番号81)、SAKTKEGVRE(配列番号82)、AKTKEGVREV(配列番号176)、KTKEGVREVF(配列番号157)、TKEGVREVFE(配列番号89)、KEGVREVFEM(配列番号86)、EGVREVFEMA(配列番号177)、EVFEMATRAG配列番号88)、VFEMATRAGL(配列番号89)、FEMATRAGLQ(配列番号90)、EMATRAGLQV(配列番号91)、MATRAGLQVR(配列番号92)、ATRAGLQVRK(配列番号93)、TRAGLQVRKN(配列番号94)、RAGLQVRKNK(配列番号10)、AGLQVRKNKR(配列番号96)、GLQVRKNKRR(配列番号97)、LQVRKNKRRR(配列番号98)、QVRKNKRRRG(配列番号99)、VRKNKRRRGC(配列番号100)、RKNKRRRGCP(配列番号101)、KNKRRRGCPI(配列番号102)、NKRRRGCPIL(配列番号103)またはこれらの機能的相同体。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0153】
他の特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、多くて2個のアミノ酸が置換されている、次のものを含む群から選択されるペプチドを含むことがある:VPTVFENYI(配列番号104)、PTVFENYIA(配列番号105)、TVFENYIAD(配列番号106)、VFENYIADI(配列番号107)、FENYIADIE(配列番号108)、ENYIADIEV(配列番号109)、NYIADIEVD(配列番号110)、YIADIEVDG(配列番号111)、IADIEVDGK(配列番号112)、VGNKKDLRQ(配列番号113)、GNKKDLRQD(配列番号114)、NKKDLRQDE(配列番号115)、KKDLRQDEH(配列番号116)、KDLRQDEHT(配列番号117)、KLRQDEHTR(配列番号118)、LRQDEHTRR(配列番号119)、RQDEHTRRE(配列番号120)、QDEHTRREL(配列番号121)、AKMKQEPVR(配列番号122)、KMKQEPVRS(配列番号123)、MKQEPVRSE(配列番号124)、KQEPVRSEE(配列番号125)、QEPVRSEEG(配列番号126)、EPVRSEEGR(配列番号127)、PVRSEEGRD(配列番号128)、VRSEEGRDM(配列番号129)、RSEEGRDMA(配列番号130)、SEEGRDMAN(配列番号131)、GRDMANRIS(配列番号132)、RDMANRISA(配列番号133)、DMANRISAF(配列番号134)、MANRISAFG(配列番号135)、ANRISAFGY(配列番号136)、NRISAFGYL(配列番号137)、RISAFGYLE(配列番号138)、ISAFGYLEC(配列番号139)、SAFGYLECS(配列番号140)、AFGYLECSA(配列番号141)、FGYLECSAK(配列番号142)、GYLECSAKT(配列番号144)、YLECSAKTKE(配列番号145)、LECSAKTKEG(配列番号146)、ECSAKTKEGV(配列番号147)、CSAKTKEGVR(配列番号148)、SAKTKEGVRE(配列番号149)、KTKEGVREV(配列番号150)、KEGVREVFE(配列番号152)、EGVREVFEM(配列番号153)、VFEMATRAG(配列番号154)、FEMATRAGL(配列番号155)、MATRAGLQV(配列番号157)、ATRAGLQVR(配列番号158)、TRAGLQVRK(配列番号159)、RAGLQVRKN(配列番号160)、AGLQVRKNK(配列番号161)、GLQVRKNKR(配列番号162)、LQVRKNKRR(配列番号163)、QVRKNKRRR(配列番号164)、VRKNKRRRG(配列番号165)、RKNKRRRGC(配列番号166)、KNKRRRGCP(配列番号167)、NKRRRGCPI(配列番号168)、KRRRGCPIL(配列番号169)またはこれらの機能的相同体。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0154】
特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、配列RXGLQVRKNKを含むペプチドを含むことがあり、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、10個と150個の間、好ましくは12個と120個の間、さらに好ましくは15個と75個の間、さらにより好ましくは20個と70個の間、さらにより好ましくは22個と65個の間、例えば26個と60個の間の連続するアミノ酸である。
【0155】
特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、配列RXGLQVRKNKを含むペプチドを含むことがあり、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメントは、長くとも200、好ましくは長くとも100、さらに好ましくは長くとも60アミノ酸長である。
【0156】
他の特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、配列RXGLQVRKNKを含むペプチドを含むことがあり、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメント前記ペプチドフラグメントは、配列番号1のRhoCのまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体の、4個と120個の間、好ましくは8個と100個の間、さらに好ましくは10個と75個の間、さらにより好ましくは12個と60個の間、さらにより好ましくは15個と40個の間、例えば18個と25個の間の連続するアミノ酸である。
【0157】
他の特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、配列RXGLQVRKNKを含むペプチドを含むことがあり、この場合、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、ならびに前記ペプチドフラグメント前記ペプチドフラグメントは、配列番号1の多くて3個のアミノ酸が置換されている、配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体の、多くて200個、好ましくは多くて100個、さらに好ましくは多くて60個、さらにより好ましくは多くて25個、さらにいっそう好ましくは多くて20個、さらに尚より好ましくは多くて15個、例えば多くて10個、例えば8から10個の範囲の連続するアミノ酸である。
【0158】
非常に特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、多くて3個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて2個のアミノ酸が置換されている、例えば、多くて1個のアミノ酸が置換されている、次のものを含む群から選択されるペプチドを含むことがある:VYVPTVFENYIADIEVDGKQV(配列番号5)、ILVGNKKLRQDEHTRRLAK(配列番号6)およびELAKMKQEPVRSEEGRDMANR(配列番号7)またはこれらの機能的相同体。好ましくは、いずれのアミノ酸も置換されていない。
【0159】
他の非常に特定の実施形態において、前記ワクチン組成物は、RhoCのC末端からのペプチド、したがって、次のものから選択されるペプチドを含むことがある:EEGRDMANRISAFGYKECSAKTKEGVREVFEMATRAGLQVRKNKRRRGCPIL(配列番号8)またはATRAGLQVRKNKRRRGCPIL(配列番号4)またはRAGLQVRKNK(配列番号10)。もう1つの好ましい実施形態において、前記ペプチドは、RAGLQVRKNK(配列番号10)のアラニンがロイシンで置換されている、人工ペプチドであるRLGLQVRKNK(配列番号9)である。
【0160】
本発明のワクチン組成物は、RhoCを発現する癌に罹患している個体に投与したとき、配列番号1のRhoCまたは配列番号1と少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体を発現する癌に対する免疫応答を惹起することができる。好ましい実施形態において、前記癌は、転移癌である。本発明のワクチン組成物は、ワクチン接種した患者において癌細胞に対する細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を惹起することができ、および/または被験者における腫瘍間質への抗原特異的T細胞の浸潤を誘導することができる。
【0161】
本発明のワクチン組成物は、RhoCに属するタンパク質またはその免疫学的に活性なペプチドフラグメントをコードする核酸を含むことがある。したがって、前記核酸は、任意の上述のタンパク質およびペプチドフラグメントのいずれかをコードすることがある。前記核酸は、例えば、DNA、RNA、LNA、HNA、PNAであり得、好ましくは、前記核酸は、DNAまたはRNAである。
【0162】
本発明の核酸は、発現ベクターなどの任意の適するベクターの中に含まれていることがある。非常に多数のベクターを利用することができ、当業者は、特定の目的のために有用なベクターを選択することができるだろう。前記ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子または人工染色体の形態であり得る。適切な核酸配列を様々な手技によって前記ベクターに挿入することができ、例えば、当該技術分野において周知の技術を用いてDNAを適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(単数または複数)に挿入することができる。本発明の核酸配列の他に、前記ベクターは、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つ以上をさらに含むことがある。前記ベクターは、追加の配列も含むことがある。これらの成分の1つ以上を含有する、適するベクターの構築には、当業者に公知である標準的なライゲーション技術が利用される。前記ベクターは、好ましくは、適する細胞においてその核酸の発現を指示する核酸調節配列に作動可能に連結された核酸を含む、発現ベクターである。本発明の範囲内の前記核酸調節配列は、一般に、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、さらに好ましくは抗原提示細胞における発現を指示することができるはずである。
【0163】
1つの好ましい実施形態において、前記ベクターは、ウイルスベクターである。
【0164】
前記ベクターは、細菌ベクター、例えば弱毒化細菌ベクターである場合もある。弱毒化細菌ベクターは、感染および残存部位での継続的粘膜免疫応答を誘導するために使用することができる。異なる組換え細菌をベクターとして使用することができ、例えば、それらの細菌ベクターは、Salmonella、Lactococcus]、およびListeriaからなる群より選択することができる。一般に、異種抗原HPV16 L1またはE7に対する免疫の誘導は、マウスにおける強いCTL誘導および腫瘍退縮で、証明することができる。
【0165】
前記ベクターは、T細胞刺激ポリペプチドをコードする核酸もさらに含むことがある。
【0166】
本発明は、
i)本明細書に記載するワクチン組成物のいずれか、および/または
ii)本明細書に記載するrho遺伝子ファミリーに属するタンパク質のいずれか、および/または
iii)本明細書に記載するii)のタンパク質のペプチドフラグメント、および/または
iv)ii)のタンパク質もしくはiii)のペプチドをコードする核酸のいずれか、
およびさらなる抗癌剤
を含む、パーツキットにも関する。
【0167】
前記パーツキットの成分は、好ましくは個々の組成物に含まれるが、パーツキットの成分すべてが同じ組成物の中に含まれることは、本発明の範囲内に含まれる。したがって、前記パーツキットの成分は、同時にまたは逐次的に任意の順序で投与することができる。
【0168】
前記抗癌剤は、化学療法もしくは遺伝子療法において使用される薬剤、免疫刺激物質または抗体であり得る。前記免疫刺激物質は、サイトカイン、例えば、GM−CSF、I型IFN、インターロイキン12およびインターロイキン15からなる群より選択されるサイトカインであり得る。前記抗体は、好ましくは、免疫賦活性抗体、例えば抗CD40または抗CTLA−4抗体である。前記免疫刺激物質は、免疫抑制細胞(例えば、調節T細胞)または因子を枯渇させることができる物質である場合もあり、前記物質は、例えば、E3ユビキチンリガーゼである。E3ユビキチンリガーゼ(HECT、RINGおよびU−boxタンパク質)は、免疫細胞機能の重要な分子調節剤として登場したものであり、それぞれが、特定の抑制分子をタンパク質分解破壊のための標的にすることにより、感染中の免疫応答の調節に関与することができる。幾つかのHECTおよびRING E3タンパク質は、今では自己免疫寛容の誘導および維持にも結び付けられている:c−Cbl、Cbl−b、GRAIL、ItchおよびNedd4は、それぞれ、T細胞成長因子産生および増殖を負に調節する。
【0169】
本発明の発見が、本発明のタンパク質またはペプチドフラグメントの診断的用途ばかりでなく治療のための基礎をもたらすことは、明らかである。
【0170】
本発明の重要な態様は、RhoC特異的T細胞のインビトロでの培養および患者へのこれらの養子的移入に関する。養子的移入は、特定の免疫応答を既に生じさせることができる免疫系の実際の成分を医師が患者に直接移入することを意味する。
【0171】
例えば養子的移入に有用であり得るRhoC特異的T細胞を提供することが、本発明の1つの目的である。RhoCペプチド/MHCクラスIまたはRhoCペプチド/MHCクラスII複合体に特異的に結合することができるT細胞受容体を含む単離されたT細胞を患者に養子的に移入することができ、前記T細胞は、好ましくは、インビトロで増殖させたT細胞であり、この場合のRhoCペプチドは、本明細書において上述したRhoCペプチドのいずれかであり得る。インビトロでのT細胞の増殖方法は、当業者に周知である。本発明は、MHC拘束RhoCペプチド複合体に特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞を個体、例えば癌疾患に罹患しているヒト、に投与することを含む処置方法にも関し、この場合のRhoC由来ペプチドは、本明細書において上述したRhoCペプチドのいずれかであり得る。本発明は、癌疾患の処置用の医薬品を調製するための、RhoCまたはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞の使用にさらに関する。自己由来T細胞移入は、本質的にはWalterら(1995)に記載されているように、行うことができる。
【0172】
さらにもう1つの実施形態において、そのようなT細胞を養子的移入前に照射して、患者における増殖を制御することができる。TCR遺伝子移入によってT細胞の特異性を遺伝子操作することができる。これにより、RhoCペプチド特異性を有するT細胞を患者に移入することができる。一般に、養子免疫療法のためのT細胞の使用は、腫瘍またはウイルスのない環境でT細胞を増殖させることができるため、および注入前にT細胞機能を分析できるため、魅力的である。養子的移入におけるTCR遺伝子修飾T細胞(例えば、異種TCRお発現を指示する発現構築物で形質転換されたT細胞)の利用は、T細胞系の移入と比較して幾つかの利点を有する。(i)指示し直されたT細胞の世代を一般に利用できる。(ii)高親和性または超高親和性TCRを選択または作製して使用してT細胞を遺伝子操作することができる。(iii)安定化TCRのより良好な表面発現を可能にするコドン最適化またはマウス化TCRを使用して高結合活性T細胞を産生することができる。T細胞受容体(TCR)遺伝子移入によるT細胞特異性の遺伝子操作は、本質的にはMorganら(2006)に記載されているように、行うことができる。
【0173】
したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明のタンパク質またはペプチドフラグメントを含むワクチン組成物、詳細には、転移癌を有する患者に投与したとき、そのワクチン接種した患者において癌細胞に対する細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を惹起することを含めて癌疾患に対する免疫応答を惹起することができる医薬組成物を提供する。
【0174】
HLA細胞が異なれば、大きなヒト集団におけるそれらの有病率も異なることは周知であるので、本発明の方法によって処置することができる患者コホートを拡大するために幾つかのHLAクラスI分子に拘束されるペプチドエピトープを同定する必要がある。異なるHLA拘束要素を有する多数のRhoCエピトープの特性付けは、2つの重要な点でこの標的抗原の臨床的可能性を広げる:(i)それは、RhoC由来ペプチドに基づく免疫療法に適格な患者の数を増加させる。HLA−A2抗原は、白人およびアジア人人口の約50%によって発現され、HLA−A1およびHLA−A3抗原は、両方とも、白人の約25%およびアジア人の5%で発現されるのに対して、HLA−A11抗原は、白人の約15%およびアジア人の30%によって発現される。共発現のため、これらの数の計算が合わないことがあるにもかかわらず、これらの多重度により限定されるペプチドの組み合わせは、大部分の癌患者を確かに包含する、(ii)それぞれの患者における幾つかの拘束要素の一括標的化は、HLA対立遺伝子喪失による免疫逃避のリスクを低下させる可能性が高い。単一のHLA対立遺伝子の喪失は、癌細胞について説明されているMHC変性の有意な要素であるが、クラスI発現の完全喪失は、相当珍しい事象である。したがって、異なるHLA対立遺伝子に拘束されるRhoCエピトープを同定すれば、対立遺伝子が重複している患者において1つより多くのHLA分子を同時に標的にすることができるだろう。また、プロテアソームによるより長いC末端RhoCペプチドの細胞プロセッシングがあれば、対立遺伝子が重複している患者において1つより多くのHLA分子を同時に標的にすることができるだろう。
【0175】
本発明は、高免疫原性マルチ・エピトープ・ワクチンにも関する。好ましくは、そのようなワクチンは、他の適するペプチドおよび/または本明細書において後で説明するようなアジュバントとの場合によっては組み合わせでの最適なRhoC由来ペプチドの同時送達を助長するように設計すべきである。本発明は、RhoCに属さないまたは由来しないさらなるタンパク質もしくはペプチドおよび/または本明細書において後で説明するようなアジュバントとの場合によっては組み合わせでRhoC由来ペプチドを含むそのようなマルチエピトープワクチンを包含する。より複雑な組成物を有するワクチンの開発に駆り立てる重要な要因は、例えば、注意深く選択されたCTLおよびT細胞エピトープのコレクションを含むまたはコードするワクチンを設計することにより、多数の腫瘍抗原を標的にするという願望である。したがって、1つの態様において、本発明は、クラスI拘束RhoCエピトープとクラスII拘束RhoCエピトープの両方を含むワクチン組成物に関する。
【0176】
したがって、本発明のペプチドは、短い「MHC−ready」形態の(クラスI拘束)ペプチドと、プロテアソームによるプロセッシングを必要とするより長い形態の(クラスII拘束)ペプチドの両方を含む。
【0177】
本発明のペプチドは、比較的小さい分子であるので、そのような組成物では、ワクチン、免疫原性組成物などを産生するために、それらのペプチドをアジュバントなどの様々な材料と併せることを必要とすることがある。アジュバントは、広く定義すると、免疫応答を促進する物質である。アジュバントの一般的論考は、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles & Practice(第2版、1986)の61−63頁に提供されている。しかし、Godingは、対象となる抗原が低分子量のものであるとき、またはあまり免疫原性でないものであるとき、免疫原性担体とのカップリングを推奨すると述べている。そのような担体分子の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミンおよび家禽免疫グロブリンが挙げられる。様々なサポニン抽出物も免疫原性組成物におけるアジュバントとして有用であることが示唆されている。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、周知のサイトカイン、をアジュバントとして使用することも提案されている(WO97/28816)。
【0178】
本発明のワクチン組成物は、好ましくは、アジュバントおよび/または担体を含む。有用なアジュバントおよび担体の例は、本明細書において下で与える。したがって、前記組成物中に存在するRho遺伝子タンパク質ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントを、例えば、Rho遺伝子タンパク質ファミリーまたはそのペプチドフラグメントをT細胞に提示することができる例えば樹状細胞(DC)などのタンパク質または抗原提示細胞のような担体と、会合させることができる。
【0179】
アジュバントは、前記ワクチン組成物への混合がRhoCまたはそのペプチドフラグメントへの免疫応答を増加させるまたは別様に修飾する任意の物質である。担体は、RhoCまたはそのペプチドフラグメントを会合させることができる足場構造、例えばポリペプチドまたは多糖類である。
【0180】
アジュバントは、例えば、AlK(SO、AlNa(SO、AlNH(SO)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)、Ca(PO、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−DMP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11687;nor−MDPとも呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−(1’2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A;MTP−PEとも呼ばれる)、2%スクアレン/Tween−80.RTM.エマルジョンでのRIBI(MPL+TDM+CWS)、リポ多糖類およびその様々な誘導体(脂質Aを含む)、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント、Merckアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、Mycobacterium tuberculosisからのワックスD、Corynebacterium parvum、Bordetella pertussis、およびBrucella属のメンバーにおいて見出される物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(US 58767および5,554,372参照)、脂質A誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、Montanide ISA−51ならびにQS−21からなる群より選択することができる。本発明に伴って使用するために好ましいアジュバントとしては、油/界面活性剤系アジュバント、例えばMontanideアジュバント(ベルギーのSeppicから入手可能)、好ましくはMontanide ISA−51が挙げられる。他の好ましいアジュバントは、細菌DNA系アジュバント、例えば。CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントである。さらに他の好ましいアジュバントは、ウイルスdsRNA系アジュバント、例えばポリI:Cである。イミダゾキニリンは、好ましいアジュバントのさらにもう1つの例である。最も好ましいアジュバントは、ヒトでの使用に適するアジュバントである。リポソームは、一般に、本発明にとって有用なアジュバントではなく、したがって、好ましくは、本発明のワクチン組成物は、リポソームを含まない。
【0181】
Montanideアジュバント(すべて、ベルギーのSeppicから入手可能)は、Montanide ISA−51、Montanide ISA−50、Montanide ISA−70、Montanide ISA−206、Montanide ISA−25、Montanide ISA−720、Montanide ISA−708、Montanide ISA−763A、Montanide ISA−207、Montanide ISA−264、Montanide ISA−27、Montanide ISA−35、Montanide ISA 51F、Montanide ISA 016DおよびMontanide IMSから成る群より、好ましくは、Montanide ISA−51、Montanide IMSおよびMontanide ISA−720から成る群より、さらに好ましくは、Montanide ISA−51からなる群より選択することができる。Montanide ISA−51(Seppic,Inc.)は、異なる界面活性剤を非代謝性鉱油、代謝性油、またはこれら2個の混合物のいずれかと併用している、油/界面活性剤系アジュバントである。それらを、エマルジョンとして、RhoCまたはそのペプチドフラグメントを含む水溶液と共に使用するために調製する。前記界面活性剤は、オレイン酸マンニドである。QS−21(Antigenics;マサチューセッツ州、フレーミングハムのAquila Biopharmaceuticals)は、水溶液として取り扱う高純度水溶性サポニンである。QS−21およびMontanide ISA−51アジュバントは、滅菌単回使用バイアルで供給され得る。
【0182】
周知のサイトカインGM−CSFは、本発明のもう1つの好ましいアジュバントである。GM−CSFは、10年にわたってアジュバントとして使用されており、好ましくは、WO97/28816に記載されているようなGM−CSFであり得る。
【0183】
アジュバントの一般的な論考は、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles & Practice(第2版、1986)の61−63頁に提供されている。しかし、Godingは、対象となる抗原が低分子量のものであるとき、またはあまり免疫原性でないものであるとき、免疫原性担体とのカップリングを推奨すると述べている。そのような担体分子の例としては、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミンおよび家禽免疫グロブリンが挙げられる。様々なサポニン抽出物も免疫原性組成物におけるアジュバントとして有用であることが示唆されている。最近、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、周知のサイトカイン、をアジュバントとして使用することも提案された(WO97/28816)。
【0184】
本発明に従って使用することができるアジュバントの望ましい機能性を下の表に列挙する。
【0185】
【表5】

本発明のワクチン組成物は、1つより多くの異なるアジュバントを含むことがある。さらに、本発明は、上のもののいずれか、またはそれらの組み合わせをはじめとする任意のアジュバント物質をさらに含む治療用組成物を包含する。RHoCまたはそのペプチドフラグメントとアジュバントを別々に任意の適する順序で投与することができることも考えられる。
【0186】
担体は、アジュバントとは無関係に存在し得る。担体の機能は、例えば、特にペプチドフラグメントの分子量を増加させてそれらの活性もしくは免疫原性を増加させること、安定性を付与すること、生物活性を増加させること、または血清半減期を増加させることであり得る。さらに、担体は、rho遺伝子ファミリーに属するタンパク質またはそのペプチドフラグメントのT細胞への提示を助長し得る。担体は、当業者に公知の任意の適する担体、例えば、タンパク質または抗原提示細胞であり得る。担体タンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質、例えばトランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミン、免疫グロブリン、またはホルモン、例えばインスリンもしくはパルミチン酸であり得るが、これらに限定されない。ヒトの免疫処置のための担体は、ヒトに生理的に許容される担体でなければならず、安全でなければならない。しかし、破傷風毒素および/またはジフテリア毒素は、本発明の1つの実施形態では、適する担体である。あるいは、担体は、デキストラン、例えばセファロースであり得る。
【0187】
したがって、本発明は、上のもののうちのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせをはじめとするアジュバント物質をさらに含む治療用組成物を包含する。抗原、すなわち本発明のペプチド、およびアジュバントを同時にまたは逐次的に任意の適する順序で投与できることも考えられる。
【0188】
本発明のワクチン組成物における抗原の選択は、当業者が決めることができるパラメータに依存するであろう。既に述べたように、本発明の異なるペプチドのそれぞれが特定のHLA分子によって細胞上に提示される。したがって、治療する被験者をHLA表現型に関して分類すれば、その特定のHLA分子に結合することがわかっているペプチド(単数/複数)が選択される。
【0189】
あるいは、対象となる抗原を、所与の集団における様々な表現型の普及率に基づいて選択する。例えば、HLA−A2は、白人人口において最も優勢な表現型であり、したがって、HLA−A2に結合するペプチドを含有する組成物は、この人口の大部分において活性であろう。
【0190】
しかし、本発明の組成物は、標的集団の大部分を対象に含めるために、それぞれが異なるHLA分子と特異的に相互作用する1つ以上のRhoC由来ペプチドを含有することもある。したがって、例として、前記医薬組成物は、例えば、標的集団におけるHLA表現型の普及率に対応するHLA−A分子とHLA−B分子、例えばHLA−A2とHLA−B35など、をはじめとする、HLA−A分子によって拘束されるペプチドとHLA−B分子によって拘束されるペプチドの組み合わせを含有することがある。加えて、前記組成物は、HLA−C分子によって拘束されるペプチドを含むこともある。
【0191】
前記医薬組成物中の本発明の免疫原性ペプチドの量は、個々の用途に依存して変わり得る。しかし、前記ペプチド組成物の単回用量は、好ましくは、概して約10μgから約5000μg、さらに好ましくは、約50μgから約2500μg、例えば約100μgから約1000μgである。投与方式としては、経皮、皮下および静脈内投与、徐放性調合物の形態での移植などが挙げられる。当該技術分野において公知の任意のおよびすべての投与形態がここに包含される。また、必要な場合には従来の医薬的に許容される担体、希釈剤、保存薬、アジュバント、緩衝成分などを含有する、注射用免疫原性ペプチド組成物の調合に適することが当該技術分野において公知である任意のおよびすべての従来的剤形、例えば、凍結乾燥形態および溶液、懸濁液またはエマルジョン形態が包含される。
【0192】
前記医薬組成物は、当業者に公知の任意の従来のプロトコルを用いて調製および投与することができる。実施例2において、本発明のワクチン組成物の調製の非限定的な例、ならびにそのようなワクチンの投与の非限定的な例を与える。そのプロトコルを本明細書に記載するワクチン組成物のいずれにも容易に適応させることができることは当業者には理解されるであろう。
【0193】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の医薬組成物は、癌患者の処置にとって、その患者において癌進行中に癌細胞が化学療法活性抗癌薬および/または放射線療法に対する感受性低下を顕示した場合、有用である。
【0194】
加えて、本発明の組成物は、本明細書において前に定義したようなクラスI拘束エピトープおよびクラスII拘束エピトープを含むマルチエピトープワクチンとして提供することができる。
【0195】
本発明の組成物の免疫保護効果は、例えば上記WO97/28816に記載されているような、幾つかのアプローチを用いて判定することができる。好結果の免疫応答は、免疫処置後のDTH反応の出現および/または前記ワクチン組成物のペプチド(単数もしくは複数)を特異的に認識する抗体の検出によっても判定することができる。
【0196】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、ワクチン組成物である。したがって、前記医薬組成物は、癌疾患に対する免疫応答を惹起することができる免疫原性組成物またはワクチンであり得る。本明細書において用いる場合、「免疫原性組成物またはワクチン」という表現は、癌細胞に対する少なくとも1つのタイプの免疫応答を惹起する組成物を指す。したがって、そのような免疫応答は、上述のタイプのいずれか:細胞溶解を生じさせる結果となる細胞表面に提示されたHLA/ペプチド複合体を認識することができるCTLが産生される、すなわち、ワクチンがワクチン接種した患者において癌細胞に対する細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を惹起する、CTL応答;抗癌抗体の産生を生じさせるB細胞応答;および/またはDTHタイプの免疫応答、であり得る。
【0197】
有用な実施形態では、患者からの抗原提示細胞(APC)上にMHCクラスIまたはクラスII分子を負荷すること、患者からPBLを単離し、それらの細胞と前記ペプチドをインキュベートした後、それらの細胞を患者に注射して戻すこと、または患者から前駆APCを単離し、サイトカインおよび抗原を使用してそれらの細胞をプロフェッショナルAPCに分化させた後、それらの細胞を患者に注射して戻すこと、のいずれかによって本発明のペプチドを投与することにより、癌疾患に対する免疫応答を惹起する。
【0198】
したがって、本発明のある態様は、RhoCもしくはその免疫学的に活性なペプチドフラグメントまたは前記タンパク質もしくは前記免疫学的に活性なペプチドフラグメントをコードする核酸を含む、抗原提示細胞を含むワクチン組成物を提供することである。前記抗原提示細胞は、抗原をT細胞に提示することができる任意の細胞であり得る。好ましい抗原提示細胞は、樹状細胞である。樹状細胞(DC)は、例えば本明細書において下で説明するような、任意の適するプトロコルによる治療手順で調製して使用することができる。そのプロトコルを異なるHLAタイプおよび異なる疾患を有する患者での使用に適応させることができることは、当業者には理解されるであろう。
【0199】
樹状細胞(DC)を1時間、37℃で、50μg/mlのHLA拘束ペプチド(GMP品質で合成されたもの)でパルスし、ペプチドおよび5×10細胞を第1日および第14に、その後は4週間ごとに皮下投与し、5回のワクチン接種後に白血球搬出を施す。臨床的使用のためのDCの産生および品質管理は、本質的にはNicoletteら(2007)に記載されているように、行うことができる。
【0200】
したがって、本発明の1つの実施形態において、癌患者を処置するための方法は、エクスビボで患者の抗原提示細胞(APC)に前記ペプチドを提示させること、その後、このように処理したAPCを患者に注射して戻すことによって前記ペプチドを投与する方法である。これを実施する代替方法が少なくとも2つある。1つの代替は、癌患者からAPCを単離し、MHCクラスI分子をそのペプチドと共にインキュベート(負荷)することである。MHCクラスI分子の負荷は、そのペプチドに特異的なMHCクラスI分子を有するAPCがそのペプチドに結合する、したがって、それをT細胞に提示することができるように、APCをそのペプチドと共にインキュベートすることを意味する。その後、それらのAPCを患者に再び注射する。もう1つの代替方法は、樹状細胞生物学の分野においてなされた最近の発見に依存する。この場合、単球(樹状細胞前駆体である)を患者から単離し、サイトカインおよび抗原の使用によりそれらをプロフェッショナルAPC(または樹状細胞)にインビトロで分化させる。その後、それらのインビトロ産生DCを前記ペプチドでパルスし、患者に注射する。
【0201】
上の説明から、当業者には、本発明のタンパク質および/またはペプチドが癌診断ツールとして有用であることが、容易にわかることであろう。したがって、本発明のペプチドは、癌疾患に関して幅広く応用できる診断および予後予測手順の開発の基礎をもたらす。それゆえ、他の有用な実施形態において、本発明の組成物は、例えばPBL中または腫瘍組織内のRhoC反応性T細胞の検出に基づく、癌患者におけるその存在のエクスビボまたはインサイチュ診断用の組成物である。
【0202】
したがって、尚、さらなる態様において、本発明の1つ以上のペプチドを含むPBL中または腫瘍組織内のRhoC反応性T細胞の癌患者における存在のエクスビボまたはインサイチュ診断用の診断キット、およびそのような反応性T細胞の存在を癌患者において検出する方法を提供し、この方法は、腫瘍組織または血液サンプルを、本発明のペプチドとクラスIもしくはクラスII HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体と接触させること、および前記組織または血液細胞への前記複合体の結合を検出することを含む。
【0203】
もう1つの有用な診断または予後予測アプローチは、異種動物種における抗体、例えば、本発明のヒトRhoC由来ペプチドに対するマウス抗体、を産生させ、その後、それを使用して、例えば、そのペプチドを提示する癌細胞の存在について診断することに基づく。そのような免疫処置のためのペプチドの量は、上述したものなどの、インビボ療法の過程で使用されるものより少ない場合がある。一般に、好ましい用量は、ペプチド約1μgから約750μgにわたり得る。本発明のペプチドでの免疫処置に基づいてモノクローナル抗体を産生することもできる。したがって、本発明は、本発明のペプチドに特異的に結合することができる分子、特にモノクローナルまたはポリクローナル抗体(それらのフラグメントを含む)、およびそのような結合を阻止することができる分子、例えば、本発明のペプチドに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体に対して産生させた抗体にも関する。さらに、本発明は、本発明のペプチドまたはタンパク質に特異的に結合することができる単離されたT細胞受容体、ならびにそれらをコードする単離された核酸に関する。そのようなT細胞受容体は、例えば、当業者に周知の標準的な技術を用いてタンパク質またはペプチド特異的T細胞からクローニングすることができる。
【0204】
1つの態様において、本発明は、本明細書に記載するRhoCおよび/またはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含む単離されたT細胞にも関する。前記単離されたT細胞は、CD8 T細胞またはCD4 T細胞であり得る。前記単離されたT細胞は、好ましくは、インビトロで増殖させたT細胞である。インビトロでT細胞を増殖させる方法は、当業者に周知である。そのようなT細胞は、特に、養子的移入または自己細胞移入による癌の処置に有用であり得る。したがって、本発明は、T細胞を含む医薬組成物、ならびに転移癌に罹患しているヒトなどのその必要がある個体にRhoCまたはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞を投与することを含む処置方法にも関する。さらに、本発明は、転移癌の処置用の医薬品の調製のための、RhoCまたはそのペプチドフラグメントに特異的に結合することができるT細胞受容体を含むT細胞の使用に関する。自己細胞移入は、本質的にはWalterら(1995)に記載されているように、行うことができる。
【0205】
1つの態様において、本発明は、上で説明しているものなどの診断用試薬として有用である、本発明のペプチドとクラスIもしくはクラスII HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体を提供する。そのような複合体は、単量体であることもあり、または多量体であることもある。
【0206】
本発明は、細胞の異常増殖を特徴とする臨床状態、好ましくは癌、さらに好ましくは転移癌疾患、を処置、予防、緩和または治癒するための手段を提供し、この手段は、有効量の本明細書において定義するとおりの組成物、ペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子(例えば、抗体もしくはT細胞であり得る)または本明細書に記載するパーツキットを前記疾患に罹患している患者に投与することを含む。したがって、本発明のさらなる態様は、配列番号1のRhoCの発現を随伴する転移癌疾患を処置する方法を提供することである。
【0207】
本発明の1つの態様において、前記ワクチン組成物は、被験者における臨床応答を惹起することができる。1つの実施形態において、前記臨床応答は、安定した疾患を特徴とすることがあり、好ましい実施形態において、前記臨床応答は、部分的応答を特徴とすることがあり、または好ましくは、前記臨床応答は、癌疾患の完全寛解を特徴とすることがある。前記臨床応答は、本明細書において下で説明するように判定することができる。
【0208】
本発明の疾患は、例えば、大腸癌、乳癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌腫、規定細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳頭腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、ヘパトーム、胆管癌精上皮腫、絨毛上皮癌精上皮腫、精上皮腫、胎児性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌腫、小細胞肺癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、膠芽腫、ニューロノーマ、頭蓋咽頭腫、神経鞘腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病およびリンパ腫、急性リンパ性白血病および急性骨髄性真性多血症、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、および重鎖病、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、直腸癌、泌尿器の癌、子宮癌、口腔癌、皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、喉頭癌、食道癌、乳房腫瘍、小児−null急性リンパ性白血病(ALL)、胸腺ALL、B細胞ALL、急性骨髄性白血病、骨髄単球様白血病、急性巨核球様白血病、バーキットリンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、およびT細胞白血病、小および大非小細胞肺癌、急性顆粒球性白血病、生殖細胞腫瘍、子宮内膜癌、胃癌、頭頚部癌、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病ならびに甲状腺癌からなる群より選択される癌疾患であり得、この場合、前記癌疾患は、好ましくは、転移性である。
【0209】
好ましい実施形態において、本発明のワクチン組成物は、被験者における臨床応答を惹起することができ、この場合、前記臨床応答は、安定した疾患を特徴とすることがあり、好ましい実施形態において、前記臨床応答は、部分的応答を特徴とすることがあり、または好ましくは、前記臨床応答は、黒色腫、卵巣癌または肺癌、さらに好ましくは転移性黒色腫、卵巣癌または肺癌、の群から選択される癌の完全寛解を特徴とすることがある。
【0210】
本発明のもう1つの実施形態において、前記ワクチン組成物は、被験者における臨床応答を惹起することができ、この場合、前記臨床応答は、最大標的病変の最大直径の合計の減少を特徴とする。この減少は、本明細書において下で説明するように判定することができる。
【0211】
すべての関係器官を代表する、1器官につき最大5個の病変および合計で10個の病変までのすべての測定可能な病変を標的病変として同定し、記録し、ベースラインで測定することとする。
【0212】
●標的病変は、それらのサイズ(最大直径を有する病変)および正確な反復測定についてのそれらの適性に基づいて(画像形成技術により、または臨床的に)選択することとする。
【0213】
●すべての標的病変についての最大直径(LD)の合計を計算し、ベースライン合計LDとして報告することとなる。目標腫瘍を特性付けするために基準としてそのベースライン合計LDを用いることとなる。
【0214】
●すべての他の病変(または疾患部位)を非標的病変として同定することとし、同様にベースラインで記録することとする。これらの病変の測定は、必要でないが、追跡調査を通してそれぞれの存在または不在を書き留めることとする。
【0215】
標的病変の評価
●完全応答(CR):すべての標的病変の消失
●部分応答(PR):ベースライン合計LDを基準として考えて、標的病変のLDの合計の少なくとも30%減少
●進行性疾患(PD):処置を開始してから記録した最少合計LDを基準として考えて、標的病変のLDの合計の少なくとも20%増加または1つ以上の新たな病変の出現
●安定した疾患(SD):処置を開始してからの最少合計LDを基準として考えて、PRと定性するには不十分な収縮またはPDと定性するには不十分な増加
非標的病変の評価
●完全応答(CR):すべての非標的病変の消失および腫瘍マーカーレベルの正規化
●不完全応答/安定した疾患(SD):1つ以上の非標的病変の残存および/または正常レベルより上での腫瘍マーカーレベルの維持
●進行性疾患(PD):1つ異常の新たな病変の出現および/または既存の非標的病変の明確な進行
場合によっては、本発明の処置方法とさらなる従来の癌処置、例えば化学療法、放射線療法、免疫刺激物質での処置、遺伝子療法、抗体での処置および樹状細胞を使用する処置とを併用することが適切であろう。腫瘍細胞におけるRhoCの発現上昇は、薬物耐性と相関するので、本発明が開示するようなRhoC系免疫療法と細胞傷害性化学療法の併用は、癌を処置する有効なアプローチであろう。
【0216】
1つの態様において、本発明は、免疫処置のモニター方法に関し、この方法は、
i)個体からの血液サンプルを提供する工程
ii)RhoCまたはそのペプチドフラグメントを提供する工程(この場合、前記タンパク質またはペプチドは、本明細書に記載するタンパク質またはペプチドのいずれかであり得る)
iii)前記血液サンプルが、前記タンパク質またはペプチドを特異的に結合する抗体またはT細胞受容体を含むT細胞を含むかどうかを決定する工程
iv)それによって、前記タンパク質またはペプチドへの免疫応答が前記個体において生じたかどうかを決定する工程
を含む。
【0217】
前記個体は、好ましくは、ヒト、例えばRhoCもしくはそのペプチドフラグメントまたは前記タンパク質もしくはペプチドをコードする核酸で免疫処置されたヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、RhoC、RhoAおよびRhoBのアラインメント。ヒトRhoC、ヒトRhoAおよびヒトRhoBの配列アラインメント
【図2】図2は、Rho1およびRho1L2の結合親和性。Rho1およびRho1L2の安定化をアセンブリーアッセイによって分析した。クラスI MHC重鎖バンドをPhosphorimagerで定量した。安定化HLA−A3重鎖の量は、添加したペプチドの結合親和性と正比例する。HLA−A3拘束ポジティブ対照インフルエンザNP265−273の結合を、ペプチドRho1L2および天然ペプチドRho1と比較した。
【図3】図3は、IFN−γ ELISPOTによって測定したときのRho1L2に対するHLA−A3拘束T細胞応答。5×10のインビトロで刺激した、5人のHLA−A3健常ドナー(HD)からのPBMC、10人の腎細胞癌患者(RCC)および10人の黒色腫患者(MM)からのPBLの間のRho1L2に応答して形成されたペプチド特異的IFNγスポットの平均数。三重反復で測定を行った。抗原特異的スポットの数は、ポジティブウエルにおける平均スポット数から対照ウエルの平均スポット数を引くことによって計算した;高い標準偏差を有する反復測定値がポジティブな結果と受け取られることを防ぐために、すべての反復測定値を、対応のないサンプルのためのスチューデントt検定によって分析し、p値<0.05を有する結果をポジティブとみなした。
【図4】図4は、T細胞抗原特異性および交差反応性。Rho1L2を負荷した自己DC/自己PBLで刺激したバルク培養物の51Cr放出アッセイによる細胞傷害性。ペプチドを伴わないまたはRho1L2もしくはRho1でパルスしたT2−A3細胞の特異的溶解。E:T比=60:1、二重反復で測定を行った。a)51Cr放出アッセイによってアッセイしたT細胞クローン(クローン9)の特異性。ペプチドを伴わないT2−A3細胞、Rho1L2、Rho1でまたはHLA−クラスI特異的抗体W6/32もしくはHLA−A3特異的抗体GAP A3で、異なるE:T比(9:1;3:1;1:1;0.3:1)でパルスしたT2−A3細胞の溶解。
【図5】図5は、RhoC特異的T細胞の機能的能力。a)Rho1L2を負荷した自己DC/自己PBLで刺激したバルク培養物の細胞傷害性。HLA−クラスI特異的抗体W6/32を添加していないおよび添加したHLA−A3黒色腫細胞系FM3の特異的溶解。b)HLA−A3黒色腫細胞系FM3のRho1L2特異的クローンによる溶解、Rho1L2でパルスしたまたはペプチドでパルスしていない非標識T2−A3細胞の添加での細胞溶解(阻害剤対標的比=20:1)、ならびにHLA−A3黒色腫細胞系FM9およびHLA−A3黒色腫細胞系FM82の細胞溶解。すべてのE:T比について二重反復で測定を行った。c)HLA−A3乳癌細胞系BT−20、大腸癌細胞系HT−29および頭頚部癌細胞系CRL−2095のRho1L2特異的クローンによる溶解。すべてのE:T比について二重反復で測定を行った。
【実施例】
【0219】
実施例1:RhoCに対する免疫応答
1.患者
HLA−A3癌患者からの末梢血リンパ球(PBL)または健常対照からの末梢血単核細胞(PBMC)をデンマークのUniversity Hospital Herlevから入手した。細胞は、10%DMSOを伴うFCS中で冷凍保存されていた。組織の分類は、デンマーク、コペンハーゲン、The State Hospitalのthe Department of Clinical Immunologyで行った。これらの測定のいずれを始める前にも、患者からインフォームドコンセントを得た。
【0220】
2.MHCクラスI分子に結合するペプチドについてのアセンブリーアッセイ
HLA−A3分子に対する合成ペプチド(米国、スコッチプレーンズのGenScript)の結合親和性を、記載されているようなアセンブリーアッセイ(13)によって測定した。このアッセイは、TAP欠失細胞系T2−A3に異なる濃度のペプチドを負荷した後のクラスI分子の安定化に基づく。簡単に言うと、T2−A3細胞を、10%透析FCSを伴うメチオニン不含RPMI 1640(英国、ペーズリーのGibco BRL)中でインキュベートした。その後、細胞を50μCiの35S−メチオニン(デンマーク、BirkeroedのAmersham)で代謝標識した。インキュベーション後、溶解バッファー中、プロテアーゼ阻害剤(100μg/mL ヨードアセトアミド、200μg/mL PEFAブロックおよび2μg ペプスタチン(デンマーク、HvidovreのRoche diagnostics))の存在下で、および様々な濃度(4−0.04μM)のペプチドを用いて、細胞を溶解した。超遠心分離によって細胞核を除去した。T2−A3の上清を5分間、45℃で加熱して、空HLA−A3を優先的に不安定化することによってバックグラウンドシグナルを除去した。Pansorbin(ドイツ、ダルムシュタットのCalbiochem)の添加によってそれらのサンプルを事前に清澄化し、回転させながら一晩、放置した。安定してフォールディングされたHLA分子を、HLAクラスI特異的、配座依存性mAb W6/32を使用して免疫沈降させた。A−セファロースビーズを添加して、それらのフォールディングされたMHC複合体を回収し、等電点電気泳動によって分離した。ImageGauge Phosphorimagerプログラム(富士フィルム株式会社)を用いて、MHC重鎖を定量した。バンドの強度は、アッセイ中に回収されたペプチド結合クラスI MHC複合体の量に正比例する。その後、HLA−A3の安定化度は、添加したペプチドの結合親和性に正比例する。半最大安定化のために十分なペプチド濃度として、それぞれのペプチドについてのC50値を計算した。
【0221】
3.PBLのAg刺激
ELISPOTアッセイの感受性を拡大するために、PBLを分析前に1回刺激した。第0日にPBLを解凍し、10μM ペプチド(米国、スコッチプレーンズのGenScript)の存在下、5%熱不活化ヒト血清を伴うX−ビボ培地(デンマーク、Vallensbaek StrandのCambrex Bio Science Copenhagen)中で24ウエルプレート(デンマーク、RoskildeのNunc)にプレーティングした。翌日、20U/ml IL−2(英国、ロンドンのPeproTech)をそれらの培養物に添加した。培養した細胞を、第8日に、ELISPOTにおいて反応性について試験した。
【0222】
4.インタフェロン−γ(INF−γELISPOTアッセイ)
ELISPOTアッセイを用いて、以前に記載されたようにペプチドエピトープ特異的INF−γ放出エフェクターを定量した(WO2005/049073、実施例1.2)。簡単に言うと、ニトロセルロース底の96ウエルプレート(MultiScreen MAIP N45、デンマーク、HedehuseneのMillipore)を抗IFN−γ抗体(1−D1K、スウェーデン、NackaのMabtech)で被覆した。それらのウエルを洗浄し、X−ビボ培地でブロックした後、104刺激物質T2−A3細胞(10μMのペプチド;Rho1L2:RLGLQVRKNK;Rho1:RAGLQVRKNK(US、スコッチプレーンズのGenScript)を伴うまたは伴わない)およびエフェクター細胞を異なる濃度で添加した。それらのプレートを一晩、インキュベートした。翌日、培地を廃棄し、ウエルを洗浄した後、ビオチン化二次抗体(7−B6−1、スウェーデン、NackaのMabtech)を添加した。それらのプレートを2時間インキュベートし、洗浄し、アビジン−酵素コンジュゲート(AP−アビジン、デンマーク、RoskildeのCalbiochem,Life Technologies,Inc.)をそれぞれのウエルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、酵素基質NBT/BCIP(デンマーク、TaastrupのGibco Life Technology)をそれぞれのウエルに添加し、室温で5−10分間インキュベートした。暗い紫色のスポットが現れたら水道水で反応を停止させた。ImmunoSpot(登録商標)Series 2.0 Analyzer(米国、クリーブランドのCTL Analyzers,LLC)を使用してスポットを計数し、ペプチド特異的CTL頻度は、スポット形成細胞の数から計算することができた。ポジティブウエルにおける平均スポット数から対照ウエルの平均スポット数を引くことによって、抗原特異的スポットの数を計算した;p値<0.05(対応のないサンプルのためのスチューデントt検定)を有する応答をポジティブとみなした。この定義は、the CIMT Monitoring Panel inter−laboratory testing project(www.c−imt.org)との関連でのものである。
【0223】
5.樹状細胞(DC)
DCは、10%ヒトAB血清を富化したRPMI−1640倍地中、60分間、37℃での培養皿への付着により、PBMCから産生させた。10%ヒトAB血清を補足したRPMI−1640中、IL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(800U/ml)の存在下で6日間、付着単球を培養した。IL−1β(2ng/ml)、IL−6(1000U/ml)、TNF−α(10ng/ml)およびPGE(1μg/ml)の添加によって、DCを成熟させた。翌日、結果として生じた成熟DCを10μM ペプチドで2時間、37℃でパルスし、照射し(20Gy)、40U/ml IL−2の存在下での1×10PBL/mlの刺激のために、1×10DC/mlを使用した。IL−2は、3−4日ごとに添加した。
【0224】
6.抗原特異的T細胞培養物およびクローンの樹立
黒色腫(MM)患者からのPBLを、照射(20Gy)自己Rho1L2負荷DCで刺激した(PBL:DC比=3×10:3×10)。翌日、120U/ml IL−2(英国、ロンドンのPeproTech)を添加した。培養物の刺激は、10日ごとにRho1L2負荷照射自己DC(2×)、続いてRho1L2負荷照射自己PBL(3×)で行った。それぞれの刺激後に120U/ml IL−2(英国、ロンドンのPeproTech)を添加した。1ヶ月後、成長培養物をRho1L2に対する特異性について試験した。
【0225】
3人の健常ドナーからの10/ml 照射(20Gy)リンパ球を含有するクローニングミックスの存在下、5%熱不活化ヒト血清、25mM HEPESバッファー(英国、ペーズリーのGibcoBRL)および120U/ml IL−2(UK、ロンドンのPeproTech)を伴うX−ビボ中での限界希釈によって、特定の培養物からPBLをクローニングした。それらのプレートを37℃/5%COでインキュベートした。3−4日ごとに、IL−2を含有する50μLの新鮮な培地を120U/mlの最終濃度まで添加した。クローニングミックス細胞(5×104細胞/ウエル)およびIL−2を使用して、成長クローンを増殖させた。増殖後、標準的51Cr放出アッセイで特異性および細胞傷害の可能性についてそれらのクローンを試験した。
【0226】
7.細胞傷害性アッセイ
CTL媒介細胞傷害性についての従来の51Cr放出アッセイは、他の場所に記載されている(Andersenら、(1999)J Immunol 163:3812−3818)ように行った。標的細胞は、HLA特異的mAb W6/32(Barnstableら、(1978)Cell 14:9−20)(2μg/100μl)(Schmidtら、(2003)Blood 102:571−576)またはHLA−A3特異的抗体GAPA3(Sireら、(1988)140:2422−2430)を添加したまたはしていない、T2−A3細胞、HLA−A3乳癌細胞系BT−20、HLA−A3大腸癌細胞系HT−29、HLA−A3頭頚部癌細胞系CRL−2095(すべて、米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手可能)、HLA−A3黒色腫細胞系FM9、HLA−A3黒色腫細胞系FM82、およびHLA−A3黒色腫細胞系FM3(Kirkinら、(1995)Cancer Immunol Immunother 41:71−81)であった。
【0227】
結果
RhoCからのHLA−A3結合ペプチド
RhoCは、主として、その配列のC末端部分がRhoAおよびRhoBと異なる。それゆえ、この20アミノ酸領域を、本明細書において上で説明したような主HLA特異的アンカー残基を使用して推定HLAエピトープについて綿密に調査した。本発明者らは、可能性のあるHLA−A3拘束ペプチドRho1(RAGLQVRKNK)を同定した。しかし、アラニンは不良なアンカーアミノ酸であるので、位置2においてこのエピトープは、低い親和性でしかHLA−A3に結合しないと予想された。黒色腫抗原gp100およびMART−1などの癌細胞によって提示される樹立T細胞エピトープの多くが、それぞれのHLAクラスI分子に対して比較的低い結合親和性を有するので、HLA分子へのペプチドの結合に必要不可欠である特定の位置、すなわちアンカー位置、でのアミノ酸の置換によって、そのような低親和性エピトープからヘテロクリティックペプチドを産生させることが通例になっている(Pardoll DM(1998)Nat Med 4:525−531;Scheibenbogen C.ら、(2002)Int J Cancer 98:409−414)。その結果として、本発明者らは、位置2をアラニンからロイチンに変更した、修飾対応物Rho1L2(RLGLQVRKNK)を本発明者らの研究に含めた。2個のペプチドを合成し、アセンブリーアッセイによってインフルエンザNP265−273からのHLA−A3高親和性ポジティブ対照エピトープ(ILRGSVAHK)と比較することによりHLA−A3への結合を検査した(図2)。クラスI MHC分子の半最大回収に必要なペプチド濃度(C50値)は、インフルエンザNP265−273については0.3μMであった(図2)。修飾Rho1L2ペプチドは、中等度の親和性で結合した(C50=4)が、天然ペプチドRho1は、非常に弱くしかHLA−A3に結合しなかった(C50>40)。
【0228】
RhoCへの自発的T細胞応答
本発明者らは、ELISPOT IFN−γ分泌アッセイによって修飾Rho1L2(RLGLQVRKNK)ペプチドに対する特異的T細胞応答の存在について、HLA−A3MMおよび腎細胞癌(RCC)患者からのPBLを綿密に調査した。図3に記載するように、MM患者10人のうち3人のPBL中に特異的T細胞応答が存在した。RCC患者および健常対照(HD)のいずれにおいても、Rho1L2およびRho1に対する応答は検出されなかった。
【0229】
T細胞抗原特異性およびRho1/Rho1L2交差反応性
Rho1L2ペプチドに対する応答を宿す患者が特定されると、本発明者らは、これらの癌患者からのPBLを使用して、このペプチドに対するCTLバルク培養物をインビトロで産生させた。その後、本発明者らは、そのような患者からのPBLを、Rho1L2をパルスした自己DCで、インビトロで刺激した。4回のインビトロ刺激の後、ペプチドなしのまたはRho1もしくはRho1L2を負荷したT2−A3細胞を標的細胞として使用して、標準的な51Cr放出アッセイで、ペプチド特異性を試験した(図4a)。このアッセイにより、バルク培養物は、Rho1L2およびRho1で効率的にパルスした両方のT2−A3細胞を溶解するが、パルスしていないT2−A3細胞に対する細胞傷害性は観察されないことが明らかになった。
【0230】
次に、限界希釈法により、これらの特異的T細胞培養物からCTLクローンを樹立した。短い増殖段階の後、成長クローンの特異性を標準的な51Cr放出アッセイで分析した。提示するデータは、1個の成長クローン(クローン9(*))について得られた結果を記載するものである。このクローンは、修飾Rho1L2と天然Rho1ペプチドの両方でパルスしたT2−A3細胞を有効に溶解した。これは、Rho1L2特異的T細胞が天然類似体ペプチドと交差反応することを強調する(図4b)。クローン9のHLA拘束を検査するために、本発明者らは、HLA特異的mAb W6/32およびHLA−A3特異的mAb GAP A3の添加によりHLAクラスIを阻止する効果を試験した。両方の抗体と標的細胞のインキュベーションによって、溶解を完全に阻止することができた(図4b)。
【0231】
腫瘍細胞を死滅させるRhoC特異的T細胞の能力
まず第一に、本発明者らは、黒色腫細胞を死滅させるRho1L2/Rho1特異的バルク培養物の能力を検査した。このために、HLA−A3 FM3黒色腫細胞をHLA拘束物質中において高効率で死滅させた、FM3標的細胞とW6/32のインキュベーションにより溶解を完全に阻止できたからである(図5a)。
【0232】
同様に、特定のバルク培養物から産生させたクローン9は、FM3黒色腫細胞を死滅させることができた(図5b)。Rho1L2ペプチドでパルスした冷(非標識)T2−A3細胞の添加は、FM3黒色腫細胞を死滅させるのを完全に無効にした(図5b)。さらに、RhoC特異的CTLクローンは、HLA−A3黒色腫癌細胞系FM9を溶解することができた。追加の対照として、本発明者らは、HLA−A3黒色腫癌細胞系FM82を標的細胞として使用した。この細胞系に対しては何の細胞傷害性も観察されなかった。転移癌におけるRhoCの発現が、異なる起源の癌に関して記載されているので、本発明者らは、黒色腫以外の癌細胞を死滅させるRhoC特異的CTLクローンの能力をさらに検査した。その後、HLA−A3乳癌細胞系BT−20、HLA−A3頭頚部癌細胞系CRL−2095およびHLA−A3クローン細胞系HT−29を標的細胞として使用した。RhoC特異的CTLクローンは、すべてのHLA−A3細胞系を溶解したが、クローン細胞系HT−29についは限られた程度でしかなかった。
【0233】
実施例2
ワクチン組成物の調製についての非限定的実施例およびワクチンの投与についての非限定的実施例
ペプチドワクチン
例えば、遊離アミドNH末端および遊離酸COOH末端を有するRhoCペプチドを、例えばUVA Biomolecular Core Facilityで合成することができる。それぞれは、凍結ペプチドとして供給されるので、それを滅菌水で再構成し、乳酸加リンガー溶液(LR、イリノイ州、ディアフィールドのBaxter Healthcare)をバッファーとして用いて水中67−80%の乳酸加リンガー溶液の最終濃度に希釈する。その後、これらの溶液を滅菌濾過し、ホウケイ酸ガラスバイアルの中に入れ、IND 6453に記載されているように、FDAガイドラインに従って、素性、無菌性、一般的安全性および純度の確認を含む一連の品質保証調査に付す。
【0234】
実際の環境では、患者は、約100μgのクラスI HLA拘束ペプチドもしくはクラスII HLA拘束ペプチドまたは両方の組み合わせを含むワクチンを受けることとなる。例えばアジュバント中の約100μgのクラスI HLAペプチドのみで患者にワクチン接種し、またはアジュバント中の100μgのクラスII HLAペプチドのみでワクチン接種し、または例えば約100μgのHLAクラスI拘束ペプチドと190μgのクラスII拘束ペプチドでワクチン接種する。併用の際のクラスIIペプチドのより高い用量は、等モル量のヘルパーエピトープと細胞傷害性エピトープを与えるために算出される。加えて、両方のペプチドのアミノ酸配列を含む、より長いペプチドで、患者にワクチン接種することができる。
【0235】
1ml水溶液での上記ペプチドを、約100μgのQS−21を伴う溶液/懸濁液として、または約1mlのMontanide ISA−51アジュバントを伴うエマルジョンとして投与することができる。
【0236】
例えば、合計7回の免疫処置のために、第0日ならびに第1月、第2月、第3月、第6月、第9月および第12月に、ペプチドとアジュバントで患者に免疫処置する。稀な例外で、それぞれのワクチンでのワクチン接種を同じ腕に投与する。好ましくは、前記ペプチドを皮下投与する。
【数1】

【数2】

【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品として使用するための、
a)配列番号1のRhoCもしくは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体、または該RhoCもしくは該その機能的相同体の連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメント、または該RhoCもしくは該ペプチドフラグメントをコードする核酸;と
b)アジュバントと
を含むワクチン組成物。
【請求項2】
前記免疫原的に活性なペプチドフラグメントが、多くて2個のアミノ酸が置換されている、前記配列番号1のRhoCまたは前記その機能的相同体の8から50個の範囲、好ましくは9から25個の範囲のアミノ酸の連続配列から成る、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
RhoCを発現する転移癌に罹患している個体に投与したとき、多くて2個のアミノ酸が置換されている配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体を発現する転移癌に対する免疫応答を惹起することができる、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
多くて2個のアミノ酸が置換されている配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの18から25個の連続するアミノ酸から成る、単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントであって、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有するペプチドフラグメント。
【請求項5】
多くて2個のアミノ酸が置換されている配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの8から10個の連続するアミノ酸から成る、単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントであって、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有するペプチドフラグメント。
【請求項6】
多くて2個のアミノ酸が置換されている配列番号1のRhoCまたはその機能的相同体からの26から60個の連続するアミノ酸から成る、単離された免疫原的に活性なペプチドフラグメントであって、配列番号1のRhoCのアミノ酸残基I43、Q123、R140、S141、S152、L157、E165、G178、V181、K183、N184、R186、R187、R188、P191またはI192のうちの少なくとも1個を含有するペプチドフラグメント。
【請求項7】
配列RXGLQVRKNKを含み、ここで、Xは、アラニンおよびロイシンからなる群より選択され、長くとも60アミノ酸長である、請求項4から6のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
【請求項8】
癌患者において細胞免疫応答を惹起することができる、請求項4から7のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
【請求項9】
次の特徴:
(i)ELISPOTアッセイによって決定したとき、癌患者のPBL集団において104PBLあたり少なくとも1の頻度でINF−γ産生細胞を惹起することができる、および/または
(ii)腫瘍組織においてエピトープペプチドと反応性であるCTLをインサイチュで検出することができる、
(iii)RhoC特異的T細胞のインビトロでの成長を誘導することができる、
のうちの少なくとも1つを有する、MHCクラスI拘束ペプチドまたはMHCクラスII拘束ペプチドである、請求項4から8のいずれか1項に記載のペプチドフラグメント。
【請求項10】
MHCクラスI HLA−A分子によって拘束される、請求項9に記載のペプチドフラグメント。
【請求項11】
HLA−A1、HLA−A2、HLA−A3、HLA−A11およびHLA−A24からなる群より選択されるMHCクラスI HLA種によって拘束される、請求項10に記載のペプチドフラグメント。
【請求項12】
HLA−A3によって拘束される、請求項11に記載のペプチドフラグメント。
【請求項13】
HLA−A2によって拘束される、請求項11に記載のペプチドフラグメント。
【請求項14】
MHCクラスI HLA−B分子によって拘束される、請求項9に記載のペプチドフラグメント。
【請求項15】
HLA−B7、HLA−B35、HLA−B44、HLA−B8、HLA−B15、HLA−B27およびHLA−B51からなる群より選択されるMHCクラスI HLA−B種によって拘束される、請求項14に記載のペプチドフラグメント。
【請求項16】
MHCクラスII分子によって拘束される、請求項9に記載のペプチドフラグメント。
【請求項17】
配列番号1のRhoCからの8から10個または18から25個または26から60個の連続するアミノ酸から成る、請求項4から16のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
【請求項18】
配列番号1のRhoCの少なくとも1個のアミノ酸が、少なくとも置換、欠失または付加されている、配列番号1のRhoCからの8から10個または18から25個または26から60個の連続するアミノ酸から成る、請求項4から16のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
【請求項19】
癌患者のPBL集団において10PBLあたり少なくとも10の頻度でINF−γ産生細胞を惹起することができる、請求項4から18のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
【請求項20】
配列番号1のRhoCまたは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体が発現される癌疾患を有する患者のPBL集団においてINF−γ産生細胞を惹起することができる、請求項4から19のいずれかに記載のペプチドフラグメント。
【請求項21】
前記癌疾患が、転移癌である、請求項20に記載のペプチドフラグメント。
【請求項22】
前記ペプチドフラグメントが、少なくとも1個のアミノ酸だけ配列番号2のRhoAまたは配列番号3のRhoBの配列から異なる、8から60個の範囲のアミノ酸の配列、好ましくは9から25個の範囲のアミノ酸の配列の、配列番号1のRhoCの連続配列から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記ペプチドフラグメントが、少なくとも1個のアミノ酸だけ配列番号3のRhoBの配列から異なる、8から60個の範囲のアミノ酸、好ましくは9から25個の範囲のアミノ酸の配列番号1のRhoCの連続配列から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記ペプチドフラグメントが、配列番号1のRhoCの60個の最もC末端側のアミノ酸または配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体から選択される配列から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項24】
前記ペプチドフラグメントが、多くて60個のアミノ酸残基、例えば50個のアミノ酸残基、例えば多くて45個のアミノ酸残基、例えば多くて40個のアミノ酸残基、例えば多くて35個のアミノ酸残基、例えば多くて30個のアミノ酸残基、例えば多くて25個のアミノ酸残基、例えば15から20個のアミノ酸残基から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記ペプチドフラグメントが、多くて20個のアミノ酸残基、例えば多くて19個のアミノ酸残基、例えば多くて18個のアミノ酸残基、例えば多くて17個のアミノ酸残基、例えば多くて16個のアミノ酸残基、例えば多くて15個のアミノ酸残基、例えば多くて14個のアミノ酸残基、例えば多くて13個のアミノ酸残基、例えば多くて12個のアミノ酸残基、例えば多くて11個のアミノ酸残基、例えば8から10個のアミノ酸残基から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記ペプチドフラグメントが、多くて1個のアミノ酸が置換されており、好ましくは該置換が保存的である、8から60個の範囲のアミノ酸、好ましくは8から20個の範囲のアミノ酸の配列番号1のRhoCの連続配列から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記ペプチドフラグメントが、多くて2個のアミノ酸が置換されており、好ましくは該置換が保存的である、8から60個の範囲のアミノ酸、好ましくは8から20個の範囲のアミノ酸の配列番号1のRhoCの連続配列から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記ペプチドフラグメントが、多くて3個のアミノ酸が置換されており、好ましくは該置換が保存的である、8から60個の範囲のアミノ酸、好ましくは8から20個の範囲のアミノ酸の配列番号1のRhoCの連続配列から成る、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項29】
請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントを含む、請求項1から3のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項30】
前記ワクチンが、ワクチン接種した患者において癌細胞に対して細胞傷害効果を有するエフェクターT細胞の産生を惹起する、請求項1から3および22から29のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項31】
被験者において腫瘍間質における抗原特異的T細胞の浸潤を誘導することができる、請求項1から3および22から30のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項32】
被験者において臨床応答を惹起することができ、該臨床応答が、安定した疾患、部分応答または完全寛解を特徴とする、請求項1から3および22から31のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項33】
被験者において臨床応答を惹起することができ、該臨床応答が、最大の標的病変の最大直径の合計の減少を特徴とする、請求項1から3および22から32のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項34】
被験者において臨床応答を惹起することができ、該臨床応答が、完全寛解である、請求項1から3および23から33のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項35】
RhoCではないタンパク質またはペプチドフラグメントから選択される、免疫原性タンパク質またはペプチドフラグメントをさらに含む、請求項1から3および22から34のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項36】
前記アジュバントが、細菌DNA系アジュバント、油/界面活性剤系アジュバント、ウイルスdsRNA系アジュバントおよびイミダゾキニリン(imidazochinilines)からなる群より選択される、請求項1から3および22から35のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項37】
前記アジュバントが、Montanide ISAアジュバントである、請求項1から3および22から36のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項38】
前記アジュバントが、Montanide ISA51またはMontanide ISA 720である、請求項37に記載のワクチン組成物。
【請求項39】
前記アジュバントが、Montanide ISA51である、請求項38に記載のワクチン組成物。
【請求項40】
前記アジュバントが、GM−CSFである、請求項1から3および22から36のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項41】
免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは該免疫原的に活性なペプチドフラグメントをコードする核酸を含む抗原提示細胞を含む、請求項1から3および22から40のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項42】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞である、請求項41に記載のワクチン組成物。
【請求項43】
前記核酸が、請求項4から21のいずれかに記載のペプチドをコードする、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項44】
前記核酸が、ベクター内に含まれる、請求項1から43のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項45】
前記ベクターが、ウイルスベクターおよび細菌ベクターからなる群より選択される、請求項44に記載のワクチン組成物。
【請求項46】
前記ベクターが、T細胞刺激ポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、請求項44から45のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項47】
請求項1から3および22から46のいずれかに記載のワクチン組成物とさらなる抗癌剤とを含むパーツキット(kit−of−parts)。
【請求項48】
前記抗癌剤が、抗体である、請求項47に記載のパーツキット。
【請求項49】
前記抗癌剤が、サイトカインである、請求項47に記載のパーツキット。
【請求項50】
RhoCと反応性であるPBL中のまたは腫瘍組織内のT細胞の癌患者における存在についてのエクスビボまたはインサイチュ診断のための組成物であって、請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントを含む組成物。
【請求項51】
RhoCと反応性であるPBL中のまたは腫瘍組織内のT細胞の癌患者における存在についてのエクスビボまたはインサイチュ診断のための診断キットであって、請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントを含むキット。
【請求項52】
請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントとクラスI HLAもしくはクラスII HLA分子またはそのような分子のフラグメントとの複合体。
【請求項53】
単量体である、請求項53に記載の複合体。
【請求項54】
多量体である、請求項53に記載の複合体。
【請求項55】
腫瘍組織または血液サンプルと請求項53に記載の複合体とを接触させること、および該複合体の該組織または血液細胞への結合を検出することを含む、癌患者においてRhoC反応性T細胞の存在を検出する方法。
【請求項56】
請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントに特異的に結合することができる分子。
【請求項57】
抗体またはそのフラグメントである、請求項57に記載の分子。
【請求項58】
T細胞受容体である、請求項58に記載の分子。
【請求項59】
請求項56または58に記載の分子の結合を阻止することができる分子。
【請求項60】
転移癌疾患の処置方法であって、有効量の、請求項1から3および22から46のいずれかに記載の組成物、請求項56に記載の分子、請求項59に記載の分子または請求項47から49のいずれかに記載のパーツキットを前記疾患に罹患している患者に投与することを含む方法。
【請求項61】
処置される前記疾患が、RhoCが発現される癌疾患である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
さらなる癌処置と併用される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記さらなる処置が、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質での処置、遺伝子療法、抗体での処置および樹状細胞を使用する処置からなる群より選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
癌疾患の処置または予防用の医薬品の製造における、請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントまたは請求項1から3および22から46のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。
【請求項65】
処置される前記疾患が、RhoCが発現される癌疾患である、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
前記癌疾患が、転移癌である、請求項64から65のいずれかに記載の使用。
【請求項67】
さらなる癌処置と併用される、請求項64から66のいずれかに記載の使用。
【請求項68】
前記さらなる処置が、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質での処置、遺伝子療法、抗体での処置および樹状細胞を使用する処置からなる群より選択される、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
免疫処置をモニターする方法であって、該方法は:
i)個体からの血液サンプルを提供する工程;
ii)配列番号1のRhoCもしくは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体または該RhoCもしくは該その機能的相同体の連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは該RhoCもしくは該ペプチドフラグメントをコードする核酸を提供する工程;
iii)該血液サンプルが、該タンパク質またはペプチドを特異的に結合する抗体またはT細胞受容体を含むT細胞を含むかどうかを決定する工程;
iv)それによって、該タンパク質またはペプチドへの免疫応答が該個体において生じたかどうかを決定する工程、
を含む、免疫処置をモニターする方法。
【請求項70】
前記ペプチドフラグメントが、いずれかの請求項に記載のペプチドフラグメントである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
転移癌の処置または予防において使用するための、配列番号1のRhoCもしくは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体または該RhoCもしくは該その機能的相同体の連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメントまたは該RhoCもしくは該ペプチドフラグメントをコードする核酸。
【請求項72】
転移癌の処置または予防において使用するための、請求項4から21のいずれかに記載のペプチドフラグメントまたは請求項1から3および22から46のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項73】
請求項58に記載のT細胞受容体を含む単離されたT細胞。
【請求項74】
配列番号1のRhoCもしくは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体または該RhoCもしくはそのフラグメントの連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメントと特異的に相互作用することができる単離されたT細胞。
【請求項75】
請求項4から21に記載のRhoCペプチドのいずれかと特異的に相互作用することができる、請求項74に記載のT細胞。
【請求項76】
CD8 T細胞である、請求項74から75に記載のT細胞。
【請求項77】
CD4 T細胞である、請求項74から75に記載のT細胞。
【請求項78】
請求項57に記載のT細胞受容体をコードする第1のヌクレオチド配列とT細胞における該第1のヌクレオチド配列の発現を指示する第2のヌクレオチド配列とを含む異種DNA構築物を含む、請求項74から77のいずれかに記載のT細胞。
【請求項79】
配列番号1のRhoCもしくは配列番号1に対して少なくとも70%の同一性を有するその機能的相同体または該RhoCもしくはそのフラグメントの連続配列を含む免疫原的に活性なペプチドフラグメントの存在下でT細胞を増殖させることを含む、請求項78に記載のT細胞クローンの調製方法。
【請求項80】
請求項4から21に記載のRhoCペプチドのいずれかの存在下でT細胞を増殖させることを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
請求項73から80のいずれかに記載の単離されたT細胞クローンを含む医薬組成物。
【請求項82】
転移癌の治療において使用するためのものである、請求項81に記載の医薬組成物。
【請求項83】
請求項74に記載の単離されたT細胞を含む組成物をその必要がある個体に投与することを含む、転移癌の処置および/または予防方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−506497(P2011−506497A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538345(P2010−538345)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050324
【国際公開番号】WO2009/076966
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510172273)
【Fターム(参考)】