説明

Rpn11酵素活性のための新規な基質

【課題】プロテアソーム酵素活性、例えば、Rpn11の酵素活性、19S調節粒子のメタロプロテアーゼの基質として機能するペプチドの提供。
【解決手段】特定な配列からなるアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を示すアミノ酸配列と、前記のアミノ酸配列とは別の、特定な配列からなるアミノ酸配列の最初の76アミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を示す少なくとも1つのユビキチン部分とを含むペプチドであって、プロテアーゼの基質であるペプチド。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願に対するクロスレファレンス
本願は、2005年8月19日および2005年5月27日付でそれぞれ出願された米国仮特許出願第60/709,659号および第60/685,426号の優先権を主張し、その出願日の便益を主張する。そして、その内容の全体を、本明細書中に引用により援用する。
【0002】
発明の背景
26Sプロテアソームによるタンパク質分解は、ユビキチン化した基質タンパク質を19S調節粒子に結合させ、それを、分解が行われる20Sコアの内腔に脱ユビキチン化、アンフォールディングおよび転座することによって進行する。近年、プロテアソームは、癌、免疫関連疾患、炎症、虚血性状態、神経変性性障害、および他の疾患における治療的インターベンションにとっての魅力的な標的であることが明らかになってきた。これまで、FDAが承認しているプロテアソームインヒビター(VELCADE(登録商標))の機能は、20Sコアペプチダーゼの活性を阻害することによるものである。それにもかかわらず、プロテアソーム複合体内に存在する他の酵素活性を阻害することも、同じくらい有効な、もしかすると、より有効なプロテアソーム機能コントロール手段となり得るであろう。
【0003】
そのような標的候補の1つは、19S調節粒子内に存在するメタロプロテアーゼ、Rpn11である。それは、標的タンパク質の最初の脱ユビキチン化を担っている(Eytan, et al. JBC 268(7):4668-4674 (1993);
Verma, et al. Science 298:611-615 (2002))。この酵母タンパク質のヒトホモログは、POH1である。これまで、Rpn11の組換え形態は生成されていない。しかしながら、Rpn11に関連する脱ユビキチン化活性は、精製された26Sプロテアソーム複合体の状況では、そのATP−γSおよび1,10−フェナントロリン(OPA)に対する感受性、ならびにプロテアーゼインヒビターおよびその古典的DUBインヒビター(ユビキチンアルデヒド(UB−Al)もしくはユビキチンビニルスルホン(UbVS))に対する非感受性によって、識別することができる。
【0004】
Rpn11およびその脱ユビキチン化活性についてさらに知るために、いくつかのアッセイを行った。殆どのアッセイにおいて、酵素源として、精製された26Sプロテアソーム抽出物を用い、DUBインヒビターの存在下および不存在下における分解を探した。Rpn11活性の検出には、Ub−sic1(Verma et al., 上掲)などのユビキチン化タンパク質が必要であった。そしてその反応をSDS−PAGEによってモニターし、次いで、α―ユビキチン(α―Ub)、またはα―sic1などのα―タンパク質のいずれかを用いてイムノブロッティングを行った。放射線標識または蛍光標識された基質は、分解されていない基質と、PAGE(Eytan et al.,上掲)もしくはTCA析出(Yao et al., Nature
419: 403-407 (2002))などの分解された生成物とを分離することが必要であった。
【0005】
このように、新規なRpn11基質タンパク質を採用する高スループット(HTP)アッセイは、Rpn11活性のモジュレーターを同定するための大量の分子をスクリーンニングするのに非常に望ましい。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本願は、プロテアソーム酵素(例えば、Rpn11)活性の基質であるペプチド、およびペプチド基質を用いた種々の組成物および方法、例えば、プロテアソーム(例えば、Rpn11)酵素活性を測定するアッセイ、またはプロテアソーム酵素活性を調節する物質をスクリーニングするアッセイなどを提供する。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、互換可能に用いられている。用語「プロテアソーム」は、26Sプロテアソーム、19S調節粒子、19S調節粒子を含むタンパク質複合体、またはその他のタンパク質複合体、またはRpn11もしくはユビキチン媒介性のタンパク質分解に関与するRpn11様タンパク質を含む成分を意味する。用語「Rpn11」はまた、本明細書において「POH1」と互換可能に用いられ、この語は、Rpn11酵素活性、例えば、脱ユビキチン化活性を付与するあらゆるポリペプチドを意味する。
【0007】
本願の第1の局面は、26Sプロテアソーム、20Sプロテアソーム、または19S調節粒子のプロテアーゼのためのペプチド基質を提供する。いくつかの態様において、ペプチド基質は、配列番号:1に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、もしくは100%の同一性を示すアミノ酸配列、および配列番号:2の最初の76アミノ酸配列に少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは100%の同一性を示すユビキチン部分を含む。いくつかの態様において、ペプチド基質は、配列番号:2の最初の76アミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは100%の同一性を示すユビキチン部分、配列番号:1に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の同一性を示す第1のアミノ酸配列、およびさらに別のアミノ酸配列、好ましくは、第1のアミノ酸配列のC末端から開始し、少なくとも3、5、8、10、12、15、18、20、25、30、40、50、75、100、200、300、500のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ペプチド基質は、配列番号:3〜15のいずれかに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%の同一性を示すアミノ酸配列、および配列番号:2の最初の76のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは100%の同一性を示すユビキチン部分を含む。
【0008】
いくつかの態様において、ペプチド基質はさらに、1以上のユビキチン部分を、例えば、そのペプチドのN末端に含む。いくつかの態様において、1以上のユビキチン部分は、そのペプチドのK(s)を介して該ペプチドと結合していてもよい。
【0009】
いくつかの態様において、ユビキチン部分は、配列番号:2の最初の76アミノ酸配列に50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を含む。配列番号:2の76アミノ酸のユビキチン繰り返し単位は、本明細書においてUbとも称する。いくつかの態様において、ユビキチン部分は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100以上のUbの繰り返しを含む。いくつかの態様において、ユビキチン部分は、1以上のUbの繰り返しを含む。但し、75番目のアミノ酸において少なくとも1つのUb繰り返しがAになっている。いくつかの態様において、ユビキチン部分は、1以上のUb繰り返しを有している。但し、76番目のアミノ酸において少なくとも1つのUb繰り返しがAになっている。いくつかの態様において、ユビキチン部分が1以上のUb繰り返しを含む場合、少なくとも1つのUb繰り返しの76番目のアミノ酸は、GまたはAである。
【0010】
いくつかの態様において、ペプチド基質はさらに、ペプチドに結合した検出可能な作用物質を含む。検出可能な作用物質は、検出可能な作用物質、および/または、検出可能な作用物質に結合し得るペプチドの一部の同一性にしたがって、異なる方法でペプチドに結合することができる。例えば、検出可能な作用物質は、ペプチドのC残基を介してペプチドに結合することができる。検出可能な作用物質は、非共有結合もしくは共有結合によってペプチド基質に結合し得る蛍光標識とすることができる。蛍光標識は、非共有結合もしくは共有結合、例えば、ペプチド結合によってペプチド基質に結合し得る蛍光ペプチドを含むことができる。あるいは、検出可能な作用物質の例としては、放射性標識、例えば、放射線標識されたアミノ酸、例えば、35S−Cもしくは35S−Mが挙げられる。
【0011】
別の態様において、ペプチド基質は、選択物質に特異的に結合する標的タンパク質、例えば、N末端もしくはC末端部分を含むことができる。選択物質は、ペプチド基質の標的部分を認識する抗体とすることができる。あるいは、選択物質は、ペプチド基質の標的部分と特異的に相互作用する、もしくは結合する2価の金属イオンとすることができる。
【0012】
本願の別の局面は、本明細書に記載の種々のタンパク質およびペプチド基質をコードする核酸を提供する。
【0013】
本願の別の局面は、本願に記載のペプチド基質を用いた方法を提供する。
【0014】
いくつかの態様は、プロテアソーム活性、例えば、26Sプロテアソームまたは19S調節粒子の酵素活性を調節する作用物質を選択するための方法を提供する。該方法は、本願のペプチド基質、例えば、配列番号:1のアミノ酸配列および1以上のユビキチン部分を含むペプチド基質を提供すること、およびペプチドとプロテアソーム活性の測定に好適な反応混合物とを試験物質の存在下で結合することを含んでもよい。試験物質の不存在下でのプロテアソーム活性と比較して、試験物質の存在下でのプロテアソーム活性が変化した場合、該試験物質がプロテアソーム活性を調節するものであることがわかる。該プロテアソーム活性は、例えば、ペプチドからのユビキチン部分の分裂のレベルを測定することによって測定することができる。分裂のレベルは、分裂の速度および/または程度で表される。当該方法は、プロテアソーム活性を高める、または阻害する作用物質を選択するのに有用である。
【0015】
いくつかの態様は、プロテアソームインヒビター物質を選択する方法を提供する。プロテアソームインヒビター物質は、ユビスタチン様分子もしくは部分、またはユビキチン結合分子もしくは部分を含むことができる。ユビキチンと結合するプロテアソームインヒビター物質は、基質のタンパク分解を阻害することができ、または他のメカニズムによるプロテアソーム活性を阻害することができる。阻害物質は、固有の蛍光性を有していてもよいし、有していなくてもよい。.
【0016】
本願の方法は、蛍光標識を有する本願のペプチド基質、例えば、配列番号:1のアミノ酸配列、1以上のユビキチン部分、および蛍光標識を含むペプチド基質を提供すること、および試験物質の不存在下と比較した場合の試験物質の存在下におけるペプチド基質の蛍光偏光を測定することを含む。試験物質の存在下での蛍光偏光と試験物質の不存在下での蛍光偏光の違いから、該試験物質がプロテアソームインヒビター物質かもしれないことがわかる。
【0017】
別法として、該方法は、試験物質の存在下または不存在下での好適な反応混合物における本願のペプチド基質を提供すること、および試験物質の不存在下と比較した場合の試験物質の存在下でのペプチド基質の分子量および/または大きさにおいて相違があるかどうかを測定することを含む。ユビスタチン様分子は、ペプチドに付着したユビキチン部分の凝集または多量体化を引き起こす。したがって、試験物質の不存在下と比較した場合、試験物質の存在下でのペプチド基質の分子量および/または大きさが増加すれば、該試験物質がユビスタチン様分子であるかもしれないことがわかる。分子量および/または大きさは、未変性ゲル電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー、光散乱などの種々の方法によって測定することができる。
【0018】
該方法は、本願のペプチド基質、例えば、配列番号:1のアミノ酸配列および1以上のユビキチン部分を含むペプチド基質を提供すること、および試験物質とペプチド基質とを好適な反応混合物中で混合したときに、試験物質の固有の蛍光性が変化するかどうかを判定することをを含む。ペプチド基質の存在下で試験物質の固有の蛍光性が変化すれば、該試験物質がプロテアソームインヒビターであるかもしれないことが示される。
【0019】
別の態様において、プロテアソームインヒビター物質を選択する方法は、本願のペプチド基質に加えて、ユビスタチン分子(例えば、ユビスタチンAまたはB)を含み、試験インヒビター物質を含む、もしくは含まない反応混合物を用いることができる。試験インヒビター物質を含まない場合と比較して、試験インヒビター物質を含んで測定した場合にユビスタチン分子(例えば、ユビスタチンAまたはB)の固有の蛍光性が変化した場合、試験インヒビター物質はユビスタチン様プロテアソームインヒビターであることが示される。試験インヒビター物質そのものは、固有の蛍光性を有していてもよいし、有していなくてもよい。該方法は、ユビキチン部分と結合するためのユビスタチンと競合し得るユビスタチン様プロテアソームインヒビターを選択するのに特に有用であり得る。
【0020】
本願のさらに別の局面は、プロテアソームの種々の成分、またはユビキチン媒介タンパク質分解プロセスの種々の段階の活性を調節する作用物質を選択する方法を提供する。プロテアソームの種々の成分、またはユビキチン媒介タンパク質分解の種々の段階は、ユビキチン化したタンパク質、脱ユビキチン化タンパク質、例えば、Rpn11のプロテアソームへの導入、当該タンパク質、例えば、AAA
ATPアーゼのアンフォールディング,脱ユビキチン化したタンパク質のコアペプチダーゼによる分解を含む。
【0021】
該方法は、少なくとも2つのペプチド基質、例えば、ユビキチン化したペプチドおよび第1の蛍光標識を含む第1のペプチド基質、ならびにユビキチン化したペプチドおよび第2の蛍光標識を含む第2のペプチド基質を用いることができる。尚、第1および第2の蛍光標識は、異なる波長で検出可能である。ユビキチン化したペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列と1以上のユビキチン部分を含むことができる。非ユビキチン化ペプチドは、コアペプチダーゼ、例えば、キモトリプシン様プロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、またはPGPH(もしくはカスパーゼ)様プロテアーゼの基質として機能することができるあらゆるペプチドであることができる。該方法はまた、26Sプロテアソームの存在下、試験物質の存在下および不存在下での第1の標識検出可能波長において蛍光性を測定すること、任意に26Sプロテアソームの存在下で、試験物質の存在下および不存在下での第2の標識検出可能波長において蛍光性を測定することを含む。試験物質の不存在下での蛍光性と比較して、前記試験物質の存在下での第1のペプチド基質の蛍光性が変化した場合に、前記試験物質が、19Sに調節粒子関連する活性を調節することが示される。試験物質の不存在下での蛍光性と比較したときの、前記試験物質の存在下における第2のペプチド基質の蛍光性の変化によって、試験物質が20Sコアペプチダーゼを調節することが示される。
【0022】
本願の別の局面は、本願の方法によって選択された作用物質を用いた方法および組成物を提供する。例えば、いくつかの態様は、被験者において、異常なユビキチン媒介性のタンパク質分解またはプロテアソーム活性に関連する状態を治療または予防するための方法であって、該被験者にプロテアソーム活性、特に19S調節粒子に関連する酵素活性を調節する作用物質を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。19S調節粒子に関連する酵素活性の例としては、Rpn11酵素活性が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、配列番号:3乃至C14(配列番号:4)の配列を含むペプチドのS14の変化が、Rpn11によって認識され、分割される基質の能力を変化させないことを示す図である。各ペプチド基質は、4つのUb繰り返し(Ub4)を有するN末端のユビキチン部分をさらに含む。図1は、基質Ub4−ペプチド(29)およびUb4−ペプチド−C14(29)の26Sプロテアソームによるタンパク質分解が、o−フェナントロリンおよびATPγSによって阻害されるが、ユビキチンアルデヒドによっては阻害されないことをさらに示している。2μgのUb4−ペプチド(29)またはUb4−ペプチド−C14(29)を、緩衝液B[50mM、Tris、pH8.0;10mMのMgCl;1mMのDTT;1mMのATP]に入った60nMの26Sプロテアソームとともに、また、指示されている場合には5mMのATPγS、1mMのO−フェナントロリン(OPA)および5μMのユビキチンアルデヒド(Ub−アルデヒド)とともに、20μlの容積中で、2時間37℃でインキュベートした。7.5μlの添加色素を添加することによって反応を止め、100℃で5分間沸騰させた。次いで、反応物をSDS−PAGEゲルに添加し、電気泳動法によって反応生成物を分離させ、ブリリアントブルーを用いてバンドを可視化した。
【図2】図2は、配列番号:15乃至C14の配列を含むペプチドのS14の変化が、基質がRpn11によって認識され、分割される能力を変化させないことを示す図である。各ペプチド基質は、4つのUb繰り返し(Ub4)を有するN末端のユビキチン部分をさらに含む。図2は、基質Ub4−ペプチド−C14(14)のタンパク質分解が、o−フェナントロリンおよびソースBではなくソースAからの26Sプロテアソームを用いたATPγSによって阻害されることをさらに示している。2μgのUb4−ペプチド−C14(29)は、ソースAもしくはソースBからの60nMの26Sを用いてインキュベートした。
【図3】図3は、蛍光標識、例えば、フルオレセインを含む本願のペプチド基質を例として用いた蛍光偏光(FP)アッセイを表す模式図である。図3は、蛍光物質に結合したペプチド−C14(29)を蛍光物質に結合したUb4−ペプチド−C14(29)から分裂した結果、蛍光偏光シグナルが減少することを示している。
【図4】図4は、本願のペプチド基質および26SプロテアソームによるUb4−ペプチド(29)−フルオレセインタンパク質分解のカイネティクスを用いたFPアッセイの結果を示す図である。(記載されているように)様々な濃度のフルオレセイン−5−マレイミドに結合したUb4−ペプチド(29)を、10nMの26Sプロテアソームの入った10nMの26Sプロテアソームの50mMトリス溶液(pH8.0);10mMのMgCl;1mMのDTT;1mMのATPとともに28℃でインキュベートし、ペプチド(29)−フルオレセインの遊離を蛍光偏光(励起:485nm;発光:510nm)で測定した。
【図5A】図5Aは、Rpn11活性のO−フェナントロリン阻害を検出する高スループット(HTP)FPアッセイを示す図である。この結果から、O−フェナントロリンが26SプロテアソームによるUb4−ペプチド(29)−フルオレセインタンパク質分解のカイネティクスに影響を及ぼすことがわかる。フルオレセイン−5−マレイミドに結合した100nMのUb4−ペプチドを、10nMの26Sプロテアソームの入った10nMの26Sプロテアソームの50mMトリス溶液(pH8.0);10mMのMgCl;1mMのDTT;1mMのATPとともに28℃でインキュベートし、ペプチドの遊離を蛍光偏光(励起:485nm;発光:510nm)で、様々な濃度(指示どおり)のo−フェナントロリンの存在下で測定した。
【図5B】図5Bは、Rpn11酵素活性は、本願のペプチド基質を用いたHTP FPアッセイにおいて、20Sプロテアソームインヒビターの存在によって影響を受けないことを示すものである。この結果から、20Sプロテアソームインヒビターが26SプロテアソームによるUb4−ペプチド(29)−フルオレセインタンパク質分解のカイネティクスに影響を及ぼさないことがわかる。フルオレセイン−5−マレイミドに結合した100nMのUb4−ペプチドを、10nMの26Sプロテアソームの入った10nMの26Sプロテアソームの50mMトリス溶液(pH8.0);10mMのMgCl;1mMのDTT;1mMのATPとともに28℃でインキュベートし、ペプチドの遊離を蛍光偏光(励起:485nm;発光:510nm)で、様々な濃度(指示どおり)の20Sプロテアソームインヒビターの存在下で測定した。
【0024】
発明の詳細な説明
真核生物の細胞の核および細胞質中におけるタンパク質分解の主な経路は、ユビキチン/26Sプロテアソーム経路を介するものである。26Sプロテアソームは、20Sプロテアソームと19S調節粒子といった2つの主なサブ粒子を含む。20Sプロテアソームは、ペプチダーゼ活性部位を含有する内部空間をもつ円柱形構造である。プロテアソームの基質を、20Sプロテアソームのペプチダーゼ活性部位による消化作用を受けやすいシリンダーに挿入する。20Sプロテアソームシリンダーへの挿入は、20Sシリンダーの端部をカバーする19S調節粒子によって制御されている。
【0025】
19S調節粒子は、ユビキチン化した基質間を結合し、それらを20Sシリンダーの内部空間に移し、そこでそれらを分解する。19S調節粒子は、さらに2つの多タンパク質複合体、ベースとリッドに分けられる。ベースは、基質をアンフォールドし、それらを20Sプロテアソームに移すと考えられている6個1セットのATPアーゼを含む。リッドは、8つのタンパク質を含む。そのタンパク質のいくつかは機能が既知であるもの、例えば、Rpn11である。生化学データからも、リッドが存在することによって、ユビキチン化したタンパク質を分解するために選択されるプロテアソームを付与されることがわかる。
【0026】
26Sプロテアソームのリッドサブ複合体は、進化的にCOP9−シグナロソーム複合体に関連しているが、この類似性の意義はわかっていない。26Sプロテアソーム調製物が種々の、関連するユビキチンイソペプチダーゼ活性を含有するということがいくつか報告されている(Eytan et al., 上掲; Verma, et al., Mol Biol
Cell 11:3425(2000))。より最近の報告(Verma
et al., Science 298:611-615 (2002))では、ユビキチン化した基質は、精製された26Sプロテアソームによって完全に脱ユビキチン化されて、20Sプロテアソームインヒビター、例えば、VELCADE(登録商標)の存在下で、未結合の基質を産出することが証明されている。
【0027】
ユビキチン/26S経路によって分解されることになっているタンパク質を、マルチユビキチンもしくはポリユビキチン鎖の付着によってマークする。近年の研究によれば、N末端のユビキチン化もまた、重要な新規なタンパク質変形の形態であり、26Sプロテアソームによるタンパク質分解のためのタンパク質を標的とすることが報告されている(Ciechanoverと Ben-Saadon, Trends in Cell
Biol. 14(3): 103-106 (2004))。次いで、ユビキチン化したタンパク質は、26Sプロテアソームによって、あまりよく理解されていないメカニズムによって、認識される。続いて、ユビキチン化したタンパク質が強く結合した結合相手から離れ、脱ユビキチン化し、アンフォールドし、20S複合体の中央部の空洞体に移行し、そこで、この内部の空洞体(コアペプチダーゼ)に存在するタンパク質分解部位によって余すところなく分解される。
【0028】
Rpn11、メタロイソペプチダーゼもしくはメタロプロテアーゼおよび19S調節粒子のリッドサブ複合体の固有のサブユニットは、細胞生存能力にとって重要な、保存された、予測されたメタロプロテアーゼモチーフ(JAMM)を含有する。本願の目的においては、Rpn11とPOH1は互換可能である。Rpn11は、タンパク質基質の脱ユビキチン化を媒介もしくは触媒することによって、26Sプロテアソームによるタンパク質分解の重要なステップを定義すると考えられている(Verma et al., 2002、上掲)。Rpn11およびそのオルソログについては、米国特許第20030166243号に記載されている。したがって、Rpn11のペプチド基質は、Rpn11活性の研究およびRpn11
活性を調節する物質の同定、およびそれによるユビキチン媒介性のタンパク質分解の調節において有用である。
【0029】
Rpn11の代表的なアミノ酸配列を以下に示す。
gi|51701716|sp|O00487|PSDE_HUMAN 26Sプロテアソーム非−ATPアーゼ調整サブユニット14(26Sプロテアソーム調整サブユニットRpn11)(26Sプロテアソーム−関連PAD1ホモログ1)
MDRLLRLGGGMPGLGQGPPTDAPAVDTAEQVYISSLALLKMLKHGRAGVPMEVMGLMLGEFVDDYTVRVIDVFAMPQSGTGVSVEAVDPVFQAKMLDMLKQTGRPEMVVGWYHSHPGFGCWLSGVDINTQQSFEALSERAVAVVVDPIQSVKGKVVIDAFRLINANMMVLGHEPRQTTSNLGHLNKPSIQALIHGLNRHYYSITINYRKNELEQKMLLNLHKKSWMEGLTLQDYSEHCKHNESVVKEMLELAKNYNKAVEEEDKMTPEQLAIKNVGKQDPKRHLEEHVDVLMTSNIVQCLAAMLDTVVFK(配列番号:16)。
【0030】
いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:16のアミノ酸配列に少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:16の1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10位置にアミノ酸の置換、欠失、もしくは追加を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、そのようなアミノ酸の置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0031】
Verma らが上掲文献において報告しているように、JAMMモチーフは、Rpn11がUb−Sic1を脱ユビキチン化し、分解する能力を必要としている。予測された活性部位であるヒスチジンのアラニンへの突然変異(Rpn11AXA)は、致死性であり、酵母においてユビキチン経路の基質を安定化した。JAMMモチーフは、以下のアミノ酸配列によって表される。
HSHPGFCWLSXVD(配列番号:17)、但し、Xは、SまたはG、好ましくはGである。
【0032】
あるいは、JAMMモチーフは、以下の配列によって特徴付けることができる。
MVVGWYHSHPGFCWLSXVDNTQSFESERAVA(配列番号:18)。但し、Xは、SまたはG、好ましくはGであり、は、QまたはA、好ましくはAであり、は、N、TまたはS、好ましくはSであり、そしては、S、P、DまたはE、好ましくはEである。
【0033】
いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:17のアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性を示すJAMMモチーフを含む。いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:17のアミノ酸配列の1、2、3、4または5位置に、アミノ酸の置換、欠失もしくは追加を有するJAMMモチーフを含む。いくつかの態様において、そのようなアミノ酸置換は、保存的なアミノ酸置換である。特定の態様において、本発明のRPN11は、配列番号:18のアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%の同一性を示すJAMMモチーフを含む。特定の態様において、本発明のRPN11は、配列番号:18のアミノ酸配列の1、2、3、4、5、8、10、12、もしくは15位置にアミノ酸の置換、欠失もしくは追加を有するJAMMモチーフを含む。いくつかの態様において、アミノ酸置換は、保存的なアミノ酸置換である。
【0034】
いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:16のアミノ酸配列に少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を含み、Rpn11タンパク質は、配列番号:17のアミノ酸配列に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%の同一性を示すJAMMモチーフを含む。
【0035】
いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:16のアミノ酸配列に少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%の同一性を示すアミノ酸配列を含み、Rpn11タンパク質は配列番号:18のアミノ酸配列に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%の同一性を示すJAMMモチーフを含む。
【0036】
いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:16の1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10の位置にアミノ酸配列の置換、欠失、または追加を含むアミノ酸配列を含み、該Rpn11は、配列番号:17の1、2、3、4、もしくは5の位置にアミノ酸配列の置換、欠失、または追加を含むアミノ酸配列を含む。
【0037】
いくつかの態様において、本発明のRpn11は、配列番号:16の1、2、5、10、15、20、30、50、60、75、もしくは90の位置にアミノ酸配列の置換、欠失、または追加を含むアミノ酸配列を含み、該Rpn11は、配列番号:18の1、2、3、4、5、8、10、12もしくは15の位置にアミノ酸配列の置換、欠失、または追加を含むアミノ酸配列を含む。
【0038】
本明細書において用いられているように、「配列同一性」(または「%の同一性を示す」)は、配列を並べて、配列のマッチングを最大にした場合、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮に入れた場合、2以上の配列の対応する位置における同一のアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。その方法としては、限定されないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University
Press, New York, 1988, Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.
W., ed., Academic Press, New York, 1993, Computer Analysis of Sequence Data,
Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey,
1994, Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press,
1987, and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M
Stockton Press, New York, 1991, and Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J.
Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されてるものが挙げられる。同一性を判定するための方法は、試験される配列どうしの最も高い整合性が与えられるようにデザインされている。さらに、同一性を判定するための方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて決められている。2つの配列間の同一性を判定するためのコンピュータプログラム法としては、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic acids Research 12(1): 387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990)およびAltschul et al. Nuc. Acids Res. 25:
3389-3402 (1997))が挙げられる。該BLAST Xプログラムは、NCBIや他のソースから好適に入手可能である(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md.
20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))。公知のSmith-Watermanアルゴリズムもまた配列同一性を判定するために用いることができる。
【0039】
「保存的なアミノ酸置換」というフレーズは、確かな共通の特性に基づいたアミノ酸の分類を意味する。個別のアミノ酸間に共通の特性を定義するための機能的な方法としては、同種の生物の対応するタンパク質間のアミノ酸の変化の頻度の正規化を分析することがある(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer., Principles of Protein Structure,
Springer-Verlag)。そのような分類によれば、アミノ酸の分類は、グループ内のアミノ酸を互いに優先的に交換することができる場合に定義することができ、したがって、それらがタンパク質全体におよぼす影響において互いに類似している(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure,
Springer-Verlag)。このように定義されるアミノ酸の分類には以下のものがある。
(i)GluおよびAsp、Lys、ArgおよびHisからなる荷電基。
(ii)Lys、ArgおよびHisからなる陽性荷電基。
(iii)GluおよびAspからなる陰性荷電基。
(iv)Phe、TyrおよびTrpからなる芳香族基。
(v)HisおよびTrpからなる窒素環基。
(vi)Val、LeuおよびIleからなる脂肪族無極性基
(vii)MetおよびCysからなる弱極性基
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、GlnおよびProからなる小残基。
(ix)Val、Leu、Ile、MetおよびCysからなる脂肪族基。
(x)SerおよびThrからなる小水酸基。
【0040】
上記基に加えて、各アミノ酸残基は、それ独自の基を形成するかもしれない。そして、個別のアミノ酸によって形成された基は、アミノ酸を表すために当該技術において一般的に用いられている1文字および/または3文字の省略形によって簡略して示すことができる。
【0041】
本願のペプチドの例
本願のある局面は、下の配列番号1〜15のいずれかを含みうる種々のペプチドまたはタンパク質を提供する。いくつかの態様において、プロテアソーム酵素(例えば、Rpn11)活性のためのペプチド基質は、配列番号:1および3〜15のいずれかのアミノ酸配列を含み、さらにユビキチン部分を含む。「ユビキチン部分」は、単一の、76アミノ酸ユビキチン部分(Ub)もしくはポリユビキチン部分、例えば、9個の繰り返しポリユビキチン(配列番号:2の最初の684アミノ酸によって表される)(Ub9と呼ぶこともある)、または、n個の繰り返しポリユビキチン(Ubnと呼ぶこともある、ここでnはあらゆる整数とすることができる)。好ましい態様においては、ユビキチン部分は、ペプチド基質のN末端にある。したがって、ペプチド基質は、N末端のユビキチン化またはN末端のポリユビキチン化によって修飾されると考えられている。あるいは、ペプチド基質は、「枝分かれした」主用構造を有していてもよい。例えば、ユビキチン部分は、配列番号:1の配列およびユビキチン部分を含むペプチド基質中の配列番号:1のK6に結合している。または、ユビキチン部分は、配列番号:3およびユビキチン部分を含むペプチド基質中の配列番号:3のK6およびK17のいずれか1以上に結合している。配列番号:1および3〜15のいずれかのアミノ酸の第1の(N末端の)14、15または16において、1以上(例えば、3)の残基がAによって置換されていてもよい。配列番号:3〜15のいずれかにおいて、S残基の1以上はCによって置換されていてもよい。
【0042】
いくつかの態様において、配列番号:2の最初の76アミノ酸によって表されるUbの75番目のアミノ酸は、Aで置換されていてもよい。いくつかの態様において、配列番号:2の76番目のアミノ酸は、Aで置換されていてもよい。75番目および76番目のアミノ酸の双方ともがAで置換されていてもよい。好ましい態様において、76番目のアミノ酸は、GまたはAであり、好ましくは、Vではない。
【0043】
配列番号:1。
MQIFVKTLRANXXX
Xは、S、CもしくはAであることができる。
【0044】
配列番号:2。
ユビキチン(9−コードユニットユビキチンC(UBC)遺伝子産物。下線部は、76アミノ酸単一ユビキチンである)
>gi|340068|gb|AAA36789.1| ユビキチン
MQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGMQIFVKTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIFAGKQLEDGRTLSDYNIQKESTLHLVLRLRGGV
【0045】
配列番号:3(ペプチド(29))
MQIFVKTLRANSSSVXKLAAALZHHHHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0046】
配列番号:4(ペプチド−C14(29))
MQIFVKTLRANSSCVXKLAAALZHHHHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0047】
配列番号:5(ペプチド−C13(29))
MQIFVKTLRANSCSVXKLAAALZHHHHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0048】
配列番号:6(ペプチド−C12(29))
MQIFVKTLRANCSSVXKLAAALZHHHHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0049】
配列番号:7(ペプチド−SΔC(29))
MQIFVKTLRANCCCVXKLAAALZHHHHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0050】
配列番号:8(ペプチド(28))
MQIFVKTLRANSSSVXKLAAALZHHHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0051】
配列番号:9(ペプチド(26))
MQIFVKTLRANSSSVXKLAAALZHHH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0052】
配列番号:10(ペプチド(24))
MQIFVKTLRANSSSVXKLAAALZH
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0053】
配列番号:11(ペプチド(23))
MQIFVKTLRANSSSVXKLAAALZ
Xは、DまたはAとすることができ、Zは、EまたはAとすることができる。
【0054】
配列番号:12(ペプチド(21))
MQIFVKTLRANSSSVXKLAAA
Xは、DまたはAとすることができる。
【0055】
配列番号:13(ペプチド(18))
MQIFVKTLRANSSSVXKL
Xは、DまたはAとすることができる。
【0056】
配列番号:14(ペプチド(16))
MQIFVKTLRANSSSVX
Xは、DまたはAとすることができる。
【0057】
配列番号:15(ペプチド(14))
MQIFVKTLRANSSS
【0058】
本明細書に記載の種々のタンパク質およびペプチドをコードする核酸も提供される。該核酸は、例えば、組換え分子生物学的な手法によってペプチド基質を作製する際に、有用であることができる。
【0059】
いくつかの態様において、ペプチド基質は、検出可能な作用物質および/または選択物質と特異的に結合する、もしくは、相互作用する標的部分を含む。
【0060】
本明細書における「検出可能な作用物質」は、当該技術分野において公知の方法によって検出される、および/または視覚化され得る物質を意味する。例えば、蛍光標識または放射性標識を、検出可能な作用物質として用いることができる。また、そのような検出可能な作用物質を含むペプチド基質は、蛍光性(例えば、蛍光偏光アッセイ)もしくは放射活性(例えば、オートラジオグラフィーもしくはシンチレーション計数)を測定/検出する公知の方法によって、検出および/または視覚化される。蛍光標識は、フルオロホアもしくは蛍光性ペプチド(例えば、緑色もしくは青色蛍光性タンパク質)を含むことができる。フルオロホアの例としては、限定されないが、FITC、フルオレセイン−5−マレイミド、ODIPY499/508マレイミド、BODIPY
FL N−(2−アミノメチル)マレイミド、テトラメチルローダミン−6−マレイミドおよびテトラメチルローダミン−5−マレイミド、5−ヨードアセトアミドフルオレセイン(5−IAF)、6−ヨードアセトアミドフルオレセイン(6−IAF)、オレゴングリーン(Oregon
Green(登録商標)488ヨードアセトアミドおよびオレゴングリーン(Oregon Green(登録商標)488マレイミドが挙げられる。フルオロホアは、抗フルオロホア抗体による検出を介して、または均質の蛍光性アッセイ、例えば、蛍光偏光アッセイによる検出を介してゲル内で視覚化することができる。
【0061】
いくつかの態様において、検出可能な作用物質は、選択物質に特異的に結合する標的部分に等しい。例えば、フルオロホアをもつ蛍光標識を、抗フルオロホア抗体に特異的に結合する標的部分とすることができる。いくつかの態様において、検出可能な作用物質を直接検出されることができるが、標的部分は、検出および/または視覚化にあたって、対応する選択物質の援助を必要とする点において、検出可能な作用物質は標的部分とは異なる。例えば、該標的部分は、GSTなどのタンパク質でもよい。そして、標的部分(およびそれによって、標的部分を含むペプチド基質)を、例えば、ELISAまたはウェスタンブロッティングによって「視覚化」するために使用することができる対応する選択物質は、抗GST抗体とすることができる。当業者は、例えば、タンパク質、DNA、RNA、ペプチドミメティック、小分子といった種々の分子が標的部分として機能することを理解している。好ましい態様において、いくつかの公知のエピトープを標的部分、例えば、HAタグ、FLAGエピトープ、Mycエピトープ、His6タグおよびT7エピトープ、およびそれらの対応する公知の抗体を、それらの存在を測定するために、標的部分として用いることができる。His6タグなどの標的部分としては、2価の金属イオン(例えば、Ni2+)を選択物質として用いることもできる。
【0062】
いくつかの態様において、標的部分は、本願のペプチド基質のN末端に位置している。
【0063】
ペプチドを作製する方法
本願はさらに、本明細書に記載のペプチド基質を作製する方法を提供する。
【0064】
いくつかの態様において、例えば、配列番号:1および3〜15のいずれかのペプチドは、標準的な化学的ペプチド合成によって作製することができる。別法として、組換え、分子生物学的手法を用いることができる。いくつかの態様において、化学合成および組換え手法は、本願のペプチド基質を作製するために組み合わせて用いることができる。
【0065】
本願のタンパク質をコードする核酸は、融合遺伝子または核酸(例えば、配列番号:1および3〜15のいずれかの配列に「融合」しているユビキチン部分を含むペプチド基質をコードする融合核酸)を含むことができ、その作製方法は、当該技術において公知である。例えば、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAまたは遺伝子フラグメント(例えば、ユビキチン部分をコードする核酸を含むDNAフラグメントおよび、配列番号:1および3〜15のいずれかの配列をもつペプチドをコードするDNAフラグメント)の結合は、ライゲーションのための平滑末端、もしくはジグザグの末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切であれば、粘着性のある末端の充填を、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処置および酵素ライゲーションを用いて、従来技術において行われてきた。いくつかの態様において、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続する遺伝子フラグメントの相補的なオーバーハングをもたらすアンカープライマーを用いて行うことができ、引き続きアニーリングされ、融合またはキメラ配列を作製する(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al., John
Wiley & Sons: 1992)。
【0066】
本開示の組換え核酸コントラクトは、当該技術分野において公知であり、完全に文献に記載されている、従来の組換えDNA方法を用いて、ならびに、ルーチンのペプチドもしくはヌクレオチド化学を用いた公知の生合成および化学合成法およびペプチドもしくはヌクレオチドの自動合成装置を用いて作製することができる。そのようなルーチンの方法は、例えば、以下の文献に記載されている。その教示を本明細書において引用によって援用する:Hilvert, 1 Chem.-Biol. 201-3 (1994); Muir et al., 95 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 6705-10 (1998); Wallace, 6 Cuff. Opin. Biotechnol.
40310 (1995); Miranda et al.,
96 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1181-86 (1999); Liu et al., 91 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 6584-88 (1994)。本開示において好適に用いられるのは、天然に存在するアミノ酸およびヌクレオチド;非天然のアミノ酸およびヌクレオチド;修飾された、もしくは通常ではないアミノ酸;修飾された塩基;翻訳後修飾されたアミノ酸および/または修飾された結合、架橋結合、および末端キャップ、非ペプチジル結合などを含有するアミノ酸配列;および限定されないがWorld Intellectual Documentation. Standard St. 25 (1998)(添付2の表1〜6を含む)に記載の部分を含む。引用によって援用する。当該技術分野に関する知識とルーチンの実験によって当業者は、上記の均等物を理解することができるであろう。
【0067】
例えば、検討されているDNAコントラクトは、合成ヌクレオチド配列の集合および/またはDNA制限フラグメントの結合によって作製され、合成DNA分子を作製してもよい。次いでDNA分子を、発現賦形剤、例えば、発現プラスミド(例えば、pET28aもしくはpGEX)にライゲーション、クローンニング、またはサブクローンニングし、適切な宿主細胞、例えば、E. coliにトランスフェクトする。次いで、DNA分子によってコードされている、検討されているDNAコントラクトを、発現させ、精製し、再び折り畳み、例えば、ペプチド基質中の対応する標的部分(例えば、Mycエピトープ)に対して結合親和性を有する選択物質(例えば、抗Myc抗体)との結合活性、および/またはプロテアソーム活性を測定するための酵素基質として機能する活性といった、いくつかの属性についてインビトロで試験する。
【0068】
プロテアソーム活性を修飾する選択物質ペプチドの使用方法
本願はまた、例えば、プロテアソーム活性を修飾する1以上の物質を選択する際の、本明細書に記載のペプチド基質の使用方法を提供する。上記したように、プロテアソーム活性は、種々の成分を含み、ある物質は、特定のプロテアソーム活性、例えば、分解(例えば、ユビキチン化による修飾)のために標的とされるタンパク質のプロテアソームへの導入、Rpn11もしくは他の19S調節粒子のメタロプロテアーゼ活性、ATPアーゼ活性、または20S複合体のコアペプチダーゼ活性の成分を修飾するように選択することができる。
【0069】
ある態様において、本願によって提供されるスクリーニングアッセイにおいて用いられる酵素または酵素生成物は、26Sプロテアソームもしくは19S調節粒子のポリペプチド複合体、またはRpn11酵素活性を有するポリペプチドもしくはポリペプチド複合体である。26Sプロテアソームもしくは19S調節粒子のポリペプチド複合体、またはRpn11酵素活性を有するポリペプチドもしくはポリペプチド複合体は、あらゆる好適な方法で取得することができる。例えば、26Sプロテアソームは、真核生物の細胞もしくは組織、例えば、酵母(S. cerevisiae)またはヒトから精製することができる。
【0070】
別の態様において、試験物質、標的タンパク質もしくはペプチド基質、および本願によって提供されるスクリーニングアッセイの26Sプロテアソームの存在下および不存在下で、20Sプロテアソームインヒビターの存在下で、任意にインキュベーションを行う。あらゆる20Sプロテアソームインヒビターまたは本願の分解プロセスのインヒビターを用いることができる。例えば、20Sプロテアソームインヒビターは、MG132、ラクタシスチン(lactacystin)、エポキソミシン(epoxomycin)、YU101、PS−349、PS−519、LLnL、もしくはそれらの誘導体であることができる。一般に、そのようなインヒビターは、ユビキチンに結合しない標的タンパク質の分解を阻害または低下させる。
【0071】
さらに別の態様において、該インキュベーションは、さらに、例えば、ATPなどのエネルギー源の存在下で行うことができる。さらに別の態様において、該インキュベーションは、従来のユビキチンイソペプチダーゼ、例えば、26SプロテアソームなどのJABサブユニットと結合するもの以外のユビキチンイソペプチダーゼによる脱ユビキチン化に対する阻害の存在下でインキュベートすることができる。そのようなインヒビターの例としては、ユビキチンアルデヒド(例えば、2−5μM)がある。
【0072】
いくつかの態様において、プロテアソーム酵素活性の検出は、ユビキチン化したタンパク質基質、例えば、本明細書に記載のペプチド基質を用い、該反応をSDS−PAGEによってモニターし、その後、ペプチド基質の他の成分、例えば、Mycなどの標的部分に特異的な、抗ユビキチン抗体あるいは他の抗体のいずれかを用いたイムノブロッティングを行った。別法として、試験すべき酵素もしくは酵素調製物に曝露した後、放射性標識もしくは蛍光標識を含む該ペプチド基質を、SDS−PAGEに供して、分解生成物(Eytan et al., supra)またはTCA調製(Yao et al., Nature 419: 403-407 (2002))から未分解ペプチド基質を分離し、放射活性もしくは蛍光性を当該技術分野において公知の手段によって分離することができる。
【0073】
いくつかの態様は、プロテアソーム活性、例えば、Rpn11酵素活性を有する26Sプロテアソーム、19S調節粒子、またはポリペプチドもしくはポリペプチド複合体の酵素活性を調節する物質を選択する方法を提供する。該方法は、本願のペプチド基質、例えば、配列番号:1のアミノ酸配列および1以上のユビキチン部分を含むペプチド基質を提供すること、ならびに、ペプチドとプロテアソーム活性の測定に好適な反応混合物とを、試験物質の存在下で組み合わせることを含んでもよい。試験物質の存在下でのプロテアソーム活性が、試験物質の不存在下でのプロテアソーム活性と比較して、変化した場合、試験物質がプロテアソーム活性を調節することが示される。プロテアソーム活性は、例えば、ペプチドからのユビキチン部分の分裂のレベルを測定することによって決定することができる。分裂のレベルの測定は、分裂の速度および/または程度によって表してもよい。本発明は、プロテアソーム活性を増強させる、または阻害する物質を選択するために有用な方法である。
【0074】
最近の出版物(Verma et al., Science 306: 117-120 (2004))によれば、「ユビスタチン」と呼ばれる別のタイプのプロテアソームインヒビターが確認されている。ユビスタチンは、分解標的タンパク質に結合したユビキチンもしくはポリユビキチン鎖と結合し、それによってペプチド分子がプロテアソームに入ることを阻害することによって機能する。本願のペプチド基質は、ユビスタチン様プロテアソームインヒビターをスクリーニングするために用いることができる。例えば、本願のペプチド基質は、試験インヒビター物質が26Sプロテアソーム活性(例えば、IC50を測定することによる)に及ぼす影響と、それがイソペプチダーゼT活性に及ぼす影響とを比較するために用いることができる。異なる酵素または酵素調製物において、それらの影響が等しければ、その試験インヒビターは、酵素ではなく、ペプチド基質に作用し、それによってユビスタチン分子のように機能する。ユビスタチンAは、化合物92(Compound 92)とも称されるが(Verma et al., 2004, 上掲文献)が、これは、タンパク質基質と結合し、化合物92から検出される固有の蛍光性が増加する。したがって、試験物質の存在下と不存在下とを比較して、ユビスタチンおよび/または試験物質の固有の蛍光性の変化を測定するアッセイにおけるこの固有の特性によって、ユビスタチン様分子をスクリーニングすることができる。競合ベースアッセイを行うこともでき、そこでは、ユビスタチン分子、試験物質、およびペプチド基質を、固有の蛍光性を測定するための好適なアッセイ/反応混合物において組み合わせ、混合物中に試験物質を存在させない場合と比較して、存在させた場合にユビスタチンの固有の蛍光性が変化した場合、試験物質はユビスタチン様物質であり、ペプチド基質と結合するユビスタチンと競合するかもしれないことが示される。別のアッセイを行うこともでき、そこでは、試験物質およびペプチド基質を、固有の蛍光性を測定するための好適なアッセイ/反応混合物において組み合わせ、ペプチド基質の存在下で試験物質の固有の蛍光性が変化したとき、試験物質は、ユビスタチン様プロテアソームインヒビターであることが示される。
【0075】
本願のスクリーニング方法は、蛍光標識、例えば、配列番号:1のアミノ酸配列を含むペプチド基質と、1以上のユビキチン部分と、蛍光標識とを含む本願のペプチド基質を提供すること、試験物質の不存在下と比較して、試験物質の存在下でペプチド基質の蛍光偏光を測定することを含んでもよい。試験物質の存在下と試験物質の不存在下での蛍光偏光の相違から、試験物質がプロテアソームインヒビター物質かもしれないことが示される。理論に束縛されることを望むわけではないが、試験物質は、例えば、ペプチド基質のユビキチン部分の凝集または多量体化を引き起こすなど、ユビスタチン様に機能するかもしれない。そのような凝集または多量体化は、分子量および/または分子、例えば、ペプチド基質の大きさにおける変化を検出するために好適なあらゆる方法によって検出することができる。好適な方法としては、未変性ゲル電気泳動、立体排除(もしくは、ゲル濾過)クロマトグラフィー、蛍光偏光、光散乱、またはあらゆる他の好適な手段をあげることができる。
【0076】
いくつかの態様は、プロテアソームインヒビター物質を選択する方法を提供する。該プロテアソームインヒビター物質は、ユビスタチン様分子またはユビキチン結合分子を含む。ユビキチンと結合するプロテアソームインヒビター物質は、基質がタンパク質分解されることを阻害するかもしれないし、またはプロテアソーム活性を他のメカニズムを介して阻害するかもしれない。インヒビター物質は、固有の蛍光性を有していてもよいし有していなくてもよい。
【0077】
いくつかの態様はまた、AAA ATPアーゼ活性を調節するプロテアソームインヒビター物質を選択する方法を提供する。理論に束縛されることを望むわけではないが、AAA
ATPアーゼ活性は、Rpn11酵素活性と結合する。したがって、Rpn11酵素活性に特異的なインヒビター物質もまた、AAA ATPアーゼ活性を調節する。
【0078】
本願のさらなる局面は、プロテアソームの種々の成分、またはユビキチン媒介性のタンパク質分解プロセスの種々の段階を調節する物質を選択する方法を提供する。プロテアソームの種々の成分、またはユビキチン媒介性のタンパク質分解プロセスの種々の段階は、ユビキチン化したタンパク質のプロテアソームへの導入;タンパク質、例えば、Rpn11の脱ユビキチン化;タンパク質、例えば、AAA
ATPアーゼのアンフォールディング;コアペプチダーゼによる脱ユビキチン化したタンパク質の分解、を含むことができる。
【0079】
該方法は、少なくとも2つのペプチド基質、例えば、ユビキチン化したペプチドと第1の蛍光標識を含む第1のペプチド基質および、非ユビキチン化したペプチドと第2の蛍光標識を含むペプチド基質を含む。第1および第2の蛍光標識は、異なる波長で検出可能である。ユビキチン化したペプチドは、配列番号:1のアミノ酸配列とユビキチン部分を含む。非ユビキチン化ペプチドは、例えば、キモトリプシン様プロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、またはPGPH(もしくはカスパーゼ)様プロテアーゼなどのコアペプチダーゼのための基質として機能することが可能なあらゆるペプチドであることができる。該方法はまた、試験物質の存在下または不存在下で、第1の標識検出が可能な波長での蛍光性を測定すること、任意に試験物質の存在下または不存在下で、第2の標識検出が可能な波長での蛍光性を測定することを含む。試験物質の存在下での第1のペプチド基質の蛍光性が、試験物質の不存在下での蛍光性と比較して変化した場合、該試験物質は、19S調節粒子に関連する活性を調節する。試験物質の存在下での第2のペプチド基質の蛍光性が、試験物質の不存在下での蛍光性と比較して変化した場合、該試験物質は、20Sコアペプチダーゼを調節する。
【0080】
本願はさらに、本明細書に記載のいくつかのペプチド基質(例えば、蛍光標識を含むペプチド基質)を用いた高スループットアッセイを提供する。該アッセイは、本明細書に記載の方法に基づいて設計することができる。該高スループットアッセイは、プロテアソーム活性、よってユビキチン媒介性のタンパク質分解を調節する物質を選択し、同定するのに特に有用である。
【0081】
好ましい態様において、本願の高スループットアッセイは、試験物質が、好適な反応混合物中においてペプチド基質の大きさおよび/または分子量を変化させるかどうかを決定するスクリーニング方法を採用する。そのようなスクリーニング方法は、ペプチド基質の大きさおよび/または分子量の変化を測定するための蛍光偏光アッセイを採用してもよい。
【0082】
本願のスクリーニング方法に用いられる試験物質は、化合物もしくは分子のあらゆるライブラリーからのあらゆる物質とすることができる。ある態様において、当該試験物質は、メタロプロテイナーゼの活性を阻害する可能性のある化合物、例えば、亜鉛結合官能性を持つ化合物から選択される、またはそれに由来する。例えば、試験物質は、ヒドロオキサメート部分、またはヒドロオキサメート化合物ライブラリー、逆ヒドロオキサメート化合物ライブラリー、チオール化合物ライブラリー、カルボキシレート化合物ライブラリー、もしくはホスホン酸化合物ライブラリーのメンバーを有するあらゆる化合物であることができる。
【0083】
本明細書に提供されているプロテアソーム活性を調節する物質をスクリーニングまたは同定する方法において試験される物質は、あらゆる物理的タイプとすることができる。物質の例としては、限定されないが、生体分子を含む。該生体分子は、限定されないが、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメティック、ヌクレオチド、核酸(DNA、cDNA、RNA、アンチセンスRNAおよびあらゆる二本鎖もしくは一本鎖の形状の核酸およびその誘導体および、それらの構造的アナログを含む)、ポリヌクレオチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、炭水化物、脂質、リポタンパク質およびグリコプロテインがあげられる。そのような生体分子は、実質的に精製することができる。または、細胞抽出物もしくは上清などの混合物中に存在することができる。試験物質はさらに、単体もしくは複合体有機分子、金属含有化合物および無機イオン(例えば、Gd3+、鉛およびランタン)などの、合成もしくは天然の化学化合物を含む。任意に直接的もしくはランダムな化学的変更、例えば、アシル化、アクリル化、エステル化、アミド化などを施し、構造的アナログを生成することができる薬理学的化合物も含まれる。
【0084】
選択された物質の使用
本願の別の局面は、本願の方法によって選択された物質を採用する方法および組成物を提供する。例えば、いくつかの態様は、被験者において、ユビキチン媒介性のタンパク質分解、またはプロテアソーム活性と関連する状態を治療または予防するための方法であって、被験者にプロテアソーム活性、特に、Rpn11酵素活性を調節する物質を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0085】
用語「予防する」は、当該技術において認識されており、病状、例えば、局所的再発(例えば、疼痛)、癌などの疾患、心不全や他のあらゆる医学的状態などの症候群の合併症にとの関連において用いられるとき、当該技術分野において十分に理解されており、それは、被験者において、該組成物を投与されていない被験者と比べて、ある病状の徴候の発症の頻度を低下させる、もしくは発症を遅らせる組成物を提供することを含む。よって、癌の予防は、例えば、予防的治療を受けた患者の集団における、検出可能な癌性の成長の数を、未治療の対照群と比較して減少させること、および/または、検出可能な癌性の成長の出現を、未治療の対照群と比較して、治療群において、例えば、統計学的および/または臨床的に有意な量だけ遅らせることを含む。感染の予防は、例えば、未治療の対照群に対して、治療群において、感染と診断される数を減少させること、および/または未治療の対照群に対して、治療群において、感染の徴候の発症を遅らせることを含む。疼痛の予防は、例えば、未治療の対照群に対して、治療群において、被験者が感じる痛みの感覚の大きさを減少させること、あるいは遅らせることを含む。
【0086】
用語「治療する」は、予防的および/または治療的治療を含む。用語「予防的または治療的」治療は、当該技術分野において認識されており、1以上の当該組成物を患者に投与することを含む。望ましくない状態(例えば、ホスト動物における疾患もしくは他の望ましくない状態)の臨床的徴候が現れる前に投与されれば、該治療は予防的である(すなわち、それは、ホストにおいて望ましくない状態が進展することから保護する)。一方、望ましくない状態が現れてから投与されれば、該治療は治療的となる(すなわち、それは、存在する望ましくない状態もしくはその副作用を減少させる、寛解する、もしくは安定させる)。
【0087】
本願のこの局面によれば、ユビキチン分子の標的タンパク質からの脱抱合、除去または分離を調節するによって、プロテアソーム活性を阻害もしくは減少させることが可能なあらゆる物質は、分解によるタンパク質の調整もしくはタンパク質分解に関連する種々の状況を、予防的もしくは治療的に治療もしくは予防するために使用することができる。例えば、標的タンパク質、例えば、26Sプロテアソームのイソペプチダーゼ活性のインヒビターからのユビキチンの脱抱合を減少させることができる本願のスクリーニング方法によって同定されるあらゆる物質を、腫瘍成長、血管形成、感染、炎症、免疫関連性疾患、虚血および再潅流傷害、多発性硬化症、関節リウマチ、神経変性状態、および乾癬を治療的に治療するために使用することができる。異常なユビキチン媒介性のタンパク質分解またはプロテアソーム活性に関連する特定の状態または障害は、ユビキチン化したタンパク質の蓄積を特徴とする。
【0088】
多くの疾患および状態は、タンパク質分解またはプロテアソーム活性によるタンパク質の調節に関連している。そのような疾患および状態としては、再狭窄、炎症、関節リウマチ、炎症による組織傷害、過剰増殖性疾患、重篤な、または関節炎の乾癬、筋衰弱性の疾患、慢性の感染性疾患、異常免疫反応、脆弱なプラークに関連する状態、虚血性の状態に関連する傷害、ならびにウイルス性の感染および増殖が挙げられる。本願によって選択される物質は、慢性の炎症に関連する状態の治療、限定されないが、COPD,乾癬、気管支炎、肺気腫および嚢胞性線維症の治療に有用かもしれない。
【0089】
ここで同定された物質は、プロテアソームのタンパク質分解機能によって直接的に媒介される状態、例えば、筋肉の衰弱など、またはNF−κBなどのプロテアソームによって加工されるタンパク質を介して間接的に媒介される状態を治療するために用いることができる。プロテアソームは、タンパク質(例えば、酵素)の迅速な削除および細胞調節(例えば、細胞周期、遺伝子転写、および代謝経路)、細胞間伝達、および免疫反応(抗原提示)に関与するタンパク質(例えば、酵素)の翻訳後プロセシングを行う。下記に述べた具体的な例としては、β―アミロイドタンパク質および、サイクリン、TGF−βなどの調節タンパク質、および転写因子NF−κBがある。
【0090】
本願の別の態様は、神経変性疾患および状態の治療のために本明細書において同定された物質を使用することである。神経変性疾患および状態としては、限定されないが、脳卒中、神経系に対する虚血性障害、神経性の外傷(例えば、衝撃性の脳傷害、脊髄傷害、および神経系に対する外傷性傷害)、多発性硬化症および他の免疫媒介性のニューロパシー(例えば、ギラン-バレー症候群およびその変形、急性の運動性軸策ニューロパシー、急性の炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、およびフィッシャー症候群)、HIV/AIDS痴呆合併症、アクソノミー(axonomy)、糖尿病性ニューロパシー、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、細菌性、寄生虫性、真菌性およびウイルス性髄膜炎、脳炎、血管性痴呆、多発梗塞性痴呆、レーヴィ小体痴呆、ピック症などの前頭葉痴呆、皮質下痴呆(ハンチントン病もしくは進行性核上性麻痺)、限局的皮質萎縮症候群(初期失語症など)、代謝性中毒性痴呆(慢性甲状腺機能不全症もしくはB12欠乏症)、ならびに感染によって引き起こされる痴呆(例えば、梅毒もしくは慢性髄膜炎)が挙げられる。
【0091】
アルツハイマー病は、老人斑および脳血管におけるβ−アミロイドタンパク質(β−AP)の細胞外の堆積によって特徴付けられる。β−APは、アミロイドタンパク質前駆体(APP)に由来する39〜42のアミノ酸からなるペプチドフラグメントである。APPでは少なくとも3つのアイソフォームが知られている(695、751および770アミノ酸)。mRNAの交互スプライシングによってアイソフォームが作製され、正常のプロセシングによって、β−AP配列の一部に影響が及ぼされ、それによってβ−APの生成が阻止される。プロテアソームによる異常なタンパク質プロセシングがアルツハイマー脳における多量のβ−APに寄与していると考えられている。ラットのAPPプロセシング酵素は、約10の異なるサブユニット(22kDa〜32kDa)を含有している。25kDaのサブユニットは、N末端の配列X−Gln−Asn−Pro−Met−X−Thr−Gly−Thr−Serを有しており、それは、ヒトマクロペイン(macropain)のβサブユニットと同一である(Kojima, S. et al.,
Fed. Eur. Biochem. Soc., (1992)
304:57-60)。APPプロセシング酵素は、Gln15−−Lys16結合を分裂させ、カルシウムイオンの存在下で、該酵素はMet−1−−Asp1結合も分裂させ、Asp1−−Ala2結合は、β−APの細胞外ドメインを放出する。
【0092】
したがって、ある態様は、有効量の本明細書において開示されている物質(例えば、薬学的組成物)を被験者に投与することを含む、アルツハイマー病の治療に関する。そのような治療は、β−AP班の形成率を減少させ、β−APの生成率を減少させ、およびアルツハイマー病の臨床的徴候を減少させる。
【0093】
本願の他の態様は、カヘキシーおよび筋肉衰弱性の疾患に関する。該プロテアソームは、網状赤血球の成熟および線維芽細胞の成長において、多くのタンパク質の質を低下させる。インスリンまたは血清に由来する細胞においては、タンパク質分解率はほぼ2倍となる。プロテアソームの阻害によって、タンパク質分解を減少させ、それによって筋肉のタンパク質の損失、および腎臓や肝臓に対する窒素性の負荷を減少させる。本願の阻害物質は、癌、慢性の感染性の疾患、発熱、筋萎縮症、神経切断、神経損傷、絶食、アシドーシス、糖尿病に関連する腎不全、肝不全などの疾患の治療に有用である。例えば、米国特許第5,340,736号を参照されたい。したがって、本願の態様は、細胞内の筋肉タンパク質分解率を減少させるための方法、細胞内タンパク質の分解率を減少させるための方法、細胞内のp53タンパク質の分解率を減少させるための方法、および、p53関連性の癌の成長を阻止させる方法を含む。これらの方法のそれぞれは、細胞(インビボもしくはインビトロ、例えば、被験者の筋肉)に、本明細書に開示されている物質または組成物(例えば、薬学的組成物)の有効量を接触させることを含む。
【0094】
線維症は、線維芽細胞の過剰増殖の結果である瘢痕組織の過剰かつ持続的な形成であり、TGF−βシグナリング経路の活性化に関連するものである。線維症は、細胞外マトリックスの過剰な蓄積に関与し、ほぼあらゆる組織内またはいくつかの異なる組織にわたって起こりうる。通常、TGF−β刺激に応じて標的遺伝子の転写を活性化する細胞内シグナリングタンパク質(Smad)は、プロテアソーム活性によって調節される。しかしながら、癌および他の過剰増殖性の状態においては、TGF−βシグナリング成分の分解の加速が観察されている。したがって、本願のいくつかの態様は、糖尿病性網膜症、筋低下、糖尿病性ネフロパシー、糸球体硬化症、IgAネフロパシー、肝硬変、胆管閉鎖症、うっ血性心不全、強皮症、放射線誘発線維症、および肺線維症(特発性肺線維症、膠原血管病、サルコイドーシス、間質性肺疾患および外因性肺疾患)などの過剰増殖性の状態の治療方法に関する。火傷の治療は、しばしば線維症によって妨害されることがある。よって、本願のさらに別の態様は、火傷の治療のための該インヒビターの局所投与または全身投与に関する。術後の創傷の閉塞は、しばしば傷跡の形を悪くすることがあるが、それは線維症を阻害することによって阻止できることがある。したがって、いくつかの態様において、本願は、傷跡を防ぐ、もしくは減少させるための方法に関する。
【0095】
プロテアソームによってプロセシングされる別のタンパク質は、Relタンパク質ファミリーのメンバーであるNF−κBである。転写活性化タンパク質のRelファミリーは、2つのグループに分けることができる。第1のグループは、タンパク質分解プロセシングを必要とするものであり、p50(NF−κB1、105kDa)およびp52(NF−κ2、100kDa)を含む。第2のグループは、タンパク質分解プロセシングを必要とせず、p65(RelA、Rel(c−Rel)およびRelB)を含む。ホモダイマーもヘテロダイマーもRelファミリーメンバーによって作製することができる。NF−κBは、例えば、p50−p65ヘテロダイマーである。IκBおよびp105のリン酸化およびユビキチン化後、2つのタンパク質をそれぞれ、劣化させ、プロセシングして、細胞質から核へ転写する活性NF−κBを作製した。ユビキチン化したp105は、精製プロテアソームによってもプロセシングされる(Palombella et al., Cell (1994) 78:773-785)。活性NF−κBは、別の転写活性剤、例えば、HMG I(Y)との立体特異的エンハンサー複合体を作製し、特定の遺伝子の選択的発現を誘発する。
【0096】
NF−κBは、免疫反応および炎症性反応に関与する遺伝子、ならびに有糸分裂を調節する。例えば、NF−κBは、イムノグロブリン軽鎖κ遺伝子、IL−2レセプターα鎖遺伝子、クラスIの主用組織適合性複合体遺伝子、および、例えば、IL−2、IL−6をコードするいくつかのサイトカイン遺伝子、顆粒球コロニー刺激因子、およびIFN−βを発現させるために必要である(Palombella et al., Cell (1994) 78:773-785)。本願のいくつかの態様は、IL−2、MHC−I、IL−6、TNFα、IFN−・または既述の他のあらゆるタンパク質の発現のレベルに影響を及ぼす方法を含み、各方法は、被験者に本明細書において同定した物質の有効量を投与することを含む。p50を含む複合体は、急性の炎症性反応および免疫反応の急速な仲介物質である(Thanos, D. and Maniatis, T., Cell (1995) 80:529-532)。
【0097】
NF−κBはまた、E−選択、P−選択、ICAMおよびVCAM−1をコードする細胞接着遺伝子の発現に関与する(Collins, T., Lab. Invest. (1993) 68:499-508)細胞接着遺伝子の発現に関与する。本願のある態様は、細胞接着(例えば、E−選択、ICAMまたはVCAM−1によって媒介される細胞接着を阻害する方法であり、この方法は、ある細胞を本明細書において同定された物質の有効量に接触させる(または、被験者に投与する)ことを含む。
【0098】
虚血や再潅流傷害の結果、低酸素症、すなわち、体の組織に到達する酸素の欠乏の状態が起こる。この状態は、Iκ−Bαの分解を増やし、それによって、NF−κBの活性がもたらされる。低酸素症をもたらす傷害の重篤度は、プロテアソームインヒビターの投与によって減少させることができる。したがって、本願のいくつかの態様は、虚血性状態または再潅流傷害を治療する方法に関し、その方法は、そのような治療を必要とする患者に、本明細書において同定された物質の有効量を投与することを含む。そのような状態もしくは傷害の例としては、限定されないが、急性の冠状動脈のシンドローム(脆弱性のプラーク)、動脈閉塞性疾患(心臓、血管、末梢動脈および血管の閉塞)、アテローム性動脈硬化症(冠状動脈硬化症、冠状動脈疾患)、梗塞、心不全、膵臓炎、心筋肥大、狹窄症および再狭窄が挙げられる。
【0099】
NF−κBはまた、HIV−エンハンサー/プロモーターに特異的に結合する。mac239のNefと、pbj14のHIV調節タンパク質Nefとは、タンパク質キナーゼ結合を調節する領域内の2つのアミノ酸が異なる。タンパク質キナーゼは、IκBのリン酸化をシグナルし、ユビキチン−プロテアソーム経路を介したIκB分解を誘発する。分解後、NF−κBは核に放出され、それによってHIVの転写を増強する(Cohen, J., Science, (1995) 267:960)。本願の2つの態様は、被験者におけるHIV感染を阻害もしくは減少させるための方法、およびウイルス性の遺伝子発現のレベルを減少させる方法である。各方法は、患者に本明細書において同定された物質の有効量を投与することを含む。
【0100】
TNFαなどのリポポリサッカライド(LPS)誘発性サイトカインの過剰産生が、敗血症性ショックに関連するプロセスの中心であると考えられている。さらに、LPSによる細胞の活性化の第1のステップは、LPSの特異的な膜受容体への結合であると考えられている。20Sプロテアソーム複合体のαおよびβサブユニットは、LPS結合タンパク質であることが確認されており、LPS誘発性のシグナル伝達は、敗血症の治療または予防における重要な治療標的かもしれないことが示唆されている(Qureshi, N. et al., J. Immun. (2003) 171: 1515-1525)。したがって、いくつかの態様において、本明細書において同定された物質をTNFα阻害のために用いて敗血症性ショックを阻害および/または治療することができる。
【0101】
細胞内タンパク質分解は、小ペプチドを生成し、T−リンパ球を提示してMHCクラスI媒介性の免疫反応を誘発させる。免疫系は、ウイルス感染している、または、トランスフォーメーションされて発癌性になっている自己細胞をスクリーニングする。ある態様は、細胞での抗原提示を阻止するための方法であり、該細胞を本明細書に記載の物質に曝露することを含む方法である。本願の物質は、アレルギー、喘息、臓器/組織拒絶(移植片対宿主病)、および自己免疫性の疾患といった免疫関連性の状態を治療するために用いることができる。これらの状態としては、限定されないが、狼瘡、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症および炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病)が挙げられる。したがって、さらなる態様は、患者の免疫系を抑制する(例えば、移植による拒絶、アレルギー、自己免疫疾患、および喘息を阻害する)ための方法であり、その方法は、患者に、本明細書において同定された物質の有効量を投与することを含む。
【0102】
さらに別の態様は、プロテアソーム、または多触媒性を持つ他のNtnによって産生される抗原性ペプチドのレパートリーを変えるための方法である。例えば、もし20SプロテアソームのPGPH活性が選択的に阻害されれば、酵素による阻害なしに、または、例えば、プロテアソームのキモトリプシン様活性の選択的阻害を伴って、提示されるであろうように、異なる一連の抗原性ペプチドがプロテアソームによって産生され、細胞上のMHC分子中に提示されるであろう。
【0103】
いくつかのプロテアソームインヒビターは、ユビキチン化したNF−κBの分解およびプロセシングをインビトロおよびインビボでブロックする。プロテアソームインヒビターはまた、IκB−α分解およびNF−κB活性をブロックする(Palombella, et al. Cell (1994) 78:773-785; and Traenckner, et al., EMBO J. (1994) 13:5433-5441)。本願のある態様は、IκB−α分解を阻害する方法であって、該細胞を本明細書において同定された物質に接触させることを含む方法に関する。さらに別の態様は、細胞、筋肉、臓器、もしくは患者におけるNF−κBの細胞含有率を減少させる方法であり、細胞、筋肉、臓器、もしくは患者を本明細書において同定された物質に接触させる方法である。
【0104】
タンパク質分解を必要とする他の真核性の転写因子は、一般的な転写因子TFIIA、単純疱疹ウイルスVP16付属タンパク質(宿主細胞因子)、ウイルス誘発性IFN調節因子2タンパク質、および膜結合ステロール調節因子結合タンパク質1を含む。
【0105】
本願の他の態様は、サイクリン依存性真生物細胞周期に影響を及ぼすための方法であり、それは、細胞(インビトロ、またはインビボ)で本明細書において同定された物質に接触させることを含む方法である。サイクリンは、細胞周期調節に関与するタンパク質である。プロテアソームは、サイクリンの分解に関与する。サイクリンの例としては、有糸分裂サイクリン、G1サイクリンおよサイクリンBが挙げられる。サイクリンの分解によって、細胞が1つのサイクル周期のステージ(例えば、有糸分裂)を終えて、別の周期(例えば、分裂)に入る。全てのサイクリンは、p34cdc2タンパク質キナーゼもしくは関連するキナーゼと結合していると考えられている。シグナルを標的とするタンパク質分解は、アミノ酸42−RAALGNISEN−50(破壊ボックス)に位置づけられている。サイクリンが変換されてユビキチンリガーゼの影響を受けやすい形状に変換されること、またはサイクリン特異性リガーゼが有糸分裂中に活性化されることの証拠がある(Ciechanover, A., Cell, (1994) 79:13-21)。プロテアソームを阻害することによって、サイクリン分解が阻害され、したがって、例えば、サイクリン関連性の癌において、細胞増殖が阻害される(Kumatori et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990)87:7071-7075)。本願のある態様は、被験者における増殖性の疾患(例えば、癌、乾癬または再狭窄)を治療する方法であって、本明細書において同定された物質の有効量を被験者に投与することを含む方法である。本願はまた、被験者におけるサイクリン関連性の炎症を治療する方法であって、被験者に本明細書において同定された物質の治療的有効量を投与することを含む方法である。
【0106】
さらなる態様は、腫瘍性タンパク質のプロテアソーム依存性の調節に影響を及ぼす方法、および癌の成長を治療もしくは阻害する方法である。各方法は、細胞(インビボ、例えば、患者に対して、もしくはインビトロ)を本明細書において同定された物質に接触させることを含む。HPV−16およびHPV−18に由来するE6タンパク質は、粗網状赤血球ライセート内のp53のATPおよびユビキチン依存性の結合および分解を刺激する。劣性の癌遺伝子p53は、突然変異した熱不安定E1をもつ細胞株内で、非許容温度で蓄積されることがわかっている。p53のレベルが上昇するとアポトーシスが引き起こされるかもしれない。ユビキチン系によって劣化されるプロト腫瘍性タンパク質の例としては、c−Mos、c−Fosおよびc−Junが挙げられる。ある態様は、p53関連性のアポトーシスを治療するための方法であり、患者に本明細書において同定された物質の有効量を投与することを含む方法である。
【0107】
別の態様において、本願の薬物は、寄生動物による感染、例えば、原生寄生動物による感染の治療に有用である。これらの寄生動物のプロテアソームは、主に細胞分化および複製活動に関与すると考えられている(Paugam et al., Trends Parasitol. 2003, 19(2): 55-59)。さらに、体内寄生性アメーバ種は、プロテアソームインヒビターに接触すると被嚢容量を失うことがわかっている(Gonzales, et al., Arch. Med. Res. 1997, 28, Spec No: 139-140)。いくつかのそのような態様において、該物質は、プラスモジウム属(マラリアの病原体である熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫を含む)、トリパノゾーマ属(シャーガス病の病原体であるクルーズトリパノソーマ、およびアフリカ睡眠病の病原体であるトリパノソーマ・ブルーセイ)、リーシュマニア属(アマゾンリーシュマニア、ドノバンリーシュマニア、小児リーシュマニア、メキシコリーシュマニアなど)、ニューモシスチス・カリニ(AID患者や他の免疫抑制された患者において肺炎を引き起こすことが知られている原生動物)、トキソプラズマ原虫、赤痢アメーバ、エントアメーバ・インバデンス、およびランブル鞭毛虫から選択される原生寄生動物によって感染した、ヒトにおける寄生動物による感染の治療に有用である。いくつかの態様において、該物質は、動物および家畜における、プラスモジウムヘルマーニ(hermani)、クリプトスポリジウム種、単包包虫、アイメリアテネラ、ザルコシィスティスニューローナ、およびアカパンカビから選択される原生寄生動物による感染の治療に有用である。寄生動物による疾患の治療におけるプロテアソームインヒビターとして有用な他の化合物は、PCT国際公開公報98/10779号に記載されている。その内容を本明細書において引用によって援用する。
【0108】
いくつかの態様において、インヒビター物質は、寄生動物において、プロテアソーム活性を不可逆的に阻害する。そのような不可逆的阻害は、酵素活性の停止をきたし、赤血球や白血球において回収されないことがわかっている。そのようないくつかの態様において、血液細胞の長い半減期が、寄生動物への再接触に対する治療に関して長い保護を提供するかもしれない。いくつかの態様において、血液細胞の長い半減期が、将来の感染に対して予防的化学療法に関して長い保護を提供するかもしれない。
【0109】
20Sプロテアソームに結合するインヒビターが骨機関培養において骨形成を刺激することも証明されている。さらにそのようなインヒビターをマウスに全身投与した場合、特定のプロテアソームインヒビターが骨容積および骨形成率を70%以上増加させ(Garrett, I. R. et al., J. Clin. Invest.(2003) 111: 1771-1782)、それによって、該ユビキチン−プロテアソーム機構は、骨芽細胞分化および骨形成を調節することを示唆するものである。したがって、本明細書において同定されたインヒビター物質は、骨損失に関連する疾患、例えば、骨粗鬆症に治療および/または予防に有用かもしれない。
【0110】
骨組織は、骨細胞を刺激する能力をもつファクターの優れたソースである。したがって、ウシ骨組織の抽出物は、骨の構造的統合性を維持する役割を担う構造タンパク質のみならず、骨細胞が増殖するように刺激し得る生物学的に活性のある骨成長因子も含有している。これらのうち後者は、近年、形態形成性タンパク質(BMP)のファミリーとして記載されいている。これらの成長因子の全ては、他のタイプの細胞ならびに骨細胞に影響を及ぼしている。Hardy, M. H., et al., Trans Genet (1992) 8:55-61 は、骨形態形成性タンパク質(BMP)は、発育中、毛嚢において異なるように発現することの証拠を記載している。Harris, S. E., et al., J Bone Miner Res (1994) 9:855-863はTGFβがBMP−2および骨細胞中の他の物質の発現に及ぼす影響を記載している。成熟毛嚢でのBMP−2の発現も、登熟過程および細胞増殖後に起こる(Hardy, et al.,上掲)。したがって、本願の物質は、毛嚢の成長刺激に有用かもしれない。
【0111】
本明細書において同定された物質は、プロテアソームを含むNtnヒドロラーゼによってプロセシングされるタンパク質のスクリーニングのための診断物質(例えば、診断キットにおいて、もしくは臨床実験室での使用において)としても有用といえる。該物質は、X/MB1サブユニットまたはα鎖を特異的に結合させるため、およびそれに伴うタンパク質分解活動を阻害するための実験試薬としても有用といえる。例えば、プロテアソームの他のサブユニットの活性(および特異的インヒビター)を検出することもできる。
【0112】
大半のタンパク質は、成熟過程または活性化の過程でタンパク質分解プロセシングされる。本明細書において同定されたインヒビターは、細胞の発育途上か、生理学的プロセスかを決定するために使用することができ、そのアウトプットは、タンパク質分解活動によって調節される。そのような方法の1つは、生物を取得し、未処理細胞を調製し、または細胞抽出すること;生物、細胞調製物、細胞抽出物を、本明細書において同定された物質へ曝露すること;該物質に曝露された生物、細胞調製物、細胞抽出物をシグナルへ曝露し、プロセスと結果をモニターすることを含む。
【0113】
治療に有効な本願の物質は、単独で、または、好適な薬学的単体と組み合わせて、または他の治療薬と組み合わせて投与することができる。該物質の投与すべき有効量は、ケースバイケースで決定することができる。検討される因子には、通常、年齢、体重、病期、他の疾患の状態、治療期間、および初期治療に対する反応がある。典型的に、該物質は、流体もしくは懸濁液として注射可能に調製される。しかしながら、注入前に流体賦形剤に入れて溶液化もしくは懸濁液化するのに好適な固体の形状で調製することもできる。該物質はまた、当該技術分野において公知の方法にしたがって、腸溶錠もしくはゲルカプセルに製剤することもできる。本願の物質は、医学的に許容可能なあらゆる方法で、物質の本質および/または疾患の状態もしくは治療される傷害に依存して投与することができる。可能な投与経路としては、注射、血管内、静脈内、硬膜内その他の非経口投与、ならびに経口、経鼻、点眼、直腸内、局所もしくは肺投与、例えば、吸入、エアロゾール投与、噴霧などがある。徐放性投与も、蓄積注射や徐々に崩壊されるインプラントなどの手段によって、該投与に具体的に含まれる。本願の方法を用いて同定された化合物を放出する薬物をコーティングした医学的デバイスを用いた治療が施される疾患および状態の例としては、アテローム性動脈硬化症、急性の冠状動脈のシンドローム、アルツハイマー病、癌、発熱、筋萎縮症、脱神経、血管閉塞、脳卒中、HIV感染、神経傷害、アシドーシスに関連する腎不全、および肝不全がある。例えば、米国特許第5,340,736号を参照されたい。
【実施例】
【0114】
実施例1:試薬
1)緩衝液A(50mM
Tris、pH7.4、0.01%NP−40、1mM DTT;7.5μM MgCl2;7.5μM ATP);
2)オレゴングリーン(Oregon
Green)488ヨードアセトアミドと共有結合させ、開始物質から精製したUb4−pep−C14(29)を用いて調製したUb4−pep−C14(29)−オレゴングリーン;
3)Boston Biochemから購入したLLVY−AMC;
4)BioMolから購入した、ヒトから精製した26Sプロテアソーム;
5)Molecular Devicesから購入した384ウェルポリスチレン;
6)ユビスタチンA(化合物92もしくはC92);
7)Boston Biochemから購入した、ウサギから精製したイソペプチダーゼ。
【0115】
実施例2:方法
5μlの化合物[緩衝液A+1%DMSOに入った30μMの化合物]、5μlの基質[緩衝液Aに入った30nMのUb4−pep−C14(29)−オレゴングリーンおよび15μMのLLVY−AMC]、ならびに5μlの酵素[1.5nMの26Sプロテアソーム]を384ウェルプレート中で混合し、28℃で75分間混合した。5μlの4μM
20Sインヒビター(PR−171)および4mMのEDTAを添加して反応を止めた。AMCを遊離させるための、20S基質LLVY−AMCのプロセシングを、AMC蛍光性[励起:340nm、発光:465nm]測定することによって測定した。pep−C14(29)−オレゴングリーンを遊離させるための、19S基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンのプロセシングを、オレゴングリーンの蛍光偏光[励起:485nm、発光:535nm]測定することによって測定した。
【0116】
実施例3:異なるカテゴリーのモジュレーターまたは試験物質
20Sプロテアソーム活性のモジュレーターは、LLVY−AMC(第2の非ユビキチン化基質)からのAMCの遊離に影響を及ぼし、20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性に影響を及ぼす。
【0117】
19Sプロテアソーム活性のモジュレーターは、pep−C14(29)−オレゴングリーンのUb4−pep−C14(29)−オレゴングリーン(第1のユビキチン化基質)からの遊離に影響を及ぼす。これらのモジュレーターは、次の3つの方法で機能することができる。
【0118】
1)ユビキチンと結合し、それによって基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンが19Sプロテアソームによってプロセシングされるのを防ぐ;
2)19SプロテアソームのAAA ATPアーゼ活性を阻害する;
3)19SプロテアソームのRpn11イソペプチダーゼ活性を阻害する。
【0119】
実施例4:試験物質とユビキチンとの結合は、下記のうち1つまたはいくつかのアッセイによって確認することができる。
【0120】
1)試験物質の、緩衝液A中の酵素26Sプロテアソームによる基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンのプロセシングに対する作用に関するIC50は、試験物質の、無関係の脱ユビキチン化酵素(例えば、イソペプチダーゼT)による基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンのプロセシングに対する作用に関するIC50と等しい。試験物質は、基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンに作用しており、その脱ユビキチン化酵素によるプロセシングを阻害している。
【0121】
2)試験物質は、Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンを多量体化すべく作用し、それによってpep−C14(29)−オレゴングリーンの遊離を阻害している。多量体化は、例えば、ゲル濾過、光散乱、未変性ゲル電気泳動、蛍光偏光などのいくつかの方法によって検出することができる。
【0122】
3)試験物質の固有の蛍光性は、試験物質が固有の蛍光性を有している場合、Ub4−pep−C14(29)と結合することによって増加または減少する。
【0123】
2.5μMのユビスタチンA(C92)を2.5μMのUb4−pep−C14(29)とともにインキュベートした場合、ユビスタチンA(C92)の固有の蛍光性[励起:350nm、発光:450nm]は、数倍に増加する。ユビキチンと結合した試験物質は、ユビスタチンA(C92)とUb4−pep−C14(29)との結合に影響を及ぼす。これは、ユビスタチンA(C92)固有の蛍光性[励起:350nm、発光:450nm]をUb4−pep−C14(29)を用いて試験物質の存在下もしくは不存在下で測定することによって、測定することができる。ユビスタチンAと、ユビキチンと結合するための試験物質の間の競合アッセイである。
【0124】
実施例5:試験物質による19SプロテアソームのAAA ATPアーゼの阻害は、下記アッセイの1つまたは双方によって確認することができる。
【0125】
1)緩衝液Aに入った酵素26Sプロテアソームによる基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンのプロセシングに対する試験物質の作用に関するIC50は、緩衝液Aに入った酵素26Sプロテアソーム(750mMのATPおよび750mMのMgClを含む)による基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンのプロセシングに対する試験物質の作用に関するIC50と比較して低い。そのような試験物質の活性は、ATPと競合するであろう。それによって、AAA
ATPアーゼ中でのATP部位を占有するであろう。
【0126】
2)試験物質は、26Sプロテアソームによる、ATPからのリン酸塩の遊離に影響を及ぼす。リン酸塩濃度は、例えば、マラカイトグリーン結合試験などの標準的な方法によって測定することができる。
【0127】
実施例6:試験物質による19SプロテアソームのRpn11活性の阻害
このアッセイは、試験物質がpep−C14(29)−オレゴングリーンのUb4−pep−C14(29)−オレゴングリーンからの遊離に影響を及ぼすが、上記実施例4および5で同定されたインヒビター物質のカテゴリーに入らないという事実に基づいて設計することができる。
【0128】
実施例7:インヒビターであると同定された化合物
実施例2に記載の方法を用いて、下記の化合物を26Sプロテアソーム活性のインヒビターとして同定した。
【0129】
【化1】

【化2】


【化3】


【化4】

【0130】
どの基質に影響を及ぼすかに基づいて、実施例3に記載のように、分子をさらに分類することができる。化合物1、2および3は、20Sプロテアソームのキモトリプシン様活動に影響を及ぼす。化合物4は、基質Ub4−pep−C14(29)−オレゴングリーンが19Sプロテアソームによってプロセシングされるのを阻止する。
【0131】
これらの化合物は、本明細書に開示したあらゆる適用において有用かも知れないことを認識すべきである。
【0132】
引例
本明細書に記載した全ての刊行物および特許を、別個の刊行物または特許が具体的かつ個別に引用によって援用されるように、その全体を引用によってここに援用する。
【0133】
均等物
当業者であれば、ルーチンの実験以上のことをすることなく、ここに解説した本発明の具体的な実施の形態の均等物を数多く、認識し、または確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところと、意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と少なくとも70%の同一性を示すアミノ酸配列と、配列番号2の最初の76アミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を示す少なくとも1つのユビキチン部分とを含むペプチドであって、プロテアーゼの基質であるペプチド。
【請求項2】
前記プロテアーゼは、メタロプロテアーゼである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記プロテアーゼは、非メタロプロテアーゼである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記プロテアーゼは、Rpn11である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドのC末端に少なくとも3つの追加的アミノ酸をさらに含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
前記アミノ酸配列は、配列番号:1のアミノ酸配列を有し、少なくとも1つの非Aアミノ酸がAで置換されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記アミノ酸配列は、配列番号:4のアミノ酸配列を有し、少なくとも1つの非Aアミノ酸がAで置換されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドのN末端に1以上のユビキチン部分をさらに含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
前記ユビキチン部分は、配列番号2の最初の76アミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を示すアミノ酸配列の2以上の繰り返し部分からなる、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ユビキチン部分は、75番目のアミノ酸がAとなるように修飾されている配列番号2の最初の76アミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項11】
前記ユビキチン部分は、76番目のアミノ酸がAとなるように修飾されている配列番号2の最初の76アミノ酸配列を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドに結合している検出可能な作用物質をさらに含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項13】
前記検出可能な作用物質は、蛍光標識である、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記蛍光標識は、ペプチドのC末端にペプチド結合によって結合している蛍光性ペプチドである、請求項13に記載のペプチド。
【請求項15】
前記検出可能な作用物質は、放射性標識である、請求項12に記載のペプチド。
【請求項16】
選択物質に特異的に結合する、N末端の標的部分またはC末端の標的部分をさらに含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項17】
前記選択物質は、抗体である、請求項16に記載のペプチド。
【請求項18】
前記選択物質は、2価の金属イオンである、請求項16に記載のペプチド。
【請求項19】
プロテアソーム活性を調節する物質を選択する方法であって、
a.配列番号:1のアミノ酸配列を含むペプチドと、該配列のN末端に結合している1以上のユビキチン部分とを含むペプチドを提供すること、
b.ユビキチン部分を分裂させるための条件下で、Rpn11の活性を測定するために好適な反応混合物中で前記ペプチドと試験物質とを結合することを含み、前記Rpn11は、配列番号:16の配列に少なくとも80%の同一性を示すアミノ酸配列、および配列番号:17の配列に少なくとも80%の同一性を示すJAMMモチーフとを含み、試験物質の不存在下でのユビキチン部分のペプチドからの分裂の速度もしくは程度の変化と比較して、前記試験物質の存在下でのユビキチン部分のペプチドからの分裂の速度もしくは程度の変化している場合、前記試験物質がプロテアソーム活性を調節することを示す、方法。
【請求項20】
前記Rpn11は、19S調節粒子または26Sプロテアソーム中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プロテアソームインヒビター物質を選択する方法であって、
a.配列番号:1のアミノ酸配列を含むペプチドと、ユビスタチンとの混合物中の配列のN末端と結合している1以上のユビキチン部分とを含むペプチドを提供すること、
b.混合物中の試験インヒビター物質の存在下におけるユビスタチンの固有の蛍光性と、混合物中の試験インヒビター物質の不存在下におけるユビスタチンの固有の蛍光性とを比較することを含み、
前記試験インヒビター物質の存在下におけるユビスタチンの固有の蛍光性と、前記試験インヒビター物質の不存在下におけるユビスタチンの固有の蛍光性との相違から、前記試験インヒビターがプロテアソームインヒビターであることが示される、方法。
【請求項22】
プロテアソームインヒビター物質を選択する方法であって、
a.配列番号:1のアミノ酸配列を含むペプチドと、当該配列のN末端と結合している1以上のユビキチン部分とを含むペプチドを提供すること、
b.a.のペプチドと、混合物中の固有の蛍光性を有する試験インヒビター物質とを結合すること、および
c.混合物中の前記試験インヒビター物質の固有の蛍光性から蛍光性を測定することを含み、
前記混合物中の前記試験インヒビター物質の測定された蛍光性が、前記固有の蛍光性から変化している場合、前記試験インヒビターがプロテアソームインヒビターであることを示す、方法。
【請求項23】
プロテアソーム活性を調節する物質を選択するための方法であって、
a.配列番号:1のアミノ酸配列と、反応混合物中の前記配列のN末端と結合した1以上のユビキチン部分とを含むペプチド基質を提供すること、および
b.試験物質がペプチド基質の大きさおよび/または分子量に変化をもたらすかどうかを判定することを含み、
ペプチド基質の大きさおよび/または分子量に変化をもたらす試験物質がプロテアソーム活性を調節する、方法。
【請求項24】
前記ペプチド基質はさらに、蛍光標識を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチド基質の大きさおよび/または分子量の変化は、蛍光偏光によって判定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ぺプチド基質の大きさおよび/または分子量の変化は、未変性ゲル電気泳動、ゲル濾過クロマトグラフィー、または光散乱によって判定される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
プロテアソームの種々の成分の活性を調節する物質を選択する方法であって、該方法は、
a.ユビキチン化したペプチドおよび第1の蛍光標識を含む第1のペプチド基質、ならびにユビキチン化したペプチドおよび第2の蛍光標識を含む第2のペプチド基質を提供し、前記第1および第2の蛍光標識は、異なる波長で検出可能であり、
b.26Sプロテアソームの存在下、試験物質の存在下および不存在下での第1の標識検出可能波長において蛍光性を測定すること、ならびに
c.26Sプロテアソームの存在下で、試験物質の存在下および不存在下での第2の標識検出可能波長において蛍光性を測定することを含み、
前記試験物質の不存在下での蛍光性と比較して、前記試験物質の存在下での第1のペプチド基質の蛍光性が変化している場合に、前記試験物質が19Sに調節粒子に関連する活性を調節することが示され、試験物質の不存在下での蛍光性と比較したとき、前記試験物質の存在下における第2のペプチド基質の蛍光性が変化している場合、試験物質が20Sコアペプチダーゼを調節することが示される、方法。
【請求項28】
26Sプロテアソーム、第1のペプチド基質、および第2のペプチド基質は、単一の反応混合物中で結合している、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のペプチド基質は、配列番号:1に少なくとも70%の同一性を示すアミノ酸配列と、配列番号:2の最初の76アミノ酸配列に少なくとも90%の同一性を示す少なくとも1つのユビキチン部分とを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
被験者において、プロテアソーム活性と関連する状態を治療または予防するための方法であって、前記被験者に請求項19に記載の方法によって選択される作用物質を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項31】
被験者において、プロテアソーム活性と関連する状態を治療または予防するための方法であって、前記被験者に請求項21に記載の方法によって選択されるプロテアーゼインヒビターを含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項32】
被験者において、プロテアソーム活性と関連する状態を治療または予防するための方法であって、前記被験者に、請求項22に記載の方法によって選択されるプロテアーゼインヒビターを含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項33】
被験者において、プロテアソーム活性と関連する状態を治療または予防するための方法であって、前記被験者に請求項23に記載の方法によって選択される物質を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項34】
被験者において、プロテアソーム活性と関連する状態を治療または予防するための方法であって、前記被験者に請求項27に記載の方法によって選択される作用物質を含む組成物を投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−167092(P2012−167092A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52102(P2012−52102)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【分割の表示】特願2008−513841(P2008−513841)の分割
【原出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(506343520)プロテオリックス, インコーポレイテッド (13)
【住所又は居所原語表記】249E.Grand Avenue,South San Francisco,California 94080 (US)
【Fターム(参考)】