S−ニトロソグルタチオンレダクターゼのクロモン阻害剤
本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)の阻害剤、そのようなGSNOR阻害剤を含んでなる医薬組成物、及びそれらを作製して使用する方法へ向けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼの新規クロモン阻害剤、かかる阻害剤を含んでなる医薬組成物、それらを作製して使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 一酸化窒素という化合物は、化学式がNOの気体である。NOは、生体系において知られている数少ない気体シグナル伝達分子の1つであり、様々な生体事象を制御するのに重要な役割を担っている。例えば、内皮は、NOを使用して、細動脈壁の周囲にある平滑筋へ弛緩するシグナルを伝達して、血管拡張と低酸素組織への血流増加をもたらす。NOは、平滑筋増殖、血小板機能、神経伝達を調節することにも関与して、宿主防御においてある役割を担っている。一酸化窒素はきわめて反応性で、数秒の存続時間を有するが、膜を通って自由に拡散することも、多くの分子標的へ結合することもできる。これらの特性により、NOは、隣接細胞間と細胞内部の生体事象を制御することが可能な理想のシグナル伝達分子となっている。
【0003】
[0003] NOは、フリーラジカルの気体であり、それにより反応性で不安定となるので、NOは、in vivo で短命で、生理学的条件下では3〜5秒の半減期を有する。酸素の存在時に、NOは、チオールと結合して、S−ニトロソチオール(SNO)と呼ばれる安定なNO付加物の生物学的に重要な群を産生することができる。この安定したNOのプールは、生理活性NOの供給源として作用すると仮定されて、細胞のホメオスタシスにおけるNOの中心性があるとすれば、それ自体として、健康や病気において決定的に重要であるらしい(Stamler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7674-7677 (1992))。タンパク質−SNOは、心臓血管、呼吸、代謝、胃腸、免疫、及び中枢神経系の機能において広汎な役割を担う(Foster et al., 2003, Trends in Molecular Medicine 第9巻、第4号、2003年4月、160-168 頁)。生体系において最も研究されているSNOの1つは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)であり(Gaston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10957-10961 (1993))、効率的なトランスニトロソ化剤であって、細胞内の他のS−ニトロソ化タンパク質と平衡状態を維持しているらしい(Liu et al., 2001)ので、NOシグナル伝達において新興の主要な調節因子である。NO−SNO連続性におけるこのきわめて重要な位置があるとすれば、GSNOは、NO調節が薬理学的に正当化されるときに考慮すべき療法上有望な標的を提供する。
【0004】
[0004] NOホメオスタシスと細胞SNOレベルの主要な調節因子としてのGSNOのこの理解の観点から、一酸化窒素シンターゼ(NOS)酵素によるNOラジカルの産生より下流で生じる、GSNO及びSNOタンパク質の内因性の産生を検証することに諸研究が集中してきた。より最近になって、利用可能なGSNOの濃度と、必然的に利用可能なNOとSNOを制御するのに重要な役割を有する、GSNOの酵素的異化についての理解が増してきた。
【0005】
[0005] このGSNO異化反応の理解にとって重要なことに、研究者は、最近、高度に保存されたS−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)を同定した(Jensen et al., Biochem J., 331: 659-668 (1998); Liu et al., Nature, 410: 490-494 (2001))。GSNORは、グルタチオン依存型ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(GS−FDH)、アルコールデヒドロゲナーゼ3(ADHクラス3)(Uotila and Koivusalo,「補酵素と補因子(Coenzymes and Cofactors)」D. Dolphin 監修、517-551 頁(ニューヨーク、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、1989))、及びアルコールデヒドロゲナーゼ5(ADH5)としても知られている。重要にも、GSNORは、他の基質よりもGSNOに対してより大きな活性を示し(Jensen et al., 1998; Liu et al., 2001)、細菌、植物、及び動物において重要なタンパク質及びペプチド脱ニトロソ化活性に媒介するようである。GSNORは、真核生物において主要なGSNO代謝酵素であるらしい(Liu et al., 2001)。従って、GSNOR活性が低いか又は非存在である生体コンパートメント(例、気道被覆液)では、GSNOが蓄積する可能性がある(Gaston et al., 1993)。
【0006】
[0006] GSNORが欠乏している酵母では、この酵素の基質ではないS−ニトロシル化タンパク質が蓄積するが、このことは、GSNOがSNO−タンパク質と平衡して存在することを強く示唆する(Liu et al., 2001)。GSNOと、従ってSNO−タンパク質の周囲レベルに対する正確な酵素的制御があることは、生理学的要求を超過してNOが産生されるニトロソ化ストレスに抗する保護を含めて、一群の生理学的及び病理学的機能にわたって、GSNO/GSNORが種々の役割を担い得るとする可能性を提起する。実際、GSNOは、呼吸の促進(Lipton et al., Nature, 413:171-174 (2001))から、嚢胞性線維症の膜貫通調節因子の調節(Zaman et al., Biochem Biophys Res Commun, 284:65-70 (2001))、血管緊張、血栓症、及び血小板機能の調節(de Belder et al., Cardiovasc Res. 1994 May; 28(5):691-4. (1994);Z. Kaposzta, A et al., Circulation; 106 (24): 3057-3062, 2002)、並びに宿主防御(de Jesus-Berrios et al., Curr. Biol., 13: 1963-1968 (2003))に及ぶ生理学的プロセスへの関与が特に示唆されている。他の研究は、GSNORが in vitro(Liu et al., 2001)と in vivo(de Jesus-Berrios et al., 2003)の両方で酵母細胞をニトロソ化ストレスに対して保護することを見出した。
【0007】
[0007] まとめると、これまでのデータは、GSNORが、GSNOを異化して、必然的に、生体系において利用可能なSNO及びNOを低下させる、酵素:ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)の主要な生理学的リガンドであることを示唆している(Liu et al., 2001)、(Liu et al., Cell, (2004), 116(4), 617-628)、及び(Que et al., Science, 2005, 308, (5728): 1618-1621)。それ自体として、この酵素は、局所及び全身の生理活性NOを調節することに中心的な役割を担っている。NOバイオアベイラビリティの混乱は、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、血栓症、喘息、胃腸障害、炎症、及び癌が含まれる数多くの疾患状態の病理発生に関連付けられてきたので、GSNOR活性を調節する薬剤は、一酸化窒素の不均衡に関連した疾患を治療するための候補療法剤となる。
【0008】
[0008] 現在、当該技術分野では、増加したNO合成及び/又は増加したNO生理活性に関連する医学的状態への診断薬、予防法、改善手段、及び治療法への大きなニーズがある。さらに、他のNO関連障害を予防する、改善する、又は逆転させるための新規な化合物、組成物、及び方法への有意なニーズがある。本発明は、上記のニーズを満足させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Stamler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7674-7677 (1992)
【非特許文献2】Foster et al., 2003, Trends in Molecular Medicine 第9巻、第4号、2003年4月、160-168 頁
【非特許文献3】Gaston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10957-10961 (1993)
【非特許文献4】Liu et al., Nature, 410: 490-494 (2001)
【非特許文献5】Jensen et al., Biochem J., 331: 659-668 (1998)
【非特許文献6】Uotila and Koivusalo,「補酵素と補因子(Coenzymes and Cofactors)」D. Dolphin 監修、517-551 頁(ニューヨーク、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、1989)
【非特許文献7】Lipton et al., Nature, 413:171-174 (2001)
【非特許文献8】Zaman et al., Biochem Biophys Res Commun, 284:65-70 (2001)
【非特許文献9】de Belder et al., Cardiovasc Res. 1994 May; 28(5):691-4. (1994)
【非特許文献10】Z. Kaposzta, A et al., Circulation; 106 (24): 3057-3062, 2002
【非特許文献11】de Jesus-Berrios et al., Curr. Biol., 13: 1963-1968 (2003)
【非特許文献12】Liu et al., Cell, (2004), 116(4), 617-628
【非特許文献13】Que et al., Science, 2005, 308, (5728): 1618-1621
【発明の概要】
【0010】
[0009] 本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(「GSNOR」)阻害剤として有用な新規クロモン化合物を提供する。本発明には、記載のGSNOR阻害剤の医薬的に許容される塩、プロドラッグ、及び代謝産物が含まれる。また本発明に含まれるのは、少なくとも1つのGSNOR阻害剤と少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含んでなる医薬組成物である。
【0011】
[0010] 本発明の組成物は、どの好適な医薬的に許容される剤形でも製造することができる。
[0011] 本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼを阻害することを必要とする被検者においてそれをするための方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つのGSNOR阻害剤又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ又は代謝産物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。GSNOR阻害剤は、本発明による新規化合物であっても、GSNORの阻害剤であることがこれまで知られていなかった既知の化合物であってもよい。
【0012】
[0012] 本発明はまた、NOドナー療法によって改善される障害を治療することを必要とする被検者においてそれをする方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つのGSNOR阻害剤、又はその医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又はその代謝産物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。GSNOR阻害剤は、本発明による新規化合物であっても、GSNORの阻害剤であることがこれまで知られていなかった既知の化合物であってもよい。
【0013】
[0013] 本発明はまた、細胞増殖性障害を治療することを必要とする被検者においてそれをする方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つのGSNOR阻害剤、又はその医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又はその代謝産物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。GSNOR阻害剤は、本発明による新規化合物であっても、GSNORの阻害剤であることがこれまで知られていなかった既知の化合物であってもよい。
【0014】
[0014] 本発明の方法には、1以上の第二の活性薬剤での投与が含まれる。そのような投与は、連続的であるか又は組合せ組成物中であり得る。
[0015] 本発明の実施又は検証には、本明細書での記載に類似しているか又は同等である方法及び材料を使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書に言及するすべての公的に利用可能な出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。抵触がある場合は、種々の定義を含めて、本明細書が基準となる。
【0015】
[0016] 以上の要約と以下の詳細な記載はともに例示的で説明的なものであり、特許請求されるような組成物及び方法のさらなる詳細を提供することを企図している。当業者には、以下の詳細な記載から、他の目的、利点、及び新規の特徴が容易に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.発明の概説
[0017] 最近まで、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)は、ホルムアルデヒドグルタチオン付加物、S−ヒドロキシメチルグルタチオンを酸化することが知られていた。これまでGSNORは、様々な細菌、酵母、植物、及び動物において確認されて、十分に保存されている。大腸菌(E. oli)、パン酵母(S. cerevisiae)、及びマウスマクロファージからのこのタンパク質は、60%以上のアミノ酸配列同一性を共有する。GSNORの活性(即ち、NADHが必須補因子として存在するときのS−ニトロソグルタチオンの分解)は、大腸菌、マウスマクロファージ、マウス内皮細胞、マウス平滑筋細胞、酵母、及びヒトのヒーラ細胞、上皮細胞、及び単球細胞において検出されてきた。ヒトGSNORのヌクレオチド及びアミノ酸配列の情報は、米国立生物工学情報センター(NCBI)データベースより、登録番号M29872,NM_000671の項目で入手することができる。マウスGSNORのヌクレオチド及びアミノ酸配列の情報は、NCBIデータベースより、登録番号NM_007410の項目で入手することができる。ヌクレオチド配列では、開始部位と終結部位に下線が施されている。CDSは、コーディング配列を明示する。SNPは、一塩基多型を明示する。他の関連したGSNORのヌクレオチド及びアミノ酸の配列は、他の種のそれを含めて、米国特許出願:2005/0014697に見出すことができる。
【0017】
[0018] 本発明により、GSNORは、in vitro と in vivo で、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)及びタンパク質S−ニトロソチオール(SNO)を代謝して、少量のNOドナー化合物の細胞内レベルを制御してタンパク質のニトロシル化が中毒レベルに達することを防ぐことによって、NO生理活性を調節するように機能することが示された。
【0018】
[0019] このことに基づけば、この酵素の阻害により、NOドナー療法が適用されるすべての疾患において生理活性が増強され、病理学的に増殖している細胞の増殖が阻害され、そしてそのことが有益である疾患においてNO生理活性が高められることになる。
【0019】
B.S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ阻害剤
1.本発明の化合物
[0020] 本発明は、GSNORの強力な阻害剤である医薬品を提供する。特に提供されるのは、以下に図示される構造(式I)を有する、GSNORの阻害剤である置換クロモン類似体、又はその医薬的に許容される塩、立体異性体、又はプロドラッグである。
【0020】
【化1】
【0021】
[式中、
R1は、CF3、CF2H、CF2CH3、CF2CH2CH3、メチル、イソプロピル、イソブチル、シクロペンチル、CH2OCH3、SCH3、ベンジル、チオフェン−2−イル、及びチオフェン−3−イルからなる群より選択され;
R2は、H、F、Cl、メトキシ、及びシアノより選択され;そして
R3は、H、F、Cl、及びメトキシより選択される]。
【0022】
[0021] 本発明のさらなる側面では、R1が、CF3、CF2H、及びCF2CH3より選択され;そしてR2が水素である。
[0022] 本発明のさらなる側面では、R1が、CF3、メチル、イソプロピル、及びイソブチルからなる群より選択され;そしてR2とR3がともに水素である。
【0023】
[0023] 本発明のなお別の側面では、R1が、CF3、メチル、イソプロピル、イソブチル、CF2H、CF2CH3、及びCF2CH2CH3からなる群より選択され;そしてR2とR3がともに水素である。
【0024】
[0024] 本発明のさらなる側面では、式Iの好適な化合物に、限定されないが:
4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−シクロペンチル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−フルオロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−フルオロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
3−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−6−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロプロピル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)−3−メトキシ安息香酸;及び
4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸が含まれる。
【0025】
[0025] さらに、本明細書に記載の組成物のいずれにおいても、1以上の化合物又は化合物の亜属が特別に除外される可能性がある。本発明の1つの態様では、4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸が特別に除外される。
【0026】
[0026] 置換クロモン類似体は、GSNORの強力な阻害剤である。本文脈で使用するように、「類似体」という用語は、クロモン核を保持する式Iの化合物と同様の化学構造及び機能を有する化合物を意味する。
【0027】
[0027] ある置換基への結合が環中の2つの原子を連結する結合に交差するように示されるとき、このときそのような置換基は、環中のどの原子へも結合してよい。置換基が、所与の式の化合物の残り部分へそのような置換基が結合する原子を示さずに収載されるとき、このときそのような置換基は、そのような置換基中のどの原子を介しても結合してよい。置換基及び/又は可変基(variables)の組合せは、そのような組合せが安定な化合物をもたらしさえすれば、許容される。
【0028】
[0028] 本発明のいくつかのクロモン類似体は、配置異性体、幾何異性体、及び配座異性体が含まれる、様々な異性型でも存在し得て、並びに、様々な互変異性型、特に水素原子の付加点が異なるものでも存在し得る。本明細書に使用するように、「異性体」という用語には、化合物の互変異性型を含めて、化合物のすべての異性型が含まれると企図される。示されるか又は記載される化合物のすべての互変異性体も、本発明の一部であるとみなされる。本発明の化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載されて、異性体の混合物として、又は分離した異性型として単離され得る。本明細書に記載の化合物には、オレフィン、C=N二重結合、等の多くの幾何異性体も存在し得て、本発明では、そのようなすべての安定な異性体が考慮される。特定の立体化学又は異性型が具体的に示されなければ、ある構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ、及び幾何異性型が企図される。
【0029】
[0029] 本明細書に記載の化合物は、不斉中心を有する場合がある。不斉的に置換された原子を含有する本発明の化合物は、光学活性型又はラセミ型で単離することができる。当該技術分野では、ラセミ型の分割によるか又は光学活性の出発材料からの合成によるといった、光学活性型を製造する方法がよく知られている。
【0030】
[0030] 他に示さなければ、そのような非対称性より生じる異性体(例、すべてのエナンチオマー及びジアステレオマー)が本発明の範囲内に含まれると理解されたい。そのような異性体は、模範的な分離技術によるか又は立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で入手することができる。さらに、本出願において考察される構造と他の化合物及び部分には、それらのすべての互変異性体も含まれる。アルケンには、E又はZのいずれかのジオメトリーを適宜含めることができる。
【0031】
[0031] 図示した構造とその構造へ付与される名称との間に矛盾があるならば、図示した構造が基準となることを銘記されたい。さらに、ある構造又は構造の一部の立体化学が、例えば、実線、楔形線、又は破線で示されていなければ、その構造又は構造の一部には、記載の化合物のすべての立体異性体が含まれると解釈されるべきである。
【0032】
2.代表的なGSNOR阻害剤
[0032] 実施例1〜21は、式Iの代表的な新規クロモン類似体を収載する。各化合物を製造するために使用し得る合成法については、実施例1の前に図示した合成スキームを参照にして、そして実施例23に記載される中間体を参照にして、実施例1〜21に詳しく記載する。実施例1〜21には、各化合物の裏付けとなる質量分析法データとプロトンNMRデータも含まれる。実施例24に記載のアッセイによってGSNOR阻害剤の活性を定量して、IC50値を入手した。GSNOR阻害化合物、実施例1〜21は、約5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害化合物、実施例1、2、3、5、6、10、13、14、15、16、18、19、20は、約0.5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害化合物、実施例1、10、14、15、16、18、及び20は、約0.1μM未満のIC50を有した。
【0033】
C.定義
[0033] 本明細書に使用するように、「約」は、当業者によって理解されて、それが使用される文脈に依ってある程度変化する可能性がある。それが使用される文脈があっても、当業者に明らかでないこの用語の使用があるならば、「約」は、その特定用語のプラス又はマイナス10%までを意味するものである。
【0034】
[0034] 本明細書に使用するように、「生理活性」という用語は、生理学的又は病態生理学的プロセスに影響を及ぼし得る1以上の細胞又は細胞外プロセス(例えば、結合、シグナル伝達、等による)に対する効果を示す。
【0035】
[0035] 本明細書に使用するように、そして他に示さなければ、「立体異性体」という用語は、化合物の他の立体異性体を実質的に含まない、該化合物の1つの立体異性体を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、該化合物の対掌エナンチオマーを実質的に含まない。2つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、該化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まない。いくつかの態様において、立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約20重量%未満の該化合物の他の立体異性体、例えば、約90重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約10重量%未満の該化合物の他の立体異性体、又は約95重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約5重量%未満の該化合物の他の立体異性体、又は約97重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約3重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含む。
【0036】
[0036] 本明細書に使用するように、「タンパク質」は、「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「ペプチド断片」と同義で使用される。「精製された」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、又はペプチド断片は、そのアミノ酸配列が得られる細胞、組織、又は無細胞供給源からの細胞材料も他の混在タンパク質も実質的に含まないか、又は化学的に合成されるときは、化学前駆体も他の化学品も実質的に含まない。
【0037】
[0037] 本明細書に使用するように、「調節する」は、ペプチド又はポリペプチドのレベルを増加又は減少させること、あるいはペプチド又はポリペプチドの安定性又は活性を増加又は減少させることに言及するものである。「阻害する」という用語は、ペプチド又はポリペプチドのレベルの減少、あるいはペプチド又はポリペプチドの安定性又は活性の減少に言及するものである。好ましい態様において、調節されるか又は阻害されるペプチドは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)又はタンパク質S−ニトロソチオール(SNO)である。
【0038】
[0038] 本明細書に使用するように、「一酸化窒素」及び「NO」という用語には、無電荷の一酸化窒素と有電荷の一酸化窒素の種が含まれ、特に、ニトロソニウムイオン(NO+)とニトロキシルイオン(NO−)が含まれる。一酸化窒素の反応型は、気体の一酸化窒素によって提供され得る。構造:X−NOy(ここでXは、一酸化窒素を放出、送達、又は移送する部分であり、yは1又は2である)を有する化合物には、一酸化窒素をその企図される作用部位へその企図される目的のために活性な形態で提供するありとあらゆるそのような化合物が含まれる。
【0039】
[0039] 本明細書に利用するように、「医薬的に許容される」という用語は、動物、より特別にはヒトでの使用のために、連邦又は州政府の規制当局によって承認されているか又は米国薬局方又は他の一般的に認知されている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬剤とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を意味して、限定されないが、水及び油剤のような無菌の液剤が含まれる。
【0040】
[0040] GSNOR阻害剤の「医薬的に許容される塩」又は「塩」は、イオン結合を含有して、典型的には、酸又は塩基のいずれかと開示化合物を反応させることによって生成される、被検者への投与に適した、開示化合物の生成物である。医薬的に許容される塩には、限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アリールアルキルスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、及び酒石酸塩が含まれる酸付加塩;Li、Na、Kのようなアルカリ金属カチオン、Mg又はCaのようなアルカリ土類金属の塩、又は有機アミン塩を含めることができる。
【0041】
[0041] 「医薬組成物」は、被検者への投与に適した形態で開示化合物を含んでなる製剤である。本発明の医薬組成物は、好ましくは、その企図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、限定されないが、経口及び非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、吸入、局所、経皮、経粘膜、及び直腸の投与が含まれる。
【0042】
[0042] 「安定な化合物」と「安定な構造」は、反応混合物からの有用な純度までの単離と、有効な治療薬剤への製剤化に耐えるほどに十分に頑丈である化合物を示すものである。
【0043】
[0043] 本明細書に使用するように、「治療有効量」という用語は、一般に、本明細書に記載のように予防、抑制、又は治療されるべき障害の少なくとも1つの症状を改善するのに必要な量を意味する。「治療有効量」という句は、本発明のGSNOR阻害剤に関する場合、そのような治療を必要とする有意数の被検者においてGSNOR阻害剤が投与されるための特定の薬理学的応答をもたらすGSNOR阻害剤の投与量を意味する。特別な例において特別な被検者へ投与されるGSNOR阻害剤の治療有効量は、たとえそのような投与量が当業者によって治療有効量であるとみなされるとしても、本明細書に記載の状態/疾患を治療するのにいつでも有効であるわけではないことが重要である。
【0044】
[0044] 「生体試料」という用語には、限定されないが、血液(例、血清、血漿、又は全血)、尿、唾液、汗、母乳、膣分泌物、精液、毛包、皮膚、歯、骨、爪、又は他の分泌物、体液、組織、又は細胞の試料が含まれる。本発明によれば、生体試料中のS−ニトロソグルタチオンレダクターゼのレベルは、米国特許出願公開公報番号2005/0014697に記載の方法によって定量することができる。
【0045】
D.GSNOR阻害剤を含んでなる医薬組成物
[0045] 本発明には、本明細書に記載の少なくとも1つのGSNOR阻害剤と少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含んでなる医薬組成物が含まれる。好適な担体については、参照により本明細書に組み込まれる「レミントン:科学と実践(Remington: The Science and Practice)」第20版(出版元:リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス)に記載されている。本発明による医薬組成物は、1以上の非GSNOR阻害活性薬剤も含んでよい。
【0046】
[0046] 本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の新規GSNOR阻害剤を含むことができて、この医薬組成物は、GSNOR阻害剤の活性を有することがこれまで知られていなかった既知の化合物、又はその組合せを含むことができる。
【0047】
[0047] GSNOR阻害剤は、限定されないが、注射可能な剤形、分散液剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、凍結乾燥製剤、乾燥散剤、錠剤、カプセル剤、制御放出製剤、迅速融解製剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、即時放出及び制御放出混合製剤、等が含まれる、どの医薬的に許容される剤形でも利用することができる。具体的には、本明細書に記載のGSNOR阻害剤は:(a)経口、肺、静脈内、動脈内、鞘内、関節内、直腸、眼、結腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所、頬内、経鼻、及び局部投与からなる群より選択される投与用に;(b)分散液剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、錠剤、サシェ剤、及びカプセル剤からなる群より選択される剤形へ;(c)凍結乾燥製剤、乾燥散剤、迅速融解製剤、制御放出製剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、並びに即時放出及び制御放出混合製剤より選択される剤形へ;又は(d)これらのあらゆる組合せへ製剤化することができる。
【0048】
[0048] 呼吸器感染症では、吸入製剤を使用して、高い局所濃度を達成することができる。吸入に適した製剤には、上気道及び下気道の細菌感染症を治療するために吸入器又はネブライザーによって被感染患者の気管支内腔又は鼻腔へ分散させることが可能である、乾燥散剤又はエアゾール化又は気化させた溶液剤、分散液剤、又は懸濁液剤が含まれる。
【0049】
[0049] 非経口、皮内、又は皮下の適用に使用される溶液剤又は懸濁液剤は、以下の成分の1以上を含むことができる:(1)注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒のような無菌希釈剤;(2)ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌剤;(3)アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;(4)エチレンジアミン四酢酸のようなキレート形成剤;(5)酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩のような緩衝剤;及び(6)塩化ナトリウム又はデキストロースのような浸透圧の調整用の薬剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調整することができる。非経口調製品は、ガラス又はプラスチックから作られる、アンプル、使い捨てシリンジ、又は多用量バイアルに密封することができる。
【0050】
[0050] 注射可能な使用に適した医薬組成物は、無菌水溶液剤(水溶性である場合)、又は無菌の注射可能な溶液剤又は分散液剤の用時調製用の分散剤及び無菌散剤を含み得る。静脈内投与に好適な担体には、生理食塩水溶液、静菌水、Cremophor EL(BASF、ニュージャージー州パルシッパニー)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての事例において、組成物は、無菌でなければならず、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度まで流動的であるべきである。医薬組成物は、製造及び保存の条件下で安定であるべきで、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に抗して保存されるべきである。
【0051】
[0051] 担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、等)、及びこれらの好適な混合物を含んでなる、溶媒又は分散媒体であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、(分散液の場合は)必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等によって達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、マンニトール又はソルビトールのようなポリアルコール、及び塩化ナトリウムのような無機塩類を組成物に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期化吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0052】
[0052] 無菌の注射可能な溶液剤は、必要とされる量の活性試薬(例、GSNOR阻害剤)を、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つ又は組合せとともに適正な溶媒に取り込むこと、それに続く濾過滅菌によって調製することができる。一般に、分散液剤は、基本の分散媒体と他の必要とされるあらゆる成分を含有する無菌担体へ少なくとも1つのGSNOR阻害剤を取り込むことによって調製する。無菌の注射可能な溶液剤の調製用の無菌散剤の場合、例示の調製法には、真空乾燥と凍結乾燥が含まれ、そのいずれも、先に無菌濾過したその溶液より、GSNOR阻害剤+所望されるあらゆる追加成分の散剤を産生する。
【0053】
[0053] 一般に、経口組成物には、不活性希釈剤又は食用担体が含まれる。それらは、例えば、ゼラチンカプセルに被包するか又は錠剤へ圧縮することができる。経口療法上の投与の目的では、GSNOR阻害剤を賦形剤とともに取り込んで、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口液としての使用のための液状担体を使用して調製し得て、ここでは液状担体中の化合物が経口的に適用されて口中で転がされて喀痰されるか、又は嚥下される。この組成物の一部として、医薬的に適合可能な結合剤、及び/又はアジュバント材料を含めることができる。
【0054】
[0054] 吸入による投与では、化合物は、好適なデバイス由来の好適な推進剤(例、二酸化炭素のような気体、噴霧化液剤、又は乾燥散剤)を含有する加圧容器又はディスペンサーからのエアゾールスプレー剤の形態で送達される。経粘膜又は経皮投与では、浸透すべきバリアに適正な浸透剤を製剤中に使用する。当該技術分野では、そのような浸透剤が一般的に知られていて、例えば、経粘膜投与には、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレー剤又は坐剤の使用により達成することができる。経皮投与では、活性試薬を、当該技術分野で一般的に知られているような軟膏剤、軟膏、ゲル剤、又はクリーム剤へ製剤化する。この試薬はまた、坐剤(例えば、ココア脂や他のグリセリドのような慣用の坐剤基剤とともに)又は直腸送達用の停留浣腸剤の形態で調製することができる。
【0055】
[0055] 1つの態様において、GSNOR阻害剤は、身体からの速やかな消失に抗して保護する担体とともに調製される。例えば、インプラントやマイクロカプセル化送達システムが含まれる、制御放出製剤を使用することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような生分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。このような製剤の製造の方法は、当業者に明らかであろう。この材料も、市販品より入手することができる。
【0056】
[0056] リポソーム懸濁液剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体が付いた、被感染細胞へ標的指向されるリポソーム剤が含まれる)も医薬的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に知られた方法に従って製造することができる。
【0057】
[0057] さらに、GSNOR阻害剤の懸濁液剤は、適正な油性の注射懸濁液剤として調製してよい。好適な脂溶性の溶媒又は媒体には、ゴマ油のような脂肪オイル、又はオレイン酸エチル、トリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーも送達用に使用してよい。この懸濁液剤には、化合物の溶解性を高めて高濃度溶液剤の調製を可能にするのに適した安定化剤又は薬剤を含めてもよい。
【0058】
[0058] 経口又は非経口の組成物を単位剤形で製剤化することは、投与の容易さと投与量の均一性のために特に有利である。本明細書に使用する単位剤形は、治療される被検者への単位投与量として適した、物理的に別個の単位を意味して、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量のGSNOR阻害剤を必要とされる医薬担体とともに含有する。本発明の単位剤形への仕様は、GSNOR阻害剤の独自の特徴と達成すべき特別な治療効果、並びに、そのような活性薬剤を個体の治療のために調合することの当該技術分野に固有の限界によって支配されて、直接的に依存する。
【0059】
[0059] 少なくとも1つのGSNOR阻害剤を含んでなる、本発明による医薬組成物は、1以上の医薬賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤の例には、限定されないが、結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、及び他の賦形剤が含まれる。そのような賦形剤は、当該技術分野で知られている。例示の賦形剤には:(1)様々なセルロース及び架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102のような微結晶性セルロース、珪化微結晶性セルロース(ProSolv SMCCTM)、トラガカントゴム、及びゼラチンが含まれる、結合剤;(2)様々なデンプン、乳糖、乳糖一水和物、及び無水乳糖のような充填剤;(3)アルギン酸、Primogel、コーンスターチ、軽度架橋ポリビニルピロリドン、ジャガイモデンプン、とうもろこしデンプン、及び加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような崩壊剤;(4)圧縮される散剤の流動可能性に作用する薬剤が含まれる滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、Aerosil(登録商標)200のようなコロイド状二酸化シリコン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、及びシリカゲルが含まれる);(5)コロイド状二酸化シリコンのような滑り剤;(6)ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸とその塩、ブチルパラベンのような他のパラヒドロキシ安息香酸エステル、エチル又はベンジルアルコールのようなアルコール類、フェノールのようなフェノール性化合物、又は塩化ベンザルコニウムのような四級化合物といった、保存剤;(7)微結晶性セルロース、乳糖、二塩基性リン酸カルシウム、サッカライド、及び/又は上記のいずれもの混合物といった医薬的に許容される不活性充填剤のような希釈剤;希釈剤の例には、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102のような微結晶性セルロース;乳糖一水和物、無水乳糖、及びPharmatose(登録商標)DCL21のような乳糖;Emcompress(登録商標)のような二塩基性リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;及びブドウ糖が含まれる;(8)ショ糖、サッカリンショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、及びアセスルフェームのような、あらゆる天然又は人工甘味料が含まれる、甘味剤;(9)ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバリング、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、フルーツフレーバー、等のような香味剤;並びに(10)有機酸と炭酸塩又は重炭酸塩のような発泡性のカップルが含まれる、発泡剤。好適な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、及びアルギン酸と無水物、及び酸塩が含まれる。好適な炭酸塩及び重炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸L−リジン、及び炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡性カップルの重炭酸ナトリウム成分だけが存在してよい。
【0060】
E.本発明の組成物を含んでなるキット
[0060] 本発明には、本発明の組成物を含んでなるキットも含まれる。そのようなキットは、例えば、(1)少なくとも1つのGSNOR阻害剤;及び(2)溶媒又は溶液のような、少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含むことができる。追加のキット成分には、例えば:(1)安定化剤、緩衝剤、等のような、本明細書において明確化した医薬的に許容される賦形剤のあらゆるもの、(2)キット成分を保持及び/又は混合するための少なくとも1つの容器、バイアル、又は同様の器具;及び(3)吸入器、ネブライザー、シリンジ、等のような送達器具が含まれてもよい。
【0061】
F.GSNOR阻害剤を製造する方法
[0061] 本発明のGSNOR阻害剤は、既知の合成の方法論を使用して、又は既知の合成の方法論の変更により、容易に合成することができる。当業者に容易に認められるように、以下に記載の方法論は、多様な置換基を有するクロモンの合成を可能にする。以下の実施例において、例示の合成法を記載する。
【0062】
[0062] 必要とされるならば、当該技術分野で知られた定型的な手段によって、エナンチオマー及びジアステレオマーのさらなる精製及び分離を達成することができる。このように、例えば、化合物のエナンチオマーの分離は、キラルHPLCと関連のクロマトグラフィー技術の使用によって達成することができる。ジアステレオマーも同様に分離することができる。しかしながら、いくつかの事例では、例えば、制御された沈殿化又は結晶化によるように、ジアステレオマーを単に物理的に分離させることができる。
【0063】
[0063] 本発明の方法は、本明細書に記載のように行なわれるとき、簡便にも、当該技術分野で定型的に利用できる温度で実施することができる。1つの態様において、この方法は、約25℃〜約110℃の範囲の温度で実施する。別の態様において、温度は、約40℃〜約100℃の範囲にある。なお別の態様において、温度は、約50℃〜約95℃の範囲にある。
【0064】
[0064] 塩基を必要とする合成工程は、簡便な有機又は無機塩基を使用して行う。典型的には、この塩基は、求核性ではない。このように、1つの態様において、塩基は、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、アルコキシド、ジシラザンの塩、及び三級アミンより選択される。
【0065】
[0065] 本発明の方法は、本明細書に記載のように実施されるとき、反応体の性質及び量と反応温度に依存して、数分後〜数時間後に実質的には完了している可能性がある。反応が実質的に完了しているときの決定は、簡便には、例えば、HPLC、LCMS、TLC、及び1H NMRのような、当該技術分野で知られた通常の技術によって評価することができる。
【0066】
G.治療の方法
[0066] 本発明には、開示される化合物の1以上の使用を通して医学的状態を予防するか又は治療する(例えば、その1以上の症状を軽減する)方法が含まれる。この方法は、治療有効量のGSNOR阻害剤を必要とする患者へそれを投与することを含む。本発明の組成物は、予防療法へも使用することができる。
【0067】
[0067] 本発明による治療の方法に使用されるGSNOR阻害剤は、(1)本明細書に記載の新規GSNOR阻害剤、又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物;(2)本発明に先立って知られていたが、GSNOR阻害剤であることは知られていなかった化合物、又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物;又は(3)本発明に先立って知られていて、GSNOR阻害剤であることが知られていたが、本明細書に記載の治療の方法に有用であることは知られていなかった化合物、又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物であり得る。
【0068】
[0068] 患者は、どの動物、家畜動物、酪農動物、野生動物でもよく、限定されないが、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、及びウシと、好ましくはヒト患者が含まれる。本明細書に使用されるように、「患者」及び「被検者」という用語は、交換可能的に使用してよい。
【0069】
[0069] 有害なほどに高いレベルのGSNOR又はGSNOR活性がある被検者において、調節は、例えば、GSNOR機能を壊すか又はダウンレギュレートする、又はGSNORレベルを減少させる開示化合物の1以上を投与することによって達成され得る。これらの化合物は、抗GSNOR抗体又は抗体断片、GSNORアンチセンス、siRNA、又は低分子のような他のGSNOR阻害剤、又は他の阻害剤とともに、単独で、又は本明細書に詳しく記載されるような他の薬剤と組み合わせて投与してよい。
【0070】
[0070] 本発明は、NOドナー療法によって改善される障害に罹患した被検者を治療する方法を提供する。このような方法は、治療有効量のGSNOR阻害剤を被検者へ投与することを含む。
【0071】
[0071] 本明細書に使用されるように、「治療すること」は、疾患、状態、又は障害を克服する目的のための患者の管理及び看護について記載して、症状又は合併症の発現を防ぐための本発明の化合物の投与、症状又は合併症を軽減すること、又は疾患、状態、又は障害を消失させることが含まれる。より具体的には、「治療すること」には、疾患(障害)状態の少なくとも1つの有害な症状又は影響、疾患の進行、疾患の原因体(例、細菌又はウイルス)、又は他の異常な状態を逆転させること、弱めること、軽減すること、最小化すること、抑制すること、又は休止させることが含まれる。治療は、症状及び/又は病態が改善する間は続けられる。
【0072】
[0072] 障害には、肺中の低酸素血症及び/又は平滑筋狭窄及び/又は肺感染及び/又は肺損傷に関連した肺の障害(例、肺性高血圧、ARDS、喘息、肺炎、肺線維症/間質性肺疾患、嚢胞性線維症、COPD)、高血圧、虚血性冠症候群、アテローム性動脈硬化症、心不全、緑内障といった状態が含まれる心臓血管系疾患及び心疾患、血管新生を特徴とする疾患(例、冠動脈疾患)、血栓症発生のリスクがある障害、再狭窄発生のリスクがある障害、慢性炎症性疾患(例、AID認知症及び乾癬)、アポトーシス発生のリスクがある疾患(例、心不全、アテローム性動脈硬化症、神経変性障害、関節炎、及び肝損傷(虚血性又はアルコール性))、インポテンツ、食物への渇望に応じた摂食に起因する肥満、卒中、再灌流損傷(例、心臓又は肺における外傷性筋肉損傷、又は圧挫損傷)、並びに後続の虚血性イベントに抗するNO保護への心臓又は脳のプレコンディショニングが有益である障害を含めることができる。
【0073】
[0073] 1つの態様において、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物は、NOドナーと組み合わせて投与することができる。NOドナーは、一酸化窒素又は関連レドックス種を供与して、より一般的には、一酸化窒素の生理活性、即ち、一酸化窒素で確認される活性、例えば、血管弛緩、又は受容体タンパク質(例、rasタンパク質、アドレナリン作用性受容体、NFκB)の刺激又は阻害を提供する。S−ニトロソ、O−ニトロソ、C−ニトロソ、及びN−ニトロソ化合物とそのニトロ誘導体、及び金属NO錯体が含まれるが、他のNO生理活性産生化合物も除外されない、本発明に有用なNOドナーについては、参照により本明細書に組み込まれる「一酸化窒素研究の方法(Methods in Nitric Oxide Research)」Feelisch et al.監修、71〜115 頁(J.S.,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、1996)に記載されている。ニトロソが三級炭素へ付いているC−ニトロソ化合物である、本発明に有用であるNOドナーには、米国特許第6,359,182号とWO02/34705に記載されるものが含まれる。S−ニトロソ化合物の例には、本発明に有用なS−ニトロソチオールを含めて、例えば、S−ニトロソグルタチオン、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、S−ニトロソ−システインとそのエチルエステル、S−ニトロソシステイニルグリシン、S−ニトロソ−γ−メチル−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−γ−チオ−L−ロイシン、S−ニトロソ−δ−チオ−L−ロイシン、及びS−ニトロソアルブミンが含まれる。本発明に有用な他のNOドナーの例は、ナトリウムニトロプルシド(ニプリド)、亜硝酸エチル、イソソルビド、ニトログリセリン、モルシドミンであるSIN 1、フロキサミン、N−ヒドロキシ(N−ニトロサミン)、及びNO又は疎水性NOドナーで飽和されたペルフルオロカーボンである。
【0074】
[0074] 既知のNO放出剤、アムロジピンのR(+)エナンチオマー(Zhang X. P et al. 2002 J. Cardiovascular Pharmacology 39, 208-214)とGSNOR阻害剤の組合せも、本発明の態様である。
【0075】
[0075] 本発明はまた、病理学的に増殖する細胞に罹患した被検者を治療する方法を提供し、ここで該方法は、GSNORの阻害剤の治療有効量を前記被検者へ投与することを含む。GSNORの阻害剤は、医薬的に許容される担体と組み合わせた、上記に定義されるような化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物である。治療は、症状及び/又は病態が改善する間は続けられる。
【0076】
[0076] 別の態様において、病理学的に増殖する細胞は、病理学的に増殖する微生物であり得る。関与する微生物は、ニトロソ化ストレスから保護されるようにGSNORを発現するもの、又は該微生物に感染された宿主細胞がこの酵素を発現することによってニトロソ化ストレスから保護されるものであり得る。「病理学的に増殖する微生物」という用語は、本明細書において、病理学的微生物を意味するために使用されて、限定されないが、病理学的細菌、病理学的ウイルス、病理学的クラミジア、病理学的原生動物、病理学的リケッチア、病理学的真菌、及び病理学的マイコプラズマが含まれる。適用可能な微生物に関するさらなる詳細は、米国特許第6,057,367号のカラム11及び12に説明されている。「病理学的微生物に感染された宿主細胞」という用語には、病理学的ウイルスに感染された哺乳動物細胞だけでなく、細胞内の細菌又は原生動物を含有する哺乳動物細胞(例、結核菌、ライ菌(ライ病)、又は腸チフス菌(腸チフス)を含有するマクロファージ)も含まれる。
【0077】
[0077] 別の態様において、病理学的に増殖する細胞は、病理学的蠕虫であり得る。「病理学的蠕虫」という用語は、本明細書において、病理学的線虫、病理学的吸虫、及び病理学的条虫を意味するために使用される。適用可能な蠕虫に関するさらなる詳細は、米国特許第6,057,367号のカラム12に説明されている。
【0078】
[0078] 別の態様において、病理学的に増殖する細胞は、病理学的に増殖する哺乳動物細胞であり得る。本明細書に使用される「病理学的に増殖する哺乳動物細胞」という用語は、前記哺乳動物において、その哺乳動物又はその臓器に有害な効果を引き起こすほどに大きさ又は数が増大する、哺乳動物の細胞を意味する。この用語には、例えば、病理学的に増殖するか又は拡大して再狭窄を引き起こす細胞、病理学的に増殖するか又は拡大して良性前立腺肥大を引き起こす細胞、病理学的に増殖して心筋肥大を引き起こす細胞、及び関節炎の滑膜細胞のように炎症部位で増殖する細胞、又は細胞増殖性障害に関連した細胞が含まれる。
【0079】
[0079] 本明細書に使用されるように、「細胞増殖性障害」という用語は、細胞の非調節及び/又は異常な増殖が癌性又は非癌性であり得る望まれない状態又は疾患(例えば、乾癬状態)の発症をもたらし得る状態を意味する。本明細書に使用されるように、「乾癬状態」という用語は、角化細胞の過剰増殖、炎症性の細胞浸潤、及びサイトカインの変化が関与する障害を意味する。細胞増殖性障害は、前癌状態又は癌であり得る。癌は、原発性癌又は転移性癌、又はその両方であり得る。
【0080】
[0080] 本明細書に使用されるように、「癌」という用語には、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腺癌、扁平上皮癌、肉腫、悪性膠腫、横紋筋肉腫、肝細胞癌、頭頚部癌、悪性メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌のような固形腫瘍、並びに、白血病、小児白血病及びリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球及び皮膚起源のリンパ腫、急性及び慢性白血病(急性リンパ芽球性、急性骨髄芽球性、又は慢性骨髄芽球性白血病のような)、形質細胞性新生物、リンパ性新生物、及びAIDSに関連した癌のような、造血系腫瘍及び/又は悪性腫瘍が含まれる。
【0081】
[0081] 乾癬状態に加えて、本発明の組成物を使用して治療され得る増殖性疾患の種類は、表皮及び類皮嚢胞、脂肪腫、腺腫、毛細及び皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、及び他の形成異常塊、等である。1つの態様において、増殖性疾患には、形成異常と類似の障害が含まれる。
【0082】
[0082] 1つの態様において、癌を治療することは、腫瘍サイズの低下、腫瘍数の減少、腫瘍増殖の遅延、原発腫瘍部位から離れた他の組織又は臓器における転移性病巣の減少、患者生存率の改善、又は患者の生命の質の改善、又は上記の少なくとも2つを含む。
【0083】
[0083] 別の態様において、細胞増殖性障害を治療することは、細胞増殖の速度の低下、増殖性細胞の比率の低下、細胞増殖の領域又は範囲の大きさの減少、又は異常な外観又は形態を有する細胞の数又は比率の減少、又は上記の少なくとも2つを含む。
【0084】
[0084] なお別の態様において、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物は、第二の化学療法剤と組み合わせて投与することができる。さらなる態様において、第二の化学療法剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エクセメスタン、レトロゾール、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン、ゲンシタビン、araC、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ドセタキセル、ゴセレリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、エポチロン、ナベルビン、カンプトテシン、ダウノニビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、マレイン酸スニチニブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、及びベバシズマブからなる群より選択される。
【0085】
[0085] 1つの態様において、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物は、ニトロソ化又は酸化ストレスをかける薬剤と組み合わせて投与することができる。本発明のGSNOR阻害剤との組合せ療法においてニトロソ化ストレスを選択的にかけて病理学的に増殖する細胞の増殖を阻害する薬剤とその投与量及び投与経路には、本明細書に組み込まれる米国特許第6,057,367号に開示されるものが含まれる。本発明のGS−FDH阻害剤との組合せ療法において酸化ストレスをかける補助薬剤(即ち、GSH(グルタチオン)に対するGSSG(酸化グルタチオン)の比、又はNAD(P)Hに対するNAD(P)の比を高める薬剤、又はチオバルビツール酸誘導体を増加させる薬剤)には、例えば、L−ブチオニン−S−スルホキシミン(BSO)、グルタチオンレダクターゼ阻害剤(例、BCNU)、ミトコンドリア呼吸の阻害剤又は脱共役剤、及び反応性酸素種(ROS)を高める薬物(例、アドリアマイシン)が標準の投与経路での標準投与量で含まれる。
【0086】
[0086] GSNOR阻害剤は、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例、ロリプラム、シロミラスト、ロフルミラスト、Viagra(登録商標)(クエン酸シルデニフィル)、Cialis(登録商標)(タダラフィル)、Levitra(登録商標)(バルデニフィル)、等)、β−アゴニスト、ステロイド、又はロイコトリエンアンタゴニスト(LTD4)とも同時投与してよい。当業者は、改善すべき障害に依って、適正な治療有効量を容易に決定することができる。
【0087】
[0087] GSNOR阻害剤は、β−アドレナリン作用性のシグナル伝達を改善するための手段として使用してよい。特に、GSNORの阻害剤は、単独で、又はβ−アゴニストと組み合わせて、心不全、又は高血圧症及び喘息のような他の血管系障害を治療するか又はそれらに対して保護するために使用し得る。GSNOR阻害剤はまた、平滑筋(例、気道及び血管)弛緩をもたらすGs G−タンパク質を増強することによって、並びに、Gq G−タンパク質を減弱させることによって、それにより平滑筋収縮を(例えば、気道及び血管において)妨げる、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を調節するために使用することができる。
【0088】
[0088] NOドナー療法によって改善される障害に罹患した被検者の治療用の治療有効量とは、治療される障害の改善を引き起こすか又はその障害に関連したリスクに対して保護する、in vivo でのGSNOR阻害量である。例えば、喘息では、治療有効量は、気管支拡張に有効な量であり;嚢胞性線維症では、治療有効量は、気道閉塞改善に有効な量であり;ARDSでは、治療有効量は、低酸素血症改善に有効な量であり;心疾患では、治療有効量は、アンギナ緩和又は血管新生誘導に有効な量であり;高血圧症では、治療有効量は、血圧低下に有効な量であり;虚血性冠動脈障害では、治療有効量は、血流増加に有効な量であり;アテローム性動脈硬化症では、治療有効量は、内皮機能不全の逆転に有効な量であり;緑内障では、治療有効量は、眼内圧低下に有効な量であり;血管新生を特徴とする疾患では、治療有効量は、血管新生阻害に有効な量であり;血栓症発生のリスクがある障害では、治療有効量は、血栓症予防に有効な量であり;再狭窄発生のリスクがある障害では、治療有効量は、再狭窄阻害に有効な量であり;慢性炎症性疾患では、治療有効量は、炎症抑制に有効な量であり;アポトーシス発生のリスクがある障害では、治療有効量は、アポトーシス予防に有効な量であり;インポテンスでは、治療有効量は、勃起の達成又は持続に有効な量であり;肥満では、治療有効量は、満腹感を引き起こすのに有効な量であり;卒中では、治療有効量は、血流増加又はTIA保護に有効な量であり;再灌流損傷では、治療有効量は、機能向上に有効な量であり;そして心臓及び脳のプレコンディショニングでは、治療有効量は、細胞保護に有効な量(例えば、トリポニン又はCPKによって測定されるような)である。
【0089】
[0089] 病理学的に増殖する細胞に罹患した被検者の治療用の治療有効量は、抗増殖に有効な量である、in vivo でのGSNOR阻害量を意味する。本明細書に使用される、このような抗増殖に有効な量は、少なくとも約20%、少なくとも約10%、少なくとも約5%、又は少なくとも約1%の増殖速度の抑制を引き起こす量を意味する。
【0090】
[0090] 一般に、投与量、即ち治療有効量は、治療される被検者の体重1kgにつき、1日あたり、1μg〜10gの範囲に及び、そしてしばしば、10μg〜1g又は10μg〜100mgの範囲に及ぶ。
【0091】
H.他の使用
[0091] 本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物は、そのような化合物の存在が有益であり得る状況において、様々な器具へ適用することができる。そのような器具は、どのデバイス又は容器であってもよい(例えば、患者への埋め込みに先立って外科用メッシュ又は心臓血管ステントをコートするのにGSNOR阻害剤を使用し得る埋め込みデバイス)。本発明のGSNOR阻害剤はまた、in vitro アッセイ目的又は細胞を培養するための様々な器具へ適用することができる。
【0092】
[0092] 本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物はまた、抗体、天然リガンド、等のような、GSNOR阻害化合物への結合パートナーの開発、単離、又は精製のための薬剤として使用することができる。当業者は、本発明の化合物に関連した使用を容易に決定することができる。
【実施例】
【0093】
[0093] 以下のスキーム及び実施例は、本発明を例解するために示す。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載される特定の条件又は詳細に限定されないことを理解されたい。本出願を通して、米国特許が含まれる公的に利用可能な文書へのありとあらゆる参考文献が参照により具体的に組み込まれる。
【0094】
[0094] 本発明のGSNOR阻害剤は、既知の合成の方法論を使用して、又は既知の合成の方法論の変更により、容易に合成することができる。当業者に容易に認められるように、以下に記載の方法論は、多様な置換基を有するクロモンの合成を可能にする。以下の一般スキーム1は、本発明のクロモン化合物を作製するための代表的な手順である。追加の合成の詳細については、実施例1〜21に、そして中間体のセクションである実施例23に見出すことができる。
【0095】
【化2】
【0096】
実施例1:4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0097】
【化3】
【0098】
[0095] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件a)(変更)及びc)を使用して製造した。
[0096] (工程1) 4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成
中間体A−1a(450mg,1.5ミリモル)及びTEA(758mg,7.5ミリモル)の溶液へ2,2−ジフルオロ酢酸無水物(522mg,3.0ミリモル)を加えた。この混合物を120℃で4時間撹拌した。この反応混合物を室温へ冷やして真空で濃縮して茶褐色の固形物を得て、これをさらに精製せずに次の工程に使用した(400mg,74%)。
【0099】
[0097] (工程2) 4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例1)の合成、c)条件の実例
4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(400mg,1.16ミリモル)の1,4−ジオキサン(1mL)中の混合物へ濃HCl(1mL)を加えた。この反応混合物を一晩加熱して還流させた。この混合物を室温へ冷やして、濾過した。濾過した塊を水(5mL)で2回、そしてエタノール(2mL)で洗浄し、分取用HPLCによって精製して、白色の固形物(50mg,13%)を得た。
【0100】
[0098] (データ) 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, TMS): δ 13.11 (s, 1H), 11.09 (s, 1H), 8.02 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.01 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.5 Hz 1H), 6.68 (t, J = 51.0 Hz, 1H); MS (ESI): m/z 333.0 [M+1]+。
【0101】
実施例2:4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0102】
【化4】
【0103】
[0099] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件b)(変更)及びc)を使用して製造した。
[00100] (工程1) 4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成、b)条件の実例
中間体A−1a(450mg,1.5ミリモル)及びEt3N(825mg,7.5ミリモル)のDCM(5mL)中の撹拌混合物へ塩化2−メトキシアセチル(486mg,4.5ミリモル)を加えた。次いで、この混合物を室温で5時間撹拌した。この溶液を減圧下に除去して、残渣を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(50mLx3)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=1:1)によって精製して、4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(84mg,16%)を黄色のオイルとして得た。MS (ESI): m/z 355.0 [M+1]+。
【0104】
[00101] (工程2) 4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例2)の合成
一般スキーム1、c)条件(分取用HPLCによって精製)、詳しい例については実施例1の工程2を参照のこと。
【0105】
[00102] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.08 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.94 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 4.24 (s, 2H), 3.34 (s, 2H); MS (ESI): m/z 327.1 [M+1]+。
【0106】
実施例3:4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0107】
【化5】
【0108】
[00103] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件b)及びd)を使用して製造した。ここでは、合成の詳細がb)及びd)の実例として含まれる。
【0109】
[00104] (工程1) 4−(7−(イソブチリルオキシ)−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成、スキーム1、b)条件の実例。
【0110】
[00105] 中間体A−1a(450mg,粗製、1.5ミリモル)及びTEA(834μL,6ミリモル)の乾燥DCM(5mL)溶液へ塩化イソブチリル(480μL,4.5ミリモル)を室温で滴下した。この混合物を3時間撹拌した。揮発物質を減圧下に除去した。残渣へTEA(5mL)を加えて、95℃で一晩加熱した。室温へ冷やして濾過し;濾過ケークをEA(10mL)で洗浄した。濾液を濃縮してCombi−Flash(40gシリカゲル、PE:EA=10:0で開始して3:1への勾配、40mL/分、40分、総溶媒量:1.6L)によって精製して、4−(7−(イソブチリルオキシ)−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(80mg,13%)を白色の固形物として得た。
【0111】
[00106] (工程2) 4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例3)の合成、スキーム1、d)条件の実例。
[00107] 4−(7−(イソブチリルオキシ)−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(80mg,0.142ミリモル)のTHF(2mL)溶液へ水酸化リチウム(60mg,1.42ミリモル)の水(1mL)溶液を加えた。この混合物を室温で3時間撹拌した。TLC(PE:EA=3:1)は、この反応が完了していることを示した。有機溶媒を減圧下に除去し、塩基性の水層をDCM(10mLx2)で抽出して1N HCl溶液でpH4〜5へ調整し、沈殿を濾過によって採取し、真空で乾燥させて、実施例3(58mg,94%)を黄色の固形物として得た。
【0112】
[00108] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.99 (s, 1H), 10.80 (s, 1H), 7.99 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.87(d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.38(d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.92 (dd, J = 8.5Hz 2 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 2 Hz, 1H), 2.75(m, 1H), 1.21 (s, 3H), 1.19 (s, 3H); MS (ESI): m/z 325.1 [M+1]+。
【0113】
実施例4:4−(2−シクロペンチル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0114】
【化6】
【0115】
[00109] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化シクロペンタンカルボニルより出発し、条件b)を使用して製造して、4−(7−(シクロペンタンカルボニルオキシ)−2−シクロペンチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルを得た。工程2は、d)条件に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0116】
[00110] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.98 (brs, 1H), 10.79 (brs, 1H), 7.99 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 9 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8 Hz, 2H), 6.91 (dd, J = 9Hz 2 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 2 Hz, 1H), 2.84 (m, 1H), 1.78-1.84 (m, 6H), 1.543 (s, 2H); MS (ESI): m/z 351.1 [M+1]+。
【0117】
実施例5:4−(7−ヒドロキシ−2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0118】
【化7】
【0119】
[00111] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと無水酢酸より出発し、条件a)(ここでは、反応物を室温で2時間撹拌後に3時間還流させて、分取用TLC(PE:EA=3:1)によって精製した)を使用して製造した。工程2は、c)条件に従った。詳しい実例については、実施例1を参照のこと。
【0120】
[00112] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.94 (d, J = 9.0 Hz ,1H) ,6.88 (s, 1H), 2.32 (s, 3H); MS (ESI): m/z 297.1 [M+1]+。
【0121】
実施例6:4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0122】
【化8】
【0123】
[00113] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化2−フェニルアセチルより出発し、条件b)(ここでは、反応を室温で3時間行った)を使用して製造して、4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルを得た。工程2:d)条件(ここでは、反応物をそのまま室温一晩撹拌して、分取用HPLCによって精製した)に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0124】
[00114] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz):δ 8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.29 (q, J = 14.5 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.22 (s, 1H), 7.15 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 6.94 (q, J = 8.5 Hz, 1H), 6.83 (s, 1H), 3.92 (s, 2H); MS (ESI): m/z373.1 [M+1]+。
【0125】
実施例7:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0126】
【化9】
【0127】
[00115] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化チオフェン−2−カルボニルより出発し、条件b)を使用して製造して、チオフェン−2−カルボン酸3−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−7−イルを得た。工程2:d)条件に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0128】
[00116] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.08 (brs, 1H), 10.89 (s, 1H), 8.03 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9 Hz, 1H), 7.77 (dd, J = 5, 1Hz, 1H), 7.41 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.31 (dd, J = 3.5, 1Hz, 1H), 7.08 (m, 1H), 6.94-6.98 (m, 2H); MS (ESI): m/z 365.0 [M+1]+。
【0129】
実施例8:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0130】
【化10】
【0131】
[00117] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化チオフェン−3−カルボニルより出発し、条件b)を使用して製造して、チオフェン−3−カルボン酸3−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−7−イルを得た。工程2は、d)条件に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0132】
[00118] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.01 (brs, 1H), 10.87 (s, 1H), 7.97 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.92 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.78-7.79 (m, 1H), 7.49-7.51 (m, 1H), 7.35 (d, J = 8.5Hz, 2H), 6.98 (d, J = 2 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 9, 2Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 5.5, 1.5Hz, 1H); MS (ESI): m/z 365.0 [M+1]+。
【0133】
実施例9:4−(7−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0134】
【化11】
【0135】
[00119] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化3−メチルブタノイルより出発し、条件b)を使用して製造して、4−(2−イソブチル−7−(3−メチルブタノイルオキシ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルを得た。工程2は、d)条件に従って、PEからの再結晶によって精製した。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0136】
[00120] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 8.00 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.95 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.49 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.40-2.20 (m, 1H), 0.90 (d, J = 7.0 Hz, 6H); MS (ESI): m/z 339.1 [M+1]+。
【0137】
実施例10:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0138】
【化12】
【0139】
[00121] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件a)及びc)を使用して製造した。ここでは、合成の詳細がa)及びc)の別の実例として含まれる。
【0140】
[00122] (工程1) 4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成、a)条件の実例。
中間体A−1a(400mg,1.33ミリモル)のDCM(10mL)溶液へTFAA(1.39g,6.65ミリモル)を5〜10℃で加えた。添加後、この混合物を室温で1時間撹拌し、濃縮し、分取用TLC(PE:EA=2:1)によって精製して、生成物(280mg,56%)を黄色の固形物として得た。
【0141】
[00123] (工程2) 4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例10)の合成、c)条件の実例。
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(23mg,0.06ミリモル)のジオキサン(0.5mL)溶液へ濃HCl(0.5mL)を加えた。この反応混合物を70℃で7時間撹拌し、室温へ冷やして、遠心分離させた。沈殿を水(1mLx2)で濯ぎ、真空で乾燥させて、実施例10(13mg,61%)を白色の固形物として得た。
【0142】
[00124] (データ) 1H NMR (CD3OD,500 MHz): δ 8.09 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.01 (dd, J = 9.0, 2.0 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 2.0 Hz, 1H) ppm. MS (ESI): m/z 351.0 [M+1]+。
【0143】
実施例11:4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0144】
【化13】
【0145】
[00125] (合成) 工程1:4−(7−メトキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチルの合成。
中間体B(100mg,0.33ミリモル)及び二硫化炭素(127mg,1.67ミリモル)のDMF(5.0mL)中の撹拌混合物を0℃へ冷やして、NaH(24mg,1.0ミリモル)を加えた。この反応混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、MeI(94mg,0.67ミリモル)を加えて、この反応混合物を室温で3時間撹拌した。この溶液を水(10mL)で希釈し、DCM(50mLx3)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=3:1)によって精製して、生成物(36mg(純粋ではない),30%)を得た。MS (ESI): m/z 357.0 [M+1]+。
【0146】
[00126] 工程2:4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例11)の合成。
乾燥ジクロロメタン(5.0mL)中の4−(7−メトキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(36mg,0.101ミリモル)を窒素下に0℃へ冷やして、DCM中のBBr3(1.0M,0.2mL,0.202ミリモル)を速やかに加えた。次いで、この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応物を水で反応停止させて、減圧下に濃縮した。残渣を分取用HPLCによって精製して、実施例11(8.2mg,25%)を灰白色の固形物として得た。
【0147】
[00127] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.10 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 2.64 (s, 3H); MS (ESI): m/z329.0 [M+1]+。
【0148】
実施例12:4−(6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0149】
【化14】
【0150】
[00128] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体CとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した(ここでは、反応物を室温で2時間撹拌してから、40℃で4時間加熱して、精製せずに使用した)。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0151】
[00129] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.10 (brs, 1H), 12.25 (brs, 1H), 8.01 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.00 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.16 (s, 1H); MS (ESI): m/z384.9 [M+1]+。
【0152】
実施例13:4−(6−フルオロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0153】
【化15】
【0154】
[00130] 一般スキーム1に従って、工程1において中間体DとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0155】
[00131] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): 8.11 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 7.5 Hz, 2H); MS (ESI): m/z369.0 [M+1]+。
【0156】
実施例14:2−フルオロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0157】
【化16】
【0158】
[00132] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体EとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した(ここでは、粗生成物を精製せずに使用した)。工程2は、c)条件(水系の後処理に、PE:DCM=1:1からの再結晶による精製を続ける)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0159】
[00133] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): 8.05-8.01 (m, 2H), 7.22 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 7.04 (dd, J = 2.0 Hz, 9.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.0 Hz, 1H); MS (ESI): m/z 369.0 [M+1]+。
【0160】
実施例15:3−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0161】
【化17】
【0162】
[00134] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体FとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した(ここでは、水系の後処理を実施して、粗生成物を精製せずに使用した)。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0163】
[00135] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.49 (brs, 1H), 11.28 (brs, 1H), 8.04 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 7.95-7.98 (m, 2H), 7.58 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.06 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz 1H), 7.02 (d, J = 2.0 Hz, 1H); MS (ESI): m/z 385.0 [M+1]+。
【0164】
実施例16:4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0165】
【化18】
【0166】
[00136] (合成) 工程1:2,2−ジフルオロプロパン酸(330mg,2.97ミリモル)のDCM(5mL)溶液へP2O5(3.3g,29.7ミリモル)を室温で加えて、この混合物を2日間撹拌して、2,2−ジフルオロプロパン酸無水物を得た。中間体A−2a(170mg,0.59ミリモル)のTEA(5mL)懸濁液へDCM中の2,2−ジフルオロプロパン酸無水物を0〜10℃で滴下した。この混合物を室温で2時間撹拌した。揮発物質を蒸発させて、残渣を分取用TLC(PE:EA=1:1)によって精製して、4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(45mg,21%)を茶褐色のオイルとして得た。
【0167】
[00137] 工程2:c)条件(DCMからの再結晶による精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
[00138] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ8.07 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 1.95 (t, JF-H = 18.5 Hz, 3H); MS (ESI): m/z 347.0 [M+1]+。
【0168】
実施例17:4−(7−ヒドロキシ−6−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0169】
【化19】
【0170】
[00139] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体GとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0171】
[00140] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.52 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.04 (s, 1H), 3.98 (s, 3H); MS (ESI): m/z 381.0 [M+1]+。
【0172】
実施例18:2−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0173】
【化20】
【0174】
[00141] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体HとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件(DCMからの再結晶による精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0175】
[00142] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): 8.15 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.06-8.04 (m, 2H), 7.47 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.06 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 2.0 Hz ,1H) ; MS (ESI): m/z 385.0 [M+1]+。
【0176】
実施例19:4−(2−(1,1−ジフルオロプロピル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0177】
【化21】
【0178】
[00143] (合成) 工程1:2,2−ジフルオロブタン酸(500mg,4.032ミリモル)のCH2Cl2(30mL)中の撹拌溶液を室温で、P2O5(5.73g,40.32ミリモル)で処理した。この反応混合物を5℃で2日間保存した。この澄明な層を中間体A−2(300mg,1.049ミリモル)のTEA(0.4mL,2.77ミリモル)溶液へ加え;固形物をCH2Cl2(1mLx3)で洗浄して、合わせたDCM溶液も中間体A−2の溶液へ加えた。この反応物を室温で2時間撹拌した。揮発物質を減圧下に除去した。残渣を希HCl溶液に取って、EAで抽出した。この抽出液を濃縮して300mgの橙色の固形物を得て、これをシリカゲルカラム(PE:EA=10:1〜4:1)によって精製して、40mg(収率:10%)の生成物を得た。
【0179】
[00144] 工程2:c)条件(DCMからの再結晶による精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
[00145] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ7.96 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.89 (dd, J = 2.0, 9.0 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.17-2.09 (m, 2H), 0.91 (t, J = 7.5 Hz, 3H); MS (ESI): m/z 347.0 [M+1]+。
【0180】
実施例20:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)−3−メトキシ安息香酸
【0181】
【化22】
【0182】
[00146] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体IとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0183】
[00147] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 13.17 (brs, 1H), 11.21 (brs, 1H), 7.93 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.61 (dd, J = 1.0, 7.5 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.04 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H); MS (ESI): m/z381.1 [M+1]+。
【0184】
実施例21:4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0185】
【化23】
【0186】
[00148] (合成) 工程1:4−(6−ブロモ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチルの合成。
一般スキーム1に従って、中間体JとTFAAより出発し、条件a)(ここでは、粗生成物をシリカゲルカラム(PE/EA=10/1〜3/1)によって精製した)を使用して製造した。
【0187】
[00149] 工程2:4−(6−シアノ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチルの合成。
4−(6−ブロモ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(350mg,0.76ミリモル)のNMP(3mL)溶液へCuCN(340mg,3.8ミリモル)を加えた。この混合物を窒素の防護下に150℃で8時間撹拌した。この混合物を室温へ冷やして水(10mL)で反応停止させて、濾過した。このケークをアセトン(15mLx2)で洗浄した。濾液を真空で濃縮して茶褐色のオイルを得て、これを分取用TLC(PE/EA=5/1)によって精製して、生成物(125mg,40%)を黄色の固形物として得た。MS (ESI): 404.0 [M+1]+。
【0188】
[00150] 工程3:4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸の合成。
4−(6−シアノ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(120mg,0.29ミリモル)のDCM(3mL)溶液へBBr3(0.35mL,4.5ミリモル)を室温で注意深く滴下した。この添加が完了したとき、この混合物を2日間撹拌した。水を注意深く加えて、生じる混合物を酢酸エチル(10mLx2)で抽出した。合わせた有機相を塩水(5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させて濃縮して茶褐色のオイルを得て、これを分取用HPLCによって精製して、実施例21(30mg,27.8%)を黄色の粉末として得た。
【0189】
[00151] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.38 (s, 1H), 8.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.41 (s, J = 8.0 Hz, 2H), 7.09 (s, 1H); MS (ESI): m/z 376.0 [M+1]+。
【0190】
実施例22:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0191】
【化24】
【0192】
[00152] (合成) 工程1:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成。
中間体A−1a(300mg,1.0ミリモル)の乾燥DMF(8mL)溶液へBF3・Et2O(1.2mL)を撹拌しながら10℃で注意深く加え、この添加が完了した後で、この混合物を室温まで0.5時間温めた。次いで、この反応溶液を60℃へ加熱して、MsCl(4mLのDMF中2mL)を加えた。次いで、この反応溶液を95℃まで5時間加熱した。この反応混合物を室温へ冷やして、氷水(30mL)へ注いで、EA(20mLx5)で抽出した。有機相を塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させて真空で濃縮して、茶褐色のオイル(160mg,51.6%)を得た。MS (ESI): m/z 311.0 [M+1]+。
【0193】
[00153] 工程1:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(化合物22)の合成。
化合物:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(160mg,0.52ミリモル)の1,4−ジオキサン(4mL)中の混合物へ濃HCl(2mL)を加えた。この反応混合物を一晩加熱して還流させた。この混合物を室温へ冷やして、濾過した。濾過した塊を水(5mL)で2回、そしてエタノール(2mL)で洗浄して真空で乾燥させて、実施例22(47.3mg,32.5%)を茶褐色の固形物として得た。1H NMR (MeOH-d4, 400 MHz, TMS): δ 8.32 (s, 1H), 8.10 (d, J = 8 Hz, 3H), 7.71 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 6.91 (s, 1H); MS (ESI): m/z 283.1 [M+1]+。
【0194】
[00154] 本実施例は、比較例として含まれる。実施例24に記載の方法によって定量した本化合物のIC50は、135nMであった。
実施例23:中間体の合成
[00155] 上記の実施例において言及した中間体の合成について本明細書で記載する。例示の詳しい方法について、中間体A−1a及び中間体A−2aの記載において下記に示す方法1〜3に記載する。
【0195】
中間体の一般構造
【0196】
【化25】
【0197】
[00156] 中間体A−1a:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチルと中間体A−2a:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成
【0198】
【化26】
【0199】
[00157] 中間体A−1aは、方法1によって初めに合成してから、後に、方法2に記載するより短い手順によって製造した。方法3は、メチルエステル中間体A−2aについて、別の手順で記載する。
【0200】
方法1:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチルの合成
【0201】
【化27】
【0202】
[00158] 工程1:2−(4−アセチルフェニル)酢酸エチル(A−2)の合成。2−フェニル酢酸エチル(A−1)(50.9g,305ミリモル)のCS2(220mL)溶液へAlCl3(93.6g,702ミリモル)を0〜10℃で10分にわたり加えた。添加後、塩化アセチル(30.5mL,427ミリモル)を0〜10℃で10分にわたり加えた。添加後、この反応混合物を一晩ゆっくり加熱して還流させてから、氷冷した5N HCl溶液(600mL)へ注ぎ、EA(200mLx3)で抽出した。合わせた有機相を水(200mL)、飽和NaHCO3(200mL)、及び塩水(200mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、茶褐色のオイルを得た。冷蔵庫においてPE/アセトン(150mL/20mL)で再結晶させて、A−2(13.8g,19%)を黄色の結晶固形物として得た。
【0203】
[00159] 工程2:4−(カルボキシメチル)安息香酸(A−3)の合成。A−2(10.0g,48.5ミリモル)のTHF/H2O(v/v=1/1,100mL)溶液へNaOH(3.88g,97.0ミリモル)を加えた。この反応溶液を室温で一晩撹拌した。THFを減圧下に除去してから、NaOH(17.46g,436.5ミリモル)と水(150mL)を加えた。ヨウ素を室温で少量ずつ加えた。添加後、この反応混合物を室温で30分間、次いで90℃で2時間撹拌した。室温へ冷やして、濾過した。濾液を濃HClでpH=8〜9へ調整した。NaHSO3(固体)を少量ずつ加えると、最後には反応混合物の色が茶褐色から黄色へ変化した。濃HClを加えて、pH=2〜3とした。生じる沈殿を濾過し、水(10mLx2)で洗浄し、真空で乾燥させて、A−3(4.47g,50%)を黄色の粉末として得た。
【0204】
[00160] 工程3:4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)安息香酸エチル(A−4)の合成。A−3(5.0g,27.7モル)のDCM(50mL)溶液へ塩化オキサリル(12.6g,99.2ミリモル)と1滴のDMFを加えた。この混合物を室温で2時間撹拌してから、濃縮乾固させた。EtOH(100mL)を加えて、この混合物を室温で2時間撹拌してから濃縮乾固させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=5:1)によって精製して、A−4(4.587g,70%)を茶褐色のオイルとして得た。
【0205】
[00161] 工程4:2−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)酢酸(A−5)の合成。A−4(3.924g,16.6ミリモル)のTHF/H2O/EtOH(v/v=6/6/1,65mL)溶液へLiOH・H2O(731mg,17.4ミリモル)を加えた。この反応溶液を室温で一晩撹拌した。THFを減圧下に除去して、この水溶液を1N HClでpH=3へ酸性化した。この固形物を濾過して真空で乾燥させて、A−5(3.02g,87%)を黄色の固形物として得た。
【0206】
[00162] 工程5:4−(2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチル(A−6)の合成。A−5(3.02g,14.5ミリモル)のDCM(45mL)溶液へ塩化オキサリル(7.36g,58.0ミリモル)と1滴のDMFを加えた。この混合物を室温で2時間撹拌してから、濃縮乾固させた。残渣をDCM(100mL)に溶かし、AlCl3(3.48g,26.1ミリモル)と1,3−ジメトキシベンゼン(4.0g,29.0ミリモル)を0℃で加えた。添加後、この混合物を室温で一晩撹拌した。1N HCl溶液(100mL)を加えて、DCM(50mLx3)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaHCO3(80mL)と塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=10:1)によって精製して、A−6(3.301g,69%)を茶褐色のオイルとして得た。
【0207】
[00163] 工程6:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチル(A−7)の合成。A−6(3.30g,10.0ミリモル)のDCM(50mL)溶液へBBr3(25.05g,100.0ミリモル)を−78℃で加えた。添加後、この混合物を室温まで温めて、一晩撹拌した。1N HCl溶液(100mL)を注意深く加えた。この混合物を濃縮乾固させた。残渣をEtOH(200mL)に溶かして、再び濃縮乾固させた。この操作を2回繰り返して、残渣をEtOH(80mL)に溶かした。SOCl2(35.69g,300.0ミリモル)を10℃で加えた。この混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=5:1)によって精製して、A−7(中間体A−1a)(2.48g,82%)を黄色の固形物として得た。
【0208】
方法2:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチルの合成
【0209】
【化28】
【0210】
[00164] 工程1:2−(4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸(B−2)の合成。2−(4−ブロモフェニル)酢酸(B−1)(91.3g,0.42モル、1.0当量)のMeOH(1.5L)溶液へ乾燥TEA(85.8g,0.85モル、2.0当量)とPd(dppf)Cl2(3.43g,4.2ミリモル、1%)を加えた。この溶液をCOガス(4MPa)下に120℃で16時間加熱した。次いで、これを濾過して、真空で濃縮した。残渣を500mLのEAと1Lの水に溶かした。この混合物を飽和NaHCO3によってpH=7.5へ中和して、分離させた。無機相をEA(500mLx3)で抽出し、1N HClでpH=5へ酸性化した。濾過と真空での乾燥によって、62.8gのB−2(白色の固形物、収率76%)を得た。MS (ESI): m/z 195.1 [M+1]+。
【0211】
[00165] 工程2:4−(2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(B−3)の合成。B−2(15g,77.3ミリモル)及びDMF(1滴)の無水DCM(150mL)溶液へ塩化オキサリル(33mL,386.0ミリモル)を0〜5℃で撹拌しながら滴下した。添加が完了した後で、この混合物を室温で2時間撹拌した。TLC(PE/EA=3/1,MeOHで止める)がこの反応の完了していることを示したので、揮発物質を蒸発させて、残渣をDCM(20mL)で希釈し、これを次の工程に直接使用した。
【0212】
[00166] 三塩化アルミニウム(16.5g,123.7ミリモル)の無水DCM(80mL)懸濁液へ1,3−ジメトキシベンゼン(21.3g,154.6ミリモル)に続けて上記の塩化アシル溶液を5℃で加えた。この混合物を室温で一晩撹拌し、氷状の1N HCl(200mL)へ注意深く注いで、EA(150mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して濃縮して茶褐色のオイルを得て、これをシリカゲルカラム(PE/EA=5/1)によって精製して、B−3(12g,49.6%)を黄色の固形物として得た。MS (ESI): m/z 315.1 [M+1]+。
【0213】
[00167] 工程3:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチル(中間体A−1a)の合成。B−3(55g,141.6ミリモル)のDCM(600mL)溶液へBBr3(164mL,1.7モル)を−10℃で滴下した。この添加が完了したとき、この混合物を室温で一晩撹拌して、撹拌しながら、砕氷(700g)へ注いだ。揮発物質を蒸発させて黄色の固形物を得て、これを高真空で乾燥させて、無水エタノール(500mL)に溶かした。この溶液へ塩化チオニル(80mL)を0〜10℃で滴下した。この添加が完了したとき、生じる混合物を3時間加熱して還流させた。揮発物質を蒸発させて、残渣をEA(600mL)と飽和炭酸ナトリウム(200mL)の間で分配した。有機相を分離させ、塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して濃縮して茶褐色のスラリーを得て、これをSGC(PE/EA=3/1)によって精製して、中間体A−1a(24.5g,58%)を黄色の固形物として得た。1H NMR (CDCl3, 500 MHz, TMS): δ 12.58 (s, 1H), 8.01 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.05 (brs, 1H), 6.41 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.37 (s, 1H), 4.38 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 4.26 (s, 2H), 1.38 (t, J = 7 Hz, 3H). MS (ESI): m/z 301.1 [M+1]+。
【0214】
方法3:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成:
【0215】
【化29】
【0216】
[00168] 4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体A−2a)の合成:B−2(合成については、方法2,工程1を参照のこと)(50g,257.5ミリモル)のBF3−Et2O(150mL)溶液へレゾルシノール(28.4g,257.5ミリモル)を室温で加えて、この混合物を95℃で5.5時間加熱した。この混合物を室温へ冷やして、氷状の10% Na2CO3溶液(600mL)へ撹拌しながら注いで、EA(500mLx4)で抽出した。合わせた有機層を水(500mLx3)と塩水(500mLx)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(PE:EA=7:1〜4:1)によって精製して、中間体A−2a(10.2g,13.8%)を黄色の固形物として得た。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ 12.38 (s, OH), 10.72 (s, OH), 7.91-7.95 (m, 3H), 7.43 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.28 (d, J = 1 Hz, 1H), 4.42 (s, 2H), 3.84 (s, 3H); MS (ESI): m/z 287.1 [M+1]+。
【0217】
[00169] 中間体B:4−(2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。4−(2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(B−3,中間体A−1aの方法2を参照のこと)(2.5g,8.0ミリモル)のDCM(25mL)溶液へBBr3/DCM(8mL,8ミリモル、DCM中1モル/L)を−78℃で加えた。この添加が完了したとき、この混合物をそのまま室温へ温めて、1時間撹拌した。1N HCl溶液(10mL)を注意深く加えた。この混合物を飽和Na2CO3(20mL)と塩水(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させた。この粗製物を Combi-Flash(PE:EA=10:1)によって精製して、中間体B(600mg,25%)を黄色の固形物として得た。1H NMR (CDCl3, 500 MHz, TMS): δ 12.60 (s, 1H) 8.01 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.71 (d, J = 9.0 Hz ,1H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.42 (d, J = 9.0 Hz ,2H) ,4.27 (s, 2H), 3.90 (s, 3H) ,3.83 (s, 3H); MS (ESI): m/z 301.1 [M+1]+。
【0218】
[00170] 中間体C:4−(2−(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。B−2と4−クロロベンゼン−1,3−ジオールより出発して、方法3,中間体A−2aに記載の手順に従った。粗生成物を精製せずに使用した。MS (ESI): m/z321.0 [M+1]+。
【0219】
[00171] 中間体D:4−(2−(5−フルオロ−2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。B−2と4−フルオロベンゼン−1,3−ジオールより出発して、方法3,中間体A−2に記載の手順に従った。MS (ESI): m/z 305.0 [M+1]+。
【0220】
[00172] 中間体E:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−2−フルオロ安息香酸メチルの合成
[00173] 工程1:1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼンの合成。1−ブロモ−2−フルオロ−4−メチルベンゼン(2.5g,13.3ミリモル)のトリフルオロメチルベンゼン(25mL)溶液へNBS(2.35g,13.3ミリモル)及びAIBN(945mg,6.7ミリモル)の混合物を、85℃で30分間、5分量で加えた。この混合物を85℃で3時間撹拌した。不溶物を濾過して除いて、濾液を蒸発させて、1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼン(2.7g,77%)を淡黄色のオイルとして得て、これを次の工程に直接使用した。
【0221】
[00174] 工程2:2−フルオロ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼン(5.4g,20.4ミリモル)のMeOH(150mL)溶液へTEA(2.8mL,20.4ミリモル)とPd(dppf)Cl2(1.3g,2ミリモル)を加えた。この混合物をCO(0.5MPa)下に60℃で2時間撹拌した。追加のTEA(4.3mL,30.6ミリモル)を加えて、この混合物をCO(4MPa)下に120℃まで20時間加熱した。溶媒を真空で除去して、残渣を Combi-Flash(80gのシリカゲル、PE/EA=10:0で開始して1:3への勾配、60mL/分、60分、総溶媒量:3.6L)によって精製して、生成物(1.5g,33%)を無色のオイルとして得た。MS (ESI): m/z 227.1 [M+1]+。
【0222】
[00175] 工程3:2−(3−フルオロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成。中間体A−1aの合成の方法1における、化合物A−4の化合物A−5への変換に記載の手順に従った。MS (ESI): m/z 213.0 [M+1]+。
【0223】
[00176] 工程4:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−2−フルオロ安息香酸メチル(中間体E)の合成。2−(3−フルオロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸を使用して、方法3(中間体A−2aを参照のこと)に記載の手順に従ったが、ここでは反応物を60℃で一晩、そして95℃で2時間撹拌した。1H NMR (CDCl3-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.47 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.94 (t, J = 8.0 Hz ,1H), 7.69 (d,J = 8.5 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 11.5 Hz, 1H) , 6.43 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 4.26 (s, 2H), 3.94 (d, J = 2.5 Hz, 3H); MS (ESI): m/z 305.1 [M+1]+。
【0224】
[00177] 中間体F:3−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成
[00178] 工程1:3−クロロ−4−メチル安息香酸メチルの合成。3−クロロ−4−メチル安息香酸(20g,117ミリモル)のMeOH(200mL)溶液へ塩化チオニル(25.6mL,352ミリモル)を0℃で撹拌しながら滴下した。この混合物を室温で5日間撹拌した。この反応物を濃縮した。残渣をEA(500mL)に溶かし、10% Na2CO3(250mLx2)、水(250mL)、及び塩水(250mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して濃縮して、生成物(20.8g,96%)を黄色の固形物として得た。
【0225】
[00179] 工程2:4−(ブロモメチル)−3−クロロ安息香酸メチルの合成。3−クロロ−4−メチル安息香酸メチルを使用して中間体Eの合成中の工程1に従って、生成物(10g,78%)を得た。MS (ESI): m/z263.0 [M+1]+。
【0226】
[00180] 工程3:3−クロロ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。4−(ブロモメチル)−3−クロロ安息香酸メチル(10g,37.95ミリモル)のMeOH(300mL)溶液へTEA(4.2mL,30.36ミリモル)とPd(dppf)Cl2(2.8g,3.8ミリモル)を加えた。この反応物を0.4MPa CO気圧下に60℃で3時間加熱し、濾過して濃縮した。残渣を Combi-Flash(120gのシリカゲル、PE/EA=10:0で開始して5:1への勾配による、60mL/分、60分、総溶媒量:3.6L)によって精製して、生成物(2.7g,29%)を白色の固形物として得た。MS (ESI): m/z 243.0 [M+1]+。
【0227】
[00181] 工程4:2−(2−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成。中間体A−1aの合成の方法1における、化合物A−4の化合物A−5への変換に記載の手順に従った。
【0228】
[00182] 工程5:3−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体F)の合成。2−(2−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸を使用して、方法3(中間体A−2aを参照のこと)に記載の手順に従った。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.09 (s, 1H), 10.72 (brs, 1H), 7.97-7.88 (m, 3H), 7.57 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.44 (dd, J = 2.5, 8.5 Hz, 1H), 6.30 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 4.62 (s, 2H), 3.87 (s, 3H); MS (ESI): m/z 321.1 [M+1]+。
【0229】
[00183] 中間体G:4−(2−(2,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成
[00184] 工程1:酢酸4−ホルミル−2−メトキシフェニルの合成。4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(10g,66ミリモル)の30mLのTHF溶液へAc2O(8g,80ミリモル)とTEA(20g,198ミリモル)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。揮発物質を蒸発させて15gの生成物をオイルとして得て、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0230】
[00185] 工程2:酢酸4−(ホルミルオキシ)−2−メトキシフェニルの合成。酢酸4−ホルミル−2−メトキシフェニル(15g,77ミリモル)のCH2Cl2(100mL)溶液へm−CPBA(31g,154ミリモル)を加えた。この溶液を50℃で2.5時間還流させた。この溶液を飽和Na2SO3溶液(50mL)、飽和Na2CO3溶液(50mL)、及び塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して真空で濃縮して、16gの粗生成物を白色の固形物として得て、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0231】
[00186] 工程3:4−メトキシベンゼン−1,3−ジオールの合成。酢酸4−(ホルミルオキシ)−2−メトキシフェニル(16g,76ミリモル)のTHF(50mL)/H2O(50mL)溶液へLiOH(7.7g,184.2ミリモル)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。揮発物質を減圧下に除去した。残渣をEA(50mLx3)で抽出した。有機相を塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して、真空で濃縮して黒色のオイルを得て、これをシリカゲルカラム(PE:EA=3:1)によって精製して、4.8g(40%)の生成物を茶褐色の固形物として得た。
【0232】
[00187] 工程4:4−(2−(2,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体G)の合成。4−メトキシベンゼン−1,3−ジオールを使用して、方法3(中間体Aを参照のこと)に記載の手順に従った(ここでは、反応物を60℃で一晩加熱した)。MS (ESI): m/z317.0 [M+1]+。
【0233】
[00188] 中間体H:2−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。
[00189] 工程1:1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−クロロベンゼンの合成。1−ブロモ−2−クロロ−4−メチルベンゼンを使用して、中間体Eの工程1に従った。
【0234】
[00190] 工程2:2−クロロ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。中間体Eの工程2に従った。MS (ESI): m/z 243.0 [M+1]+。
[00191] 工程3:2−(3−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成。中間体Fの工程4に従った。MS (ESI): m/z 229.0 [M+1]+。
【0235】
[00192] 工程4:2−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体H)の合成。中間体Fの工程5に従った。MS (ESI): m/z 321.7 [M+1]+。
【0236】
[00193] 中間体I:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−3−メトキシ安息香酸メチルの合成。
[00194] 工程1:3−メトキシ−4−メチル安息香酸メチルの合成。3−メトキシ−4−メチル安息香酸より出発した(中間体Fの工程1を参照のこと)。MS (ESI): m/z 181.1 [M+1]+。
【0237】
[00195] 工程2:4−(ブロモメチル)−3−メトキシ安息香酸メチルの合成(中間体Fの工程2を参照のこと)。MS (ESI): m/z 259.1 [M+1]+。
[00196] 工程3:3−メトキシ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成(中間体Fの工程3を参照のこと)。MS (ESI): m/z 239.1 [M+1]+。
【0238】
[00197] 工程4:2−(2−メトキシ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成(中間体Fの工程4を参照のこと)。MS (ESI): m/z 225.1 [M+1]+。
[00198] 工程5:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−3−メトキシ安息香酸メチルの合成(中間体Fの工程5を参照のこと)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.33 (s, 1H), 10.68 (s, 1H), 7.93 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.55 (dd, J = 1.0, 7.0 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.41 (dd, J = 2.0, 9.0 Hz, 1H), 6.27 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 4.36 (s, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.79 (s, 3H); MS (ESI): m/z 317.1 [M+1]+。
【0239】
[00199] 中間体J:4−(2−(5−ブロモ−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。
[00200] 工程1:4−(2−(5−ブロモ−2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。B−2と1−ブロモ−2,4−ジメトキシベンゼンを使用して、方法2の工程2に従った(中間体Aを参照のこと)。MS (ESI): m/z 395.0 [M+1]+。
【0240】
[00201] 工程2:4−(2−(5−ブロモ−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体J)の合成。4−(2−(5−ブロモ−2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(1.1g,2.8ミリモル)のDCM(100mL)溶液へAlCl3(7.4g,56ミリモル)を加えて、この混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、この混合物を氷水(100mL)へ注いで、DCM(20mLx4)で抽出した。有機相を塩水(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して濾液を真空で濃縮して茶褐色のオイルを得て、これを分取用TLC(PE/EA=3/1)によって精製して、中間体J(750mg,71%)を淡黄色の固形物として得た。MS (ESI): m/z 379.0 [M+1]+。
【0241】
実施例24:GSNORアッセイ
[00202] 様々な化合物について、GSNOR活性を阻害するその能力を in vitro で試験した。GSNORの発現及び精製については、Biochemistry 2000, 39, 10720-10729 に記載されている。
【0242】
[00203] GSNORの発酵処理:100μg/mlのアンピシリンを含有する2XYT培地中のGSNORグリセロールストックの穿刺物より、37℃で一晩のインキュベーション後にプレ培養物を増殖させた。次いで、アンピシリンを含有する新鮮な2XYT(4L)へ細胞を加えて、37℃で0.6〜0.9のOD(A600)にまで増殖させた後で誘導した。20℃で一晩のインキュベーションにおいて、GSNOR発現を0.1%アラビノースで誘導した。
【0243】
[00204] GSNORの精製:大腸菌細胞ペーストを窒素キャビテーションによって溶解させて、澄明化した溶解物をAKTA FPLC(アマーシャム・ファルマシア)でのNiアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。このカラムを、20mMトリス(pH8.0)/250mM NaClにおいて0〜500mMのイミダゾール勾配で溶出させた。Smt−GSNOR融合物を含有する溶出GSNOR画分をUlp−1で、4℃で一晩消化させてアフィニティータグを外してから、同じ条件下にNiカラムで再操作した。GSNORをフロースルー画分に回収して、結晶解析のためには、20mMトリス(pH8.0)、1mM DTT、10μM ZnSO4中のQ−セファロース及びヘパリンフロースルークロマトグラフィーによってさらに精製する。
【0244】
[00205] GSNORアッセイ:GSNO溶液と酵素/NADH溶液は、それぞれの日に用時作製する。これらの溶液は、濾過して、そのまま室温へ温める。GSNO溶液:100mM NaPO4(pH7.4)、0.480mM GSNO。396μLのGSNO溶液に続いて、DMSO中の試験化合物(又は、完全な反応対照ではDMSOのみ)の8μLをキュベットへ加えて、ピペット先端で混合する。試験すべき化合物は、100% DMSO中10mMのストック濃度で作製する。2倍の連続希釈を100% DMSOで行う。アッセイ液中のDMSOの最終濃度が1%となるように、各希釈液の8μLをアッセイ液へ加える。試験する化合物の濃度は、100〜0.003μMの範囲に及ぶ。酵素/NADH溶液:100mM NaPO4(pH7.4)、0.600mM NADH、1.0μg/mL GSNOレダクターゼ。396μLの酵素/NADH溶液を先のキュベットへ加えて、この反応を開始させる。キュベットを Cary 3E UV/可視分光光度計に入れて、340nm吸光度/分の変化を25℃で3分間記録する。アッセイは、各化合物濃度について同一3検体で行う。SigmaPlot の酵素反応速度分析モジュールでの標準曲線解析を使用して、各化合物のIC50を計算する。
【0245】
[00206] 最終アッセイ条件:100mM NaPO4(pH7.4)、0.240mM GSNO、0.300mM NADH、0.5μg/mL GSNOレダクターゼ、及び1% DMSO。最終容量:800μL/キュベット。
【0246】
[00207] GSNOR阻害剤の活性:実施例1〜21に記載の化合物について、GSNOR阻害活性を定量して、IC50値を入手した。GSNOR阻害剤の化合物、実施例1〜21は、約5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害剤の化合物、実施例1、2、3、5、6、10、13、14、15、16、18、19、20は、約0.5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害剤の化合物、実施例1、10、14、15、16、18、及び20は、約0.1μM未満のIC50を有した。
【0247】
実施例25:マウス薬物動態(PK)試験
実験モデル
[00208] マウスを使用して、GSNOR阻害剤の薬物動態を決定する。この種は、経口(PO)と静脈内(IV)の両方で試験品を投与することによって化合物のバイオアベイラビリティを評価するのに広く使用されている。IV又はPO投与のいずれかによる雄性BALB/cにおいてピーク活性の時点で血漿曝露を評価することによって、GSNOR阻害剤の効力を比較することができる。
【0248】
材料と方法
GSNOR阻害剤のIV投与
[00209] GSNOR阻害剤の化合物10をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)/10% Solutol(HS15)の澄明な溶液に戻し、0.2mg/mLの濃度を得て、マウスへ単回IV用量(2mg/kg)として投与した。動物に外側尾静脈より投薬した。イソフルラン麻酔下での心臓穿刺によって指定の時点(0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、16、24時間)で血液試料(各動物で1mLまでの血液)を採取した。血液は、Li−ヘパリンを含有する試験管へ採取した。この血液試料を氷上に保存して、採取からほぼ30分以内に遠心分離させた。ラベルを付けたポリプロピレン管へ血漿を移して、LC/MS/MSによって分析するまで、−70℃で冷凍した。
【0249】
GSNOR阻害剤のPO投与
[00210] GSNOR阻害剤、化合物10を40%プロピレングリコール/40%炭酸プロピレン/20%の5%ショ糖の澄明な溶液へ戻し、2mg/mLの濃度を得て、マウスへ単回経口用量(10mg/kg)としてガバージュにより投与した。イソフルラン麻酔下での心臓穿刺によって投薬後0.25、0.5、1、2、4、8、12、16、20、及び24時間で血液試料を採取した。血液は、Li−ヘパリンを含有する試験管へ採取した。この血液試料を氷上に保存して、採取からほぼ30分以内に遠心分離させた。ラベルを付けたポリプロピレン管へ血漿を移して、LC/MS/MSによって分析するまで、−70℃で冷凍した。
【0250】
LC/MS/MS分析
[00211] 各時点での血漿試料について、LC−MS/MSを使用して、1ng/mLの定量下限(LLOQ)で分析した。血漿を分析して各試料中のGSNOR阻害剤の量を定量して、それぞれのGSNOR阻害剤について、関連するマトリックスにおいて回帰曲線を作成した。
【0251】
[00212] IV投与とPO投与の両方についてPK変数を計算するためにWinNonlin分析を使用した:
IV部分のPK変数−AUClast;AUCINF;T1/2;Cl;Vss;Cmax;MRT
PO部分のPK定数−AUClast;AUCINF;T1/2;Cmax;Cl,MRT。
【0252】
[00213] 上記のPK変数に加えて、バイオアベイラビリティ(%F)の計算を実施した。
結果
[00214] IV投与:GSNOR阻害剤、化合物10の血漿レベルを投薬後24時間まで測定した。
【0253】
[00215] 経口投与:化合物10の血漿レベルを投薬後24時間まで測定し、曲線下面積に基づいて、平均の経口バイオアベイラビリティを定量した。化合物10は、17パーセントより高い経口バイオアベイラビリティを有した。
【0254】
実施例26.実験喘息におけるGSNORiの効力
実験喘息モデル:
[00216] 卵白アルブミン(OVA)誘発喘息のマウスモデルを使用して、GSNOR阻害剤について、メタコリン(MCh)誘発性気管支収縮/気道過敏反応に対する効力をスクリーニングする。これは、ヒトの喘息に類似した急性アレルギー喘息の表現型を提示する、広く使用されていて、十分に特徴づけられたモデルである。MChでのチャレンジに先立ってGSNOR阻害剤を投与する予防プロトコールを使用して、GSNOR阻害剤の効力について評価する。全身プレチスモグラフィー(Penh;Buxco)を使用して、増加用量のMChでのチャレンジに応じた気管支収縮応答を評価する。肺炎症の尺度として気管支肺胞洗浄液(BALF)への好酸球浸潤物の量も定量する。GSNOR阻害剤の効果を担体と陽性対照としてのコンビベント(吸入;IH)と比較する。
【0255】
材料と方法
アレルゲン感作及びチャレンジのプロトコール
[00217] PBS中のOVA(500μg/ml)を等量の蒸留水中10%(w/v)硫酸アルミニウムカリウムと混合して、10N NaOHを使用してpH6.5へ調整後、室温で60分間インキュベートする。750xgで5分間の遠心分離後、OVA/ミョウバンペレットを蒸留水中の元の容量へ再懸濁させる。0日目に、ミョウバンと複合させた100μg OVA(生理食塩水中500μg/mLの0.2mL)の腹腔内(IP)注射液をマウスに与える。生理食塩水中のケタミン及びキシラジン(それぞれ、0.44及び6.3mg/mL)の0.2mL混合物のIP注射によってマウスを麻酔して、ボード上に背臥位で置く。各動物の舌の裏側に250マイクログラム(2.5mg/mlの100μl)のOVA(8日目)と125μg(2.5mg/mlの50μl)のOVA(15、18、及び21日目)を入れる。
【0256】
肺機能検査(Penh)
[00218] 有意識で自由に動き、自発的に呼吸するマウスにおける最後のOVAチャレンジから24時間後に、Buxco チャンバ(ノースカロライナ州ウィルミントン)を使用する全身プレチスモグラフィーで、メタコリンへの in vivo 気道反応性を測定する。超音波ネブライザーによって産生する、エアゾール化した生理食塩水又は増加用量のメタコリン(5、20、及び50mg/mL)でマウスを2分間チャレンジする。気管支収縮の度合いは、同一マウスの気道抵抗性、インピーダンス、及び胸腔内圧の測定値と相関する、無次元の計算値である向上休止(Penh)として表す。それぞれの噴霧化チャレンジ後4分間のPenh読取り値を取って、平均化する。Penhは、以下のように計算する:Penh=[(Te/Tr−1)x(PEF/PIF)](ここでTeは無効化時間であり、Trは弛緩時間であり、PEFはピーク呼気流量であり、PIFはピーク吸気流量x0.67係数である)。最大値からユーザー定義の最大値百分率へ変化させるボックス圧力の時間が弛緩時間を表す。Tr測定は、最大ボックス圧力で始めて、40%で終える。
【0257】
BALF中の好酸球浸潤
[00219] 気道過敏反応性の測定の後で、マウスを心臓穿刺によって失血させてから、両肺より、又は左肺を主気管支で結紮後に右肺より、BALFを採取する。0.05mLアリコートより全BALF細胞を計数し、残る体液を4℃、200xgで10分間遠心分離させる。細胞ペレットを10% BSA含有生理食塩水に再懸濁させて、スライドガラス上に塗抹標本を作製する。好酸球を0.05%エオジン水溶液と蒸留水中5%アセトンで5分間染色し、蒸留水で濯いで、0.07%メチレンブルーで対比染色する。
【0258】
GSNOR阻害剤と対照
[00220] GSNOR阻害剤をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)において0.00005〜3mg/mLに及ぶ濃度で戻す。GSNOR阻害剤をマウスへ単回用量(10mL/kg)として、静脈内(IV)又は経口ガバージュのいずれかにより投与する。投薬は、MChチャレンジの30分〜24時間前に実施する。GSNOR阻害剤の効果を、同じやり方で投薬したPBS担体と比較する。
【0259】
[00221] すべての試験において、陽性対照としてコンビベント(Combivent)を使用する。コンビベント(ベーリンガー・インゲルハイム)は、その生成物が供給される吸入器デバイスを使用して肺へ投与されるが、マウスへの投与には、ピペット先端を使用して適用する。コンビベントは、MChチャレンジの48時間、24時間、及び1時間前に投与する。コンビベントのそれぞれのパフ(又は用量)は、18μgの臭化イパトロピウム(IpBr)と103μgの硫酸アルブテロール、又はほぼ0.9mg/kgのIpBrと5mg/kgのアルブテロールの用量を提供する。
【0260】
統計分析
[00222] ベースライン、生理食塩水、及び増加用量のMChチャレンジに対するPenhの曲線下面積値を、GraphPad Prism 5.0(カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して計算して、それぞれの(IV又は経口投与)担体対照のパーセントとして表す。片側ANOVA,Dunnetts(JMP 8.0,SAS研究所、ノースカロライナ州キャリー)を使用して、各試験内の処置群とそれぞれの担体対照群の間の統計学的な差を計算する。処置群とそれぞれの担体対照群の間のp値が0.05未満であれば、有意差があるとみなす。
【0261】
実施例27:実験炎症性腸疾患(IBD)におけるGSNOR阻害剤の効力
実験モデル
[00223] マウスのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性IBDの急性モデルを使用して、この疾患に対するGSNOR阻害剤の効力を探究する。急性DSS誘発IBDは、このヒト疾患で観察されるものに似た結腸中の病理学的変化を誘発する、広く使用されてよく特徴付けられたモデルである。このモデルとヒトの疾患では、結腸の陰窩内の上皮細胞が破壊されて、上皮壁の機能不全と続発する組織炎症、浮腫、及び潰瘍形成をもたらす。GSNOR阻害剤療法は、s−ニトロソグルタチオン(GSNO)レベルを回復させることによってIBDに益して、それにより上皮壁の機能不全を予防するか又は逆転させる可能性がある。
【0262】
[00224] 飲料水中のDSSの数日にわたる投与によって、実験IBDを誘発する。GSNOR阻害剤を静脈内(IV)投薬により連日投与する。スコア=0(正常組織)〜スコア=4(潰瘍性の組織傷害と顕著な病理学的変化)の範囲に及ぶ5点尺度を使用して、内視鏡と組織病理学により処置の効果を評価する。GSNOR阻害剤の効果を担体処置対照と比較する。本試験ではコルチコステロイドのプレドニンを陽性対照として使用して、経口投薬により連日投与する。無処置マウスも正常組織対照として評価する。
【0263】
材料と方法
[00225] 飲料水中3% DSSの試験0日目〜5日目での投与によって、実験IBDを誘発する。GSNOR阻害剤をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)中0.2及び2mg/mlの濃度へ戻す。各マウスに1及び10mg/kg/日の用量で0.1ml GSNOR阻害剤溶液を連日IV投与してマウスを処置する。GSNOR阻害剤の投薬は、DSS投与の2日前に開始して、試験の最終日まで(−2日目〜7日目)継続する。担体対照としてPBSを使用して、GSNOR阻害剤と同じやり方で投与する。本試験の陽性対照としてコルチコステロイドのプレドニゾロンを使用して、毎日(−2日目〜7日目)3mg/kg/日の用量で経口投与する。
【0264】
[00226] 薬物処置の効果は、7日目に内視鏡と組織病理学により評価する。初めにマウスを吸入イソフルランで麻酔して、獣医学用内視鏡(Karl Storz Veterinary Endoscopy America 社、カリフォルニア州ゴレタ)を使用する内視鏡検査へ処す。各マウスについて、内視鏡スコア基準を使用して、粘膜損傷をスコア化する。内視鏡スコアの0は正常であり、1は血管分布の欠損であり、2は血管分布の欠損と破砕性であり、3は破砕性と糜爛であり、そして4は潰瘍形成と出血である。内視鏡検査に続き、二酸化窒素吸入での窒息によりマウスを安楽死させる。次いで、結腸切片をホルマリン固定し、パラフィン包埋、切片化して、ヘマトキシリン−エオジンで染色する。光学顕微鏡法により結腸切片を検査して、GI病理学の特別な訓練を受けた認定獣医病理学者によって、盲検形式で評価する。炎症、浮腫、及び壊死に基づいて、上皮、結合組織、及び粘膜下組織への病理学的変化をスコア化する(0のスコアは正常であり、1は微小であり、2は軽度であり、3は中等度であり、そして4は顕著な変化である)。
【0265】
実施例28:実験慢性閉塞性肺疾患(COPD)におけるGSNOR阻害剤の効力
実験COPDモデル
[00227] マウスのエラスターゼ誘発性COPDの急性モデルを使用して、この疾患に対するGSNOR阻害剤の効力を探究する。エラスターゼ誘発性COPDは、このヒト疾患で観察されるものに似た肺中の病理学的変化を誘発する、広く使用されてよく特徴付けられたモデルである。このモデルとヒトの疾患では、気道閉塞、肺炎症、及び気胞拡大が明白である。GSNOR阻害剤療法は、これらの化合物の気管支拡張作用と抗炎症作用を介してCOPDに益する可能性がある。
【0266】
[00228] エラスターゼ、パパイン、及びブタ膵臓エラスターゼ(PPE)の肺中への数日にわたる投与によって、実験COPDを誘発させる。GSNOR阻害剤は、経口投薬により連日投与する。メタコリン(MCh)エアゾールチャレンジに応答する気管支収縮を弱める、肺炎症を減少させる、そして肺胞における気胞拡大を抑えるGSNOR阻害剤の能力を評価することによって、効力を決定する。GSNOR阻害剤の効果を担体処置対照と比較する。本試験では、好中球及び単球の動員を妨げる、連日の経口SP CXC受容体2/受容体1(SP CXCR2/1)アンタゴニストと吸入Flovent(フルチカゾン;コルチコステロイド)の組合せを陽性対照として使用する。
【0267】
材料と方法
[00229] 80μgパパインと20U/mg PPE/マウス/日の気管内(IT)点滴注入による試験0日目〜7日目の投与によって実験COPDを誘発させる。GSNOR阻害剤は、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)中0.01、0.1、及び1mg/mlの濃度へ戻す。0.1、1、及び10mg/kg/日の用量のために各マウスへ0.1ml GSNORi溶液を連日経口投与(ガバージュ)して、マウスを処置する。担体対照としてPBSを使用して、連日の経口投薬により投与する。低分子アンタゴニストのSP CXCR2/R1(シェリングプラウ/メルク)[好中球及び単球の動員のためのサイトカイン走化性物質に対して受容体をブロックする]をコルチコステロイドのFlovent(グラクソ)と組み合わせて、本試験の陽性対照として使用する。SP CXCR2/R1は、50mg/kg/日で経口投薬する。Floventは、220μg/マウス/日で吸入により投薬する。マウスの第一群をGSNOR阻害剤、担体対照、又は陽性対照で7日間(試験8日目〜14日目)処置し、一方マウスの第二群は、GSNOR阻害剤、担体対照、又は陽性対照で14日間(試験8日目〜21日目)処置する。
【0268】
[00230] 薬物処置の効果は、処置後7日目と14日目に、メタコリン誘発性気管支収縮の減弱化(気管支拡張効果)、肺炎症の減弱化、及び肺胞中の気胞拡大の抑制(処置後14日目のみ)を測定することによって評価する。
【0269】
気管支拡張効果
[00231] メタコリンに対する in vivo 気道反応性は、有意識で自由に動き、自発的に呼吸するマウスにおいて、Buxco チャンバ(ノースカロライナ州ウィルミントン)を使用する全身プレチスモグラフィーで測定する。超音波ネブライザーによって発生させるエアゾール化生理食塩水又は増加用量(5、20、及び50mg/ml)のメタコリンでマウスを2分間チャレンジする。気管支収縮の度合いは、同一マウスの気道抵抗性、インピーダンス、及び胸腔内圧の測定値と相関する、無次元の計算値である向上休止(Penh)として表す。それぞれの噴霧化チャレンジ後4分間のPenh読取り値を取って、平均化する。Penhは、以下のように計算する:Penh=[(Te/Tr−1)x(PEF/PIF)](ここでTeは無効化時間であり、Trは弛緩時間であり、PEFはピーク呼気流量であり、PIFはピーク吸気流量x0.67係数である)。最大値からユーザー定義の最大値百分率へ変化させるボックス圧力の時間が弛緩時間を表した。Tr測定は、最大ボックス圧力で始めて、40%で終えた。
【0270】
抗炎症効果
[00232] 気道過敏反応性の測定の後で、マウスを心臓穿刺によって失血させてから、左肺を主気管支で結紮後に右肺より、気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取する。全BALF細胞を計数し、残る体液を4℃、200xgで10分間遠心分離させる。細胞ペレットを10%ウシ血清アルブミン(BSA)含有生理食塩水に再懸濁させて、サイトスピンを使用してスライドガラス上に塗抹標本を作製する。光学顕微鏡法による白血球(WBC)分析血液像算定用に Diff-Quik で細胞を染色する。上皮細胞を計数して、細胞全数より差し引く。標準の形態判定基準を使用して好酸球、マクロファージ、好中球、及びリンパ球の比率を算定し、白血球(WBC)全数の百分率として表す。
【0271】
[00233] 抗炎症効果の追加のパラメータとして、BALF中の好中球及び単球の走化性物質のレベルを抑える処置の能力も評価する。好中球と単球のそれぞれの動員のケモカインである、GROα(増殖関連腫瘍遺伝子α)としても知られるKC(角化細胞走化性物質)とJE(MCP−1,単球走化性タンパク質)について、イムノアッセイを使用して測定する。
【0272】
気胞拡大の抑制
[00234] 10%緩衝化ホルムアルデヒドを含む25cm水圧での一定の陽圧下で両肺を膨張させてから、灌流固定する。この固定肺をパラフィンに包埋し、ヘマトキシリン及びエオジンで染色させ、光学顕微鏡法により検査する。平均線形切片(Lm)と平均等価肺胞径(D2)を計算することによって、気胞拡大を形態学的に定量する。
【0273】
[00235] 当業者には、本発明の精神及び範囲より逸脱することなく、本発明の方法及び組成物において様々な変更態様(modifications)及び変形態様(variations)を作製し得ることが明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼの新規クロモン阻害剤、かかる阻害剤を含んでなる医薬組成物、それらを作製して使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 一酸化窒素という化合物は、化学式がNOの気体である。NOは、生体系において知られている数少ない気体シグナル伝達分子の1つであり、様々な生体事象を制御するのに重要な役割を担っている。例えば、内皮は、NOを使用して、細動脈壁の周囲にある平滑筋へ弛緩するシグナルを伝達して、血管拡張と低酸素組織への血流増加をもたらす。NOは、平滑筋増殖、血小板機能、神経伝達を調節することにも関与して、宿主防御においてある役割を担っている。一酸化窒素はきわめて反応性で、数秒の存続時間を有するが、膜を通って自由に拡散することも、多くの分子標的へ結合することもできる。これらの特性により、NOは、隣接細胞間と細胞内部の生体事象を制御することが可能な理想のシグナル伝達分子となっている。
【0003】
[0003] NOは、フリーラジカルの気体であり、それにより反応性で不安定となるので、NOは、in vivo で短命で、生理学的条件下では3〜5秒の半減期を有する。酸素の存在時に、NOは、チオールと結合して、S−ニトロソチオール(SNO)と呼ばれる安定なNO付加物の生物学的に重要な群を産生することができる。この安定したNOのプールは、生理活性NOの供給源として作用すると仮定されて、細胞のホメオスタシスにおけるNOの中心性があるとすれば、それ自体として、健康や病気において決定的に重要であるらしい(Stamler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7674-7677 (1992))。タンパク質−SNOは、心臓血管、呼吸、代謝、胃腸、免疫、及び中枢神経系の機能において広汎な役割を担う(Foster et al., 2003, Trends in Molecular Medicine 第9巻、第4号、2003年4月、160-168 頁)。生体系において最も研究されているSNOの1つは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)であり(Gaston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10957-10961 (1993))、効率的なトランスニトロソ化剤であって、細胞内の他のS−ニトロソ化タンパク質と平衡状態を維持しているらしい(Liu et al., 2001)ので、NOシグナル伝達において新興の主要な調節因子である。NO−SNO連続性におけるこのきわめて重要な位置があるとすれば、GSNOは、NO調節が薬理学的に正当化されるときに考慮すべき療法上有望な標的を提供する。
【0004】
[0004] NOホメオスタシスと細胞SNOレベルの主要な調節因子としてのGSNOのこの理解の観点から、一酸化窒素シンターゼ(NOS)酵素によるNOラジカルの産生より下流で生じる、GSNO及びSNOタンパク質の内因性の産生を検証することに諸研究が集中してきた。より最近になって、利用可能なGSNOの濃度と、必然的に利用可能なNOとSNOを制御するのに重要な役割を有する、GSNOの酵素的異化についての理解が増してきた。
【0005】
[0005] このGSNO異化反応の理解にとって重要なことに、研究者は、最近、高度に保存されたS−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)を同定した(Jensen et al., Biochem J., 331: 659-668 (1998); Liu et al., Nature, 410: 490-494 (2001))。GSNORは、グルタチオン依存型ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(GS−FDH)、アルコールデヒドロゲナーゼ3(ADHクラス3)(Uotila and Koivusalo,「補酵素と補因子(Coenzymes and Cofactors)」D. Dolphin 監修、517-551 頁(ニューヨーク、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、1989))、及びアルコールデヒドロゲナーゼ5(ADH5)としても知られている。重要にも、GSNORは、他の基質よりもGSNOに対してより大きな活性を示し(Jensen et al., 1998; Liu et al., 2001)、細菌、植物、及び動物において重要なタンパク質及びペプチド脱ニトロソ化活性に媒介するようである。GSNORは、真核生物において主要なGSNO代謝酵素であるらしい(Liu et al., 2001)。従って、GSNOR活性が低いか又は非存在である生体コンパートメント(例、気道被覆液)では、GSNOが蓄積する可能性がある(Gaston et al., 1993)。
【0006】
[0006] GSNORが欠乏している酵母では、この酵素の基質ではないS−ニトロシル化タンパク質が蓄積するが、このことは、GSNOがSNO−タンパク質と平衡して存在することを強く示唆する(Liu et al., 2001)。GSNOと、従ってSNO−タンパク質の周囲レベルに対する正確な酵素的制御があることは、生理学的要求を超過してNOが産生されるニトロソ化ストレスに抗する保護を含めて、一群の生理学的及び病理学的機能にわたって、GSNO/GSNORが種々の役割を担い得るとする可能性を提起する。実際、GSNOは、呼吸の促進(Lipton et al., Nature, 413:171-174 (2001))から、嚢胞性線維症の膜貫通調節因子の調節(Zaman et al., Biochem Biophys Res Commun, 284:65-70 (2001))、血管緊張、血栓症、及び血小板機能の調節(de Belder et al., Cardiovasc Res. 1994 May; 28(5):691-4. (1994);Z. Kaposzta, A et al., Circulation; 106 (24): 3057-3062, 2002)、並びに宿主防御(de Jesus-Berrios et al., Curr. Biol., 13: 1963-1968 (2003))に及ぶ生理学的プロセスへの関与が特に示唆されている。他の研究は、GSNORが in vitro(Liu et al., 2001)と in vivo(de Jesus-Berrios et al., 2003)の両方で酵母細胞をニトロソ化ストレスに対して保護することを見出した。
【0007】
[0007] まとめると、これまでのデータは、GSNORが、GSNOを異化して、必然的に、生体系において利用可能なSNO及びNOを低下させる、酵素:ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)の主要な生理学的リガンドであることを示唆している(Liu et al., 2001)、(Liu et al., Cell, (2004), 116(4), 617-628)、及び(Que et al., Science, 2005, 308, (5728): 1618-1621)。それ自体として、この酵素は、局所及び全身の生理活性NOを調節することに中心的な役割を担っている。NOバイオアベイラビリティの混乱は、高血圧症、アテローム性動脈硬化症、血栓症、喘息、胃腸障害、炎症、及び癌が含まれる数多くの疾患状態の病理発生に関連付けられてきたので、GSNOR活性を調節する薬剤は、一酸化窒素の不均衡に関連した疾患を治療するための候補療法剤となる。
【0008】
[0008] 現在、当該技術分野では、増加したNO合成及び/又は増加したNO生理活性に関連する医学的状態への診断薬、予防法、改善手段、及び治療法への大きなニーズがある。さらに、他のNO関連障害を予防する、改善する、又は逆転させるための新規な化合物、組成物、及び方法への有意なニーズがある。本発明は、上記のニーズを満足させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Stamler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7674-7677 (1992)
【非特許文献2】Foster et al., 2003, Trends in Molecular Medicine 第9巻、第4号、2003年4月、160-168 頁
【非特許文献3】Gaston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10957-10961 (1993)
【非特許文献4】Liu et al., Nature, 410: 490-494 (2001)
【非特許文献5】Jensen et al., Biochem J., 331: 659-668 (1998)
【非特許文献6】Uotila and Koivusalo,「補酵素と補因子(Coenzymes and Cofactors)」D. Dolphin 監修、517-551 頁(ニューヨーク、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、1989)
【非特許文献7】Lipton et al., Nature, 413:171-174 (2001)
【非特許文献8】Zaman et al., Biochem Biophys Res Commun, 284:65-70 (2001)
【非特許文献9】de Belder et al., Cardiovasc Res. 1994 May; 28(5):691-4. (1994)
【非特許文献10】Z. Kaposzta, A et al., Circulation; 106 (24): 3057-3062, 2002
【非特許文献11】de Jesus-Berrios et al., Curr. Biol., 13: 1963-1968 (2003)
【非特許文献12】Liu et al., Cell, (2004), 116(4), 617-628
【非特許文献13】Que et al., Science, 2005, 308, (5728): 1618-1621
【発明の概要】
【0010】
[0009] 本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(「GSNOR」)阻害剤として有用な新規クロモン化合物を提供する。本発明には、記載のGSNOR阻害剤の医薬的に許容される塩、プロドラッグ、及び代謝産物が含まれる。また本発明に含まれるのは、少なくとも1つのGSNOR阻害剤と少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含んでなる医薬組成物である。
【0011】
[0010] 本発明の組成物は、どの好適な医薬的に許容される剤形でも製造することができる。
[0011] 本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼを阻害することを必要とする被検者においてそれをするための方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つのGSNOR阻害剤又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ又は代謝産物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。GSNOR阻害剤は、本発明による新規化合物であっても、GSNORの阻害剤であることがこれまで知られていなかった既知の化合物であってもよい。
【0012】
[0012] 本発明はまた、NOドナー療法によって改善される障害を治療することを必要とする被検者においてそれをする方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つのGSNOR阻害剤、又はその医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又はその代謝産物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。GSNOR阻害剤は、本発明による新規化合物であっても、GSNORの阻害剤であることがこれまで知られていなかった既知の化合物であってもよい。
【0013】
[0013] 本発明はまた、細胞増殖性障害を治療することを必要とする被検者においてそれをする方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1つのGSNOR阻害剤、又はその医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又はその代謝産物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。GSNOR阻害剤は、本発明による新規化合物であっても、GSNORの阻害剤であることがこれまで知られていなかった既知の化合物であってもよい。
【0014】
[0014] 本発明の方法には、1以上の第二の活性薬剤での投与が含まれる。そのような投与は、連続的であるか又は組合せ組成物中であり得る。
[0015] 本発明の実施又は検証には、本明細書での記載に類似しているか又は同等である方法及び材料を使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書に言及するすべての公的に利用可能な出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。抵触がある場合は、種々の定義を含めて、本明細書が基準となる。
【0015】
[0016] 以上の要約と以下の詳細な記載はともに例示的で説明的なものであり、特許請求されるような組成物及び方法のさらなる詳細を提供することを企図している。当業者には、以下の詳細な記載から、他の目的、利点、及び新規の特徴が容易に明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.発明の概説
[0017] 最近まで、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)は、ホルムアルデヒドグルタチオン付加物、S−ヒドロキシメチルグルタチオンを酸化することが知られていた。これまでGSNORは、様々な細菌、酵母、植物、及び動物において確認されて、十分に保存されている。大腸菌(E. oli)、パン酵母(S. cerevisiae)、及びマウスマクロファージからのこのタンパク質は、60%以上のアミノ酸配列同一性を共有する。GSNORの活性(即ち、NADHが必須補因子として存在するときのS−ニトロソグルタチオンの分解)は、大腸菌、マウスマクロファージ、マウス内皮細胞、マウス平滑筋細胞、酵母、及びヒトのヒーラ細胞、上皮細胞、及び単球細胞において検出されてきた。ヒトGSNORのヌクレオチド及びアミノ酸配列の情報は、米国立生物工学情報センター(NCBI)データベースより、登録番号M29872,NM_000671の項目で入手することができる。マウスGSNORのヌクレオチド及びアミノ酸配列の情報は、NCBIデータベースより、登録番号NM_007410の項目で入手することができる。ヌクレオチド配列では、開始部位と終結部位に下線が施されている。CDSは、コーディング配列を明示する。SNPは、一塩基多型を明示する。他の関連したGSNORのヌクレオチド及びアミノ酸の配列は、他の種のそれを含めて、米国特許出願:2005/0014697に見出すことができる。
【0017】
[0018] 本発明により、GSNORは、in vitro と in vivo で、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)及びタンパク質S−ニトロソチオール(SNO)を代謝して、少量のNOドナー化合物の細胞内レベルを制御してタンパク質のニトロシル化が中毒レベルに達することを防ぐことによって、NO生理活性を調節するように機能することが示された。
【0018】
[0019] このことに基づけば、この酵素の阻害により、NOドナー療法が適用されるすべての疾患において生理活性が増強され、病理学的に増殖している細胞の増殖が阻害され、そしてそのことが有益である疾患においてNO生理活性が高められることになる。
【0019】
B.S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ阻害剤
1.本発明の化合物
[0020] 本発明は、GSNORの強力な阻害剤である医薬品を提供する。特に提供されるのは、以下に図示される構造(式I)を有する、GSNORの阻害剤である置換クロモン類似体、又はその医薬的に許容される塩、立体異性体、又はプロドラッグである。
【0020】
【化1】
【0021】
[式中、
R1は、CF3、CF2H、CF2CH3、CF2CH2CH3、メチル、イソプロピル、イソブチル、シクロペンチル、CH2OCH3、SCH3、ベンジル、チオフェン−2−イル、及びチオフェン−3−イルからなる群より選択され;
R2は、H、F、Cl、メトキシ、及びシアノより選択され;そして
R3は、H、F、Cl、及びメトキシより選択される]。
【0022】
[0021] 本発明のさらなる側面では、R1が、CF3、CF2H、及びCF2CH3より選択され;そしてR2が水素である。
[0022] 本発明のさらなる側面では、R1が、CF3、メチル、イソプロピル、及びイソブチルからなる群より選択され;そしてR2とR3がともに水素である。
【0023】
[0023] 本発明のなお別の側面では、R1が、CF3、メチル、イソプロピル、イソブチル、CF2H、CF2CH3、及びCF2CH2CH3からなる群より選択され;そしてR2とR3がともに水素である。
【0024】
[0024] 本発明のさらなる側面では、式Iの好適な化合物に、限定されないが:
4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−シクロペンチル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−フルオロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−フルオロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
3−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−6−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロプロピル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)−3−メトキシ安息香酸;及び
4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸が含まれる。
【0025】
[0025] さらに、本明細書に記載の組成物のいずれにおいても、1以上の化合物又は化合物の亜属が特別に除外される可能性がある。本発明の1つの態様では、4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸が特別に除外される。
【0026】
[0026] 置換クロモン類似体は、GSNORの強力な阻害剤である。本文脈で使用するように、「類似体」という用語は、クロモン核を保持する式Iの化合物と同様の化学構造及び機能を有する化合物を意味する。
【0027】
[0027] ある置換基への結合が環中の2つの原子を連結する結合に交差するように示されるとき、このときそのような置換基は、環中のどの原子へも結合してよい。置換基が、所与の式の化合物の残り部分へそのような置換基が結合する原子を示さずに収載されるとき、このときそのような置換基は、そのような置換基中のどの原子を介しても結合してよい。置換基及び/又は可変基(variables)の組合せは、そのような組合せが安定な化合物をもたらしさえすれば、許容される。
【0028】
[0028] 本発明のいくつかのクロモン類似体は、配置異性体、幾何異性体、及び配座異性体が含まれる、様々な異性型でも存在し得て、並びに、様々な互変異性型、特に水素原子の付加点が異なるものでも存在し得る。本明細書に使用するように、「異性体」という用語には、化合物の互変異性型を含めて、化合物のすべての異性型が含まれると企図される。示されるか又は記載される化合物のすべての互変異性体も、本発明の一部であるとみなされる。本発明の化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載されて、異性体の混合物として、又は分離した異性型として単離され得る。本明細書に記載の化合物には、オレフィン、C=N二重結合、等の多くの幾何異性体も存在し得て、本発明では、そのようなすべての安定な異性体が考慮される。特定の立体化学又は異性型が具体的に示されなければ、ある構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ、及び幾何異性型が企図される。
【0029】
[0029] 本明細書に記載の化合物は、不斉中心を有する場合がある。不斉的に置換された原子を含有する本発明の化合物は、光学活性型又はラセミ型で単離することができる。当該技術分野では、ラセミ型の分割によるか又は光学活性の出発材料からの合成によるといった、光学活性型を製造する方法がよく知られている。
【0030】
[0030] 他に示さなければ、そのような非対称性より生じる異性体(例、すべてのエナンチオマー及びジアステレオマー)が本発明の範囲内に含まれると理解されたい。そのような異性体は、模範的な分離技術によるか又は立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で入手することができる。さらに、本出願において考察される構造と他の化合物及び部分には、それらのすべての互変異性体も含まれる。アルケンには、E又はZのいずれかのジオメトリーを適宜含めることができる。
【0031】
[0031] 図示した構造とその構造へ付与される名称との間に矛盾があるならば、図示した構造が基準となることを銘記されたい。さらに、ある構造又は構造の一部の立体化学が、例えば、実線、楔形線、又は破線で示されていなければ、その構造又は構造の一部には、記載の化合物のすべての立体異性体が含まれると解釈されるべきである。
【0032】
2.代表的なGSNOR阻害剤
[0032] 実施例1〜21は、式Iの代表的な新規クロモン類似体を収載する。各化合物を製造するために使用し得る合成法については、実施例1の前に図示した合成スキームを参照にして、そして実施例23に記載される中間体を参照にして、実施例1〜21に詳しく記載する。実施例1〜21には、各化合物の裏付けとなる質量分析法データとプロトンNMRデータも含まれる。実施例24に記載のアッセイによってGSNOR阻害剤の活性を定量して、IC50値を入手した。GSNOR阻害化合物、実施例1〜21は、約5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害化合物、実施例1、2、3、5、6、10、13、14、15、16、18、19、20は、約0.5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害化合物、実施例1、10、14、15、16、18、及び20は、約0.1μM未満のIC50を有した。
【0033】
C.定義
[0033] 本明細書に使用するように、「約」は、当業者によって理解されて、それが使用される文脈に依ってある程度変化する可能性がある。それが使用される文脈があっても、当業者に明らかでないこの用語の使用があるならば、「約」は、その特定用語のプラス又はマイナス10%までを意味するものである。
【0034】
[0034] 本明細書に使用するように、「生理活性」という用語は、生理学的又は病態生理学的プロセスに影響を及ぼし得る1以上の細胞又は細胞外プロセス(例えば、結合、シグナル伝達、等による)に対する効果を示す。
【0035】
[0035] 本明細書に使用するように、そして他に示さなければ、「立体異性体」という用語は、化合物の他の立体異性体を実質的に含まない、該化合物の1つの立体異性体を意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、該化合物の対掌エナンチオマーを実質的に含まない。2つのキラル中心を有する立体異性体的に純粋な化合物は、該化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まない。いくつかの態様において、立体異性体的に純粋な化合物は、約80重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約20重量%未満の該化合物の他の立体異性体、例えば、約90重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約10重量%未満の該化合物の他の立体異性体、又は約95重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約5重量%未満の該化合物の他の立体異性体、又は約97重量%以上の該化合物の1つの立体異性体と約3重量%未満の該化合物の他の立体異性体を含む。
【0036】
[0036] 本明細書に使用するように、「タンパク質」は、「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「ペプチド断片」と同義で使用される。「精製された」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、又はペプチド断片は、そのアミノ酸配列が得られる細胞、組織、又は無細胞供給源からの細胞材料も他の混在タンパク質も実質的に含まないか、又は化学的に合成されるときは、化学前駆体も他の化学品も実質的に含まない。
【0037】
[0037] 本明細書に使用するように、「調節する」は、ペプチド又はポリペプチドのレベルを増加又は減少させること、あるいはペプチド又はポリペプチドの安定性又は活性を増加又は減少させることに言及するものである。「阻害する」という用語は、ペプチド又はポリペプチドのレベルの減少、あるいはペプチド又はポリペプチドの安定性又は活性の減少に言及するものである。好ましい態様において、調節されるか又は阻害されるペプチドは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)又はタンパク質S−ニトロソチオール(SNO)である。
【0038】
[0038] 本明細書に使用するように、「一酸化窒素」及び「NO」という用語には、無電荷の一酸化窒素と有電荷の一酸化窒素の種が含まれ、特に、ニトロソニウムイオン(NO+)とニトロキシルイオン(NO−)が含まれる。一酸化窒素の反応型は、気体の一酸化窒素によって提供され得る。構造:X−NOy(ここでXは、一酸化窒素を放出、送達、又は移送する部分であり、yは1又は2である)を有する化合物には、一酸化窒素をその企図される作用部位へその企図される目的のために活性な形態で提供するありとあらゆるそのような化合物が含まれる。
【0039】
[0039] 本明細書に利用するように、「医薬的に許容される」という用語は、動物、より特別にはヒトでの使用のために、連邦又は州政府の規制当局によって承認されているか又は米国薬局方又は他の一般的に認知されている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬剤とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を意味して、限定されないが、水及び油剤のような無菌の液剤が含まれる。
【0040】
[0040] GSNOR阻害剤の「医薬的に許容される塩」又は「塩」は、イオン結合を含有して、典型的には、酸又は塩基のいずれかと開示化合物を反応させることによって生成される、被検者への投与に適した、開示化合物の生成物である。医薬的に許容される塩には、限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アリールアルキルスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、及び酒石酸塩が含まれる酸付加塩;Li、Na、Kのようなアルカリ金属カチオン、Mg又はCaのようなアルカリ土類金属の塩、又は有機アミン塩を含めることができる。
【0041】
[0041] 「医薬組成物」は、被検者への投与に適した形態で開示化合物を含んでなる製剤である。本発明の医薬組成物は、好ましくは、その企図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、限定されないが、経口及び非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、吸入、局所、経皮、経粘膜、及び直腸の投与が含まれる。
【0042】
[0042] 「安定な化合物」と「安定な構造」は、反応混合物からの有用な純度までの単離と、有効な治療薬剤への製剤化に耐えるほどに十分に頑丈である化合物を示すものである。
【0043】
[0043] 本明細書に使用するように、「治療有効量」という用語は、一般に、本明細書に記載のように予防、抑制、又は治療されるべき障害の少なくとも1つの症状を改善するのに必要な量を意味する。「治療有効量」という句は、本発明のGSNOR阻害剤に関する場合、そのような治療を必要とする有意数の被検者においてGSNOR阻害剤が投与されるための特定の薬理学的応答をもたらすGSNOR阻害剤の投与量を意味する。特別な例において特別な被検者へ投与されるGSNOR阻害剤の治療有効量は、たとえそのような投与量が当業者によって治療有効量であるとみなされるとしても、本明細書に記載の状態/疾患を治療するのにいつでも有効であるわけではないことが重要である。
【0044】
[0044] 「生体試料」という用語には、限定されないが、血液(例、血清、血漿、又は全血)、尿、唾液、汗、母乳、膣分泌物、精液、毛包、皮膚、歯、骨、爪、又は他の分泌物、体液、組織、又は細胞の試料が含まれる。本発明によれば、生体試料中のS−ニトロソグルタチオンレダクターゼのレベルは、米国特許出願公開公報番号2005/0014697に記載の方法によって定量することができる。
【0045】
D.GSNOR阻害剤を含んでなる医薬組成物
[0045] 本発明には、本明細書に記載の少なくとも1つのGSNOR阻害剤と少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含んでなる医薬組成物が含まれる。好適な担体については、参照により本明細書に組み込まれる「レミントン:科学と実践(Remington: The Science and Practice)」第20版(出版元:リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス)に記載されている。本発明による医薬組成物は、1以上の非GSNOR阻害活性薬剤も含んでよい。
【0046】
[0046] 本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の新規GSNOR阻害剤を含むことができて、この医薬組成物は、GSNOR阻害剤の活性を有することがこれまで知られていなかった既知の化合物、又はその組合せを含むことができる。
【0047】
[0047] GSNOR阻害剤は、限定されないが、注射可能な剤形、分散液剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、凍結乾燥製剤、乾燥散剤、錠剤、カプセル剤、制御放出製剤、迅速融解製剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、即時放出及び制御放出混合製剤、等が含まれる、どの医薬的に許容される剤形でも利用することができる。具体的には、本明細書に記載のGSNOR阻害剤は:(a)経口、肺、静脈内、動脈内、鞘内、関節内、直腸、眼、結腸、非経口、槽内、膣内、腹腔内、局所、頬内、経鼻、及び局部投与からなる群より選択される投与用に;(b)分散液剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、錠剤、サシェ剤、及びカプセル剤からなる群より選択される剤形へ;(c)凍結乾燥製剤、乾燥散剤、迅速融解製剤、制御放出製剤、遅延放出製剤、延長放出製剤、パルス放出製剤、並びに即時放出及び制御放出混合製剤より選択される剤形へ;又は(d)これらのあらゆる組合せへ製剤化することができる。
【0048】
[0048] 呼吸器感染症では、吸入製剤を使用して、高い局所濃度を達成することができる。吸入に適した製剤には、上気道及び下気道の細菌感染症を治療するために吸入器又はネブライザーによって被感染患者の気管支内腔又は鼻腔へ分散させることが可能である、乾燥散剤又はエアゾール化又は気化させた溶液剤、分散液剤、又は懸濁液剤が含まれる。
【0049】
[0049] 非経口、皮内、又は皮下の適用に使用される溶液剤又は懸濁液剤は、以下の成分の1以上を含むことができる:(1)注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒のような無菌希釈剤;(2)ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌剤;(3)アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;(4)エチレンジアミン四酢酸のようなキレート形成剤;(5)酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩のような緩衝剤;及び(6)塩化ナトリウム又はデキストロースのような浸透圧の調整用の薬剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調整することができる。非経口調製品は、ガラス又はプラスチックから作られる、アンプル、使い捨てシリンジ、又は多用量バイアルに密封することができる。
【0050】
[0050] 注射可能な使用に適した医薬組成物は、無菌水溶液剤(水溶性である場合)、又は無菌の注射可能な溶液剤又は分散液剤の用時調製用の分散剤及び無菌散剤を含み得る。静脈内投与に好適な担体には、生理食塩水溶液、静菌水、Cremophor EL(BASF、ニュージャージー州パルシッパニー)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての事例において、組成物は、無菌でなければならず、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度まで流動的であるべきである。医薬組成物は、製造及び保存の条件下で安定であるべきで、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に抗して保存されるべきである。
【0051】
[0051] 担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール、等)、及びこれらの好適な混合物を含んでなる、溶媒又は分散媒体であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、(分散液の場合は)必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等によって達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、マンニトール又はソルビトールのようなポリアルコール、及び塩化ナトリウムのような無機塩類を組成物に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期化吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0052】
[0052] 無菌の注射可能な溶液剤は、必要とされる量の活性試薬(例、GSNOR阻害剤)を、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つ又は組合せとともに適正な溶媒に取り込むこと、それに続く濾過滅菌によって調製することができる。一般に、分散液剤は、基本の分散媒体と他の必要とされるあらゆる成分を含有する無菌担体へ少なくとも1つのGSNOR阻害剤を取り込むことによって調製する。無菌の注射可能な溶液剤の調製用の無菌散剤の場合、例示の調製法には、真空乾燥と凍結乾燥が含まれ、そのいずれも、先に無菌濾過したその溶液より、GSNOR阻害剤+所望されるあらゆる追加成分の散剤を産生する。
【0053】
[0053] 一般に、経口組成物には、不活性希釈剤又は食用担体が含まれる。それらは、例えば、ゼラチンカプセルに被包するか又は錠剤へ圧縮することができる。経口療法上の投与の目的では、GSNOR阻害剤を賦形剤とともに取り込んで、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口液としての使用のための液状担体を使用して調製し得て、ここでは液状担体中の化合物が経口的に適用されて口中で転がされて喀痰されるか、又は嚥下される。この組成物の一部として、医薬的に適合可能な結合剤、及び/又はアジュバント材料を含めることができる。
【0054】
[0054] 吸入による投与では、化合物は、好適なデバイス由来の好適な推進剤(例、二酸化炭素のような気体、噴霧化液剤、又は乾燥散剤)を含有する加圧容器又はディスペンサーからのエアゾールスプレー剤の形態で送達される。経粘膜又は経皮投与では、浸透すべきバリアに適正な浸透剤を製剤中に使用する。当該技術分野では、そのような浸透剤が一般的に知られていて、例えば、経粘膜投与には、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレー剤又は坐剤の使用により達成することができる。経皮投与では、活性試薬を、当該技術分野で一般的に知られているような軟膏剤、軟膏、ゲル剤、又はクリーム剤へ製剤化する。この試薬はまた、坐剤(例えば、ココア脂や他のグリセリドのような慣用の坐剤基剤とともに)又は直腸送達用の停留浣腸剤の形態で調製することができる。
【0055】
[0055] 1つの態様において、GSNOR阻害剤は、身体からの速やかな消失に抗して保護する担体とともに調製される。例えば、インプラントやマイクロカプセル化送達システムが含まれる、制御放出製剤を使用することができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような生分解性、生体適合性のポリマーを使用することができる。このような製剤の製造の方法は、当業者に明らかであろう。この材料も、市販品より入手することができる。
【0056】
[0056] リポソーム懸濁液剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体が付いた、被感染細胞へ標的指向されるリポソーム剤が含まれる)も医薬的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に知られた方法に従って製造することができる。
【0057】
[0057] さらに、GSNOR阻害剤の懸濁液剤は、適正な油性の注射懸濁液剤として調製してよい。好適な脂溶性の溶媒又は媒体には、ゴマ油のような脂肪オイル、又はオレイン酸エチル、トリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーも送達用に使用してよい。この懸濁液剤には、化合物の溶解性を高めて高濃度溶液剤の調製を可能にするのに適した安定化剤又は薬剤を含めてもよい。
【0058】
[0058] 経口又は非経口の組成物を単位剤形で製剤化することは、投与の容易さと投与量の均一性のために特に有利である。本明細書に使用する単位剤形は、治療される被検者への単位投与量として適した、物理的に別個の単位を意味して、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量のGSNOR阻害剤を必要とされる医薬担体とともに含有する。本発明の単位剤形への仕様は、GSNOR阻害剤の独自の特徴と達成すべき特別な治療効果、並びに、そのような活性薬剤を個体の治療のために調合することの当該技術分野に固有の限界によって支配されて、直接的に依存する。
【0059】
[0059] 少なくとも1つのGSNOR阻害剤を含んでなる、本発明による医薬組成物は、1以上の医薬賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤の例には、限定されないが、結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、及び他の賦形剤が含まれる。そのような賦形剤は、当該技術分野で知られている。例示の賦形剤には:(1)様々なセルロース及び架橋ポリビニルピロリドン、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102のような微結晶性セルロース、珪化微結晶性セルロース(ProSolv SMCCTM)、トラガカントゴム、及びゼラチンが含まれる、結合剤;(2)様々なデンプン、乳糖、乳糖一水和物、及び無水乳糖のような充填剤;(3)アルギン酸、Primogel、コーンスターチ、軽度架橋ポリビニルピロリドン、ジャガイモデンプン、とうもろこしデンプン、及び加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような崩壊剤;(4)圧縮される散剤の流動可能性に作用する薬剤が含まれる滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、Aerosil(登録商標)200のようなコロイド状二酸化シリコン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、及びシリカゲルが含まれる);(5)コロイド状二酸化シリコンのような滑り剤;(6)ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸とその塩、ブチルパラベンのような他のパラヒドロキシ安息香酸エステル、エチル又はベンジルアルコールのようなアルコール類、フェノールのようなフェノール性化合物、又は塩化ベンザルコニウムのような四級化合物といった、保存剤;(7)微結晶性セルロース、乳糖、二塩基性リン酸カルシウム、サッカライド、及び/又は上記のいずれもの混合物といった医薬的に許容される不活性充填剤のような希釈剤;希釈剤の例には、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102のような微結晶性セルロース;乳糖一水和物、無水乳糖、及びPharmatose(登録商標)DCL21のような乳糖;Emcompress(登録商標)のような二塩基性リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;及びブドウ糖が含まれる;(8)ショ糖、サッカリンショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、及びアセスルフェームのような、あらゆる天然又は人工甘味料が含まれる、甘味剤;(9)ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバリング、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、フルーツフレーバー、等のような香味剤;並びに(10)有機酸と炭酸塩又は重炭酸塩のような発泡性のカップルが含まれる、発泡剤。好適な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、及びアルギン酸と無水物、及び酸塩が含まれる。好適な炭酸塩及び重炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、グリシン炭酸ナトリウム、炭酸L−リジン、及び炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡性カップルの重炭酸ナトリウム成分だけが存在してよい。
【0060】
E.本発明の組成物を含んでなるキット
[0060] 本発明には、本発明の組成物を含んでなるキットも含まれる。そのようなキットは、例えば、(1)少なくとも1つのGSNOR阻害剤;及び(2)溶媒又は溶液のような、少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含むことができる。追加のキット成分には、例えば:(1)安定化剤、緩衝剤、等のような、本明細書において明確化した医薬的に許容される賦形剤のあらゆるもの、(2)キット成分を保持及び/又は混合するための少なくとも1つの容器、バイアル、又は同様の器具;及び(3)吸入器、ネブライザー、シリンジ、等のような送達器具が含まれてもよい。
【0061】
F.GSNOR阻害剤を製造する方法
[0061] 本発明のGSNOR阻害剤は、既知の合成の方法論を使用して、又は既知の合成の方法論の変更により、容易に合成することができる。当業者に容易に認められるように、以下に記載の方法論は、多様な置換基を有するクロモンの合成を可能にする。以下の実施例において、例示の合成法を記載する。
【0062】
[0062] 必要とされるならば、当該技術分野で知られた定型的な手段によって、エナンチオマー及びジアステレオマーのさらなる精製及び分離を達成することができる。このように、例えば、化合物のエナンチオマーの分離は、キラルHPLCと関連のクロマトグラフィー技術の使用によって達成することができる。ジアステレオマーも同様に分離することができる。しかしながら、いくつかの事例では、例えば、制御された沈殿化又は結晶化によるように、ジアステレオマーを単に物理的に分離させることができる。
【0063】
[0063] 本発明の方法は、本明細書に記載のように行なわれるとき、簡便にも、当該技術分野で定型的に利用できる温度で実施することができる。1つの態様において、この方法は、約25℃〜約110℃の範囲の温度で実施する。別の態様において、温度は、約40℃〜約100℃の範囲にある。なお別の態様において、温度は、約50℃〜約95℃の範囲にある。
【0064】
[0064] 塩基を必要とする合成工程は、簡便な有機又は無機塩基を使用して行う。典型的には、この塩基は、求核性ではない。このように、1つの態様において、塩基は、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、アルコキシド、ジシラザンの塩、及び三級アミンより選択される。
【0065】
[0065] 本発明の方法は、本明細書に記載のように実施されるとき、反応体の性質及び量と反応温度に依存して、数分後〜数時間後に実質的には完了している可能性がある。反応が実質的に完了しているときの決定は、簡便には、例えば、HPLC、LCMS、TLC、及び1H NMRのような、当該技術分野で知られた通常の技術によって評価することができる。
【0066】
G.治療の方法
[0066] 本発明には、開示される化合物の1以上の使用を通して医学的状態を予防するか又は治療する(例えば、その1以上の症状を軽減する)方法が含まれる。この方法は、治療有効量のGSNOR阻害剤を必要とする患者へそれを投与することを含む。本発明の組成物は、予防療法へも使用することができる。
【0067】
[0067] 本発明による治療の方法に使用されるGSNOR阻害剤は、(1)本明細書に記載の新規GSNOR阻害剤、又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物;(2)本発明に先立って知られていたが、GSNOR阻害剤であることは知られていなかった化合物、又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物;又は(3)本発明に先立って知られていて、GSNOR阻害剤であることが知られていたが、本明細書に記載の治療の方法に有用であることは知られていなかった化合物、又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物であり得る。
【0068】
[0068] 患者は、どの動物、家畜動物、酪農動物、野生動物でもよく、限定されないが、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、及びウシと、好ましくはヒト患者が含まれる。本明細書に使用されるように、「患者」及び「被検者」という用語は、交換可能的に使用してよい。
【0069】
[0069] 有害なほどに高いレベルのGSNOR又はGSNOR活性がある被検者において、調節は、例えば、GSNOR機能を壊すか又はダウンレギュレートする、又はGSNORレベルを減少させる開示化合物の1以上を投与することによって達成され得る。これらの化合物は、抗GSNOR抗体又は抗体断片、GSNORアンチセンス、siRNA、又は低分子のような他のGSNOR阻害剤、又は他の阻害剤とともに、単独で、又は本明細書に詳しく記載されるような他の薬剤と組み合わせて投与してよい。
【0070】
[0070] 本発明は、NOドナー療法によって改善される障害に罹患した被検者を治療する方法を提供する。このような方法は、治療有効量のGSNOR阻害剤を被検者へ投与することを含む。
【0071】
[0071] 本明細書に使用されるように、「治療すること」は、疾患、状態、又は障害を克服する目的のための患者の管理及び看護について記載して、症状又は合併症の発現を防ぐための本発明の化合物の投与、症状又は合併症を軽減すること、又は疾患、状態、又は障害を消失させることが含まれる。より具体的には、「治療すること」には、疾患(障害)状態の少なくとも1つの有害な症状又は影響、疾患の進行、疾患の原因体(例、細菌又はウイルス)、又は他の異常な状態を逆転させること、弱めること、軽減すること、最小化すること、抑制すること、又は休止させることが含まれる。治療は、症状及び/又は病態が改善する間は続けられる。
【0072】
[0072] 障害には、肺中の低酸素血症及び/又は平滑筋狭窄及び/又は肺感染及び/又は肺損傷に関連した肺の障害(例、肺性高血圧、ARDS、喘息、肺炎、肺線維症/間質性肺疾患、嚢胞性線維症、COPD)、高血圧、虚血性冠症候群、アテローム性動脈硬化症、心不全、緑内障といった状態が含まれる心臓血管系疾患及び心疾患、血管新生を特徴とする疾患(例、冠動脈疾患)、血栓症発生のリスクがある障害、再狭窄発生のリスクがある障害、慢性炎症性疾患(例、AID認知症及び乾癬)、アポトーシス発生のリスクがある疾患(例、心不全、アテローム性動脈硬化症、神経変性障害、関節炎、及び肝損傷(虚血性又はアルコール性))、インポテンツ、食物への渇望に応じた摂食に起因する肥満、卒中、再灌流損傷(例、心臓又は肺における外傷性筋肉損傷、又は圧挫損傷)、並びに後続の虚血性イベントに抗するNO保護への心臓又は脳のプレコンディショニングが有益である障害を含めることができる。
【0073】
[0073] 1つの態様において、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物は、NOドナーと組み合わせて投与することができる。NOドナーは、一酸化窒素又は関連レドックス種を供与して、より一般的には、一酸化窒素の生理活性、即ち、一酸化窒素で確認される活性、例えば、血管弛緩、又は受容体タンパク質(例、rasタンパク質、アドレナリン作用性受容体、NFκB)の刺激又は阻害を提供する。S−ニトロソ、O−ニトロソ、C−ニトロソ、及びN−ニトロソ化合物とそのニトロ誘導体、及び金属NO錯体が含まれるが、他のNO生理活性産生化合物も除外されない、本発明に有用なNOドナーについては、参照により本明細書に組み込まれる「一酸化窒素研究の方法(Methods in Nitric Oxide Research)」Feelisch et al.監修、71〜115 頁(J.S.,ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、1996)に記載されている。ニトロソが三級炭素へ付いているC−ニトロソ化合物である、本発明に有用であるNOドナーには、米国特許第6,359,182号とWO02/34705に記載されるものが含まれる。S−ニトロソ化合物の例には、本発明に有用なS−ニトロソチオールを含めて、例えば、S−ニトロソグルタチオン、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、S−ニトロソ−システインとそのエチルエステル、S−ニトロソシステイニルグリシン、S−ニトロソ−γ−メチル−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−γ−チオ−L−ロイシン、S−ニトロソ−δ−チオ−L−ロイシン、及びS−ニトロソアルブミンが含まれる。本発明に有用な他のNOドナーの例は、ナトリウムニトロプルシド(ニプリド)、亜硝酸エチル、イソソルビド、ニトログリセリン、モルシドミンであるSIN 1、フロキサミン、N−ヒドロキシ(N−ニトロサミン)、及びNO又は疎水性NOドナーで飽和されたペルフルオロカーボンである。
【0074】
[0074] 既知のNO放出剤、アムロジピンのR(+)エナンチオマー(Zhang X. P et al. 2002 J. Cardiovascular Pharmacology 39, 208-214)とGSNOR阻害剤の組合せも、本発明の態様である。
【0075】
[0075] 本発明はまた、病理学的に増殖する細胞に罹患した被検者を治療する方法を提供し、ここで該方法は、GSNORの阻害剤の治療有効量を前記被検者へ投与することを含む。GSNORの阻害剤は、医薬的に許容される担体と組み合わせた、上記に定義されるような化合物、又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物である。治療は、症状及び/又は病態が改善する間は続けられる。
【0076】
[0076] 別の態様において、病理学的に増殖する細胞は、病理学的に増殖する微生物であり得る。関与する微生物は、ニトロソ化ストレスから保護されるようにGSNORを発現するもの、又は該微生物に感染された宿主細胞がこの酵素を発現することによってニトロソ化ストレスから保護されるものであり得る。「病理学的に増殖する微生物」という用語は、本明細書において、病理学的微生物を意味するために使用されて、限定されないが、病理学的細菌、病理学的ウイルス、病理学的クラミジア、病理学的原生動物、病理学的リケッチア、病理学的真菌、及び病理学的マイコプラズマが含まれる。適用可能な微生物に関するさらなる詳細は、米国特許第6,057,367号のカラム11及び12に説明されている。「病理学的微生物に感染された宿主細胞」という用語には、病理学的ウイルスに感染された哺乳動物細胞だけでなく、細胞内の細菌又は原生動物を含有する哺乳動物細胞(例、結核菌、ライ菌(ライ病)、又は腸チフス菌(腸チフス)を含有するマクロファージ)も含まれる。
【0077】
[0077] 別の態様において、病理学的に増殖する細胞は、病理学的蠕虫であり得る。「病理学的蠕虫」という用語は、本明細書において、病理学的線虫、病理学的吸虫、及び病理学的条虫を意味するために使用される。適用可能な蠕虫に関するさらなる詳細は、米国特許第6,057,367号のカラム12に説明されている。
【0078】
[0078] 別の態様において、病理学的に増殖する細胞は、病理学的に増殖する哺乳動物細胞であり得る。本明細書に使用される「病理学的に増殖する哺乳動物細胞」という用語は、前記哺乳動物において、その哺乳動物又はその臓器に有害な効果を引き起こすほどに大きさ又は数が増大する、哺乳動物の細胞を意味する。この用語には、例えば、病理学的に増殖するか又は拡大して再狭窄を引き起こす細胞、病理学的に増殖するか又は拡大して良性前立腺肥大を引き起こす細胞、病理学的に増殖して心筋肥大を引き起こす細胞、及び関節炎の滑膜細胞のように炎症部位で増殖する細胞、又は細胞増殖性障害に関連した細胞が含まれる。
【0079】
[0079] 本明細書に使用されるように、「細胞増殖性障害」という用語は、細胞の非調節及び/又は異常な増殖が癌性又は非癌性であり得る望まれない状態又は疾患(例えば、乾癬状態)の発症をもたらし得る状態を意味する。本明細書に使用されるように、「乾癬状態」という用語は、角化細胞の過剰増殖、炎症性の細胞浸潤、及びサイトカインの変化が関与する障害を意味する。細胞増殖性障害は、前癌状態又は癌であり得る。癌は、原発性癌又は転移性癌、又はその両方であり得る。
【0080】
[0080] 本明細書に使用されるように、「癌」という用語には、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腺癌、扁平上皮癌、肉腫、悪性膠腫、横紋筋肉腫、肝細胞癌、頭頚部癌、悪性メラノーマ、非メラノーマ皮膚癌のような固形腫瘍、並びに、白血病、小児白血病及びリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球及び皮膚起源のリンパ腫、急性及び慢性白血病(急性リンパ芽球性、急性骨髄芽球性、又は慢性骨髄芽球性白血病のような)、形質細胞性新生物、リンパ性新生物、及びAIDSに関連した癌のような、造血系腫瘍及び/又は悪性腫瘍が含まれる。
【0081】
[0081] 乾癬状態に加えて、本発明の組成物を使用して治療され得る増殖性疾患の種類は、表皮及び類皮嚢胞、脂肪腫、腺腫、毛細及び皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、及び他の形成異常塊、等である。1つの態様において、増殖性疾患には、形成異常と類似の障害が含まれる。
【0082】
[0082] 1つの態様において、癌を治療することは、腫瘍サイズの低下、腫瘍数の減少、腫瘍増殖の遅延、原発腫瘍部位から離れた他の組織又は臓器における転移性病巣の減少、患者生存率の改善、又は患者の生命の質の改善、又は上記の少なくとも2つを含む。
【0083】
[0083] 別の態様において、細胞増殖性障害を治療することは、細胞増殖の速度の低下、増殖性細胞の比率の低下、細胞増殖の領域又は範囲の大きさの減少、又は異常な外観又は形態を有する細胞の数又は比率の減少、又は上記の少なくとも2つを含む。
【0084】
[0084] なお別の態様において、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物は、第二の化学療法剤と組み合わせて投与することができる。さらなる態様において、第二の化学療法剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、エクセメスタン、レトロゾール、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、シクロホスファミド、ロバスタチン、ミノシン、ゲンシタビン、araC、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ドセタキセル、ゴセレリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、テニポシド、エトポシド、エポチロン、ナベルビン、カンプトテシン、ダウノニビシン、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ、マレイン酸スニチニブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、及びベバシズマブからなる群より選択される。
【0085】
[0085] 1つの態様において、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、そのプロドラッグ、又はその代謝産物は、ニトロソ化又は酸化ストレスをかける薬剤と組み合わせて投与することができる。本発明のGSNOR阻害剤との組合せ療法においてニトロソ化ストレスを選択的にかけて病理学的に増殖する細胞の増殖を阻害する薬剤とその投与量及び投与経路には、本明細書に組み込まれる米国特許第6,057,367号に開示されるものが含まれる。本発明のGS−FDH阻害剤との組合せ療法において酸化ストレスをかける補助薬剤(即ち、GSH(グルタチオン)に対するGSSG(酸化グルタチオン)の比、又はNAD(P)Hに対するNAD(P)の比を高める薬剤、又はチオバルビツール酸誘導体を増加させる薬剤)には、例えば、L−ブチオニン−S−スルホキシミン(BSO)、グルタチオンレダクターゼ阻害剤(例、BCNU)、ミトコンドリア呼吸の阻害剤又は脱共役剤、及び反応性酸素種(ROS)を高める薬物(例、アドリアマイシン)が標準の投与経路での標準投与量で含まれる。
【0086】
[0086] GSNOR阻害剤は、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例、ロリプラム、シロミラスト、ロフルミラスト、Viagra(登録商標)(クエン酸シルデニフィル)、Cialis(登録商標)(タダラフィル)、Levitra(登録商標)(バルデニフィル)、等)、β−アゴニスト、ステロイド、又はロイコトリエンアンタゴニスト(LTD4)とも同時投与してよい。当業者は、改善すべき障害に依って、適正な治療有効量を容易に決定することができる。
【0087】
[0087] GSNOR阻害剤は、β−アドレナリン作用性のシグナル伝達を改善するための手段として使用してよい。特に、GSNORの阻害剤は、単独で、又はβ−アゴニストと組み合わせて、心不全、又は高血圧症及び喘息のような他の血管系障害を治療するか又はそれらに対して保護するために使用し得る。GSNOR阻害剤はまた、平滑筋(例、気道及び血管)弛緩をもたらすGs G−タンパク質を増強することによって、並びに、Gq G−タンパク質を減弱させることによって、それにより平滑筋収縮を(例えば、気道及び血管において)妨げる、Gタンパク質共役受容体(GPCR)を調節するために使用することができる。
【0088】
[0088] NOドナー療法によって改善される障害に罹患した被検者の治療用の治療有効量とは、治療される障害の改善を引き起こすか又はその障害に関連したリスクに対して保護する、in vivo でのGSNOR阻害量である。例えば、喘息では、治療有効量は、気管支拡張に有効な量であり;嚢胞性線維症では、治療有効量は、気道閉塞改善に有効な量であり;ARDSでは、治療有効量は、低酸素血症改善に有効な量であり;心疾患では、治療有効量は、アンギナ緩和又は血管新生誘導に有効な量であり;高血圧症では、治療有効量は、血圧低下に有効な量であり;虚血性冠動脈障害では、治療有効量は、血流増加に有効な量であり;アテローム性動脈硬化症では、治療有効量は、内皮機能不全の逆転に有効な量であり;緑内障では、治療有効量は、眼内圧低下に有効な量であり;血管新生を特徴とする疾患では、治療有効量は、血管新生阻害に有効な量であり;血栓症発生のリスクがある障害では、治療有効量は、血栓症予防に有効な量であり;再狭窄発生のリスクがある障害では、治療有効量は、再狭窄阻害に有効な量であり;慢性炎症性疾患では、治療有効量は、炎症抑制に有効な量であり;アポトーシス発生のリスクがある障害では、治療有効量は、アポトーシス予防に有効な量であり;インポテンスでは、治療有効量は、勃起の達成又は持続に有効な量であり;肥満では、治療有効量は、満腹感を引き起こすのに有効な量であり;卒中では、治療有効量は、血流増加又はTIA保護に有効な量であり;再灌流損傷では、治療有効量は、機能向上に有効な量であり;そして心臓及び脳のプレコンディショニングでは、治療有効量は、細胞保護に有効な量(例えば、トリポニン又はCPKによって測定されるような)である。
【0089】
[0089] 病理学的に増殖する細胞に罹患した被検者の治療用の治療有効量は、抗増殖に有効な量である、in vivo でのGSNOR阻害量を意味する。本明細書に使用される、このような抗増殖に有効な量は、少なくとも約20%、少なくとも約10%、少なくとも約5%、又は少なくとも約1%の増殖速度の抑制を引き起こす量を意味する。
【0090】
[0090] 一般に、投与量、即ち治療有効量は、治療される被検者の体重1kgにつき、1日あたり、1μg〜10gの範囲に及び、そしてしばしば、10μg〜1g又は10μg〜100mgの範囲に及ぶ。
【0091】
H.他の使用
[0091] 本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物は、そのような化合物の存在が有益であり得る状況において、様々な器具へ適用することができる。そのような器具は、どのデバイス又は容器であってもよい(例えば、患者への埋め込みに先立って外科用メッシュ又は心臓血管ステントをコートするのにGSNOR阻害剤を使用し得る埋め込みデバイス)。本発明のGSNOR阻害剤はまた、in vitro アッセイ目的又は細胞を培養するための様々な器具へ適用することができる。
【0092】
[0092] 本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、又はそのプロドラッグ又は代謝産物はまた、抗体、天然リガンド、等のような、GSNOR阻害化合物への結合パートナーの開発、単離、又は精製のための薬剤として使用することができる。当業者は、本発明の化合物に関連した使用を容易に決定することができる。
【実施例】
【0093】
[0093] 以下のスキーム及び実施例は、本発明を例解するために示す。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載される特定の条件又は詳細に限定されないことを理解されたい。本出願を通して、米国特許が含まれる公的に利用可能な文書へのありとあらゆる参考文献が参照により具体的に組み込まれる。
【0094】
[0094] 本発明のGSNOR阻害剤は、既知の合成の方法論を使用して、又は既知の合成の方法論の変更により、容易に合成することができる。当業者に容易に認められるように、以下に記載の方法論は、多様な置換基を有するクロモンの合成を可能にする。以下の一般スキーム1は、本発明のクロモン化合物を作製するための代表的な手順である。追加の合成の詳細については、実施例1〜21に、そして中間体のセクションである実施例23に見出すことができる。
【0095】
【化2】
【0096】
実施例1:4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0097】
【化3】
【0098】
[0095] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件a)(変更)及びc)を使用して製造した。
[0096] (工程1) 4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成
中間体A−1a(450mg,1.5ミリモル)及びTEA(758mg,7.5ミリモル)の溶液へ2,2−ジフルオロ酢酸無水物(522mg,3.0ミリモル)を加えた。この混合物を120℃で4時間撹拌した。この反応混合物を室温へ冷やして真空で濃縮して茶褐色の固形物を得て、これをさらに精製せずに次の工程に使用した(400mg,74%)。
【0099】
[0097] (工程2) 4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例1)の合成、c)条件の実例
4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(400mg,1.16ミリモル)の1,4−ジオキサン(1mL)中の混合物へ濃HCl(1mL)を加えた。この反応混合物を一晩加熱して還流させた。この混合物を室温へ冷やして、濾過した。濾過した塊を水(5mL)で2回、そしてエタノール(2mL)で洗浄し、分取用HPLCによって精製して、白色の固形物(50mg,13%)を得た。
【0100】
[0098] (データ) 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, TMS): δ 13.11 (s, 1H), 11.09 (s, 1H), 8.02 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.95 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.01 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.5 Hz 1H), 6.68 (t, J = 51.0 Hz, 1H); MS (ESI): m/z 333.0 [M+1]+。
【0101】
実施例2:4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0102】
【化4】
【0103】
[0099] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件b)(変更)及びc)を使用して製造した。
[00100] (工程1) 4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成、b)条件の実例
中間体A−1a(450mg,1.5ミリモル)及びEt3N(825mg,7.5ミリモル)のDCM(5mL)中の撹拌混合物へ塩化2−メトキシアセチル(486mg,4.5ミリモル)を加えた。次いで、この混合物を室温で5時間撹拌した。この溶液を減圧下に除去して、残渣を水(50mL)で希釈し、酢酸エチル(50mLx3)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=1:1)によって精製して、4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(84mg,16%)を黄色のオイルとして得た。MS (ESI): m/z 355.0 [M+1]+。
【0104】
[00101] (工程2) 4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例2)の合成
一般スキーム1、c)条件(分取用HPLCによって精製)、詳しい例については実施例1の工程2を参照のこと。
【0105】
[00102] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.08 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.94 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 4.24 (s, 2H), 3.34 (s, 2H); MS (ESI): m/z 327.1 [M+1]+。
【0106】
実施例3:4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0107】
【化5】
【0108】
[00103] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件b)及びd)を使用して製造した。ここでは、合成の詳細がb)及びd)の実例として含まれる。
【0109】
[00104] (工程1) 4−(7−(イソブチリルオキシ)−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成、スキーム1、b)条件の実例。
【0110】
[00105] 中間体A−1a(450mg,粗製、1.5ミリモル)及びTEA(834μL,6ミリモル)の乾燥DCM(5mL)溶液へ塩化イソブチリル(480μL,4.5ミリモル)を室温で滴下した。この混合物を3時間撹拌した。揮発物質を減圧下に除去した。残渣へTEA(5mL)を加えて、95℃で一晩加熱した。室温へ冷やして濾過し;濾過ケークをEA(10mL)で洗浄した。濾液を濃縮してCombi−Flash(40gシリカゲル、PE:EA=10:0で開始して3:1への勾配、40mL/分、40分、総溶媒量:1.6L)によって精製して、4−(7−(イソブチリルオキシ)−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(80mg,13%)を白色の固形物として得た。
【0111】
[00106] (工程2) 4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例3)の合成、スキーム1、d)条件の実例。
[00107] 4−(7−(イソブチリルオキシ)−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(80mg,0.142ミリモル)のTHF(2mL)溶液へ水酸化リチウム(60mg,1.42ミリモル)の水(1mL)溶液を加えた。この混合物を室温で3時間撹拌した。TLC(PE:EA=3:1)は、この反応が完了していることを示した。有機溶媒を減圧下に除去し、塩基性の水層をDCM(10mLx2)で抽出して1N HCl溶液でpH4〜5へ調整し、沈殿を濾過によって採取し、真空で乾燥させて、実施例3(58mg,94%)を黄色の固形物として得た。
【0112】
[00108] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.99 (s, 1H), 10.80 (s, 1H), 7.99 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.87(d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.38(d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.92 (dd, J = 8.5Hz 2 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 2 Hz, 1H), 2.75(m, 1H), 1.21 (s, 3H), 1.19 (s, 3H); MS (ESI): m/z 325.1 [M+1]+。
【0113】
実施例4:4−(2−シクロペンチル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0114】
【化6】
【0115】
[00109] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化シクロペンタンカルボニルより出発し、条件b)を使用して製造して、4−(7−(シクロペンタンカルボニルオキシ)−2−シクロペンチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルを得た。工程2は、d)条件に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0116】
[00110] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.98 (brs, 1H), 10.79 (brs, 1H), 7.99 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 9 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8 Hz, 2H), 6.91 (dd, J = 9Hz 2 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 2 Hz, 1H), 2.84 (m, 1H), 1.78-1.84 (m, 6H), 1.543 (s, 2H); MS (ESI): m/z 351.1 [M+1]+。
【0117】
実施例5:4−(7−ヒドロキシ−2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0118】
【化7】
【0119】
[00111] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと無水酢酸より出発し、条件a)(ここでは、反応物を室温で2時間撹拌後に3時間還流させて、分取用TLC(PE:EA=3:1)によって精製した)を使用して製造した。工程2は、c)条件に従った。詳しい実例については、実施例1を参照のこと。
【0120】
[00112] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.94 (d, J = 9.0 Hz ,1H) ,6.88 (s, 1H), 2.32 (s, 3H); MS (ESI): m/z 297.1 [M+1]+。
【0121】
実施例6:4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0122】
【化8】
【0123】
[00113] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化2−フェニルアセチルより出発し、条件b)(ここでは、反応を室温で3時間行った)を使用して製造して、4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルを得た。工程2:d)条件(ここでは、反応物をそのまま室温一晩撹拌して、分取用HPLCによって精製した)に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0124】
[00114] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz):δ 8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.99 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.29 (q, J = 14.5 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.22 (s, 1H), 7.15 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 6.94 (q, J = 8.5 Hz, 1H), 6.83 (s, 1H), 3.92 (s, 2H); MS (ESI): m/z373.1 [M+1]+。
【0125】
実施例7:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0126】
【化9】
【0127】
[00115] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化チオフェン−2−カルボニルより出発し、条件b)を使用して製造して、チオフェン−2−カルボン酸3−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−7−イルを得た。工程2:d)条件に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0128】
[00116] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.08 (brs, 1H), 10.89 (s, 1H), 8.03 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9 Hz, 1H), 7.77 (dd, J = 5, 1Hz, 1H), 7.41 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.31 (dd, J = 3.5, 1Hz, 1H), 7.08 (m, 1H), 6.94-6.98 (m, 2H); MS (ESI): m/z 365.0 [M+1]+。
【0129】
実施例8:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0130】
【化10】
【0131】
[00117] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化チオフェン−3−カルボニルより出発し、条件b)を使用して製造して、チオフェン−3−カルボン酸3−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−7−イルを得た。工程2は、d)条件に従った。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0132】
[00118] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.01 (brs, 1H), 10.87 (s, 1H), 7.97 (d, J = 8 Hz, 2H), 7.92 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.78-7.79 (m, 1H), 7.49-7.51 (m, 1H), 7.35 (d, J = 8.5Hz, 2H), 6.98 (d, J = 2 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 9, 2Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 5.5, 1.5Hz, 1H); MS (ESI): m/z 365.0 [M+1]+。
【0133】
実施例9:4−(7−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0134】
【化11】
【0135】
[00119] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体A−1aと塩化3−メチルブタノイルより出発し、条件b)を使用して製造して、4−(2−イソブチル−7−(3−メチルブタノイルオキシ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルを得た。工程2は、d)条件に従って、PEからの再結晶によって精製した。詳しい実例については、実施例3を参照のこと。
【0136】
[00120] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 8.00 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.95 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.49 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.40-2.20 (m, 1H), 0.90 (d, J = 7.0 Hz, 6H); MS (ESI): m/z 339.1 [M+1]+。
【0137】
実施例10:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0138】
【化12】
【0139】
[00121] (合成) 一般スキーム1に従って、中間体A−1aより出発し、条件a)及びc)を使用して製造した。ここでは、合成の詳細がa)及びc)の別の実例として含まれる。
【0140】
[00122] (工程1) 4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成、a)条件の実例。
中間体A−1a(400mg,1.33ミリモル)のDCM(10mL)溶液へTFAA(1.39g,6.65ミリモル)を5〜10℃で加えた。添加後、この混合物を室温で1時間撹拌し、濃縮し、分取用TLC(PE:EA=2:1)によって精製して、生成物(280mg,56%)を黄色の固形物として得た。
【0141】
[00123] (工程2) 4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例10)の合成、c)条件の実例。
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(23mg,0.06ミリモル)のジオキサン(0.5mL)溶液へ濃HCl(0.5mL)を加えた。この反応混合物を70℃で7時間撹拌し、室温へ冷やして、遠心分離させた。沈殿を水(1mLx2)で濯ぎ、真空で乾燥させて、実施例10(13mg,61%)を白色の固形物として得た。
【0142】
[00124] (データ) 1H NMR (CD3OD,500 MHz): δ 8.09 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.01 (dd, J = 9.0, 2.0 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 2.0 Hz, 1H) ppm. MS (ESI): m/z 351.0 [M+1]+。
【0143】
実施例11:4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0144】
【化13】
【0145】
[00125] (合成) 工程1:4−(7−メトキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチルの合成。
中間体B(100mg,0.33ミリモル)及び二硫化炭素(127mg,1.67ミリモル)のDMF(5.0mL)中の撹拌混合物を0℃へ冷やして、NaH(24mg,1.0ミリモル)を加えた。この反応混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、MeI(94mg,0.67ミリモル)を加えて、この反応混合物を室温で3時間撹拌した。この溶液を水(10mL)で希釈し、DCM(50mLx3)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=3:1)によって精製して、生成物(36mg(純粋ではない),30%)を得た。MS (ESI): m/z 357.0 [M+1]+。
【0146】
[00126] 工程2:4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(実施例11)の合成。
乾燥ジクロロメタン(5.0mL)中の4−(7−メトキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(36mg,0.101ミリモル)を窒素下に0℃へ冷やして、DCM中のBBr3(1.0M,0.2mL,0.202ミリモル)を速やかに加えた。次いで、この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応物を水で反応停止させて、減圧下に濃縮した。残渣を分取用HPLCによって精製して、実施例11(8.2mg,25%)を灰白色の固形物として得た。
【0147】
[00127] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.10 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 2.64 (s, 3H); MS (ESI): m/z329.0 [M+1]+。
【0148】
実施例12:4−(6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0149】
【化14】
【0150】
[00128] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体CとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した(ここでは、反応物を室温で2時間撹拌してから、40℃で4時間加熱して、精製せずに使用した)。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0151】
[00129] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.10 (brs, 1H), 12.25 (brs, 1H), 8.01 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.00 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.16 (s, 1H); MS (ESI): m/z384.9 [M+1]+。
【0152】
実施例13:4−(6−フルオロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0153】
【化15】
【0154】
[00130] 一般スキーム1に従って、工程1において中間体DとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0155】
[00131] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): 8.11 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 7.5 Hz, 2H); MS (ESI): m/z369.0 [M+1]+。
【0156】
実施例14:2−フルオロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0157】
【化16】
【0158】
[00132] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体EとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した(ここでは、粗生成物を精製せずに使用した)。工程2は、c)条件(水系の後処理に、PE:DCM=1:1からの再結晶による精製を続ける)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0159】
[00133] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): 8.05-8.01 (m, 2H), 7.22 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 7.04 (dd, J = 2.0 Hz, 9.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.0 Hz, 1H); MS (ESI): m/z 369.0 [M+1]+。
【0160】
実施例15:3−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0161】
【化17】
【0162】
[00134] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体FとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した(ここでは、水系の後処理を実施して、粗生成物を精製せずに使用した)。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0163】
[00135] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ13.49 (brs, 1H), 11.28 (brs, 1H), 8.04 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 7.95-7.98 (m, 2H), 7.58 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.06 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz 1H), 7.02 (d, J = 2.0 Hz, 1H); MS (ESI): m/z 385.0 [M+1]+。
【0164】
実施例16:4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0165】
【化18】
【0166】
[00136] (合成) 工程1:2,2−ジフルオロプロパン酸(330mg,2.97ミリモル)のDCM(5mL)溶液へP2O5(3.3g,29.7ミリモル)を室温で加えて、この混合物を2日間撹拌して、2,2−ジフルオロプロパン酸無水物を得た。中間体A−2a(170mg,0.59ミリモル)のTEA(5mL)懸濁液へDCM中の2,2−ジフルオロプロパン酸無水物を0〜10℃で滴下した。この混合物を室温で2時間撹拌した。揮発物質を蒸発させて、残渣を分取用TLC(PE:EA=1:1)によって精製して、4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(45mg,21%)を茶褐色のオイルとして得た。
【0167】
[00137] 工程2:c)条件(DCMからの再結晶による精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
[00138] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ8.07 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 1.95 (t, JF-H = 18.5 Hz, 3H); MS (ESI): m/z 347.0 [M+1]+。
【0168】
実施例17:4−(7−ヒドロキシ−6−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0169】
【化19】
【0170】
[00139] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体GとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件(分取用HPLCによる精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0171】
[00140] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ8.12 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.52 (s, 1H), 7.42 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.04 (s, 1H), 3.98 (s, 3H); MS (ESI): m/z 381.0 [M+1]+。
【0172】
実施例18:2−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0173】
【化20】
【0174】
[00141] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体HとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件(DCMからの再結晶による精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0175】
[00142] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): 8.15 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.06-8.04 (m, 2H), 7.47 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.06 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 2.0 Hz ,1H) ; MS (ESI): m/z 385.0 [M+1]+。
【0176】
実施例19:4−(2−(1,1−ジフルオロプロピル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0177】
【化21】
【0178】
[00143] (合成) 工程1:2,2−ジフルオロブタン酸(500mg,4.032ミリモル)のCH2Cl2(30mL)中の撹拌溶液を室温で、P2O5(5.73g,40.32ミリモル)で処理した。この反応混合物を5℃で2日間保存した。この澄明な層を中間体A−2(300mg,1.049ミリモル)のTEA(0.4mL,2.77ミリモル)溶液へ加え;固形物をCH2Cl2(1mLx3)で洗浄して、合わせたDCM溶液も中間体A−2の溶液へ加えた。この反応物を室温で2時間撹拌した。揮発物質を減圧下に除去した。残渣を希HCl溶液に取って、EAで抽出した。この抽出液を濃縮して300mgの橙色の固形物を得て、これをシリカゲルカラム(PE:EA=10:1〜4:1)によって精製して、40mg(収率:10%)の生成物を得た。
【0179】
[00144] 工程2:c)条件(DCMからの再結晶による精製を伴う)に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
[00145] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ7.96 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.89 (dd, J = 2.0, 9.0 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.17-2.09 (m, 2H), 0.91 (t, J = 7.5 Hz, 3H); MS (ESI): m/z 347.0 [M+1]+。
【0180】
実施例20:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)−3−メトキシ安息香酸
【0181】
【化22】
【0182】
[00146] (合成) 一般スキーム1に従って、工程1において中間体IとTFAAより出発し、条件a)を使用して製造した。工程2は、c)条件に従った。詳しい実例については、実施例10を参照のこと。
【0183】
[00147] (データ) 1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 13.17 (brs, 1H), 11.21 (brs, 1H), 7.93 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.61 (dd, J = 1.0, 7.5 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.04 (dd, J = 2.0, 8.5 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H); MS (ESI): m/z381.1 [M+1]+。
【0184】
実施例21:4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0185】
【化23】
【0186】
[00148] (合成) 工程1:4−(6−ブロモ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチルの合成。
一般スキーム1に従って、中間体JとTFAAより出発し、条件a)(ここでは、粗生成物をシリカゲルカラム(PE/EA=10/1〜3/1)によって精製した)を使用して製造した。
【0187】
[00149] 工程2:4−(6−シアノ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチルの合成。
4−(6−ブロモ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(350mg,0.76ミリモル)のNMP(3mL)溶液へCuCN(340mg,3.8ミリモル)を加えた。この混合物を窒素の防護下に150℃で8時間撹拌した。この混合物を室温へ冷やして水(10mL)で反応停止させて、濾過した。このケークをアセトン(15mLx2)で洗浄した。濾液を真空で濃縮して茶褐色のオイルを得て、これを分取用TLC(PE/EA=5/1)によって精製して、生成物(125mg,40%)を黄色の固形物として得た。MS (ESI): 404.0 [M+1]+。
【0188】
[00150] 工程3:4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸の合成。
4−(6−シアノ−7−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸メチル(120mg,0.29ミリモル)のDCM(3mL)溶液へBBr3(0.35mL,4.5ミリモル)を室温で注意深く滴下した。この添加が完了したとき、この混合物を2日間撹拌した。水を注意深く加えて、生じる混合物を酢酸エチル(10mLx2)で抽出した。合わせた有機相を塩水(5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させて濃縮して茶褐色のオイルを得て、これを分取用HPLCによって精製して、実施例21(30mg,27.8%)を黄色の粉末として得た。
【0189】
[00151] (データ) 1H NMR (MeOH-d4, 500 MHz, TMS): δ 8.38 (s, 1H), 8.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.41 (s, J = 8.0 Hz, 2H), 7.09 (s, 1H); MS (ESI): m/z 376.0 [M+1]+。
【0190】
実施例22:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸
【0191】
【化24】
【0192】
[00152] (合成) 工程1:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチルの合成。
中間体A−1a(300mg,1.0ミリモル)の乾燥DMF(8mL)溶液へBF3・Et2O(1.2mL)を撹拌しながら10℃で注意深く加え、この添加が完了した後で、この混合物を室温まで0.5時間温めた。次いで、この反応溶液を60℃へ加熱して、MsCl(4mLのDMF中2mL)を加えた。次いで、この反応溶液を95℃まで5時間加熱した。この反応混合物を室温へ冷やして、氷水(30mL)へ注いで、EA(20mLx5)で抽出した。有機相を塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させて真空で濃縮して、茶褐色のオイル(160mg,51.6%)を得た。MS (ESI): m/z 311.0 [M+1]+。
【0193】
[00153] 工程1:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸(化合物22)の合成。
化合物:4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸エチル(160mg,0.52ミリモル)の1,4−ジオキサン(4mL)中の混合物へ濃HCl(2mL)を加えた。この反応混合物を一晩加熱して還流させた。この混合物を室温へ冷やして、濾過した。濾過した塊を水(5mL)で2回、そしてエタノール(2mL)で洗浄して真空で乾燥させて、実施例22(47.3mg,32.5%)を茶褐色の固形物として得た。1H NMR (MeOH-d4, 400 MHz, TMS): δ 8.32 (s, 1H), 8.10 (d, J = 8 Hz, 3H), 7.71 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 6.91 (s, 1H); MS (ESI): m/z 283.1 [M+1]+。
【0194】
[00154] 本実施例は、比較例として含まれる。実施例24に記載の方法によって定量した本化合物のIC50は、135nMであった。
実施例23:中間体の合成
[00155] 上記の実施例において言及した中間体の合成について本明細書で記載する。例示の詳しい方法について、中間体A−1a及び中間体A−2aの記載において下記に示す方法1〜3に記載する。
【0195】
中間体の一般構造
【0196】
【化25】
【0197】
[00156] 中間体A−1a:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチルと中間体A−2a:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成
【0198】
【化26】
【0199】
[00157] 中間体A−1aは、方法1によって初めに合成してから、後に、方法2に記載するより短い手順によって製造した。方法3は、メチルエステル中間体A−2aについて、別の手順で記載する。
【0200】
方法1:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチルの合成
【0201】
【化27】
【0202】
[00158] 工程1:2−(4−アセチルフェニル)酢酸エチル(A−2)の合成。2−フェニル酢酸エチル(A−1)(50.9g,305ミリモル)のCS2(220mL)溶液へAlCl3(93.6g,702ミリモル)を0〜10℃で10分にわたり加えた。添加後、塩化アセチル(30.5mL,427ミリモル)を0〜10℃で10分にわたり加えた。添加後、この反応混合物を一晩ゆっくり加熱して還流させてから、氷冷した5N HCl溶液(600mL)へ注ぎ、EA(200mLx3)で抽出した。合わせた有機相を水(200mL)、飽和NaHCO3(200mL)、及び塩水(200mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、茶褐色のオイルを得た。冷蔵庫においてPE/アセトン(150mL/20mL)で再結晶させて、A−2(13.8g,19%)を黄色の結晶固形物として得た。
【0203】
[00159] 工程2:4−(カルボキシメチル)安息香酸(A−3)の合成。A−2(10.0g,48.5ミリモル)のTHF/H2O(v/v=1/1,100mL)溶液へNaOH(3.88g,97.0ミリモル)を加えた。この反応溶液を室温で一晩撹拌した。THFを減圧下に除去してから、NaOH(17.46g,436.5ミリモル)と水(150mL)を加えた。ヨウ素を室温で少量ずつ加えた。添加後、この反応混合物を室温で30分間、次いで90℃で2時間撹拌した。室温へ冷やして、濾過した。濾液を濃HClでpH=8〜9へ調整した。NaHSO3(固体)を少量ずつ加えると、最後には反応混合物の色が茶褐色から黄色へ変化した。濃HClを加えて、pH=2〜3とした。生じる沈殿を濾過し、水(10mLx2)で洗浄し、真空で乾燥させて、A−3(4.47g,50%)を黄色の粉末として得た。
【0204】
[00160] 工程3:4−(2−エトキシ−2−オキソエチル)安息香酸エチル(A−4)の合成。A−3(5.0g,27.7モル)のDCM(50mL)溶液へ塩化オキサリル(12.6g,99.2ミリモル)と1滴のDMFを加えた。この混合物を室温で2時間撹拌してから、濃縮乾固させた。EtOH(100mL)を加えて、この混合物を室温で2時間撹拌してから濃縮乾固させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=5:1)によって精製して、A−4(4.587g,70%)を茶褐色のオイルとして得た。
【0205】
[00161] 工程4:2−(4−(エトキシカルボニル)フェニル)酢酸(A−5)の合成。A−4(3.924g,16.6ミリモル)のTHF/H2O/EtOH(v/v=6/6/1,65mL)溶液へLiOH・H2O(731mg,17.4ミリモル)を加えた。この反応溶液を室温で一晩撹拌した。THFを減圧下に除去して、この水溶液を1N HClでpH=3へ酸性化した。この固形物を濾過して真空で乾燥させて、A−5(3.02g,87%)を黄色の固形物として得た。
【0206】
[00162] 工程5:4−(2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチル(A−6)の合成。A−5(3.02g,14.5ミリモル)のDCM(45mL)溶液へ塩化オキサリル(7.36g,58.0ミリモル)と1滴のDMFを加えた。この混合物を室温で2時間撹拌してから、濃縮乾固させた。残渣をDCM(100mL)に溶かし、AlCl3(3.48g,26.1ミリモル)と1,3−ジメトキシベンゼン(4.0g,29.0ミリモル)を0℃で加えた。添加後、この混合物を室温で一晩撹拌した。1N HCl溶液(100mL)を加えて、DCM(50mLx3)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaHCO3(80mL)と塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=10:1)によって精製して、A−6(3.301g,69%)を茶褐色のオイルとして得た。
【0207】
[00163] 工程6:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチル(A−7)の合成。A−6(3.30g,10.0ミリモル)のDCM(50mL)溶液へBBr3(25.05g,100.0ミリモル)を−78℃で加えた。添加後、この混合物を室温まで温めて、一晩撹拌した。1N HCl溶液(100mL)を注意深く加えた。この混合物を濃縮乾固させた。残渣をEtOH(200mL)に溶かして、再び濃縮乾固させた。この操作を2回繰り返して、残渣をEtOH(80mL)に溶かした。SOCl2(35.69g,300.0ミリモル)を10℃で加えた。この混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:EA=5:1)によって精製して、A−7(中間体A−1a)(2.48g,82%)を黄色の固形物として得た。
【0208】
方法2:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチルの合成
【0209】
【化28】
【0210】
[00164] 工程1:2−(4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸(B−2)の合成。2−(4−ブロモフェニル)酢酸(B−1)(91.3g,0.42モル、1.0当量)のMeOH(1.5L)溶液へ乾燥TEA(85.8g,0.85モル、2.0当量)とPd(dppf)Cl2(3.43g,4.2ミリモル、1%)を加えた。この溶液をCOガス(4MPa)下に120℃で16時間加熱した。次いで、これを濾過して、真空で濃縮した。残渣を500mLのEAと1Lの水に溶かした。この混合物を飽和NaHCO3によってpH=7.5へ中和して、分離させた。無機相をEA(500mLx3)で抽出し、1N HClでpH=5へ酸性化した。濾過と真空での乾燥によって、62.8gのB−2(白色の固形物、収率76%)を得た。MS (ESI): m/z 195.1 [M+1]+。
【0211】
[00165] 工程2:4−(2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(B−3)の合成。B−2(15g,77.3ミリモル)及びDMF(1滴)の無水DCM(150mL)溶液へ塩化オキサリル(33mL,386.0ミリモル)を0〜5℃で撹拌しながら滴下した。添加が完了した後で、この混合物を室温で2時間撹拌した。TLC(PE/EA=3/1,MeOHで止める)がこの反応の完了していることを示したので、揮発物質を蒸発させて、残渣をDCM(20mL)で希釈し、これを次の工程に直接使用した。
【0212】
[00166] 三塩化アルミニウム(16.5g,123.7ミリモル)の無水DCM(80mL)懸濁液へ1,3−ジメトキシベンゼン(21.3g,154.6ミリモル)に続けて上記の塩化アシル溶液を5℃で加えた。この混合物を室温で一晩撹拌し、氷状の1N HCl(200mL)へ注意深く注いで、EA(150mLx3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して濃縮して茶褐色のオイルを得て、これをシリカゲルカラム(PE/EA=5/1)によって精製して、B−3(12g,49.6%)を黄色の固形物として得た。MS (ESI): m/z 315.1 [M+1]+。
【0213】
[00167] 工程3:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸エチル(中間体A−1a)の合成。B−3(55g,141.6ミリモル)のDCM(600mL)溶液へBBr3(164mL,1.7モル)を−10℃で滴下した。この添加が完了したとき、この混合物を室温で一晩撹拌して、撹拌しながら、砕氷(700g)へ注いだ。揮発物質を蒸発させて黄色の固形物を得て、これを高真空で乾燥させて、無水エタノール(500mL)に溶かした。この溶液へ塩化チオニル(80mL)を0〜10℃で滴下した。この添加が完了したとき、生じる混合物を3時間加熱して還流させた。揮発物質を蒸発させて、残渣をEA(600mL)と飽和炭酸ナトリウム(200mL)の間で分配した。有機相を分離させ、塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して濃縮して茶褐色のスラリーを得て、これをSGC(PE/EA=3/1)によって精製して、中間体A−1a(24.5g,58%)を黄色の固形物として得た。1H NMR (CDCl3, 500 MHz, TMS): δ 12.58 (s, 1H), 8.01 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.05 (brs, 1H), 6.41 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.37 (s, 1H), 4.38 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 4.26 (s, 2H), 1.38 (t, J = 7 Hz, 3H). MS (ESI): m/z 301.1 [M+1]+。
【0214】
方法3:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成:
【0215】
【化29】
【0216】
[00168] 4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体A−2a)の合成:B−2(合成については、方法2,工程1を参照のこと)(50g,257.5ミリモル)のBF3−Et2O(150mL)溶液へレゾルシノール(28.4g,257.5ミリモル)を室温で加えて、この混合物を95℃で5.5時間加熱した。この混合物を室温へ冷やして、氷状の10% Na2CO3溶液(600mL)へ撹拌しながら注いで、EA(500mLx4)で抽出した。合わせた有機層を水(500mLx3)と塩水(500mLx)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(PE:EA=7:1〜4:1)によって精製して、中間体A−2a(10.2g,13.8%)を黄色の固形物として得た。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz): δ 12.38 (s, OH), 10.72 (s, OH), 7.91-7.95 (m, 3H), 7.43 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.28 (d, J = 1 Hz, 1H), 4.42 (s, 2H), 3.84 (s, 3H); MS (ESI): m/z 287.1 [M+1]+。
【0217】
[00169] 中間体B:4−(2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。4−(2−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(B−3,中間体A−1aの方法2を参照のこと)(2.5g,8.0ミリモル)のDCM(25mL)溶液へBBr3/DCM(8mL,8ミリモル、DCM中1モル/L)を−78℃で加えた。この添加が完了したとき、この混合物をそのまま室温へ温めて、1時間撹拌した。1N HCl溶液(10mL)を注意深く加えた。この混合物を飽和Na2CO3(20mL)と塩水(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させた。この粗製物を Combi-Flash(PE:EA=10:1)によって精製して、中間体B(600mg,25%)を黄色の固形物として得た。1H NMR (CDCl3, 500 MHz, TMS): δ 12.60 (s, 1H) 8.01 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.71 (d, J = 9.0 Hz ,1H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.42 (d, J = 9.0 Hz ,2H) ,4.27 (s, 2H), 3.90 (s, 3H) ,3.83 (s, 3H); MS (ESI): m/z 301.1 [M+1]+。
【0218】
[00170] 中間体C:4−(2−(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。B−2と4−クロロベンゼン−1,3−ジオールより出発して、方法3,中間体A−2aに記載の手順に従った。粗生成物を精製せずに使用した。MS (ESI): m/z321.0 [M+1]+。
【0219】
[00171] 中間体D:4−(2−(5−フルオロ−2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。B−2と4−フルオロベンゼン−1,3−ジオールより出発して、方法3,中間体A−2に記載の手順に従った。MS (ESI): m/z 305.0 [M+1]+。
【0220】
[00172] 中間体E:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−2−フルオロ安息香酸メチルの合成
[00173] 工程1:1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼンの合成。1−ブロモ−2−フルオロ−4−メチルベンゼン(2.5g,13.3ミリモル)のトリフルオロメチルベンゼン(25mL)溶液へNBS(2.35g,13.3ミリモル)及びAIBN(945mg,6.7ミリモル)の混合物を、85℃で30分間、5分量で加えた。この混合物を85℃で3時間撹拌した。不溶物を濾過して除いて、濾液を蒸発させて、1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼン(2.7g,77%)を淡黄色のオイルとして得て、これを次の工程に直接使用した。
【0221】
[00174] 工程2:2−フルオロ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−フルオロベンゼン(5.4g,20.4ミリモル)のMeOH(150mL)溶液へTEA(2.8mL,20.4ミリモル)とPd(dppf)Cl2(1.3g,2ミリモル)を加えた。この混合物をCO(0.5MPa)下に60℃で2時間撹拌した。追加のTEA(4.3mL,30.6ミリモル)を加えて、この混合物をCO(4MPa)下に120℃まで20時間加熱した。溶媒を真空で除去して、残渣を Combi-Flash(80gのシリカゲル、PE/EA=10:0で開始して1:3への勾配、60mL/分、60分、総溶媒量:3.6L)によって精製して、生成物(1.5g,33%)を無色のオイルとして得た。MS (ESI): m/z 227.1 [M+1]+。
【0222】
[00175] 工程3:2−(3−フルオロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成。中間体A−1aの合成の方法1における、化合物A−4の化合物A−5への変換に記載の手順に従った。MS (ESI): m/z 213.0 [M+1]+。
【0223】
[00176] 工程4:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−2−フルオロ安息香酸メチル(中間体E)の合成。2−(3−フルオロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸を使用して、方法3(中間体A−2aを参照のこと)に記載の手順に従ったが、ここでは反応物を60℃で一晩、そして95℃で2時間撹拌した。1H NMR (CDCl3-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.47 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.94 (t, J = 8.0 Hz ,1H), 7.69 (d,J = 8.5 Hz, 1H), 7.13 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 11.5 Hz, 1H) , 6.43 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.41 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 4.26 (s, 2H), 3.94 (d, J = 2.5 Hz, 3H); MS (ESI): m/z 305.1 [M+1]+。
【0224】
[00177] 中間体F:3−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成
[00178] 工程1:3−クロロ−4−メチル安息香酸メチルの合成。3−クロロ−4−メチル安息香酸(20g,117ミリモル)のMeOH(200mL)溶液へ塩化チオニル(25.6mL,352ミリモル)を0℃で撹拌しながら滴下した。この混合物を室温で5日間撹拌した。この反応物を濃縮した。残渣をEA(500mL)に溶かし、10% Na2CO3(250mLx2)、水(250mL)、及び塩水(250mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して濃縮して、生成物(20.8g,96%)を黄色の固形物として得た。
【0225】
[00179] 工程2:4−(ブロモメチル)−3−クロロ安息香酸メチルの合成。3−クロロ−4−メチル安息香酸メチルを使用して中間体Eの合成中の工程1に従って、生成物(10g,78%)を得た。MS (ESI): m/z263.0 [M+1]+。
【0226】
[00180] 工程3:3−クロロ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。4−(ブロモメチル)−3−クロロ安息香酸メチル(10g,37.95ミリモル)のMeOH(300mL)溶液へTEA(4.2mL,30.36ミリモル)とPd(dppf)Cl2(2.8g,3.8ミリモル)を加えた。この反応物を0.4MPa CO気圧下に60℃で3時間加熱し、濾過して濃縮した。残渣を Combi-Flash(120gのシリカゲル、PE/EA=10:0で開始して5:1への勾配による、60mL/分、60分、総溶媒量:3.6L)によって精製して、生成物(2.7g,29%)を白色の固形物として得た。MS (ESI): m/z 243.0 [M+1]+。
【0227】
[00181] 工程4:2−(2−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成。中間体A−1aの合成の方法1における、化合物A−4の化合物A−5への変換に記載の手順に従った。
【0228】
[00182] 工程5:3−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体F)の合成。2−(2−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸を使用して、方法3(中間体A−2aを参照のこと)に記載の手順に従った。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.09 (s, 1H), 10.72 (brs, 1H), 7.97-7.88 (m, 3H), 7.57 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.44 (dd, J = 2.5, 8.5 Hz, 1H), 6.30 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 4.62 (s, 2H), 3.87 (s, 3H); MS (ESI): m/z 321.1 [M+1]+。
【0229】
[00183] 中間体G:4−(2−(2,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成
[00184] 工程1:酢酸4−ホルミル−2−メトキシフェニルの合成。4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(10g,66ミリモル)の30mLのTHF溶液へAc2O(8g,80ミリモル)とTEA(20g,198ミリモル)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。揮発物質を蒸発させて15gの生成物をオイルとして得て、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0230】
[00185] 工程2:酢酸4−(ホルミルオキシ)−2−メトキシフェニルの合成。酢酸4−ホルミル−2−メトキシフェニル(15g,77ミリモル)のCH2Cl2(100mL)溶液へm−CPBA(31g,154ミリモル)を加えた。この溶液を50℃で2.5時間還流させた。この溶液を飽和Na2SO3溶液(50mL)、飽和Na2CO3溶液(50mL)、及び塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して真空で濃縮して、16gの粗生成物を白色の固形物として得て、これをさらに精製せずに次の工程に使用した。
【0231】
[00186] 工程3:4−メトキシベンゼン−1,3−ジオールの合成。酢酸4−(ホルミルオキシ)−2−メトキシフェニル(16g,76ミリモル)のTHF(50mL)/H2O(50mL)溶液へLiOH(7.7g,184.2ミリモル)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。揮発物質を減圧下に除去した。残渣をEA(50mLx3)で抽出した。有機相を塩水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して、真空で濃縮して黒色のオイルを得て、これをシリカゲルカラム(PE:EA=3:1)によって精製して、4.8g(40%)の生成物を茶褐色の固形物として得た。
【0232】
[00187] 工程4:4−(2−(2,4−ジヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体G)の合成。4−メトキシベンゼン−1,3−ジオールを使用して、方法3(中間体Aを参照のこと)に記載の手順に従った(ここでは、反応物を60℃で一晩加熱した)。MS (ESI): m/z317.0 [M+1]+。
【0233】
[00188] 中間体H:2−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。
[00189] 工程1:1−ブロモ−4−(ブロモメチル)−2−クロロベンゼンの合成。1−ブロモ−2−クロロ−4−メチルベンゼンを使用して、中間体Eの工程1に従った。
【0234】
[00190] 工程2:2−クロロ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。中間体Eの工程2に従った。MS (ESI): m/z 243.0 [M+1]+。
[00191] 工程3:2−(3−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成。中間体Fの工程4に従った。MS (ESI): m/z 229.0 [M+1]+。
【0235】
[00192] 工程4:2−クロロ−4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体H)の合成。中間体Fの工程5に従った。MS (ESI): m/z 321.7 [M+1]+。
【0236】
[00193] 中間体I:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−3−メトキシ安息香酸メチルの合成。
[00194] 工程1:3−メトキシ−4−メチル安息香酸メチルの合成。3−メトキシ−4−メチル安息香酸より出発した(中間体Fの工程1を参照のこと)。MS (ESI): m/z 181.1 [M+1]+。
【0237】
[00195] 工程2:4−(ブロモメチル)−3−メトキシ安息香酸メチルの合成(中間体Fの工程2を参照のこと)。MS (ESI): m/z 259.1 [M+1]+。
[00196] 工程3:3−メトキシ−4−(2−メトキシ−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成(中間体Fの工程3を参照のこと)。MS (ESI): m/z 239.1 [M+1]+。
【0238】
[00197] 工程4:2−(2−メトキシ−4−(メトキシカルボニル)フェニル)酢酸の合成(中間体Fの工程4を参照のこと)。MS (ESI): m/z 225.1 [M+1]+。
[00198] 工程5:4−(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル)−3−メトキシ安息香酸メチルの合成(中間体Fの工程5を参照のこと)。1H NMR (DMSO-d6, 500 MHz, TMS): δ 12.33 (s, 1H), 10.68 (s, 1H), 7.93 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.55 (dd, J = 1.0, 7.0 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.41 (dd, J = 2.0, 9.0 Hz, 1H), 6.27 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 4.36 (s, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.79 (s, 3H); MS (ESI): m/z 317.1 [M+1]+。
【0239】
[00199] 中間体J:4−(2−(5−ブロモ−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。
[00200] 工程1:4−(2−(5−ブロモ−2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチルの合成。B−2と1−ブロモ−2,4−ジメトキシベンゼンを使用して、方法2の工程2に従った(中間体Aを参照のこと)。MS (ESI): m/z 395.0 [M+1]+。
【0240】
[00201] 工程2:4−(2−(5−ブロモ−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(中間体J)の合成。4−(2−(5−ブロモ−2,4−ジメトキシフェニル)−2−オキソエチル)安息香酸メチル(1.1g,2.8ミリモル)のDCM(100mL)溶液へAlCl3(7.4g,56ミリモル)を加えて、この混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、この混合物を氷水(100mL)へ注いで、DCM(20mLx4)で抽出した。有機相を塩水(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過して濾液を真空で濃縮して茶褐色のオイルを得て、これを分取用TLC(PE/EA=3/1)によって精製して、中間体J(750mg,71%)を淡黄色の固形物として得た。MS (ESI): m/z 379.0 [M+1]+。
【0241】
実施例24:GSNORアッセイ
[00202] 様々な化合物について、GSNOR活性を阻害するその能力を in vitro で試験した。GSNORの発現及び精製については、Biochemistry 2000, 39, 10720-10729 に記載されている。
【0242】
[00203] GSNORの発酵処理:100μg/mlのアンピシリンを含有する2XYT培地中のGSNORグリセロールストックの穿刺物より、37℃で一晩のインキュベーション後にプレ培養物を増殖させた。次いで、アンピシリンを含有する新鮮な2XYT(4L)へ細胞を加えて、37℃で0.6〜0.9のOD(A600)にまで増殖させた後で誘導した。20℃で一晩のインキュベーションにおいて、GSNOR発現を0.1%アラビノースで誘導した。
【0243】
[00204] GSNORの精製:大腸菌細胞ペーストを窒素キャビテーションによって溶解させて、澄明化した溶解物をAKTA FPLC(アマーシャム・ファルマシア)でのNiアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。このカラムを、20mMトリス(pH8.0)/250mM NaClにおいて0〜500mMのイミダゾール勾配で溶出させた。Smt−GSNOR融合物を含有する溶出GSNOR画分をUlp−1で、4℃で一晩消化させてアフィニティータグを外してから、同じ条件下にNiカラムで再操作した。GSNORをフロースルー画分に回収して、結晶解析のためには、20mMトリス(pH8.0)、1mM DTT、10μM ZnSO4中のQ−セファロース及びヘパリンフロースルークロマトグラフィーによってさらに精製する。
【0244】
[00205] GSNORアッセイ:GSNO溶液と酵素/NADH溶液は、それぞれの日に用時作製する。これらの溶液は、濾過して、そのまま室温へ温める。GSNO溶液:100mM NaPO4(pH7.4)、0.480mM GSNO。396μLのGSNO溶液に続いて、DMSO中の試験化合物(又は、完全な反応対照ではDMSOのみ)の8μLをキュベットへ加えて、ピペット先端で混合する。試験すべき化合物は、100% DMSO中10mMのストック濃度で作製する。2倍の連続希釈を100% DMSOで行う。アッセイ液中のDMSOの最終濃度が1%となるように、各希釈液の8μLをアッセイ液へ加える。試験する化合物の濃度は、100〜0.003μMの範囲に及ぶ。酵素/NADH溶液:100mM NaPO4(pH7.4)、0.600mM NADH、1.0μg/mL GSNOレダクターゼ。396μLの酵素/NADH溶液を先のキュベットへ加えて、この反応を開始させる。キュベットを Cary 3E UV/可視分光光度計に入れて、340nm吸光度/分の変化を25℃で3分間記録する。アッセイは、各化合物濃度について同一3検体で行う。SigmaPlot の酵素反応速度分析モジュールでの標準曲線解析を使用して、各化合物のIC50を計算する。
【0245】
[00206] 最終アッセイ条件:100mM NaPO4(pH7.4)、0.240mM GSNO、0.300mM NADH、0.5μg/mL GSNOレダクターゼ、及び1% DMSO。最終容量:800μL/キュベット。
【0246】
[00207] GSNOR阻害剤の活性:実施例1〜21に記載の化合物について、GSNOR阻害活性を定量して、IC50値を入手した。GSNOR阻害剤の化合物、実施例1〜21は、約5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害剤の化合物、実施例1、2、3、5、6、10、13、14、15、16、18、19、20は、約0.5μM未満のIC50を有した。GSNOR阻害剤の化合物、実施例1、10、14、15、16、18、及び20は、約0.1μM未満のIC50を有した。
【0247】
実施例25:マウス薬物動態(PK)試験
実験モデル
[00208] マウスを使用して、GSNOR阻害剤の薬物動態を決定する。この種は、経口(PO)と静脈内(IV)の両方で試験品を投与することによって化合物のバイオアベイラビリティを評価するのに広く使用されている。IV又はPO投与のいずれかによる雄性BALB/cにおいてピーク活性の時点で血漿曝露を評価することによって、GSNOR阻害剤の効力を比較することができる。
【0248】
材料と方法
GSNOR阻害剤のIV投与
[00209] GSNOR阻害剤の化合物10をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)/10% Solutol(HS15)の澄明な溶液に戻し、0.2mg/mLの濃度を得て、マウスへ単回IV用量(2mg/kg)として投与した。動物に外側尾静脈より投薬した。イソフルラン麻酔下での心臓穿刺によって指定の時点(0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、16、24時間)で血液試料(各動物で1mLまでの血液)を採取した。血液は、Li−ヘパリンを含有する試験管へ採取した。この血液試料を氷上に保存して、採取からほぼ30分以内に遠心分離させた。ラベルを付けたポリプロピレン管へ血漿を移して、LC/MS/MSによって分析するまで、−70℃で冷凍した。
【0249】
GSNOR阻害剤のPO投与
[00210] GSNOR阻害剤、化合物10を40%プロピレングリコール/40%炭酸プロピレン/20%の5%ショ糖の澄明な溶液へ戻し、2mg/mLの濃度を得て、マウスへ単回経口用量(10mg/kg)としてガバージュにより投与した。イソフルラン麻酔下での心臓穿刺によって投薬後0.25、0.5、1、2、4、8、12、16、20、及び24時間で血液試料を採取した。血液は、Li−ヘパリンを含有する試験管へ採取した。この血液試料を氷上に保存して、採取からほぼ30分以内に遠心分離させた。ラベルを付けたポリプロピレン管へ血漿を移して、LC/MS/MSによって分析するまで、−70℃で冷凍した。
【0250】
LC/MS/MS分析
[00211] 各時点での血漿試料について、LC−MS/MSを使用して、1ng/mLの定量下限(LLOQ)で分析した。血漿を分析して各試料中のGSNOR阻害剤の量を定量して、それぞれのGSNOR阻害剤について、関連するマトリックスにおいて回帰曲線を作成した。
【0251】
[00212] IV投与とPO投与の両方についてPK変数を計算するためにWinNonlin分析を使用した:
IV部分のPK変数−AUClast;AUCINF;T1/2;Cl;Vss;Cmax;MRT
PO部分のPK定数−AUClast;AUCINF;T1/2;Cmax;Cl,MRT。
【0252】
[00213] 上記のPK変数に加えて、バイオアベイラビリティ(%F)の計算を実施した。
結果
[00214] IV投与:GSNOR阻害剤、化合物10の血漿レベルを投薬後24時間まで測定した。
【0253】
[00215] 経口投与:化合物10の血漿レベルを投薬後24時間まで測定し、曲線下面積に基づいて、平均の経口バイオアベイラビリティを定量した。化合物10は、17パーセントより高い経口バイオアベイラビリティを有した。
【0254】
実施例26.実験喘息におけるGSNORiの効力
実験喘息モデル:
[00216] 卵白アルブミン(OVA)誘発喘息のマウスモデルを使用して、GSNOR阻害剤について、メタコリン(MCh)誘発性気管支収縮/気道過敏反応に対する効力をスクリーニングする。これは、ヒトの喘息に類似した急性アレルギー喘息の表現型を提示する、広く使用されていて、十分に特徴づけられたモデルである。MChでのチャレンジに先立ってGSNOR阻害剤を投与する予防プロトコールを使用して、GSNOR阻害剤の効力について評価する。全身プレチスモグラフィー(Penh;Buxco)を使用して、増加用量のMChでのチャレンジに応じた気管支収縮応答を評価する。肺炎症の尺度として気管支肺胞洗浄液(BALF)への好酸球浸潤物の量も定量する。GSNOR阻害剤の効果を担体と陽性対照としてのコンビベント(吸入;IH)と比較する。
【0255】
材料と方法
アレルゲン感作及びチャレンジのプロトコール
[00217] PBS中のOVA(500μg/ml)を等量の蒸留水中10%(w/v)硫酸アルミニウムカリウムと混合して、10N NaOHを使用してpH6.5へ調整後、室温で60分間インキュベートする。750xgで5分間の遠心分離後、OVA/ミョウバンペレットを蒸留水中の元の容量へ再懸濁させる。0日目に、ミョウバンと複合させた100μg OVA(生理食塩水中500μg/mLの0.2mL)の腹腔内(IP)注射液をマウスに与える。生理食塩水中のケタミン及びキシラジン(それぞれ、0.44及び6.3mg/mL)の0.2mL混合物のIP注射によってマウスを麻酔して、ボード上に背臥位で置く。各動物の舌の裏側に250マイクログラム(2.5mg/mlの100μl)のOVA(8日目)と125μg(2.5mg/mlの50μl)のOVA(15、18、及び21日目)を入れる。
【0256】
肺機能検査(Penh)
[00218] 有意識で自由に動き、自発的に呼吸するマウスにおける最後のOVAチャレンジから24時間後に、Buxco チャンバ(ノースカロライナ州ウィルミントン)を使用する全身プレチスモグラフィーで、メタコリンへの in vivo 気道反応性を測定する。超音波ネブライザーによって産生する、エアゾール化した生理食塩水又は増加用量のメタコリン(5、20、及び50mg/mL)でマウスを2分間チャレンジする。気管支収縮の度合いは、同一マウスの気道抵抗性、インピーダンス、及び胸腔内圧の測定値と相関する、無次元の計算値である向上休止(Penh)として表す。それぞれの噴霧化チャレンジ後4分間のPenh読取り値を取って、平均化する。Penhは、以下のように計算する:Penh=[(Te/Tr−1)x(PEF/PIF)](ここでTeは無効化時間であり、Trは弛緩時間であり、PEFはピーク呼気流量であり、PIFはピーク吸気流量x0.67係数である)。最大値からユーザー定義の最大値百分率へ変化させるボックス圧力の時間が弛緩時間を表す。Tr測定は、最大ボックス圧力で始めて、40%で終える。
【0257】
BALF中の好酸球浸潤
[00219] 気道過敏反応性の測定の後で、マウスを心臓穿刺によって失血させてから、両肺より、又は左肺を主気管支で結紮後に右肺より、BALFを採取する。0.05mLアリコートより全BALF細胞を計数し、残る体液を4℃、200xgで10分間遠心分離させる。細胞ペレットを10% BSA含有生理食塩水に再懸濁させて、スライドガラス上に塗抹標本を作製する。好酸球を0.05%エオジン水溶液と蒸留水中5%アセトンで5分間染色し、蒸留水で濯いで、0.07%メチレンブルーで対比染色する。
【0258】
GSNOR阻害剤と対照
[00220] GSNOR阻害剤をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)において0.00005〜3mg/mLに及ぶ濃度で戻す。GSNOR阻害剤をマウスへ単回用量(10mL/kg)として、静脈内(IV)又は経口ガバージュのいずれかにより投与する。投薬は、MChチャレンジの30分〜24時間前に実施する。GSNOR阻害剤の効果を、同じやり方で投薬したPBS担体と比較する。
【0259】
[00221] すべての試験において、陽性対照としてコンビベント(Combivent)を使用する。コンビベント(ベーリンガー・インゲルハイム)は、その生成物が供給される吸入器デバイスを使用して肺へ投与されるが、マウスへの投与には、ピペット先端を使用して適用する。コンビベントは、MChチャレンジの48時間、24時間、及び1時間前に投与する。コンビベントのそれぞれのパフ(又は用量)は、18μgの臭化イパトロピウム(IpBr)と103μgの硫酸アルブテロール、又はほぼ0.9mg/kgのIpBrと5mg/kgのアルブテロールの用量を提供する。
【0260】
統計分析
[00222] ベースライン、生理食塩水、及び増加用量のMChチャレンジに対するPenhの曲線下面積値を、GraphPad Prism 5.0(カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して計算して、それぞれの(IV又は経口投与)担体対照のパーセントとして表す。片側ANOVA,Dunnetts(JMP 8.0,SAS研究所、ノースカロライナ州キャリー)を使用して、各試験内の処置群とそれぞれの担体対照群の間の統計学的な差を計算する。処置群とそれぞれの担体対照群の間のp値が0.05未満であれば、有意差があるとみなす。
【0261】
実施例27:実験炎症性腸疾患(IBD)におけるGSNOR阻害剤の効力
実験モデル
[00223] マウスのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性IBDの急性モデルを使用して、この疾患に対するGSNOR阻害剤の効力を探究する。急性DSS誘発IBDは、このヒト疾患で観察されるものに似た結腸中の病理学的変化を誘発する、広く使用されてよく特徴付けられたモデルである。このモデルとヒトの疾患では、結腸の陰窩内の上皮細胞が破壊されて、上皮壁の機能不全と続発する組織炎症、浮腫、及び潰瘍形成をもたらす。GSNOR阻害剤療法は、s−ニトロソグルタチオン(GSNO)レベルを回復させることによってIBDに益して、それにより上皮壁の機能不全を予防するか又は逆転させる可能性がある。
【0262】
[00224] 飲料水中のDSSの数日にわたる投与によって、実験IBDを誘発する。GSNOR阻害剤を静脈内(IV)投薬により連日投与する。スコア=0(正常組織)〜スコア=4(潰瘍性の組織傷害と顕著な病理学的変化)の範囲に及ぶ5点尺度を使用して、内視鏡と組織病理学により処置の効果を評価する。GSNOR阻害剤の効果を担体処置対照と比較する。本試験ではコルチコステロイドのプレドニンを陽性対照として使用して、経口投薬により連日投与する。無処置マウスも正常組織対照として評価する。
【0263】
材料と方法
[00225] 飲料水中3% DSSの試験0日目〜5日目での投与によって、実験IBDを誘発する。GSNOR阻害剤をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)中0.2及び2mg/mlの濃度へ戻す。各マウスに1及び10mg/kg/日の用量で0.1ml GSNOR阻害剤溶液を連日IV投与してマウスを処置する。GSNOR阻害剤の投薬は、DSS投与の2日前に開始して、試験の最終日まで(−2日目〜7日目)継続する。担体対照としてPBSを使用して、GSNOR阻害剤と同じやり方で投与する。本試験の陽性対照としてコルチコステロイドのプレドニゾロンを使用して、毎日(−2日目〜7日目)3mg/kg/日の用量で経口投与する。
【0264】
[00226] 薬物処置の効果は、7日目に内視鏡と組織病理学により評価する。初めにマウスを吸入イソフルランで麻酔して、獣医学用内視鏡(Karl Storz Veterinary Endoscopy America 社、カリフォルニア州ゴレタ)を使用する内視鏡検査へ処す。各マウスについて、内視鏡スコア基準を使用して、粘膜損傷をスコア化する。内視鏡スコアの0は正常であり、1は血管分布の欠損であり、2は血管分布の欠損と破砕性であり、3は破砕性と糜爛であり、そして4は潰瘍形成と出血である。内視鏡検査に続き、二酸化窒素吸入での窒息によりマウスを安楽死させる。次いで、結腸切片をホルマリン固定し、パラフィン包埋、切片化して、ヘマトキシリン−エオジンで染色する。光学顕微鏡法により結腸切片を検査して、GI病理学の特別な訓練を受けた認定獣医病理学者によって、盲検形式で評価する。炎症、浮腫、及び壊死に基づいて、上皮、結合組織、及び粘膜下組織への病理学的変化をスコア化する(0のスコアは正常であり、1は微小であり、2は軽度であり、3は中等度であり、そして4は顕著な変化である)。
【0265】
実施例28:実験慢性閉塞性肺疾患(COPD)におけるGSNOR阻害剤の効力
実験COPDモデル
[00227] マウスのエラスターゼ誘発性COPDの急性モデルを使用して、この疾患に対するGSNOR阻害剤の効力を探究する。エラスターゼ誘発性COPDは、このヒト疾患で観察されるものに似た肺中の病理学的変化を誘発する、広く使用されてよく特徴付けられたモデルである。このモデルとヒトの疾患では、気道閉塞、肺炎症、及び気胞拡大が明白である。GSNOR阻害剤療法は、これらの化合物の気管支拡張作用と抗炎症作用を介してCOPDに益する可能性がある。
【0266】
[00228] エラスターゼ、パパイン、及びブタ膵臓エラスターゼ(PPE)の肺中への数日にわたる投与によって、実験COPDを誘発させる。GSNOR阻害剤は、経口投薬により連日投与する。メタコリン(MCh)エアゾールチャレンジに応答する気管支収縮を弱める、肺炎症を減少させる、そして肺胞における気胞拡大を抑えるGSNOR阻害剤の能力を評価することによって、効力を決定する。GSNOR阻害剤の効果を担体処置対照と比較する。本試験では、好中球及び単球の動員を妨げる、連日の経口SP CXC受容体2/受容体1(SP CXCR2/1)アンタゴニストと吸入Flovent(フルチカゾン;コルチコステロイド)の組合せを陽性対照として使用する。
【0267】
材料と方法
[00229] 80μgパパインと20U/mg PPE/マウス/日の気管内(IT)点滴注入による試験0日目〜7日目の投与によって実験COPDを誘発させる。GSNOR阻害剤は、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)中0.01、0.1、及び1mg/mlの濃度へ戻す。0.1、1、及び10mg/kg/日の用量のために各マウスへ0.1ml GSNORi溶液を連日経口投与(ガバージュ)して、マウスを処置する。担体対照としてPBSを使用して、連日の経口投薬により投与する。低分子アンタゴニストのSP CXCR2/R1(シェリングプラウ/メルク)[好中球及び単球の動員のためのサイトカイン走化性物質に対して受容体をブロックする]をコルチコステロイドのFlovent(グラクソ)と組み合わせて、本試験の陽性対照として使用する。SP CXCR2/R1は、50mg/kg/日で経口投薬する。Floventは、220μg/マウス/日で吸入により投薬する。マウスの第一群をGSNOR阻害剤、担体対照、又は陽性対照で7日間(試験8日目〜14日目)処置し、一方マウスの第二群は、GSNOR阻害剤、担体対照、又は陽性対照で14日間(試験8日目〜21日目)処置する。
【0268】
[00230] 薬物処置の効果は、処置後7日目と14日目に、メタコリン誘発性気管支収縮の減弱化(気管支拡張効果)、肺炎症の減弱化、及び肺胞中の気胞拡大の抑制(処置後14日目のみ)を測定することによって評価する。
【0269】
気管支拡張効果
[00231] メタコリンに対する in vivo 気道反応性は、有意識で自由に動き、自発的に呼吸するマウスにおいて、Buxco チャンバ(ノースカロライナ州ウィルミントン)を使用する全身プレチスモグラフィーで測定する。超音波ネブライザーによって発生させるエアゾール化生理食塩水又は増加用量(5、20、及び50mg/ml)のメタコリンでマウスを2分間チャレンジする。気管支収縮の度合いは、同一マウスの気道抵抗性、インピーダンス、及び胸腔内圧の測定値と相関する、無次元の計算値である向上休止(Penh)として表す。それぞれの噴霧化チャレンジ後4分間のPenh読取り値を取って、平均化する。Penhは、以下のように計算する:Penh=[(Te/Tr−1)x(PEF/PIF)](ここでTeは無効化時間であり、Trは弛緩時間であり、PEFはピーク呼気流量であり、PIFはピーク吸気流量x0.67係数である)。最大値からユーザー定義の最大値百分率へ変化させるボックス圧力の時間が弛緩時間を表した。Tr測定は、最大ボックス圧力で始めて、40%で終えた。
【0270】
抗炎症効果
[00232] 気道過敏反応性の測定の後で、マウスを心臓穿刺によって失血させてから、左肺を主気管支で結紮後に右肺より、気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取する。全BALF細胞を計数し、残る体液を4℃、200xgで10分間遠心分離させる。細胞ペレットを10%ウシ血清アルブミン(BSA)含有生理食塩水に再懸濁させて、サイトスピンを使用してスライドガラス上に塗抹標本を作製する。光学顕微鏡法による白血球(WBC)分析血液像算定用に Diff-Quik で細胞を染色する。上皮細胞を計数して、細胞全数より差し引く。標準の形態判定基準を使用して好酸球、マクロファージ、好中球、及びリンパ球の比率を算定し、白血球(WBC)全数の百分率として表す。
【0271】
[00233] 抗炎症効果の追加のパラメータとして、BALF中の好中球及び単球の走化性物質のレベルを抑える処置の能力も評価する。好中球と単球のそれぞれの動員のケモカインである、GROα(増殖関連腫瘍遺伝子α)としても知られるKC(角化細胞走化性物質)とJE(MCP−1,単球走化性タンパク質)について、イムノアッセイを使用して測定する。
【0272】
気胞拡大の抑制
[00234] 10%緩衝化ホルムアルデヒドを含む25cm水圧での一定の陽圧下で両肺を膨張させてから、灌流固定する。この固定肺をパラフィンに包埋し、ヘマトキシリン及びエオジンで染色させ、光学顕微鏡法により検査する。平均線形切片(Lm)と平均等価肺胞径(D2)を計算することによって、気胞拡大を形態学的に定量する。
【0273】
[00235] 当業者には、本発明の精神及び範囲より逸脱することなく、本発明の方法及び組成物において様々な変更態様(modifications)及び変形態様(variations)を作製し得ることが明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R1は、CF3、CF2H、CF2CH3、CF2CH2CH3、メチル、イソプロピル、イソブチル、シクロペンチル、CH2OCH3、SCH3、ベンジル、チオフェン−2−イル、及びチオフェン−3−イルからなる群より選択され;
R2は、H、F、Cl、メトキシ、及びシアノより選択され;
R3は、H、F、Cl、及びメトキシより選択される]。
【請求項2】
R1が、CF3、CF2H、及びCF2CH3からなる群より選択され、R2が水素である、請求項1の化合物。
【請求項3】
R1が、CF3、メチル、イソプロピル、及びイソブチルからなる群より選択され、R2とR3がともに水素である、請求項1の化合物。
【請求項4】
R1が、CF3、メチル、イソプロピル、イソブチル、CF2H、CF2CH3、及びCF2CH2CH3からなる群より選択され、R2とR3がともに水素である、請求項1の化合物。
【請求項5】
4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−シクロペンチル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−フルオロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−フルオロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
3−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−6−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロプロピル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)−3−メトキシ安息香酸;及び
4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
からなる群より選択される、請求項1の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物の治療有効量を医薬的に許容される担体又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
疾患又は状態の治療を必要とする患者へ請求項1〜5のいずれかに定義される式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、疾患または状態の治療方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに定義される式Iの化合物を作製する方法。
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
R1は、CF3、CF2H、CF2CH3、CF2CH2CH3、メチル、イソプロピル、イソブチル、シクロペンチル、CH2OCH3、SCH3、ベンジル、チオフェン−2−イル、及びチオフェン−3−イルからなる群より選択され;
R2は、H、F、Cl、メトキシ、及びシアノより選択され;
R3は、H、F、Cl、及びメトキシより選択される]。
【請求項2】
R1が、CF3、CF2H、及びCF2CH3からなる群より選択され、R2が水素である、請求項1の化合物。
【請求項3】
R1が、CF3、メチル、イソプロピル、及びイソブチルからなる群より選択され、R2とR3がともに水素である、請求項1の化合物。
【請求項4】
R1が、CF3、メチル、イソプロピル、イソブチル、CF2H、CF2CH3、及びCF2CH2CH3からなる群より選択され、R2とR3がともに水素である、請求項1の化合物。
【請求項5】
4−(2−(ジフルオロメチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メトキシメチル)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−シクロペンチル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−ベンジル−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−2−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(チオフェン−3−イル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−イソブチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−2−(メチルチオ)−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−クロロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(6−フルオロ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−フルオロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
3−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロエチル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−6−メトキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
2−クロロ−4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(2−(1,1−ジフルオロプロピル)−7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
4−(7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)−3−メトキシ安息香酸;及び
4−(6−シアノ−7−ヒドロキシ−4−オキソ−2−(トリフルオロメチル)−4H−クロメン−3−イル)安息香酸;
からなる群より選択される、請求項1の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物の治療有効量を医薬的に許容される担体又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
疾患又は状態の治療を必要とする患者へ請求項1〜5のいずれかに定義される式Iの化合物の治療有効量を投与することを含む、疾患または状態の治療方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに定義される式Iの化合物を作製する方法。
【公表番号】特表2013−519670(P2013−519670A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552848(P2012−552848)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024035
【国際公開番号】WO2011/099978
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511038606)エヌサーティー・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024035
【国際公開番号】WO2011/099978
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511038606)エヌサーティー・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]