説明

S−N結合を含むスルホニウムカチオンを有するイオン液体およびその製造方法

【課題】広範囲の温度領域において安定した液状を呈し、電気化学安定性に優れたイオン液体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体。


[式中の置換基R1〜R8は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R1〜R8はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一もしくは複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかを示す。X1およびX2は互いに独立して、N原子、O原子、またはC原子を示す。点線は、共役構造を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範な温度領域において液状を呈し、電気化学安定性に優れたイオン液体およびその製造方法と、それを利用した蓄電用デバイス、リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、色素増感型太陽電池、燃料電池、反応溶媒等の各種の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
イミダゾリウム系に代表されるような、粘度および融点の比較的低いカチオンとして形成されるイオン液体は、従来から多数報告されている。しかしこれらのイオン液体は、還元安定性が低く、電位窓が狭いため安定性に欠け、蓄電用デバイス向け電解質への適応が難しいなどの欠点があるものが多い。更に、比較的融点が低いイオン液体の中には熱分解温度が低く安定性に欠けると思われる例もある。(特許文献1、非特許文献1および2参照)
広範な温度領域において安定であるイオン液体としては、アンモニウムカチオンに代表されるようなN原子を含むオニウムをカチオンとして形成されるイオン液体が報告されている。しかしながら、アンモニウム系カチオンを有するイオン液体は比較的融点、粘度が高く、室温付近で粘度の低い液体となる構造はほんの一部である。(特許文献2、特許文献3、および非特許文献3〜6参照)
【0003】
すなわち、広範な温度領域において安定した液状を呈し、更に電気化学安定性に優れたイオン液体が少ないことが、リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、燃料電池あるいは色素増感型太陽電池、または蓄電用デバイス向け電解質、電解液あるいは添加剤としての応用に関し大きな障害となっている。
【0004】
【特許文献1】特表2001−517205号公報
【特許文献2】国際公開第02/076924号パンフレット
【特許文献3】特開2003−331918号公報
【非特許文献1】萩原理加、Electrochemistry、70, No.2, 130(2002)
【非特許文献2】Y.Katayama, S.Dan, T.Miura and T.Kishi, Journal of The Electrochemical Society, 148(2), C102-C105 (2001)
【非特許文献3】松本一、宮崎義憲、溶融塩および高温化学、44, 7(2001)
【非特許文献4】H.Matsumoto, M.Yanagida, K.Tanimoto, M.Nomura, Y.Kitagawa and Y.Miyazaki, Chem. Lett, 8, 922(2000)
【非特許文献5】D.R.MacFarlane, J.Sun, J.Golding, P.Meakin and M.Forsyth, Electrochemica Acta, 45, 1271(2000)
【非特許文献6】Doulas R. MacFarlane, Jake Golding, Stewart Forsyth, Maria Forsyth and Glen B. Deacon, Chem. Commun., 1430(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、広範囲の温度領域において安定した液状を呈し、電気化学安定性に優れたイオン液体とその製造方法を提供することを目的とし、更には、上記のような電解液、リチウム二次電池、電気二重層キャパシタ、色素増感型太陽電池、燃料電池もしくは反応溶媒等に使用する材料としての利用が可能なイオン液体、特には、室温付近において安定な液状を呈するイオン液体を提供することを目的とするものであって、具体的には、新規なスルホニウムカチオンを含有するイオン液体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カチオン成分とアニオン成分からなる多数の塩を合成し、上記目的を達成するためのイオン液体について鋭意検討した結果、少なくとも1つのS−N結合を含むスルホニウムイオン、特に下記一般式(1)で示される有機カチオンの群から選ばれる一種または複数種の成分をカチオン成分として含むイオン液体が、広範な温度領域において安定で、電気化学安定性に優れたイオン液体を構成し得ることを見出した。
【0007】
【化1】

[式中の置換基R1〜R8は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R1〜R8はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一もしくは複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかを示す。また、これらの置換基R1〜R8のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換でき、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換できる。また、置換基R1〜R8のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。また、これらの置換基R1〜R8に含まれる炭素原子は、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NH-,-NR'-,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。X1およびX2は互いに独立して、N原子、O原子、またはC原子を示す。また、R4、R7は、X1またはX2がN原子またはC原子の場合のみ存在する置換基であり、R5、R8は、X1またはX2がC原子の場合のみ存在する置換基である。X1がC原子の場合は、X1、R3、R4およびR5が、X2がC原子の場合は、X2、R6、R7およびR8が、それぞれ共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。X1がN原子の場合は、X1、R3およびR4が、X2がN原子の場合は、X2、R6およびR7が、それぞれ共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。更に、点線は、共役構造を示す。]
【0008】
すなわち、本発明は、「S−N結合を1個、2個または3個含むスルホニウムイオンをカチオン成分として含むイオン液体」、「前記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体」、および、「カチオン成分とアニオン成分とからなるイオン液体であって、カチオン成分が前記一般式(1)で示される有機物の一種または複数種であるイオン液体」を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広範な温度領域において安定な液状を呈すると共に、電気化学安定性に優れたイオン液体を提供することができる。
本発明のイオン液体は、リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、燃料電池、色素増感型太陽電池、蓄電用デバイスの電解質、電解液あるいは添加剤、反応、分離抽出溶媒、センサー、電解メッキ、ポリマー、可塑剤、潤滑油、アクチュエータ等に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
前記一般式(1)で示されるカチオン成分としては、前記一般式(1)中の置換基R1〜R8が、H原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであり、これらの置換基R1〜R8のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換され、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換されたものであることが好ましい。更に、これらの置換基R1〜R8に含まれる炭素原子が、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,および-NR'-[ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す。]の群から選択された原子および/または原子団によって置換されたものであることが好ましい。更に好ましくは、前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれC1〜C20の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基(R1〜R8は互いに同種でも異種であってもよい)のものが挙げられる。
【0011】
本発明で用いられるアニオン成分は、[RSO3]-,[Rf SO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,[(RfSO2)3C]-,[(FSO2)3C]-,[ROSO3]-,[RC(O)O]-,[Rf C(O)O]-,[CCl3C(O)O]-,[(CN)3C]-,[(CN)2CR]-,[(RO(O)C)2CR]-,[R2P(O)O]-,[RP(O)O2]2-,[(RO)2P(O)O]-,[(RO) P(O)O2]2-,[(RO)(R) P(O)O]-,[Rf2P(O)O]-,[RfP(O)O2]2-,[(RfO)2P(O)O]-[B(OR)4]-,BRf4-,[N(CF3)2]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,PF6-,[RfPF5]-,[Rf3PF3]-,BF4-,[RfBF3]-,SO42-,HSO4-,NO3-,F-,Cl-,Br-,およびI-[式中の置換基Rはそれぞれ、H原子、ハロゲン原子、C1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C10の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C10の単一または複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基のいずれかを示す。これらの置換基Rに含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に、あるいは、CN基、NO2 基によって部分的に置換できる。また、これらの置換基Rに含まれる炭素原子は、-O-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NR'-,-N(R')2,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。また、Rfはフッ素含有置換基である。]の群の中から選ばれる一種または複数種が挙げられる。これらアニオン成分は、前記カチオン成分との組み合わせにより、広範な温度領域において安定な液体として存在し、電気化学安定性に優れたイオン液体を構成し得る。ここで「広範な温度領域において安定な液体として存在する」とは、現在一般的なイオン液体の定義となっている100℃付近で液体、かつ熱分解温度が融点より凡そ200℃以上高いこと、つまりこの広い温度領域において安定な液体として存在する事を指す。
【0012】
そして、前記一般式(1)の対イオンとして用いられるこれらアニオン成分の好ましい種類は、[RSO3]-,[RfSO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,RfCOO-,[(RfO)2P(O)O]-PF6-,BF4-,[RfBF3]-,[B(OR)4]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,SO42-,HSO4-,NO3-,F-,Cl-,Br-,およびI-の群の中から選ばれる一種または複数種であり、更に好ましくは、[RSO3]-,[RfSO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,RfCOO-,[(RfO)2P(O)O]-,PF6-,BF4-,[RfBF3]-,[B(OR)4]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,SO42-,HSO4-,およびNO3-の群の中から選ばれる一種または複数種である。
前記カチオン成分とこれら好ましいアニオン成分との組み合わせが、より好ましい特性、すなわち、低温からの広範な温度領域において安定な液状を呈すると共に電気化学安定性に優れたイオン液体を構成し得る。
【0013】
また、前記一般式(1)の対イオンであるアニオン成分が、[RSO3]-,[Rf SO3]-,[(Rf SO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,RfCOO-,[(RfO)2P(O)O]-,PF6-,BF4-,[RfBF3]-,[B(OR)4]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,SO42-,HSO4-,NO3-,F-,Cl-,Br-,およびI-の群の中から選ばれる一種または複数種であり、かつ、前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれH原子、C1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基(R1〜R8は互いに同種でも異種であってもよい)であるイオン液体が特に好ましい。
【0014】
また、前記一般式(1)中のカチオンの対称性を低くすることにより、例えばR1〜R8の少なくとも一つが異なる基とすることにより、低融点のイオン液体が得られる。
そこで低融点に重点を置くイオン液体を構成したい場合は、前記一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも一つが、C4〜C20の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基であり、残りのRnが、H原子もしくはC1〜C4の直鎖状のアルキル基であるカチオン成分を有するイオン液体や、R1〜R8の少なくとも一つがシリル基もしくは環構造を有し、残りのRnが、H原子もしくはC1〜C4の直鎖状のアルキル基であるカチオン成分を有するイオン液体があげられる。
また、これらのカチオンと組み合わせるアニオン成分としては、,[(CF3SO2)2N]-,PF6-およびBF4のいずれかのアニオン成分が好ましい。このような低い融点のイオン液体は単独での電解液としての使用が可能であったり、低温での反応溶媒としての利用が可能であったりと、利用できる分野を大きく広げることができる。
【0015】
以上の本発明のイオン液体は、広範な温度領域において安定で、かつ電気化学安定性にも優れたイオン液体である。そのため、本発明のイオン液体は、蓄電用デバイスの電解質、電解液あるいは添加剤等、リチウム二次電池、電気二重層キャパシター、燃料電池あるいは色素増感型太陽電池、アクチュエータ、潤滑油に使用される材料として、また、各種反応に使用する反応溶媒として有用である。更に強アルカリに対しても安定であるため、アルカリ雰囲気反応溶媒としても使用可能である。従来用いられている可塑剤の代わりにイオン液体を使用することで熱安定性が著しく高まる結果が知られている。
イオン液体中でのAlやAl−Mn,Al−Ti,Al−Mg,Al−Crなどのアルミニウム合金の電析が報告されている。
イオン液体をポリマー化することでイオンを高密度に含有するイオン液体の難燃性、電気化学的安定性といった特異な性質を有する高分子材料が設計可能である。
なお、前記一般式(1)に示したカチオンは、便宜上S原子上に陽電荷を置いたスルホニウムカチオンとして表しているが、電荷が分子内で非局在化しているものと考えられる。
【0016】
前記一般式(1)で示されるカチオン成分を含むイオン液体の代表的な合成方法を下記に示す。
下記に示すように、前記一般式(1)で示されるカチオン成分を含むイオン液体は、アルキル化により得られる。
【0017】
【化2】

【0018】
原料となる前記一般式(2)で示される有機物に、アルキル化剤(R6W)を滴下し、所定の温度、時間、反応させる。超純水、またはジエチルエーテル等で洗浄した後、真空乾燥する。アルキル化剤(R6W)としては、ヨウ化アルキル、臭化アルキル、塩化アルキル、硫酸ジアルキルエステル、スルホン酸ジアルキルエステル、炭酸ジアルキルエステル、りん酸トリアルキルエステル、モノ−あるいはポリ−フルオロアルキルスルホン酸アルキルエステル、パーフルオロアルキルスルホン酸アルキルエステル、モノ−あるいはポリ−フルオロカルボン酸アルキル、パーフルオロカルボン酸アルキル、硫酸、硝酸、塩酸等を挙げることができる。
【0019】
また、前記一般式(1)で示されるカチオン成分を含むイオン液体は、アミノ化でも得られる。
【0020】
【化3】

ただし、R1=R2でもよい。
【0021】
原料となる前記一般式(3)で示される有機物に、アミノ化剤(5)を滴下し、所定の温度、時間、反応させる。超純水、またはジエチルエーテル等で洗浄した後、真空乾燥する。アミノ化剤(5)としては、塩化アミン、臭化アミン、ヨウ化アミン等を挙げることができる。
【0022】
また、下記の方法でアニオン交換することによって、異なるアニオンを有するイオン液体とすることも可能である。
【0023】
【化4】

【0024】
ここで、イオン結合性化合物A+-としては、例えば、LiN(CF3SO22,LiN(FSO22,NaN(CF3SO22,KN(CF3SO22,CF3SO3Li,CF3SO3Na,CF3CF2CF2CF2SO3Li,CF3SO3K,CF3CH2SO3Li,CF3CH2SO3Na,CF3CH2SO3K,CF3COOLi,CF3COONa,CF3COOK,CF3COOAg,CF3CF2CF2COOAg,(CF3CH22POOLi,LPF6,NaPF6,KPF6,LiBF4 ,NaBF4,KBF4,NH4BF4,KC25BF3,LiB(C242,LiSbF6,NaSbF6,KSbF6,NaN(CN)2,AgN(CN)2,Na2SO4,K2SO4,NaNO3,KNO3等が挙げられるが、上記化合物に限られるものではない。
【0025】
前記一般式(4)中の置換基R1〜R8および前記一般式(6)中の置換基R1〜R8は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。これらの置換基はそれぞれ、H原子、ハロゲン原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一もしくは複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかを示す。また、これらの置換基のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換でき、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換できる。また、任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。これらの置換基に含まれる炭素原子は、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NH-,-NR'-,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。
【0026】
上記のハロゲン原子としては、F,Cl,BrおよびIを挙げることができる。
上記のシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等を挙げることができる。また、該シクロアルキル基は、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等の不飽和結合を有するものも含み、また、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換でき、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換できる。
【0027】
また、上記の複素環基としては、ピロジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラロゾリジニル、ピラゾニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チエニル基等を挙げることができる。また、これらの複素環基にはアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基並びにハロゲン原子を、一個または複数個含有していてもよい。
【0028】
また、上記のアリール基としては、フェニル、クメニル、メシチル、トリル、キシリル基等(これらのアリール基にはアルキル基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アシル基、ホルミル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基並びにハロゲン原子を、一個または複数個含有していてもよい)を挙げることができる。
【0029】
更に、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル等のアルコキシアルキル基や、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基などを挙げることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1
(a)ビス(ジエチルアミノ)スルフィドの調製
ジエチルアミン78ml(750mmol)、チオ硫酸ナトリウム五水和物25g(100mmol)及びヘキサン1Lをナスフラスコに仕込み、5℃で臭素11ml(200mmol)のヘキサン溶液200mlを3時間かけてゆっくりと滴下した。滴下後、室温で12時間撹拌した。減圧濾過し濾液を濃縮し、減圧蒸留(1kPa,54−63℃)により精製を行った。黄色透明液体としてビス(ジエチルアミノ)スルフィドが9.7g得られた。収率は55%であった。
化合物の同定は核磁気共鳴分析装置(BRUKER社製 BRUKER Ultra Shield 300 NMR Spectrometer)で行なった。スペクトルデータを以下に示す。
1H-NMR(300MHz,溶媒:CDCl3,標準物質: テトラメチルシラン)
δ3.08(m, 8H)
1.14(t,12H)
以下に構造式を示す。
【0032】
【化5】

【0033】
(b)塩化ジエチルアミンの調製
ジエチルアミン1.05ml(10mmol)とCH2Cl225mlをナスフラスコに仕込み、氷冷下で次亜塩素酸t−ブチル1.09ml(10mmol)を滴下した。氷冷下で1時間攪拌した。
化合物の同定は核磁気共鳴分析装置(BRUKER社製 BRUKER Ultra Shield 300 NMR Spectrometer)で行なった。スペクトルデータを以下に示す。
1H-NMR(300MHz,溶媒:CDCl3,標準物質:テトラメチルシラン)
δ3.00(m, 4H)
1.23(t, 6H)
以下に構造式を示す。
【0034】
【化6】

【0035】
(c)トリス(ジエチルアミノ)スルホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドの調製
塩化ジエチルアミンのCH2Cl2溶液((b)の反応液)に(a)で得られたビス(ジエチルアミノ)スルフィド0.8g(5mmol)を滴下し、室温で二日間攪拌した。超純水で抽出したのち、水層をCH2Cl2で洗浄した。水層に攪拌しながらLiTFSI1.3g(4.5mmol)水溶液を滴下し室温で三日間攪拌した。ジクロロメタンで抽出し水洗し、CH2Cl2を展開溶媒としたシリカゲルカラムにより精製した。黄色透明液体としてトリス(ジエチルアミノ)スルホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドが1.2g得られた。収率は45%であった。
化合物の同定は核磁気共鳴分析装置(BRUKER社製 BRUKER Ultra Shield 300 NMR Spectrometer)で行なった。スペクトルデータを以下に示す。
1H-NMR(300MHz,溶媒:CDCl3,標準物質:テトラメチルシラン)
δ3.00(m,12H)
1.26(t,18H)
19F-NMR(282MHz,溶媒:CDCl3,標準物質:CF3Cl)
δ-78.47(s, 6F)
以下に構造式を示す(式中の点線は、共役構造を示す)。
【0036】
【化7】

【0037】
走査型示差熱量計(島津製作所製 DSC8230)による融点測定を行った。融点は18.2℃、結晶化温度は−2.8℃であった。熱重量分析装置((株)リガク製TG8120)による熱分解温度を測定した。昇温速度10℃/minで測定した5%重量減少温度は211.0℃であった。
【0038】
(c)ジメチル(ジエチルアミノ)スルホニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドの調製
ジクロロメタンとジエチルアミン2.1ml(30mmol)をナスフラスコに仕込み、0℃下で次亜塩素酸t−ブチル2.3ml(30mmol)を滴下し、一時間攪拌した後、0℃下でジメチルスルフィド2.1ml(20mmol)を滴下した。滴下後、室温で一晩攪拌した。NMRで反応進行を確認した後、水で抽出しLiTFSI8.6g(30mmol)水溶液を加えた。ジクロロメタンで抽出し水洗し濃縮し、黄色透明液体を得た。
化合物の同定は核磁気共鳴分析装置(BRUKER社製 BRUKER Ultra Shield 300 NMR Spectrometer)で行なった。スペクトルデータを以下に示す。
1H-NMR(300MHz, 溶媒:CDCl3, 標準物質: テトラメチルシラン)
δ3.26(m, 4H)
3.04(s, 6H)
1.26(t, 6H)
19F-NMR(282MHz, 溶媒:CDCl3, 標準物質: CF3Cl)
δ-78.47(s, 6F)
以下に構造式を示す。
【0039】
【化8】

【0040】
熱重量分析装置((株)リガク製TG8120)による熱分解温度を測定した。昇温速度10℃/minで測定した5%重量減少温度は205.8℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S−N結合を1個、2個または3個含むスルホニウムイオンをカチオン成分として含むイオン液体。
【請求項2】
下記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体。
【化1】

[式中の置換基R1〜R8は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R1〜R8はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一もしくは複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかを示す。また、これらの置換基R1〜R8のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換でき、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換できる。また、置換基R1〜R8のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。また、これらの置換基R1〜R8に含まれる炭素原子は、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NH-,-NR'-,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。X1およびX2は互いに独立して、N原子、O原子、またはC原子を示す。また、R4、R7は、X1またはX2がN原子またはC原子の場合のみ存在する置換基であり、R5、R8は、X1またはX2がC原子の場合のみ存在する置換基である。X1がC原子の場合は、X1、R3、R4およびR5が、X2がC原子の場合は、X2、R6、R7およびR8が、それぞれ共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。X1がN原子の場合は、X1、R3およびR4が、X2がN原子の場合は、X2、R6およびR7が、それぞれ共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。更に、点線は、共役構造を示す。]
【請求項3】
カチオン成分とアニオン成分とからなるイオン液体であって、カチオン成分が前記一般式(1)で示される有機物の一種または複数種であるイオン液体。
【請求項4】
前記アニオン成分が、[RSO3]-,[RfSO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,[(RfSO2)3C]-,[(FSO2)3C]-,[ROSO3]-,[RC(O)O]-,[RfC(O)O]-,[CCl3C(O)O]-,[(CN)3C]-,[(CN)2CR]-,[(RO(O)C)2CR]-,[R2P(O)O]-,[RP(O)O2]2-,[(RO)2P(O)O]-,[(RO)P(O)O2]2-,[(RO)(R)P(O)O]-,[Rf2P(O)O]-,[(RfO)2P(O)O]-,[RfP(O)O2]2-,[B(OR)4]-, BRf4-, [N(CF3)2]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,PF6-,[RfPF5]-,[Rf3PF3]-,BF4-,[RfBF3]-,SO42-,HSO4-,NO3-,F-,Cl-,Br-,およびI-[式中の置換基Rはそれぞれ、H原子、ハロゲン原子、C1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C10の単一または複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C10の単一または複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基のいずれかを示す。これらの置換基Rに含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に、あるいは、CN基、NO2 基によって部分的に置換できる。また、これらの置換基Rに含まれる炭素原子は、-O-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NR'-,-N(R')2,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1 〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。また、Rfはフッ素含有置換基である。]の群の中から選ばれる一種または複数種である請求項3記載のイオン液体。
【請求項5】
前記アニオン成分が、[RfSO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,[(RfO)2P(O)O]-,RfCOO-,PF6-,BF4-,[RfBF3]-,[B(OR)4]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,SO42-,HSO4-,NO3-,F-,Cl-,Br-,およびI-の群の中から選ばれる一種または複数種である請求項3記載のイオン液体。
【請求項6】
前記アニオン成分が、[RfSO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,RfCOO-,[(RfO)2P(O)O]-,PF6-,BF4-,[RfBF3]-,[B(OR)4]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,SO42-,HSO4-,およびNO3-の群の中から選ばれる一種または複数種である請求項3記載のイオン液体。
【請求項7】
前記一般式(1)中の置換基R1〜R8が、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかであり、これらの置換基R1〜R8 のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換され、あるいは、CN基、NO2 基によって部分的に置換され、更に、これらの置換基R1〜R8に含まれる炭素原子が、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,および-NR'-[ここで、R'はC1 〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す]の群から選択した原子および/または原子団によって置換されたものである請求項2〜6のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項8】
前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれC1〜C20の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基(R1〜R8は互いに同種でも異種であってもよい)である請求項2〜6のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項9】
前記一般式(1)中のカチオンの対称性が低い請求項2〜8のいずれかに記載のイオン液体。
【請求項10】
前記一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも一つが異なる基である請求項9記載のイオン液体。
【請求項11】
前記一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも一つが、C4〜C20の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基であり、残りのRnが、H原子もしくはC1〜C4の直鎖状のアルキル基である請求項10記載のイオン液体。
【請求項12】
前記一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも一つはシリル基を有する請求項10記載のイオン液体。
【請求項13】
前記一般式(1)中のR1〜R8の任意の置換基が共同で環状構造を有する請求項10記載のイオン液体。
【請求項14】
前記アニオン成分が、[RfSO3]-,[(RfSO2)2N]-,[(FSO2)2N]-,RfCOO-,[(RfO)2P(O)O]-,PF6-,BF4-,[RfBF3]-,[B(OR)4]-,[N(CN)2]-,[AlCl4]-,SO42-,HSO4-,NO3-,F-,Cl-,Br-,およびI-の群の中から選ばれる一種または複数種であり、かつ、前記一般式(1)中のR1〜R8が、それぞれC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基(R1〜R8は互いに同種でも異種であってもよい)である請求項3記載のイオン液体。
【請求項15】
前記一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも一つが、C4〜C20の直鎖状または側鎖を有するアルキル基またはアルコキシ基であり、残りのRnが、H原子もしくはC1〜C4の直鎖状のアルキル基であり、かつ、前記アニオン成分が、[(CF3SO2)2N]-,PF6-およびBF4-のいずれかである請求項3記載のイオン液体。
【請求項16】
前記一般式(1)中のR1〜R8の少なくとも一つはシリル基を有し、かつ、前記アニオン成分が[(CF3SO2)2N]-,PF6-およびBF4-のいずれかである請求項3記載のイオン液体。
【請求項17】
前記一般式(1)中のR1〜R8の任意の置換基が共同で環状構造を有し、かつ、前記アニオン成分が[(CF3SO2)2N]-,PF6-およびBF4-のいずれかである請求項3記載のイオン液体。
【請求項18】
前記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体の製造法であって、下記一般式(2)で示される化合物を原料としたアルキル化反応を特徴とする前記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体の製造法。
【化2】

[式中の置換基R1〜R5は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R1〜R5はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一もしくは複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかを示す。また、これらの置換基R1〜R5のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換でき、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換できる。また、置換基R1〜R5のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。また、これらの置換基R1〜R5に含まれる炭素原子は、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NH-,-NR'-,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。X1は、N原子、O原子、またはC原子を示す。また、R4は、X1がN原子またはC原子の場合のみ存在する置換基であり、R5は、X1がC原子の場合のみ存在する置換基である。X1がC原子の場合は、X1、R3、R4およびR5が共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。X1がN原子の場合は、X1、R3およびR4が共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。]
【請求項19】
前記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体の製造法であって、下記一般式(3)で示される化合物を原料としたアミノ化反応を特徴とする前記一般式(1)で示される有機物をカチオン成分として含むイオン液体の製造法。
【化3】

[式中の置換基R3〜R8は互いに独立していて、同一であっても異なっていても良い。置換基R3〜R8はそれぞれ、H原子、C1〜C30の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、C2〜C30の単一もしくは複数の二重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルケニル基、C2〜C30の単一もしくは複数の三重結合を持つ直鎖状または側鎖を有するアルキニル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、アリール基、複素環基のいずれかを示す。また、これらの置換基R3〜R8のうちの単一または複数の置換基に含まれるH原子は、ハロゲン原子によって部分的にもしくは完全に置換でき、あるいは、CN基、NO2基によって部分的に置換できる。また、置換基R3〜R8のうちの任意の置換基が共同で環状構造を形成していてもよい。また、これらの置換基R3〜R8に含まれる炭素原子は、-O-,-Si(R')2-,-C(O)-,-C(O)O-,-S-,-S(O)-,-SO2-,-SO3-,-N=,-N=N-,-NH-,-NR'-,-PR'-,-P(O)R'-,-P(O)R'-O-,-O-P(O)R'-O-,および-P(R')2=N-の群から選択した原子および/または原子団によって置換できる(ここで、R'はC1〜C10の直鎖状または側鎖を有するアルキル基、またはF原子によって部分的もしくは完全に置換されたアルキル基、飽和または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基、非置換もしくは置換されたフェニル基、または非置換もしくは置換されたヘテロシクルスを示す)。X1およびX2は互いに独立して、N原子、O原子、またはC原子を示す。また、R4、R7は、X1またはX2がN原子またはC原子の場合のみ存在する置換基であり、R5、R8は、X1またはX2がC原子の場合のみ存在する置換基である。X1がC原子の場合は、X1、R3、R4およびR5が、X2がC原子の場合は、X2、R6、R7およびR8が、それぞれ共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。X1がN原子の場合は、X1、R3およびR4が、X2がN原子の場合は、X2、R6およびR7が、それぞれ共同で飽和または部分的にもしくは完全に不飽和の環状構造を形成してもよい。更に、点線は、共役構造を示す。]
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を電解液として含む蓄電用デバイス。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含むリチウム二次電池。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む電気二重層キャパシター。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む色素増感型太陽電池。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む燃料電池。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む反応、分離抽出溶媒。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含むセンサー。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む電解メッキ。
【請求項28】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含むポリマー。
【請求項29】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む可塑剤。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含む潤滑油。
【請求項31】
請求項1〜17のいずれかに記載のイオン液体を含むアクチュエータ。

【公開番号】特開2008−231033(P2008−231033A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73560(P2007−73560)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000157119)関東電化工業株式会社 (68)
【Fターム(参考)】