説明

S1P受容体アゴニストの投与レジメン

S1P受容体調節因子またはアゴニストは、治療の最初の何日かの1日投与量が標準の1日投与量未満である投与レジメンに従って投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与レジメンに関する。より具体的には、本発明は、例えば多発性硬化症などの自己免疫疾患または障害に罹患している患者を、S1P受容体調節因子またはアゴニストを用いて治療するための投与レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
S1P受容体調節因子またはアゴニストは、1つまたは複数のスフィンゴシン−1リン酸受容体、例えばS1P1〜S1P8においてアゴニストとしてシグナル伝達する化合物である。S1P受容体へのアゴニストの結合は、例えば、Gα−GTPおよびGβγ−GTPへの細胞内ヘテロ三量体Gタンパク質の解離、ならびに/またはアゴニストによって占有された受容体のリン酸化の増大、ならびに/または下流シグナル伝達経路/キナーゼの活性化をもたらすことができる。
【0003】
S1P受容体調節因子またはアゴニストは、哺乳動物、特にヒトの様々な状態の治療に有用な治療用化合物である。例えば、移植片拒絶反応の予防におけるS1P受容体調節因子またはアゴニストの有効性は、ラット(皮膚、心臓、肝臓、小腸)、イヌ(腎臓)およびサル(腎臓)モデルで実証されている。さらにS1P受容体調節因子またはアゴニストは、それらの免疫調節効力に起因して、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療にも有用である。特に、多発性硬化症の治療におけるS1P受容体アゴニストFTY720の有効性が、ヒトにおいて実証されている(例えば、「FTY720 therapy exerts differential effects on T cell subsets in multiple sclerosis」、Mehling M、Brinkmann V、Antel J、Bar−Or A、Goebels N、Vedrine C、Kristofic C、Kuhle J、Lindberg RL、Kappos L.Neurology.2008年10月14日;71(16):1261〜1267頁;および「Oral fingolimod(FTY720) for relapsing multiple sclerosis」、Kappos L、Antel J、Comi G、Montalban X、O’Connor P、Polman CH、Haas T、Korn AA、Karlsson G、Radue EW;FTY720 D2201 Study Group.N Engl J Med.2006年9月14日;355(11):1124〜1140頁に記載の通り)。
【0004】
多発性硬化症は、若年成人の神経学的な障害の主な原因であり、中枢神経系の最も一般的な脱髄性障害である。インターフェロン−βおよびグラチラマー酢酸塩などの現在利用可能な療法は、わずかな有効性しかなく、したがって疾患の進行に対してはわずかな限界効果しか示していない。さらに、これらの生物学的作用物質は非経口投与され、例えば注射部位における局所反応および発熱症候などのいくつかの有害作用に関連する。したがって、多発性硬化症に有効な経口治療が、医学的に強く必要とされている。
【0005】
S1P受容体調節因子またはアゴニストは、例えば、「FTY720:Placebo−Controlled Study of the Effect on Cardiac Rate and Rhythm in Healthy Subjects」、Robert Schmouder、Denise Serra、Yibin Wang、John M.Kovarik、John DiMarco、Thomas L.Hunt and Marie−Claude Bastien.J.Clin.Pharmacol.2006年;46;895頁に記載の通り、例えば治療用量で陰性変時作用をもたらすことがあり、すなわち心律動を低減することがある。1.25mgのFTY720の投与は、毎分約8回(BPM)の心拍数の減少を誘発し得る。
【0006】
この副作用の結果として、S1P調節因子またはアゴニスト療法は、心律動が許容されるレベルに維持されていることをチェックするために、厳密な医学的管理下で開始されなければならない。これには、患者の入院が伴うことがあり、それは、治療をより高価かつ複雑なものとする。
【0007】
したがって、化合物が投与される疾患を治療または予防するための適切な投与量を投与する能力を維持すると同時に、S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与によって生じ得る陰性変時副作用を低減する必要がある。さらに、患者の服薬遵守を強化する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様では、医薬品の製造におけるS1P受容体調節因子またはアゴニストの使用であって、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストが、初期治療期間中、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの標準の1日投与量未満の投与量で投与され、次いで、最大で前記S1P受容体アゴニストの標準の1日投与量まで任意選択により段階的に増加される使用が提供される。本発明によれば、医薬品は、長期慢性状態の治療のためのものであってよい。医薬品は、例えば多発性硬化症などの自己免疫性状態の治療のためのものであってよい。
【0009】
本発明のさらなる一態様では、医薬品の製造における、患者の陰性変時作用を誘発する(例えば、治療投与量で)S1P受容体調節因子またはアゴニストの使用が提供され、S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与をその標準の1日投与量で開始する前に、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストは、初期治療期間中、標準の1日投与量未満の1日投与量で投与される。
【0010】
本発明のさらなる一態様では、心拍数の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニストを、初期治療期間中、標準の1日当たりの治療投与量未満の1日投与量で対象に投与するステップと、その後前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与を、必要な標準の1日当たりの治療投与量で開始するステップとを含む、それを必要としている患者(例えば、長期病態、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症に罹患している患者)を治療する方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる一態様では、自己免疫疾患に罹患している対象の、S1P調節因子またはアゴニスト(例えば、化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグ)を使用する治療に関連する陰性変時副作用を緩和または予防する方法であって、初期治療期間期間中、標準の1日投与量未満の1日投与量の前記S1P受容体調節因子またはアゴニストを、それを必要としている対象に投与するステップと、1日投与量を、最大で標準の1日投与量まで段階的に増加するステップとを含む方法が提供される。
【0012】
本発明のさらなる一態様では、可変的な1日投与量のS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの医薬品の1日当たりの単位を含有するキットであって、前記用量が標準の1日投与量未満であるキットが提供される。
【0013】
本発明のさらなる一態様では、本発明の態様または実施形態のいずれかに定義の投与レジメンに従って投与するための、化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの医薬品の単位を含むキットであって、前記化合物の標準の1日用量未満の用量強度の1つまたは複数の低用量単位が初期治療期間中に提供されるキットが提供される。
【0014】
さらなる態様および実施形態は、本発明の詳細な開示で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】様々な漸増投与レジメンの下、プラセボおよび化合物Aを投与された患者の1日当たりの最小心拍数の変動を示す図である。
【図2】健康な対象における、多回1日用量の化合物Aを投与した後の絶対リンパ球数の平均変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
驚くべきことに、S1P受容体調節因子またはアゴニストを特定の投与レジメンに従って投与することによって、かかる化合物の投与に関連し得る副作用を低減できることが見出された。例えば、本発明の特定の投与レジメンに従ってS1P受容体アゴニストまたは調節因子を投与することにより、陰性変時副作用を有意に低減し、または完全に排除することもできる。特に、心拍数の突然の減少を回避することができる。
【0017】
また、本発明の特定の投与レジメンに従ってS1P受容体アゴニストまたは調節因子を投与することにより、S1P受容体アゴニストまたは調節因子を投与された患者が心臓の作用、例えば房室(AV)ブロックまたは心臓の休止を被る危険性を有意に低減し、または完全に排除することもできる。
【0018】
さらに、本発明の特定の投与レジメンは、他の方法では損益比が不利になり得る部類の患者に、S1P受容体アゴニストまたは調節因子を投与することが可能である。かかる患者には、例えば心臓の問題、例えば心不全もしくは不整脈に罹患しているもしくは罹患しやすい患者、高度房室ブロックもしくは洞不全症候群に罹患しているもしくは罹患しやすい患者、失神エピソードの病歴のある患者、または抗不整脈薬を用いた治療を受けている患者などの、β遮断薬もしくは抗不整脈薬治療を受けている患者、または維持投与レジメンにおいて、中断または治療の休み、例えば4日を超え、6、8、10、12または14日を超える休みを受けている患者が含まれ得る。
【0019】
本発明の投与レジメンは、S1P受容体調節因子療法に関連する可能性のある陰性変時作用および/またはAVブロック作用を最小にして、S1P受容体の標準の1日当たりの治療用量範囲を達成することを可能にする、S1P受容体調節因子またはアゴニスト療法の開始のための投与レジメンである。
【0020】
S1P受容体調節因子またはアゴニスト
好ましいS1P受容体アゴニストまたは調節因子は、例えば、それらのS1P結合特性に加えて、リンパ球ホーミング促進特性も有する化合物である。例えば化合物は、好ましくは可逆的な、循環から二次リンパ組織へのリンパ球の再分布から生じるリンパ球減少症を、全身性免疫抑制を惹起することなく誘発し得る。適切には、ナイーブ細胞が隔絶され、血液からのCD4/CD8T細胞およびB細胞が刺激されて、リンパ節(LN)およびパイエル板(PP)に遊走する。
【0021】
本発明の適切なS1P受容体アゴニストまたは調節因子の例は、例えばWO04/103306、WO05/000833、WO05/103309またはWO05/113330に開示の化合物、例えば式IaまたはIbの化合物
【0022】
【化1】

[式中、
は、−COOR5k、−OPO(OR5k、−PO(OR5k、−SOOR5k、−POR5kOR5kまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、R5kは、HまたはC1〜6アルキルであり、Aは、特に、−COOR5k、例えば−COOHであり、
は、結合、C1〜3アルキレンまたはC2〜3アルケニレンであり、いくつかの実施形態では、Wは、メチレンまたはエチレンであり、
は、ハロゲン、−OH、−NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシから選択される1〜3個の基によって任意選択により置換されているC6〜10アリールまたはC3〜9ヘテロアリール;ハロ置換C1〜6アルキルおよびハロ置換C1〜6アルコキシであり、Yは、特に、フェニルまたはCヘテロアリールであり、いずれの場合も、前述の通り任意選択により置換されている。例示的なアルキル置換基は、エチルである。ハロゲンは、特にFまたはClである。
は、
【0023】
【化2】

から選択され、
のアスタリスク(例えば、左および右のアスタリスク)は、それぞれ−C(R3k)(R4k)−と式IaまたはIbのAとの結合点を示し、Rは、水素およびC1〜6アルキルから選択され、JおよびJは、独立に、メチレンまたはS、OおよびNR5’から選択されるヘテロ原子であり、R5’は、水素およびC1〜6アルキルから選択され、Zの任意のアルキレンは、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルから選択される1〜3個の基によってさらに置換されていてもよく、またはRは、Yの炭素原子と結合して、5〜7員環を形成することができ、
特にZは、いずれの場合も1位および3位において分子の残りと結合しているアゼチジン、ピロリジンおよびピペリジンであり、例えば1位および3位において分子の残りと結合している、例えば1位の窒素でCR3k4k基と結合しているアゼチジン;ならびに分子の残りを形成しているそれぞれの部分によって1,4−二置換されているピペリジンである。
1kは、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルによって任意選択により置換されているC6〜10アリールまたはC3〜9ヘテロアリールであり、R1kの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1〜5個の基によって置換されていてもよく、
1kは、特に、前述の通り任意選択により置換されているフェニルまたはCヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、R1kは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する任意選択によりハロ置換されているアルキル(例えばトリフルオロメチル)、任意選択によりハロ置換されているフェニルおよび任意選択によりハロ置換されているC3〜8シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)から選択される2個の置換基を有し、例えばR1kは、1個の任意選択によりハロ置換されているアルキル基と、フェニルおよびC3〜8(例えばC)シクロアルキル基から選択される1個の任意選択によりハロ置換されている環式部分を有することができる。R1kは、いくつかの化合物では、フェニルまたはCヘテロアリールであり、特に、3−トリフルオロメチル−4−シクロヘキシルフェニルの場合のように、前述の通り3,4−二置換されているフェニルである。
2kは、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルであり、R2kは、特にメチルであり、
3kまたはR4kのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである。したがってアルキルは、ハロ置換されているかどうか、かつ/またはアルコキシの一部であるかどうかに関わらず、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有することができる。R3kおよびR4kは、例えばそれぞれ独立に、H、ハロゲン、メチルまたはハロ置換メチルであってよい。特に、R3kおよびR4kは、共にHであってよい]
およびそのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、
または薬理学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくは水和物である。
【0024】
本発明の目的に有用な式IaおよびIbの特定の化合物には、
【0025】
【化3】

【化4】

【化5】

または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグが含まれる。
【0026】
その内容が参照によって本明細書に組み込まれるWO2004/103306の表1に記載の実施例の他の化合物も列挙される。
【0027】
各実施形態で特定した特徴を他の特定の特徴と組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができることを理解されよう。
【0028】
式IaまたはIbの化合物が、分子中に1つまたは複数の不斉中心を有する場合、本発明は、様々な光学異性体、ならびにラセミ体、ジアステレオマーおよびその混合物を包含すると理解されるべきである。
【0029】
式IaまたはIbの化合物は、遊離形態または塩の形態で存在することができる。式IaまたはIbの化合物の薬学的に許容される塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩などの無機酸との塩、酢酸塩、フマル酸塩、ヘミフマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩などの有機酸との塩、または適切な場合には、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムなどの金属との塩、トリエチルアミンなどのアミンとの塩、ならびにリシンなどの二塩基性アミノ酸との塩が含まれる。本発明の組合せの化合物および塩は、水和物および溶媒和物の形態を包含する。
【0030】
先の定義では、
アシルは、残基R−CO−であってよく、Rは、C1〜6アルキル、C3〜6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1〜4アルキルであり、
別段指定されない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖または分岐であってよく、
アリールは、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであってよく、
「複素環式基」は、S、OおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環式基を表す。かかる複素環式基の例には、先に示したヘテロアリール基、および部分的にまたは完全に水素化されたヘテロアリール基に対応する複素環式化合物、例えばフリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニルまたはピラゾリジニルが含まれる。好ましい複素環式基は、5員または6員のヘテロアリール基であり、最も好ましい複素環式(heteocyclic)基は、モルホリニル、チオモルホリニルまたはピペリジニル基である。
【0031】
式Iaの好ましい化合物は、例えば1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸(化合物A)、またはその塩(例えばヘミフマル酸塩)もしくはプロドラッグである。
【0032】
【化6】

【0033】
したがってプロドラッグには、その可逆的誘導体に変換している官能基を有する薬物が含まれる。一般にかかるプロドラッグは、加水分解によって活性な薬物に変換される。例として、以下を挙げることができる。
官能基 可逆的誘導体
カルボン酸 例えば、アルキルおよびアシルオキシアルキルエステルを含むエステル;アミド
アルコール 例えば、硫酸エステルおよびリン酸エステルならびにカルボン酸(例えばアルカン酸)エステルを含むエステル
アミン アミド、カルバメート、イミン、エナミン
カルボニル(アルデヒド、ケトン) イミン、オキシム、アセタール/ケタール、エノールエステル、オキサゾリジンおよびチアゾオキソリジン(thiazoxolidine)
【0034】
プロドラッグには、酸化的または還元的反応によって活性な薬物に変換できる化合物も含まれる。例として、以下を挙げることができる。
酸化的活性化
・N−およびO−脱アルキル化
・酸化的脱アミノ化
・N−酸化
・エポキシ化
還元的活性化
・アゾ還元
・スルホキシド還元
・ジスルフィド還元
・生体内還元性アルキル化
・ニトロ還元
【0035】
また、プロドラッグの代謝的な活性化として、ヌクレオチド活性化、リン酸化活性化および脱炭酸化活性化が挙げられる。さらなる情報については、参照によって本明細書に組み込まれる「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」、R B Silverman(特に第8章、497〜546頁)参照。
【0036】
本発明のさらなる一実施形態では、本発明の投与レジメンで使用するためのS1P受容体アゴニストまたは調節因子は、S1P受容体に選択的であってもよい。例えば化合物は、35S−GTPγS結合アッセイによって測定する場合に、S1P受容体のEC50とS1P受容体のEC50の比によって測定される通り、S1P受容体よりもS1P受容体に少なくとも20倍、例えば100、500、1000または2000倍高い選択性を有し、前記化合物は、S1P1受容体との結合に関して、35S−GTPγS結合アッセイによって評価して100nM以下のEC50を有する。
【0037】
35S−GTPγS結合アッセイは、WO03/097028およびDS.Imら、Mol.Pharmacol.2000年;57:753頁に記載されている。手短に言えば、リガンドに媒介された、Gタンパク質へのGTPγSの結合は、GTP結合バッファー(50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのMgCl、pH7.5)中、一過性トランスフェクトしたHEK293細胞からの膜調製物25μgを使用して測定される。リガンドを、10μMのGDPおよび0.1nMの[35S]GTPγS(1200Ci/mmol)の存在下で膜に添加し、30℃において30分間でインキュベートする。結合したGTPγSを、Brandel収穫器(Gaithersburg、MD)を使用して非結合から分離し、液体シンチレーションカウンターで計数する。
【0038】
投与レジメン
前述の通り、本発明は、S1P受容体調節因子またはアゴニスト療法に関連する可能性がある陰性変時作用および/または心臓の作用を最小限にするように適合された新規の投与レジメンを提供する。
【0039】
心臓の作用にはAVブロックが含まれ、これは、第1度AVブロック(例えば、0.2秒より長いPR間隔)および第2度AVブロック、例えば第1度AVブロックを含む。心臓の作用には、心臓の休止、例えば2秒を超える心臓の休止が含まれる。
【0040】
本発明によれば、初期治療期間中の投与量が標準の1日投与量未満であり、その投与量が、標準の1日投与量が達成されるまで任意選択により段階的に、または1回だけ増加されるように投与される医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニストの使用が提供される。その後治療は、好ましくは標準の1日投与量の前記S1P受容体調節因子またはアゴニストを用いて継続される。
【0041】
好ましくは初期治療期間中、医薬品は、心拍数(例えば平均のまたは最小の1日当たりの心拍数)の1日当たりの減少が許容されるか、もしくは臨床的に重大でない、または患者の洞律動が正常であるような投与レジメンで投与される。例えば、心拍数(例えば平均のまたは最小の1日当たりの心拍数)の1日当たりの減少は、約4bpm未満、例えば約3bpm未満または約2bpm未満であってよい。
【0042】
用語「正常な洞律動」は、治療を受けていないときの患者の洞律動を指す。正常な洞律動の評価は、医師により行われる。一般に、正常な洞律動であれば、60〜100bpmの範囲の心拍数を生じる。
【0043】
本発明によれば、「初期治療期間」は、S1P受容体調節因子またはアゴニストが、標準の1日投与量未満の投与量で投与される期間を指す。好ましくは「初期治療期間」は、S1P受容体調節因子またはアゴニストの初回投与により開始される。
【0044】
本明細書で先に定義した通り、標準の1日投与量(標準の1日用量とも呼ぶ)は、治療または予防されるべき疾患を治療または予防するために患者に投与する薬物の1日当たりの維持用量を指す。好ましくは、標準の1日投与量は、治療投与量に相当する。
【0045】
治療上有効な投与量(治療用量とも呼ぶ)は、所期の疾患または状態を有効に治療するのに必要な(すなわち、患者が、治療または予防されるべき疾患の徴候または症候の低減を示し、または好ましくは疾患の徴候および症候を示さないような)S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量を指す。
【0046】
初期治療期間は、最大10日間、例えば8〜10日間、例えば9日間または8日間であってよい。あるいは初期治療期間は、5〜7日間の範囲、例えば6日間または7日間であってもよい。あるいは初期治療期間は、さらに短く、例えば3日間または4日間などの2〜4日間の範囲であってもよい。
【0047】
初期治療期間中、例えば最初の用量を投与される際、S1P受容体調節因子またはアゴニストは、標準の1日投与量の最大80分の1の投与量で、標準の1日用量の、例えば治療用量の、例えば最大40分の1、例えば最大30分の1、例えば最大20分の1、例えば最大10分の1、例えば最大5分の1、または例えば最大3分の1で投与することができる。
【0048】
好ましくは、初期治療期間中のS1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量は、最大でS1P受容体調節因子またはアゴニストの標準の1日投与量まで、規定された増分比で段階的に増加される。好ましくは、治療の最初の10日間、例えば1〜9日間の前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量は、1.5〜3.5倍、例えば2〜3倍、例えば2倍に増分的に増加される。
【0049】
一実施形態では、1日投与量はフィボナッチ級数によって管理され、すなわち特定のある1日に対して与えられる投与量は、先行する2日間の投与量の合計である。この実施形態の一態様では、このスキームのいくつかの変形が可能である。例えば、所与の日の投与量は、先行する2日間の投与量の合計±40%、例えば±30%、例えば±20%または±10%であってよい。
【0050】
初期治療期間中、任意の所与の日の用量は、標準の1日投与量の、例えば治療用量の約40分の1、または約20分の1、または約10分の1、または約5分の1、約2分の1、または1.5分の1であってよい。
【0051】
投与量が増加される前に、治療の最初の1、2、3、4、5、6、7、もしくは8日間は、同じ用量を投与することができる。好ましくは、最初の2〜4日間、例えば最初の2日間は同じ用量を与える。
【0052】
1回または複数回の投与量の増加、例えば最大10回の投与量の増加、例えば最大8回の投与量の増加、例えば最大6回の投与量の増加、例えば最大5回の投与量の増加、最大4回の投与量の増加、または最大3回の投与量の増加を、標準の1日投与量が投与されるまで実施することができる。例えば1〜10回、例えば1〜8回、例えば2〜8回、例えば3〜6回の投与量増加、例えば2回または3回の投与量増加を行うことができる。
【0053】
初期治療期間中、すなわち標準の1日投与量が投与される前の1〜7日間、例えば2〜5日間は、同じ投与量を投与することができ、その後投与量は、例えば最大で標準の1日投与量までさらに増加される。
【0054】
例えば、第1の投与量の増加は、最初の投与後の2〜5日目、例えば2〜4日目、例えば2日目、3日目、4日目または5日目に行うことができる。第2の投与量の増加は、もしあれば、最初の投与後の4〜10日目、例えば4〜6日目、例えば5日目に行うことができる。第3の投与量の増加は、もしあれば、最初の投与後の6〜10日目、例えば6日目または7日目に行うことができる。
【0055】
本発明の一実施形態では、わずか1回の投与量の増加が、標準の1日投与量、例えば治療投与量が投与される前に行われる。
【0056】
好ましい一実施形態では、例えば慢性長期疾患、例えば自己免疫状態、例えば多発性硬化症の治療のための医薬品の製造におけるS1P受容体調節因子またはアゴニストの使用であって、治療の最初の10日間、例えば7〜10日間、例えば10日、9日、8日、7日、6日または5日間に、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量が、標準の1日用量の、例えば治療用量の最大80分の1、例えば最大40分の1、例えば最大30分の1、例えば最大20分の1、例えば最大10分の1、5分の1または3分の1の最初の投与量で与えられるように前記医薬品が投与される使用が提供される。次いで用量は、最大で標準の1日用量、例えば治療用量まで任意選択により段階的に増加される。
【0057】
好ましい医薬品は、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、多発性筋炎、狼瘡腎炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患または乾癬などの慢性長期疾患に罹患している患者のための医薬品を含む。本発明の一実施形態では、医薬品は、多発性硬化症、例えば再発寛解型多発性硬化症(RRMS)または一次性進行型多発性硬化症(PPMS)に罹患している患者、例えばRRMSに罹患している患者のための医薬品である。図2に示す通り、化合物Aの投与は、健康な対象の血液の絶対リンパ球数を低減する。
【0058】
本発明の投与レジメンは、心臓の副作用の危険性がある患者(patent)、例えば心不全、不整脈(arrythmias)の危険性がある患者、高度房室ブロックもしくは洞不全症候群の患者、失神エピソードの病歴がある患者、またはβ遮断薬を必要としているもしくはその投与を受けている患者、またはクラスIa(例えばキニジン、プロカインアミド)もしくはクラスIIIの抗不整脈薬(例えば、アミオダロン、ソタロール)を用いた治療を受けている患者などの、抗不整脈薬治療を必要としているもしくはその治療を受けている患者に対して特に有用である。
【0059】
標準の1日投与量は、効率対安全性の最適なバランスをもたらすように選択される。本発明によれば、S1P受容体調節因子、例えば化合物Aの標準の1日投与量、例えば治療投与量は、好ましくは約25〜約0.1mgの範囲である。
【0060】
一実施形態では、標準の1日投与量、例えば治療投与量は、約25〜約15mg、例えば約22〜約18mgの範囲であってよい。あるいは標準の1日投与量、例えば治療投与量は、約15〜約11mg、例えば約14〜約12mgの範囲であってよい。別の実施形態では、標準の1日投与量、例えば治療投与量は、約11〜約9mgの範囲、例えば約10mgであってよい。あるいは標準の1日投与量、例えば治療投与量は、約9〜約5mg、例えば約8〜約6mgの範囲であってよい。標準の1日投与量、例えば治療投与量は、約5〜約3mgまたは約3〜約1mgの範囲であってよい。あるいは治療用量は、約1〜約0.6mg、約0.6〜約0.4mg、約0.4〜約0.2mg、または約0.2〜約0.1mgの範囲であってよい。
【0061】
化合物Aに関して、標準の1日投与量の例は、8mg〜10mgの間からなる1日投与量であってよく、例えば10mgまたは8mgであってよい。あるいは、化合物Aの標準の1日投与量は、先の段落において特定される通りであってよい。
【0062】
本発明の好ましい一実施形態によれば、最初の最高投与量は、0.25mg〜0.5mgの間、好ましくは0.25mgである。これは、特に化合物Aの場合である。
【0063】
S1P受容体調節因子またはアゴニストの特に好ましい投与量範囲は、初期治療期間中、例えば0.1〜10mg、例えば0.2〜10mg、例えば0.25〜10mgである。
【0064】
例えば治療の最初の数日、例えば最大で最初の10〜12日間、投与レジメンは、それぞれ0.25mg/0.5/10mg、またはそれぞれ0.25mg/0.5/2/4/10mg、または0.25mg/0.5/1/2/4/8/10mgであってよい。あるいは投与レジメンは、0.25mg/0.25mg/0.5mg/0.75mg/1.25mg/2mg/3mg/5mg/8mg/10mg/10mg/10mgであってよい。適切には、これらの投与レジメンは、フィボナッチ級数に従って投与され、すなわち特定のある1日に対して与えられる投与量は、先行する2日間の投与量の合計であり、任意選択により任意の日に変動を伴い、先行する2日間の投与量の合計±40%、例えば±30%、例えば±20%または±10%とする。これらの投与レジメンは、特に化合物Aに対して適応される。
【0065】
その後治療は、標準の1日投与量を用いて継続される。
【0066】
一連のさらに具体的なまたは代替の実施形態では、本発明は以下も提供する。
1.1 心拍数(例えば1日当たりの平均または最小心拍数)の1日当たりの減少が毎分約2回以下になるように対象に投与される医薬品の製造における、心拍数の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用。
【0067】
1.2 前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの治療投与量が投与される日に、心拍数(例えば、1日当たりの平均または最小心拍数)の減少が毎分2回以下になるように対象に投与される医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用。
【0068】
1.3 医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用であって、前記医薬品が、初期治療期間中、例えば治療の最初の10日間に、標準の投与量未満の投与量で、例えば標準の1日投与量の最大80分の1、例えば最大40分の1、例えば最大30分の1の投与量で投与される使用。次いで投与量は、前記S1P受容体アゴニストの最大で標準の1日投与量、例えば治療投与量まで任意選択により段階的に増加される。
【0069】
1.4 S1P受容体アゴニストによる治療を提供する方法であって、初期治療期間中、S1P受容体アゴニスト治療が標準の1日投与量未満の1日投与量で投与され、1日投与量が最大で標準の1日投与量まで増加され、その後、治療が標準の1日投与量で継続されるように、前記S1P受容体アゴニスト治療が投与される、方法。
【0070】
1.5 医薬品の製造において使用するためのS1P受容体調節因子またはアゴニストであって、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストが、初期治療期間中、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの標準の1日投与量未満の投与量で与えられ、次いで最大で前記S1P受容体アゴニストの標準の1日投与量まで任意選択により段階的に増加される、S1P受容体調節因子またはアゴニスト。
【0071】
1.6 治療投与量において患者の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニストの、医薬品の製造における使用であって、S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与をその標準の1日投与量で開始する前に、初期治療期間中、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストが、標準の1日投与量未満の1日投与量で投与される使用。
【0072】
1.7 治療投与量において心拍数の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば先に定義の式IaまたはIbの化合物の、例えば自己免疫状態、例えば多発性硬化症の治療のための医薬品の製造における使用であって、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの治療投与量が投与される日に、心拍数が拍動2回/分以下減少するように、前記医薬品が対象に投与される使用。
【0073】
初期治療期間中、例えば治療の最初の10日間、例えば9日間、8、7または6日間に、S1P受容体調節因子またはアゴニストの1日投与量は、標準の投与量未満であり、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの最大で標準の1日投与量まで段階的に、最大6回、例えば2回または3回増加され、その後治療は、標準の1日投与量の前記S1P受容体調節因子またはアゴニストを用いて継続される。
【0074】
1.8 初期治療期間中、例えば治療の最初の10日間もしくは8日間、または7〜6日間に、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量が、標準の1日投与量の40分の1から1.25分の1、例えば標準の1日投与量のそれぞれ40分の1、20分の1、10分の1、5分の1および2〜3分の1であり、その後治療が、標準の1日投与量の前記S1P受容体調節因子またはアゴニストを用いて継続されるように投与される医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用。
【0075】
1.9 治療の最初の2〜4日間に、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量が、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの標準の1日用量の1/80、1/40、1/30、1/20または1/10以下、または1/4以下になるように投与される医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用。
【0076】
1.10 治療の最初の10日間、例えば9日間、8、7または6日間、例えば6日間に、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与量が、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの標準の1日投与量未満であり、次いで、数回の用量増加、最大10回、例えば最大6回、例えば2回または3回の用量増加後に標準の1日投与量が投与されるように投与量が増加され、その後治療が、標準の1日投与量の前記S1P受容体アゴニストを用いて継続されるように投与される医薬品の製造における、1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグの使用。
【0077】
1.11 治療投与量において患者の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば本明細書で定義の式IaまたはIbの化合物の、例えば自己免疫状態、例えば多発性硬化症の治療のための医薬品の製造における使用であって、S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与をその標準の1日投与量で開始する前に、初期治療期間中、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストが、標準の1日投与量未満の1日投与量で投与される使用。
【0078】
1.12 自己免疫疾患の治療において使用するための医薬品の製造における化合物A、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの使用であって、化合物A、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの投与を標準の1日投与量で開始する前に、初期治療期間中(例えば最大10日間)、前記化合物が、標準の1日投与量未満の1日投与量で投与される使用。
【0079】
1.13 初期治療期間が最大10日間、例えば最大8日間、例えば1週間または6日間、または3〜5日間、例えば3日または4日間である、段落1.1〜1.12に定義の使用。
【0080】
1.14 本明細書で先に定義した最初の投与レジメン後、約10mgまたは約8mgの1日投与量で投与される医薬品の製造における、化合物Aの使用。
【0081】
1.15 医薬品が、心臓の問題に罹患している、例えば心不全の危険性がある患者に与えられる、段落1.1〜1.14に定義の使用。
【0082】
1.16 自己免疫疾患、例えば多発性硬化症を治療するための、段落1.1〜1.1.5に定義の使用。
【0083】
1.17 AVブロックが起こり得る危険性が制限され、または臨床的に重大でないレベルまで低減されるように対象に投与される医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用。次いでその使用は、好ましくは1.1〜1.16に定義される通りである。
【0084】
1.18 患者に医薬品を投与する間、患者の洞律動が正常になるように対象に投与される医薬品の製造における、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの使用。次いでその使用は、好ましくは1.1〜1.16に定義される通りである。
【0085】
1.19 AVブロックの危険性がある患者に医薬品が投与される、1.1〜1.16に定義の使用。
【0086】
1.20 浮動性めまい、疲労、動悸を含む症候を経験している患者に医薬品が投与される、1.1〜1.16に定義の使用。
【0087】
1.21 高度房室ブロックまたは洞不全症候群の患者に医薬品が投与される、1.1〜1.16に定義の使用。
【0088】
1.22 不整脈の患者、例えばクラスIa(例えばキニジン、プロカインアミド)またはクラスIII抗不整脈薬(例えばアミオダロン、ソタロール)を用いた治療を必要としているまたはその治療を受けている患者に医薬品が投与される、1.1〜1.16に定義の使用。
【0089】
1.23 β遮断薬療法を必要としているまたはその治療を受けている患者に医薬品が投与される、1.1〜1.16に定義の使用。
【0090】
1.24 前記S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの投与が、4日を超え、例えば、6、8または10日を超え、例えば12日間を超え、例えば14日間を超えて中断されている、患者に、例えば多発性硬化症に罹患している患者に医薬品が投与される、1.1〜1.23に定義の使用。
【0091】
本発明はさらに、以下を提供する。
2.1 S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグを用いた治療方法であって、初期治療期間中、例えば治療の最初の10日間、例えば9日間、8、7または6日間に、投与量が標準の投与量未満、例えば標準の1日投与量の80分の1、例えば40分の1、例えば30分の1であり、それが最大で標準の1日投与量まで任意選択により段階的に増加されるように前記S1P受容体調節因子またはアゴニストが投与されることが改良である治療方法。その後治療は、標準の有効な1日投与量を用いて継続される。
【0092】
2.2 治療投与量が投与される日に、心拍数(例えば1日当たりの平均または最小心拍数)の減少が臨床的に有意でなくなり、好ましくは毎分2回以下に制限されるように、心拍の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグを投与するステップを含む、それを必要としている患者を治療する方法。
【0093】
2.3 初期治療期間中、S1P受容体アゴニストの治療用量未満を対象に投与するステップを含む、2.1および2.2に定義の方法。
【0094】
2.4 標準の1日投与量未満の1日投与量で、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの負荷投与レジメンを対象に投与するステップを含む、それを必要としている対象における本明細書で先に定義した慢性の長期疾患、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症を治療する方法。
【0095】
2.5 それを必要としている対象における自己免疫疾患を治療する治療であって、初期治療期間中、例えば最初の10、9、8、7または6日間に、標準の1日投与量未満の1日投与量でS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグを対象に投与するステップと、1日投与量を、最大で標準の1日投与量まで段階的に増加するステップとを含む、方法。
【0096】
2.6 対象に、標準の1日投与量の最大80分の1、例えば40分の1、例えば30分の1の最初の投与レジメンを投与し、その後標準の1日投与量のS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグを投与するステップを含む、それを必要としている対象における自己免疫疾患を治療する方法。
【0097】
2.7 初期治療期間中、標準の1日投与量未満の1日投与量のS1P受容体調節因子またはアゴニストを、それを必要としている対象に投与するステップと、その1日投与量を、最大で標準の1日投与量まで段階的に増加するステップを含む、自己免疫疾患に罹患している対象の、前記S1P調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグを使用する治療に関連する陰性変時(chronotrophic)副作用を緩和または予防する方法。
【0098】
2.8 初期治療期間中、標準の1日当たりの治療投与量未満の1日投与量の化合物A、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを投与するステップと、その後、必要な標準の1日当たりの治療投与量の前記化合物の投与を開始するステップとを含む、かかる治療を必要としている患者における自己免疫疾患を治療する方法。
【0099】
2.9 初期治療期間中、標準の1日投与量未満の1日投与量の化合物Aを投与するステップと、その後、その1日投与量を、最大で標準の1日投与量まで任意選択により段階的に増加するステップとを含む、化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグによる自己免疫疾患の治療に関連する陰性変時副作用を緩和または予防する方法。
【0100】
2.10 初期治療期間が最大10日間、例えば最大8日間、例えば1週間または6日間である、段落2.1〜2.9に定義の方法。
【0101】
2.11 初期治療期間が、本明細書で先に記載の通り6〜14日間、例えば7〜10日間、または例えば6日間、7日間以下である、段落2.1〜2.9に定義の方法。
【0102】
2.12 自己免疫疾患、例えば多発性硬化症を治療するための、段落2.1または2.9に定義の方法。
【0103】
別の態様では、以下が提供される。
3.1 本明細書で定義の投与レジメンに従って投与される、自己免疫疾患の治療において使用するための、本明細書で定義のS1P受容体調節因子またはアゴニスト。
【0104】
3.2 本明細書で定義の投与レジメンに従って投与される、自己免疫疾患(例えば多発性硬化症)の治療に使用するための化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグ。
【0105】
別の態様では、以下が提供される。
4.1 標準の1日投与量未満の可変的な1日投与量のS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの医薬品の1日当たりの単位を含有するキット。例えば、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの1日当たりの単位は、S1P受容体調節因子またはアゴニストの標準用量のそれぞれ約1/40、1/10および1/2であってよく、あるいは標準の1日用量の約1/30、1/15および1/8、または約1/10、1/5および1/2.5であってよく、あるいは標準用量の約1/10または1/4であってよい。一態様では、キットは、0.5mg、2mgおよび10mgの投与量を含む。キットはさらに、S1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの標準の1日投与量に合わせた単位を含むことができる。キットは、使用のための指示を含有することもできる。
【0106】
4.2 本明細書に定義の投与レジメンに従って投与するための、化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの医薬品の単位を含むキットであって、前記化合物の標準の1日用量未満の用量強度の1つまたは複数の低用量単位が初期治療期間で提供される、キット。一実施形態では、キットは、S1P受容体調節因子またはアゴニストの最初の投与量に相当する投与量強度の低用量医薬品の1単位だけを含むことができる。次いで患者は、特定日数の間、該低用量医薬品の1単位を摂取することができ、次いでその後日、S1P受容体アゴニストの標準の1日用量を含む医薬品の単位を用いて療法が開始されるまで、任意選択により1日当たり2つ以上の単位を摂取することができる。代替の一実施形態では、キットは、患者が1日当たり1つの投与単位を投与され得るように、様々な投与量強度の医薬品のいくつかの低用量単位を含むことができるが、投与されるS1P受容体調節因子またはアゴニストの量は、標準の1日投与量で療法が開始されるまで漸増され得る。例えばキットは、2、3または4つの、例えば3つの異なる剤形を含むことができる。
【0107】
一態様ではキットは、パック、例えば1〜5つ、例えば2〜4つ、例えば3つの異なる剤形を含有するパックを含むことができる。パックは、個々の保存部分を含むことができ、各部分は、治療中の所与の日の患者の1日投与量を含有する。1日投与量は、異なる剤形のうちの1つまたは複数から構成することができる。この実施形態の一態様では、キットは、2〜4つ、例えば3つの異なる剤形を含有するブリスターパックを含み、パック内のブリスターは、初期治療期間中に患者に投与するための異なる剤形のうちの1つまたは複数から構成される1日投与量を含有する。この実施形態の一態様では、パック、例えばブリスターパックは、初期治療期間の日数に対応するいくつかのブリスターを含むことができる。別の態様では、ブリスターパックは、例えば低投与量および治療投与量の形態を含むすべての治療期間が、臨床的に好都合な期間、例えば1週間または2週間継続するように、最終的な治療用量を含有する1つまたは複数のブリスターを含有することもできる。
【0108】
本発明のさらに別の実施形態では、以下が提供される。
5.1 対象に、本明細書で先に定義の量の1日投与量の化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、それを必要としている対象における自己免疫疾患を治療する方法。
【0109】
5.2 自己免疫疾患が多発性硬化症である、5.1に定義の方法。
【0110】
本発明のさらに別の実施形態では、以下が提供される。
6.1 (i)S1P受容体調節因子またはアゴニストを用いて治療を受ける患者が、先に記載の治療投与レジメンの使用が有益となり得る分類に属するかどうかを決定するステップと、
(ii)患者がこの分類に属する場合、先に記載の治療投与レジメンを使用して患者を治療するステップと
を含む、先に記載の(例えば、本発明の特定の態様または実施形態のいずれかにおける)治療投与レジメンについて、患者の必要性または適合性を評価する方法。
【0111】
6.2 患者が、心不全、不整脈、高度房室ブロックまたは洞不全症候群に罹患している、もしくは罹患しやすいか、または失神エピソードの病歴を有する;またはβ遮断薬もしくは抗不整脈薬治療を受けている、例えば抗不整脈薬を用いた治療を受けている;または維持投与レジメンにおいて、中断または治療の休み、例えば4日を超え、6、8、10、12もしくは14日を超える休みを受けている場合に先の分類に属し得る、6.1に定義の方法。
【0112】
本発明に従って対象に投与されるS1P受容体調節因子またはアゴニストの投与レジメンは、自己免疫疾患の治療中もしくは治療の初期に、例えば最初の10日間、またはS1P受容体調節因子もしくはアゴニスト療法の中断後、例えば4日を超え、例えば6、8または10日を超え、12日を超え、または14日を超える中断後のいずれかに投与され得る。
【0113】
本明細書で先に特定した疾患および状態の治療におけるS1P受容体調節因子またはアゴニストの投与レジメンの実用性は、例えば下記の方法に従って、標準の動物試験または臨床試験において実証することができる。
【実施例1】
【0114】
0.25mgのo.d.で開始し、最大治療用量10mgのo.d.まで増加する化合物Aの用量を、以下の表1に特定した通り、12日間にわたって28人の対象に投与する。プラセボ群および最終治療用量10mgを投与される陽性対照群も、試験に含まれる(それぞれ14人の対象)。
【0115】
【表1】

【0116】
−1日目(ベースライン)に、対象は、24時間ホルターモニタリングおよび遠隔測定評価を含むベースライン評価を受ける。対象は、連続遠隔測定を−1日目の朝食前から開始し、最大13日目の投与期間(最終投与の24時間後)まで継続して維持する。各対象につき、この連続的な心拍数収集の13日間にわたって、毎分の心拍値を得(「分単位の心拍数」)、1分間の平均心拍値を表す。各対象の心拍数データベースは、約17,280のデータ点(13日×24時間×60分)を含有する。
【0117】
薬力学的評価および安全性評価を、最終投与の最大24時間後に実施する。心律動を、−1日目、1日目、11日目および12日目に24時間連続ホルターモニタリングによって評価する。各対象への各投与について、薬物を、−1日目に投与した時間と実質的に可能な限り近い時間に投与する。安全性評価には、身体検査、生命徴候および身体測定、12誘導ECG評価、標準の臨床的な実験室評価血液学、血液化学、検尿、有害事象および重症の有害事象モニタリングが含まれる。
【0118】
1日当たりの変時作用を、連続2日間のHRminの減少(%)として定義する。それを1日目〜12日目で算出する。
【0119】
24時間連続ホルター−ECGデータを、デジタルホルターモニタ(12誘導、−1、1、6、および8日目)によって得、解釈および報告のために転送する。ホルターモニタリングを、およそ7:00に開始し、用量投与時間を「0時間」とみなす。ホルター「カット」は、−1日目から開始し1時間間隔で24時間、またはホルターモニタリングデータセットのノイズ除去の終了まで継続するデータセットに由来する。
【0120】
心臓伝導間隔:不整脈モニタリングには、洞の中断(>2秒および>3秒)および房室ブロックの頻度および期間が含まれる。心房と心室の異所性興奮および洞律動の頻度および期間も記録する。
【0121】
1日当たりの変時作用を、連続2日間のHRmin(最小心拍数)の減少(%)として定義する。それを1日目〜12日目で算出する。
【0122】
結果
心拍数
試験にわたる1日当たりの最小心拍数の変動であるHRmin(24時間の平均最小心拍数)を、図1に示す。
【0123】
プラセボ群では、1日当たりの平均心拍数は、試験にわたって約5BPM(1分当たりの拍動)変わり、心拍数は−1日目から2日目までに約3〜4BPM増加する傾向があった。
【0124】
化合物A、10mgの治療群は、−1日目から1日目までに約8BPMの心拍数の有意な減少を示し、その後1日目から2日目までに約5BPMの心拍数の増加を示し、2日目から4日目までに約3BPMのさらなる増加を示した。化合物Aの漸増群の両方は、1日当たり約1〜2BPMの漸進的な心拍数の減少を示して、用量漸増の最初の7日間にわたって、合計約4〜5BPMの減少を示し、その後心拍数はその翌日の2〜3日にわたっておよそプラセボレベルまで増加した。
【0125】
試験の8日目および9日目に用量10mgの化合物Aを開始しても、その前日に測定した心拍数と比較して心拍数の有意な減少は得られなかった。
【0126】
これらの結果は、本発明の用量漸増投与レジメンの使用によって、用量10mgの化合物Aによる治療開始の1日目に見られた陰性変時作用が軽減されることを示している。
【0127】
追加の利益
以下の表2は、患者の試験中に、試験のすべての4群に対して観測した心室および上室性転移症(それぞれVEおよびSVE)の数ならびに2秒を超える停止の総数を示す。
【0128】
【表2】

【0129】
この表は、第2の漸増投与レジメンDT#2(投与量がフィボナッチ級数で増加される)では、2秒を超える心停止の数が、他の活性な治療投与レジメンよりも少ないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の製造におけるS1P受容体調節因子またはアゴニストの使用であって、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストが、初期治療期間中、前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの標準の1日投与量未満の投与量で投与され、次いで投与量が、最大で前記S1P受容体アゴニストの標準の1日投与量まで増加される、使用。
【請求項2】
医薬品が、自己免疫状態、例えば多発性硬化症の治療のためのものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
S1P受容体調節因子またはアゴニストが、式IaまたはIbの化合物
【化7】

[式中、
は、−COOR5k、−OPO(OR5k、−PO(OR5k、−SOOR5k、−POR5kOR5kまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、R5kは、HまたはC1〜6アルキルであり、
は、結合、C1〜3アルキレンまたはC2〜3アルケニレンであり、
は、ハロゲン、OH、NO、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシから選択される1〜3個の基によって任意選択により置換されているC6〜10アリールまたはC3〜9ヘテロアリール;ハロ置換C1〜6アルキルおよびハロ置換C1〜6アルコキシであり、
は、
【化8】

から選択され、
のアスタリスクは、それぞれ−C(R3k)(R4k)−と式IaまたはIbのAとの結合点を示し、Rは、水素およびC1〜6アルキルから選択され、JおよびJは、独立に、メチレンまたはS、OおよびNR5kから選択されるヘテロ原子であり、R5kは、水素およびC1〜6アルキルから選択され、Zの任意のアルキレンは、ハロ、ヒドロキシ、C1〜6アルキルから選択される1〜3個の基によってさらに置換されていてもよく、またはRは、Yの炭素原子と結合して、5〜7員環を形成することができ、
1kは、C1〜6アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アリールC1〜4アルキル、C3〜9ヘテロアリール、C3〜9ヘテロアリールC1〜4アルキル、C3〜8シクロアルキル、C3〜8シクロアルキルC1〜4アルキル、C3〜8ヘテロシクロアルキルまたはC3〜8ヘテロシクロアルキルC1〜4アルキルによって任意選択により置換されているC6〜10アリールまたはC3〜9ヘテロアリールであり、R1kの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシおよびハロ置換C1〜6アルキルまたはハロ置換C1〜6アルコキシから選択される1〜5個の基によって置換されていてもよく、
2kは、H、C1〜6アルキル、ハロ置換C1〜6アルキル、C2〜6アルケニルまたはC2〜6アルキニルであり、R2kは、特にメチルであり、
3kまたはR4kのそれぞれは、独立に、H、ハロゲン、OH、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシまたはハロ置換C1〜6アルキルもしくはハロ置換C1〜6アルコキシである]
およびそのN−オキシド誘導体もしくはプロドラッグ、
または薬理学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくは水和物である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
S1P受容体調節因子またはアゴニストが、化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項1、2または3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
初期治療期間中、S1P受容体調節因子またはアゴニストの治療用量未満、例えば標準の1日投与量の80分の1、40分の1、10分の1または4分の1を対象に投与するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
初期治療期間中、投与される投与量が段階的に増加される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
初期治療期間中の特定の日に投与される投与量が、先行する2日間に投与される投与量の合計±40%の範囲になるように、投与される投与量が段階的に増加される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
心拍数の陰性変時作用を誘発するS1P受容体調節因子またはアゴニストを、初期治療期間中、標準の1日当たりの治療投与量未満の1日投与量で対象に投与するステップと、その後前記S1P受容体調節因子またはアゴニストの投与を、必要な標準の1日当たりの治療投与量で開始するステップとを含む、それを必要としている患者(例えば、自己免疫状態、例えば多発性硬化症に罹患している患者)を治療する方法。
【請求項9】
自己免疫疾患に罹患している対象の、S1P調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグを使用する治療に関連する陰性変時副作用を緩和または予防する方法であって、初期治療期間中、標準の1日投与量未満の1日投与量の前記S1P受容体調節因子またはアゴニストを、それを必要としている対象に投与するステップと、1日投与量を、最大で標準の1日投与量まで段階的に増加するステップとを含む、方法。
【請求項10】
最初の10日間に、標準の1日投与量未満の1日投与量のS1P受容体調節因子またはアゴニストを対象に投与するステップと、1日投与量を、最大で標準の1日投与量まで段階的に増加するステップとを含む、請求項8または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
S1P受容体調節因子またはアゴニストが、化合物Aまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
可変的な1日投与量のS1P受容体調節因子またはアゴニスト、例えば化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの医薬品の1日当たりの単位を含有するキットであって、前記用量が標準の1日投与量未満である、キット。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の投与レジメンに従って投与するための、化合物A、またはその塩もしくはプロドラッグの医薬品の単位を含むキットであって、前記化合物の標準の1日用量未満の用量強度の1つまたは複数の低用量単位が初期治療期間中に提供される、キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−513378(P2012−513378A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541496(P2011−541496)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067618
【国際公開番号】WO2010/072703
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】