説明

SAHA及びペメトレキセドを用いて癌を治療する方法

本発明は、癌を治療する必要のある被験体に、第1の量のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物と、第2の量の抗癌剤とを投与することによって、癌を治療する必要のある被験体において癌を治療する方法に関する。HDAC阻害剤及び抗癌剤は、治療上有効な量を含むよう投与できる。種々の態様では、HDAC阻害剤及び抗癌剤の効果は相加的である場合も、相乗的である場合もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を、1種以上の抗癌剤、例えば、代謝拮抗剤と組合せて投与することによって癌を治療する方法に関する。組合せた量が一緒になって、治療上有効な量を含み得る。
【背景技術】
【0002】
癌は、細胞集団が、通常、増殖及び分化を支配する制御機構に対してさまざまな程度で不反応性になっている疾患である。
【0003】
臨床癌治療に用いられる治療薬は、いくつかの群、例えば、アルキル化剤、抗生物質製剤、代謝拮抗剤、生物製剤、ホルモン剤及び植物由来製剤(plant−derived agent)、に分類することができる。
【0004】
癌治療はまた、新生細胞の最終分化を誘導するによって試みられている((キャンサー・プリンシプルズ・アンド・プラクティス・オブ・オンコロジー(Cancer:Principles and Practice of Oncology)、ヘルマン(Hellman),S.、ローゼンバーグ(Rosenberg),S.A、デビタ(DeVita),V.T.,Jr編、第2版(J.B.リッピンコット(Lippincott)、フィラデルフィア(Philadelphia) 、P.49中、M.B.,ロバーツ(Roberts),A.B.及びドリスコール(Driscoll),J.S.(1985))。細胞培養モデルでは、種々の刺激、例えば、サイクリックAMP及びレチノイン酸(ブレイトマン(Breitman),T.R、セロニック(Selonick),S.E及びコリンス(Collins),S.J.(1980)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)77:2936〜2940頁;オルソン(Olsson),I.L.及びブレイトマン(Breitman),T.R.(1982)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)42:3924〜3927頁)、アクラルビシン及びその他のアントラサイクリン(シュワルツ(Schwartz),E.L.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1982)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)42:2651〜2655頁)に対する曝露によって分細胞が分化することが報告されている。悪性形質転換は、癌細胞が分化する可能性を必ずしも破壊しないという十分な証拠がある(スポーン(Sporn)ら、;マークス(Marks),P.A.,シェフェリー(Sheffery),M.及びリフキンド(Rifkind),R.A.(1987)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)47:659頁;ザックス(Sachs),L.(1978)ネイチャー(Nature)(ロンドン)274:535頁)。
【0005】
増殖の正常な制御因子に反応せず、分化プログラムの発現において妨げられていると思われる腫瘍細胞の多数の例があるが、それらは、分化を誘導でき、複製を停止することができる。種々の薬剤が、種々の形質転換細胞株及び一次ヒト腫瘍外植片を、より多くの分化した特徴を発現するよう誘導できる。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)は、腫瘍細胞増殖停止分化、及び/又はアポトーシスを誘導する能力を有するこのクラスの薬剤に属する(リコン(Richon),V.M.、ウェブ(Webb),Y.、メージャー(Merger),R.ら(1996)PNAS93:5705〜8頁)。これらの化合物は、動物における腫瘍増殖の阻害に有効な用量では毒性を有さないと思われるので、新生細胞が、悪性になる能力に固有の機構を標的とする(コヘン(Cohen),L.A.、アミン(Amin),S.、マークス(Marks),P.A.、リフキンド(Rifkind),R.A.、デザイ(Desai),D.及びリコン(Richon),V.M.(1999)アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Research)19:4999〜5006頁)。ヒストンアセチル化及び脱アセチル化は、それによって細胞における転写調節が達成される機構であるといういくつかの系統の証拠がある(グルステイン(Grunstein),M.(1997)ネイチャー(Nature)389:349〜52頁)。これらの効果は、ヒストンタンパク質の、ヌクレオソーム中のコイルドDNAに対する親和性変更することによるクロマチンの構造の変化によって生じると考えられている。
【0006】
同定されてきた5種のヒストンがある(H1、H2A、H2B、H3及びH4と呼ばれる)。ヒストンH2A、H2B、H3及びH4は、ヌクレオソーム中で見いだされ、H1は、ヌクレオソーム間に局在するリンカーである。各ヌクレオソームは、そのコア内に、各ヒストン種のうちH1を除く2種を含み、H1は、ヌクレオソーム構造の外側部分に単独で存在する。ヒストンタンパク質が低アセチル化である場合は、ヒストンは、DNAリン酸骨格に対してより大きな親和性があると考えられる。この親和性が、DNAをヒストンと強固に結合させ、DNAを転写調エレメント及び機構には利用できないようにする。アセチル化状態の調節は、2種の酵素複合体、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)間の活性のバランスによって起こる。低アセチル化状態は、結合しているDNAの転写を阻害すると考えられる。この低アセチル化状態は、HDAC酵素を含む大きな多タンパク質複合体によって触媒される。特に、HDACは、クロマチンコアヒストンからのアセチル基の除去を触媒することがわかっている。
【0007】
治療効力を高めるという目的の他に、併用療法のもうひとつの目的として、高用量の個々の成分によって引き起こされる不要な又は有害な副作用を減少させるため、得られた組合せ中の個々の成分の用量を減少させる可能性がある。したがって、癌を治療するための適した方法(例えば、副作用の減少をもたらし、悪性腫瘍の治療及び制御で有効である併用療法を含む)を発見するという差し迫った必要がある。
【発明の開示】
【0008】
発明の要旨
本発明は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤、例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を、1種以上の抗癌剤、例えば、ペメトレキセドと併用し、治療効果を発揮させることができるという発見に基づいている。
【0009】
本発明は、癌又はその他の疾患を治療することを必要とする被験体に、一定量のHDAC阻害剤、例えば、SAHAと、一定量の第2の抗癌剤、例えば、ペメトレキセドを投与することを特徴とする、癌又はその他の疾患を治療する方法に関する。本方法は、必要に応じて、一定量の第3の抗癌剤、例えば、シスプラチンと、必要に応じて、一定量の第4の抗癌剤とを投与することを含んでいてもよい。
【0010】
本発明はさらに、一定量HDAC阻害剤、例えば、SAHAと、一定量の第2の抗癌剤、例えば、ペメトレキセドとを含む、癌又はその他の疾患の治療に有用である医薬的組合せに関する。この組合せは、必要に応じて、一定量の第3の抗癌剤、例えば、シスプラチン及び/又は第4の抗癌剤を含んでもよい。
【0011】
本発明はさらに、癌又はその他の疾患を治療するための1種以上の医薬を製造するための、一定量のHDAC阻害剤、例えば、SAHAと、一定量の第2の抗癌剤、例えば、ペメトレキセド(及び必要に応じて、一定量の第3の抗癌剤、例えば、シスプラチン及び/又は第4の抗癌剤)の使用に関する。
【0012】
本発明はさらに、被験体に、一定量のHDAC阻害剤、例えば、SAHAと、一定量の第2の抗癌剤、例えば、ペメトレキセド(及び必要に応じて、一定量の第3の抗癌剤、例えば、シスプラチン及び/又は第4の抗癌剤)を投与し、HDAC阻害剤及び第2の(及び必要に応じて第3及び/又は第4の)抗癌剤を、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止又はアポトーシスを誘導するのに有効な量で投与することによって、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによって、被験体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、新生細胞を一定量のHDAC阻害剤、例えば、SAHA及び一定量の第2の抗癌剤、例えば、ペメトレキセド(及び必要に応じて、一定量の第3の抗癌剤、例えば、シスプラチン及び/又は第4の抗癌剤)と接触させ、HDAC阻害剤及び第2の(及び必要に応じて第3の及び/又は第4の)抗癌剤を、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止又はアポトーシスを誘導するのに有効な量で投与することによって、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによって、このような細胞の増殖を阻害するin vitro法に関する。
【0014】
本発明との関連で、併用治療は、一緒になって、治療上有効な量を含む。さらに、HDAC阻害剤と1種以上の抗癌剤との組合せは、相加的又は相乗的治療効果を提供し得る。
【0015】
本発明における使用に適したHDAC阻害剤としては、次に示すものだけには限らないが、SAHAのようなヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体又は求電子ケトン誘導体が挙げられる。
【0016】
本明細書に記載される治療手順は、任意の順序で逐次、任意の順序で交互に、同時に又はそのいずれかの組合せで実施できる。特に、HDAC阻害剤の投与及び1種以上の抗癌剤の投与は、同時に、連続して実施でき、又は例えば、同時投与と連続投与を交互に実施できる。
【0017】
HDAC阻害剤及び第2の抗癌剤(及び必要に応じて、第3の抗癌剤)は、任意の1種以上のさらなるHDAC阻害剤、アルキル化剤、抗生物質製剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来製剤、抗血管新生薬、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞傷害性薬剤、生物製剤、遺伝子療法剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、補助薬又はそれらの任意の組合せ、と組合せて投与できる。
【0018】
いくつかの実施態様では、HDAC阻害剤はSAHAであり、第2の抗癌剤はペメトレキセドであり、これらは、任意の1種以上の別のHDAC阻害剤、シスプラチンなどのアルキル化剤、抗生物質製剤、代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来製剤、抗血管新生薬、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞傷害性薬剤、生物製剤、遺伝子療法剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、補助薬又はそれらの任意の組合せ、と組合せて投与できる。
【0019】
本発明の併用療法を用いて、炎症性疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、酸化的ストレスと関連している疾患、神経変性性疾患、細胞の過剰増殖を特徴とする疾患(例えば、癌)又はそれらの任意の組合せを治療できる。
【0020】
特に、併用療法を用いて、白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、癌腫、固形腫瘍などの疾患又はそれらの任意の組合せを治療する。
【0021】
その他の実施態様では、NSCLCの治療のため、又は固形腫瘍の治療のために、SAHAを、ペメトレキセド及び必要に応じて、シスプラチンと組合せて投与する。
【0022】
したがって、本発明の一態様では、被験体に、i)以下の構造によって表されるSAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)
【0023】
【化1】

【0024】
又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物、及びii)N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を投与することを特徴とし、SAHA及びN−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルグルタミン酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物が、該腫瘍を治療するための有効量で投与される、固形腫瘍を治療することを必要とする被験体において、固形腫瘍を治療する方法を提供する。
【0025】
一実施態様では、SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)及びペメトレキセド(N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル)二ナトリウム塩、七水和物)を投与する。もう1つの実施態様では、SAHAを経口投与し、ペメトレキセドを10分間注入として静脈内投与する。ペメトレキセドは、約500mg/mという用量で投与することが好ましい。
【0026】
本発明のもう1つの実施態様では、ペメトレキセドを約500mg/mという用量で1日1回、21日のうち1日という少なくとも一治療期間の間投与する。その他の実施態様では、まず、SAHAを投与し、続いて、ペメトレキセドを投与する。ペメトレキセドはSAHAの投与の第1日目の2日後に投与することが好ましい。
【0027】
本発明との関連で、被験体は、ペメトレキセドの投与前、投与中、投与後に、過敏症反応を低減又は除去する1種以上の補助薬(例えば、ペメトレキセドの投与前、投与中、投与後のデキサメタゾン、葉酸及びビタミンB12のうち1種以上)を用いて治療できる。特定の実施態様では、被験体を、(i)ペメトレキセドの投与の前日、当日、翌日に、2〜25mgのデキサメタゾンを、経口投与で、(ii)ペメトレキセドの投与の7日前に始まり、少なくとも一治療期間を通じ、そして、ペメトレキセドの最後の投与の21日間の期間中、毎日、400〜1000μgの葉酸を、経口投与で、及び(iii)治療期間中のSAHAの最初の投与の1週間前の1000μgのビタミンB12を、筋肉内投与で、治療し、ここで、全治療期間は21日という三治療期間又はそれより多くを含み、全治療期間の間、1000μgのビタミンB12を63日毎に投与する。
【0028】
本発明のもう1つの実施態様では、SAHAを、約300mg又は400mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与する。もう1つの実施態様では、SAHAを、約400mgという用量で1日1回、21日のうち14日という少なくとも一治療期間の間投与する。さらにもう1つの実施態様では、SAHAを、約400mgという用量で1日1回、少なくとも一治療期間の間連続投与する。
【0029】
本発明はまた、約300mg、約400mg又は約500mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間のSAHAの投与を考慮する。SAHAはまた、約600mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間又は約700mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与できる。或いは、SAHAはまた、約800mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与できる。
【0030】
もう1つの実施態様では、SAHAを、約200mgという用量で1日2回、7日のうち3日という少なくとも一治療期間の間投与する。SAHAは、7日のうち3日で1週間と、それに続く2週間の休薬期間(休止期間)という少なくとも一治療期間又は7日のうち3日で2週間と、それに続く1週間の休薬期間という少なくとも一治療期間投与できる。その他の実施態様では、SAHAは、7日のうち3日という少なくとも一治療期間投与し、投与を毎週反復できる。
【0031】
本発明のもう1つの実施態様では、SAHAを、用量あたり約300mgで1日2回、7日のうち3日という少なくとも一治療期間の間投与する。SAHAは、7日のうち3日で1週間と、それに続く2週間の休薬期間という少なくとも一治療期間の間又は7日のうち3日で2週間と、それに続く1週間の休薬期間という少なくとも一治療期間の間投与できる。その他の実施態様では、SAHAを、7日のうち3日という少なくとも一治療期間の間投与し、投与を毎週反復する。
【0032】
SAHAは最大300mgという合計一日用量で投与でき、ペメトレキセドは最大500mg/mという合計一日用量で投与する。SAHAはまた、最大400mgという合計一日用量で投与でき、ペメトレキセドは最大500mg/mという合計一日用量で投与する。或いは、SAHAを最大600mgという合計一日用量で投与し、ペメトレキセドを最大500mg/mという合計一日用量で投与する。
【0033】
本発明のもう1つの態様は、i)以下の構造によって表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)
【0034】
【化2】

【0035】
又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物、及びii)N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物と、必要に応じて、1種以上の医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0036】
本組成物は経口又は静脈内投与用に製剤化できる。組成物が経口投与用に製剤化される場合は、組成物は、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む医薬的に許容される賦形剤1種以上を含み得る。一実施態様では、医薬組成物は、i)SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)及びii)ペメトレキセド(N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸)二ナトリウム塩七水和物)を含む。
【0037】
特に断りのない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は同等の方法及び材料は本発明の実施において使用できるが、適した方法及び材料は以下に記載されている。本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許及びその他の参照文献は、参照によりその全文が明確に組み込まれる。対立する場合には、定義をはじめとする本明細書が優先する。さらに、本明細書に記載される材料、方法及び実施例は、単に例示的なものであって、制限であるよう意図されるものではない。
【0038】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなり、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲によって包含される。
【0039】
発明の詳細な記載
本明細書に記載されるHDAC阻害剤と、本明細書に記載される1種以上の抗癌剤の投与を含む併用療法手順は、改善された治療効果を提供し得るということを予想外にも発見した。治療の各々(HDAC阻害剤の投与及び1種以上の抗癌剤の投与)は、治療上有効な治療を提供するために用いられる。
【0040】
本発明は、癌又はその他の疾患を治療することを必要とする被験体に、一治療手順において、一定量のHDAC阻害剤又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を、及び別の治療手順において、一定量の1種以上の抗癌剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗生物質製剤、代謝拮抗剤、植物由来製剤及び補助薬)を投与し、それらの量が一緒になって治療上有効な量を含むことによって、癌又はその他の疾患を治療することを必要とする被験体において癌又はその他の疾患を治療する方法に関する。HDAC阻害剤及び1種以上の抗癌剤の癌治療効果は、例えば、相加的又は相乗的であり得る。
【0041】
本発明はさらに、癌又はその他の疾患を治療することを必要とする被験体に、一治療手順において、一定量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を、及び別の治療手順において、一定量の、1種以上の抗癌剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗生物質製剤、代謝拮抗剤、植物由来製剤及び補助薬)を投与し、それらの量が治療上有効な量を含んでもよい、癌又はその他の疾患を治療することを必要とする被験体において癌又はその他の疾患を治療する方法に関する。SAHA及び1種以上の抗癌剤の効果は、相加的又は相乗的であり得る。
【0042】
一態様では、本方法は、第1の治療手順において、第1の量のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、SAHA又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物)を、及び別の量の第2の抗癌剤(例えば、ペメトレキセド)を、それを必要とする患者に投与することを含む。本方法は、必要に応じて、第3の抗癌剤(例えば、シスプラチン)、及び必要に応じて、第4の抗癌剤を投与することを含み得る。本発明はさらに、癌又はその他の疾患の治療にとって有用である医薬的組合せに関する。一態様では、医薬的組合せは、第1の量のHDAC阻害剤(例えば、SAHA又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物)及び一定量の第2の抗癌剤(例えば、ペメトレキセド又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物)(及び場合により、第3の抗癌剤、例えば、シスプラチン及び/又は第4の抗癌剤)を含む。第1及び第2(及び必要に応じて第3及び/又は第4の量)は、治療上有効な量を含んでもよい。
【0043】
本発明はさらに、癌又はその他の疾患の治療のための医薬を製造するための、一定量のHDAC阻害剤及び一定量の第2の抗癌剤(及び必要に応じて、一定量の第3及び/又は第4の抗癌剤)の使用に関する。一態様では、本医薬は、第1の量のHDAC阻害剤(例えば、SAHA又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物)及び一定量の第2の抗癌剤、(例えば、ペメトレキセド又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物)(及び場合により、第3の抗癌剤、例えば、シスプラチン及び/又は第4の抗癌剤)を含む。
【0044】
本発明の併用療法は、2種の治療様式と関連している特異的毒性を考慮して治療的利点を提供する。例えば、HDAC阻害剤を用いる治療は、抗癌剤を用いた場合には見られない特定の毒性をもたらすことがあり、逆もある。そのようなものとして、この特異的毒性によって、前記毒性が存在しないか、最小である用量で投与されるべき各治療ことが可能となり、その結果、併用療法は一緒になって、併用薬剤の成分各々の毒性を避けながら治療量を提供する。さらに、併用療法の結果として達成される治療効果が増強されるか、相乗的である場合、例えば、相加的治療効果よりも大幅に良い場合は、各薬剤の用量をいっそうさらに減らすことができ、このようにして付随する毒性をいっそう大きな程度、低下させることができる。
【0045】
定義
本発明に関して、用語「治療」とは、その種々の文法上の形で、病状、疾患進行、疾患病原体(例えば、細菌又はウイルス)又はその他の異常な状態の有害な効果を、予防(すなわち、化学的予防)、治癒、逆転、減弱、軽減、最小化、抑制又は停止させることを指す。例えば、治療は、疾患の1つの症状(すなわち、必ずしもすべての症状ではない)を軽減すること又は疾患の進行を減弱させることを含んでもよい。発明的方法の一部が病原因子の物理的除去を含むために、当業者は、本発明の化合物が病原因子に対する曝露の前に、曝露と同時に投与される状況(予防的処置)及び本発明の化合物が病原因子に対する曝露後に(かなり後であっても)投与される状況において同様に効果的であることを認識する。
【0046】
本明細書において、癌の治療は、哺乳類、例えば、ヒトにおいて、癌転移を含む癌の進行を部分的又は全体的に阻害、遅延若しくは予防すること、癌転移を含む癌の再発を阻害、遅延若しくは予防すること又は癌の発病若しくは発生を予防すること(化学的予防)に関する。さらに、本発明の方法は、癌を有するヒト患者の化学的予防という治療を対象とする。しかし、本方法はその他の哺乳類における癌の治療においても有効であるという可能性もある。
【0047】
本発明の「抗癌剤」は、本明細書に記載されるもの包含し、このような薬剤の任意の医薬的に許容される塩又は水和物、又はこのような薬剤の任意の遊離酸、遊離塩基又はその他の遊離形を含み、限定されない例として、A)極性化合物(マークス(Marks)ら(1987);フレンド(Friend),C.、シェル(Scher),W.、ホーランド(Holland),J.W.及びサト(Sato),T.(1971)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)68:378〜382頁;タナカ(Tanaka),M.、レビー(Levy),J.、テラダ(Terada),M.、ブレスロウ(Breslow),R.、リフキンド(Rifkind),R.A及びマークス(Marks),P.A.(1975)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)72:1003〜1006頁;ルーベン(Reuben),R.C.、ワイフ(Wife),R.L.、ブレスロウ(Breslow),R.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks),P.A.(1976)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)73:862〜866頁);B)ビタミンDの誘導体及びレチノイン酸(アベ(Abe),E.、ミヤウラ(Miyaura),C.、サカガミ(Sakagami),H.、タケダ(Takeda),M.、コンノ(Konno),K.、ヤマザキ(Yamazaki),T.、ヨシダ(Yoshika),S.及びスダ(Suda),T.(1981)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)78:4990〜4994頁;シュワルツ(Schwartz),E.L.、スヌーディー(Snoddy)、J.R.、クルーター(Kreutter),D.、ラスムッセン(Rasmussen),H.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1983)プロシーディングス・オブ・ジ・アメリカン・アソシエーション・フォー・キャンサー・リサーチ(Proceedings of the American Association for Cancer Research)24:18;タネナガ(Tanenaga),K.、ホズミ(Hozumi),M.及びサカガミ(Sakagami),Y.(1980)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)40:914〜919頁);C)ステロイドホルモン(ロテム(Lotem),J.及びサシェ(Sachs),L.(1975)インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of Cancer)15:731〜740頁);D)増殖因子(サシェ(Sachs),L.(1978)ネイチャー(Nature)(ロンドン(London)274:535、メトカーフ(Metcalf),D.(1985)サイエンス(Science),229:16〜22頁);E)プロテアーゼ(シェル(Scher),W.、シェル(Scher),B.M.及びワックスマン(Waxman),S.(1983)エクスペリメンタル・ヘマトロジー(Experimental Hematology)11:490〜498頁;シェル(Scher),W.、シェル(Scher),B.M.及びワックスマン(Waxman),S.(1982)バイオケミカル・アンド・バイオフィジオロジー・リサーチ・アンド・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysiology Research Communications) 109:348〜354頁);F)腫瘍プロモーター(ヒューバーマン(Huberman),E.及びキャラハン(Callaham),M.F.(1979)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)76:1293〜1297頁;ロテム(Lottem),J.及びサシェ(Sachs),L.(1979)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)76:5158〜5162頁)及びG)DNA又はRNA合成の阻害剤(シュワルツ(Schwartz),E.L.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1982)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)42:2651〜2655頁、テラダ(Terada),M.、エプナー(Epner),E.、ヌデル(Nudel),U.、サーモン(Salmon),J.、フィバッチ(Fibach),E.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks),P.A.(1978)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)75:2795〜2799頁;モリン(Morin),M.J.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1984)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)44:2807〜2812頁;シュワルツ(Schwartz),E.L.、ブラウン(Brown),B.J.、ニーレンバーグ(Nierenberg),M.、マーシュ(Marsh),J.C.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1983)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)43:2725〜2730頁;スガノ(Sugano),H.、フルサワ(Furusawa),M.、カワグチ(Kawaguchi),T.及びイカワ(Ikawa),Y.(1973)ビブリオテカ・ヘマトロジカ(Bibliotheca Hematologica)39:943〜954頁;エバート(Ebert),P.S.、ウォーズ(Wars),I.及びブエル(Buell),D.N.(1976)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)36:1809〜1813頁;ハヤシ(Hayashi),M.、オカベ(Okabe),J.及びホズミ(Hozumi),M.(1979)ガン(Gann)70:235〜238頁)がある。
【0048】
本明細書において、用語「治療上有効な量」とは、併用療法における組合せた量の治療を適切とするよう意図される。組合せた量は、所望の生物学的応答を達成する。本発明では、所望の生物学的応答は、哺乳類、例えば、ヒトにおける、癌転移を含む癌の進行の部分又は完全阻害、遅延又は予防;癌転移を含む癌の再発の阻害、遅延又は予防或いは癌の発病又は発生の予防(化学的予防)である。
【0049】
本明細書において、用語「併用療法(combination treatment)」、「併用療法(combination therapy)」、「併用療法(combined treatment)」又は「コンビナトリアル治療(conbinatorial treatment)」は同じ意味で用いられ、少なくとも2種の異なる治療薬を用いる個体の治療を指す。本発明の一態様によれば、個体を第1の治療薬、例えば、本明細書に記載されるSAHA又は別のHDAC阻害剤を用いて治療する。第2の治療薬は、代謝拮抗剤、例えば、ペメトレキセドであってもよく、又は本明細書に記載される任意の臨床上確立された抗癌剤(例えば、別のHDAC阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗生物質製剤、植物由来製剤又は補助薬)であってもよい。コンビナトリアル治療は、第3又はいっそうさらなる治療薬含み得る。併用療法は連続して実施してもよいし、同時に実施してもよい。
【0050】
本明細書において「レチノイド」又は「レチノイド剤」(例えば、3−メチルTTNEB)は、1種以上のレチノイド受容体と結合する、任意の合成、組換え又は天然に存在する化合物を包含し、このような薬剤の任意の医薬的に許容される塩又は水和物及びこのような薬剤の任意の遊離酸、遊離塩基又はその他の遊離形を含む。
【0051】
「チロシンキナーゼ阻害剤」(例えば、エルロチニブ)は、1種以上のチロシンキナーゼ(例えば、受容体チロシンキナーゼ)と結合するか、そうでなければ活性又はレベルを低下させる、任意の合成、組換え又は天然に存在する薬剤を包含し、このような阻害剤の任意の医薬的に許容される塩又は水和物及びこのような阻害剤の任意の遊離酸、遊離塩基又はその他の遊離形を含む。EGFR(ErbB−1;HER−1)に対して作用するチロシンキナーゼ阻害剤も含まれる。また、EGFRに対して特異的に作用するチロシンキナーゼ阻害剤も含まれる。チロシンキナーゼ阻害剤の限定されない例は本明細書に提供される。
【0052】
「補助薬」とは、抗癌剤の有効性を増強するために、又は抗癌剤と関連する状態、例えば、血球数の低下、過敏症反応、好中球減少症、貧血、血小板減少症、高カルシウム血症、粘膜炎、挫傷形成、出血、毒性、疲労、疼痛、悪心及び嘔吐を予防若しくは治療するために用いられる任意の化合物を指す。
【0053】
本明細書に列挙される「HDAC阻害剤」(例えば、SAHA)は、任意の、合成、組換え又は天然に存在する阻害剤を包含し、このような阻害剤の任意の医薬的に許容される塩又は水和物、又はこのような阻害剤の任意の遊離酸、遊離塩基又はその他の遊離形を含む。本明細書において「ヒドロキサム酸誘導体」とは、ヒドロキサム酸誘導体であるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のクラスを指す。阻害剤の具体例は、本明細書に提供される。
【0054】
本明細書において「患者」又は「被験体」とは、治療の受容者を指す。哺乳類及び非哺乳類患者が含まれる。特定の実施態様では、患者は、哺乳類、例えば、ヒト、イヌ、ネズミ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ又はヤギである。特定の実施態様では、患者はヒトである。
【0055】
本明細書において、用語「断続的な」「間欠的に」又は「間欠的に」とは、規則的又は不規則的いずれかの間隔で停止及び開始することを意味する。
【0056】
用語「水和物」は、次に示すものだけには限らないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを含む。
【0057】
ヒストン脱アセチル化酵素及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)としては、ヌクレオソームコアヒストンのアミノ末端テール中のリジン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素が挙げられる。そのようなものとして、HDACは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と一緒になって、ヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンアセチル化は、遺伝子発現に影響を及ぼし、HDACの阻害剤(例えば、ヒドロキサム酸ベースのハイブリッド極性化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA))は、in vitroで形質転換細胞の増殖停止、分化及び/又はアポトーシスを誘導し、in vivoで腫瘍増殖を阻害する。
【0058】
HDACは、構造相同性に基づいて3つのクラスに分けることができる。クラスIHDAC(HDAC1、2、3及び8)は、酵母RPD3タンパク質に対して類似性を有し、核に局在し、転写コリプレッサーと結合している複合体で見られる。クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7及び9)は酵母HDA1タンパク質に対して類似性を有し、核と細胞質の細胞内局在両方を有する。クラスI及びII両方のHDACが、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤(例えば、SAHA)によって阻害される。クラスIII HDACは、酵母SIR2タンパク質と関連しているNAD依存性酵素の構造的に遠位のクラスを形成し、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤によって阻害されない。
【0059】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤又はHDAC阻害剤は、in vivo、in vitro又は両方で、ヒストンの脱アセチル化を阻害できる化合物である。そのようなものとして、HDAC阻害剤は、少なくとも1種のヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する。少なくとも1種のヒストンの脱アセチル化の阻害の結果として、アセチル化ヒストンの増大が生じ、アセチル化ヒストンの蓄積は、HDAC阻害剤の活性を評価するための適した生物学的マーカーである。したがって、アセチル化ヒストンの蓄積についてアッセイできる手順を用いて、注目する化合物のHDAC阻害活性を調べることができる。ヒストン脱アセチル化酵素活性を阻害できる化合物はまた、その他の基質とも結合でき、そのようにしてその他の生物学的活性な分子、例えば、酵素を阻害できるということは理解される。本発明の化合物は、上記に示されるヒストン脱アセチル化酵素はいずれも、又は任意のその他のヒストン脱アセチル化酵素を阻害できるということもまた理解される。
【0060】
例えば、HDAC阻害剤を投与されている患者では、末梢単核細胞における、並びにHDAC阻害剤で治療された組織におけるアセチル化ヒストンの蓄積を、適したコントロールに対して調べることができる。
【0061】
個々の化合物のHDAC阻害活性は、例えば、少なくとも1種のヒストン脱アセチル化酵素の阻害を示す酵素活性を用いて、in vitroで調べることができる。さらに、個々の組成物で処理された細胞におけるアセチル化ヒストンの蓄積を調べることは、化合物のHDAC阻害活性を決定できるものであり得る。
【0062】
アセチル化ヒストンの蓄積についてのアッセイは文献においてよく知られている。例えば、マークス(Marks),P.A.ら、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティチュート(Journal of the National Cancer Institute)92:1210〜1215頁、2000,ブルター(Butler),L.M.ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)60:5165〜5170頁(2000)、リコン(Richon),V.M.ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)95:3003〜3007頁、1998及びヨシダ(Yoshida),M.ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)265:17174〜17179頁、1990参照のこと。
【0063】
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を調べるための酵素アッセイは、以下のように実施できる。手短には、アフィニティー精製したヒトエピトープタグを付けた(Flag)HDAC1に対するHDAC阻害剤化合物の効果を、基質の不在下で、示した量の阻害化合物とともに酵素調製物を氷上で約20分間インキュベートすることによってアッセイできる。基質([H]アセチル標識したマウス赤白血病細胞由来のヒストン)を加えることができ、そのサンプルを30μLという総容積中、37℃で20分間インキュベートすることができる。次いで、反応を停止させることができ、放出されたアセトンを抽出し、シンチレーション計数によって放射能放出の量を調べることができる。HDAC阻害剤化合物の活性を調べるために有用なもう一つのアッセイとして、BIOMOL(登録商標)Research Laboratories,Inc.、Plymouth Meeting、ペンシルバニア州から入手可能である「HDAC蛍光活性測定法;Drug Discovery Kit−AK−500」がある。
【0064】
In vivo研究は以下のように実施できる。動物、例えば、マウスにHDAC阻害剤化合物を腹膜内に注射できる。選択した組織、例えば、脳、脾臓、肝臓などを、投与後、所定の時点で単離することができる。ヒストンは、本質的に、ヨシダ(Yoshida)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)265:17174〜17179頁、1990によって記載されるように組織から単離できる。等量のヒストン(約1μg)を15%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、Hybond−Pフィルター(Amershamから入手可能)にトランスファーすることができる。フィルターは、3%ミルクを用いてブロッキングすることができ、次いで、ウサギ精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(αAc−H4)及び抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology,Inc.)を用いて探索することができる。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギ抗体(1:5000)及びSuperSignal化学発光基質(Pierce)を用いて、アセチル化ヒストンのレベルを可視化することができる。ヒストンタンパク質のローディングコントロールとして、平行ゲルを流し、クーマシーブルー(CB)で染色できる。
【0065】
さらに、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤は、p21WAF1遺伝子の発現をアップレギュレートすることがわかった。p21WAF1タンパク質は、標準的な方法を用いる、種々の形質転換細胞においてHDAC阻害剤とともの培養の2時間以内に誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導は、この遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化ヒストンの蓄積と関連している。したがって、p21WAF1の誘導は、形質転換細胞においてHDAC阻害剤によって引き起こされるG1細胞周期停止に関与していると認識され得る。
【0066】
本発明者らの何人かに発行された、米国特許第5,369,108号、同5,932,616号、同5,700,811号、同6,087,367号及び同511,990号は、新生細胞の最終分化を選択的に誘導するのに有用な化合物を開示し、該化合物は、メチレン基のフレキシブルな鎖によって、又は強固なフェニル基によって分離される2つの極性末端基を有し、極性末端基の一方又は両方は、大きな疎水性基である。その化合物の中には、同分子の、第1の疎水基と同一の末端にさらなる大きな疎水基を有するものもあり、これによって、分化活性が酵素アッセイで約100倍、細胞分化アッセイで約50倍さらに高まる。本方法に用いた化合物及び本発明の医薬組成物を合成する方法は、前記特許に十分に記載されており、その全文は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
したがって、本発明はその広範な範囲内に、新生細胞におけるヒストン脱アセチル化酵素の阻害、最終分化の誘導、細胞増殖停止及び/若しくはアポトーシス並びに/又は腫瘍における腫瘍細胞の分化、細胞増殖停止及び/若しくはアポトーシスの誘導において使用するための、1)ヒドロキサム酸誘導体、2)短鎖脂肪酸(SCFA)、3)環状テトラペプチド、4)ベンズアミド、5)求電子ケトン及び/又はヒストン脱アセチル化酵素を阻害できる任意のその他のクラスの化合物、であるHDAC阻害剤をを含む組成物を含む。
【0068】
このようなHDAC阻害剤の限定されない例は以下に示されている。本発明は、本明細書に記載されるHDAC阻害剤の任意の塩、結晶構造、非晶構造、水和物、誘導体、代謝産物、立体異性体、構造異性体及びプロドラッグを含むということは理解される。
【0069】
A.ヒドロキサム酸誘導体、例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(リコン(Richon)ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)95、3003〜3007頁(1998));m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(リコン(Richon)ら、前掲);ピロキサミド、トリコスタチン類似体、例えば、トリコスタチンA(TSA)及びトリコスタチンC(コーゲ(Koghe)ら1998.バイオケミカル・ファルマコロジー(Biochemical Pharmacology)56:1359〜1364頁);サリチルビスヒドロキサム酸(アンドリューズ(Andrews)ら、インターナショナル・ジャーナル・フォー・パラシトロジー(International Journal for Parasitology)30、761〜768頁(2000));スベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)(米国特許第5,608,108号);アゼライックビスヒドロキサム酸(Azelaic bishydroxamic acid)(ABHA)(アンドリューズ(Andrews)ら、前掲);アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(Azelaic−1−hydroxamate−9−anilide)(AAHA)(チウ(Qiu)ら、モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(Molecular Biolog of the cell)11、2069〜2083頁(2000));6−(3−クロロフェニルウレイド)カルポイックヒドロキサム酸(6−(3−Chlorophenylureido)carpoic hydroxamic acid)(3Cl−UCHA);オキサムフラチン[(2E)−5−[3−[(フェニルスフォニル)アミノールフェニル]−ペンタ−2−エン−4−イノヒドロキサム酸]((2E)−5−[3−(phenylsufonyl)aminol phenyl]−pent−2−en−4−ynohydroxamic acid])(キム(Kim)らオンコジーン(Oncogene)、18:2461 2470(1999));A−161906、スクリプタイド(Scriptaid)(スー(Su)ら2000キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、60:3137〜3142頁);PXD−101(Prolifix);LAQ−824;CHAP;MW2796(アンドリューズ(Andrews)ら、前掲);MW2996(アンドリューズ(Andrews)ら、前掲)又は米国特許第5,369,108号、同5,932,616号、同5,700,811号、同6,087,367号及び同6,511,990号に開示される任意のヒドロキサム酸。
【0070】
B.環状テトラペプチド、例えば、トラポキシンA(TPX)−環状テトラペプチド(シクロ−(L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカノイル))(キジマ(Kijima)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)268、22429〜22435頁(1993));FR901228(FK228、デプシペプチド)(ナカジマ(Nakajima)ら、エクスペリメンタル・セル・リサーチ(Experimental Cell Research)241、126〜133頁(1998));FR225497環状テトラペプチド(H.モリ(Mori)ら、PCT出願WO00/08048(2000年2月17日));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N−O−メチル−L−トリプトファニル−L−イソロイシニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソデカノイル)](ダーキン−ラトレー(Darkin−Rattray)ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)93、13143〜13147頁(1996));アピシジンIa、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa及びアピシジンIIb(P.デュルスキー(Dulski)ら、PCT出願WO97/11366);CHAP,HC−毒素環状テトラペプチド(ボッシュ(Bosch)ら、プラント・セル(Plant Cell)7、1941〜1950頁(1995));WF27082環状テトラペプチド(PCT出願WO98/48825)及びクラミドシン(ボッシュ(Bosch)ら、前掲)。
【0071】
C.短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体、例えば、酪酸ナトリウム(クーゼンス(Cousens)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)254、1716〜1723頁(1979));イソバレレート(マクベイン(McBain)ら、バイオケミカル・ファルマコロジー(Biochemical Pharmacology)53:1357〜1368頁(1997));バレレート(マクベイン(McBain)ら、前掲);4−フェニルブチレート(4−PBA)(リー(Lea)及びツルシヤン(Tulsyan)アンチキャンサー・リサーチ(Anticancer Research)15、879〜873頁(1995));フェニルブチレート(PB)(ワン(Wang)らキャンサー・リサーチ(Cancer Research)59、2766〜2799頁(1999));プロピオネート(マクベイン(McBain)ら、前掲);ブチルアミド(リー(Lea)及びツルシヤン(Tulsyan)、前掲);イソブチルアミド(リー(Lea)及びツルシヤン(Tulsyan)、前掲);フェニルアセテート(リー(Lea)及びツルシヤン(Tulsyan)、前掲);3−ブロモプロピオネート(リー(Lea)及びツルシヤン(Tulsyan)前掲);トリブチリン(グアン(Guan)ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)60、749〜755頁(2000));バルプロ酸、バルプロエート及びPivanex(商標)。
【0072】
D.ベンズアミド誘導体、例えば、CI−994;MS−275[N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](サイトー(Saito)ら、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)96、4592〜4597頁(1999))及びMS−275の3’−アミノ誘導体(サイトー(Saito)ら、前掲)。
【0073】
E.求電子ケトン誘導体、例えば、トリフルオロメチルケトン(フレイ(Frey)ら、バイオオーガニック・アンド・メディカル・ケミストリー・レターズ(Bioorganic & Medical Chemistry Letters)(2002)、12、3443〜3447頁;米国特許第6,511,990号)及びα−ケトアミド、例えば、N−メチル−α−ケトアミド。
【0074】
F.その他のHDAC阻害剤、例えば、天然物、プサンマプリン(psammaplins)及びデプデシン(クォン(Kwon)ら、1998.PNAS95:3356〜3361頁)。
【0075】
ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸 (SAHA)、m−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキサメート(CBHA)及びピロキサミドが挙げられる。SAHAは、ヒストン脱アセチル化酵素の触媒ポケットにおいて直接結合することがわかっている。SAHAは、培養形質転換細胞の細胞周期停止、分化及び/又はアポトーシスを誘導し、げっ歯類において腫瘍増殖を阻害する。SAHAは、固形腫瘍及び血液癌の両方において、これらの効果を誘導する点で有効である。SAHAは、動物における腫瘍増殖の阻害において、動物に毒性を全く示すことなく有効であるということがわかっている。腫瘍増殖のSAHA誘導性阻害は、腫瘍におけるアセチル化ヒストンの蓄積と関連している。SAHAは、ラットにおける発癌物質誘導性(N−メチルニトロソウレア)哺乳類腫瘍の発生及び継続増殖の阻害において有効である。SAHAは、ラットに、研究の130日間にわたって、その食事中に投与された。したがって、SAHAは非毒性であり、その作用機序がヒストン脱アセチル化酵素活性の阻害を含む、経口活性抗腫瘍剤である。
【0076】
HDAC阻害剤としては、本発明者らの何人かに発行された、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,369,108号、同5,932,616号、同5,700,811号、同6,087,367号及び同6,511,990号に開示される化合物が挙げられ、その限定されない例が以下に示されている。
【0077】
具体的なHDAC阻害剤としては、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA;N−ヒドロキシ−N’−フェニルオクタンジアミド)が挙げられ、これは以下の構造式によって表される:
【0078】
【化3】

【0079】
このような化合物のその他の例及びその他のHDAC阻害剤は、すべて、ブレスロウ(Breslow)らの1994年11月29日に発行された、米国特許第5,369,108号、1997年12月23日に発行された米国特許第5,700,811号、1998年6月30日に発行された米国特許第5,773,474号、1999年8月3日に発行された米国特許第5,932,616号、2003年1月28日に発行された米国特許第6,511,990号、すべて、マークス(Marks)らの、1991年10月8日に発行された米国特許第5,055,608号、1992年12月29日に発行された米国特許第5,175,191号及び1997年3月4日に発行された米国特許第5,608,108号並びにヨシダ(Yoshida),M.ら、バイオアッセイズ(Bioassays)17、423〜430頁(1995);サイトウ(Saito)A.ら、PNAS USA96、4592〜4597頁(1999);フラマイ(Furamai)R.ら、PNAS USA98(1)、87〜92頁(2001);コマツ(Komatsu),Y.ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)61(11)、4459〜4466頁(2001);スー(Su),G.H.ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)60、3137〜3142頁(2000);リー(Lee),B.I.ら、キャンサー・リサーチ(Cancer Research)61(3)、931〜934頁;スズキ(Suzuki),T.ら、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)42(15)、3001〜3003頁(1999);Sloan−Kettering Institute for Cancer Research and The Trustees of Columbia Universityの2001年3月15日に公開された公開PCT出願WO01/18171;Hoffmann−La Rocheの公開PCT出願WO02/246144;Novartisの公開PCT出願WO02/22577;Prolifixの公開PCT出願WO02/30879;すべてMethylgene,Incの公開PCT出願WO01/38322(2001年5月31日に公開された)、WO01/70675(2001年9月27日に公開された)及びWO00/71703(2000年11月30日に公開された);Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltd.の1999年10月8日に公開された公開PCT出願WO00/21979;Beacon Laboratories,L.L.C.の1998年3月11日に公開された公開PCT出願WO98/40080及びカーティン(Curtin)M.(HDAC阻害剤の現在の特許状態エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ(Expert Opinion on Therapeutic Patents)(2002)12(9):1375〜1384頁及びそれに列挙される参照文献)に見ることができる。
【0080】
SAHA又は任意のその他のHDACは、実験の詳細のセクションに概説される方法に従って、又は参照によりその全文が組み込まれる、米国特許第5,369,108号、同5,700,811号、同5,932,616号及び同6,511,990号に示される方法に従って、又は当業者に公知の任意のその他の方法に従って、合成できる。
【0081】
HDAC阻害剤の特定の限定されない例が以下の表に示されている。本発明は、以下に表される化合物と構造的に類似する任意の化合物、及びヒストン脱アセチル化酵素を阻害できる任意の化合物を包含するということは留意されなければならない。
【0082】
【化4】

【0083】
【化5】

【0084】
立体化学
多くの有機化合物が、偏光面を回転する能力を有する光学的に活性な形で存在する。光学活性化合物の記載では、接頭辞D及びL又はR及びSは、そのキラル中心(複数の中心)についての分子の絶対配置を表すために用いる。接頭辞d及びl又は(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転の符号を表すために用いられ、(−)又はlは化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdで接頭辞のついた化合物は右旋性である。所与の化学構造のために、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、それらが互いに重ね合わせることができない鏡像であるという点を除けば同一である。特定の立体異性体はまた、エナンチオマーと呼ばれることもあり、このような異性体の混合物はエナンチオマー混合物と呼ばれることも多い。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。
【0085】
本明細書に記載される化合物の多くは1以上のキラル中心を有し、従って、種々のエナンチオマーの形で存在し得る。必要に応じて、キラル炭素をアスタリスク()で指定することができる。キラル炭素との結合が、本発明の式中で直線として表される場合は、キラル炭素の(R)及び(S)配置の両方、ひいては、両エナンチオマー及びそれらの混合物が式内に包含されると理解される。当該技術分野において用いられるように、キラル炭素についての絶対配置を指定することが望ましい場合には、キラル炭素との結合の1つをくさび(面より上の原子との結合)として表すことができ、他のものを一続きの短い平行線又は短い平行線のくさび(面より下の原子との結合)として表すことができる。Cahn−Ingold−Prelogシステムを用いて、キラル炭素に(R)又は(S)立体配置を割り当てることができる。
【0086】
本発明のHDAC阻害剤が、1つのキラル中心を含む場合は、その化合物は2種のエナンチオマーの形で存在し、本発明は両エナンチオマー及びエナンチオマーの混合物、例えば、ラセミ混合物と呼ばれる特定の50:50混合物を含む。エナンチオマーは、当業者に公知の方法によって、例えば、結晶化によって分離することができるジアステレオ異性体塩の形成(例えば、デイビッド・コズマ(David Kozma)によるCRCハンドブック・オブ・オプティカル・レゾルーションズ・バイア・ジアステレオメチック・ソルト・フォーメーション(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation)(CRC Press、2001)参照のこと);例えば、結晶化、ガス−液体若しくは液体クロマトグラフィーによって分離できるジアステレオ異性体誘導体又は複合体の形成;エナンチオマー特異的試薬を用いる一方のエナンチオマーの選択反応、例えば、酵素的エステル化;又はキラル環境における、例えば、キラル支持体、例えば、キラルリガンドが結合しているシリカでの、若しくはキラル溶媒の存在下でのガス−液体若しくは液体クロマトグラフィーによって分割できる。当然のことながら、上記の分離手順の1種によって所望のエナンチオマーが別の化学物質に変換される場合には、所望のエナンチオマーの形を遊離するさらなるステップが必要である。或いは、光学活性試薬、基質、触媒又は溶媒を用いる不斉合成によって、又は不斉変換によって一方のエナンチオマーをもう一方に変換することによって特定のエナンチオマーを合成してもよい。
【0087】
本発明の化合物のキラル炭素での特定の絶対配置の指定は、化合物の指定のエナンチオマーの形がエナンチオマー過剰(ee)にあること、又は言い換えれば、その他のエナンチオマーを実質的に含まないことを意味すると理解される。例えば、化合物の「R」の形は、化合物の「S」の形を実質的に含まず、従って、「S」の形のエナンチオマー過剰にある。逆に、化合物の「S」の形は、化合物の「R」の形を実質的に含まず、従って、「R」の形のエナンチオマー過剰にある。本明細書において、エナンチオマー過剰とは、50%を超える特定のエナンチオマーの存在である。例えば、エナンチオマー過剰は、約60%以上、例えば、約70%以上、例えば、約80%以上、例えば、約90%以上であり得る。特定の実施態様では、特定の絶対配置が指定される場合には、表される化合物のエナンチオマー過剰は、少なくとも約90%でである。より特定の実施態様では、化合物のエナンチオマー過剰は、少なくとも約95%で、例えば、少なくとも約97.5%であり、例えば、少なくとも99%でエナンチオマー過剰である。
【0088】
本発明の化合物が2以上のキラル炭素を有する場合には、3種以上の光学異性体を有する場合があり、ジアステレオ異性体の形で存在し得る。例えば、2個のキラル炭素がある場合には、本化合物は最大4種の光学異性体と2対のエナンチオマー((S,S)/(R,R)及び(R,S)/(S,R))を有し得る。エナンチオマーのペア(例えば、(S,S)/(R,R))は、互いに鏡像立体異性体である。鏡像でない立体異性体(例えば、(S,S)及び(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体ペアは、当業者に公知の方法、例えば、クロマトグラフィー又は結晶化によって分離でき、各ペア内の個々のエナンチオマーは上記のように分離できる。本発明は、このような化合物の各ジアステレオ異性体及びそれらの混合物を含む。
【0089】
本明細書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上別の意味に明確に示されない限り、単数形及び複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「1種の活性物質」又は「1種の薬理学的に活性な物質」という記載は、単一の活性物質、同様に組合せた2種以上の異なる活性物質を含み、「1種の担体」という記載は、2種以上の担体の混合物並びに単一の担体などを含む。
【0090】
本発明はまた、本明細書に開示されるHDAC阻害剤のプロドラッグを包含するものとする。任意の化合物のプロドラッグは、周知の薬理学的手法を用いて作製できる。
【0091】
本発明は、上記で列挙された化合物に加え、このような化合物の相同体及び類似体の使用も包含するものとする。これに関連して、相同体とは、上記の化合物に対して実質的構造類似性を有する分子であり、類似体とは構造類似性に関わらず実質的生物学的類似性を有する分子である。
【0092】
チロシンキナーゼ阻害剤及びその他の療法
最近の発展により、癌を治療するために用いられる従来の細胞傷害性療法及びホルモン療法に加え、癌の治療のためのさらなる療法が紹介された。例えば、多数の形の遺伝子療法が、前臨床試験又は臨床試験中である。さらに、腫瘍血管新生(血管形成)の阻害に基づくアプローチが現在開発中である。この考え方の目的は、腫瘍を、新たに作り上げられる腫瘍血管系によって提供される栄養及び酸素供給から遮断することである。さらに、癌治療はまた、新生細胞の最終分化の誘導によって試みられている。適した分化剤としては、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、以下の参照文献のうちいずれか1以上に開示される化合物が挙げられる。
【0093】
A)極性化合物(マークス(Marks)ら(1987);フレンド(Friend),C.、シェル(Scher),W.、ホーランド(Holland),J.W.及びサト(Sato),T.(1971)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)68:378〜382頁;タナカ(Tanaka),M.、レビー(Levy),J.、テラダ(Terada),M.、ブレスロウ(Breslow),R.、リフキンド(Rifkind),R.A及びマークス(Marks),P.A.(1975)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)72:1003〜1006頁;ルーベン(Reuben),R.C.、ワイフ(Wife),R.L.、ブレスロウ(Breslow),R.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks),P.A.(1976)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)73:862〜866頁);B)ビタミンDの誘導体及びレチノイン酸(アベ(Abe),E.、ミヤウラ(Miyaura),C.、サカガミ(Sakagami),H.、タケダ(Takeda),M.、コンノ(Konno),K.、ヤマザキ(Yamazaki),T.、ヨシダ(Yoshika),S.及びスダ(Suda),T.(1981)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)78:4990〜4994頁;シュワルツ(Schwartz),E.L.、スヌーディー(Snoddy)、J.R.、クルーター(Kreutter),D.、ラスムッセン(Rasmussen),H.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1983)プロシーディングス・オブ・ジ・アメリカン・アソシエーション・フォー・キャンサー・リサーチ(Proceedings of the American Association for Cancer Research)24:18;タネナガ(Tanenaga),K.、ホズミ(Hozumi),M.及びサカガミ(Sakagami),Y.(1980)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)40:914〜919頁);C)ステロイドホルモン(ロテム(Lotem),J.及びサシェ(Sachs),L.(1975)インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of Cancer)15:731〜740頁);D)増殖因子(サシェ(Sachs),L.(1978)ネイチャー(Nature)(ロンドン(London)274:535、メトカーフ(Metcalf),D.(1985)サイエンス(Science),229:16〜22頁);E)プロテアーゼ(シェル(Scher),W.、シェル(Scher),B.M.及びワックスマン(Waxman),S.(1983)エクスペリメンタル・ヘマトロジー(Experimental Hematology)11:490〜498頁;シェル(Scher),W.、シェル(Scher),B.M.及びワックスマン(Waxman),S.(1982)バイオケミカル・アンド・バイオフィジオロジー・リサーチ・アンド・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysiology Research Communications)109:348〜354頁F)腫瘍プロモーター(ヒューバーマン(Huberman),E.及びキャラハン(Callaham),M.F.(1979)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)76:1293〜1297頁;ロテム(Lottem),J.及びサシェ(Sachs),L.(1979)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)76:5158〜5162頁)及びG)DNA又はRNA合成の阻害剤(シュワルツ(Schwartz),E.L.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1982)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)42:2651〜2655頁、テラダ(Terada),M.、エプナー(Epner),E.、ヌデル(Nudel),U.、サーモン(Salmon),J.、フィバッチ(Fibach),E.、リフキンド(Rifkind),R.A.及びマークス(Marks),P.A.(1978)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Prociidings of the National Academy of Sciences of the United States of America)75:2795〜2799頁;モリン(Morin),M.J.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1984)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)44:2807〜2812頁;シュワルツ(Schwartz),E.L.、ブラウン(Brown),B.J.、ニーレンバーグ(Nierenberg),M.、マーシュ(Marsh),J.C.及びサルトレリ(Sartorelli),A.C.(1983)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)43:2725〜2730頁;スガノ(Sugano),H.、フルサワ(Furusawa),M.、カワグチ(Kawaguchi),T.及びイカワ(Ikawa),Y.(1973)ビブリオテカ・ヘマトロジカ(Bibliotheca Hematologica)39:943〜954頁;エバート(Ebert),P.S.、ウォーズ(Wars),I.及びブエル(Buell),D.N.(1976)キャンサー・リサーチ(Cancer Research)36:1809〜1813頁;ハヤシ(Hayashi),M.、オカベ(Okabe),J.及びホズミ(Hozumi),M.(1979)ガン(Gann)70:235〜238頁)。
【0094】
本発明とともに使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤としては、1種以上のチロシンキナーゼ(例えば、受容体チロシンキナーゼ)の活性又はレベルを低下させるすべての天然、組換え及び合成薬剤、例えば、EGFR(ErbB−1;HER−1)、HER−2/neu(ErbB−2)、HER−3(ErbB−3)、HER−4(ErbB−4)、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)、エフリン受容体(EPHR)、繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)、インスリン受容体(INSR)、白血球チロシンキナーゼ(Ltk/Alk)、筋肉特異的キナーゼ(Musk)、トランスフォーミング増殖因子受容体(例えば、TGFβ−RI及びTGFβ−RII)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)及び血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)が挙げられる。阻害剤としてはまた、受容体チロシンキナーゼの内因性又は改変リガンド、例えば、上皮成長因子(例えば、EGF)、神経成長因子(例えば、NGFα、NGFβ、NGFγ)、ヘレグリン(例えば、HRGα、HRGβ)、トランスフォーミング増殖因子(例えば、TGFα、TGFβ)、エピレグリン(例えば、EP)、アンフィレグリン(例えば、AR)、ベータセルリン(例えば、BTC)、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(例えば、HB−EGF)、ニューレグリン(例えば、グリア増殖因子とも呼ばれる、NRG−1、NRG−2、NRG−4、NRG−4)、アセチルコリン受容体誘導性活性(ARIA)及び感覚運動ニューロン由来増殖因子(SMDGF)も挙げられる。
【0095】
その他の阻害剤として、DMPQ(5,7−ジメトキシ−3−(4−ピリジニル)キノリンジヒドロクロリド)、アミノゲニステイン(4’−アミノ−6−ヒドロキシフラボン)、アーブスタチン類似体(2,5−ジヒドロキシメチルシンナメート、メチル2,5−ジヒドロキシシンナメート)、イマチニブ(グリベック(Gleevec)(商標)、グリベック(Glivec)(商標)、STI−571、4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルホンホネート)、LFM−A13(2−シアノ−N−(2,5−ジブロモフェニル)−3−ヒドロキシ−2−ブテンアミド)、PD153035(ZM252868;4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−6,7−ジメトキシキナゾリンヒドロクロリド)、ピセアタノール(Piceatannol)(トランス−3,3’,4,5’−テトラヒドロキシスチルベン、4−[(1E)−2−(3,5−ジヒドロキシフェニル)エテニル]−1,2−ベンゼンジオール)、PP1(4−アミノ−5−(4−メチルフェニル)−7−(t−ブチル)ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン)、PP2(4−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−7−(t−ブチル)ピラゾロ[3,4,d]ピリミジン)、ペルツズマブ(Pertuzumab)(オムニタルグ(Omnitarg)(商標)、rhuMAb2C4)、SU4312(3−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン)、SU6656(2,3−ジヒドロ−N,N−ジメチル−2−オキソ−3−[(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インドール−2−イル)メチレン]−1H−インドール−5−スルホンアミド)、ベバシズマブ(アバスチン(Avastin)(登録商標);rhuMAb VEGF)、セマキサニブ(Semaxanib)(SU5416)、SU6668(Sugen,Inc.)及びZD6126(Angiogene Pharmaceuticals)が挙げられる。EGFRの阻害剤、例えば、セツキシマブ(エルビタックス(Erbitux);IMC−C225;MoAb C225)及びゲフィチニブ(イレッサ(IRESSA)(商標);ZD1839;ZD1839;4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン)、ZD6474(AZD6474)及びEMD−72000(マツズマブ(Matuzumab))、パニツマブ(Panitumab)(ABX−EGF;MoAb ABX−EGF)、ICR−62(MoAb ICR−62)、CI−1033(PD183805;N−[−4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]−6−キナゾリニル]−2−プロペンアミド)、ラパチニブ(Lapatinib)(GW572016)、AEE788(ピロロ−ピリミジン;Novartis)、EKB−569(Wyeth−Ayerst)及びEXEL7647/EXEL09999(EXELIS)も含まれる。また、エルロチニブ及び誘導体、例えば、タルセバ(Tarceva)(登録商標);NSC718781、CP−358774、OSI−774、R1415;以下の構造によって表されるN−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物(例えば、メタンスルホネート塩、一塩酸塩)も含まれる
【0096】
【化6】

【0097】
肺癌の治療に有用な薬剤(例えば、NSCLC)としては、上記の阻害剤、並びにペメトレキセド(アリムタ(登録商標))、ボルテゾミブ(ベルケード(登録商標))、ティピファルニブ(Tipifarnib)、ロナファルニブ(Lonafarnib)、BMS214662、プリノマスタット(Prinomastat)、BMS275291、ネオバスタット(Neovastat)、ISIS3521(アフィニタック(Affinitak)(商標);LY900003)、ISIS5132、オブリメルセン(Oblimersen)(ゲナセンス(Genasense)(登録商標);G3139)及びカルボキシアミドトリアゾール(CAI)が挙げられる(例えば、イソベ(Isobe) Tら、セミナース・イン・オンコロジー(Seminarse in Oncology)32:315〜328頁、2005参照のこと)。
【0098】
例えば、補助療法のために、その他の薬剤も本発明とともに用いるのに有用であり得る。このような補助薬は、抗癌剤の有効性を増強するために、又は抗癌剤と関連している状態、例えば、血球数の低下、好中球減少症、貧血、血小板減少症、高カルシウム血症、粘膜炎、挫傷形成、出血、毒性(例えば、ロイコボリン)、疲労、疼痛、悪心及び嘔吐を予防若しくは治療するために使用できる。薬剤としては、赤血球産生を刺激するための、エポエチンアルファ(例えば、プロクリット(登録商標)、エポジェン(登録商標)、好中球産生を刺激するための、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子;フィルグラスチム、例えば、ニューポジェン(Neupogen)(登録商標))、マクロファージを含むいくつかの白血球の産生を刺激するための、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)及び血小板の産生を刺激するための、IL−11(インターロイキン−11、例えば、ニューメガ(Neumega)(登録商標))が挙げられる。
【0099】
ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウム、Roxane Laboratories,Inc.Columbus、オハイオ州)は、葉酸アンタゴニストとして作用する薬物に対する解毒薬として有用である。ロイコボリンカルシウムは、正常に機能しないメトトレキサート排出及び葉酸アンタゴニストの不注意な過剰投与の毒性を減少させ、それらの効果を相殺するために用いられる。投与後、ロイコボリンは吸収され、減少した葉酸の全身プールに入る。ロイコボリンの投与後に見られる血漿及び血清葉酸活性の増大は、主に、5−メチルテトラヒドロ葉酸塩による。ロイコボリンは、葉酸塩を用いる反応に参加するために酵素ジヒドロ葉酸還元酵素による還元を必要としない。ロイコボリンカルシウムは、以下の構造によって表される、N−[4−[[(2−アミノ−5−ホルミル−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4−オキソ−6−プテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸のカルシウム塩である。
【0100】
【化7】

【0101】
アルキル化剤
アルキル化剤の例として、次に示すものだけには限らないが、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(alkyl alkone sulfonate)(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン(Altretamine)、ダカルバジン及びプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチン(Carboplastin)及びシスプラチン)が挙げられる。これらの化合物は、リン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、カルボキシル基及びイミダゾール基と反応する。
【0102】
シスプラチン(例えば、プラチノール(Platinol)(登録商標)−AQ、Bristol−Myers Squibb Co.、Princeton、ニュージャージー州)は、2個の塩素原子によって囲まれた白金の中心原子と、シス位の2個のアンモニア分子とを含む重金属錯体である。シスプラチンの抗癌機構は、明確に理解されていないが、DNA付加物の形成によって作用すると一般的に認められている。シスプラチンは、核DNAと結合し、正常な転写及び/又はDNA複製機構に干渉すると考えられている。シスプラチン−DNA付加物が細胞機構によって効果的に処理されない場合は、これは細胞死をもたらす。細胞は、アポトーシスによって死滅する場合も、壊死によって死滅する場合もあり、両機構が、腫瘍細胞集団内で機能し得る。シスプラチンの化学名は、シス−ジアンミンジクロロ白金(例えば、シス−ジアンミンジクロロ白金(II)であり、以下の構造によって表される:
【0103】
【化8】

【0104】
シクロホスファミド(例えば、サイトキサン(Cytoxan)(登録商標)、Baxter Healthcare Corp.、Deerfield、イリノイ州)は、ナイトロジェンマスタードと化学的に関連している。シクロホスファミドは、混合機能ミクロソーム酸化酵素系によって活性アルキル化代謝産物に変換される。これらの代謝産物は、迅速に増殖する悪性細胞の増殖に干渉し得る。その作用機序は、腫瘍細胞DNAの架橋を含むと考えられている。サイトキサン(Cytoxan)(登録商標)として利用可能なシクロホスファミド一水和物の化学名は、2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド一水和物であり、以下の構造によって表される:
【0105】
【化9】

【0106】
オキサリプラチン(例えば、エロキサチン(Eloxatin)(商標)、Sanofi−Synthelabo,Inc.、New York、ニューヨーク州)は、白金原子が1,2−ジアミノシクロヘキサン(DACH)と、及び脱離基としてシュウ酸塩リガンドと錯体を形成している、有機白金錯体である。オキサリプラチンは、生理的条件の溶液中で、鎖間及び鎖内白金−DNA架橋を形成する活性な誘導体へと非酵素的変換を受ける。架橋は、2つの隣接するグアニン(GG)、隣接するアデニン−グアニン(AG)及び介在するヌクレオチドによって分離されているグアニン(GNG)のN7位間で形成される。これらの架橋は、癌及び非癌細胞においてDNA複製及び転写を阻害する。オキサリプラチンの化学名は、シス−[(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジアミン−N,N’][オキサラト(2−)−O,O’]白金であり、以下の構造によって表される:
【0107】
【化10】

【0108】
生理学的条件下では、これらの薬剤はイオン化し、正に帯電したイオンを生じ、これが感受性核酸及びタンパク質に付着し、細胞周期停止及び/又は細胞死をもたらす。アルキル化剤は、細胞周期特定の相と無関係にその活性を発揮するので、細胞周期相非特異的薬剤である。ナイトロジェンマスタード及びアルキルアルコンスルホネート(alkyl alkone sulfonate)は、G1又はM相にある細胞に対して最も有効である。ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード及びアジリジンは、G1及びS相からM相への進行を阻害する。チャブナー(Chabner)及びコリンズ(Collins)編(1990)「キャンサー・ケモセラピー:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Cancer Chemotherapy:Princeples and practice)」、Philadelphia: JB Lippincott。
【0109】
アルキル化剤は、広範な新生物性疾患に対して活性であり、白血病及びリンパ腫並びに固形腫瘍の治療において相当な活性を有する。臨床上、この群の薬物は、急性及び慢性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、原発性脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、子宮頸癌、頭頸部癌及び悪性黒色腫の治療において日常的に用いられている。
【0110】
抗生物質製剤
抗生物質(例えば、細胞傷害性抗生物質)は、DNA又はRNA合成を直接阻害することによって作用し、細胞周期を通して有効である。抗生物質製剤の例として、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びアントラセネジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシン(Plicatomycin)が挙げられる。これらの抗生物質製剤は、種々の細胞成分を標的とすることによって細胞増殖を干渉する。例えば、アントラサイクリンは、一般に、転写上活性なDNAの領域においてDNAトポイソメラーゼIIの作用を干渉し、DNA鎖切断をもたらすと考えられている。
【0111】
イダルビシン(例えば、イダマイシンPFS(登録商標)、Pharmacia & Upjohn Co.、Kalamazoo、ミシガン州)は、核酸合成に対して阻害効果を有し、酵素トポイソメラーゼIIと相互作用する、ダウノルビシンのDNAインターカレーターアナログである。塩酸イダルビシンの化学名は、5,12−ナフタセンジオン,9−アセチル−7−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシα−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,9,11−トリヒドロキシヒドロクロリド,(7S−シス)であり、以下の構造によって表される:
【0112】
【化11】

【0113】
ドキソルビシン(例えば、アドリアマイシン(登録商標),Ben Venue Laboratories,Inc.,Bedford,OH)は、ストレプトマイセス・ペウセティウス・バリアント・カエシウス(Streptomyces peucetius var. caesius)の培養物から単離された細胞傷害性アントラサイクリン系抗生物質である。ドキソルビシンは、おそらくは、その平面アントラサイクリン核が、DNA二重らせんに特異的にインターカレートすることによって核酸と結合する。ドキソルビシンは、環原子7でグリコシド結合によってアミノ糖、ダウノサミンと結合しているナフタセンキノン核からなる。塩酸ドキソルビシンの化学名は、(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−L−リキソ−ヘキソピラノシル)−オキシ]−8−グリコロイル−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオンヒドロクロリドであり、以下の構造によって表される:
【0114】
【化12】

【0115】
ブレオマイシンは、一般に、鉄をキレートし、活性化錯体を形成し、次いで、これがDNAの塩基と結合し、鎖の切断及び細胞死を引き起こすと考えられている。
【0116】
抗生物質製剤は、さまざまな新生物性疾患、例えば、乳癌、肺癌、胃癌及び甲状腺癌、リンパ腫、骨髄性白血病、骨髄腫及び肉腫に対する治療薬として用いられている。
【0117】
代謝拮抗剤
代謝拮抗剤(すなわち、代謝拮抗剤)は、癌細胞の生理及び増殖に不可欠な代謝プロセスを干渉する薬物の群である。活発に増殖している癌細胞は、多量の核酸、タンパク質、脂質及びその他の不可欠な細胞成分の連続合成を必要とする。
【0118】
多数の代謝拮抗剤は、プリン又はピリミジンヌクレオシドの合成を阻害するか、又はDNA複製の酵素を阻害する。代謝拮抗剤の中にはまた、リボヌクレオシド及びRNAの合成及び/又はアミノ酸代謝及びタンパク質合成も同様に干渉するものもある。代謝拮抗剤は、不可欠の細胞成分の合成を干渉することによって、癌細胞の増殖を遅延又は停止することができる。細胞分裂抑制薬はこの群に含まれる。代謝拮抗剤の例として、次のものには限らないが、フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン及びペメトレキセドが挙げられる。
【0119】

ゲムシタビン(例えば、ジェムザール(Gemzar)(登録商標)HCl、Eli Lilly and Co.、Indianapolis、インディアナ州)は、抗腫瘍活性を示すヌクレオシド類似体である。ゲムシタビンは、細胞相特異性を示し、主に、DNA合成中(S相)の細胞を死滅させ、また、G1/S相境界を通る細胞の進行を妨げる。ゲムシタビンは、ヌクレオシドキナーゼによって、活性ジホスフェート(dFdCDP)及びトリホスフェート(dFdCTP)ヌクレオシドに細胞内で代謝される。ゲムシタビンの細胞傷害性効果は、ヌクレオシドの二リン酸塩及び三リン酸塩の2種の作用の組合せに起因し、それが、DNA合成の阻害をもたらす。ゲムシタビンは、ヌクレオソーム間DNA断片化、プログラム細胞死の特徴の1つ、を誘導する。塩酸ゲムシタビンの化学名は2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジンモノヒドロクロリド(β−異性体)であり、以下の構造によって表される:
【0120】
【化13】

【0121】
ボルテゾミブ(例えば、ベルケード(登録商標)、Millennium Pharmaceuticals,Inc.、Cambridge、マサチューセッツ州)は、修飾されたジペプチジルボロン酸である。ボルテゾミブは、哺乳類細胞における26Sプロテアソームの可逆性阻害剤である。26Sプロテアソームの阻害により、標的とされるタンパク質分解を妨げ、これが細胞内の複数のシグナル伝達カスケードに影響を及ぼし得る。この正常なホメオスタシス機構の混乱が細胞死をもたらし得る。実験により、ボルテゾミブはin vitroで細胞傷害性であり、in vivoで細胞増殖の遅延を引き起こすことが実証された。ボルテゾミブ、単量体のボロン酸の化学名は、[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸であり、以下の構造によって表される:
【0122】
【化14】

【0123】
ペメトレキセド(例えば、アルチマ(Altima)(登録商標)、Eli Lilly and Co.、Indianapolis、インディアナ州)は、細胞複製に必須である葉酸依存性代謝プロセスを混乱させることによってその作用を発揮する、葉酸代謝拮抗剤である。In vitro研究により、ペメトレキセドは、チミジル酸合成酵素(TS)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ(GARFT)、すべてのチミジン及びプリンヌクレオチドのde novo生合成に関与している葉酸依存性酵素、を阻害するということがわかった。ペメトレキセド二ナトリウム七水和物は、化学名N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル]L−グルタミン酸 −、二ナトリウム塩、七水和物を有し、以下の構造によって表される:
【0124】
【化15】

【0125】
アザシチジン(例えば、ビダザ(Vidaza)(商標)、Pharmion Corp.、Boulder、コロラド州)は、DNAの過剰メチル化及び骨髄における異常な造血細胞に対する直接的な細胞毒性を引き起こす、シチジンのピリミジンヌクレオシド類似体である。過剰メチル化は、正常な機能を、DNA合成の主要な抑制を引き起こすことなく、分化及び増殖に関与している遺伝子を回復させ得る。アザシチジンの細胞傷害性効果は迅速に分裂している細胞、例えば、もはや正常な増殖制御機構に感受性ではない細胞の死を引き起こす。アザシチジンの化学名は、4−アミノ−1β−D−リボフラノシル−s−トリアジン−2(1H)−オンであり、以下の構造によって表される:
【0126】
【化16】

【0127】
フラボピリドール(例えば、L86−8275;Alvocidib;Aventis Pharmaceuticals,Inc.、Bridgewater、ニュージャージー州)は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の阻害剤として作用する合成フラボンである。CDKの活性化には細胞周期の種々の相の間の細胞の移行、例えばG1からS及びG2からMが必要である。フラボピリドール(フラボピリドール)は、in vitroで、G1−S及びG2−M段階の細胞周期進行を遮断し、アポトーシスを誘導することがわかっている。アルボシジブ(Alvocidib)に見られるフラボピリドール(フラボピリドール)化学式は、(−)−2−(2−クロロフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−8−[(3R,4S)−3−ヒドロキシ−1−メチル−4−ピペリジニル]−4H−1−ベンゾピラン−4−オンヒドロクロリドであり、以下の構造によって表される:
【0128】
【化17】

【0129】
フルオロウラシル(例えば、フルオロウラシル注射、Gensia Sicor Pharmaceuticals,Inc.、Irvine、カリフォルニア州;アドルシル(Adrucil)(登録商標)、SP Pharmaceuticals、Albuquerque、ニューメキシコ州)は、フッ化ピリミジンである。同化経路におけるフルオロウラシルの代謝は、デオキシウリジル酸のチミジル酸へのメチル化反応を遮断し得る。このように、フルオロウラシルは、DNAの合成を干渉することができ、より少ない程度ではあるが、リボ核酸(RNA)の形成を阻害する。DNA及びRNAは細胞分裂及び増殖にとって必須であるので、フルオロウラシルの効果はチミン欠乏症を作り出し、これが細胞の増殖と死の不均衡を誘発する。DNA及びRNA阻害の効果は、より迅速に増殖し、より急速にフルオロウラシルを取り込む細胞で最も顕著である。フルオロウラシルの化学式は、5−フルオロ−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオンであり、以下の構造によって表される:
【0130】
【化18】

【0131】
代謝拮抗剤は、いくつかのよく見られる形の癌、例えば、結腸癌、直腸癌、乳癌、肝臓癌、胃癌及び膵臓癌、悪性黒色腫、急性及び慢性白血病並びに有毛細胞白血病を治療するために広く用いられている。
【0132】
ホルモン剤
ホルモン剤は、その標的器官の増殖及び発達調節する薬物の群である。ほとんどのホルモン剤は、性ステロイド及びその誘導体及びその類似体、例えば、エストロゲン、プロゲストゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン及びプロゲスチンである。これらのホルモン剤は、不可欠な遺伝子の受容体発現及び転写をダウンレギュレートする性ステロイドの受容体のアンタゴニストとして作用する。このようなホルモン剤の例として、合成エストロゲン(例えば、ジエチルスチベストロール)、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール(Fluoxymesterol)及びラロキシフェン)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、ニルタミド及びフルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール及びテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール及びミフェプリストンがある。
【0133】
プレドニゾン(例えば、デルタゾン(Deltasone)(登録商標)、Pharmacia & Upjohn Co.、Kalamazoo、ミシガン州)は、副腎皮質ステロイド及び消化管に容易に吸収される合成グルココルチコイドである。グルココルチコイドは、多様な刺激に対する身体の免疫応答を調節する。合成グルココルチコイドは、その抗炎症効果のために、並びに白血病及びリンパ腫、並びに血小板減少症、赤芽球減少症及び貧血などのその他の血液疾患の管理のためにのために、主に用いられている。プレドニゾンの化学名は、プレグナ−1,4−ジエン−3,11,20−トリオン,17,21−ジヒドロキシ−(また、1,4−プレグナジエン−17α,21−ジオール−3,11,20−トリオン;1−コルチゾン;17α,21−ジヒドロキシ−1,4−プレグナジエン−3,11,20−トリオン及びデヒドロコルチゾン)であり、以下の構造によって表される:
【0134】
【化19】

【0135】
ホルモン剤は、乳癌、前立腺癌、黒色腫及び髄膜腫を治療するために用いられる。ホルモンの主要な作用は、ステロイド受容体によって媒介されるので、60%受容体陽性乳癌が一次(ファースト・ラインの)ホルモン療法に反応し、10%未満の受容体陰性腫瘍が反応した。ホルモン剤に伴われる主な副作用は発赤である。高頻度の症状として、骨痛の急激な増大、皮膚病変の辺りの紅斑及び高カルシウム血症の誘発がある。
【0136】
具体的に言えば、プロゲストゲンは、子宮内膜癌を治療するために用いられるが、これは、これらの癌が、プロゲストゲンと対立しない高レベルのエストロゲンに曝露されている女性において生じるためである。
【0137】
抗アンドロゲンは、ホルモン依存性である前立腺癌の治療のために主に用いられる。それらはテストステロンのレベルを低下させ、それによって腫瘍の増殖を阻害するために用いられる。
【0138】
乳癌のホルモン治療は、腫瘍性乳腺細胞においてエストロゲン受容体のエストロゲン依存性活性化のレベルを低下させることを含む。抗エストロゲンは、エストロゲン受容体と結合し、活性化補助因子の補充を妨げ、ひいては、エストロゲンシグナルを阻害することによって作用する。
【0139】
LHRH類似体は、テストステロンのレベルを低下させ、そのようにして腫瘍の増殖を低減させるために前立腺癌の治療において用いられる。
【0140】
アロマターゼ阻害剤は、ホルモン合成に必要とされる酵素を阻害することによって作用する。閉経後の女性では、エストロゲンの主な供給源は、アロマターゼによるアンドロステンジオンの変換によるものである。
【0141】
植物由来製剤
植物由来製剤とは、植物に由来するか、又は薬剤の分子構造に基づいて改変されている薬物の群である。それらは、細胞分裂に必須である細胞成分の合成を妨げることによって細胞複製を阻害する。
【0142】
植物由来製剤の例として、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン(Vinzolidine)及びビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP−16)及びテニポシド(VM−26))及びタキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)が挙げられる。これらの植物由来製剤は、通常、チューブリンと結合し、有糸分裂を阻害する、細胞分裂抑制薬として作用する。ポドフィロトキシン、例えば、エトポシドは、トポイソメラーゼIIと相互作用することによってDNA合成を干渉し、DNA鎖切断をもたらすと考えられている。
【0143】
ビンクリスチン(例えば、硫酸ビンクリスチン、Gensia Sicor Pharmaceuticals、Irvine、カリフォルニア州)は、よく見られる顕花薬草、ツルニチソウ植物体(ビンカ・ロゼア・リン(Vinca rosea Linn))から得られるアルカロイドである。ビンクリスチンは、最初、ロイロクリスチン(Leurocristine)として同定され、LCR及びVCRとも呼ばれてきた。ビンクリスチンの作用機序は、中期段階での分裂細胞の停止をもたらす紡錘体における微小管形成の阻害と関連している。硫酸ビンクリスチンは、ビンカロイコブラスチン、22−オキソ−,硫酸塩(1:1)(塩)であり、以下の構造によって表される:
【0144】
【化20】

【0145】
エトポシド(例えば、ベプシド(VePesid)(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.、Princeton、ニュージャージー州、VP−16としてもよく知られている)は、ポドフィロトキシンの半合成誘導体である。エトポシドは、哺乳類細胞において中期停止及びG2停止を引き起こすことがわかっている。エトポシドは、高濃度では有糸分裂に入る細胞の溶解を引き起こす。エトポシドは、低濃度では、細胞が前期(prophase)に入るのを阻害する。エトポシドの優勢な高分子効果は、DNAトポイソメラーゼIIとの相互作用又はフリーラジカルの形成によるDNA鎖切断を誘導することであると思われる。リン酸エトポシド(例えば、エトポホス(Etopophos)(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.、Princeton、ニュージャージー州)は、エトポシドの水溶性エステルである。リン酸エトポシドの化学名は、4’−デメチルエピポドフィロトキシン9−[4,6−O−(R)−エチリデン−b−D−グルコピラノシド],4’−(リン酸二水素)であり、以下の構造によって表される:
【0146】
【化21】

【0147】
エトポシドの化学名は、4’−デメチルエピポドフィロトキシン9−[4,6−0−(R)−エチリデン−b−D−グルコピラノシド]であり、以下の構造によって表される:
【0148】
【化22】

【0149】
植物由来製剤は、多数の形の癌を治療するために用いられる。例えば、ビンクリスチンは、白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫並びに小児腫瘍神経芽細胞腫、横紋筋肉腫並びにウィルムス腫瘍の治療において用いられる。ビンブラスチンは、リンパ腫、精巣癌、腎細胞癌、菌状息肉腫及びカポジ肉腫に対して用いられる。ドセタキセル(ドキセタキセルとしても当該技術分野で公知である)は、進行乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)及び卵巣癌に対して望ましい活性を示した。
【0150】
エトポシドは、広範な新生物に対して活性であり、その中では、小細胞肺癌、精巣癌及びNSCLCが最も反応がよい。
【0151】
生物製剤
生物製剤は、単独で用いられる場合又は化学療法及び/又は放射線療法と組合せて用いられる場合に、癌/腫瘍退縮を導く生体分子の群である。生物製剤の例として、免疫調節タンパク質、例えば、サイトカイン、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、腫瘍サプレッサー遺伝子及び癌ワクチンが挙げられる。
【0152】
サイトカインは、強い免疫調節活性を有する。いくつかのサイトカイン、例えば、インターロイキン−2(IL−2、Aldesleukin)及びインターフェロン−α(IFN−α)は、抗腫瘍活性を実証し、転移性腎細胞癌及び転移性悪性黒色腫を患う患者の治療のために承認されてきた。IL−2は、T細胞媒介性免疫応答に中心的なものであるT細胞増殖因子である。一部の患者に対するIL−2の選択的抗腫瘍効果は、自己と非自己の間を識別する細胞媒介性免疫応答の結果であると考えられている。
【0153】
インターフェロン−αは、活性の重複する、23種を超える関連サブタイプを含む。IFN−αは、多数の固形悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍に対する実証された活性を有し、後者は特に感応性であると思われる。
【0154】
インターフェロンの例として、インターフェロン−α、インターフェロン−β(繊維芽細胞インターフェロン)及びインターフェロン−γ(リンパ球インターフェロン)が挙げられる。その他のサイトカインの例としては、エリスロポエチン(エポエチン(Epoietin)−α;EPO)、顆粒球−CSF(G−CSF;Filgrastin)及び顆粒球、マクロファージ−CSF(GM−CSF;Sargramostim)が挙げられる。サイトカイン以外のその他の免疫調節物質として、カルメット・ゲラン菌、レバミソール及びオクトレオチド、天然に存在するホルモンソマトスタチンの効果を模倣する長時間作用型オクタペプチドが挙げられる。
【0155】
さらに、抗癌治療は、抗体を用いる免疫療法による治療及び腫瘍ワクチン接種アプローチにおいて用いられる試薬を含み得る。この療法の種類における主要な薬物は、単独の抗体又は癌細胞に対する毒素又は化学療法薬/細胞傷害性物質を保持している抗体である。腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体は、腫瘍によって発現された抗原、特に、腫瘍特異的抗原に対して誘発された抗体である。例えば、モノクローナル抗体ヘルセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)は、一部の乳癌(例えば、転移性乳癌)において過剰発現されるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に対するものである。HER2タンパク質の過剰発現は、臨床では、より侵攻性の疾患及び不良な予後と関連している。ヘルセプチン(登録商標)は、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する、転移性乳癌を患う患者の治療のための単一の薬剤として用いられる。
【0156】
腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のもう1つの例として、リンパ腫細胞上のCD20に対するものであるリツキサン(RITUXAN)(登録商標)(リツキシマブ)があり、それは、正常及び悪性CD20+プレB及び成熟B細胞を選択的に枯渇させる。
【0157】
リツキサン(RITUXAN)は、再発又は難治性低悪性度又は濾胞性、CD20+、B細胞非ホジキンリンパ腫を患う患者の治療のために単一の薬剤として用いられる。使用できる腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体のさらなる例として、マイロターグ(MYELOTARG)(登録商標)(Gemtuzumab Ozogamicin)及びキャンパス(CAMPATH)(登録商標)(Alemtuzumab)がある。
【0158】
エンドスタチンは、血管形成を標的として用いるプラスミノゲンの切断産物である。
【0159】
腫瘍サプレッサー遺伝子は、細胞増殖及び分裂周期を阻害し、ひいては、新生物の発生を防ぐために機能する遺伝子である。腫瘍サプレッサー遺伝子中の突然変異は、細胞に、阻害シグナルのネットワークの1種以上の成分を無視させ、細胞周期チェックポイントを克服し、高率の細胞増殖が制御された癌をもたらす。腫瘍サプレッサー遺伝子の例として、DPC4、NF−1、NF−2、RB、p53、WT1、BRCA1及びBRCA2が挙げられる。
【0160】
DPC4は、膵臓癌に関与しており、細胞分裂を阻害する細胞質パスウェイに加わっている。NF−1は、Ras、細胞質抑制タンパク質、を阻害するタンパク質をコードしている。NF−1は、神経線維腫及び神経系の褐色細胞腫及び骨髄性白血病に関与している。NF−2は、髄膜腫、シュワン腫及び神経系の上衣腫に関与している核タンパク質をコードしている。RBは、pRBタンパク質、細胞周期の主要な阻害剤である核タンパク質をコードしている。RBは、網膜芽細胞腫並びに骨癌、膀胱癌、小細胞肺癌及び乳癌に関与している。P53は、細胞分裂を調節し、アポトーシスを誘導できるp53タンパク質をコードしている。p53の突然変異及び/又は不活性化は、広範な癌において見られる。WTIは、腎臓のウィルムス腫瘍に関与している。BRCA1は、乳癌及び卵巣癌に関与しており、BRCA2は乳癌に関与している。腫瘍サプレッサー遺伝子は腫瘍細胞に転移することができ、そこでその腫瘍抑制機能を発揮する。
【0161】
癌ワクチンとは、腫瘍に対する身体の特定の免疫応答を誘発する薬剤の群である。研究及び開発及び臨床試験中のほとんどの癌ワクチンは、腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、腫瘍細胞上に存在し、正常細胞上には相対的に存在しないか、又は減少している構造物(すなわち、タンパク質、酵素又は炭水化物)である。TAAは、腫瘍細胞に対してかなり独特であるために、認識され、それらの破壊を引き起こすための免疫系の標的を提供する。TAAの例としては、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異的抗原(PSA)、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(結腸癌及びその他の腺癌、例えば、乳癌、肺癌、胃癌及び膵臓癌によって産生される)、黒色腫関連抗原(MART−1、gap100、MAGE1,3チロシナーゼ)、パピローマウイルスE6及びE7断片、自己腫瘍細胞及び同種異系腫瘍細胞の全細胞又は一部/溶解物が挙げられる。
【0162】
本発明とともに使用するためのレチノイド又はレチノイド剤として、ビタミンAのすべての天然、組換え及び合成誘導体又はミメティクス、例えば、パルミチン酸レチニル、レチノイル−β−グルクロニド(ビタミンA1β−グルクロニド)、レチニルホスフェート(ビタミンA1ホスフェート)、レチニルエステル、4−オキソレチノール、4−オキソレチンアルデヒド、3−デヒドロレチノール(ビタミンA2)、11−シス−レチナール(11−シス−レチンアルデヒド、11−シス又はネオbビタミンA1アルデヒド)、5,6−エポキシレチノール(5,6−エポキシビタミンA1アルコール)、アンヒドロレチノール(アンヒドロビタミンA1)及び4−ケトレチノール(4−ケト−ビタミンA1アルコール)、オールトランスレチノイン酸(ATRA;トレチノイン;ビタミンA酸;3,7−ジメチル−9−(2,6,6,−トリメチル−1−シクロヘネン(cyclohenen)−1−イル)−2,4,6,8−ノナテトラエン酸 [CAS番号302−79−4])、オールトランスレチノイン酸の脂質製剤(例えば、ATRA−IV)、9−シスレチノイン酸(9−シス−RA;Alitretinoin;Panretin(c);LGD1057)、(e)−4−[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]−安息香酸、3−メチル−(E)−4−[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]−安息香酸、フェンレチニド(N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド;4−HPR)、エトレチナート(2,4,6,8−ノナテトラエン酸)、アシトレチン(Ro10−1670)、タザロテン(エチル6−[2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)−エチニル]ニコチナート)、トコレチナート(9−シス−トレチノイントコフェリル)、アダパレン(6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸)、モトレチニド(トリメチルメトキシフェニル−N−エチルレチナミド)及びレチンアルデヒドが挙げられる。
【0163】
また、レチノイドとして、レチノイド関連分子、例えば、CD437(6−[3−(1−アダマンチル)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ナフタレンカルボン酸及びAHPNとも呼ばれる)、CD2325、ST1926([E−3−(4’−ヒドロキシ−3’−アダマンチルビフェニル−4−イル)アクリル酸)、ST1878(メチル2−[3−[2−[3−(2−メトキシ−1,1−ジメチル−2−オキソエトキシ)フェノキシ]エトキシ]フェノキシ]イソブチラート)、ST2307、ST1898、ST2306、ST2474、MM11453、MM002(3−Cl−AHPC)、MX2870−1、MX3350−1、MX84及びMX90−1(ガラチーニ(Garattini)ら、2004、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Current Pharmaceutical Design)10:433〜448頁;ガラチーニ(Garattini)及びテラオ(Terao)、2004、ジャーナル・オブ・ケモセラピー(Journal of Chemotherapy)16:70〜73頁)も含まれる。本発明とともに使用するために、1種以上のRXRと結合するレチノイド剤も含まれる。また、1種以上のRXRと結合するが、1種以上のRARと結合しないレチノイド剤(すなわち、RXRと選択的結合をする;レキシノイド)、例えば、ドコサヘキサン酸(DHA)、フィタン酸、メトプレン酸、LG100268(LG268)、LG100324、LGD1057、SR11203、SR11217、SR11234、SR11236、SR11246、AGN194204(例えば、シメオネ(Simeone)及びタリ(Tari)、2004、セル・アンド・モレキュラー・ライフ・サイエンス(Cell of Molecular Life Science)61:1475〜1484頁;リガス(Rigas)及びドラグネブ(Dragnev)、2005、ジ・オンコロジスト(The Oncologist)10:22〜33頁;アフヤ(Ahuja)ら、2001、モレキュラー・ファルマコロジー(Molecular Pharmacology)59:765〜773頁;ゴーグン(Gorgun)及びフォス(Foss)、2002、ブラッド(Blood)、100:1399〜1403頁;ビスコフ(Bischoff)ら、1999、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティチュート(Journal of the National Cancer Institute)91:2118〜2123頁;サン(Sun)ら、1999、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clinical Cancer Research)5:431〜437頁;クロウ(Crow)及びチャンドララトナ(Chandraratna)、2004、ブリースト・キャンサー・リサーチ(ブリースト・キャンサー・リサーチ(Breast Cancer Research )6:R546〜R555頁)も含まれる。さらに、9−シス−RAの誘導体が含まれる。3−メチルTTNEB及び関連薬剤、例えば、タルグレチン(Targretin)(登録商標);ベキサロテン;LGD1069;4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)エテニル]安息香酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物が特に含まれる。
HDAC阻害剤、例えば、SAHAと組合せたこれらのアプローチのすべての使用が本発明の範囲内にある。
【0164】
その他の薬剤
例えば、補助療法として、本発明とともに使用するのに、その他の薬剤も有用であり得る。このような補助薬は、抗癌剤の有効性を増強するために、又は抗癌剤と関連している状態、例えば、血球数の低下、過敏症反応、好中球減少症、貧血、血小板減少症、高カルシウム血症、粘膜炎、挫傷形成、出血、毒性(例えば、ロイコボリン)、疲労、疼痛、悪心及び嘔吐を予防若しくは治療するために使用できる。制吐剤(例えば、5−HT受容体遮断薬又はベンゾジアゼピン)、抗炎症薬(例えば、副腎皮質ステロイド又は抗ヒスタミン剤)、栄養補助食品(例えば、葉酸)、ビタミン(例えば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミB、ビタミンB12)及び胃酸抑制剤(例えば、H受容体遮断薬)は、癌療法に対する患者の耐容性を高めるために有用であり得る。H受容体遮断薬の例として、ラニチジン、ファモチジン及びシメチジンが挙げられる。抗ヒスタミン剤の例として、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、クロロフェニラミン、クロルフェナミン、マレイン酸ジメチンデン及びプロメタジンが挙げられる。ステロイドの例として、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン及びプレドニゾンが挙げられる。その他の薬剤として、増殖因子、例えば、赤血球産生を刺激するための、エポエチンアルファ(例えば、プロクリット(登録商標)、エポジェン(登録商標));好中球産生を刺激するための、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子;フィルグラスチム、例えば、ニューポジェン(Neupogen)(登録商標));マクロファージを含むいくつかの白血球細胞の産生を刺激するための、GM−CSF(顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子);及び血小板の産生を刺激するための、IL−11(インターロイキン−11、例えば、ニューメガ(Neumega)(登録商標)が挙げられる。
【0165】
ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウム、Roxane Laboratories,Inc.、Columbus、オハイオ州;フォリン酸、ホリナートカルシウム、シトロボラム因子とも呼ばれる)は、葉酸アンタゴニストに対する解毒薬として使用でき、また、特定の薬物、例えば、フルオロウラシルの活性を増強できる。ロイコボリンカルシウムは、N−[4−[[(2−アミノ−5−ホルミル−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4−オキソ−6−プテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸のカルシウム塩である。
【0166】
デキサメタゾン(例えば、デカドロン(Decadron)(登録商標);Merck & Co.,Inc.、Whitehouse Station、ニュージャージー州)は、アレルギー反応(例えば、薬物過敏症反応)を制御するための抗炎症薬として使用できる合成副腎皮質ステロイドである。経口投与用のデキサメタゾン錠剤は、9−フルオロ−11−β,17,21−トリヒドロキシ−16−α−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを含み、以下の構造によって表される:
【0167】
【化23】

【0168】
静脈内投与用のリン酸デキサメタゾンは、9−フルオロ−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル−21−(ホスホノオキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン二ナトリウム塩を含み、以下の構造によって表される:
【0169】
【化24】

【0170】
ジフェンヒドラミン(例えば、ベナドリル(登録商標)、Parkedale Pharmaceuticals,Inc.、Rochester、ミシガン州)は、アレルギー反応の寛解のために用いられる抗ヒスタミン薬である。塩酸ジフェンヒドラミン(例えば、注射用ジフェンヒドラミンHCl)は、2−(ジフェニルメトキシ)−N,N−ジメチルエチルアミンヒドロクロリドであり、以下の構造によって表される:
【0171】
【化25】

【0172】
ラニチジン(例えば、ザンタック(Zantac)(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park、ノースカロライナ州)は、ヒスタミンH受容体でのヒスタミンの競合阻害剤であり、胃酸を減少させるために使用できる。塩酸ラニチジン(例えば、錠剤又は注射)は、N[2−[[[5−[(ジメチルアミノ)メチル]−2−フラニル]メチル]チオ]エチル]−N’−メチル−2−ニトロ−1,1−エテンジアミン,HClであり、以下の構造によって表される:
【0173】
【化26】

【0174】
シメチジン(例えば、タガメット(Tagamet)(登録商標)、GlaxoSmithKline,Research Triangle Park、ノースカロライナ州)もまた、ヒスタミンH2受容体でのヒスタミンの競合阻害剤であり、胃酸を減少させるために使用できる。シメチジンは、N’’−シアノ−N−メチル−N’−[2−[[(5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチル]チオ]−エチル]−グアニジンであり、以下の構造によって表される:
【0175】
【化27】

【0176】
アプレピタント(例えば、エメンド(EMEND)(登録商標);Merck&Co.,Inc.))は、サブスタンスP/ニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニスト及び制吐薬である。アプレピタント(アプレピタント)は、5−[[(2R,3S)−2−[(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ]−3−(4−フルオロフェニル)−4−モルホリニル]メチル]−1,2−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オンであり、以下の構造によって表される:
【0177】
【化28】

【0178】
オンダンセトロン(例えば、ゾフラン(Zofran)(登録商標;GlaxoSmithKline,Research Triangle Park、ノースカロライナ州)は、5−HT3セロトニン受容体の選択的ブロッカーであり、制吐薬である。塩酸オンダンセトロン(例えば、注射用)は、(±)1,2,3,9−テトラヒドロ−9−メチル−3−[(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)メチル]−4H−カルバゾール−4−オン、一塩酸塩、二水和物であり、以下の構造によって表される;
【0179】
【化29】

【0180】
ロラゼパム(例えば、ロラゼパム注射;Baxter Healthcare Corp.、Deerfield、イリノイ州)は、抗痙攣薬効果を含むベンゾジアゼピンである。ロラゼパムは、7−クロロ−5(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−オンであり、以下の構造によって表される:
【0181】
【化30】

【0182】
特定の実施態様では、HDAC阻害剤(例えば、SAHA)の投与前、投与中、投与後に;第2の抗癌剤(例えば、ペメトレキセド)の投与前、投与中、投与後に;又はHDAC阻害剤(例えば、SAHA)及び第2の抗癌剤(例えば、ペメトレキセド)両方の投与の前、投与中及びその他の投与に、過敏症反応を低減又は除去する1種以上の補助薬で被験体を治療する。被験体を、ペメトレキセドの投与前、投与中、投与後に、デキサメタゾン、葉酸及びビタミンB12のうち1種以上で治療することが好ましい。デキサメタゾンは、ペメトレキセドの投与の前日、当日、翌日に、2〜25mgという用量で経口投与できる。葉酸は、ペメトレキセドの投与の7日前に始まり、21日という少なくとも一治療期間を通じ、そして、ペメトレキセドの最後の投与の21日の間、毎日、400〜1000μgという用量で経口投与できる。ビタミンB12は、21日という治療期間中のSAHAの最初の投与の1週間前に1000μgという量で筋肉内に(又は用量の必須の改変を行い、任意の投与経路によって)投与でき、全治療期間は三以上の21日という治療期間を含み、全治療期間の間、1000μgのビタミンB12を63日毎に投与する。
【0183】
HDAC阻害剤の投与
投与経路
HDAC阻害剤(例えば、SAHA)は、当業者に公知の任意の公知の投与法によって投与できる。投与経路の例として、次に示すものだけには限らないが、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、局所、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、リポソームの、吸入による、膣の、眼内(intraocular)、カテーテル又はステントによる局所送達によって、皮下、イントラアディポーザル(intraadiposal)、関節内、くも膜下腔内又は持続放出投与形で、が挙げられる。SAHA又は任意の1種のHDAC阻害剤を、抗癌剤の効果と一緒になって、疾患を治療するのに有効な用量を達成する任意の用量及び投与スケジュールに従って投与できる。
【0184】
もちろん、SAHA又は任意の1種のその他のHDAC阻害剤の投与経路は、1種以上の抗癌剤の投与経路とは無関係である。SAHAの特定の投与経路は、経口投与である。したがって、この実施態様にしたがって、SAHAを経口投与し、第2及び場合により、第3及び/又は第4の抗癌剤を経口的に、非経口的に、腹膜内に、静脈内に、経動脈的に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に、鼻腔内に、リポソームにより、吸入によって、膣に、脂肪内(intraocularly)、カテーテル又はステントによる局所送達によって、皮下に、イントラアディポーザリー(intraadiposally)、関節内に、くも膜下腔内に又は持続放出投与形で投与できる。
【0185】
例として、本発明のHDAC阻害剤は、錠剤、カプセル剤(各々が徐放性製剤又は持続放出製剤を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液剤、シロップ剤及びエマルション剤のような経口形態で投与できる。同様に、HDAC阻害剤は、静脈内(例えば、ボーラス又は注入)、腹腔内、皮下、筋肉内又は製薬の技術分野の当業者に周知の形態を用いるその他の経路によって投与できる。HDAC阻害剤の特定の投与経路は経口投与である。
【0186】
HDAC阻害剤はまた、有効成分の持続性放出を可能にするような方法で製剤化できる、デポー注射又はインプラント製剤の形で投与できる。その有効成分は、ペレット又は小円柱に圧縮し、デポー注射又はインプラントとして、皮下に、又は筋肉内に埋め込むことができる。インプラントには、不活性物質、例えば、生分解性ポリマー又は合成シリコン、例えば、シラスティック、シリコンゴム又はDow−Corning Corporationによって製造されたその他のポリマーを用いることができる。
【0187】
HDAC阻害剤はまた、リポソーム送達システム、例えば、小さな単層リポソーム、大きな単層リポソーム及び多層リポソームの形で投与できる。リポソームは、種々のリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンから形成できる。抗癌剤のリポソーム製剤も本発明の方法において使用してよい。リポソームの種類の抗癌剤は、薬剤に対する耐容性を増大させるために使用できる。
【0188】
HDAC阻害剤はまた、化合物分子が結合している個々の担体としてモノクローナル抗体を用いることによって送達できる。
【0189】
HDAC阻害剤はまた、標的とすることができる薬物担体として可溶性ポリマーを用いて調製できる。このようなポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミド−フェノール又はパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンが挙げられる。さらに、HDAC阻害剤は、薬物、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロック共重合体の放出制御を達成するのに有用な生分解性ポリマーを用いて調製できる。
【0190】
特定の実施態様では、HDAC阻害剤、例えば、SAHAを、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの賦形剤を含み得るゼラチンカプセル剤で経口投与する。さらなる実施態様は、200mgの固体のSAHAを、ゼラチンカプセル中に含まれる、89.5mgの微晶質セルロース、9mgのナトリウムクロスカルメロース及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムとともに含む。
【0191】
投与形及び投与スケジュール
HDAC阻害剤を用いる投与計画は、種々の因子、例えば、種類、種、年齢、体重、性別及び治療されている疾患の種類、治療される疾患の重症度(すなわち、ステージ)、投与経路、患者の腎機能及び肝機能並びに用いられる個々の化合物又はその塩によって選択できる。投与スケジュールは、例えば、疾患の進行を予防、阻害(完全若しくは部分的に)又は停止するよう使用できる。
【0192】
本発明に従って、HDAC阻害剤(例えば、SAHA又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物)を、連続投与量又は間欠投与量によって投与できる。例えば、HDAC阻害剤の間欠投与は、1週間に1〜6日投与できるか、又は周期的投与(例えば、2〜8連続週中の毎日の投与、次いで、最大1週間の投与のない休止期間)を意味する場合もあり、又は隔日での投与を意味する場合もある。組成物は、周期の間に休薬期間を入れて、周期的に投与できる(例えば、治療間に最大1週間の休止期間のある2〜8週間の治療)。
【0193】
例えば、SAHA又は任意の1種のHDAC阻害剤を、最大800mgの合計一日用量で投与できる。HDAC阻害剤は、1日1回(QD)投与してもよいし、複数の一日用量、例えば、1日2回(BID)及び1日3回(TID)に分割してもよい。HDAC阻害剤は、上記のように1回の一日用量で投与してもよいし、複数の一日用量に分割してもよい、最大800mg、例えば、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg又は800mgの合計一日用量で投与できる。特定の態様では、投与は経口である。
【0194】
一実施態様では、組成物は約200〜800mgという用量で1日1回投与する。もう1つの実施態様では、組成物は約200〜400mgという用量で1日2回投与する。或いは、組成物は、約200〜400mgという用量で間欠的に1日2回、例えば、1週間に3、4又は5日投与できる。一実施態様では、一日用量は、1日1回、1日2回又は1日3回投与できる200mgである。一実施態様では、一日用量は、1日1回、1日2回又は1日3回投与できる300mgである。一実施態様では、一日用量は、1日1回、1日2回又は1日3回投与できる400mgである。
【0195】
SAHA又は任意の1種のHDAC阻害剤は、抗癌剤の効果と一緒になって、癌を治療するのに有効な用量を達成する任意の用量及び投与スケジュールに従って投与できる。HDAC阻害剤は、患者毎に異なる合計一日用量で投与でき、さまざまな投与スケジュールで投与してよい。例えば、SAHA又は任意のHDAC阻害剤は、患者に25〜4000mg/mの間の合計一日用量で投与できる。特に、SAHA又は任意の1種のHDAC阻害剤は最大800mgという合計一日用量で、特に、経口投与によって、1日に1回、2回又は3回、連続的に(毎日)又は間欠的に(例えば、1週間に3〜5日)投与できる。さらに、投与は連続、すなわち、毎日又は間欠的にであり得る。
【0196】
特定の治療プロトコールは、約200mg〜約600mgの範囲の合計一日用量で1日1回、2回又は3回の連続投与(すなわち、毎日)を含む。もう1つの治療プロトコールは、約200mg〜約600mgの範囲の合計一日用量で、1日1回、2回又は3回の、1週間あたり3〜5日の間の間欠的な投与を含む。
【0197】
HDAC阻害剤は、300mg又は400mgという用量で1日1回又は200mg又は300mgという用量で1日2回連続投与する。HDAC阻害剤はまた、400mgという用量で1日1回又は200mg若しくは300mgという用量で1日2回、1週間につき3日、間欠的に投与できる。もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤は、400mgという用量で1日1回又は200mg若しくは300mgという用量で1日2回、1週間につき4日、間欠的に投与できる。HDAC阻害剤はまた、400mgという用量で1日1回又は200mg又は300mgという用量で1日2回、1週間につき5日、間欠的に投与できる。
【0198】
特定の一実施態様では、HDAC阻害剤を、600mgという用量で1日1回、300mgという用量で1日2回又は200mgという用量で1日3回連続投与する。もう1つの特定の実施態様では、HDAC阻害剤を、600mgという用量で1日1回、300mgという用量で1日2回又は200mgという用量で1日3回、1週間につき3日、間欠的に投与する。HDAC阻害剤は、600mgという用量で1日1回、300mgという用量で1日2回又は200mgの用量で1日3回、1週間につき4日、間欠的に投与できる。HDAC阻害剤はまた、600mgという用量で1日1回、300mgという用量で1日2回又は200mgという用量で1日3回、1週間につき5日、間欠的に投与できる。
【0199】
さらに、HDAC阻害剤は、上記の任意のスケジュールに従って、数週間と、それに続く休薬期間の間、連続して投与してよい。例えば、HDAC阻害剤は、上記の任意のスケジュールに従って、2〜8週間と、それに続く1週間の休薬期間の間、又は1週間につき3〜5日間、300mgという用量で1日2回投与してよい。
【0200】
一実施態様では、HDAC阻害剤を、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg又は約800mgという用量で、1日1回、連続して(すなわち、毎日)又は間欠的に(例えば、1週間につき少なくとも3日)投与する。
【0201】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg又は約800mgという用量で、1日1回、21日のうち7日(すなわち、21日周期中、7連続日又は1日目〜7日目)という少なくとも1期間の間投与する。
【0202】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤は、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg又は約800mgという用量で、1日1回、21日のうち14日という少なくとも1期間の間(すなわち、21日周期中、14連続日又は1日目〜14日目)投与する。
【0203】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約250mg、約300mg又は約400mgという用量で1日2回、連続して(すなわち、毎日)又は間欠的に(例えば、1週間につき少なくとも3日)投与する。
【0204】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、7日間のうち3日間(例えば、投与を行う3連続日と、それに続く、投与を行わない4連続日)という少なくとも1期間の間、投与する。HDAC阻害剤はまた、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、7日中4日(例えば、投与を行う4連続日と、それに続く、投与を行わない3連続日)という少なくとも1期間の間、又は、7日中5日(例えば、投与を行う5連続日と、それに続く、投与を行わない2連続日)という少なくとも1期間の間投与できる。このような実施態様では、HDAC阻害剤を毎週投与する。
【0205】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、21日の周期において7日のうち3日という少なくとも1期間の間(例えば、21日周期で最大3週間、3連続日又は1日目〜3日目)、投与する。
【0206】
HDAC阻害剤はまた、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、21日の周期において7日のうち4日という少なくとも1期間の間(例えば、21日周期で最大3週間、4連続日又は1日目〜4日目)、又は21日の周期において7日のうち5日という少なくとも1期間の間(例えば、21日周期で最大3週間、5連続日又は1日目〜5日目)投与できる。
【0207】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、例えば、21日の周期で7日のうち3日という1期間の間(例えば、3連続日若しくは21日周期における1日目〜3日目)、投与する。
【0208】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、例えば、21日の周期で7日のうち3日という少なくとも2期間の間(例えば、21日周期の週1及び週2の、3連続日又は1日目〜3日目と8日目〜10日目)、投与する。
【0209】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約250mg又は約300mg(用量あたり)という用量で1日2回、例えば、21日の周期で7日のうち3日という少なくとも3期間の間(例えば、21日周期の週1、週2及び週3の、3連続日若しくは1日目〜3日目、8日目〜10日目及び15日目〜17日目)、投与する。
【0210】
その他の実施態様では、HDAC阻害剤は、約200mg、約300mg又は約400mg(用量あたり)という用量で1日2回、例えば、14日のうち7日という少なくとも1期間の間(例えば、14日周期で7連続日又は1〜7日目)、又は21日のうち11日という少なくとも1期間の間(例えば、11連続日又は21日周期で1日目〜11日目)、又は21日のうち10日という少なくとも1期間の間(例えば、10連続日又は21日周期で1日目〜10日目)、又は21日のうち14日という少なくとも1期間の間(例えば、14連続日若しくは21周期で1日目〜14日)、投与できる。
【0211】
その他の実施態様では、HDAC阻害剤を、約200mg、約300mg又は約400mg(用量あたり)で1日1回、例えば、21日のうち10日という少なくとも1期間の間(例えば、10連続日若しくは21日周期で1日目〜10日目)、投与する。
【0212】
患者は、1日あたり約3〜1500mg/m、例えば、1日あたり、約3、30、60、90、180、300、600、900、1200又は1500mg/mの間を送達するのに十分な量のHDAC阻害剤を静脈内に、又は皮下に投与される。このような量は、いくつかの適した方法、例えば、低濃度のHDAC阻害剤大容量で、長時間の間又は1日に数回投与してもよい。その量は、週(7日間)あたり、1日以上の連続日、間欠日又はそれらの組合せの間、投与できる。或いは、高濃度のHDAC阻害剤大容量を、短い時間の間、例えば、週(7日間)あたり、1日以上の連続日、間欠日又はそれらの組合せの間1日1回。例えば、治療あたり1500mg/mという総量のために、1日あたり300mg/mという用量を、5連続日投与できる。もう1つの投与スケジュールでは、連続日の数はまた、5であり、治療は3000mg/mという総量のために、及び4500mg/m総治療のために、2又は3連続週の間持続する。
【0213】
通常、約1.0mg/mL〜約10mg/mLの間、例えば、2.0mg/mL、3.0mg/mL、4.0mg/mL、5.0mg/mL、6.0mg/mL、7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mL及び10mg/mLという濃度のHDAC阻害剤を含む静脈用製剤を調製し、上記の用量を達成する量で投与することができる。一実施例では、その日の合計用量が約300〜約1500mg/mの間であるような1日において、患者に十分な容積の静脈用製剤を投与できる。
【0214】
皮下用製剤は、当該技術分野で周知の手順に従って、約5〜約12の間の範囲のpHで調製でき、これは以下に記載される適したバッファー及び等張剤を含む。それらは、毎日1回以上の皮下投与、例えば、毎日1回、2回又は3回で、HDAC阻害剤の一日用量を送達するよう製剤できる。
【0215】
HDAC阻害剤はまた、適した経鼻ビヒクルの局所使用によって経鼻形態で、又は当業者に周知の経皮膚パッチの形態のものを用いて経皮経路によって投与できる。経皮送達系の形態で投与されるには、投与量の投与は、当然、投与スケジュールを通じて間欠的ではなく連続となる。
【0216】
当業者には当然のことながら、HDAC阻害剤の任意の1種以上の特定の投与量及び投与スケジュールはまた、併用療法に用いられる任意の1種以上の抗癌剤に適用可能である。さらに、抗癌剤の特定の投与量及び投与スケジュールはさらに変えることができ、最適用量、投与スケジュール及び投与経路は、使用されている特定の抗癌剤に基づいて決定できる。さらに、本明細書に記載される種々の投与様式、投与量及び投与スケジュールは、単に特定の実施態様を示すものであって、本発明の広範な範囲を制限すると解釈されてはならない。投与量及び投与スケジュールの任意の順序、変化及び組合せが本発明の範囲内に含まれる。
【0217】
抗癌剤の投与
HDAC阻害剤の任意の1種以上の特定の投与量及び投与スケジュールはまた、併用療法に使用される任意の1種以上の抗癌剤に適用可能である。
【0218】
さらに、1種以上の抗癌剤の特定の投与量及び投与スケジュールはさらに変わることがあり、最適用量、投与スケジュール及び投与経路は、使用されている特定の抗癌剤に基づいて決定される。
【0219】
当然、SAHA又はその他のHDAC阻害剤の任意の1種の投与経路は、1種以上の抗癌剤の投与経路とは無関係である。SAHAの特定の投与経路は経口投与である。したがって、この実施態様にしたがって、SAHAは経口投与され、その他の抗癌剤は経口的に、非経口的に、腹膜内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸内に、経頬的に、鼻腔内に、リポソームによって、吸入によって、膣内に、イントラオキュラリー(intraoccularly)、カテーテル又はステントによる局所送達によって、皮下に、イントラアディポーザリー(intraadiposally)、関節内に、くも膜下腔内に又は持続放出投与形で投与できる。
【0220】
さらに、HDAC阻害剤及び1種以上の抗癌剤は、同一の投与様式で投与してよく、すなわち、両薬剤が経口的に、IVによってなどで投与される。しかし、ある投与様式、例えば、経口によってHDAC阻害剤を投与することと、1種以上の抗癌剤を別の投与様式、例えば、IV又は本明細書において上記に記載される投与様式のうち任意のその他のものによって投与することは、本発明の範囲内にある。
【0221】
一般的に用いられる抗癌剤及び通常投与される一日投与量として、次に示すものだけには限らないが、以下が挙げられる:
【0222】
【化31】

【0223】
【化32】

【0224】
本明細書に記載される抗癌剤(又はこのような薬剤の任意の医薬的に許容される塩若しくは水和物又はこのような薬剤の任意の遊離酸、遊離塩基若しくはその他の遊離形)を用いる投与スケジュールは、本明細書における例示的投与量、例えば、HDAC阻害剤のために提供されるものに従うことができる。投与量は、種々の因子、例えば、種類、種、年齢、体重、性別及び治療されている疾患の種類、治療される疾患の重症度(すなわち、ステージ)、投与経路、患者の腎機能及び肝機能並びに用いられる個々の化合物又はその塩に従って選択できる。投与スケジュールは、例えば、治療するよう、例えば、疾患の進行を予防、阻害(完全若しくは部分的に)又は停止するよう使用できる。
【0225】
特定の実施態様では、代謝拮抗剤(例えば、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、ペメトレキセド又はフラボピリドール)を、SAHAと組合せて投与する。
【0226】
別の代謝拮抗剤として、ペメトレキセドを(例えば、アリムタ(Alimta)(登録商標)の静脈内投与によって)、約0.2mg/m〜約10mg/m、約10mg/m〜約100mg/m、約100mg/m〜約250mg/m、約250mg/m〜約400mg/m、約400mg/m〜約500mg/m、約500mg/m〜約750mg/m、約750mg/m〜約838mg/mの範囲の用量で投与できる。特定の実施態様では、ペメトレキセドを500mg/mという用量で、例えば、10分かけて、静脈内注入として投与する。代替実施態様では、ペメトレキセドを約375mg/m又は約250mg/mという用量で投与する。特定の実施態様では、投与量を、21日周期中、少なくとも1日間(例えば、1日目又は3日目)投与する。特定の態様では、ペメトレキセドで治療された被験体に、低用量経口葉酸製剤又は葉酸を含むマルチビタミンを、治療の間及び治療に先立っての両方で毎日提供する。例えば、被験体にビタミンB12の筋肉内注射を、ペメトレキセドの最初の用量に先行する週の間及び(21日の治療期間の)どの3周期にも投与できる。具体的に言えば、ペメトレキセドは、1種以上の抗癌剤、例えば、SAHA又はSAHA及びシスプラチンと同時投与できる。例として、SAHA(例えば、ボリノスタット)は、最大300mg、400mg、500mg、600mg、700mg又は800mgという合計一日用量で投与でき、ペメトレキセドは最大500mg/mという合計一日用量で投与できる。いくつかの実施態様では、まず、SAHAを投与し、続いて、ペメトレキセドを投与する。好ましくは、ペメトレキセドは、SAHAの投与の第1日目の2日後に投与されることが好ましい。
【0227】
組合せ投与
本発明に従い、HDAC阻害剤及び抗癌剤を、広範な癌、例えば、次に示すものだけには限らないが、固形腫瘍(例えば、頭頸部、肺、胸部、結腸、前立腺、膀胱、直腸、脳、胃組織、骨、卵巣、甲状腺又は子宮内膜の腫瘍)、血液悪性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、癌腫(例えば、膀胱癌、腎癌、乳癌、結腸直腸癌)、神経芽細胞腫又は黒色腫の治療において使用できる。これらの癌の限定されない例として、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫又は白血病、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢性T細胞リンパ腫、ヒトT細胞白血球ウイルス(HTLV)と関連しているリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)並びに急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、中皮腫、小児固形腫瘍、脳神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、神経膠腫、ウィルムス腫瘍、骨癌及び軟部組織肉腫、成人の一般的な固形腫瘍、例えば、頭頸部癌(例えば、口腔、咽頭及び食道)、尿生殖器癌(例えば、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸及び結腸)、肺癌(例えば、小細胞癌及び扁平上皮癌及び腺癌を含む非小細胞肺癌)、乳癌、膵臓癌、黒色腫及びその他の皮膚癌、基底細胞癌、転移性皮膚癌、潰瘍性及び乳頭型両方の扁平上皮癌、胃癌、脳癌、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、髄様癌、骨肉腫、軟部組織肉腫、ユーイング肉腫、細網肉腫及びカポジ肉腫が挙げられる。また、本明細書に記載される任意の癌の小児型も含まれる。
【0228】
皮膚T細胞リンパ腫及び末梢T細胞リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の形である。皮膚T細胞リンパ腫とは、診察時の悪性Tリンパ球の皮膚への局在を特徴とするリンパ球増殖性障害の群である。CTCLには、皮膚、血流、局所リンパ節及び脾臓が関係していることが多い。菌状息肉腫(MF)、CTCLの最もよく見られる緩徐進行型は、斑点、プラーク又は表皮向性CD4CD45ROヘルパー/記憶T細胞を含む腫瘍を特徴とする。MFは、白血病変異体、セザリー症候群(SS)に発展するか、大細胞リンパ腫へと形質転換し得る。この状態は重度の皮膚そう痒、疼痛及び浮腫を引き起こす。現在、CTCLは、ステロイド、光化学治療及び化学療法、並びに放射線療法で局所的に治療される。末梢T細胞リンパ腫は、単一のT細胞からのクローン増殖として、成熟又は末梢(中枢又は胸腺ではない)T細胞リンパ球を起源とし、通常、主に結節性又は節外性のいずれかの腫瘍である。それらはT細胞リンパ球細胞表面マーカー及びT細胞受容体遺伝子のクローン配置を有する。
【0229】
米国では、およそ16,000〜20,000人が、CTCL又はPTCLのいずれかに冒されている。これらの疾患は高度に症候性である。斑点、プラーク及び腫瘍が、種々の症状の臨床名である。斑点は通常、平らであり、うろこ状であり、「発疹」のように見える場合がある。菌状息肉腫斑点は、菌状息肉腫という適切な診断がなされるまでは、湿疹、乾癬又は非特異的皮膚炎と間違われることが多い。斑点とは、厚く、隆起した病変である。腫瘍とは隆起した「瘤」であり、潰瘍形成する場合もそうでない場合もある。よく見られる特徴は、かゆみ又はそう痒症であるが、多数の患者がかゆみを経験しない。これらの相の1種又は3種すべてを有することがあり得る。ほとんどの患者にとって、既存の治療は緩和的であって、治癒的ではない。
【0230】
肺癌は、米国では癌関連死亡原因の第1位であり、非小細胞肺癌を有する新しく診断される患者の30%〜40%が、局所的に進行した、切除不能なステージIIIの疾患を示す(ジェマル(Jemal)Aら、シーエー・キャンサー・ジャーナル・フォー・クリニシャンズ(CA Cancer Journal for Clinicians)2004、54、8〜29頁;デュベイ(Dubey)及びシラー(Schiller)ジ・オンコロジスト(The Oncologist)2005、10、282〜291頁;ソチンスキ(Socinski)MAセミナーズ・イン・オンコロジー(Seminers in Oncology)、2005、32(2付録):S114−8)。標準的な化学療法投薬スケジュールで治療されたステージIVの疾患を有する患者の生存期間中央値は、およそ8〜11ヶ月である(シラー(Schiller)JHら、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)2002、346、92〜98頁;フォセラ(Fossella)Fら、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)2003、21、3016〜3024頁)。再発した設定では、単剤療法を用いた生存期間中央値はおよそ5〜7ヶ月であり、進行までの時間葉わずか8〜10週間である(シェパード(Shepherd)FAら、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)2000、18、2095〜2103頁;フォセラ(Fossella)FVらジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology)2000、18、2354〜2362頁)。
【0231】
非小細胞肺癌(NSCLC)は、すべての肺癌の症例のおよそ85%を占める。NSCLCを有する患者の大部分は、進行疾患を示し、この攻撃的な腫瘍は予後不良を伴う。進行型NSCLCの患者(ステージIIIB/IV)の5年生存率は<5%である(キャンサー・プリンシプルズ・アンド・プラクティス・オブ・オンコロジー(Cancer:Principles and Practice of Oncology)、デビタ(DeVita),V.T.,Jr、ヘルマン(Hellman),S.、ローゼンバーグ(Rosenberg),S.A編、第6版(フィラデルフィア:リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams and Wilkins)、2001年:925〜983頁)中、ギンズバーグ(Ginsberg)RJら2001、925〜983頁)。NSCLCの治療は、、症状改善及び生存延長を目標とする緩和的なものであった。現在、白金ベースのレジメンが、進行型NSCLCの患者のケアの標準である(スチュアート(Stewart)DJ、オンコロジスト(Oncologist)、2004、9付録6、43〜52頁に概説されている)。しかし、これらのレジメンは重度の、しばしば累積した血液毒性及び非血液毒性を伴い、これが用量強度を制限する。したがって、これらの患者の治療成績を改善するために新規治療及び組合せレジメンが必要とされる。
【0232】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、WHO(世界保健機構)分類において最もよく見られるB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)であり、西欧諸国では成人非ホジキンリンパ腫の30〜40%を構成する。標準的な第一選択治療は、組合せ化学療法又は抗CD20抗体(リツキシマブ)を用いる化学療法である。多くの国では、費用が高いことと保険金の不足のために、NHL患者のほんの一握りにしかリツキシマブを与えることができないと推測される。標準的な第二選択治療は、末梢幹細胞移植である。この治療は、選ばれた数の癌センターで実施されるので、ほとんどの患者のための治療の選択肢ではない。DLBCLのためのEPOCHレジメン(エトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン)が、サルベージ療法として活性を証明したが、単一のモダリティとして用いる場合には長期の寛解を提供することは稀である。
【0233】
多発性骨髄腫は、モノクローナル免疫グロブリンの産生に関与している血漿細胞の単一クローンの新生増殖を特徴とする(カイル(Kyle)、ヘマトロジー:ベーシック・プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Hematology: Basic Principles and Practice)第2版、1995年中、マルチプル・ミエローマ・アンド・アザー・プラズマ・セル・ディスオーダーズ(Multiple Myeloma and Other Plasma Cell Disorders)。多発性骨髄腫細胞は、放射線療法及び化学療法に対して最初は応答性であるが、永続的な完全な応答は稀であり、実質的には、最初に応答するすべての患者が、最終的には再発し、この疾患のために死亡する。今日までに、従来の治療アプローチは、長期の疾患のない生存をもたらしておらず、このことからもこの不治の疾患のための新規薬物治療を開発することの重要性は明らかである(NCCNプロシーディングス・オンコロジー(Proceedings. Oncology.)、1998年11月)。
【0234】
米国国立癌研究所によれば、米国では、頭頸部癌がすべての癌の3パーセントを占める。ほとんどの頭頸部癌は、頭頸部において見られる扁平細胞内張り構造から起こり、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)と呼ばれることも多い。頭頸部癌の中には、その他の種類の細胞、例えば、腺細胞から起こるものもある。腺細胞から起こる頭頸部癌は腺癌と呼ばれる。頭頸部癌は、それらが始まる領域、例えば、口腔、鼻腔、喉頭、咽頭、唾液腺及び頸部の上部のリンパ節によってさらに定義される。米国では、2002年に、38,000人が頭頸部癌を発生したと推測される。およそ60%の患者が局所進行型疾患を示す。これらの患者の30%しか、手術及び/又は放射線照射での治療後に長期の寛解を達成しない。再発及び/又は転移した患者の生存期間中央値はおよそ6ヶ月である。
【0235】
本発明における使用に適したアルキル化剤としては、次に示すものだけには限らないが、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(alkyl alkone sulfonate)(例えば、ブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(例えば、アルトレタミン(Altretamine)、ダカルバジン及びプロカルバジン)、白金化合物(例えば、カルボプラチン及びシスプラチン)が挙げられる。特定の実施態様では、第3の抗癌剤は、アルキル化剤シスプラチンを含む。
【0236】
本発明における使用に適した抗生物質製剤として、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシン(Plicatomycin)がある。
【0237】
本発明における使用に適した代謝拮抗剤として、次に示すものだけには限らないが、フロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン及びペメトレキセドが挙げられる。特定の実施態様では、代謝拮抗剤はペメトレキセドである。
【0238】
本発明における使用に適したホルモン剤としては、次に示すものだけには限らないが、エストロゲン、プロゲストゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、LHRH類似体、アロマターゼ阻害剤、ジエチルスチベストロール、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール(Fluoxymesterol)、ラロキシフェン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、アミノグルテチミド、テトラゾール、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール及びミフェプリストンが挙げられる。
【0239】
本発明における使用に適した植物由来製剤として、次に示すものだけには限らないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン(Vinzolidine)、ビノレルビン、エトポシドテニポシド、パクリタキセル及びドセタキセルが挙げられる。
【0240】
本発明における使用に適した生物製剤として、次に示すものだけには限らないが、免疫調節タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、腫瘍サプレッサー遺伝子及び癌ワクチンが挙げられる。例えば、免疫調節タンパク質は、インターロイキン2、インターロイキン 4、インターロイキン12、インターフェロンE1、インターフェロンD、インターフェロンα、エリスロポエチン、顆粒球CSF、顆粒球、マクロファージ−CSF、カルメット・ゲラン菌、レバミソール又はオクトレオチドが挙げられる。さらに、腫瘍サプレッサー遺伝子は、DPC−4、NF−1、NF−2、RB、p53、WTl、BRCA又はBRCA2であり得る。
【0241】
本発明の種々の態様では、治療手順は、任意の順序で逐次、同時に又はその組合せで実施される。例えば、第1の治療手順、例えば、HDAC阻害剤の投与が、第2の(及び任意の第3及び/又は第4の)治療手順、例えば、1種以上の 抗癌剤に先立って、抗癌剤を用いる第2の(及び任意の第3及び/又は第4の)治療後に、抗癌剤を用いる第2の(及び任意の第3及び/又は第4の)治療と同時に、又はそれらの組合せで起こり得る。
【0242】
本発明の一態様では、全治療期間はHDAC阻害剤に関して決定できる。抗癌剤は、HDAC阻害剤を用いる治療の開始に先立って投与してもよいし、HDAC阻害剤を用いる治療後に投与してもよい。さらに、抗癌剤はHDAC阻害剤投与期間の間投与してもよいが、全HDAC阻害剤治療期間にわたって起こる必要はない。同様に、HDAC阻害剤は、1種以上の抗癌剤を用いる治療の開始に先立って投与してもよいし、又は1種以上の抗癌剤を用いる治療後に投与してもよい。さらに、HDAC阻害剤は、抗癌剤投与期間の間投与してもよいが、全抗癌剤治療期間にわたって起こる必要はない。或いは、治療レジメンは、一方の薬剤、HDAC阻害剤又は抗癌剤のいずれかでの前治療と、それに続く、治療期間の間のもう一方の薬剤の添加とを含む。
【0243】
特定の実施態様では、HDAC阻害剤と第2の(及び所望により、第3及び/又は第4の)抗癌剤の組合せは付加的であり、すなわち、併用療法レジメンが、単独で投与された場合の各成分の相加的効果である結果を生み出す。この実施態様によれば、HDAC阻害剤の量及び第2の(及び所望により、第3及び/又は第4の)抗癌剤の量は、一緒になって、癌を治療するための有効量をなす。
【0244】
もう1つの実施態様では、HDAC阻害剤と、第2の(及び所望により、第3及び/又は第4の)抗癌剤の組合せは、併用療法レジメンが、治療用量で単独で投与される場合の各成分の相加効果よりも有意に良好な抗癌結果(例えば、細胞増殖停止、アポトーシス、分化の誘導、細胞死)を生み出す場合に、治療上相乗的と考えられる。標準的な統計分析を用いて、結果が有意に良好であるかどうかを調べることができる。例えば、マン・ホイットニー検定又はその他の一般に認められている統計分析を使用できる。
【0245】
本発明の特定の一実施態様では、HDAC阻害剤は代謝拮抗剤と組合せて.投与できる。本発明のもう1つの特定の実施態様では、HDAC阻害剤及び代謝拮抗剤は、アルキル化剤と組合せて投与できる。本発明のもう1つの特定の実施態様では、HDAC阻害剤及び代謝拮抗剤(及び所望により、アルキル化剤)は、抗生物質製剤、別の代謝拮抗剤、別のアルキル化剤、ホルモン剤、植物由来製剤、抗血管新生薬、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞傷害性薬剤、チロシンキナーゼ阻害剤、補助薬又は生物剤と組合せて投与できる。本発明のもう1つの特定の実施態様では、HDAC阻害剤、代謝拮抗剤、及び場合によりアルキル化剤は、さらなるHDAC阻害剤、さらなるアルキル化剤、抗生物質製剤、さらなる代謝拮抗剤、ホルモン剤、植物由来製剤、抗血管新生薬、分化誘導剤、細胞増殖停止誘導剤、アポトーシス誘導剤、細胞傷害性薬剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、補助薬又は生物剤の任意の組合せと組合せて投与できる。
【0246】
併用療法は、癌細胞分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスの誘導によって作用し得る。療法を組合せることは、併用療法における各薬剤の投与量を、全体的な抗癌効果を達成しながら、薬剤を用いる単剤療法と比較して低減させることができるのために、特に有利である。
【0247】
医薬組成物
上記のように、HDAC阻害剤及び/又は1種以上の抗癌剤を含む組成物を、経口、非経口、腹腔内、静脈内の、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、経頬、鼻腔内、リポソームによる、吸入による、膣内又は眼球内投与、カテーテル又はステントによる局所送達のための、又は皮下のための、イントラアディポーザル(intraadiposal)、関節内、くも膜下腔内投与、又は持続放出投与形での投与に適した任意の投与形に製剤することができる。
【0248】
HDAC阻害剤及び1種以上の抗癌剤は、同時投与のために同一製剤に製剤化してもよいし、2種の別個の投与形であってもよく、これを上記のように同時又は逐次投与してもよい。
【0249】
本発明はまた、HDAC阻害剤の医薬的に許容される塩及び/又は1種以上の抗癌剤を含む医薬組成物を包含する。
【0250】
本明細書に記載される化合物の適した医薬的に許容される塩及び本発明の方法において使用するのに適したものとして、従来の非毒性があり、塩基を含む塩又は酸付加塩、例えば、無機塩基を含む塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、リチウム 塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩;有機塩基を含む塩、例えば、有機アミン塩(例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジクロロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など)など;無機酸付加塩(例えば、ヒドロクロリド、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など);有機カルボン酸又はスルホン酸付加塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩など);塩基性又は酸性アミノ酸を含む塩(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)などが挙げられる。
【0251】
本発明はまた、HDAC阻害剤の水和物及び/又は1種以上の抗癌剤を含む医薬組成物を包含する。
【0252】
さらに、本発明はまた、固体又は液体の物理的形態のSAHA又は任意のその他のHDAC阻害剤を含む医薬組成物を包含する。例えば、HDAC阻害剤は結晶形、非晶形であってもよく、任意の粒径を有する。HDAC阻害剤粒子は微粉化されていてもよいし、塊、微粒子の顆粒、粉末、オイル、油性懸濁液又は任意のその他の形の固体又は液体の物理的形態であってもよい。
【0253】
経口投与には、医薬組成物は、液体であっても、固体であってもよい。適した固体経口製剤としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット剤などが挙げられる。適した液体経口製剤としては、溶液剤、懸濁液剤、分散物剤、エマルション剤、オイル剤などが挙げられる。
【0254】
担体又は希釈剤としてよく用いられる任意の不活性賦形剤、例えば、ゴム、デンプン、糖、セルロース系材料、アクリレート又はそれらの混合物を、本発明の製剤に使用してよい。本組成物はさらに、崩壊剤及び滑沢剤を含んでもよく、さらに、結合剤、バッファー、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定剤、増粘剤、甘味料、フィルム形成剤又はそれらの任意の組合せから選択される又は1種以上の添加剤を含んでもよい。さらに、本発明の組成物は、放出制御製剤の形であっても、即時放出製剤の形であってもよい。
【0255】
HDAC阻害剤は、所望の投与の形態に関して適宜選択された、適した医薬希釈剤、賦形剤又は担体(本明細書では、まとめて「担体」物質又は「医薬的に許容される担体」と呼ばれる)との混合物中の有効成分として投与できる。本明細書において、「医薬的に許容される担体」とは、医薬投与と適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被膜、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤など含むものとする。適した担体は、レミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンセズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)の最新版、当技術分野における標準参考教本に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0256】
液体製剤には、医薬的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルション又はオイルであり得る。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルがある。水性担体としては、水、アルコール性/水溶液、エマルション又は懸濁液、例えば、生理食塩水及び緩衝培地が挙げられる。オイルの例としては、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツオイル、ダイズオイル、鉱油、オリーブオイル、ヒマワリ油及び魚肝油がある。溶液又は懸濁液はまた、以下の成分を含み得る:滅菌希釈液、例えば、注射水、生理食塩水溶液、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶剤;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);バッファー、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩及び張性の調整のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整できる。
【0257】
リポソーム及び非水性ビヒクル、例えば、硬化油も使用できる。医薬上活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野では周知である。任意の従来の媒体又は物質が、活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるその使用が考慮される。補助的な活性化合物も本組成物中に組み込まれ得る。
【0258】
固体担体/希釈剤として、次に示すものだけには限らないが、ゴム、デンプン(例えば、コーンスターチ、α化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース系材料(例えば、微晶質セルロース)、アクリレート(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク又はそれらの混合物が挙げられる。
【0259】
さらに、組成物は、結合剤(例えば、アラビアガム、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化シリコン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、グリコール酸ナトリウムデンプン、プリモジェル、種々のpH及びイオン強度のバッファー(例えば、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、添加剤、例えば、表面への吸収を防ぐためのアルブミン又はゼラチン、界面活性剤(例えば、Tween20、Tween80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、透過促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、磨砕剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えば、スクロース、アスパルテーム、クエン酸)、矯味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジフレーバー)、保存料(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、高分子被膜(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)、被膜及びフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)及び/又はアジュバントをさらに含み得る。
【0260】
一実施態様では、活性化合物は、身体からの迅速な排除から化合物を保護する担体、例えば、放出制御製剤、例えば、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を使用できる。このような製剤の調製方法は当業者には明らかである。また、材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals、Inc.から商業的に入手できる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、医薬的に許容される担体として使用できる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される、当業者に公知の方法に従って調製できる。
【0261】
投与の容易性及び投与形の均一性のためには、経口組成物を投与単位形に製剤することが特に有利である。本明細書において、投与単位形とは、治療される被験体のための単位投与形として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の効果を生じるよう算出された所定量の活性化合物を含む。本発明の投与単位形の仕様は、活性化合物の独特の特徴及び達成される個々の治療効果及び個体の治療のためのこのような活性化合物を作り上げる当該技術における固有の制限によって、またこれらに応じて直接依存する。
【0262】
医薬組成物は容器、パック又はディスペンサーに、投与のための使用説明書と一緒に入れることができる。
【0263】
例えば、混合、造粒又は錠剤形成プロセスによる、有効成分を含む医薬組成物の調製は、当該技術分野では十分に理解されている。有効治療成分を、医薬的に許容され、有効成分と適合する賦形剤と混合することが多い。経口投与には、有効成分を、この目的のための通常の添加剤、例えば、ビヒクル、安定剤又は不活性希釈剤と混合し、通常の方法によって投与に適した形、例えば、上記の錠剤、コーティング錠、ハード又はソフトゼラチンカプセル、水性、アルコール性又は油性溶液などに変換する。
【0264】
患者に投与される化合物の量は、患者において毒性を引き起こす量よりも少ない。特定の実施態様では、患者に投与される化合物の量は、その化合物の毒性レベルに等しいか、又はそれを超える患者の血漿中の化合物濃度よりも少ない。特定の実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約10nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約25nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約50nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約100nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約500nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約1,000nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約2,500nMで維持される。もう1つの実施態様では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約5,000nMで維持される。本発明の実施において、患者に投与されるべき化合物の最適量は、用いられる個々の化合物及び治療されている癌の種類に応じて変わる。
【0265】
製剤中の有効成分及び種々の賦形剤のパーセンテージは変わり得る。例えば、本組成物は、20〜90%の間の、具体的には、50〜70重量%の間の有効成分を含み得る。
【0266】
IV投与には、静脈内投与にとって許容されるpH範囲において適度な緩衝能を有する、グルクロン酸、L−乳酸、酢酸、クエン酸又は任意の医薬的に許容される酸/共役塩基を、バッファーとして使用できる。酸又は塩基のいずれか、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムでpHが所望の範囲に調整されている塩化ナトリウム溶液も使用できる。通常、静脈用製剤のpH範囲は、約5〜約12の範囲であり得る。HDAC阻害剤を含む静脈用製剤の個々のpH範囲は、HDAC阻害剤がヒドロキサム酸部分を有する場合は、約9〜約12であり得る。
【0267】
適したバッファー及び等張剤を含む、皮下製剤は、当該技術分野で周知の手順に従って、約5〜約12の間の範囲のpHで調製できる。それらは、1以上の毎日の皮下投与で活性薬剤の一日用量を送達するよう製剤化できる。製剤の適当なバッファー及びpHの選択は、投与されるHDAC阻害剤の溶解度に応じて、当業者によって容易に行われる。酸又は塩基のいずれか、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いてpHが所望の範囲に調整されている塩化ナトリウム溶液もまた、皮下製剤に使用できる。通常、皮下製剤のpH範囲は、約5〜約12の範囲であり得る。ヒドロキサム酸部分を有するHDAC阻害剤の皮下製剤の個々のpH範囲は、約9〜約12であり得る。
【0268】
本発明の組成物はまた、適した経鼻ビヒクルの局所使用によって経鼻形態で、又は当業者に周知の経費皮膚パッチの形のものを用いて経皮経路によって投与できる。経皮送達系の形で投与されるには、投与量の投与は、当然、投与計画を通じて間欠的ではなく連続となる。
【0269】
本発明はまた、新生細胞を第1の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物及び第2の量のペメトレキセド(及び場合により、第3の量のシスプラチン及び/又は第4の量の抗癌剤)と接触させ、第1及び第2の(及び場合により第3及び/又は第4の)量が一緒になって、前記細胞の最終分化、細胞増殖停止又はアポトーシスを誘導するのに有効な量を含むことによって、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによってこのような細胞の増殖を阻害するin vitro法を提供する。
【0270】
本発明の方法はin vitroで実施できるが、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導する方法の個々の実施態様は、前記細胞をin vivoで、すなわち、治療を必要とする新生細胞又は腫瘍細胞を有する被験体に化合物を投与することによって接触させることを含むことは考慮される。
【0271】
そのようなものとして、本発明はまた、被験体に、第1の治療手順で第1の量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を、第2の治療手順で第2の量のペメトレキセド(及び場合により、第3及び/又は第4の治療手順で第3の及び/又は第4の抗癌剤)を投与し、第1及び第2(及び場合により、第3及び/又は第4の)量が一緒になって、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを誘導するのに有効な量を含む、新生細胞の最終分化、細胞増殖停止及び/又はアポトーシスを選択的に誘導し、それによって被験体におけるこのような細胞の増殖を阻害する方法を提供する。
【0272】
本発明を、以下の実施例において例示する。この節は、本発明の理解に役立つよう示されているが、決して、以下に続く特許請求の範囲に示される本発明を制限しようとするものではなく、また制限すると解釈されてはならない。
【実施例】
【0273】
実施例1
SAHAの合成
SAHAは以下に概説される方法に従って、又は参照によりその全文が組み込まれる米国特許第5,369,108号に示される方法に従って、又は任意のその他の方法に従って合成できる。
【0274】
22Lフラスコに、3,500g(20.09モル)のスベリン酸を入れ、この酸を加熱して融解した。温度は175℃に上げ、次いで、2,040g(21.92モル)のアニリンを加えた。温度を190℃に上げ、その温度で20分間維持した。融解物を、50Lの水に溶解した4,017gの水酸化カリウムを含むNalgeneタンクに注ぎ入れた。融解物を添加した後、この混合物を20分間撹拌した。反応を同規模で反復し、第2の融解物を、水酸化カリウムの同一溶液中に注ぎ入れた。混合物を十分に撹拌した後、スターラーを止め、混合物を沈降させた。
【0275】
【化33】

【0276】
次いで、混合物をセライトのパッドを通して濾過した(4,200g)。生成物を濾過して、スベリン酸の両末端でのアニリンによる作用から生じた中性の副生成物を除去した。濾液は、生成物の塩と、未反応のスベリン酸の塩も含んでいた。濾過が極めて遅かったので、この混合物を沈降させると、数日かかった。5Lの濃塩酸を用いて濾液を酸性化し、混合物を1時間撹拌し、次いで、一晩沈降させた。生成物を濾過によって回収し、漏斗上で脱イオン水(4×5L)を用いて洗浄した。湿潤濾過ケーキを、44Lの脱イオン水を含む72Lフラスコに入れ、この混合物を50℃で加熱し、熱濾過によって固体を単離した(所望の生成物には、熱水にかなり高い溶解度を有するスベリン酸が混入していた)。数回の熱トリチュレーションを行ってスベリン酸を除去した。生成物を、NMR[DDMSO]によって調べてスベリン酸の除去をモニターした。44Lの50℃の水を用いて熱トリチュレーション(粉砕)を反復した。生成物を、濾過によって再度単離し、4Lの温水ですすいだ。65℃の真空オーブン中で、真空供給源としてNashポンプを用い、週末をかけて乾燥させた。(Nashポンプは液封ポンプ(水)であり、約29インチの水銀という真空を引く。間欠的なアルゴンパージを用いて水分を飛ばした);4,182.8gのスベラニル酸が得られた。
【0277】
生成物は依然として少量のスベリン酸を含んでおり、従って、約65℃での熱トリチュレーションを、一度に焼く300gの生成物を用いて少量ずつ行った。各部分を濾過し、さらなる温水(合計約6L)を用いて十分にすすいだ。これを反復し全バッチを精製した。これによって生成物からスベリン酸を完全に除去した。フラスコ中に固体生成物を合わせ、6Lのメタノール/水(1:2)とともに撹拌し、次いで、濾過によって単離し、フィルター上で週末をかけて風乾させた。それをトレイに入れ、Nashポンプ及びアルゴンの放出を用い65℃の真空オーブン中で45時間乾燥させた。最終生成物の重量は3,278.4g(収率32.7%)であった。
【0278】
【化34】

【0279】
機械的スターラー及び冷却器を備えた50Lのフラスコに、先のステップから得られた3,229gのスベラニル酸、20Lのメタノール及び398.7gのDowex 50WX2−400樹脂を入れた。この混合物を18時間加熱還流した。この混合物を濾過して樹脂ビーズを除き、濾液をロータリーエバポレーターで残渣にした。
【0280】
この残渣をロータリーエバポレーターから、冷却器及び機械的スターラーを備えた50Lのフラスコに移した。このフラスコに6Lのメタノールを加え、混合物を加熱して溶液を得た。次いで、2Lの脱イオン水を加え、加熱を止めた。撹拌混合物を放冷し、次いで、フラスコを氷浴中に入れ、混合物を冷却した。固体生成物を、濾過によって単離し、フィルターケーキを4Lの冷メタノール/水(1:1)ですすいだ。生成物を、Nashポンプを用い、真空オーブン中、45℃で64時間乾燥させると、2,850.2g(収率84%)のメチルスベラニラートが得られた。
【0281】
【化35】

【0282】
機械的スターラー、熱電対及び不活性雰囲気のための吸気口を備えた50Lのフラスコに、1,451.9gの塩酸ヒドロキシルアミン、19Lの無水メタノール及びメタノール中、30%ナトリウムメトキシド溶液3.93Lを加えた。次いで、このフラスコに、2,748.0gのメチルスベラニラート、続いて、メタノール中、30%ナトリウムメトキシド溶液1.9Lを入れた。この混合物を16時間10分攪拌させた。反応混合物のおよそ1/2を反応フラスコ(フラスコ1)から、機械的スターラーを備えた50Lのフラスコ(フラスコ2)に移した。次いで、フラスコ1に27Lの脱イオン水を加え、混合物を10分間撹拌した。pHメーターを用いて、pHを測定したところ、PHを11.56であった。100mlのメタノール中、30%のナトリウムメトキシドの添加によって、混合物のpHを12.02に調整し、これにより透明な溶液が得られた(この時点で反応混合物は少量の固体を含んでいた。pHを、それから沈殿生成物が沈殿される、透明な溶液が得られるよう調整した)。フラスコ2中の反応混合物を、同様に希釈し、27Lの脱イオン水を加え、30%のナトリウムメトキシド溶液100mlを混合物に添加することによってpHを調整し、12.01というpHを得た(透明溶液)。
【0283】
各フラスコ中の反応混合物を、氷酢酸の添加によって酸性化し、生成物を沈殿させた。フラスコ1の最終pHは8.98であり、フラスコ2の最終pHは8.70であった。両フラスコから、ブフナー漏斗及びフィルタークロスを用いる濾過によって生成物を単離した。フィルターケーキを15Lの脱イオン水で洗浄し、漏斗を覆い、真空下、漏斗上で生成物を15.5時間部分乾燥させた。生成物を回収し、5つのガラストレイに入れた。トレイを真空オーブン中に入れ、生成物を恒量に乾燥させた。第1の乾燥期間は、真空供給源としてNashポンプを、アルゴン放出とともに用いて60℃で22時間であった。真空オーブンからこれらのトレイを回収し、秤量した。トレイをオーブンに戻し、真空供給源としてオイルポンプを用い、アルゴン放出は用いずに生成物をさらに4時間10分乾燥した。この物質を、二重の4−ミル(mill)ポリエチレンバッグに詰め、プラスチック製外部容器に入れた。サンプリング後の最終重量は2633.4g(95.6%)であった。
【0284】
ステップ4−粗SAHAの再結晶化
粗SAHAをメタノール/水から再結晶化した。機械的スターラー、熱電対、冷却器及び不活性雰囲気のための吸気口を備える50Lのフラスコに、再結晶化させる粗SAHA(2,525.7g)、続いて、2,625mlの脱イオン水及び15,755mlのメタノールを入れた。この物質を加熱還流し溶液を得た。次いで、反応混合物に5,250mlの脱イオン水を加えた。加熱を止め、混合物を放冷した。フラスコを安全に操作できるよう、混合物が十分に冷却した時点(28℃)で、フラスコを加熱マントルから回収し、冷却浴として使用するためのタブ中に入れた。このタブに氷/水を加え、混合物を−5℃に冷却した。2時間の間混合物をその温度より低く維持した。濾過によって生成物を単離し、フィルターケーキを1.5Lの冷メタノール/水(2:1)で洗浄した。漏斗を覆い、真空下、生成物を1.75時間部分乾燥させた。生成物を漏斗から回収し、6つのガラストレイに入れた。トレイを真空オーブン中に入れ、真空供給源としてNashポンプを用い、アルゴン放出を用い、生成物を60℃で64.75時間乾燥させた。これらのトレイを秤量のために回収し、次いで、オーブンに戻し、さらに60℃で4時間乾燥させると、恒量が得られた。第2の乾燥期間の真空供給源はオイルポンプであり、アルゴン放出は用いなかった。この物質を、二重の4−ミル(mill)ポリエチレンバッグに詰め、プラスチック製外部容器に入れた。サンプリング後の最終重量は2,540.9g(92.5%)であった。
【0285】
その他の実験では、粗SAHAを以下の条件を用いて結晶化させた:
【0286】
【化36】

【0287】
すべてのこれらの反応条件からSAHA多型Iが生じた。
【0288】
実施例2
1:1エタノール/水における、湿式粉砕小粒子の作製
SAHA多型I結晶を、50mg/グラム〜150mg/グラム(結晶/溶媒混合物)の範囲のスラリー濃度で、1:1(容積で)EtOH/水溶媒混合物に懸濁した。このスラリーを、超微細ブレードを備える、IKA−Works Rotor−Stator ハイシアーホモジナイザーモデルT50を用いて、20〜30m/sで、温度を室温に維持しながら、SAHAの平均が50μm未満で、95%が100μm未満となるまで湿式粉砕した。室温で、湿式粉砕したスラリーを濾過し、1:1EtOH/水溶媒混合物で洗浄した。次いで、湿潤ケーキを約40℃で乾燥させた。湿式粉砕した物質の最終平均粒径は、50μm未満であると、以下のマイクロトラック法によって測定された。
【0289】
粒径は、Microtrac Inc製の、SRA−150レーザー回析式粒度分布測定装置を用いて分析した。この測定装置は、ASVR(Automatic Small volume Recirculator)を備えていた。ISOPAR G中、0.25wt%のレシチンを、分散流体として用いた。各サンプルにつき、3回の実施を記録し、平均分布を算出した。粒径分布(PSD)は、容積分布として分析した。平均粒径及び容積に基づく95%<値を報告した。
【0290】
実施例2A:1:1エタノール/水における湿式粉砕小粒子の大規模作製
20〜25℃で、56.4kgのSAHA多型I結晶を、610kg(SAHA1kgあたり10.8kgの溶媒)の200プルーフの厳密なエタノール及び水の50%容積/容積溶液(50/50EtOH/水)に入れた。スラリー(約700L)を、定常状態粒径分布に到達するまで、超微細発生装置を備えたIKA Works 湿式粉砕セットを通して再循環させた。条件は以下の通りとした:DR3−6、23m/sローターチップスピード、30〜35Lpm、3ゲン(gen)、約96ターンオーバー(ターンオーバーとは、1つの発生装置を通る1つのバッチの容積である)、約12時間
【0291】
【数1】

【0292】
湿潤ケーキを濾過し、水で2回洗浄し(合計6kg/kg、約340kg)、40〜45℃で真空乾燥した。次いで、乾燥ケーキを篩にかけ(595μm篩)、Fine APIとして詰めた。
【0293】
実施例3
1:1エタノール/水における平均粒径150μmの大型結晶の成長
25グラムのSAHA多型I結晶及び388グラムの1:1エタノール/水溶媒混合物を、ガラス撹拌機を備えた、500mlのジャケット付樹脂反応がまに入れた。このスラリーを、実施例2のステップに従って、室温で50μm未満の粒径に湿式粉砕した。湿式粉砕したスラリーを65℃に加熱し、約85%の固体を溶解した。加熱したスラリーを65℃で1〜3時間熟成させて約15%の種床を構築した。このスラリーを、20psig圧下、400〜700rpmの撹拌機速度範囲で、樹脂反応がま中で混合した。
【0294】
次いで、バッチをゆっくりと5℃に冷却した:10時間で65から55℃へ、10時間で55から45℃へ、8時間で45℃から5℃へ。冷却したバッチを、5℃で1時間熟成させ、5mg/g、特に、3mg/g未満という標的上清濃度に達した。5℃で、バッチスラリーを濾過し、1:1EtOH/水溶媒混合物で洗浄した。湿潤ケーキを真空下、40℃で乾燥させた。乾燥ケーキの最終粒径は、マイクロトラック法によって、約150μmであり、95%粒径が<300μmであった。
【0295】
実施例4
1:1エタノール/水における平均粒径140μmを有する大型結晶の成長
7.5グラムのSAHA多型I結晶及び70.7グラムの1:1EtOH/水溶媒混合物を、種調製容器(500mlジャケット付樹脂反応がま)に入れた。種スラリーを、50μm未満の粒径に、上記の実施例2のステップに従って、室温で湿式粉砕した。種子スラリーを63〜67℃に加熱し、30分〜2時間かけて熟成させた。
【0296】
別個の晶析装置(1リットルジャケット付樹脂反応がま)、17.5グラムのSAHA多型I結晶及び317.3グラムの1:1EtOH/水溶媒混合物を入れた。この晶析装置を67〜70℃に加熱し、まず全ての固体SAHA結晶を溶解し、次いで、60〜65℃に冷却し、わずかに過飽和の溶液を維持した。
【0297】
種調製容器から得た種スラリーを晶析装置に移した。このスラリーを樹脂反応がま中、20psig圧下、実施例3と同様の撹拌機速度範囲で混合した。バッチスラリーを、実施例3における冷却プロフィールにしたがってゆっくりと5℃に冷却した。5℃で、バッチスラリーを濾過し、1:1EtOH/水溶媒混合物で洗浄した。湿潤ケーキを40℃、真空下で乾燥させた。乾燥ケーキの最終粒径は140μmであり、95%粒径は<280nmであった。
【0298】
実施例4A
1:1エタノール/水における大型結晶の大規模成長
実施例2Aから得た21.9kgのFine API乾燥ケーキ(全体の30%)及び201kgの50/50EtOH/水溶液(2.75kgの溶媒/総SAHAのKg)を、容器1−種調製タンクに入れた。51.1kgのSAHA多型I結晶(全体の70%)及び932kgの50/50EtOH/水(12.77kgの溶媒/総SAHAのKg)を、容器2−晶析装置に入れた。晶析装置は、20〜25psigに圧力をかけ、圧力を維持しながら内容物を67〜70℃に加熱し、結晶SAHAを十分に溶解した。次いで、内容物を61〜63℃に冷却し、溶液を過飽和させた。晶析装置での熟成プロセスの間に、種調製タンクに20〜25psigに圧力をかけ、種スラリーを64℃に加熱し(62〜66℃の範囲)、圧力を維持しながら30分間熟成させ、種固体の約1/2を溶解し、次いで、61〜63℃に冷却した。
【0299】
熱種子スラリーを、種調製タンクから晶析装置に、両容器の温度を維持しながら、迅速に移した(フラッシなし)。晶析装置の窒素圧を20〜25psigに再設定し、バッチを61〜63℃で2時間熟成させた。バッチを、3つの直線的段階で26時間かけて5℃に冷却した。:(1)10時間かけて62℃から55℃、(2)6時間かけて55℃から45℃及び(3)10時間かけて45℃から5℃。このバッチを1時間熟成させ、次いで、湿潤ケーキを濾過し、水(合計6kg/kg、約440kg)で2回洗浄し、40〜45℃で真空乾燥させた。この再結晶プロセスからえら得た乾燥ケーキを、Coarse APIとして詰められている。Coarse API及びFine APIを、70/30の比でブレンドした。
【0300】
実施例5
湿式粉砕小粒子バッチ288の作製
SAHA多型I結晶を、50mg/グラム〜150mg/グラム(結晶/溶媒混合物)の範囲のスラリー濃度で、エタノール性水溶液(容積で、100%エタノール〜50%エタノール水溶液)に懸濁した。このスラリーを、超微細ブレードを備える、IKA−Works Rotor−Stator ハイシアーホモジナイザーモデルT50を用いて、20〜35m/sで、温度を室温に維持しながら、SAHAの平均粒径が50μm未満で、95%が100μm未満となるまで湿式粉砕した。室温で、湿式粉砕したスラリーを濾過し、EtOH/水溶媒混合物で洗浄した。次いで、湿潤ケーキを約40℃で乾燥させた。湿式粉砕した物質の最終平均粒径は、50μm未満であると、上記のマイクロトラック法によって測定された。
【0301】
実施例6
大型結晶バッチ283の成長
24グラムのSAHA多型I結晶及び205mlの9:1エタノール/水溶媒混合物を、ガラス撹拌機を備えた、500mlのジャケット付樹脂反応がまに入れた。このスラリーを、実施例1のステップに従って、室温で50μm未満の粒径に湿式粉砕した。湿式粉砕したスラリーを65℃に加熱し、約85%の固体を溶解した。加熱したスラリーを64〜65℃で1〜3時間熟成させて約15%の種床を構築した。このスラリーを、100〜300rpmの撹拌機速度範囲で混合した。
【0302】
次いで、このバッチを、1種の加熱−冷却サイクルを用いて20℃に冷却した:2時間で65℃から55℃、1時間55℃、約30分かけて55℃から65℃、65℃で1時間熟成、5時間で65℃から40℃、4時間で40℃から30℃、6時間かけて30℃から20℃。冷却したバッチを20℃で1時間熟成させた。20℃で、バッチスラリーを濾過し、9:1EtOH/水溶媒混合物で洗浄した。湿潤ケーキを、真空下、40℃で乾燥させた。乾燥ケーキの最終粒径は、マイクロトラック法によって、約150μmであり、95%粒径が<300μmであった。
【0303】
30%のバッチ288結晶と、70%のバッチ283結晶をブレンドし、約100mgのスベロイルアニリドヒドロキサム酸と、約44.3mgの微晶質セルロースと、約4.5mgのクロスカルメロースナトリウムと、約1.2mgのステアリン酸マグネシウムとを含有するカプセルを製造した。
【0304】
実施例7
進行癌を患う患者におけるペメトレキセド及びシスプラチンと組合せた経口SAHAの第I相臨床試験
この臨床研究を用いて、進行固形腫瘍を患う患者において、反復される21日周期で、ペメトレキセド及びシスプラチンの標準用量と組合せて投与された場合の、経口SAHAの最大耐量(MTD)を調べる。また、この研究を用いて、進行固形腫瘍を患う患者において、反復される21日周期で、ペメトレキセドの標準用量と組合せて投与された場合の、経口SAHAのMTD調べ、組合せて投与された場合の、SAHA、ペメトレキセド及びシスプラチンの薬物動態をMTDで評価する。さらに、この研究を用いて、SAHAがペメトレキセド及びシスプラチンと組合せて、又はSAHAがペメトレキセドと組合せて投与される場合の、これらの併用レジメンの安全性及び耐容性評価する。
【0305】
分析:SAHAの投与は、さらなる研究を可能にするために、十分な安全性及び耐容性について、進行固形腫瘍を患う患者において、ペメトレキセド及びシスプラチンと組合せて21日周期で評価されている。SAHAの投与は、さらなる研究を可能にするために、十分な安全性及び耐容性について、進行固形腫瘍を患う患者において、ペメトレキセドと組合せて21日周期で評価されている。
【0306】
研究計画及び期間:この研究は、ペメトレキセド及びシスプラチン療法又はペメトレキセド療法に適格である固形腫瘍を患う患者における、ペメトレキセド及びシスプラチンと組合せた、又はペメトレキセドと組合せた、SAHAの無作為、マルチセンター、オープンラベルの用量漸増、第I相試験である。この研究ではまず、ペメトレキセド及びシスプラチンの標準用量と組合せて投与された場合のSAHAのMTDを調べる。SAHAの2つの異なる投与スケジュール(1日1回及び1日2回)が独立に評価され、患者は2つの投与スケジュールのうち一方に無作為化される。ペメトレキセド及びシスプラチンは、各周期の3日目に、それぞれ500mg/m及び75mg/mという用量での静脈内(IV)注入によって投与される。3剤レジメンのすべての患者は、葉酸、ビタミンB12、デキサメタゾン並びに化学療法予防のためのアプレピタント及びオンダンセトロンをはじめとする制吐剤を投与される。
【0307】
各スケジュールごとにMTDが設定されたら、コホートを広げ、推奨される第II相用量であると決定されるスケジュールの薬物動態(PK)を評価する。各スケジュールでの3剤組合せのMTDが定義されたら、さらなる第I相成分を、SAHA及びペメトレキセドの2剤組合せについて反復する。研究のこの部分のためのSAHAの開始用量は、コホートC及びDについて以下の表に定義されている。最初の6〜8周期後に適格性基準を満たし続ける、疾患進行がない患者には、SAHAを継続プロトコールで同じ用量及びスケジュールで用いる治療の継続が提示される。患者には、継続プロトコールへの移行の前に6又は最大8周期のいずれかを与える。継続プロトコールが始まれば、患者は、SAHA及びペメトレキセドの両方又はSAHAのみを用いる治療を継続することができる。
【0308】
プロトコールの間に3剤レジメンを受ける患者は、彼らが適格性基準を満たし続け、疾患進行又は許容できない毒性を有さない限り、割り当てられた用量レベルで治療されることを継続する。次いで、これらの患者は、基本プロトコールで完了された4〜6周期後に継続プロトコールに移行できる。患者は、治験責任医師の裁量で、継続プロトコールへの移行の前に4又は最大6周期のいずれかを受けることができる。継続プロトコールが始まれば、患者は、SAHA、ペメトレキセド及びシスプラチンの3剤レジメンを用いて、又はSAHAのみを用いて治療を継続し得る。
【0309】
患者サンプル:最大60人の患者が登録される。SAHAの各初期用量レベルで最小3及び最大6人の患者を登録する。各スケジュールのMTDが設定されたら、薬物動態のより詳細な治験のために、推奨される第2相用量であると決定されたスケジュールで、さらなる12人の患者を登録する。さらに、SAHA及びペメトレキセドレジメンの第I相研究の開始用量レベルで最大6人の患者を登録する。適格患者は18歳以上で、ペメトレキセド及びシスプラチン又はペメトレキセドが、考慮される適当な療法である、固形腫瘍の確定診断がなされている。その他の適格性基準としては、適切な一般状態及び適切な血液学的機能、肝機能及び腎機能が挙げられる。6ヶ月以内にペメトレキセド又はシスプラチン治療を受けている場合には、患者はコホートA及びBから排除され、また、過去6ヶ月以内に ペメトレキセド治療を受けている場合には、コホートC及びDから排除される。また、既存のグレード2以上の神経障害を有する場合には、患者は、コホートA及びBから排除され、また、グレード3以上の神経障害を有する場合には、コホートC及びDから排除される。
【0310】
投与量/投与形、経路及び用量計画:SAHAは、反復される21日(すなわち3週間)周期において、標準用量のペメトレキセド及びシスプラチンと組合せて経口投与する。2つの投与スケジュール(コホートA及びコホートB)はSAHAについて計画されている。コホートAでは、SAHAを1日2回(b.i.d.)、朝に1回、夜に1回、経口投与する(P.O.)。このコホートでは、SAHA治療は、300mgP.O.b.i.d.という用量レベルで、3連続日間で開始し、18日の休止(休薬)が続く。この用量レベルでは、各治療周期は、3日のみのSAHA投与を含む。用量制限毒性(DLT)がなければ、SAHAの用量を、次の用量レベル:300mg P.O.b.i.d.で、最初の14日において、7日のうちの3連続日間と、それに続く7日の休止に増やす。この用量レベルで、各周期はSAHAの6治療日を含む。コホートAにおける標的用量レベルは、21日周期の間、毎週反復される、7日毎に3連続日間の300mg P.O.b.i.d.である。この用量レベルで、各治療周期は、SAHAの9治療日を含む。コホートBでは、SAHAを1日1回(q.d.)経口投与する。SAHA治療は、400mgP.O.q.d.という用量レベルで、7連続日間で開始し、14日の休止が続く。DLTがなければ、SAHAの用量を次の用量レベル、500mg P.O.q.d.に、次いで、600mg P.O.q.d.に増やす。患者内の用量増大はいずれのコホートでも認められない。SAHAの可能性ある用量レベルが以下に概説されている。
【0311】
【化37】

【0312】
【化38】

【0313】
ペメトレキセド及びシスプラチンは、各周期の3日目に投与する。SAHA、ペメトレキセド及びシスプラチンを同時に投与する日には、SAHAの用量は、ペメトレキセド及びシスプラチンの投与の30分前に食事とともに投与する。ペメトレキセドを、500mg/mという標準用量で静脈内(IV)注入として10分かけて投与し、30分後に、IV注入として2時間かけて投与されるシスプラチン75mg/mを続ける。葉酸(400〜1000μg)は、ペメトレキセド/シスプラチン療法の最初の用量の1〜3週間前に毎日経口投与し、治療サイクルを通じて継続する。ビタミンB12(1000μg)は、ペメトレキセド及びシスプラチン注入の最初の用量の1〜3週間前に筋肉内に(IM)投与し、患者が治療中である間9週毎に反復する。デキサメタゾン(8mg P.O)は2日目、4日目から6日目に投与する。3日目には、デキサメタゾン(12mg P.O.)は、嘔吐の予防的処置のために、ペメトレキセド/シスプラチン注入に先立って、及び治療周期の間、アプレピタント(125mg P.O.)及びオンダンセトロン(32mg IV)と組合せて投与する。適切な水分補給は、化学療法関連毒性を軽減することにとって重要である。患者は、SAHA治療中の間、毎日2リットルの液体を投与される。
【0314】
SAHA及びペメトレキセド2剤併用の第I相におけるSAHAの用量レベルは、以下の表4及び5に規定されている。ペメトレキセドの標準用量(500mg/m)を投与した。
【0315】
研究デザイン:研究は、ペメトレキセド療法に適格である固形腫瘍腫瘍を患う患者における、ペメトレキセドと組合せた、SAHAの無作為、マルチセンター、オープンラベルの用量漸増、第I相試験を含む。SAHAの2つの異なる投与スケジュール(q.d.及びb.i.d.)が独立に評価され、患者は2つの投与スケジュールのうち一方に無作為化される。ペメトレキセドは、各周期の3日目にIV注入によって投与される。すべての患者は、葉酸、ビタミンB12及びデキサメタゾンを投与される。デキサメタゾン(8mg P.O.)は、重症の皮膚発疹の危険性を低下させるために、ペメトレキセド投与の前日、当日及び翌日に服用される。患者は適切な水分補給を維持するよう求められる。
【0316】
この研究は、SAHA及びペメトレキセドの同一治療計画に忠実であり、研究は、3剤併用の第I相について、このプロトコールに概説されるように巡視される。手短には、適当な量のSAHAを、達成された各MTDの出発用量レベルに従って、各21日周期の間、外来で経口投与する(以下の表参照のこと)。ペメトレキセドは、各周期の3日目に500mg/mという標準用量で、SAHA投与の30分後に開始する、10分のIV注入によって投与する。b.i.d.及びq.d.コホートの初期用量レベルで最小3人、最大6人の患者を登録する。患者は、安全性評価のために、1、3及び11日目に病院に戻る。18日目の訪問は、毎週反復される、7日のうち3連続日の300mgb.i.d.である、最も頻度の高い投与スケジュールがb.i.d.コホートにおいて達成される場合のみ必要である。患者は、400〜1000μgの葉酸及び1000μgのIMビタミンB12で適切に補給され、化学療法関連毒性を軽減するために、2、3及び4日目の4mg P.O.b.i.d.(又は8mg P.O.)デキサメタゾンで適宜前投与される。患者には、疾患進行がなく、最初の8周期後に適格性基準を満たし続ける場合に、SAHAを同じ用量及びスケジュールで用いる継続治療が提示される。用量制限毒性は、21日すなわち3週間からなる最初の治療サイクルにおいてのみ考慮される。
【0317】
以下の表は、コホートCの用量レベル及び用量の漸増/改変を概説する。コホートCでは、SAHAの出発用量レベルは、21日からなる完全治療周期の間、第1週における7日のうち3連続日の300mg b.i.d.と、それに続く2週間の休薬期間の用量レベル1である。その他の用量レベルは、以下の表4に定義される。
【0318】
【化39】

【0319】
DLTがなければ、用量を用量レベル1から用量レベル3に増やす。用量レベル1がMTDを超える場合には、表4に概説される用量レベル2、1a及び1による代替用量漸増スケジュールを採用する。
【0320】
以下の表5は、コホートDの用量レベル及び用量漸増/改変を概説する。SAHAの出発用量レベルは、21日の完全治療周期の間、7連続日の300mg q.d.と、それに続く14日の休薬期間の用量レベル1である。コホートC及びDの代替用量レベル及びスケジュールは、以下の表6及び7において規定される。
【0321】
【化40】

【0322】
【化41】

【0323】
【化42】

さらなる周期の治療を継続する患者には、ペメトレキセド/シスプラチンを3日目に投与する。標的用量レベルは周期1のものと同様であるが、ペメトレキセド/シスプラチンは、以下の表8に従って毒性について調整された用量であり得る。
【0324】
【化43】

【0325】
有効性測定:疾患反応/進行は、各個々の患者にとって適当と見なされる研究者によって評価される。計画されている有効性測定はない。
【0326】
安全性測定:バイタルサイン、理学的検査、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)一般状態、有害事象、実験室安全性試験及び心電図を、薬物投与に先立って、及び研究を通じて、設計された間隔で得るか、評価する
【0327】
データ分析:研究には約60人の患者を登録する。ペメトレキセド及びシスプラチンと組合せたSAHAの副作用並びにペメトレキセドとの組合せたSAHAの副作用は、有害事象を表にし、期間、用量レベルによる強度、毒性の発症までの時間を要約することによって評価する。要約統計量は、MTDが設定された後の最初の二治療周期の間、SAHA及びペメトレキセドの薬物動態パラメータ(AUC、Cmax、Tmax及び見掛けt1/2)を提供する。安全性と薬物動態パラメータ間の関係が検討される。
【0328】
当然のことながら、本発明はその詳細な説明とともに記載されているが、前記の説明は例示しようとするものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではない。その他の態様、利点及び改変は特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を治療することを必要とする被験体において、固形腫瘍を治療する方法であって、被験体にi)以下の構造によって表されるSAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)
【化1】

又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物、及びii)N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を投与することを特徴とし、SAHA及びN−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物が、該腫瘍を治療するための有効量で投与される前記方法。
【請求項2】
i)SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)及びii)ペメトレキセド(N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイル)二ナトリウム塩七水和物)を投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
SAHAを経口投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペメトレキセドを静脈内投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ペメトレキセドを10分間注入として投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ペメトレキセドを約500mg/mという用量で投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ペメトレキセドを約500mg/mという用量で1日1回、21日のうち1日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
まず、SAHAを投与し、続いて、ペメトレキセドを投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ペメトレキセドを、SAHAの投与の第1日目の2日後に投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ペメトレキセドの投与前、投与中、投与後に、被験体を、過敏症反応を低減又は除去する1種以上の補助薬で治療する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ペメトレキセドの投与前、投与中、投与後に、被験体を、デキサメタゾン、葉酸及びビタミンB12のうち1種以上で治療する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験体を、(i)ペメトレキセドの投与の前日、当日、翌日に、2〜25mgのデキサメタゾンを、経口投与で、(ii)ペメトレキセドの投与の7日前に始まり、少なくとも一治療期間を通じ、そして、ペメトレキセドの最後の投与後の21日間の期間中、毎日、400〜1000μgの葉酸を、経口投与で、及び(iii)治療期間中のSAHAの最初の投与の1週間前に1000μgのビタミンB12を、筋肉内投与で治療する(ここで全治療期間が、3以上の21日という治療期間を含み、1000μgのビタミンB12を、全治療期間の間63日毎に投与する)、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
SAHAを、約300mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
SAHAを、約400mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
SAHAを、約400mgという用量で1日1回、21日のうち14日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
SAHAを、約400mgという用量で1日1回、少なくとも一治療期間の間連続投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
SAHAを、約500mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
SAHAを、約600mgという用量で1日1回、21日のうち7日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
SAHAを、約200mgという用量で1日2回、7日のうち3日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
SAHAを、7日のうち3日で1週間と、それに続く2週間の休薬期間という少なくとも一治療期間投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項21】
SAHAを、7日のうち3日で2週間と、それに続く1週間の休薬期間という少なくとも一治療期間投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項22】
SAHAを、7日のうち3日という少なくとも一治療期間投与し、投与を毎週反復する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
SAHAを、用量あたり約300mgで1日2回、7日のうち3日という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
SAHAを、7日のうち3日で1週間と、それに続く2週間の休薬期間という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
SAHAを、7日のうち3日で2週間と、それに続く1週間の休薬期間という少なくとも一治療期間の間投与する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
SAHAを、7日のうち3日という少なくとも一治療期間の間投与し、投与を毎週反復する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
SAHAを最大300mgという合計一日用量で投与し、ペメトレキセドを最大500mg/mという合計一日用量で投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
SAHAを最大400mgという合計一日用量で投与し、ペメトレキセドを最大500mg/mという合計一日用量で投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
SAHAを最大600mgという合計一日用量で投与し、ペメトレキセドを最大500mg/mという合計一日用量で投与する、請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
i)以下の構造によって表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)
【化2】

又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物と、ii)N−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物と、必要に応じて、1種以上の医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項31】
組成物が経口又は静脈内投与用に製剤化されている、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
組成物が経口投与用に製剤化されており、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む医薬的に許容される賦形剤1種以上を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
i)SAHA(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)及びii)ペメトレキセドN−[4−[2−(2−アミノ−4,7−ジヒドロ−4−オキソ−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−5−イル)エチル]ベンゾイルL−グルタミン酸)二ナトリウム塩七水和物)を含む、請求項30〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2009−514874(P2009−514874A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539056(P2008−539056)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/042950
【国際公開番号】WO2007/056135
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】