説明

SAR装置

【課題】レンジ方向の観測幅やオフナディア角が制約され広観測幅の観測ができなくなる問題、及び受信信号の同士の重なりが大きくなるため、レンジ・アンビギュイティが増加する問題がある。
【解決手段】本発明のSAR装置は、H偏波に対し偏波面が+45度または−45度傾いた送信波の反射波に対するH偏波受信とV偏波受信の受信データを各々、H偏波送信に対する第一の偏波成分(HH偏波成分又はHV偏波成分)とV偏波に対する第二の偏波成分(VH偏波成分又はVV偏波成分)とに、合計4種類の偏波成分(HH、HV、VH、VV)のデータとして分離し、第一又は第二の偏波成分データの位相を送信パルス毎に交互に0度と180度に反転する補正移相器と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星や航空機等の飛翔体を利用したリモートセンシングの分野では、地表の状態を撮像するためのセンサとして、マイクロ波帯を用いる4偏波合成開口レーダ(フルポラリメトリSAR;Synthetic Aperture Radar、以下フルポラリメトリSARと称す)が用いられている。
【0003】
関連するフルポラリメトリSARの技術が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたフルポラリメトリSARでは、通常、H偏波(水平偏波)の送信パルスとV偏波(垂直偏波)の送信パルスを交互に送信する。その上で、H偏波の地表反射波とV偏波の地表反射波を、各偏波に対応した2つのアンテナと受信系により同時に受信する。
【0004】
図7に、H偏波(水平偏波)の送信パルスとV偏波(垂直偏波)の送信パルスを交互に送信した場合の受信波の成分を示す。送信では、パルス毎にH偏波(水平偏波)の送信パルスとV偏波(垂直偏波)を観測対象に送信する。観測対象から反射された反射波は、H偏波(水平偏波)を受信する第一の受信機と、V偏波(垂直偏波)を受信する第二の受信器により受信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−085169号公報(段落「0043」〜「0044」、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フルポラリメトリSARは、H偏波とV偏波を交互に送信するため、単偏波送信を行うSARに比べ、パルス繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency;以下PRFと称す)を高く設定する必要がある。PRFを高く設定した場合、レンジ方向の観測幅やオフナディア角が制約され広観測幅の観測ができなくなる問題があった。また受信信号の同士の重なり大きくなるため、レンジ・アンビギュイティが増加するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、レンジ方向の観測幅やオフナディア角が制約され広観測幅の観測ができなくなる問題、及び受信信号の同士の重なりが大きくなるため、レンジ・アンビギュイティが増加するという問題を解決するSAR装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のSAR装置は、周波数変調されたパルス信号を生成し、パルス信号を出力する送信機と、パルス信号が入力される度に、入力されたパルス信号の位相を180度毎に切り替え、出力する移相器と、送信機または移相器から出力されたパルス信号をH偏波で送信すると共に、H偏波で受信信号を受信し、受信したH偏波の受信信号を第一の受信機に出力するH偏波アンテナと、送信機または移相器から出力されたパルス信号をV偏波で送信すると共に、V偏波で受信信号を受信し、受信したV偏波の受信信号を第二の受信機に出力するV偏波アンテナと、V偏波を受信する第一の受信機と、V偏波を受信する第二の受信機と、H偏波に対し偏波面が+45度または−45度傾いた送信波の反射波に対するH偏波受信とV偏波受信の受信データを各々、H偏波送信に対する第一の偏波成分(HH偏波成分又はHV偏波成分)とV偏波に対する第二の偏波成分(VH偏波成分又はVV偏波成分)とに、合計4種類の偏波成分(HH、HV、VH、VV)のデータとして分離し、第一又は第二の偏波成分のデータの位相を送信パルス毎に交互に0度と180度に反転する補正移相器を有する分離処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるSAR装置によれば、レンジ方向の観測幅やオフナディア角が制約され広観測幅の観測ができなくなる問題、及び受信信号の同士の重なり大きくなるため、レンジ・アンビギュイティが増加するという問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による第一の実施形態のSAR装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による第一の実施形態の送信偏波と受信偏波の成分を示す図である。
【図3】本発明による第一の実施形態の偏波分離処理される受信偏波の成分を示す図である。
【図4】本発明による第一の実施形態のSAR装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】(a)本発明による第一の実施形態の+45度送信H受信のドップラースペクトラムを示す。
【0011】
(b)本発明による第一の実施形態の−45度送信H受信のドップラースペクトラムを示す。
【図6】(a)本発明による第一の実施形態の偏波分離後のH受信データのドップラースペクトラムを示す。
【0012】
(b)本発明による第一の実施形態の偏波分離後の0/180度の位相補正後のV受信データのドップラースペクトラムを示す。
【図7】一般的なSAR装置の送信偏波と受信波の成分を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
[第一の実施形態]
図1は、本発明による第一の実施形態のSAR装置を示すブロック図である。図1において、SAR装置1は、送信機11と、第一の受信機12と、第二の受信機13と、移相器14と、H偏波アンテナ15と、V偏波アンテナ16と、H偏波側サーキュレータ17とV偏波側サーキュレータ18と、制御装置19とより構成される。
【0015】
また、SAR画像生成装置2は、H偏波受信データからHH偏波成分とVH偏波成分、V偏波受信データからHV偏波成分とVV偏波成分に分離する偏波分離処理部20と、H偏波受信データとV偏波受信データからSAR画像を再生するSAR画像再生処理部21と、分離した各偏波データのSAR画像から、フルポラリメトリSAR画像を生成するフルポラリメトリSAR画像生成部22より構成される。
【0016】
送信機11は、周波数変調された送信パルス信号を生成する。例えば、直線周波数に変調された線形パルス変調器が挙げられる。第一の受信機12は、観測対象から反射したH偏波の受信信号を受信する。第二の受信機13は、観測対象から反射したV偏波の受信信号を受信する。これらの受信機は、受信信号を受信する一般的な受信機である。
【0017】
移相器14は、送信パルス毎に位相を切り替える。H偏波アンテナ15と、V偏波アンテナ16は、H偏波及びV偏波でパルス信号を送信しH偏波及びV偏波の受信信号を受信するアンテナである。H偏波側サーキュレータ17とV偏波側サーキュレータ18は、送信ルートと受信ルートを切り替えるものである。
【0018】
送信機11から出力された送信パルス信号は、2分岐され、サーキュレータを介して、H偏波アンテナ15とV偏波アンテナ16に送信される。送信機11とV偏波アンテナ用のサーキュレータ18の間の移相器14は、制御装置19が発生したPRI(Pulse Repetition Interval)トリガにより、送信パルス毎に0度と180度の位相に切り替わる。ここで、制御装置19は、任意のPRIで送信トリガや受信ゲート等のタイミング信号を発生し、各部のタイミング制御を行う装置である。
【0019】
従って、H偏波アンテナ15からはH偏波の送信パルスが送信され、V偏波アンテナ16からは、H偏波の位相に対し、送信パルス毎に0度と180度に位相が変化した+V偏波と−V偏波送信パルスが交互に送信される。なお、ここではH偏波に対する相対位相0度のV偏波を+V偏波、相対位相180度のV偏波を−V偏波と称している。
【0020】
すなわち、全体で見ると、H偏波に対し偏波面が+45度と−45度に傾いた互いに直交する2種類の直線偏波が、H偏波アンテナ15とV偏波アンテナ16から交互に観測対象(例えば、地表が挙げられる)に向かい送信される。
【0021】
なお、本実施形態では、送信機11とV偏波アンテナ用のサーキュレータ18の間に移相器14が接続されているが、送信機11とH偏波アンテナ用のサーキュレータ17の間に接続されていてもよい。この場合、V偏波アンテナ16からはV偏波が送信され、H偏波アンテナ15からは、送信パルス毎に0度と180度に位相が変化した+H偏波と−H偏波が交互に送信される。
【0022】
続いて、観測対象からの反射波を、H偏波アンテナ15とV偏波アンテナ16で受信する。受信後、H偏波アンテナ用のサーキュレータ17とV偏波アンテナ用のサーキュレータ18を介し、第一の受信機12(H受信)と第二の受信機13(V受信)により各々受信し、デジタルデータとして偏波分離処理部20へ出力される。
【0023】
図2に、+45度送信偏波の送信パルスと−45度送信偏波の送信パルスを交互に送信した場合の受信波の成分を示す。送信では、上述したように送信パルス毎に移相器14が変化するため、+45度送信偏波の送信パルスと−45度送信偏波の送信パルスを交互に送信する。観測対象から反射された反射波は、H偏波(水平偏波)を受信する第一の受信機12と、V偏波(垂直偏波)を受信する第二の受信器13により受信される。
【0024】
第一の受信機12は、+45度送信偏波の送信パルス信号に対する反射波を受信する場合は、HH+VH信号成分を受信し、−45度送信偏波の送信パルス信号に対する反射波を受信する場合は、HH−VH信号成分を受信する。また、第一の受信機12が、HH+VH信号成分を受信した場合は、HH+VH信号成分の前後のHH−VH信号成分が虚像成分となる。
【0025】
第二の受信機13は、+45度送信偏波の送信パルス信号に対する反射波を受信する場合は、HV+VV信号成分を受信し、−45度送信偏波の送信パルス信号に対する反射波を受信する場合は、HV−VV信号成分を受信する。また、第二の受信機13が、HV+VV信号成分を受信した場合は、HV+VV信号成分の前後のHV−VV信号成分が虚像成分となる。
【0026】
本実施の形態では、送信と受信でアンテナを共用しているが、送信と受信で別々のアンテナを構成しても良い。例えば、送信用には+45度送信偏波アンテナと−45度送信偏波アンテナとし、受信用にはH偏波アンテナとV偏波アンテナとしても良い。
【0027】
また、送信偏波と受信偏波は、送信の偏波をH偏波とV偏波、受信の偏波を+45度受信偏波と−45度受信偏波というような組み替えを行っても良い。2種類の受信偏波と同じ偏波を同一パルス内で送信し、それと直交する偏波成分の送信と交互に繰り返す構成であれば良い。また、アンテナの構成は、フェーズドアレイアンテナを使用する構成でも良い。
【0028】
偏波分離処理部20は、受信データを各成分に分離する分離処理部23、24から構成され、送信パルス毎の位相を0度/180度に補正する補正移相器をそれぞれ有する。
【0029】
ここで、SAR装置1に入力される受信データは、H偏波に対し偏波面が+45度と−45度に傾いた互いに直交する2種類の直線偏波を交互に送信し、観測対象から反射した受信データであり、H受信データとV受信データがある。H受信データは、+45度送信に対するH偏波の反射波のデータ(+45度送信H偏波受信データ)と−45度送信に対するH偏波の反射波のデータ(−45度送信H偏波受信データ)である。V受信データは、+45度送信に対するV偏波の反射波のデータ(+45度送信V偏波受信データ)と−45度送信に対するV偏波の反射波のデータ(−45度送信V偏波受信データ)である。
【0030】
図3に偏波分離処理部10に入力される受信データを示す。偏波分離処理部20に入力されたH受信データは、HH偏波成分とVH偏波成分に分けられる。
【0031】
分離されたHH偏波成分は、一続きの連続したデータとしてSAR画像再生処理部21に出力される。ここで、一続きの連続したデータとは、受信した+45度送信H受信データと−45度送信H受信データを順次受信したデータのことである。HH偏波成分は、+45度と−45度のH受信データを別々に分離せずに、SAR画像再生処理部21に時系列で出力される。SAR画像再生処理部21では、受信データをそのままSAR画像再生される。この場合、後述するように、V偏波送信成分には送信パルス毎に0度/180度の位相変調がかかっているため、ドップラー周波軸上で分離され、画像化はされない。
【0032】
一方、分離されたVH偏波成分は、補正移相器において、送信パルス毎に、0度/180度の位相補正を掛けた上で、SAR画像再生処理部21に出力される。送信パルス毎に0度/180度の位相補正する方法としては、例えば、補正移相器に実装したソフトウェアにより、補正位相量を加算又は減算する方法が挙げられる。
【0033】
SAR画像再生処理部21では、VH偏波成分は位相が揃うため画像化されるが、HH偏波成分は、0度/180度の位相変調がかかることになり、ドップラー周波軸上で分離され、画像化されない。
【0034】
同様に偏波分離処理部20に入力されたV受信データは、V偏波受信データをパルス毎に分けずにそのまま時系列で出力するHV偏波成分と、送信パルス毎の位相を0度/180度に補正したVV偏波成分に分けられる。
【0035】
以上の処理をH偏波受信データとV偏波受信データに行うことで、4種類の偏波成分(HH、HV、VH、VV)に分離することができる。
【0036】
次に、本実施形態のSAR装置の動作のフローチャートを図4に示す。初めに、送信機11は、周波数変調されたパルス信号でパルス信号が発生する度に180度位相が異なるパルス信号を送信する(S2)。
【0037】
次に、H偏波アンテナ15は、H偏波の受信信号を受信し、受信したH偏波を第一の受信機12に出力する(S3−1)。また、V偏波アンテナ16は、V偏波の受信信号を受信し、受信したV偏波を第二の受信機13に出力する(S3−2)。第一の受信機12は偏波分離処理部20に±45度の送信H偏波受信データを入力する(S4−1)。第二の受信機13は偏波分離処理部20に±45度の送信V偏波受信データを入力する(S4−2)。
【0038】
偏波分離処理部20は、H偏波受信データが入力されると、分離処理部23でHH偏波成分とVH偏波成分に分離され、HH偏波成分は、パルス毎に分けずにそのまま時系列で出力する(S5−1)。また、VH偏波成分は、パルス毎の位相を0度/180度に位相変調する(S5−2)。同様にV偏波受信データが入力されると、分離処理部24でHV偏波成分とVV偏波成分に分離され、HV偏波成分は、パルス毎に分けずにそのまま時系列で出力する(S5−3)。また、VV偏波成分は、パルス毎の位相を0度/180度に位相変調する(S5−4)。次に分離した各偏波データをSAR画像化する(S6)。最後にフルポラリメトリSAR画像を生成する(S7)。
【0039】
次に、本実施形態の偏波分離に関して更に詳細に説明する。図5及び図6に各受信データのドップラースペクトラムを示す。
【0040】
図5(a)は+45度送信H受信データのドップラースペクトラムである。+45度送信H受信データのドップラースペクトラムは、HH偏波成分とVH偏波成分の信号が含まれるが、両成分共に、0Hzを中心としたスペクトラムを有している。太い実線がHH偏波成分、細い実線がVH偏波成分である。
【0041】
ここで、+45度送信H受信データは送信パルス毎に交互に受信されるため、PRF/2の整数倍の周波数を中心として、HH偏波成分・VH偏波成分共に、折り返しのスペクトラムが載っている。太い波線がHH偏波成分の折り返し、細い波線がVH偏波成分の折り返しである。
【0042】
一方、図5(b)は、同様に、−45度送信H受信データのドップラースペクトラムであり、HH偏波成分と−VH偏波成分のスペクトラムを示している。ここで、H偏波受信データを送信パルス毎に、+45度送信H受信データと−45度送信H受信データに分けるのではなく、一続きの連続したデータとして扱う。この時のドップラースペクトラムは図6(a)となる。HH偏波成分は連続のデータであるから、折り返しはPRFの整数倍の所にのみ発生する。一方、VH偏波成分は、交互に位相が0度と180度反転していることにより、(PRF/2+PRF×整数倍)の周波数を中心とした位置にスペクトラムが現れる。よって、HH偏波成分とVH偏波成分がドップラー周波数軸上で分離されていることが分かる。よって、SAR画像再生処理部において、合成開口処理を行うことにより、VH偏波成分はほとんど取り除かれ、HH偏波成分の信号のみによるSAR画像を得ることができる。
【0043】
ここで、合成開口処理とは、SAR画像再生において進行方向(アジマス方向)の高分解能化を行うために合成開口帯域幅内の位相合成・積算を行う処理であり、SAR画像再生処理の一部を構成する一般的な合成開口処理のことをいう。ドップラー周波数軸上における合成開口帯域幅内のデータを取り出して、位相合成・積算する。HH偏波成分の合成開口を行う場合、HH偏波成分はドップラー周波数軸上で合成開口帯域幅内にあり、VH偏波成分はドップラー周波数軸上における合成開口帯域幅外にあるので、合成開口処理(合成開口帯域内の積算)を行うことで、合成開口帯域幅外に存在するVH偏波成分は取り除かれる。
【0044】
合成開口帯域幅は図6(a)の網掛けの範囲のみである。そのため、SAR画像再生処理部において、合成開口処理を行うことにより、VH偏波成分はほとんど取り除かれ、HH偏波成分の信号のみによるSAR画像を得ることができる。なお、ここではSAR画像再生処理の合成開口処理でドップラー周波数軸上でHH偏波成分と分離されたVH偏波を取り除く方法を示したが、SAR画像再生処理の前にフーリエ変換等を行いドップラー周波数軸上でVH偏波成分を取り除く処理や、周波数帯域フィルタによりVH偏波成分を取り除く処理を含める方法を取っても良い。
【0045】
一方、送信パルス毎に、0度と180度の位相補正を行うと、図6(b)のように、HH偏波とVH偏波のドップラースペクトラム上の位置が入れ替わる。SAR画像再生処理部において、合成開口処理を行うことにより、HH偏波成分はほとんど取り除かれ、VH偏波成分の信号のみによるSAR画像を得ることができる。V偏波受信データについても同様であり、HV偏波成分・VV偏波成分を分離することが可能となる。このように、周波数をPRF/2だけずらすことで、各偏波成分を抽出することができる。なお、本実施形態では0度と180度の位相補正でVH偏波成分の抽出を行ったが、フーリエ変換を行って周波数軸上でPRF/2だけずらすことで抽出する等も方法を取ることも可能である。
【0046】
合成開口帯域幅は図6(a)、(b)の網掛けの範囲のみである。そのため、SAR画像再生処理部において、合成開口処理を行うことにより、HV偏波成分はほとんど取り除かれ、HH偏波成分の信号のみによるSAR画像を得ることができる。
【0047】
なお、完全に分離するためには、PRFを高めに設定する必要があるが、合成開口帯域幅を単偏波観測時より狭くすることで、PRFは比較的低くても良い。
【0048】
このように、本実施形態のSAR装置では、4種類の偏波成分(HH、HV、VH、VV)を分離することができる。そのため、各偏波成分毎のPRFは、実際の動作PRFと同じであり、特許文献1に記載のSAR装置に比べ、PRFを低く設定することが可能であり、広い観測幅での観測や高オフナディア角観測を実現可能とする効果がある。また、特許文献1に記載のSAR装置では、各偏波毎のPRFが実際の動作PRFの半分となることで、アジマスとレンジのアンビギュイティの悪くなっていたが、本実施形態のSAR装置ではPRFを低く設定することが可能となり、この制約を軽減することができる効果がある。
【0049】
なお、本実施の形態では、偏波分離を位相補正で行ったが、これに限らず、フーリエ変換を行った上で、周波数軸上でPRF/2だけずらすことで抽出する等も方法を取ってもよい。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 SAR装置
2 SAR画像再生解析装置
11 送信機
12 第一の受信機
13 第二の受信機
14 移相器
15 H偏波アンテナ
16 V偏波アンテナ
17、18 サーキュレータ
19 制御装置
20 偏波分離処理部
21 SAR画像再生処理部
22 フルポラリメトリSAR画像生成部
23、24 分離処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調されたパルス信号を生成し、前記パルス信号を出力する送信機と、
前記パルス信号が入力される度に、入力された前記パルス信号の位相を180度毎に切り替え、出力する移相器と、
前記送信機または前記移相器から出力された前記パルス信号をH偏波で送信すると共に、H偏波の受信信号を受信し、受信したH偏波の受信信号を前記第一の受信機に出力するH偏波アンテナと、
前記送信機または前記移相器から出力された前記パルス信号をV偏波で送信すると共に、V偏波の受信信号を受信し、受信したV偏波の受信信号を前記第二の受信機に出力するV偏波アンテナと、
前記H偏波を受信する第一の受信機と、
前記V偏波を受信する第二の受信機と、
前記H偏波に対し偏波面が+45度または−45度傾いた送信波の反射波に対するH偏波受信とV偏波受信の受信データを各々、H偏波送信に対する第一の偏波成分(HH偏波成分又はHV偏波成分)とV偏波に対する第二の偏波成分(VH偏波成分又はVV偏波成分)とに、合計4種類の偏波成分(HH、HV、VH、VV)のデータとして分離し、前記第一又は第二の偏波成分データの位相を送信パルス毎に交互に0度と180度に反転する補正移相器を有する分離処理部と、
を備えるSAR装置。
【請求項2】
前記位相補正済みの4種類の偏波成分のデータに対し、ドップラー周波数軸上で分離された不要偏波成分を取り除く処理をさらに含む、請求項1に記載のSAR装置。
【請求項3】
前記位相補正済みの4種類の偏波成分のデータを、それぞれSAR画像に再生するSAR画像再生処理部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載のSAR装置。
【請求項4】
H偏波に対し偏波面が+45度または−45度傾いた送信波の反射波に対するH偏波受信とV偏波受信の受信データを各々、H偏波送信に対する第一の偏波成分(HH偏波成分又はHV偏波成分)とV偏波に対する第二の偏波成分(VH偏波成分又はVV偏波成分)とに、合計4種類の偏波成分(HH、HV、VH、VV)のデータとして分離するステップと、
前記第一又は第二の偏波成分のデータの位相を送信パルス毎に交互に0度と180度に反転するステップと、
周波数変調されたパルス信号を生成し、前記パルス信号を出力するステップと、
H偏波アンテナからH偏波で前記パルス信号を送信し、
且つ前記パルス信号が発生する度にV偏波アンテナからV偏波で180度位相が異なるパルス信号を送信するステップと、
H偏波で受信信号を受信し、受信したH偏波の受信信号を前記H偏波受信機に出力するステップと、
V偏波で受信信号を受信し、受信したV偏波の受信信号を前記V偏波受信機に出力するステップと、
を含むSAR装置の受信方法。
【請求項5】
前記位相補正済みの4種類の偏波成分のデータに対し、ドップラー周波数軸上で分離された不要偏波成分を取り除くステップをさらに含む、
請求項4に記載のSAR装置の受信方法。
【請求項6】
前記位相補正済みの4種類の偏波成分のデータを、それぞれSAR画像に再生するステップとをさらに含む、
請求項4又は5に記載のSAR装置の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−42262(P2012−42262A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182161(P2010−182161)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】