説明

SARMを用いた前立腺肥大症治療

【課題】前立腺肥大症(BPH)の防止及び治療する方法を提供する。
【解決手段】下記構造の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはいずれかの組み合わせ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺肥大症(BPH)の防止及び治療に関する。更に詳しくは、本発明は、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを被験者へと投与することで、男性被験者における前立腺肥大症の発生を治療、予防、抑制、阻害、若しくは削減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺肥大症(BPH)は、前立腺の良性拡張である。BPHは、複数の臓器にみられる最も一般的な良性の増殖異常であり、成人男性における疾病率の主たる原因である。BPHの初期発生は、早ければ30歳から40歳には始まり、それら年代における疾患率は約10%である。高齢になると、疾患率は漸次増加する。50歳の男性の75%以上にBPHが発生し、90歳代迄には疾病率が88%に達する。寿命が延びることは勿論のこと、米国の一般的な高齢化が、BPH被験者数の連続的増加に寄与すると予測される。
【0003】
多くの場合、BPHは、結果として前立腺にかかる尿道(尿道前立腺部)の一部を段階的に圧迫する。膀胱が完全に空にならず、排尿の際に灼熱痛や同様の不快感を伴い、このことで、患者に頻繁に尿意を覚えさせる。尿流の妨げによって、膀胱の排出口閉塞、及び失禁として既知の状況である、残留尿による制御不能な尿自制のために、尿閉障害は勿論のこと、所望時に排尿を開始することに対する障害を含めた排尿制御が失われ得る。
【0004】
BPHには2つの要素が存在する。第1の要素は、前立腺の拡張を原因とするものであり、結果として尿道を圧迫し、膀胱よりの尿の流れを妨げる。第2の要素は、膀胱頚部及び前立腺自体の平滑筋の緊張の増加を原因とするものであり、膀胱が空にならないようにし、α1アドレナリン受容体(α1−Ars)によって調節される。
【0005】
アンドロゲンテストステロン及びジヒドロテストステロン(DHT)は、前立腺におけるBPH生成に関連する要因である。テストステロンは、5−アルファ−レダクターゼ(5αレダクターゼ)によってDHTへと変換され、アンドロゲンレセプタに対する結合親和力のおかげで、テストステロンと比較して約5倍以上強力である。DHTは前立腺内で細胞質膜レセプタに結合し、そこでRNA及びDNAの合成が開始される。この作用は、次にタンパク質合成や前立腺の異常成長を誘発する。哺乳類、特にヒトには、5−アルファ−レダクターゼの2つの異性体が存在する。第1型のアイソエンザイムは、肝臓や皮膚に於いて高く発現し、テストステロンに対し低い親和性を有し、また、より分解試薬的に機能する。一方で、第2型のアイソエンザイムは、主にアンドロゲン標的組織で発現し、テストステロンに対し高い親和性を有し、DHTへと変換することによってテストステロンのアンドロゲン効果を増幅させる。
【0006】
アンドロゲン欠乏は、BPHの妨害兆候を減少させうる。さらには、現代の臨床的な証明では、5−アルファ−レダクターゼの抑制がヒトの男性におけるBPH兆候を逆転させることが示されている(Strauch, G. ら、 Eur.Urol., Vol. 26, pp. 247-252 (1994) ; Rhodes, L. ら、 Prostate, Vol. 22, pp. 43-51(1993))。さらには、5−アルファ−レダクターゼ活性が、通常の前立腺組織と比較して、BPH組織よりの細胞中で高くなることが明らかである(Bone, K. , The European Journal of Herbal Medicine, Vol. 4(1), pp. 15-24 (1998))。
【0007】
5−アルファ−レダクターゼがどのようにして前立腺の成長を調整するのかについての知識は、結果として、BPHの合成を制御し、尿閉を妨げる際に用いられるための5−アルファ−レダクターゼ2型選択的阻害剤フィナステリドのような薬剤の開発に結びつく。フィナステリド(PROSCAR)が、DHTへのテストステロンの変換を阻害し、前立腺のサイズを減少させることが解っており、最大尿流速及び兆候の減少を導き出す(Strauch ら、1994年 ; Rhodes ら、 1993年 ; Russel ら、 (1994年), Annu. Rev. Biochem. 63: 25-61)。
【0008】
BPHと診断された患者は、治療の為に複数のオプションを有している。それらは、待機療法、外科的処置、レーザーによる前立腺の切除、熱療法、および薬剤療法である。大気療法は、BPHの兆候による苦痛が無い、または最小限であるような男性に選択される手段であり、状況の悪化を確認するための日常的な検査や観察が含まれる。外科的処置は、BPHの治療として現在認可されており、一般的には、治療が差し控えられており、耐え難い、若しくは著しく強い症状に備えるものである。現在BPHに苦しむ患者のうち、ごく一部(2−3%)のみが外科的処置を受けている。外科的処置には、経尿道的前立腺切除(TURP)、前立腺経尿道切開(TUIP)、及び観血療法が含まれる。外科的な処置は、BPHの兆候を軽くするという点では効果的であるが、一方で結果的に尿道前立腺部に著しい損傷を被ってしまう。レーザーによる前立腺の切除や熱療法も、低侵襲性ではあるが、尿道前立腺部に著しい損傷を被ってしまう。また、BPHの外科的治療は、高齢の男性人口が増加するにつれて、年間にかかる費用が10億ドルを越えると試算されている。
【0009】
BPHの治療に有用な薬剤は、前立腺を縮小させる、若しくは前立腺細胞の成長を阻害又は遅延させることによって、BPHを特徴づける前立腺の拡張を治療することを目的として製造されている。フィナステリド(Proscar. RTM.,Merck)は、BPH症状の治療に指定されている、そのような一治療法である。フィナステリドは、酵素5−アルファ−レダクターゼ活性2型の競合的阻害剤であり、前立腺内のジヒドロテストステロンへとテストステロンを変換する原因である。別の薬品は、尿道の閉塞を開放するべく前立腺及び膀胱頚部内の筋肉を弛緩させることを目的としている。テラゾシン(Hytrin, Abbott)は、前立腺、尿道、及び膀胱内で、平滑筋の緊張を和らげることで機能するアンドロゲンレセプタブロッキング試薬(α1−ARブロッカー)である。
【0010】
BPHは、そのまま放置すれば、健康上の悲惨な結果を導きかねない。BPHは、結果的に、急性尿閉(完全に排尿不可)、深刻に生命の危険を伴う尿路感染及び敗血症、及び持続性膀胱及び腎臓障害を伴う。BPHを治療するために、革新的な取り組みが、基礎科学レベル及び臨床レベルの双方で取り急ぎ必要とされている。新規の非侵襲性治療法の開発が、結果として治療を受けようと考えるBPH患者数の著しい増加を招く。本発明は、このような要求を満たすべく実行される。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0011】
一実施例では、本発明は前立腺肥大症に苦しむ男性被験者の治療の方法に関する。また、方法には、被験者に対し選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを投与する過程を含む。
【0012】
別の実施例では、本発明は男性被験者における前立腺肥大症の発生を予防、抑制、阻害、若しくは削減の方法に関する。また、方法には、被験者に対し選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを投与する過程を含む。
【0013】
別の実施例では、本発明は脱毛症に苦しむ男性被験者の治療の方法に関する。また、方法には、被験者に対し治療的に効果的な量の5−アルファ−レダクターゼ酵素阻害剤を投与する過程を含み、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせが含まれる。
【0014】
本発明は、さらに、5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する方法に関し、方法には酵素と、効果的な5−アルファ−レダクターゼ阻害量の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせとを接触させる過程が含まれる。
【0015】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0016】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0017】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0018】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0019】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0020】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0021】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0022】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0023】
別の実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0024】
別の実施例では、SARMはアンドロゲンレセプタのアゴニストである。別の実施例では、SARMはアンドロゲンレセプタのアンタゴニストである。別の実施例では、SARMは5−アルファ−レダクターゼ酵素の阻害剤である。別の実施例では、SARMは5−アルファ−レダクターゼ酵素の競合的阻害剤である。
【0025】
一実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素は、1型5−アルファ−レダクターゼ酵素である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素は、2型5−アルファ−レダクターゼ酵素である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素は、テストステロン5−アルファ−レダクターゼ酵素であり、すなわちテストステロン(T)をジヒドロテストステロン(DHT)へと変換するものである。
【0026】
一実施例では、本発明は、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする方法を提供し、それにはアンドロゲンレセプタを化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数、又は化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数を含む化合物と接触させる過程が含まれ、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする。一実施例では、化合物は化合物IIであり、別の実施例では化合物VIである。
【0027】
一実施例では、本発明は、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする方法を提供し、それにはアンドロゲンレセプタを化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数、又は化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数を含む化合物と接触させる過程が含まれ、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする。一実施例では、化合物は化合物IIであり、別の実施例では化合物VIである。
【0028】
一実施例では、化合物I乃至VIは、アンドロゲンレセプタと接触した部分的アゴニスト及び選択的アゴニストであり、また、被験者に投与し、レセプターに結合するため内因性リガンド能力をブロッキングすることでテストステロン及びDHTの分裂アクションを妨げる。一実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0029】
一実施例では、化合物I乃至VIが、アンドロゲン応答性DNAの副制御因子若しくは副活性化物質の漸増を防止し、またAR依存性細胞(前立腺内腺上皮)の成長を防止する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0030】
一実施例では、化合物I乃至VIが、アンドロゲン応答性DNAの副抑制体の漸増を防止し、またAR依存性細胞(前立腺内腺上皮)の成長を防止する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0031】
一実施例では、化合物I乃至VIが、レセプターと結合するための内在リガンド能力をブロッキングすることでテストステロン及びDHTの分裂アクションを防止し、前立腺上皮の増殖を誘発するべくパラクリン法で標識するその他ホルモン及び成長ファクターの変換を誘発する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0032】
一実施例では、化合物I乃至VIが、レセプターと結合するための内在リガンド能力をブロッキングすることでテストステロン及びDHTの分裂アクションを防止し、腺上皮のプログラム細胞死を誘発する下流分子のシグナル伝達を誘発する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0033】
本発明は、BPHの発生の治療、予防、抑制、阻害、若しくは削減の安全で効果的な方法を提供するものであり、BPHの兆候及びサインに苦しむ男性被験者を治療するのに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】1型及び2型の5−アルファ−レダクターゼによるテストステロン代謝における、化合物VIすなわちSARMの効果を示す図である。データは、βガラクトシダーゼアッセイよりのUV吸収線に対して規格化されている。
【図2A】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2B】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2C】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2D】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2E】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2F】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2G】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2H】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図2I】ホルモンステータスの異なるマウスにおける精嚢及び肛門挙筋の、前立腺サイズの化合物VIの効果を示す図である。
【図3】異なる治療期間後の、無処置オスラットの腹側前立腺重量におけるヒドロキシフルタミド、化合物VII、及びフィナステリドの薬理学的効果(n=5)を示す図である。
【図4】異なる治療期間後の、無処置オスラットの精嚢重量におけるヒドロキシフルタミド、化合物VII、及びフィナステリドの薬理学的効果(n=5)を示す図である。
【図5】異なる治療期間後の、無処置オスラットの肛門挙筋重量におけるヒドロキシフルタミド、化合物VII、及びフィナステリドの薬理学的効果(n=5)を示す図である。
【図6】無処置のSDラットに於ける、化合物VIIによる前立腺の減少を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
一実施例では、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)を被験者へと投与することで、男性被験者における前立腺肥大症の発生を治療、防止、抑制、阻害、若しくは減少させるための方法を提供する。別の実施例では、方法にはSARMの類似体の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMの誘導体の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMの異性体の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMの代謝産物の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMの薬剤的に認可されている塩の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMの水和物の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMのN−酸化物の投与が含まれる。別の実施例では、方法にはSARMの医薬品の投与が含まれる。
【0036】
一実施例では、本発明は、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする方法を提供し、それにはアンドロゲンレセプタを化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数、又は化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数を含む化合物と接触させる過程が含まれ、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする。一実施例では、化合物は化合物IIであり、別の実施例では化合物VIである。
【0037】
一実施例では、本発明は、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする方法を提供し、それにはアンドロゲンレセプタを化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数、又は化合物I乃至VIのいずれか若しくは複数を含む化合物と接触させる過程が含まれ、肥大を誘発するDHT能力をブロッキングする。一実施例では、化合物は化合物IIであり、別の実施例では化合物VIである。
【0038】
一実施例では、化合物I乃至VIは、アンドロゲンレセプタと接触した部分的アゴニスト及び選択的アゴニストであり、また、被験者に投与し、レセプターに結合するため内因性リガンド能力をブロッキングすることでテストステロン及びDHTの分裂アクションを妨げる。一実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0039】
一実施例では、化合物I乃至VIが、アンドロゲン応答性DNAの副制御因子若しくは副活性化物質の漸増(recruitment)を防止し、またAR依存性細胞(前立腺内腺上皮)の成長を防止する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0040】
一実施例では、化合物I乃至VIが、アンドロゲン応答性DNAの副抑制体の漸増を防止し、またAR依存性細胞(前立腺内腺上皮)の成長を防止する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0041】
一実施例では、化合物I乃至VIが、レセプターと結合するための内在リガンド能力をブロッキングすることでテストステロン及びDHTの分裂アクションを防止し、前立腺上皮の増殖を誘発するべくパラクリン法で標識するその他ホルモン及び成長ファクターの変換を誘発する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0042】
一実施例では、化合物I乃至VIが、レセプターと結合するための内在リガンド能力をブロッキングすることでテストステロン及びDHTの分裂アクションを防止し、腺上皮のプログラム細胞死を誘発する下流分子のシグナル伝達を誘発する。実施例では、化合物とは化合物IIを指す。別の実施例では、化合物とは化合物VIを指す。
【0043】
一実施例では、化合物I乃至VIが、筋肉内では選択的アゴニスト、前立腺内では部分的アゴニストである。アンドロゲンのアクションは、アンドロゲンレセプタ(AR)を介して媒介される。ARは、DNA中のアンドロゲン応答分子に対して結合することでアンドロゲン応答遺伝子の発現を制御するリガンド依存転写制御因子である。アンドロゲン応答遺伝子は、アンドロゲン依存型の増殖及びアンドロゲン依存型細胞死に応答可能である。また、細胞の情報伝達カスケードにおける別の遺伝子は、ARを介して、及びARに続いて情報伝達することによって細胞増殖及び抑圧に寄与する(ここでARは、AR依存DNAと相互作用することで上方制御されているが、細胞増殖に組み込まれた代替レセプタを介して分裂的である(すなわちIGF−I))。前立腺は、アンドロゲン感受性細胞であり、よってテストステロン及びDHTは(ARを介した)前立腺の標準の構造的及び機能的完全性を維持する。しかしながら、T及びDHTは、また、前立腺内に於いて強力な分裂促進因子であり、BPHや癌のような前立腺疾患という最終結果を伴って、AR依存細胞(例えば前立腺上皮組織)の異常成長を導きうる。AR(化合物I乃至VIの部分的アゴニストのような)のための、内在リガンドの阻害若しくは去勢によるアンドロゲン担体の除去が、テストステロンやDHT上に依存する代謝変化を防止する。
【0044】
一実施例では、本発明はまた、脱毛症に苦しむ男性被験者の治療の方法に関する。また、方法には、被験者に対し治療に効果的な量の5−アルファ−レダクターゼ1型酵素阻害剤及び/又は2型酵素阻害剤を投与する過程を含み、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の類似体が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の誘導体が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の異性体が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の代謝産物が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の薬剤的に認可されている塩が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の水和物が含まれる。別の実施例では、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)のN−酸化物が含まれる。
【0045】
別の実施例では、本発明はまた、5−アルファ−レダクターゼ1型及び/又は2型酵素を阻害する方法を提供し、酵素と効果的な5−アルファ−レダクターゼ抑制量の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)とを積極させる過程を含む。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の類似体を投与する過程が含まれる。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の誘導体を投与する過程が含まれる。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の異性体を投与する過程が含まれる。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の代謝産物を投与する過程が含まれる。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の薬剤的に認可されている塩を投与する過程が含まれる。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)の水和物を投与する過程が含まれる。別の実施例では、方法には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)のN−酸化物を投与する過程が含まれる。
【0046】
選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)は、アンドロゲンレセプタのための非ステロイド配位子のアンドロゲン及びタンパク同化アクティビティを示す、アンドロゲンレセプタ標的因子(ARTA)の類(class)である。それら新規の因子は、性腺機能低下症、サルコペニア、赤血球新生、ED、性欲減退、骨粗鬆症、及び不妊症のような男女のホルモン関連コンディションの治療に有用である。さらには、SARMは、経口テストステロン代償療法、前立腺癌の治療、前立腺癌の画像診断、及び女性の性的衝動の維持に有用である。
【0047】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0048】
一実施例ではSARMは化学式1の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式1の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0049】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がT基をOHに置換した化学式1の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がR1基をCH3に置換した化学式1の化合物である。
【0050】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0051】
一実施例ではSARMは化学式2の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式2の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0052】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式2の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式2の化合物である。
【0053】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0054】
一実施例ではSARMは化学式3の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式3の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0055】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、T基をOHに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、R1基をCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ1基をNHCOCH3に置換した化学式3の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ1基をFに置換した化学式3の化合物である。
【0056】
置換基Z及びYは、それら置換基群を有する環状部(以後、A環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基YがA環のメタ位に存在する。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在し、置換基YがA環のメタ位に存在する。
【0057】
置換基Q1及びQ2は、それら置換基群を有する環状部(以後、B環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基Q1がB環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基Q2がHである。別の実施例では、置換基Q1がB環のパラ位に存在し、置換基Q2がHである。別の実施例では、置換基Q1がNHCOCH3でB環のパラ位に存在し、置換基Q2がHである。
【0058】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0059】
一実施例ではSARMは化学式4の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式4の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0060】
一実施例では、SARM化合物が、X基をOに置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、G基をOに置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をNO2に置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、T基をOHに置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、R1基をCH3に置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、R2基をCH3に置換した化学式4の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに、R2基をClに置換した化学式4の化合物である。
【0061】
置換基Z、Y及びR3は、それら置換基群を有する環状部(以後、A環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基YがA環のメタ位に存在する。別の実施例では、置換基ZがA環のパラ位に存在し、置換基YがA環のメタ位に存在する。
【0062】
置換基Q及びR2は、それら置換基群を有する環状部(以後、B環と記載)のいずれの位置に在っても良い。別の実施例では、置換基QがB環のパラ位に存在する。別の実施例では、置換基QがNHCOCH3であり、置換基QがB環のパラ位に存在する。
【0063】
ここで考えられているとおり、整数m及びnが1よりも大きい時、置換基R2及びR3がある特定の置換基に限定されることはなく、先に列挙された置換基のいかなる組み合わせであっても良い。
【0064】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。


【0065】
一実施例ではSARMは化学式5の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式5の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0066】
一実施例では、Z基をNO2に置換した化学式5の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Z基をCNに置換した化学式5の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がY基をCF3に置換した化学式5の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をNHCOCH3に置換した化学式5の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がQ基をFに置換した化学式5の化合物である。別の実施例では、SARM化合物が、Q基をFに、またR2基をCH3に置換した化学式5の化合物である。別の実施例では、SARM化合物がR2基をClに置換した化学式5の化合物である。
【0067】
化合物IVの為に記載されているように、置換基Z、Y及びR3は、A環のいずれの位置に在っても良い。置換基Q及びR2は、B環のいずれの位置に在っても良い。さらには、上述の通り、整数m及びnが1よりも大きい時、置換基R2及びR3がある特定の置換基に限定されることはなく、先に列挙された置換基のいかなる組み合わせであっても良い。
【0068】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0069】
一実施例ではSARMは化学式6の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式6の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0070】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0071】
一実施例ではSARMは化学式7の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式7の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0072】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0073】
一実施例ではSARMは化学式8の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式8の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0074】
一実施例では、a)BPHを治療、阻害、抑制する、又はb)脱毛症を治療する、及び/又は5−アルファ−レダクターゼ酵素を阻害する、及び/又はアンドロゲンレセプタをアンタゴナイズするSARM化合物が、次の化学式で示される。

【0075】
一実施例ではSARMは化学式9の化合物の類似体であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の誘導体であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の異性体であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の代謝産物であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の薬剤的に認可されている塩であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の医薬品であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の水和物であり、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物のN−酸化物であり、また、別の実施例ではSARMは化学式9の化合物の、類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物のいずれかの組み合わせである。
【0076】
本発明の化合物(I)及び(II)中の置換基Rは、ここではアルキル基、ハロアルキル基、ジハロアルキル基(dihaloalkyl)、トリハロアルキル基、CH2F基、CHF2基、CF3基、CF2CF3基、アリル基、フェニル基、ハロゲン基、アルケニル基、若しくはOH基のようなものが該当する。
【0077】
“アルキル”基とは、直鎖型、分枝型及び環状の飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施例では、アルキル基は1乃至12個の炭素を有する。ある実施例では、アルキル基が1乃至7個の炭素を有する。ある実施例では、アルキル基が1乃至6個の炭素を有する。ある実施例では、アルキル基が1乃至4個の炭素を有する。アルキル基は、ハロゲン基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、 チオ基、及びチオアルキル基から選択される一つ若しくは複数の置換基と置換されても良く、されなくとも良い。
【0078】
“アルケニル”基は、一つ若しくは複数の二重結合を有する直鎖型、分枝型及び環状の不飽和炭化水素を指す。アルケニル基は一つの二重結合、二つの二重結合、三つの二重結合などを有していて良い。アルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基(butenyl)、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルケニル基は、ハロゲン基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、 チオ基、及びチオアルキル基から選択される一つ若しくは複数の置換基と置換されても良く、されなくとも良い。
【0079】
“ハロアルキル”基は、既述のアルキル基であって、F、Cl、Br、若しくはIのような一つ若しくは複数のハロゲン原子で置換されているものを指す。
【0080】
“アリル”基とは、少なくとも一つの炭素環式芳香族基若しくは複素環式芳香族基を有する芳香族基を指しており、それらは、ハロゲン基、ハロアルキル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、 チオ基、及びチオアルキル基より選択された一つ若しくは複数の置換基と置換されても良く、されなくとも良い。アリル環の実施例としては、これに限定されるものではないが、フェニル、ナフチル、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、thiazolyl、イミダゾリル、イソオキサゾリル、及びそれらに類似するものがある。
【0081】
“ヒドロキシル”基とは、OH基を指す。“アルケニル”基は、炭素2重結合に対し、少なくとも一つの炭素を有するものである。ハロゲン基とは、F、Cl、Br、若しくはIを指す。
【0082】
“アリルアルキル”基とは、アリル基に対するアルキル結合を指し、ここではアルキル、アリル双方に関しては、上述のとおりである。アリルアルキル基の例としてはベンジル基が挙げられる。
【0083】
ここで考察されているように、本発明は、前立腺肥大の防止/治療のための、男性被験者へのSARM投与に関する。一実施例では、本発明の方法にはSARMの類似体の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの誘導体の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの異性体の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの代謝産物の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの薬剤的に認可されている塩の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの医薬品の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMの水和物の投与が含まれる。別の実施例では、本発明の方法にはSARMのN−酸化物の投与が含まれる。
【0084】
ここで定められているとおり、用語“異性体”は、これに限定するものではないが、光学異性体及びその類似体、構造異性体及びその類似体、配座異性体及びその類似体等を含む。
【0085】
ある実施例では、本発明はSARMの様々な光学異性体の使用を包含する。本発明のSARMが少なくとも一つのキラル中心を有することは当業者にとって既知である。従って、本発明の方法で用いられるSARMは、光学的に活性若しくはラセミ体で存在して良く、単離されてもよい。複数の化合物が多形性を示しても良い。本発明に複数のラセミ体、光学活性体、多形体、若しくは立体異性体形状、及びその混合物が含まれて良いことはおわかりであろう。これらは、既述のアンドロゲンに関連するコンディションの治療において有用な特性を有している。ある実施例では、SARMは、純粋な(R)異性体である。別の実施例では、SARMは、純粋な(S)異性体である。別の実施例では、SARMは、(R)異性体と(S)異性体との混合物である。別の実施例では、SARMは、同量の(R)異性体と(S)異性体を含むラセミ混合物である。当技術分野では、(例えば、再結晶によるラセミ体の分解、キラル合成による光学的に活性な出発物質の合成、若しくはキラル的定常状態な位相を用いるクロマトグラフィー的な分離による)光学的に活性な形状の生成方法は既知である。
【0086】
本発明は、例えばクエン酸や塩酸のような有機酸若しくは無機酸を有するアミノ置換化合物の“薬剤的に認可されている塩”を含む。本発明は又、既述の化合物のアミノ置換基のN−酸化物を含む。薬剤的に認可されている塩はまた、例えば水酸化ナトリウムのような無機塩基で処理されることにより、フェノール類より調整されても良い。また、フェノール類のエステルが、例えば酢酸や安息香酸エステルのような脂肪酸カルボン酸及び芳香族カルボン酸とともに生成されてもよい。
【0087】
本発明は更に、SARM化合物の誘導体を含む。用語“誘導体”には、これに限定するものではないが、エーテル誘導体、酸誘導体、アミノ誘導体、エステル誘導体等が含まれる。加えて、本発明はさらにSARM化合物の水和物も含む。用語“水和物”には、これに限定するものではないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などが含まれる。
【0088】
本発明は、更にSARM化合物の代謝産物を含む。用語“代謝産物”は、新陳代謝や代謝プロセスにより別の物質より精製された複数の物質を意味する。
【0089】
本発明は更にSARM化合物の医薬品を含む。用語“医薬品”は、ここに定義されているように、医療用(医薬成分)に適した組成物を意味する。
【0090】
選択型アンドロゲン修飾因子化合物の生物学的活性
【0091】
ここで考察されているように、BPHの防止及び治療に効果的なSARMは、アンドロゲンレセプタアゴニスト(ARアゴニスト)若しくはアンドロゲンレセプタアンタゴニスト(ARアンタゴニスト)として分類される。
【0092】
ARは、内在性アンドロゲン(男性ホルモン)による活性を介して男性の性的成長及び機能の誘発を媒介する、リガンド活性化転写調節タンパク質である。アンドロゲンホルモンは、精巣及び副腎皮質によって生体内で生成されるステロイドである。アンドロゲンステロイドは、筋肉や骨の質量、前立腺の成長、精子の形成、及び男性の毛髪パターンなどの男性の性的特徴の成長及び維持を含む複数の生理的過程で重要な役割を果たす(Matsumoto, Endocrinol. Met. Clin. N. Am. 23: 857-75(1994))。内在ステロイド性のアンドロゲンは、テストステロンやジヒドロテストステロン(“DHT”)を含む。別のステロイド性アンドロゲンは、シピオネート、プロピオン酸、フェニルプロピオン酸、シクロフェニルプロピオン酸、イソカルボネート、エナンタート、及びデカンネートエステル、及び、7−メチル−ノルテストステロン(“MENT”)のような合成アンドロゲン、及びその酢酸エステル(Sundaramら、"7Alpha-Methyl-Nortestosterone (MENT) : The Optimal Androgen For Male Contraception,"Ann. Med. , 25: 199-205 (1993) ("Sundaram"))のような、テストステロンのエステルを含む。
【0093】
レセプタアゴニストは、レセプタと結合し、活性化させる物質である。レセプタアンタゴニストは、レセプタに結合し、非活性化させる物質である。ある実施例では、BHPの治療及び予防に有用であるSARMがARアゴニストであり、故にARへの結合及び活性化に有用である。別の実施例では、BPHの治療及び防止に有用なSARMがARアンタゴニストであり、故にARの結合及び非活性化に有用である。本発明の化合物がARアゴニストであるのかアンタゴニストであるのかに関する決定の為のアッセイは当技術分野で既知である。例えば、前立腺や精嚢のような組織を含めたARの成長を維持、及び/又は刺激するために、ARアゴニスト活性は、重量測定し、SARM化合物の能力をモニタリングすることで決定されうる。ARアンタゴニスト活性は、AR含有組織の成長を阻害するSARM化合物の能力をモニタリングすることで決定されて良い。
【0094】
別の実施例では、本発明のSARM化合物は、部分的なARアゴニスト/アンタゴニストとして分類されても良い。SARMは、複数の組織内ではARアゴニストであり、AR反応性遺伝子の転写(筋肉タンパク同化効果)を増加させる。別の組織では、化合物は、AR上でのテストステロン/DHTの競合的阻害剤として働く。
【0095】
本発明の化合物は、可逆的若しくは不可逆的にアンドロゲンレセプタと結合する。一実施例では、SARM化合物はアンドロゲンレセプタに可逆的に結合し、別の実施例では不可逆的に結合する。本発明の化合物は、官能基(親和標識)を有していても良く、アンドロゲンレセプタ(すなわち共有結合)のアルキル化が可能となる。よって、このケースでは、化合物がレセプタに不可逆的に結合し、内在性リガンドDHTやテストステロンのようにステロイドによって置換されることが無い。
【0096】
ここで実証されているように、本発明のSARM化合物は、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤である。よって、一実施例では、本発明は、5−アルファ−レダクターゼ酵素の阻害方法を提供し、ここに記載されているように、効果的な5−アルファ−レダクターゼ阻害量の選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせを有する酵素と接触する過程を含む。一実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式Iの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式IIの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式IIIの化合物である。
別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式IVの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式Vの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式VIの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式VIIの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式VIIIの化合物である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であると示されているSARM化合物は、化学式IXの化合物である。
【0097】
本発明の一実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素は、テストステロン5−アルファ−レダクターゼ酵素である。テストステロン5−アルファ−レダクターゼ酵素とは、テストステロン(T)をジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素である。ヒトアンドロゲンレセプタに対して、5倍の親和性で結合するDHTは、多くの組織で、アンドロゲン効果のメディエータである。DHTは、前立腺組織の増殖を引き起こし、過剰のDHTレベルが過剰な細胞増殖に伴って生じ、次に前立腺拡張によって達成される。本発明のSARM化合物を有するテストステロン5−アルファ−レダクターゼの阻害を実行することによって、DHTの組成が減らされても良く、望ましくは前立腺の拡張がブロックされても良い。
【0098】
肝臓や皮膚において主に発現する5−アルファ−レダクターゼ1型アイソザイム及び前立腺で主に発現する2型アイソザイムという、2種類のイソ型が存在する。ここで実証されているように、本発明のSARMは1型及び2型の5−アルファ−レダクターゼの双方を阻害する点で効果的である。よって、一実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であることが示されているSARM化合物は、5−アルファ−レダクターゼ酵素1型の強力な阻害剤である。別の実施例では、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であることが示されているSARM化合物は、5−アルファ−レダクターゼ酵素2型の強力な阻害剤である。
【0099】
別の実施例では、ここで実証されているように、5−アルファ−レダクターゼ酵素の強力な阻害剤であることが示されているSARM化合物は、5−アルファ−レダクターゼ酵素の競合的阻害剤である。
【0100】
ここで定義されている用語“接触”は、本発明のSARMが、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、毛細管などで、酵素を含有するサンプル内に導入され、SARMが酵素に結合可能な温度若しくは時間でインキュベートされることを意味している。SARMやその他の特定結合成分を有するサンプルを接触させる方法は、当業者に既知であり、実行されるべきアッセイプロトコルのタイプによって選択されて良い。またインキュベーション方法は標準的なものであって当業者に既知である。
【0101】
別の実施例では、用語“接触”が、本発明のSARM化合物が治療を受けている被験者に対して投与され、SARM化合物がアンドロゲンレセプタとin vivoで接触可能とされていることを示している。
【0102】
上述されているように、テストステロンやDHTのようなアンドロゲンホルモンは、男性の毛髪の成長や維持を含めた多くの生理的プロセスの中で重要な役割を果たす。ここで実証されているように、本発明のSARM化合物による5−アルファ−レダクターゼ阻害剤の阻害は、男性の発毛に影響を与える。よって、本発明には脱毛症に苦しむ男性被験者の治療の方法に関する。また、方法には、被験者に対し治療的に効果的な量の5−アルファ−レダクターゼ酵素阻害剤を投与する過程を含み、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせが含まれる。
【0103】
ここで用いられる、用語“治療”には、障害remitative療法が含まれる。
【0104】
本発明は男性被験者における前立腺肥大症の発生を予防、抑制、阻害、若しくは削減するための成分及び薬剤成分の使用を提供する。成分には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせが、適切な担体や希釈液を含めた医薬品として含まれる。
【0105】
更に、本発明は脱毛症に苦しむ男性被験者の治療のための成分及び薬剤成分の使用を提供する。成分には、治療的に効果的な量の5−アルファ−レダクターゼ酵素阻害剤が含まれており、前記阻害剤には、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体異性体、代謝産物、薬剤的に認可されている塩、医薬品、水和物、N−酸化物、若しくはここに記載されているいずれかの組み合わせが含まれる。
【0106】
本発明は、前立腺肥大症(BPH)の防止、予防、抑制、阻害、若しくは削減するための安全で効果的な方法を提供し、とりわけ、BPHに苦しむ被験者におけるBPHに関連する症状や兆候を軽減させるための有用である。本発明は更に脱毛症に苦しむ被験者における脱毛症を治療する安全で効果的な方法を提供する。一実施例では被験者が哺乳類であり、別の実施例ではヒトである。別の実施例では被験者が男性である。
【0107】
医薬品組成物
【0108】
ここで用いられている用語“医薬品組成物”は、ここでは、医薬的に認可されている担体若しくは希釈薬を有する、“治療に効果的な量”の活性成分、すなわちSARM化合物のことである。ここで用いられている用語“治療に効果的な量”とは、所与の状況及び投与療法に治療上の効果を示す量である。
【0109】
SARM薬剤を含む医薬品組成物が、例えば、非経口、paracancerally、transmucosally、経皮的、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、intraperitonealy、脳室内、脳内、膣内、若しくはintratumorallyの様に、当業者に既知の方法で被験者に投与されうる。
【0110】
一実施例では、医薬品組成物が経口で投与され、そのことから経口投与に適した形態、すなわち固体若しくは液体の薬剤が処方される。経口での処方に適した個体形状としては、タブレット、カプセル、糖衣錠、顆粒、ペレット剤などがある。経口での処方に適した液体形状としては、水溶液, 懸濁液、分散、乳濁液、オイル等がある。本発明の一実施例では、SARM化合物はカプセルとして処方される。この実施例によれば、本発明の成分には、SARM活性化合物や不活性な担体若しくは希釈液とは別に、堅いゼラチンカプセルが含まれる。
【0111】
さらに別の実施例では、医薬品組成物が、液体製剤の静脈内、動脈内、若しくは筋肉内注射によって投与される。好適な液体製剤には、水溶液, 懸濁液、分散、乳濁液、オイル等がある。一実施例では、医薬品組成物が静脈内に投与されるので、それに適した形態で処方される。別の実施例では、医薬品組成物が動脈内に投与されるので、それに適した形態で処方される。別の実施例では、医薬品組成物が筋肉内に投与されるので、それに適した形態で処方される。
【0112】
さらに、別の実施例では、医薬品化合物が局所的に人体表面に投与され、それに適した形態で処方される。局所的な投与に適するのは、ジェル、軟膏、クリーム、ローション、点滴剤等がある。局所的な投与のためには、SARM薬剤、若しくは塩、エステル、N−酸化物等の様な生理学的に耐容性を呈する誘導体が、医薬品担体を利用するか利用しないで、生理学的に許容された希釈剤内で、水溶液、懸濁液、若しくは乳濁液として調整され、適用される。
【0113】
さらに別の実施例では、医薬品組成物が、直腸坐薬若しくは尿道坐薬のような坐薬として投与される。さらに別の実施例では、医薬品組成物が、ペレット剤の皮下埋め込みによって投与される。更に他の実施例では、ペレット剤が、一定時間にわたるSARM薬剤の制御された開放のために提供される。
【0114】
別の実施例では、活性化合物がとりわけリポゾームのような分泌小疱内に送られても良い(Langer、 Science 249: 1527-1533ページ (1990) ;感染病及び癌治療でのリポゾームにおけるTreatら、Lopez-Berestein 及び、Fidler (編集 )、Liss、New York、同書353-365ページ(1989) ;Lopez-Berestein、同書317-327ページ参照)。
【0115】
ここで用いられている用語“薬剤的に認められている担体若しくは希釈剤”は、当業者に周知のものである。担体若しくは希釈剤は、固体の処方のためには固体の担体若しくは希釈剤が、液体の処方のためには液体の担体若しくは希釈剤が、混合物の処方には混合物が用いられる。
【0116】
これに限定するものではないが、固体の担体若しくは希釈剤には、ガム、でんぷん(例えばコーンスターチ、pregeletanizedスターチ)、糖(例えば乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖)、セルロース(例えば微晶質セルロース)、アクリル酸塩(例えば、ポリメチレンアクリル酸塩)、炭酸カルシウム、参加マグネシウム、滑石、又はそれらの混合物が含まれる。
【0117】
液状の処方のためには、薬剤的に認可された担体が、水溶性、もしくは水溶性ではない溶液、懸濁液、乳濁液、若しくはオイルであってよい。非水溶性の溶媒例としては、プロピレン・グリコール、ポリエチレン・グリコール、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルがある。水溶性の担体には、水、アルコール/水溶液、乳液、およびマグネシウムや培養液を含む懸濁液が含まれる。オイルの例としては、ピーナッツオイル、大豆油、ミネラルオイル、オリーブオイル、ひまわりオイル、及び魚の肝油等のような石油、動物、植物由来のもの、若しくは合成されたものがある。
【0118】
(皮下注射、静脈注射、動脈注射、若しくは筋肉注射のための)非経口媒介(parenteral vehicles )には、食塩水、リンガーブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガーオイル及び固定油が含まれる。静脈内溶媒には、液体及び栄養素の補充薬、リンガーブドウ糖に基づく電解質補充薬等が含まれる。例としては、界面活性剤及びその他の医薬品として認可されている免疫賦活剤の添加を伴う水やオイル、及び伴うことのない水やオイルなどの無菌液がある。一般的には、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液及び関連の糖水溶液、及びプロピレングリコールやポリエチレングリコールのようなグリコールが、とりわけ注射用溶液に適した液体担体である。オイルの例としては、ピーナッツオイル、大豆油、ミネラルオイル、オリーブオイル、ひまわりオイル、及び魚の肝油等のような石油、動物、植物由来のもの、若しくは合成されたものがある。
【0119】
加えて、化合物は更に、結合剤(アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン等)、崩壊剤(コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、2酸化ケイ素、croscarmelose、ナトリウム、クロスポビドン、グアールガム、デンプングリコール酸エステルナトリウム)、様々のpH、イオン強度のバッファ (トリス-HCI、アセテート、リン酸塩)、界面に対する吸収を防止するためのアルブミンもしくはゼラチンのような添加物、洗剤(トウィーン20、トウィーン80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透エンハンサー、可溶化剤(グリセリン、ポリエチレングリコール)、抗酸化剤(アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度上昇薬剤(カルボマー、コロイド状2酸化ケイ素、エチルセルロース、グアールガム)、甘味料(sweetner) (アスパルテーム、クエン酸)、防腐剤(チメロサール、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル類)、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、Flow−AIDS (コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(フタル酸ジエチル、トリエチルクエン酸塩)、乳化剤(カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(ポロキサマ若しくはポロキサミン)、コーティング及びフィルム形成薬剤(エチルセルロース、アクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩)及び/又は免疫賦活剤を含む。
【0120】
一実施例では、ここで提供される医薬品組成物は、調整された放出組成物、すなわちSARM化合物が投与された後に一定期間を置いて放出される組成物である。調節され持続性のある放出組成物は、親油性持効性製剤の製剤形態を含む(脂肪酸、ワックス、オイル等)。別の実施例では、組成物は、即効性の放出組成物、すなわちSARM化合物のすべてが投与の後即時に放出される組成物である。
【0121】
さらに別の実施例では、医薬品組成物が調節された放出システムへと運搬されても良い。例えば、薬剤は、静脈注入、埋没式の浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポゾーム、若しくはその他の投与様式で投与されて良い。一実施例では、ポンプが適用されてよい。(Langer、Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201 (1987)、 Buchwaldら、 Surgery 88: 507 (1980)、 Saudekら、 N. Engl. J. Med. 321: 574 (1989)を参照)。別の実施例では、高分子化合物物質が用いられても良い。さらに別の実施例では、調節された放出システムが治療上のターゲット、すなわち脳に近接して配置されても良く、全身適用量割合のみが要求される(Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, 既出、 vol. 2, pp. 115-138 (1984)参照)。その他調節された放出システムが、Langerの報告等で議論されている(Science 249: 1527-1533 (1990))。
【0122】
また、ポリ乳酸、polglycolic酸、ヒドロゲル等のような高分子化合物の粒子状の薬剤内へ、若しくはその上へ、又はリポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層若しくは多層状の小胞、血球影、若しくはスフェロプラスト上へと、組成物が活性物質を取り込んでも良い。そのような組成物が、物理的な状態、溶解度、安定性、in vivo放出速度、及びin vivo排除速度に影響を与えてよい。
【0123】
また、本発明に含まれるのは、ポリマーコーティングされた粒子状薬剤(ポロキサマー若しくはpoloxamine)、及び、組織特異レセプタ、配位子、若しくは抗原に対し配向された抗体、又は組織特異レセプタの配位子に結合している化合物である。
【0124】
また、本発明に含まれるのは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン若しくはポリプロリンのような水溶性ポリマーの共有結合性接続によって修飾された化合物である。修飾された化合物は、対応する修飾されていない化合物と比較して、静脈注射の後血液中で実質的に長い半減期を示すことが知られている(Abuchowski ら、1981年; Newmarkら、1982年; Katreら 1987年)。そのような修飾が、水溶液中の化合物の溶解度を増加させ、凝集を排除し、化合物の物理的及び化学的な安定度を向上させ、また、化合物の免疫原性及び反応性を減少させるかもしれない。結果として、所望とするin vivoな生命学的活性が、そのような頻度の低い外転を行い、修飾されていない化合物を用いる場合よりも少量のポリマー化合物の投与によって達成されて良い。
【0125】
活性化要素を含有する医薬品組成物の調整法は当技術分野で知られており、例えば、ミキシング、顆粒化、及びタブレット形成過程などからなる。活性化した治療成分が、医薬品として認可され、活性化成分との適合性を有する医薬品添加物と共に混合される。経口投与のために、SARM薬剤、若しくは、塩、エステル、N−酸化物等のような生理学に許容された誘導体が、賦形剤、安定剤、若しくは不活性な希釈剤のように、当該目的のために通常の方法で添加物と共に混合され、また、錠剤、コーチング錠、硬質若しくは軟質ゼラチンカプセル、水溶液、アルコール若しくはオイル溶液等のように、投与に適した形態へと通常の方法で変換される。例えば、通常の方法で、またこの目的に適するように、安定剤等のような物質と共に用いられることが望ましいならば、非経口的な投与のために、SARM薬剤、若しくは、塩、エステル、N−酸化物等のような生理学に許容された誘導体が、溶液、懸濁液、若しくは乳濁液へと変換される。
【0126】
活性成分は、中和された薬剤的に認可されている塩の形態で前記組成物へと処方されてもよい。薬剤的に認可されている塩には、酸付加塩(ポリペプチド若しくは抗体分子の遊離アミノ基と共に形成される)が含まれ、それは塩酸若しくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基より形成される塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは水酸化第二鉄のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-メチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来する。
【0127】
医薬での使用のためには、SARMの塩が薬剤的に認可されている塩であって良い。しかしながらその他の塩が、本発明の化合物もしくは薬剤的に認可されている塩の調整にとって有用であっても良い。本発明の化合物の好ましい薬剤的に認可された塩は酸付加塩を含み、それは例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸若しくはリン酸のような薬剤的に認可されている酸の溶液を有する本発明による化合物の溶液を混合することで形成されても良い。
【0128】
ここで定義されている用語“接触”は、本発明のSARMが、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、毛細管などで、酵素を含有するサンプル内に導入され、SARMが酵素に結合可能な温度若しくは時間でインキュベートされることを意味している。SARMやその他の特定結合成分を有するサンプルを接触させる方法は、当業者に既知であり、実行されるべきアッセイプロトコルのタイプによって選択されて良い。またインキュベーション方法は標準的なものであって当業者に既知である。
【0129】
別の実施例では、用語“接触”が、本発明のSARM化合物が治療を受けている被験者に対して投与され、SARM化合物がアンドロゲンレセプタとin vivoで接触可能とされていることを示している。
【0130】
ここでは、用語“治療”には、障害に限定可能な治療は勿論のこと、予防をも含んでいる。ここで、用語“減少”、“抑制”、及び“阻害”は、一般的な解釈では「減少」の意である。ここでは、用語“再発”は、緩解期後に再度疾患にかかることを意味する。
【0131】
ここでは、用語“投与”は、本発明のSARM化合物を被験者に接触させることを意味する。ここでは、投与は、in vitroすなわち試験管内、若しくはin vivoすなわちヒトのような生体細胞若しくは組織内で実行される。一実施例では、本発明は被験者に対する本発明の化合物の投与を包含している。
【0132】
一実施例では、本発明の方法は唯一の活性成分としてSARM化合物の投与を含む。しかし、本発明の精神には、また、ここに記載されているようにBPHの治療方法であって、一つ若しくは複数の治療薬剤と組み合わせてSARM化合物を投与する過程を含むものである。これに限定する物ではないが、薬剤には、LHRH 類似体、可逆的 抗アンドロゲン、抗女性ホルモン剤、抗癌性薬品、5-αレダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチン、若しくは他の核ホルモンレセプタを介して作用する薬剤がある。
【0133】
そのような訳で、一実施例では、本発明は、LHRH類似体と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、可逆的抗アンドロゲンと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、抗エストロゲン剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、抗癌剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、5−αレダクターゼ阻害剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、アロマターゼ阻害剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、黄体ホルモンと結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。別の実施例では、本発明は、別の核ホルモンレセプタを介して作用する薬剤と結合した、選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子を含む組成物及び医薬品組成物を提供する。
【0134】
次の実施例は、本発明の実施例をより完全に示すためのものである。しかし、本発明の精神をこれに限定するものではない。
【実施例】
【0135】
実施例1
化合物VIとヒト5−アルファ−レダクターゼとの間の相互作用

【0136】
テストステロンは、酵素5−アルファ−レダクターゼによって、ジヒドロテストステロン(DHT)へと還元され得る。DHTはヒトアンドロゲンレセプタに対して、5倍以上の親和力を有して結合しており、多くの組織内でアンドロゲン効果のメディエータであると考えられている。多くのin vitro及びin vivoシステムで、化合物VIがテストステロン効果を模倣するので、化合物VIは5−アルファ−レダクターゼと作用するか否か決定すべくテストされる。この研究は、(1)化合物VIが5−アルファ−レダクターゼのための基質であるか、及び(2)化合物VIが5−アルファ−レダクターゼを介したテストステロンのDHTへの変換に効果を有するかを決定した。
【0137】
方法:
【0138】
COS1(American Type Culture Collection, Manassas, VA)細胞は、60,000セル/ウェルの密度で12枚のウェルプレートに置かれ、ヒト5−アルファ−レダクターゼ(Dr. David W. Russell, Southwestern Medical Center, Dallas, TX製のもの)のため、発現ベクターと共に一過性に形質移入された。LipofectAMINE PLUSTM試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)は、形質移入に用いられた。pCMV-SPORT-βgal プラスミドは、同時形質移入され、形質移入効率をモニタした。48時間の形質導入の後、テストステロンM(4μM)及び/または化合物VI(2若しくは200μM)が培地へと加えられ、摂氏37度でインキュベートされた。培地の一定分量が2時間後に取り除かれ、反応が冷却されたアセトニトリルの添加によって停止された(体積比1:1)。保温器内のテストステロン及び化合物VI濃度は、HPLCによって逆相カラム(pLBondaPak C18,3. 9 x 300 mm, Waters Corporation, Milord, MA)及び流速1.5ml/minの脱イオン水中の38%アセトニトリルの移動相を用いて決定される。分析物は、254nmのUV吸光度で検出された。検量線は、反応の完了時におけるインキュベートでテストステロン若しくは化合物VIの濃度を計算するべく、ピーク領域を用いて準備された。反応の後、細胞が溶解し、培養上清がβガラクトシターゼを決定し、ウェル間の等しい形質移入効率を確実なものとする。
【0139】
結果:1型若しくは2型の5−アルファ−レダクターゼを有する化合物VI(2μM)のインキュベーションが、この酵素によって(図1)代謝されないことを示した。化合物VIの濃度は、2時間のインキュベーション時間では変化せず、化合物VIがこれら酵素の基質ではないことを示した。それら酵素の存在の下、各々34%若しくは35%減少した、1型若しくは2型の5−アルファ−レダクターゼでインキュベートされるとき、テストステロン(4μM)は、素早くDHTへと変換された。DHTへのテストステロンの変換は、化合物VIの存在によって阻害され、そのことは化合物VI(2若しくは200μM)の存在の下観察される10%に満たないテストステロン濃度の減少となる。それらのデータは、化合物VIが、5−アルファ−レダクターゼ1型若しくは2型の競合的阻害剤であり、処置されていない動物や片側睾丸摘出術を受けた動物のアプリカントによって先に見られたような前立腺や精嚢上での化合物VIの阻害的効果を有することを示している。
【0140】
化合物VIは基質ではないが、1型若しくは2型の競合的阻害剤として機能する。
【0141】
実施例2
ラットの様々なホルモンステータスにおける、化合物VIの薬理学的活性及び組織選択性
【0142】
選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)には、様々な潜在的治療アプリケーションが含まれており、それには、男性生殖機能不全、骨粗鬆症、筋萎縮障害、性欲、及び避妊等が含まれる。出願人による先の研究で、化合物VIは去勢されたオスのラットにおける強力で効果的な選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)であることが示された。出願人は、化合物VI及びテストステロンプロピオン酸塩(TP)の薬理学的な効果と組織選択性との比較を行うために、ホルモンステータスの異なるオスのラットで前臨床試験を完了させた。通常の精巣機能を有するオスラット(外科的処置を受けておらず無処置)が、通常の血中濃度のテストステロンを有する動物における化合物VIの効果を検査する目的で含まれた。片側睾丸摘出手術を受けたオスのラット(精巣の一つが取り除かれている)が、微量なアンドロゲンの欠乏を伴う動物における、化合物VIの効果を計算する目的で含まれた。両側睾丸摘出手術を受けたオスのラット(双方の精巣が取り除かれている)が、アンドロゲンの欠乏を伴う動物における、化合物VIの効果を計算する目的で含まれた。
【0143】
方法:
【0144】
化合物VIは、Memphis, TNのテネシー大学においてDuane Miller教授の研究室で合成され、特徴付けられた。オスのSDラットはHarlan Biosciences (Indianapolis, IN)より購入した。動物は適宜食料及び水分を接種可能な状態で、12時間周期で昼夜を転換させて準備された。すべての動物実験は、Ohio州立大学のAnimal Care及びUse委員会によって再度検証、認可され、アニマルケア研究室則に従った。重さ187〜214グラムの未成熟なオスSDラットは、ランダムに5匹ずつ9つのグループに分けられた。薬物治療開始1日前に、グループ4乃至6、及び7乃至9が、各々、陰嚢正中線切開によって片側性若しくは両側性の睾丸摘出手術を受けた。グループ1乃至3は外科的処置を受けなかった。動物実験で投与されるすべての薬剤は、ポリエチレングリコール300(PEG 300)の溶液として新しく調整された。グループ4及び7は、溶媒のみ(すなわちPEG 300)で処置された。グループ3、6、及び9のラットは、皮下浸透圧ポンプ(Model 2002, Durect Corporation, Palo Alto, CA)の埋め込みによって、プロピオン酸テストステロン(TP, 0.5 mg/一日)を投与された。グループ2、5、及び8のラットは、皮下浸透圧ポンプの埋め込みによって、化合物VI(0.5 mg/一日)を投与された。14日間の薬物治療の後、ラットは計量され、麻酔をかけられて殺された。腹側の前立腺、精嚢、及び肛門挙筋が採取され、計量された。血液サンプルは、腹大動脈の静脈穿刺によって採取された。血漿サンプルは、テストステロン、FSH、LH、及びオステオカルシンのために解析された。テストステロン濃度は、AniLytics Inc.(Gaithersburg, MD)によって測定された。FSH及びLHレベルは、ナショナルホルモン及びペプチドプログラム(A F Parlow教授、UCLA, CA)によって測定された。血漿オステオカルシンレベルは、Biomedical Technologies Inc(Stoughton, MA)製の市販のラットオステオカルシンEIAキットを用いて決定された。腹部前立腺、精嚢、及び肛門挙筋が除去され、重量が測定された。浸透圧ポンプが動物体内より取り外され、ポンプ動作を補正するべくチェックされた。すべての器官の重量が体重に対して規格化され、p<0.05のα値を有するシングルファクタ分散分析(ANOVA)を用い、グループ間の統計的に著しい相違のために解析された。前立腺や精嚢の重量は、アンドロゲン活性の評価指数として用いられており、肛門挙筋重量がタンパク同化活性を評価することに用いられた。いずれの部位でも適用可能である、完全な血球数もしくは血清の化学的プロファイリングによるパラメータの統計学的解析が、p<0.05のα値を有するシングルファクタ分散分析によって実行された。
【0145】
結果:
【0146】
プラズマテストステロンレベルは、処置グループとは無関係に去勢されたラットでは著しく低かった(表1)。片側睾丸摘出術の結果、プラズマテストステロン濃度が、わずかではあるが、統計的に減少を見せた。外因性TP(0.5mg/日)をレシーブした去勢されたオスラットは、媒介処理されまた化合物VIで処理された対照標準と比較して、高いプラズマテストステロン濃度を有していた。しかしながら、いずれのグループにおいても、片側睾丸摘出術をされた動物ではプラズマテストステロンレベルに著しい違いは無かった。化合物VIによる治療は、無損傷、片側睾丸摘出術、若しくは去勢されたオスラットの場合、テストステロンレベルに影響を与えることは無いが、化合物VIは薬剤的に関連した適用量の内在性アンドロゲン生成にほとんど効果がない。

【0147】
血漿FSH及びLHレベル(表2及び3)は、両側睾丸摘出術を受けた(すなわち去勢された)動物内で著しく増加した。片側睾丸摘出術を受けた動物に於ける血漿FSH及びLHレベルは、処置を受けていない動物と比較して著しい違いを見せず、片側睾丸摘出術は血漿テストステロンレベル若しくはそれを制御する下垂体ホルモンに効果がないという観察を実証した。TPを用いた治療は、去勢されたオスラットに於いてFSH及びLHレベルの著しい減少を招き、TPが下垂体ホルモンの生成を抑制することを示した。しかしながら、化合物VIは、血漿FSH及びLHレベルに何の効果も有さなかった。これらのデータは、化合物VIが複数のホルモン生成に効果を有することがなく、ゆえに、無処置の動物で用いられるためのTPには有効であることを示した。FSH若しくはLHレベルの著しい差異は、無処置もしくは片側睾丸摘出術中を受けた動物中には見られなかった。


【0148】
血漿オステオカルシンレベルにおける、片側睾丸摘出術、両側睾丸摘出術、TP、化合物VIの効果が、実験された(表4)。オステオカルシンは、内在性骨形成速度を評価するのに用いられる特殊な造骨細胞マーカーである。賦形剤治療を実行された(すなわち実験対照標準)動物の中では、無処置、片側睾丸摘出術、及び去勢された動物間の、オステオカルシンレベル中に著しい差異は存在しない。しかしながら、化合物VIを用いる治療は、片側睾丸摘出術及び去勢された動物では、血漿オステオカルシンレベルを著しく増加させる。TPは血漿オステオカルシンレベルには、効果を有しない。これらのデータは、テストステロン、FSH、若しくはLHの血漿濃度に何の効果も有さず、オスの動物中で化合物VIが骨生成速度を増加させることを実証している。

【0149】
無処置の動物では、精嚢や肛門挙筋のサイズが統計的に著しい変化を見せることが無いにもかかわらず(表5及び図2参照)、化合物VIが前立腺のサイズを対照動物に見られるサイズの79%にまで減少させる。化合物VIの薬理的効果及び組織選択性は、片側睾丸摘出術を受けた動物中で顕著である。化合物VIは、前立腺及び精嚢のサイズを対照動物に見られるサイズの各々75%及び79%まで減少させ、肛門挙筋のサイズを対照動物に見られるサイズの各々108%まで増加させる。観察によって、化合物VIが前立腺及び精嚢内で部分的アゴニストとして機能し、肛門挙筋では完全なアゴニストとして機能することが実証された。逆の薬理学的効果は観測されなかった。

【0150】
化合物VIは、無処置、片側睾丸摘出術、及び去勢されたオスラットにおいて、強力で組織選択性薬理学的効果を実証した。化合物VIは、無処置及び片側睾丸摘出術を受けた前立腺重量に関し著しい減少を示したが、去勢された動物における前立腺重量の増加に関しては、TPよりは効果的ではない。同様の薬理学的効果が精嚢(アンドロゲン効果のマーカーとして一般的に考えられている別の器官)でも記録されているが、化合物VIが無処置の動物中の精嚢重量に関しては効果を有しないと言うことは除外して考えられている。化合物VIの治療は、片側睾丸摘出術及び去勢された動物中の肛門挙筋重量の著しい増加を導き出した。これらの効果はTPに見られる効果よりも大きかった。これらのデータによって、化合物VIの組織選択型薬理学的効果が実証された。重要なのは、FSH、LH、及びテストステロンの血漿濃度において、著しい変化が見られなくとも、これらの効果が観測されると言うことである。化合物VIは、オステオカルシンの血漿濃度を増加させた。要約すると、それらのデータによって、化合物VIはオスの動物中で最適な薬理学的プロフィールを誘発し、生物が経口利用可能であり、組織選択的なSARMの新規分類の第1メンバーとしてそれを識別する。
【0151】
実施例3
【0152】
無処置のオスラットにおける、化合物VII(下記の構造式VIIで表される化合物)、ヒドロキシ−フルタミド(flutamide)、及びフィナステリドの薬理学的活性及び組織選択性


【0153】
化合物VIIは、去勢されたオスラットにおける選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)である。それは、タンパク同化組織内でアゴニストとして振る舞い、一方でアンドロゲン細胞内では部分的アゴニストとして振る舞う。無処置のオスラットに対して一日あたり0.5mgの投与が実行される時、化合物VIIが肛門挙筋重量に影響を与えることなく、賦形剤治療を施された無処置の動物の63%まで前立腺重量を著しく減少させた。無処置のオスラットで実証された組織選択性化合物VIIは、2つの実行可能なメカニズムで説明されてよく、それは、1)内在性テストステロンの存在下で、化合物VIIがDHT依存アンドロゲン組織内で部分的アゴニストとして単純に振る舞う、若しくは、2)化合物VIIがまた5−アルファ−レダクターゼ阻害剤であり、その上、アンドロゲン組織内ではその部分的アゴニスト活性であるということである。
【0154】
オスのSDラットはHarlan Biosciences (Indianapolis, IN)より購入した。動物は適宜食料及び水分を接種可能な状態で、12時間周期で昼夜を転換させて準備された。重さ189〜226グラムのオスSDラットは、ランダムに5匹ずつのグループに分けられた。無処置のオスラットが、ヒドロキシ−フルタミド(0.5、1、5、10、若しくは25mg/kg)、フィナステリド(5mg/kg)、化合物VII(0.5、1、5、10、若しくは25mg/kg)若しくは賦形剤で、3、6、若しくは9日間治療される。薬剤は、DMSO:PEG(体積比20:80)内で溶解され、毎日皮下注射され、投与量は、動物の体重を考慮して調整され、毎日測定された。去勢されたラットのグループ(n=5)も、時間毎の実験対照標準として含まれた。各治療期間の終了までに、最終投与後8時間以内に実験対照の動物が殺され、アンドロゲン組織及びタンパク同化組織(腹側前立腺、精嚢、及び肛門挙筋)が採取、重量測定され、前立腺は、DHT及びテストステロンの組織濃度を解析するべく−80℃で凍結、保存され、血液サンプルが血清マーカーの測定のために採取、使用された。臓器重量は体重を用いて規格化された。パーセンテージ変化が無処置動物に対する比較で決定された。すべてのパラメータの統計学的解析が、p<0.05のα値を有するシングルファクタ分散分析(single-factor ANOVA )によって実行された。
【0155】
結果:
【0156】
図3乃至5は、異なる治療期間の後の、すべての処置グループにおける器官重量変化を示すものである。全適用量(0.5、1、5、10、若しくは25mg/kg)におけるヒドロキシフルタミドは、3日間の治療で、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋の湿重量を著しく減少させる。しかしながら、それら器官のいずれにも、典型的な適用量と反応量との関係性が見られなかった。それらグループでは、同時に、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋が各々60%、50%、及び85%まで著しく減少した。それら投与グループのいずれの2つの間にも著しい相違は無かった。同時に、去勢したものは、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋を、各々45%、30%及び71%まで著しく減少させた。化合物VIIによる治療グループでは、典型的な適用量と反応量との関係性を見ることは出来なかった。同様の結果が、3日間の治療の後、ほとんどの投与グループで見られた(0.5、1、5、10、若しくは25mg/kg)。一般的には、化合物VIIは、肛門挙筋重量に影響することなく、前立腺及び精嚢の重量を80%から70%へと減少させる。
【0157】
去勢後6日で、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋重量はさらに通常レベルの22%、24%、及び65%まで減少した。しかしながら、ヒドロキシフルタミド治療をされた動物における、器官重量変化は、3日間の治療後に見られるパターンに従わなかった。ヒドロキシフルタミド治療をされた動物のうち、投与量の低いグループ(0.5、1、5、若しくは10mg/kg)では、いずれの器官重量にもこれ以上の変化は見られなかった。これに対し、それら投与量の器官重量は無処置動物に見られるレベルへと戻った。最も多い投与量(25mg/kg)の場合のみ、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋が各々54%、41%、及び65%へと減少した。しかし、明白な投与−反応関係はそれらヒドロキシフルタミド処置群には見られなかったが、最も投与量の多い群は、他のより投与量の低い群とは著しい違いを見せ始めた。化合物VIIで処置された動物中では、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋における変化が3日後の処置後の測定で同一であり、投与−反応関係は見られなかった。より多い投与量(5、10、25mg/kg)では、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋重量に著しい変化が見られ、それは前立腺では70から80%、精嚢では45から68%の間であった。重大なことは、それら投与量のいずれであっても、肛門挙筋重量に変化をもたらすことであり、化合物VIIの組織選択的薬理学的活性及びBHPの治療に於ける潜在的価値を実証する。フィナステリド(5mg/kg)は、前立腺や精嚢重量を67%および47%まで減少させるが、肛門挙筋重量では著しい変化が見られなかった。
【0158】
去勢後9日後、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋重量は、さらに各々15%、14%、及び62%まで減少する。フィナステリド(5mg/kg)処理された動物に見られる臓器重量の変化は、3日間若しくは6日間の処置の後に見られた値と同じであった。前立腺及び精嚢重量は、55%および29%まで減少し、肛門挙筋重量は著しい変化を見せなかった。化合物VII処置群では、前立腺及び精嚢重量を減少させる効果の増加が、低投与量群に見られた(0.5、1.5mg/kg)。しかしながら、高投与量群(5、10、25mg/kg)のすべてに於ける減少は投与量依存を示しておらず、前立腺及び精嚢重量は各々50%及び45%まで著しく減少した。また、肛門挙筋重量における著しい変化は9日間の処置後ほとんどの適用量群で確認できなかったが、最も高い投与量群(25mg/kg)では著しい増加(112%)が見られた。最終的には、ヒドロキシフルタミドによる治療が、9日間の処置後、複数の投与量−反応関係を示した。6日間の治療後に見られる場合とは異なって、中程度の減少が低投与量(0.5、1、5、10mg/kg)前立腺、精嚢、及び肛門挙筋内にみられ、変化は投与量に依存していた。25mg/kgの投与量が、時間のタイミングが先であるものと比較して同一レベルである、すべての臓器重量においてその効果を持続させる。
【0159】
要約すると、投与量が多い(25mg/kg)のヒドロキシフルタミドは、3、6、及び9日間の処置の後に、前立腺、精嚢、及び肛門挙筋の臓器重量を著しく減少させた。しかしながら、変化に於ける多少のばらつきが低投与量群(0.5、1、5、10mg/kg)にみられ、典型的な投与量−反応関係は9日間の処置後も見られなかった。5mg/kg投与量のフィナステリドは、3、6、及び9日間の処置の後に、同様に拡張するべく、前立腺及び精嚢重量を著しく減少させ、その一方では、肛門挙筋重量には影響しない。化合物VIIは、3、6、及び9日間の処置の後に、無処置の動物に於ける前立腺及び精嚢重量を減少させ得り、3日若しくは6日の場合には典型的な投与量依存変化が見られないが、9日の処置の後低投与量(0.5、1、5mg/kg)では投与量依存変化が見られる。しかしながら、化合物VIIは、3、6、及び9日間の処置の後、いずれの投与量でも肛門挙筋を著しく減少させなかったが、25mg/kgの投与量の場合9日間の治療後12%だけ肛門挙筋を増加させた。アンドロゲン組織に於ける化合物VIIの効果は、ヒドロキシフルタミドに於けるそれと同様であり、肛門挙筋に於ける効果はフィナステリドのそれと類似する。
【0160】
実施例4
【0161】
化合物VIIによる無処置のSDラット内の前立腺の減少
【0162】
20匹の無処置のオスSDラットは、体重が各々約100−175グラムであり、5匹ずつランダムに4グループに分離された。動物は、次の処置群毎に、溶媒(10%アタノール及び90%ポリエチレングリコール)若しくは化合物VII(溶媒に溶解されている)を用い経口胃管栄養法で処置され、各グループは、1群;0mg/kg(溶媒のみ)、2群;化合物VII、30mg/kg、3群;化合物VII、100mg/kg、4群;化合物VII、300mg/kgである。各動物は、一日に一回投与を、継続的に7日間受け続けた。8日目、動物は実験の為に殺され、各動物より摘出した腹側前立腺が解剖され、重量測定された。前立腺重量(g)は体重(g)に対して規格化され、結果は図6に示された。10mg/kgの化合物VIIで処置された動物は、0mg/kg実験対照標準群(1群)における0.128%に関連して、著しく減少した前立腺重量−体重比、0.62%を示した。すべての処置群において、化合物VIIは前立腺重量(体重に対して規格化されている)を、実験対照標準(p<0.01)と比較して48.4%以上劇的に減少させた。さらには、投与量を一日あたり10mg/kgと、100倍に増加させても、前立腺に於ける萎縮はそれほど増加しない(1000mg/kgと10mg/kgとを比較する)。結果的に、化合物VIIが前立腺サイズの減少に効果的に関与し得り、よってより低い薬剤投与量で前立腺肥大症に関する兆候を最小化しうる。
【0163】
当業者であれば、本願発明が既述の特定実施例に限定されることがないことがおわかりであろう。本願発明の範囲は付随する特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式IXで表される選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)化合物。

【請求項2】
構造式IXで表される選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)化合物の薬剤的に認可されている塩。

【請求項3】
構造式IXで表される選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)化合物の医薬品。

【請求項4】
構造式IXで表される選択的アンドロゲンレセプタ修飾因子(SARM)化合物の異性体、水和物、代謝産物若しくはN酸化物。

【請求項5】
請求項1乃至4に記載の化合物と薬剤的に認可されている担体若しくは希釈薬とを有する医薬品組成物。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図2G】
image rotate

【図2H】
image rotate

【図2I】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−209102(P2010−209102A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108498(P2010−108498)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【分割の表示】特願2003−565418(P2003−565418)の分割
【原出願日】平成15年2月6日(2003.2.6)
【出願人】(504206621)ジーティーエックス・インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】