説明

SARSの免疫原を発現するベクター、そのようなベクター又はその発現産物を含有する組成物、並びにその作製及び使用の方法及びアッセイ

SARS(重症急性呼吸器症候群ウイルス、コロナウイルス)の免疫原、抗原、若しくはエピトープと、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープをコードする核酸分子と;そのような核酸分子を含有するベクター、例えば、バキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、及び、DNAプラスミドベクターなどのDNAベクター、例えば哺乳類細胞で核酸分子を発現するDNAプラスミドと、活性成分である免疫原性組成物、免疫学的組成物、若しくはワクチン組成物としての、或いはモノクローナル抗体などの抗体を産生するための、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、及びベクターの使用と、免疫応答、免疫原性応答、ワクチン応答を誘発する方法におけるもの、及びアッセイ、又は診断用キット若しくは方法におけるものを含めた、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、ベクター、抗体の作製及び使用の方法とに関して論じ、プラスミド若しくはベクター中における、配列、例えば、リーダー配列、及び、タンパク質、エピトープ、又は免疫原若しくは抗原をコードする配列のシームレスな融合に関しても論じる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS(重症急性呼吸器症候群ウイルス、コロナウイルス)の免疫原、抗原、若しくはエピトープと、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープをコードする核酸分子と、そのような核酸分子を含有するベクター、例えば、バキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、及びDNAプラスミドベクターなどのDNAベクター、例えば哺乳類細胞で核酸分子を発現するDNAプラスミドと、活性成分である免疫原組成物、免疫学的組成物、若しくはワクチン組成物としての、或いはモノクローナル抗体などの抗体を産生するための、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、及びベクターの使用と、免疫応答、免疫原性応答、ワクチン応答を誘発する方法におけるもの、及びアッセイ、又は診断用キット若しくは方法におけるものを含めた、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、ベクター、抗体の作製及び使用の方法とに関する。本発明は、プラスミド又はベクター中での、配列、例えば、リーダー配列、及び、タンパク質、エピトープ、又は免疫原若しくは抗原をコードする配列のシームレスな融合にも関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願/参照による援用)
この出願は、2003年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/480118号、及び2004年3月19日に出願された第60/554742号による優先権を主張する。上記の各出願を、それらに引用されている各文献、及びそれらに引用されている文献に引用又は参照されている文献のそれぞれと併せて、これによって参照により本明細書に援用する。加えて、この本文に引用されている各文献(「本出願に引用されている文献」)と、本出願に引用されている文献のそれぞれに引用又は援用されている各文献と、本明細書、又は本明細書に引用されている文献、又は本明細書に引用されている文献に引用されている文献で言及したいかなる製品に関する製造業者の仕様書、データシート、記述、製品文献、説明書、及び同様のもののいずれをも、これによって参照により本明細書に援用する。参照によりこの本文に援用するいかなる文献も、本発明に関する先行技術であることを認めるものではないが、参照によりこの本文に援用する文献は、本発明の実施に利用することができる。
【0003】
SARS、即ち重症急性呼吸器症候群は、呼吸器疾患である。主な症候には、発熱、乾性咳嗽、頭痛、息切れ、及び呼吸困難が含まれる。感染したものの多くは、ウイルス性肺炎を発症し、その結果、下部気道の感染が起こる。SARSは、感染力が強く、咳又はくしゃみによって生じた飛沫によって、或いは、糞便汚染などの他の方法を介して伝播する。WHOは、SARSの全症例の約10〜15%が致死的であると推算している。2003年5月28日の時点において、世界中で8240件の症例が同定されており、745人が死亡している(情報源:世界保健機構)。高齢者、特に60歳以上の患者では、死亡率が43%である(Stohr, 2003)。現在、SARSのための特定の治療法は存在せず、更に、信頼できる診断試験も今のところない。
【0004】
最近、SARSコロナウイルスをSARS疾患に関連付けるためのコッホの原則が実証された(Fouchier, Kuiken et al. 2003)。Fouchierらは、カニクイザルの実験的な感染から、SARS関連ウイルス(SCV)が、本当にこの疾患の起因物質であるという証拠を示した。これより早く他のグループによって、疾患宿主からのSCVの単離と、宿主細胞中でのSCVの培養とが既に記載されていた(Drosten, Gunther et al. 2003; Ksiazek, Erdman et al. 2003)。
【0005】
コロナウイルスによって、様々な家畜、家禽、及びコンパニオンアニマルが感染する。コロナウイルスは、直径が160〜180nmの範囲にある球状のエンベロープウイルスであり、プラス鎖のRNAゲノムを含有する。このウイルスは、約3万塩基のゲノムを有し、既知のRNAウイルスでは、最大のものと考えられている。インフルエンザウイルスと同様に、それらはコロナウイルス科の他のメンバーと遺伝的組み換えをする可能性を有する。コロナウイルスは、通常の風邪の原因として知られている。
【0006】
コロナウイルスの形態を図10に示し、概要図を図11に示す。
【0007】
SARSはコロナウイルスによって引き起こされるが、このSARSが問題となっている。これは、以下のことによって明示される。即ち、SARSは、VERO(アフリカミドリザル腎)細胞中で増殖することが実証されており、且つ、哺乳類種、例えばオオジャコウネコ及びタヌキで見つけられており、そしてこれらの要因は、このウイルスが、将来、不特定の期間、活性のまま残留するであろうこと、そして病原性を増大させるかもしれないことを示す。
【0008】
SARSの免疫原、抗原、若しくはエピトープ、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープをコードする核酸分子、そのような核酸分子を含有するベクター、活性成分である免疫原組成物、免疫学的組成物、若しくはワクチン組成物としての、或いはモノクローナル抗体などの抗体を産生するための、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、及びベクターの使用、並びに免疫応答、免疫原性応答、ワクチン応答を誘発する方法におけるもの、及びアッセイ、又は診断用キット若しくは方法におけるものを含めた、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、ベクター、抗体の作製及び使用の方法は、SARSの問題に取り組む上で有用であろう。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/480118号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/554742号
【非特許文献1】Stohr, 2003
【非特許文献2】Fouchier, Kuiken et al. 2003
【非特許文献3】Drosten, Gunther et al. 2003
【非特許文献4】Ksiazek, Erdman et al. 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、S−タンパク質、例えばSARS Sタンパク質などのコロナウイルスタンパク質、例えばSARSタンパク質のクローニング及び発現、精製、スケール拡大、特徴付け、並びに産生を、例えばバキュロウイルス発現ベクター系を用いて行うことでありうるが;その際、SARS Sタンパク質など、これらのタンパク質が、免疫原性組成物、免疫学的組成物、又はワクチン組成物中で、或いは、キット、試験、方法、又はアッセイ(例えば診断)において有用なモノクローナル抗体を産生するために、有用なものであると有利である。Sタンパク質は、完全長のものでも、末端を欠失したものでも、融合体でもよい。また、本発明は、核酸分子のシームレスな結合を提供することも目的とすることができる。更に、本発明は、混合組成物、例えば、1つ又は複数のSARS抗原、エピトープ、又は免疫原と、インフルエンザ、例えばインフルエンザHA及び/又はNAなど、別の病原体の1つ又は複数の抗原、エピトープ、又は免疫原とを含有及び/又は発現する組成物も提供する。本発明は、複数の単離体、例えば、3つ以上の単離体など、少なくとも2つの単離体、有利には3つの単離体に由来する1つ又は複数のSARS抗原、エピトープ、又は免疫原を含有及び/又は発現する組成物を更に想定する。この点に関しては、インフルエンザワクチンは、例えば、WHOによって選択されたものなど、異なった株に由来する3つのHA及び/又はNA抗原、エピトープ、又は免疫原など、1つ又は複数のHA及び/又はNA抗原、エピトープ、又は免疫原を混合組成物中に含有及び/又は発現するので、1つ又は複数のHA及び/又はNA抗原、エピトープ、又は免疫原を同様に含有及び/又は発現するのに有利であり;且つ、更に、少なくとも2つの単離体、例えば3つ以上の単離体、例えば3つの単離体など、複数の単離体に由来するSARSタンパク質を、組成物が含有及び/又は発現するのにも有利となりうる。また、SARS抗原、エピトープ、又は免疫原に関しては、本発明では、S、S1、S2、M、N、及びE、又はその部分の任意のもの又はすべてを想定するが、完全長のSなど、Sが有利であると考えられている。
【0010】
この開示において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contains)」、「含有している(containing)」、及び同様の用語は、米国特許法でそれらに割り当てられた意味を有することができ、例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含んでいる(including)」、及び同様のことを意味することができる。「本質的に〜から成っている(consisting essentially of)」及び「本質的に〜から成る(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法でそれらに割り当てられた意味を有し、例えばそれらは、本発明の新規特性又は基本的特性を損なわない追加の成分又はステップの包含を許容し、即ち、それらは、本発明の新規特性又は基本的特性を損ねる、言及されていない追加の成分又はステップを排除し、且つ、それらは、本明細書に引用されているか、或いは本明細書に参照により援用されている当技術分野の文献など、先行技術の成分及びステップを排除するが、これは特に、特許性のある実施形態、例えば、先行技術に対して、例えば本明細書に引用されている文献又は本明細書に参照により援用されている文献に対して、新規のもの、自明でないもの、及び発明性のあるものを定義することを本明細書が目的としているからである。また、「から成る(consists of)」及び「から成っている(consisting of)」という用語は、米国特許法でそれらに割り当てられた意味を有し;即ち、これらの用語が排他的であることを意味する。
【0011】
本発明の他の態様は、以下の開示に記載されているか、又は以下の開示から明白である(且つ本発明の範囲内にある)。
【0012】
記述したいかなる特定の実施形態にも本発明を限定するものでなく、例として示した、以上の「本発明を実施するための最良の形態」は、参照により本明細書に援用される添付の図面と併せて理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[本発明を実施するための最良の形態]
上で論じたように、この発明は、SARS(重症急性呼吸器症候群ウイルス、コロナウイルス)の免疫原、抗原、若しくはエピトープと、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープをコードする核酸分子と、そのような核酸分子を含有するベクター、例えば、バキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、及び、DNAプラスミドベクターなどのDNAベクター、例えば哺乳類細胞で核酸分子を発現するDNAプラスミドと、活性成分である免疫原組成物、免疫学的組成物、若しくはワクチン組成物としての、或いはモノクローナル抗体などの抗体を産生するための、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、及びベクターの使用と、免疫応答、免疫原性応答、ワクチン応答を誘発する方法におけるもの、及びアッセイ、又は診断用キット若しくは方法におけるものを含めた、そのような免疫原、抗原、若しくはエピトープ、ベクター、抗体の作製及び使用の方法とに関する。
【0014】
図1A、1B、2A、2B、及び3〜6Bは、SARSの免疫原、抗原、又はエピトープをコードする核酸配列と、そのような免疫原、抗原、又はエピトープのアミノ酸配列とを提供する。図7及び8は、SARS S ORFをクローニングするためのプライマーと、SARS S ORFの制限地図とを提供する。図10及び11は、SARSコロナウイルスに関する情報を提供する。図9は、SARSの免疫原、抗原、又はエピトープをコードする1つ又は複数の核酸分子を含有することができるBEVS発現ベクターを調製するための該略図を提供し、図12は、例えばSARS Sに関する、タンパク質精製ストラテジーを提供し;そして、図13は配列アライメントを提供する。即ち、本明細書は、図を通して、本発明が関係するものを提示し、読者が本明細書の論考と併せて図を見ることを推奨する。
【0015】
本発明者らは、CDC(CDC/NCID/DVRD/REVB、呼吸器ウイルス部門長代理のErdman博士)から、Trizol LS試薬中に入れた、継代#3のSARS CoV 3200300841を得た。このウイルスは、プラークアッセイで4logの力価を有していた培養バッチ809940から調製された。この培養からの溶解物を、TRIzol試薬に添加し、1mlを本発明者らが得た。本発明者らは、この溶解物を、RNAを単離してcDNAを生成するのに用いた。このcDNAは、次に、組換え体発現ベクター、例えば、ウイルス発現ベクター、DNAプラスミド発現ベクター、有利には、昆虫細胞をバキュロウイルス転移プラスミドと、バキュロウイルスであるオートグラファ核多角体ウイルス(Autographa californica Nuclear Polyhedrosis Virus)(AcNPV)の親ベクターとで同時形質移入することによって遺伝子コンストラクトを構築するためのバキュロウイルス発現ベクターを調製するのに用いた。この過程中に、相同組換えを介して遺伝子がバキュロウイルスゲノム中に移行し、それによって、S−タンパク質が、強く発現されるAcNPVポリヘドリンプロモーターの制御下に入る。組換えウイルスを、プラークアッセイによって同定、単離、及び精製する。クローニングは、正確なS−タンパク質アミノ酸配列を保存するような方法で行われている。タンパク質は、バキュロウイルスシグナルペプチドを伴って発現させることができる(例えば、米国特許第6245532号を参照、また、組換えバキュロウイルス中での発現に用いる一般的方法に関してもこれを参照のこと)。
【0016】
組換え体AcNPV−Sタンパク質のバキュロウイルスバンクは、無血清の昆虫細胞を感染させ(例えば、米国特許第6103526号を参照)、そして高力価の感染性バキュロウイルスを含有する上清培地を収集することによって調製する。バキュロウイルスなどの組換えウイルスに感染した細胞を含めた、細胞を高密度成長させるための装置及び方法に関しては、例えばPCT国際公開第WO00/46354号を参照のこと。
【0017】
組換え体S−タンパク質の発現は、SDS−PAGE/クマシーブルー染色及びウェスタンブロット分析によって分析する。
【0018】
ウイルスストックの力価を測定し、このウイルスストックを、10L細胞ペレットを生成するのに用いる。このペレットは精製に用いることができる。
【0019】
完全長のS−タンパク質は、昆虫細胞から分泌されて、細胞膜の表面に付着する場合がある。穏やかな界面活性剤条件を用いて、そのようなS−タンパク質を可溶化する。次に、混入しているタンパク質及び核酸を除去するために、カラムクロマトグラフィーを用いることによってタンパク質を精製する。
【0020】
N末端の配列決定によって、それが正統的な完全長の抗原であることを確認する。加えて、マウスの赤血球を膠着させる能力に基づいてS−タンパク質の生物活性を評価することもできる。上述のように、単一のウイルスプラークに由来する組換えウイルスを、低い感染多重度で数代介継代させながら増殖させて、多量の種菌を産生させ、作業用ウイルスバンク(WVB)として、液体窒素中にアリコートで保存する。WVBは、細菌、真菌、及び、野生型又は他の組換え体の混入バキュロウイルスを含めた、他の外来物質を含んでいないかどうか試験する。アイデンティティは、精製されたバキュロウイルスDNAから得た挿入断片のサザンブロット分析によって、そして、感染昆虫細胞で産生された組換え体タンパク質のウェスタンブロット分析によって確認する。
【0021】
末端を欠失したS−タンパク質に関しては、本発明者らの末端欠失型S−タンパク質は、S−タンパク質の細胞質及び膜貫通部分を欠失したもの、例えば、S1又はS2領域を含むか、本質的にそれから成るか、又はそれから成るものでよい。本発明者らのコンストラクトには、精製過程を促進するためのhisタグを含有するS−タンパク質をコードするコンストラクトが含まれる。S−タンパク質は、三量体として発現されているようである。更に、本発明によれば、M及び/若しくはN及び/若しくはEタンパク質、又はその部分が発現される。
【0022】
アイデンティティ試験には、SDS−PAGE分析及びウェスタンブロット分析、並びに、アミノ酸分析及びN末端配列決定が含まれる。これらによって、正統的な完全長の抗原が確認される。無菌性の試験は、21 CFR 610.12にしたがって実施できる。純度の試験は、21 CFR 610.13にしたがって実施でき、これはS−タンパク質抗原の純度を測定し、また、発熱物質の存在を測定する。原体物質中に存在するS−タンパク質抗原量の測定は、タンパク質の標準的な化学的定量法を用いて行い、最終の容器封入物に必要な希釈を計算するのに用いる。
【0023】
S−タンパク質は、ウイルス中和(VN)抗体を誘導するので、コロナウイルスワクチンの候補抗原である。S−タンパク質(スパイク糖タンパク質、表面タンパク質)は、SARSの主抗原であると考えられ、ACE2受容体結合を介した感染の鍵となるものである。これに加えて、ヘムアグルチニン−エステラーゼ(HE)タンパク質も、VN及びHE抑制性抗体の産生を刺激することが記載されている(Saif 1993)が、SCVにはこのタンパク質が存在しない。また、Mタンパク質も、補体の存在下でウイルス中和抗体を誘導することが記載されている(Saif 1993)。ウイルス粒子の抗原特異性は、中和試験(S及びHE)又は補体結合試験(M)で測定することができる。保護免疫は、補体非依存的な中和抗体の形態で誘導される。
【0024】
伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)由来の様々な断片を含めたS−タンパク質をコードする完全長遺伝子がクローニングされ、バキュロウイルスベクターで発現された。組換えウイルスに感染した細胞を用いた子ブタの免疫化が行われ、4つの主要な抗原部位(A、B、C、及びD)すべてを含有する、S−タンパク質のアミノ末端側半分が、VN抗体価を誘導することが示された(Tuboly, Nagy et al. 1994)。バキュロウイルス発現ベクターを用いることによって、ヒトコロナウイルスHCoV−229Eに由来する、末端を欠失した可溶性S−タンパク質を産生することができ、また、完全長遺伝子のN末端547アミノ酸の中にあるスパイク糖タンパク質の受容体結合ドメインを同定及び位置決めすることができる(Bonavia, Zelus et al. 2003)。
【0025】
ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)の場合には、ワクチニアウイルスベクターでクローニング及び発現されたS−タンパク質を用いたワクチン接種が、抗体媒介性のウイルス感染の亢進に関連付けられている(Vennema, de Groot et al. 1990; Vennema, de Groot et a1. 1990; Klepfer, Reed et al. 1995)。加えて、不活化FIPウイルス又は生FIPウイルスを用いて、ネコをFIVに対して免疫化させた後にも、同様の現象が報告された(Scott 1987)。この抗体依存性の亢進には、Sタンパク質における特定の抗原部位が関与していると報告された(Corapi, Darteil et al. 1995)。
【0026】
しかし、米国特許第5858373号で、Paolettiは、FIPV抗原、例えば、S、S1、S2、S3、M、N、M+Nを発現する弱毒ベクター、例えば、NYVAC、ALVACの有用性を報告している。したがって、主張されている、ウイルス感染の亢進という問題は、先の研究で用いられたベクターの性質によるものかもしれないし、或いはネコに特有のものかもしれないと考えられている。したがって、本発明は、S及び/又はS1及び/又はS2及び/又はE及び/又はM及び/又はNなどの、1つ又は複数のSARSタンパク質をin vivoで発現するために、CMVプロモーター又はSV40プロモーターなどの哺乳類プロモーターを用いた、DNAプラスミド、MVA、ALVAC、NYVAC、又はバキュロウイルスなどの弱毒ベクター又は非増殖性ベクター(哺乳類細胞において)を想定する。そのようなベクターの構築及び使用には、本明細書に引用された文献を参考にすることができる。但し通常は、Paolettiの373号特許の教示を、ポックスウイルス、例えばMVA、ALVAC、及びNYVAC SARSベクターの構築及び使用に用いることができ;また、Audonnetの米国特許第6228846号及び第6159477号の教示は、SARSタンパク質を含有して、且つin vivoで発現するDNAプラスミドの構築及び使用に用いることができるDNAプラスミドに関する教示に関して信頼することができる。通常、ワクチン組成物又は免疫学的組成物のためのプラスミドは、宿主細胞、例えば哺乳類細胞からの、抗原の発現又は発現及び分泌を制御する調節配列に作用可能に連結している抗原(例えば、SARS S、S1、S2、E、M、N、又はこれらの組合せ)をコードするDNAを含むことができ;例えば、上流から下流に向けて、哺乳類ウイルスプロモーター(例えば、hCMV又はmCMVプロモーターなどのCMVプロモーター、例えば前期−中間期プロモーター、又はSV40プロモーター−有用なプロモーターに関しては、本明細書に引用又は援用されている文献を参照のこと)などのプロモーターのDNA、分泌用の真核細胞リーダーペプチド(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベータのもの−有用なリーダーペプチドに関しては、本明細書に引用又は援用されている文献を参照のこと)のDNA、抗原(SARS S及び/又はS1及び/又はS2及び/又はE及び/又はM)のDNA、及びターミネータ(例えば、ウシ成長ホルモンをコードする遺伝子からの3’UTR転写ターミネータ、即ちbGHポリA−本明細書に引用又は援用されている文献を参照のこと)をコードするDNAを含むことができる。一組成物は、複数のプラスミド又はベクターを含有することができ、それによって、各ベクターは、異なったSARSタンパク質、抗原、又はエピトープを含有し、且つ発現する。Wasmoenの米国特許第5849303号、及びDaleの米国特許第5811104号の本文も有用となりうるので、これらにも言及しておく。グループ1に属するコロナウイルスとは反対に、SARS S−タンパク質は切断されないであろう。そのため、プラスミド、ベクター、又は組換えウイルス調製物によって発現されたものにせよ、サブユニット調製されたものにせよ、S1及びS2よりも、完全長のSのほうがより有利かもしれない。
【0027】
更に、本発明は、1つ又は複数の単離されたSARS抗原、免疫原、又はエピトープ、例えばS、S1、S2、E、M、及び、N1などのNのうちの1つ又は複数、即ち、これらの組合せS若しくはS1及び/又はS+E及び/又はM及び/又はN1などのNなどを含有するか、本質的にそれから成るか、或いはそれから成る組成物、例えば、免疫原性組成物、免疫学的組成物、若しくはワクチン組成物も想定する。
【0028】
更になお、本発明は、複数の単離体、例えば、3つの異なった単離体など、2つ以上の単離体に由来するSARSタンパク質並びに/又はSARSタンパク質を発現するベクター及び/若しくはプラスミドを含有する組成物を想定する。組成物は、3つの異なった単離体に由来するS−タンパク質若しくはその部分、例えばS1若しくはS2、又は3つの異なった単離体に由来するそのようなSタンパク質若しくはその部分を発現するベクター若しくはプラスミドを含有すると有利である。単離体は、組成物に対する免疫原性応答を最大にするように選択するべきである。
【0029】
様々な投与経路用の形態にある組成物が、本発明によって想定されている。投与の有効量及び経路は、年齢、性別、患者又は対象の体重、及び、既知であり、且つ過度の実験を必要としない他のスクリーニング方法など、既知の因子によって決定する。各活性薬(抗原、免疫原、又はエピトープ)の用量は、本明細書に引用されているか、又は参照により援用されている参考文献にある通りにすることができ、且つ/或いは、1若しくは数マイクログラムから数百若しくは数千マイクログラムまでの範囲、例えば1μgから1mgまでの範囲でありうる。組換え体又はベクターは、本明細書及び/又は本明細書に引用されている文献に記載の用量に相当するin vivo発現を得るのに適した量で投与することができる。例えば、ウイルス懸濁液に適した範囲は、経験的に決定することができる。本発明におけるウイルスベクター又は組換え体は、用量あたり、例えば約2mlの用量あたり、少なくとも約10pfu、より好ましくは約10pfuから約1010pfuまで、例えば約10pfuから約10pfuまで、例えば約10pfuから約10pfuまでの量で対象又は患者に投与するか、或いは、感染又は形質移入によって細胞内に導入することができる。そして、複数の遺伝子産物を複数の組換え体に発現させる場合、各組換え体をこれらの量で投与することができ;或いは、組換え体の合計が併せてこれらの量となるように各組換え体を投与することができる。本発明で用いられるプラスミド組成物では、用量を、本明細書に引用されている文献に記載の通り、又は本明細書に記載の通りとすることができる。例えば、プラスミド組成物中における各プラスミドDNAの適当な量は、1μgから2mgまで、好ましくは50μgから1mgでありうる。本発明のDNAプラスミドベクター組成物の他の適当な用量は、過度の実験をしないでも、本明細書に引用された、DNAプラスミドベクターに関する文献を当業者が調べることによって確かめることができる。しかし、適当な免疫原性応答を誘発する、組成物の用量、その中にある成分の濃度、及び組成物を投与するタイミングは、血清の抗体力価測定、例えばELISA、及び/又は血清中和アッセイ分析及び/又は試験動物におけるワクチン接種評価などの方法によって決定することができる。当業者の知識、この開示、及び本明細書に引用された文献に基づけば、そのような決定には、過度の実験を必要としない。そして、逐次投与の時間(本発明の組成物の逐次投与は、この開示によって想定されており、例えば、その場合、同一又は異なる組成物を、初回−ブースト投与法における場合のように、逐次投与し;例えば、ベクターを投与し、その後に単離されたタンパク質組成物を投与することができ、またその逆も同様である)も、過度の実験をしないでも、同様に、この開示及び当技術分野の知識から確認できる方法で確かめることができる。実際に、サブユニット調製物に関しては、それぞれ平均約50μgのSARSタンパク質から成る2回の投与を与えるのが有利である。
【0030】
加えて、本発明は、混合組成物又はカクテル組成物を想定するが、これらは、インフルエンザなど、他の病原体の抗原、エピトープ、又は免疫原、例えばインフルエンザHA、NA、若しくはM2、又はその部分を含有し、且つ/或いは、インフルエンザなど、他の病原体の別の抗原、エピトープ、又は免疫原、例えばインフルエンザHA、NA、若しくはM2を発現するベクター、プラスミド、又は組換え体を含有する組成物である。有利な組成物は、例えば、上で論じた通り、3つの異なった単離体など、異なった単離体に由来する、1つ又は複数のSARSタンパク質、例えばS−タンパク質又はその部分、例えば、S1、S2、又はそのエピトープと、インフルエンザHA及び/若しくはNA、又はそのエピトープ部分、例えば3つの株(例えば、毎年の三価インフルエンザワクチン用にWHOが毎年選択するように、WHOによって選択されたインフルエンザ株)に由来するものなど、1つ若しくは複数の株に由来するインフルエンザHA若しくはその部分、及び/又は、3つの株に由来するものなど、1つ若しくは複数の株に由来するインフルエンザNA若しくはその部分とを含有することができる。そのような混合組成物中のHA及びNAの量は、本明細書に引用されている文献にある通りでよく、また、利用可能なインフルエンザワクチン調製物にある通りでもよい。同様に、ベクター、プラスミド、又は組換えウイルス組成物は、そのようなSARSタンパク質及びインフルエンザタンパク質をin vivoで発現することができる。特にSARSがインフルエンザと同様に毎年の投与、免疫化、又はワクチン接種を必要とするかもしれないので、この方法で、SARSとインフルエンザとを同じ調製物で対処することができる。そして、当然ながら、発明の組成物は、例えば、3つ又は4つの異なった単離体など、異なった単離体に由来する、SARSのM、S、N、及びEすべてを、本明細書に論じたように、単独で、又は、インフルエンザHA及び/又はNA及び/又はM2などの、他の病原体の他の抗原、エピトープ、又は免疫原と更に組み合わせて含有することができ、且つ/或いは、そのようなSARS及び/又は他の抗原、エピトープ、又は免疫原、例えばインフルエンザHA及び/又はNA及び/又はM2(1つ、又は2つ、又は3つ、又は4つ、又はそれより多くの異なった株に由来するものなど)をin vivoで発現するベクター、プラスミド、及び/又は組換えウイルスを含有することができる。更に、本発明のワクチンにプロテオソームを用いることができ、これには、Jonesらによって記載された方法が含まれる(Jones, Allard et al. 2003)。
【0031】
そのような混合組成物は、抗インフルエンザ製剤に用いられている形態、例えば、注射、鼻腔内(粘膜)投与などによって、そして、本発明の組成物に関して本明細書に記載する通りに、そして、本明細書に引用又は参照により援用されている文献にある通りに投与することができる。
【0032】
追加又は代替として、本発明の組成物中に存在するか、且つ/或いは本発明の組成物中のベクターによって発現される、追加の抗原、エピトープ、又は抗原は、PspA、PspC、又は抗肺炎製剤で通常使用される23種の抗原又はエピトープのいずれかなど、肺炎菌(Pneumonia)例えば肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)に由来するものでもよく;例えば、米国特許第6500613号、第6232116号、第6231870号、第6042838号、第6027734号、第6004802号、第5997882号、第5980909号、第5965400号、第5965141号、第5955089号、第5871943号、第5856170号、第5804193号、第5753463号、第5476929号、及び、これらに引用されている文献を参照のこと。肺炎球菌の抗原、エピトープ、又は免疫原は、本明細書に引用されているか、又は参照により援用されている文献にある通りに、或いは既知の調製物にある通りに存在するもの又は発現されているものでよく;また、そのような混合組成物は、抗肺炎製剤に用いられる形態、例えば、注射、鼻腔内(粘膜)投与、及び経口投与などによって、そして、本発明の組成物に関して本明細書に記載する通りに、そして、本明細書に引用又は参照により援用されている文献にある通りに投与することができる。本発明の組成物は、非経口投与用又は粘膜投与用に、好ましくは皮内経路又は筋肉内経路で使用することができる。粘膜投与が用いられる場合、経口経路、鼻腔内経路、又は眼経路の使用が可能である。局所投与も、本発明によって想定されており、例えば、Tangの米国特許第6348540号及び米国特許出願第20030045492号、並びに米国特許第5910306号及び第5980898号を参照のこと。これらの本文は、ベクター又はプラスミド組成物の局所投与に関して、また、免疫原、抗原、又はエピトープを含有する組成物に関して参考にすることができる。
【0033】
そのような組成物中では、免疫原、抗原、若しくはエピトープ、又はベクター若しくはプラスミドが、滅菌水、生理食塩水、グルコース、又は同様のものなど、適当な担体、希釈剤、若しくは賦形剤、及び/又はアジュバントとの混合物中にあってよい。組成物は、凍結乾燥又は凍結されていてもよい。組成物は、投与経路及び所望の調製物に応じて、pH緩衝剤、アジュバント、保存剤、粘膜経路用に使用される重合体賦形剤、及び同様のものなどの補助物質を含有することができる。適当な調製物を調製するには、過度の実験をしないでも、参照により本明細書に援用されている、「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」(Rowe, Sheskey et al. 2003)、及び「HAND BOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS」(Rowe, Sheskey et al. 2003)などの標準的な教科書を参考にすることができる。適当な用量は、この中の本文、及びこの中に引用されている文献に基づいたものでもよい。
【0034】
アジュバントは、免疫原に対する免疫応答を亢進する物質である。
【0035】
昆虫細胞又はその画分は、アジュバントとなりうる;例えば、米国特許第6224882号を参照のこと。したがって、95%以上など、90%以上の純度が望ましいが、昆虫細胞又はその画分を含有する「自己アジュバント」組成物も利用することができる。
【0036】
アジュバントには、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、及び水中油中水型エマルジョンを含めることができる。エマルジョンは、詳細には、軽流動パラフィンオイル(ヨーロッパ薬局方型);スクアラン又はスクワレンなどのイソプレノイドオイル;アルケンのオリゴマー形成の結果生じる油、詳細にはイソブテン又はデケン;酸、又は、直鎖状アルキル基を含有するアルコールのエステル、特に植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリル酸/カプリン酸)、グリセリルトリ(カプリル酸/カプリン酸)、プロピレングリコールジオレイン酸;分岐を有する脂肪酸又はアルコールのエステル、詳細にはイソステアリン酸エステルをベースとすることができる。油は、乳化剤と組み合わせてエマルジョンを形成するのに用いる。乳化剤は、好ましくは、非イオン性界面活性剤、詳細には、任意選択でエトキシル化される、ソルビタン、マンナイド(例えば無水マンニトールオレイン酸)、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、オレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、及びヒドロキシステアリン酸のエステル、並びにポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン共重合体ブロック、詳細にはプルロニック(登録商標)製品、特にL121(Hunter. 1995)である。例えば、(Powell, Newman et al. 1995)の147頁に記載されているSPTエマルジョン、及び同書の183頁に記載されているエマルジョンMF59を用いることが可能である。例えば、アジュバントを含有する組成物は、以下の方法で調製する。即ち、乳化ターボミキサーの補助を用いて、免疫原を含む水相67%v/vを、無水マンニトールオレイン酸2.3%w/v、11EO(酸化エチレン)でエトキシル化されたオレイン酸2.6%w/v、及び軽流動パラフィンオイル(ヨーロッパ薬局方型)28.1%v/vの中に乳化させる。エマルジョンを調製する別法の1つは、高圧ホモジナイザー中に、スクアラン5%w/v、プルロニック(登録商標)L121 2.5%w/v、20 EOでエトキシル化されたオレイン酸及び無水ソルビトールのエステル0.2%w/v、及び免疫原を含む水相92.3%v/vの混合物を通過させることによって乳化させるものである。
【0037】
これは、合成重合体(例えば乳酸及びグリコール酸の同種重合体及び共重合体、これらは免疫原を内部に封入するミクロスフェア、例えば生分解性ミクロスフェアを生成するのに用いられる(Eldridge, Staas et al. 1991))を用いて、そして、IL−2及びIL−12などのサイトカイン(例えば、米国特許第5334379号参照)、並びにGMCSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子;中でも、全般的には米国特許第5602007号、第4999291号、及び第5641663号を参照、また、Clark及びGrant(Clark and Kamen 1987; Grant and Heel 1992)も参照のこと)を用いて処方することも可能である。ある種のアジュバント、例えばサイトカインやGMCSFは、免疫原及び/又はエピトープと共にin vivoで発現させることができる。
【0038】
アジュバントの更に別の例は、アクリル又はメタクリル酸の重合体と、無水マレイン酸及びアルケニル誘導体の共重合体とから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、架橋されているアクリル又はメタクリル酸の重合体、中でも糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋されているものである。これらの化合物はカルボマーという用語で知られている(Pharmeuropa 1996)。当業者は、米国特許第2909462号(この開示を参照により本明細書に援用する)を参考にすることもできる。この開示は、少なくとも3つ、そして好ましくは8つ以下の水酸基を有し、且つこの少なくとも3つの水酸基の水素原子が少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族基で置換されているポリヒドロキシル化合物で架橋されたそのようなアクリル重合体について記載する。好ましい基は、2から4個の炭素原子を含有するもの、例えば、ビニル基、アリル基、及び他のエチレン系不飽和基である。不飽和基は、それら自体、メチルなどの他の置換基を含有することができる。カルボポール(BF Goodrich社製、Ohio、米国)という名で販売されている製品が特に適している。それらはアリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールによって架橋されている。それらの中でも、カルボポール974P、934P、及び971Pが挙げられる。無水マレイン酸及びアルケニル誘導体の共重合体の中では、共重合体EMA(Monsanto社製)が好ましいが、これらは、直鎖状又は架橋された無水マレイン酸及びエチレンの共重合体、例えばジビニルエーテルによって架橋されたそれらの共重合体である。参照により本明細書に援用されている(Regelson, Kuhar et al. 1960)を参考にすることができる。これらの重合体を水に溶解させると酸性溶液となり、アジュバント溶液を得るためには、これを、好ましくは生理的pHに中和し、その中に、免疫原性組成物、免疫学的組成物、又はワクチン組成物それ自体を組み入れる。そうすると、重合体のカルボキシル基が部分的にCOO−形態となる。本発明によるアジュバントの溶液、特にカルボマーは、蒸留水中に、好ましくは塩化ナトリウムの存在下で調製して、その結果得られる溶液が酸性pHであることが好ましい。この原液は、それを、NaClを含む望ましい量、又はそのかなりの部分に(望ましい最終濃度を得るために)の水、好ましくは生理食塩水(NaCl9g/l)、いくつかの部分をすべて一度に添加して、同時に或いは続いて、好ましくはNaOHで中和(pH7.3から7.4)することによって希釈する。それはワクチンを混合するためのものなので、生理的pHのこの溶液が使用され、凍結乾燥、液体、又は凍結の形態で特に保存することができる。最終ワクチン組成物中の重合体濃度は、0.01%から2%w/vであり、例えば0.06から1%w/vであり、0.1から0.6%w/vなどである。
【0039】
DNA又はDNAプラスミド調製物は、陽イオン性脂質と共に、或いはその中に処方することができ;陽イオン性脂質に関して、また、アジュバントに関しては、Loosmoreの米国特許出願第2003/0104008号にも言及しておく。
【0040】
加えて、前述の通り、昆虫細胞又はその画分もアジュバントとなりうる;例えば米国特許第6224882号参照。したがって、95%以上など、90%以上の純度が望ましいが、昆虫細胞又はその画分を含有する「自己アジュバント」組成物も利用することができる。
【0041】
この開示及び当技術分野の知識から、当業者は、必要に応じて、過度の実験をしないでも、適当なアジュバント、及び、本発明による免疫学的組成物、免疫原性組成物、又はワクチン組成物に用いるその量を選択することができる。
【0042】
SARSタンパク質若しくはエピトープ、又はSARSタンパク質を含有及び/若しくは発現するベクター、又はSARSタンパク質若しくはそれらを発現するベクターを含有する組成物(単独、或いは他の抗原、又はそのエピトープ若しくは免疫原も含有若しくは発現するもの)の経口投与又は粘膜投与も本発明によって想定されている。そのような組成物は、米国特許第6500613号、第6232116号、第6231870号、第6042838号、第6027734号、第6004802号、及びこれらに引用されている文献の通りに処方することができる。一般的に、経口投与組成物は、薬学的に許容される香料などの香料を含有したり、例えば野生環境、動物、又は小さい子供に使用する場合には、食物又は餌の中に入れたりすることがある。粘膜投与は、鼻腔内、例えば嗅粘膜で実施するのが好ましく;したがって、組成物は、エアゾールを介して、例えばエアゾール噴霧器を介して投与することができる。鼻腔内投与は、肺感染に対する防御を宿主に提供することができ、更に肺感染として開始する感染に対する防御を宿主に提供することもできる。しかし、粘膜投与には、呼吸粘膜、歯肉粘膜、又は歯槽粘膜を用いることもできる。したがって、投与は、経舌若しくは舌下、又は口腔若しくは気道中に行うことができるが;鼻腔内投与が好ましい。本発明の組成物、特に経鼻投与用のものは、等張水溶液、懸濁液、又は粘性組成物として提供すると好都合であり、それは、選択されたpHに緩衝調整することもできる。粘性組成物は、ゲル、ローション、軟膏剤、クリーム、及び同様の形態をとることができ、通常は十分な量の増粘剤を含有し、それにより、粘着性が約2500から6500cpsとなっているであろう。但し、最大10000cpsにさえ及ぶ、更に粘性の高い組成物を利用することもできる。粘性組成物は、2500から5000cpsの粘性を有するものが好ましく、それは、この範囲を超えると投与がより困難となるからである。液体スプレー及び液滴は、通常、ゲルや他の粘性組成物より調製が容易である。更にそれらは、投与、特に多用量投与する状況でいくらか一層好都合となっている。一方、粘性組成物は、適切な粘性の範囲内に処方して、鼻粘膜などの粘膜との接触時間がより長くなるようにすることができる。組成物の粘性は、薬学的に許容される増粘剤を用いて、選択されたレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易且つ経済的に利用可能であり、扱いが簡単なので、好ましい。他の適当な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、及び同様のものが含まれる。増粘剤の好ましい濃度は、選択された薬剤によるであろう。重要な点は、選択された粘性を実現するであろう量を用いることである。通常、粘性組成物は、そのような増粘剤を添加することによって、溶液から調製する。本発明に包含される組成物は、粘膜の乾燥を抑制して、刺激作用を予防する湿潤剤を含有することができる。例えば、ソルビトール、プロピレングリコール、又はグリセロールを含めた、様々な薬学的に許容される湿潤剤のいずれのものも利用することができる。増粘剤に関しては、選択された薬剤に応じて、その濃度が異なるであろう。但し、これらの薬剤の存在若しくは不在、又はそれらの濃度は、本発明の本質的特性ではない。粘膜を通した吸収、特に鼻粘膜を通した吸収の亢進は、薬学的に許容される界面活性剤を用いて達成することができる。組成物に通常有用な界面活性剤には、ツウィーン80、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、及びオクトキシノールなど、無水ソルビトールの脂肪酸部分エステルのポリオキシエチレン誘導体が含まれる。普通の濃度は、全重量に基づいて1%から10%である。組成物の貯蔵寿命を延長するには、薬学的に許容される保存剤を利用することができる。例えば、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、又は塩化ベザルコニウムを含めた様々な保存剤も利用できるが、ベンジルアルコールが適当でありうる。保存剤の適当な濃度は、選択された薬剤に応じて、かなりの変動が存在しうるが、全重量に基づいて0.02%から2%まであろう。ワクチンを含めた免疫原性組成物は、例えば、液体溶液又はエマルジョンなどとして、吸入剤、スプレー、及び同様のもの(例えば、鼻腔スプレー、エアゾールスプレー、又はポンプスプレー、及び同様のもの)として調製することができる。エアゾールスプレー製剤は、炭化水素噴霧剤などの適当な噴霧剤と共に加圧容器中に入れることができる。ポンプスプレーディスペンサーは、計量された用量、又は、特定の粒子サイズ若しくは液滴サイズを有する単回用量を投薬することができる。ポンプスプレーディスペンサーは、例えば、Valois of America, Inc.社(米国、Connecticut)から販売されている。鼻腔スプレーディスペンサーは、通常、プラスチックなどの可撓性材料から製造され、圧搾に反応してスプレーの投薬を引き起こす。「バンセリル(Vanceril)」などの抗炎症剤は、粘膜投与用の経口及び鼻腔エアゾール形態で販売されており;抗炎症剤の「バンセラーゼ(Vancerase)」は、鼻腔投与用のポンプスプレーディスペンサー中に入って販売されており;「ドリスタン」などの風邪薬は、鼻腔スプレー(圧搾)ディスペンサー中に入って販売されており(したがって、エアゾール、ポンプ、及び圧搾ディスペンサーが知られており、且つ利用可能であることを読者は認識している);そして、抗インフルエンザワクチンでさえ、例えばエアゾール又はエアゾール噴霧器を介して、鼻腔投与用の形態で提供されており(Medlmume社)、そして、本発明の組成物を同様に投薬することができる。
【0043】
末端を欠失したSARSタンパク質又はSARSタンパク質のエピトープを用いた発明に関しては、過度の実験をしないでも、本明細書における開示と、当技術分野における知識とから、末端を欠失したSARSタンパク質又はエピトープの適当なものを決定することができるが、その際、更に以下のことを前提とする。即ち、一般に、免疫応答は以下の通り生成される:タンパク質がより小さいペプチドに切断され、別の細胞の表面に局在する「主要組織適合複合体」(MHC)と呼ばれる複合体中に提示されたときにのみ、T細胞はそのタンパク質を認識するということである。MHC複合体には2つのクラス−クラスI及びクラスIIがあり、各クラスは多数の異なったアレルから構成されている。異なる患者は、異なったタイプのMHC複合体アレルを有し;彼らは、「異なったHLAタイプ」を有すると言われる。
【0044】
MHCクラスI複合体は、事実上あらゆる細胞に存在しており、細胞内で生成されたタンパク質から生じるペプチドを提示する。したがって、クラスI MHC複合体は、ウイルスに感染した細胞、又は発癌遺伝子の発現の結果として癌になった細胞を殺すのに有用である。表面にCD4と呼ぶタンパク質を有するT細胞が、MHCクラスIの細胞に結合して、リンフォカインを分泌する。リンフォカインは、反応を刺激し;細胞が到着して、ウイルスに感染した細胞を殺す。
【0045】
クラスII MHC複合体は、抗原提示細胞にのみ見出され、抗原提示細胞によってエンドサイトーシスされた、循環している病原体から生じるペプチドを提示するのに用いられる。CD8と呼ばれるタンパク質を有するT細胞が、MHCクラスIIの細胞に結合して、溶解性顆粒のエキソサイトーシスによって、その細胞を殺す。
【0046】
T細胞応答を刺激する、注目しているエピトープを、あるタンパク質が含有しているかどうか判定する際のいくつかのガイドラインには、以下のものが含まれる:ペプチドの長さ−MHCクラスI複合体中に適合するには、そのペプチドは、長さが少なくとも8又は9アミノ酸であるべきであり、そして、クラスII MCH複合体中に適合するには、長さが少なくとも13〜25アミノ酸であるべきである。この長さは、そのペプチドがMHC複合体に結合するための最小限のものである。発現されたペプチドは、細胞によって切断されうるので、ペプチドは、これらの長さより長いのが好ましい。ペプチドは、それが様々なクラスI分子又はクラスII分子に、免疫応答を生み出すのに十分に高い特異性で結合するのを可能にする適切なアンカーモチーフを含有するべきである(Engelhard 1994; Bocchia, Wentworth et al. 1995)。これは、過度の実験をしないでも、注目しているタンパク質の配列を、MHC分子に結合するペプチドの公表されている構造と比較することによって行うことができる。T細胞受容体によって認識されるタンパク質エピトープは、タンパク質分子の酵素的分解によって生成されたペプチドであり、クラスI又はクラスII MHC分子と結合して、細胞表面に提示される。
【0047】
更に、当業者は、そのタンパク質の配列を、タンパク質データベースに記載された配列と比較することによって、注目しているエピトープの存在を確かめることができる。相同性を全く共有しないか、ほとんど共有しないタンパク質領域は、そのタンパク質のエピトープであるためには、より良い選択であり、したがって、ワクチン組成物又は免疫学的組成物において有用である。生存細胞に存在する広範に見出される配列と大きな相同性を共有する領域は避けるべきである。したがって、SARSのS、S1、S2、E、N、及びMに関しては、当業者は、これらのタンパク質を、他のコロナウイルスの類似タンパク質と比較して、SARSタンパク質中の相違領域を、エピトープ領域として利用することができる。この件に関して、一例として、アライメントの1つを示す図13を添付する。
【0048】
なお更に、別の方法では、単純に、注目しているタンパク質の部分を生成又は発現させ、注目しているタンパク質のそれらの部分に対するモノクローナル抗体を産生させて、そして次に、このタンパク質が由来する病原体の成長をそれらの抗体がin vitroで阻害するかどうか確かめる。当業者は、この開示及び当技術分野で記載されている、注目しているタンパク質の部分を生成又は発現させるための他のガイドラインを、それに対する抗体が成長をin vitroで阻害するかどうかに関する分析に用いることができる。
【0049】
例えば、当業者は、注目しているタンパク質の部分の生成を、そのタンパク質における8から9アミノ酸又は13から25アミノ酸の長さの部分を選択することによって、或いは親水性領域を選択することによって、或いは抗原(完全長)−抗体複合体のエックス線データから結合することが示された部分を選択することによって、或いは他のタンパク質と配列が異なっている領域を選択することによって、或いは潜在的HLAアンカー結合モチーフを選択することによって、或いはこれらの方法又は当技術分野で知られている他の方法の任意の組合せによって行うことができる。
【0050】
抗体によって認識されたエピトープは、タンパク質の表面で発現される。抗体反応を刺激する可能性の最も高いタンパク質の領域を判定するためには、当業者は、好ましくは、上述の一般的な方法又は当技術分野で知られている他のマッピング法を用いて、エピトープマッピングを行うことができる。
【0051】
したがって、いかなる過度の実験も、SARSタンパク質のエピトープを決定するのに必要ではない。
【0052】
完全長のSARSタンパク質、又は、エピトープなど、SARSタンパク質の末端欠失部分は、融合タンパク質として発現することができる。通常、融合パートナー(エピトープ又は末端欠失型又は完全長のSARSタンパク質に融合している、融合タンパク質の部分)は、分泌及び/又は免疫原性を亢進する。上述の通り、分泌を亢進するために、バキュロウイルスのシグナル配列を、SARSタンパク質に融合させることができる。所望のペプチドを得るための効率的な戦略を提供する融合タンパク質の化学的切断又は酵素による切断に関して、いくつかの方法が記載されている(例えば、米国特許第6143872号、及び第6451769号を参照)。頻繁に用いられている融合システムは、IgG親和性を有し、短いペプチドに対する抗体の作製に用いられてきているブドウ球菌プロテインA融合システム及び合成ZZ変種、グルタチオンS−トランスフェラーゼ融合システム、βガラクトシダーゼ融合システム、並びにtrpE融合システムである。これらのシステムのうちいくつかは、ベクター、精製コンポーネント、及び詳細な指示を含むキットとして販売されている。簡潔には、短い特定のエピトープを得る方法では、所望の発現ベクターへの導入を容易にする適切な末端を有する、対応するオリゴデオキシヌクレオチドを、融合パートナーを有する翻訳枠で合成する。免疫原性を亢進させるためには、SARSタンパク質又はその末端欠失部分又はそのエピトープと融合している、ボレリアブルグドルフェリ(B. burgdorferi)OspAの脂質化を利用することができる。同様に、免疫原性を亢進するために、T細胞性エピトープをSARSタンパク質又はその末端欠失部分又はそのエピトープに融合させることができる。融合タンパク質は、融合パートナーとして、S、S1、S2、若しくはSタンパク質のエピトープ領域、又はM若しくはE、又はその部分など、SARSタンパク質のすべて又は一部、インフルエンザのヘマグルチニン若しくはノイラミニダーゼのすべて若しくは一部、又はM2若しくはそのエピトープ部分、或いは、米国特許第5858369号又は本明細書に引用されている他の特許に挙げられている融合パートナーを有することができる。
【0053】
本発明の組成物は、免疫応答、免疫原性応答、又は防御免疫応答を誘発することができる。免疫原性(又は免疫学的)組成物は、局在性又は全身性の免疫応答を誘発する。ワクチン組成物は、局在性又は全身性の防御免疫応答を誘発する。「免疫学的組成物」及び「免疫原性組成物」という用語は、「ワクチン組成物」を包含する(前者2つの用語は、防御的な組成物でもありうるので)。免疫応答は、モノクローナル抗体を含めた、抗体を得るのに用いることができる。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞によって産生された免疫グロブリンである。モノクローナル抗体は、単一の抗原決定基と反応して、血清由来の従来の抗体より高い特異性を提供する。更に、多数のモノクローナル抗体をスクリーニングすることによって、望ましい特異性、結合活性、及びイソタイプを有する個々の抗体を選択することが可能となる。ハイブリドーマ細胞系は、化学的に同一な抗体の定常的且つ安価な供給源を提供し、そのような抗体の調製を容易に標準化することができる。モノクローナル抗体を産生させる方法は、当業者に周知であり、例えば、参照により本明細書に援用する、米国特許第4196265号である。モノクローナル抗体の使用は知られている。そのような使用の1つは、診断方法におけるものであり、例えば、参照により本明細書に援用する、米国特許第4376110号である。モノクローナル抗体は、免疫吸着法クロマトグラフィーによって物質を回収するのにも用いられており、例えば、参照により本明細書に援用する(Milstein 1980)がある。SARSタンパク質、例えば、S、S1、又はS2に対するモノクローナル抗体は、診断用のキット、試験、方法、又はアッセイにおいて、或いは、血清、体液、分泌物、又は排出物などの試料中におけるSARSの存在又はその原因物質を測定するのに有用である。
【0054】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて調製することができる(Kohler and Milstein 1975; Kohler, Howe et al. 1976; Kohler and Milstein 1976; Hammerling 1981)。通常、そのような操作法では、SARS抗原、エピトープ、又は免疫原、例えば、Sタンパク質などのSARS M、N、E、Sで、或いは、より好ましくは、そのような抗原、エピトープ、又は免疫原を発現する細胞で、動物(好ましくはマウス)の免疫化を行う。適当な細胞は、SARSタンパク質に対する抗体に結合する、それらの能力によって認識することができる。そのような細胞は、適切ないかなる組織培養液中でも培養することができるが;10%のウシ胎仔血清(約56℃で不活性化されている)で補足され、約10μg/lの非必須アミノ酸、約1000U/mlのペニシリン、及び約100μg/mlのストレプトマイシンで補足されているアールの改変イーグル培地中で細胞を培養するのが望ましい。そのようなマウスの脾細胞を抽出して、適当な骨髄腫細胞系と融合させる。本発明によれば、いかなる適当な骨髄腫細胞系を利用してもよいが;ATCC(American Type Culture Collection)(米国、Manassas, Va)から入手可能な親骨髄腫細胞系(SP2O)を利用するのが望ましい。融合の後に、Wandsら(Wands and Zurawski 1981)よって記載の通り、この結果得られたハイブリドーマ細胞を、HAT培地で選択的に維持し、その後、限界希釈によってクローン化する。その後、そのような選択を通して得られたハイブリドーマ細胞を、注目している抗原に結合できる抗体を分泌するクローンを同定するためにアッセイする。
【0055】
別法では、SARSの抗原、エピトープ、又は免疫原、例えばSARS Sタンパク質に結合できる追加の抗体を、抗イディオタイプ抗体を使用して、2ステップ操作法によって産生させることができる。そのような方法では、抗体それ自体も抗原あって、したがって、第2の抗体に結合する抗体を得ることが可能であるという事実を利用する。この方法によれば、タンパク質特異的な抗体を、動物、好ましくはマウスを免疫化するのに用いる。その後、ハイブリドーマ細胞を生成するのに、そのような動物の脾細胞を用い、そして、その抗体がタンパク質特異的抗体に結合する能力を、タンパク質抗原が遮断できる抗体を産生するクローンを同定するためにハイブリドーマ細胞をスクリーニングする。そのような抗体は、特定の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、更に別のタンパク質特異的抗体の形成を誘導する動物の免疫化に用いることができる。
【0056】
本発明の抗体のFab及びF(ab’)2、並びに及び他の断片も、本発明の抗体の方法で使用できることが理解されよう。
【0057】
したがって、本発明は、試料中におけるSARSの存在を判定する方法であって、試料を、SARS S、S1、S2、E、N、又はMなどのSARSタンパク質、有利には、S、S1、又はS2、より有利にはSに特異的なモノクローナル抗体と接触させること、及び、モノクローナル抗体に対する結合の存在を検出することを含む方法を含む。モノクローナルは、結合を検出するために標識することができる。
【0058】
完全長S−タンパク質は、VN抗体を誘導するので、本発明の実施において有利であると考えられるが、先端欠失型のS−タンパク質は同様の性能を有するので、これが利用できることにも留意される。S−タンパク質の生成には、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)が有利である(Tuboly, Nagy et al. 1994; Bonavia, Zelus et al. 2003)。
【0059】
バキュロウイルスは、培養昆虫細胞で組み換え体タンパク質を生成するための、高能率的な真核細胞発現ベクターとして使用することができる(Summers and Smith 1987)。バキュロウイルスは、バキュロウイルス科のDNAウイルスであり、主としてチョウ目種の昆虫(チョウ及び蛾)に限定された狭い宿主範囲を有する。バキュロウイルスのプロトタイプ株であるオートグラファ核多角体ウイルス(Autographa californica Nuclear Polyhedrosis Virus)(AcNPV)は、感染可能な培養昆虫細胞の中で効率的に複製される。AcNPVは約130000塩基対の閉環状二本鎖DNAゲノムを有し、宿主範囲、分子生物学、及び遺伝子学に関して詳細に特徴付けられている。
【0060】
バキュロウイルスは、感染細胞の核内で巨大なタンパク質結晶閉鎖(protein crystalline occlusion)を形成する。ポリヘドリンと呼ばれる単一ペプチドが、これら閉鎖体(occlusion body)のタンパク質質量の約95%に該当する。ポリヘドリンの遺伝子は、AcNPVウイルスゲノム中に単一コピーとして存在している。培養細胞におけるウイルス複製には、ポリヘドリン遺伝子が必須でないので、外来遺伝子を発現するために、容易にそれを改変することができる(Smith 1983)。外来遺伝子を発現する組換えバキュロウイルスは、バキュロウイルスゲノムDNAと、注目している遺伝子配列を含有するキメラプラスミドとの間の相同組換えによって構築する。組換えウイルスは、それらの特徴的なプラーク形態によって検出すことができる。即ち、ポリヘドリン遺伝子を含有するウイルスから生じるプラークは、不透明な外観を有し、ポリヘドリン遺伝子が外来遺伝子によって置換されている組換えウイルスから生じるプラークは透明である。
【0061】
外来タンパク質発現用の組換えバキュロウイルスを構築するための一般的なスキームを図9に示す。外来遺伝子に由来するコード配列を、バキュロウイルス転移プラスミドとして知られているプラスミドに、標準的なクローン技術を用いて挿入する。転移プラスミドは、多重クローニング部位の上流にポリヘドリンプロモーターを含有し、多重クローニング部位は、天然のAcNPVにおいてポリヘドリン遺伝子座を挟み込んでいる配列によって仕切られている。転移プラスミドは、バキュロウイルスゲノムDNAと併せて同時形質移入に用いるが、その際、ポリヘドリン遺伝子を除去し、且つポリヘドリン遺伝子座の下流にある必須遺伝子の一部を除去する酵素を用いて、バキュロウイルスゲノムDNAを線状化し、これによって、ゲノムDNAを非感染性にする。
【0062】
転移プラスミドは、ゲノムDNAの線状化によって除去された必須遺伝子の部分を含有し、したがって、転移プラスミドと線状化したゲノムDNAとの間の相同組換えによってウイルスが救出される。非組換え体に対する組換えウイルスの回収効率は約100%である。この過程によって、ほぼ均質なプラークが得られ、複数ラウンドのプラーク精製を行う必要がなくなる。線状化する前の元のバキュロウイルスゲノムDNAはポリヘドリン遺伝子を含有しているので、非組換えウイルスプラーク(不透明)は、組換えウイルス(透明プラーク)によるプラークから識別することができる。
【0063】
様々な理由から、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)は、理想的なサブユニットワクチン組成物、免疫原性組成物、又は免疫学的組成物を開発する優れた方法を提供するものである。バキュロウイルスにおける組み換え体タンパク質の発現は、約8週間以内に行われる。これは汎発性流行の脅威がある期間中には特に重要である。バキュロウイルスは、それらの宿主範囲が狭く、分類学的に近縁である数種の昆虫種に限定されているので、安全である。それらの複製は、哺乳類細胞内では観測されていない(Hartig, Chapman et al. 1989; Hartig, Cardon et al. 1991)。更に、昆虫細胞と哺乳類細胞との両方で複製できる生物は、ごくわずかしか知られておらず、このことは、昆虫細胞培養物から精製されたタンパク質から調製されたワクチンのバッチに、外来物質が混入する可能性を低下させるものである。最後に、バキュロウイルスに感染する昆虫は刺さないので、通常、ヒトは、昆虫細胞タンパク質に対する既存の免疫をもたず、さもなくば、昆虫細胞タンパク質は、ワクチン製剤中における極めて微量の昆虫細胞タンパク質に対するアレルギー反応を引き起こすかもしれない。
【0064】
バキュロウイルスで発現されたタンパク質は、タンパク質がかなり大きい場合でも、実質的にすべての事例で、正しく折り畳まれ、プロセシングされているようである。これは、原核細胞及び下等真核細胞のシステムで発現されたタンパク質には当てはまらないことである。更に、昆虫細胞では、グリコシル化、リン酸化、アシル化、及びアミド生成など、哺乳類細胞で起こる翻訳後修飾の多くが可能である。昆虫細胞でのグリコシル化は、哺乳類細胞で用いられたもの同様の機構を利用しているようであり、それぞれにおいて、特定のタンパク質における同じ残基が修飾されている。昆虫細胞でタンパク質に付加される糖部分は、哺乳類細胞で発現されたそれらの対応物のものほど複雑ではないようであるが、昆虫細胞で発現された糖タンパク質の免疫原性と、哺乳類細胞で発現された糖タンパク質の免疫原性は、同等のようである。最後に、バキュロウイルスで発現されたタンパク質は、通常、天然タンパク質によって通常想定されている高次構造に自己組織化する。
【0065】
BEVS系の一要素は、ポリヘドリンプロモーターの非常に高い活性であるが、このポリヘドリンプロモーターは、下流に挿入された外来遺伝子の発現を駆動する(但し、哺乳類細胞での発現には、このプロモーターを、SV40プロモーター、又はCMVプロモーター、例えばhCMV−EI若しくはmCMV−EIなどのCMV−EIなど、哺乳類ウイルス由来のプロモーターで置換することができる、末端を欠失したCMVプロモーターに関しては、米国特許第6156567号も参照のこと)。バキュロウイルス発現ベクターを用いて得られることが報告されている最高レベルは、全細胞タンパク質の25%から50%であり、これは昆虫細胞1リットルあたり約11グラムのタンパク質に相当する。しかし、BEVS系における外来タンパク質の収率は、通常、1リットルあたり10mg〜500mgである。異なる真核細胞発現系を比較した場合には、BEVS系は、通常、総合的なタンパク質生産において他の発現系より優れていた。哺乳類細胞で通常発現されるタンパク質は、完全にではないが、哺乳類系で生成した場合に、より正統的であると予測されているが、これらの系での発現レベルは、通常、バキュロウイルス系よりはるかに低い。したがって、BEVS系では、正統的な構造の主要な要素を維持しながら、タンパク質をかなり低い費用で生成することができる。
【0066】
特に有利な実施形態では、認識される制限部位から距離をおいて切る制限酵素を用いて、ベクター、例えば、組換え体のポックスウイルス又はバキュロウイルスなどの組換えウイルスを生成するための転移ベクターを調製し;この技法は、ベクターの製造方法において一般的なものであり、この技法の一般的な使用は、本発明の追加の態様であるとみなす。例えば、相同組換えの技法では、ベクター、例えばプラスミドを調製する。このベクターは、生成するべき組換えウイルス中にある外来性の核酸分子を含有することができ、通常、適当なウイルスにも感染又は形質移入されている細胞に、形質移入によって使用され、それによって、その細胞の中で組み換え又は交差イベントを起こして、外来性の核酸分子を含有するウイルスを生成する。本発明は、ある制限部位を有するベクター、例えばプラスミドを調製すること;該ベクターを、該制限部位からある距離をおいて切断する酵素(距離をおいて切断する酵素)によってそのように切断して、それによって、該制限部位が該ベクターから切除され、且つ、該ベクターが特有の突出末端を有するようにすること;別の反応において、ポリメラーゼ連鎖反応又は他の増幅反応を実施して、それによって、該制限部位が該反応の増幅産物の一部となるようにすること;距離をおいて切る制限酵素(II型)で該増幅産物を消化して、それによって、増幅産物が特有の突出末端を有するようにすること;及び、特有の突出末端を有するベクターと、特有の突出末端を有する増幅産物を連結させることを想定する。このようにして、異質の介在核酸分子を回避できる。例えば、この技法は、前述のバキュロウイルスリーダー配列をコードする配列など、リーダー配列をコードする核酸分子を、抗原、エピトープ、又は免疫原、例えば、SARS S、S1、S2、E、M、N、これらの組合せ、又はそのエピトープをコードする核酸分子に連結するのに有用である。このような距離をおいて切る酵素のこのような使用は、これまでに、開示も、示唆もされていないと考える。そのような酵素の1つは、SapIとして知られており、販売されている。SARS Sタンパク質をコードする配列の場合では、本発明者は、PCR増幅と、特定の問題に対する独特且つ非自明の解決法との両方を用いた。例えば、SARS Sに関しては、SapI II型制限酵素の利用が有用であった。これは、所望の配列を、1ヌクレオチドの付加もせずに、選択されたベクター(例えば、pPSC12−Protein Sciences Corporation社から販売されているバキュロウイルス転移ベクター)にクローニングすることを可能にした。ほとんどのクローニング戦略は、制限部位の付加を行い、結果として得られるヌクレオチドは、所望の配列の5’末端及び3’末端に制限部位を作り出す。SapIの使用はこれを回避する。加えて、望ましいSARS S DNA配列は、それらの中に2箇所の天然存在のSapI認識部位を含有している。したがって、最末端のSapIを用いるために、このDNA配列を、SapI部位を含有する部分断片(中央)と、含有しない部分断片(末端近傍)とに分割し、完全な望ましい配列に後で組み立てた。したがって、SARS Sタンパク質におけるこの「シームレス」操作法の使用は、特に発明性が高い。
【0067】
例として示す以下の実施例によって、本発明を更に記述するが、それから、本発明及びその多くの利点のより良い理解が得られるであろう。
【実施例1】
【0068】
SARS Sタンパク質をコードする配列のバキュロウイルス転移プラスミド内クローニング
出願人は、Trizol LS試薬中のSARS CoV3200300841の継代番号3を、CDC/NCID/DVRD/REVBの呼吸器ウイルスセクションのアクティングチーフであるErdman博士より得た。このウイルスは、プラークアッセイで力価4log10の、バッチ番号809940の培地から調製した。この培地から得た溶解物をTRIzol試薬に加え、そのうちの1mLを受け取った。CDCから供給されたTRIzol説明書に従って、CDCより得た溶解物からRNAを分離した。この調製RNAを使用して、Titanキット(Roche社製)を用い製造元の指示に従って、cDNAを産生した。S−遺伝子の配列をGenebankアクセッション番号AY274119のnt21493〜25259から得た。S−遺伝子のサイズが大きく、内部に特定の制限部位が存在するため、出願人はこのSタンパク質を3部分に分けてクローニングすることにした。前方末端は、プライマー2179と2167を用いて直接バキュロウイルス転移ベクターpPSC12(Protein Sciences Corporationから調達した)にクローニングした(前方:nt40から750);図1及び7参照。中間後方部分(nt750から3768)は、プライマー2168と2171を用いて、大腸菌pUC18ベクターにクローニングした;図1及び7参照。具体的には、S ORFの5’部分を、プライマーO−2179とO−2171を用いてPCR増幅し、コンストラクトD3215を生じさせるためにpPSC12にクローニングした。S OFRのより長い3’部分(中間後方)を、プライマーO−2168とO−2167を用いてPCR増幅し、コンストラクトD3157を生じさせるためにpUC18ベクターにクローニングした。これらのアイデンティティのシーケンシングの後、D3217を産生するため、D3157にあるS ORFの中間後方部分を、ORF内のPstI制限部位とポリリンカーのKpnI部位を使用して、D3215の前方部分の後ろにサブクローニングした。更に、全長S−遺伝子をバキュロウイルス転移ベクターにクローニングした。この3部分クローニング戦略により、完全長のS ORFを形成するため、その後様々な部分を合わせた。S−ORFの制限地図を図8に示し、クローニングに使用するプライマーを図7にまとめた。制限酵素パターンに基づいて正確な様々なクローンを配列分析にかけ、クローンD3215がS−ORFの正確な5’末端を含むことが確認された。クローンD3157はS−ORFの正しい中間後方配列を有していると同定された。
【0069】
前方及び中間後方部分の集成:クローンD3215をKpnIとPstIで消化し、ベクターとして用いた。クローン3157もKpnIとPstIで消化し、挿入物として用いた。確立された正確なDNA配列を有する全長クローンを用いて、末端欠失のバージョン、即ちSタンパク質の細胞質及び膜貫通部分を欠失したものを作製した。膜貫通ドメインはORFの3’末端に位置する。1つのコンストラクトでは、部位特異的突然変異誘発を用いた、膜貫通及び細胞質ドメインの正確な欠失を有する。末端欠失を有する別のコンストラクトは、S−ORFのBglIの3’末端を欠失させて作製した。更に、このクローンを使用して、精製の開発を容易にするため、Sタンパク質のhisタグ付きバージョンを作製した。
【0070】
他のコロナウイルスのSタンパク質の免疫学的エピトープと受容体結合ドメインは、最初の600アミノ酸に含まれていることが示されており、それらはすべて末端欠失したどちらのコンストラクトでもコードされている。末端欠失を有するコンストラクトはどちらも分泌され、Sタンパク質の非分泌性全長バージョンより高いレベルで発現する可能性がある。末端欠失した分子は正しく折り畳むことができる。
【0071】
得られたキメラプラスミドは、ATGの開始シグナルが続くポリヘドリンプロモーター、61kDaのシグナル配列と完全長のSタンパク質又は末端欠失のコード配列、ポリアデニレーション部位、並びに両側面にあるバキュロウイルス配列から成る。
【0072】
得られたクローンD3216とD3217を、配列解析に供した。両配列とも、正しい完全長のSタンパク質コード配列を有することを確認した。次のプロセシング用に、クローンD3217を選択した(細胞培養及び欠失のコンストラクトを作製するための部位特異的突然変異誘導、図14に示す)。
【0073】
部位特異的突然変異誘導を用いて、SΔ膜貫通及び細胞質(SΔTM & cyto)コンストラクト及びSタンパク質の他の末端欠失バージョン(SΔ後方)を、PSC12内に作製した。SΔ後方の2単離物とSΔTM & cytoクローンの1単離物を配列解析に供した。
【0074】
これら3個のSARSコンストラクトすべてのクローニング及びシーケンシングが終了した。Sタンパク質の精製を容易にするため、部位特異的突然変異誘導を用いて、挿入物にHis6の付加を可能とするpPSC12ベクターを構築した。
【0075】
S−変異体の3個のコンストラクト(全長、ΔTM/cyto、Δ後方)は、これらのタンパク質のN末端にHis6が付いたバージョンを大腸菌内で発現させるため、すべて更にpBAD/HisBベクター(大腸菌発現ベクター)にクローニングした。精製したタグ付きタンパク質を、SARS Sタンパク質のポリクローナル抗体作製に使用した。
【0076】
非誘導時の漏れがほとんどないと報告されていることから、アラビノースのプロモーターシステムを選択した。このことは、SARSのSタンパク質の潜在的毒性のため、重要である。このベクターのもう1つの利点は、His6タグ及び後のタグ除去のためのエンテロキナーゼ切断部位の下流にSARSのS遺伝子が融合することである。3つのバージョンを含むクローンすべてを、シーケンシングによって同定し、確認した。
【実施例2】
【0077】
タンパク質発現
バキュロウイルス組換え体を作製し、分離し、増量するために用いる技術は、Protein Sciences Corporationにおいて過去15年間にわたり磨かれてきており、1000種以上の組換えウイルスを作製するために用いられてきた。例えば本願で引用される、Protein Sciences Corporationに付与された特許を参照のこと。直鎖化した母体の夜蛾(Augotgraphica californica)核多角体ウイルス(AcNPV)DNAとSタンパク質をコードする遺伝子を含む転移プラスミドを混和して、塩化カルシウムによって共沈殿させ、Sf9昆虫細胞に、記載通り(Summers and Smith, 1987)感染させた。組換えウイルスを、それらのプラーク形態によって同定し、数個のプラークを精製し、Tフラスコ内の5mL培地中のSf9細胞に感染させるために使用した。SDS−ポリアクリルアミドゲルとウェスタンブロットを用い、組換えタンパク質の発現の有無により、感染した細胞を選別した。第1継代の組換えウイルスを、無血清のexpresSF+(登録商標)細胞(Protein Sciences Corporationから入手可能な無血清培地で発育できる昆虫細胞)内で増幅し、この無血清細胞系において、その後の増幅及び産生すべてを行った。
【0078】
精製用の細胞培養物質は2つのアプローチであるプラーク精製を省略する速攻手順又はプラーク精製を含む標準法のうちの1つを用いて開発した。速攻手順アプローチにより、転移ベクターを含む全長S−遺伝子のD3217を用いて、P3ウイルスストックを生成した。このP3ストックからの昆虫細胞は、十分感染していると一般に考えられた(顕微鏡観察及びSDS−PAGEに基づく。図16参照)。別のP2もまたD3217から、標準法を用いて生成した。このP2の分析により、細胞が十分に感染したことを表すP10バキュロウイルスタンパク質のバンドが明確に示された(図15)。
【実施例3】
【0079】
発酵:培地規模の発酵液を用いて、一連の発現タイムコースを実施した。
【0080】
高品質Sタンパク質の産生を最大にする回収時間を決定するために、これらの発酵液からのSDSゲル及びウェスタンブロットを使用した。感染の末期には、細胞溶解が細胞性及びウイルス性プロテアーゼの蓄積を誘導する可能性がある。これは影響を受けやすいタンパク質を分解する結果となり得る。更に、感染多重度(MOI)は、発現の反応速度に影響を与える可能性がある。一般に、欠陥や変異のあるバキュロウイルスの産生を避けるため、最低限のMOIを使用することは有益である。最適な感染及び回収条件を定める際に、これらの要因をすべて計算に入れている。
【0081】
50mLのスピナーを28℃で用い、2種類の異なるMOI(1と3)をテストし、最適な回収時間(48から120hpi)を評価して、最適化実験を行った。図17に示すように、クマシーブルーゲルの結果は感染が十分であったことを示唆し、それはP10以下のバンドで確認された(レーン2から9参照)。2つのウェスタンブロットを準備し、急性期及び回復期の血清とインキュベートするため香港へ送った。そのウェスタンブロット(図18−回復期血清)は、48hpiサンプルでは188KD近くにバンドを示さなかったが、28KD付近に典型的なバンドを示した。レーン4と8(それぞれ72及び120hpi)は、62上より上のバンドと28KDのバンドに加え、約160に薄い二重のバンドを示した。これらの低いバンドは、陰性対照レーン(図19、レーン15のブロット参照)にも存在することから、特異的ではないと考えられた。同様の結果を、72hpiで10L回収し、可溶化したペレットのサンプルでも得た(レーン11及び12参照)。これらのサンプルは、図20を参照すると、回復期血清を用いた最初のブロットでも陽性であった。急性期血清と反応させたタンパク質は、非特異的シグナルを示すようである。図19、レーン15のブロットを参照のこと。
【0082】
ウイルスのストック(精製したウイルス)組換え体D3217.1aの全長Sタンパク質を使用して、一般的手順(感染後72時間(hpi)回収)により、更に追加の発酵を行った。この発酵液のペレットを、その後の精製の開発に使用した。
【0083】
ウイルスのp10バンドの存在を、十分な感染を示す指標として用いて、2つの欠失のあるコンストラクトD3227(=SARS S Δ後方)とD3252(=SARS S ΔTM/cyto)の精製した組換えウイルスをP1、P2、及びP3に増幅した。2つの0.5L発酵液を、ロイペプチン(1ug/mL)の存在下で行い、72hpiで回収した。
【0084】
Hisタグ付き末端欠失Sタンパク質D3519(ΔTM/cyto)とHisタグ付き末端欠失Sタンパク質D3527(Δ後方)を、両者ともP2まで増幅した。これらのhisタグ欠失コンストラクトを工程にかけることを決めた場合は、後にP3まで増幅する。
【0085】
D3252コンストラクト(Sタンパク質の末端欠失クローン、ΔTM/cyto)は、安定した発現を示し、且つ分泌型であったため、28℃で10Lの発酵を行った。ロイペプチンを48hpiで加えた。この発酵は72hpiで回収した(図45参照)。
【0086】
C末端hisタグ付きSタンパク質(全長)の、配列決定し、構築されたクローンD3540を、DNA配列が実際正しいことを示した後、P3まで増幅した。このP3を使用して、10Lの発酵対象を感染させ、28℃でインキュベートし、72hpiで回収した。この細胞の生存率は50%で、回収時に感染が完全であることの形態学的特徴が観察された。精製のため、ペレットと上清の両方を保存した。プロテアーゼ阻害剤とロイペプチンを48hpiにおいて2μg/mLの割合で、感染した培地に加えた(図46参照)。
【0087】
コンストラクトD3252(Sタンパク質の末端欠失クローン、ΔTM/cyto)の45Lの発酵を行った。ロイペプチンを48hpiで加え、72hpiでそのバイオリアクターを回収した。
【0088】
500mLの培地を、組換え体バキュロウイルスを含む全長のSと、バキュロウイルスを含むM遺伝子で共感染させた。もう1つの500mL培地は、組換え体バキュロウイルスを含む全長のSと、バキュロウイルスを含むE遺伝子で共感染させた。3つ目の500mL培地は、組換え体バキュロウイルスを含む全長のS、バキュロウイルスを含むM遺伝子、及びバキュロウイルスを含むE遺伝子で共感染させた。
【0089】
C末端hisタグ付きSタンパク質(全長)のD3445、Sタンパク質(ΔTM/cyto)のD3456、D3457、及びD3461、並びに末端欠失のSタンパク質(Δ後方)のD3468、D3477、及びD3481の構築クローンを形質移入し、配列解析の結果を受け取った後、精製した組換えウイルスをすべて増幅した。
【0090】
精製した全長Sタンパク質D3217.1aのウイルスストックで昆虫細胞培地を感染させた後、凝集した発現タンパク質の形成を避けるため、発酵の温度を室温(約23℃)まで下げた。感染の進行と感染した細胞の生存を、発酵の全時間にわたって観察した。感染後96時間で、細胞が感染されたことを顕微鏡的観察により確認した:しかしながら感染は十分ではなかった(生存率測定は約90%であった)。精製の開発のため、2リットルを回収しストックした。7日目の最後(168hpi)に、培地を回収し、この発酵液のペレットを用いて更に精製を行った。培地の感染と生存は96hpiで回収したときとあまり大きな進展はなかった。結果を図21に示す(それぞれIMG−541及び542SARSスパイク抗体を使用)。全長Sタンパク質は確かに23℃で産生されると結論づけられた。最適な回収時間と温度は精製結果に基づき選択した。
【0091】
C−末端hisタグ付きSタンパク質(全長)のD3540、Sタンパク質(ΔTM/cyto)のD3519、並びに末端欠失のSタンパク質(Δ後方)のD3527の、配列の正しい構築クローンを、すべて形質移入した。末端欠失されたコンストラクトと、全長Sタンパク質でhisタグ付きコンストラクトのD3540の両方について、精製した組換えウイルスをP1まで増幅した。
【0092】
2つの欠失コンストラクト、D3227.1a(SARS SΔ後方)とD3252.2a(SARS ΔTM/cyto)の、28℃の進行、72hpiで回収したP3マスターウイルスバンクについて、抗体IMG−541及び542を用いてウェスタンブロットを行った(それぞれ図22のブロット番号100703_d6及び100703_d7のレーン7、8、9、及び10を参照)。各クローンについて0.5Lの発酵を行い、この発酵液の上清を用いて更に精製の開発を行った。レーン3−6は、多様な条件の下で調製した、全長Sタンパク質ウイルスストック(D3217.1a)のサンプルを含む。欠失コンストラクトはどちらも発現を示した。どちらの場合もそのタンパク質は部分的に分泌されていることを示した。
【0093】
全長Sタンパク質バキュロウイルスコンストラクト(D3217.1a)のサンプルはすべて、28℃で、且つ様々な時間で行われた10及び2Lの発酵で使用された。結果をゲル/ブロット番号101003_d3(図23)で検討した。発現レベルは様々な時間ポイントで同程度で、120hpiでの発現が最適であると結論づけられた。
【0094】
さらなるタイムコース検証をΔTM D3252.2Aで行った。この実験は、最初の細胞密度2.5x10細胞/mL及び98%生存で、2L発酵で行った。細胞培地を組換えウイルスMOI1.0で感染させた。プロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)を48hpiで加えた。48、54、60、及び72hpiの異なる時間ポイントで、サンプルを採取した。取り出されたサンプルの生存率を図63のテーブルに示す。すべてのサンプルについて、同様に図63に示すように、SDS−Pageとウェスタンブロットを行った。
【0095】
発酵全般において分解産物が存在することが判明した。最も適当な回収時間がいつであるかを決定するには、より定量的な方法が必要であった。現行の試験は、感染後60時間で培地を回収するのがより適当であることを示唆している。
【実施例4】
【0096】
精製:図12A〜Eに表された図表により精製開発アプローチを示す
SARS全長Sタンパク質
Sタンパク質産生工程の概略図:
上流の工程。この作業は細胞ペレット又は培地上清が大規模(0.5から10L)発酵より入手次第早急に開始する。Sタンパク質は膜貫通ドメインを含むため、全長のタンパク質は細胞に付着していると予想される。即ち、このSタンパク質は粒子を形成する。不要な混入物質を除去するため、細胞ペレットを洗浄し、Sタンパク質を可溶化するため、穏やかな洗剤条件を適用する。末端欠失されたSタンパク質は分泌するので、それらの精製においては、ペレット洗浄と可溶化のステップは省略する。更に平行流ろ過を用いて、大と小の混入物質を除去する。
【0097】
最初のカラムクロマトグラフィー。このステップの目的は、DNAの除去と可溶性Sタンパク質の部分的精製である。これは、このタンパク質をCMカラムに結合させるか、或いはそれをDEAEカラムに流すかのいずれかによってなされる。出願人は、このステップではSタンパク質の比較的低いpI(理論的pI=5.56)をうまく利用している。例えば中性pHの緩衝液を使用した場合に、このタンパク質はDEAEに結合すると思われる。理想的にはこの組換えSタンパク質は工程の次のステップに使用できる緩衝液内にあることが望ましい。
【0098】
精製。このSタンパク質は膜貫通ドメインを含み、そしてその特性により、疎水性相互作用のカラムクロマトグラフィーにより精製する。このSタンパク質は大きなタンパク質(130から140kDa)で、したがって95%を超える純度を得るために、サイズクロマトグラフィーを適用できる。最後に、このSタンパク質は多くのグリコシル化部位を含み、それ故レンチルレクチンを用いて、同様に顕著な精製(95%又は95+%)を得ることができる。
【0099】
バキュロウイルス発現ベクターシステム(BEVS)では、SARSのSタンパク質は分泌される。可溶性分泌型Sタンパク質の分子量は140,000で、これは100,000以下と300,000以上のタンパク質をすべて効果的に除去する二元的ろ過システムの使用に利用する。いずれかのクロマトグラフィーを行う前に、タンパク質が混入した75%純度を得る。
【0100】
最終クロマトグラフィーステップ。もし前段階のカラムで、要求される純度レベルに達するために必要な溶出バッファーが、定型的及び/又は主要な使用に適さない場合は、最終的な仕上げのカラムを行う。このステップは、望ましくないあらゆる試薬を除き、試薬処方として適切な中性の塩緩衝液中にタンパク質を移す。
【0101】
Sタンパク質のpIは5.56であり、それ故Sタンパク質を結合し溶出するために、中性pHでアニオン交換カラムを使用する。Sタンパク質の高度に疎水性であるC−末端を利用する、最終仕上げの疎水性相互作用カラムにより最終純度が達成される。
【0102】
このSタンパク質をPBSに入れて透析し、最終純度>95%を得る。重要なことは、高度に純粋なSタンパク質はその免疫原性と、それ故有用性を備えるということである。
【0103】
レンチルレクチンカラムによる精製
陰性対照ペレット(異なる組換え体バキュロウイルスの発酵に由来する)を用いて同時並行精製を行った。そのpIと疎水性C末端に基づき、中性pHと1%の洗剤ではそのタンパク質は抽出され、アニオン交換カラムには結合すると予想した。図24のゲルは、1L、72hpiペレットの1%Tergitol、pH7.0の20mM PO4による、この最初の抽出と、25mLのQカラムへの適用を示す。
【0104】
0.3、0.5、1Mの溶出液をプールし、10mLのレンチルレクチンカラムにかけた。18の推定上のグリコシル化のため、Sタンパク質は結合すると予想した。加えて、Qカラム溶出後、Qカラムからのフロースルー(ft)もまた同じLLカラムにかけた。カラムを0.5Mのメチルピラノシドの20mM PO4で溶出した(図25)。溶出画分5、6、7、及び10、11、12、を別々にAmicon centricon spin濃縮装置で6mLから200uLに濃縮した(図26)。
【0105】
これらの高めのタンパク質バンドは、陰性対照サンプルでは観察されず、したがって全長のSタンパク質を含むと考えられた。レーン2に示す生成物はヒト抗−SARS血清をプローブとしたブロットを含む。しかしながら、このタンパク質は、回復期血清とは反応しなかったため、Sタンパク質であるとは考えられなかった(図20参照)。
【0106】
したがって、タンパク質を精製するために、使用するタンパク質のサイズと、タンパク質が非常に多くグリコシル化すると考えられる特徴を決定した。加えて、可溶化の戦略を変えた。BMEと0.5MのNaClの添加は、イオンの相互作用を削減しシステイン同士の凝集を壊すことを意図した。また、BMEの使用は、Sタンパク質の可溶性を増加するはずであり、一方、MiliporeのTFF(平行流ろ過)の使用は最初のカラムにかける全タンパク質の量を減少させる。
【0107】
72HPI細胞の2Lペレットを、1%Tergitol、0.5M NaCl、0.1%B−ME、pH7.0の20mM PO4、2L中で可溶化した。これをpolytronミキサーにかけて遠心分離した。2Lの上清を100kDa分子量カットオフTFFフィルターを用いて減量し、洗剤の総量を減らすために、同じ緩衝液からtergitolを抜いたものを使用してdaifilterでろ過した。最後に得た400mLの残留成分を40mL LLカラムにかけ、0.5M NaCl、pH7.0の20mM PO4で平衡させた。このカラムを同じ緩衝液及び1Mメチルピラノシドで溶出した(図27)。
【0108】
LL画分をプールして6mLまで濃縮し、500mLS200SECにのせた。このカラムをPBS(0.15M NaCl、pH7.4の20mM PO4)で平衡させ、この6mL画分をのせた。
【0109】
このゲルを、香港からの抗SARS血清で、還元型条件を使用して、ブロットしてテストした(図28)。これらの条件を使用して、Sタンパク質が可溶化するかどうかを決定するために、このブロットには可溶化ペレット(レーン13)と再溶出した最初のペレット(レーン14)を含めた。バキュロウイルスに感染した昆虫細胞のバックグラウンドの程度を決めるため、陰性対照も含めた(レーン15)。カラムを以前とは対照的に20mM PO4+1M NaClのPBSで流した。
【0110】
ウェスタンブロットのレーン8、9、10(図19)は、回復期の血清と反応させると、期待したサイズに陽性のシグナルを示す。このタンパク質は急性期の血清とは反応しないが、タンパク質は上述の条件を用いて可溶化すると思われる。
【0111】
レンチルレクチンカラムからSタンパク質と共に溶出してくる主要な混入物質と混在するこの生成物の純度を20%と推定した。これらの2つのタンパク質を分離するため、還元型条件及び高イオン強度の下でのサイズ排除クロマトグラフィーを試したが、分離はできなかった。Sタンパク質とこの主要混入物質は凝集塊として挙動した。
【0112】
対象のタンパク質を精製し、アニオン、カチオン、及びhic(hydrophobic interaction column)クロマトグラフィーに十分な原料を産生する規模で、まず、上流の精製方法(1%tergitolを用いた、材料の可溶化とそれに続くLLカラムからの溶出)を使った。いろいろなカラムクロマトグラフィー方法を、異なるpHで使えば、この凝集した相手からSタンパク質を分離する方法を見出せる可能性がある。図29は1Lの細胞ペレットの工程を表す。
【0113】
Sタンパク質は、Tergitol溶出後もまだ一部が残っていることから、潜在的に回収率を増加させるため、Tergitol抽出された原料からの細胞ペレットを8M尿素でも再溶出した。
【0114】
このペレットを8M尿素、pH8.5の50mMトリス中で溶解した。原料がすべて溶解した後、最終尿素濃度を2Mとなるように、この溶出物を4倍に薄めた。この原料をLLカラムにかけた(図30参照)。ペレットを再溶出した場合、62kDaの混入物のバンドが溶出画分中で優勢度が減少したように見える。レクチンもまたカラムから溶出されているのが興味深い(21kDaのタンパク質バンドを参照)。
【0115】
Sタンパク質とこの62kDaの混入物、それはgp64、つまりバキュロウイルスエンベロープの主要タンパク質であると信じられているが、これらの凝集塊を壊すため、BondosとBicknellに由来するいろいろな添加物(Bondos and Bicknell 2003)を使用した。各カテゴリーの代表的な試薬をテストした。以下の成分:0.2M MgSO4、0.1M CaCl2、0.1M MgCl2、1%グリシン、及び1M サッカロースそれぞれをLLプールに加え、Miliporeの100kDa分子量カットオフcentriconカラムを使用して最少量まで濃縮した。残留成分(細胞膜に保持されている)とろ液をSDS−PAGEにかけた。ろ液中の62kDaタンパク質の存在を、抗凝集効果の可能性を決定するものとして用いた。陰性対照(添加なし)を図31のレーン4と5に示す。陰性対照と比較すると、添加物すべてがなんらかの抗凝集作用を表し、グリシンが最も優れていた。このため、その後の開発においては、0.1Mグリシンを緩衝液に組み入れた。
【0116】
図47に示すように、全長Sタンパク質がgp64と共に存在している。CDCとIMG−542抗体に強く反応していることが示されている。
【0117】
この凝集塊を壊すため、50mMのDTTと6M尿素を使用して、もう1つ試みを行った。上記で得た画分2を、centriconとdiafilterを使用して、6M尿素を含む緩衝液中に混和した。セファクリルS−500高分離能カラムを詰めて、そこにのせた(ゲルとブロットは図48)。図48はこの2つの分子の凝集塊が、高尿素及びDTT濃度下においてすら、いまだそのままであることを示す。
【0118】
代わりの精製工程も使用され、そこでは細胞ペレットを1%トライトンX−100を用いて可溶化した。この可溶化された物質を、引き続きNi−カラムにかけた。溶出された物質は約70%の純度で、これを更にレンチルレクチンカラムにかけ、溶出した物質は90%以上の純度を有する。概算した生産率は約2mg/Lである。レンチルレクチルカラムに代えて、我々は現在DEAE IEXカラムをテストしている。そのカラムはデルタTMSタンパク質精製において成功を示してきた。図49は全長のhisタグ付きSタンパク質のゲルを表す。
【0119】
最近2つのペプチド抗体がImgenexより入手可能となった。542抗体はアミノ酸288から303に対し、541抗体はアミノ酸19から35に対して作成された。香港からの回復期血清を用いたブロットが陽性になった、SEC画分17(S17)
をこれらの血清のテストに使用した。還元型と非還元型のフォーマットで、S17を流し、ブロットした(図32及び35)。非還元型SDS−PAGEは62kDa混入物の証拠を示さない。542抗体は、非還元型S17と、たとえあったとしても、弱く反応する。
【0120】
抗体IMG541、IMG542及びCDCの反応性を比較するため、タンパク質サンプル(5864C)を用いて更なる分析を行った。このタンパク質サンプルは以下のように調製した:ペレットを、BME非存在下で1%tergitolを用いて溶解し、続いてカラム溶出に先立って、レンチルレクチンクロマトグラフィー及び厳しいカラム洗浄を行った。更に続いてこの物質をヒドロキシアパタイトに結合させ、溶出した。非還元型緩衝液及び一般的サンプルローディング緩衝液を用いてサンプルをのせた。3つのブロットを調製し、各ブロットを抗体とインキュベートした。結果を図41から44に示す。
【0121】
非グリコシル化SARS全長Sタンパク質は、分子量約139kDaと予想されている。グリコシル化全長Sタンパク質の予想分子量は約160kDaであると期待されている。ヒトのSARSに対して生成したCDC抗体を用いて現れるバンドは、どれも上記に記載した分子量の範囲に位置しなかった。最も多量のバンドは、gp64バキュロウイルスタンパク質であり、これは非還元型条件下では180kDa付近に、還元型条件では60kDa付近に流れる。IMG抗体541はgp64タンパク質と非常に強く交差反応し、したがって、この抗体をこれ以降はウェスタンブロット解析に使用しない。
【0122】
2つのタンパク質サンプルを、N末端解析のため、エール大学のKeck施設へ提出した。当初は香港の抗血清と、後にはImgenexの抗体と免疫反応性であると見られた、S17タンパク質サンプルを提出した(図34のゲル/ブロット090303_d2のレーン6と11参照)。非還元型条件下で解析された場合、特徴的な2つのバンドが消えて、新たなより高分子量のバンドが作られ(図34参照)、Sタンパク質がジスルフォイド架橋によって結合した2つのフラグメントから構成されることが示唆される。N末端解析に提出した2番目のサンプルは、もともと非還元型ゲル上で、Imgenex抗体(IMG−542)とは免疫反応性ではない60kDバンドから主に成る(図34のゲル/ブロット090303_d2のレーン13参照)。このタンパク種は、バキュロウイルス又は昆虫細胞由来の、レンチルレクチンレジンにも結合する、共移動性混入物の疑いがある。このサンプルもまた、抗体と高度に反応するマイナーなゲルバンドを含む。レンチルレクチンクロマトグラフィーを使用して、Sタンパク質とその分解産物を、この提唱されている60kDa混入物から完全に分離することはできなかった。主要な寄与因子に関する結果を得るため、どちらのサンプルもアセトン洗浄された沈殿物として、期待された解析と共に提出した。
【0123】
全長Sタンパク質が還元型条件下で、60と150kDaの、サイズの異なる2つのフラグメントに分離するという発見に続いて、もしβ−MEが工程から除外されたら何が起こるかを見つけるための実験を行った。
【0124】
23℃で実施し、168HPIで回収した2Lの発酵液を1%Tergitolの20mM PO4中で可溶化した。サンプルを2分間polytronミキサーにかけ、4.5kで30分間遠心分離した。100kDa分子量カットオフフィルターによるTFFを用いて上清を濃縮し、20mMリン酸緩衝液とdiafilterでろ過した。最終量350mLを事前に平衡させた40mLのLLカラムにかけ、50%エチレングリコール、0.5Mメチルピラノシドの10mM PO4で溶出した(図35参照)。
【0125】
還元型条件を用いて抽出したLLカラムに比較すると、収率は増加した。180にあるバンドも、より高分子量のものと共に、541抗体に反応した。
【0126】
画分4から14を、120mLから6mLに濃縮し、600mL S200SECカラムにかけた(図36参照)。
【0127】
全長Sタンパク質はSECカラムからの最初のピークに存在した。このタンパク質は、より低分子量の生成物と共に溶出した。これらのうちのいくつかはブロットで反応し、Sの分解産物である可能性が考えられた。泳動したサンプル中で、60から62kDa(レーン3、4)に現れた大きな他のバンドは、メインピークから15本離れて溶出した。やはりこれも、S分解産物と、同じ分子量のウイルスタンパク質が混和したものであろう。レーン3と比較した場合レーン4のブロットが増加しているのは興味深い;明らかに濃縮によって反応性62kDaタンパク質が増加した。
【0128】
実験を繰り返し、全く同様の結果を得た。主要なS画分をプールして還元型及び非還元型フォーマットで解析した(図37)。抽出からβ−MEを省いた場合、最終工程収率はより高いと考えられる。
【0129】
SARS ΔTM Sタンパク質の精製
部分的に精製されたSARS ΔTM Sタンパク質のN末端配列決定
ΔTM Sタンパク質サンプルを以下のように調製した。10L発酵液(102103、72hpi、28℃)からの1L上清を、pH7.4で直接レンチルレクチンカラムにかけた。ΔTM Sタンパク質をレンチルレクチンから溶出し、それからpH7.4でカチオン交換カラム(CM)に流した。CMのフロースルーをpH7.4でDEAEアニオン交換カラムにかけた。ΔTM Sはこのカラムに結合し、250mM NaClまでの20CV直線勾配の中間で溶出した。Q画分中の約150kDのバンドがCDC抗体とIMG542抗体と反応性である(図50のゲル/ブロット、レーン9から13参照)。このQ画分12番(図50のゲル/ブロット、レーン9参照)をN末端解析のためPVDFメンブレンに移した。
【0130】
N末端配列決定により、以下のような仮の指定があった:
配列は、X1−D−L−D−R−X2−X3−T−X4−Dで、X1はおそらくS、X2はおそらくサイレントレジデュー(例えばシステイン又はグリコシル化/リン酸化のS/T)又はL、X3はおそらくTでX4はFであろう。より強いシグナルによる指定が、より不確実な指定も同様に、PSCキチナーゼシグナル配列(SDLDRCTTFDDV)の後が切断された成熟Sタンパク質のN−末端に、期待通り一致する。
【0131】
発酵液上清(D3252.2a、72hpi、28℃)からのΔTM Sタンパク質の精製
0.5M NaCl、pH7.7の20mMトリスで平衡化したレンチルレクチンカラムに直接上清をのせた(1リットル/40mL)。0.5M NaClを使用して非特異的結合した混入物質を除去した。同じ緩衝液でベースラインまで洗浄した後、伝導率を下げるためカラムを20mMトリスpH7.5で洗い、それから1M N−メチル−α−Dマノピラノシドの20mMトリスpH7.5で溶出した。Sタンパク質がいくらかカラムから流れ出る(図51、ゲル/ブロットのレーン3参照)。同じこのカラムを同じ1L原料に使い、同様の条件の下で進行させても、フロースルーは見られなかった。サンプルのフロースルーは、最初TEKでは実施されなかったNaCl洗浄を含めたことに起因するか、又は特にこのカラムを繰り返し使用したためかもしれない。少なくともこの物質の半分は結合し、6から25mLの画分に溶出した((図51、ゲル/ブロットのレーン6から10参照)。これらの画分をプールしてアニオン交換Qカラム処理を行った。
【0132】
20mMトリスpH7.5で平衡化した30mL Qカラムに、プールしたレンチルレクチン溶出液をのせ、50mM、75mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、500mMのNaClでステップ溶出した。物質はカラムに結合し、フロースルー又は洗浄液にΔTM/Sタンパク質の痕跡はなかった((図52、ゲル/ブロットのレーン2から4参照)。Sの分解産物を75mM NaCl(レーン8から9)及び100mM NaCl(レーン10から11)で除いた。ΔTM Sタンパク質の大部分は150mM NaClで溶出した(図52のゲル、レーン12から14参照)。追加のΔTM Sタンパク質とより低いMWのタンパク質は、500mMのNaClで溶出した(図53のゲル、レーン9と11参照)。150mM NaClでの大部分の溶出をプールし(図53のゲル、レーン13参照)、10mMのリン酸ナトリウムpH7.4に入れて透析した。この物質を追加の流出による生成物と混合した。希釈されたタンパク質サンプルの濃縮を小型のQカラムを用いて試み、続いて比較的小さな分子量の混入物質を取り除くため、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。BCAアッセイから概算した収率は0.5mg/Lである。もしレンチルレクチンカラムでのフロースルーの損失を回避していたら、約1mg/Lの収率が期待される。
【0133】
代わりの精製案では、ΔTM Sタンパク質を10L発酵液から精製した。この工程の図式的概観を図12Cに示す。結果の精製タンパク質を図54に示す。得られた生成物をマウスの免疫原性の試験に提供した。
【0134】
45L発酵液からのΔTM Sタンパク質の精製が行われてきた。手短に言うと、原料を遠心分離して、その上清をpH8にpH調製し、続いてもう一度遠心分離した(このステップは非タンパク質物質及びある種のタンパク質混入物を取り除く)。その次に、その物質を−20℃で保存する前に、8倍に濃縮した。それからこの濃縮物質3Lを750mLのカチオン(UnoshereS)カラムにかけた。ΔTM Sタンパク質はこのカラムを素通りした(FT)。このFTを250mLのアニオン(Q)カラムにかけ、150mMのNaClを用いて溶出した。DEAEカラムは、物質の約65%がカラムを素通りしたため、小さすぎた。
【0135】
45Lの発酵液から精製したタンパク質の総量は約10mgであった。この生成物は濃縮後の分解を示し、高いレベルのエンドトキシンを含んでいた。エンドトキシンを除外するため、Liuら(Liu, Tobias et. al. 1997)の記載に従って、TX−114相分離及びイオン交換クロマトグラフィーに基づく手法を使用したが、これは大きな損失結果となった。
【0136】
このTFF濃縮ステップは大きな損失結果となり、したがってそれ以降の10L精製ではこのステップを省略した。この工程変化の結果として、このタンパク質はもはやQカラムに結合しなかった。この工程変化の図式的概観を図12Dに示す。
【0137】
回収したこのデルタTMを、1Mトリス、pH=8.0を用いてpH7.4に調整した。それからこの上清を4500rpmで30分間遠心分離した。続いてこの上清を500mLのSカラムにかけ、500mLのQカラムにつないだ。ほとんどのデルタTMタンパク質は、期待に反してどちらのカラムも素通りした。
【0138】
このフロースルーを50mLのLLカラムにかけた。このLL溶出画分は良好な様子で、stirred cellにより各100mLまで濃縮した。濃縮中に沈殿の問題が起き、この生成物をPBS100mlに対して透析した。
【0139】
この10L発酵液のFTからの生成物収率は、大体10〜12mgであった。最終生成物内のエンドトキシン含有量は高かった。エンドトキシンをトライトン−X処理により取り除いた。
【0140】
Qカラムに結合し、100mMのNaClで溶出し、更にLLで処理したデルタTMの2〜3mgも、やはりエンドトキシンを多く含んでいた。
【0141】
後の精製でデルタTMを回収し、1MトリスpH=8.0を用いてpHを7.4に調整した。それからこの上清を4500rpmで30分間遠心分離した。続いてこの上清を500mLのSカラムにかけ、500mLのDEAEカラムにつないだ。再びデルタTMタンパク質のほとんどはどちらのカラムも素通りした。
【0142】
このフロースルーを50mLのLLカラムにかけた。LL溶出画分は良好な様子で、stirred cellで100mLにまで濃縮する前に、PBSに入れて透析した。
【0143】
このFTからの生成物収率は今や15〜20mgで、DEAEカラムからの100mM又は150mM溶出にはデルタTMは見られなかった。エンドトキシン含有量はなお高値であったが、以前の精製工程よりは低値であった。この物質を使用してマウスの免疫原性試験用の原料計画を立てた(実施例10参照)。
【0144】
工程の最適化
最初の3L濃度から得た材料を使用して、上記工程を更に最適化した。ΔTM Sタンパク質の一部は、予測通りQカラムに結合しなかった。したがって、同様な溶出条件を用い(fplc5888)、このフロースルー(1及び2と呼ぶ)をより大きなQで処理し、それから再び同様な溶出条件を用い(fplc5889)、この溶出液を更にLLで処理した。ΔTM Sタンパク質を含む画分をプールし、濃縮し、SECカラムで処理した(fplc5890)。その結果を下の図55に示す。
【0145】
画分31から35は純度約70〜80%を有する。
【0146】
続いてフロースルー3を同じQカラム(fplc5891)を用いて処理したが、しかし今度はカラム溶出を、0.15MのNaClから50mM NaCl、100mM NaCl、及び150mM NaCl(各モル濃度につき1カラムボリューム)のステップ溶出の使用に変えた。その結果を図56に示す。
【0147】
その100mM溶出画分はSars抗体と反応せず、一方その150mM画分は抗体と反応する(図56、ブロットはゲルと反対であることに注意)。
【0148】
それからこの150mM画分をプールして同じLLにのせた(fplc流出5892)。この溶出は、今度は0.5Mの糖から0.1M(画分1から5)、0.2M(画分6から10)、0.3M(画分11から15)、0.4M(画分16から20)、0.5M(画分21から24)の糖に代えて、各モル濃度につき2カラムボリュームを使った。この結果を図57に示す。
【0149】
画分10から24はSars抗体と反応したが、一方画分1から9は反応しなかった(011404〜d5ブロット)。画分12から24をプールし、アミコンシステムを使用して濃縮と透析を行い、容量を8mLとした。この物質のゲル/ブロットを図58に示す。この物質は純度90%以上で、ゲルで観察されるすべてのバンドがSars抗体と反応し、工程からSECステップを省略できることを示唆した。
【0150】
pH調整を加えて又は加えないで行う、ろ過のステップを精製に導入して、最適化の試験を続行した。新しい上清2Lを0.2umフィルターでろ過した。このpHを調整せず、上清を結合したUNO−SとDEAEカラムにかけた。5907からのフロースルーを50mLの新しいLLカラムにかけた。LLは過去の実験と同じものを溶出した。画分をプールし、PBS中で一晩透析した。それからstirred cellでこの物質を30mLまで濃縮した。プールした液にはいくらかの周辺画分を含んでいたため、この物質は、マウスの試験に用いたものと比べ、より多くの断片を含んでいた。図64を参照のこと。バンドはすべて抗体によって認識される。カラムに0.5ugのタンパク質をのせたところ、70%は無傷のままで、残りは断片から成る部分として得た。
【0151】
このろ過によって産生された総タンパク質濃度は271ug/mLで、リットルあたりの収率は約4mgであった。この物質のエンドトキシンレベルは80EU/mLであった。
【0152】
この試験は、ろ過のステップの導入と新しいレジンの使用は、エンドトキシン含有率を改善することを示した。pH調整と濃縮ステップの省略は、工程全体の収率の向上となった。
【0153】
実験を繰り返し、少なくとも無傷と断片の割合についてはマウスの試験において用いた物質と同じものを、2度目の流出に提供した(結果を図65に示す)。2度目の流出は、494ug/mLのタンパク質濃度及びリットルあたり約3.5mg/Lの収率であった。このサンプルでは低値のエンドトキシンレベルが観察された。この2回の流出における同様な結果は、これらの結果は再現性があることを示す。
【0154】
非pH調整の上清を用いた3番目の流出を、手順通りに行った。純度と収率の結果は、以前の2回の流出と大体同じであった。今回のプールは分割してQセファロースカラムに通したため、最終的な収率の数字を比較するのは難しい。得られた物質のゲルとブロットを図66に示す。エンドトキシンの数字は、濃縮前で40以下、濃縮後では320以下であった。これらの結果は、Qカラムがstirred cellによる濃縮の代替となり得ることを示す。
【0155】
大規模な製造のための工程を準備し、必要なカラムサイズを決定するために、減少したカラムサイズを用いて精製手法を変えることにより、更なる最適化試験を実施した。UNO SとDEAEカラムを500mLから100mLにスケールダウンした。LLカラムを50mLから7.5mLに減少させ、stirred cell濃縮に代えて5mLのQセファロースカラムを使用した。得られた物質のゲルとブロットを図67に示す。この結果は、最終生成物の純度を維持しながら、カラムサイズを下げることが可能であることを示した。この結果は、stirred cell濃縮に代えてQセファロースカラムを使用すると、断片がより少なく出現することを示す。この工程のフローチャートを図12Eに示す。
【0156】
更なる解析では、1Lの開始濃度を用いたこの改変した工程の繰り返しも行う。工程にはステップ溶出(100mM/150mM溶出)を用いる、より大きなS/Qカラムの使用を含む。溶出液は、LLにのせて、様々な(0.1、0.2、0.3、0.4、0.5M)糖による溶出を行うであろう。
【0157】
抽出の試験
Sタンパク質の昆虫細胞からの抽出を改良するために実験が行われた。以前の実験では0.1%tergitolが、相当なレベルで混入するタンパク質を除去し、Sタンパク質を細胞のペレットに付随したまま残すことが示されている。加えて、ベタインやグリセロールのような添加物はtergitolの抽出効率を0.1から1.0%増加させる可能性がある。23℃で生育し、168hpiで回収した発酵培地(ロット番号100303)を用いて、一連の抽出実験を行った。ペレットを最初に0.1%Tergitolを含む20mMトリス、pH8.47で洗浄し、それから均等なアリコートに分けた。このアリコートを遠心分離し、0.1%Tergiol上清をプールした。得られたアリコート/ペレットを、添加物(10%グリセロール、0.4Mベタイン、0.5M NaCl)を加えて、又は加えないで、1.0%Tergitolで再抽出した。ゲルとブロット(図38参照)によると、0.1%tergitolを用いた最初洗浄ステップで、ペレットからのタンパク質の完全な抽出が成功した(レーン1、188SN1)。この結果は、最近のこの発酵の異なる条件(より低温で、遅く回収)に起因するのかもしれない。この細胞ペレット重量の再懸濁量に対する高比率(50X)もまた、比較的少量の洗剤を用いたときの抽出効率を改善しているのかもしれない。
【実施例5】
【0158】
アッセイの開発
Sタンパク質は赤血球凝集能を有することが述べられてきた(Schultze, Gross et.al. 1991)。Protein Sciences社は、そのインフルエンザプログラムにおいて赤血球凝集アッセイを開発してきており、適切な生物活性は正しい折り畳みを示すため、出願人はSタンパク質の生物活性を測定するためこの方法を改変した。
【0159】
様々なコロナウイルスのSタンパク質は、ウイルス上にあるSタンパク質が細胞表面にあるシアル酸と相互作用することにより、赤血球を凝集できることが以前から示されてきた。赤血球凝集アッセイは、原則的にRosen(Rosen 1968)によって記述されたように行われる。新鮮なニワトリRBCをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、PBS中に0.5%溶液として懸濁した。洗浄済みRBC50μLを、U型底の96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに加えた。サンプルを系列的にPBSで希釈し、それぞれの希釈液50μLを各ウェルに加えた。このプレートにふたをして室温で30分間インキュベートし、それから凝集のスコアを記録した。1HA単位は細胞の50%を凝集する希釈度として定義される。このアッセイはニワトリ及びマウスの赤血球両方を用いて実施する。
【実施例6】
【0160】
製造
作業用ウイルスバンク(WVB)の調製。Sタンパク質の産生に使用するウイルスの接種材料を、分離した作業用ウイルスバンク(WVB)から転用した。上述の通り、多量の接種材料を産生するため、1個のウイルスプラークからの組換えウイルスを、低多重度の感染によって、いくつかの経路を経て増殖し、WVBとして液体窒素中にアリコートを貯蔵した。
【0161】
この作業用ウイルスバンクに、細菌、カビ、及び、混在する野生型又は他の組換え体バキュロウイルスを含む他の外来性物質が含まれていないことをテストした。アイデンティティを、精製したバキュロウイルスDNAの挿入物のサザンブロット解析によって、また、感染した昆虫細胞内に生成される組換え体タンパク質のウェスタンブロット分析によって確認した。タンパク質製造に使用される組換え体バキュロウイルスの遺伝的安定性を維持するため、作業用ウイルスバンク(WVB)を、1アリコートを解凍し、それを低多重度感染(1プラーク形成単位(pfu)/細胞又はそれ以下)によって、限定した経路数で増殖して調製した。
【0162】
MVBを調製するため、培地を低いMOI(一般には0.1)で感染し、この培地を72hpiで回収した。このWVB P3を凍結し、製造地域に貯蔵して将来の工程開発と製造的使用に用いた。FL Sタンパク質(D3217.1a)のブロットは、期待に反して上清中に全長Sタンパク質が存在することを示した(図39)。
【0163】
ウイルスバンクの上清に全長Sタンパク質が存在するため、追加的な2L発酵を実施した。72hpiの全発酵時間にわたり、感染の進行、感染した細胞の生存率、FL Sタンパク質D3217.1aの発現、及び(ロイペプチンを高濃度で2回以上加えた結果として)産生されるタンパク質の安定性を、モニター及び測定した。この発酵は2Lのバイオリアクター内で実施した。感染後24時間でロイペプチンを2μg/mL(=以前使用した濃度の2倍)の濃度になるよう培地に加えた。48hpiでサンプルを採取し、生存率を測定し(82%)、0.5Lを回収して精製のためペレットと上清の両方を−20℃で保存した。48hpiでプロテアーゼ阻害剤であるロイペプチンを2μg/mLの割合で再び添加した。感染後70時間(hpi)で、培地を回収した。回収時の細胞生存率は55%であった。顕微鏡的観察で細胞が十分感染していることを確認した。図40は発現の進行を示す。
【0164】
作業用ウイルスバンクの品質評価
力価と無菌性についてテストすることによりWVBを品質評価する。発酵に使用する細胞系の無菌性を継続的にチェックする。加えて、発酵液を感染時と回収時に、並びに原サンプル(細胞内及び分泌したタンパク質のサンプルで、それぞれ感染した細胞又は使用された培養液のどちらかである)について、無菌かどうかをチェックする。回収工程が期待通り行われていることを確認するため、この精製方法の様々なステップにある工程中のサンプルの中間体及び大量生成物の一部採取を、SDSポリアクリルアミドゲルとウェスタンブロットで解析した。
【0165】
最終バルクロット検査
21C.F.R.セクション610.12及びそこにリストされているUSPセクションに記載されている方法に従って実施した総タンパク質量、アイデンティティのアッセイを含む試験を抗原バッチの各バルクについて実施した。
【0166】
【表1】

【実施例7】
【0167】
品質管理
異なる2種類の温度(−20℃と2から8℃)における濃縮及び非濃縮物質の安定性を確立するための試験プロトコールを使用して試験を実施している。現在のこの試験の結果は、濃縮物質は−20℃で保存した場合に、より安定的であるらしいことを示している。非濃縮物質では、保存温度に無関係に同様であるらしい。
【0168】
SARS ΔTM培地上清の最適な保存時間を確立するため、更なる安定性試験を実施した。SARS ΔTM培地上清のサンプルをTFF濃縮又は非濃縮のいずれかで、4℃又は−20℃で保存した。培地を回収しサンプルをテストした。そのデータは現在デンシトメーターで評価中である。
【0169】
同じ抗体(IMG542)を使用して、ブロットすべてを処理した。品質的に、非濃縮のSARS ΔTM培地上清は4℃又は−20℃のいずれにおいても2カ月間は安定であると結論づけることができる(図68参照)。図68は、非濃縮のSARS ΔTM培地上清の時間ポイントを、4℃対−20℃保存で示す。非濃縮のSARS ΔTM培地上清のウェスタンブロットも、4℃対−20℃保存で実施した。品質的に、T=0のサンプルと比較して分解又はバンドシグナルの変化は保存2カ月以内では検出されなかった。2カ月を超える保存では、タンパク質バンドの強度の衰弱を観察した。
【0170】
濃縮したSARS ΔTM培地上清は、1週間まで4℃で安定であったが(図69参照)、テストした最初のタイムポイントでブロットの約100kDのところに更にバンドが現れている(図69のバンド参照)。しかし4℃で保存した濃縮の培地上清は試験中に汚染してしまったことを特記しなければならない。この汚染が4℃での早急な分解を導いた可能性がある。図69は4℃で保存した濃縮SARS ΔTMの培地上清のタイムポイントを示す。4℃で保存した濃縮SARS ΔTM培地上清について、ウェスタンブロットも実施した。4℃で1週間まで保存した濃縮した培地上清において、追加の約100kDバンドの出現以外は、品質的にこのタンパク質はかなり安定であった。この時間を超えるとこのタンパク質は、ほとんど完全に分解した。
【0171】
濃縮したSARS ΔTMの培地上清は−20℃で2カ月まで安定であった(図70参照)。図70は−20℃で保存した濃縮SARS ΔTMの培地上清のタイムポイントを示す。−20℃で保存した濃縮SARS ΔTM培地上清について、ウェスタンブロットも実施した。品質的に、T=0のサンプルと比較して分解又はバンドシグナルの変化は保存2カ月以内では検出されなかった。約100kDのバンドは出現し始めているか、或いはブロットでは一貫性のない転移により変化している可能性もある。
【実施例8】
【0172】
SARS Sタンパク質のポリクローナル血清の製造
細菌性発現システムpBAD/His(インビトロジェン)と大腸菌株LMG194を使用して、ΔTM Sタンパク質を産生した。標的タンパク質を細胞ペレットから抽出して、Niキレートカラムで精製した。顕著なレベルのタンパク質分解が報告された。加えて、Centriprepを使った最終生成物の濃縮で顕著な損失に遭遇した。
【0173】
ポリクローナル抗体の業務には、抗体製造のため、特異的な病原体フリーのウサギ(動物#V610)1羽を購入することを含んだ。免疫前の採血を実施した。これまで2回の免疫原投与を行い、免疫後の少量の血液を2回PSCで受け取った(下記表参照)。更に4回の免疫原投与を計画している。更に2回の少量の採血と最終的な血液プール(40から70mL)を予定している。
【0174】
2回目の免疫後血液を45LΔTM Sタンパク質精製工程のウェスタンブロットのプローブとして使用した。一次抗体を使用して、1:1000と1:10,000の希釈で、それぞれ2時間及び45分でウェスタンブロットを実施した。二次抗体(ウサギIgG)を1:1000で1時間使用した(図59のゲルとブロット参照)。2回目の免疫後血液の1:10,000希釈は、それなりのブロットシグナルを呈した。シグナルを改善するために、ブロットのインキュベーション時間を1から2時間に延長したほうがいいかもしれない。1:10,000希釈を用いた場合、この2回目の免疫後血液は少なくとも1000回分のブロットに十分な材料を提供するはずである。
【0175】
ΔTM Sタンパク質を3mgマウス免疫原性試験に供給した。予備的な報告データでは、ミョウバンと共にIMルートによってネズミを免疫した場合、良好な血清ELISA力価とウイルスの中和力価が得られたことを示す。この試験では、投与は2回行われた。
【実施例9】
【0176】
動物試験
この試験はCenter for Disease Controlによって、ブラインドとした。
【0177】
この試験のテスト材料は、末端を欠失したSタンパク質(デルタTM)とhisタグ付き全長Sタンパク質(histag)である。ルーチンの安全対策措置を取り、必要に応じて追加の安全対策措置を行った。
【0178】
テスト材料は凍結保存した(≦−20℃)。材料すべてを、供給者によって特定された状態で保存し、記録した。
【0179】
分注したテスト材料の全量を記録した。テスト材料の投与量の製剤を調製し、免疫のタイムポイント1回につき、1投与レベルで、1バイアルとして、分離したバイアルに入れて送付した
この試験のため、CD1、VAF/プラスのマウスのオスとメス(未経産で、非妊娠の)をCharles River Laboratoriesから購入した。動物たちの体重は約16から18グラム(特定の購入体重範囲)で、到着時に約4週齢であった。特に高感度の反応性と背景データが豊富に入手できることが、マウスをこの試験の適当な候補としており、マウスを頻繁に免疫学的試験に用いた。これらのマウスを、プラスチックの固形底のケージに木屑チップを敷いて、1ケージにつき6匹まで収容した。動物室とケージはこの試験の開始に先立って消毒・清潔化を行い、その後も必要に応じてケージを交換した。これは一般に認められた動物飼育手順に従って行われた。
【0180】
動物室を蛍光灯で照らし、12時間の明/暗サイクルを維持した。National Research Councilの「実験動物の世話と使用のガイド」1996に従って、可能な限りの範囲で、室温を約18から26℃に、相対湿度を約30から70%に、維持した。室温と相対湿度の値を毎日記録した。
【0181】
Certified Rodent Diet(例えば、Purina Rodent Diet 5002(PMI Nutrition International、ブレントウッド、ミズーリ州))は無制限に入手できた。各食料ロットの解析は、製造元から提供され、施設の記録に残した。この食餌には、この試験の完全性に悪影響を及ぼすかもしれない混入物で、これまで知られているものは存在しなかった。シカゴ市の水道水を、飲料水自動配布システムか又は飲料水ビンに入れて、無制限に供給した。新鮮な水(ビン)を少なくとも週に2回供給した。水の解析報告は保存されている。
【0182】
試験のために選択された動物は、耳へのマーク又はパンチによって、不変の識別番号を受けた。個々のケージカードも、動物番号及び試験グループによって、試験動物を識別した。割り当てられた識別番号は、この試験内においては、唯一のものであった。
【0183】
下記に示す試験デザインに従って、試験物質をIM注射によりマウスに投与した。動物を体重測定し、例えば試験を受けるグループすべてが事前の体重テストにおいて匹敵し得るもので、使った動物それぞれの体重値の偏差が平均体重の上下20%を超えないというような、強制的なランダム処理を用いて、処理グループに割り当てた。これらの動物に、試験物質を増減した投与量を含む、50μL処方量を投与した。特定の日に動物たちを安楽死させ、血清を集めた。血清はELISAによる解析と血清中和アッセイのため輸送した。
【0184】
【表2】

この試験で使用するため購入した動物は、少なくとも1週間隔離した。隔離の間、少なくとも1日に1回は動物を観察した。隔離の最後に、試験のための使用に先立って、スタッフの獣医がこの動物たちの健康状態を調べた。
【0185】
動物たちは毎週体重を測定し、毒性の兆候と生存を毎日観察した。すべての行動の変化の兆候、毛皮の状態の変化、通常ではない体液の排出、外傷、又は他の関連する観察を記録した。死亡が見つかった動物を記載し、徹底的な剖検はせずに廃棄した。死亡を見つけた又は瀕死の状態にいて死亡させた動物について、剖検は行わなかった。動物の最後において、組織の保存は行わなかった。
【0186】
動物たちは、試験物質を含む50μL IM注射を、全部で1回、2回、3回、又は4回受けた。動物たちを試験の1日目、15日目、30日目、45日目に免疫した。0.5ccのプラスチック使い捨て滅菌シリンジと27gx1/2インチ(1.27cm)針を使い、投与処方量を注射した。対照動物には投与はしなかった。
【0187】
採血に先立って、マウスを徹底して麻酔し、眼窩後方洞又は腹部大動脈から、或いは心臓穿刺を介して全血を集めた。血液を凝固させ、1300xgで20分間遠心分離し、血清を適切にラベルした試験管に血清を移して、血清サンプルを集めた。この血清を、30日目と75日目の採血後の輸送まで、約−20℃で保存した。試験動物を、ペントバルビタールナトリウム又はCO窒息と共に、腹部大動脈からの放血により安楽死させた。
【0188】
体重及び毎週の体重増加を、各時間ポイントにおいて、被検グループの平均値及び標準偏差値として表した。処置グループ間の相違を見るために、変数解析(ANOVA)と、適当であればDunnett法又はTukeyのHSDテストにより、長期間変遷するデータを統計学的に解析した。AP値≦0.05は顕著な相違とみなされた。臨床的観察を出来事別にまとめた。
【実施例10】
【0189】
マウス血清中の抗体レベル測定用ELISAアッセイ
マウス血清中の抗体レベルを測定するために、プレート上の元抗原として用いる精製したTM、hrp結合二次抗体であるポリクローナルのウサギ抗体、及びPierce社のPico CLW ELISA検出キットを使用してELISAを開発した。パーキンエルマーのfuluorimeterを、励起ランプを消した状態で使用した。
【0190】
図60と61は、ポリクローナルのウサギ血清を使用したシステムを表したエクセルのグラフである。図60では、一次抗体と二次抗体を一定した濃度(1:500希釈)で使用して、色々な量の抗原をプレートにのせた。図61は、1ウェルあたり100ngのTMと1:1000希釈の二次抗体を用いた、ウサギのポリクローナルの力価を示す。希釈は1:1000から開始して2倍である。
【0191】
下記の表に記載されているように、二重盲検法において、マウスの6グループ(5実験グループと1対照グループ)を様々な投与量のSARS SデルタTM及びHisタグ付き全長Sタンパク質で免疫化した。マウスから1日目、15日目、30日目、45日目、60日目、75日目に採血した。
【0192】
作業用血清希釈度を、準備実験に基づき、1:100希釈に決定した。抗SΔTM抗体力価を、96穴プレートの各ウェルにSΔTMを100ngコートしたキャプチャー免疫アッセイで、各サンプルについて決定した。抗SΔTM抗体がSΔTMに結合した後、HRP結合の、抗マウスヒツジ抗体を使い特異的シグナルを産生させた(ECL)。図71に報告した結果はオス、メス両対象の平均値である。対照1は第1日目(赤)と第30日目(青)の採血日に得られた血清を含み、対照2はアッセイ対照で、陰性(PBS、赤)及び陽性(ウサギ抗SΔTM)を含む。アッセイをすべて2枚のプレート上で二重測定により実施した。試験は、アッセイがすべて完了しデータが集められるまで非融合ではなかった。
【0193】
図71のグラフは明らかに、抗SARS SのΔTM又はHisタグ付き全長の抗体を、投与量に依存して、且つ免疫増幅が効果的な態様で、誘発することができることを示した。この結果は二重測定のプレートで産生可能であった。更に、図75のグラフは明らかに抗体力価が全期間において上昇していることを示す。
【0194】
この試験において使用したHisタグ付きSタンパク質(9ug投与量)を、濃縮のために再測定した。このタンパク質の調製において、この9ugは干渉物のせいで過剰に推定しており、実際の投与量は、より正確に推定すると約2ugであった。この新たな測定値は現行の試験では適正化されている。Hisタグ付き全長Sタンパク質を投与されたマウスから得られた値は、3ug投与レベルのマウスのものより低く、実際の投与量は3ug未満であるらしいことを示唆している。
【0195】
マウス試験において使用されるキャプチャー免疫アッセイの有効性証明のため、追加の実験を実施した。
【0196】
マウスにおけるSARS S免疫原性調査(上記)の最初の部分で、最適なコーティング条件、即ち1ug/mLのSARS SΔTM100uLを、ウサギ抗Hisタグ付きSARSΔTMを用いて決定した。一次抗体(マウス血清)の作業用希釈度である1:100は、以前の準備実験に基づいており、その準備実験では選択したマウス血清を系列的に希釈し、SARSΔTM結合をテストした。2つの血清サンプルを現行の試験に選択した。1つは特異的シグナルの最低値を代表的する#111(3ug投与量、15日目採血)であった。もう1つは最高値の#196(50ug投与量、30日目採血、マウス試験で最強のシグナルを示す)であった。血清を、1:100希釈から開始して系列的に希釈し、アッセイを、2種類のコーティング条件、1ug/mLと2ug/mL SARS SΔTMのプレート上で、二重測定により実施した。
【0197】
#111では、シグナルは弱いが検出可能であった。希釈によるシグナルは直線的であったがアッセイの直線性範囲の低値端であった。1:100の希釈は見た目としてはこのサンプルとして最善の選択で、更に希釈することはアッセイの質を危うくする。一方、#196は、希釈系列に従って、特異的シグナルの直線的減少を示した。1:100の希釈は、かわって力価の高値端に位置した。この希釈度は、特異的シグナルの弱いものと強いものの両方に妥協するものである。したがって、現行の調査は、マウスにおける免疫原性試験で使用されるアッセイ条件の有効性を証明した。
【0198】
コーティング濃度を2ug/mLまで増加すると低めの力価の検出を改善したが、力価が高めの血清は、直線的検出範囲にとどまるため更に希釈しなければならない。
【0199】
2つの同一血清サンプルを異なる日にテストすることにより、このキャプチャー免疫アッセイの再現性を評価した(図73参照)。2つのアッセイの結果は再現性を示した。CV(標準偏差/平均値)は1日目は2枚のプレートの平均結果(プレート間CVとも呼ばれる)により約10%で、一方、2日目のCVは同じプレートからの平均値(プレート内CV)による利益を受けて10%より低い。#111は弱いシグナルを呈し、アッセイ範囲の低値端に位置した。
【0200】
試験のパートIIは45日目、60日目、75日目の採取血液を含んだ。45日、60日、75日における採取血液からのものも含め、得られた血清総サンプル数を、以下の表に示す。
【0201】
【表3】

すべてのマウス抗SARS Sタンパク質血清を、ウイルス中和調査のためにカナダのCDCに送った。マウス血清のウイルス中和テストはSOPに従って実施された。血清を連続して2倍ずつ希釈した。それぞれの希釈液に、ウイルス100感染単位を加えた。インキュベーションの間にウイルスの中和が起こった。この混合液を使用してVero−E6細胞に接種し、細胞変性効果(CPE)をモニターした。非加熱(タイター1)と加熱(56℃で30分間、タイター2)血清を以下の表にまとめた。
【0202】
【表4】

【0203】
【表5】

この試験の結果は、2回投与を受けたマウスはすべてSARS−CoVを中和した血清を有し、一方1回の投与を受けたマウスのほとんどが中和血清を産生したことを示した。この中和能は明らかに免疫増幅による上昇効果があった。結果は更に投与量依存の一般的傾向を示したが、9ugを超える投与レベルでは頭打ちの状態であった。
【0204】
データの一部について、更に相関関係の解析を行った。MFI値は、マウス血清の免疫原性試験(実施例11参照)から、マウス血清すべてを100倍希釈して得られたため、それらの相関を見るため、両セットのデータを同じグラフ内にプロットすることが可能であった。図74ではY軸はウイルス中和のタイター1を、一方X軸は同じ血清のMFI値を表す。マイナス値(タイター1<10)すべてと直線性からはずれた1個(動物ID#25)は除外した。
【0205】
サンプルサイズ16で、グラフはR2値0.90を示し、2つの試験間に相関性があることを示した(図74参照)。
【実施例11】
【0206】
SARS SデルタTMの生物活性
ACE2/SデルタTM/ウサギαによって、一次抗血清を1:50希釈に固定して、多様なSARS SデルタTM濃度に対するMFI値を得た。結果を図76に示すが、これはMFI値が、R2値0.99と、サンプル濃度とよく相関することを表す。この結果はSARS SデルタTMの機能的活性を表し、精製した組換え体が正しく折り畳まれていることを示す。これはまたSARS SデルタTMがワクチンの適切な抗原であることを表す。
【0207】
まとめとして、これらの試験は、組換え体SARS Sタンパク質は、投与量依存的及び免疫増幅が効果的な態様で、マウスのSARS−CoV−中和血清を誘発することを示した。更にまた、このワクチンはこの試験の間十分な耐性を有することが推定された。
【実施例12】
【0208】
alhydrogelによるSARS S ΔTMの処方
SARS SデルタTMを、アジュバントのalhydrogelに結合するかどうかテストした。最終的にAl(OH)の濃度0.05%、0.1%、0.15%、0.2%を作製するため、固定した量の精製SARS SデルタTM(4カラム後)を多様な量のaldehydrogelと混合した。この混合物を、10,000RPM、RTで10分間遠心分離する前に、実験台に1時間静置した。得られた上清をSARS SデルタTM濃度について分析した。
【0209】
上清のタンパク質濃度に基づき、ペレット内のSARS SデルタTM(おそらくalhydrogelに結合している)の量を計算した。Al(OH)が0.05%、0.1%、0.15%、0.2%において、Al(OH)1mgに対し、96ug、61ug、46ug、38ugのSARS SデルタTMが結合した。
【0210】
例えばリン酸グループのような2価のアニオンは、Al(OH)と粒子を形成することが知られている。どのように緩衝液が粒子形成に関わるかを分析する多くの試験が実施されてきた。視覚的な観察によると、干渉の順番は、強いものから弱いものまで以下の通りである:
PBS>TBS/トリス>MES>1%酢酸=H
PBSは20倍に希釈してもその効果を保った。しかしながら、このレベルでは、トリス/塩酸は効果が減少したように見えた。
【0211】
これらの観察を、更にBSAが溶解したHO、PBS、TBS、100mM、50mM、20mM、及び10mMのトリス−HCl、pH7.3について調査した。BCAとの干渉により、100mMと50mMのトリス中のBSAの効果は評価できなかった(BSA標準液は100mM又は50mMトリスのいずれでも調製しなかった)。PBS、20mMトリス、10mMトリス、及びHOで希釈された場合、0.1%のalhydrogel(0.15%のAl(OH)と等価)において、Al(OH)1mgに対し、それぞれ156ug、325ug、323ug、326ugのBSAが結合した。BSA/PBSを除き、トリス又はHO中のAl(OH)にこのBSAのほとんどすべて(飽和)が結合した。実際のBSA結合容量はもっと高いと思われる。Al(OH)が飽和した別の実験では、HOで希釈した場合、Al(OH)1mgに対し500ugものBSAが結合した。
【0212】
これらの結果は、PBS中のSARS SデルタTMはAl(OH)と粒子形成するかもしれないが、リン酸アニオンの干渉により、より非効率的な態様であることを示す。もしSARS SデルタTMが、Al(OH)と粒子形成することを希望するなら、SARS SデルタTMをHOか又は10/20mMのトリス中に置くほうが良いようである。
【0213】
以下の番号付きパラグラフによって、本発明を更に記述する。
【0214】
1.単離されたSARSタンパク質、又はそのようなタンパク質をin vivo及び/若しくはin vitroで発現するベクター、例えば、プラスミド、及び組換えバキュロウイルスなどの組換えウイルス。
【0215】
2.組換えにより発現されたパラグラフ1に記載の単離されたSARSタンパク質。
【0216】
3.組換えウイルスによって発現されたパラグラフ2に記載の単離されたSARSタンパク質、又は組換えウイルスであるパラグラフ1のベクター。
【0217】
4.DNAプラスミド、又はDNAプラスミドであるパラグラフ1に記載のベクターによって発現された、パラグラフ2の単離されたSARSタンパク質。
【0218】
5.組換えバキュロウイルスによって発現されたパラグラフ3に記載の単離されたSARSタンパク質、又は組換えバキュロウイルスであるパラグラフ3に記載のウイルス。
【0219】
6.先行パラグラフのいずれかに記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクターであって、該タンパク質が、S、M、E、若しくはN、又はそのエピトープ断片、或いはそれらの組合せである、単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0220】
7.Sタンパク質である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0221】
8.S1である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0222】
9.S2である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0223】
10.Sの免疫原性断片である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0224】
11.Sのエピトープである、パラグラフ10に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0225】
12.Mタンパク質である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0226】
13.Mの免疫原性断片である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0227】
14.Mのエピトープである、パラグラフ13に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0228】
15.Nタンパク質である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0229】
16.Nの免疫原性断片である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0230】
17.Nのエピトープである、パラグラフ10に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0231】
18.Eタンパク質である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0232】
19.Eの免疫原性断片である、パラグラフ6に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0233】
20.Eのエピトープである、パラグラフ10に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【0234】
21.先行パラグラフのいずれかに記載の単離されたSARSタンパク質又は該タンパク質を発現するベクターであって、該タンパク質は、第1のベクター中に存在するべき外来性の核酸分子を含有する第2の転移ベクター例えばプラスミドを用いた相同組換えの方法を介して調製されたバキュロウイルスなどの、第1のベクターからの発現によって産生され、該転移ベクター例えばプラスミドは、ある制限部位を有する状態で調製され;該転移ベクターの調製は、該転移ベクターを、該制限部位からある距離をおいて切断する酵素(距離をおいて切断する酵素)によって切断して、それによって、該制限部位が該転移ベクターから切除され、且つ、該転移ベクターが特有の突出末端を有するようにすること;別の反応において、ポリメラーゼ連鎖反応又は他の増幅反応を実施してそれによって、該制限部位が該反応の増幅産物の一部となるようにすること;該距離をおいて切断する酵素によって増幅産物を切断して、それによって、増幅産物が特有の突出末端を有するようにすること;及び、介在性の核酸分子が除外されるように、特有の突出末端を有する転移ベクターと、特有の突出末端を有する増幅産物を連結させることを含む、単離されたSARSタンパク質又は該タンパク質を発現するベクター。
【0235】
21.少なくとも90%若しくは90%超、又は少なくとも95%若しくは95%超に精製された、先行パラグラフのいずれかに記載のSARSタンパク質。
【0236】
22.先行パラグラフのいずれかに記載のSARSタンパク質又は該SARSタンパク質を発現するベクターを含有するか、それから本質的には成るか、又はそれから成る免疫原性組成物、免疫学的組成物、又はワクチン組成物。
【0237】
23.SARSタンパク質が少なくとも90%若しくは90%超、又は少なくとも95%若しくは95%超に精製されている、パラグラフ22に記載の組成物。
【0238】
24.担体、又は希釈剤及び/若しくはアジュバントを含んでいる、パラグラフ22又は23に記載の組成物。
【0239】
25.感染にかかりやすい宿主において、SARSに対する免疫応答をそれによって引き起こす方法であって、パラグラフ22の組成物、又は先行パラグラフのいずれかに記載のタンパク質若しくはベクターを該宿主に投与することを含む方法。
【0240】
26.投与が注射による投与、経口投与、粘膜投与、又は局所投与である、パラグラフ25に記載の方法。
【0241】
27.先行パラグラフのいずれかに記載のタンパク質又はベクターによって誘導される抗SARSタンパク質抗体。
【0242】
28.Sタンパク質に特異的な、パラグラフ27に記載の抗体。
【0243】
29.モノクローナル抗体である、パラグラフ27又は28の抗体。
【0244】
30.パラグラフ29のモノクローナル抗体、又は先行パラグラフのいずれかに記載のタンパク質を含む診断キット又はアッセイ。
【0245】
31.SARSを検出する方法であって、抗原による、パラグラフ29に記載のモノクローナル抗体に対する結合を試料中で検出すること、又は、先行パラグラフのいずれかに記載のタンパク質に対する抗体の結合を試料中で検出することを含む方法。
【0246】
32.抗インフルエンザワクチンにおいて、それが先行パラグラフのいずれかに記載のSARSタンパク質、又は先行パラグラフのいずれかに記載のベクターを含有又は発現することを改良に含む抗インフルエンザワクチン。
【0247】
33.抗肺炎ワクチンにおいて、それが先行パラグラフのいずれかに記載のSARSタンパク質、又は先行パラグラフのいずれかに記載のベクターを含有又は発現することを改良に含む抗肺炎ワクチン。
【0248】
34.抗インフルエンザワクチンにおいて、それが先行パラグラフのいずれかに記載のSARSタンパク質、又は先行パラグラフのいずれかに記載のベクターを含有又は発現し、且つ、肺炎球菌タンパク質を更に含有又は発現することを改良に含む抗インフルエンザワクチン。
【0249】
35.抗肺炎球菌ワクチンにおいて、それが先行パラグラフのいずれかに記載のSARSタンパク質、又は先行パラグラフのいずれかに記載のベクターを含有又は発現し、且つ、インフルエンザタンパク質を更に含有又は発現することを改良に含む抗肺炎球菌ワクチン。
【0250】
36.エアゾール噴霧器中、又はエアゾール形態、若しくはポンプスプレーディスペンサー中にある、先行パラグラフのいずれかに記載の組成物であって、それらのエアゾール噴霧器、又はエアゾール形態、若しくはポンプスプレーディスペンサーが鼻腔内投与用に意図されている組成物。
【0251】
37.存在しているか、又は発現されているSARSタンパク質が、3つの単離体など、複数の単離体、例えば少なくとも2つ又は3つの単離体に由来する、先行パラグラフのいずれかに記載の組成物。
【0252】
38.存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、HA及び/又はNA及び/又はM2である、先行パラグラフのいずれかに記載の組成物。
【0253】
39.存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、2株又は3株、例えば3株の別のインフルエンザ株など、1株又は複数の別のインフルエンザ株に由来する、先行パラグラフのいずれかに記載の組成物。
【0254】
40.(a)1つ又は複数の容器の中にあるSARSタンパク質又はSARSタンパク質を発現するベクター、及び/又は、(b)1つ又は複数の容器の中にあるインフルエンザタンパク質又はインフルエンザタンパク質を発現するベクター、及び/又は、(c)1つ又は複数の容器の中にある肺炎タンパク質又は肺炎タンパク質を発現するベクターを含む、先行パラグラフのいずれかに記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットが組成物、及び/又は成分の混合物を投与するための説明書を任意選択で含有し、且つ、該容器が任意選択で同一の包装の中にある、キット。
【0255】
41.第1のベクターの中に存在するべき外来性の核酸分子を含有する第2の転移ベクター例えばプラスミドを用いた相同組換えの方法を介して調製された、バキュロウイルスなどの第1のベクターを調製する方法であって、該転移ベクター例えばプラスミドは、ある制限部位を有する状態で調製され;該転移ベクターの調製は、該転移ベクターを、該制限部位からある距離をおいて切断する酵素(距離をおいて切断する酵素)によって切断して、それによって、該制限部位が該転移ベクターから切除され、且つ、該転移ベクターが特有の突出末端を有するようにすること;別の反応において、ポリメラーゼ連鎖反応又は他の増幅反応を実施してそれによって、該制限部位が該反応の増幅産物の一部となるようにすること;該距離をおいて切断する酵素によって増幅産物を切断して、それによって、増幅産物が特有の突出末端を有するようにすること;及び、介在性の核酸分子が除外されるように、特有の突出末端を有する転移ベクターと、特有の突出末端を有する増幅産物を連結させることを含む、第1のベクターを調製する方法。
【0256】
42.注目しているタンパク質をコードする核酸分子に、リーダー配列用の核酸分子を連結するための方法である、パラグラフ41の方法。
【0257】
43.酵素がSapIである、いずれかのパラグラフに記載の方法。
【0258】
44.単離されたタンパク質又は該タンパク質を発現するベクターであって、該タンパク質は、第1のベクターの中に存在するべき外来性の核酸分子を含有する第2の転移ベクター例えばプラスミドを用いた相同組換えの方法を介して調製されたバキュロウイルスなどの、第1のベクターからの発現によって産生され、該転移ベクター例えばプラスミドは、ある制限部位を有する状態で調製され;該転移ベクターの調製は、該転移ベクターを、該制限部位からある距離をおいて切断する酵素(距離をおいて切断する酵素)によって切断して、それによって、該制限部位が該転移ベクターから切除され、且つ、該転移ベクターが特有の突出末端を有するようにすること;別の反応において、ポリメラーゼ連鎖反応又は他の増幅反応を実施してそれによって、該制限部位が該反応の増幅産物の一部となるようにすること;該距離をおいて切断する酵素によって増幅産物を切断して、それによって、増幅産物が特有の突出末端を有するようにすること;及び、介在性の核酸分子が除外されるように、特有の突出末端を有する転移ベクターと、特有の突出末端を有する増幅産物を連結させることを含む、単離されたタンパク質又は該タンパク質を発現するベクター。
【0259】
以上、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明してきたが、添付の請求の範囲により規定される本発明は、上記説明において示した特定の細部により限定されるものでなく、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく多くの明らかな変更が可能であることを理解すべきである。
【0260】
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【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1A−1B】SARS Sタンパク質のアミノ酸配列及びSARS Sタンパク質をコードするヌクレオチド配列を制限部位及びクローニング用のプライマーと共に示す図である(図7も参照)。
【図2A−2B】SARS S ORFをコードするはヌクレオチド配列を示す図である。ATG、AGT、及びTAAを太字で示す。
【図3】SARS Eタンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す図である。
【図4】SARS Eタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【図5】SARS Mタンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す図である。
【図6】SARS Mタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【図6A】SARS Nタンパク質をコードする核酸配列を示す図である。
【図6B】SARS Nタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。
【図7】SARS S ORFのクローニング用のプライマーを示す図である(図1も参照)。
【図8】SARS S ORFの制限地図を示す図である。
【図9】バキュロウイルス(BEVS又はBV)発現ベクターを調製するための模式的戦略を示す図である。
【図10】コロナウイルス粒子を示す図である。
【図11】SARSコロナウイルスの模式図である。
【図12A−12D】S−タンパク質生成過程の図式的概観を示す図である。
【図13A−13F】配列アライメントを示す図である。
【図14】生成された3つのコンストラクトの概要を示す図である。
【図15】ゲルの写真である。
【図16】ゲルの写真である。
【図17】ゲルの写真である。
【図18】ウェスタンブロットの写真である。
【図19】ウェスタンブロットの写真である。
【図20】ウェスタンブロットの写真である。
【図21】2枚のウェスタンブロットの写真である。
【図22】2枚のウェスタンブロットの写真である。
【図23】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図24】ゲルの写真である。
【図25】ゲルの写真である。
【図26】ゲルの写真である。
【図27】ゲルの写真である。
【図28】ゲルの写真である。
【図29】ゲルの写真である。
【図30】ゲルの写真である。
【図31】ゲルの写真である。
【図32】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図33】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図34】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図35】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図36】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図37】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図38】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図39】ウェスタンブロットの写真である。
【図40】ウェスタンブロットの写真である。
【図41】ウェスタンブロットの写真である。
【図42】ウェスタンブロットの写真である。
【図43】ウェスタンブロットの写真である。
【図44】ゲルの写真である。
【図45】ウェスタンブロットの写真である。
【図46】ウェスタンブロットの写真である。
【図47】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図48】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図49】ゲルの写真である。
【図50】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図51】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図52】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図53】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図54】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図55】ゲルの写真である。
【図56】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図57】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図58】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図59】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図60】棒グラフである。
【図61】棒グラフである。
【図62】ゲルの写真である。
【図63】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図64】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図65】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図66】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図67】ゲルとウェスタンブロットの写真である。
【図68】2枚のゲルの写真である。
【図69】2枚のゲルの写真である。
【図70】ゲルの写真である。
【図71】棒グラフである。
【図72】折れ線グラフである。
【図73】棒グラフである。
【図74】折れ線グラフである。
【図75】棒グラフである。
【図76】折れ線グラフである。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたSARSタンパク質、又はそのようなタンパク質をin vivo及び/若しくはin vitroで発現するベクター、例えば、プラスミド、組換えバキュロウイルスなどの組換えウイルス。
【請求項2】
組換えにより発現された請求項1に記載の単離されたSARSタンパク質。
【請求項3】
組換えウイルスによって発現された請求項2に記載の単離されたSARSタンパク質。
【請求項4】
組換えウイルスである請求項1に記載のベクター。
【請求項5】
DNAプラスミド、又はDNAプラスミドである請求項1に記載のベクターによって発現された、請求項2に記載の単離されたSARSタンパク質。
【請求項6】
組換えバキュロウイルスによって発現された請求項3に記載の単離されたSARSタンパク質、又は組換えバキュロウイルスである請求項3に記載のウイルス。
【請求項7】
請求項1に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクターであって、該タンパク質が、S、M、E、若しくはN、又はそのエピトープ断片、或いはそれらの組合せである単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項8】
Sタンパク質である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項9】
S1である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項10】
S2である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項11】
Sの免疫原性断片である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項12】
Sのエピトープである、請求項11に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項13】
Mタンパク質である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項14】
Mの免疫原性断片である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項15】
Mのエピトープである、請求項14に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項16】
Nタンパク質である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項17】
Nの免疫原性断片である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項18】
Nのエピトープである、請求項11に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項19】
Eタンパク質である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項20】
Eの免疫原性断片である、請求項7に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項21】
Eのエピトープである、請求項11に記載の単離されたSARSタンパク質又はそれを発現するベクター。
【請求項22】
請求項1に記載の単離されたSARSタンパク質又は該タンパク質を発現するベクターであって、該タンパク質は、第1のベクターの中に存在するべき外来性の核酸分子を含有する第2の転移ベクター例えばプラスミドを用いた相同組換えの方法を介して調製されたバキュロウイルスなどの、第1のベクターからの発現によって産生され、該転移ベクター例えばプラスミドは、ある制限部位を有する状態で調製され;該転移ベクターの調製は、該転移ベクターを、該制限部位からある距離をおいて切断する酵素(距離をおいて切断する酵素)によって切断して、それによって、該制限部位が該転移ベクターから切除され、且つ、該転移ベクターが特有の突出末端を有するようにすること;別の反応において、ポリメラーゼ連鎖反応又は他の増幅反応を実施して、それによって、該制限部位が該反応の増幅産物の一部となるようにすること;該距離をおいて切断する酵素によって増幅産物を切断して、それによって、増幅産物が特有の突出末端を有するようにすること;及び、介在性の核酸分子が除外されるように、特有の突出末端を有する転移ベクターと、特有の突出末端を有する増幅産物とを連結させることを含む、単離されたSARSタンパク質又は該タンパク質を発現するベクター。
【請求項23】
少なくとも90%に精製された、請求項1に記載のSARSタンパク質。
【請求項24】
少なくとも95%に精製された、請求項1に記載のSARSタンパク質。
【請求項25】
請求項1に記載のSARSタンパク質又は該SARSタンパク質を発現するベクターを含有するか、それから本質的に成るか、又はそれから成る、免疫原性組成物、免疫学的組成物、又はワクチン組成物。
【請求項26】
SARSタンパク質が少なくとも90%に精製されている、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
SARSタンパク質が少なくとも95%に精製されている、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
担体、又は希釈剤及び/若しくはアジュバントを含んでいる、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
感染にかかりやすい宿主において、SARSに対する免疫応答をそれによって誘発する方法であって、該宿主に請求項25に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項30】
感染にかかりやすい宿主において、SARSに対する免疫応答をそれによって誘発する方法であって、該宿主に請求項1に記載のタンパク質又はベクターを投与することを含む方法。
【請求項31】
投与が注射による投与、経口投与、粘膜投与、又は局所投与である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
投与が注射による投与、経口投与、粘膜投与、又は局所投与である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載のタンパク質又はベクターによって誘発された抗SARSタンパク質抗体。
【請求項34】
Sタンパク質に特異的な、パラグラフ33に記載の抗体。
【請求項35】
モノクローナル抗体である、請求項33に記載の抗体。
【請求項36】
請求項35のモノクローナル抗体を含む診断キット又はアッセイ。
【請求項37】
請求項1に記載のタンパク質を含む診断キット又はアッセイ。
【請求項38】
SARSを検出する方法であって、抗原による、請求項35に記載のモノクローナル抗体に対する結合を試料中で検出することを含む方法。
【請求項39】
SARSを検出する方法であって、請求項1に記載のタンパク質に対する、試料中の抗体の結合を試料中で検出することを含む方法。
【請求項40】
請求項1に記載のSARSタンパク質、又は請求項1に記載のベクターを含有又は発現することを改良に含む抗インフルエンザワクチン。
【請求項41】
請求項1に記載のSARSタンパク質、又は請求項1に記載のベクターを含有又は発現することを改良に含む抗肺炎ワクチン。
【請求項42】
請求項1に記載のSARSタンパク質、又は請求項1に記載のベクターを含有又は発現し、且つ、肺炎球菌タンパク質を更に含有又は発現することを改良に含む抗インフルエンザワクチン。
【請求項43】
請求項1に記載のSARSタンパク質、又は請求項1に記載のベクターを含有又は発現し、且つ、インフルエンザタンパク質を更に含有又は発現することを改良に含む抗肺炎球菌ワクチン。
【請求項44】
エアゾール噴霧器中、又はエアゾール形態、若しくはポンプスプレーディスペンサー中にある請求項22に記載の組成物であって、それらエアゾール噴霧器、又はエアゾール形態、若しくはポンプスプレーディスペンサーが鼻腔内投与用に意図されている組成物。
【請求項45】
存在しているか、又は発現されているSARSタンパク質が複数の単離体に由来する、請求項22に記載の組成物。
【請求項46】
存在しているか、又は発現されているSARSタンパク質が少なくとも2つの単離体に由来する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
存在しているか、又は発現されているSARSタンパク質が少なくとも3つの単離体に由来する、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、HA及び/又はNA及び/又はM2である、請求項40に記載のワクチン。
【請求項49】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、HA及び/又はNA及び/又はM2である、請求項42に記載のワクチン。
【請求項50】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、1つ又は複数の異なったインフルエンザ株に由来する、請求項48に記載のワクチン。
【請求項51】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、少なくとも2つの異なったインフルエンザ株に由来する、請求項50に記載のワクチン。
【請求項52】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、少なくとも3つの異なったインフルエンザ株に由来する、請求項51に記載のワクチン。
【請求項53】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、1つ又は複数の異なったインフルエンザ株に由来する、請求項49に記載のワクチン。
【請求項54】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、少なくとも2つの異なったインフルエンザ株に由来する、請求項53に記載のワクチン。
【請求項55】
存在しているか、又は発現されているインフルエンザタンパク質が、少なくとも3つの異なったインフルエンザ株に由来する、請求項54に記載のワクチン。
【請求項56】
(a)1つ又は複数の容器の中にあるSARSタンパク質又はSARSタンパク質を発現するベクター、及び/又は、(b)1つ又は複数の容器の中にあるインフルエンザタンパク質又はインフルエンザタンパク質を発現するベクター、及び/又は、(c)1つ又は複数の容器の中にある肺炎タンパク質又は肺炎タンパク質を発現するベクターを含む、請求項22に記載の組成物を調製するためのキットであって、該キットが組成物、及び/又は成分の混合物を投与するための説明書を任意選択で含有し、且つ、該容器が任意選択で同一の包装の中にあるキット。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13A】
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【図13A−continue】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【公表番号】特表2007−524391(P2007−524391A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517653(P2006−517653)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/020390
【国際公開番号】WO2005/021713
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501311878)プロテイン サイエンシーズ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】