説明

SARSウイルス抗原の細胞表面発現ベクター及びこのベクターにより形質転換された微生物

本発明は、重症急性呼吸器症候群(SARS)誘発コロナウイルスの抗原とポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsB,pgsC及びpgsAのいずれか1種または2種以上を含有するSARSコロナウイルス抗原の表面発現ベクター、この表面発現ベクターにより形質転換された微生物及び前記微生物を含有するSARSワクチンに関する。本発明によれば、SARSコロナウイルス抗原を表面発現する組換え菌株を用いてSARSの治療用または予防用ワクチンを経済的に生産することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重症急性呼吸器症候群(SARS、サーズ)誘発コロナウイルスの抗原を微生物の表面に発現させるベクター、このベクターにより形質転換された微生物及びこの形質転換された微生物またはその抽出精製物を含有するSARS予防用ワクチンに関する。より詳しくは、SARS誘発コロナウイルスの抗原蛋白質をコードする遺伝子及び、微生物表面発現母体であるポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsB,pgsC及びpgsAのいずれか1種または2種以上を含有する表面発現ベクターと、このベクターにより形質転換された微生物及びこの形質転換された微生物を有効性分として含むSARSワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome:SARS、サーズ)は、2002年11月から中国の廣東地域を中心に初めて発生し、香港、シンガポール、カナダのトロントなど世界中に広がった新種伝染病である。38℃以上の発熱とセキ、呼吸困難、非定型肺炎などの呼吸器症状を示すSARSの原因体としては、変種コロナウイルスが病源体であると知られている。
【0003】
通常、コロナウイルスは極めて大きなRNAウイルスであって、(+)RNAを有する。ゲノムは、一般に、約29K〜31Kの塩基よりなり、顕微鏡ではクラウン状に観察され、人間の上部呼吸器疾患、動物の呼吸器、肝臓、神経、腸関連の疾患の原因となり、自然系には3グループのコロナウイルスが存在するが、これらの中でグループIとグループIIは哺乳類に、そしてグループIIIは鳥類に感染する。
【0004】
自然系に知られているコロナウイルスは、時々免疫系が弱まっている人々に肺と関わる疾病を引き起こし、犬、猫、豚、ネズミ、鳥などの動物では深刻な疾病の原因ともなる。さらに、これは、極めて高い突然変異率を示すと共に、組換え率(recombination rate)もまたおよそ25%と極めて高い方である。このような特性が既存のコロナウイルスの変異を起こして変種コロナウイルス(SARSコロナウイルス)となり、動物から人間に伝播されたのではないかと考えられる。
【0005】
世界保健機構(World Health Organization:WHO)によれば、2002年11月から31ヶ国において7,447名のSARS推定患者が発生し、そのうち551人が死亡した。2003年現在、SARS感染危険地域は、中国の北京、廣東、香港、内モンゴル、山西、天津、シンガポール、カナダのトロント、台湾、モンゴルのウーランバートル、そしてフィリピンなどが対象となっているものの、全世界的に広がる危険性を抱いている。
【0006】
SARSコロナウイルスは、2002年の発生以来、ドイツの熱帯医学研究所が初めてSARSウイルスの塩基配列の解読を施した。研究チームは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により遺伝子の増幅が可能な特定の遺伝子部位に対する塩基配列の解読を施した。解読の結果は、ドイツの生命工学企業であるアルツス社に供されてSARS感染検出キットを開発する上で活用され、このキットは、SARSが疑われる患者から検出したウイルス遺伝子を増幅させてSARSウイルスの感染有無を知ることができる。
【0007】
その後、SARSウイルス全長ゲノムの解読作業が行われ、これまで12個以上の分離株に対する塩基配列が完全に分析されて知られている。この中で、最初に分離されたウルバニ(Urbani)株[SARSにより感染されて死亡したWHO派遣医師の名前を取った名]、SARS−Cov株(Rota,PA.,Science 108:5952,2003;Genebank Accession AY278741)の全塩基配列がアメリカのCDC研究チームにより解読され、カナダのブリティッシュ・コロンビア癌研究センターのチームは、4月12日、カナダのトロントの患者から分離したSARSTor2ウイルス株(Marra,M.A.,Science 108:5953,2003;GenBank Accession 274119)の全塩基配列を分析した。
【0008】
両研究チームは、それぞれ異なる場所でSARSに感染された患者から分離したコロナウイルスを分析したが、両ウイルスの塩基の違いは、僅か15個に過ぎなかった。これは、SARSが同じウイルスにより誘発されるということを示唆している。また、SARSコロナウイルスのゲノム分析の結果、既存のコロナウイルスの蛋白質と同じ構成要素を有しているが、ゲノム及びゲノムによるアミノ酸は、わずかな相同性しか示さず、その中で、ネズミの肝炎ウイルスと七面鳥の気管支炎ウイルスに近いということが明らかになった。しかしながら、SARSコロナウイルスと他のコロナウイルスとの相関性は、分子系統の分類学的な分析により明らかになったが、既存のグループとは異なっていることが解った。
【0009】
現在、SARSコロナウイルスの検出は、最初にPCRを行い、抗体検査の陽性判定はELISAやIFAにより行い、さらに、ウイルスの分離に関しては、PCRにより確診された検体について細胞培養検査によりウイルスを分離してSARSコロナウイルスの感染を確定する。
【0010】
SARSに対する根本的な治療方法はなく、保存的な支持療法があるだけである。現在、新しい伝染病であるSARSの原因体としてのSARSコロナウイルスに対する研究は初期段階に留まっているため、予防のためのワクチンは開発されておらず、世界的に予防ワクチンを開発するために多角的な研究が進んでいる。
【0011】
微生物の細胞の表面に所望の蛋白質を付着して発現させる技術を、細胞表面発現(cell surface display)技術と呼んでいる。この細胞表面発現技術は、バクテリアや酵母など微生物の表面蛋白質を表面発現母体(surface anchoring motif)として用いて外来蛋白質を表面に発現させる技術であり、組換え生ワクチンの生産、ペプチド/抗体ライブラリー(library)の製作及びスクリーニング(screening)、全細胞吸着剤(whole cell absorbent)、全細胞生物転換触媒(whole cell biotransformation catalyst)など様々な応用範囲を有している技術である。この技術は、いかなる蛋白質を細胞の表面に発現させるかによってその応用範囲が決められ、この理由から、細胞表面発現技術を用いた産業的な応用潜在力は極めて高いと言える。
【0012】
細胞表面発現技術を成功させるためには、表面発現母体が最も重要である。いかに効果的に外来蛋白質を細胞の表面に発現可能な母体を選定して開発するかが、この技術の核心となる。
【0013】
このため、次のような性質を有する表面発現母体を選定する必要がある。
まず、第一に、外来蛋白質を細胞の表面まで送るために、外来蛋白が細胞内膜を通過可能にする分泌信号があること、第二に、細胞外膜の表面に安定的に外来蛋白質を付着可能にするターゲット信号があること、第三に、細胞の表面に多量に発現されるが、細胞の成長にほとんど影響しないこと、第四に、蛋白質の大小とは無関係に、外来蛋白質の3次元構造に変化を起こすことなく安定的に発現されること、などである。しかしながら、これらの条件をいずれも満足する表面発現母体は、まだ開発されていないのが現状である。
【0014】
今まで知られて用いられている表面発現母体としては、大きく細胞外膜蛋白質、リポ蛋白質(lipoprotein)、分泌蛋白質(secretory protein)、鞭毛蛋白質などの表面器官蛋白質の4種類が挙げられる。グラム陰性菌(Gram negative bacteria)の場合、LamB,PhoE(Charbit et al.,J.Immunol.,139:1658.,1987;Agterbergetal.,Vaccine,8:85,1990)、OmpAなどの細胞外膜に存在する蛋白質を主として用いていた。加えて、リポ蛋白質であるTraT(Felici et al.,J.Mol.Biol.,222:301,1991)、PAL(peptidoglycan associated lipoprotein)(Fuchs et al.,Bio/Technology,9:1369,1991)、そしてLpp(Francisco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,489:2713,1992)なども用いられていた。さらに、FimAや1型(type1)線毛(fimbriae)のFimH接着因子(adhesin)などの線毛蛋白質(Hedegaard et al.,Gene,85:115,1989)、PapAピル(pilu)サブユニットなどのピリ(pili)蛋白質などを細胞表面発現母体として用い、外来蛋白質の発現を試みることもあった。これらの他にも、氷核活性蛋白質(ice nucleation protein)(Jung et al.,Nat.Biotechnol.,16:576,1998;Jung et al.,Enzyme Microb.Technol.,22:348,1998;Lee et al.,Nat.Biotechnol.,18:645,2000)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiela oxytoca)のプルラナーゼ(pullulanase)(Kornacker et al.,Mol.Microl.,4:1101,1990)、ナイセリア(Neiseria)のIgAプロテアーゼ(Klauser et al.,EMBO J.,9:1991,1990)、大腸菌の接着因子であるAIDA−1、赤痢菌のVirG蛋白質、LppとOmpAの溶融蛋白質などが表面発現母体として使用できるという報告がある。グラム陽性菌(Gram positive bacteria)を用いる場合には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインA及びFnBPB蛋白質を表面発現母体として用いてマラリア抗原を效果的に発現させた報告があり、乳酸バクテリアの表面コート(coat)蛋白質を表面発現に用いたという報告と、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のM6蛋白質(Medaglini,D et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,92:6868,1995)、炭疽菌(Bacillus anthracis)のS−layer protein EA1、枯草菌CotBなどグラム陽性バクテリアの表面蛋白質を母体として用いたという報告がある。
【0015】
本発明者らは、バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸の合成複合体遺伝子(pgsBCA)を新しい表面発現母体として用い、外来蛋白質を微生物の表面に效果的に発現させる新しいベクターとこのベクターにより形質転換された微生物の表面に外来蛋白質を多量発現させる方法を開発している(大韓民国特許出願番号第10−2001−48373号)。
【0016】
上記で紹介された表面発現母体を用い、病源体の抗原または抗原決定基を遺伝工学的な方法により大量生産が可能な細菌で安定的に発現しようとする研究が盛んに試みられている。特に、非病原性の細菌の表面に外来免疫原を発現させて生きている状態で経口投与する場合、従来の弱毒化された病原性細菌やウイルスを用いたワクチンよりも一層持続的で且つ強い免疫反応を誘導することができると報告されている。このような免疫反応の誘導は、細菌の表面構造物が表面発現された外来蛋白質の抗原性(antigenicity)を高めるアジュバント(adjuvant)として機能するためであり、生きている状態の菌に対する体内の免疫反応によるものであると知られている。このような表面発現システムを用いた非病原性細菌の組換え生ワクチンの開発は、注目を浴びる価値のあるものである。
【0017】
この理由から、本発明者らは、バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸の合成複合体遺伝子(pgsBCA)を表面発現母体として用い、遺伝子及び蛋白質分析により選定したSARSコロナウイルスの抗原を乳酸菌などの非病原性と食品安全性が保証された微生物の表面に多量発現することに成功し、この微生物を経口投与してSARSコロナウイルスに対する体内の血中抗体生成能及び粘膜免疫を誘導させる一層経済的でかつ安定した予防ワクチンを開発するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、微生物の表面発現システムを活用してSARSコロナウイルス抗原を発現可能なベクター及びこのベクターにより形質転換された微生物を提供するところにある。
【0019】
本発明の他の目的は、SARSコロナウイルスの抗原が表面に発現された、形質転換された微生物、この微生物から抽出されたSARSコロナウイルス抗原または前記微生物から精製されたSARSコロナウイルス抗原を有効性分として含有するSARS予防用ワクチンを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明は、ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsB,pgsC及びpgsAのいずれか1種または2種以上及び、SARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質またはヌクレオカプシド抗原蛋白質をコードする遺伝子と、を含む表面発現ベクターを提供する。
【0021】
本発明において、前記表面抗原蛋白質遺伝子としては、SARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質をコードする遺伝子であればいずれも用いることができ、SARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質遺伝子を単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、前記ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子には、pgsAが含まれていることが好ましい。前記スパイク抗原蛋白質はSARSSA,SARSSB,SARSSC,SARSSDまたはSARSSBCであっても良く、ヌクレオカプシド抗原蛋白質はSARSNA,SARSNBまたはSARSNであっても良い。
【0022】
また、本発明は、前記発現ベクターにより形質転換された微生物及びこの微生物を培養することを特徴とするSARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質またはヌクレオカプシド抗原蛋白質の製造方法を提供する。
【0023】
本発明に用いられる微生物は、生体への適用時に毒性がなく、弱毒化された微生物であれば特に制限がない。例えば、グラム陰性菌として大腸菌、チフス菌、ネズミチフス菌、ビブリオコレラ、ウシ型結核菌、赤痢菌などを、そして、グラム陽性菌としてバチルス、乳酸菌、乳酸連鎖菌、ブドウ状球菌、リステリア菌及び連鎖球菌などを好適に選択することができる。特に、乳酸菌のように食用可能な微生物を選択することが好ましい。
【0024】
さらに、本発明は、前記抗原蛋白質が表面に発現された微生物そのものを用いるか、あるいは、前記微生物を破壊して細胞膜成分を粗抽出した物質を用いるか、あるいは、前記微生物から精製された抗原蛋白質を有効性分として含有するSARS予防用ワクチンを提供する。
【0025】
本発明に係るワクチンは、SARSコロナウイルスにより誘発される重症急性呼吸器症候群の予防用医薬品として用いることができる。
【0026】
本発明に係るワクチンは、経口用または食用として摂取することもでき、皮下または腹腔に注射することもでき、さらには、鼻腔投与することもできる。
【0027】
SARSコロナウイルスの感染は、感染性飛沫による呼吸器感染により引き起こされると知られていることから、呼吸器の粘膜組織の表面(mucosal surface)でおこると考えられる。この理由から、粘膜免疫による感染の防御は極めて重要である。SARSコロナウイルスの抗原を表面に発現する微生物は、粘膜における抗体形成(mucosal response)を一層効果的に誘導できるという長所を有しており、上記の形質転換された微生物それ自体を用いた経口用ワクチンあるいは鼻腔投与ワクチンが非経口用(parenteral)ワクチンよりも、SARSコロナウイルスを防御する上で一層効果的であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の目的及び利点は、添付の図面と併せて、詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図1】図1は、豚伝染性胃腸炎ウイルスの抗原性4部位(A,B,C,D)とSARSコロナウイルスのスパイク蛋白質との関係をカイト・ドゥーリトル(Kyte−Doolittle)方法による親水性プロット(hydrophilicity plot)、ジェームソン・ウルフ(Jameson−wolf)方法による抗原インデックス(Antigenic index)、そしてエミニ(Emini)方法による表面確率プロット(surface probability plot)を通じて分析した結果を示すものである。
【図2】図2は、豚伝染性胃腸炎ウイルスのヌクレオカプシド蛋白質とSARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質との関係をカイト・ドゥーリトル方法による親水性プロット、ジェームソン・ウルフ方法による抗原インデックス、そしてエミニ方法による表面確率プロットを通じて分析した結果を示すものである。
【図3A】図3Aは、本発明に係るグラム陰性及びグラム陽性微生物を宿主とする表面発現用転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSAの遺伝子マップである。
【図3B】図3Bは、本発明に係るpHCE2LB:pgsA−SARSSCの遺伝子マップである。
【図3C】図3Cは、本発明に係るpHCE2LB:pgsA−SARSSBCの遺伝子マップである。
【図4A】図4Aは、本発明に係る転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNBを示す遺伝子マップである。
【図4B】図4Bは、本発明に係るpHCE2LB:pgsA−SARSNの遺伝子マップである。
【図5A】図5Aは、乳酸菌において細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSSA抗原の発現を、pgsAに対する特異抗体と前記融合蛋白質との特異的な結合を用いて免疫ブロット(western immunoblotting)を行うことにより確認したものである。
【図5B】図5Bは、乳酸菌において細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSSC抗原の発現を、pgsAに対する特異抗体と前記融合蛋白質との特異的な結合を用いて免疫ブロット(western immunoblotting)を行うことにより確認したものである。
【図5C】図5Cは、乳酸菌において細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSSBC抗原の発現を、pgsAに対する特異抗体と前記融合蛋白質との特異的な結合を用いて免疫ブロット(western immunoblotting)を行うことにより確認したものである。
【図6A】図6Aは、細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSSA抗原の乳酸菌表面発現を、乳酸菌細胞を分画した蛋白質をpgsAに対する特異抗体に結合させ、免疫ブロットを行うことにより確認したものである。
【図6B】図6Bは、細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSSBC抗原の乳酸菌表面発現を、乳酸菌細胞を分画した蛋白質をpgsAに対する特異抗体に結合させ、免疫ブロットを行うことにより確認したものである。
【図6C】図6Cは、SARSSBC抗原の乳酸菌表面発現を蛍光活性細胞選別測定法(FACScan assay)により確認したものである。
【図7】図7A及び図7Bは、細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSNBとSARSN抗原の乳酸菌表面発現を、乳酸菌細胞を分画した蛋白質をpgsAに対する特異抗体と結合させ、免疫ブロットを行うことにより確認したものである。
【図8】図8は、本発明に係る表面発現転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE1LB:pgsA−SARSNBによりそれぞれ形質転換され、抗原基の表面発現が認められた乳酸菌カセイ株を経口と鼻腔でそれぞれ投与したマウスの血清内のSARSSA及びSARSSC抗原に対するIgG抗体価を酵素免疫測定法(ELISA:Enzyme−linked Immunosorbent assay)により測定した結果である。
【図9】図9は、本発明に係る表面発現転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA、pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE1LB:pgsA−SARSNBによりそれぞれ形質転換され、抗原基の表面発現が認められたカセイ菌株を経口と鼻腔でそれぞれ投与したマウスの腸及び気管支、肺胞洗浄液内のSARSSA及びSARSSC抗原に対するIgA抗体価をELISA法により測定した結果である。
【図10】図10は、本発明に係る表面発現転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE1LB:pgsA−SARSNBによりそれぞれ形質転換され、抗原基の表面発現が認められた乳酸菌カセイ株を経口と鼻腔でそれぞれ投与したマウスの血清内のSARSNB抗原基に対するIgG抗体価をELISA法により測定した結果である。
【図11】図11は、本発明に係る表面発現転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE1LB:pgsA−SARSNBによりそれぞれ形質転換され、抗原基の表面発現が認められた乳酸菌カセイ株を経口と鼻腔でそれぞれ投与したマウスの腸及び気管支、肺胞洗浄液内のSARSNB抗原基に対するIgA抗体価をELISA法により測定した結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明する。但し、これらの実施例は単に本発明を一層詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0030】
特に、下記の実施例においては、SARSコロナウイルスのスパイク蛋白質内の抗原性部位の遺伝子及びヌクレオカプシド蛋白質内の抗原性部位の遺伝子を適用しているが、これに限定されることなく、いかなる抗原蛋白質遺伝子も単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
さらに、下記の実施例においては、バチルスサブチリスチョンククチャン(Bacillus subtilis var.Chungkookjang;KCTC 0697BP)からポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子pgsBCAを得て用いているが、遺伝子はポリ−γ−グルタミン酸を生産するいかなるバチルス属菌株からpgsBCAを得て製造されたベクターまたはこのベクターを用いた形質転換された微生物なども本発明の範囲に含まれると言える。例えば、バチルスサブチリスチョンククチャンに存在するpgsBCA遺伝子の塩基配列と80%以上の相同性を有する他の菌株由来のpgsBCA遺伝子を用いてワクチン用ベクターを製造したり、これを用いたりすることも本発明の範囲に含まれるであろう。
【0032】
また、下記の実施例においては、遺伝子pgsBCAのうちpgsAだけを用いて表面発現用ベクターを製作しているが、間接的な実施例から類推できるように、遺伝子pgsBCAの全部または一部だけを用いてワクチン用ベクターを製作することも本発明の範囲に含まれるであろう。
【0033】
さらに、下記の実施例においては、前記ベクターに対する宿主として、グラム陰性細菌であるチフス菌とグラム陽性細菌である乳酸菌のみを用いているが、この細菌の他に、いかなるグラム陰性菌またはグラム陽性菌も本発明に係る方法により形質転換させると、同じ結果が得られるということも、当業者にとっては明らかである。
【0034】
さらに、下記の実施例においては、ワクチン用ベクターにより形質転換された微生物そのものを生ワクチンとして生体に適用した例のみが示してある。しかしながら、ワクチン関係の技術分野の知識からみて、前記微生物から粗抽出された発現蛋白質(SARSコロナウイルスの抗原蛋白質)または精製された発現蛋白質を生体に適用しても同一、あるいは類似の結果が得られるということは言うまでもない。
【0035】
実施例1:SARSコロナウイルスのスパイク蛋白質内の抗原性部位の遺伝子の合成
SARSコロナウイルスのスパイク蛋白質は、1256アミノ酸よりなる糖蛋白質である。多くの研究が進んでいる他のコロナウイルスの場合、スパイク蛋白質のほとんどがウイルス粒子の表面を包んでいる外皮(envelope)蛋白質に挿入されて外部に露出されるような構造となっており、このような露出部位及び抗原性部位がウイルス感染を引き起こし、感染を防ぐためのワクチンの目的抗原としてその研究が盛んに行われている。
【0036】
このため、SARSコロナウイルスのスパイク蛋白質1256アミノ酸のうち抗原性を示す部位を選定するために、抗原性に関する多くの研究がなされている他の豚伝染性胃腸炎コロナウイルス(Transmissible Gastroenteritis:TGEコロナウイルス)のスパイク蛋白質との蛋白質の比較分析及び構造的な比較分析を通じて抗原性部位を選定し、これを合成した。具体的に、豚伝染性胃腸炎ウイルスのスパイク蛋白質の抗原性部位は4つの部位(A,B,C,D)であることが良く知られている(Enjuanes,L.,Virology,183:225,1991)。これらの部位とSARSコロナウイルスのスパイク蛋白質との関係を、カイト・ドゥーリトル方法による親水性プロット、ジェームソン・ウルフ方法による抗原インデックス、そしてエミニ方法による表面確率プロットにより分析した後、SARSコロナウイルスTor2分離株(isolate)のスパイク蛋白質塩基配列のうちからSARSSA,SARSSB,SARSSC及びSARSSDを選定した(図1)。
【0037】
まず、全ての塩基配列が分析されたSARSコロナウイルスTor2分離物のスパイク蛋白質の塩基配列(21492−25259塩基、1255アミノ酸)に基づき、抗原性部位であると予想される2〜114のアミノ酸部位を選択してSARSSAと命名し、375〜470のアミノ酸部位を選択してSARSSBと命名し、510〜596のアミノ酸部位を選択してSARSSCと命名し、そして、1117〜1197のアミノ酸部位を選択してSARSSDと命名した。これらの抗原性部位のうちSARSSAとSARSSC部位の遺伝子を合成した。
まず、SARSSAと命名した113の長さのアミノ酸に相当する遺伝子を合成するために、SEQ ID NO:1ないし8のプライマーを用いたPCRを行い、増幅された339bpのSARSSA遺伝子を得た。
SEQ ID NO:1:
5’−ggatcctttattttcttattatttcttactctcactagtggtagtgaccttgaccg−3’
SEQ ID NO:2:
5’−tgagtgtaattaggagcttgaacatcatcaaaagtggtacaacggtcaaggtc−3’
SEQ ID NO:3:
5’−aattacactcaacatacttcatctatgcgtggggtttactatcctgatgaaatttttc−3’
SEQ ID NO:4:
5’−aaaatggaagaaataaatcctgagttaaataaagagtgtctgaacgaaaaattt−3’
SEQ ID NO:5:
5’−cttccattttattctaatgttactgggtttcatactattaatcatacgtttggcaac−3’
SEQ ID NO:6:
5’−ggcagcaaaataaataccatccttaaaaggaatgacagggttgccaaacgtatg−5’
SEQ ID NO:7:
5’−atttattttgctgccacagagaaatcaaatgttgtccgtggttgggtttttgg−3’
SEQ ID NO:8:
5’−ggtaccaagcttattacacagactgtgacttgttgttcatggtagaaccaaaaaccc−3’
【0038】
SARSSCと命名した87の長さのアミノ酸に相当する遺伝子を合成するために、SEQ ID NO:9ないし14の塩基配列を有するプライマーを用いたPCRを行い、増幅された261bpのSARSSC遺伝子を得た。
SEQ ID NO:9:
5’−ggatccgtttgtggtccaaaattatctactgaccttattaagaaccagtgtgtcaat−3’
SEQ ID NO:10:
5’−gaagaaggagttaacacaccagtaccagtgagaccattaaaattaaaattgacacact−3’
SEQ ID NO:11:
5’−aactccttcttcaaagcgttttcaaccatttcaacaatttggccgtgatgtttctga−3’
SEQ ID NO:12:
5’−ctaaaatttcagatgttttaggatcacgaacagaatcagtgaaatcagaaacat−3’
SEQ ID NO:13:
5’−ctgaaattttagacatttcaccttgtgcttttgggggtgtaagtgtaattaca−3’
SEQ ID NO:14:
5’−ggtaccaagcttattaaacagcaacttcagatgaagcatttgtaccaggtgtaattac−3’
【0039】
合成による抗原部位遺伝子の確保以外に、Canada’s Michael Smith Genome Science Centerから購入したSARSスパイクcDNAクローン(SARSコロナウイルスTOR2)を鋳型として264〜596のアミノ酸部位をコードする遺伝子をSEQ ID NO:15及び16のプライマーを用いてPCRにより増幅させ、996bpサイズの遺伝子を確保し、これをSARSSBCと命名した[この遺伝子は、中和抗体を生成するための重要な部位を含有している(PNAS,101:2536,2004)]。
SEQ ID NO:15(SBCsense):5’−cgcggatccctcaagtatgatgaaaat−3’
SEQ ID NO:16(SBCanti−sense):5’−cggggtaccttaaacagcaacttcaga−3’
【0040】
実施例2:SARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質内の抗原性部位の遺伝子の合成
SARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質は、422アミノ酸よりなる蛋白質である。多くの研究が進んでいる他のコロナウイルスの場合、ヌクレオカプシド蛋白質のほとんどが抗原として作用するという報告があり、この部位をコロナウイルスの感染を防ぐためのワクチンの目的抗原として用いようとする研究が盛んになされている。
【0041】
SARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質のアミノ酸のうち抗原性を示す部位を豚伝染性胃腸炎コロナウイルス(Transmissible Gastroenteritis、TGE コロナウイルス)のヌクレオカプシド蛋白質との比較分析により抗原性部位を選定して合成した。
【0042】
具体的に、豚伝染性胃腸炎ウイルスのヌクレオカプシド蛋白質とSARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質との関係をカイト・ドゥーリトル方法による親水性プロット、ジェームス・ウルフ方法による抗原インデックス、そしてエミニ方法による表面確率プロットにより分析した後、SARSコロナウイルスTor2分離株のヌクレオカプシド蛋白質の塩基配列のうちからSARSNA及びSARSNBを選定した(図2)。
【0043】
まず、全ての塩基配列が分析されたSARSコロナウイルスTor2分離株のヌクレオカプシド蛋白質の塩基配列(28120−29388塩基、422アミノ酸)に基づき、抗原性部位であると予想される2〜157のアミノ酸部位を選択してSARSNAと命名し、163〜305のアミノ酸部位を選択してSARSNBと命名し、本発明においては、SARSNB部位の遺伝子を合成した。
【0044】
SARSNBと命名した143長さのアミノ酸に相当する遺伝子を合成するために、SEQ ID NO:17ないし26の塩基配列をプライマーとして用いたPCRを行い、増幅された429bpのSARSNB遺伝子を得た。
SEQ ID NO:17:
5’−ggatcccctcaaggtacaacattgccaaaaggcttctacgcagagggtagccgtgg−3’
SEQ ID NO:18:
5’−accacgactacgtgatgaagaacgagaagaggcttgactgccgccacggctacc−3’
SEQ ID NO:19:
5’−cacgtagtcgtggtaattcacgtaattcaactcctggcagcagtcgtggtaat−3’
SEQ ID NO:20:
5’−gcgagggcagtttcaccaccaccgctagccatacgagcaggagaattaccacga−3’
SEQ ID NO:21:
5’−gaaactgccctcgcacttttgctgcttgaccgtttgaaccagcttgagagcaa−3’
SEQ ID NO:22:
5’−tagtgacagtttgaccttgttgttgttggcctttaccagaaactttgctctcaa−3’
SEQ ID NO:23:
5’−caaactgtcactaagaaatctgctgctgaggcatctaaaaagcctcgtcaaaaacgt−3’
SEQ ID NO:24:
5’−ggaccacgacgcccaaatgcttgagtgacgttgtactgttttgtggcagtacgtttttg−3’
SEQ ID NO:25:
5’−gggcgtcgtggtccagaacaaacccaaggtaatttcggggaccaagaccttatccgt−3’
SEQ ID NO:26:
5’−ggtaccaagcttattaaatttgcggccaatgtttgtaatcagtaccttgacggataagg−3’
【0045】
また、合成による抗原部位遺伝子の確保の以外に、Canada’s Michael Smith Genome Science Centerから購入したSARSヌクレオカプシドcDNAクローン(SARSコロナウイルスTOR2)を鋳型としてヌクレオカプシドの2〜305のアミノ酸部位をコードする遺伝子をSEQ ID NO:27及び28のプライマーを用いてPCRにより増幅させ、912bpサイズの遺伝子を確保し、これをSARSNと命名した。
SEQ ID NO:27(Nsense):5’−cgcggatcctctgataatggtccgcaa−3’
SEQ ID NO:28(Nanti−sense):5’−cggggtaccttaaatttgcggccaatgttt−3’
【0046】
実施例3:表面発現用転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA及びpHCE2LB:pgsA−SARSSCの構築
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸の合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子(pgsBCA)のうちpgsAを用いてグラム陰性微生物及びグラム陽性微生物を宿主としてSARSコロナウイルスのスパイク蛋白質内の抗原性部位SARSSA及びSCを表面発現可能な表面発現ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSAとpHCE2LB:pgsA−SARSSCを構築した。
【0047】
まず、ヒト乳頭腫ウイルスのL1抗原を有しグラム陰性及びグラム陽性微生物を宿主とする表面発現用ベクター(グラム陰性及びグラム陽性汎用ベクターであるpATに恒常的高発現プロモータであるHCEプロモータ、ポリ−γ−グルタミン酸の合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子(pgsBCA)のうちpgsA、そしてHPVL1を含む転換ベクター)に、SARSコロナウイルスのスパイク蛋白質内の抗原性部位SARSSA及びSARSSCを導入するために、pHCE2LB:pgsA−HPVL1(KCTC10349BP)をBamHIとKpnIに切断し、HPVL1遺伝子を除去して表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsAを用意した。
【0048】
前記実施例1において合成されたSARSSA及びSARSSC抗原遺伝子を制限酵素BamHIとKpnIにそれぞれ切断してあらかじめ用意した表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsAのポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子pgsAのC末端部位に翻訳コドンを合わせてそれぞれ連結し、転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSAとpHCE2LB:pgsA−SARSSCをそれぞれ製作した(図3A及び図3B)。製作された表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSAとpHCE2LB:pgsA−SARSSCを用いてグラム陽性細菌である乳酸菌を形質転換させた後、乳酸菌内のpHCE2LB:pgsA−SARSSAとpHCE2LB:pgsA−SARSSCプラスミドの存在をそれぞれ確認した。
【0049】
実施例4:表面発現用転換ベクターpHCE2LB:pgsA:SARSSBCの構築
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子(pgsBCA)のうちpgsAを用い、SARSコロナウイルスのスパイク蛋白質内の抗原性部位SARSSBCを表面発現可能なベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSBCを構築した。
【0050】
まず、前記実施例3の方法と同様にしてpHCE2LB:pgsA表面発現用ベクターを用意した後、前記実施例1におけるSARSコロナウイルスのSARSスパイクcDNAクローンを鋳型として264〜596のアミノ酸部位をコードする遺伝子をPCRにより増幅させた996bpサイズのSARSSBC遺伝子を表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsAに挿入し、pHCE2LB:pgsA−SARSSBCを製作した(図3C)。製作された表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSBCを用い、グラム陽性細菌である乳酸菌を形質転換させた後、乳酸菌内のpHCE2LB:pgsA−SARSSBCプラスミドの存在を確認した。
【0051】
実施例5:表面発現用転換ベクターpHCE2LB:pgsA:SARSNBの構築
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子(pgsBCA)のうちpgsAを用い、SARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質内の抗原性部位SARSNBを表面発現可能なベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNBを構築した。
【0052】
まず、前記実施例3の方法と同様にしてpHCE2LB:pgsA表面発現用ベクターを用意した後、前記実施例2において合成されたSARSNB抗原遺伝子を制限酵素BamHIとKpnIに切断して用意した表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsAのポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子pgsAのC−末端部位に翻訳コドンを合わせて連結し、転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNBを製作した(図4A)。製作された表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNBを用いてグラム陽性細菌である乳酸菌を形質転換させた後、乳酸菌内のpHCE2LB:pgsA−SARSNBプラスミドの存在を確認した。
【0053】
実施例6:表面発現用転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNの構築
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質の遺伝子(pgsBCA)のうちpgsAを用い、SARSコロナウイルスのヌクレオカプシド蛋白質内の抗原性部位SARSNを表面発現可能なベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNを構築した。
【0054】
まず、前記実施例3の方法と同様にしてpHCE2LB:pgsA表面発現用ベクターを用意した後、前記実施例2におけるSARSコロナウイルスのSARSヌクレオカプシドcDNAクローンを鋳型として2〜305のアミノ酸部位をコードする遺伝子をPCRにより増幅させて得られた912bpサイズの遺伝子SARSNを表面発現ベクターpHCE2LB:pgsAに挿入してpHCE2LB:pgsA−SARSNを製作した(図4B)。製作された表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNを用いてグラム陽性細菌である乳酸菌に形質転換させた後、乳酸菌内のpHCE2LB:pgsA−SARSNプラスミドの存在を確認した。
【0055】
実施例7:SARSウイルススパイク抗原蛋白質の乳酸菌の表面発現の確認
前記表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE2LB:pgsA−SARSSBCによりそれぞれ乳酸菌を形質転換させた後、それぞれの抗原蛋白質の発現を調べてみた。
【0056】
ポリ−γ−グルタミン酸を合成する遺伝子pgsAのC末端とそれぞれ融合されたSARSウイルスのスパイク抗原内の抗原性部位の発現を、pHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE2LB:pgsA−SARSSBCで、形質転換することにより誘導し、形質転換された乳酸菌カゼイをMRS培地(Lactobacillus MRS,Becton Dickinsonand Company Sparks,USA)、37℃で静置培養、増殖させた。
【0057】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びpgsAに対する特異抗体を用いたウェスタン免疫ブロットを行い、前記それぞれのスパイク抗原発現を確認した。具体的に、発現が誘導された乳酸菌カゼイの全細胞を同じ細胞濃度で得た蛋白質に変性して試料を用意し、これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した後、分画された蛋白質をPVDFメンブレン(ポリビニリデン−ジフルオリドメンブレン;Bio−Rad)メンブレンに転写した。蛋白質が移されたPVDFメンブレンをブロッキング緩衝溶液(50mMトリス塩酸、5%スキムミルク、pH8.0)で1時間振ってブロッキングさせた後、pgsAに対するウサギ由来のポリクローン1次抗体をブロッキング緩衝溶液に1000倍希釈して12時間反応させた。
【0058】
反応が終わったメンブレンは緩衝溶液で洗浄し、ウサギに対するビオチン結合2次抗体をブロッキング緩衝溶液に1000倍希釈して4時間反応させた。反応が終わったメンブレンは緩衝溶液で洗浄し、アビジン・ビオチン(avidin−biotin)試薬を1時間反応させて再洗浄した。洗浄されたメンブレンに基質と発色試薬としてHとDAB溶液を加えて発色させ、pgsAに対する特異抗体と前記融合蛋白質との間の特異的な結合を確認した(図5)。図5Aにおいて、レーン1は、形質転換されていない宿主細胞である乳酸菌カゼイであり、レーン2,3及び4は形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSSA/乳酸菌カゼイである。図5Bにおいて、レーン1は形質転換されていない宿主細胞である乳酸菌カゼイであり、レーン2,3,4,5及び6は形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSSC/乳酸菌カゼイである。図5Cにおいて、レーン1は形質転換されていない宿主細胞である乳酸菌カゼイであり、レーン2は形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSSBC/乳酸菌カゼイである。
【0059】
図5に示すように、それぞれの乳酸菌の全細胞から、特異融合蛋白質[約54kDaのpgsA−SARSSA(図5A)、約51kDaのpgsA−SARSSC(図5B)及び約78kDaのpgsA−SARSSBC(図5C)]を確認することができた。
【0060】
また、pHCE2LB:pgsA−SARSSAとpHCE2LB:pgsA−SARS:SBCの表面発現ベクターにより形質転換された乳酸菌において、pgsAによりそれぞれの抗原蛋白質が乳酸菌の表面に発現されているかどうかを確認するために、それぞれのベクターにより形質転換された乳酸菌を超遠心分離機を用いた細胞分画法により細胞壁と細胞質に分画した後、それぞれの融合蛋白質の位置をpgsAに対する特異抗体を用いたウェスタン免疫ブロット法により確認した。
【0061】
具体的に、上記の方法により融合蛋白質の表面発現が誘導された乳酸菌を形質転換されていない乳酸菌と同じ細胞濃度になるように集菌し、細胞をTES緩衝溶液(10mMのトリス−HCl、pH8.0,1mMのEDTA、25%スクロース)で数回洗浄した後、5mg/mLのリゾチーム、1mMのPMSF、そして1mMのEDTAが含まれた蒸溜水で浮遊させ、−60℃と常温で凍結融解を数回繰り返した後、DNase(0.5mg/mL)とRNase(0.5mg/mL)を加え、超音波処理して細胞を破壊した。次いで、細胞破砕液を4℃、20分間10,000×g遠心分離して破壊されていない全乳酸菌(ペレット;全細胞分画)と細胞破片(上澄み液)を分離し、分離された細胞破片を4℃、1時間21,000×gで遠心分離して乳酸菌の細胞質蛋白質を含む上澄液(可溶分画)とペレットを得た。前記得られたペレットを1%SDSを含むTE溶液(10mMトリス−HCl,pH8.0,1mのMEDTA,pH7.4)に浮遊させ、乳酸菌の細胞壁蛋白質(細胞壁の分画)を得た。
【0062】
それぞれの分画に対し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びpgsA抗原に対する抗体を用いたウェスタン免疫ブロットを行い、それぞれの乳酸菌分画のうちpgsAと融合されたSARSウイルスのスパイク抗原が細胞壁に位置していることを確認した(図6)。図6Aにおいて、レーン1は、形質転換されていない乳酸菌カゼイであり、レーン2は、形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSSA/乳酸菌カゼイの全細胞であり、レーン3及び4はそれぞれ、pHCE2LB:pgsA−SARSSAにより形質転換された菌株の可溶分画及び細胞壁の分画である。図6Bにおいて、レーン1は、形質転換されていない乳酸菌カゼイであり、レーン2は、形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSSBC/乳酸菌カゼイの全細胞であり、レーン3及び4はそれぞれ、pHCE2LB:pgsA−SARSSBCにより形質転換された菌株の可溶分画及び細胞壁の分画である。
【0063】
図6に示すように、乳酸菌の全細胞及び細胞壁の分画により、約54KdaのpgsAと融合されたSARSSA蛋白質、及び約78kDaのpgsAと融合されたSARSSBC蛋白質を確認することができた。この結果から、pgsAと融合されたそれぞれのSARS抗原の蛋白質が発現され、pgsAにより乳酸菌の表面へ移動して位置するということを確認することができた。
【0064】
また、SARSウイルスのスパイク抗原の抗原基の発現がポリ−γ−グルタミン酸合成蛋白質pgsAのC末端との融合により乳酸菌の表面に発現されることを蛍光活性細胞選別測定方法(Fluorescence−activating cell sorting(FACS)flow cytometry)で確認した。
【0065】
免疫蛍光染色のために発現を誘導させた乳酸菌を同じ細胞濃度になるように集菌し、細胞を緩衝溶液(PBSバッファ、pH7.4)で数回洗浄した後、1%の牛血清アルブミンを含有する緩衝溶液1mLに浮遊させてSARSウイルスのスパイク抗原に対するマウス由来のポリクローナル1次抗体を1000倍希釈し、4℃で12時間反応させた。反応が終わった細胞は緩衝溶液で数回洗浄し、1%の牛血清アルブミンを含有する緩衝溶液1mLに浮遊させた後、ビオチンが結合されている2次抗体を1000倍希釈して4℃で3時間反応させた。また、反応が終わった細胞は緩衝溶液で数回洗浄し、1%の牛血清アルブミンを含む緩衝溶液0.1mLに浮遊させた後、ビオチンに特異的なストレプトアビジン−R−フィコエリトリン(streptavidin−R−phycoerythrin)染色試薬を1000倍希釈して結合させた。
【0066】
反応が終わった乳酸菌を数回洗浄し、蛍光活性細胞選別測定方法により測定した結果、形質転換されていない乳酸菌と比較し、SARSウイルスのSBCスパイク抗原蛋白質が乳酸菌の表面に発現されていることを確認した(図6C)。図6Cにおいて、灰色は形質転換されていない乳酸菌カゼイ由来のものであり、白色は、形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSSBC/乳酸菌カゼイ由来のものである。図6Cに示すように、形質転換されていない乳酸菌カゼイでは蛍光発現が検出されなかったが、pHCE2LB:pgsA−SARSSBCベクターにより形質転換された乳酸菌では、SBCスパイク抗原蛋白質が表面発現されていることを明らかに確認することができた。
【0067】
実施例8:SARSウイルスヌクレオカプシド抗原蛋白質の乳酸菌の表面発現の確認
前記表面発現用ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSNBとpHCE2LB:pgsA−SARSNによりそれぞれ乳酸菌を形質転換させた後、それぞれの抗原蛋白質発現を調べてみた。
【0068】
ポリ−γ−グルタミン酸を合成する遺伝子pgsAのC末端とそれぞれ融合されたSARSウイルスのヌクレオカプシド抗原の発現を、pHCE2LB:pgsA−SARSNB及びpHCE2LB:pgsA−SARSNで形質転換することにより誘導し、それぞれ形質転換された乳酸菌カゼイをMRS培地を使用し、37℃で静置培養して増殖させた。
【0069】
pHCE2LB:pgsA−SARSNBとpHCE2LB:pgsA−SARS N表面発現ベクターにより形質転換された乳酸菌において、pgsAによりそれぞれの抗原蛋白質が乳酸菌の表面に発現されているかどうかを確認するために、前記実施例7の方法と同様な方法であるそれぞれのベクターにより形質転換された乳酸菌を超音波処理を用いた細胞分画法により細胞壁と細胞質に分画した後、それぞれの融合蛋白質の位置をpgsAに対する特異抗体をもってウェスタンブロットを行うことにより確認した。
【0070】
その結果、それぞれの分画に対し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びpgsA抗原に対する抗体を用いたウェスタン免疫ブロットを行い、それぞれの乳酸菌分画のうちpgsAと融合されたSARSウイルスのヌクレオ抗原が細胞壁に位置していることを確認した(図7)。図7Aにおいて、レーン1は形質転換されていない乳酸菌カゼイであり、レーン2は形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSNB/乳酸菌カゼイの全細胞であり、レーン3及び4はそれぞれpHCE2LB:pgsA−SARSNBにより形質転換された菌株の可溶分画及び細胞壁の分画である。図7Bにおいて、レーン1は形質転換されていない乳酸菌カゼイであり、レーン2は、形質転換されたpHCE2LB:pgsA−SARSN/乳酸菌カゼイの全細胞であり、レーン3及び4はそれぞれ、pHCE2LB:pgsA−SARSNにより形質転換された菌株の可溶分画及び細胞壁の分画である。
【0071】
図7に示すように、乳酸菌の全細胞と細胞壁の分画に、約57kDaのpgsAと融合されたSARSNB蛋白質及び約75kDaのpgsAと融合されたSARSN蛋白質を確認することができた。この結果から、pgsAと融合されたそれぞれのSARS抗原蛋白質が発現されてpgsAにより乳酸菌の表面へ移動して位置していることを確認することができた。
【0072】
実施例9:SARSウイルスのスパイク抗原蛋白質及びヌクレオカプシド抗原蛋白質が表面発現された乳酸菌のワクチン効果の分析
上記の実施例において得られた表面発現用転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE2LB:pgsA−SARSNBによりグラム陽性菌である乳酸菌カゼイを形質転換させ、前記抗原を乳酸菌カゼイにより表面発現を誘導した後、ポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜蛋白質pgsAと融合されたSARSウイルスのスパイク抗原蛋白質及びヌクレオカプシド抗原蛋白質の抗原性をマウスモデルを用いて調べてみた。
【0073】
具体的に、本発明の表面発現転換ベクターpHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE2LB:pgsA−SARSNBを乳酸菌カゼイに形質転換させ、それぞれ同じ細菌濃度になるように集菌した細胞を緩衝溶液(PBSバッファ、pH7.4)で数回洗浄を行い、抗原が表面発現された乳酸菌5×10菌を4〜6週齢のBALB/cマウスの口腔に1日置きに3回、そして1週後さらに1日置きに3回、そして同様に、2週後に1日置きに3回投与した後、さらに4週後に1日置きに3回投与した。また、抗原が表面発現された乳酸菌1×10菌をマウスの鼻腔に1日置きに3回、そして1週後にさらに1日置きに3回、そして2週後には2日置きに2回投与した後、さらに4週後に2日置きに2回投与した。それぞれの経口と鼻腔投与後、2週置きにそれぞれの(1)マウス群血清を取って血清内のスパイク抗原蛋白質及びヌクレオカプシド抗原蛋白質に対するIgG抗体価、及び(2)マウスの腸の内部を洗った浮遊液内及び気管支と肺胞の内部を洗った浮遊液内におけるスパイク抗原蛋白質及びヌクレオカプシド抗原蛋白質に対するIgA抗体価をELISA方法により抗原に対する抗体価を測定した。
【0074】
4〜6週齢のBALB/cマウス10頭を1群として定め、SARSSA及びSARSSCをそれぞれ発現する乳酸菌を混合して1群とし、SARSNBを発現する乳酸菌を1群とし、SARSSA,SARSSC、そしてSARSNBをそれぞれ発現する乳酸菌を混合して1群とした。これらの3群をさらに経口投与群と鼻腔投与群に分離し、対照群を含んで合計8群をもって実験を行った。
【0075】
図8は、マウス血清内のSARSウイルスのスパイク抗原蛋白質であるSA及びSC抗原に対するIgG抗体価を示すものである。図9は、腸の内部を洗った浮遊液及び気管支と肺胞の内部を洗った浮遊液内におけるスパイク抗原蛋白質であるSA及びSC抗原に対するIgA抗体価をELISA法により示すものであり、Aは、経口投与群におけるIgA抗体価を示し、Bは、鼻腔投与群におけるIgA抗体価を示す。
【0076】
また、図10は、マウス血清内のSARSウイルスのヌクレオカプシド抗原蛋白質であるNB抗原に対するIgG抗体価を示すものである。図11は、腸の内部を洗った浮遊液及び気管支と肺胞の内部を洗った浮遊液におけるヌクレオカプシド抗原蛋白質であるNB抗原に対するIgA抗体価をELISA法により示すものであり、Aは、経口投与群におけるIgA抗体価を示し、Bは、鼻腔投与群におけるIgA抗体価を示す。
【0077】
図8ないし図11に示すように、pHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSC及びpHCE2LB:pgsA−SARSNBにより形質転換させた乳酸菌をそれぞれあるいは混合して投与したBALB/cマウス群の血清、腸内洗浄液及び気管支、肺洗浄液においてSARSウイルスのスパイク及びヌクレオカプシド抗原蛋白質の抗原基に対するIgG抗体価及びIgA抗体価が対照群に比べてかなり高いということを確認することができた。
【0078】
これより、本発明に係るSARSウイルスのスパイク及びヌクレオカプシド抗原蛋白質の抗原基が表面発現された微生物は、生ワクチンとして效果的に作用できたということが分かった。
【0079】
以上、本発明の特定の部分について詳細に記述したが、前期実施態様により本発明の範囲が制限されるものではなく、添付された請求項によって定義される筈である。この分野における通常の知識を有する者にとって、本発明の範囲及び思想から逸脱することのない実施態様の変更又は改良ができることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上述したように、本発明に係るSARS誘発コロナウイルスの抗原蛋白質を表面発現する形質転換微生物及び前記微生物から抽出・精製された抗原蛋白質は、SARSの治療用または予防用ワクチンとして用いることができる。特に、本発明に係るSARSコロナウイルス抗原を発現する組換え菌株は、経口ワクチンを経済的に生産することができるという長所を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsB,pgsC及びpgsAのいずれか1種または2種以上、及びSARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質またはヌクレオカプシド抗原蛋白質をコードする遺伝子と、を含む表面発現ベクター。
【請求項2】
前記スパイク抗原蛋白質は、SARSSA,SARSSB,SARSSC,SARSSDまたはSARSSBCである請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記ヌクレオカプシド抗原蛋白質は、SARSNA,SARSNBまたはSARSNである請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
pHCE2LB:pgsA−SARSSA,pHCE2LB:pgsA−SARSSCまたはpHCE2LB:pgsA−SARSSBCである請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項5】
pHCE2LB:pgsA−SARSNBまたはpHCE2LB:pgsA−SARSNである請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発現ベクターにより形質転換された微生物。
【請求項7】
前記微生物は、大腸菌、チフス菌、ネズミチフス菌、ビブリオコレラ、ウシ型結核菌、赤痢菌、バチルス、乳酸菌、ブドウ状球菌、リステリア菌及び連鎖球菌よりなる群から選ばれる請求項6に記載の形質転換された微生物。
【請求項8】
請求項6に記載の微生物を培養することを特徴とするSARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質またはヌクレオカプシド抗原蛋白質の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法により得られる抗原蛋白質を有効性分として含有するSARSウイルス予防用ワクチン。
【請求項10】
前記抗原蛋白質は、微生物の表面に発現された形であるか、粗抽出された形であるか、または精製された形である請求項9に記載のワクチン。
【請求項11】
経口用投与または食用摂取が可能である請求項9に記載のワクチン。
【請求項12】
皮下または腹腔注射用である請求項9に記載のワクチン。
【請求項13】
鼻腔投与用である請求項9に記載のワクチン。
【請求項14】
前記微生物は、乳酸菌である請求項8記載の方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法により得られ、SARSコロナウイルスのスパイク抗原蛋白質またはヌクレオカプシド抗原蛋白質が表面に発現された乳酸菌。
【請求項16】
請求項15に記載の乳酸菌、前記乳酸菌から抽出された抗原蛋白質または前記乳酸菌から精製された抗原蛋白質を有効性分として含有するSARS予防用ワクチン。
【請求項17】
経口用投与または食用摂取が可能である請求項16記載のワクチン。
【請求項18】
皮下または腹腔注射用である請求項16記載のワクチン。
【請求項19】
鼻腔投与用である請求項16記載のワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−526403(P2006−526403A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508539(P2006−508539)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001341
【国際公開番号】WO2004/108937
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505448833)バイオリーダーズ コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】BIOLEADERS CORPORATION
【出願人】(505448844)
【氏名又は名称原語表記】M. D. LAB
【出願人】(505449520)株式会社 ジェノラック BL (5)
【出願人】(505448855)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (3)
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
【Fターム(参考)】