SAW素子、発振器、電子機器及びSAW素子の製造方法
【課題】発振器における小型化の推進、生産性の向上を図ることが可能で、周波数可変幅のばらつきを抑制できるSAW素子、このSAW素子を備えた発振器及び電子機器の提供。
【解決手段】SAW素子1は、水晶基板10と、水晶基板10の主面11に形成されたIDT電極20と、水晶基板10の主面11に形成され、IDT電極20と隣り合う反射器30,31と、水晶基板10の主面11に形成されると共に、一端がIDT電極20と接続されたスパイラルインダクター40と、を備え、スパイラルインダクター40は、水晶基板10に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることを特徴とする。
【解決手段】SAW素子1は、水晶基板10と、水晶基板10の主面11に形成されたIDT電極20と、水晶基板10の主面11に形成され、IDT電極20と隣り合う反射器30,31と、水晶基板10の主面11に形成されると共に、一端がIDT電極20と接続されたスパイラルインダクター40と、を備え、スパイラルインダクター40は、水晶基板10に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAW素子、このSAW素子を備えた発振器、電子機器及びSAW素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、共振周波数が互いに異なる第1圧電素子、第2圧電素子と、この2つの圧電素子を選択的に切り替えるスイッチ手段と、スイッチ手段を介して圧電素子のいずれかと接続される発振手段と、圧電素子のそれぞれの共振周波数に適する周波数調整手段とを備えた2周波切替式圧電発振器(以下、発振器という)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−356757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発振器は、圧電素子のそれぞれの共振周波数に適する周波数調整手段としての周波数調整回路を、外付け部品であるコイル、コンデンサーなどから構成している。
このことから、上記発振器は、更なる小型化の推進に際して、外付け部品のコイル、コンデンサーなどが阻害要因となる虞がある。
また、上記発振器は、外付け部品であるコイル、コンデンサーなどの実装に要する工数が掛かることによって、これらの外付け部品がない場合と比較して、生産性が低下する虞がある。
また、上記発振器は、外付け部品のコイル(伸長コイル)のインダクタンスのばらつきや、コンデンサーの容量のばらつきによって、圧電素子の周波数調整幅(周波数可変幅)がばらつく虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるSAW素子は、圧電基板と、前記圧電基板の主面に形成されたIDT電極と、前記圧電基板の前記主面に形成され、前記IDT電極と隣り合う反射器と、前記圧電基板の前記主面に形成されると共に、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターと、を備え、前記スパイラルインダクターは、前記圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることを特徴とする。
【0007】
これによれば、SAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)素子(圧電素子に相当)は、圧電基板の主面に形成されたIDT(Interdigital Transducer)電極(交叉指状電極)と、反射器と、一端がIDT電極と接続されたスパイラルインダクターと、を備え、スパイラルインダクターは、圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有している。
SAW素子は、スパイラルインダクターが圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることによって、例えば、従来の発振器で必要だった周波数調整回路を構成するコイル、コンデンサーなどの外付け部品が不要となる。
この結果、SAW素子は、SAW素子を用いた発振器の小型化に貢献することができる。
【0008】
また、SAW素子は、従来の発振器で必要だった、コイル、コンデンサーなどの外付け部品が不要となることから、これらの部品の実装工程が不要となる。
この結果、SAW素子は、SAW素子を用いた発振器の生産性の向上に貢献することができる。
【0009】
加えて、SAW素子は、IDT電極とスパイラルインダクターとが圧電基板のおなじ主面に形成されていることから、例えば、IDT電極の形状のばらつきとスパイラルインダクターの形状のばらつきとが同傾向となる。
これにより、SAW素子は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極の形状ばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクターの形状ばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
この結果、SAW素子は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかるSAW素子において、前記圧電基板は、水晶基板であることが好ましい。
【0011】
これによれば、SAW素子は、圧電基板が水晶基板であることから、水晶の特性により周囲の温度変化に伴う弾性表面波の周波数の変動が少なく、他の圧電材料と比較して、周波数の温度特性を向上させることができる。
【0012】
[適用例3]本適用例にかかる発振器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子と、前記SAW素子を発振させる発振回路と、外部から印加される電圧によって前記SAW素子の周波数を制御する可変回路と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これによれば、発振器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子と、SAW素子を発振させる発振回路と、外部から印加される電圧によってSAW素子の周波数を制御する可変回路と、を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する発振器を提供することができる。
【0014】
[適用例4]本適用例にかかる電子機器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子を備えたことを特徴とする。
【0015】
これによれば、電子機器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0016】
[適用例5]本適用例にかかるSAW素子の製造方法は、圧電基板を準備する工程と、前記圧電基板の主面に、IDT電極と、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターとを、同一マスクを用いて、一括して形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
これによれば、SAW素子の製造方法は、圧電基板の主面に、IDT電極とスパイラルインダクターとを、同一マスクを用いて、一括して形成する工程を有することから、IDT電極の形状ばらつきとスパイラルインダクターの形状ばらつきとが同傾向となる。
このことから、SAW素子の製造方法は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極の形状ばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクターの形状ばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
この結果、SAW素子の製造方法は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のSAW素子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線での拡大断面図。
【図2】図1のSAW素子の等価回路図。
【図3】SAW素子の製造方法における主要工程を示すフローチャート。
【図4】SAW素子の製造方法について主要工程順に説明する断面図。
【図5】伸長コイルのインダクタンスと周波数可変幅との関係を示したグラフ。
【図6】スパイラルインダクターのパターン幅のばらつき及びIDT電極の電極幅のばらつきと、周波数可変幅との関係を示したグラフ。
【図7】第1実施形態の変形例1のSAW素子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は、(a)のSAW素子の等価回路図。
【図8】第1実施形態の変形例2のSAW素子の概略構成を示す模式平面図。
【図9】第1実施形態の変形例3のSAW素子の概略構成を示す模式平面図。
【図10】第2実施形態の発振器の概略構成を示す回路図。
【図11】第2実施形態の変形例の発振器の概略構成を示す回路図。
【図12】第3実施形態の携帯電話を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
最初に、SAW素子の一例について説明する。
図1は、第1実施形態のSAW素子の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線での拡大断面図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。図2は、図1のSAW素子の等価回路図である。
【0021】
図1に示すように、SAW素子1は、圧電基板としての水晶基板10と、水晶基板10の主面11に形成されたIDT電極20と、水晶基板10の主面11に形成され、IDT電極20と隣り合う反射器30,31と、水晶基板10の主面11に形成されると共に、一端がIDT電極20と接続されたスパイラルインダクター40と、を備えている。
【0022】
水晶基板10は、水晶の原石などから所定の角度で切り出され、所定の厚みに研磨された水晶ウエハーまたは水晶の個片を用いて形成されている。
IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40は、水晶基板10の主面(切り出し面に沿った面)11に導体金属を蒸着またはスパッタなどにより薄膜状に形成した後に、フォトリソグラフィ技術などを用いて形成されている。
なお、導体金属には、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が用いられているが、他にも金、銀、銅、タンタル、タングステンなどの金属や、それらのいずれかを主成分とした合金を用いることが可能である。
【0023】
IDT電極20は、互いに噛み合う一対の櫛歯状(交叉指状)の電極指20a,20bからなる。電極指20a,20bは、それぞれ一端側が共通接続されていることにより、櫛歯状を成している。
電極指20aから引き出された配線は、水晶基板10の端部に設けられた接続端子(ボンディングパッド)12と接続されている。
また、電極指20bから引き出された配線は、スパイラルインダクター40の一端と接続されている。スパイラルインダクター40の他端は、スパイラルインダクター40の略中央部に設けられた接続端子(ボンディングパッド)13と接続されている。
【0024】
反射器30,31は、IDT電極20の各電極指20a,20bが延びる方向(紙面上下方向)と交差する方向(紙面左右方向)において、IDT電極20を挟むようにしてIDT電極20の両側に配置されている。
反射器30,31は、互いに略平行な複数の電極指30a,31aを有し、各電極指30a,31aの両端が共通接続されることにより、柵状に形成されている。
【0025】
スパイラルインダクター40は、導体金属を用いて帯状に延びる導体パターンを、平面視において、90度ずつ屈曲させて角型の平面コイル状に形成したものである。
スパイラルインダクター40は、伸長コイルとして機能し、水晶基板10の発振(共振)時に必要な周波数可変感度(周波数可変幅)を得るための定数(インダクタンス)を有している。
【0026】
ここで、SAW素子1の製造方法の概略について説明する。
図3は、SAW素子の製造方法における主要工程を示すフローチャートである。
図4は、SAW素子の製造方法について主要工程順に説明する断面図である。
【0027】
図3に示すように、SAW素子の製造方法は、水晶基板準備工程S1と、成膜工程S2と、レジスト塗布工程S3と、露光工程S4と、エッチング工程S5と、レジスト剥離工程S6と、を有している。
【0028】
[水晶基板準備工程S1]
まず、図4(a)に示すように、水晶の原石などから所定の角度で切り出され、所定の厚みに研磨された水晶基板10を準備する。この際、水晶基板10は複数個取りのウエハー状態であってもよいし、個片状態であってもよい。
【0029】
[成膜工程S2]
ついで、図4(b)に示すように、水晶基板10の主面11に導体金属を用いて蒸着またはスパッタなどにより薄膜状の金属被膜100を成膜する。
なお、導体金属には、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が用いられているが、金、銀、銅、タンタル、タングステンなどの金属や、それらのいずれかを主成分とした合金を用いることも可能である。
【0030】
[レジスト塗布工程S3]
ついで、図4(c)に示すように、金属被膜100上に感光性有機物質を含んで成るレジスト200をスピンコート法、スプレー法などを用いて塗布する。
【0031】
[露光工程S4]
ついで、図4(d)に示すように、マスク(遮光マスク)300をレジスト200上にセットする。
マスク300には、ガラス、石英などが用いられ、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40の形状に合わせて露光パターンが形成された透光部301が設けられている。マスク300の透光部301以外の部分には、遮光処理が施されている。
ついで、マスク300の上方から紫外線などの短波長の光を照射して、マスク300の透光部301を介してレジスト200を露光して硬化させ、レジスト200にIDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40の形状を一括してパターニングする。
ついで、現像、リンスによってレジスト200の非露光部分(不要部分)を除去する。レジスト200の露光された部分が残る(ネガ型の場合)ことによって、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40のパターニングされた形状が現れる。
【0032】
[エッチング工程S5]
ついで、図4(e)に示すように、弗酸または弗酸水溶液を用いたウエットエッチングにより、金属被膜100のレジスト200に覆われていない露出部分(不要部分)を除去し、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40を一括して形成する。
なお、エッチングには、反応性ガスや反応性イオンによるドライエッチングを用いてもよい。
【0033】
[レジスト剥離工程S6]
ついで、図4(f)に示すように、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40上のレジスト200を、剥離液などを用いて剥離することによりSAW素子1が得られる。
【0034】
上述したように、IDT電極20とスパイラルインダクター40とは、同一のマスク300を用いた露光によりレジスト200に一括してパターニングされ、パターニングされたレジスト200の形状に基づいた金属被膜100のエッチングによって一括して形成される。
このことから、IDT電極20の形状のばらつきと、スパイラルインダクター40の形状のばらつきとは、同傾向となる。
つまり、SAW素子1の製造方法においては、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが広くなれば、IDT電極20の電極幅W1も広くなり、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが狭くなれば、IDT電極20の電極幅W1も狭くなるということがいえる。
【0035】
ここで、SAW素子1を用いた周波数可変型の発振器について説明する。なお、この発振器の構成の詳細については後述する。
式(1)は、周波数可変型の発振器における周波数可変に関する理論式である。
【0036】
【数1】
周波数可変型の発振器(以下、単に発振器ともいう)は、伸長コイルを入れると負荷容量(CL)が変化して、周波数可変幅を大きくすることが可能となる。
従来の発振器では、SAW素子(圧電素子)とは別に、伸長コイルとして外付けのコイル(チップインダクター)を用いていた。
一般的に、チップインダクターは、±5%程度の個体差ばらつきを有している。図5は、伸長コイルのインダクタンス(nH)と周波数可変幅(ppm)との関係を示したグラフである。なお、図5の縦軸は、周波数可変幅を表し、横軸は伸長コイルのインダクタンスを表す。
【0037】
図5に示すように、従来の発振器は、伸長コイルのインダクタンスが±5%ばらつくと、例えば、基準値(平均値)が300nHで、285nH〜315nHの範囲でばらつくと、周波数可変幅が約67ppm〜約75ppmの範囲でばらついてしまう。
そして、従来の発振器は、このばらつきにSAW素子の容量(C1:等価直列容量、C0:並列容量)のばらつきが上乗せされて周波数可変幅が更にばらつく虞がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、スパイラルインダクター40を、伸長コイルとして水晶基板10の主面11にIDT電極20と一緒に形成することにより、この周波数可変幅のばらつきを抑制しようとするものである。
【0039】
式(2)は、伸長コイル(スパイラルインダクター40)のインダクタンス(定数)のばらつきの理論式である。
【0040】
【数2】
ここで、A…スパイラルインダクター40の面積、W…スパイラルインダクター40のパターン幅、S…スパイラルインダクター40のパターン間ギャップ、r…W/Sである(図1(b)参照)。
式(3)は、IDT電極20の電極幅W1のばらつきに起因するC0のばらつきの理論式である。なお、C1は同じ比率で増減する。
【0041】
【数3】
図6は、式(1)〜式(3)に基づいて、スパイラルインダクターのパターン幅Wのばらつき(%)及びIDT電極の電極幅W1のばらつき(%)と、周波数可変幅(ppm)との関係を示したグラフである。
なお、図6の縦軸は、周波数可変幅を表し、横軸はスパイラルインダクターのパターン幅Wのばらつき及びIDT電極の電極幅W1のばらつきを表す。
なお、スパイラルインダクター40のパターン幅W及びIDT電極20の電極幅W1のばらつき範囲は、0±10%まで設定してある。
【0042】
図6に示すように、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが一定で、IDT電極20の電極幅W1のみがばらつく場合は、破線で示すように、IDT電極20の電極幅W1が広がれば周波数可変幅も広がる比例関係にある。
一方、IDT電極20の電極幅W1が一定で、スパイラルインダクター40のパターン幅Wのみがばらつく場合は、一点鎖線で示すように、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが広がれば周波数可変幅が狭まる反比例関係にある。
そして、スパイラルインダクター40のパターン幅WとIDT電極20の電極幅W1とが同傾向にばらついた場合(例えば、パターン幅Wが広くなれば、電極幅W1も広くなるなど)は、実線で示すように、上記2つの関係が相殺されて周波数可変幅のばらつきが抑制される。
例えば、スパイラルインダクターのパターン幅Wのばらつき及びIDT電極の電極幅W1のばらつきが同傾向で±5%の場合には、周波数可変幅が約69ppm〜約73ppmの範囲のばらつきに収まる。
【0043】
ここで、本実施形態のSAW素子1は、上述したようにIDT電極20とスパイラルインダクター40とが、同一のマスク300を用いて、一括して形成されることから、IDT電極20の電極幅W1のばらつきとスパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきとが同傾向となる。
このことから、SAW素子1は、図6の実線で示したパターンに該当し、SAW素子1を用いた周波数可変型の発振器において、周波数可変幅のばらつきを従来構成より抑制できるといえる。
【0044】
上述したように、第1実施形態のSAW素子1は、水晶基板10の主面11に形成されたIDT電極20と、反射器30,31と、一端がIDT電極20と接続されたスパイラルインダクター40と、を備えている。そして、SAW素子1は、伸長コイルとしてのスパイラルインダクター40が、水晶基板10に必要な周波数可変感度(周波数可変幅)を得るための定数(インダクタンス)を有している。
このことから、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器において、従来の発振器で必要だった周波数調整回路を構成するコイル(伸長コイル)、コンデンサーなどの外付け部品が不要となる。
この結果、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器の小型化に貢献することができる。
【0045】
また、SAW素子1は、従来の発振器で必要だった、コイル、コンデンサーなどの外付け部品が不要となることから、これらの部品の実装工程が不要となる。
この結果、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器の生産性の向上に貢献することができる。
【0046】
加えて、SAW素子1は、IDT電極20とスパイラルインダクター40とが、共に水晶基板10の主面11に形成されていることから、IDT電極20の電極幅W1のばらつきとスパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきとが同傾向となる。
これにより、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極20の電極幅W1のばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
この結果、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【0047】
また、SAW素子1は、圧電基板として水晶基板10を用いていることから、水晶の特性により周囲の温度変化に伴う弾性表面波の周波数の変動が少なく、他の圧電材料と比較して、周波数の温度特性を向上させることができる。
【0048】
また、SAW素子1の製造方法は、水晶基板10の主面11に、IDT電極20とスパイラルインダクター40とを、同一マスク300を用いて、一括して形成する工程(露光工程S4及びエッチング工程S5)を有することから、IDT電極20の電極幅W1のばらつきとスパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきとが同傾向となる。
この結果、SAW素子1の製造方法は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極20の電極幅W1のばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
これにより、SAW素子1の製造方法は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【0049】
(変形例1)
次に、第1実施形態の変形例1について説明する。
図7は、第1実施形態の変形例1のSAW素子の概略構成を示す模式図である。図7(a)は、平面図であり、図7(b)は、図7(a)のSAW素子の等価回路図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
図7に示すように、SAW素子2は、スパイラルインダクター40に加えて、スパイラルインダクター140が、反射器30に隣り合うように設けられている。スパイラルインダクター140の一端は、IDT電極20の電極指20aから引き出された配線により電極指20aと接続されている。
スパイラルインダクター140の他端は、スパイラルインダクター140の略中央部に設けられた接続端子(ボンディングパッド)12と接続されている。
【0051】
上述したように、変形例1のSAW素子2は、スパイラルインダクター40に加えて、スパイラルインダクター140を備えていることから、伸長コイルが2つとなり第1実施形態と比較して、負荷容量(CL)を大幅に変えることができる。
【0052】
(変形例2)
次に、第1実施形態の変形例2について説明する。
図8は、第1実施形態の変形例2のSAW素子の概略構成を示す模式平面図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0053】
図8に示すように、SAW素子3は、スパイラルインダクター40が反射器31の隣から、IDT電極20の電極指20bの共通接続部分の近傍に移動して設けられている。また、SAW素子3は、接続端子12がIDT電極20の電極指20aの共通接続部分の近傍に移動して設けられている。
これにより、変形例2のSAW素子3は、長手方向(反射器30と反射器31とを結ぶ方向)のサイズを、第1実施形態と比較して、短くすることができる。
【0054】
また、SAW素子3は、IDT電極20にスパイラルインダクター40及び接続端子12が近接することから、IDT電極20とスパイラルインダクター40及び接続端子12とを接続する配線が、第1実施形態と比較して短くなる。
このことから、SAW素子3は、この配線に関わる浮遊容量(寄生容量)を抑制することができる。
【0055】
(変形例3)
次に、第1実施形態の変形例3について説明する。
図9は、第1実施形態の変形例3のSAW素子の概略構成を示す模式平面図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0056】
図9に示すように、SAW素子4は、変形例2に対してスパイラルインダクター140がIDT電極20の電極指20aの共通接続部分の近傍に追加されている。
そして、SAW素子4は、スパイラルインダクター140の一端が、IDT電極20の電極指20aに接続され、スパイラルインダクター140の他端が、スパイラルインダクター140の略中央部に設けられた接続端子12に接続されている。
これにより、変形例3のSAW素子4は、スパイラルインダクター40に加えて、スパイラルインダクター140を備えていることから、伸長コイルが2つとなり、変形例2と同様の効果を奏しつつ、変形例2に対して負荷容量(CL)を大幅に変えることができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べたSAW素子を備えた発振器の一例について説明する。
図10は、第2実施形態の発振器の概略構成を示す回路図である。
【0058】
図10に示すように、発振器5は、いわゆるコルピッツ発振回路を用いた電圧制御型圧電発振器(電圧制御型水晶発振器、周波数可変型の発振器)であって、共振子(振動子)としてのSAW素子1と、SAW素子1を発振させる発振回路50と、外部から印加される電圧によってSAW素子1の周波数を制御する可変回路60と、を備えている。
【0059】
発振回路50は、共振回路の共振周波数を帰還増幅する発振用トランジスターQ1と、発振用トランジスターQ1のベースと接地(GND)との間に設けられた分割コンデンサーC1,C2と、発振用トランジスターQ1のベースにバイアスを与えるためのバイアス抵抗R2,R3と、発振用トランジスターQ1のエミッターと接地(GND)との間に設けられた負荷抵抗R4と、発振用トランジスターQ1のコレクターと電源電圧(Vcc)との間に設けられた電流制限抵抗R5と、を備えている。
【0060】
可変回路60は、電圧制御端子(Vcont)に接続された高周波阻止抵抗R1と、高周波阻止抵抗R1の他端と接地(GND)との間に設けられた可変容量ダイオードD1とを備えている。
SAW素子1は、一方の接続端子が発振回路50のバイアス抵抗R2とバイアス抵抗R3との接続点に接続され、他方の接続端子が可変回路60の高周波阻止抵抗R1と可変容量ダイオードD1との接続点に接続されている。
発振器5は、発振回路50の発振用トランジスターQ1のコレクターと電流制限抵抗R5との接続点から、直流阻止用コンデンサーC3を介してSAW素子1の発振周波数が出力端子(OUT)から出力される。
【0061】
上述したように、第2実施形態の発振器5は、SAW素子1と、SAW素子1を発振させる発振回路50と、外部から印加される電圧によってSAW素子1の周波数を制御する可変回路60と、を備えたことから、第1実施形態に記載の効果を奏する発振器(例えば、周波数制御時の周波数可変幅のばらつきを抑制することができる発振器)を提供することができる。
なお、発振器5は、SAW素子1に代えて、上記各変形例のSAW素子(2など)を用いることが可能である。
これによれば、発振器5は、上記と同様の効果及び各変形例特有の効果を奏することができる。
【0062】
(変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
図11は、第2実施形態の変形例の発振器の概略構成を示す回路図である。なお、上記第2実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
図11に示すように、発振器6は、互いに異なる周波数のSAW素子を2つ備えた2周波切替式水晶発振器である。
発振器6は、互いに異なる周波数のSAW素子1とSAW素子2と、発振回路50と、可変回路60と、SAW素子1とSAW素子2とを切り替えるスイッチ回路70と、を備えている。
【0064】
スイッチ回路70は、選択制御端子(Select)からの入力により、SAW素子1とSAW素子2とを切り替える構成となっている。
これにより、発振器6は、スイッチ回路70でSAW素子1とSAW素子2とを切り替えることによって、異なる2つの発振周波数を単一の出力端子(OUT)から出力することができる。
【0065】
発振器6は、SAW素子1及びSAW素子2を備えたことから、第1実施形態及び変形例1に記載の効果を奏する発振器(例えば、周波数制御時の周波数可変幅のばらつきを抑制することができる発振器)を提供することができる。
なお、発振器6は、SAW素子1,2に代えて、上記他の変形例のSAW素子(3,4)を用いることが可能である。
これによれば、発振器6は、上記と同様の効果及び他の変形例特有の効果を奏することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べたSAW素子を備えた電子機器としての携帯電話について説明する。
図12は、第3実施形態の携帯電話を示す模式斜視図である。
図12に示す携帯電話700は、上記第1実施形態及び各変形例で述べたSAW素子のいずれか(例えば、SAW素子1)を、基準クロック発振源などとして備え、更に液晶表示装置701、複数の操作ボタン702、受話口703、及び送話口704を備えて構成されている。
【0067】
上述した各SAW素子は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などの基準クロック発振源などとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記第1実施形態及び各変形例で説明した効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0068】
なお、本実施形態の構成は、SAWフィルターにも適用可能である。
また、SAW素子の圧電基板の材料としては、水晶に限定するものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料、または酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料を被膜として備えたシリコンなどの半導体材料であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,2,3,4…SAW素子、5,6…発振器、10…圧電基板としての水晶基板、11…主面、12,13…接続端子、20…IDT電極、20a,20b…電極指、30,31…反射器、30a,31a…電極指、40…スパイラルインダクター、50…発振回路、60…可変回路、70…スイッチ回路、100…金属被膜、140…スパイラルインダクター、200…レジスト、300…マスク、301…透光部、700…携帯電話、701…液晶表示装置、702…操作ボタン、703…受話口、704…送話口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAW素子、このSAW素子を備えた発振器、電子機器及びSAW素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、共振周波数が互いに異なる第1圧電素子、第2圧電素子と、この2つの圧電素子を選択的に切り替えるスイッチ手段と、スイッチ手段を介して圧電素子のいずれかと接続される発振手段と、圧電素子のそれぞれの共振周波数に適する周波数調整手段とを備えた2周波切替式圧電発振器(以下、発振器という)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−356757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発振器は、圧電素子のそれぞれの共振周波数に適する周波数調整手段としての周波数調整回路を、外付け部品であるコイル、コンデンサーなどから構成している。
このことから、上記発振器は、更なる小型化の推進に際して、外付け部品のコイル、コンデンサーなどが阻害要因となる虞がある。
また、上記発振器は、外付け部品であるコイル、コンデンサーなどの実装に要する工数が掛かることによって、これらの外付け部品がない場合と比較して、生産性が低下する虞がある。
また、上記発振器は、外付け部品のコイル(伸長コイル)のインダクタンスのばらつきや、コンデンサーの容量のばらつきによって、圧電素子の周波数調整幅(周波数可変幅)がばらつく虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるSAW素子は、圧電基板と、前記圧電基板の主面に形成されたIDT電極と、前記圧電基板の前記主面に形成され、前記IDT電極と隣り合う反射器と、前記圧電基板の前記主面に形成されると共に、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターと、を備え、前記スパイラルインダクターは、前記圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることを特徴とする。
【0007】
これによれば、SAW(Surface Acoustic Wave:弾性表面波)素子(圧電素子に相当)は、圧電基板の主面に形成されたIDT(Interdigital Transducer)電極(交叉指状電極)と、反射器と、一端がIDT電極と接続されたスパイラルインダクターと、を備え、スパイラルインダクターは、圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有している。
SAW素子は、スパイラルインダクターが圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることによって、例えば、従来の発振器で必要だった周波数調整回路を構成するコイル、コンデンサーなどの外付け部品が不要となる。
この結果、SAW素子は、SAW素子を用いた発振器の小型化に貢献することができる。
【0008】
また、SAW素子は、従来の発振器で必要だった、コイル、コンデンサーなどの外付け部品が不要となることから、これらの部品の実装工程が不要となる。
この結果、SAW素子は、SAW素子を用いた発振器の生産性の向上に貢献することができる。
【0009】
加えて、SAW素子は、IDT電極とスパイラルインダクターとが圧電基板のおなじ主面に形成されていることから、例えば、IDT電極の形状のばらつきとスパイラルインダクターの形状のばらつきとが同傾向となる。
これにより、SAW素子は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極の形状ばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクターの形状ばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
この結果、SAW素子は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかるSAW素子において、前記圧電基板は、水晶基板であることが好ましい。
【0011】
これによれば、SAW素子は、圧電基板が水晶基板であることから、水晶の特性により周囲の温度変化に伴う弾性表面波の周波数の変動が少なく、他の圧電材料と比較して、周波数の温度特性を向上させることができる。
【0012】
[適用例3]本適用例にかかる発振器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子と、前記SAW素子を発振させる発振回路と、外部から印加される電圧によって前記SAW素子の周波数を制御する可変回路と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
これによれば、発振器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子と、SAW素子を発振させる発振回路と、外部から印加される電圧によってSAW素子の周波数を制御する可変回路と、を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する発振器を提供することができる。
【0014】
[適用例4]本適用例にかかる電子機器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子を備えたことを特徴とする。
【0015】
これによれば、電子機器は、適用例1または適用例2に記載のSAW素子を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0016】
[適用例5]本適用例にかかるSAW素子の製造方法は、圧電基板を準備する工程と、前記圧電基板の主面に、IDT電極と、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターとを、同一マスクを用いて、一括して形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
これによれば、SAW素子の製造方法は、圧電基板の主面に、IDT電極とスパイラルインダクターとを、同一マスクを用いて、一括して形成する工程を有することから、IDT電極の形状ばらつきとスパイラルインダクターの形状ばらつきとが同傾向となる。
このことから、SAW素子の製造方法は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極の形状ばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクターの形状ばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
この結果、SAW素子の製造方法は、例えば、SAW素子を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のSAW素子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線での拡大断面図。
【図2】図1のSAW素子の等価回路図。
【図3】SAW素子の製造方法における主要工程を示すフローチャート。
【図4】SAW素子の製造方法について主要工程順に説明する断面図。
【図5】伸長コイルのインダクタンスと周波数可変幅との関係を示したグラフ。
【図6】スパイラルインダクターのパターン幅のばらつき及びIDT電極の電極幅のばらつきと、周波数可変幅との関係を示したグラフ。
【図7】第1実施形態の変形例1のSAW素子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は、(a)のSAW素子の等価回路図。
【図8】第1実施形態の変形例2のSAW素子の概略構成を示す模式平面図。
【図9】第1実施形態の変形例3のSAW素子の概略構成を示す模式平面図。
【図10】第2実施形態の発振器の概略構成を示す回路図。
【図11】第2実施形態の変形例の発振器の概略構成を示す回路図。
【図12】第3実施形態の携帯電話を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
最初に、SAW素子の一例について説明する。
図1は、第1実施形態のSAW素子の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線での拡大断面図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。図2は、図1のSAW素子の等価回路図である。
【0021】
図1に示すように、SAW素子1は、圧電基板としての水晶基板10と、水晶基板10の主面11に形成されたIDT電極20と、水晶基板10の主面11に形成され、IDT電極20と隣り合う反射器30,31と、水晶基板10の主面11に形成されると共に、一端がIDT電極20と接続されたスパイラルインダクター40と、を備えている。
【0022】
水晶基板10は、水晶の原石などから所定の角度で切り出され、所定の厚みに研磨された水晶ウエハーまたは水晶の個片を用いて形成されている。
IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40は、水晶基板10の主面(切り出し面に沿った面)11に導体金属を蒸着またはスパッタなどにより薄膜状に形成した後に、フォトリソグラフィ技術などを用いて形成されている。
なお、導体金属には、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が用いられているが、他にも金、銀、銅、タンタル、タングステンなどの金属や、それらのいずれかを主成分とした合金を用いることが可能である。
【0023】
IDT電極20は、互いに噛み合う一対の櫛歯状(交叉指状)の電極指20a,20bからなる。電極指20a,20bは、それぞれ一端側が共通接続されていることにより、櫛歯状を成している。
電極指20aから引き出された配線は、水晶基板10の端部に設けられた接続端子(ボンディングパッド)12と接続されている。
また、電極指20bから引き出された配線は、スパイラルインダクター40の一端と接続されている。スパイラルインダクター40の他端は、スパイラルインダクター40の略中央部に設けられた接続端子(ボンディングパッド)13と接続されている。
【0024】
反射器30,31は、IDT電極20の各電極指20a,20bが延びる方向(紙面上下方向)と交差する方向(紙面左右方向)において、IDT電極20を挟むようにしてIDT電極20の両側に配置されている。
反射器30,31は、互いに略平行な複数の電極指30a,31aを有し、各電極指30a,31aの両端が共通接続されることにより、柵状に形成されている。
【0025】
スパイラルインダクター40は、導体金属を用いて帯状に延びる導体パターンを、平面視において、90度ずつ屈曲させて角型の平面コイル状に形成したものである。
スパイラルインダクター40は、伸長コイルとして機能し、水晶基板10の発振(共振)時に必要な周波数可変感度(周波数可変幅)を得るための定数(インダクタンス)を有している。
【0026】
ここで、SAW素子1の製造方法の概略について説明する。
図3は、SAW素子の製造方法における主要工程を示すフローチャートである。
図4は、SAW素子の製造方法について主要工程順に説明する断面図である。
【0027】
図3に示すように、SAW素子の製造方法は、水晶基板準備工程S1と、成膜工程S2と、レジスト塗布工程S3と、露光工程S4と、エッチング工程S5と、レジスト剥離工程S6と、を有している。
【0028】
[水晶基板準備工程S1]
まず、図4(a)に示すように、水晶の原石などから所定の角度で切り出され、所定の厚みに研磨された水晶基板10を準備する。この際、水晶基板10は複数個取りのウエハー状態であってもよいし、個片状態であってもよい。
【0029】
[成膜工程S2]
ついで、図4(b)に示すように、水晶基板10の主面11に導体金属を用いて蒸着またはスパッタなどにより薄膜状の金属被膜100を成膜する。
なお、導体金属には、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属が用いられているが、金、銀、銅、タンタル、タングステンなどの金属や、それらのいずれかを主成分とした合金を用いることも可能である。
【0030】
[レジスト塗布工程S3]
ついで、図4(c)に示すように、金属被膜100上に感光性有機物質を含んで成るレジスト200をスピンコート法、スプレー法などを用いて塗布する。
【0031】
[露光工程S4]
ついで、図4(d)に示すように、マスク(遮光マスク)300をレジスト200上にセットする。
マスク300には、ガラス、石英などが用いられ、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40の形状に合わせて露光パターンが形成された透光部301が設けられている。マスク300の透光部301以外の部分には、遮光処理が施されている。
ついで、マスク300の上方から紫外線などの短波長の光を照射して、マスク300の透光部301を介してレジスト200を露光して硬化させ、レジスト200にIDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40の形状を一括してパターニングする。
ついで、現像、リンスによってレジスト200の非露光部分(不要部分)を除去する。レジスト200の露光された部分が残る(ネガ型の場合)ことによって、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40のパターニングされた形状が現れる。
【0032】
[エッチング工程S5]
ついで、図4(e)に示すように、弗酸または弗酸水溶液を用いたウエットエッチングにより、金属被膜100のレジスト200に覆われていない露出部分(不要部分)を除去し、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40を一括して形成する。
なお、エッチングには、反応性ガスや反応性イオンによるドライエッチングを用いてもよい。
【0033】
[レジスト剥離工程S6]
ついで、図4(f)に示すように、IDT電極20、反射器30,31及びスパイラルインダクター40上のレジスト200を、剥離液などを用いて剥離することによりSAW素子1が得られる。
【0034】
上述したように、IDT電極20とスパイラルインダクター40とは、同一のマスク300を用いた露光によりレジスト200に一括してパターニングされ、パターニングされたレジスト200の形状に基づいた金属被膜100のエッチングによって一括して形成される。
このことから、IDT電極20の形状のばらつきと、スパイラルインダクター40の形状のばらつきとは、同傾向となる。
つまり、SAW素子1の製造方法においては、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが広くなれば、IDT電極20の電極幅W1も広くなり、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが狭くなれば、IDT電極20の電極幅W1も狭くなるということがいえる。
【0035】
ここで、SAW素子1を用いた周波数可変型の発振器について説明する。なお、この発振器の構成の詳細については後述する。
式(1)は、周波数可変型の発振器における周波数可変に関する理論式である。
【0036】
【数1】
周波数可変型の発振器(以下、単に発振器ともいう)は、伸長コイルを入れると負荷容量(CL)が変化して、周波数可変幅を大きくすることが可能となる。
従来の発振器では、SAW素子(圧電素子)とは別に、伸長コイルとして外付けのコイル(チップインダクター)を用いていた。
一般的に、チップインダクターは、±5%程度の個体差ばらつきを有している。図5は、伸長コイルのインダクタンス(nH)と周波数可変幅(ppm)との関係を示したグラフである。なお、図5の縦軸は、周波数可変幅を表し、横軸は伸長コイルのインダクタンスを表す。
【0037】
図5に示すように、従来の発振器は、伸長コイルのインダクタンスが±5%ばらつくと、例えば、基準値(平均値)が300nHで、285nH〜315nHの範囲でばらつくと、周波数可変幅が約67ppm〜約75ppmの範囲でばらついてしまう。
そして、従来の発振器は、このばらつきにSAW素子の容量(C1:等価直列容量、C0:並列容量)のばらつきが上乗せされて周波数可変幅が更にばらつく虞がある。
【0038】
そこで、本実施形態では、スパイラルインダクター40を、伸長コイルとして水晶基板10の主面11にIDT電極20と一緒に形成することにより、この周波数可変幅のばらつきを抑制しようとするものである。
【0039】
式(2)は、伸長コイル(スパイラルインダクター40)のインダクタンス(定数)のばらつきの理論式である。
【0040】
【数2】
ここで、A…スパイラルインダクター40の面積、W…スパイラルインダクター40のパターン幅、S…スパイラルインダクター40のパターン間ギャップ、r…W/Sである(図1(b)参照)。
式(3)は、IDT電極20の電極幅W1のばらつきに起因するC0のばらつきの理論式である。なお、C1は同じ比率で増減する。
【0041】
【数3】
図6は、式(1)〜式(3)に基づいて、スパイラルインダクターのパターン幅Wのばらつき(%)及びIDT電極の電極幅W1のばらつき(%)と、周波数可変幅(ppm)との関係を示したグラフである。
なお、図6の縦軸は、周波数可変幅を表し、横軸はスパイラルインダクターのパターン幅Wのばらつき及びIDT電極の電極幅W1のばらつきを表す。
なお、スパイラルインダクター40のパターン幅W及びIDT電極20の電極幅W1のばらつき範囲は、0±10%まで設定してある。
【0042】
図6に示すように、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが一定で、IDT電極20の電極幅W1のみがばらつく場合は、破線で示すように、IDT電極20の電極幅W1が広がれば周波数可変幅も広がる比例関係にある。
一方、IDT電極20の電極幅W1が一定で、スパイラルインダクター40のパターン幅Wのみがばらつく場合は、一点鎖線で示すように、スパイラルインダクター40のパターン幅Wが広がれば周波数可変幅が狭まる反比例関係にある。
そして、スパイラルインダクター40のパターン幅WとIDT電極20の電極幅W1とが同傾向にばらついた場合(例えば、パターン幅Wが広くなれば、電極幅W1も広くなるなど)は、実線で示すように、上記2つの関係が相殺されて周波数可変幅のばらつきが抑制される。
例えば、スパイラルインダクターのパターン幅Wのばらつき及びIDT電極の電極幅W1のばらつきが同傾向で±5%の場合には、周波数可変幅が約69ppm〜約73ppmの範囲のばらつきに収まる。
【0043】
ここで、本実施形態のSAW素子1は、上述したようにIDT電極20とスパイラルインダクター40とが、同一のマスク300を用いて、一括して形成されることから、IDT電極20の電極幅W1のばらつきとスパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきとが同傾向となる。
このことから、SAW素子1は、図6の実線で示したパターンに該当し、SAW素子1を用いた周波数可変型の発振器において、周波数可変幅のばらつきを従来構成より抑制できるといえる。
【0044】
上述したように、第1実施形態のSAW素子1は、水晶基板10の主面11に形成されたIDT電極20と、反射器30,31と、一端がIDT電極20と接続されたスパイラルインダクター40と、を備えている。そして、SAW素子1は、伸長コイルとしてのスパイラルインダクター40が、水晶基板10に必要な周波数可変感度(周波数可変幅)を得るための定数(インダクタンス)を有している。
このことから、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器において、従来の発振器で必要だった周波数調整回路を構成するコイル(伸長コイル)、コンデンサーなどの外付け部品が不要となる。
この結果、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器の小型化に貢献することができる。
【0045】
また、SAW素子1は、従来の発振器で必要だった、コイル、コンデンサーなどの外付け部品が不要となることから、これらの部品の実装工程が不要となる。
この結果、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器の生産性の向上に貢献することができる。
【0046】
加えて、SAW素子1は、IDT電極20とスパイラルインダクター40とが、共に水晶基板10の主面11に形成されていることから、IDT電極20の電極幅W1のばらつきとスパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきとが同傾向となる。
これにより、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極20の電極幅W1のばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
この結果、SAW素子1は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【0047】
また、SAW素子1は、圧電基板として水晶基板10を用いていることから、水晶の特性により周囲の温度変化に伴う弾性表面波の周波数の変動が少なく、他の圧電材料と比較して、周波数の温度特性を向上させることができる。
【0048】
また、SAW素子1の製造方法は、水晶基板10の主面11に、IDT電極20とスパイラルインダクター40とを、同一マスク300を用いて、一括して形成する工程(露光工程S4及びエッチング工程S5)を有することから、IDT電極20の電極幅W1のばらつきとスパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきとが同傾向となる。
この結果、SAW素子1の製造方法は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきの、IDT電極20の電極幅W1のばらつきに起因する要因と、スパイラルインダクター40のパターン幅Wのばらつきに起因する要因とが互いに相殺される。
これにより、SAW素子1の製造方法は、SAW素子1を用いた発振器における周波数可変幅のばらつきを抑制することができる。
【0049】
(変形例1)
次に、第1実施形態の変形例1について説明する。
図7は、第1実施形態の変形例1のSAW素子の概略構成を示す模式図である。図7(a)は、平面図であり、図7(b)は、図7(a)のSAW素子の等価回路図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0050】
図7に示すように、SAW素子2は、スパイラルインダクター40に加えて、スパイラルインダクター140が、反射器30に隣り合うように設けられている。スパイラルインダクター140の一端は、IDT電極20の電極指20aから引き出された配線により電極指20aと接続されている。
スパイラルインダクター140の他端は、スパイラルインダクター140の略中央部に設けられた接続端子(ボンディングパッド)12と接続されている。
【0051】
上述したように、変形例1のSAW素子2は、スパイラルインダクター40に加えて、スパイラルインダクター140を備えていることから、伸長コイルが2つとなり第1実施形態と比較して、負荷容量(CL)を大幅に変えることができる。
【0052】
(変形例2)
次に、第1実施形態の変形例2について説明する。
図8は、第1実施形態の変形例2のSAW素子の概略構成を示す模式平面図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0053】
図8に示すように、SAW素子3は、スパイラルインダクター40が反射器31の隣から、IDT電極20の電極指20bの共通接続部分の近傍に移動して設けられている。また、SAW素子3は、接続端子12がIDT電極20の電極指20aの共通接続部分の近傍に移動して設けられている。
これにより、変形例2のSAW素子3は、長手方向(反射器30と反射器31とを結ぶ方向)のサイズを、第1実施形態と比較して、短くすることができる。
【0054】
また、SAW素子3は、IDT電極20にスパイラルインダクター40及び接続端子12が近接することから、IDT電極20とスパイラルインダクター40及び接続端子12とを接続する配線が、第1実施形態と比較して短くなる。
このことから、SAW素子3は、この配線に関わる浮遊容量(寄生容量)を抑制することができる。
【0055】
(変形例3)
次に、第1実施形態の変形例3について説明する。
図9は、第1実施形態の変形例3のSAW素子の概略構成を示す模式平面図である。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
また、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0056】
図9に示すように、SAW素子4は、変形例2に対してスパイラルインダクター140がIDT電極20の電極指20aの共通接続部分の近傍に追加されている。
そして、SAW素子4は、スパイラルインダクター140の一端が、IDT電極20の電極指20aに接続され、スパイラルインダクター140の他端が、スパイラルインダクター140の略中央部に設けられた接続端子12に接続されている。
これにより、変形例3のSAW素子4は、スパイラルインダクター40に加えて、スパイラルインダクター140を備えていることから、伸長コイルが2つとなり、変形例2と同様の効果を奏しつつ、変形例2に対して負荷容量(CL)を大幅に変えることができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べたSAW素子を備えた発振器の一例について説明する。
図10は、第2実施形態の発振器の概略構成を示す回路図である。
【0058】
図10に示すように、発振器5は、いわゆるコルピッツ発振回路を用いた電圧制御型圧電発振器(電圧制御型水晶発振器、周波数可変型の発振器)であって、共振子(振動子)としてのSAW素子1と、SAW素子1を発振させる発振回路50と、外部から印加される電圧によってSAW素子1の周波数を制御する可変回路60と、を備えている。
【0059】
発振回路50は、共振回路の共振周波数を帰還増幅する発振用トランジスターQ1と、発振用トランジスターQ1のベースと接地(GND)との間に設けられた分割コンデンサーC1,C2と、発振用トランジスターQ1のベースにバイアスを与えるためのバイアス抵抗R2,R3と、発振用トランジスターQ1のエミッターと接地(GND)との間に設けられた負荷抵抗R4と、発振用トランジスターQ1のコレクターと電源電圧(Vcc)との間に設けられた電流制限抵抗R5と、を備えている。
【0060】
可変回路60は、電圧制御端子(Vcont)に接続された高周波阻止抵抗R1と、高周波阻止抵抗R1の他端と接地(GND)との間に設けられた可変容量ダイオードD1とを備えている。
SAW素子1は、一方の接続端子が発振回路50のバイアス抵抗R2とバイアス抵抗R3との接続点に接続され、他方の接続端子が可変回路60の高周波阻止抵抗R1と可変容量ダイオードD1との接続点に接続されている。
発振器5は、発振回路50の発振用トランジスターQ1のコレクターと電流制限抵抗R5との接続点から、直流阻止用コンデンサーC3を介してSAW素子1の発振周波数が出力端子(OUT)から出力される。
【0061】
上述したように、第2実施形態の発振器5は、SAW素子1と、SAW素子1を発振させる発振回路50と、外部から印加される電圧によってSAW素子1の周波数を制御する可変回路60と、を備えたことから、第1実施形態に記載の効果を奏する発振器(例えば、周波数制御時の周波数可変幅のばらつきを抑制することができる発振器)を提供することができる。
なお、発振器5は、SAW素子1に代えて、上記各変形例のSAW素子(2など)を用いることが可能である。
これによれば、発振器5は、上記と同様の効果及び各変形例特有の効果を奏することができる。
【0062】
(変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
図11は、第2実施形態の変形例の発振器の概略構成を示す回路図である。なお、上記第2実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0063】
図11に示すように、発振器6は、互いに異なる周波数のSAW素子を2つ備えた2周波切替式水晶発振器である。
発振器6は、互いに異なる周波数のSAW素子1とSAW素子2と、発振回路50と、可変回路60と、SAW素子1とSAW素子2とを切り替えるスイッチ回路70と、を備えている。
【0064】
スイッチ回路70は、選択制御端子(Select)からの入力により、SAW素子1とSAW素子2とを切り替える構成となっている。
これにより、発振器6は、スイッチ回路70でSAW素子1とSAW素子2とを切り替えることによって、異なる2つの発振周波数を単一の出力端子(OUT)から出力することができる。
【0065】
発振器6は、SAW素子1及びSAW素子2を備えたことから、第1実施形態及び変形例1に記載の効果を奏する発振器(例えば、周波数制御時の周波数可変幅のばらつきを抑制することができる発振器)を提供することができる。
なお、発振器6は、SAW素子1,2に代えて、上記他の変形例のSAW素子(3,4)を用いることが可能である。
これによれば、発振器6は、上記と同様の効果及び他の変形例特有の効果を奏することができる。
【0066】
(第3実施形態)
次に、上記第1実施形態及び各変形例で述べたSAW素子を備えた電子機器としての携帯電話について説明する。
図12は、第3実施形態の携帯電話を示す模式斜視図である。
図12に示す携帯電話700は、上記第1実施形態及び各変形例で述べたSAW素子のいずれか(例えば、SAW素子1)を、基準クロック発振源などとして備え、更に液晶表示装置701、複数の操作ボタン702、受話口703、及び送話口704を備えて構成されている。
【0067】
上述した各SAW素子は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などの基準クロック発振源などとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記第1実施形態及び各変形例で説明した効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0068】
なお、本実施形態の構成は、SAWフィルターにも適用可能である。
また、SAW素子の圧電基板の材料としては、水晶に限定するものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料、または酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電材料を被膜として備えたシリコンなどの半導体材料であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,2,3,4…SAW素子、5,6…発振器、10…圧電基板としての水晶基板、11…主面、12,13…接続端子、20…IDT電極、20a,20b…電極指、30,31…反射器、30a,31a…電極指、40…スパイラルインダクター、50…発振回路、60…可変回路、70…スイッチ回路、100…金属被膜、140…スパイラルインダクター、200…レジスト、300…マスク、301…透光部、700…携帯電話、701…液晶表示装置、702…操作ボタン、703…受話口、704…送話口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の主面に形成されたIDT電極と、
前記圧電基板の前記主面に形成され、前記IDT電極と隣り合う反射器と、
前記圧電基板の前記主面に形成されると共に、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターと、を備え、
前記スパイラルインダクターは、前記圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることを特徴とするSAW素子。
【請求項2】
請求項1に記載のSAW素子において、前記圧電基板は、水晶基板であることを特徴とするSAW素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のSAW素子と、
前記SAW素子を発振させる発振回路と、
外部から印加される電圧によって前記SAW素子の周波数を制御する可変回路と、を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のSAW素子を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
圧電基板を準備する工程と、
前記圧電基板の主面に、IDT電極と、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターとを、同一マスクを用いて、一括して形成する工程と、
を有することを特徴とするSAW素子の製造方法。
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の主面に形成されたIDT電極と、
前記圧電基板の前記主面に形成され、前記IDT電極と隣り合う反射器と、
前記圧電基板の前記主面に形成されると共に、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターと、を備え、
前記スパイラルインダクターは、前記圧電基板に必要な周波数可変感度を得るための定数を有していることを特徴とするSAW素子。
【請求項2】
請求項1に記載のSAW素子において、前記圧電基板は、水晶基板であることを特徴とするSAW素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のSAW素子と、
前記SAW素子を発振させる発振回路と、
外部から印加される電圧によって前記SAW素子の周波数を制御する可変回路と、を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のSAW素子を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
圧電基板を準備する工程と、
前記圧電基板の主面に、IDT電極と、一端が前記IDT電極と接続されたスパイラルインダクターとを、同一マスクを用いて、一括して形成する工程と、
を有することを特徴とするSAW素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−195640(P2012−195640A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56252(P2011−56252)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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