説明

SBOとLOCA対処被動高圧安全注入タンクシステム

【課題】高圧の安全注入タンクシステムを提供する。
【解決手段】低圧及び高圧でも原子炉系統に非常炉心冷却水の注入が可能にする。低圧の窒素が充填され非常炉心冷却水が収容されて、原子炉容器に非常冷却水注入管によって連結された安全注入タンクと、高圧水蒸気が収容されて、前記高圧水蒸気が排出される安全弁管が装着された加圧器及び高圧の前記加圧器と低圧の前記安全注入タンクが圧力平衡になるように、前記安全注入タンクの上部と前記加圧器の上部を連結して選択的に開閉される圧力平衡管を含む。原子炉系統が加圧される事故時には、前記非常炉心冷却水が高圧の前記原子炉容器に注入可能になるように、前記圧力平衡管の開放によって前記安全注入タンクが低圧から高圧に変更されるように構成する。また、電源完全喪失事故時にも、バッテリー供給非常電源によって駆動する弁を適用して高圧の安全注入タンクによる非常炉心冷却水注入が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉非常炉心冷却系統の高圧安全注入タンク(HPSIT)システムであり、安全注入タンク一つのみで原子炉系統が低圧(約4.3Mpa)時と高圧(約17MPa)時に原子炉非常炉心への充水を可能にして、原子力発電所の非常発電機が完全に故障した時にもバッテリー供給非常電源によって駆動する弁を適用して、原子力発電所の非常発電機の故障による電源完全喪失事故時にも高圧安全注入タンクによる非常炉心冷却水の注入を可能にすることによって、系統設計を単純化して、事故緩和処理の単純化を期待することができ、さらには原子炉の事故率を減らすことができる高圧の安全注入タンクシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術による加圧軽水炉型原子炉の低圧の安全注入タンク系統の概念図で、図2は従来技術による炉心充水タンクと安全注入タンクの混合系統の構成図であり、図3は従来技術による低圧原子炉系統で非常炉心冷却水の大量注入のための充填ガスを有しない炉心充水タンクの構成図である。
【0003】
そして、図4は従来技術による大量注入のための充填ガスを有しない炉心充水タンクのみを適用時の大型破断事故時の原子炉過熱問題を示したグラフで、図5は従来技術による大量注入のための充填ガスを有しない炉心充水タンクのみを適用時の大型破断事故時の原子炉充水不十分問題に関する原子炉降水部の水位を示したグラフであり、図6は従来技術による大量注入のための充填ガスを有しない炉心充水タンクのみを適用時の大型破断事故時の原子炉系統が低圧状態である時、原子炉への充水量不足問題を発生させる炉心充水タンクによる原子炉系統への充水量を示したグラフである。
【0004】
図面を参照すると、現在運営中の加圧軽水炉の安全注入タンク4は、大量の原子炉冷却水が原子炉外に一時に漏洩する大型破断事故に備えた装置であり、冷却水が無くなった低圧状態の原子炉容器2、すなわち原子炉系統を大量の非常炉心冷却水で速かに再び満たすように設計された装置である。
【0005】
反対に、原子炉が加圧される事故時には、原子炉系統の圧力が安全注入タンク4の作動圧力(約4.3Mpa)よりさらに高いので、非常炉心冷却水を原子炉系統に注入することができない。
【0006】
また、現在の加圧軽水炉に装着された安全注入タンク4の注入ラインに装着された注入隔離弁は、原子炉発電所の所内・所外すべての電源供給が跡絶える完全電源喪失事故時(非常ディーゼル発電機−EDG、補助発電機−AAC非常発電機非作動:Station Black outと称される)には作動しない。
【0007】
結果的に現在の加圧軽水炉に装着された低圧型安全注入タンク4は、完全電源喪失事故時や、原子炉が加圧される事故時には、原子炉系統に非常炉心冷却水を注入することができないという問題がある。
【0008】
また、図2のAP600(特許文献1、非特許文献1参照)やCARR(CP1300:非特許文献2参照)の炉心充水タンク(Core Makeup Tank:CMT)3は、原子炉系統の圧力と炉心充水タンク3の圧力を平衡状態にして炉心充水タンク3内部の非常炉心冷却水の水位と原子炉系統の水位差による重力駆動圧力によって注入されるので、大型破断事故時には原子炉容器2を速かに再充水するのに必要な大量の非常炉心冷却水を供給することができず、炉心が露出して炉心温度が急激に上昇する。
【0009】
したがって、AP600型の場合、炉心充水タンク3と安全注入タンク4を組み合わせてそれぞれ設置して、主要作動領域を分担する複合設計を採択している。
【0010】
また、AP600とCARR(CP1300)のような構成の炉心充水タンク3は、原子炉系統が高圧である条件下で、高圧の原子炉系統(RCS、または加圧器6)圧力で炉心充水タンク3を加圧する原子炉充水に適用し、安全注入タンク4は原子炉圧力が低圧である時に非常炉心冷却水注入に適用している。
【0011】
この構成の短所は、原子炉圧力条件が低圧である時は炉心充水タンク3の単独注入容量が原子炉系統で必要な程度に十分ではなくて反対に、原子炉系統圧力が高圧の場合は、低圧の安全注入タンク4が逆圧力差のため原子炉系統に非常炉心冷却水の注入が不可能なことである。
【0012】
したがって、常に炉心充水タンク3と安全注入タンク4の組み合わせの場合のみ、それぞれ有効な構成になり、単独構成時の原子炉安全系統では適用が不可能である。前記の炉心充水タンク3は、窒素充填加圧設計が排除されていて原子炉系統が低圧である時、大流量の炉心充水流量の確保に必要な二系統の間の大きな圧力差を確保することができない。従来の加圧軽水炉型原子炉の低圧の安全注入タンク4は、高圧(約4.3Mpa以上)でも作動可能な高圧設計ではないからである。
【0013】
図3は、原子炉系統が低圧の場合、窒素充填加圧設計が排除された炉心充水タンク単独注入による非常炉心冷却水低流量注入を誘発する炉心充水タンク系統の構成例を示している。大型破断事故時の原子炉系統の圧力が急激に格納容器圧力の低圧に低くなるので、炉心充水タンクと原子炉系統の圧力差が非常に小さくなって非常炉心冷却水大量注入流量誘発に必要な圧力差を確保することができない構成である。この場合、原子炉炉心の温度が急激に原子炉設計許容基準値を超過し、設計に適用することができない。
【0014】
炉心充水タンク3は、原子炉系統と炉心充水タンク3の圧力を同一な平衡条件にして二つの系統の水位差による水頭重力駆動注入原理を適用しているので、原子炉系統が低圧状態時の非常炉心冷却水の注入流量と原子炉系統が高圧状態時の注入流量に大きな差がない。
【0015】
これは、原子炉系統が高圧条件の場合は大きな問題にならないが、大型破断事故のように原子炉が急激に減圧されて冷却水が大量に放出される事故の時には、原子炉を早く再充水させることができずに炉心が急激に加熱されて深刻な炉心露出を引き起こす。
【0016】
図4は、前記のような設計による原子炉の大型破断事故の一例を解析コードで模擬計算した結果の中で炉心温度を示したものである。炉心充水タンク設計を単独で非常炉心冷却系統に適用した場合、炉心被服材温度が原子力発電所許容基準温度を非常に超過する結果を示している。
【0017】
図5は、炉心充水タンクによって不十分に充水された原子炉系統の降水部水位を示している。従来の炉心充水タンク単独設計(△)は、本発明の高圧の安全注入タンクの設計による降水部水位(○)よりずっと低い。
【0018】
図6は、大型破断事故時の非常炉心冷却水の注入流量について、窒素が充填された低圧の安全注入タンクと従来の炉心充水タンクを比較したものである。炉心充水タンク(△)の非常炉心冷却水の原子炉注入流量が顕著に少ない。したがって、窒素が充填された安全注入タンクを排除するかまたは従来の炉心充水タンクのみでは、大型破断事故時の原子炉再充水に必要な非常炉心冷却水の十分な注入流量を確保することができない。この場合には、原子力発電所の設計許容基準を満足させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第5268943号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Nuclear Engineering and Design,第186巻,p.279−301
【非特許文献2】NUREG−IA−0134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、前記のような問題点を解決するために創案されたもので、安全注入タンク一つのみで高圧と低圧の充水を可能にすることで、系統設計を単純化し、事故緩和処理の単純化を期待することができ、原子力発電所の非常発電機の故障による電源完全喪失事故時にも、バッテリー供給非常電源によって駆動する弁を適用して高圧の安全注入タンクによる非常炉心冷却水注入ができることを特徴とする高圧の安全注入タンクシステムを構築し、さらには原子炉の事故率を減らすことができる高圧の安全注入タンクシステムを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記のような目的を達成するために、炉心充水タンク及び低圧の安全注入タンクを代替した本発明の好ましい実施例による高圧の安全注入タンクシステムは、一つの安全注入タンクで低圧注入から高圧注入に変更が可能な原子炉非常炉心冷却水の注入系統を構成する。また、原子力発電所の非常発電機の故障による電源完全喪失事故時にも高圧の安全注入タンクによる非常炉心冷却水注入を可能にするためにバッテリー供給非常電源によって駆動する弁を用いて高圧の安全注入タンクシステムを構成した。
【0023】
具体的に、本発明は低圧(約4.3Mpa)の窒素が充填され非常炉心冷却水が収容されて原子炉容器に非常冷却水注入管によって連結された安全注入タンク;高圧(約17MPa)水蒸気が収容され、前記高圧水蒸気が排出される安全弁管を装着した加圧器;及び高圧の前記加圧器と低圧の前記安全注入タンクが圧力平衡になるように、前記安全注入タンクの上部と前記加圧器の上部を連結して選択的に開閉する圧力平衡管を含み、原子炉系統が加圧される事故時には前記非常炉心冷却水が高圧の前記原子炉容器に注入可能になるように、前記圧力平衡管の開放によって前記安全注入タンクが低圧(約4.3Mpa)から高圧に変更されるように構成する。
【0024】
また、本発明は、前記安全注入タンク上部から前記安全弁管に連結され、前記加圧器の高圧水蒸気が前記安全注入タンクに流入時、窒素ガスが選択的に排出されるように構成される窒素ガス排出管を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明による高圧の安全注入タンクシステムは、従来の高圧で有用な炉心充水タンクと低圧で有用な安全注入タンクの機能をともに備えた複合機能を有するという長所を有する。
【0026】
すなわち、低圧(約4.3Mpa以下)と高圧(約17MPa)条件において独立的な低圧の安全注入タンクと炉心充水タンクを有する従来のAP600とCP1300の系統とは異なり、本発明は安全注入タンク一つのみで高圧条件と低圧条件で原子炉系統の非常炉心冷却水充水を可能にすることで、系統設計を単純化して、事故緩和処理の単純化を期待することができ、さらには原子炉の事故率を減らすことができる効果を有する。
【0027】
併せて、本発明は別途のバッテリー電源で開閉可能に構成されたモーター弁を活用することによって、電源完全喪失事故時にすべての弁が作動可能であるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、従来技術による低圧の安全注入タンク系統の概念図である。
【図2】図2は、従来技術による炉心充水タンクと安全注入タンクの構成図である。
【図3】図3は、従来技術による低圧原子炉系統時、大量注入のための充填ガスを有しない炉心充水タンクの構成図である。
【図4】図4は、従来技術による充填ガスを有しない炉心充水タンクのみ適用時の大型破断事故時の原子炉過熱問題を示したグラフである。
【図5】図5は、従来技術による充填ガスを有しない炉心充水タンクのみ適用時の大型破断事故時の原子炉充水不十分問題を示したグラフである。
【図6】図6は、従来技術による充填ガスを有しない炉心充水タンクのみ適用時の大型破断事故時の低圧状態の原子炉充水量の不足問題を示したグラフである。
【図7】図7は、本発明の好ましい実施例による高圧の安全注入タンクシステムの構成を示した構成図である。
【図8】図8は、図7の高圧の安全注入タンクシステムにおいて窒素ガス排出管をさらに備えたことを示した構成図である。
【図9】図9は、図7の高圧の安全注入タンクシステムにおいて窒素ガス排出管をさらに備えたことを示した構成図である。
【図10】図10は、図9の高圧の安全注入タンクシステムにおいてバッテリー供給非常電源でも駆動するモーター弁が装着されたことを示した構成図である。
【図11】図11は、電源完全喪失事故時、加圧器高圧によって低圧状態の安全注入タンクが高圧に変化することを示したグラフである。
【図12】図12は、電源完全喪失事故時、高圧の安全注入タンクシステム作動による原子炉系統充水性能を比較したグラフである。
【図13】図13は、電源完全喪失事故時、高圧の安全注入タンクシステムの作動による炉心加熱防止性能を比較したグラフである。
【図14】図14は、窒素ガス排出管をさらに備えることの有効性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、炉心充水タンク及び低圧の安全注入タンクを代替した高圧変更が可能な一つの安全注入タンクを含み、低圧及び高圧でも原子炉系統に非常炉心冷却水の注入が可能になるように構成されたことを特徴とする。
【0030】
図7は、本発明の好ましい実施例による高圧の安全注入タンクシステムの構成を示した図で、図8及び図9は図7の高圧の安全注入タンクシステムにおいて窒素ガス排出管がさらに備えられたことを示した構成図であり、図10は図9の高圧の安全注入タンクシステムにモーター弁が装着されたことを示した構成図である。
【0031】
図面を参照すると、本発明は非常炉心冷却水40aが収容された安全注入タンク40、高圧水蒸気60aが収容された加圧器60、及び前記安全注入タンク40と加圧器60を連結する圧力平衡管44を含む。
【0032】
前記安全注入タンク(SIT:safety injection tank)40は、内部に低圧(約4.3Mpa)の窒素が充填され非常炉心冷却水40aが収容されるように構成される。同時に原子炉系統、すなわち原子炉容器20に非常冷却水注入管42によって連結される。前記非常冷却水注入管42を通じて非常炉心冷却水40aが原子炉容器20、すなわち原子炉系統に注入される。ここで、非常冷却水注入管42には選択的に開閉可能な注入隔離弁42aが装着される。
【0033】
また、前記加圧器(PZR:pressurizer)60は、内部に高圧水蒸気60aを収容できるように構成する。
【0034】
そして、前記圧力平衡管44は、高圧の加圧器60と低圧の安全注入タンク40が圧力平衡になるように、安全注入タンク40の上部と加圧器60の上部を連結するように構成される。ここで、前記圧力平衡管44には、選択的に開閉可能な圧力平衡弁44aが装着される。
【0035】
これによって、本発明は事故時に非常炉心冷却水40aが高圧の原子炉容器20に注入可能になるように、圧力平衡管44の開放によって安全注入タンク40が高圧に変更されるように構成される。
【0036】
具体的に、原子炉容器20の圧力が加圧器60の安全弁が作動する高圧条件でも、安全注入タンク40の非常炉心冷却水40aが原子炉容器20に注入可能にするために、低圧状態である安全注入タンク40に加圧器60の高圧水蒸気を注入して加圧することができるように、圧力平衡管44によって安全注入タンク40と加圧器60が連結される。
【0037】
そして、本発明は図8及び図9に示されたように、安全注入タンク40上部から前記安全弁管62に連結され、加圧器60の高圧水蒸気60aが安全注入タンク40に流入時、窒素ガスが選択的に排出されるように構成された窒素ガス排出管46を含む。ここで、前記窒素ガス排出管46には選択的に開閉可能な窒素ガス排出隔離弁46aが装着される。
【0038】
図14に示した窒素ガスが追加で構成された時、高圧の安全注入タンク40から加圧器60の安全弁管62へ連結された窒素ガス排出管46の窒素ガス分率が、加圧器60から高圧の安全注入タンク40への圧力平衡管44の窒素ガス分率よりずっと高いことを示している。図14に示されたように窒素ガス排出管46をさらに備えると、圧力平衡管44には加圧器60からの高圧の安全注入タンク40の方へ蒸気が主に流れて、窒素ガス排出管46には主に窒素ガスが高圧の安全注入タンク40から加圧器の安全弁管62方へよく抜けていることを意味する。
【0039】
初期圧力平衡管44の圧力平衡弁44aが閉じた状態では、加圧器60と安全注入タンク40間の圧力差が大きい。すなわち、加圧器60の圧力(P)が安全注入タンク40の窒素圧力(P)よりずっと高い。
【0040】
ここで、前記圧力平衡弁44aが開かれると、加圧器60の高圧水蒸気が安全注入タンク40の窒素ガス部分に注入されて二つの系統間の圧力差は解消される。
【0041】
ここで、窒素ガスに注入される水蒸気による熱衝撃は、冷水に水蒸気を注入する場合の蒸気凝縮誘発圧力震動よりずっと緩和される長所がある。
【0042】
また、加圧器60の安全弁が開かれて水蒸気が排出される状況下で、加圧器60の安全弁管62に流れる水蒸気の速度のため静圧(P)が加圧器60の圧力(P)や安全注入タンク40の窒素ガス部位の圧力(P)よりさらに低い。
【0043】
この状況では、安全注入タンク40の窒素ガス排出管46から加圧器60の安全弁管62に流れる圧力勾配が形成されて、安全注入タンク40の窒素ガスが加圧器60安全弁管62に排出されて、安全注入タンク40の窒素ガス部位は水蒸気で満たされて、原子炉系統の圧力と同一な状態を維持するようになる。
【0044】
前記のように安全注入タンク40は、低圧作動環境下では充填された窒素ガスの圧力で大流量の非常炉心冷却水40aを原子炉に注入して、高圧作動環境下では圧力平衡管44の圧力平衡弁44aと非常冷却水注入管42の注入隔離弁42aの開放によって高圧注入ができることによって、原子炉系統圧力が低圧から高圧までのすべての環境において安全注入タンク40が使用可能になる。
【0045】
一方、本発明は、発電所内部、外部及び非常ディーゼル発電機からの電源がすべて遮断された電源完全喪失事故時にも、安全注入タンク40の非常炉心冷却水40aの注入が可能なように、前記注入隔離弁42a、圧力平衡弁44a、及び窒素ガス排出隔離弁46aが、電源完全喪失事故時に別途のバッテリー電源で開閉可能になるように構成されたモーター弁を使用する。
【0046】
これによって、前記注入隔離弁42a、圧力平衡弁44a、及び窒素ガス排出隔離弁46aはそれぞれのバッテリー電源でも駆動可能で、電源供給が複数化された構成を有する。
【0047】
従来の電源供給設計では、所内・所外電源(On−site and Off−site Power)と非常ディーゼル発電機(Emergency Diesel Generator)からのみ電源が供給されるように構成され、電源完全喪失事故時に安全注入タンク40の注入隔離弁42aが作動しなくて安全注入タンク40の非常炉心冷却水40aが原子炉系統に注入されなかった。
【0048】
しかし、本発明の電源構成によると、すべての所内・所外電源が遮断された状況でもバッテリー電源で弁の開放作動が可能である。
【0049】
ここで、電源完全喪失事故時の本発明と従来技術の差を図11〜図13のグラフを参照して詳しくみることにする。
【0050】
図11は、電源完全喪失事故時、低圧状態にあった安全注入タンク40が高圧の加圧器60の圧力に素早く加圧される遷移過程を示したグラフで、図12は以後二つの系統の圧力差が解消されて二つの系統間の水位差による水頭重力駆動によって安全注入タンクの非常炉心冷却水が加圧器安全弁開放圧力である高圧状態で原子炉系統に注入され、それによる原子炉系統の降水部充水水位を比較したグラフであり、図13は電源完全喪失事故時の安全注入タンクが作動時と非作動時の原子炉系統炉心の核燃料被服材の温度を比較したグラフである。
【0051】
図11の曲線(○)および図12、図13の実線は、安全注入タンク作動時の高圧の安全注入タンクの圧力、降水部水位、核燃料被服材の温度を示し、 図11の曲線(△)および図12、図13の破線は、非常炉心冷却水が注入されない時の加圧器圧力、降水部水位、核燃料被服材の温度を示している。
【0052】
降水部水位は、加圧器安全弁を通じた蒸気放出によって持続的に減少して約4000〜6000秒の間に急激に減少するが、安全注入タンクの重力駆動注入によって非常炉心冷却水が持続的に注入される状況が約28000秒まで持続して別途の非常炉心冷却水補充措置なしに安全注入タンクだけでも原子炉を高温安定状態で維持させることができる性能を示している。
【0053】
安全注入タンク非作動時の被服材の温度は、約4000〜6000秒の間に急激に増加するが、安全注入タンクの重力駆動注入によって非常炉心冷却水が持続的に注入される状況である約28000秒までは炉心温度が大きく増加しないで安定的に維持させる性能を示している。
【0054】
前記のように構成される本発明は、高圧の加圧器60と低圧の安全注入タンク40が圧力平衡になるように、安全注入タンク40の上部と前記加圧器60の上部を連結して選択的に開閉される圧力平衡管44と圧力平衡弁44aを含み、高圧事故時にも原子炉系統を非常炉心冷却水40aで重力駆動によって充水することができるので、従来の加圧軽水炉低圧型の安全注入タンクが原子炉系統が加圧される事故時には逆圧力差のために原子炉系統に非常炉心冷却水を注入することができないという技術的問題点を解決した。
【0055】
また、本発明は、安全注入タンク40上部から加圧器の安全弁管62に連結され、加圧器60の高圧水蒸気60aが安全注入タンク40に流入時、窒素ガスが選択的に排出されるように構成された窒素ガス排出管46を含み、低圧事故時に大流量の原子炉再充水流量を供給することで、従来はAP600の炉心充水タンク(CMT)系統などの単純水位差による重力駆動注入によって大型破断事故時に低圧の原子炉系統が早く再充水されないという問題を解決した。
【0056】
これによって、本発明の高圧の安全注入タンクシステムは、従来の高圧で有用な炉心充水タンクと低圧で有用な安全注入タンクの機能を両方備えた複合機能を有する。すなわち、低圧条件と高圧条件で各々独立的な原子炉炉心非常充水機能を有する従来のAP600とCP1300の炉心充水タンク(CMT)系統と安全注入タンクとは異なり、安全注入タンク一つのみで高圧と低圧の原子炉炉心非常充水を可能にすることで、系統設計を単純化して、事故緩和処理の単純化を期待することができ、さらには原子炉の事故率を減らすことができる長所を有する。
【0057】
これに加えて、本発明は、注入隔離弁42a、圧力平衡弁44a、及び窒素ガス排出隔離弁46aに、電源完全喪失事故時に別途のバッテリー電源で開閉可能になるように構成されたモーター弁を採択して、所内・所外電源の完全喪失事故時にも前記弁がすべて作動できることによって、所内・所外電源の完全喪失事故時に従来の安全注入タンクが原子炉系統に非常炉心冷却水を注入することができず、さらには他の開閉弁も使用することができないという限界点を解決した。
【0058】
以上のように、本発明は、限定された実施例と図によって説明したが、本発明はこれによって限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記の特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
20 :原子炉容器
40 :安全注入タンク
40a:非常炉心冷却水
42 :非常冷却水注入管
42a:注入隔離弁
44 :圧力平衡管
44a:圧力平衡弁
46 :窒素ガス排出管
46a:窒素ガス排出隔離弁
60 :加圧器
60a:高圧水蒸気
62 :安全弁管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心充水タンク及び低圧の安全注入タンクを代替した高圧変更が可能な単一の安全注入タンクを含み、低圧及び高圧でも原子炉系統に非常炉心冷却水の注入が可能で、原子力発電所の非常発電機の故障による電源完全喪失事故時にもバッテリー供給非常電源によって駆動する弁を適用して、高圧の安全注入タンクによる非常炉心冷却水注入が可能であることを特徴とする高圧安全注入タンクシステム。
【請求項2】
低圧の窒素が充填され非常炉心冷却水が収容され、原子炉容器に非常冷却水注入管によって連結された安全注入タンクと、
高圧水蒸気が収容されて、前記高圧水蒸気が排出される安全弁管が装着された加圧器、及び、
高圧の前記加圧器と低圧の前記安全注入タンクが圧力平衡になるように、前記安全注入タンクの上部と前記加圧器の上部を連結して選択的に開閉される圧力平衡管を含み、
原子炉系統が加圧される事故時には前記非常炉心冷却水が高圧の前記原子炉容器に注入可能になるように、前記圧力平衡管の開放によって前記安全注入タンクが高圧に変更されるように構成されたことを特徴とする高圧安全注入タンクシステム。
【請求項3】
前記安全注入タンク上部から前記安全弁管に連結され、前記加圧器の高圧水蒸気が前記安全注入タンクに流入時、窒素ガスが選択的に排出されるように構成された窒素ガス排出管を含むことを特徴とする、請求項2に記載の高圧安全注入タンクシステム。
【請求項4】
前記非常冷却水注入管に注入隔離弁、前記圧力平衡管に圧力平衡弁、前記窒素ガス排出管に窒素ガス排出隔離弁がそれぞれ装着され、
前記注入隔離弁、圧力平衡弁、及び窒素ガス排出隔離弁は、電源完全喪失事故時に別途のバッテリー電源で開閉可能になるように構成されたモーター弁を適用したことを特徴とする、請求項3に記載の高圧安全注入タンクシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−225895(P2012−225895A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169402(P2011−169402)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(500002490)コリア アトミック エナジー リサーチ インスティチュート (20)
【出願人】(502043352)コリア ハイドロ アンド ニュークリア パワー カンパニー リミティッド (23)