説明

SCHIZOCHYTRIUMPKS遺伝子

【課題】植物、葉、根、果実及び種子等の植物の一部及び植物細胞で多価不飽和長鎖脂肪酸を調製するための組成物及び方法の提供。
【解決手段】Shewanella putrefaciensのエイコサペンタエン酸の生産に寄与する遺伝子やVibrio marinusにおけるドコサヘキサエン酸の生産に関連する新規な遺伝子を含めた、多価不飽和長鎖脂肪酸の生産に必要なPKS様遺伝子をコードする核酸配列及び構築物、そのような長鎖多価不飽和脂肪酸の生産に関連する1又は複数のPKS様遺伝子をコードする1又は複数の導入遺伝子を有すると共に発現するトランスジェニック植物、植物系におけるPKS様遺伝子の発現により、植物、植物の一部、及び組織の脂肪酸プロファイルを改変する、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸等の多価不飽和長鎖脂肪酸の大量生産、脂肪酸プロファイルの人為的操作による商業的な量の新規な植物油及び製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、宿主細胞内の長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFAs)を改変することができる酵素及び/又は酵素構成要素の調節と、宿主細胞でPUFAsを生産するための構築物及び方法と関する。本発明は、Shewanella putrefaciens及びVibrio marinus由来の遺伝子を用いたエイコサペンタエン酸(EPA)の生産により例証される。
【背景技術】
【0002】
(背景)
多価不飽和脂肪酸(PUFAs)の2つの主要なファミリーは、エイコサペンタエン酸を例とするω3脂肪酸とアラキドン酸を例とするω6脂肪酸である。PUFAsは、細胞の原形質膜の重要な構成要素であり、原形質膜ではPUFAsはリン脂質等の形式で見出され、トリグリセリドとしても見出される。PUFAsは、プロスタサイクリン類、ロイコトリエン類、プロスタグランジン類等の、ヒト及び動物における他の重要な分子に対する前駆物質としても機能する。重要な長鎖PUFAsとしては、様々な種類の魚油中に主に見出されるドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)、マツヨイグサ(Oenothera biennis)、ルリジサ(Borago officinalis)及びクロフサスグリ(Ribes nigrum)を始めとする多くの植物の種子中に見出されるガンマ−リノレン酸(GLA)、魚油及び植物種子に見出されるステアリドン酸(SDA)及びGLAと共に糸状菌類に見出されるアラキドン酸(ARA)が挙げられる。ARAは肝臓及び副腎を始めとする動物組織から精製することができる。EPA又はDHAのいずれかを合成するいくつかの海洋細菌属が知られている。DHAはARAと共にヒトの乳の中に存在する。
【0003】
PUFAsは、(特に幼児の脳における)適切な発達並びに組織の形成及び修復に必要である。例としてDHAは多くのヒト細胞膜(特に神経細胞(灰白質)、筋肉細胞、及び精子における細胞膜)の重要な構成要素であり、一般に脳の機能の発達に影響を及ぼし、視覚の発達に必須であると考えられている。EPA及びDNAは、多くの栄養学的及び薬理学的用途を有している。例として、糖尿病(特に非インスリン依存型)に罹患した成人はDHAレベルの不足及び不均衡を示し、これが後の冠動脈の病気に寄与すると考えられている。従って、DHAのバランスが取れた食事は糖尿病患者にとって有益であり得る。
【0004】
DHAの場合、種々の海洋生物、冷水の海洋魚から得られた油、及び卵黄の画分を始めとする、商業的生産用の多くの供給源が存在する。魚からのDHAの精製は、技術的に困難であるために比較的高くつくため、DHAを高価かつ供給不足なものとしている。Amphidinium及びSchizochytrium等の藻類やThraustochytrium等の海洋菌類では、DHAが細胞の脂肪酸含量のうちの48%に達することもある。数種の細菌でもDHAを生産することが報告されている。それらは一般にVibric marinus等の深海細菌である。ARAの場合、Mortierella属、Entomophthora属、Phytium属及びPorphyridium属等の微生物を、商業的生産用に使用することができる。SDAの商業的供給源としては、Trichodesma属及びEchium属が挙げられる。GLAの商業的供給源としては、マツヨイグサ、クロフサスグリ及びルリヂサが挙げられる。しかし、天然供給源からのPUFAsの商業的生産に関しては、いくつかの欠点が存在する。動物や植物等のPUFAの天然供給源は、異成分性の高い油の組成物を有する傾向がある。そのような供給源から得られた油は、1または複数の所望のPUFAを分離したり又は複数の所望のPUFAに濃縮される油を生産したりするためには、大いに精製しなければならない可能性がある。
【0005】
天然供給源は、制御不能な有効性の変化も受ける。魚のストックは天然の変化を受けたり、魚の濫獲によって枯渇したりする可能性がある。動物油、特に魚油は、環境汚染物質を蓄積し得る。天候や病気が、魚及び植物の両供給源の生産高を変動させる可能性もある。油の生産用の代替作物の生産に有効な耕作地は、人口密度の定常的な増大と、それに関連する残りの耕作に適した土地での食物生産の必要性の増大との理由から、競争を受けやすい。ルリヂサのようにPUFAsを生産しない作物は、商業的栽培に適合せず、モノカルチャーではうまく機能しない可能性がある。従って、そのような作物の栽培は、収益性がより高くより確立された作物を育成できる所では、経済的競争力がない。また、Shewanella等の生物の大規模な発酵は高価である。天然動物組織は、ARAを少量含み、加工が困難である。Porphyridium及びShewanella等の微生物は、商業的規模で培養するのが困難である。
【0006】
PUFAsを含有する栄養補助食品及び医薬品製剤は、PUFA供給源の欠点を保持している。魚油カプセルのような栄養補助食品は低レベルの特定の所望成分を含有するため、多用量が必要となる。用量が多いと、汚染物質を含めた高レベルの望ましくない成分を摂取することとなる。脂肪酸の補助食品を提供する場合には注意する必要がある。その理由は、添加のしすぎが、内因性生合成経路を抑制し、インビボでの種々の脂肪画分における他の必須脂肪酸との競争につながり、望ましくない結果となる可能性があるためである。例えば、ω3脂肪酸の高い食事を摂っているエスキモー族は、出血の傾向が高い(米国特許第4,874,603号)。魚油は不快な味と臭いを有するが、これを補助食品などの所望の製品から経済的に分離することが不可能であり得る。補助食品の味及び臭いが不快であると、そのような補助食品に関する摂取プログラムが望ましくないものとなり、患者による受諾を抑制する可能性がある。
【0007】
PUFA生合成に関する酵素として、多くの酵素が同定されている。リノール酸(LA,18:2 Δ9,12)はΔ12−デサチュラーゼによりオレイン酸(18:1 Δ9)から生産される。GLA(18:3 Δ6,9,12)はΔ6−デサチュラーゼによりリノール酸(LA,18:2 Δ9,12)から生産される。ARA(20:4 Δ5,8,11,14)はΔ5−デサチュラーゼにより触媒され、DGLA(20:3 Δ8,11,14)から生産される。エイコサペンタエン酸(EPA)は、すべてがシス配置の、5つの二重結合(Δ5,8,11,14,17)を有する20個の炭素から成るオメガ3系列脂肪酸である。EPAとその関連のDHA(Δ4,7,10,13,16,19,C22:6)は、一連の延長及び不飽和化反応によりオレイン酸から生産される。さらに、18個の炭素から成るPUFAsを20及び22炭素鎖長に伸ばすには、1つのエロンガーゼ(又は複数のエロンガーゼ)が必要である。しかし、動物はオレイン酸(18:1 Δ9)をリノール酸(18:2 Δ9,12)に変換することができない。同様に、μ−リノレン酸(ALA、18:3 Δ9,12,15)も動物では合成することができない。菌類及び植物等の他の真核生物は、Δ12位及びΔ15位で不飽和化する酵素を有している。従って、動物の主な多価不飽和脂肪酸は、食事及び/又はリノール酸(18:2 Δ9,12)の不飽和化及び延長に由来するものであるか、又はμ−リノレン酸(18:3 Δ9,12,15)に由来するものであるかのいずれかである。
【0008】
多価不飽和脂肪酸は、栄養学的目的、医薬用目的、工業用目的、及び他の目的に有効であると考えられている。天然源及び化学合成からの多価不飽和脂肪酸の供給拡大は、商業上の要求に足りていない。大半の植物種に一般的なリノール酸(LA,18:2 Δ9,12)からのより飽和した長鎖PUFAsへの脂肪酸合成には多くの別個のデサチュラーゼ及びエロンガーゼ酵素が必要であるため、EPA及びDHAの発現のための植物宿主細胞の構築には、少なくともEPA及びDHAに対する、発現を達成するための5つ又は6つの別個の酵素活性の発現が必要であり、そのようなPUFAsを一定量の生産するにはさらなる構築の努力(例えば基質と競合する酵素のダウンレギュレーション、突然変異誘発による高い酵素活性の構築、又はプラスミド細胞小器官への酵素のターゲティング)が必要である。従って、PUFA生合成に関する遺伝子物質を、そのような脂肪酸を天然で生産する種から手に入れ、商業的な量のPUFAsが生産されるよう操作できる異種系にて、そのような単離物質を単独で又は組み合わせて発現させることが重要である。
【0009】
(関連文献)
EPA又はDHAのいずれかを合成する海洋細菌のいくつかの属が同定されている(ドロング(DeLong)及びヤヤノス(Yayanos )、Applied and Environmental Microbiology(1986)51:730-737(非特許文献1))。Sagami Chemical Research Instituteの研究者は、海洋細菌であるShewanella putrefaciensからの遺伝子クラスタにより形質転換されたE.coliにおけるEPAの生産を報告した。E.coliでのEPAの脂肪酸合成には、最小5つの読み取り枠(ORFs)必要である。現在までのところ、そのような遺伝子によってコードされたタンパク質の機能の詳細な特徴付けは報告されていない(ヤザワ(Yazawa)(1996)Lipids 31 ,S-297(非特許文献2);WO第93/23545号(特許文献1);WO第96/21735号(特許文献2))。
【0010】
ヤザワ(Yazawa)、米国特許第5,683,898号(特許文献3)によって公表された読み取り枠(ORF)3のタンパク質配列は、機能タンパク質ではない。ヤザワ(Yazawa)は、該タンパク質を、Shewanella PKS様クラスタ(Genbank受け入れ番号U73935)のヌクレオチド9016−9014の位置のメチオニンコドンから開始し、Shewanella PKS様クラスタのヌクレオチド8185−8183の位置の停止コドンで終わるタンパク質として定義している。しかし、このORFをORF3以外の完全なPKS様クラスタを含むE.coli株において異種プロモーターの制御下で発現させた場合、組換え細胞はEPAを生産しない。
【0011】
ポリケチドは、二次代謝産物であり、その合成は脂肪酸合成の酵素反応に類似する一連の酵素反応に関する(ホップウッド(Hopwood )及びシャーマン(Sherman )、Annu. Rev. Genet. (1990)24:37-66(非特許文献3)、キャッツ(Katz)及びドナジオ(Donadio )、in Annual Review of Microbiology(1993)47:875-912(非特許文献4)の総説を参照のこと)。新規な抗生物質を生産するためのポリケチドシンターゼの使用が提唱されている(ハッチンソン(Hutchinson)とフジイ(Fujii )、Annual Review of Microbiology (1995)49:20 1238(非特許文献5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO第93/23545号
【特許文献2】WO第96/21735号
【特許文献3】米国特許第5,683,898号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ドロング(DeLong)及びヤヤノス(Yayanos )、Applied and Environmental Microbiology(1986)51:730-737
【非特許文献2】ヤザワ(Yazawa)(1996)Lipids 31 ,S-297
【非特許文献3】ホップウッド(Hopwood )及びシャーマン(Sherman )、Annu. Rev. Genet. (1990)24:37-66
【非特許文献4】キャッツ(Katz)及びドナジオ(Donadio )、in Annual Review of Microbiology(1993)47:875-912
【非特許文献5】ハッチンソン(Hutchinson)とフジイ(Fujii )、Annual Review of Microbiology (1995)49:20 1238
【発明の概要】
【0014】
植物及び植物細胞でポリケチド様合成(PKS様)遺伝子を使用することによる、長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFAs)を調製するための新規な組成物及び方法が提供される。公知の及び提唱されている脂肪酸合成遺伝子によるPUFAの生産方法に対して、本発明によると、PKS様系の遺伝子の使用による、PUFAの生産のための構築物及び方法が提供される。該方法は、宿主細胞内で機能する発現カセットにより形質転換された対象の宿主細胞を生育する工程から成り、発現カセットは転写開始調節領域及び翻訳開始調節領域から成り、PUFAsの生産を調節することができるPKS様系の遺伝子又は構成要素のDNA配列(PKS様遺伝子)に対して、読み枠5’内で結合される。宿主細胞のPUFAプロファイルの変更は、PUFA生合成を担う完全なPKS様系を宿主細胞へ導入した後の発現により達成される。本発明は、例えば、DHA及びEPAの大量生産や、宿主細胞並びに食用植物組織及び/又は植物部分の脂肪酸プロファイルの改変に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】ShewanellaのEPA遺伝子クラスタのORFsに対する呼称を提供する。遺伝子の構成を示し、E.coliでのEPAの生産に必須のORFsには番号を付けている。
【図1B】ShewanellaのEPA遺伝子クラスタのORFsに対する呼称を提供する。サブクローンに対して与えられる呼称を示す。
【図2】ORF6(図2A)、ORF7(図2B)、ORF8(図2C)、ORF9(図2D)及び/又はE3(図2E)のShewanella PKS様ドメイン構造、モチーフ及び「ブラスト」適合を提供する。図2FはShewanella EPA ORFsに存在するドメインに関連する、Anabeana染色体の領域の構造を示す。
【図3】E.coli株であるSJ16でのパンテテニレーション−ORF3に対する結果を示す。イメージは、列挙したプラスミドにより形質転換されたE.coli(SJ16株)由来の[C14]β−アラニン標識タンパク質を示す。レーン1はpUC19を示し、レーン2はpPA−NEB(ΔORF3)を示し、レーン3はpAA−Neb(EPA+)を示し、レーン4はORF6サブクローンを示し、レーン5はORF6+ORF3サブクローンを示し、レーン6はORF3サブクローンを示す。ACP及び未知(ではあるが以前に観察された)35kDタンパク質が、すべてのサンプルにおいて標識されている。レーン2及び5で検出された高分子量のタンパク質は、Shewanella ORF6遺伝子の完全長(最大のバンド)及び切断された(truncated )産物である(ウェスタン分析により確認)。E.Coli株SJ16のβ−アラニン合成を条件付きでブロックしている。
【図4A−1】ORFの3−9を含む、Shewanellaに見出されるPKS様クラスタに対するDNA配列(配列番号1)を示す。
【図4A−2】図4A−1の続きを示す図である。
【図4A−3】図4A−2の続きを示す図である。
【図4A−4】図4A−3の続きを示す図である。
【図4A−5】図4A−4の続きを示す図である。
【図4A−6】図4A−5の続きを示す図である。
【図4A−7】図4A−6の続きを示す図である。
【図4A−8】図4A−7の続きを示す図である。
【図4A−9】図4A−8の続きを示す図である。
【図4A−10】図4A−9の続きを示す図である。
【図4A−11】図4A−10の続きを示す図である。
【図4A−12】図4A−11の続きを示す図である。
【図4A−13】図4A−12の続きを示す図である。
【図4A−14】図4A−13の続きを示す図である。
【図4A−15】図4A−14の続きを示す図である。
【図4A−16】図4A−15の続きを示す図である。
【図4A−17】図4A−16の続きを示す図である。
【図4A−18】図4A−17の続きを示す図である。
【図4A−19】図4A−18の続きを示す図である。
【図4A−20】図4A−19の続きを示す図である。
【図4A−21】図4A−20の続きを示す図である。
【図4A−22】図4A−21の続きを示す図である。
【図4A−23】図4A−22の続きを示す図である。
【図4A−24】図4A−23の続きを示す図である。
【図4A−25】図4A−24の続きを示す図である。
【図4A−26】図4A−25の続きを示す図である。
【図4A−27】図4A−26の続きを示す図である。
【図4A−28】図4A−27の続きを示す図である。
【図4A−29】図4A−28の続きを示す図である。
【図4A−30】図4A−29の続きを示す図である。
【図4A−31】図4A−30の続きを示す図である。
【図4A−32】図4A−31の続きを示す図である。
【図4A−33】図4A−32の続きを示す図である。
【図4A−34】図4A−33の続きを示す図である。
【図4A−35】図4A−34の続きを示す図である。
【図4A−36】図4A−35の続きを示す図である。
【図4A−37】図4A−36の続きを示す図である。
【図4A−38】図4A−37の続きを示す図である。
【図4B】図4Aに示した配列のうちのヌクレオチド6121−8103によりコードされた、ORF2のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図4C】図4Aに示した鎖であるヌクレオチド9016−8186の相補鎖から翻訳した、公表ORF3のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図4D−1】ヌクレオチド配列8186−9157(配列番号4)を示す。この配列の相補鎖は、EPA合成に活性なORF3をコードしている。
【図4D−2】図4D−1の続きを示す図である。
【図4E】図4Aのヌクレオチド9681−12590(配列番号81)によりコードされたORF4に対応するアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図4F】図4Aのヌクレオチド13040−13903(配列番号82)によりコードされたORF5に対応するアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図4G−1】図4Aのヌクレオチド13906−22173(配列番号83)によりコードされたORF6に対応するアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図4G−2】図4G−1の続きを示す図である。
【図4G−3】図4G−2の続きを示す図である。
【図4H】図4Aのヌクレオチド22203−24515(配列番号84)によりコードされたORF7に対応するアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
【図4I−1】図4Aのヌクレオチド24518−30529(配列番号85)によりコードされたORF8に対応するアミノ酸配列(配列番号9)を示す。
【図4I−2】図4I−1の続きを示す図である。
【図4J】図4Aのヌクレオチド30730−32358(配列番号86)によりコードされたORF9に対応するアミノ酸配列(配列番号10)を示す。
【図4K】ヌクレオチド32834−34327に対応するアミノ酸配列(配列番号11)を示す。
【図5−1】ORF6,7,8及び9を含むVibrio marinusの約40kbDNA断片におけるPKS様クラスタに対する配列(配列番号12)を示す。各ORFについての最初及び最後のコドンは以下の通りである:ORF6:17394,25352;ORF7:25509,28160;ORF8:28209,34265;ORF9:34454,36118。
【図5−2】図5−1の続きを示す図である。
【図5−3】図5−2の続きを示す図である。
【図5−4】図5−3の続きを示す図である。
【図5−5】図5−4の続きを示す図である。
【図5−6】図5−5の続きを示す図である。
【図5−7】図5−6の続きを示す図である。
【図5−8】図5−7の続きを示す図である。
【図5−9】図5−8の続きを示す図である。
【図5−10】図5−9の続きを示す図である。
【図5−11】図5−10の続きを示す図である。
【図5−12】図5−11の続きを示す図である。
【図5−13】図5−12の続きを示す図である。
【図5−14】図5−13の続きを示す図である。
【図5−15】図5−14の続きを示す図である。
【図5−16】図5−15の続きを示す図である。
【図5−17】図5−16の続きを示す図である。
【図5−18】図5−17の続きを示す図である。
【図5−19】図5−18の続きを示す図である。
【図5−20】図5−19の続きを示す図である。
【図5−21】図5−20の続きを示す図である。
【図5−22】図5−21の続きを示す図である。
【図5−23】図5−22の続きを示す図である。
【図5−24】図5−23の続きを示す図である。
【図5−25】図5−24の続きを示す図である。
【図5−26】図5−25の続きを示す図である。
【図5−27】図5−26の続きを示す図である。
【図5−28】図5−27の続きを示す図である。
【図5−29】図5−28の続きを示す図である。
【図6−1】ORF6,7,8及び9を含む図5のPKS様クラスタの約19kb部分に対する配列(配列番号13)を示す。各ORFについての最初及び最後のコドンは以下の通りである:ORF6:411,8369(配列番号77);ORF7:8526,11177(配列番号78);ORF8:11226,17282(配列番号79);ORF9:17471,19135(配列番号80)。
【図6−2】図6−1の続きを示す図である。
【図6−3】図6−2の続きを示す図である。
【図6−4】図6−3の続きを示す図である。
【図6−5】図6−4の続きを示す図である。
【図6−6】図6−5の続きを示す図である。
【図6−7】図6−6の続きを示す図である。
【図6−8】図6−7の続きを示す図である。
【図6−9】図6−8の続きを示す図である。
【図6−10】図6−9の続きを示す図である。
【図6−11】図6−10の続きを示す図である。
【図6−12】図6−11の続きを示す図である。
【図6−13】図6−12の続きを示す図である。
【図7】Shewanella putrefaciensとVibrio marinusのPKS様遺伝子クラスタの比較を示す。図7BはVibrio marinusのオペロン配列である。
【図8】ORF6,7及び8は読み枠2にあるが、ORF9は読み枠3にあることを示す、図7Bに示したVibrio marinusのPKS様遺伝子クラスタ部分の拡大図。
【図9】Shewanella putrefaciens及びVibrio marinusのORF6の配列相同性を実証する。Shewanella ORF6が垂直方向軸側に描かれ、Vibrio ORF6が水平軸側に描かれている。線は、60%相同性を有するタンパク質の領域を示す。中央にある繰り返し線は、ORF6に見出される複数のACPドメインに対応する。
【図10】Shewanella putrefaciens及びVibrio marinusのORF7の配列相同性を実証する。Shewanella ORF7が垂直方向軸側に描かれ、Vibrio ORF7が水平軸側に描かれている。線は、60%相同性を有するタンパク質の領域を示す。
【図11】Shewanella putrefaciens及びVibrio marinusのORF8の配列相同性を実証する。Shewanella ORF8が垂直方向軸側に描かれ、Vibrio ORF8が水平軸側に描かれている。線は、60%相同性を有するタンパク質の領域を示す。
【図12】Shewanella putrefaciens及びVibrio marinusのORF9の配列相同性を実証する。Shewanella ORF9が垂直方向軸側に描かれ、Vibrio ORF9が水平軸側に描かれている。線は、60%相同性を有するタンパク質の領域を示す。
【図13】種々の補足実験と得られたPUFA産物とを示す。右側には、Vibrio及びShewanella遺伝子を含むE.coli株において製造された最も長いPUFAが左側に示されている。白抜きボックスはShewanella由来のORFsを示す。中が描かれたボックスはVibrio由来のORFsを示す。
【図14】E.coliFad E−での、Shewanella由来のORF8を用いた、Shewanella由来のpEPAD8(欠失ORF8)の補足遺伝子からの脂肪酸の生産を示す。クロマトグラムは、EPA(20:5)ピークを示す。
【図15】E.coliFad E−での、Shewanella由来のORF8を用いた、Shewanella由来のpEPAD8(欠失ORF8)の補足遺伝子からの脂肪酸の生産を示す。クロマトグラムは、EPA(20:5)ピーク及び(22:6)DHAピークを示す。
【図16】ORF8の補足実験と図15に示したクロマトグラムから得たPUFA値の表。
【図17】pCGN7770の構成要素を示すプラスミドマップ。
【図18】pCGN8535の構成要素を示すプラスミドマップ。
【図19】pCGN8537の構成要素を示すプラスミドマップ。
【図20】pCGN8525の構成要素を示すプラスミドマップ。
【図21】ヤザワ(Yazawa)(1996)、前掲、に定義されたShewanella ORFsと、図4に開示したShewanella ORFsとの比較。ヌクレオチド9157−9155の位置でロイシン(TTG)コドンから始まりヌクレオチド81858−183の位置で停止コドンで終わるタンパク質を、ORF3以外の完全PKS様クラスタを含むE.coli株中で異質プロモーターの制御下で発現させている場合、組換え細胞はEPAを生産する。従って、公表されたタンパク質配列は間違っている可能性があり、該タンパク質のコーディング配列は、ヌクレオチド9157−9155の位置のTTGコドンから始まるか、ヌクレオチド9172−9170の位置のTTGコドンから始まる可能性がある。この情報は、機能PKS様クラスタ異質系の発現に重要である。
【図22】pCGN8560の構成要素を示すプラスミドマップ。
【図23】pCGN8556の構成要素を示すプラスミドマップ。
【図24】公表されたORF3の上流での翻訳DNA配列(配列番号14)と、それがコードしている対応アミノ酸(配列番号15)とを示す。9016位置のATG開始コドンは、ヤザワ(Yazawa)ら(1996)、前掲、に説明されたタンパク質に対する開始コドンである。他の矢印は、細菌での開始コドンとしてやはり機能するTTG又はATTコドンを示す。ORF3が9016位置の公表されたATGコドンから始まる場合、タンパク質はEPA生産のためには機能しない。ORF3が9157位置のTTGコドンから始まる場合、タンパク質はEPA合成を促進することができる。
【図25】実施例1におけるプライマーを用いた、SS9 Photobacterに関するPCR産物(配列番号16)を示す。
【図26−1】実施例1に示したプライマーを用いたPCRより得たプローブ配列(配列番号17−31)。
【図26−2】図26−1の続きを示す図である。
【図26−3】図26−2の続きを示す図である。
【図26−4】図26−3の続きを示す図である。
【図27A−1】Schizochytrium ESTクローンのヌクレオチド配列を示す。LIB3033−047−B5、LIB3033−046−E6及び架橋PCR産物が、部分cDNA配列(ORF6同族体)に組み込まれている。
【図27A−2】図27A−1の続きを示す図である。
【図27B−1】Schizochytrium ESTクローンのヌクレオチド配列を示す。LIB3033−046−D2(hglc/ORF7/ORF8/ORF9同族体)。
【図27B−2】図27B−1の続きを示す図である。
【図27B−3】図27B−2の続きを示す図である。
【図27C−1】Schizochytrium ESTクローンのヌクレオチド配列を示す。LIB81−015−D5、LIB81−042−B9及び架橋PCR産物が、部分cDNA配列(ORF8/ORF9同族体)に組み込まれている。
【図27C−2】図27C−1の続きを示す図である。
【図28】Shewanella PKS配列とSchizochytrium配列との間の類似性の略図。
【図29A】Schizochytrium ESTクローンから推定したアミノ酸配列。ORF6同族体。
【図29B】Schizochytrium ESTクローンから推定したアミノ酸配列。hglc/ORF7/ORF8/ORF9同族体。
【図29C】Schizochytrium ESTクローンから推定したアミノ酸配列。ORF8/ORF9同族体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(好ましい実施形態の説明)
本発明によれば、Shewanella、Vibrio、Schizochytrium又は他の微生物に由来するポリケチド様合成(PKS様)経路遺伝子の一部又は全部を含む、宿主細胞、特に宿主植物細胞の多価不飽和長鎖脂肪酸含量を改変するための新規なDNA配列、DNA構築物及び方法が提供される。本発明は、Shewanella putrefaciens中のEPA合成遺伝子がポリケチド様合成経路を構成することを証明している。機能はShewanella、Schizochytrium及びVibrio遺伝子によるものであり、宿主細胞においてEPA及びDHAを生産するための方法が提供される。該方法は、宿主細胞における1または複数のPUFAの量を増大させることが可能なポリペプチドをコードするDNAを有する発現カセットにより細胞を形質転換する工程から成る。好ましくは、宿主細胞のゲノムへの発現カセットの組み込みを与える組込み構築物が調製される。宿主細胞はPKS様遺伝子活性を有する1つのポリペプチド(複数のポリペプチド)をコードするセンス又はアンチセンスDNAを発現するように操作される。「PKS様遺伝子」が意味するのは、関連のPKS様活性の1または複数の任意の機能の原因となっているポリペプチドである。「ポリペプチド」が意味するのは、長さや翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)に関係ない、任意のアミノ酸鎖である。宿主細胞の性質次第で、発現された酵素に対する基質が宿主細胞によって生産されるか、又は外因的に供給される。植物組織及び/又は葉、根、果実及び種子等の植物の一部におけるPUFA生産の選択的制御は特に重要である。本発明は、宿主細胞でEPA、DHA、及び他の関連PUFAsを合成するために使用することができる。
【0017】
PUFAsのトランスジェニックによる生産には多くの利点がある。例として、Shewanellaと同様トランスジェニックE.coliでは、リン脂質画分、特にsn−2位置にEPAが蓄積する。Shewanella又はE.coliのいずれかで生産される構造脂質とは実質的に異なる構造脂質を、所望の宿主細胞内で生産することが可能である。さらに、特定の宿主細胞におけるPUFAsのトランスジェニックによる生産は、魚又は植物等の天然供給源からの精製よりも優れたいくつかの利点を提供する。トランスジェニック植物では、PKS様の系を用いることにより、マロニルCo−A及びアセチルCo−Aを基質として利用する脂肪酸のデノボ生産を介してPUFAsを生産する系により、PUFAsの脂肪酸合成が細胞質にて達成される。このように、基質の競合や宿主における脂肪酸合成の通常の産物のPUFA生産への迂回等の問題が回避される。
【0018】
組換え植物での脂肪酸の生産は、宿主に新しい合成経路を与えるか又は望ましくない経路を抑制して、レベル所望のPUFAs又はその共役体のレベルを増大させるか望ましくないPUFAsのレベルを減少させることにより、天然の植物脂肪酸プロファイルを変更する能力を提供する。トランスジェニック植物における脂肪酸の生産も、特定の組織及び/又は植物の一部におけるPKS様遺伝子の発現により、そのような組織及び/又は一部における所望のPUFAsの大きな増加が達成され、そのような組織からの回収がより経済的となることを意味するという効果を提供する。植物組織及び/又は植物の一部における発現は、特に組織又は一部が種子、葉、果実、花、根等のように容易に収穫されるものである場合には、特定の有効性を示す。例えば、種子で所望のPUFAsを発現させることが可能であり、種子油を単離する方法はよく確立されている。所望のPUFAsの精製のための供給源を供給することに加えて、種子油成分は、特定のPUFAプロファイルを濃縮された形で有する種子油を提供するために、単独の又はエロンガーゼ等の遺伝子と組み合わせたPKS様遺伝子の発現により操作され得る。濃縮された種子油は、動物の乳及び/又はヒトによる授乳が不可能又は望ましくないか、成人及び幼児の両方で栄養不良又は疾病の場合に幼児用調合乳として機能する合成又は半合成乳に添加することができる。
【0019】
トランスジェニック微生物による脂肪酸の生産は、高等生物と比較して多くの微生物は非常に簡単な油の組成を有することが知られており、所望の成分の精製が容易であるという効果を提供する。微生物による生産は、天候や食物の供給などの外部変化によって生じる変動の影響を受けない。微生物によって生産された油は、環境汚染物質による汚染を実質的に受けない。さらに、微生物は特定の用途を有する特定の形式でPUFAsを提供し得る。例えば、スピルリナ(Spirulina)は、トリグリセリドの1位及び3位に優先的にPUFAsを与え、膵リパーゼによる消化は、脂肪酸をそれらの位置から解離させる。スピルリナ由来のトリグリセリドのヒト又は動物による消化の後、そのようなPUFAsは膵リパーゼにより遊離脂肪酸として解離され、例えば幼児の脳の発達に直接利用される。また、微生物油の生産は、培養条件を制御することにより、特に微生物により発現された酵素に対する特定の基質を与えるか又は望ましくない生化学経路を抑制する化合物を添加することにより、操作することができる。そのような効果に加えて、組換え微生物からの脂肪酸の生産は、宿主に新しい合成経路を与えるか又は望ましくない経路を抑制して、レベル所望のPUFAs又はその共役体のレベルを増大させるか望ましくないPUFAsのレベルを減少させることにより、天然の微生物脂肪酸プロファイルを変更する能力を提供する。
【0020】
動物での脂肪酸の生産もいくつかの利点を与える。動物でのデサチュラーゼ遺伝子の発現により、動物組織における所望のPUFAsのレベルが非常に増大し、そのような組織からの回収をより経済的なものとすることができる。例えば、所望のPUFAsが動物の母乳中で発現している場合、動物の乳からのPUFAsの単離方法はよく確立されている。所望のPUFAsの精製のための供給源を提供することに加えて、動物の母乳は、幼児の発達の種々の段階の間にヒト母乳と非常に類似したPUFA組成物を動物の乳に与えるために、デサチュラーゼ遺伝子の発現により操作され得る。母乳化した動物の乳は、ヒトによる授乳が不可能又は望ましくないか、栄養不良又は疾病の場合に、幼児用調合乳として機能し得る。
【0021】
所望のPKS様遺伝子をコードするDNAは、種々の方法で同定することが可能である。1つの方法において、所望のPKS様遺伝子の供給源である、例えばShewanella、Schizochytrium又はVibrio種由来のゲノムライブラリは、酵素的に又は化学的に合成された検出可能なプローブによりスクリーニングされる。PKS様遺伝子を有するORFsの供給源は、高圧下又は比較的低温で選択的に成育するDHA生産又はEPA生産深海細菌を始めとする、所望のPUFAを生産する生物である。EPA又はDHAを生産するShewanella等の微生物を、PKS様遺伝子の供給源として使用することが可能である。プローブは、DNA、RNA、又は非天然ヌクレオチド、若しくはそれらの混合物より製造することが可能である。プローブは通常の又はストリンジェンシーを減らしたハイブリッド形成方法で既知のPKS様遺伝子のDNAから酵素的に合成することが可能である。核酸プローブの設計及びアニーリング条件の議論に関しては例えば、サンブルック(Sambrook)ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2 版)、1 −3 巻、Cold Spring Harbor Laboratory ,(1989)又はC urrent Protocols in Molecular Biology,エフ アウスベル(F. Ausubel)ら編、Greene Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)を参照されたい。各文献は、参照により本明細書に組み込まれる。PUFA酵素をコードしている核酸を操作する技術、例えば、発現ベクターへのポリペプチドをコードする核酸配列のサブクローニング、プローブ標識、DNAハイブリッド形成は、前掲のサンブルックに概説されている。
【0022】
オリゴヌクレオチドプローブも、供給源をスクリーニングするために使用することができ、オリゴヌクレオチドプローブは、既知のPKS様遺伝子間で保存されている配列を含む既知PKS様遺伝子配列に基づき得るか、所望の精製タンパク質から得られるペプチド配列に基づき得る。アミノ酸配列に基づくオリゴヌクレオチドプローブは、遺伝子コードの縮重を包含するように縮重されるか、供給源である生物の好ましいコドンを選ぶように偏向される。代わりに、所望のタンパク質は完全に配列決定された、その実施されたポリペプチドのDNA完全合成体であり得る。
【0023】
所望のDNAが一旦単離されると、該DNAは既知の方法で配列決定される。そのような方法にはエラーが起こりやすく、同じ領域を複数回配列決定することはルーチン作業であり、得られた配列(特に、GC塩基含量の高い領域等の、繰り返しドメイン、広い二次構造、又は異常塩基組成物を有する領域)には測定できる割合の誤りがまだ存在すると予想されることが、当該技術分野では認識されている。矛盾が生じた場合には、再度の配列決定が行われ、特定の方法が使用され得る。特定の方法には、異なる温度;異なる酵素;オリゴヌクレオチドの高次構造を形成する能力を変更するタンパク質;ITP又はメチル化dGTP等の変更ヌクレオチド;例えばホルムアミドの添加等の異なるゲル組成;異なるプライマー又は問題の領域とは異なる距離に位置するプライマー;又は一本鎖DNA等の異なる鋳型を用いた配列決定条件の変更が含まれる。mRNAの配列決定も使用することが可能である。
【0024】
大半の場合、PKS様遺伝子活性を有するポリペプチドに対するコード配列の一部又は全体は、天然供給源に由来するものである。しかし場合によっては、例えば発現を高めるために、宿主の好ましいコドンを用いて、コドンの全体又は一部を改変することが望ましい。宿主の好ましいコドンは、関連の特定宿主種に大量に発現しているタンパク質中の、最も頻度が高いコドンから決定することができる。このようにPKS様遺伝子活性を有するポリペプチドに対するコード配列は、全体又は一部が合成される。DNAの全体又は一部は、転写mRNAに存在する任意の不安定化配列又は二次構造の領域を除去すべく、合成することもできる。DNAの全体又は一部は、塩基組成を所望の宿主細胞にとってより好ましい組成に変更すべく、合成することもできる。配列を合成し、配列をまとめるための方法が参考文献によく確立されている。インビトロ突然変異誘発及び選択、部位特異的突然変異誘発、又は他の手段を用いて、自然PKS様遺伝子の変異体を得、所望の多価不飽和脂肪酸の長い半減期又は高速生産等の、宿主細胞で機能する望ましい物理的及び動力学的パラメータにより、インビボでPKS様遺伝子活性を有するポリペプチドを生産することができる。
【0025】
Shewanella putrefaciens ORFs並びにVibrio marinus及びSchizochytriumの対応するORFsは、特に重要である。Shewanella putrefaciens PKS様遺伝子は、EPAの生合成を遂行するためにトランスジェニック植物で発現させることが可能である。Shewanella putrefaciens PKS様遺伝子と配列が実質的に同一な他のDNAs、又はVibrio marinus又はSchizochytriumから同定されたDNAsのようなShewanella putrefaciensのPKS様遺伝子と実質的に同様なポリペプチドをコードするDNAsが使用され得る。配列が実質的に同一であるとは、Shewanella putrefaciens PKS様遺伝子のDNA配列又は該遺伝子に対するアミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、順番に増加する少なくとも60%、80%、90%又は95%の相同性を示すアミノ酸又は核酸配列を糸する。ポリペプチドの場合、比較する配列の長さは一般に、少なくとも16アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸、及び最も好ましくは35アミノ酸である。核酸の場合、比較する配列の長さは一般に、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも60ヌクレオチド、及びより好ましくは少なくとも75ヌクレオチド、及び最も好ましくは、110ヌクレオチドである。
【0026】
相同性は一般に、配列分析ソフトウェア、例えば、Genetics Computer Group University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, ウィスコンシン州マジソン(Madison )53705 のSequence Analysis ソフトウェアパッケージ、MEGAlign(DNAStar, Inc., 1228 S.Park St., ウィスコンシン州マジソン(Madison )53715 )、及び MacVector(Oxford Molecular Group, 2105S. Bascom Avenue, Suite 200,カリフォルニア州キャンベル(Campbell)95008 )を用いて測定される。BLAST (National Center for Biotechnology Information (WCBI) www.ncbi.nlm.gov; FASTA(Pearson 及び Lipma n 、 Science(1985) 227:1435-1446)。そのようなソフトウェアは、種々の置換、欠失、及び他の修飾に対する相同性の程度の割り当てにより、同様な配列に適合する。同類置換は一般に以下のグループ内での置換を含む:グリシンとアラニン;バリン、イソロイシンと、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンとグルタミン;セリンとスレオニン;リジンとアルギニン;並びにフェニルアラニンとチロシン。置換は疎水性又は親水性の保存に基づいて(カイト(Kyte)及びドゥーリトル(Doolittle )、J. Mel. Biol. (1982)157 :105-132 )、又は同様なポリペプチド二次構造を取る能力(チョウ(Chou)及びファスマン(Fasman), Adv. Enzymol. (1978)47:45-148 、1978)に基づいて行うことも可能である。プローブ配列に対する関連タンパク質は、p>0.01、好ましくは>10-7又は10-8である時に同定される。
【0027】
同じか又は別の生物由来の関連PKS様遺伝子が本発明に包含される。そのような関連PKS様遺伝子には、Shewanellaの同じか異なる種内で自然に生じる開示されたPKS様ORFsの変異体、開示されたPKS様遺伝子の他の種由来の同族体、及び類似の機能及び活性を有する進化上関連するタンパク質が含まれる。Shewanella putrefaciensPKS様遺伝子とは実質的に同一ではないが、PKS様系の一部としてPUFAsを生産するように同様な様式で作用するPKS様遺伝子も含まれる。関連PKS様遺伝子は、開示されたPKS様遺伝子と実質的に同じように機能する能力により同定される。つまり、関連PKS様遺伝子は、対応するShewanella、Schizochytrium又はVibrioのORFsの代わりを果たすことができるが、なお有効にEPA又はDHAを生産する。関連PKS様遺伝子は、開示されたPKS様遺伝子と相同な配列に対する配列データベースのスクリーニングによって、開示されたPKS様遺伝子に基づくプローブを供給源生物より構築したライブラリとハイブリッド形成することによって、又は供給源生物由来のmRNA及び開示されたPKS様遺伝子に基づくプライマーを用いたRT−PCRによっても同定することが可能である。従って、「PKS様遺伝子」という言葉は、本明細書に開示したヌクレオチド配列のみを指すわけではなく、対立遺伝子である他の核酸又は上記ヌクレオチド配列の種変異体をも指す。そのような言葉は、組換え技術を用いた単一点突然変異等の意図的突然変異により、PUFA酵素をコードするDNA読み取り枠の短い部分を除去により、又は新たなコドンとの置換又は新たなコドンの添加により導入された、非自然突然変異を含むことも理解される。そのような小さな変更は、元の発現産物の免疫同一性及び/又はその生物活性を実質的に維持する。変更されたPUFA酵素の生物学的特性は、酵素を適切な細胞系で発現させたり酵素PUFAsを合成する該酵素の能力を決定したりすることにより決定することができる。小さいと考えられる特定の酵素の改変には、同様な化学的特性を有するアミノ酸の置換(例えば、グルタミン酸をアスパラギン酸と置換又はグルタミンをアスパラギンと置換)が含まれる。
【0028】
他の生物由来のPUFA PKS様系を使用した場合、ポリペプチドPKS様遺伝子活性に重要なPKS様遺伝子の領域は定型の突然変異誘発、得られた変異ポリペプチドの発現及びその活性の決定により決定することができる。変異体のコーディング領域には、欠失、挿入及び点突然変異、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。一般的な機能分析は、タンパク質が機能するのに必要なタンパク質のN及びC末端の限界を決定する欠失突然変異誘発から始まり、次に、機能するのに必要な領域をさらに詳しく決定するために、内部欠失、挿入又は点突然変異が読取り枠で行われる。カセット突然変異誘発又は全合成のような他の技術も使用することが可能である。欠失突然変異誘発は、例えば、5’又は3’コーディング領域を逐次除去するエキソヌクレアーゼを用いることにより達成される。そのような技術のためのキットを利用することが可能である。欠失後、コーディング領域は開始コドン又は停止コドンを含むオリゴヌクレオチドを5’又は3’欠失後の欠失したコーディング領域にライゲートすることにより完成される。
【0029】
代わりに、開始コドン又は停止コドンを含むオリゴヌクレオチドは部位特異的突然変異誘発、突然変異PCR又は既存の制限部位で消化したDNAに対するライゲートを始めとする種々の方法によりコーディング領域に挿入される。内部欠失は、部位特異的突然変異誘発又は突然変異PCRを介した突然変異プライマーの使用により、DNAの既存の制限部位の使用を含む種々の方法により同様に行われ得る。挿入はリンカー走査突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発又は突然変異PCR等の方法により行われる。点突然変異は、部位特異的突然変異誘発又は突然変異PCR等の技術により行われる。
【0030】
活性に重要なPKS様遺伝子ポリペプチドの領域を同定するためには、化学的突然変異誘発も使用される。変異構築物を発現させ、得られた変更タンパク質のPKS様遺伝子として機能する能力が評価される。そのような構造−機能分析では、どの領域が欠失し、どの領域が挿入を許容し、どの点突然変異が天然PKS様遺伝子と実質的に同じ様に機能する突然変異タンパク質を許容するかを決定することができる。それらをコードするすべてのそのような突然変異タンパク質及びヌクレオチド配列は、本発明の範囲内にある。EPAはShewanellaではPKS様系の産物として生産され、EPA遺伝子はその系の構成要素をコードしている。Vibrioでは、同様な系によりDHAが生産される。そのような脂肪酸を合成するクラスタ遺伝子によりコードされる酵素は、通常細菌及び植物で見出されるC16及びC18脂肪酸の合成に関与する酵素をコードする脂肪酸合成遺伝子とは異なる遺伝子クラスタによってコードされる。Shewanella EPA遺伝子はPKS様遺伝子クラスタを示し、EPAの生産は、少なくともある程度は、細菌のタイプII型FAS系から独立している。従って、植物細胞の細胞質におけるEPAの生産は、適切な植物調節信号下での植物細胞におけるPKS様経路遺伝子の発現により達成することができる。
【0031】
Shewanella EPA遺伝子により形質転換されたE.coliでのEPAの生産は、嫌気的成長の間進行し、O2依存的なデサチュラーゼ反応は関与しないことを示している。EPAの生産に必須のORFsによりコードされたタンパク質の分析により、PKS様系の特徴であるドメイン構造が存在することが明らかとなっている。図2Aは「BLAST」データバンクサーチにより検出されたドメイン、モチーフ、及び重要な相同性の概要を示す。EPAはPKS様経路で生産される他の物質の多くとは異なるため、すなわち分子に沿って3炭素間隔で離間した5個のcis二重結合を有するため、EPAの合成のためのPKS様系は予想されていない。
【0032】
さらに EPA ORFsに存在するドメインを用いたBLASTサーチにより、いくつかのドメインがAnabeanaに見出されたPKS様遺伝子クラスタによりコードされたタンパク質に関連することが明らかになっている。Anabeana染色体のそのような領域の構造を図2Fに示す。Anabeana PKS様遺伝子は、異質細胞の糖脂質層に見出された長鎖(C26)のヒドロキシ脂肪酸の合成と結びつけられる。Anabeanaタンパク質に対する相同なEPAタンパク質ドメインを図2Fに示す。
【0033】
ShewanellaのORF6は、活性部位モチーフ(DXAC*)(配列番号32)と同様、多くのType II KASタンパク質の端部に存在する「GFGG」モチーフ(配列番号33)を含む、KASドメインを有する(図2Aを参照されたい)。延長されたモチーフも存在するが、本明細書には示さない。次はマロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ(AT)ドメインである。活性部位モチーフ(GHS*XG)(配列番号34)付近の配列は、メチルマロン酸塩ではなくマロン酸塩を移動させる、すなわち酢酸塩様ATsに類似することを示唆している。リンカー領域の後、各々が約100アミノ酸の長さである6個の繰り返しドメインから成り、PKS様ACP配列と相同なクラスタが存在する。各々は、パンテテイン結合部位モチーフ(LGXDS*(L/I))(配列番号35及び36を含む)。6個のそのようなACPドメインの存在は、脂肪酸シンターゼ(FAS)又はPKS様系では以前には観察されていなかった。タンパク質の端部付近には、β−ケト−ACPレダクターゼ(KR)に対する相同性を示す領域が存在する。KRは、ピリジンヌクレオチド結合部位モチーフ「GXGXX(G/A/P)(配列番号37、38及び39)を含む。
【0034】
Shewanella ORF8は活性部位と終結モチーフ(図2)とを含むKASドメインから始まる。データバンクで最もよく適合したのは、Anabeana HglDである。 HglCのN末端半分と相同な配列を有するドメインも存在する。この領域は、活性部位及び終結モチーフを欠いているが、やはりKASタンパク質に対する弱い相同性を示す。該領域は、Type II PKS様系のいわゆる鎖長因子(CLF)と呼ばれる特性を有する。ORF8はPKS様系によるEPA対DHAの生産を指向していると思われる。また、ORF8はβ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ(DH)と相同な2つのドメインを有する。両ドメインに対して最もよく適合するのは、E.coli FabA、つまり得られた二重結合の脱水反応及び異性化(transからcisへの)の両方を遂行する二つの作用を有する酵素である。第1のDHドメインは、FabA触媒作用に関連する活性部位ヒスチジン(H)及び隣接システイン(C)を含む。第2のDHドメインは活性部位Hは有するが隣接Cを欠いている(図2C)。第2DHドメインに関するBlastサーチはFabZ、すなわちイソメラーゼ活性を持たない第2のE.coli DHに対して適合していることも示す。
【0035】
ORF7(図2B)のN末端半分は、データバンクで有意に適合するものがない。C末端半分と最もよく適合するのは、Anabeana HglcのC末端部分である。このドメインはアシルトランスフェラーゼ(AT)モチーフ(GXSXG)(配列番号40)を含む。E.coliマロニル−CoA:ACP ATの結晶構造に基づいて延長された活性部位配列を比較すると、ORF7は活性部位(E.coli名称;Q11及びR117)から水を排除するのに必要な2つの残基を欠いていることが明らかである。以上のデータは、ORF7がチオエステラーゼとして機能し得ることを示唆している。
【0036】
ORF9(図2D)は、Anabeana Hglクラスタの未知の機能を有するORFと相同である。ORF9は、窒素固定細菌における調節タンパク質であるNIFAとも非常に弱い相同性を示す。ORF9タンパク質に関する調節の役割はこれまで排除されていない。ORF3(図2E)はAnabeana HetI、E.coli由来のEntD、及びバチルスのSfpと相同である。近年、HetI、EntD及びSfpを含むリン酸パンテテニルトランスフェラーゼの新しい酵素ファミリーが同定されている。(ランブロット アール エイチ(Lamblot RH)ら(1996)A new enzyme superfamily-the phophopantetheinyl transferases. Chemistry&Biology,第3 巻、第11号、923-936 )。図3のデータは、ORF3の存在がORF6タンパク質へのβ−アラニン(すなわちパンテテイン)の添加に必要であることを証明している。このように、ORF3は、ORF6 ACPドメインに特異的なリン酸パンテテニルトランスフェラーゼをコードしている(ヘイドック エス エフ(Haydock SF)ら(1995)を参照のこと。互いに異なる配列モチーフが、モジュラーポリケチドシンターゼの(メチル)マロニル−CoA:アシルキャリアタンパク質トランスアシラードメインの基質特異性と相関関係にあった。FEBS Lett.,374, 246-248 )マロン酸塩は、EPA合成の延長反応に使用される炭素の供給源である。その上、マロニル−ACPではなくマロニル−CoAがAT基質である。すなわち、ORF6のAT領域はマロニル−CoAを利用する。
【0037】
PUFA生産を担う生物のPKS様遺伝子をコードするDNA配列が一旦得られると、該DNA配列は宿主細胞内の複製が可能なベクターに配置されるか、PCR又はロングPCR等の技術によりインビトロで増幅される。複製用のベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、コスミド等を含み得る。望ましいベクターには、対象の遺伝子の突然変異誘発用や対象の遺伝子の宿主細胞での発現用に有効なベクターが含まれる。PUFA合成酵素又は相同タンパク質は、組換えにより作成された種々の細胞で発現させることが可能である。PUFA酵素をコードするDNAを発現させるためには、多くの発現系が利用可能である。PUFA酵素をコードする天然又は合成核酸の発現は、通常、発現ベクター内のプロモーター(構成プロモータ又は誘導プロモータ)にDNAを機能的に連結させることにより達成される。発現ベクターとは、その転写を与える追加セグメントと機能的に連結した、PUFA酵素をコードするセグメントを有する線形又は円形のDNA分子を意味する。そのような追加セグメントには、プロモーター及びターミネーター配列が含まれる。発現ベクターは、1または複数の複製起点、1又は複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル等を含み得る。発現ベクターは一般にプラスミド又はウイルスDNAに由来し、両方の構成要素を含み得る。「機能的に連結した」とは、セグメントが、例えば、転写がプロモーターで始まりコーディングセグメントを介してターミネータまで進むというように、その意図された目的と適合して機能するように配列されることを意味する。サンブルックら、前掲を参照されたい。
【0038】
ロングPCRの技術は、大きな構築物のインビトロ増幅を可能にし、突然変異誘発や発現シグナルの付加等の対象遺伝子の改変及び得られた構築物の増幅が、複製用ベクター又は宿主細胞を使用しなくても完全にインビトロで起こるようになっている。インビトロでの発現は、例えば、インビトロでの使用のために設計された発現ベクター内に、デサチュラーゼポリペプチドに対するコーディング領域を配置し、ウサギ網赤血球溶菌液と補因子を添加することにより達成することが可能である。標識アミノ酸を所望に応じて組み込み得る。そのようなインビトロ発現ベクターは、使用する系に必要な発現シグナルの一部又は全部を提供し得る。上記方法は当該技術分野においてよく知られており、系の構成要素は市販されている。反応混合物は、例えばPKS用酵素の活性を決定することによりPKS用酵素用に直接測定されるか、合成酵素を精製して測定し得る。
【0039】
宿主細胞での発現は、一時的な又は安定な様式で遂行することが可能である。一時的発現は、宿主細胞で機能する発現シグナルを含む導入構築物から起こる。ただし、構築物が複製しなかったり宿主細胞にめったに融合しなかったりする場合や、宿主細胞が増殖しない場合は除く。一時的発現は、対象遺伝子と機能的に連結した調節可能なプロモーターの活性を誘導することによっても遂行することが可能であるが、そのような誘導システムはしばしば発現の基礎レベルが低い。安定な発現は、宿主ゲノムに組み込み可能であるか又は宿主細胞で自律的に複製する核酸構築物の導入により達成することが可能である。対象遺伝子の安定な発現は、発現構築物上に位置するか発現構築物により移入された選択マーカーの使用によって選択され、後にマーカーを発現している細胞が選択される。安定な発現が組込みによる場合、構築物の組込みは宿主ゲノム内でランダムに起こるか、宿主の座との標的組換えに十分な程度の宿主ゲノムとの相同性を有する領域を含む構築物の使用によって狙いを定められる。構築物が内因性の座を標的とする場合、転写及び翻訳調節領域の全体又は一部が該内因性の座によって与えられる。宿主細胞での発現を達成するために、形質転換DNAは、宿主細胞で機能する転写及び翻訳の開始及び終結調節領域と機能的に連結される。
【0040】
転写及び翻訳開始及び終結領域は、発現すべきDNA、既知の又は所望の系での発現を可能にすると推測されている遺伝子、発現ベクター、化学合成を始めとする種々の非限定的な供給源に由来する。終結領域は開始領域が得られた遺伝子の3’領域に由来するか、異なる遺伝子に由来し得る。多数の終結領域が知られており、それらは同じ及び異なる属及び種に由来する種々の宿主で満足のいくものであることが判明している。終結領域は、任意の特定の特性のためというより便宜のため選択される。同じ細胞中で2以上のPKS様ORFを発現させる場合、適切な調節領域及び発現方法を使用すべきである。導入された遺伝子は、複製用ベクターの使用か、宿主ゲノムへの組込みにより宿主細胞で増幅される。2又はそれより多い遺伝子が別個の複製ベクターで発現している場合、各ベクターは異なる複製手段を有することが望ましい。導入された各構築物は、組み込まれていようが組み込まれていまいが、安定な発現を維持し構築物間での構成要素の再結合を防止するために、異なる選択手段を有すると共に、他の構築物との相同性を欠いているべきである。調節領域の賢明な選択、選択手段及び導入された構築物の増幅方法は、導入された遺伝子がすべて所望の産物の合成を与えるのに必要なレベルで発現されるように、実験的に決定することができる。
【0041】
PUFA酵素を発現させるためには種々の原核生物発現系を使用することが可能である。転写のためのプロモーター、リボゾーム結合部位、及び転写ターミネーターを有する発現ベクターを構築することが可能である。E.coliにおける上記目的に適した調節領域の例は、ヤノフスキ(Yanofsky)(1984)J. Bacteriol., 158:1018-1024に説明されたようなE.coliトリプトファン生合成経路のプロモーター及びオペレータ領域や、ハースコヴィッツ(Hersko witz)とハーゲン(Hagen )(1980)Ann. Rev. Genet., 14:399-445に説明されたようなファージラムダ(Pλ)の左方向プロモーターである。E.coli中で形質転換されるDNAベクターに選択マーカーを入れることも有効である。そのようなマーカーの例には、アンピシリン、テトラサイクリン、又はクロラムフェニコールへの耐性を明確に示す遺伝子が含まれる。細菌宿主での外来遺伝子の発現に使用されるベクターは、一般に、抗生物質耐性遺伝子等の選択マーカーと宿主細胞において機能するプロモーターとを含む。細菌を形質転換するのに有効なプラスミドには、pBR322(ボリバー(Bolivar )ら、(1977)Gene 2:95-113 )、pUCプラスミド(メッシング(Messing )(1983)Meth. Enzymol. 101:20-77、ヴィエラ(Vieira)とメッシング(Messing )、(1982)Gene 19:259-268 )、pCQC2(Queen 、前掲)、及びそれらの派生物が含まれる。プラスミドは、ウイルスの構成要素と細菌の構成要素の両方を含んでいてもよい。生物学的に活性な形式でタンパク質を回収する方法については、米国特許第4,966,963号及び4,999,422号に議論されている。両特許は参照により本明細書に組み込まれる。他の原核生物発現系の説明についてはサンブルックらの文献を参照されたい。
【0042】
真核生物における発現の場合、本発明の実施に使用される宿主細胞としては、ホ乳類、鳥類、植物、昆虫類、及び菌類細胞が包含される。例として、植物の場合、プロモーターの選択は、構成又は誘導による発現が望ましいかどうかということや、植物の特定の生育段階及び/又は特定の組織においてPUFAsを生産することが望ましいかどうかということに一部依存する。ORFsの発現のために特定の組織及び/又は生育段階を選択するという考えは、競合する基質又は特定のPUFAの発現を許容する宿主細胞の能力によって決まり得る。米国特許第5,463,174号、米国特許第4,943,674号、米国特許第5,106,739号、米国特許第5,175,095号、米国特許第5,420,034号、米国特許第5,188,958号、及び米国特許第5,589,379号に説明されたような特定の調節配列を用いることにより、発現は、種子、葉、果実、花及び根等の宿主植物内の特定位置に定められる。宿主細胞が酵母である場合、特に宿主種由来の、酵母細胞で機能する転写領域と翻訳領域が与えられる。転写開始調節領域は、例えばアルコールデヒドロゲナーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)、ホスホグルコイソメラーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ等の解糖経路の遺伝子や、酸性ホスファターゼ、ラクターゼ、メタロチオネイン、グルコアミラーゼ等の調節可能な遺伝子から得られる。構成転写又は誘導転写が望ましいかどうか、問題の読み取り枠と関連させたプロモーターの特定の有効性、強力なプロモーターを誘導転写を許容する異なるプロモーター由来の制御領域と結合させる能力、構築のし易さ等に従って、特定の状況で多くの調節配列のうちの任意の1つを使用することが可能である。特に重要なのは、ガラクトースの存在下で活性化されるプロモーターである。ガラクトースで誘導されるプロモーター(GAL1、GLA7、及びGAL10)は酵母において高レベルレベルかつ調節されたタンパク質の発現を得るために広く使用されている(ルー(Lue )ら、(1987)Mol. Cell. Biol.7 :3446; ジョンストン(Johnston)、(1987)Microbiol. Rev. 51:458)。GALプロモーターからの転写は、GAL4タンパク質により活性化される。GAL4タンパク質はガラクトースが存在する場合にプロモーター領域に結合し、転写を活性化させる。ガラクトースが存在しない場合、アンタゴニストGAL80がGAL4に結合し、GAL4による転写の活性化を防止する。ガラクトースの添加により、GAL80によるGAL4の活性化抑制が防止される。好ましくは、終結領域は酵母遺伝子、特にサッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、カンジダ(Candida)又はクルベロマイセス(Kluyveromyces)に由来する。2つのホ乳類遺伝子の3’領域、つまりγインターフェロンとα2インターフェロンも酵母で機能することが知られている。
【0043】
翻訳開始コドンATGを包囲するヌクレオチド配列が酵母細胞での発現に影響を及ぼすことがわかっている。所望のポリペプチドが酵母で少量しか発現していない場合、内因性遺伝子のヌクレオチド配列を、最良の遺伝子発現を得るのに有効な酵母翻訳開始を含むように改変することが可能である。配列サッカロマイセスでの発現の場合、それは、発現が有効でない遺伝子をフレーム内で内因性サッカロマイセス遺伝子(好ましくはラクターゼ遺伝子のように高度に発現する遺伝子)と融合させることにより、該発現が有効でない遺伝子の部位特異的突然変異誘発により行うことができる。
【0044】
植物細胞細胞質でのPKS様遺伝子の代替方法は、葉緑体を酵素の標的にする方法がある。葉緑体をタンパク質の標的にする1方法は、タンパク質のN末端に取り付けられたリーダーペプチドを必要とする。一般的に使用されているリーダーペプチドは、植物リブロース二リン酸カルボキシラーゼの小さなサブユニットに由来するものである。他の葉緑体タンパク質に由来するリーダー配列も使用することが可能である。葉緑体をタンパク質の標的にする他の方法は、葉緑体ゲノムの形質転換である(レシピエント細胞の外来DNAで被覆された高速タングステンミクロ投射物との衝撃を用いたクラミドモナス ラインハーティ(Chlamydomonass reinhardtii)(緑藻の1つ)の葉緑体の安定な形質転換が説明されている。例えば、ブラウワーズ(Blowers )ら、Plant Cell(1989)1:123-132 及びデバキー(Debuchy )ら、EMBO J(1989)8:2803-2809 を参照されたい。)タングステンミクロ投射物を用いた形質転換技術はクライン(Kline )ら、Nature(ロンドン)(1987)327:70-73 )に説明されている。葉緑体の形質転換の最も一般的な方法は微粒子銃技術の使用に関するが、この目的で開発された他の技術も使用することが可能である。外来遺伝子産物を葉緑体(シリアー(Shrier)ら、EMBO J. (1985)4:25-32 )又はミトコンドリア(mitochnodria)(ボウトリ(Boutry)ら、前掲)へ狙いを定めて入れる方法が説明されている。核内遺伝子産物を葉緑体内に転位するための運搬ペプチドの利用についてのトマイ(Tomai )ら、Gen. Biol. Chem.(1988)263:15105-15109 及び米国特許第4,940,835も参照されたい。タンパク質の輸送を葉緑体に向ける方法はケナウフ(Kenauf)TIBTECH (1987)5:40-47 に概説されている。
【0045】
PUFAsを鳥類種及び鳥類の細胞で生産する場合、遺伝子の移行は当該技術分野において周知の手順に従って細胞PUFA酵素をコードする核酸配列を導入することにより行われる。トランスジェニック動物が望ましい場合、多能性の胚性幹細胞に導入遺伝子をコードするPUFA酵素を備えたベクターを与え、成動物中で生育することができる(米国特許第5,162,215号;オノ(Ono )ら、(1996)Comparative Biochemistry and Physiology A 113 (3 ):287-292 ;WO第9612793号;WO第9606160号)。大半の場合、導入遺伝子はPUFAsの生産を増大させるべく高レベルのPKS様酵素を発現するように改変される。導入遺伝子は、例えば、特定組織や卵黄のような卵の一部における発現を指向するプロモーターのように、鳥類細胞で機能する転写調節領域及び/又は翻訳調節領域を与えることにより改変することができる。遺伝子調節領域はニワトリ貧血ウイルス又は鳥類白血病ウイルス又はニワトリ卵白アルブミン等の鳥類遺伝子を始めとする種々の供給源より得ることができる。
【0046】
昆虫細胞におけるPUFAsの生産は、PKS様移行遺伝子を入れたバキュロウイルス発現ベクターの使用により行うことが可能である。バキュロウイルス発現ベクターは、クロンテック(Clonetech)等のいくつかの市販先から入手可能である。デサチュラーゼ導入遺伝子を有し該遺伝子を発現する海洋藻類等の藻類のハイブリッド及びトランスジェニック株を生産する方法も提供される。例えば、トランスジェニック海洋藻類は、米国特許第5,426,040号に説明されているように調製することが可能である。上述した他の発現系に関して、タイミング、発現の程度及びデサチュラーゼ導入遺伝子の活性は、ポリペプチドコーディング配列を特定用途のために選択された適切な転写調節領域及び翻訳調節領域と適合させることにより調節することが可能である。特に重要なのは、予め選択した成長条件下で誘導可能なプロモーター領域である。例えば、デサチュラーゼ導入遺伝子コーディング配列、その調節領域、及び/又は細胞ゲノムへの、温度感受性突然変異及び/又は代謝産物応答性突然変異の導入が上記目的に使用され得る。
【0047】
形質転換した宿主細胞は、所望の最終結果に適合された適切な条件下で成育する。宿主細胞を培養物中で成育する場合、PUFAsの最も多い収率か最も経済的な収率が得られるように条件は最適下され、これには選択デサチュラーゼ活性に関連する。最適化し得る培地条件には、炭素源、窒素源、基質の添加、添加した基質の最終濃度、添加した基質の形、好気性又は嫌気性培養、成育温度、誘導剤、誘導温度、誘導時の成育時期、採取時の成育時期、pH、密度、及び選択のメンテナンスが包含される。例えば、酵母等の微生物は、好ましくは、酵母ペプトンブロス(YPD)と最小培地(アミノ酸、酵母窒素塩基、硫酸アンモニウムを含むが、例えばウラシル等の自由選択の成分を欠いている)とを含む問題の選択培地を用いて成育される。好ましくは、添加する予定の基質は、最初にエタノールに溶解される。必要な場合、例えばGALプロモーターから発現を誘導すべくガラクトースを含むか添加することにより、問題のポリペプチドの発現が誘導され得る。
【0048】
PKS様遺伝子システムからPUFAを発現する宿主細胞において、PKS様遺伝子ポリペプチドの発現の増大が望まれる場合、いくつかの方法を使用することができる。PKS様遺伝子ポリペプチドをコードするさらなる遺伝子を宿主生物に導入することが可能である。天然PKS様遺伝子座からの発現も、例えばより強力なプロモーターを宿主ゲノムに挿入して発現を増大させたり、不安定化配列を宿主ゲノムからその情報を削除することによりmRNA又はコードされたタンパク質から除去したり、又は安定化配列をmRNAに加えたり(米国特許第4,910,141号及び米国特許第5,500,365号を参照)することにより、相同的組換えを介して増大させることができる。従って、対象の宿主は、少なくとも1つの発現構築物のコピーを有し、遺伝子をゲノムに組込んで増幅させるか、又は複数のコピー数を有する染色体外の構成要素上に存在するかによって2つかそれ以上の発現構築物のコピーを有する場合もある。対象の宿主が酵母である場合、4つの主なタイプの酵母プラスミドベクターを使用することができる。すなわち、酵母組込プラスミド(Yeast Integrating Plasmids)(YIps)、酵母複製プラスミド(Yeast Replicating Plasmids)(YRps)、酵母動原体プラスミド(Yeast Centromere Plasmids)(YCps)、及び酵母エピソームプラスミド(Yeast Episomal Plasmids)(YEps)である。YIpsは酵母複製起点を欠いており、酵母ゲノムの組込要素として増殖しなければならない。YRpsは染色体に由来する自律性複製配列及びであり、プラスミドを自律的に複製し、不安定に分離する中程度のコピー数(20から40)として増殖する。YCpsは複製開始点も動原体配列も有し、プラスミドを自律的に複製し、安定に分離する低い程度のコピー数(10から20)として増殖する。YEpsは酵母2μmプラスミド由来の複製起点を有し、プラスミドを自律的に複製し不規則に分離する高い程度のコピー数として増殖する。酵母におけるプラスミドの存在は、プラスミド上のマーカーに対する選択を維持することにより確かめられる。特に重要なのは、酵母ベクターpYES2(ウラシルプロトトロピー及び発現用GAL1ガラクトース誘導プロモーターを与えるインビトロジェン(Invitrogen)社から入手可能なプラスミド。)及びpYX424(構成TP1プロモーターを有し、ロイシンプロトトロピーを与えるYEpプラスミド。アルバー(Alber )とカワサキ(K awasaki)(1982) J. Mel. & Appl. Genetics 1:419 )である。
【0049】
宿主細胞の選択は、トランスジェニック細胞の所望のPUFAプロファイル及び宿主細胞の天然プロファイルによって一部左右される。宿主細胞が1つのPUFAに対するPKS様遺伝子活性を発現している場合であっても、他のPKS様システムのPKS様遺伝子の発現を、宿主細胞によって生産されない新規なPUFAの生産のために与えることも可能である。PKS様遺伝子活性の発現を異なるPUFAを生産する生物のORF8 PKS様遺伝子の発現と結びつけた特定の例では、宿主細胞はORF8に対する低いPKS様遺伝子活性を天然状態で有しているか又は変異により有することになることが好ましい。例として、EPAの生産の場合、使用するDNA配列は、EPAを生産する生物のPKS様遺伝子活性を有するポリペプチドをコードするが、他方、DHAの生産の場合、使用するDNA配列は、DHAを生産する生物に由来するDNA配列である。すでにPKS様遺伝子活性を発現している宿主細胞で使用する場合、所望のPKS様遺伝子を単独か又はアンチセンス又は相互抑制効果等の既存のPKS様システムの既存のORFの活性をダウンレギュレートする構築物と共に過剰発現する、発現カセットを使用することが必要である。同様に、PKS様システムを用いて同じか異なるPUFAsを生産する別個の生物に由来するORFsを組み合わせを使用することが可能である。例えば、VibrioのORF8は、ShewanellaのORF8と結合するとEPAを生じるORF3、6、7及び9がShewanellaのものであっても、宿主細胞でのDHAの発現を指向する。従って、エイコサペンタエン酸の生産(EPA)の場合、使用される発現カセットは、一般に、海洋細菌Shewanella putrefaciens(EPAの生産用)又はVibrio marinus(DHA生産用)等のPUFA生産生物に由来するORF3、6、7、8及び9を含む1または複数のカセットから成る。ORF8はDHA生産を誘導するために使用することが可能であり、VibrioのORF8はShewanellaのORFs3、6、7及び9と共に使用することが可能である。Shewanella遺伝子クラスタで同定されたORFsの構成及び番号付けスキームを図1Aに示す。本研究において言及したいくつかのサブクローンのマップを図1Bに示す。PKS用遺伝子ポリペプチドの発現の場合、宿主細胞で機能する転写及び翻訳開始及び終結領域は、PKS様遺伝子ポリペプチドをコードするDNAと機能的に連結される。
【0050】
問題のPKS様ORFを含む構築物は、宿主細胞の種類に一部依存して、種々の任意の標準的方法により宿主細胞に導入することができる。そのような方法には、形質移入、感染、ボリスティック(bolistic)衝撃、電気穿孔法、マイクロインジェクション、引っ掻き(scraping)、又は対象の遺伝子を宿主細胞に導入する他の任意の方法(米国特許第4,743,548号、米国特許第4,795,855号、米国特許第5,068,193号、米国特許第5,188,958号、米国特許第5,463,174号、米国特許第5,565,346号及び米国特許第5,565,347号を参照)が含まれる。使用される形質転換法には、酢酸リチウム形質転換(Methods in Enzymology 、(1991)194:186-187 )が含まれる。便宜のため、DNA配列又は構築物を持つように任意の方法により操作された宿主細胞のことを、本明細書では「形質転換」又は「組換え」と称される。対象の宿主は、少なくとも1つの発現構築物のコピーを有し、遺伝子がゲノムに組込まれて増幅されるか、又は複数のコピー数を有する染色体外の構成要素上に存在するかによって2つかそれ以上の発現構築物のコピーを有する場合もある。
【0051】
PUFAsの生産の場合、宿主細胞によるが、pEPA、ORF3、6、7、8及び9によって生産されるいくつかのポリペプチドが、個々の発現構築物として導入されるか、又は宿主細胞に個別に導入されるか同時形質転換される2又はそれより多くのカセットに結合される。標準的な形質転換プロトコルが使用される。植物の場合、PUFA合成に必要なすべてのPKS様遺伝子よりも少ないPKS様遺伝子が1つの植物に挿入され、1又は複数の補足遺伝子を含む植物が、所望のPUFAを合成するためのPKS様遺伝子の完全な補足遺伝子を含む植物を得るために交雑される。
【0052】
PKS様媒介性のPUFAsの生産は、原核生物の宿主細胞でも真核生物の宿主細胞でもいずれでも行うことができる。細胞は動物を始めとする宿主生物の一部又は全体として培養又は作成することが可能である。ウイルス及びバクテリオファージも、特に遺伝子移入、細胞のターゲティング及び細胞の選択用に、PUFAsの生産に適した細胞と共に使用することが可能である。双子葉植物、単子葉植物、及び穀類を始めとする任意の種類の植物細胞を宿主細胞用に使用することができる。特に重要なのはアブラナ(Brassica)、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、ダイズ、トウモロコシ等の収穫植物である。対象の原核生物の細胞には、大腸菌属()、バチルス属(Baccillus)、ラクトバチルス属(Lactobaccillus)、シアノバクテリア属(cyanobacteria)等が含まれる。真核生物の細胞には、植物細胞、授乳している動物の細胞等のホ乳類細胞、ニワトリ等の鳥類の細胞、及び昆虫細胞、菌類細胞及び藻類細胞等の遺伝子操作を受けやすい他の細胞が含まれる。宿主動物の例には、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ウズラ、七面鳥、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ヤク等、の、遺伝子操作と導入遺伝子発現密度を急速に拡大するクローニングとを受けやすい動物が含まれる。動物の場合、遺伝子調節領域の改変により、PKS様導入遺伝子は標的の細胞小器官、組織及び体液にて発現するように適合させることが可能である。特に重要なのは、宿主動物の母乳でのPUFAsの生産である。
【0053】
宿主微生物の例には、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、カンジダ属やクルベロマイセス属等の他の酵母、又は例えば、コウジカビ属、アカパンカビ、アオカビ属等の糸状菌類が含まれる。宿主微生物の望ましい特性には、例えば、遺伝学的に十分に特徴付けられているものや、超高密度発酵を用いた高レベル産物の発現に使用することができるものや、提唱最終産物がヒトによって消化されるよう意図されているためGRAS(FDAにより一般に安全と認められる表示)リストにのっているものが含まれる。特に重要なのは、本発明の細胞宿主としての、酵母、詳細にはパン酵母(S.cerevisiae)である。特に重要な株は、SC334(Mat α pep4−3 prbl−1122 ura3−52 leu2−3、112regl−501 gall;(ホフランド(Hovland )ら(1989)Gene 83:57-64 );BJ1995(Yeast Genetic Stock Centre, 1021 Douner Laboratory, カリフォルニア州バークレー(Berkeley),94720)、INVSC1(Mat α hiw3Δ1 leu2 trp1−289 ura3−52(Invitrogen, 1600 Faraday Ave.,カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad),92008)及びINVSC2(Mat α hisΔ200 ura3−167;(Invitrogen)である。細菌細胞も宿主細胞として使用することが可能である。そのようなものとしては、E.coliが含まれ、これは発酵プロセスに有効であり得る。代わりに、ラクトバチルスの種等の宿主をPKS様経路の産物をヨーグルト等の製品に導入するための宿主として使用することも可能である。
【0054】
形質転換宿主細胞は、導入構築物に含まれるマーカーに関する選択により同定することができる。代わりに、多くの形質転換技術が宿主細胞に複数のDNA分子を導入するため、別のマーカー構築物を所望の構築物に導入することもできる。一般に、形質転換宿主は、選択培地で成長できるその能力により選択される。選択培地は、抗生物質を含有してもよいし、形質転換されていない宿主の成長に必要な栄養素又は成長因子等の因子を欠いていてもよい。その結果、導入されたマーカー遺伝子は、抗生物質耐性を与えるか、必須の成長因子又は酵素をコードし、形質転換宿主細胞で発現された場合に選択培地での成長を許容する好ましくは、カナマイシン耐性及びアミノ配糖体G418が特に重要である(米国特許第5,034,322号を参照)。酵母の形質転換体の場合、ウラシル、ロイシン、リジン又はトリプトファンを欠いた培地で成長できる能力等の、酵母で機能する任意のマーカーを使用することが可能である。
【0055】
形質転換宿主の選択は、発現したマーカータンパク質が直接又は間接的に検出された場合に起こる。マーカータンパク質は、単独で発現させてもよいし、他のタンパク質に対する融合タンパク質として発現させてもよい。マーカータンパク質はその酵素活性によって検出されるタンパク質であり得る。例えば、β−ガラクトシダーゼは、X−gal基質を着色生成物に変えることができ、ルシフェラーゼはルシフェリンを発光生成物に変えることができる。マーカータンパク質は、その光生成特性又は改変特性により検出されるタンパク質であり得る。例えば、Aequorea victoria の緑色蛍光タンパク質は青色光で照射したときに蛍光を発する。マーカータンパク質又は例えば問題のタンパク質上の分子タグを検出するために、抗体を使用することが可能である。マーカータンパク質又はタグを発現する細胞は、例えば、視覚により、又はFACSや抗体を用いたパニング等の方法により、選択することができる。
【0056】
主題の方法を用いて生産されたPUFAs及び組成物は、宿主植物組織及び/又は植物の一部において、遊離脂肪酸として、及び/又はアシルグリセロール、リン脂質、硫脂質又は糖脂質等の共役体として見出され、種々の当該技術分野において周知の手段によって宿主細胞から抽出することができる。そのような手段には、有機溶媒による抽出、超音波処理、(例えば二酸化炭素を用いた)超臨界流体抽出、圧力等の物理的手段又はそれらの組み合わせが含まれる。特に重要なのはメタノール及びクロロホルムによる抽出である。適切な場合、水層を酸性化して、負に帯電した部分に陽子を加え、それによって有機層への所望の産物の分配を増大させてもよい。抽出後、有機溶媒は窒素流下で蒸発によって除去することができる。共役体で単離された場合、遊離脂肪酸又は複合度の低い対象共役物を放出するように、生成物は酵素的又は化学的に解裂され、所望の最終産物を生成するようにさらに操作を受ける。好ましくは、脂肪酸の共役型は、水酸化カリウムによって解裂する。
【0057】
精製がさらに必要な場合、標準的な方法を使用することができる。そのような方法には、抽出、尿素処理、分別晶出、HPLC、分別蒸留、シリカゲルクロマトグラフィ、高速遠心又は蒸留、又はそのような技術の組み合わせが含まれる。酸の基又はアルケニル基のような反応基の保護は、例えばアルキル化又はヨード化等の既知の技術により、任意のステップで行うことができる。使用される方法には、メチルエステルを生成するための脂肪酸のメチル化が含まれる。同様に、保護基は任意のステップで除去してよい。好ましくは、DHA及びEPAを含む画分の精製が、尿素処理及び/又は分別蒸留により達成される。
【0058】
主題の発明の使用方法はいくつか存在する。本発明のDNAに基づくプローブは、関連分子の単離方法や又はPKS様遺伝子を発現している生物の検出方法に使用される。プローブとして使用された場合、DNA又はオリゴヌクレオチドは検出される必要がある。これは通常、(例えば修飾残基の組込により)内側部位に標識を取り付けるか5’又は3’末端に標識を取り付けるかにより達成される。そのような標識は、直接検出されるか、検出可能に標識された二次分子と結合するか、非標識二次分子と検出可能に標識された三次分子と結合する。このプロセスは、容認できないバックグラウンドシグナルレベルのない十分に検出可能なシグナルが達成されるように、実現可能な限りで延長することができる。二次システム、三次システム、又は架橋システムは、任意の他の分子(標識又は他の抗体)に対する抗体の使用を含むか、互いに結合する任意の分子(例えばビオチンとストレプトアビジン/アビジンシステム)を含む。検出可能な標識には、通常、放射性同位元素、化学的又は酵素的に光を発生するか光を変化させる分子、検出可能な反応生成物を生成する酵素、磁気分子、蛍光分子、又は蛍光又は発光特性が結合のときに変化する分子が含まれる。標識方法の例は、米国特許第5,011,770号に見出される。代わりに、標的分子の結合は、等温滴定熱量計によりプローブがターゲットに結合したときの熱の変化を測定するか、又はプローブ又はターゲットをある表面にコーティングすることにより直接検出することができ、ターゲット又はプローブの結合によって生じる該表面からの光の散乱の変化の検出は、BIAcoreシステムにより行われる。
【0059】
組換え手段によって生産されたPUFAsには、様々な分野での用途が見出される。ヒト又は動物の種々の形式でのPUFAsの補充は、添加したPUFAsのレベルを増大させるだけでなく、代謝後続産物のレベルも増大させる。複雑な調節機構は、望ましい種々のPUFAsを結合や、又は異なるPUFAsの共役体の添加を可能にし、そのような機構が固体における特定のPUFAsの所望レベルを達成するのを防止したり、抑制したり、又は克服したりする。本件の場合、PKS様遺伝子又はアンチセンスPKS様遺伝子転写物の発現が、植物の一部及び/又は植物組織に見出される特定のPUFAsのレベル又はその誘導体のレベルを変え得る。PKS様遺伝子ポリペプチドのコーディング領域は、所望のPUFAsを高い割合で含むか又は非修飾組織及び/又は植物の一部よりもヒト母乳の組成に非常に類似したPUFA組成物(プリエト(Prieto)ら、PCT国際出願公開公報WO第95/24494号)を含む組織及び/又は植物の一部を作成するために、単独で又は他の遺伝子と共に発現される。
【0060】
開示した方法によって作成されたPUFAs又はその誘導体は、静脈栄養を受けている患者に対する栄養補助食品として、又は栄養不良を予防又は治療するための栄養補助食品として使用することができる。栄養補助食品用に、PUFAs又はその誘導体は通常の使用の際に受容者が所望量のPUFAを受け取れるように調製された料理油、脂肪又はマーガリンに組み込まれる。PUFAsは、幼児用調合乳、栄養補助職人又は他の食物製品にも組み込むことができ、抗炎症剤コレステロール低下剤として使用される。
【0061】
EPA等の特定の脂肪酸は、ヒト母乳のPUFA組成をより良好に複製すべく幼児用調合乳の組成を変えるために使用することができる。ヒトの乳中の優勢なトリグリセリドは、1,3−ジ−オレオイル−2−パルミトイルであると報告されており、2−パルミトイルグリセリドは2−オレオイル又は2−リネオイルグリセリドよりもよく吸収されることが報告されている(米国特許第4,876,107号を参照のこと)。一般に、ヒト母乳はDHAとして約0.15%から約0.36%、EPAとして約0.03%から約0.13%、ARAとして約0.30%から約0.88%、DGLAとして約0.22%から約0.67%、及びGLAとして約0.27%から約1.04%を含む脂肪酸プロファイルを有する。幼児用調合乳のGLA:DGLA:ARAの好ましい比は、それぞれ約1:1:4から約1:1:1である。PUFAのそのような比を与える油の量は、当業者による過度の実験を伴わずに決定することができる。PUFAs又はそれを含む宿主細胞も、動物組織又は乳中の脂肪酸組成をよりヒト又は動物の消費用に望ましい組成に変えるための動物の栄養補助食品として使用することができる。
【0062】
医薬として使用する場合(ヒト又は家畜において)、組成物は一般に経口投与されるが、例えば、腸管外(すなわち皮下、筋内又は静脈内)、直腸又は膣内又は局所(例えば皮膚の軟膏又はローションとして)等の、組成物の吸収がうまくいく任意の経路により投与することができる。利用可能な場合、ゼラチンカプセルは経口投与の好ましい形式である。上述した栄養補助食品も経口投与経路を与え得る。本発明の不飽和酸は、共役型で、又は塩、エステル、アミド、若しくは脂肪酸のプロドラッグとして投与することができる。医薬として許容される任意の塩が本発明に包含される。特に好ましいのは、ナトリウム塩、カリウム塩、又は、リチウム塩である。PCT国際出願出願公開第WO96/33155号に説明されたN−メチルグルカミンのようなN−アルキルポリヒドロキサミンの塩も包含される。好ましいエステルはエチルエステルである。
【0063】
本発明のPUFAsは、単独で投与することも、医薬として許容されるキャリア又は賦形剤と共に投与することもできる。固体の塩として、PUFAsは錠剤の形で投与することもできる。静脈内投与の場合、PUFAs又はその誘導体はIntralipids のような市販の製剤に組み込むことができる。望ましい場合、1又は複数の用途のために、製剤の個々の成分はキットの形式で与えられる。特定の脂肪酸の一般的投与量は、一日0.1mg〜20g又は100gまででさえあり、好ましくは一日必要量として10mg〜1、2、5又は10g、又はその誘導体型のモル等量である。トリグリセリドとして計算して約2から約30重量パーセントの脂肪酸を含む腸管外栄養組成物は本発明に包含される。他のビタミン、特にビタミンA、D、E及びL−カルニチン等の脂溶性ビタミンを任意に含むことができる。望ましい場合、トコフェロール等の保存料が一般に約0.1重量%加えられる。
以下、実施例を、制限ではなく例示として示す。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
Vibrio marinus由来のORFsの同定
Shewanella(Sp ORF6)のORF6配列に基づくプライマー(Vibrio及びSS9の各々に対する前方5’プライマーCUACUACUACUACCAAGCTAAAGCACTTAACCGTG(配列番号41)及びCUACUACUACUAACAGCGAAATGCTTATCAAG(配列番号42)、並びにVibrio及びSS9に対する3’後方プライマー:CAUCAUCAUCAUGCGACCAAAACCAAATGAGCTAATAC(配列番号43)と、EPAを生産するVibrio及びbarophyllic photobacter由来のゲノムDNA鋳型(バートレット(Bartlett)博士、UCサンディエゴ(San Diego )より供与)とを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して、相同なアミノ酸を直接数えることにより決定したSp ORF6(図25を参照)の対応断片に対して75%よりも高い相同性を示す、Vibrio marinus(Vibrio)に対する約400塩基対のPCR産物と、及びSS9に対する約900塩基対のPCR産物とを得た。
【0065】
次にVibrioコスミドライブラリを調製し、Vibrio ORF6 PCR産物をプローブとして利用して(図26を参照)、少なくともORF6を含むクローンをコロニーハイブリダイゼイションにより選択した。
【0066】
コスミド9番及びコスミド21番等の選択コスミドのさらなる配列により、ORFs6−9と相同で、(ORF69)ShewanellaのORFs6−9と同じ配列順序に編成されたORFsを備えたVibrioクラスタ(図5)を得た(図7)。この配列に由来するVibrio ORFsは、17394から36115の位置にあることがわかり、ORF6−9を包含している。
【0067】
[表1]
Vibrioオペロンの形態
17394から25349 長さ=7956ヌクレオチド
25509から28157 長さ=2649ヌクレオチド
28209から34262 長さ=6054ヌクレオチド
34454から36115 長さ=1662ヌクレオチド
【0068】
Shewanella遺伝子に対するORFの名称は、図4に開示した名称に基づいており、Shewanellaクラスタ(ヤザワ(Yazawa)ら、米国特許第5,683,898号)に対して公表された名称とは異なっている。例えば、ヤザワらの米国特許第5,683,898号と比較すると、図4のORF3は他のORFsから逆方向に読まれ、ヤザワ(Yazawa)らの米国特許第5,683,898号(図24参照)には開示されていない。
【0069】
ORF3と相同な配列は、ORF6(ORF6の上流の17000塩基)又はORF9(ORF9の下流の約4000塩基)の付近では見出されなかった。リン酸パンテテニルトランスフェラーゼに特徴的なモチーフ(ランバロット(Lambalot)ら(1996)Current Biology 3:923-936 )は、そのようなモチーフを求めてスクリーニングしたVibrio配列では欠けていた。さらに、Vibrio及びSC2A Shewanella(サンディエゴ大学より供与された、やはりEPAを生産可能な別の細菌)のゲノム消化物ではSp ORF3に由来するプローブとマッチするものはなかった。ORF3はVibrioに存在し得るが、そのDNASp ORF3のDNAと相同ではなく、及び/又は配列決定されていないゲノムの部分に位置する可能性がある。
【0070】
図6は、ORFs6−9を含む約19kb Vibrioクローンの配列を含む。図7及び8は、Vibrio marinus及びShewanella putrefaciansの PKS様系の遺伝子クラスタ編成を比較したものである。図9から12は、対応するORFs6、7、8及び9それぞれの間の配列の相同性のレベルを示す。
【0071】
(実施例2)
ORF8のDHA生産への指向
実施例1に説明したように、Sp ORF6と相同なDNAが、関係のない種であるSS9Photobacterで見つかった。SS9 PhotobacterもEPAを生産することができる。その上、Sp ORF6−9と相同なORFsがDHA生産Vbrio marinus(Vibrio)で見出された。そのようなORFsから、E.coliでのEPA合成を抑制するSp ORF6−9の各々の欠失(ヤザワ(Yazawa)(1996)前掲)を遺伝子Vibrio由来の対応する相同な遺伝子によって補足した、一連の実験を設計した。
【0072】
任意のVibrio ORFs6−9がDHAの生産に寄与しているかどうかを決定するためにSp EPAクラスタを使用した。各Sp ORFsに対して与えた欠失突然変異は、EPA及びDHAの無効である。各欠失はlacプロモーター(図13)の後方で発現された対応Vibrio ORFによって補足した。
【0073】
Vibrio ORF6によるSp ORF6欠失の補足により、EPAの生産を復活した。同様な結果が、Sp ORF7及びORF9欠失の補足によっても得られた。対照的に、Sp ORF8欠失の補足では、C22:6が生産された。従って、Vibrio ORF8はDHAの合成の重要な要素であると考えられる。図14及び15はVibrio ORF6に関するSp del ORF6の補足(EPA有り、DHA無し)とVibrio ORF8に関するSp del ORF8(DHA有り)の補足による脂肪酸プロファイルのクロマトグラムを示す。図16はORF8補足に対する脂肪酸パーセントを示し、ここでも、ORF8がDHAの生産に寄与していることが明らかである。
【0074】
以上のデータは関連する又は類似のORFsを有するポリケチド様合成遺伝子が異種系で結合及び発現され、宿主系で異なるPUFA種を生産するために使用できることを示すと共に、ORF8が最終的な鎖長の決定に役割を果たしていることを示す。Vibrio ORFs6、7、8、及び9はEPA合成を復元する。VibrioORF8の場合、EPA(約0.6%)と共にDHA(約0.7%)も存在し、該遺伝子が上記系に関してDHA対EPAの合成を指向するのに重要な役割を果たしていることを示す。
【0075】
(実施例3)
DHAの生産のための要件
クラスタORF6−9のVibrio ORFsがどのようにVibrio ORF8と組み合わせて使用されるかを決定するために、又は他のVibrio ORFs6−9クラスターの一部又は全部とVibrio ORF8とのいくつかの組み合わせを形成し、DHAの合成を説明した。
【0076】
Vibrio ORF6−9はSp ORF3によって補われた。この補足の結果を図16b及び16cに示す。測定したDHAがかなりの量(約9%よりも大きい)であり、EPAが存在しないことは、Sp ORF3と組み合わせるとDHAの合成にVibrio ORFs6−9以外のORFsが必要ではないことを示唆している。このことは、Sp ORF3が細菌PUFAsの合成に一般的な機能を果たしていることを示唆している。
【0077】
DHA対EPAの生産に関して、特にDHAを生産するためにVibrio ORF8を6−9クラスタの他のVibrio ORFsと組み合わせることが必要である可能性がある。Vibrio ORF9及びVibrio ORFs(6、8)、(7、8)、(8、9)等の各組み合わせのDHA合成における役割は現在研究中である。
【0078】
(実施例4)
植物発現構築物
長い断片のクローニングと及びそれらの後の操作を容易にするために、制限部位の非常に少ないクローニングベクターを作成した。オリゴヌクレオチドを配列AAGCCCGGGCTT(配列番号44)及びGTACAAGCCCGGGCTTAGCT(配列番号45)とアニーリングすることによりアダプタを組み立てた。制限エンドヌクレアーゼAsp78及びSstIによりベクターpBluescript II SK+(Stratagene)を消化した後、このアダプタをベクターにライゲートした。得られたベクターであるpCGN7769は、平滑末端DNA断片のクローニングのための一つのSrfIクローニング部位を有し(及びSmaIを埋設し)ていた。
【0079】
pCGN3223由来のナピン(napin )カセットを有するプラスミド(米国特許第5、639、790号)を、複数の制限部位を有する長いDNA断片のクローニングに有効にすると共に複数のナピン融合遺伝子の植物バイナリー形質転換ベクターへのクローニングを許容するために改変した。配列CGCGATTTAAATGGCGCGCCCTGCAGGCGGCCGCCTGCAGGGCGCGCCATTTAAAT(配列番号46)の自己アニーリングするオリゴヌクレオチドから成るアダプタを、ベクターpBC SK+ (Stratagene)を制限エンドヌクレアーゼBssHIIで消化した後でベクターにライゲートし、ベクターpCGN7765を構築した。プラスミドpCGN3223及びpCGN7765は、NotIで消化し、互いにライゲートした。得られたベクターpCGN7770(図17)は、pCGN7765骨格と、pCGN3223のナピン種子特異的発現カセットとを有する。
【0080】
Shewanella構築物
Shewanellaタンパク質をコードする遺伝子を突然変異させ、PCRを用いて適当なクローニング部位5’及び3’ORFsを導入した。PCR反応用の鋳型はコスミドEPA(ヤザワら、前掲)のDNAであった。PCR反応は製造業者のプロトコルに従ってPfu DNAポリメラーゼを用いて行った。PCR産物はpCGN7769で消化したSrfIでクローニングした。プライマーCTGCAGCTCGAGACAATGTTGATTTCCTTATACTTCTGTCC(配列番号47)及びGGATCCAGATCTCTAGCTAGTCTTAGCTGAAGCTCGA(配列番号48)を使用してORF3を増幅し、プラスミドpCGN8520を作成した。プライマーTCTAGACTCGAGACAATGAGCCAGACCTCTAAACCTACA(配列番号49)及びCCCGGGCTCGAGCTAATTCGCCTCACTGTCGTTTGCT(配列番号50)を使用してORF6を増幅し、プラスミドpCGN7776を作成した。プライマーGAATTCCTCGAGACAATGCCGCTGCGCATCGCACTTATC(配列番号51)及びGGTACCAGATCTTTAGACTTCCCCTTGAAGTAAATGG(配列番号52)を使用してORF7を増幅し、プラスミドpCGN7771を作成した。プライマーGAATTCGTCGACACAATGTCATTACCAGACAATGCTTCT(配列番号53)及びTCTAGAGTCGACTTATACAGATTCTTCGATGCTGATAG(配列番号54)を使用してORF8を増幅し、プラスミドpCGN7775を作成した。プライマーGAATTCGTCGACACAATGAATCCTACAGCAACTAACGAA(配列番号55)及びTCTAGAGGATCCTTAGGCCATTCTTTGGTTTGGCTTC(配列番号56)を使用してORF9を増幅し、プラスミドpCGN7773を作成した。
【0081】
PCR産物の完全性は、pCGN7771、pCGN8520、及びpCGN7773のインサートのDNA配列決定により確認した。ORF6及びORF8はサイズが非常に大きかった。クローン全体の配列決定を避けるため、ORFsの中心部分をEPAの制限断片で置き換えた。ORF6の中心部分を含むpEPAの6.6キロベースのPacI/BamHI断片をPacI/BamHIで消化したpCGN7776にライゲートし、pCGN7776B4を得た。ORF8の中心部分を含むEPAの4.4キロベースのBamHI/BglII断片をBamHI/BglIIで消化したpCGN7775にライゲートし、pCGN7775Aを得た。EPA断片に隣接する領域クローニング接合部はDNA配列決定により確認した。
【0082】
プラスミドpCGN7771はXhoI及びBglIIにより切断し、SalI及びBglIIで消化した後、pCGN7770にライゲートした。得られたナピン/ORF7遺伝子融合プラスミドをpCGN7783と名付けた。プラスミドpCGN8520はXhoI及びBglIIにより切断し、SalI及びBglIIで消化した後、pCGN7770にライゲートした。得られたナピン/ORF3遺伝子融合プラスミドをpCGN8528と名付けた。プラスミドpCGN7773はSalI及びBamHIにより切断し、SalI及びBglIIで消化した後、pCGN7770にライゲートした。得られたナピン/ORF9遺伝子融合プラスミドをpCGN7785と名付けた。プラスミドpCGN7775AはSalIにより切断し、SalIで消化した後、pCGN7770にライゲートした。得られたナピン/ORF8遺伝子融合プラスミドをpCGN7782と名付けた。プラスミドpCGN7776B4はXhoIにより切断し、SalIで消化した後、pCGN7770にライゲートした。得られたナピン/ORF6遺伝子融合プラスミドをpCGN7786B4と名付けた。
【0083】
植物形質転換に対するバイナリーベクターpCGN5139を、pCGN1558から構築した(マクブライド(McBride )とサマーフェルト(Summerfelt)(1990)Plant Molecular Biology, 14:269-276 )。pCGN1558のポリリンカーを、固有の制限エンドヌクレアーゼ部位である、AscI、PacI、XbaI、SwaI、BamHI、及びNotIを有するポリリンカーにより、HindIII/Asp718断片として置き換えた。pCGN5139には、Asp718及びHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位が保持されている。PCGN5139は、NotIで消化し、NotIで消化したpCGN7786B4ナピン/ORF6遺伝子融合部を含む得られたバイナリーベクターをpCGN8533と名付けた。プラスミドpCGN833をSse8387Iで消化し、Sse8387Iで消化したpCGN7782とライゲートした。ナピン/ORF6遺伝子融合部及びナピン/ORF8遺伝子融合部を含む得られたバイナリーベクターをpCGN8535と名付けた(図18)。
【0084】
植物バイナリー形質転換ベクターpCGN5139を、Asp718で消化し、Asp718で消化したpCGN8528とライゲートした。ナピン/ORF3遺伝子融合部を含む得られたバイナリーベクターをpCGN8532と名付けた。プラスミドpCGN8532をNotIで消化し、NotIで消化したpCGN7783とライゲートした。ナピン/ORF3遺伝子融合部及びナピンORF7遺伝子融合部を含む得られたバイナリーベクターをpCGN8534と名付けた。プラスミドpCGN8534をSse8387Iで消化し、Sse8387Iで消化したpCGN7785とライゲートした。ナピン/ORF3遺伝子融合部、ナピン/ORF7遺伝子融合部及びナピン/ORF9遺伝子融合部を含む得られたバイナリーベクターをpCGN8537と名付けた(図19)。
【0085】
(Vibrio構築物)
植物発現用のVibrio ORFsはすべて開始分子としてVibrioコスミド9番を用いて得た。Vibrioコスミド9番は実施例1に説明したVibrioORF6PCR産物を用いてVibrioコスミドライブラリから単離したコスミドの一つである。
【0086】
Vibrio ORF7(図6)をコードする遺伝子を突然変異し、PCRプライマー:TCTAGAGTCGACACAATGGCGGAATTAGCTGTTATTGGT(配列番号57)及びGTCGACGGATCCCTATTTGTTCGTGTTTGCTATATG((配列番号58)を用いて読み取り枠の上流にSalI部位及び読み取り枠の下流にBamHI部位を導入した。Vibrio ORF9(図6)をコードする遺伝子を突然変異し、PCRプライマー:GTCGACGGATCCACAATGAATATAGTAAGTAATCATTCGGCA(配列番号59)及びGTCGACCTCGAGTTAATCACTCGTACGATAACTTGCC(配列番号60)を用いて読み取り枠の上流にBamHI部位及び読み取り枠の下流にXhoHI部位を導入した。制限部位はPCRを用いて導入し、変異プラスミドの完全性はDNA配列により確認した。Vibrio ORF7遺伝子はSal−BglI断片としてSal−BglI消化したpCGN7770(図17)のナピンカセット内でクローニングし、pCGN8539を得た。Vibrio ORF9遺伝子はSal−BamHI断片としてSal−BalI消化したpCGN7770(図17)のナピンカセット内でクローニングし、pCGN8543を得た。
【0087】
Vibrio ORF6及びORF8をコードする遺伝子を突然変異し、読み取り枠に隣接するSalI部位を導入した。ORF6に隣接するSalI部位はPCRを用いて導入された。使用したプライマーは:CCCGGGTCGACACAATGGCTAAAAAGAACACCACATCGA(配列番号61)及びCCCGGGTCGACTCATGACATATCGTTCAAAATGTCACTGA(配列番号62)であった。PCR産物の中心の7.3kbBamHI−XhoI7断を、対応するVibrioコスミド9番由来の断片と置き換えた。変異ORF6をpCGN7770のナピンカセットのSalI部位に入れてクローニングし、プラスミドpCGN8554を得た。
【0088】
ORF8の突然変異誘発には異なるストラテジーをとった。ORF8を含むBamHI断片をプラスミドpHC79でサブクローニングし、コスミド9"番を得た。コーディング領域の上流のSalI部位を、オリゴヌクレオチドTCGACATGGAAAATATTGCAGTAGTAGGTATTGCTAATTTGTTC(配列番号63)及びCCGGGAACAAATTAGCAATACCTACTACTGCAATATTTTCCATG(配列番号64)から成るアダプタ上に導入した。SalI及びXmaIによる消化後、アダプタをコスミド9"番とライゲートした。突然変異誘発を誘発するためにPCRを用いて停止コドンの下流にSalI部位を導入した。停止コドンを有するDNA断片はコスミド9番"を鋳型として使用し、プライマーTCAGATGAACTTTATCGATAC(配列番号65)及びTCATGAGACGTCGTCGACTTACGCTTCAACAATACT(配列番号66)を用いて生成した。PCR産物を制限エンドヌクレアーゼClaI及びAatIIで消化し、同じ酵素で消化したコスミド9"番派生物中でクローニングし、プラスミド8P3を得た。8P3由来のSalI断片をSalI消化pCGN7770中でクローニングし、pCGN8515を得た。
【0089】
ナピンプロモーターの制御下のShewannella ORF3を含むPCGN8532バイナリー植物形質転換ベクターを、NotIで消化し、ナピンVibrio ORF7遺伝子融合部を含むpCGN8539のNotI断片を挿入し、pCGN8552を得た。Shewannella ORF3と、ナピンプロモーター制御下のVibrio ORF7及び9とを含むプラスミドpCGN8556(図23)を、pCGN8543由来のSse8357断片をSse8387で消化したpCGN8552中でクローニングすることにより構築した。
【0090】
プラスミドpCGN8515由来のNotI消化したナピン/ORF8遺伝子を、NotI消化した植物バイナリー形質転換ベクターpCGN5139中でクローニングし、pCGN8548を得た。pCGN8554由来のSse8387消化したナピン/ORF6遺伝子を、pCGN8566のSse8387部位に入れて引き続きクローニングした。得られたナピン/ORF6遺伝子融合部及びナピン/ORF8遺伝子融合部を含むバイナリーベクターをpCGN8560(図22)と名付けた。
【0091】
(実施例5)
植物の形質転換とPUFAの生産
EPAの生産
Shewanella構築物pCGN8537及びpCGN8537を、同じか又は異なる別個の植物に入れて、形質転換することができる。別個の植物が使用される場合、トランスジェニック植物を交雑すると、両方の構築物を含むヘテロ接合型の種子が得られる。
【0092】
pCGN8535及びpCGN8537はBrassica napusに別々に入れて形質転換される。植物はカナマイシンを含む培地上で選択され、構築物の完全長インサートによる形質転換はサザン解析により確認される。未成熟な種子も、ウェスタン解析を用いて、ORF3、6、7、8、又は9によりコードされた酵素タンパク質の発現について試験される。いずれの場合も、最も発現が良好なpCGNE8535及びpCGN8537T1形質転換植物を選択し、更なる実験及び交雑のために成長させる。代わりに、サザンによりインサートを示すT1形質転換植物は、両方のインサートを有するT2を互いに生産するように交雑される。この種子に関して、種子の半分は脂肪酸画分におけるEPAの発現から直接分析した。EPAの生産が最良であった残りの半分の種子は成育され、EPAの生産するBrassica系を提供するよう従来の育種法により発達させる。
【0093】
プラスミドpCGN7792及びpCGN7795も、Brassica napus宿主細胞に同時に導入される。標準的な形質転換プロトコルを使用する(例えば米国特許第5,463,174号及び米国特許第5,750,871号を参照、)が、両方のプラスミドを含むAgrobacteriaを混合し、Brassica と共にインキュベートし、同時培養中にBrassicaの子葉と共にインキュベートする。得られた植物の多くが、両プラスミドによって形質転換される。
【0094】
(DHAの生産)
pCGN8556及びpCGN8560を導入することにより、EPAの生産に関して説明したように別個の植物中で又は同じ植物中で同時に、植物がDHAの生産用に形質転換される。
【0095】
代わりに、植物を構築物pCGN8560及びpCGN7795で形質転換したり、植物細胞内での対応するORFsの発現を許容したりすることにより、Shewanella ORFsはVibrioのORF6及び8と調和した様式で使用することも可能である。この組み合わせは、Vibrio由来のORF6及びVibrio由来のORF8との、ShewanellaのORFs3、7及び9から成るPKS様遺伝子の整列を提供する。上述したように、ORF8は最終PUFA産物の同一性を制御するPKS様遺伝子である。このように、得られた形質転換植物は植物油にDHAを生成する。
【0096】
(実施例6)
Shewanella PUFA遺伝子を有するトランスジェニック植物
Brassica植物
プラスミドpCGN8535及びpCGN8537により同時形質転換された52体の植物をPCRを用いて分析し、Shewanella ORFsがトランスジェニック植物中に存在するかどうかを決定した。41体の植物がプラスミドpCGN8537を含み、35体の植物がpCGN8535を含んでいた。11体の植物がEPAの合成に必要な5つのORFsを含んでいた。いくつかの植物はバイナリープラスミドの両方に由来する遺伝子を含んでいたが、少なくとも1つのORFsを喪失しているようであった。分析は約20体のさらなる植物について現在行っているところである。
【0097】
pCGN8535のみにより形質転換された23体の植物をPCRを用いて分析し、Shewanella ORFがトランスジェニック植物中に存在するかどうかを決定した。13体の植物がShewanellaORF6及びShewanellaORF8を共に含んでいた。6体の植物が一方のORFのみを含んでいた。
【0098】
pCGN8537のみにより形質転換された19体の植物をPCRを用いて分析し、Shewanella ORFがトランスジェニック植物中に存在するかどうかを決定した。18体の植物がShewanellaORF3、ShewanellaORF7、及びShewanellaORF9を含んでいた。1体の植物がShewanellaORF3及び7を含んでいた。
【0099】
Arabidopsis
プラスミドpCGN8535及びpCGN8537により同時形質転換した40体よりも多いトランスジェニックArabidopsis植物を本願発明者の成育チャンバで成育した。どのORFsが植物中に存在するかを決定するPCR解析は現在行っている最中である。
【0100】
(実施例7)
PKSシステムのSchizochytriumにおけるPUFA合成の証拠
本実験の目的は、PKS遺伝子の更なる供給源を同定することであった。多価不飽和長鎖脂肪酸がSchizochytrium油中に同定された。さらに、多価不飽和脂肪酸の生産がSchizochytriumの培地中に検出された。Schizochytriumの新鮮な希釈培地を[14C]−酢酸(5uCi/mL)の存在下で、24℃、30分間、撹拌しながらインキュベートした(150rpm)。次に細胞を遠心により収集し、凍結乾燥し、トルエン(酸性メタノールの2体積当たりトルエン1体積)を第2の溶媒とした酸性メタノール(9%H2SO4)の存在下で90分間、90℃まで加熱することに関するエステル交換プロトコルに供した。得られたメチルエステル有機溶媒(ヘキサン)により抽出し、TLC(シリカゲルG、ヘキサン:ジエチルエーテル(19:1)で3回展開)により分離した。TLCプレート上の放射能をスキャナ(AMBIS)を用いて検出した。TLCプレート上に2つの顕著なバンドを検出した。定位置にTLCプレート上を移動したそれらのバンドは短鎖(14〜16炭素)の飽和メチルエステル(上側のバンド)及び多価不飽和長鎖(20〜22炭素)脂肪酸(下側のバンド)のメチルエステルと予想された。それらは、Schizochytrium油のFAMEsのGC分析により検出された主な種類の脂肪酸でもあった。
【0101】
並行実験において、タイプII型脂肪酸合成系とShewanella由来のPKS遺伝子で形質転換したE.coliによるEPAの生産を始めとするいくつかのポリケチド合成系との周知の阻害剤であるチオールアクトミオシンをSchizochytrium細胞培養物及び及び[14C]酢酸の添加の前に種々の濃度(0、1、10及び100μg/ml)の試験管に加えた。上述したように、[14C]酢酸の取り込み分析により、100μg/mLのチオールアクトミオシンが多価不飽和脂肪酸の合成を完全にブロックすることが明らかとなったが、10μg/mLのチオールアクトミオシンでは不飽和脂肪酸合成の部分的阻害が観察された。短鎖飽和脂肪酸の合成は試験したすべてのチオールアクトミオシン濃度において影響を受けなかった。チオールアクトミオシンはタイプI型脂肪酸合成系を阻害せずマウスにとって毒性ではない。このことは、チオールアクトミオシンがEPA又はDHAの生成に至る延長系を阻害しないことを示唆する。さらに、チオールアクトミオシンはPhaeodactylum tricornutumにおけるPUFA合成に至る延長系を阻害しなかった。従って、SchizochytriumはタイプI型脂肪酸合成系を有することが知られているが、データによると、該生物で生産された多価不飽和脂肪酸は、短鎖脂肪酸を生産するタイプI型脂肪酸合成系とは異なる系と、マウス及びPhaeodactylumで見出された延長/非飽和経路に類似する系とに由来するものであることが示唆された。データはVibrio marinus及びShewanellaputrefaciensに見出されたPKS経路の結果であるDHAの形成と一致している。
【0102】
(実施例8)
Schizochytrium由来のPKS関連配列
本実験の目的は、PKS遺伝子をコードするSchizochytriumに由来する配列を同定することであった。Schizochytrium由来のcDNAライブラリを構築し、約8,000個のランダムクローン(EST)を配列決定した。ShewanellaのEPA合成遺伝子によりコードされたタンパク質の配列をSmith/Watermanアラインメントアルゴリズムを用いてSchizochytrium ESTの予測アミノ酸配列と比較した。ORF6(Shewanella)のタンパク質配列をSchizochytrium EST由来のアミノ酸配列と比較した場合、38個のESTクローンが有意な相同性の程度を示した(P<0.01)。ORF7のタンパク質配列をSchizochytrium ESTにより比較した場合、4個のESTクローンが有意な相同性を示し(P<0.01)、分子が均質であることが示唆された。ORF8及びORF9のタンパク質配列をSchizochytrium ESTと比較した場合、7及び14個のクローンがそれぞれ有意な相同性を示した(P<0.01)。
【0103】
(実施例9)
Schizochytrium cDNAクローンの分析
Schizochytrium ESTクローンの制限酵素分析を利用して、最も長いクローンを決定し、該クローンの全体を次に配列決定した。実施例8に説明したすべてのEST配列を5DNAクローンの一部であると決定した。
【0104】
DNAクローンのうちの2つは、ShewanellaORF6と相同であった。LIB3033−047−B5は、ORF6のC末端と相同であった。LIB3033−047−B5の配列はアミノ酸2093から前方へShewanellaORF6と整列させることができた。LIB3033−047−B5の読み取り枠は配列の5’末端まで伸びていたため、このクローンが完全長である可能性は低い。LIB3033−046−E6はORF6のACPドメインに対する相同性を共有していた。LIB3033−046−E6は6個のACP繰り返しを有していた。そのDNAクローンはポリ−A−テイルを有しておらず、DNAの追加領域が配列の下流に見出される、部分cDNAである可能性が高かった。PCRプライマーGTGATGATCTTTCCCTGATGCACGCCAAGG(配列番号67)及びAGCTCGAGACCGGCAACCCGCAGCGCCAGA(配列番号68)を使用して、SchizochytriumゲノムDNA由来の約500ヌクレオチド断片を増幅した。プライマーGTGATGATCTTTCCCTGATGCACGCCAAGGはLIB3033−046−E6に由来し、プライマーAGCTCGAGACCGGCAACCCGCAGCGCCAGAはLIB3033−047−B5に由来する。LIB3033−046−E6及びLIB3033−047−B5は同じmRNAの異なる部分を示し(図28を参照)、図29A(配列番号70)の配列に関するタンパク質をコードすると予測されている、1つの部分DNA配列(配列番号69)に組み込むことができた(図27Aを参照)。読み取り枠は配列の5’末端まで延びていたため、この部分DNAは完全長である可能性が低い。更なるDNA又はゲノムクローンの分析により、クローンLIB3033−046−E6及びLIB3033−047−B5により表されたmRNAの全長を決定することができるであろう。それは、ShewanellaORF6のN末端付近に見出されるのと同様の縮合酵素関連ドメインを含み得る。
【0105】
DNAクローンの1つであるLIB3033−046−D2は、3’末端がShewanella ORF9と相同であった。このクローンは5’末端がShewanella ORF8の鎖長要因領域と相同であった。該クローンはAnabeana HglC ORFの読み取り枠全体とも相同であった。Anabeana HglC ORFはShewanella ORF8及びShewanella ORF7の鎖長要因領域と相同である。従ってそのDNA(図27B)(配列番号71)はShewanella ORF8、Shewanella ORF7及びShewanella ORF9(図28を参照)の一部と相同である。LIB3033−046−D2の読み取り枠によりコードされたアミノ酸配列(図29B)(配列番号72)は、配列の5’末端まで延びていた。従ってそのクローンは完全長である可能性が低い。さらなるDNA又はゲノムクローンの分析により、LIB3033−046−E6により表されたmRNAの全長を決定することができるであろう。それは、ShewanellaORF8のN末端付近に見出されるのと同様の縮合酵素関連ドメインを含み得る。
【0106】
2つのさらなるDNAクローンがShewanella ORF8と相同であった。LIB81−015−D5はORF8のC末端と相同であった。LIB081−015−D5の5’配列は、アミノ酸1900から前方へShewanella ORFと整列させることができた。LIB81−015−D5の3’末端は、Shewanella ORF9(図28参照)と整列させることができた。LIB81−015−D5の読み取り枠によってコードされたアミノ酸配列(図29)(配列番号73)は配列の5’末端まで延びていたため、このクローンは完全長である可能性が低い。LIB81−042−B9は、Shewanella ORF8のアミノ酸1150〜1850と相同であった。LIB81−042−B9はポリ−A−テイルを有しておらず、従って追加領域が配列の下流に見出される、部分DNAである可能性が高かった。PCRプライマーTACCGCGGCAAGACTATCCGCAACGTCACC(配列番号74)及びGCCGTCGTGGGCGTCCACGGACACGATGTG(配列番号75)を使用して、SchizochytriumゲノムDNA由来の約500ヌクレオチド断片を増幅した。プライマーTACCGCGGCAAGACTATCCGCAACGTCACCLIB81−042−B9に由来し、プライマーGCCGTCGTGGGCGTCCACGGACACGATGTGにはLIB81−015−D5に由来した。従って、LIB81−042−及びLIB81−015−D5は同じmRNAの異なる部分を示し、1つの部分DNA配列(図27Cを参照)(配列番号76)内に組み込むことができた。LIB81−042−B9の読み取り枠も5’末端まで延びていたため、この部分DNAは完全長である可能性が低い。更なるDNA又はゲノムクローンの分析により、LIB81−042−B9により表されたmRNAの全長を決定することができるであろう。
【0107】
本発明により、種々の生物に由来するPKS様遺伝子を使用して、植物細胞を形質転換したり、形質転換した植物細胞でのPUFAs生合成を介して植物細胞膜又は植物種子油の脂肪酸組成物を改変したりすることができる。PKS様系の性質により、植物細胞で生産された脂肪酸の最終産物は、多くの特定の化学構造を含むように選択又は設計することが可能である。例えば、脂肪酸は以下の変化を有し得る:炭素鎖に沿った種々の位置におけるケト又はヒドロキシ基の数の変化;二重結合の数及び種類(シス又はトランス)の変化;線形炭素鎖の分岐(メチル、エチル、又はより長い分岐部分)の数及び種類の変化;及び飽和炭素の変化。さらに、最終産物である脂肪酸の特定の長さは、使用する特定のPKS様遺伝子によって制御することが可能である。
【0108】
本明細書で言及したすべての公表物及び特許出願は本発明が関連する当業者の技能のレベルを示す。あたかも各公表物又は特許出願が詳細に及び個別に参照により組み込まれるのと同じ程度に、すべての公表物及び特許出願は本願に参照により組み込まれる。
【0109】
さて、本発明を完全に説明したが、当業者には特許請求の精神又は範囲から逸脱することなく本発明に対して多くの変更及び改変を行いうることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離核酸であって、
図6に示した、ORF6(配列番号77)、ORF7(配列番号78)、ORF8(配列番号79)、及びORF9(配列番号80)から成る群より選択されたVibrio marinusヌクレオチド配列から成る単離核酸。
【請求項2】
単離核酸であって、
宿主細胞で発現されるとドコサヘキサエン酸を生産する、ポリケチド様合成系のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から成る単離核酸。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列が海洋細菌に由来するものである請求項2に記載の単離核酸。
【請求項4】
前記ヌクレオチド配列がSchizochytriumに由来するものである請求項2に記載の単離核酸。
【請求項5】
前記ヌクレオチド配列が、図6に示した、Vibrio marinus ORF8(配列番号79)である請求項2に記載の単離核酸。
【請求項6】
配列番号69、71及び76から成る群より選択された配列番号で示された配列を含むSchizochytriumヌクレオチド配列から成る単離核酸。
【請求項7】
単離核酸であって、
図6に示した、ORF6(配列番号77)、ORF7(配列番号78)、ORF8(配列番号79)、及びORF9(配列番号80)から成る群より選択されたVibrio marinusヌクレオチド配列の少なくとも50ヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列から成る単離核酸。
【請求項8】
請求項6に記載の単離核酸の少なくとも1つのコピーを有する組換え微生物細胞。
【請求項9】
前記細胞は長鎖多価不飽和脂肪酸を生産するのに必要なポリケチド様合成系の各構成要素を有する請求項8に記載の組換え微生物細胞。
【請求項10】
前記細胞は真核生物細胞である請求項9に記載の組換え微生物細胞。
【請求項11】
前記真核生物細胞は、菌類細胞、藻類細胞又は動物細胞である請求項10に記載の組換え微生物細胞。
【請求項12】
前記菌類細胞は酵母細胞であり、前記藻類細胞は海洋藻類細胞である請求項11に記載の組換え微生物細胞。
【請求項13】
前記細胞は原核生物細胞である請求項8に記載の組換え微生物細胞。
【請求項14】
前記細胞は細菌細胞又はシアノバクテリア細胞である請求項13に記載の組換え微生物細胞。
【請求項15】
前記細菌細胞はラクトバチルス属の細胞である請求項14に記載の組換え細胞。
【請求項16】
前記組換え微生物細胞は前記単離核酸を欠いた非組換え微生物細胞と比較して22:6脂肪酸が増強されている請求項8に記載の微生物細胞。
【請求項17】
微生物細胞培養物におけるドコサヘキサエン酸の生産方法であって、前記方法は複数の微生物細胞を有する微生物細胞培養物を成育する工程から成り、前記微生物細胞又は前記微生物細胞の祖先が、ポリケチド合成系のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する1または複数の核酸を備えたベクターにより形質転換され、前記1又は複数の核酸は、前記1又は複数の核酸が発現して前記微生物細胞培養物中でドコサヘキサエン酸が生産されるような条件で、プロモーターと機能的に連結している、方法。
【請求項18】
植物細胞における長鎖多価不飽和脂肪酸の生産方法であって、前記方法は複数の植物細胞を有する植物を成育する工程から成り、前記植物細胞又は前記植物細胞の祖先が、長鎖多価不飽和脂肪酸を生産するポリケチド合成系のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する1または複数の核酸を備えたベクターにより形質転換され、前記核酸の各々は、前記ペプチドが発現して前記植物細胞内で長鎖多価不飽和脂肪酸が生産されるような条件で、植物細胞内で機能するプロモーターと機能的に連結している、方法。
【請求項19】
前記ヌクレオチド配列が配列番号69、71及び76から成る群より選択された配列番号で示される請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記植物細胞内で生産された前記長鎖多価不飽和脂肪酸が20:5及び22:6脂肪酸である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ヌクレオチド配列が、図6に示したVibrio marinus ORF6(配列番号77)、ORF7(配列番号78)、ORF8(配列番号79)、及びORF9(配列番号80)、及び図4に示したShewanella putrefaciens ORF6(配列番号83)、ORF7(配列番号84)、ORF8(配列番号85)、ORF9(配列番号86)、並びに配列番号4と相補的なORF3から成る群より選択される請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸構築物は2又はそれより多くのポリケチド合成系に由来するものである請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸はエイコサペンタエン酸である請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である請求項18に記載の方法。
【請求項25】
組換え植物細胞であって、
長鎖多価不飽和脂肪酸を生産するポリケチド合成系の1又は複数のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する1または複数の核酸であって、その各々が前記植物細胞内で機能するプロモーターと機能的に連結している核酸を含む組換え植物細胞。
【請求項26】
前記ヌクレオチド配列は配列番号69、71及び76から成る群より選択された配列番号で示される請求項25に記載の組換え植物細胞。
【請求項27】
前記組換え植物細胞は組換え種子細胞である請求項26に記載の組換え植物細胞。
【請求項28】
前記組換え種子細胞は組換え胚細胞である請求項27に記載の組換え植物細胞。
【請求項29】
前記組換え植物細胞はアブラナ属(Brassica)、大豆、ベニバナ、及びヒマワリから成る群より選択された植物に由来する請求項26に記載の組換え植物細胞。
【請求項30】
請求項26に記載の組換え植物細胞によって生産された植物油。
【請求項31】
前記植物油はエイコサペンタエン酸を含む請求項30に記載の植物油。
【請求項32】
前記植物油はドコサヘキサエン酸を含む請求項30に記載の植物油。
【請求項33】
前記植物油はカプセルに包まれている請求項30に記載の植物油。
【請求項34】
請求項30に記載の植物油を含む栄養補助食品。
【請求項35】
組換えE.coli細胞であって、
長鎖多価不飽和脂肪酸を生産するポリケチド合成系のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する1または複数の核酸であって、その各々が前記E.coli細胞で機能するプロモーターと機能的に連結している核酸を含む組換えE.coli細胞。
【請求項36】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸である請求項35に記載の組換えE.coli細胞。
【請求項37】
前記ヌクレオチド配列が配列番号69、71及び76から成る群より選択された配列番号で示されている請求項35に記載の組換えE.coli細胞。
【請求項38】
組換え植物細胞により生産された植物油であって、前記植物油は前記植物油に対して外因性の長鎖多価不飽和脂肪酸を含み、前記植物細胞が、
前記植物細胞又は前記植物細胞の先祖を長鎖多価不飽和脂肪酸を生産するポリケチド合成系の1または複数のポリペプチドを有するベクターにより形質転換する工程であって、前記核酸の各々が前記植物細胞内で機能するプロモーターと機能的に連結している核酸を含む工程
から成る方法に従って生産される植物油。
【請求項39】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸はエイコサペンタエン酸である請求項38に記載の植物油。
【請求項40】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸はドコサヘキサエン酸である請求項38に記載の植物油。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−1】
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【図4A−2】
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【図4A−3】
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【図4A−4】
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【図4A−5】
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【図4A−6】
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【図4A−7】
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【図4A−8】
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【図4A−9】
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【図4A−10】
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【図4A−11】
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【図4A−12】
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【図4A−13】
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【図4A−14】
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【図4A−15】
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【図4A−16】
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【図4A−17】
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【図4A−18】
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【図4A−19】
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【図4A−20】
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【図4A−21】
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【図4A−22】
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【図4A−23】
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【図4A−24】
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【図4A−25】
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【図4A−26】
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【図4A−27】
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【図4A−28】
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【図4A−29】
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【図4A−30】
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【図4A−31】
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【図4A−32】
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【図4A−33】
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【図4A−34】
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【図4A−35】
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【図4A−36】
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【図4A−37】
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【図4A−38】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D−1】
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【図4D−2】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G−1】
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【図4G−2】
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【図4G−3】
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【図4H】
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【図4I−1】
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【図4I−2】
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【図4J】
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【図4K】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図5−6】
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【図5−7】
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【図5−8】
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【図5−9】
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【図5−10】
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【図5−11】
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【図5−12】
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【図5−13】
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【図5−14】
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【図5−15】
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【図5−16】
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【図5−17】
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【図5−18】
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【図5−19】
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【図5−20】
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【図5−21】
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【図5−22】
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【図5−23】
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【図5−24】
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【図5−25】
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【図5−26】
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【図5−27】
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【図5−28】
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【図5−29】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図6−8】
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【図6−9】
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【図6−10】
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【図6−11】
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【図6−12】
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【図6−13】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図26−3】
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【図26−4】
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【図27A−1】
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【図27A−2】
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【図27B−1】
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【図27B−2】
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【図27B−3】
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【図27C−1】
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【図27C−2】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【公開番号】特開2010−252811(P2010−252811A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178345(P2010−178345)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2007−289187(P2007−289187)の分割
【原出願日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】