説明

SCR濾過器を用いた排気処理システムおよび方法

【課題】ディーゼルエンジン排気流れに存在する窒素酸化物(NOx)と粒状物と気体状炭化水素を同時に修正するに適した排気処理システムおよび方法を提供する。
【解決手段】本排気処理システムでは、還元剤、例えばアンモニアなどによるNOxの選択的接触還元(SCR)に有効な材料で被覆しておいた煤濾過器の上流に酸化用触媒を位置させる。また、SCR触媒組成物を壁フロースルー式モノリスの上に充分な触媒充填率を与えるが結果として排気の中に不適切な背圧をもたらすほどではない度合で位置させる方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤、例えばアンモニアなどによるNOxの選択的接触還元(Selective Catalytic Reduction(SCR))に有効な材料で被覆しておいた煤濾過器の上流に酸化用触媒を位置させた排気処理システムに関する。1つの態様において、本システムは、ディーゼルエンジン排気流れに存在する窒素酸化物(NOx)と粒状物と気体状炭化水素を同時に改善する(remediating)有効な方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気は気体状排気物、例えば一酸化炭素(「CO」)、未燃焼炭化水素(「HC」)および窒素酸化物(「NO」)などばかりでなくまた凝縮相材料(液体および固体)(いわゆる粒子(particulates)または粒状物(particulate matter)を構成する)も含有する不均一な混合物である。ディーゼルエンジンの排気システムには、しばしば、そのような排気成分の特定部分または全部を無害な成分に変化させる組成物が上に位置する触媒組成物および基質が装備されている。例えば、ディーゼルの排気システムにはディーゼル酸化用触媒、煤濾過器およびNOx還元用触媒の中の1つ以上が含まれている可能性がある。
【0003】
白金族金属、卑金属およびこれらの組み合わせを含有する酸化用触媒はHCおよびCO両方の気体状汚染物の変換を促進しかつそのような汚染物を二酸化炭素と水にまで酸化することを通してある程度の比率ではあるが粒状物の変換も促進してディーゼルエンジン排気の処理を助長することが知られている。そのような触媒は一般にディーゼル酸化用触媒(DOC)と呼ばれる装置の中に入っていて、ディーゼルエンジンの排気が大気に排出される前にそれを処理するように前記排気の中に位置する。白金族金属を含有する酸化用触媒(これを典型的には耐火性酸化物である担体の上に分散させる)は、気体状HC、COおよび粒状物の変換を促進することに加えて、また、一酸化窒素(NO)からNOへの酸化も促進する。
【0004】
ディーゼルの排気に入っている粒状物である排気物は全体が3種類の主成分を含んでいる。一成分は乾燥した固体状の炭素質固体画分、即ち煤画分である。そのような乾燥した炭素質物はディーゼル排気に通常付随する目に見える煤排気物の一因になる。粒状物の2番目の成分は可溶有機画分(「SOF」)である。そのような可溶有機画分はしばしば揮発性有機画分(「VOF」)とも呼ばれ、本明細書ではその用語を用いる。VOFはディーゼル排気の中にディーゼル排気の温度に応じて蒸気またはエーロゾル(液状凝縮物の微細な滴)のいずれかとして存在し得る。それは、標準的測定試験、例えばU.S.Heavy Duty Transient Federal Test Procedureで規定されるように、希釈された排気の中に標準的粒子集合温度である52℃の時に一般に凝縮した液体として存在する。そのような液体は下記の2つの源に由来する:(1)ピストンが上下する毎にエンジンのシリンダー壁から流れる循環油および(2)未燃焼もしくは部分燃焼ディーゼル燃料。
【0005】
粒状物の3番目の成分はいわゆる硫酸塩画分である。そのような硫酸塩画分は、ディーゼル燃料に存在する少量の硫黄成分から生じる。ディーゼル燃焼中にSOが少ない割合ではあるが生じた後、それが次に排気中の水と迅速に化合することで硫酸が生じる。その硫酸が粒子と一緒に凝縮した相としてエーロゾルとして集まるか、或は他の粒状成分の上に吸着されることでTPMの質量に加わる。
【0006】
粒状物を高度に減少させようとする時に用いられる1つの鍵となる後処理技術はディーゼル粒状物濾過器である。粒状物をディーゼル排気から除去するに有効な濾過器構造物が数多く知られており、例えばハニカム壁流式濾過器(honeycomb wall flow filters)、巻回もしくは充填繊維製濾過器、開放気泡発泡体(open
cell foams)、焼結金属製濾過器などが知られている。しかしながら、以下に記述するセラミック製壁流式濾過器が最も注目される。そのような濾過器はディーゼル排気から粒状材料の90%以上を除去する能力を有する。そのような濾過器は排気から粒子を除去するに適した物理的構造物であるが、その集められた粒子は前記濾過器からエンジンにかかる背圧を高めるであろう。従って、背圧が容認される度合に維持されるように、その集められた粒子を前記濾過器から連続的または定期的に焼失させる必要がある。不幸なことには、炭素煤粒子を酸素が豊富に存在する(希薄)排気条件下で燃焼させるには500℃を超える温度が必要である。そのような温度はディーゼル排気に典型的に存在する温度より高い。
【0007】
一般的には、当該濾過器を受動的に再生させる目的で、煤燃焼温度を下げる手段を導入する。現実的な負荷サイクル下のディーゼルエンジン排気内で到達し得る温度で当該濾過器を再生させる触媒を存在させると煤の燃焼が促進される。そのように触媒を含有させた煤濾過器(CSF)または触媒を含有させたディーゼル粒子濾過器(CDPF)は粒状物を>80%減少させることに加えて集積する煤を受動的に燃焼させることで、濾過器の再生を助長するに有効である。
【0008】
世界中で採用されるであろう将来の排気基準は、また、ディーゼル排気からNOxを減少させることも取り扱うであろう。希薄排気条件を伴う固定式源に適用可能であることを確認したNOxを減少させる技術は選択的接触還元(SCR)である。この方法では、卑金属を典型的に含む触媒を用いてNOxにアンモニア(NH)による還元を受けさせて窒素(N)を生じさせる。この技術はNOxを90%を超える度合で減少させる能力を有し、従って、これは積極的なNOx減少目標を達成するに最良な方策の1つに相当する。SCRは自動車用途の目的で開発下にあり、尿素(典型的には水溶液の状態で存在)をアンモニア源として用いる。SCRは排気の温度が触媒が活性を示す温度の範囲内である限りNOxに変換を効率良く受けさせる。
【0009】
各々が排気に含まれる個別成分を取り扱う触媒を含有させた個別の基質を排気システムの中に装備することも可能ではあるが、システム全体のサイズを小さくし、システムの組み立てを容易にしかつシステム全体の費用を低くする目的で、使用する基質の数は少ない方が望ましい。この目的を達成する1つの方策は、NOxを無害な成分に変化させるに有効な触媒組成物で煤濾過器を被覆する方策である。そのような方策を用いると、その触媒を含有させた煤濾過器が下記の2種類の触媒機能を果たすようになる:排気流れに含まれる粒状成分の除去および排気流れに含まれるNOx成分をNに変換。
【0010】
NOx減少目標を達成し得るように煤濾過器に被覆を受けさせる場合、その煤濾過器にSCR触媒組成物を充分に充填する必要がある。そのような組成物を用いた場合、それが排気流れに入っている特定の有害成分にさらされるとそれの触媒効果の漸次損失が経時的起こることから、SCR触媒組成物の触媒充填量をより多くする必要性が増す。しかしながら、触媒充填量がより高くなるように被覆を受けさせた煤濾過器を調製すると、結果として、排気システム内の背圧が許容範囲を超えて高くなってしまう可能性がある。従って、壁流式濾過器への触媒充填量をより高くすることを可能にするが、それでも、当該濾過器がもたらす背圧が許容できる度合であるような流れ特徴を維持することを可能にする被覆技術が得られたならば、これは望ましいことである。
【0011】
壁流式濾過器に被覆を受けさせる時に考慮すべき追加的面は、適切なSCR触媒組成物
の選択である。1番目として、そのような触媒組成物は、これが濾過器再生に特徴的な高温に長期間さらされた時でもSCR触媒活性を維持するような耐久性を示すべきである。例えば、粒状物に含まれる煤画分が燃焼するとしばしば700℃を超える温度がもたらされる。そのような温度になると通常用いられるSCR触媒組成物の多く、例えばバナジウムとチタンの混合酸化物などは触媒的に有効でなくなる。2番目として、そのようなSCR触媒組成物の使用温度を、好適には、自動車運転時のいろいろな温度範囲に適合し得るに充分なほど幅広くする。例えば低負荷条件下または始動時に遭遇する温度は典型的に300℃未満である。SCR触媒組成物がより低い排気温度の時でさえNOx還元目標を達成するように、好適には、それに排気に含まれるNOx成分の還元に触媒作用を及ぼす能力を持たせる。
【0012】
SCR触媒組成物、煤濾過器およびこれらの組み合わせをディーゼル排気に含まれるNOxと粒状成分の両方を減少させる目的で用いることに関する記述が従来の技術に含まれている。そのような文献を以下に記述する。
【0013】
例えば、アンモニア注入器および脱硝用触媒が孔の中に入っている多孔質セラミック製濾過器の使用で特徴づけられるディーゼル排気ガス処理が特許文献1に開示されている。前記濾過器はディーゼルエンジン排気の伴流(wake)の中に取り付けられている。前記多孔質セラミック製濾過器は上流に位置する微細孔パス層(path layer)と下流に位置するサイドコース(side course)セラミック粒子層(これが前記脱硝用触媒を担持している)を含んで成る。前記微細層が白金もしくはパラジウムまたは他の炭化水素燃焼用触媒を担持するようにしてもよい。未燃焼炭素を含有するディーゼル排気ガスが前記多孔質セラミック製濾過器の中を通って流れることで、その表面が炭素粒子を濾過で除去する。一酸化窒素とアンモニアを含有するガスが前記濾過器の脱硝用触媒含有側を通って流れることで、一酸化窒素が還元を受けて窒素と水が生じる。上流側に位置する酸化用触媒による触媒作用で粒状成分が焼失する。
【0014】
酸化用触媒、この酸化用触媒の下流に位置していてそれと隣接して位置するSCR触媒、および前記酸化用触媒と前記SCR触媒の間で排気流れに導入される還元剤源が特許文献2に開示されている。NO含有量に対するNO含有量の比率が高い高級(higher)供給材料を前記SCR反応槽に供給するとNOを供給した時に可能な温度および空間速度よりも低い温度および高い空間速度を用いることが可能になると述べられている。
【0015】
NOxと粒状物が入っている燃焼排気ガスを処理するためのシステムが特許文献3に開示されており、それには、NOxの中のNOの少なくとも一部をNOに変化させるに有効な酸化用触媒、粒子捕捉器、還元剤流体源およびSCR触媒が備わっている。前記粒子捕捉器を前記酸化用触媒の下流に位置させ、前記還元剤流体源を前記粒子捕捉器の下流に位置させ、そして前記SCR触媒を前記還元剤流体源の下流に位置させている。開示された還元剤流体にはアンモニア、尿素、カルバミン酸アンモニウムおよび炭化水素(例えばディーゼル燃料)が含まれる。
【0016】
燃焼機関の排気系のための触媒作用を持つ壁流式濾過器が特許文献4に記述されている。その壁流式濾過器はハニカム配置の溝(channels)を有していて、前記溝の中のいくつかは上流末端部が遮断されており、そして上流末端部が遮断されていない前記溝のいくつかは下流末端部が遮断されている。その下流末端部が遮断されている溝の上流末端部の所の気体不透過性ゾーンに酸化用触媒を位置させている。その濾過器は前記酸化用触媒の下流に位置する気体透過性濾過ゾーンを有し、それは煤を捕捉するためのゾーンである。前記酸化用触媒はNOからNOを生じさせる能力(排気システムの中に存在する時)を有していて前記捕捉された煤を400℃未満の温度で連続的に燃焼させると記述されている。その酸化用触媒に好適には白金族金属を含有させている。NOを含有する排気
流れは最初に前記酸化用触媒の上を通ることでNOがNOに変化した後、煤が濾過で除去される。その後、そのNOが入っている排気ガスを用いて、前記濾過器が捕捉した煤を燃焼させている。
【0017】
特許文献4に記述された壁流式濾過器のいくつかの態様では、その煤濾過器に含まれる下流の溝にNOx吸着剤用触媒および前記NOx吸着剤の下流に位置するSCR触媒を含有させている。そのSCR触媒は銅が基になった材料、白金、バナジウムとチタニアの混合酸化物、またはゼオライト、またはこれらの2種以上の混合物であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平3−130522号
【特許文献2】米国特許第4,912,776号
【特許文献3】WO 99/39809
【特許文献4】WO 01/12320
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の要約
本発明は、1つの面において、NOxおよび粒状物を含有する排気流れを処理するに適した排気処理システム(emission treatment system)に関する。この排気処理システムは、酸化用触媒、アンモニアまたはアンモニア前駆体を前記排気流れに定期的に計量して入れる注入器、および壁流式モノリス(wall flow monolith)を含有する。前記注入器は前記酸化用触媒と流体伝達状態(fluid communication)にありかつ前記酸化用触媒の下流に位置する。前記壁流式モノリスは、SCR触媒組成物を含有し、前記注入器と流体伝達状態にありかつ前記注入器の下流に位置する。
【0020】
前記壁流式モノリスは多数の縦方向に伸びる通路を有するが、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路に境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されている。前記通路には、開放された入り口末端部と封鎖された出口末端部を有する入り口通路、および封鎖された入り口末端部と開放された出口末端部を有する出口通路が含まれている。前記壁流式モノリスは、前記壁に少なくとも1.3g/立方インチ(好適には1.6から2.4g/立方インチ)の濃度で染み込んでいるSCR触媒組成物を含有する。前記壁流式モノリスが有する壁間隙率(wall porosity)は少なくとも50%で平均孔径は少なくとも5ミクロンである。好適には、前記SCR触媒組成物は前記壁流式モノリスの壁に染み込んでいて前記壁が有する壁間隙率は50から75%で平均孔径は5から30ミクロンである。
【0021】
本排気処理システムの好適な態様における前記SCR触媒組成物は、銅および鉄成分の中の1種以上から選択した卑金属成分およびゼオライトを含有する。前記卑金属成分は好適には銅成分である。前記SCR触媒組成物に含める好適なゼオライトが有するアルミナに対するシリカの比率は少なくとも約10である。前記SCR触媒組成物に例えばベータゼオライトを用いてもよい。
【0022】
本システムの酸化用触媒は、とりわけ、排気の中に入って飛沫同伴してくる(entrained)粒状物、特にVOFの実質的な部分を燃焼させるに有用である。加うるに、そのような酸化用触媒上で、NOx成分の中のNOの実質的な部分に酸化を受けさせてNOを生じさせる。好適な態様では、前記酸化用触媒をハニカムフロースルー式モノリス基質(honeycomb flow through monolith subst
rate)または開放気泡発泡体基質(open cell foam substrate)の上に位置させる。前記酸化用触媒は好適には白金族金属成分、特に白金成分を含有する。いくつかの態様では、また、前記酸化用触媒にゼオライト成分も含有させてもよい。
【0023】
本排気処理システムの別の好適な態様において、本システムはまたディーゼルエンジンも有するが、これが前記酸化用触媒の上流に位置しかつそれと流体伝達状態であるようにする。
【0024】
本発明の別の面は、NOxおよび粒状物を含有する排気流れの中の生じた排気物を処理する方法に関する。この方法は、
(a)前記排気流れを酸化用触媒に通すことでNOの実質的な部分に酸化を受けさせてNOを生じさせることでNOが豊富な排気流れを生じさせ、
(b)アンモニアまたはアンモニア前駆体を前記NOが豊富な排気流れに定期的な間隔で計量して入れた後、
(c)前記排気流れを壁流式モノリスに通すことで粒状物を濾過で除去しかつNOxの実質的な部分に還元を受けさせてNを生じさせる、
ことを包含する。
【0025】
ここでも再び、前記壁流式モノリスは多数の縦方向に伸びる通路を有するが、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路の境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されている。前記通路には、開放された入り口末端部と封鎖された出口末端部を有する入り口通路、および封鎖された入り口末端部と開放された出口末端部を有する出口通路が含まれている。前記壁流式モノリスは、前記壁に少なくとも1.3g/立方インチ(好適には1.6から2.4g/立方インチ)の濃度で染み込んでいるSCR触媒組成物を含有する。前記壁流式モノリスが有する壁間隙率は少なくとも50%で平均孔径は少なくとも5ミクロンである。好適には、前記SCR触媒組成物は前記壁流式モノリスの壁の中に前記壁が有する壁間隙率が50から75%で平均孔径が5から30ミクロンのあるように染み込んでいる。
【0026】
本発明は、別の面において、SCR触媒組成物を壁流式モノリスの上に位置させる方法に関する。この方法は、
(a)前記壁流式モノリスを前記SCR触媒組成物含有水性スラリーの中に1番目の方向から浸けることで前記SCR触媒組成物を入り口通路に付着させ、
(b)圧縮気体流れを出口通路の中に強制的に送り込みかつ前記入り口通路に真空をかけることで余分なスラリーを前記入り口通路から除去し、
(c)前記壁流式モノリスを前記水性スラリーの中に前記1番目の方向とは反対方向の2番目の方向から浸けることで前記SCR触媒組成物を前記出口通路に付着させ、
(d)圧縮気体流れを前記入り口通路の中に強制的に送り込みかつ前記出口通路に真空をかけることで余分なスラリーを前記出口通路から除去し、そして
(e)前記被覆を受けさせた壁流式モノリスに乾燥および焼成を受けさせる、
ことを包含する。
【0027】
好適には、この方法で用いる壁流式モノリスが有する間隙率を少なくとも50%(例えば50から75%)にし、平均孔径を少なくとも5ミクロン(例えば5から30ミクロン)にする。
【0028】
好適には、前記SCR触媒組成物を前記壁に少なくとも1.3g/立方インチ(好適には1.6から2.4g/立方インチ)の濃度で染み込ませる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、ディーゼルエンジンの排気に含まれる粒状物、NOx及び他の気体状成分を同時に有効に処理する排気処理システムに関する。本排気処理システムでは、本排気システムが要求する重量および体積が有意に最小限になるように、使用する煤濾過器とSCR触媒を一体化させる。その上、本システムに使用する触媒組成物を選択することで、いろいろな温度の排気流れに含まれる汚染物を有効に減少させる。このような特徴は、ディーゼル車がいろいろな負荷および車速度(これらは前記自動車のエンジンから排出される排気の温度に有意な影響を与える)下で運転される場合に有利である。
【0030】
NOx還元機能と粒状物除去機能を一体化して単一の触媒製品にすることを、SCR触媒組成物で被覆した壁流式基質を用いて達成する。本出願者らは、SCR触媒組成物を壁流式基質に付着させることで高い濾過効率が要求される用途で使用可能な基質を生じさせる方法を見いだした。例えば、本方法で生じさせた基質は、本発明の排気処理システムにおいて、粒状物を有効に除去(例えば80%超)するに適切である。本明細書に開示する被覆方法を用いると、壁流式基質にSCR触媒を実用的な濃度で充填することができ、それによって、その被覆を受けさせた製品を排気処理システムに使用した時にそれを横切る過剰な背圧が生じることはない。
【0031】
前記壁流式基質上のSCR触媒組成物の実用的なレベル(practical levels)を達成することは、指示される(mandated)NOx還元レベルを達成するに充分な触媒活性を与えかつ濾過器が捕捉した煤画分の燃焼温度を低くするに重要である。前記煤濾過器上のSCRウォッシュコート(washcoat)組成物の充分なレベルを達成することは、また、その触媒が充分な耐久性を示すことを確保するにとっても重要である。本排気処理システムが長期間使用される場合、触媒は必ずいろいろな濃度の触媒毒(これは潤滑油が分解することで生じ得るか或はディーゼル燃料に含まれる不純物に由来し得る)にさらされ得る。そのような触媒毒の例には燐、亜鉛、アルカリおよびアルカリ土類元素が含まれる。従って、そのように不可避的に起こる触媒活性損失に打ち勝つ目的で、典型的には、触媒基質に付着させる触媒組成物のレベルをより高くする。
【0032】
本発明の排気処理システムの1つの態様を図1Aに図式的に示す。図1Aから分かるであろうように、気体状汚染物(未燃焼炭化水素、一酸化炭素およびNOxを包含)と粒状物を含有する排気はエンジン15から酸化用触媒11に運ばれる。この酸化用触媒11の中で未燃焼の気体状および非揮発性炭化水素(即ちVOF)および一酸化炭素の大部分が燃焼することで二酸化炭素と水が生じる。前記酸化用触媒を用いてVOFを実質的な割合で除去しておくことは、特に、本システムの下流に位置させる煤濾過器12に粒状物があまりにも多量に付着する(即ち詰まりを起こす)ことを防止するに役立つ。加うるに、前記酸化用触媒はNOx成分の中のNOに実質的な割合で酸化を受けさせてNOを生じさせる。
【0033】
ノズル(示していない)を用いて還元剤(本ケースではアンモニア)をスプレーとして排気流れの中に前記酸化用触媒の下流で注入する。1つの線18で示す尿素水溶液をアンモニア前駆体として用いてもよく、それを別の線19で示す空気と混合ステーション16の中で混合してもよい。弁14を用いて尿素水溶液を正確な量で計量することができ、前記尿素水溶液は排気流れの中でアンモニアに変化する。その添加したアンモニアを伴う排気流れは煤濾過器12(これをSCR触媒組成物で被覆しておく)に運ばれる。それが前記煤濾過器の中を通る時、NOxがアンモニアによる選択的接触還元を受けることでそのNOx成分が窒素に変化する。その上流に位置させた酸化用触媒の触媒作用によってNOxの中のNOの比率が増すことで、NOxの還元が、NOx成分の中に含まれるNOの比率がより低い排気流れのそれに比べて助長される。
【0034】
望まれるNOx除去レベルに応じて、前記煤濾過器の下流に追加的SCR触媒を位置させてもよい。例えば、そのような追加的SCR触媒を前記煤濾過器の下流に位置させたモノリス型のハニカムフロースルー式基質またはセラミック製発泡体基質の上に位置させてもよい。このような態様でも、そのSCRで被覆しておいた煤濾過器を用いることで、NOx還元目標を満たすに要する全触媒体積の低下が達成される。
【0035】
また、そのような煤濾過器を用いると、粒状物(煤画分およびVOFを包含)も大きく除去される(80%を超える度合で)。その煤濾過器に付着した粒状物はその濾過器を再生させている時に燃焼するが、この過程もまた前記SCR触媒組成物の存在によって助長される。前記粒状物の煤画分が燃焼する温度は、前記煤濾過器の上に位置させた触媒組成物の存在によって低くなる。
【0036】
任意の構造配置を図1Bに示すが、この排気処理システムにはスリップ酸化用触媒(slip oxidation catalyst)13を装備して、それを、前記被覆を受けさせた煤濾過器12の下流に位置させる。このスリップ酸化用触媒を覆う組成物は、例えば卑金属を含有していて白金の量が0.5重量%未満の組成物であってもよい。そのような方策を用いることで、いくらか過剰に存在するNHが大気に排気される前にそれを酸化させることができる。
【0037】
本システムで用いるに適したSCR触媒組成物は、排気温度が低いことを典型的に伴う低負荷条件下でさえNOxが充分な度合で処理され得るように、NOx成分の還元に600℃未満の温度で有効に触媒作用を及ぼし得る組成物である。そのような触媒製品は、好適には、本システムに添加する還元剤の量に応じて、NOx成分の少なくとも50%をNに変化させる能力を有する。加うるに、本システムで用いるに適したSCR触媒組成物は、また、理想的には、粒状物の煤画分が燃焼する温度を低くすることで前記濾過器の再生に役立ち得る。そのような組成物が有する別の望ましい属性は、NHが大気に放出されることがないように、Oといくらか過剰に存在するNHとからNとHOが生じる反応に触媒作用を及ぼす能力を有することにある。
【0038】
本発明のシステムで用いるに有用なSCR触媒組成物は、また、650℃を超える温度に及んで耐熱性を示す。前記煤濾過器を再生させている時にしばしばそのような高温に遭遇する。加うるに、SCR触媒組成物は硫黄成分(しばしばディーゼル排気ガス組成の中に存在)にさらされた時の劣化に耐えるべきである。
【0039】
適切なSCR触媒組成物は、例えば米国特許第4,961,917号(’917特許)および5,516,497号(これらは両方とも引用することによって全体が本明細書に包含される)に記述されている組成物である。前記’917特許に開示されている組成物は、鉄と銅助触媒(ゼオライトの中に存在)の一方または両方を助触媒とゼオライトの総重量の約0.1から30重量パーセント、好適には約1から5重量パーセントの量で含有する。その開示された組成物は、NOxとNHからNが生じる還元に触媒作用を及ぼす能力を有することに加えて、また、Oによる余分なNHの酸化を助長する能力も有し、特に助触媒濃度がより高い組成物の場合に助長する能力を有する。
【0040】
前記組成物で用いるゼオライトは硫黄毒に耐性があり、SCR過程で高いレベルの活性を維持しかつ余分なアンモニアを酸素で酸化させる能力を有する。そのようなゼオライトの孔径は、短期の硫黄毒作用の結果としてもたらされる酸化硫黄分子および/または長期の硫黄毒作用の結果としてもたらされる硫酸塩付着物が存在していても反応体分子であるNOおよびNHが孔系の中に入りそして生成物分子であるNおよびHOが孔系から出る移動が適切に起こることを可能にするに充分な大きさである。適切な大きさの孔系が
結晶の三次元の全部で相互連結している。ゼオライト技術分野の技術者に良く知られているように、ゼオライトの結晶構造は多少とも規則的に繰り返し存在する連結部、交点などを有する複雑な孔構造を示す。特別な特徴を有する、例えば所定範囲の直径または断面形態などを有する孔が、他の同様な孔と一緒に交差していない場合、そのような孔は一次元であると記述される。そのような孔が所定面のみで他の同様な孔と交差している場合、そのような特徴を有する孔は(結晶学的に)二次元で交差していると記述される。そのような孔が同じ面および他の面の両方で他の同様な孔と交差している場合、そのような孔は三次元で相互連結している、即ち「三次元的」であると記述される。硫酸塩毒に高い耐性を示しかつSCR過程および酸素によるアンモニアの酸化の両方に良好な活性を示しかつ高温、水熱条件および硫酸塩毒にさらされた時でも良好な活性を保持するゼオライトは少なくとも約7オングストロームの孔径を示しかつ三次元で相互連結している孔を有するゼオライトであることを見いだした。如何なる特別な理論でも範囲を限定することを望むものでないが、直径が少なくとも7オングストロームの孔が三次元で相互連結していると硫酸塩分子がゼオライト構造全体に渡って良好に移動し得ることで硫酸塩分子が触媒から放出され、それによって、反応体であるNOxおよびNH分子および反応体であるNHおよびO分子用として利用される吸着部位が多数解放されると考えている。この上に示した判断基準を満たす如何なるゼオライトも本発明の実施で用いるに適するが、そのような判断基準を満たす特定のゼオライトはUSY、ベータおよびZSM−20である。また、他のゼオライトも上述した判断基準を満足させる可能性がある。
【0041】
そのようなSCR触媒組成物を壁流式モノリス基質に付着させる時、所望のNOx還元および粒子除去レベルが達成されることを確保しかつ当該触媒が長期使用に渡って充分な耐久性を示すことを保証する目的で、それを少なくとも1.3g/立方インチの濃度で付着させる。好適な態様では、壁流式モノリスに付着させるSCR組成物の量を少なくとも1.6g/立方インチ、特に1.6から2.4g/立方インチにする。
【0042】
そのようなSCR触媒組成物の担持に有用な壁流式基質は、この基質の縦軸に沿って伸びる多数の実質的に平行な微細気体通路を有するものである。各通路は、典型的に、通路の相対する末端面が交互に遮断されるように基質本体の一方の末端部が遮断されている。そのようなモノリス型担体が含有する通路(即ち「セル」)は断面1平方インチ当たり約700またはそれ以上に及び得るが、はるかに少ない数も使用可能である。例えば、そのような担体が1平方インチ当たりに有するセルの数は約7から600、より一般的には約100から400セル/立法インチ(cells per square inch;「cpsi」)であってもよい。そのようなセルの断面は長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形または他の多角形であってもよい。壁流式基質の壁厚は典型的に0.002から0.1インチの範囲である。好適な壁流式基質の壁厚は0.002から0.015インチの範囲である。
【0043】
図2および3に、多数の通路52を有する壁流式濾過器基質30を示す。前記通路は濾過器基質の内壁53で管状に囲まれている。前記基質は入り口末端部54と出口末端部56を有する。通路は交互に入り口末端部が入り口プラグ58で塞がれかつ出口末端部が出口プラグ60で塞がれていることで入り口54および出口56の所に相対する市松模様が形成されている。気体流れ62は塞がれていない溝入り口64を通って入り、出口プラグ60で阻止されることで溝壁53(これは多孔質である)を通って拡散して出口側66に向かう。その気体は入り口プラグ58の存在によって壁の入り口側に戻ることはできない。
【0044】
好適な壁流式濾過器基質はセラミック様材料、例えばコージライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカ−マグネシアまたはケイ酸ジルコニウムなど、または多孔質の耐火性金属で構成されている。ま
た、セラミック繊維複合材料で壁流式基質を構成させることも可能である。好適な壁流式基質はコージライトおよび炭化ケイ素で構成させた基質である。そのような材料は排気流れ処理中に遭遇する環境、特に高温に耐え得る。
【0045】
本発明のシステムで用いるに好適な壁流式基質には、多孔質の薄い壁を有するハニカム(モノリス)[その中を流体流れは当該製品を横切る過度の背圧の上昇も過度の圧力の上昇ももたらすことなく通る]が含まれる。奇麗な壁流式製品を存在させた時に生じる背圧は一般に1インチ水柱から10psigであろう。本システムで用いるセラミック製壁流式基質を好適には間隙率が少なくとも50%(例えば50から75%)で平均孔径が少なくとも5ミクロン(例えば5から30ミクロン)の材料で構成させる。より好適には、そのような基質が示す間隙率は少なくとも55%で平均孔径は少なくとも10ミクロンである。そのような間隙率およびそのような平均孔径を有する基質を以下に記述する技術で被覆すると、前記基質の上にSCR触媒組成物を優れたNOx変換効率の達成に充分な濃度で充填することができる。そのような基質は、これにSCR触媒を充填したにも拘らず、それでも充分な排気流れ特性を保持し得る、即ち背圧は容認されるままであり得る。米国特許第4,329,162号を適切な壁流式基質の開示に関して引用することによって本明細書に包含される。
【0046】
商業的に用いられている典型的な壁流式濾過器は、典型的に、本発明で用いる壁流式濾過器が有する壁間隙率よりも低い壁間隙率、例えば約35%から50%の壁間隙率を示すように構成されている。一般に、商業的壁流式濾過器の孔径分布は典型的に非常に幅広く、それに加えて平均孔径も17ミクロンより小さい。
【0047】
本発明で用いる多孔質壁流式濾過器は前記構成要素の壁の上または壁の中に1種以上の触媒材料を含有させて触媒活性を持たせる。触媒材料を前記構成要素の壁の入り口側のみ、出口側のみまたは入り口側と出口側の両方に存在させてもよいか、或は壁自身の全部または一部を触媒材料で構成させてもよい。本発明は、そのような構成要素の入り口壁および/または出口壁に触媒材料の1層以上の層および触媒材料の1層以上の層の組み合わせを用いることを包含する。
【0048】
そのような壁流式基質を前記SCR触媒組成物で被覆する時、前記基質を触媒スラリーの一部の中に前記基質の上部(top)が前記スラリーの表面の直ぐ上に位置するように垂直に浸ける。このようにすると、スラリーは各ハニカム壁の入り口面に接触するが、各壁の出口面には接触しない。そのサンプルを前記スラリーの中に約30秒間入れたままにする。前記基質を前記スラリーから取り出し、最初に余分なスラリーをその溝から排出させることでそれを前記壁流式基質から除去した後、圧縮空気で吹き飛ばし(スラリーを染み込ませた方向とは反対側に)そして次に真空をスラリーを染み込ませた方向からかけることで余分なスラリーを除去する。このような技術を用いると、触媒スラリーが基質の壁に染み込むが、孔の閉塞が完成基質の中に過度の背圧が作り出されるほどにまで起こることはない。本明細書で用いる如き用語「染み込み」(permeate)を触媒スラリーを基質の上に分散させることを記述する目的で用いる場合、それは、その触媒組成物を当該基質の壁全体に分散させる(dispersed)ことを意味する。
【0049】
そのような被覆を受けさせた基質に乾燥を典型的に約100℃で受けさせた後、焼成をより高い温度(例えば300から450℃)で受けさせる。焼成後の触媒充填率の測定は当該基質の被覆後の重量と被覆前の重量を計算することで実施可能である。本分野の技術者に明らかであろうように、被覆用スラリーの固体含有量を変えることで触媒充填量を変えることができる。別法として、当該基質を被覆用スラリーに繰り返し浸漬した後、この上に記述したようにして余分なスラリーを除去することで、それを実施することも可能である。
【0050】
NOx還元剤を排気流れに注入する目的で、還元剤注入システムを前記煤濾過器の上流であるが前記酸化用触媒の下流に装備する。米国特許第4,963,332号に開示されているように、触媒コンバーターの上流および下流でNOxを感知してもよくそしてその上流および下流のシグナルで間欠的注入弁を制御してもよい。代替構造配置、即ち米国特許第5,522,218号に開示されているシステムでは、還元剤注入器のパルス幅を排気ガス温度およびエンジン作動条件、例えばエンジンのrpm、伝動装置およびエンジンの速度などのマップで制御する。また、米国特許第6,415,602号(これの考察は引用することによって本明細書に包含される)の中で考察された間欠的還元剤計量システムも参考になる。
【0051】
図4の態様では、尿素水溶液貯蔵槽22に自動車に搭載した尿素/水溶液を貯蔵して、それをポンプ21(フィルターおよび圧力調節器を含有)でポンプ輸送して尿素注入器16に送る。尿素注入器16は混合室であり、これは、圧力が調節された空気をライン19(これは空気を制御弁によって間欠的に尿素注入器16に送る)で受け取る。霧化した尿素/水/空気溶液が生じ、それがノズル23によって間欠的に排気パイプ24の中に前記一体式SCR触媒被覆煤濾過器12の上流で注入される。
【0052】
本発明を図4に示した尿素水溶液計量配置に限定するものでない。窒素が基になった気体状反応体を用いることも考えられる。例えば、尿素もしくはシアヌレール酸の小球を注入する注入器(prill injector)を用いて尿素の固体状ペレットを計量して排気ガスで加熱されているチャンバの中に入れることで、その固体状の還元剤を気化させてもよい(昇華温度の範囲は約300から400℃)。シアヌール酸が気化するとイソシアン酸(HNCO)になりそして尿素が気化するとアンモニアとHNCOになる。いずれの還元剤を用いる時にも、加水分解用触媒を前記チャンバの中に装備しそして排気ガス(この排気ガスは水蒸気を充分な量で含有する)の分割流れを計量して前記チャンバの中に入れることでHNCOに加水分解(約150から350℃の温度)を受けさせてアンモニアを生じさせることができる。
【0053】
尿素およびシアヌール酸に加えて、窒素が基になっていて本発明のコントロールシステムで用いるに特に適した他の還元用反応体または還元剤には、アメリド(ammelide)、アメリン(ammeline)、シアン酸アンモニウム、ビウレット、シアヌール酸、カルバミン酸アンモニウム、メラミン、トリシアノ尿素、およびそれらの数種の混合物が含まれる。しかしながら、より幅広い意味で、本発明を窒素が基になった還元剤に限定するものでなく、それには、炭化水素を含有する全ての還元剤、例えば留出燃料[アルコール、エーテル、有機ニトロ化合物など(例えばメタノール、エタノール、ジエチルエーテルなど)を包含]およびいろいろなアミンおよびこれらの塩(特にこれらの炭酸塩)(グアニジン、メチルアミンの炭酸塩、ヘキサメチルアミンなどを包含)も含まれ得る。
【0054】
前記還元剤注入システムの上流に酸化用触媒(又はDOC)を存在させる。この酸化用触媒は、未燃焼の気体状および非揮発性の炭化水素(即ちVOF)および一酸化炭素を有効に燃焼させる如何なる組成物で作られていてもよい。加うるに、そのような酸化用触媒はNOx成分の中のNOを実質的な比率でNOに変化させるに有効であるべきである。本明細書で用いる如き用語「NOx成分の中のNOをNOに実質的に変化」は、少なくとも20%、好適には30から60%を意味する。そのような特性を有する触媒組成物は本技術分野で公知であり、それには、白金族金属が基になった組成物および卑金属が基になった組成物が含まれる。そのような触媒組成物で耐火性金属もしくはセラミック(例えばコージライト)材料で作られたハニカムフロースルー式モノリス基質を被覆してもよい。別法として、本技術分野で良く知られている金属もしくはセラミック発泡基質の上に酸化用触媒を生じさせることも可能である。そのような酸化用触媒は、これが覆っている基
質(例えば開放気泡セラミック発泡体)および/またはそれらが示す固有の酸化触媒活性によって、粒子をある度合で除去する。好適には、そのような酸化用触媒が前記壁流式濾過器の上流で排気流れから粒状物をいくらか除去するようにする、と言うのは、前記濾過器の上に存在する粒子質量が減少すると強制的に行う再生を行うまでの時間が長くなる可能性があるからである。
【0055】
本排気処理システムで使用可能な好適な1つの酸化用触媒組成物は、ゼオライト成分(好適にはベータゼオライト)と一緒にしておいた高表面積の耐火性酸化物である担体(例えばγ−アルミナ)の上に分散している白金族成分(例えば白金、パラジウムまたはロジウム成分)を含有する組成物である。好適な白金族金属成分は白金である。そのような組成物を耐火性酸化物である基質、例えばフロースルー式ハニカム基質などの上に位置させる時、白金の濃度が典型的に約10から120gの白金/立方フィートになるようにする。
【0056】
白金族金属が基になっていて酸化用触媒を生じさせる時に用いるに適した組成物はまた米国特許第5,100,632号(’632特許)(引用することによって本明細書に包含される)にも記述されている。前記’632特許には、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムとアルカリ土類金属の酸化物、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムまたは酸化バリウムなどを白金族金属とアルカリ土類金属の間の原子比が約1:250から約1:1、好適には約1:60から約1:6であるように含有する混合物を有する組成物が記述されている。
【0057】
そのような酸化用触媒で用いるに適した触媒組成物をまた卑金属を触媒作用剤として用いて生じさせることも可能である。例えば、米国特許第5,491,120号(これの開示は引用することによって本明細書に包含される)には、BET表面積が少なくとも約10m/gの触媒材料を含有する酸化用触媒組成物が開示されているが、それは本質的にチタニア、ジルコニア、セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカおよびα−アルミナの中の1種以上であってもよいバルクな(bulk)2番目の金属酸化物で構成されている。
【0058】
また、米国特許第5,462,907号(’907特許、これの開示は引用することによって本明細書に包含される)に開示されている触媒組成物も有用である。前記’907特許には、各々の表面積が少なくとも約10m/gのセリアとアルミナがセリアと活性アルミナの重量比が例えば約1.5:1から1:1.5であるように入っている触媒材料を含有する組成物が教示されている。場合により、前記’907特許に記述されている組成物に白金をCOおよび未燃焼炭化水素の気相酸化を促進するに有効であるがSOからSOへの過度の酸化が起こらないように制限した量で含有させることも可能である。別法として、その触媒材料にパラジウムを所望の如何なる量で含有させることも可能である。
【0059】
以下に示す実施例で本発明のさらなる説明を行うが、勿論、決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0060】
セラミック製壁流式濾過器の被覆
寸法が5.66x6インチで壁厚が0.012インチで平均孔径が25ミクロンで壁間隙率が60%のコージライトセラミック製壁流式濾過器基質(商品名C611、NGK Insulators,Ltd.)を用いて、触媒で覆われた煤濾過器を生じさせた。
【0061】
銅による交換を受けさせておいたベータゼオライト(銅含有量が2重量%)と追加的CuSO(銅を9.5重量%与えるに充分な量)と7重量%の量のZrOと脱イオン水
(ベータゼオライトの重量を基準にした重量%)を用いて固体含有量が27重量%の触媒スラリーを生じさせた。前記銅による交換を受けさせておいたベータゼオライトの調製を米国特許第5,516,497号に示されているようにして実施した。
【0062】
同じ手順を用いて本発明の好適な態様に従う濾過器基質を2個調製した。その壁流式基質に下記を受けさせた:
(1)前記基質を前記スラリーの中に1つの方向から前記基質の軸の長さ全体に沿って前記基質の溝が被覆されるに充分な深さに浸漬し、
(2)前記基質に前記被覆方向とは反対側(即ち乾燥している側)からエアナイフによる処理を受けさせ(air−knifed)、
(3)前記被覆側から真空をかけ、
(4)乾燥を93℃の空気流中で1時間そして焼成を400℃で1時間受けさせ、
(5)次に、段階(1)から(4)を反対側から繰り返した。
【0063】
これらの濾過器基質(触媒A1およびA2と表示)が含有する触媒の充填率は2.1g/立方インチであった。これらの触媒が含有する銅の量は約0.2g/立方インチであった。
【0064】
前記基質の片側のみに段階(1)から(4)に従う被覆を受けさせることで別の濾過器基質(触媒B1と表示)を生じさせた。触媒充填率が触媒1Aと同じ充填率に到達するように、スラリーの固体含有量を38%にまで高くした。この触媒の組成は同じままであった。触媒B1の触媒充填率は2.0g/立方インチであった。この触媒が含有する銅の量もまた0.2g/立方インチであった。
【0065】
参考サンプルである触媒D1の調製をフロースルー型触媒として実施した。この種類の触媒の調製では、この上に記述した種類の濾過器基質の一方の末端部に位置するプラグの深さの直ぐ下の所を直径を横切るように切断した。このようにして、前記壁流式濾過器を前方領域の半分が有効に遮断されているフロースルー式基質に変えた。この基質に前記銅による交換を受けさせておいた交換ベータゼオライト触媒組成物による被覆を受けさせることで2.0g/立方インチの触媒充填率を得た。
【実施例2】
【0066】
被覆煤濾過器が示す背圧の評価
市販の自動化装置であるSuper Flow SF 1020(Probench)を用いて未被覆および被覆濾過器を横切る圧力降下を評価した。前記装置は、特に、圧力降下を空気流量の関数として測定するように考案された装置である。この装置を用いて得たデータから周囲条件下の圧力降下を空気流量の関数としてプロットした図を作成した。その圧力降下は空気が当該濾過器の中をどれだけ容易に流れるかの尺度である。ディーゼルエンジン用途では、エンジンが空気を動かす目的で動力を消費する必要があることから、圧力降下が低い方が望ましい。従って、空気のポンプ輸送で失われるエンジン動力量は圧力降下が大きければ大きいほど大きい。そのように動力が失われると車が利用することができるエンジン動力が低下してしまう。
【0067】
図5に、前記被覆を受けさせた濾過器である触媒A1、A2およびB1ばかりでなく同じ寸法の未被覆濾過器を横切る圧力降下を要約する。実施例1の段階(1)から(5)に従う被覆を受けさせた濾過器、即ち触媒A1およびA2が示した圧力降下が未被覆濾過器のそれよりも高い度合は約25%であった。触媒A1およびA2とは対照的に、最適ではない濾過器である触媒B1に被覆を受けさせた後にそれが示した圧力降下は前記未被覆濾過器のそれよりも100%以上大きかった。そのように触媒B1が示した圧力降下は非常に高いことから、そのような濾過器にエンジン試験を受けさせるのは不可能であることが
分かった。被覆を触媒B1と同じ様式で受けさせた濾過器を横切る圧力降下がより低くなるように触媒充填率を低くすることでそれを達成することは可能であったが、SCR触媒の充填率をより低くしたことで、もたらされたNOx還元度合は受け入れられる度合でなかった。
【実施例3】
【0068】
SCR触媒による粒子除去の立証
触媒組成物を壁流式濾過器に付着させた時、それは理想的には前記濾過器の再生を補助すべきである。従って、好適には、前記濾過器の上に位置させたSCR触媒組成物が粒子のVOF部分および煤の酸化に触媒作用を及ぼす能力を有するようにする。そのSCR触媒がNOxおよび粒状物の質量を低くするに有効であるには、それは好適にはアンモニアを酸化させるべきでなくまたSOを酸化させてSOを生じさせるべきではない。ある触媒が炭素およびVOFを酸化させる能力を有するか否かを評価する1つの方法は、熱重量分析(TGA)と示差熱分析(DTA)を組み合わせて用いる方法である。TGAでサンプルの重量損失を測定する一方でDTAで標準と対比させたサンプルの熱容量変化を測定する。この実験では、触媒スラリーの一部に乾燥および焼成を受けさせておいて、潤滑油のVOF部分を模擬する目的で、それを6重量%の量の潤滑油と混合し、そして粒子の煤画分を模擬する目的で、それを14重量%の量のカーボンブラックと混合した。この混合物をTGAとDTAを組み合わせて実施する装置の中に充填した。いろいろなガス組成物をサンプルの中に通すことができるが、これらの試験では空気中で試験を実施した。前記装置を既知速度で加熱することで重量損失と熱発生を温度の関数として測定した。この技術の利点は、いろいろな煤成分の重量損失を分離することができかつそれらの重量損失を熱変化に関係付けることができる点にある。煤の燃焼に有効な触媒は煤の燃焼が始まる温度を低くするであろう。
【0069】
図6に、下記の2種類の触媒組成物が示したDTAシグナル(マイクロボルトで表す)を温度の関数としてプロットする:(1)標準的組成、即ちTiO−10重量%のWO−2重量%のV触媒、および(2)触媒A1の被覆で用いた触媒組成物。前記TiOが基になった組成物はSCR触媒における最新技術の典型的な組成物であり、幅広く用いられている。各触媒のスラリーに乾燥および焼成を受けさせることで得た粉末を6重量%の量の潤滑油および14重量%の量のカーボンブラックと混合した。これらのサンプルを空気中で室温から1分当たり20℃の加熱速度で800℃になるまで加熱した。その結果として得たDTAシグナルは2つのピークを示し、1つのピークは400℃未満の温度の所に存在していて、それはVOFの燃焼に相当しており、そして2番目のピークはより高い温度の所に存在していて、それはカーボンブラックの燃焼に相当していた。その結果は、両方の触媒組成物とも模擬粒子の潤滑油部分の燃焼に有効であるが好適な触媒組成物の方が煤燃焼温度を下げることで明らかなように炭素部分の燃焼の点でずっとより有効であることを示している。以下に示す実施例から分かるであろうように、そのような利点はNOx還元活性を危うくすることなく維持される。
【実施例4】
【0070】
被覆煤濾過器が示すNOx変換および粒子除去の評価
ディーゼル技術の最新技術の代表例の試作エンジンであるV6で4Lのターボチャージ付き後冷却(after−cooled)ディーゼルエンジンを用いて、濾過効率と同時にNOx還元を測定した。前記エンジンをテストスタンドの上に取り付けて、それを再現可能な安定した排気をもたらすような定常状態で作動させた。前記エンジンの速度および負荷を濾過器入り口温度が370℃でNOx濃度が約950ppmになるように調節した。Code of Federal Regulations、Title 40、パート86のパラグラフ1312−88に記述されている手順に従ったが、フル希釈トンネル(full dilution tunnel)の代わりにミニ希釈トンネルを用いて粒
子測定値を決定した。希釈比率をCO濃度から決定した。前記ディーゼルエンジンに関して、尿素溶液を酸化用触媒の後方であるがSCR被覆濾過器基質の前方に注入することで、NOxの除去を達成した。この実験の構造配置を図7に示す。加熱されたサンプリングラインと分析用セルが備わっているFTIR装置を用いてNOxおよびアンモニアを測定した。また、特に生ディーゼル排気の分析に適するように考案されたHoriba分析ベンチを用いてNOx、COおよびHCも測定した。
【0071】
追加的触媒を調製して固定式ディーゼルエンジンに取り付けて、それに老化を乗用車の運転を模擬する老化サイクルを用いて1000時間受けさせた。その老化サイクルはCode of Federal Regulationsのパート86のパラグラフ836−01の「Durability Driving Schedule for Light Duty Vehicles and Light Duty Trucks」に記述されている手順の適応であった。そこに記述されている試験サイクルは、テストトラックの回りを運転する自動車の速度そして自動車を定期的に停止させることを指定している。先行する研究で前記サイクルの温度プロファイルを測定した後、それをエンジンベンチで模擬した。この老化および評価ではARCO ECDディーゼル燃料を用いた。この燃料の硫黄含有量は12ppmであり、それは、そのような燃料が前記技術の予測される適用で利用されるであろうと予測されることと矛盾しない。
【0072】
図7に示した実験構造配置を用いて、3種類の触媒基質が示すNOx変換率および粒子除去を測定した。図7から分かるであろうように、この実験構造配置に、触媒含有煤濾過器の上流に位置させた尿素注入器および前記尿素注入器の上流に位置させた酸化用触媒(DOC)を含めた。DOCが原因でいくらか起こる変動を最小限にする目的で、試行の全部を同じDOCを用いて実施した。前記酸化用触媒組成物を5.66x6インチのフロースルー式コージライト基質の上に位置させた。前記酸化用触媒組成物はそれが上に位置するγ−アルミナを90g/立方フィート含有しかつ水素イオン交換型ベータゼオライトを27重量%含有していた。前記DOCに老化を1000時間受けさせた。
【0073】
この実験で実施した試行では、前記SCR触媒組成物を壁流式モノリス基質またはフロースルー式モノリス基質のいずれかの上に位置させた。前記SCR触媒組成物は実施例1で前記基質の被覆で用いた組成物と同じであった、即ちそれは銅による交換を受けさせたゼオライトと結合剤であるジルコニアを含有していた。この実験で用いた基質は特に下記であった:実施例1に示した触媒A1と同様な様式で調製した新しい触媒基質(触媒A1freshと表示)、触媒A1とまた同じ様式の被覆を受けさせたが老化を1000時間受けさせた別個の触媒基質(触媒A1agedと表示)、そして最後に触媒D1と同じにして調製したフロースルー型の3番目の触媒基質(触媒D1freshと表示)。
【0074】
以下の表1に、前記3種類の触媒基質が示した粒子濾過効率およびNOx還元を要約する。濾過効率を尿素の注入有り無しで測定した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から分かるであろうように、前記SCR触媒組成物を前記壁流式モノリスに付着させた時にはNOx除去効率の損失が起こらなかった。その上、尿素を注入しても濾過効率は影響を受けなかった。前記SCRで被覆したフロースルー式モノリスはNOx除去機能を示しはしたが、前記被覆を受けさせた壁流式モノリスが示した高い濾過効率は示さなかった。このように、本発明の前記SCR被覆濾過器基質は高いNOxと粒子除去効率の統合を示す。
【0077】
その上、表1に示したデータは、前記SCR触媒組成物は耐久性があることを示している。前記被覆を受けさせた基質は濾過効率の損失もNOx除去効率の損失も起こさなかった。
【0078】
本発明を好適な態様を強調して記述してきたが、その好適な装置および方法の変形を用いることができかつ本発明を本明細書に具体的に記述した様式とは別の様式で実施してもよいことを意図することは本分野の通常の技術者に明らかであろう。従って、本発明は本請求項で定義する如き本発明の精神および範囲内に含まれるあらゆる修飾形を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1A】図1Aは、本発明の排気処理システムの2つの態様を示す図式図である。
【図1B】図1Bは、本発明の排気処理システムの2つの態様を示す図式図である。
【図2】図2に、壁流式濾過器基質の透視図を示す。
【図3】図3に、壁流式濾過器基質の断面の破断図を示す。
【図4】図4に、尿素貯蔵槽および注入器を含有させた本発明の排気処理システムの態様を示す。
【図5】図5に、被覆を受けさせた数種の壁流式濾過器基質および被覆を受けさせていない壁流式濾過器基質が示した圧力降下を空気流量の関数として示す。
【図6】図6は、粒子質量のモデル(カーボンブラックおよび潤滑油)と混合した2種類のSCR触媒組成物が示したDTAシグナル(マイクロボルト)を温度の関数としてプロットした図である。
【図7】図7は、本発明の典型的な排気処理システムが示すNOx還元および粒子減少を評価する目的で用いた実験室ベンチ装置の図式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の縦方向に伸びる通路を有していて、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路に境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されている壁流式モノリスを含み、ここで、前記通路は、開放された入り口末端部と封鎖された出口末端部を有する入り口通路および封鎖された入り口末端部と開放された出口末端部を有する出口通路を含んで成り、前記壁流式モノリスが有する間隙率が少なくとも50%で平均孔径が少なくとも5ミクロンであり、前記壁流式モノリスは2.4g/立法インチまでの充填量で前記壁の中に染み込んでいるSCR触媒被覆組成物を含んで成る触媒品。
【請求項2】
前記SCR触媒被覆組成物がNOxの還元に600℃未満の温度で触媒作用を及ぼすに有効でありかつフィルターによって捕捉された煤が燃焼する温度を低くすることで前記フィルターの再生に役立ち得る請求項1記載の触媒品。
【請求項3】
前記SCR触媒被覆組成物が650℃より上の温度で劣化に対して耐熱性を示す請求項1記載の触媒品。
【請求項4】
前記SCR触媒被覆組成物が硫黄成分にさらされた時の劣化に抵抗するに有効である請求項3記載の触媒品。
【請求項5】
前記SCR触媒被覆組成物がOによる余分なNHの酸化を助長する請求項1記載の触媒品。
【請求項6】
前記SCR触媒被覆組成物が銅および鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分およびゼオライトを含んで成る請求項1記載の触媒品。
【請求項7】
前記SCR触媒被覆組成物の前記卑金属成分が銅成分であり、ゼオライトが有するアルミナに対するシリカの比率が少なくとも10である請求項6記載の触媒品。
【請求項8】
前記SCR触媒被覆組成物のゼオライトがベータゼオライト、USYおよびZSM−20から選択される請求項6記載の触媒品。
【請求項9】
前記SCR触媒被覆組成物のゼオライトがベータゼオライトである請求項6記載の触媒品。
【請求項10】
前記SCR触媒被覆組成物のゼオライトが孔径が少なくとも7オングストロームの孔を有しかつ三次元で連結している請求項6記載の触媒品。
【請求項11】
前記SCR触媒被覆組成物が鉄および銅助触媒の中の一方または両方を含有していてそれが助触媒とゼオライトの総重量の0.1から30重量パーセントの量で存在する請求項1記載の触媒品。
【請求項12】
前記SCR触媒被覆組成物が鉄および銅助触媒の中の一方または両方を含有していてそれが助触媒とゼオライトの総重量の1から5重量パーセントの量で存在する請求項1記載の触媒品。
【請求項13】
前記壁流式モノリスが有する間隙率が50から75%で平均孔径が5から30ミクロンである請求項1記載の触媒品。
【請求項14】
前記縦方向に伸びる壁が入り口側と反対に位置する出口側を有し、前記SCR触媒被覆
組成物が前記壁の入り口側上と出口側上の両方に存在する請求項1記載の触媒品。
【請求項15】
SCR触媒被覆組成物を壁流式モノリスの上に位置させる方法であって、前記壁流式モノリスは、多数の縦方向に伸びる通路を有していて、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路に境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されており、ここで、前記通路は、開放された入り口末端部と封鎖された出口末端部を有する入り口通路および封鎖された入り口末端部と開放された出口末端部を有する出口通路を含んで成り、前記壁流式モノリスが有する間隙率が少なくとも50%で平均孔径が少なくとも5ミクロンであり、そして前記SCR触媒被覆組成物は2.4g/立法インチまでの充填量で壁の中に染み込んでおり、
(a)前記壁流式モノリスを前記SCR触媒被覆組成物含有水性スラリーの中に1番目の方向から浸けることで前記SCR触媒被覆組成物を前記入り口通路に付着させ、
(b)圧縮気体流れを前記出口通路の中に強制的に送り込みかつ前記入り口通路に真空をかけることで余分なスラリーを前記入り口通路から除去し、
(c)前記壁流式モノリスを前記水性スラリーの中に前記1番目の方向とは反対方向の2番目の方向から浸けることで前記SCR触媒被覆組成物を前記出口通路に付着させ、
(d)圧縮気体流れを前記入り口通路の中に強制的に送り込みかつ前記出口通路に真空をかけることで余分なスラリーを前記出口通路から除去し、そして
(e)前記被覆を受けさせた壁流式モノリスに乾燥および焼成を受けさせる、
ことを含んで成る方法によって製造された触媒品。
【請求項16】
前記SCR触媒被覆組成物がNOxの還元に600℃未満の温度で触媒作用を及ぼすに有効でありかつフィルターによって捕捉された煤が燃焼する温度を低くすることで前記フィルターの再生に役立ち得る請求項15記載の触媒品。
【請求項17】
前記SCR触媒被覆組成物が650℃より上の温度で劣化に対して耐熱性を示す請求項15記載の触媒品。
【請求項18】
前記SCR触媒被覆組成物が硫黄成分にさらされた時の劣化に抵抗するに有効である請求項17記載の触媒品。
【請求項19】
前記SCR触媒被覆組成物がOによる余分なNHの酸化を助長する請求項15記載の触媒品。
【請求項20】
前記SCR触媒被覆組成物が銅および鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分およびゼオライトを含んで成る請求項15記載の触媒品。
【請求項21】
前記SCR触媒被覆組成物の前記卑金属成分が銅成分であり、ゼオライトが有するアルミナに対するシリカの比率が少なくとも10である請求項20記載の触媒品。
【請求項22】
前記SCR触媒被覆組成物のゼオライトがベータゼオライト、USYおよびZSM−20から選択される請求項20記載の触媒品。
【請求項23】
前記SCR触媒被覆組成物のゼオライトがベータゼオライトである請求項20記載の触媒品。
【請求項24】
前記SCR触媒被覆組成物のゼオライトが孔径が少なくとも7オングストロームの孔を有しかつ三次元で連結している請求項20記載の触媒品。
【請求項25】
前記SCR触媒被覆組成物が鉄および銅助触媒の中の一方または両方を含有していてそ
れが助触媒とゼオライトの総重量の0.1から30重量パーセントの量で存在する請求項15記載の触媒品。
【請求項26】
前記SCR触媒被覆組成物が鉄および銅助触媒の中の一方または両方を含有していてそれが助触媒とゼオライトの総重量の1から5重量パーセントの量で存在する請求項15記載の触媒品。
【請求項27】
前記壁流式モノリスが有する間隙率が50から75%で平均孔径が5から30ミクロンである請求項15記載の触媒品。
【請求項28】
前記縦方向に伸びる壁が入り口側と反対に位置する出口側を有し、前記SCR触媒被覆組成物が前記壁の入り口側上と出口側上の両方に存在する請求項15記載の触媒品。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52546(P2012−52546A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198444(P2011−198444)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【分割の表示】特願2006−522653(P2006−522653)の分割
【原出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(308009565)バスフ・カタリスツ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】