説明

SMC及びその製造方法

【課題】主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用いているから、スチレンモノマーの沸点は約149℃であり、SMCを用いた加圧加熱成形加工の成形温度は135℃〜160℃であるところ、この成形温度で成形品を加熱加圧成形したとき、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、低圧での成形が可能となる。
【解決手段】樹脂組成物1を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成し、その後、半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物を繊維基材2に含浸したのち冷却してプリプレグ状に形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、大型医療用機器や、浴槽、浄化槽、貯水槽などの住宅設備機器の外装材などの成形品を上型及び下型を用いた加圧加熱成形加工により製造する際に用いられるシートモールディングコンパウンド(以下、「SMC」という。)及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のSMC(すなわち、シート状樹脂繊維複合成形材料)として、少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤、難燃剤及び増粘剤からなる樹脂組成物及び繊維基材を上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で該樹脂組成物を該繊維基材に含浸してなる構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−139257号
【特許文献2】特公平6−22808号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来構造の場合、上記樹脂組成物を組成する架橋剤としてスチレンモノマーが用いられ、このスチレンモノマーは沸点が約149℃であり、SMCを用いた加圧加熱成形加工の成形温度は135℃〜160℃であり、この成形温度で成形品を加熱加圧成形したとき、スチレンモノマーが沸騰して成形品の表面が粗となって商品価値の低いSMC成形品となることがあり、スチレンモノマーを含む樹脂組成物を用いて滑らかな表面に仕上げるためには例えば100kg/cm程度の高圧な加工圧力が必要となり、なぜならば、スチレンモノマーは成形温度135℃〜160℃で沸騰するため、沸騰に伴う泡を封止するために上型及び下型間における成形圧力を高圧にする必要があるからであり、それだけ、成形装置の大型化及び価格の高騰化の影響でSMC成形品の製造コストを低減するための隘路となることがあり、又、従来構造の場合、繊維基材に含浸される上記樹脂組成物は液状の樹脂組成物であり、上下のキャリアフィルム間への供給手段として液体ポンプを用いなければならず、樹脂組成物に増粘剤を含むことによる経時増粘作用も相俟って樹脂組成物のハンドリング性を低下させることがあり、ひいては、SMCの生産性が低下することがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤からなる樹脂組成物及び繊維基材を上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で該樹脂組成物を該繊維基材に含浸してなるSMCであって、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物に増粘剤を含めず、これらの樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、該混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成し、その後、該半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の該樹脂組成物を該繊維基材に含浸したのち冷却してプリプレグ状に形成してなることを特徴とするSMCにある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤からなる樹脂組成物及び繊維基材を搬送される上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で該樹脂組成物を該繊維基材に含浸してSMCを製造するに際し、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物に増粘剤を含めず、これらの樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、該混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成し、その後、該半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の該樹脂組成物を該繊維基材に含浸したのち冷却してプリプレグ状に形成することを特徴とするSMCの製造方法にある。
【0007】
又、請求項3記載の発明は、上記架橋剤として、沸点が180℃以上の化学物質を用いてなることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記架橋剤として、ジアリルフタレートモノマーを用いてなることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の発明は、上記繊維基材として、繊維マットを用いてなることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記繊維マットはガラス繊維マットであることを特徴とするものであり、又、請求項7記載の発明にあっては、上記各加熱温度はいずれも約75℃であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如く、請求項1又は請求項2記載の発明にあっては、少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤からなる樹脂組成物及び繊維基材を搬送される上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で樹脂組成物を繊維基材に含浸してSMCを製造するに際し、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物に増粘剤を含めず、これらの樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成して保存し、その後、SMCの製造において、この半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物を繊維基材に含浸したのち冷却してプリプレグ状のSMCを形成することになり、このように、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用いているから、スチレンモノマーの沸点は約149℃であり、SMCを用いた加圧加熱成形加工の成形温度は135℃〜160℃であるところ、この成形温度で成形品を加熱加圧成形したとき、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、沸騰による泡を封じ込めるための高圧が必要なく、低圧での成形が可能となり、例えば、10kg/cm程度の低圧な加工圧力で加工することができ、SMC成形品の品質向上及び成形装置の大型化や価格の高騰化を抑制することができ、スチレンを含有しないので環境汚染の心配を無くすこともでき、又、増粘剤を含めないので、保存期間を長くすることができ、さらに、加熱温度が65℃乃至85℃であるから、樹脂組成物の溶融粘度が低くなり、成形加工性を高めることができ、硬化剤の分解を抑制できて保存安定性を高めることができ、また、特に、これらの樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成して保存しておき、その後、SMCの製造時において、この半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物を繊維基材に含浸したのち冷却した樹脂組成物を用いるので、例えば、液状の樹脂組成物を塗工部に供給するにはポンプ搬送する必要があるが、常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物であるから塗工部への搬送等のハンドリング性を向上することができ、かつ、難燃剤を多く含めることができ、増量化も可能となり、製作コストの低減を図ることもでき、ひいては、SMCの生産性を高めることができる。
【0009】
又、請求項3記載の発明にあっては、上記架橋剤として、沸点が180℃以上の化学物質を用いているから、加熱加圧成形加工の成形温度は135℃〜160℃であるところ、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、沸騰による泡を封じ込めるための高圧が必要なく、低圧での成形が可能となり、又、請求項4記載の発明にあっては、上記架橋剤として、ジアリルフタレートモノマーを用いてなるから、このジアリルフタレートモノマーの沸点は200℃以上であるところ、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、沸騰による泡を封じ込めるための高圧が必要なく、低圧での成形が可能となり、又、請求項5記載の発明は、上記繊維基材として、繊維マットを用いてなるから、SMCの補強性を高めることができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記繊維マットはガラス繊維マットであるから、一層、SMCの補強性を高めることができ、又、請求項7記載の発明にあっては、上記各加熱温度はいずれも約75℃であるから、樹脂組成物の溶融粘度が低くなり、成形加工性を高めることができ、硬化剤の分解を抑制できて保存安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態例の樹脂組成物の説明ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態例の説明ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態例の製造過程の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態例のSMCの説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図4は本発明の実施の形態例を示し、図1において、1は樹脂組成物であって、主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤、難燃剤及び着色剤からなり、主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物1に増粘剤を含めない組成となっている。
【0012】
ここに、架橋剤としてスチレンモノマーを用いない理由は、スチレンモノマーの沸点は約149℃であり、SMCを用いた加圧加熱成形加工の成形温度は135℃〜160℃であり、この成形温度で成形品を加熱加圧成形したとき、スチレンモノマーが沸騰し、成形品の表面が粗となって商品価値の低いSMC成形品となることがあるからであり、又、樹脂組成物1に増粘剤を含めない理由は、樹脂の硬化を進める化合物は硬化剤だけとなり、保存期間が長くなるからである。
【0013】
しかして、この場合、上記架橋剤として、沸点が180℃以上の化学物質、例えば、沸点が約200℃のジアリルフタレートモノマー(以下「DAPモノマー」という。)を用いており、このDAPモノマーを使用することにより、例えば10kg/cm程度の低圧な加工圧力で加工することができる。何故ならば、DAPモノマーは成形温度135℃〜160℃では沸騰しないので、沸騰に伴う泡を封止するための高圧が必要なく、単にSMCを上型及び下型で押さえる程度の低圧力で良いからである。尚、架橋剤として、ジアリルフタレートモノマーに代えて、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートを使用することもある。
【0014】
又、その他の組成物として、上記硬化剤として各種の過酸化物など、内部離型剤としてワックス類、ステアリン酸亜鉛など、難燃剤(フィラー)として水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなど、着色剤として各種の顔料が用いられる。
【0015】
そして、これらの主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤、難燃剤及び着色剤からなる樹脂組成物1を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、該混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となるブロック状の樹脂組成物1としている。
【0016】
ここに、上記加熱温度を65℃乃至85℃としているのは、65℃以下になると樹脂組成物1の溶融粘度が高くなって成形加工し難いことになり、85℃以上になると硬化剤の分解温度以上となって保存安定性が低下するからであり、これらの点を考慮して加熱温度を約75℃とすることが望ましい。
【0017】
2は繊維基材であって、この場合、繊維マットが用いられ、繊維マットRのうち、ガラス繊維を細断して接着剤によりマット状にしたガラス繊維マットが用いられている。尚、繊維マットに代えて、細断したガラス繊維を樹脂組成物1に散布することもある。又、繊維としてはガラス繊維に限らず、炭素繊維、麻、木綿等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド等の各種の合成繊維が用いられ、これら繊維を用いた織布、不織布なども用いられる。
【0018】
しかして、図2の如く、上記常温では半固形状態(餅に似た状態)であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となるブロック状の樹脂組成物1を保存しておき、SMCの製造時において、この半固形状の樹脂組成物1を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物を繊維基材2に含浸したのち冷却してプリプレグ状に形成することになる。
【0019】
しかして、図3を参照して、製造過程を説明すると、F・Fはキャリアフィルムであって、例えば、厚さの50μmの片面離型処理PETフィルムが用いられ、下側のキャリアフィルムFは図示省略の搬送手段によりフィルム巻反Mより引き出されて連続搬送され、上記保存しておいた樹脂組成物1は第1塗工部Lのホッパーに投入され、第1塗工部L内の樹脂組成物1は第1塗工部Lに設けた図示省略の加熱手段により65℃乃至85℃、この場合、約75℃の加熱温度で加熱され、この加熱により半固形状の樹脂組成物1は流動状態となり、この樹脂組成物1は堰板Sにより下側のキャリアフィルムF上に適宜厚さ、例えば、500g/mで塗工され、樹脂組成物1は加熱テーブルGにより搬送状態においても約75℃に維持され、次いで、巻反Nから引き出された繊維基材2を樹脂組成物1上に重ね合わせ、次いで、上側のキャリアフィルムFをフィルム巻反Mより引き出して連続搬送し、上記保存しておいた樹脂組成物1は第2塗工部Kのホッパーに投入され、第2塗工部K内の樹脂組成物1は図示省略の加熱手段により65℃乃至85℃、この場合、約75℃の加熱温度で加熱され、この加熱により半固形状の樹脂組成物1は流動状態となり、この樹脂組成物1は同じく堰板Sにより上側のキャリアフィルムF上に適宜厚さ、例えば、500g/mで塗工され、樹脂組成物1は加熱テーブルGにより搬送状態においても約75℃に維持され、樹脂組成物1が塗工されている下側のキャリアフィルムFを上記繊維基材2上に重ね合わせ、次いで、数個の含浸ロールEにより流動状態の樹脂組成物1を繊維基材2に押圧含浸し、含浸ロールEは図示省略の加熱手段により約75℃に加熱保持され、冷却し、図4に示す如く、上下のキャリアフィルムF・F間に樹脂組成物1及び繊維基材2を挟み込んだ状態のプリプレグ状のSMCを製造し、巻反Hに巻き取って保管することになる。そして、このSMCから上下のキャリアフィルムF・Fを剥離すると共に成形品に応じて適宜大きさに切断し、上型及び下型を用いて加熱加圧成形により成形品を製造することになる。
【0020】
この実施の形態例は上記構成であるから、少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤からなる樹脂組成物1及び繊維基材2を搬送される上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で樹脂組成物1を繊維基材2に含浸してSMCを製造するに際し、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物1に増粘剤を含めず、これらの樹脂組成物1を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成して保存し、その後、SMCの製造において、この半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物1を繊維基材2に含浸したのち冷却してプリプレグ状のSMCを形成することになる。
【0021】
このように、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用いているから、スチレンモノマーの沸点は約149℃であり、SMCを用いた加圧加熱成形加工の成形温度は135℃〜160℃であるところ、この成形温度で成形品を加熱加圧成形したとき、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、沸騰による泡を封じ込めるための高圧が必要なく、低圧での成形が可能となり、例えば、10kg/cm程度の低圧な加工圧力で加工することができ、SMC成形品の品質向上及び成形装置の大型化や価格の高騰化を抑制することができ、スチレンを含有しないので環境汚染の心配を無くすこともでき、又、増粘剤を含めないので、保存期間を長くすることができ、さらに、加熱温度が65℃乃至85℃であるから、樹脂組成物1の溶融粘度が低くなり、成形加工性を高めることができ、硬化剤の分解を抑制できて保存安定性を高めることができ、また、特に、これらの樹脂組成物1を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成して保存しておき、その後、SMCの製造時において、この半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物1を繊維基材2に含浸したのち冷却した樹脂組成物1を用いるので、例えば、液状の樹脂組成物を塗工部に供給するにはポンプ搬送する必要があるが、常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物1であるから塗工部への搬送等のハンドリング性を向上することができ、かつ、難燃剤を多く含めることができ、増量化も可能となり、製作コストの低減を図ることもでき、ひいては、SMCの生産性を高めることができる。
【0022】
この場合、上記架橋剤として、沸点が180℃以上の化学物質を用いているから、加熱加圧成形加工の成形温度は135℃〜160℃であるところ、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、沸騰による泡を封じ込めるための高圧が必要なく、低圧での成形が可能となり、又、この場合、上記架橋剤として、ジアリルフタレートモノマーを用いてなるから、このジアリルフタレートモノマーの沸点は200℃以上であるところ、架橋剤は沸騰しないので、成形品の表面が粗となることを防ぎ、沸騰による泡を封じ込めるための高圧が必要なく、低圧での成形が可能となり、又、この場合、上記繊維基材2として、繊維マットRを用いてなるから、SMCの補強性を高めることができ、又、この場合、上記繊維マットRはガラス繊維マットであるから、一層、SMCの補強性を高めることができ、又、この場合、上記各加熱温度はいずれも約75℃であるから、樹脂組成物1の溶融粘度が低くなり、成形加工性を高めることができ、硬化剤の分解を抑制できて保存安定性を高めることができる。
【実施例】
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示す主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤を約75℃で加熱して撹拌混合冷却して、常温では半固形状態であって加熱温度約75℃で流動状態となる樹脂組成物1を製作して保存しておき、その後、SMCの製造時において、この半固形状の樹脂組成物1を上下のキャリアフィルムF・F間に約75℃の加熱温度に加熱して流動状態の樹脂組成物1を450g/m乃至750g/mの厚さの繊維基材2たるガラス繊維マットに含浸してSMCを製造した。
【0025】
そして、キャリアフィルムを剥離し、SMCを上型及び下型により約160℃、3kg/cm、5分間の条件下で加熱加圧して成形品を製造したところ、良好な成形品を製造することができた。
【0026】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、上記樹脂組成物1、繊維基材2の組成及び種類等は適宜変更して設計されるものである。
【0027】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0028】
R 繊維マット
F キャリアフィルム
1 樹脂組成物
2 繊維基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤からなる樹脂組成物及び繊維基材を上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で該樹脂組成物を該繊維基材に含浸してなるシートモールディングコンパウンド(以下、「SMC」という。)であって、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物に増粘剤を含めず、これらの樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、該混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成し、その後、該半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の該樹脂組成物を該繊維基材に含浸したのち冷却してプリプレグ状に形成してなることを特徴とするSMC。
【請求項2】
少なくとも主剤、架橋剤、硬化剤、内部離型剤及び難燃剤からなる樹脂組成物及び繊維基材を搬送される上下2枚のキャリアフィルム間に挟み込んだ状態で該樹脂組成物を該繊維基材に含浸してSMCを製造するに際し、上記主剤としてビニルエステル樹脂を用い、かつ、上記架橋剤としてスチレンモノマーを用いず、該スチレンモノマーより沸点の高い架橋剤を用い、さらに上記樹脂組成物に増粘剤を含めず、これらの樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して混合し、該混合物を冷却して常温では半固形状態であって加熱温度65℃乃至85℃で流動状態となる樹脂組成物を形成し、その後、該半固形状の樹脂組成物を65℃乃至85℃の加熱温度に加熱して流動状態の該樹脂組成物を該繊維基材に含浸したのち冷却してプリプレグ状に形成することを特徴とするSMCの製造方法。
【請求項3】
上記架橋剤として、沸点が180℃以上の化学物質を用いてなることを特徴とする請求項2記載のSMCの製造方法。
【請求項4】
上記架橋剤として、ジアリルフタレートモノマーを用いてなることを特徴とする請求項2又は3記載のSMCの製造方法。
【請求項5】
上記繊維基材として、繊維マットを用いてなることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のSMCの製造方法。
【請求項6】
上記繊維マットはガラス繊維マットであることを特徴とする請求項5記載のSMCの製造方法。
【請求項7】
上記各加熱温度はいずれも約75℃であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のSMCの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87181(P2012−87181A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233155(P2010−233155)
【出願日】平成22年10月16日(2010.10.16)
【出願人】(505422855)株式会社ヤマキュウ (1)
【Fターム(参考)】