説明

SNP遺伝子型に基づくQT延長の予測

本発明は、1つ又は複数の一塩基多型(SNP)座位における個体の遺伝子型に基づく、個体のQT間隔を増加させることが可能な化合物の投与後のQT延長の予測、並びにこのような予測に基づく患者の治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
QT延長は、失神、特徴的な心室性頻拍(例えば、多形性心室頻拍)及び稀な場合には心臓性突然死を引き起こし得る、心筋の電気記録的な再分極異常である。抗精神病薬を含む多数の薬物が、急速活性化遅延整流電流(Ikr)を遮断することによって、QT間隔を延長させる可能性を有する。最近の証拠は、薬物誘導性の多形性心室頻拍を起こす人の5%〜15%のみが、遺伝性QT延長症候群(LQTS)と関連するイオンチャネル遺伝子の1つにおいて変異を保有することを示唆している。他の遺伝子及び環境的要因が、薬物誘導性のLQTSに寄与する可能性が高い。QT延長の程度と多形性心室頻拍の発症との間には相関があまりないが、患者を薬物誘導性のQT延長に罹り易くする新たな遺伝的要因を同定することは、このタイプの心室性頻拍を理解及び予防するのに役に立つ可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、1つ又は複数の一塩基多型(SNP)座位における個体の遺伝子型に基づく、個体のQT間隔を増加させることが可能な化合物の投与後のQT延長の予測、並びにこのような予測に基づく患者の治療に関する。
【0003】
本発明の一態様は、個体のQT間隔を延長させることが可能な化合物の投与後の個体のQT延長を予測する方法を提供し、この方法は、rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)座位における個体の遺伝子型を決定するステップと、少なくとも1つのSNP座位における個体の遺伝子型が増加したQT延長と関連する場合に、その個体が平均を上回るQT延長を起こすであろうと予測するステップとを含む。このような化合物には、例えば、イロペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、シプラシドン(siprasidone)、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、セルチンドール、ゾテピン、アミスルプリド、ビフェプルノックス、メルペロン、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの代謝産物及びそれらの代謝産物の医薬的に許容可能な塩などの、非定型抗精神病薬が含まれる。
【0004】
本発明の別の態様は、個体のQT間隔を延長させることが可能な化合物の投与後の個体のQT延長を予測する方法を提供し、この方法は、rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)座位における個体の遺伝子型を決定するステップと、少なくとも1つのSNP座位における個体の遺伝子型が減少したQT延長と関連する場合に、その個体が平均を下回るQT延長を起こすであろうと予測するステップとを含む。
【0005】
本発明のなお別の態様は、精神病性障害の1つ又は複数の症状について患者を治療する方法を提供し、この方法は、rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)座位の両方のコピーにおいて、患者の遺伝子型を決定するステップと、少なくとも1つのSNP座位における患者の遺伝子型が増加したQT延長と関連するか否かに基づいて患者を治療するステップとを含む。
【0006】
本発明のなお別の態様は、個体のQT間隔を延長させることが可能な化合物を個体に投与する方法を提供し、この方法は、個体のセラミドキナーゼ様(CERKL)遺伝子配列の少なくとも一部を決定するステップと、個体のCERKL遺伝子配列の一部がQT延長の危険性の増加と関連する場合に、QT延長の危険性の増加と関連しないCERKL遺伝子配列を有する個体に投与される量よりも少ない量の化合物を個体に投与するステップ、QT延長の危険性の増加と関連しないCERKL遺伝子配列を有する個体に投与される量と等しい量の化合物を個体に投与するステップ、若しくはQT延長について患者をモニタリングするステップのうち少なくとも1つを実施するステップ、又は、その代わりに、QT延長と関連することが知られていない異なる化合物で個体を治療することを選択するステップとを含む。
【0007】
本発明の別の態様は、精神病性障害、統合失調症又は双極性障害を有する患者に対する治療戦略を決定する際に使用するためのキットを提供し、このキットは、rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される一塩基多型(SNP)を含むDNAの一部を認識しそれに結合できる少なくとも1つのポリヌクレオチドと、少なくとも1つのポリヌクレオチド及び前記個体由来の染色体DNAのサンプルを入れるのに適した容器であって、少なくとも1つのポリヌクレオチドが染色体DNAと接触し得る容器と、少なくとも1つのポリヌクレオチドと前記染色体DNAとの組合せを検出し、それによりそのSNPにおける個体の遺伝子型が何であるかを確認するための手段とを備える。
【0008】
本発明のなお別の態様は、rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392のSNPからなる群より選択される少なくとも1つのSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する患者における、精神病性障害、統合失調症又は双極性障害の1つ又は複数の症状に罹患している患者の治療における使用のための、イロペリドン、イロペリドンの活性代謝産物、又はイロペリドン若しくはイロペリドンの活性代謝産物の塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】図1a〜図1fは、QTcFにおける変化と、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子領域におけるSNPとの間の遺伝的関連を示す図である。SNPの物理的位置(横軸)の順に、CERKL(図1a)、SLCO3A1(図1b)、BRUNOL4(図1c)、NRG3(図1d)、NUBPL(図1e)及びPALLD(図1f)を含むゲノム領域について、GLM分析からのP値(縦軸)が示される。セントロメア(cen)及びテロメア(tel)に対するマップの方向が、水平方向の矢印で示される。0.001以下のPを有するSNPを四角で囲んでいる。エキソンのおよその位置を、縦方向の棒で示し、対応する数字を下に示す。
【図1b】図1a〜図1fは、QTcFにおける変化と、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子領域におけるSNPとの間の遺伝的関連を示す図である。SNPの物理的位置(横軸)の順に、CERKL(図1a)、SLCO3A1(図1b)、BRUNOL4(図1c)、NRG3(図1d)、NUBPL(図1e)及びPALLD(図1f)を含むゲノム領域について、GLM分析からのP値(縦軸)が示される。セントロメア(cen)及びテロメア(tel)に対するマップの方向が、水平方向の矢印で示される。0.001以下のPを有するSNPを四角で囲んでいる。エキソンのおよその位置を、縦方向の棒で示し、対応する数字を下に示す。
【図1c】図1a〜図1fは、QTcFにおける変化と、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子領域におけるSNPとの間の遺伝的関連を示す図である。SNPの物理的位置(横軸)の順に、CERKL(図1a)、SLCO3A1(図1b)、BRUNOL4(図1c)、NRG3(図1d)、NUBPL(図1e)及びPALLD(図1f)を含むゲノム領域について、GLM分析からのP値(縦軸)が示される。セントロメア(cen)及びテロメア(tel)に対するマップの方向が、水平方向の矢印で示される。0.001以下のPを有するSNPを四角で囲んでいる。エキソンのおよその位置を、縦方向の棒で示し、対応する数字を下に示す。
【図1d】図1a〜図1fは、QTcFにおける変化と、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子領域におけるSNPとの間の遺伝的関連を示す図である。SNPの物理的位置(横軸)の順に、CERKL(図1a)、SLCO3A1(図1b)、BRUNOL4(図1c)、NRG3(図1d)、NUBPL(図1e)及びPALLD(図1f)を含むゲノム領域について、GLM分析からのP値(縦軸)が示される。セントロメア(cen)及びテロメア(tel)に対するマップの方向が、水平方向の矢印で示される。0.001以下のPを有するSNPを四角で囲んでいる。エキソンのおよその位置を、縦方向の棒で示し、対応する数字を下に示す。
【図1e】図1a〜図1fは、QTcFにおける変化と、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子領域におけるSNPとの間の遺伝的関連を示す図である。SNPの物理的位置(横軸)の順に、CERKL(図1a)、SLCO3A1(図1b)、BRUNOL4(図1c)、NRG3(図1d)、NUBPL(図1e)及びPALLD(図1f)を含むゲノム領域について、GLM分析からのP値(縦軸)が示される。セントロメア(cen)及びテロメア(tel)に対するマップの方向が、水平方向の矢印で示される。0.001以下のPを有するSNPを四角で囲んでいる。エキソンのおよその位置を、縦方向の棒で示し、対応する数字を下に示す。
【図1f】図1a〜図1fは、QTcFにおける変化と、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子領域におけるSNPとの間の遺伝的関連を示す図である。SNPの物理的位置(横軸)の順に、CERKL(図1a)、SLCO3A1(図1b)、BRUNOL4(図1c)、NRG3(図1d)、NUBPL(図1e)及びPALLD(図1f)を含むゲノム領域について、GLM分析からのP値(縦軸)が示される。セントロメア(cen)及びテロメア(tel)に対するマップの方向が、水平方向の矢印で示される。0.001以下のPを有するSNPを四角で囲んでいる。エキソンのおよその位置を、縦方向の棒で示し、対応する数字を下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
イロペリドン(1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1、2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]エタノン)は、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,364,866号明細書中に開示されている。イロペリドンの活性代謝産物は、本発明において有用である。例えば、参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第03/020707号パンフレットを参照のこと。イロペリドン代謝産物には、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンが含まれる。参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第5,364,866号明細書、国際公開第93/09276号パンフレット及び国際公開第95/11680号パンフレットを参照のこと。
【0011】
有効量のイロペリドン又はその活性代謝産物は、被験体動物(典型的にはヒトであるが、他の動物、例えば、家畜、ペット及びレース用動物もまた治療できる)に、いくつかの経路によって投与することができる。有効量は、治療の過程の間に、精神病性障害(例えば、統合失調症又はその症状)に対する予防効果又は寛解効果を有するであろう量である。有効量は、例えば、患者、治療される障害又は症状の重篤度、及び投与経路に依存して、量的に変動し得る。
【0012】
実際に投与されるイロペリドン又はその活性代謝産物の量を含む投薬プロトコルは、関連する状況(例えば、治療すべき状態、選択された投与経路、個々の患者の年齢、体重及び応答、並びに患者の症状の重篤度が含まれる)を考慮して、医師により決定されるであろうことが、理解されよう。患者は当然、可能性のある有害事象についてモニタリングされるべきである。
【0013】
治療的使用又は予防的使用のために、イロペリドン又はその活性代謝産物は、標準的な従来の技術を使用して、その(又はある)必須活性成分として、少なくとも1つのこのような化合物を、固体又は液体の医薬的に許容可能な担体、並びに任意選択で医薬的に許容可能なアジュバント及び賦形剤と関連して含む医薬組成物として、通常は投与されるであろう。
【0014】
本発明の実施に有用な医薬組成物には、経口、非経口(皮下、筋内、皮内及び静脈内が含まれる)、経皮、気管支又は経鼻投与に適した剤形が含まれる。従って、固体担体が使用される場合、製剤を錠剤にし、散剤若しくはペレットの形態で硬ゼラチンカプセルに入れ、又はトローチ剤又はロゼンジ剤の形態にすることができる。固体担体は、例えば結合剤、充填剤、錠剤化滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤などの、従来の賦形剤を含み得る。錠剤は、所望の場合、従来の技術によりフィルムコーティングしてもよい。液体担体が使用される場合、製剤は、シロップ剤、エマルジョン、軟ゼラチンカプセル、注射用の無菌ビヒクル、水性又は非水性の液体懸濁物の形態であってもよく、或いは使用前の水又は他の適切なビヒクルでの再構成のための乾燥製品であってもよい。液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、湿潤剤、非水性ビヒクル(食用油が含まれる)、防腐剤、並びに香味剤及び/又は着色剤などの、従来の添加剤を含み得る。非経口投与のために、ビヒクルは通常、少なくとも大部分は無菌水を含むであろうが、生理食塩水、グルコース溶液などを使用してもよい。注射可能な懸濁物もまた使用され得、この場合、従来の懸濁剤が使用され得る。従来の防腐剤、緩衝剤などもまた、非経口剤形に添加され得る。医薬組成物は、適切な量のイロペリドン又はその活性代謝産物を含む所望の製剤に適した従来の技術によって製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第17版、1985を参照のこと。
【0015】
本発明で使用するための医薬組成物の製造において、活性成分(複数可)は、通常、担体と混合されるか、又は担体で希釈されるか、又はカプセル、サシェ剤、紙若しくは他の容器の形態であり得る担体内に封入されるかであろう。担体が希釈剤として機能する場合、この担体は、その活性成分のためのビヒクル、賦形剤又は媒体として機能する固体、半固体又は液体の材料であり得る。従って、この組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁物、エマルジョン、溶液、シロップ剤、エアロゾル(固体として又は液体媒体中)、例えば活性化合物を10重量%まで含む軟膏、軟及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液並びに無菌包装散剤の形態にできる。
【0016】
適切な担体及び希釈剤のいくつかの例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム並びに鉱油が含まれる。製剤は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、保存剤、甘味剤又は香味剤をさらに含むことができる。本発明の組成物は、患者への投与後に、活性成分の迅速な放出、持続性の放出(徐放)又は遅延した放出を提供するように、製剤化することができる。
【0017】
これらの組成物は、好ましくは、単位剤形で製剤化される。用語「単位剤形」とは、ヒト被験体及び他の哺乳動物のための単位投薬量として適切な物理的に別個な単位をいい、各単位は、必要とされる医薬的担体と関連して、治療期間の過程にわたって所望の予防効果又は治療効果を生じるように計算された、所定の量の活性物質を含む。
【0018】
イロペリドン及びその活性代謝産物もまた、放出制御形態(例えば、遅延性、持続性又は拍動性の放出)で製剤化できる。
【0019】
イロペリドン及び/又はその誘導体を投与する種々の製剤及び方法が記載されている。例えば、国際公開第2004/006886A2号パンフレットは、イロペリドン結晶を含む注射可能なデポー製剤を記載しており、イロペリドン及びポリグリコリドポリラクチドグルコーススターポリマーのマイクロカプセル化デポー製剤は、米国特許出願第20030091645号明細書に記載されている(これらはそれぞれ、参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0020】
イロペリドンは、他の定型及び非定型の抗精神病薬と同様に、QT間隔の持続時間に対してある種の影響を有することが観察されている。重要なことに、イロペリドンで治療された患者が多形性心室頻拍を起こしたことを示す証拠は今日まで存在しない。薬物誘導性のQT延長の新たな遺伝子マーカーを同定するために、全ゲノム関連解析(WGAS)が、イロペリドンの第3相臨床試験の一部として実施された。この臨床試験は、急性増悪期の統合失調症を有する患者への、28日間にわたり1日2回(bid)投与される24mg/日の用量のイロペリドンの、有効性、安全性及び耐容性を評価する、ランダム化二重盲検プラセボ及びジプラシドン対照多施設試験であった。
【0021】
QT間隔に対するイロペリドンの影響は、イロペリドンが定常状態の濃度に達する14日目までに最大になることが示された。従って、ベースラインと14日目との間のQT間隔における変化を計算した。Fridericia補正(QTcF)を適用し、共変数としてベースラインを使用する一般化線形モデル(GLM)統計分析を実施した。分析した334,563の一塩基多型(SNP)のうち、18の別個の染色体領域由来の23のSNPは、偽発見率(FDR)補正後に、0.2未満のBH調整Pを有し、全て生でP<0.000005であった。分析は、マイナーな遺伝子型群が患者の少なくとも10%を含む遺伝子内又は遺伝子の近く(10kb未満離れている)に位置するSNPに対して焦点を当てた。目的の6つのSNPは、CERKL、SLCO3A1、BRUNOL4、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子中で同定された(表1)。QT間隔における変化が薬物濃度の差異を反映する可能性は、心電図検査(ECG)の時点での薬物曝露が不明なため、排除できないであろう。しかし、本明細書中で同定された6つのSNPは、薬物の吸収、代謝又は排泄において役割を果たすと予測されていない遺伝子内に存在する。これらのSNPについて、マイクロアレイセットにより生成される遺伝子型コールを、イロペリドン治療患者のDNAサンプルのランダムサブセットに対して配列決定することによって確認した。より低い又はより高い増加したQTと特定の遺伝子型クラスとの関連は、男性と女性との間で、及び人種にわたって一貫していた。P<0.001で統計的な関連を有するさらなるSNPが、CERKL、SLCO3A1、NRG3、NUBPL及びPALLDの遺伝子の内部又はそれらの近傍で観察された(図1a〜図1f)。
【0022】
SNP rs993648は、CERKL遺伝子のイントロン2内に位置し(図1a)、セラミドキナーゼ様タンパク質をコードしている。rs993648についてヘテロ接合体のイロペリドン治療患者は、ホモ接合体患者についての17.8m秒と比較して、4.5m秒の平均QTcF変化を有した(P=2.83×10−6)(表1)。CERKLタンパク質は、別の遺伝子がコードするセラミドキナーゼCERK、並びにスフィンゴシンキナーゼ1及び2と配列類似性を有する。セラミドキナーゼは、スフィンゴ脂質セラミドをセラミド−1−リン酸に変換する。いくつかの研究により、セラミドは、種々のカリウムチャネル(hERGを含む)によって伝導される膜貫通電流を調節することが実証されている。hERGチャネルは、心活動電位の再分極に寄与する遅延整流電流(Ikr)の急速成分の基礎をなす。セラミドは、hERGタンパク質の表面発現を下方調節し、hERG電流の減少を引き起こすことが示されている。イオンチャネルに対するセラミドの作用は、キナーゼ活性によって主に媒介されると考えられている。CERKLタンパク質の機能についてはほとんど知られておらず、in vitro実験は、CERKLがセラミドを実際にリン酸化できることを実証できていない。セラミド及びセラミド誘導体に対するCERKLタンパク質の結合親和性、並びにそのin vivo活性において役割を果たす可能性がある補因子の正体は、今後の調査が待たれる。現時点まで、ヘテロ接合体がいずれのヘテロ接合体遺伝子型とも異なる表現型を付与する理由は、不明である。いくつかのCERKLアイソフォームが記載されているが、それらが特異的対立遺伝子変異体と関連するか否か、及びそれらがヘテロダイマーとして相互作用するか否かは、未知である。本発明者らの結果は、CERKLの関与、及びより広くセラミド経路の研究が、抗精神病薬薬物療法又はQT間隔に影響を与えることが知られた他の薬物によって誘導されるQT延長のメカニズムのよりよい理解を導き得ることを示唆している。
【0023】
SNP rs3924426は、SLCO3A1遺伝子のイントロン1内に位置する(図1b)。SLCO3A1は、有機アニオン輸送ポリペプチド,サブタイプD(OATP−D)として知られる、溶質輸送体有機アニオントランスポーターファミリー、メンバー3A1をコードする。rs3924426の非TT遺伝子型を保有する患者は、ホモ接合体TT患者についての15.0m秒と比較して、2.5m秒の平均QTcF変化を有した。OATP−Dは、脳、精巣及び心臓(特に、心筋、血管内皮及び冠状動脈)において優勢に発現される。さらに、OATP−Dは、特殊化した細胞及び組織におけるプロスタグランジンE1、E2及びF2αの転座において重要な役割を果たす。プロスタグランジンは心保護効果を有することが示されており、特に、プロスタグランジンE2は、抗不整脈薬物クロフィリウムで治療されたウサギにおいて多形性心室頻拍を予防できることが示されている。本明細書中に記載される結果は、SLCO3A1と心筋の再分極との間の可能性のある直接的関連の最初の証拠を提供するものである。
【0024】
SNP rs4799915は、RNA結合タンパク質ブルーノ様4をコードするBRUNOL4遺伝子のイントロン2内に位置する(図1c)。rs4799915のCC遺伝子型を保有する患者は、異なる遺伝子型を有する患者についての14.5m秒と比較して、2.9m秒の平均QTcF変化を有した(表1)。BRUNOL4遺伝子産物CELF4は、mRNA前駆体の選択的スプライシングを調節し、mRNAの編集及び翻訳に関与し得る、RNA結合タンパク質(BRUNOLタンパク質又はCELFタンパク質)のファミリーに属する。BRUNOL2タンパク質及びBRUNOL3タンパク質は、トリヌクレオチドCUGリピートに結合するそれらの能力に起因して、CUGBP1及びCUGBP2として知られている。これらのタンパク質は心臓中で高度に発現され、種々の骨格筋及び心臓の疾患の発病において役割を果たすことが示唆されている。心臓において特異的に発現される核のドミナントネガティブCELF4タンパク質を有するトランスジェニックマウスは、mRNA前駆体の選択的スプライシングにおいて欠損を示し、心肥大、拡張型心筋症、重篤な心機能不全及び早死にを発症した。この表現型は、野生型CELFタンパク質の心臓での発現の増加によりレスキューされる。CELFタンパク質は、正常な心臓の構造及び機能の維持において重要な選択的スプライシングの調節において、重要な役割を果たし得る。このタンパク質ファミリー、特に薬物誘導性のQT延長に関する本発明者らの研究に関連したCELF4が、心筋の再分極に如何に関与し得るかをさらに調査することが興味深いであろう。
【0025】
SNP rs4933824は、ニューレグリン3(NRG3)遺伝子のイントロン1内に位置する(図1d)。rs4933824の非GG遺伝子型を保有する患者は、異なる遺伝子型を有する患者についての15.3m秒と比較して、4.4m秒の平均QTcF変化を有した(表1)。ニューレグリンは、上皮成長因子に関連する成長及び分化因子であり、ErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼに対するリガンドである。NRG1の発現は、冠毛細血管内皮細胞の初代培養物において観察されている。NRG1の組換え形態は、胚心筋細胞の増殖、並びにin vitroの心室筋細胞の成長及び生存を促進することが示されている。これらの観察は、ニューレグリン−ErbBシグナル伝達系が、心筋肉柱形成及び心臓の形態形成の開始において重要な役割を果たすという示唆を導く。ニューレグリン3が心筋の再分極において果たす役割が何であるのかは、調査が待たれる。
【0026】
SNP rs7142881は、クレオチド結合タンパク質様(NUBPL)遺伝子のイントロン4内に位置する(図1e)。rs7142881のGG遺伝子型を保有する患者は、異なる遺伝子型を有する患者についての16.7m秒と比較して、5.7m秒の平均QTcF変化を有した(表1)。現時点で、NUBPL遺伝子発現の部位(複数可)及びコードされたタンパク質の機能は未知である。
【0027】
SNP rs17054392は、細胞骨格関連タンパク質パラディン(paladin)(細胞の形状、接着及び収縮を制御するアクチン含有マイクロフィラメントの成分)をコードするパラディン(PALLD)遺伝子のイントロン2内に位置する(図1f)。rs17054392についてヘテロ接合体の患者は、異なる遺伝子型を有する患者についての14.2m秒と比較して、−0.7m秒の平均QTcF変化を有した(表1)。PALLDのイントロン2、8及び10中に位置する5つの他のSNPもまた、P<0.01で有意であった。以前より、イントロン10内の別の多型(本発明者らのWGASでは試験していないrs12510359)は、心筋梗塞の危険性と関連するとされてきた(図1d)。パラディンタンパク質は、細胞骨格再構築において重要な役割を果たし、血管傷害によって誘導されるシグナル及び平滑筋細胞の肥大を誘導するシグナルに対して応答できると考えられている。本明細書中に記載された結果は、PALLDが心筋の再分極にも影響を与える可能性があることを示唆する。
【0028】
QT延長の以前の遺伝的研究は、イオンチャネル遺伝子に対して主に焦点を当ててきたが、新たなゲノムワイドアプローチは、疑われていない遺伝子における遺伝的変異体を同定する機会を提供する。最近、心臓の再分極を調節する多型が、神経型一酸化窒素合成酵素のレギュレーターにおいて同定された。薬物誘導性のQT延長のこのWGASは、イロペリドンで治療された統合失調症を有する患者において、QT間隔の延長と関連したいくつかの遺伝子多型を同定した。これらの多型は、未知又は疑われていない心筋の役割を有するが、心臓の再分極又は心室性頻拍とは以前に関連していなかった遺伝子を示している。これらの結果は、セラミド経路(CERKL)、プロスタグランジン輸送(SLCO3A1)、心臓の構造及び機能(BRUNOL4)、心臓の発達(NRG3)及び心筋梗塞(PALLD)に関与する遺伝子、並びに他の遺伝子(NUBPLなど)の、可能性のある相互作用を示唆している。
【0029】
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版(解体型[295.10]、妄想型[295.30]又は未分化型[295.90])に従って統合失調症と診断された18歳〜65歳の患者が、この試験への参加に適格であった。患者を、1日2回(bid)のイロペリドン12mg、1日2回のジプラシドン80mg(活性対照)又はプラセボに、ランダムに割り当てた。用量は、1日目から7日目までそれぞれの標的用量に用量設定し、28日目まで維持した。薬理ゲノミクス分析への参加は任意選択であった。任意選択のWGASに同意した457人の患者のうち432人(イロペリドンを投与した218人の患者を含む)から、血液サンプルを収集し、DNAを抽出した(Quest Diagnostics Laboratories、Van Nuys、California)。これらのイロペリドン治療患者のうち、14日目におけるQTデータを有する183人(男性152人及び女性31人)が、本明細書中で報告されるWGASの一部であった。これらの患者には、16人のアジア人、69人の白人及び91人の黒人即ちアフリカ系アメリカ人の患者、並びに7人の他の民族起源の患者が含まれた。
【0030】
QT間隔
12誘導ECGを、ベースライン時並びに7日目、14日目、21日目及び28日目に実施した。ベースライン時を除いて、ECGを、患者が研究薬物の朝の用量を受けた2時間後に実施した。ECGを、他の来院で得た1回の測定と共に、ベースライン時及び14日目に、3回実施した。QTc間隔は、QTcFに基づいて計算した。QTc間隔に対するイロペリドンの影響を、Qtcにおけるベースラインからの平均変化によって測定した。
【0031】
遺伝子型決定
DNAサンプルを、アレイセット(ジーンチップ(GeneChip)(登録商標)ヒューマンマッピング500Kアレイセット(GeneChip Human Mapping 500K Array Set);Affymetrix、Santa Clara、California)を製造業者の指示に従って使用して、500,000より多いSNPについて遺伝子型決定した。このセットは、それぞれが平均して250,000のSNPを遺伝子型決定することが可能な2つのアレイ(Nspアレイについては約262,000及びStyアレイについては238,000)からなった。DNAアレイから収集したデータの完全性を確実にするために、以下の品質制御ステップを実施した:
【0032】
アルゴリズム
各マイクロアレイ(ジーンチップ(登録商標)ヒューマン500Kアレイセット;Affymetrix)を、動的モデルベースの遺伝子型決定アルゴリズム及びMahalanobis距離分類指標を用いる最新のBayesianロバスト線形モデル(BRLMM)によって分析した。信頼度閾値は0.5であった。これらの条件下で、失われた遺伝子型はランダムに失われたと仮定し、インピュテーションはいずれの遺伝子データについても行わなかった。BRLMMアナリシスツール(BRLMM Analysis Tool)2.0及びSNPシグナルツール(SNP Signal Tool)1.0.0.12.(Affymetrix)を使用して、個々のSNPの遺伝子型コールの分布及び分離を分析及び可視化した。
【0033】
コールレート
コールレートを、BRLMMアルゴリズムによりAA、AB又はBBとコールされたSNPの割合として、単一のアレイについて規定した。93%以上のコールレートを有するアレイのみを、さらなる分析のために維持した。
【0034】
アレイ間の一致
遺伝子型決定した500,000より多いSNPのうち、50は、Styアレイ及びNspアレイの両方に共通していた。これらのSNPについて90%より高い一致を有するアレイのみを、さらなる分析に使用した。
【0035】
サンプルの独自性
各アレイ(Sty又はNsp)上のサンプル当たりの得られた約250,000のSNPデータを、全ての他のサンプルの遺伝子型と比較して、潜在的な重複サンプルを同定した。遺伝子型の90%より多くが2つのアレイ間で同一であった場合、DNAを再試験して遺伝子型を確認し、必要に応じて重複サンプルを排除した。
【0036】
DNA汚染の欠如
別のサンプルによるあるサンプルのDNA汚染の欠如を、動的モデルベースのアルゴリズムによって計算されるように、ヘテロ接合体コールを有するSNPの全体的割合を決定することによって、各アレイについて評価した。<30%のヘテロ接合体コールを有するアレイからの遺伝子型コールを、純粋なDNAサンプルに由来しているとみなした。<30%のヘテロ接合体コールを有するアレイのみを、さらなる分析に使用した。
【0037】
性別決定
各DNAサンプルについて、性別を、X染色体上のSNPのヘテロ接合性の割合に基づいて、BRLMMアルゴリズムによって盲検的に決定した。結果を、予測された性別について他と比較した。不一致のデータの場合、アメロゲニン遺伝子(AMELX)についてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイを、元のサンプル及び新たなDNAアリコートに対して実施した。新たな遺伝子型決定実験を、Styアレイ及びNspアレイを用いて実施した。不適合の結果を有するサンプルを、WGASから排除した。
【0038】
対立遺伝子頻度
この計画は、10%以上のマイナー対立遺伝子頻度を有するSNPを選択することによって、最も一般的な多型に焦点を当てた。
【0039】
SNP選択
アレイセット(ジーンチップ(登録商標)ヒューマン500Kアレイセット;Affymetrix)上のSNPについて利用可能な遺伝子型を有する参照DNA(ヒューマンゲノミックDNA 103コントロール(Human Genomic DNA 103 Control);Affymetrix)を、患者サンプルと平行して体系的に試験した。Styアレイ及びNspアレイについて8つのDNA 103複製を得て分析した。遺伝子型コールが8つの複製にわたって同一であり、且つAffymetrixが提供する参照コールと同一であった場合、個々のSNPアッセイを、正確なコールとみなした。DNA 103について100%の一致を有するSNPのみを、WGASのために維持した。Y染色体とクロスハイブリダイズした5つのSNP及びX染色体上の全てのSNPは使用しなかった。このWGASにおいて分析したSNPの総数は、334,563であった。
【0040】
DNA配列決定
目的の各SNPについて、ホモ接合体遺伝子型及びヘテロ接合体遺伝子型のそれぞれについて少なくとも5つのサンプルを含む、最少15のDNAサンプルを配列決定した。以下のプライマーを標準的PCR増幅に使用し、その後配列決定した:
【0041】
rs4799915について5’−GGC CTT GAA AGT CTT GGA GC−3’(フォワード)及び5’−TGG AGG AGT GAG GAG ACC AG−3’(リバース);
rs993648について5’−CTT GAA ATA CAG TTG GCT TTG−3’(フォワード)及び5’−CAA GGT ACG ATA TGC ACA AAG−3’(リバース);
rs4933824について5’−GGG CTG ATT TAG AGG ATA TTG C−3’(フォワード)及び5’−TCC CAT CCT TGC TAT CTT AGT C−3’(リバース);
rs7142881について5’−TGG AGA GGA GGA GAC CTA ATT G−3’(フォワード)及び5’−CCA AAC ACA TAT CCA ACC ATC−3’(リバース);
rs17054392について5’−GCA CCC AGA GTT TCT TCC AG−3’(フォワード)及び5’−TTG GGC TGC CAA TTA TTC AC−3’(リバース);並びに
rs3924426について5’−GTA GGA GGG AGG GCA AGA AC−3’(フォワード)及び5’−CAA TCC GGT GCC AGA GTC−3’(リバース)。
【0042】
配列決定を、25μLの反応について、製造業者の指示に従って試薬キット(アンプリタック(AmpliTaq)DNAポリメラーゼを含むジーンアンプ(GeneAmp)(登録商標)PCR試薬キット;Applied Biosystems、Foster City、California)を用いて実施した。ヌクレオチド配列を、製造業者の指示に従って、自動キャピラリーDNAシーケンサー(アバント(Avant)3100;Applied Biosystems)及びサイクル配列決定キット(ビッグダイ(BigDye)(登録商標)ターミネーターバージョン3.1サイクル配列決定キット(BigDye Terminator version 3.1 Cycle Sequencing Kit);Applied Biosystems)を使用して決定した。
【0043】
QTcFの延長と関連した遺伝子マーカーを、GLM分析によって同定した。QTに対する影響は、イロペリドンが定常状態の濃度に達する14日目までに最大になったので、従属変数は、ベースラインから14日目までの平均変化とした。ベースラインQTcFを共変数として使用し、遺伝子型を分類可能な変数として使用した。GLMはタイプ3の平方和を使用し、最小二乗平均において、全てのペアワイズ差異が生じた。3つの遺伝子モデル(AA対非AA;AB対非AB;BB対非BB)を334,563のSNPのそれぞれについて試験したので、合計1,003,689の試験を実施した。Benjamin及びHochberg(BH)手順を使用して、FDRの予測された割合に関して制御した。FDR補正を、元の分析的P値へのBH調整を生成するプロックマルチテスト(PROC MULTTEST)(SAS Institute、Cary、North Carolina)から得た。0.1及び0.25の有意な閾値が、多重度の問題が大きい場合に、定量的な形質の分析において使用されてきた。より最近、Benjamini及びYekutieliは、0.2より高くしないことを推奨している。この研究が百万より多い試験の実施を含んだことを考慮して、BH調整閾値をP<0.2に設定した。イロペリドン誘導性のQT延長の候補バイオマーカーとして同定された各SNPについて、ポストホック分析を実施して、性別及び人種の影響を調査した。このような影響は見出されなかった。
【0044】
WGASの結果は、抗精神病薬又はQT間隔を延長させることが可能な他の化合物での治療に応答した個体のQT間隔の延長を予測するだけでなく、このような治療をより効果的なものにする可能性を提供する。例えば、上記1つ又は複数のSNP座位における個体の遺伝子型に基づいて平均を上回るQT間隔の延長を示すと予測された個体に、他の場合で投与される投薬量よりも低い投薬量(例えば、約2mg/日〜約24mg/日、約5mg/日〜約20mg/日、又は約10mg/日〜約15mg/日)を投与でき、それにより、このような治療の任意の有害な副作用の可能性が最小化される。同様に、平均を下回るQT間隔の延長を示すと予測された個体に、より高い投薬量(例えば、約24mg/日〜約50mg/日、約30mg/日〜約50mg/日、又は約40mg/日〜約50mg/日)を投与することもでき、又は、QT間隔を延長することが知られていない別の化合物で個体を治療することもできる。上記1つ又は複数のSNP座位における患者の遺伝子型が、その患者にQT間隔の延長の危険性があることを示唆する場合、この患者の治療は、QT間隔のモニタリングを含んでもよい。
【0045】
或いは、投薬量は、特定のSNP座位における患者の遺伝子型に基づいてもよい。例えば、一実施形態において、本発明は、精神病性障害、統合失調症又は双極性障害の1つ又は複数の症状について患者を治療する方法を提供し、この方法は、rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される1つの一塩基多型(SNP)座位の両方のコピーにおいて、患者の遺伝子型を決定するステップと、患者が、選択されたSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、患者のrs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881又はrs17054392の遺伝子型に基づいて、有効量の非定型抗精神病薬をこの患者に投与するステップと、を含む。
【0046】
1つ又は複数の上記SNP座位における個体の遺伝子型は、任意のいくつかの方法によって決定することができる。例えば、遺伝子型(複数可)は、上記のように、DNA配列を直接分析することによって決定することができる。或いは、遺伝子型(複数可)は、当業者が認識するように、RNA転写物(例えば、mRNA)又は遺伝子発現産物(例えば、タンパク質)を分析することによって決定することができる。遺伝子型決定は、好ましくはex vivoで実施される。
【0047】
本発明のさらなる態様は、精神病性障害又は双極性障害を有する患者に対する治療戦略を決定するためのキットである。このようなキットは、例えば、非定型抗精神病薬(例えば、イロペリドン)での治療に応答したQT間隔の延長を予測すること、及びこのような予後に基づいて、より低い又はより高い用量の非定型抗精神病薬で患者を治療すること、他の治療(例えば、定型抗精神病薬)と併用して非定型抗精神病薬で患者を治療すること、患者のQT間隔をモニタリングすること、又は全体として異なる治療を選択することにおいて有用である。
【0048】
本発明のキットは、特に本明細書中に記載される遺伝子座中に存在する対立遺伝子を同定するための、物理的要素(例えば、プローブ)(限定ではなく、特異的プライマー、標識化核酸プローブ、抗体、タンパク質捕捉剤(複数可)、試薬(複数可)、指示シート(複数可)及び本発明の実施に有用な他の要素が含まれる)の組合せである。
【0049】
本発明のキットは、本明細書中の別の箇所に記載したような、関連性のある遺伝子座のうち少なくとも1つにおける患者の遺伝子型を検出するために限定された少なくとも1つの試薬を備えてもよい。検出は、例えばヒトの染色体DNAの関連する部分を直接配列決定することによって直接的であり得、又は、例えばメッセンジャーRNA転写物を配列決定すること若しくは遺伝子発現産物(即ち、ポリペプチド)を配列決定することによって間接的であり得る。従って、試薬は例えば、ポリヌクレオチド、又はポリヌクレオチドのアレイ、又は抗体若しくは抗体のパネルであってもよい。
【0050】
このキットはまた、1つ又は複数の遺伝子特異的遺伝子型決定プライマー組成物を備えてもよい。このプライマー組成物は、少なくとも1つの遺伝子特異的遺伝子型決定ポリヌクレオチドを含むことができる。この組成物は、対立遺伝子特異的プライマー対の2つ以上のセットを含むことができる。2つの対立遺伝子特異的遺伝子型決定オリゴヌクレオチドは、別個の容器中に包装してもよい。いくつかの実施形態において、変性プライマーセットが、増幅のために提供される。
【0051】
別の実施形態において、このキットは任意選択で、遺伝子発現産物を検出及び識別するための等電点電気泳動法のための指示書を備えてもよい。
【0052】
抗体ベースのキットは、例えば、所与の対立遺伝子の遺伝子発現産物に特異的な、固体支持体に結合された抗体と、遺伝子発現産物に結合し、検出可能な基にコンジュゲートした第二の抗体とを備えることができる。
【0053】
このキットはまた、緩衝剤、ハイブリダイゼーション緩衝液及びタンパク質安定化剤又は核酸安定化剤(例えば、多糖類など)などの試薬も備え得る。例えばPCRによるDNA又はRNAの増幅を必要とするアッセイを実施する場合、このキットは、ポリメラーゼ又は反応緩衝液も備え得る。このキットは、任意の適切な様式で包装してもよく、典型的には、試験を実施するため又は結果を解釈するための印刷された指示シートと共に、単一の容器中に全ての要素を備える。
【0054】
本発明の種々の態様の上記説明は、例示及び説明の目的で提示されている。上記説明は、網羅的であることも、本発明を開示された正確な形態に限定することも意図せず、明らかに、多数の改変及び変形が可能である。当業者に明らかであり得るこのような改変及び変形が、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0055】
【表1】

【0056】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照により本明細書中に組み込まれる、同時係属中の2007年9月10日に出願された米国特許仮出願第60/971,232号明細書の利益を主張する。
【0057】
(配列表)
4KBを占める、2008年9月10日に作成した表題「VAND−0057−PCT_Seq_IDs.txt」の電子ファイル中に含まれる配列表は、本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体のQT間隔を延長させることが可能な化合物の投与後の個体のQT延長を予測する方法であって、
rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)座位における個体の遺伝子型を決定するステップと、
少なくとも1つのSNP座位における個体の遺伝子型が増加したQT延長と関連する場合に、個体が平均を上回るQT延長を起こすであろうと予測するステップと
を含む方法。
【請求項2】
増加したQT延長と関連する遺伝子型が、rs993648についての非CT、rs3924426についてのTT、rs4799915についての非CC、rs4933824についてのGG、rs714881についての非GG及びrs17054392についての非CTからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が非定型抗精神病薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、セルチンドール、ゾテピン、アミスルプリド、ビフェプルノックス、メルペロン、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの代謝産物及びそれらの代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、イロペリドン代謝産物、イロペリドンの医薬的に許容可能な塩及びイロペリドン代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
イロペリドン代謝産物が、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン及び4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノールからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
個体のQT間隔を延長させることが可能な化合物の投与後の個体のQT延長を予測する方法であって、
rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)座位における個体の遺伝子型を決定するステップと、
少なくとも1つのSNP座位における個体の遺伝子型が減少したQT延長と関連する場合に、個体が平均を下回るQT延長を起こすであろうと予測するステップと
を含む方法。
【請求項9】
減少したQT延長と関連する遺伝子型が、rs993648についてのCT、rs3924426についての非TT、rs4799915についてのCC、rs4933824についての非GG、rs714881についてのGG及びrs17054392についてのCTからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
化合物が非定型抗精神病薬である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、セルチンドール、ゾテピン、アミスルプリド、ビフェプルノックス、メルペロン、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの代謝産物及びそれらの代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、イロペリドン代謝産物、イロペリドンの医薬的に許容可能な塩及びイロペリドン代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
イロペリドン代謝産物が、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン及び4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノールからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
精神病性障害の1つ又は複数の症状について患者を治療する方法であって、
rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される少なくとも1つの一塩基多型(SNP)座位の両方のコピーにおいて、患者の遺伝子型を決定するステップと、
少なくとも1つのSNP座位における患者の遺伝子型が増加したQT延長と関連するか否かに基づいて患者を治療するステップと
を含む方法。
【請求項16】
増加したQT延長と関連する遺伝子型が、rs993648についての非CT、rs3924426についてのTT、rs4799915についての非CC、rs4933824についてのGG、rs714881についての非GG及びrs17054392についての非CTからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者が増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、患者を治療するステップが、有効量の非定型抗精神病薬を患者に投与するステップを含み、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を有さない個体に投与される量よりも低い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、セルチンドール、ゾテピン、アミスルプリド、ビフェプルノックス、メルペロン、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの代謝産物及びそれらの代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、イロペリドン代謝産物、イロペリドンの医薬的に許容可能な塩及びイロペリドン代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
イロペリドン代謝産物が、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン及び4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノールからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
有効量が約2mg/日〜約24mg/日である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
有効量が約5mg/日〜約20mg/日である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
有効量が約10mg/日〜約15mg/日である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
患者が増加したQT延長と関連する遺伝子型を有さない場合に、患者を治療するステップが、有効量の非定型抗精神病薬を患者に投与するステップを含み、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する個体に投与される量よりも高い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、セルチンドール、ゾテピン、アミスルプリド、ビフェプルノックス、メルペロン、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの代謝産物及びそれらの代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、イロペリドン代謝産物、イロペリドンの医薬的に許容可能な塩及びイロペリドン代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
イロペリドン代謝産物が、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン及び4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノールからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
有効量が約24mg/日〜約50mg/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
有効量が約30mg/日〜約50mg/日である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
有効量が約40mg/日〜約50mg/日である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者が2以上のSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を1つだけ有する個体に投与される量よりも低い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項34】
患者が3以上のSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を2以下しか有さない個体に投与される量よりも低い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
患者が4以上のSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を3以下しか有さない個体に投与される量よりも低い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
患者が5以上のSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を4以下しか有さない個体に投与される量よりも低い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
患者が6つのSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する場合に、有効量が、増加したQT延長と関連する遺伝子型を5以下しか有さない個体に投与される量よりも低い量である、請求項15に記載の方法。
【請求項38】
患者を治療するステップが、非定型抗精神病薬を患者に投与しないことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項39】
患者を治療するステップが、QT延長について患者をモニタリングするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項40】
個体のQT間隔を延長させることが可能な化合物を個体に投与する方法であって、
個体のセラミドキナーゼ様(CERKL)遺伝子配列の少なくとも一部を決定するステップと、
個体のCERKL遺伝子配列の一部がQT延長の危険性の増加と関連する場合に、
QT延長の危険性の増加と関連しないCERKL遺伝子配列を有する個体に投与される量よりも少ない量の化合物を個体に投与するステップ、
QT延長の危険性の増加と関連しないCERKL遺伝子配列を有する個体に投与される量と等しい量の化合物を個体に投与するステップ、若しくは
QT延長について患者をモニタリングするステップ
のうち少なくとも1つを実施するステップ、又は
その代わりに、QT延長と関連することが知られていない異なる化合物で個体を治療することを選択するステップと、
を含む方法。
【請求項41】
個体のCERKL遺伝子配列の一部がrs993648一塩基多型(SNP)を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
QT延長の危険性の増加と関連する遺伝子配列が、rs993648のSNPにおいてTT遺伝子型又はCT遺伝子型を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
化合物が非定型抗精神病薬である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、クロザピン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドン、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、セルチンドール、ゾテピン、アミスルプリド、ビフェプルノックス、メルペロン、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの代謝産物及びそれらの代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン、イロペリドン代謝産物、イロペリドンの医薬的に許容可能な塩及びイロペリドン代謝産物の医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
イロペリドン代謝産物が、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシフェニル]エタノン、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシフェニル]−2−ヒドロキシエタノン、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−ヒドロキシ−α−メチルベンゼンメタノール、4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシル−2−ヒドロキシ−5−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノール、1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル]エタノン及び1−[4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−2,5−ジヒドロキシフェニル]エタノンからなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
非定型抗精神病薬が、イロペリドン及び4−[3−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]プロポキシ]−3−メトキシ−α−メチルベンゼンメタノールからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
精神病性障害、統合失調症又は双極性障害を有する患者に対する治療戦略を決定する際に使用するためのキットであって、
rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392からなる群より選択される一塩基多型(SNP)を含むDNAの一部を認識しそれに結合できる少なくとも1つのポリヌクレオチドと、
少なくとも1つのポリヌクレオチド及び前記個体由来の染色体DNAのサンプルを入れるのに適した容器であって、少なくとも1つのポリヌクレオチドが染色体DNAと接触し得る容器と、
少なくとも1つのポリヌクレオチドと前記染色体DNAとの組合せを検出し、それによりそのSNPにおける個体の遺伝子型が何であるかを確認するための手段と
を備えるキット。
【請求項49】
rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392のSNPのそれぞれを含むDNAの一部を認識しそれに結合できる少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
rs993648、rs3924426、rs4799915、rs4933824、rs714881及びrs17054392のSNPからなる群より選択される少なくとも1つのSNP座位において増加したQT延長と関連する遺伝子型を有する患者における、精神病性障害、統合失調症又は双極性障害の1つ又は複数の症状に罹患している患者の治療における使用のための、イロペリドン、イロペリドンの活性代謝産物、又はイロペリドン若しくはイロペリドンの活性代謝産物の塩。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【公表番号】特表2010−538617(P2010−538617A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524250(P2010−524250)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/075905
【国際公開番号】WO2009/036100
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(507021702)ヴァンダ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】