説明

SOD様活性剤、DPPHラジカル補足剤、リノール酸自動酸化抑制剤、血行促進剤

【課題】大高良姜(Alpinia galanga Will)の抽出物を利用して、有効な製剤を作成すること。
【解決手段】大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物が皮膚や頭皮の真皮・表皮組織で起こるあらゆる酸化を優位に抑制し、その要因としてSOD様活性作用、DPPHラジカル補足作用、リノール酸自動酸化抑制作用を発揮し、また、さらに血行促進作用も高いことがわかり、有効な種々の製剤が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、特定の属の植物から抽出された抽出物が皮膚や頭皮の真皮・表皮組織で起こるあらゆる酸化を優位に抑制し、その要因としてSOD様活性作用、DPPHラジカル補足作用、リノール酸自動酸化抑制作用を発揮することで肌の酸化を抑制し、また、血行促進効果も有することが判明した。
【背景技術】
【0002】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)はショウガ科の植物で、アルジェリアなどいくつかの地域において消火器系疾患の改善や糖尿病、癌、痔病の改善薬として古くから利用されている伝承薬である。またこれまで大高良姜(Alpinia galanga)としては小動物用忌避剤(特許文献1参照)と抗アレルギー剤(特許文献2参照)のみが公開されている。
【0003】
近年、強力な酸化力を持つ活性酸素の生体への影響が懸念されているが、皮膚は体内に起因する酸素ストレスだけでなく、空気と接していることや紫外線に直接曝されていることで、活性酸素による影響が他の器官より遥かに大きいと言える。この酸化ストレスは皮膚に肌あれや過敏症、ひいては皮膚炎症疾患など種々の肌トラブルを引き起こす。よってこの活性酸素の生成を抑えることは、化粧品には欠かせない要素となっている。
【0004】
生体内において活性酸素を消去する機構にはいくつか解明されており、最初に生成される・O2-(スーパーオキサイド)はSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)によって酵素的にH2O2とO2に不均化されることが判っている。しかしSOD量は加齢に伴って減少し、SOD量の減少によってスーパーオキサイドの濃度が上昇し障害をもたらすようになる。よってSODと同様の作用を持つ物質は皮膚における抗酸化剤として有効であると考えられる。
【0005】
生体内で発生するラジカルを想定した際、DPPH(1,1-diphenyl-2-picryhydrazyl)は安定な有機ラジカルであり、DPPHの分解を指標としてフリーラジカル消去活性を評価することは、ラジカル捕捉因子の探索に有効であることが判っている。
【0006】
表皮脂質中のリノール酸量の低下は、皮膚のバリアー機能を低下させるのみならず、好中球によるアクネ炎症にも悪影響を及ぼすとされている。リノール酸の分解を抑制することは、皮膚のバリアー機能の維持による角化亢進抑制やアクネ菌に対する好中球の炎症を抑えるのに重要であり、その抑制剤は皮膚における抗酸化剤として有効であると考えられる。
【0007】
また、皮膚で起こる種々のトラブルは血液の循環に起因するものも多く、血流が滞ると肌の明度の低下(くすみ)、目の下のくま、下半身のむくみ、さらには脱毛などの症状が現れる。また、血液の循環を促進してやることは、体内の脂肪燃焼につながり痩身には欠かせない要素となっている。
近年、生体内においてNO・が血管内皮由来血管弛緩因子(EDRF)であり、血行促進に重要な役割を果たしていることが解明された。NO・産生を促すことで血管内皮細胞の筋肉弛緩がおこり、血流量が増加することが判っている。よってNO・産生を促進するような物質の探索は、血行促進剤となり、それは肌で起こる血流に起因した種々の悩みの解消に貢献できる。
【特許文献1】特開2002−154913号公報
【特許文献2】特開2004−189669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有効性の高い大高良姜の抽出物に関して有効に活用するために種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明の目的は、今まで抗酸化剤としての効果については知れらていない大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物が皮膚や頭皮の真皮・表皮組織で起こるあらゆる酸化を優位に抑制し、その要因としてSOD様活性作用、DPPHラジカル補足作用、リノール酸自動酸化抑制作用を発揮することで肌の酸化を抑制することを見出し、肌荒れや敏感肌、皮膚炎症疾患などの種々の皮膚の悩みを改善するため、さらにはこれを有効に活用するために種々検討した。
【0010】
大高良姜の抽出物の形態はなんら限定されるものではないが、好ましくは大高良姜を陰乾し、粉砕後、抽出溶媒(例えばエタノール等のアルコール、水またはこれら混合)とともに、3日間浸漬または1時間100度にて加温、冷却、ろ過した液を使用する。
【0011】
試験例1;SOD様活性試験(NBT還元法)
試験はSODテストワコー(和光純薬(株))に準じて行なった。検体溶液(対象にはH2O)100μLにSOD発色試薬1.0mLを加え、37℃で5分間インキュベートした。その後、酵素希釈液あるいはブランク液を1mL加え、さらに20分間インキュベートした。反応停止液2mLを加えて反応を停止し、30分室温で放置し、吸光度計で560nmの吸光度を測定した。なお、消去率については以下の方法により算出した。
消去率=(A-B) / A×100
A: 検体非存在下、空液および酵素液を添加した際の吸光度の差
B: 検体存在下、空液および酵素液を添加した際の吸光度の差
また検体は
大高良姜E:大高良姜(根茎乾燥物)(30g)のエタノール(200ml)エキス(凍結乾燥物)
大高良姜EW:大高良姜(根茎乾燥物)(30g)の50%エタノール−水(200ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica mig.)E:ハナミョウガ(根茎乾燥物)(20g)のエタノール(100ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica mig.)EW:ハナミョウガ(根茎乾燥物)(20g)の50%エタノール−水(100ml)エキス(凍結乾燥物)
にて行った。
検体の作用濃度は0.0033%で行った結果を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
試験例2;DPPHラジカル捕捉試験
検体液(対象にはH2O)を1.0mLとり、0.5M Ac-OH緩衝液(pH5.5)0.2mL、エタノール0.8mLを加えて攪拌した後、0.5M DPPHエタノール溶液またはエタノールを0.5mLを加えて、室温・暗所にて30分間放置した。放置後、517nmの吸光度を吸光度系にて測定した。なお、消去率については以下の方法により算出した。
消去率=(A-B) / A×100
A: 検体非存在下、エタノールおよびDPPHエタノール溶液を添加した際の吸光度の差
B: 検体存在下、エタノールおよびDPPHエタノール溶液を添加した際の吸光度の差
また検体は
大高良姜E:大高良姜(30g)のエタノール(200ml)エキス(凍結乾燥物)
大高良姜EW:大高良姜(根茎乾燥物)(30g)の50%エタノール−水(200ml)エキス(凍結乾燥物)
大高良姜W:大高良姜(根茎乾燥物)(30g)の熱水(200ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica mig.)E:ハナミョウガ(根茎乾燥物)((20g)のエタノール(100ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica mig.)EW:ハナミョウガ(根茎乾燥物)((20g)の50%エタノール−水(100ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica mig.)W:ハナミョウガ(根茎乾燥物)(30g)の熱水(200ml)エキス(凍結乾燥物)
により行った。
検体の作用濃度は0.0020%で行った結果を表1に示す。
【0014】
【表2】

【0015】
試験例3;リノール酸自動酸化抑制試験
以下に示す検体溶液を作成し、50 ℃で遮光保温した。
・2 % リノール酸エタノール溶液 10 ml
・リン酸緩衝液 10 ml
・精製水 5 ml
・検体 4 mg
一定日数(0〜10日間)経過毎に試験液 0.150 ml と反応液(75 % エタノール 500 ml+30 % チオシアン酸アンモニウム溶液 5.15 ml)14.7 ml を混合しよく攪拌した後、3 分間放置後、0.02 M FeCl2−3.5 % HCl 溶液 0.150 mlを加え、更に攪拌した。3 分間放置後、500 nm の吸光度を測定した。
また検体は
大高良姜E:大高良姜(30g)のエタノール(200ml)エキス(凍結乾燥物)
大高良姜EW:大高良姜(根茎乾燥物)(30g)の50%エタノール−水(200ml)エキス(凍結乾燥物)
大高良姜W:大高良姜(根茎乾燥物)(30g)の熱水(200ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica Mig.)E:ハナミョウガ(根茎乾燥物)((20g)のエタノール(100ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica Mig.)EW:ハナミョウガ(根茎乾燥物)((20g)の50%エタノール−水(100ml)エキス(凍結乾燥物)
ハナミョウガ(Alpinia japonica Mig.)W:ハナミョウガ(根茎乾燥物)((20g)の熱水(100ml)エキス(凍結乾燥物)
にて行った。
【0016】
【表3】

【0017】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物は0.0001〜10%重量%で配合すれば効果を十分発揮することから、この濃度で配合することが望ましい。
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、常法に従い、通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基材に配合して調製することができる。
【0019】
外用剤の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、水溶液、パック等の任意の剤形を選択することができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤には、上記した必須成分の他に通常の外用剤に配合される成分、例えば、油剤、粉体、精製水、高分子化合物、ゲル化剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、酸化防止剤、色素、防腐剤、香料、美容成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。また、使用した薬剤の抽出液についての抽出方法は何ら限定されるものではない。
実施例の処方を表4から表6に示す。作成方法は常法により行った。なお、表4はローション、表5は美容液、表6はクリームの処方であり、配合量は重量部で示す。
【0022】
【表4】

【0023】
【表5】

【0024】
【表6】

【0025】
(注1)大高良姜抽出液1は大高良姜(根茎乾燥物)10gに精製水200mlを加えて1時間煮沸した後、ろ過した抽出液を用いた。
(注1)大高良姜抽出液2は大高良姜(根茎乾燥物)10gに精製水100mlとエタノール100mlを加えて3日間攪拌した後、ろ過した抽出液を用いた。
(注1)大高良姜抽出液3は大高良姜(根茎乾燥物)10gにエタノール200mlを加えて3日間攪拌した後、ろ過した抽出液を用いた。
(注2)加水分解コンキオリン液はコンキオリンを硫酸分解し、分子量1000以下のものを用いた。
(注3)タブノキ抽出液はマチルス抽出液 [丸善製薬(株)製]を用いた。
(注4)ホオノキ抽出液はファルコレックスホオノキE[一丸ファルコス(株)製]を用いた。
(注5)グァバ抽出液はグァバの葉10gにエタノール300mlを加えて5日間放置後、ろ過した抽出液を用いた。
(注6)西河柳抽出液は西河柳エキス[日本精化株)製]を用いた。
(注7)海藻抽出液はマリンパージ[一丸ファルコス(株)製]を用いた。
(注8)アカシア樹皮抽出液は樹皮10gにエタノール300mlを加えて5日間放置後、ろ過した抽出液を用いた。
(注9)ムラヤコエンギイ抽出液はムラヤコエンギイ]抽出液[山川貿易(株)製を用いた。
(注10)オオバナサルスベリ抽出液はオオバナサルスベリ抽出液 [山川貿易(株)製]を用いた。
【0026】
表4〜表6記載の実施例及び比較例の効果試験を実施した。試験方法は25〜55才の女性20名をパネルとし、毎日朝と夜の2回、12週間にわたって洗顔後に被験外用剤の適量を顔面に塗布した。塗布による肌悩み改善効果の結果を表7に示す。
【0027】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物を配合することを特徴とする抗酸化用皮膚外用剤
【請求項2】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物を配合することを特徴とするSOD様活性剤
【請求項3】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物を配合することを特徴とするDPPHラジカル補足剤
【請求項4】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物を配合することを特徴とするリノール酸自動酸化抑制剤
【請求項5】
大高良姜(Alpinia galanga Willd.)の抽出物を配合することを特徴とする血行促進剤

【公開番号】特開2006−225287(P2006−225287A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38557(P2005−38557)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】