説明

SPMプローブおよび発光部検査装置

【課題】近接場光やマイクロ波のような微小スケールのエネルギー源の空間分布を広い測定範囲、高空間分解能で観測することができるSPMプローブを提供する。
【解決手段】SPMカンチレバー1と、SPMカンチレバーの探針部に形成された熱抵抗2と、熱抵抗2の上に形成された絶縁膜3と、絶縁膜3の上に形成された微小スケールエネルギー源を熱に変換する1本の細線4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光(微小スケールエネルギー源)のエネルギーの計測を行うSPMプローブに関し、特に、その高分解能化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代ハードディスクヘッドとして近接場光ヘッドが採用される計画である。近接場光ヘッドから発生する近接場光(微小スケールエネルギー源)の幅は20nm以下であり、実際動作時の近接場光の空間分布に対する検査方法は未解決の問題の1つである。
【0003】
従来、熱抵抗や熱電対を付加するカンチレバーを用いて、原子間力顕微鏡(Atomic force microscope:AFM)検査技術に基づいて、高空間分解能かつ非破壊検査技術であるSPM(Scanning Probe Microscope)技術を利用することが考えられている。
【0004】
カンチレバーに熱電対技術を付加する技術には、例えば、K.Luo、Z.Shi、J.Lai、and A.Majumdar、Appl.Phys.Lett.68、pp.325−327(1996)(非特許文献1)、G.Mills、H.Zhou、A.Midha、L.Donaldson、and J.M.R.Weaver、Appl.Phys.Lett.72、pp.2900−2902(1998)(非特許文献2)に記載の技術がある。
【0005】
非特許文献1に記載の技術は、カンチレバー上に金、酸化シリコン、ニッケルの3層の薄膜を蒸着し、約5μmのピラミッド型探針の先端部に100〜300nmの大きさの熱電対接点を形成したものである。これは、製作の困難さと耐久性に問題があるものの、このプローブにより温度計測に関して10nm程度の空間分解能を実現可能であると報告されている。
【0006】
また、非特許文献2に記載の技術は、微細加工技術による一括製造(バッチ式)で作られる熱電対である。カンチレバー上に金とパラジウムの薄膜を蒸着し先端部におよそ250nm程度の大きさの熱電対接点を形成したもので、先端の曲率半径は約50nmであり、熱計測の空間分解能として40nm以下という結果が報告されている。
【0007】
一方、CNT(カーボンナノチューブ)を非特許文献1の熱電対カンチレバーに付加するものとして、特開2007−86079号公報(特許文献1)に記載の技術が、また、CNTを熱抵抗の一部として、電気と熱を伝導させるものとして特許3925610号公報(特許文献2)に記載のものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−86079号公報
【特許文献2】特許3925610号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】K.Luo、Z.Shi、J.Lai、and A.Majumdar、Appl.Phys.Lett.68、pp.325−327(1996)
【非特許文献2】G.Mills、H.Zhou、A.Midha、L.Donaldson、and J.M.R.Weaver、Appl.Phys.Lett.72、pp.2900−2902(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の方法では、熱抵抗や熱電対を形成する際に、サイズの微小化や、サイズのコントロール等の実現は非常に難しいため、幅が数〜数十ナノメータの近接場光のようなエネルギー源の空間分布を高空間分解能で検出することは1つの課題である。
【0011】
また、近接場光を検出するためには光を散乱させ、直接散乱光を検出する方法もあるが、同じく高分解能で検出することはできないこと、計測装置として、試料への影響を最小限に抑えること、そして、製作方法の簡易化などは課題となる。
【0012】
また、特許文献1は非特許文献1に記載する熱電対をそのまま使用してCNTのみに指定したものであり、接続方法などについての記載はなく、CNT以外のものを使うことと、CNTを装着することは課題となる。
【0013】
また、特許文献2では、CNTが電気回路の一部であり、被測定物に電気的影響を与える恐れがあり、また、CNTを固定するために、接着剤の選択や数十ナノサイズの接着ポイントの付け方なども難しいと考えられる(接着ポイントの形成が難しい)。
【0014】
そこで、本発明の目的は、簡単な作業で作成ができ、被測定物に電気的影響を与えず、近接場光やマイクロ波のような微小スケールのエネルギー源の空間分布を広い測定範囲、高空間分解能で観測することができるSPMプローブを提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
すなわち、代表的なものの概要は、SPMカンチレバーと、SPMカンチレバーの探針部に形成された熱抵抗と、熱抵抗の上に形成された絶縁膜と、絶縁膜の上に形成された微小スケールエネルギー源を熱に変換する1本の細線とを備えたものでる。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、近接場光やマイクロ波のような微小スケールのエネルギー源の空間分布を広い測定範囲、高空間分解能で観測可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【図9】本発明の実施の形態5に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態6に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【図11】本発明の実施の形態6に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置の基本構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置の装置構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置による測定時の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の概要について説明する。
【0022】
本発明は、従来のSPMプローブを、近接場光などの微小スケールエネルギー源の検出ができるように改良するために、微小スケールエネルギー源を熱に変換させ、熱の分布を検出することによって、微小スケールエネルギー源の空間分布を算出できるようにしている。
【0023】
このため、SPMプローブの先端にセンサ、および微小スケールエネルギー源の形式を変換(主に熱へ)でき、熱を伝導できる細線を追加している。
【0024】
そして、追加された細線の先端を微小スケールのエネルギー源に接触させ、光やマイクロ波のようなエネルギー形式を他形式に変換(主に熱)し、変換したエネルギーを細線の付け根に伝搬し、そこにあるセンサで検出する。
【0025】
また、センサと細線とが一体となるものをSPMプローブに付けることで、上記と同様に間接的か、直接的にエネルギー源の分布の検出を実現している。
【0026】
また、センサは、熱抵抗や熱電対などのような、通電または電気的な信号を生成したものであれば、予め熱伝導性が良い絶縁膜を先に付加して、細線を追加することにより、細線の役割はエネルギー変換と伝導することのみとなり、被測定物に電気的な影響を与えないように設計する。
【0027】
また、細線はCNF(カーボナノファイバー)や金属細線などである場合、追加方法については、主に高エネルギーイオンビームの照射による自己成長する方法であるため、作業は簡単となり、個体差もあまり生じない。
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
(実施の形態1)
図1により、本発明の実施の形態1に係るSPMプローブの構成について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【0030】
図1において、SPMプローブは、SPMカンチレバー1、SPMカンチレバーの探針部に付加する熱抵抗2、熱抵抗2の上に付加する熱伝導性が良い絶縁膜3、さらに絶縁膜3の上に付加する光を熱に変換する機能を持つ細線4、熱抵抗2に接続するための金属膜5、6、電極50、60から構成されている。
【0031】
各部分の測定する際の役割は以下のとおりである。
【0032】
SPMカンチレバー1は、一般的なAFM装置におけるものと同様であるが、先端についている熱抵抗2と金属膜5、6が測定用の回路の一部として通電し、電極50、60を介して熱抵抗2の抵抗を計測できるようになっている。
【0033】
細線4はSPMカンチレバー1の探針として、被測定物(ここでは近接場光)と接触し、細線4は光を熱に変換する機能と導熱機能を待つため、被測定物と接触する部分は発熱し、その熱を探針の付け根に伝導する。
【0034】
絶縁膜3は熱抵抗2と細線4の間にあり、熱伝導性が良いため、熱抵抗2は細線4の付け根の温度変化を検出し、その抵抗値の変化を電極50、60を介して計測することにより、近接場光を計測することが可能である。
【0035】
次に、図2により、本発明の実施の形態1に係るSPMプローブの製造方法について説明する。図2は本発明の実施の形態1に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【0036】
まず、熱抵抗2が付加されたSPMカンチレバー1の熱抵抗2の上に熱伝導性が良い絶縁膜3を成膜する[図2(a)]。絶縁膜3の上にさらにカーボン膜109を堆積する[図2(b)]。
【0037】
この状態で、カーボン膜109に高エネルギービームを照射(真空中)すると、先端部のみに単一CNF(カーボンナノファイバーの細線4)が成長する[図2(c)]。
【0038】
CNFはカーボンのダイヤモンド構造とグラファイト構造の結合となるため、CNFと近接場光と接触すると発熱し、熱の伝導性も優れるものとなり、高空間分解能での計測が可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
図3により、本発明の実施の形態2に係るSPMプローブの構成について説明する。図3は本発明の実施の形態2に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【0040】
図3において、SPMプローブは、SPMカンチレバー1、SPMカンチレバー1の探針部に付加する熱電対20、熱電対20の上に付加する光を熱に変換する機能を持つ細線4、熱電対20を接続するための金属膜104、107、電極105、108から構成されている。
【0041】
各部分の測定する際の役割は以下のとおりである。
【0042】
SPMカンチレバー1は、一般的なAFM装置におけるものと同様であるが、先端についている熱電対20と金属膜104、107が測定用の回路の一部として通電し、電極105、108を介して熱電対20の電圧を計測できるようになっている。
【0043】
細線4はSPMカンチレバー1の探針として、被測定物(ここでは近接場光)と接触し、細線4は光を熱に変換する機能と導熱機能を待つため、被測定物と接触する部分は発熱し、その熱を探針の付け根に伝導する。熱電対20は細線4の付け根に存在するため、細線4の付け根の温度変化を検出する。
【0044】
熱電対20の電圧値の変化を電極105、108を介して計測することにより、近接場光を計測することが可能である。
【0045】
次に、図4により、本発明の実施の形態2に係るSPMプローブの製造方法について説明する。図4は本発明の実施の形態2に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【0046】
まず、SPMカンチレバー1の自由端突起部0側に金属膜104をコーティングし、固定端に電極105を設置する[図4(a)]。金属膜104の上に絶縁膜106をコーティングする[図4(b)]。
【0047】
その後、自由端突起部0の頂点のわずかの範囲(頂点周辺約50〜100nmのエリア)に存在する絶縁膜を除去する[図4(c)]。同じく、金属膜107(前述した金属膜104に使用した物質と異なる物質)をコーティングし、固定端にもう1つの電極108を設置する[図4(d)]。
【0048】
自由端突起部0の先端の絶縁膜が存在していない部分に、金属膜104と金属膜107の接合により熱電対20が形成される。熱電対を構成する物質として、例えば、金と白金の組合せる方法がある(ただし、他種の金属でも熱電対に使用可能である)。
【0049】
その後、熱電対20の上にカーボン膜109を堆積する[図4(e)]。カーボン膜109に高エネルギービームを照射(真空中)すると、先端部のみに単一CNF(カーボンナノファイバーの細線4)が成長する[図4(f)]。CNFはカーボンのダイヤモンド構造とグラファイト構造の結合となるため、CNFと近接場光と接触すると発熱し、熱の伝導性も優れるものとなり、高空間分解能での計測が可能となる。
【0050】
(実施の形態3)
実施の形態3は実施の形態2の熱電対20の構成を変更したものである。
【0051】
図5により、本発明の実施の形態3に係るSPMプローブの構成について説明する。図5は本発明の実施の形態3に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【0052】
図5において、SPMプローブは、SPMカンチレバー1、SPMカンチレバー1の探針部に付加する熱電対20、熱電対20の上に付加する光を熱に変換する機能を持つ細線4、熱電対20を接続するための金属膜204、205、電極210、212から構成されている。
【0053】
次に、図6により、本発明の実施の形態3に係るSPMプローブの製造方法について説明する。図6は本発明の実施の形態3に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【0054】
図6において、実施の形態2と異なる部分は、熱電対20の構成であり、具体的には、SPMカンチレバー1の自由端突起部0の両側にそれぞれ不同な金属膜204と金属膜205をコーティングし、その上に、絶縁膜206をコーティングする[図6(a)(b)]。
【0055】
自由端突起部0の頂点における金属膜204と金属膜205の接合により、熱電対20が形成される。
【0056】
その後のカーボン膜109の堆積、および細線4の形成は実施の形態2と同様であり、近接場光の計測も実施の形態2と同様である。
【0057】
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態3において、細線4を熱融着、または導熱性接着剤で固定するようにしたものである。
【0058】
図7により、本発明の実施の形態4に係るSPMプローブの構成について説明する。図7は本発明の実施の形態4に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【0059】
図7において、実施の形態3と異なる部分は、光を熱に変換する機能と導熱機能を持つ細線としてCNT(カーボンナノチューブ)を用いており、固定接点304にて、自由端突起部0の頂点に形成される熱電対の上に電子ビーム照射によりCNTを熱融着して固定するか、直接導熱性接着剤(例えば銀プレート)で固定する。
【0060】
CNTを用いた場合も、実施の形態3と同様に、CNTと近接場光と接触すると発熱し、熱の伝導性も優れるものとなり、高空間分解能での計測が可能となる。
【0061】
(実施の形態5)
図8により、本発明の実施の形態5に係るSPMプローブの構成について説明する。図8は本発明の実施の形態5に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【0062】
図8において、SPMプローブは、SPMカンチレバー1、SPMカンチレバー1の自由端突起部0の頂点に付加する1本の近接場光を電気信号に変換する機能を持つ細線4、金属膜404、405、絶縁膜407、電極410、412から構成されている。
【0063】
各部分の測定する際の役割は以下のとおりである。
【0064】
SPMカンチレバー1は、一般的なAFM装置における役割と同様であるが、先端についている細線4が熱電対として機能し、その熱電対と金属膜404、405が測定用の回路の一部として通電し、電極410、412を介して細線4の部分の熱電対の電圧を計測できるようになっている。
【0065】
細線4はSPMプローブの探針として、被測定物(ここでは近接場光である)と接触し、細線4は光を熱に変換する機能と熱電対の機能を待つため、被測定物と接触する部分は発熱し、その熱により熱起電力を生じて、近接場光を電気的な情報に変換し、この電圧値の変化を電極410、412を介して計測することにより、近接場光を計測することが可能である。
【0066】
次に、図9により、本発明の実施の形態5に係るSPMプローブの製造方法について説明する。図9は本発明の実施の形態5に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【0067】
まず、SPMカンチレバー1の自由端突起部0の両側に同時に2種類の金属膜404、405を堆積させ、自由端突起部0の頂点に2種類の金属の境界線を形成させ、金属膜404、405の上に絶縁膜407をコーティングする[図9(a)(b)]。
【0068】
このとき自由端突起部0の頂点に高エネルギービームを照射(真空中)することにより、自由端突起部0の頂点に2種類の金属の成分を持つ細線4として形成できる[図9(c)]。この細線4自身は熱電対となるため、熱を検出することができ、細線4が近接場光と接触すると発熱し、高空間分解能での計測が可能となる。
【0069】
なお、細線4の構成は金属のみであると、近接場光と接触すると発熱しない恐れがあるので、細線4の先端に非金属膜406(例えばカーボン膜)をコーティングするようにしてもよい[図9(d)]。
【0070】
(実施の形態6)
図10により、本発明の実施の形態6に係るSPMプローブの構成について説明する。図10は本発明の実施の形態6に係るSPMプローブの構成を示す構成図である。
【0071】
図10において、SPMプローブは、SPMカンチレバー1、SPMカンチレバー1の自由端突起部0の頂点に付加する1本の近接場光源サイズと同程の径を持つ細線4と細線4の片側にコーティングした金属膜504(または均一に分布している金属ナノ粒子)、金属膜504の上端に設置した光センサ505から構成されている。
【0072】
各部分の測定する際の役割は以下のとおりである。
【0073】
SPMカンチレバー1は、一般的なAFM装置における役割と同様である。
【0074】
細線4はSPMプローブの探針として、被測定物(ここでは近接場光)と接触する。細線4は近接場光との相互作用によって、自身も近接場光が発生する。このとき、細線4に付いている金属膜504は光から励起され、表面プラズモンは細線4の上で形成され、金属膜504の上端まで伝搬される。最後に金属膜504の上端にある光センサ505で被測定近接場光による金属膜504での表面プラズモン共鳴の光情報を検出する。
【0075】
光センサ505での検出結果を計測するすることにより、近接場光を計測することが可能である。
【0076】
次に、図11により、本発明の実施の形態6に係るSPMプローブの製造方法について説明する。図11は本発明の実施の形態6に係るSPMプローブの製造方法を示す図である。
【0077】
まず、SPMカンチレバー1の自由端突起部0の頂点に実施の形態1と同様に細線4を付加する[図11(a)]。細線4の片側にスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、CVD法等(細線付のカンチレバーは原料物質を状態にあまりこだわらないと考えているため)によって、金属膜504[または均一分布の貴金属微粒子(貴金属微粒子がナノメータサイズで均一に分散されており、しかも隣接する各金属微粒子は10nm以下という最適な間隔で接している)]を形成する[図11(b)]。
【0078】
最後に金属膜504の上端に微小サイズの光センサ505を設置する[図11(c)]。
【0079】
(実施の形態7)
図12および図13により、本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた発光部検査装置の構成について説明する。図12は本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置の基本構成を示す図、図13は本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置の装置構成を示す図である。
【0080】
図12において、光テコ40と、SPMカンチレバー1からなるSPMプローブを用いて熱アシスト磁気ヘッド600の近接場光発光部602を計測し、AFM信号を出力することにより、近接場光を計測する。図12に示す例では、実施の形態1のSPMプローブを示しているが、実施の形態2〜6のSPMプローブを用いてもよい。
【0081】
図13において、近接場光発光部検査装置の装置構成はほぼAFMと同様で、主に光テコ40、SPMカンチレバー1からなるSPMプローブ、交流信号発信部1103(SPMカンチレバー1を加振するピエゾ1110に加振信号を送る)、ステージ1104、サンプルに発光させるレーザーダイオード1105、上記3箇所を駆動するためのコントローラ1106、SPMカンチレバー1の加振信号と光テコ40の信号を比較し、AFM信号を出力するロックインアンプ1107、熱または光センサの電位信号(または抵抗値に応じた電位信号)を検出する検出器1108、信号処理・保存および画像生成の役割等を担当する計算機1109から構成されている。
【0082】
計算機1109内には、AFMのイメージや、熱のイメージ(SThM)の情報などが格納され、計算機1109では、これらの情報などを用いて近接場光の計測を行う。
【0083】
次に、図14により、本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置による測定時の手順について説明する。図14は本発明の実施の形態7に係るSPMプローブを用いた近接場光発光部検査装置による測定時の手順を示す図である。
【0084】
まず、熱アシスト磁気ヘッドの近接場光発光部602から500nm程度離れところで、最初の1ラインとして、SPMカンチレバー1に振動させながら、AFMモードでスキャンし、近接場光発光部近傍の形状(高さ)情報を検出する。
【0085】
次に、1ライン目の結果に基づいて、SPMカンチレバー1を発光部の上方5〜10nmの高さにリフトさせる[図14(a)]。
【0086】
そして、AFMモード時の圧電素子における加振を止めて、残りの検査場所において、スキャンを行う[図14(b)]。前述の原理で、探針(細線4)が近接場光発光部602に接触することにより、SPMカンチレバー1に設置した熱センサ(または光センサ)で検出した細線4の先端に生じる熱または光情報を検出器1108で検出する[図14(c)]。
【0087】
計算機1109でデータ処理後の2次元的な熱または光の空間分布は図14(d)に示すようになる。ここで、X番目のスキャンライン(すなわち点線で表す(0、y1)平面)における測定結果の予想図は、図14(e)に示すようになる。
【0088】
これにより、熱アシスト磁気ヘッド600の近接場光発光部602から発生する近接場光の空間分布に対応させることが可能である。
【0089】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、近接場光(微小スケールエネルギー源)のエネルギーの計測を行うSPMプローブに関し、高分解能化が必要な装置やシステムなどに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
0…自由端突起部、1…SPMカンチレバー、2…熱抵抗、3…絶縁膜、4…細線、5、6…金属膜、20…熱電対、40…光テコ、50、60…電極、104…金属膜、105、108…電極、106…絶縁膜、107…金属膜、109…カーボン膜、204…金属膜、205…金属膜、206…絶縁膜、210、212…電極、304…固定接点、404、405…金属膜、406…非金属膜、407…絶縁膜、410、412…電極、504…金属膜、505…光センサ、600…熱アシスト磁気ヘッド、602…近接場光発光部、1103…交流信号発信部、1104…ステージ、1105…レーザーダイオード、1106…コントローラ、1107…ロックインアンプ、1108…検出器、1109…計算機、1110…ピエゾ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小スケールエネルギー源を検出するSPMプローブであって、
SPMカンチレバーと、
前記SPMカンチレバーの探針部に形成された熱抵抗と、
前記熱抵抗の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に形成された前記微小スケールエネルギー源を熱に変換する1本の細線とを備えたことを特徴とするSPMプローブ。
【請求項2】
微小スケールエネルギー源を検出するSPMプローブであって、
SPMカンチレバーと、
前記SPMカンチレバーの探針部に形成された熱電対と、
前記熱電対の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に形成された前記微小スケールエネルギー源を熱に変換する1本の細線とを備えたことを特徴とするSPMプローブ。
【請求項3】
微小スケールエネルギー源を検出するSPMプローブであって、
SPMカンチレバーと、
前記SPMカンチレバーの先端部に形成された光センサと、
前記SPMカンチレバーの探針部に形成された前記微小スケールエネルギー源を熱に変換する1本の細線と、
前記細線と前記光センサの間に形成された光を伝搬する金属膜または金属微粒子層とを備えたことを特徴とするSPMプローブ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のSPMプローブにおいて、
前記細線は、前記微小スケールエネルギー源と接触すると前記微小スケールエネルギー源を熱に変換する材料から構成されたことを特徴とするSPMプローブ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のSPMプローブにおいて、
前記絶縁膜は、熱伝導性が良い材料で形成されたことを特徴とするSPMプローブ。
【請求項6】
請求項3に記載のSPMプローブにおいて、
前記細線は、前記微小スケールエネルギー源と接触すると前記細線の先端に表面プラズモンが発生し、前記微小スケールエネルギー源を可視光に変換する材料で形成されたことを特徴とするSPMプローブ。
【請求項7】
請求項6に記載のSPMプローブにおいて、
前記金属膜または前記金属微粒子層は、前記細線の先端に発生した表面プラズモンとの共鳴が起こり、表面プラズモン共鳴の光情報を前記光センサに伝搬することを特徴とするSPMプローブ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のSPMプローブと、
前記SPMプローブの前記SPMカンチレバーの変位を測定する光テコと、
前記SPMカンチレバーに加振信号を送る交流信号発信部と、
前記光テコからの光テコ信号と前記加振信号を比較し、AFM信号を出力するロックインアンプと、
前記ロックインアンプの出力信号および前記SPMプローブからの出力信号に基づいて、前記微小スケールエネルギー源の空間分布を算出する計算機とを備えたことを特徴とする発光部検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【図14】
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