SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置
【課題】極力電波環境の悪化を避け、管制に必要なレベルまでパーシャル検出航空機の検出率を上げ、2つのレポート(モードA/CとモードSターゲットレポート)の出力を抑制又は防止する。
【解決手段】信号処理部4は通常はSSRモードSで運用し、パーシャル検出航空機がレーダの覆域又はセクタ等の所定アリアに存在することを自動検出した際、アラームを発出し、そのエリアに対しMIIPモード又はモードSモード等、パーシャル検出航空機からもモードA/C応答が得られるモノパルス形式の質問を含むモードで運用する。必要なエリア等においてのみ各航空機からモードA/C応答を得ることにより、パーシャル検出航空機の検出率を上げることができ、かつ、不要なモードA/C応答を最小限にすることができる。
【解決手段】信号処理部4は通常はSSRモードSで運用し、パーシャル検出航空機がレーダの覆域又はセクタ等の所定アリアに存在することを自動検出した際、アラームを発出し、そのエリアに対しMIIPモード又はモードSモード等、パーシャル検出航空機からもモードA/C応答が得られるモノパルス形式の質問を含むモードで運用する。必要なエリア等においてのみ各航空機からモードA/C応答を得ることにより、パーシャル検出航空機の検出率を上げることができ、かつ、不要なモードA/C応答を最小限にすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次監視レーダ装置に関し、特に二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内の民間航空用二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)では、モードS機能を利用した運用が開始された。
【0003】
図11は従来の通常のSSRモードSシステムの概要を示す図である。SSRモードSシステムは、航空機に質問信号を送信するレーダアンテナ、信号処理部4等を備えるSSRモードS地上局のSSR装置と、質問信号に応答信号を返送するモードS対応のトランスポンダでなる機上装置と、で構成される。
【0004】
図12はSSR装置の信号処理部の構成を示す図である。通常、SSR装置では、信号処理部として現用/予備等としての2系統(A-chとB-ch)の信号処理装置が装備されており、また、モードSの運用モードだけでなく、従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードという2種類のいずれかのモードを取ることができる機能を具備している。現在の運用形態では2系統の信号処理装置の両ch共に同じ図12(a)に示すモードSモード15、17又は図12(b)に示すモノパルスモード18、19の設定により運用している。
【0005】
図13はモードA/C専用一括呼出質問波形(P4パルス有)を示す図であり、図14はモードS専用一括/個別質問波形を示す図である。通常のSSRモードSシステムでは、SSRモードS地上局は図14に示すモードS質問と、図13に示すモードA/C質問(P4パルス有)を航空機に送信し、航空機に搭載されたモードS対応トランスポンダは図11に示すようにモードS質問のみに応答し、モードS非対応トランスポンダは、モードA/C質問(P4パルス有)のみに応答する。また、通常のSSRモードSシステムの運用では、モードS専用一括質問及びモードA/C専用一括質問を繰り返し行っており、必要に応じてモードS個別質問を行っている。
【0006】
図15はモードS応答信号波形を示す図であり、図16はモードA/C応答信号波形を示す図である。モードS航空機に搭載されているモードS対応トランスポンダは、図11に示すとおり、SSRのモードS一括質問もしくはモードS個別質問1に対し、図15に示すモードS応答2を返し、レーダはそれを取得することにより、信号処理部4にてその航空機のモードSターゲットレポート5を生成して出力し航空機を監視している。通常のモードS航空機であれば、レーダの覆域内では、ほぼ100%の確率で航空機を監視することができる(詳細は非特許文献1参照)。
【0007】
ところで、モードS機能を利用した二次監視レーダ(モードS二次監視レーダ)の運用開始後、航空機に搭載されているモードS対応及びモードA/Cのみ対応(モードS非対応)のトランスポンダが、モードS二次監視レーダ(SSR)からの質問信号(図13、図14)を正確に解読できず、間違って応答することがある航空機が存在することが分かっており、この問題への対処方法及び装置として、SSRモードS地上局での不良トランスポンダ応答除去システムが提案されている(特許文献1参照)。この方式は、モードA/C専用一括質問(P4パルス有り)に応答するモードS対応トランスポンダや、モードS専用一括質問に応答するモードA/Cのみ対応(モードS非対応)のトランスポンダの応答を除去するものである。
【0008】
しかし、モードS二次監視レーダの運用後、さらに、航空機に搭載されているモードS対応のトランスポンダがモードS一括質問もしくはモードS個別質問に対し、図15に示すような応答をせず、管制に十分な応答が得られない航空機が稀にあることが分かった。これをパーシャル検出航空機と呼び、航空管制運用上、航空機の監視が行えない可能性のある航空機として問題となっている。
【0009】
図17及び図18は航空機の応答による航跡を示す図である。本来のSSRモードSシステムの機能からみると、通常の航空機の応答をレーダが監視することの出来る範囲、すなわち覆域内で時系列に並べることにより作成できる航跡は、図17に示すように1本の連続線として描かれるのに対し、パーシャル検出航空機は覆域内において応答したり、応答しなかったりするため、その航跡は図18に示すように破線状となる。
【0010】
パーシャル検出航空機の原因は、航空機側の整備不良等、さまざまな理由が考えられているが、現段階では特定できていない。しかしながら、レーダ側では、これらの航空機を出来る限り検出し、管制運用上できる限り影響がないようにすることが要求される。
【0011】
ところが、このパーシャル検出航空機に対して、図19に示す従来型の質問方式であるモードA/C質問(SSRモードSシステムで使用しているモードA/C専用一括質問の図11に対し、P4パルスが無い)を行うと、問題なく図16に示すモードA/C応答があり、モードSに限らず、従来型のSSRシステムを含めて、SSRシステム側で検出することが出来ることがわかった。なお、図11に示すように、モードA/C専用一括質問3に対しては、通常のモードS対応トランスポンダを搭載している航空機、パーシャル検出航空機共、何の応答も返さない(図11の7)。
【0012】
そこで、図19に示す従来型のモードA/C質問を行うとパーシャル検出航空機から応答を得られるという性質を利用して、パーシャル検出航空機を監視するためにMIIP(Mode S Intermediate Interrogation Pattern)という方式が提唱されている。この方式は、SSRモードSシステムにおいて、通常のモードS一括/個別質問(図13、図14)に加え、P4パルスが有るモードA/C専用一括質問の代わりに、P4パルスが無いモードA/C質問(図19)を行うようにし、パーシャル検出航空機からモードS応答(図15)が無かった場合でも、モードA/C応答が得られることにより、航跡を連続線とすることができ、航空管制上では、通常の航空機と同様に扱うことが出来るようにしたものである。
【0013】
しかし、この方式では2つのターゲットレポートが出力されることがある。これは通常のモードS航空機及びパーシャル検出航空機から、モードS応答とモードA/C応答の両方の応答があった場合には、各応答を信号処理装置4にて処理し、その航空機のモードSターゲットレポート及びモードA/Cターゲットレポートを生成して出力し、2つの出力をコンバイナ(相関処理装置)で処理することにより、モードAコードの一致や検出位置の近似をキーにし、一つの航空機としてまとめ、モードSとモードA/Cターゲットレポート間で相関が取れた場合はモードSターゲットレポートを出力し、モードA/Cの応答しかなかった場合はモードA/Cターゲットレポートを出力し、更に、前者の場合に相関が取れなかった場合は両方のレポートを出力するように構成しているからである。
【0014】
【特許文献1】特開2005−345283号公報
【非特許文献1】MANUAL OF THE SECONDARY SURVEILLANCE RADAR (SSR) SYSTEMS, Third Edition, ICAO (International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関.)編集 Doc 9684-AN/951, 2004, P.1-1 Chapter 1 and Chapter 3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のように、通常のSSRモードSシステムは、モードS質問(図14)とモードA/C質問(P4パルス有)(図13)のみが使用され、モードS対応トランスポンダはモードS質問のみに応答し、それ以外のモードS非対応トランスポンダは、モードA/C質問(P4パルス有)のみに応答するという性質を利用したレーダである(図11)。モードSの個別質問応答の性質から、従来のモードA/Cのみの質問を行うレーダに比べて、レーダ及びトランスポンダ側の発射電波の数を減らすことが出来、電波環境をよくするという利点があった。
【0016】
しかし、パーシャル検出航空機の検出率を上げるために、MIIPという方式を採用すると、全てのモードS航空機に対して従来型のモードA/C質問(P4パルス無)(図19)を行って応答を得ることになり、電波環境は前述の図11の純粋なモードSシステム運用時から比べると悪化する、また、コンバイナでの相関が十分に行えず同じ航空機に対して2つのレポート(モードA/Cターゲットレポート、モードSターゲットレポート)を出力する可能性がある、という問題点がある。
【0017】
本発明の目的は、前述の課題を解決するものであり、極力電波環境の悪化を避け、管制に必要なレベルまでパーシャル検出航空機の検出率を上げることを可能とした二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の検視方法及び装置を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、同じ航空機の応答に対しコンバイナにより2つのレポート(モードA/Cターゲットレポート、モードSターゲットレポート)の出力を抑制又は防止することが可能な二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のパーシャル検出航空機の監視方法は、SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法であって、検出されたパーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在する場合にのみ、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換えることを特徴とし、前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内、又はレーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする。また、前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモード又はモノパルスモードであることを特徴とする。更に、パーシャル検出航空機の検出は、SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの所定エリア内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出し、パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内で検出された場合に、アラームを発生することを特徴とする。
【0020】
本発明のパーシャル検出航空機の監視装置は、SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視装置であって、パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在するか否かを検出する検出手段と、前記検出手段により前記所定エリア内にパーシャル検出航空機が検出された場合に、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換える切換手段と、を備え、前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内、又はレーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする。また、前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモード又はモノパルスモードであることを特徴とする。更に、前記検出手段は、SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの特定覆域内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出し、パーシャル検出航空機をレーダの所定エリア内で検出した場合に、アラームを発生することを特徴とする。
【0021】
より具体的には、本発明は、SSRモードSシステムの一方の信号処理装置(A−ch)をモードSモードで運用できるように設定し、他方の信号処理装置(B−ch)をMIIPモードで運用できるように設定し(例えば図1、図3)、通常はMIIPモードなしで動作させ(例えば図1(a))、パーシャル検出航空機を覆域、セクタ等の所定エリアで自動検出した場合(例えば図4)、パーシャル検出航空機が所定エリアに入ってきたことを知らせるアラーム(LED、及び、警報)を発出し、パーシャル検出航空機のいる前記所定エリアに対してのみMIIPモードを動作させ(例えば図1(b))、パーシャル検出航空機を通常機と同じように検出できるようにし、電波環境の悪化を避け、パーシャル検出航空機の検出率の向上を図るものである。
【0022】
また、本発明は、MIIPモードを使用しない別の発明として、SSRモードSシステムの一方の信号処理装置(A-ch)をモードSモードで運用できるようにし、他方の信号処理装置(B-ch)を従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードにて運用できるように設定し(例えば図9、10)、通常は、信号処理装置(A-ch)にて動作させ(例えば図9(a))、パーシャル検出航空機を覆域、セクタ等の所定エリアで自動検出した場合(例えば図4)、パーシャル検出航空機が所定エリアに入ってきたことを知らせるアラーム(LED、及び、警報)を発出し、信号処理装置(B-ch)に切換え、パーシャル検出航空機のいる前記所定エリアに対してのみモノパルスモードを動作させ(例えば図9(b))、モードS質問は行わずに、パーシャル検出航空機の検出率の向上を図るものである。
【発明の効果】
【0023】
第1の効果は、必要な場合のみにパーシャル検出航空機の検出にMIIPモードもしくはモノパルスモード等のモノパルス形式の質問を含むモードを利用するため、必要なモードS一括質問、及び/又は、モードA/C質問に対する応答を抑制することが出来、電波環境への影響を最小限にすることができる。
【0024】
その理由は、例えば全ての覆域でMIIPモードを実施すると、正常なモードSトランスポンダからの通常のモードS運用では不要であるモードA/C応答が増えて電波の利用率が上がるのに対し、本発明では、MIIPモードは必要なエリアのみに限定されるから、パーシャル検出航空機の検出率を上げることができ、かつ、不要なモードA/C応答を最小限にすることができるからである。
【0025】
また、例えば全ての時間でモノパルスモードを実施すると、モードSの機能を持ったトランスポンダの性能を活かすことができず、従来どおりのモードA/C応答数となり、モードSと比較して質問数が多く、さらに個別質問を行わないため、電波の利用率が上がるのに対し、本発明では必要な場合(時間)又はエリアのみモノパルスモードとすることにより、モードSの質問応答の性能を活かしつつ、パーシャル検出航空機の検出率を上げることができ、かつ、不要なモードA/C応答を最小限にすることができるからである。
【0026】
第2の効果は、コンバイナ処理9で、モードSターゲットレポート5とモードA/Cターゲットレポート8を誤相関する場合や相関不可となった場合に、必要な情報が管制官に伝わらなかったり、重複した情報が伝わる可能性があるが、本発明では、エリアを限定するために、これらの影響を最小限にとどめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の実施の形態)
次に、本発明のSSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1の構成)
図1は本実施の形態のSSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視システムを示す図である。図1(a)に示す通常動作時のSSRモードSモード(モードSモード)のシステムと図1(b)に示すMIIP(Mode S Intermediate Interrogation Pattern)モード動作時のMIIPモードのシステムとで構成される。
【0029】
本実施の形態のMIIPモードでは、従来のモードSモードのシステムでは使用しなかったP4パルスが無いモノパルス形式の質問(モードA/C質問(図19))とモードS一括質問/個別質問とを交互に行う方式が採用される。また、本システムによりモードS航空機もモードA/C応答することとなり、モードA/C質問とモードS質問の応答により生成されるモードSターゲットレポート5とモードA/Cターゲットレポート8は、コンバイナ9で結合し、1又は2つのターゲットレポートを生成して出力される。より具体的なシステム構成は以下のとおりである。
【0030】
通常動作時は、図1(a)に示すように、質問を受けて応答を折り返す動作6を行うモードS航空機に搭載されたモードS対応トランスポンダ、及び、同様に図示しない非モードS航空機に搭載されたモードS非対応トランスポンダと、各トランスポンダに送信するそれぞれモードS一括質問/個別質問1及びモードA/C質問(P4パルス有)3のパルス変調信号の生成処理、及び、モードS対応トランスポンダからの前記モードS一括質問/個別質問1に対するモードS応答2、モードS非対応トランスポンダからの前記モードA/C質問3に対する応答の受信処理を行い、モードSターゲットレポート5を出力するレーダの信号処理部4と、から構成される。
【0031】
MIIPモード動作時は、図1(b)に示すように、同様にモードS対応トランスポンダ、及び、モードS非対応トランスポンダと、各トランスポンダに送信するそれぞれモードS一括質問/個別質問1及びモードA/C質問(P4パルス無)10のパルス変調信号の生成処理、及び、モードS対応トランスポンダからの前記モードS一括質問/個別質問1に対するモードS応答2及びモードS対応トランスポンダ及びモードS非対応トランスポンダからのモードA/C質問(P4パルス無)10に対するモードA/C応答11の受信処理を行い、モードSターゲットレポート5、モードA/Cターゲットレポート8を出力するレーダの信号処理部4と、それらのターゲットレポート5、8からモードAコードや位置情報キーとして相関処理を行うコンバイナ処理装置9から構成される。
【0032】
信号処理部4は、パーシャル検出航空機の存在を常時監視し、パーシャル検出航空機が検出されるまでは図1(a)に示す通常動作のSSRモードSの運用とし、パーシャル検出航空機が検出されると図1(b)に示すMIIPモードの運用に切換えるように構成される。
【0033】
図2は現行質問繰り返しと本実施の形態の質問繰り返しの信号形式を示す図である。現行の質問繰り返しは、P2として示すように、モードS一括質問Sと、モードA専用一括質問(P4パルス有り)As及びモードC専用一括質問(P4パルス有り)Csであるのに対し、本実施の形態では、覆域内のパーシャル検出航空機に対し、P1として示すように、モードS一括質問Sと、モードA質問(P4パルス無し)A及びモードC質問(P4パルス無し)Cである。このため信号処理部4は、モードSモードとMIIPモードの2系統の信号処理を可能とし、パーシャル検出航空機の有無の監視及びその監視結果により前記2系統の信号処理の何れかで運用するように構成される。
【0034】
図3はかかる信号処理部の構成を示す図である。信号処理部4は、前述のモードSモードの処理を行う信号処理装置A-ch15と、前述のMIIPモードの処理を行う信号処理装置B-ch17と、両信号処理装置の切換え等を制御する制御監視装置16とでなり、信号処理装置A-ch15及び信号処理装置B-ch17が出力するターゲットレポート5、8をコンバイナ処理装置9に出力するように構成される。
【0035】
ここで各信号処理装置は、パーシャル航空機のモードSアドレスやエリア(覆域)等のデータベース等に基づき、アンテナ回転によるビームスキャン毎の航空機の各モードの質問応答によるパーシャル検出航空機の検出、一括質問応答のスキャンの頻度等によるパーシャル検出航空機の検出、個別質問応答から一括質問応答への切換え回数によるパーシャル検出航空機の検出等の検出手段としての機能、パーシャル航空機が所定エリア内に存在するか否かを制御監視装置16に通知する機能、及びアラームを表示、発出するアラーム機能等を備え、制御監視装置16は、信号処理装置からの前記通知によりモードSモードの信号処理装置A-ch15からMIIPモードの信号処理装置B-ch17への切換え、MIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う切換手段としての機能等を備えている。
【0036】
以下、信号処理装置が所定エリア等にパーシャル航空機が存在するか否かを所定のアルゴリズムにより判定し、制御監視装置16が2系統の信号処理装置A-ch15、B-ch17の何れかへの切換え制御を行う動作について説明する。
【0037】
(実施の形態1の動作)
本実施の形態1では、図1(a)に示すように通常MIIPモードなしで動作させる。レーダの信号処理部4の例えば信号処理装置A-ch15にて生成したモードS一括質問/個別質問1を送信し、航空機に搭載されているトランスポンダは、前記質問を受けてモードS応答2の折り返し動作6によりモードS応答2を送信する。信号処理装置A-ch15では、モードS応答2の受信処理を行い、モードSターゲットレポート5を生成、出力する。このときの覆域はレーダアンテナを中心とする通常モードの覆域円である。
【0038】
図4は、パーシャル航空機が存在するか否かを判定するフローチャートを示す図である。信号処理装置の受信処理において、常時行っている覆域内のパーシャル検出航空機の自動検知の処理を示すものであり、パーシャル検出航空機の3つの判定条件のステップ(S11、S12、S13)とパーシャル検出航空機であるか否かを確定するステップ(S14、S15)とからなる。
【0039】
第1の判定条件として、パーシャル検出航空機は特定のモードSアドレスのものであることが多いという経験則を利用し、パーシャル航空機が既知の場合に予めそのモードSアドレスをデータベース(DB)化し、モードS応答2から得られたモードSアドレスと前記データベースを比較し、データベース中のモードSアドレスと一致したか否かを判断し(S11)、一致した場合(YES)に、当該モードS応答を行った航空機をパーシャル検出航空機と判定し、パーシャル検出航空機が覆域内に現れたことを知らせるため、例えばLED表示、警報等のアラームを発生する(ステップS15)。
【0040】
次に、ステップS11の判断がNOの場合、第2の判定条件として、スキャン数と各航空機の一括質問応答数を計数し、一括質問応答のスキャンのnスキャンの中で、1つ以上の一括質問応答のあったスキャンがm(n,m:任意、n>m≧3)個以上続いたか否かを判断し(ステップS12)、m個以上続いた場合(YES)に、当該航空機をパーシャル検出航空機と判定するステップS15に移行する。
【0041】
更に、ステップS12の判断がNOの場合、第3の判定条件として、データベース化された有効な覆域内において、個別質問応答が継続していた航空機がオールコール応答状態に戻った回数がl(l≧1)回以上あったか否かを判断し(ステップS13)、l(l≧1)回以上あった場合(YES)に同様にステップS15に移行する。
【0042】
そして、ステップ15のアラーム時には、信号処理部4の信号処理装置A-ch15は、制御監視装置16に覆域内のパーシャル検出航空機の存在を通知し、制御監視装置16は覆域に対してMIIPモードを動作させる。
【0043】
図5は制御監視装置16の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。モードSモードの信号処理装置A-ch15がパーシャル検出航空機を検出(アラーム発生)すると(ステップS21)、制御監視装置16はモードSモードの信号処理装置A-ch15からMIIPモードの信号処理装置B-ch17への切換えを行い(ステップS22)。また、ステップS21で、パーシャル検出航空機が検出されない場合はMIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う(ステップS23)。
【0044】
図6は、レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。覆域14の全域に通常のモードSモードもしくはMIIPモードの何れかのモードが切換えて動作させた例であり、パーシャル検出航空機が存在する場合にも通常機と同じように検出率を上げることが可能である。
【0045】
また、本実施の形態の他の動作例として、レーダの覆域円の1ないし複数のセクタに対してのみモードSモードもしくはMIIPモードの何れかのモードを切換えて動作させることができる。
【0046】
図7は制御監視装置16のセクタ別の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。モードSモードの信号処理装置が所定の1ないし複数のセクタにおいてパーシャル検出航空機を検出(アラーム発生)すると(ステップS31)、質問タイミングが当該セクタ内か否かを判断し(ステップS32)、当該セクタ内の場合に、制御監視装置16はモードSモードの信号処理装置A-ch15からMIIPモードの信号処理装置B-ch17への切換えを行い(ステップS33)。また、ステップS31で、パーシャル検出航空機が検出されない場合及びステップS32で質問タイミングが前記セクタ内でない場合に、MIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う(ステップS34)。
【0047】
図8は、同じく、レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。覆域をセクタ別に分割し、MIIPモードを動作させるセクタ12、通常のモードSを動作させるセクタ13に分割して、モードを切換えて動作させた例であり、パーシャル検出航空機が存在するセクタ12内のみでMIIPモードによりその検出率を上げることを可能としている。
【0048】
本例では、信号処理装置は、アラーム時にパーシャル検出航空機の存在するセクタn(レーダに規定された11.25度の範囲等)、もしくは航空機がセクタnをまたぐことを考慮したセクタnの前後を含む範囲のセクタn−1,n,n+1に対してのみMIIPモードを動作させ、パーシャル検出航空機を通常機と同じように検出率を上げ、それ以外のセクタ13では変更無く通常のモードSを動作させるように構成すると好適である。
【0049】
以上のように、信号処理部4は、覆域、セクタ等の所定のエリア内にパーシャル検出航空機を検出すると、MIIPモードで運用するとともに当該パーシャル検出航空機の追尾を継続して行い、前記所定のエリア外になったことを判断したところで、元のモードに戻す動作を行う。つまり、信号処理装置A-ch15又はB-ch17は所定のエリア内でパーシャル検出航空機が存在しないことを判断すると、これを制御監視装置16に通知し、制御監視装置16はMIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う。
【0050】
本実施の形態1では、必要な場合のみにMIIPモードが動作するため、必要な一括質問に対する応答を抑制することが出来、電波環境への影響を最小限にすることができる。また、2つのターゲットレポートが出力されたとしてもMIIPモードが動作は限られたエリアでのみ行われることから、そのような状況は最小限に抑制することができる。
【0051】
(実施の形態2の構成)
本発明の第2の実施の形態2の二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置について説明する。
【0052】
図9は本発明の第2の実施の形態のシステムを示す図である。本システムは図1に示すシステム構成と同様であるが、図1(b)に示すパーシャル検出航空機の検出方式として、第1の実施の形態のMIIPモードに代えてモノパルスモードを使用するものである。
【0053】
図10は本実施の形態2の信号処理部の構成を示す図である。質問形式がモードSモードにて運用する設定のSSRモードSシステムの信号処理装置A-ch15、従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードにて運用する設定の信号処理装置B−ch19、及び、信号処理装置A-ch15と信号処理装置(B-ch)19の間で監視し、各信号処理装置A-ch15、B-ch19間の切換え制御を行う制御監視装置16から構成される。信号処理装置A-ch15、B-ch19のパーシャル検出航空機の存在及び不存在の自動検知等の機能及び制御監視装置16の切換え機能は第1の実施の形態と同様である。
【0054】
(実施の形態2の動作)
本実施の形態2では、SSR装置が装備する2系統(A-ch、B-ch)の信号処理装置A-ch15、B-ch19を利用し、運用モードとして片方でモードSモード(MIIPは利用しない)、もう一方で従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードとすることにより、パーシャル検出航空機の検出率を上げるものである。
【0055】
つまり、図10に示す信号処理装置A-ch15をモードS運用(MIIPは動作させない)とし、信号処理装置B-ch19をモノパルスモード運用に設定し、通常は、信号処理装置(A-ch)15で運用させ、信号処理装置(A-ch)15が第1の実施の形態で行った方法と同じように図4に示す処理によりパーシャル検出航空機を自動検知した場合、切換え制御を行う制御監視装置16にそれを通知し、制御監視装置16は信号処理装置(B-ch)19に切換える。モードSモードだけでなく、モノパルスモードという2種類のいずれかのモードを取ることができる機能の切換えによりパーシャル検出航空機を含め、全てのモードS航空機がモードA/C質問に応答することによりパーシャル検出航空機の検出率を上げることができる。
【0056】
本実施の形態2においても、信号処理部4は、モードSモードからモノパルスモードに切換え後、対象となるパーシャル検出航空機の追尾を行い、パーシャル検出航空機が覆域外になったことを判断すると、モノパルスモードから元のモードSモードに戻す切換え制御を行う。また、パーシャル検出航空機の検出及び切換え制御のエリアの態様も図5〜8と同様に設定、制御することが可能である。
【0057】
本実施の形態2においても、必要な場合のみにモノパルスモードとするため、必要な一括質問に対する応答を抑制することが出来、電波環境への影響を最小限にすることができる。更に、セクタ等の所定のエリアでのパーシャル検出航空機の検出後はモノパルスモードに切換ることにより、信号処理部4の出力はモードA/Cターゲットレポートのみとなり、複数のターゲットレポートの出力は回避される。
【0058】
(他の実施の形態)
以上の実施の形態では、パーシャル検出航空機の検出後、MIIP又はモノパルスモードに切換える例を示したが、本発明は従来型の質問方式であるP4パルスが無いモードA/C質問を行うことによりパーシャル検出航空機から問題なくモードA/C応答が得られるという性質により、モードSに限らず従来型のSSRシステムを含めて、SSRシステム側で検出することが出来るという知見に基づくものであるから、SSRモードSとMIIP又はモノパルスモードの組み合わせは、基本的にはSSRモードSとモノパルス形式の質問を含むモードとの組み合わせによるパーシャル検出航空機の検出及び監視を行うことが可能なシステムである。
【0059】
また、以上のモードの切り替えを行うレーダの所定のエリアとしては、レーダアンテナを中心とする円状領域である覆域円やセクタ領域等に限られるものではなく、前記領域内の所定の距離及び方位で規定された特定領域とすることが可能であることはいうまでもない。この場合、信号処理部4にはこれらのエリアの情報のデータベースを所有するように構成し、当該領域で信号処理装置の切換えを行うように構成される。
【0060】
更に、前記実施の形態では図4に示す処理によるパーシャル検出航空機の存在及び不存在の自動検知を信号処理装置A-ch、B-chが行う例を説明したが、制御監視装置16が動作中の信号処理装置を監視することで、検出手段として図4に示すパーシャル検出航空機の存在及び不存在の自動検知の処理を行うとともに、信号処理装置A-ch、B-ch間の切換えを行うように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、モードS質問を用いて運用する二次監視レーダに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態のSSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視システムを示す図である。
【図2】現行質問繰り返しと本実施の形態の質問繰り返しの信号形式を示す図である。
【図3】信号処理部の構成を示す図である。
【図4】パーシャル航空機の自動検出の処理フローチャートを示す図である。
【図5】制御監視装置16の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。
【図6】レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。
【図7】制御監視装置16のセクタ別の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。
【図8】レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の監視システムを示す図である。
【図10】第2の実施の形態の信号処理部の構成を示す図である。
【図11】従来の通常のSSRモードSシステムの概要を示す図である。
【図12】SSR装置の信号処理部の構成を示す図である。
【図13】モードA/C専用一括呼出質問波形(P4パルス有)を示す図である。
【図14】モードS専用一括/個別質問波形を示す図である。
【図15】モードS応答信号波形を示す図である。
【図16】モードA/C応答信号波形を示す図である。
【図17】航空機の正常応答による航跡例(レーダを中心とする覆域円)を示す図である。
【図18】パーシャル検出航空機の異常応答による航跡例を示す図である。
【図19】従来型の質問方式であるモードA/C質問波形を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 モードS一括/個別質問
2 モードS応答
3 モードA/C専用一括質問(P4パルス有)
4 信号処理部
5 モードSターゲットレポート
6 航空機のトランスポンダの折り返し応答
7 航空機のトランスポンダの無応答
8 モードA/Cターゲットレポート
9 コンバイナ処理(相関処理)装置
10 モードA/C質問(P4パルス無)
11 モードA/C応答
12 MIIPモードで動作するセクタ
13 通常モードで動作する覆域
14 通常モード又はMIIPモードのいずれかで動作する覆域
P1 MIIPによる一括質問の繰り返し例
P2 通常のモードS動作時の一括質問の繰り返し例
15 モードSモードで動作する信号処理装置(A-ch)
16 制御監視装置
17 モードSモードで動作する信号処理装置(B-ch)
18 モノパルスモードで動作する信号処理装置(A-ch)
19 モノパルスモードで動作する信号処理装置(B-ch)
【技術分野】
【0001】
本発明は二次監視レーダ装置に関し、特に二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内の民間航空用二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)では、モードS機能を利用した運用が開始された。
【0003】
図11は従来の通常のSSRモードSシステムの概要を示す図である。SSRモードSシステムは、航空機に質問信号を送信するレーダアンテナ、信号処理部4等を備えるSSRモードS地上局のSSR装置と、質問信号に応答信号を返送するモードS対応のトランスポンダでなる機上装置と、で構成される。
【0004】
図12はSSR装置の信号処理部の構成を示す図である。通常、SSR装置では、信号処理部として現用/予備等としての2系統(A-chとB-ch)の信号処理装置が装備されており、また、モードSの運用モードだけでなく、従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードという2種類のいずれかのモードを取ることができる機能を具備している。現在の運用形態では2系統の信号処理装置の両ch共に同じ図12(a)に示すモードSモード15、17又は図12(b)に示すモノパルスモード18、19の設定により運用している。
【0005】
図13はモードA/C専用一括呼出質問波形(P4パルス有)を示す図であり、図14はモードS専用一括/個別質問波形を示す図である。通常のSSRモードSシステムでは、SSRモードS地上局は図14に示すモードS質問と、図13に示すモードA/C質問(P4パルス有)を航空機に送信し、航空機に搭載されたモードS対応トランスポンダは図11に示すようにモードS質問のみに応答し、モードS非対応トランスポンダは、モードA/C質問(P4パルス有)のみに応答する。また、通常のSSRモードSシステムの運用では、モードS専用一括質問及びモードA/C専用一括質問を繰り返し行っており、必要に応じてモードS個別質問を行っている。
【0006】
図15はモードS応答信号波形を示す図であり、図16はモードA/C応答信号波形を示す図である。モードS航空機に搭載されているモードS対応トランスポンダは、図11に示すとおり、SSRのモードS一括質問もしくはモードS個別質問1に対し、図15に示すモードS応答2を返し、レーダはそれを取得することにより、信号処理部4にてその航空機のモードSターゲットレポート5を生成して出力し航空機を監視している。通常のモードS航空機であれば、レーダの覆域内では、ほぼ100%の確率で航空機を監視することができる(詳細は非特許文献1参照)。
【0007】
ところで、モードS機能を利用した二次監視レーダ(モードS二次監視レーダ)の運用開始後、航空機に搭載されているモードS対応及びモードA/Cのみ対応(モードS非対応)のトランスポンダが、モードS二次監視レーダ(SSR)からの質問信号(図13、図14)を正確に解読できず、間違って応答することがある航空機が存在することが分かっており、この問題への対処方法及び装置として、SSRモードS地上局での不良トランスポンダ応答除去システムが提案されている(特許文献1参照)。この方式は、モードA/C専用一括質問(P4パルス有り)に応答するモードS対応トランスポンダや、モードS専用一括質問に応答するモードA/Cのみ対応(モードS非対応)のトランスポンダの応答を除去するものである。
【0008】
しかし、モードS二次監視レーダの運用後、さらに、航空機に搭載されているモードS対応のトランスポンダがモードS一括質問もしくはモードS個別質問に対し、図15に示すような応答をせず、管制に十分な応答が得られない航空機が稀にあることが分かった。これをパーシャル検出航空機と呼び、航空管制運用上、航空機の監視が行えない可能性のある航空機として問題となっている。
【0009】
図17及び図18は航空機の応答による航跡を示す図である。本来のSSRモードSシステムの機能からみると、通常の航空機の応答をレーダが監視することの出来る範囲、すなわち覆域内で時系列に並べることにより作成できる航跡は、図17に示すように1本の連続線として描かれるのに対し、パーシャル検出航空機は覆域内において応答したり、応答しなかったりするため、その航跡は図18に示すように破線状となる。
【0010】
パーシャル検出航空機の原因は、航空機側の整備不良等、さまざまな理由が考えられているが、現段階では特定できていない。しかしながら、レーダ側では、これらの航空機を出来る限り検出し、管制運用上できる限り影響がないようにすることが要求される。
【0011】
ところが、このパーシャル検出航空機に対して、図19に示す従来型の質問方式であるモードA/C質問(SSRモードSシステムで使用しているモードA/C専用一括質問の図11に対し、P4パルスが無い)を行うと、問題なく図16に示すモードA/C応答があり、モードSに限らず、従来型のSSRシステムを含めて、SSRシステム側で検出することが出来ることがわかった。なお、図11に示すように、モードA/C専用一括質問3に対しては、通常のモードS対応トランスポンダを搭載している航空機、パーシャル検出航空機共、何の応答も返さない(図11の7)。
【0012】
そこで、図19に示す従来型のモードA/C質問を行うとパーシャル検出航空機から応答を得られるという性質を利用して、パーシャル検出航空機を監視するためにMIIP(Mode S Intermediate Interrogation Pattern)という方式が提唱されている。この方式は、SSRモードSシステムにおいて、通常のモードS一括/個別質問(図13、図14)に加え、P4パルスが有るモードA/C専用一括質問の代わりに、P4パルスが無いモードA/C質問(図19)を行うようにし、パーシャル検出航空機からモードS応答(図15)が無かった場合でも、モードA/C応答が得られることにより、航跡を連続線とすることができ、航空管制上では、通常の航空機と同様に扱うことが出来るようにしたものである。
【0013】
しかし、この方式では2つのターゲットレポートが出力されることがある。これは通常のモードS航空機及びパーシャル検出航空機から、モードS応答とモードA/C応答の両方の応答があった場合には、各応答を信号処理装置4にて処理し、その航空機のモードSターゲットレポート及びモードA/Cターゲットレポートを生成して出力し、2つの出力をコンバイナ(相関処理装置)で処理することにより、モードAコードの一致や検出位置の近似をキーにし、一つの航空機としてまとめ、モードSとモードA/Cターゲットレポート間で相関が取れた場合はモードSターゲットレポートを出力し、モードA/Cの応答しかなかった場合はモードA/Cターゲットレポートを出力し、更に、前者の場合に相関が取れなかった場合は両方のレポートを出力するように構成しているからである。
【0014】
【特許文献1】特開2005−345283号公報
【非特許文献1】MANUAL OF THE SECONDARY SURVEILLANCE RADAR (SSR) SYSTEMS, Third Edition, ICAO (International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関.)編集 Doc 9684-AN/951, 2004, P.1-1 Chapter 1 and Chapter 3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のように、通常のSSRモードSシステムは、モードS質問(図14)とモードA/C質問(P4パルス有)(図13)のみが使用され、モードS対応トランスポンダはモードS質問のみに応答し、それ以外のモードS非対応トランスポンダは、モードA/C質問(P4パルス有)のみに応答するという性質を利用したレーダである(図11)。モードSの個別質問応答の性質から、従来のモードA/Cのみの質問を行うレーダに比べて、レーダ及びトランスポンダ側の発射電波の数を減らすことが出来、電波環境をよくするという利点があった。
【0016】
しかし、パーシャル検出航空機の検出率を上げるために、MIIPという方式を採用すると、全てのモードS航空機に対して従来型のモードA/C質問(P4パルス無)(図19)を行って応答を得ることになり、電波環境は前述の図11の純粋なモードSシステム運用時から比べると悪化する、また、コンバイナでの相関が十分に行えず同じ航空機に対して2つのレポート(モードA/Cターゲットレポート、モードSターゲットレポート)を出力する可能性がある、という問題点がある。
【0017】
本発明の目的は、前述の課題を解決するものであり、極力電波環境の悪化を避け、管制に必要なレベルまでパーシャル検出航空機の検出率を上げることを可能とした二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の検視方法及び装置を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、同じ航空機の応答に対しコンバイナにより2つのレポート(モードA/Cターゲットレポート、モードSターゲットレポート)の出力を抑制又は防止することが可能な二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のパーシャル検出航空機の監視方法は、SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法であって、検出されたパーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在する場合にのみ、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換えることを特徴とし、前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内、又はレーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする。また、前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモード又はモノパルスモードであることを特徴とする。更に、パーシャル検出航空機の検出は、SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの所定エリア内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出し、パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内で検出された場合に、アラームを発生することを特徴とする。
【0020】
本発明のパーシャル検出航空機の監視装置は、SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視装置であって、パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在するか否かを検出する検出手段と、前記検出手段により前記所定エリア内にパーシャル検出航空機が検出された場合に、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換える切換手段と、を備え、前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内、又はレーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする。また、前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモード又はモノパルスモードであることを特徴とする。更に、前記検出手段は、SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの特定覆域内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出し、パーシャル検出航空機をレーダの所定エリア内で検出した場合に、アラームを発生することを特徴とする。
【0021】
より具体的には、本発明は、SSRモードSシステムの一方の信号処理装置(A−ch)をモードSモードで運用できるように設定し、他方の信号処理装置(B−ch)をMIIPモードで運用できるように設定し(例えば図1、図3)、通常はMIIPモードなしで動作させ(例えば図1(a))、パーシャル検出航空機を覆域、セクタ等の所定エリアで自動検出した場合(例えば図4)、パーシャル検出航空機が所定エリアに入ってきたことを知らせるアラーム(LED、及び、警報)を発出し、パーシャル検出航空機のいる前記所定エリアに対してのみMIIPモードを動作させ(例えば図1(b))、パーシャル検出航空機を通常機と同じように検出できるようにし、電波環境の悪化を避け、パーシャル検出航空機の検出率の向上を図るものである。
【0022】
また、本発明は、MIIPモードを使用しない別の発明として、SSRモードSシステムの一方の信号処理装置(A-ch)をモードSモードで運用できるようにし、他方の信号処理装置(B-ch)を従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードにて運用できるように設定し(例えば図9、10)、通常は、信号処理装置(A-ch)にて動作させ(例えば図9(a))、パーシャル検出航空機を覆域、セクタ等の所定エリアで自動検出した場合(例えば図4)、パーシャル検出航空機が所定エリアに入ってきたことを知らせるアラーム(LED、及び、警報)を発出し、信号処理装置(B-ch)に切換え、パーシャル検出航空機のいる前記所定エリアに対してのみモノパルスモードを動作させ(例えば図9(b))、モードS質問は行わずに、パーシャル検出航空機の検出率の向上を図るものである。
【発明の効果】
【0023】
第1の効果は、必要な場合のみにパーシャル検出航空機の検出にMIIPモードもしくはモノパルスモード等のモノパルス形式の質問を含むモードを利用するため、必要なモードS一括質問、及び/又は、モードA/C質問に対する応答を抑制することが出来、電波環境への影響を最小限にすることができる。
【0024】
その理由は、例えば全ての覆域でMIIPモードを実施すると、正常なモードSトランスポンダからの通常のモードS運用では不要であるモードA/C応答が増えて電波の利用率が上がるのに対し、本発明では、MIIPモードは必要なエリアのみに限定されるから、パーシャル検出航空機の検出率を上げることができ、かつ、不要なモードA/C応答を最小限にすることができるからである。
【0025】
また、例えば全ての時間でモノパルスモードを実施すると、モードSの機能を持ったトランスポンダの性能を活かすことができず、従来どおりのモードA/C応答数となり、モードSと比較して質問数が多く、さらに個別質問を行わないため、電波の利用率が上がるのに対し、本発明では必要な場合(時間)又はエリアのみモノパルスモードとすることにより、モードSの質問応答の性能を活かしつつ、パーシャル検出航空機の検出率を上げることができ、かつ、不要なモードA/C応答を最小限にすることができるからである。
【0026】
第2の効果は、コンバイナ処理9で、モードSターゲットレポート5とモードA/Cターゲットレポート8を誤相関する場合や相関不可となった場合に、必要な情報が管制官に伝わらなかったり、重複した情報が伝わる可能性があるが、本発明では、エリアを限定するために、これらの影響を最小限にとどめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の実施の形態)
次に、本発明のSSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1の構成)
図1は本実施の形態のSSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視システムを示す図である。図1(a)に示す通常動作時のSSRモードSモード(モードSモード)のシステムと図1(b)に示すMIIP(Mode S Intermediate Interrogation Pattern)モード動作時のMIIPモードのシステムとで構成される。
【0029】
本実施の形態のMIIPモードでは、従来のモードSモードのシステムでは使用しなかったP4パルスが無いモノパルス形式の質問(モードA/C質問(図19))とモードS一括質問/個別質問とを交互に行う方式が採用される。また、本システムによりモードS航空機もモードA/C応答することとなり、モードA/C質問とモードS質問の応答により生成されるモードSターゲットレポート5とモードA/Cターゲットレポート8は、コンバイナ9で結合し、1又は2つのターゲットレポートを生成して出力される。より具体的なシステム構成は以下のとおりである。
【0030】
通常動作時は、図1(a)に示すように、質問を受けて応答を折り返す動作6を行うモードS航空機に搭載されたモードS対応トランスポンダ、及び、同様に図示しない非モードS航空機に搭載されたモードS非対応トランスポンダと、各トランスポンダに送信するそれぞれモードS一括質問/個別質問1及びモードA/C質問(P4パルス有)3のパルス変調信号の生成処理、及び、モードS対応トランスポンダからの前記モードS一括質問/個別質問1に対するモードS応答2、モードS非対応トランスポンダからの前記モードA/C質問3に対する応答の受信処理を行い、モードSターゲットレポート5を出力するレーダの信号処理部4と、から構成される。
【0031】
MIIPモード動作時は、図1(b)に示すように、同様にモードS対応トランスポンダ、及び、モードS非対応トランスポンダと、各トランスポンダに送信するそれぞれモードS一括質問/個別質問1及びモードA/C質問(P4パルス無)10のパルス変調信号の生成処理、及び、モードS対応トランスポンダからの前記モードS一括質問/個別質問1に対するモードS応答2及びモードS対応トランスポンダ及びモードS非対応トランスポンダからのモードA/C質問(P4パルス無)10に対するモードA/C応答11の受信処理を行い、モードSターゲットレポート5、モードA/Cターゲットレポート8を出力するレーダの信号処理部4と、それらのターゲットレポート5、8からモードAコードや位置情報キーとして相関処理を行うコンバイナ処理装置9から構成される。
【0032】
信号処理部4は、パーシャル検出航空機の存在を常時監視し、パーシャル検出航空機が検出されるまでは図1(a)に示す通常動作のSSRモードSの運用とし、パーシャル検出航空機が検出されると図1(b)に示すMIIPモードの運用に切換えるように構成される。
【0033】
図2は現行質問繰り返しと本実施の形態の質問繰り返しの信号形式を示す図である。現行の質問繰り返しは、P2として示すように、モードS一括質問Sと、モードA専用一括質問(P4パルス有り)As及びモードC専用一括質問(P4パルス有り)Csであるのに対し、本実施の形態では、覆域内のパーシャル検出航空機に対し、P1として示すように、モードS一括質問Sと、モードA質問(P4パルス無し)A及びモードC質問(P4パルス無し)Cである。このため信号処理部4は、モードSモードとMIIPモードの2系統の信号処理を可能とし、パーシャル検出航空機の有無の監視及びその監視結果により前記2系統の信号処理の何れかで運用するように構成される。
【0034】
図3はかかる信号処理部の構成を示す図である。信号処理部4は、前述のモードSモードの処理を行う信号処理装置A-ch15と、前述のMIIPモードの処理を行う信号処理装置B-ch17と、両信号処理装置の切換え等を制御する制御監視装置16とでなり、信号処理装置A-ch15及び信号処理装置B-ch17が出力するターゲットレポート5、8をコンバイナ処理装置9に出力するように構成される。
【0035】
ここで各信号処理装置は、パーシャル航空機のモードSアドレスやエリア(覆域)等のデータベース等に基づき、アンテナ回転によるビームスキャン毎の航空機の各モードの質問応答によるパーシャル検出航空機の検出、一括質問応答のスキャンの頻度等によるパーシャル検出航空機の検出、個別質問応答から一括質問応答への切換え回数によるパーシャル検出航空機の検出等の検出手段としての機能、パーシャル航空機が所定エリア内に存在するか否かを制御監視装置16に通知する機能、及びアラームを表示、発出するアラーム機能等を備え、制御監視装置16は、信号処理装置からの前記通知によりモードSモードの信号処理装置A-ch15からMIIPモードの信号処理装置B-ch17への切換え、MIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う切換手段としての機能等を備えている。
【0036】
以下、信号処理装置が所定エリア等にパーシャル航空機が存在するか否かを所定のアルゴリズムにより判定し、制御監視装置16が2系統の信号処理装置A-ch15、B-ch17の何れかへの切換え制御を行う動作について説明する。
【0037】
(実施の形態1の動作)
本実施の形態1では、図1(a)に示すように通常MIIPモードなしで動作させる。レーダの信号処理部4の例えば信号処理装置A-ch15にて生成したモードS一括質問/個別質問1を送信し、航空機に搭載されているトランスポンダは、前記質問を受けてモードS応答2の折り返し動作6によりモードS応答2を送信する。信号処理装置A-ch15では、モードS応答2の受信処理を行い、モードSターゲットレポート5を生成、出力する。このときの覆域はレーダアンテナを中心とする通常モードの覆域円である。
【0038】
図4は、パーシャル航空機が存在するか否かを判定するフローチャートを示す図である。信号処理装置の受信処理において、常時行っている覆域内のパーシャル検出航空機の自動検知の処理を示すものであり、パーシャル検出航空機の3つの判定条件のステップ(S11、S12、S13)とパーシャル検出航空機であるか否かを確定するステップ(S14、S15)とからなる。
【0039】
第1の判定条件として、パーシャル検出航空機は特定のモードSアドレスのものであることが多いという経験則を利用し、パーシャル航空機が既知の場合に予めそのモードSアドレスをデータベース(DB)化し、モードS応答2から得られたモードSアドレスと前記データベースを比較し、データベース中のモードSアドレスと一致したか否かを判断し(S11)、一致した場合(YES)に、当該モードS応答を行った航空機をパーシャル検出航空機と判定し、パーシャル検出航空機が覆域内に現れたことを知らせるため、例えばLED表示、警報等のアラームを発生する(ステップS15)。
【0040】
次に、ステップS11の判断がNOの場合、第2の判定条件として、スキャン数と各航空機の一括質問応答数を計数し、一括質問応答のスキャンのnスキャンの中で、1つ以上の一括質問応答のあったスキャンがm(n,m:任意、n>m≧3)個以上続いたか否かを判断し(ステップS12)、m個以上続いた場合(YES)に、当該航空機をパーシャル検出航空機と判定するステップS15に移行する。
【0041】
更に、ステップS12の判断がNOの場合、第3の判定条件として、データベース化された有効な覆域内において、個別質問応答が継続していた航空機がオールコール応答状態に戻った回数がl(l≧1)回以上あったか否かを判断し(ステップS13)、l(l≧1)回以上あった場合(YES)に同様にステップS15に移行する。
【0042】
そして、ステップ15のアラーム時には、信号処理部4の信号処理装置A-ch15は、制御監視装置16に覆域内のパーシャル検出航空機の存在を通知し、制御監視装置16は覆域に対してMIIPモードを動作させる。
【0043】
図5は制御監視装置16の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。モードSモードの信号処理装置A-ch15がパーシャル検出航空機を検出(アラーム発生)すると(ステップS21)、制御監視装置16はモードSモードの信号処理装置A-ch15からMIIPモードの信号処理装置B-ch17への切換えを行い(ステップS22)。また、ステップS21で、パーシャル検出航空機が検出されない場合はMIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う(ステップS23)。
【0044】
図6は、レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。覆域14の全域に通常のモードSモードもしくはMIIPモードの何れかのモードが切換えて動作させた例であり、パーシャル検出航空機が存在する場合にも通常機と同じように検出率を上げることが可能である。
【0045】
また、本実施の形態の他の動作例として、レーダの覆域円の1ないし複数のセクタに対してのみモードSモードもしくはMIIPモードの何れかのモードを切換えて動作させることができる。
【0046】
図7は制御監視装置16のセクタ別の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。モードSモードの信号処理装置が所定の1ないし複数のセクタにおいてパーシャル検出航空機を検出(アラーム発生)すると(ステップS31)、質問タイミングが当該セクタ内か否かを判断し(ステップS32)、当該セクタ内の場合に、制御監視装置16はモードSモードの信号処理装置A-ch15からMIIPモードの信号処理装置B-ch17への切換えを行い(ステップS33)。また、ステップS31で、パーシャル検出航空機が検出されない場合及びステップS32で質問タイミングが前記セクタ内でない場合に、MIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う(ステップS34)。
【0047】
図8は、同じく、レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。覆域をセクタ別に分割し、MIIPモードを動作させるセクタ12、通常のモードSを動作させるセクタ13に分割して、モードを切換えて動作させた例であり、パーシャル検出航空機が存在するセクタ12内のみでMIIPモードによりその検出率を上げることを可能としている。
【0048】
本例では、信号処理装置は、アラーム時にパーシャル検出航空機の存在するセクタn(レーダに規定された11.25度の範囲等)、もしくは航空機がセクタnをまたぐことを考慮したセクタnの前後を含む範囲のセクタn−1,n,n+1に対してのみMIIPモードを動作させ、パーシャル検出航空機を通常機と同じように検出率を上げ、それ以外のセクタ13では変更無く通常のモードSを動作させるように構成すると好適である。
【0049】
以上のように、信号処理部4は、覆域、セクタ等の所定のエリア内にパーシャル検出航空機を検出すると、MIIPモードで運用するとともに当該パーシャル検出航空機の追尾を継続して行い、前記所定のエリア外になったことを判断したところで、元のモードに戻す動作を行う。つまり、信号処理装置A-ch15又はB-ch17は所定のエリア内でパーシャル検出航空機が存在しないことを判断すると、これを制御監視装置16に通知し、制御監視装置16はMIIPモードの信号処理装置B-ch17からモードSモードの信号処理装置A-ch15への切換えを行う。
【0050】
本実施の形態1では、必要な場合のみにMIIPモードが動作するため、必要な一括質問に対する応答を抑制することが出来、電波環境への影響を最小限にすることができる。また、2つのターゲットレポートが出力されたとしてもMIIPモードが動作は限られたエリアでのみ行われることから、そのような状況は最小限に抑制することができる。
【0051】
(実施の形態2の構成)
本発明の第2の実施の形態2の二次監視レーダ装置モードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法及び装置について説明する。
【0052】
図9は本発明の第2の実施の形態のシステムを示す図である。本システムは図1に示すシステム構成と同様であるが、図1(b)に示すパーシャル検出航空機の検出方式として、第1の実施の形態のMIIPモードに代えてモノパルスモードを使用するものである。
【0053】
図10は本実施の形態2の信号処理部の構成を示す図である。質問形式がモードSモードにて運用する設定のSSRモードSシステムの信号処理装置A-ch15、従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードにて運用する設定の信号処理装置B−ch19、及び、信号処理装置A-ch15と信号処理装置(B-ch)19の間で監視し、各信号処理装置A-ch15、B-ch19間の切換え制御を行う制御監視装置16から構成される。信号処理装置A-ch15、B-ch19のパーシャル検出航空機の存在及び不存在の自動検知等の機能及び制御監視装置16の切換え機能は第1の実施の形態と同様である。
【0054】
(実施の形態2の動作)
本実施の形態2では、SSR装置が装備する2系統(A-ch、B-ch)の信号処理装置A-ch15、B-ch19を利用し、運用モードとして片方でモードSモード(MIIPは利用しない)、もう一方で従来型のモードA/C質問(P4パルス無)のみを行うモノパルスモードとすることにより、パーシャル検出航空機の検出率を上げるものである。
【0055】
つまり、図10に示す信号処理装置A-ch15をモードS運用(MIIPは動作させない)とし、信号処理装置B-ch19をモノパルスモード運用に設定し、通常は、信号処理装置(A-ch)15で運用させ、信号処理装置(A-ch)15が第1の実施の形態で行った方法と同じように図4に示す処理によりパーシャル検出航空機を自動検知した場合、切換え制御を行う制御監視装置16にそれを通知し、制御監視装置16は信号処理装置(B-ch)19に切換える。モードSモードだけでなく、モノパルスモードという2種類のいずれかのモードを取ることができる機能の切換えによりパーシャル検出航空機を含め、全てのモードS航空機がモードA/C質問に応答することによりパーシャル検出航空機の検出率を上げることができる。
【0056】
本実施の形態2においても、信号処理部4は、モードSモードからモノパルスモードに切換え後、対象となるパーシャル検出航空機の追尾を行い、パーシャル検出航空機が覆域外になったことを判断すると、モノパルスモードから元のモードSモードに戻す切換え制御を行う。また、パーシャル検出航空機の検出及び切換え制御のエリアの態様も図5〜8と同様に設定、制御することが可能である。
【0057】
本実施の形態2においても、必要な場合のみにモノパルスモードとするため、必要な一括質問に対する応答を抑制することが出来、電波環境への影響を最小限にすることができる。更に、セクタ等の所定のエリアでのパーシャル検出航空機の検出後はモノパルスモードに切換ることにより、信号処理部4の出力はモードA/Cターゲットレポートのみとなり、複数のターゲットレポートの出力は回避される。
【0058】
(他の実施の形態)
以上の実施の形態では、パーシャル検出航空機の検出後、MIIP又はモノパルスモードに切換える例を示したが、本発明は従来型の質問方式であるP4パルスが無いモードA/C質問を行うことによりパーシャル検出航空機から問題なくモードA/C応答が得られるという性質により、モードSに限らず従来型のSSRシステムを含めて、SSRシステム側で検出することが出来るという知見に基づくものであるから、SSRモードSとMIIP又はモノパルスモードの組み合わせは、基本的にはSSRモードSとモノパルス形式の質問を含むモードとの組み合わせによるパーシャル検出航空機の検出及び監視を行うことが可能なシステムである。
【0059】
また、以上のモードの切り替えを行うレーダの所定のエリアとしては、レーダアンテナを中心とする円状領域である覆域円やセクタ領域等に限られるものではなく、前記領域内の所定の距離及び方位で規定された特定領域とすることが可能であることはいうまでもない。この場合、信号処理部4にはこれらのエリアの情報のデータベースを所有するように構成し、当該領域で信号処理装置の切換えを行うように構成される。
【0060】
更に、前記実施の形態では図4に示す処理によるパーシャル検出航空機の存在及び不存在の自動検知を信号処理装置A-ch、B-chが行う例を説明したが、制御監視装置16が動作中の信号処理装置を監視することで、検出手段として図4に示すパーシャル検出航空機の存在及び不存在の自動検知の処理を行うとともに、信号処理装置A-ch、B-ch間の切換えを行うように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、モードS質問を用いて運用する二次監視レーダに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態のSSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視システムを示す図である。
【図2】現行質問繰り返しと本実施の形態の質問繰り返しの信号形式を示す図である。
【図3】信号処理部の構成を示す図である。
【図4】パーシャル航空機の自動検出の処理フローチャートを示す図である。
【図5】制御監視装置16の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。
【図6】レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。
【図7】制御監視装置16のセクタ別の切換え制御の処理フローチャートを示す図である。
【図8】レーダを中心にして真上から見た覆域円と運用モードを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の監視システムを示す図である。
【図10】第2の実施の形態の信号処理部の構成を示す図である。
【図11】従来の通常のSSRモードSシステムの概要を示す図である。
【図12】SSR装置の信号処理部の構成を示す図である。
【図13】モードA/C専用一括呼出質問波形(P4パルス有)を示す図である。
【図14】モードS専用一括/個別質問波形を示す図である。
【図15】モードS応答信号波形を示す図である。
【図16】モードA/C応答信号波形を示す図である。
【図17】航空機の正常応答による航跡例(レーダを中心とする覆域円)を示す図である。
【図18】パーシャル検出航空機の異常応答による航跡例を示す図である。
【図19】従来型の質問方式であるモードA/C質問波形を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 モードS一括/個別質問
2 モードS応答
3 モードA/C専用一括質問(P4パルス有)
4 信号処理部
5 モードSターゲットレポート
6 航空機のトランスポンダの折り返し応答
7 航空機のトランスポンダの無応答
8 モードA/Cターゲットレポート
9 コンバイナ処理(相関処理)装置
10 モードA/C質問(P4パルス無)
11 モードA/C応答
12 MIIPモードで動作するセクタ
13 通常モードで動作する覆域
14 通常モード又はMIIPモードのいずれかで動作する覆域
P1 MIIPによる一括質問の繰り返し例
P2 通常のモードS動作時の一括質問の繰り返し例
15 モードSモードで動作する信号処理装置(A-ch)
16 制御監視装置
17 モードSモードで動作する信号処理装置(B-ch)
18 モノパルスモードで動作する信号処理装置(A-ch)
19 モノパルスモードで動作する信号処理装置(B-ch)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法であって、検出されたパーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在する場合にのみ、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換えることを特徴とするパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項2】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内であることを特徴とする請求項1記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項3】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする請求項1記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項4】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモードであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項5】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、モノパルスモードであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項6】
SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの所定エリア内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出することを特徴とする請求項1ないし5の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項7】
パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内で検出された場合に、アラームを発生することを特徴とする請求項1ないし6の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項8】
SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視装置であって、パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在するか否かを検出する検出手段と、前記検出手段により前記所定エリア内にパーシャル検出航空機が検出された場合に、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換える切換手段と、を備えることを特徴とするパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項9】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内であることを特徴とする請求項8記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項10】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする請求項8記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項11】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモードであることを特徴とする請求項8、9又は10記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項12】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、モノパルスモードであることを特徴とする請求項8、9又は10記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項13】
前記検出手段は、SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの特定覆域内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出することを特徴とする請求項8ないし12の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項14】
前記検出手段は、パーシャル検出航空機をレーダの所定エリア内で検出した場合に、アラームを発生することを特徴とする請求項8ないし13の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項1】
SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視方法であって、検出されたパーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在する場合にのみ、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換えることを特徴とするパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項2】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内であることを特徴とする請求項1記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項3】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする請求項1記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項4】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモードであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項5】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、モノパルスモードであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項6】
SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの所定エリア内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出することを特徴とする請求項1ないし5の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項7】
パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内で検出された場合に、アラームを発生することを特徴とする請求項1ないし6の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視方法。
【請求項8】
SSRモードSにおけるパーシャル検出航空機の監視装置であって、パーシャル検出航空機がレーダの所定エリア内に存在するか否かを検出する検出手段と、前記検出手段により前記所定エリア内にパーシャル検出航空機が検出された場合に、SSRモードSからモノパルス形式の質問を含むモードに切換える切換手段と、を備えることを特徴とするパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項9】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定セクタ内であることを特徴とする請求項8記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項10】
前記所定エリア内は、レーダの覆域の所定方位及び距離により特定した領域であることを特徴とする請求項8記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項11】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、MIIPモードであることを特徴とする請求項8、9又は10記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項12】
前記モノパルス形式の質問を含むモードは、モノパルスモードであることを特徴とする請求項8、9又は10記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項13】
前記検出手段は、SSRモードSにより航空機から取得したモードSアドレスが既知のパーシャル検出航空機のモードSアドレスと一致した場合、SSRモードSによる一括質問応答のスキャンがnスキャン中m(n>m≧3)以上続いた場合又はレーダの特定覆域内で個別質問応答の航空機が一括質問応答状態に戻った回数がl(l≧1)以上の場合の何れかの場合に、当該航空機を前記パーシャル検出航空機として検出することを特徴とする請求項8ないし12の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【請求項14】
前記検出手段は、パーシャル検出航空機をレーダの所定エリア内で検出した場合に、アラームを発生することを特徴とする請求項8ないし13の何れかの請求項記載のパーシャル検出航空機の監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−249391(P2008−249391A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88592(P2007−88592)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]