説明

STAT3エピトープペプチド

本発明は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103に示すアミノ酸配列を含むペプチド、ならびに、1個、2個、又はいくつかのアミノ酸が置換又は付加された前述のアミノ酸配列の1つを含み、細胞傷害性T細胞誘導能を有するペプチドを提供し、また、これらのペプチドを含む薬物も提供する。本発明のペプチドは、ワクチンとして用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年11月28日に出願された米国特許出願第60/990,877号に関連し、これは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、生物科学の分野、より具体的には癌療法の分野に関する。特に、本発明は、癌ワクチンとして極めて有効に働く新規なペプチド、ならびにそのようなペプチドを含む、腫瘍を治療及び予防するための薬物に関する。
【背景技術】
【0003】
CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が、MHCクラスI分子上に提示される腫瘍関連抗原(TAA)に由来するエピトープペプチドを認識し、腫瘍細胞を死滅させることが実証されている。MAGEファミリーがTAAの最初の例として発見されて以来、他の多くのTAAが免疫学的アプローチによって発見されており(Boon T. Int J Cancer 54: 177-180, 1993(非特許文献1);Boon T, and van der Bruggen P. J Exp Med 183: 725-729, 1996(非特許文献2);van der Bruggen P, et al. Science 254: 1643-1647, 1991(非特許文献3);Brichard V, et al. J Exp Med 178: 489-495, 1993(非特許文献4);Kawakami Y, et al. J Exp Med 180: 347-352, 1994(非特許文献5))、これらのうちいくつかは、現在、免疫療法の標的として臨床開発中である。
【0004】
しかし、これまで、その臨床効果は明らかな腫瘍の退縮により測られ、低かった(Rosenberg SA, et al. Nature Med. 10:909-915, 2004(非特許文献6))。主要な理由の1つは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及び末梢血リンパ球(PBL)の、進行期の癌患者における低い免疫応答である(Miescher S, et al. J Immunol 136:1899-1907, 1986(非特許文献7))。この腫瘍により誘導される免疫抑制は、腫瘍抗原への低い応答(Young RC, et al. Am J Med 52:63-68, 1972(非特許文献8))、T細胞の低い増殖(Alexander JP, et al. Cancer Res 53:1380-1387, 1997(非特許文献9))、サイトカイン産生の減少(Horiguchi S, et al. Cancer Res. 59:2950-2956, 1999(非特許文献10))、及び、T細胞及びナチュラルキラー細胞の不完全な信号伝達(Kono K, et al. Clin Cancer Res. 11:1825-1828, 1996(非特許文献11);Kiessling R, et al. Cancer Immunol Immunother. 48:353-362, 1999(非特許文献12))の理由である。腫瘍免疫療法では、腫瘍微小環境における免疫抑制の制御が最重要問題である。
【0005】
STATファミリー転写因子のメンバーであるSTAT3は、細胞周期進行、浸潤及び転移、腫瘍血管新生並びに免疫系の腫瘍細胞回避を含む腫瘍形成における多くの重要な経路を制御する(Dauer D J, et al. Oncogene. 24: 3397-3408、2005(非特許文献13);Niu G、et al. Oncogene. 21:2000-2008, 2002(非特許文献14);Huang S. Clin Cancer Res. 13:1362-1366, 2007)。最近、抗腫瘍免疫応答を抑制する機能活性を有する、未成熟ミエロイド細胞及び制御性T細胞が、STAT3の活性を上方制御することが報告された(Yu H, et al. Nat Rev Immunol. 7: 41-51, 2007(非特許文献15);Kortylewski M, et al..Nature Med. 11:1314-1321, 2005;Jing N and Tweardy D J. Anti-Cancer Drugs. 16: 601-607, 2005(非特許文献16))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Boon T. Int J Cancer 54: 177-180, 1993
【非特許文献2】Boon T, and van der Bruggen P. J Exp Med 183: 725-729, 1996
【非特許文献3】van der Bruggen P, et al. Science 254: 1643-1647, 1991
【非特許文献4】Brichard V, et al. J Exp Med 178: 489-495, 1993
【非特許文献5】Kawakami Y, et al. J Exp Med 180: 347-352, 1994
【非特許文献6】Rosenberg SA, et al. Nature Med. 10:909-915, 2004
【非特許文献7】Miescher S, et al. J Immunol 136:1899-1907, 1986
【非特許文献8】Young RC, et al. Am J Med 52:63-68, 1972
【非特許文献9】Alexander JP, et al. Cancer Res 53:1380-1387, 1997
【非特許文献10】Horiguchi S, et al. Cancer Res. 59:2950-2956, 1999
【非特許文献11】Kono K, et al. Clin Cancer Res. 11:1825-1828, 1996
【非特許文献12】Kiessling R, et al. Cancer Immunol Immunother. 48:353-362, 1999
【非特許文献13】Dauer D J, et al. Oncogene. 24: 3397-3408、2005
【非特許文献14】Niu G、et al. Oncogene. 21:2000-2008, 2002
【非特許文献15】Yu H, et al. Nat Rev Immunol. 7: 41-51, 2007
【非特許文献16】Kortylewski M, et al..Nature Med. 11:1314-1321, 2005;Jing N and Tweardy D J. Anti-Cancer Drugs. 16: 601-607, 2005
【発明の概要】
【0007】
発明の開示
本発明は、少なくとも一部は、それぞれの遺伝子産物に特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導する能力を有する、STAT3の遺伝子産物に由来する特異的エピトープペプチドの同定に基づいている。STAT3に由来するHLA−A24結合性ペプチド及びHLA−A02結合性ペプチドを用いて、健常なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)を刺激した。これらのペプチドは、STAT3を発現する未成熟ミエロイド細胞及び制御性T細胞に対する強力かつ特異的な免疫応答を誘導することができる、HLA−A24又はHLA−A2拘束性エピトープペプチドである。
【0008】
したがって、本発明は、本発明のSTAT3ポリペプチドを投与する段階を含む、免疫抑制を制御(例えば、阻害)するための方法を提供する。免疫抑制は、STAT3ポリペプチドの投与により制御される。よって、本発明は、STAT3ポリペプチドを投与する段階を含む、免疫抑制を制御する方法を提供する。本発明はさらに免疫抑制を制御するためのSTAT3ポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。
【0009】
本発明の前述の概要及び以下の詳細な説明の両方とも、好ましい態様のものであり、本発明も本発明の他の代替の態様も限定しないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】図1Aは、エピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示し、その結果として、STAT3−A24−9−13、−9−93、−9−354、−9−78、−9−70、−9−308、−9−344、−9−171、−9−140及び−9−658が強力なIFN−γ産生を示すことが実証される。対照と比較して、以下のウェルの細胞は強力なIFN−γ産生を示した:STAT3−A24−9−13で刺激したウェル2番及び8番、STAT3−A24−9−93で刺激した5番及び9番、STAT3−A24−9−354で刺激した5番、STAT3−A24−9−78で刺激した4番及び5番、STAT3−A24−9−70で刺激した3番、STAT3−A24−9−308で刺激した7番、STAT3−A24−9−344で刺激した1番、STAT3−A24−9−171で刺激した6番、STAT3−A24−9−140で刺激した2番、並びにSTAT3−A24−9−658で刺激した1番(これらは四角で囲む)。
【図1B】図1Bは、エピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示し、その結果として、STAT3−A24−9−350、−9−180、−9−262、−9−379、−9−26、−10−21、−10−445及び−10−13が強力なIFN−γ産生を示すことが実証される。対照と比較して、以下のウェルの細胞は強力なIFN−γ産生を示した:STAT3−A24−9−350で刺激した7番、STAT3−A24−9−180で刺激した6番及び13番、STAT3−A24−9−262で刺激した1番、6番及び12番、STAT3−A24−9−379で刺激した8番、STAT3−A24−9−26で刺激した8番、STAT3−A24−10−21で刺激した2番、STAT3−A24−10−445で刺激した2番、並びに、STAT3−A24−10−13で刺激した3番(これらは四角で囲む)。
【図1C】図1Cは、エピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示し、その結果として、STAT3−A24−10−511、−10−278及び−10−215が強力なIFN−γ産生を示すことが実証される。対照と比較して、以下のウェルの細胞は強力なIFN−γ産生を示した:STAT3−A24−10−511で刺激した1番、STAT3−A24−10−278で刺激した4番、並びに、STAT3−A24−10−215で刺激した1番(これらは四角で囲む)。
【図2A】図2Aは、エピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示し、その結果として、STAT3−A2−9−705、−9−360、−9−143、−9−578、−9−205、−9−431、−9−654、−9−343、−9−136及び−9−469が強力なIFN−γ産生を示すことが実証される。対照と比較して、以下のウェルの細胞は強力なIFN−γ産生を示した:STAT3−A2−9−705で刺激した4番及び5番、STAT3−A2−9−360で刺激した2番、3番、4番、5番及び6番、STAT3−A2−9−143で刺激した1番及び6番、STAT3−A2−9−578で刺激した5番、6番及び8番、STAT3−A2−9−205で刺激した1番及び4番、STAT3−A2−9−431で刺激した6番及び8番、STAT3−A2−9−654で刺激した7番、STAT3−A2−9−343で刺激した4番、5番及び7番、STAT3−A2−9−136で刺激した6番、並びに、STAT3−A2−9−469で刺激した6番、7番及び8番(これらは四角で囲む)。
【図2B】図2Bは、エピトープペプチドのスクリーニングのためのIFN−γELISPOTアッセイの結果を示し、その結果として、STAT3−A2−9−524、−10−142、−10−658、−10−554、−10−562、−10−750、−10−114、−10−266、−10−26、−10−340及び−10−308が強力なIFN−γ産生を示すことが実証される。対照と比較して、以下のウェルの細胞は強力なIFN−γ産生を示した:STAT3−A2−9−524で刺激した4番、STAT3−A2−10−142で刺激した7番、STAT3−A2−10−658で刺激した4番、6番、7番及び8番、STAT3−A2−10−554で刺激した3番、5番及び6番、STAT3−A2−10−562で刺激した7番、STAT3−A2−10−750で刺激した4番、STAT3−A2−10−114で刺激した2番、STAT3−A2−10−266で刺激した8番、STAT3−A2−10−26で刺激した1番及び6番、STAT3−A2−10−340で刺激した2番、5番、6番及び8番、並びに、STAT3−A2−10−308で刺激した7番及び8番(これらは四角で囲む)。
【図3】図3はSTAT3−A24−9−93、STAT3−A24−9−350、STAT3−A24−9−180、STAT3−A24−9−262、STAT3−A24−9−26、STAT3−A24−10−21、STAT3−A2−9−343及びSTAT3−A2−10−114で刺激したCTL株の樹立を示す。以下のCTL株は、強力なIFN−γ産生能を示した:5番(STAT3−A24−9−93の刺激)、7番(STAT3−A24−9−350の刺激)、6番(STAT3−A24−9−180の刺激)、1番(STAT3−A24−9−262の刺激)、8番(STAT3−A24−9−26の刺激)、2番(STAT3−A24−10−21の刺激)、4番(STAT3−A2−9−343の刺激)、及び、2番(STAT3−A2−10−114の刺激)。IFN−γの量は、CTL(応答体:R)−ペプチドパルス細胞(刺激体:S)比(R/S)で表されるCTL株の比と相関した。一方、対照においては、IFN−γはほとんど検出されなかった。図中、“+”は、ウェルの細胞が適当なペプチドでパルスされたことを示し、“−”は細胞がペプチドでパルスされなかったことを示す。
【図4】図4はSTAT3−A24−10−21で刺激したCTLクローンの樹立を示す。2−174番のCTLクローン(STAT3−A24−10−21の刺激)は、強力なIFN−γ産生能を示した。IFN−γの量は、CTL(応答体:R)−ペプチドパルス細胞(刺激体:S)比(R/S)で表されるCTL株の比と相関した。一方、I対照においては、IFN−γはほとんど検出されなかった。図中、“+”は、ウェルの細胞が適当なペプチドでパルスされたことを示し、“−”は細胞がペプチドでパルスされなかったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される単語「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」は、他で具体的に特定されない限り、「少なくとも1つ」を意味する。
単語「細胞傷害性T細胞」及び「細胞傷害性Tリンパ球(CTL)」は、本明細書において、インターフェロンγ(IFN−γ)産生能又は細胞傷害能を有するTリンパ球を示すために互換的に使用される。
【0012】
細胞傷害性T細胞誘導能を有するSTAT3由来ペプチド
強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する新しいTAAの同定により、様々なタイプの癌におけるペプチドワクチン接種法の臨床適用のさらなる発展が保証される(Boon T et al., J Exp Med 183: 725-729, 1996.;van der Bruggen P et al., Science 254: 1643-1647, 1991.;Brichard V et al., J Exp Med 178: 489-495, 1993.;Kawakami Y et al., J Exp Med 180: 347-352, 1994.;Shichijo S et al., J Exp Med 187:277-288, 1998.;Chen Y.T. et al. Proc.Natl.Acd. Sci.USA, 94: 1914-1918, 1997.;Harris CC, J Natl Cancer Inst 88:1442-1445, 1996.;Butterfield LH et al, Cancer Res 59:3134-3142, 1999.;Vissers JLM et al, Cancer Res 59: 5554-5559, 1999.;Van der Burg SH et al, J. Immunol 156:3308-3314, 1996.;Tanaka F et al, Cancer Res 57:4465-4468, 1997.;Fujie T et al. Int J Cancer 80:169-172, 1999.;Kikuchi M et al, Int J Cancer 81: 459-466, 1999.;Oiso M et al, Int J Cancer 81:387-394, 1999.)。
【0013】
上述のように、様々なタイプの抗原特異的免疫療法が行われてきた;しかし、臨床効果は期待されたほど高くはなかった(Rosenberg SA et al. Nat Med. 10:909-915, 2004)。免疫療法の臨床効果を向上するには、腫瘍により誘導される免疫抑制因子を克服することが重要である。腫瘍浸潤未成熟ミエロイド細胞、未成熟樹状細胞及び抗腫瘍免疫系に対する免疫抑制細胞が、STAT3の高発現を示すことが報告されている(Yu H, et al. Nat Rev Immunol. 7: 41-51, 2007;Kortylewski M, et al. Nature Med. 11:1314-1321, 2005;Jing N and Tweardy D J. Anti-Cancer Drugs. 16: 601-607, 2005)。最近の研究により、STAT3信号伝達の阻害により、未成熟DCの数が減少し、DCの機能成熟が亢進したことが示された(Wang T, et al. Nature Med. 10: 48-54, 2004)。よって、STAT3発現細胞の制御を含む戦略は、癌の免疫療法に高い可能性を有するツールである。
【0014】
本発明において、STAT3由来のペプチドが、ヒト集団における一般的なHLAアレルである(Date Y et al. Tissue Antigens, 47: 93-101, 1996.;Kondo A et al. J Immunol, 155: 4307-4312, 1995.;Kubo RT. et al. J Immunol, 152: 3913-3924, 1994.)HLA−A24又はHLA−A2拘束性の抗原エピトープであることが示された。STAT3由来のHLA−A24及びHLA−A2結合性ペプチドの候補が、HLA−A24及びHLA−A2に対する結合親和性に関する情報を用いて同定された。これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロでの刺激の後、以下のペプチドを用いてCTLを樹立することに成功した:
STAT3−A24−9−13(SEQ ID NO: 3)、
STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO: 4)、
STAT3−A24−9−354(SEQ ID NO: 5)、
STAT3−A24−9−78(SEQ ID NO: 6)、
STAT3−A24−9−70(SEQ ID NO: 7)、
STAT3−A24−9−308(SEQ ID NO: 8)、
STAT3−A24−9−344(SEQ ID NO: 9)、
STAT3−A24−9−171(SEQ ID NO: 10)、
STAT3−A24−9−140(SEQ ID NO: 11)、
STAT3−A24−9−658(SEQ ID NO: 13)、
STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO: 14)、
STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO: 16)、
STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO: 17)、
STAT3−A24−9−379(SEQ ID NO: 19)、
STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO: 20)、
STAT3−A24−10−21(SEQ ID NO: 21)、
STAT3−A24−10−445(SEQ ID NO: 22)、
STAT3−A24−10−13(SEQ ID NO: 26)、
STAT3−A24−10−511(SEQ ID NO: 27)、
STAT3−A24−10−278(SEQ ID NO: 29)、
STAT3−A24−10−215(SEQ ID NO: 30)、
STAT3−A2−9−705(SEQ ID NO: 59)、
STAT3−A2−9−360(SEQ ID NO: 61)、
STAT3−A2−9−143(SEQ ID NO: 63)、
STAT3−A2−9−578(SEQ ID NO: 64)、
STAT3−A2−9−205(SEQ ID NO: 65)、
STAT3−A2−9−431(SEQ ID NO: 66)、
STAT3−A2−9−654(SEQ ID NO: 67)、
STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO: 68)、
STAT3−A2−9−136(SEQ ID NO: 69)、
STAT3−A2−9−469(SEQ ID NO: 70)、
STAT3−A2−9−524(SEQ ID NO: 72)、
STAT3−A2−10−142(SEQ ID NO: 73)、
STAT3−A2−10−658(SEQ ID NO: 74)、
STAT3−A2−10−554(SEQ ID NO: 75)、
STAT3−A2−10−562(SEQ ID NO: 77)、
STAT3−A2−10−750(SEQ ID NO: 83)、
STAT3−A2−10−114(SEQ ID NO: 94)、
STAT3−A2−10−266(SEQ ID NO: 96)、
STAT3−A2−10−26(SEQ ID NO: 97)、
STAT3−A2−10−340(SEQ ID NO: 98)及び
STAT3−A2−10−308(SEQ ID NO: 103)。
【0015】
これらのCTLは、ペプチドでパルスした標的細胞に対して強力で特異的なCTL活性を示した。これらの結果は、STAT3がCTLにより認識される新規な抗原であること、上記ペプチドを含むその断片がHLA−A24及びHLA−A2拘束性のエピトープペプチドであること、を強く示唆する。STAT3はほとんどの癌患者において過剰発現し、免疫抑制及び血管新生に関連していることから、STAT3は、免疫療法の効果を向上させる、免疫療法の良い標的である。よって、本発明は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドを提供する。好ましい実施態様において、本発明は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含む、細胞傷害性T細胞誘導能を有するペプチドであって、1個、2個、又はいくつかのアミノ酸が、置換又は付加されているペプチドを提供する。例えば、本発明において、置換されるアミノ酸残基の好ましい数は1又は2であり得る。
【0016】
従って、本発明は、さらに、腫瘍微小環境における免疫抑制及び血管新生を制御する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含む、約40アミノ酸未満、しばしば約20アミノ酸未満、通常は約15アミノ酸未満の免疫原性ペプチドを投与する段階を含む。本発明はさらに、癌を治療又は予防する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含む、約40アミノ酸未満、しばしば約20アミノ酸未満、通常は約15アミノ酸未満の免疫原性ペプチドを投与する段階を含む。あるいは、免疫原性ペプチドは、1個、2個、又はいくつかのアミノ酸が置換又は付加された、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103の配列を含んでもよい。好ましい実施態様において、免疫原性ペプチドは、ノナペプチド又はデカペプチドである。
【0017】
また、本発明は、抗免疫抑制及び抗血管新生を誘導する方法を提供し、該方法は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含む、本発明の免疫原性ペプチドを投与する段階を含む。本発明において、ペプチドはインビボ又はエクスビボで対象に投与することができる。さらに、本発明は、また、免疫抑制及び/又は血管新生を制御するための免疫原性組成物の製造のための、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドの使用を提供する。あるいは、本発明は、また、免疫抑制及び/又は血管新生を制御するための、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドに関する。好ましい実施態様において、癌の治療又は予防のための免疫学的又は薬学的組成物の製造又は調製のための、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドの使用が提供される。また、免疫原性ペプチドは、1個、2個、又はいくつかのアミノ酸が、置換又は付加された、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103の配列を含み得る。好ましい実施態様において、免疫原性ペプチドは、ノナペプチド又はデカペプチドである。
【0018】
また、本発明は、さらに、免疫抑制及び/又は血管新生の制御のための免疫原性組成物の製造のための方法又はプロセスを提供し、該方法又はプロセスは薬学的に又は生理学的に許容可能な担体を、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドと製剤化する段階を含む。また、本発明は、さらに、免疫抑制及び/又は血管新生を制御するための、免疫原性組成物の製造のための方法又はプロセスを提供し、該方法又はプロセスは活性成分を薬学的に又は生理学的に許容可能な担体と混合する段階を含み、該活性成分は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドである。
【0019】
さらに、本発明は、また、癌の治療のための免疫原性組成物の製造のための方法又はプロセスを提供し、該方法又はプロセスは、薬学的又は生理学的に許容可能な担体を、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドと製剤化する段階を含む。あるいは、本発明はさらに、癌の治療又は予防のための免疫原性組成物の製造のための方法又はプロセスを提供し、該方法又はプロセスは、活性成分を薬学的に又は生理学的に許容可能なキャリアと混合する段階を含み、該活性成分は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドである。あるいは、免疫原性ペプチドは、1個、2個、又はいくつかのアミノ酸が置換又は付加された、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103の配列を含み得る。好ましい実施態様において、免疫原性ペプチドは、ノナペプチド又はデカペプチドである。
【0020】
SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列の相同性解析により、これらがいかなる既知のヒト遺伝子産物由来のペプチドとも有意な相同性を有しないことが示された。このことにより、これらの分子に対する免疫療法に伴う、未知の又は好ましくない免疫応答の可能性は低下する。
【0021】
HLA抗原に関して、日本人及び白人において高度に発現されるA24及びA2タイプの使用が、効果的な結果を得るために有利であり、A2402、A0201及びA0206などのサブタイプの使用がさらにより好ましい。典型的には、クリニックにおいて、治療を必要とする患者のHLA抗原のタイプが前もって調査され、それにより、適切なHLA抗原に対する高いレベルの結合親和性、及びCTL誘導能を有する適切なペプチドを選択することが可能になる。さらに、高いHLA結合親和性及びCTL誘導能を示すペプチドを得るために、天然に存在するSTAT3の部分ペプチドのアミノ酸配列を、1個、2個、又はいくつかのアミノ酸の置換又は付加により改変してもよい。本明細書において、「いくつかの」という用語は、5個以下、より好ましくは3個以下を意味する。
【0022】
さらに、天然に提示されるペプチドに加えて、HLA抗原の結合の際に提示されるペプチドの配列の既知の規則性に基づいて(J. Immunol., 152, 3913, 1994;Immunogenetics. 41:178, 1995;J. Immunol. 155:4307, 1994)、本発明の免疫原性ペプチドを改変してもよい。例えば、N末端から2番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、又はトリプトファンで置換された、及び/又はそのC末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、又はメチオニンで置換された、高いHLA−A24結合親和性を示すペプチドも、好適に使用され得る。したがって、
STAT3−A24−9−13(SEQ ID NO:3)、
STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO:4)、
STAT3−A24−9−354(SEQ ID NO:5)、
STAT3−A24−9−78(SEQ ID NO:6)、
STAT3−A24−9−70(SEQ ID NO:7)、
STAT3−A24−9−308(SEQ ID NO:8)、
STAT3−A24−9−344(SEQ ID NO:9)、
STAT3−A24−9−171(SEQ ID NO:10)、
STAT3−A24−9−140(SEQ ID NO:11)、
STAT3−A24−9−658(SEQ ID NO:13)、
STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO:14)、
STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO:16)、
STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO:17)、
STAT3−A24−9−379(SEQ ID NO:19)、
STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO:20)、
STAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)、
STAT3−A24−10−445(SEQ ID NO:22)、
STAT3−A24−10−13(SEQ ID NO:26)、
STAT3−A24−10−511(SEQ ID NO:27)、
STAT3−A24−10−278(SEQ ID NO:29)、及び
STAT3−A24−10−215(SEQ ID NO:30)からなる群から選択される本発明のペプチドを、このような様式で改変してもよい。さらに、かかるアミノ酸配列の改変から得られるペプチドは、本発明の方法又は組成物にも用いられる。
【0023】
これに対して、N末端から2番目のアミノ酸がロイシン又はメチオニンで置換され、及び/又は、C末端アミノ酸がバリン又はロイシンで置換されたペプチドが、高いHLA−A0201結合親和性を有するペプチドとして好適に使用され得る。例えば、
STAT3−A2−9−705(SEQ ID NO:59)、
STAT3−A2−9−360(SEQ ID NO:61)、
STAT3−A2−9−143(SEQ ID NO:63)、
STAT3−A2−9−578(SEQ ID NO:64)、
STAT3−A2−9−205(SEQ ID NO:65)、
STAT3−A2−9−431(SEQ ID NO:66)、
STAT3−A2−9−654(SEQ ID NO:67)、
STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO:68)、
STAT3−A2−9−136(SEQ ID NO:69)、
STAT3−A2−9−469(SEQ ID NO:70)、
STAT3−A2−9−524(SEQ ID NO:72)、
STAT3−A2−10−142(SEQ ID NO:73)、
STAT3−A2−10−658(SEQ ID NO:74)、
STAT3−A2−10−554(SEQ ID NO:75)、
STAT3−A2−10−562(SEQ ID NO:77)、
STAT3−A2−10−750(SEQ ID NO:83)、
STAT3−A2−10−114(SEQ ID NO:94)、
STAT3−A2−10−266(SEQ ID NO:96)、
STAT3−A2−10−26(SEQ ID NO:97)、
STAT3−A2−10−340(SEQ ID NO:98)及び
STAT3−A2−10−308(SEQ ID NO:103)からなる群から選択される本発明のペプチドを、このような様式で改変してもよい。さらに、アミノ酸配列のかかる改変から得られるペプチドは、本発明の方法又は組成物にも用いられる。
さらに、1個〜2個のアミノ酸が、ペプチドのN末端及び/又はC末端に付加されてもよい。
【0024】
置換は、末端アミノ酸でだけではなく、ペプチドの潜在的なTCR認識位置でも導入され得る。いくつかの研究により、あるペプチドのアミノ酸置換体が、元のものと等しいか、又はそれより優れている場合があることが実証されている。例えば、CAP1、p53(264〜272)、Her−2/neu(369〜377)、又はgp100(209〜217)(Zaremba et al. Cancer Res. 57, 4570-4577, 1997;T. K. Hoffmann et al. J Immunol.(2002) Feb 1;168 (3):1338-47.;S. O. Dionne et al. Cancer Immunol immunother. (2003) 52:199-206;及びS. O. Dionne et al. Cancer Immunology, Immunotherapy (2004) 53, 307-314)。
【0025】
高いHLA抗原結合親和性及び保持されたCTL誘導能を有する、かかる改変ペプチドもまた、本発明に含まれる。
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能を有する内因性タンパク質又は外因性タンパク質のアミノ酸配列の一部分と同一である場合、自己免疫障害又は特定の物質に対するアレルギー症状などの副作用が誘導される場合がある。したがって、この配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況を回避することがしばしば好ましい。この状況は、利用可能なデータベースを用いて相同性検索を実施することによって容易に達成され得る。さらに、1個又は2個、のアミノ酸が異なるペプチドさえ存在しないことが相同性検索によって明らかな場合には、HLA抗原との結合親和性を高め、かつ/又はCTL誘導能を高めるための前述のアミノ酸配列の改変が、かかる問題を引き起こす可能性は低い。
【0026】
前述のように、HLA抗原に対して高い結合親和性を有するペプチドは、極めて効果的であると予想されるが、高い結合親和性の存在を指標として用いて選択される候補ペプチドは、それらの実際のCTL誘導能に関して検査されなければならない。CTL誘導能の確認は、例えば、ヒトMHC抗原を保持する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、及び樹状細胞)、又はより具体的には、ヒト末梢血単核白血球に由来する樹状細胞を誘導し、該細胞をペプチドで刺激し、CD8陽性細胞と混合し、その後、標的細胞に対してCTLにより産生及び放出されるIFN−γを測定することによって達成される。
【0027】
反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作製されたトランスジェニック動物(例えば、Hum. Immunol. 2000 Aug.; 61(8):764-79 Induction of CTL response by a minimal epitope vaccine in HLA A*0201/DR1 transgenic mice: dependence on HLA class II restricted T(H) response., BenMohamed L., Krishnan R., Longmate J., Auge C., Low L., Primus J., Diamond DJ.に記載されているもの)を使用してもよい。例えば、標的細胞を51Crなどで放射性標識することができ、標的細胞から放出された放射能から細胞傷害活性を算出することができる。あるいは、固定化したペプチドを保持する抗原提示細胞の存在下でCTLによって産生及び放出されたIFN−γを測定すること、及び抗IFN−γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻止帯を可視化することによって検査することもできる。
【0028】
前述のようにペプチドのCTL誘導能を検査した結果、HLA抗原に対して高い結合親和性を有するペプチドが多様なCTL誘導能を示すことが明らかとなった。さらに、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドより選択されるノナペプチド又はデカペプチドは、特に高いCTL誘導能を示した。
【0029】
上記のように、本発明は、細胞傷害性T細胞誘導能を有し、かつ、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列に、1個、2個、もしくはいくつかのアミノ酸の付加又は置換を含むペプチドを提供する。1個、2個、もしくはいくつかのアミノ酸の置換又は付加を有する、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列に示される9個もしくは10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列は、他のタンパク質のアミノ酸配列と一致しないことが好ましい。特に:HLA−A24に関しては、N末端から2番目のアミノ酸におけるフェニルアラニン、チロシン、メチオニン又はトリプトファンへのアミノ酸置換、及び/又は、C末端アミノ酸のフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、又はメチオニンへのアミノ酸置換:HLA−A2に関しては、N末端から2番目のアミノ酸におけるロイシン又はメチオニンへのアミノ酸置換、及び/又はC末端アミノ酸におけるバリン又はロイシンへのアミノ酸置換、ならびに/又は、N末端及び/又はC末端への1個もしくは2個のアミノ酸のアミノ酸付加が、好ましい例である。
【0030】
本発明のペプチドは、周知の技術を用いて調製することができる。例えば、これらのペプチドは、組換えDNA技術又は化学合成を用いて、合成によって調製することができる。本発明のペプチドは、個別に合成してもよく、又は2個もしくはそれ以上のペプチドを含む、より長いポリペプチドとして合成してもよい。ペプチドは、単離されていること、すなわち、天然に存在する他の宿主細胞タンパク質及びそれらの断片を実質的に含まないことが好ましい。
【0031】
ペプチドは、改変が本明細書で記載するペプチドの生物活性を損なわせない限りにおいて、グリコシル化、側鎖酸化、又はリン酸化などの改変を含んでよい。他の改変には、例えば、ペプチドの血清半減期を延長させるために使用することができるD−アミノ酸又は他のアミノ酸模倣体の組み込みが含まれる。
【0032】
ワクチンとして抗癌免疫力を高める組成物
本発明のペプチドは、CTLをインビボで誘導し得るワクチンとして使用するために、2つ又はそれ以上の本発明のペプチドを含む組合せとして調製することができる。これらのペプチドは、カクテル中に含まれてよく、又は標準的な技術を用いて互いに結合されてもよい。例えば、これらのペプチドは、単一のポリペプチド配列として発現させることができる。組合せのペプチドは、同じでもよく、又は異なってもよい。本発明のペプチドを投与することによって、これらのペプチドは抗原提示細胞のHLA抗原上に高密度で提示され、その後、提示されたペプチドとHLA抗原とで形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、抗原提示細胞は、対象から樹状細胞を取り出すことによって得られる。その後、これらの細胞を、本発明のペプチドによって刺激し、これらの細胞を対象に再投与することによって対象にCTLを誘導する。結果として、標的細胞に対する応答を高めることができる。
【0033】
より具体的には、本発明は、制御性T細胞(Treg)を阻害することにより腫瘍血管新生及び免疫抑制を制御するための、1つまたはそれ以上の本発明のペプチドを含む薬物を提供する。本発明のペプチドは、Treg及び血管新生の制御に用いることができる。
「制御性T細胞(Treg)」の語は、免疫学的活性のサプレッサーとして働くT細胞の、特定化した亜集団である。
【0034】
本発明のペプチドは、従来の製剤方法によって製剤化された薬学的組成物として直接投与することができる。このような場合、本発明のペプチドの他に、担体、賦形剤、及び薬物のために通常使用されるそのようなものを、特に制限無く適宜含めることができる。本発明の免疫原性組成物は、Tregの制御による血管新生の抑制及び癌免疫療法の強化を通じて、癌の治療のために使用され得る。
【0035】
本発明のペプチドを活性成分として含む、血管新生及びTregの生成の抑制による癌治療及び癌免疫療法の強化のための免疫原性組成物は、細胞免疫が効果的に確立されるようにアジュバントを含むことができ、あるいは、それらを他の活性成分と共に投与してもよく、液形態で投与してもよい。使用可能な適切なアジュバントは、文献に記載されているものを含む(Clin. Microbio1. Rev., 7:277-289, 1994)。このようなアジュバントには、例えば、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、及びミョウバンが含まれる。さらに、リポソーム製剤、薬物が直径数mmのビーズに結合されている顆粒状の製剤、及び脂質がペプチドに結合されている製剤が都合よく使用され得る。投与方法は、経口、皮内、皮下、又は静脈注射などでよく、全身投与又は標的とされる部位の近傍への局所投与も可能である。本発明のペプチドの用量は、治療すべき疾患、患者の年齢、体重、及び投与方法などに応じて適切に調整することができ、通常0.001mg〜1000mg、好ましくは0.001mg〜1000mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、好ましくは、数日間〜数ヶ月間に1回投与される。当業者は、適切な用量及び投与方法を適当に選択することができる。
【0036】
本発明はさらに、本発明のペプチドとHLA抗原との間で形成された複合体を表面に提示する、エキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、特表平11−510507号及び特表2000−512161号において詳細に説明されている方法を用いることによって調製することができ、好ましくは、治療及び/又は予防の標的である対象から得られる抗原提示細胞を用いて調製される。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様に、ワクチンとして使用することができる。すなわち、本発明は、抗原提示細胞の誘導又はCTL誘導のための薬学的組成物の製造のための本発明のエキソソームの使用を提供する。本発明はまた、さらに、抗原提示細胞の誘導又はCTL誘導のための本発明のエキソソームを含む薬学的組成物の製造方法又はプロセスを提供する。
【0037】
使用するHLA抗原のタイプは、治療及び/又は予防を必要とする対象のタイプと一致しなければならない。例えば、日本人の場合、HLA−A24又はHLA−A2、特にそれぞれHLA−A2402又はHLA−A0201及びA0206が適切であることが多い。
【0038】
いくつかの態様において、本発明のワクチン組成物は、細胞傷害性Tリンパ球を刺激する成分を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを刺激することができる作用物質と同定されている。例えば、パルミチン酸残基をリジン残基のε−アミノ基及びα−アミノ基に結合させ、次いで本発明の免疫原性ペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセルもしくは粒子中に入れて直接投与するか、リポソーム中に組み入れて投与するか、又はアジュバント中に乳化して投与することができる。CTL応答を刺激する脂質の別の例として、トリパルミトイル−S−グリセリルシステイニルセリル−セリン(P3CSS)のような大腸菌(E.coli)リポタンパク質が、適切なペプチドに共有結合された場合に、CTLを刺激するのに使用することができる(例えば、Deres, et al., Nature 342:561, 1989を参照されたい)。
【0039】
本発明の免疫原性組成物はまた、本明細書において開示する免疫原性ペプチドをコードする核酸も含んでよい(例えば、Wolff et al.,(1990)Science 247:1465-1468;米国特許第5,580,859号;同第5,589,466号;同第5,804,566号;同第5,739,118号;同第5,736,524号;同第5,679,647号;及びWO98/04720を参照されたい)。DNAベースの送達技術の例には、「裸のDNA(naked DNA)」、促進された(ブピビカイン、ポリマー、ペプチドを媒介とした)送達、カチオン性脂質複合体、及び粒子を媒介とした(「遺伝子銃」)および圧力を媒介とした送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0040】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、ウイルスベクター又は細菌ベクターによって発現させることもできる。発現ベクターの例には、ワクシニア又は鶏痘などの弱毒化したウイルス宿主が含まれる。このアプローチは、例えば、ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させるためのベクターとしてワクシニアウイルスを使用することを含む。宿主中に導入すると、組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫応答を誘発する。ワクシニアベクター及び有用な免疫化方法は、例えば米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターはBCG(カルメット・ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin))である。BCGベクターは、Stover, et al.,(1991)Nature 351:456-60に記載されている。治療的投与又は免疫化のために有用な多種多様の他のベクター、例えば、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、ならびに無毒化した炭疽毒素ベクターなどが、使用可能であろう(例えば、Shata, et al.,(2000)Mol. Med. Today 6:66-71;Shedlock, et al.,(2000)J. Leukoc. Biol. 68:793-806;ならびにHipp, et al.,(2000)In Vivo 14:571-85を参照されたい)
【0041】
本発明はまた、本発明のペプチドを用いて抗原提示細胞を誘導する方法も提供する。抗原提示細胞は、末梢血単球から樹状細胞を調製し、次いでそれらをインビトロ、エクスビボ、又はインビボで本発明のペプチドと接触させる(それらで刺激する)ことによって誘導することができる。本発明のペプチドを対象に投与すると、本発明のペプチドがそれらに固定化された抗原提示細胞が、対象の体内で誘導される。あるいは、本発明のペプチドを抗原提示細胞に固定化した後、これらの細胞をワクチンとして対象に投与することもできる。例えば、エクスビボの投与は、以下の段階を含んでもよい:
a)対象から抗原提示細胞を採取する段階;及び
b)段階aの抗原提示細胞をペプチドと接触させる段階。
【0042】
あるいは、本発明は、抗原提示細胞を誘導する薬学的組成物を製造するための本発明のペプチドの使用を提供する。さらに、本発明はまた、抗原提示細胞を誘導するための本発明のペプチドも提供する。本発明はまた、抗原提示細胞を誘導するための本発明のペプチドを含む薬学的組成物の製造方法又はプロセスをさらに提供する。段階bによって得られる抗原提示細胞は、ワクチンとして対象に投与することができる。
【0043】
本発明はまた、高レベルの細胞傷害性T細胞誘導能を有する抗原提示細胞を誘導するための方法を提供し、本方法は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をインビトロで抗原提示細胞に移入する段階を含む。導入される遺伝子は、DNAの形態であっても、RNAの形態であってもよい。導入の方法については、特に限定されず、当分野で従来通りに実施される様々な方法、例えば、リポフェクション、エレクトロポレーション、及びリン酸カルシウム法を使用してよい。より具体的には、Cancer Res., 56:5672-7, 1996;J. Immunol., 161:5607-13, 1998;J. Exp. Med., 184:465-72, 1996;特表2000−509281号に記載されているように実施してもよい。遺伝子を抗原提示細胞中に移入することにより、遺伝子は細胞中で転写及び翻訳などを経て、次いで、発現されたタンパク質は提示経路を経て部分ペプチドとして、MHCクラスI又はクラスII分子と結びついて、細胞表面上に提示される。
【0044】
本発明はさらに、本発明のペプチドを用いてCTLを誘導するための方法も提供する。本発明のペプチドが対象に投与される場合、対象の体内でCTLが誘導される。そのため、Tregを標的とすることにより免疫系の強さが強化され、腫瘍周辺の血管新生が抑制される。あるいは、本発明のペプチドは、エクスビボの治療方法のために使用されてもよく、その場合、対象に由来する抗原提示細胞及びCD8陽性細胞又は末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させ(それらで刺激し)、CTLが誘導された後、それらの細胞を対象に戻す。例えば、この方法は、以下の段階を含んでもよい:
a)対象から抗原提示細胞を採取する段階、
b)段階aの抗原提示細胞をペプチドと接触させる段階、
c)段階bの抗原提示細胞をCD8T細胞と混合しかつ同時培養して、細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導する段階:及び
d)段階cの同時培養物からCD8T細胞を採取する段階。
【0045】
あるいは、本発明により、CTLを誘導する薬学的組成物を製造するための本発明のペプチドの使用も提供される。さらに、本発明はまた、CTLを誘導するための本発明のペプチドも提供する。あるいは本発明はさらに、CTLを誘導するための本発明のポリペプチドを含む薬学的組成物の製造方法又はプロセスを提供する。段階dによって得られた細胞傷害活性を有するCTLは、ワクチンとして対象に投与することができる。
【0046】
本発明はさらに、本発明のペプチドを用いて誘導された、単離されたCTLも提供する。本発明のペプチドを提示する抗原提示細胞による刺激によって誘導されたCTLは、好ましくは、治療及び/又は予防の標的である対象に由来し、単独で、又は本発明のペプチド又はエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて、CTL誘導を制御することを目的として、投与することができる。得られたCTLは、本発明のペプチド、又は好ましくは誘導のために使用されるのと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、STAT3を内因的に発現する細胞、又はSTAT3遺伝子をトランスフェクトした細胞でよく、そして、これらのペプチドによる刺激が原因で細胞表面に本発明のペプチドを提示する細胞もまた、攻撃の標的となることができる。
【0047】
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとの間で形成された複合体を提示する抗原提示細胞も提供する。本発明のペプチド又は本発明のペプチドをコードするヌクレオチドとの接触によって得られる抗原提示細胞は、好ましくは、治療及び/又は予防の標的である対象に由来し、単独で、又は本発明のペプチド、エキソソーム、もしくはCTLを含む他の薬物と組み合わせて、ワクチンとして投与することができる。
【0048】
本発明はまた、T細胞受容体(TCR)のサブユニットを形成することができるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、及びそれを使用する方法も提供する。TCRサブユニットは、STAT3を提示する細胞に対するT細胞の特異性を与えるTCRを形成する能力を有する。当技術分野において公知の方法を用いることによって、本発明の1つ又はそれ以上のペプチドを用いて誘導したCTLのTCRサブユニットとしてα鎖及びβ鎖の核酸を同定することができる(WO2007/032255及びMorgan et al., J Immunol, 171, 3288(2003))。誘導体TCRは、好ましくは、STAT3ペプチドを提示する標的細胞に高い結合力で結合し、かつ、STAT3ペプチドを提示する標的細胞のインビボ及びインビトロでの効率的な死滅を媒介する。
【0049】
TCRサブユニットをコードする核酸は、適切なベクター、例えばレトロウイルスベクター中に組み入れることができる。これらのベクターは、当技術分野において周知である。これらの核酸又はそれらを利用可能に含むベクターは、T細胞、好ましくは患者由来のT細胞中に移入することができる。有利には、本発明は、患者自身のT細胞(又は別の哺乳動物のもの)の迅速な改変を可能にして、癌細胞を死滅させる優れた特性を有する改変T細胞を迅速かつ容易に産生させる既製の組成物を提供する。
【0050】
また、本発明は、STAT3ペプチド、例えば、HLA−A24又はHLA−A2との関連においては、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103と結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸を用いて形質導入することによって調製されるCTLも提供する。形質導入されたCTLは、インビボで癌細胞に誘導する(homing)ことができ、かつ周知の培養法によってインビトロで増殖する(例えば、Kawakami et al., J Immunol., 142, 3452-3461(1989))。本発明のT細胞は、その必要に応じて患者において癌を治療又は予防するのに有用な免疫原性組成物を形成するために使用することができる(WO2006/031221)。
【0051】
本発明において、「ワクチン」(免疫原性組成物とも呼ばれる)という用語は、動物に接種すると、腫瘍が誘導する免疫抑制を阻害する機能を有し、これにより抗腫瘍免疫を亢進する物質を意味する。本発明のワクチンは、Treg及び/又は血管新生に関連する細胞に対する免疫を誘導する機能も有し得る。本発明によれば、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、STAT3を発現するTreg及びSTAT3を発現する血管新生関連細胞に対する強力かつ特異的な免疫応答を誘導するHLA−A24又はHLA−A02拘束性エピトープペプチドの調製に用いることができる。したがって、本発明はまた、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むポリペプチドを用いて、腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生を阻害する方法も包含する。一般に、腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生の阻害は以下のような免疫応答を含む:
− STAT3発現Treg及びSTAT3発現血管新生関連細胞に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、
− STAT3発現Treg及びSTAT3発現血管新生関連細胞を認識する抗体の誘導、ならびに
− Treg及び/又は血管新生関連細胞を抑制するサイトカイン産生の誘導。
【0052】
したがって、ある種のタンパク質が、動物に接種された際にこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのタンパク質は、腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生を阻害すると決定される。タンパク質による、腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生の阻害は、そのタンパク質に対する、宿主の免疫系の応答をインビボ又はインビトロで観察することによって検出することができる。
【0053】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出するための方法が周知である。生体に侵入する外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によって、T細胞及びB細胞に対して提示される。APCによって提示される抗原に抗原特異的な様式で応答するT細胞は、抗原による刺激により細胞傷害性T細胞(又は細胞傷害性Tリンパ球:CTL)に分化し、次いで増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。したがって、ある種のペプチドによるCTL誘導は、APCによってそのペプチドをT細胞に提示し、かつCTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、CD4T細胞、CD8T細胞、マクロファージ、好酸球、及びNK細胞を活性化する効果を有する。CD4T細胞もまた、抗腫瘍免疫において重要であるため、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。
【0054】
樹状細胞(DC)をAPCとして用いたCTLの誘導を評価するための方法は、当技術分野において周知である。DCは、APCのうちで最も強力なCTL誘導効果を有する代表的なAPCである。この方法では、試験ポリペプチドを最初にDCと接触させ、次いでこのDCをT細胞と接触させる。DCと接触させた後に、関心対象の細胞に対する細胞傷害性効果を有するT細胞が検出される場合、その試験ペプチドが、細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することが示される。Treg及び血管新生関連細胞に対するCTLの活性は、例えば、51Crで標識された腫瘍細胞の溶解を指標として用いて、検出することができる。あるいは、H−チミジン取り込み活性又はLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いてTregの程度及び血管新生関連細胞の損傷を評価する方法も周知である。
【0055】
DC以外では、末梢血単核細胞(PBMC)もまたAPCとして使用してよい。CTLの誘導は、GM−CSF及びIL−4の存在下でPBMCを培養することによって亢進されることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びIL−7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることも示されている。
【0056】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性化作用及びそれに続くCTL誘導活性を有するポリペプチドである。したがって、Treg及び血管新生関連細胞に対するCTLを誘導するポリペプチドは、癌治療及び癌免疫療法の強化のためのワクチンとして有用である。さらに、これらのポリペプチドと接触することにより、Treg及び血管新生関連細胞に対するCTLを誘導する能力を獲得したAPCも、癌治療及び癌免疫療法の強化のためのワクチンとして有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLもまた、癌治療及び癌免疫療法の強化のためのワクチンとして使用することができる。APC及びCTLの寄与による免疫を用いた、Treg及び血管新生関連細胞に関するこのような制御方法は、細胞性免疫療法と呼ばれる。
【0057】
一般に、細胞性免疫療法のためにポリペプチドを使用する場合、CTL誘導の効率は、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組合せ、かつそれらをDCと接触させることによって上昇させることができることが知られている。したがって、DCをタンパク質断片で刺激する場合、複数のタイプの断片の混合物を使用することが有利である。
【0058】
あるいは、あるポリペプチドによる、腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生の阻害は、Treg及び血管新生関連細胞に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することができる。例えば、あるポリペプチドに対する抗体が、そのポリペプチドで免疫された実験動物において誘導される場合であって、かつTreg及び血管新生関連細胞がそれらの抗体によって抑制される場合、そのポリペプチドは、腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生を阻害する能力を有すると判定することができる。
【0059】
腫瘍が誘導する免疫抑制及び血管新生の阻害は、本発明のワクチンを投与することによって誘導され、該誘導により、免疫抑制及び血管新生の解消が可能になる。このような効果は、好ましくは統計学的に有意である。例えば、Treg及び血管新生関連細胞に対するワクチンの制御効果は、ワクチン投与を伴わない対照と比較される場合、5%以下の有意水準で統計的に有意である。例えば、スチューデントのt検定、マン・ホイットニーU検定、又はANOVAを、統計的分析に使用してもよい。
【0060】
免疫学的活性を有する前述のタンパク質、又はこのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドもしくはベクターは、アジュバントと組み合わせてよい。アジュバントとは、免疫学的活性を有するタンパク質と一緒に(又は連続的に)投与された場合に、該タンパク質に対する免疫応答を増強する化合物を意味する。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、及びミョウバンなどが含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適切に組み合わせてもよい。このような担体の例は、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝液、及び培養液などである。さらに、ワクチンは、必要に応じて、安定化剤、懸濁剤、保存剤、及び界面活性剤なども含んでよい。ワクチンは、全身的又は局所的に投与される。ワクチン投与は、単回投与によって実施するか、又は複数回投与によって追加免疫してよい。
【0061】
APC又はCTLを本発明のワクチンとして使用する場合、Treg及び血管新生関連細胞は、例えばエクスビボの方法によって制御することができる。より具体的には、治療又は予防を受けている対象のPBMCを採取し、ポリペプチドとエクスビボで接触させ、APC又はCTLの誘導後、それらの細胞を対象に投与してもよい。APCは、ポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMC中に導入することによっても、誘導することができる。インビトロで誘導したAPC又はCTLは、投与に先立ってクローン化してもよい。標的細胞を傷害する活性が高い細胞をクローン化し、増殖させることによって、細胞性免疫療法をより効果的に実施することができる。さらに、この様式で単離されたAPC及びCTLは、それらの細胞が由来する個体に対してだけでなく、他の個体の同様のタイプの疾患に対しても、細胞性免疫療法のために使用され得る。
【0062】
以下の実施例は、本発明を例示し、かつ当業者がそれらを作製及び使用するのを補助するために提供される。これらの実施例は、本発明の範囲を別な具合に限定することを決して意図しない。
【0063】
他に定義しない限り、本明細書中において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野において当業者により一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は等価な方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用でき、適した方法及び材料を以下に示す。本明細書中において引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物は、参照により組み入れられる。
【0064】
実施例
本発明を以下の実施例によって詳しく例示するが、これらの実施例に限定はされない。
【0065】
材料及び方法
細胞株
A24LCL細胞株、ヒトBリンパ芽球様細胞株、及びT2細胞株はATCCから購入した。
【0066】
STAT3に由来するペプチドの候補選択
NM_139276(SEQ ID NO:1)のヌクレオチド配列によりコードされるSTAT3(SEQ ID NO:2、NP_644805;770残基)のアミノ酸配列から、HLA−A*2402分子及びHLA−A*0201分子に結合する、STAT3由来の9mer及び10merのペプチドを、結合予測ソフトウェア「BIMAS」(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)を用いて予測した。これらのペプチドを、標準の固相合成法に従ってSigma(札幌、日本)によって合成し、逆相HPLCによって精製した。これらのペプチドの純度(>90%)及び同一性は、それぞれ分析用HPLC及び質量分析解析によって決定した。ペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)中に20mg/mlで溶解し、−80℃で保存した。
【0067】
インビトロCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を抗原提示細胞(APC)として使用して、HLA上に提示されるペプチドに対するCTL応答を誘導した。Horiguchi S, et al. Cancer Res. 59:2950-2956, 1999で記載されているように、DCをインビトロで作製した。簡潔には、Ficoll−Plaque(Pharmacia)溶液中に健常な対象(HLA−A*2402及び/又はHLA−A*0201)から単離した末梢血単核細胞(PBMC)を、プラスチック製の組織培養ディッシュ(Becton Dickinson)への接着によって分離して、単球画分にそれらを濃縮した。単球の豊富な集団を、2%の加熱不活性化した自己血清(AS)を含むAIM−V(Invitrogen)中、1000U/mlのGM−CSF(R&D System)及び1000U/mlのIL−4(R&D System)の存在下で培養した。7日間培養した後、サイトカインを用いて作製したDCを、AIM−V中、37℃で3時間、3μg/mlのβ2−ミクログロブリンの存在下、20μg/mlの合成ペプチドでパルスした。
【0068】
次いで、ペプチドパルスしたこれらのDCをMMCによって不活性化し(30μg/ml、30分間)、かつ、CD8 Positive Isolation Kit(Dynal)を用いたポジティブ選択によって得た自己CD8T細胞と1:20の比で混合した。これらの培養物を48ウェルプレート(Corning)中に配置した:各ウェルに、0.5mlのAIM−V/2%AS中に、ペプチドパルスしたDC 1.5×10個、CD8T細胞3×10個、及び10ng/mlのIL−7(R&D System)を入れた。3日後、これらの培養物に、最終濃度が20IU/mlになるまでIL−2(CHIRON)を添加した。7日目及び14日目に、ペプチドパルスした自己DCでT細胞をさらに再刺激した。前述したのと同じようにして、DCを調製した。21日目に3回目のペプチド刺激をした後、ペプチドパルスしたA24LCL細胞又はT2細胞に対してCTLを試験した。
【0069】
CTL増殖手順
Riddell,et al.(Riddel S R, et al. Nature Med. 2: 216-223, 1996; Walter E A, et al. N Engl J Med. 333: 1038-1044, 1995)によって説明されているのと同様の方法を用いて、CTLを培養して増殖させた。合計5×10個のCTLを、40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下、MMCによって不活性化した2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株と共に、25mlのAIM−V/5%AS中に再懸濁した。培養開始後1日目に、120IU/mlのIL−2を培養物に添加した。5日目、8日目、及び11日目に、30IU/mlのIL−2を含む新鮮なAIM−V/5%ASを培養物に供給した。
【0070】
CTLクローンの樹立
96丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)中で、ウェル当たり0.3個、1個、及び3個のCTLを有する希釈物を作製した。合計150μl/ウェルの5%AS含有AIM−V培地中で、細胞1×10個/ウェルの2種類のヒトBリンパ芽球様細胞株、30ng/mlの抗CD3抗体、及び125U/mlのIL−2と共にCTLを培養した。10日後、IL−2の最終濃度が125U/mlになるように、50μl/ウェルのIL−2を培地に添加した。14日目にCTLのCTL活性を試験し、上記と同じ方法を用いてCTLクローンを増殖させた。
【0071】
特異的CTL活性
特異的CTL活性を検査するために、IFN−γELISPOTアッセイ法及びIFN−γELISAを実施した。
簡潔には、ペプチドパルスしたA24LCL細胞又はT2細胞(1×10個/ウェル)を刺激細胞として調製した。48ウェルで培養した細胞又は限界希釈後のCTLクローンを、応答細胞として使用した。製造手順のもとに、IFN−γELISPOTアッセイ法及びELISAを実施した。
【0072】
結果
STAT3に由来するHLA−A24結合ペプチド及びHLA−A2結合性ペプチドの予測
表1は、STAT3のHLA−A*2402結合ペプチドを結合親和性の高い方から低い方へ順に示す。表2は、STAT3のHLA−A*0201結合ペプチドを結合親和性の高い方から低い方へ順に示す。強力なHLA−A24結合能を有する合計32のペプチド、及び、強力なHLA−A2結合能を有する71のペプチドを選択した。
【0073】
(表1) STAT3に由来するHLA−A2402結合ペプチド

開始位置はSTAT3のN末端からのアミノ酸の数を示す。結合スコアは材料と方法に記載の「BIMAS」に由来する。
【0074】
(表2) STAT3に由来するHLA−0201結合ペプチド


開始位置はSTAT3のN末端からのアミノ酸の数を示す。結合スコアは材料と方法に記載の「BIMAS」に由来する。
【0075】
HLA−A*2402又はHLA−A*0201に拘束される予測ペプチドを用いたT細胞の刺激
STAT3に由来するこれらのペプチドに対するCTLを、「材料及び方法」で説明したように作製した。図1A〜C及び2A〜Bに示すように、得られたCTLは、IFN−γELISPOTアッセイ法により検出可能な特異的CTL活性を示した。図1A〜C中、STAT3−A24−9−13(SEQ ID NO:3)で刺激した2番及び8番、STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO:4)で刺激した5番及び9番、STAT3−A24−9−354(SEQ ID NO:5)で刺激した5番、STAT3−A24−9−78(SEQ ID NO:6)で刺激した4番及び5番、STAT3−A24−9−70(SEQ ID NO:7)で刺激した3番、STAT3−A24−9−308(SEQ ID NO:8)で刺激した7番、STAT3−A24−9−344(SEQ ID NO:9)で刺激した1番、STAT3−A24−9−171(SEQ ID NO:10)で刺激した6番、STAT3−A24−9−140(SEQ ID NO:11)で刺激した2番、STAT3−A24−9−658(SEQ ID NO:13)で刺激した1番、STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO:14)で刺激した7番、STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO:16)で刺激した6番及び13番、STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO:17)で刺激した1番、6番及び12番、STAT3−A24−9−379(SEQ ID NO:19)で刺激した8番、STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO:20)で刺激した8番、STAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)で刺激した2番、STAT3−A24−10−445(SEQ ID NO:22)で刺激した2番、STAT3−A24−10−13(SEQ ID NO:26)で刺激した3番、STAT3−A24−10−511(SEQ ID NO:27)で刺激した1番、STAT3−A24−10−278(SEQ ID NO:29)で刺激した4番、及び、STAT3−A24−10−215(SEQ ID NO:30)で刺激した1番のウェルの細胞は、対照と比較して強力なIFN−γ産生を示した。これらのウェルは図中囲んで示す。
【0076】
図2A〜B中、STAT3−A2−9−705(SEQ ID NO:59)で刺激した4番及び5番、STAT3−A2−9−360(SEQ ID NO:61)で刺激した2番、3番、4番、5番及び6番、STAT3−A2−9−143(SEQ ID NO:63)で刺激した1番及び6番、STAT3−A2−9−578(SEQ ID NO:64)で刺激した5番、6番及び8番、STAT3−A2−9−205(SEQ ID NO:65)で刺激した1番及び4番、STAT3−A2−9−431(SEQ ID NO:66)で刺激した6番及び8番、STAT3−A2−9−654(SEQ ID NO:67)で刺激した7番、STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO:68)で刺激した4番、5番及び7番、STAT3−A2−9−136(SEQ ID NO:69)で刺激した6番、STAT3−A2−9−469(SEQ ID NO:70)で刺激した6番、7番及び8番、STAT3−A2−9−524(SEQ ID NO:72)で刺激した4番、STAT3−A2−10−142(SEQ ID NO:73)で刺激した7番、STAT3−A2−10−658(SEQ ID NO:74)で刺激した4番、6番、7番及び8番、STAT3−A2−10−554(SEQ ID NO:75)で刺激した3番、5番及び6番、STAT3−A2−10−562(SEQ ID NO:77)で刺激した7番、STAT3−A2−10−750(SEQ ID NO:83)で刺激した4番、STAT3−A2−10−114(SEQ ID NO:94)で刺激した2番、STAT3−A2−10−266(SEQ ID NO:96)で刺激した8番、STAT3−A2−10−26(SEQ ID NO:97)で刺激した1番及び6番、STAT3−A2−10−340(SEQ ID NO:98)で刺激した2番、5番、6番及び8番、及び、STAT3−A2−10−308(SEQ ID NO:103)で刺激した7番及び8番のウェルの細胞は、対照と比べて強力なIFN−γ産生を示した。これらのウェルは、図中、囲んで示す。
【0077】
STAT3由来ペプチドで刺激したCTL株の樹立
1次スクリーニングの陽性ウェルから、STAT3由来HLA−A24拘束性ペプチドで刺激したCTL株を樹立した。図3中、STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO:4)、STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO:14)、STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO:16)、STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO:17)、STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO:20)及びSTAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)ペプチドで刺激したCTL株由来のIFN−γ産生比をIFN−γELISAアッセイにより検出した。これらのデータは、STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO:4)、STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO:14)、STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO:16)、STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO:17)、STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO:20)及びSTAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)ペプチドが特異的CTL応答を誘導し得たことを示す。同様に、HLA−A2拘束性ペプチド、STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO: 68)及びSTAT3−A2−10−114(SEQ ID NO: 94)、で刺激したCTL株由来のIFN−γ産生について、IFN−γELISAアッセイにより検出した。これらのデータは、STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO:68)及びSTAT3−A2−10−114(SEQ ID NO:94)ペプチドが特異的CTL応答を誘導し得たことを示す。
【0078】
STAT3由来ペプチドで刺激したCTLクローンの樹立
「材料及び方法」に記載したように、CTL株から限界希釈によりCTLクローンを樹立し、ペプチドパルスした標的細胞に対するCTLクローンからの比率依存的IFN−γ産生をIFN−γELISAアッセイにより決定した。強力なIFN−γ産生が、図4のSTAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)で刺激したCTLクローンに判定された。
【0079】
抗原ペプチドの相同性解析
以下のペプチドで刺激したCTLは、強力な特異的CTL活性を示した。
STAT3−A24−9−13(SEQ ID NO:3)、
STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO:4)、
STAT3−A24−9−354(SEQ ID NO:5)、
STAT3−A24−9−78(SEQ ID NO:6)、
STAT3−A24−9−70(SEQ ID NO:7)、
STAT3−A24−9−308(SEQ ID NO:8)、
STAT3−A24−9−344(SEQ ID NO:9)、
STAT3−A24−9−171(SEQ ID NO:10)、
STAT3−A24−9−140(SEQ ID NO:11)、
STAT3−A24−9−658(SEQ ID NO:13)、
STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO:14)、
STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO:16)、
STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO:17)、
STAT3−A24−9−379(SEQ ID NO:19)、
STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO:20)、
STAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)、
STAT3−A24−10−445(SEQ ID NO:22)、
STAT3−A24−10−13(SEQ ID NO:26)、
STAT3−A24−10−511(SEQ ID NO:27)、
STAT3−A24−10−278(SEQ ID NO:29)、
STAT3−A24−10−215(SEQ ID NO:30)、
STAT3−A2−9−705(SEQ ID NO:59)、
STAT3−A2−9−360(SEQ ID NO:61)、
STAT3−A2−9−143(SEQ ID NO:63)、
STAT3−A2−9−578(SEQ ID NO:64)、
STAT3−A2−9−205(SEQ ID NO:65)、
STAT3−A2−9−431(SEQ ID NO:66)、
STAT3−A2−9−654(SEQ ID NO:67)、
STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO:68)、
STAT3−A2−9−136(SEQ ID NO:69)、
STAT3−A2−9−469(SEQ ID NO:70)、
STAT3−A2−9−524(SEQ ID NO:72)、
STAT3−A2−10−142(SEQ ID NO:73)、
STAT3−A2−10−658(SEQ ID NO:74)、
STAT3−A2−10−554(SEQ ID NO:75)、
STAT3−A2−10−562(SEQ ID NO:77)、
STAT3−A2−10−750(SEQ ID NO:83)、
STAT3−A2−10−114(SEQ ID NO:94)、
STAT3−A2−10−266(SEQ ID NO:96)、
STAT3−A2−10−26(SEQ ID NO:97)、
STAT3−A2−10−340(SEQ ID NO:98)及び
STAT3−A2−10−308(SEQ ID NO:103)。
【0080】
これらのエピトープペプチドに相同な配列を有する他のタンパク質に対する予期しない反応を排除するために、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)により、これらのペプチド配列をクエリーとして用いて相同性解析を実施し、既知のタンパク質との有意な配列相同性は明らかにならなかった。
これらの結果から、これらのエピトープペプチドで刺激されたCTLは高い特異性を有し、無関係の分子に対して意図されない免疫学的応答を生じさせる可能性は低いことが示される。
【0081】
考察
強力かつ特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する、新しいTAAの同定により、様々なタイプの癌におけるペプチドワクチン接種法の臨床応用のさらなる発展が保証される(Harris CC. J Natl Cancer Inst 88:1442-1445, 1996; Butterfield LH, et al. Cancer Res 59:3134-3142, 1999;Vissers JLM, et al, Cancer Res 59: 5554-5559, 1999;Van den Burg SH, et al. J. Immunol 156:3308-3314, 1996;Tanaka F, et al. Cancer Res 57:4465-4468, 1997;Fujie T, et al. Int J Cancer 80:169-172, 1999;Kikuchi M, et al. Int J Cancer 81 : 459-466, 1999;Oiso M, et al. Int J Cancer 81:387-394, 1999)。様々なタイプの抗原特異的免疫療法が行われてきた。しかし、臨床効果は必ずしも予想されたものほど高くない(Rosenberg SA, et al. Nature Med. 10:909-915, 2004)。
【0082】
免疫療法の臨床効果を改善するには、腫瘍により誘導される免疫抑制因子を克服することだけでなく、腫瘍に対するCTLを誘発することが重要である。腫瘍が浸潤している未成熟ミエロイド細胞及び未成熟樹状細胞、抗腫瘍免疫系に対する免疫抑制細胞が、STAT3を高発現することが報告されている(Yu H, et al. Nat Rev Immunol. 7: 41-51, 2007;Kortylewski M, et al..Nature Med. 11:1314-1321, 2005;Jing N and Tweardy D J. Anti-Cancer Drugs. 16: 601-607, 2005)。最近の研究は、STAT3の信号伝達の阻害により未成熟DCの数が減少し、DCの機能成熟が亢進されたことを示した(Wang T, et al. Nature Med. 10: 48-54, 2004)。
【0083】
この問題を克服すべく、抗原エピトープとしてのSTAT3由来ペプチドが、ヒト集団において一般的なHLAアレルである(Date Y, et al. Tissue Antigens, 47: 93-101, 1996;Kondo A, et al. J Immunol, 155: 4307-4312, 1995;Kubo RT, et al. J Immunol, 152: 3913-3924, 1994)、HLA−A24及びHLA−A2に拘束されるか否かについて分析がなされた。本発明において、STAT3由来のHLA−A24及びHLA−A2結合性ペプチドの候補が、HLA−A*2402及びHLA−A*0201への結合親和性についての情報を用いて予測された。これらのペプチドを負荷したDCによるT細胞のインビトロでの刺激の後、以下のペプチドを用いてCTLを樹立することに成功した:
STAT3−A24−9−13(SEQ ID NO:3)、
STAT3−A24−9−93(SEQ ID NO:4)、
STAT3−A24−9−354(SEQ ID NO:5)、
STAT3−A24−9−78(SEQ ID NO:6)、
STAT3−A24−9−70(SEQ ID NO:7)、
STAT3−A24−9−308(SEQ ID NO:8)、
STAT3−A24−9−344(SEQ ID NO:9)、
STAT3−A24−9−171(SEQ ID NO:10)、
STAT3−A24−9−140(SEQ ID NO:11)、
STAT3−A24−9−658(SEQ ID NO:13)、
STAT3−A24−9−350(SEQ ID NO:14)、
STAT3−A24−9−180(SEQ ID NO:16)、
STAT3−A24−9−262(SEQ ID NO:17)、
STAT3−A24−9−379(SEQ ID NO:19)、
STAT3−A24−9−26(SEQ ID NO:20)、
STAT3−A24−10−21(SEQ ID NO:21)、
STAT3−A24−10−445(SEQ ID NO:22)、
STAT3−A24−10−13(SEQ ID NO:26)、
STAT3−A24−10−511(SEQ ID NO:27)、
STAT3−A24−10−278(SEQ ID NO:29)、
STAT3−A24−10−215(SEQ ID NO:30)、
STAT3−A2−9−705(SEQ ID NO:59)、
STAT3−A2−9−360(SEQ ID NO:61)、
STAT3−A2−9−143(SEQ ID NO:63)、
STAT3−A2−9−578(SEQ ID NO:64)、
STAT3−A2−9−205(SEQ ID NO:65)、
STAT3−A2−9−431(SEQ ID NO:66)、
STAT3−A2−9−654(SEQ ID NO:67)、
STAT3−A2−9−343(SEQ ID NO:68)、
STAT3−A2−9−136(SEQ ID NO:69)、
STAT3−A2−9−469(SEQ ID NO:70)、
STAT3−A2−9−524(SEQ ID NO:72)、
STAT3−A2−10−142(SEQ ID NO:73)、
STAT3−A2−10−658(SEQ ID NO:74)、
STAT3−A2−10−554(SEQ ID NO:75)、
STAT3−A2−10−562(SEQ ID NO:77)、
STAT3−A2−10−750(SEQ ID NO:83)、
STAT3−A2−10−114(SEQ ID NO:94)、
STAT3−A2−10−266(SEQ ID NO:96)、
STAT3−A2−10−26(SEQ ID NO:97)、
STAT3−A2−10−340(SEQ ID NO:98)及び
STAT3−A2−10−308(SEQ ID NO:103)。
【0084】
得られたCTLはペプチドパルスした標的細胞に対する特異的で強力なCTL活性を示した。これらの結果は、STAT3がCTLにより認識される新規抗原であり、これらのSTAT3のエピトープペプチドがHLA−A24及びHLA−A2により拘束されることを示す。STAT3は腫瘍で発現し、かつ、免疫抑制に関連していることから、したがってSTAT3は、臨床効果を上昇させるための、免疫療法のよい標的である。
【0085】
CTLを誘導し得るSTAT3エピトープペプチドの相同性解析により、これらが任意の他の既知ヒト遺伝子産物由来のペプチドとの有意な相同性を有しないことが示された。結論として、本発明において見出されたSTAT3エピトープペプチドは、癌免疫療法のための癌ワクチンとして有用である。
【0086】
産業上の利用可能性
免疫療法の臨床効果を向上するには、腫瘍が誘導する免疫抑制因子を克服することが重要である。Tregは様々なタイプの免疫応答を抑制する主要なプレーヤーの1つであると考えられている。腫瘍の成長を阻害するには、腫瘍病変部周辺の血管新生を抑制することも重要である。血管新生関連因子は腫瘍細胞又は炎症細胞により産生される。例えば、本発明は、その進行に血管新生を必要とする固形癌の治療のための新規な治療戦略を提供する。また、その生存について免疫寛容に依存する癌も、本発明によって治療され得る。従って、STAT3発現細胞を標的とするワクチンの開発は、免疫抑制と血管新生の克服に重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HLA抗原と結合し、細胞傷害性T細胞誘導能を有する、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列又はその断片からなるペプチド。
【請求項2】
前記断片が、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含むペプチドから選択されるノナペプチド又はデカペプチドである、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
1個、2個、又はいくつかのアミノ酸の置換又は付加を有する、SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29、30、59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のアミノ酸配列を含む、細胞傷害性T細胞誘導能を有するペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29又は30のN末端から2番目のアミノ酸が、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン又はトリプトファンである、請求項3記載のペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO:3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、16、17、19、20、21、22、26、27、29又は30のC末端アミノ酸が、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン又はメチオニンである、請求項3記載のペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO:59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のN末端から2番目のアミノ酸が、ロイシン又はメチオニンである、請求項3記載のペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO:59、61、63、64、65、66、67、68、69、70、72、73、74、75、77、83、94、96、97、98又は103のC末端アミノ酸がバリン又はロイシンである、請求項3記載のペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の1つ又はそれ以上のペプチドを含む、細胞傷害性T細胞誘導剤。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の1つ又はそれ以上のペプチドを含む、癌を治療又は予防するための薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項記載のペプチドとHLA抗原とを含む複合体をその表面に提示するエキソソーム。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の1つ又はそれ以上のペプチド、あるいは、該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、抗原提示細胞と接触させる段階を含む、細胞傷害性T細胞の誘導能を有する抗原提示細胞を調製する方法。
【請求項12】
T細胞を、請求項1〜7のいずれかに記載の1つ又はそれ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞と接触させる段階を含む、細胞傷害性T細胞を調製する方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の1つ又はそれ以上のペプチドを含む組成物を投与することにより癌を治療又は予防する方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか一項記載のペプチドにより誘導されるか、又はHLA−A24もしくはHLA−A2と関連して請求項1〜7のいずれかに記載のペプチドと結合するTCRサブユニットポリペプチドをコードする核酸を移入された、単離された細胞傷害性T細胞。
【請求項15】
HLA抗原と請求項1〜7のいずれかに記載のペプチドとの間で形成された複合体を含む、抗原提示細胞。
【請求項16】
請求項11記載の方法により調製される、抗原提示細胞。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれかに記載のペプチドを活性成分として含む、血管新生を阻害するか、又は、制御性T細胞を制御するためのワクチン。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれかに記載のペプチドを含むワクチンを対象に投与することにより、血管新生を阻害するか、又は、制御性T細胞を制御する、方法。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれかに記載のペプチドを活性成分として含む、癌免疫療法の臨床効果を増強するためのワクチン。
【請求項20】
高いSTAT3発現を示す細胞に対して細胞傷害性T細胞を誘導するポリペプチド、あるいは、該ポリペプチドの免疫的に活性な断片、又は、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与することにより、癌免疫療法の臨床効果を増強する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504875(P2011−504875A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521146(P2010−521146)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/JP2008/003497
【国際公開番号】WO2009/069302
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】